一人ひとりのニーズに合わせた料理教室 自分で見たり食べたりすると

【シェフの日レポート】vol.1 西麻布 割烹 たくみ
一人ひとりのニーズに合わせた料理教室
私はこのお店を開いてから、かれこれ3年くらいお客様向けの料理教室をしています。私はも
ともとホテルで料理長を務めていて、その頃から40~50人くらいの料理教室を開いていました。
2010年、お客様により近い場所で一人ひとりのお客様に感動をお届けしたいと、西麻布の閑
静な住宅街に割烹たくみを開店し、独立後すぐに料理教室を始めたのです。
当店の料理教室は、ランチが落ち着いた13時から、5名程度の小さなグループレッスン。ご要
望があればおひとり様から毎日開催します。オープンキッチンのカウンター越しに、私が調理
する手元を間近で見ていただきながら、時に生徒さんの実習を交えてレッスンします。
参加者は女性の方が比較的多いですが、中には男性の方もいらして、「奥様に美味しいお料理
を食べさせたい」と熱心に習いにいらっしゃいます。カップルでいらっしゃる方は、特に男性
の方が「習いたい!」と思って調べていらっしゃるようです。中には「妻が料理をしないか
ら」と言って習いに来る方も(笑)。 色々事情がありますね。また、「これから店を出した
い」という食のプロの方も腕を磨きにいらしています。ですので、毎回生徒さんとお話ししな
がら、次に何を習うかを生徒さんと一緒に決め、それぞれの生徒さんに合わせてレッスンをし
ています。
自分で見たり食べたりすると、もっと知りたいと思うもの
料理は基礎から教えます。初めていらっしゃる方には、まずは昆布と鰹節の基本的な出汁の
引き方を教えます。一番出汁と二番出汁。この出汁が引けると、実に様々な料理が作れるので
す。1回のレッスンで教える料理はだいたい4品程度です。
もちろん、作り方やコツも教えますが、料理は“調理法”が全てではありません。料理を美味
しく感じる要素は味だけではなく、見た目や香り、温度や食感も重要なファクターです。です
から、私は生徒さんに作り方だけではなく、盛り付けや器の選び方も教えます。
昨日初めていらした方がおっしゃっていました。「街の某クッキングスクールに通っていたが
残るものがなかった。でもこのお店の料理教室は心に残る。」と。巷の一般的な料理教室は、
広く浅く「作り方」のみを教えますよね。でも私の料理教室は違います。味の深みと見た目の
美しさ、素材が醸し出す香り、そしてプロの料理人に習うというステイタス。それらの1つ1つ
が付加価値になるのです。
自分で見たり食べたりすると、直球で分かりやすい。だから「もっと勉強したい」とおっしゃ
る。きっと感性が波及するのでしょうね。1回で終わってしまう生徒さんはほとんどいなくて、
たいてい月に1回、多い方は月に4回、皆さん継続して通ってこられます。
【シェフの日レポート】vol.1 西麻布 割烹 たくみ
また料理教室の生徒さんの中には、お昼の料理教室で当店を気に入っていただいて、夜には
ご主人と一緒にお食事に来てくださる方もいます。料理教室を機にご夫婦でお越しくださる、
それは料理人としても人と人との関係の広がりを感じることができ、本当に嬉しいものですね。
ホンモノを伝えたい
若い頃、私はサラリーマンにはなりたくなかった。「前略
おふくろ様」などのテレビ番組の影響もあってか、この頃に
は日本料理の料理人になりたいと決めていました。
今はもうこういう習慣はないでしょうけど、私が駆け出し
の頃は、夜中の0時とか1時とかに出勤して、下ごしらえをし
ておいたものでした。当時は「勉強したければ、誰よりも早
く来る」、そうでないと何も教えてもらえなかった時代です。
だから、少しでも多くのことを教えてもらいたかった私は、
毎日早くに出勤して、必死に料理を学びました。辛かったけ
ど、これは自分にとって本当にプラスになったと思います。
最近では、十分な技術を習得する前に、テレビで料理技術
を披露する料理人も散見されます。そうすると、テレビの力
とは恐いもので、それがホンモノになってしまう。でも私が
思うのは、それでは永くは続かないということ。若い料理人
の方にはもっと勉強してほしいし、一般の方もホンモノを
知ってほしい。だから当店にいらっしゃる生徒さんには、精
一杯ホンモノを伝えていきたいと思っています。
店主 木村 巧 シェフ
【シェフの日レポート】vol.1 西麻布 割烹 たくみ
シェフの心意気、受け止めました(お客様の声)
早速自宅で習った出汁を引いてみました。今までとは異なり、なんと料亭の(ような)味に!
自分でも美味しくできたことに感激です。(30代女性)
一般的な家庭料理やクッキングスクールでは思いつきませんが、野菜の飾り切りを教えてくれる
ところが料亭の料理教室ならではだと思いました。(20代女性)
木村料理長とお弟子さんが二人でレッスンをしてくださいましたが、非常に良い師弟関係のよう
見えたので、シェフに好感が持てました(20代女性)