プレスリリース全文

平成 25 年 3 月 26 日
大阪大学「ショセキカ」プロジェクト
阪大生企画!
ドーナツを穴だけ残して食べる方法
ろ ん そ う
~大阪大学ドーナツ論叢~
大阪大学では、
「ショセキカ」プロジェクト企画の学生がメインとなり、共通教育科目(基礎セミナー)において書籍化
に向けて様々な学習をしておりました。3 月 21 日に開催された大阪大学出版会の出版委員会において、
『ドーナツを穴だ
け残して食べる方法~大阪大学ドーナツ論叢~』の出版が決定し、学生と大阪大学出版会・教員らが一つになって、
「本
をつくる」本格的なプロセスへ進むこととなりました。
学生が執筆者となった書籍はたくさんありますが、今回のプロジェクトでは、従来の枠を飛び越え、学生が自ら企画・
執筆交渉・書籍化へのプレゼン、販路確定など、
「書籍化」を通じて、様々なことを学びます。2013 年 12 月の刊行に
むけて、学生自身が書籍化を通して葛藤し成長する姿、それを見守る大学出版会および教員の姿を是非取材ください。
大阪大学「ショセキカ」プロジェクトは、
「学生が企画する本を学生の力で出版する」を最終目標とし、それを大阪大
学教員・大阪大学出版会がサポートする形で、2012 年 4 月にスタートしました。2012 年 10 月には基礎セミナー「本を
つくる」として授業を開講し、出版業界の第一線で活躍するゲストスピーカーを招き、現場の最前線に学びながら企画
立案を行ってきました。
今回出版が決定した『ドーナツを穴だけ残して食べる方法~大阪大学ドーナツ論叢~』では、
「ドーナツの穴を残して
食べる」という一見矛盾した論題に、大阪大学に所属する多様な研究者の専門領域から、その答えを求めてアプローチ
していきます。ドーナツの穴というライトな切り口から、アカデミックな話題に発展させるのが本書のねらいです。
このように当プロジェクトでは、大阪大学がもつ豊富な「知の資産」を、
「本」というメディアを通して、学生が自ら
の力を最大限に発揮して、広く社会に伝えることに挑んでいます。
今後は学内だけにとどまらず、書店空間を利用したイベントなども企画し、本書とともに新たな「知の発信」を展開
『ドーナツを⽳だけ残して⾷べる⽅法』概要
あなたは、ドーナツをアカデミックな眼差しで見つ
めたことはありますか――
上で話題になった「トンチ問題」に、阪大教
員が本気で挑みます。
人文科学・自然科学・社会科学。学問領域を問わ
ず、各学問の専門家である阪大教員が、専門知識を
駆使して、ドーナツを穴だけ残して食べてしまいま
す。その他、ドーナツにちなんだアカデミックでデ
ィープなコラムを多数収録。
コンセプトは「気づいたら、学んでいた」
。何とな
く敷居が高くて親しみにくい「学問」
。私たちが提案
するのは、このイメージの払拭です。ドーナツとい
うライトな切り口から入り、
知らず知らずのうちに、
読者が学びのハードルを乗り越えて、学問の懐の広
さや考える楽しさを感じて欲しい。こうした願いか
ら、私たち阪大生はこの本を世に送り出します。
↑出版委員会にてプレゼンの様子
していく予定です。
☆本件に関するお問い合わせはこちらまで
松行輝昌(学際融合教育研究センター 准教授)
[email protected] 06-6850-6985
中村征樹(全学教育推進機構 准教授)
[email protected] 06-6850-6953
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e
w
「ショセキカ」とは?
大阪大学が 2012 年度後期に開講した基礎セミナー「本をつくる」は、大阪大学出版会の協力のもと、学生が魅力的な
書籍づくりを企画・提案し、阪大教員への執筆依頼、その後の広報・販売まで学生自身が全面的に関わるプロジェクト
型教育科目です。理学部・工学部・文学部・外国語学部など、様々な専攻の学生が受講しました。学生が出版企画から
制作、出版、販売までを実際に手がけることで、自らのアイデアを実際に世の中に形あるものとして出し、社会に伝え
るために必要なことを学んできました。
受講生は10月より多くの編集者や書店関係者、メディア関係者などからアドバイスを受け、阪大教員による魅力的
な書籍のための企画作成に取り組んできました。また、大学出版会から学生主体で企画した本を出版するという非常に
珍しい取り組みでもあります。
2012 年 11 月に授業内で行ったコンペを勝ち抜いたのち、12 月に大阪大学出版会の出版委員会では再検討が必要とな
ったアイデア、
「ドーナツを穴だけ残して食べる方法〜大阪大学ドーナツ論叢〜」が、その後さらに内容を精錬・具体化
させ、2013 年 3 月 21 日に行われた出版委員会での再審議後、書籍化決定のはこびとなりました。
ショセキカの歩み
2013.12
『ドーナツを穴だけ残して食べる方法~大阪大学ドーナツ論叢~』
出版予定!!
「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」執筆者(予定)
第Ⅰ部 解決編:穴を残して食べるには
教員名
所属
分野
内容
工学
工学者として単純に物事を受け止め、ものを切る(切
削する)とはどういうことなのか、またそれぞれのツー
ル(手や口、ハサミ、レーザー加工等)でどれぐらいま
で薄く残せるのかを(必ずしも専門家ではないものの)
工学の立場から検討することで、物を加工することの意
味、難しさについて解説する。
美学
ドーナツを食べると、空間としての穴は消失してしま
う。しかし、我々は記憶としてドーナツの穴を保持して
いるため、身体経験に基づいて、ドーナツの穴は場所と
いう観点から残すことが出来る。
第Ⅰ部
第1章
高田 孝
准教授
第2章
田中 均
准教授
工学研究科
文学研究科
第3章
松行 輝昌
准教授
学際融合
教育研究
センター
経済学
「ドーナツの穴だけ残して食べる」を経済学的に解釈
して、ドーナツ化現象(都市中心部の空洞化)を切り口
とする。ドーナツ化現象、郊外化、スラム化など複雑化
した現代の都市問題に取り組む都市経済学、特に近年発
展が著しい空間経済学を紹介して分析する。また、筆者
と建築家など異分野の専門家との地域社会圏共同研究
を紹介し、我が国における住宅政策と住居形態に関する
課題の分野横断的な分析と現代の社会に適合した新た
な住居の提案を通じて、建築と経済学の融合によるアプ
ローチの有用性と魅力を伝える。
第4章
井上 洋一
教授
保健センター
精神医学
「ドーナツを穴だけ残して食べる=失われかけた完
全性の保持」であり、これらは人類の精神がいかにして
形作られ、保持されるかということによって示される。
第5章
宮地 秀樹
准教授
理学研究科
数学
数学の「次元」の概念を用いてドーナツの穴を如何に
避けるかを、少々屁理屈を交えながら考える。
歴史学
ミクロ的アプローチとマクロ的アプローチが可能。前
者は、
「ドーナツには穴がある」ということが暗黙の前
提となってこの命題がたてられていることから、
「冷戦
後の日本の安全保障政策」を例にとり、主流の考え方と
その前提に疑問を呈した亜流の考え方を紹介し、歴史学
的な物の見方を検討する。後者は、命題の設定そのもの
を問う。ドーナツの穴を議論の入口にし、
「原爆論争」
をテーマにして歴史学における課題設定の重要性を論
じる。
歴史学
そもそもドーナツの起源は何か?最初からドーナツ
には穴があったのか?どうして穴をつけるようになっ
たのか?要するにドーナツの歴史が知りたい!という
知的欲求が湧いてくる。
「ドーナツ」のようなものは古
代ギリシャ・ローマですでに存在し、ヨーロッパに広ま
り、イギリスの北米植民地に移住したオランダ人によっ
てアメリカにもたらされたようだ。アメリカには”
National Doughnut Day”(毎年、6月の第1金曜日)が
あり、第一次世界大戦、大恐慌、ドーナツの間には密接
な関係があるようだ。
第6章
コラム
杉田 米行
准教授
杉田 米行
准教授
言語文化研究科
言語文化研究科
「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」執筆者(予定)続き
第Ⅱ部 応用編:ドーナツの穴に学ぶこと
教員名
所属
分野
内容
第1章
大村 敬一
准教授
言語文化研究科
人類学
「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という命題
がなぜ生まれたのか。人間にとって穴とは何を示して
いるのか。
なぜそれを残したいと思ったのか。それらについて、
人類の歴史を参考にしながら考える。
第2章
木田 敏之
准教授
工学研究科
化学
有害物質 PCB やトランス脂肪酸をドーナツ型の「シ
クロデキストリン」を用いて除去する自身の研究内容
を紹介する。
第3章
大久保 邦彦
教授
国際公共政策
研究科
法学
「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という問い
に直面した法律家(=私)の行動を紹介することを通
して、法学の特徴と思考様式を描き出し、他の学問と
の違いを明らかにする。
第4章
瀬戸山 晃一
准教授
国際教育
交流センター
法学
いかなる社会にもルールや法制度が必要であるこ
とは歴史的にだれもが認める事実である。しかし、人
間が作り出した法という道具によって何をどこまで
規制していくべきかという規範に関わる認識は、国や
社会や時代によって異なっており、常にその是非につ
いて様々な論争が繰り広げられてきている。およそ副
作用のない薬はないように、法規制も現実社会の諸問
題解決の処方箋になるとともに規制の意図せざる結
果や逆機能などのジレンマ構造をはらむ場合があり、
まさに「ドーナツの穴だけ残して食べる」的な状況に
直面する場合が少なくない。本章では、科学技術の進
展とグローバル化が加速していく現代における「法の
役割の意義と限界」について様々な角度から考察する
知的枠組みを提供したい。
コラム
松本 充郎
准教授
国際公共
政策研究科
法学
「ドーナツの穴を売ってはならない」という法律の
存在有無から、アメリカの州法・市町村条例における
ガセネタについて書く。
第Ⅱ部
コラム 世界のドーナツ*外国語学部の留学生、ショセキカプロジェクト学生が執筆
モンゴル
インド
スペイン
中東地域
イタリア
ドイツ
アルザス地方
*「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という命題は、インターネット上や NHK の朝ドラで紹介され、
話題になりました。