機械的作表法による釣合式

第7章
7- 1
機械的作表法による釣合式
第7章
機械的作表法による釣合式
ポイント:釣合式を表で表す
機械的作表法による方程式の作成
前章までで、たわみ角法の基本式を用いて節点でのモーメントの釣合、
7.1 はじめに
及び各層における層モーメントの釣合より、整形骨組の全体釣合式を求
める方法を学んだ。しかしながら、少し骨組が高層、あるいは多スパン
になると全体釣合式を作成するまでに、多くの手続きが必要となり、間
違いが生じ易くなる。そこで、本章では効率的に全体釣合式を作成する
方法を紹介する。この方法では、整形骨組に対し、表を用いて機械的に
釣合式を作成することができる。
キーワード
整形ラーメンの釣合式
機械的作表法で釣合式を作る
7.2 機械的作表法
たわみ角法では、整形骨組の節点番号を順序良く並べ、全体釣合式を
行列表示すると、釣合式の係数行列(剛性行列)は規則正しく並んでい
ることが分かる。そこで、その規則性を利用して、直接この剛性行列や
荷重項の中に、各部材のたわみ角法の係数や荷重を挿入することで、全
体釣合式を求める方法について考える。
例として、図 7-1 に示す整形骨組を考える。節点番号の付け方は、上
から付けても良いし、下から付けても良い。ここでは、図のように下か
ら上に、また、左より右に順序良く付ける事にする。
さらに、剛比も図のように、柱には kc* として、梁は kb*
として記号化する。この骨組の支持条件として、節点
7
番号 1,2,3 では、固定境界とする。
M ji = k (2ϕ j + ϕi + ψ ) + C ji
⎫
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.1)
⎭
次に、節点 i におけるモーメントの釣合を一般形式
1
k c1
k b1
8
5
2
kc8
kb 6
9
kb 4
kc5
kc 2
6
kb 2
3
kc9
kc6
kc3
図 7-1 整形骨組の節点番号と剛比の
付け方
で表すと次式となる。
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kb5
kc4
4
た後の基本式を用い、再度以下に示す。
M ij = k (2ϕi + ϕ j + ψ ) − Cij
kc7
kb 3
ここでは、たわみ角法の基本式として、変数変換し
12
11
10
骨組編Ⅰ
SPACE
第7章
7- 2
機械的作表法による釣合式
⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ (7.2)
J iϕi + ∑ (kϕ ) + ∑ (kψ ) = ∑ Ci
上式で、第 1 項 J i は、この節点 i に連結する部材剛比の総和
の 2 倍であり、第 2 項は、同じく連結した部材に関する剛比
と他端の節点回転角の積に対応している。また、第 3 項は、
連結した部材の剛比と部材角の積を表す。右辺項は、節点 i
7
kc7
kb 5
kb 3
kc4
に連結する部材の部材荷重で、固定端モーメントの総和を表
4
す。その際、式(7.1)から分かるように、部材の左端が連結
している場合は正の値をとり、右端の場合は負の値となる。
例えば、図 7-1 の骨組で鉛直荷重が梁に加わっている場合、 1
12
11
10
k c1
k b1
8
5
2
kc8
kb 6
9
kb 4
kc5
kc 2
6
kb 2
3
節点 4 及び 5 の方程式は次式のようになる。
図 7-2 解析用骨組
2(kc1 + kc 4 + kb1 )ϕ4 + kb1ϕ5 + kc 4ϕ7 + kc1ψ 1 + kc 4ψ 2 = C45
kb1ϕ4 + 2(kc 2 + kc 5 + kb1 + kb 2 )ϕ5 + kb 2ϕ6 + kc 5ϕ8
+ kc 2ψ 1 + kc 5ψ 2 = −(C54 + C56 )
⎫
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.3)
⎪
⎭
次に、層モーメントの釣合は、式(4.39)で表されており、ここで、再
度示すと以下のようであった。
⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ (7.4)
∑( M ij + M ji ) = ∑ Q j h − ∑ Ph
i
ここで、 M ij などは、式(7.1)で示される基本式で、最後の項の固定端
モーメントを除いた値であり、∑ は当該層の柱の材端モーメントにつ
いて和を採ることを意味する。また、 h はその層の階高であり、Qi は柱
の両端固定時のせん断力である。式(7.1)の荷重項を除いた式を式(7.4)
に代入すると、次式のような一般形が得られる。
∑ (3kϕ ) + ∑ (2k )ψ
i
⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ (7.5)
= ∑ Q j h − ∑ Ph
i
さらに、上式の両辺を 1/ 3 倍すると、層モーメントの釣合式の一般形が
得られる。
2
1
∑ (kϕ ) + 3 ∑ (kψ ) = 3 (∑ Q h − ∑ Ph)
i
j
i
⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ (7.6)
例えば、図 7-2 の骨組における 1,2 層の層モーメントの釣合は、次式
で与えられる。ここでは、水平方向の荷重が無いことから、層モーメン
トの釣合でも、右辺項はゼロとなる。
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kc9
kc6
kc3
第7章
7- 3
機械的作表法による釣合式
2
kc1ϕ4 + kc 2ϕ5 + kc 3ϕ6 + (kc1 + kc 2 + kc 3 )ψ 1 = 0
3
kc 4ϕ4 + kc 5ϕ5 + kc 6ϕ6 + kc 4ϕ7 + kc 5ϕ8 + kc 6ϕ9 +
⎫
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.7)
⎪
⎭
2
(kc 4 + kc 5 + kc 6 )ψ 2 = 0
3
上で求めた釣合式を参考にして、次の表中に剛比と固定端モーメント
を代入し、全体釣合式を作成してみよう。未知数は、節点数+層数であ
り、ここでは、境界条件によって、 ϕ1 , ϕ 2 , ϕ3 が零であることから、未知
数は 12 となる。
表 7-1
節
点
方
程
式
節点 ϕ 4
ϕ5
4
J4
kb1
5
kb1
J5
kb 2
kb 2
J6
6
7
ϕ6
kc 5
9
ϕ7
ϕ8
ϕ10
ϕ11
ϕ12
kc 5
kc 6
J7
kb 3
kb 3
J8
kb 4
kb 4
J9
kc 6
10
kc 8
12
kc1
kc 2
kc 3
2層
kc 4
kc 5
kc 6
3層
ψ2
kc1
kc 4
C45
kc 2
kc 5
−C54 + C56
kc 3
kc 6
−C65
kc 8
kc 9
ψ3
kc 4
kc 7
C78
kc 5
kc 8
−C76 + C78
kc 6
kc 9
−C87
kc 7
C10,11
kb 5
kb 5
J11
kb 6
kc 8
−C11,10 + C11,12
kb 6
J12
kc 9
−C12,11
0
N1
kc 4
kc 5
kc 6
kc 7
kc 8
kc 9
右辺項
J10
kc 9
1層
ψ1
kc 7
kc 7
11
層
方
程
式
ϕ9
kc 4
kc 4
8
機械的作表法で作った解析用骨組の釣合式
0
N2
kc 7
kc 8
kc 9
N3
0
上表で、節点方程式の剛性対角項は、各々、当該節点に連結する部材剛
比の総和の 2 倍(J)であり、また、層方程式では、その層にある柱剛比
の総和の 2/3 の値(N)である。
表 7-1 を参考にして、たわみ角法による全体剛性行列の特徴を説明す
る。この剛性は対称行列であり、規則的に各部材の剛比が並んでいるこ
とが分かる。節点方程式の対角項は、当該節点に連結している部材剛比
の総和の 2 倍となっている。対角項の両隣には、骨組と同じで両隣の梁
の剛比が入る。骨組の左右端には梁がないので、係数に飛びが生じるの
で注意。上下の柱の剛比は、上階及び下階の未知番号部分に入る。
層方程式の対角項は、その層に存在する柱剛比の総和の 2/3 倍の値と
なる。非対角項では、各柱部材が所属する層で、上下の未知番号(節点
番号)の位置に挿入される。この配置も順序良く配置される。また、剛
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第7章
7- 4
機械的作表法による釣合式
性行列が対称であることから、節点方程式から係数を決めても良い。剛
性行列の特徴を再度まとめて、次の表で示す。
表 7-2 たわみ角法による剛性行列の特徴
2階節点
3階節点
R階節点
各層
第 1 層柱
節点に繋がる部材剛比総和の2倍
上柱
節
点
方
程
式
第 2 層柱
右梁
左梁
第 3 層柱
下柱
層
方
程
式
第 1 層柱
第 2 層柱
当該層柱剛比の総和の 2/3
第 3 層柱
機械的作表法でも、固定境界以外も有効剛比を使用することができる。
支持点がピンの場合は、第 1 層の柱の剛比を有効剛比に替えて、また、
対称条件や逆対称条件も同様に有効剛比を使用すれば良い。
7.3 荷重項
節点方程式における荷重項は、柱・梁に部材荷重がある場合に生じる。
部材の基本応力を計算し、固定端モーメントを連結した節点で和をとる
ことによって荷重項が得られる。その際、部材両端で固定端モーメント
の正負が異なるので注意しなければならない。
なるので、ここでは、次のように分類して説明する。
P3
7
1)水平方向荷重が各床の節点に加わる場合
2)柱に部材荷重が加わり、水平荷重となる場合
図 7-3 のように、水平荷重が各床レベルの節点に
加わる場合は、比較的容易に層方程式の荷重項を作
成することができる。各層方程式の荷重項は、その
kc7
kb 5
kb 3
kc4
P2
4
P1
1
12
11
10
層方程式における荷重項は、荷重の加わり方で異
k c1
k b1
8
5
2
kc8
kb 6
9
kb 4
kc5
kc 2
6
kb 2
3
kc9
kc6 h
2
kc3 h
1
層より上の水平荷重の和をとり、当該層の高さをか
ける事で得られる。
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図 7-3 水平荷重を受ける骨組
骨組編Ⅰ
h3
SPACE
第7章
7- 5
機械的作表法による釣合式
図 7-3 の水平荷重を受ける骨組の層方程式の荷重項は以下のように
得られる。
表 7-3 荷重項1
層
層
方
程
式
7
Pw 2
荷重項
1
-(P1 +P2 +P3)h1/3
2
-(P2 +P3) h2/3
3
-(P3) h3/3
kb 5
kc7
kc 4
4
Pw1
1
12
11
10
Pw 3
k c1
8
kb 3
5
k b1
2
kc8
kb 6
9
kb 4
kc5
kc 2
6
kb 2
3
kc9
kc6 h
2
kc3 h
1
図 7-4 水平荷重を受ける骨組
次に、図 7-4 のように、柱に部材荷重が加わ
っている場合について考えよう。ここでは、骨
Pw 3 h3 / 2
h3
組の左側より、等分布荷重が加わっているもの
としている。まず、柱の基本応力 C , M 0 , Q を計算
Pw 2 h2 / 2
Pw 3 h3 / 2
h2
し、せん断力に釣合っている固定端外力を梁の
両端の節点に割り振る。図 7-4 では、等分布荷
Pw1 h1 / 2
Pw 2 h2 / 2
h1
重であるため、図 7-5 のように節点水平外力と
Pw1 h1 / 2
等価となる。
後は、前の節点荷重と同様に、層方程式の荷重
図 7-5 分布水平荷重を等価な節点荷重に変換
項は、当該層より上の荷重の総和にその層の高
さをかけて求めることになる。図 7-4 の骨組と荷
重では、以下のような層方程式の荷重項となる。
表 7-4(b) 節点方程式の荷重項
上記のように、柱に部材荷重がある場合、節点
節点
番号
方程式の荷重項にも柱の固定端モーメントが加
わることに注意されたい。例えば、図 7-4 の例で
は、表 7-4(b)の荷重項となる。
表 7-4(a) 荷重項 2
層
方
程
式
節
点
方
程
式
荷重項
4
−
5
6
0
0
7
−
8
9
0
0
層
荷重項
1
−( Pw3 h3 + Pw 2 h2 + Pw1h1 / 2)h1 / 3
2
−( Pw3 h3 + Pw 2 h2 / 2)h2 / 3
10
−
3
−( Pw3 h3 / 2)h3 / 3
11
12
0
0
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h3
Pw1h1 Pw 2 h2
+
12
12
Pw 2 h2 Pw3 h3
+
12
12
Pw3 h3
12
SPACE
第7章
7- 6
機械的作表法による釣合式
7.4 例題
例題を用いて、機械的作表を理解しよう。例題の骨組は、図 7-6 に示
す 2 層 2 スパンの骨組で、境界条件は固定支持である。節点番号の振り
方、及び、部材の剛比は図に示されている。荷重や剛比は、現実の骨組
とは異なり、計算し易いように設定されている。
50 kN
8
7
9
1
1
200 kN
4
50 kN
1
250 kN
50 kN 1
5
2
2
1
50 kN
2
4m
3m
2
4m
6
2
2
2
1
3
6m
図 7-6 例題の骨組と荷重
最初に、鉛直荷重による基本応力を求める。基本応力は、部材長さが
異なる 2 種の梁について、以下のように計算される。
部材長さ:4m
PL 50 ⋅ 4
=
= 25kNm
8
8
PL
M0 =
= 50kNm
4
P
Q = = 25kN
2
C4 =
⎫
⎪
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.8)
⎪
⎪⎭
部材長さ:6m
PL 50 ⋅ 6
=
= 37.5kNm
8
8
PL
M0 =
= 75kNm
4
P
Q = = 25kN
2
C6 =
⎫
⎪
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.9)
⎪
⎪⎭
図 7-6 に示す骨組の未知数は、節点 1,2,3 は固定支持であるため、回
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第7章
7- 7
機械的作表法による釣合式
転角が 6 自由度であり、また、層の部材角が 2 自由度で、計 8 自由度で
ある。また、荷重項には、鉛直方向の部材荷重と節点水平荷重があるた
め、節点方程式にも層方程式にも値が入ることになる。以下に、表 7-2
を参照して、全体釣合式を構築する。
表 7-5 例題の骨組の全体釣合式
節
点
方
程
式
ϕ4
ϕ5
4
10
2
5
2
14
2
2
10
6
7
ϕ6
1
9
層
方
程
式
1
層
2
層
ϕ8
ϕ9
ψ1
ψ2
荷重項
2
1
25
2
1
12.5
2
1
-37.5
1
25
1
1
8
ϕ7
1
1
4
1
1
6
1
1
12.5
1
4
1
-37.5
1
2
2
2
1
1
1
4
1
1
-600
1
2
-200
後は、上の 8 元の連立方程式を解いて、骨組節点の回転角と柱の部材
角を求める。この変位をたわみ角法の基本式に代入し、部材両端の材端
力を求める。後の操作は、前章で学習した方法と同じである。
7.5 課題
本章では、SPACE を用いて、前節の例題について数値解析を実施し、
たわみ角法で求めた結果と比較する。再度、
7
前節の例題を以下に示す。ただし、鋼材は
SS400 を 使 用 し 、 部 材 断 面 は 全 て
H-400x200x8x13 を使用するものとする。ま
た、スパンは 4m と 6m とし、階高は 4m、3m
とする。使用する部材の断面二次モーメン
4
タベースより求めた値である。
骨組全体の釣合式は、表 7-5 に求められ
1
250 kN
9
1
50 kN 1
5
2
2
1
50 kN
1
200 kN
ト は 23500 cm4 で あ り 、 ヤ ン グ 係 数 は
20500kN/cm2 とする。ただし、SPACE のデー
50 kN
8
50 kN
4m
3m
2
4m
6
2
2
2
1
2
3
6m
図 7-7 例題の骨組と荷重
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第7章
7- 8
機械的作表法による釣合式
ている。ここでは、添付ファイルの Excel VBA による連立方程式を解く
プログラムを用いる。その結果が、図 7-8 に示されており、得られた結
果が次式に示される。
図 7-8 Excel の VBA による連立方程式の解法
⎧ϕ4 ⎫ ⎧ 58.05 ⎫
⎪ϕ ⎪ ⎪
⎪
⎪ 5 ⎪ ⎪ 30.28 ⎪
⎪ϕ6 ⎪ ⎪ 53.24 ⎪
⎪ ⎪ ⎪
⎪
⎪ϕ7 ⎪ ⎪ 39.86 ⎪
⎨ ⎬=⎨
⎬
⎪ϕ8 ⎪ ⎪ 21.88 ⎪
⎪ϕ9 ⎪ ⎪ 25.44 ⎪
⎪ ⎪ ⎪
⎪
⎪ψ 1 ⎪ ⎪−220.79 ⎪
⎪ψ ⎪ ⎪ −214.38⎪
⎭
⎩ 2⎭ ⎩
⎫
⎪
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.10)
⎪
⎪⎭
上の変位を各部材のたわみ角法の基本式に代入し、部材の材端モーメ
ントを求める。まず、柱の材端モーメントは、
M 14 = 2(ϕ 4 + ψ 1 ) = 2(58.05 − 220.79) = −325.48kNm
M 41 = 2(2ϕ4 + ψ 1 ) = 2(2 ⋅ 58.05 − 220.79) = −209.38kNm
M 25 = 2(ϕ5 + ψ 1 ) = 2(30.28 − 220.79) = −381.02kNm
M 52 = 2(2ϕ5 + ψ 1 ) = 2(2 ⋅ 30.28 − 220.79) = −320.46kNm
M 36 = 2(ϕ6 + ψ 1 ) = 2(53.24 − 220.79) = −335.10kNm
⎫
⎪
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.11a )
⎪
⎪⎭
M 63 = 2(2ϕ6 + ψ 1 ) = 2(2 ⋅ 53.24 − 220.79) = −228.62kNm
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第7章
7- 9
機械的作表法による釣合式
M 47 = 1(2ϕ 4 + ϕ7 + ψ 2 ) = 2 ⋅ 58.05 + 39.86 − 214.38 = −58.42kNm
M 74 = 1(2ϕ7 + ϕ 4 + ψ 2 ) = 2 ⋅ 39.86 + 58.05 − 214.38 = −76.61kNm
M 58 = 1(2ϕ5 + ϕ8 + ψ 2 ) = 2 ⋅ 30.28 + 21.88 − 214.38 = −131.94kNm
M 85 = 1(2ϕ8 + ϕ5 + ψ 2 ) = 2 ⋅ 21.88 + 30.28 − 214.38 = −140.34kNm
M 69 = 1(2ϕ6 + ϕ9 + ψ 2 ) = 2 ⋅ 53.24 + 25.44 − 214.38 = −82.46kNm
⎫
⎪
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.11b)
⎪
⎪⎭
M 96 = 1(2ϕ9 + ϕ6 + ψ 2 ) = 2 ⋅ 25.44 + 53.24 − 214.38 = −110.26kNm
次に、梁の材端モーメントは次式で与えられる。
M 45 = 2(2ϕ4 + ϕ5 ) − C4 = 2(2 ⋅ 58.05 + 30.28) − 25 = 267.76kNm
M 54 = 2(2ϕ5 + ϕ4 ) + C4 = 2(2 ⋅ 30.28 + 58.05) + 25 = 262.22kNm
M 56 = 2(2ϕ5 + ϕ6 ) − C6 = 2(2 ⋅ 30.28 + 53.24) − 37.5 = 190.10kNm
M 65 = 2(2ϕ6 + ϕ5 ) + C6 = 2(2 ⋅ 53.24 + 30.28) + 37.5 = 311.02kNm
M 78 = 1(2ϕ7 + ϕ8 ) − C4 = 2 ⋅ 39.86 + 21.88 − 25 = 76.6kNm
M 87 = 1(2ϕ8 + ϕ7 ) + C4 = 2 ⋅ 21.88 + 39.86 + 25 = 108.62kNm
M 89 = 1(2ϕ8 + ϕ9 ) − C6 = 2 ⋅ 21.88 + 25.44 − 37.5 = 31.7 kNm
M 98 = 1(2ϕ9 + ϕ8 ) + C6 = 2 ⋅ 25.44 + 21.88 + 37.5 = 110.26kNm
⎫
⎪
⎪
⎪⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.12)
⎪
⎪
⎪
⎪⎭
上式と、式(7.8)と(7.9)を用いると、梁中央の曲げモーメントは、次
式で与えられる。
M c 45 = M 0 − 0.5( M 54 − M 45 ) = 50 − 0.5(262.22 − 267.76) = 52.77 kNm ⎫
⎪
M c 56 = M 0 − 0.5( M 65 − M 56 ) = 75 − 0.5(311.02 − 190.10) = 14.54kNm ⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.13)
M c 78 = M 0 − 0.5( M 78 − M 87 ) = 50 − 0.5(108.62 − 76.6) = 33.99kNm
⎪
⎪⎭
M c89 = M 0 − 0.5( M 89 − M 98 ) = 75 − 0.5(110.26 − 31.7) = 35.72kNm
上の材端モーメントを用いて、部材のせん断力を求める。まず、柱は、
式(7.11)より、次式となる。
Q14 = −( M 14 + M 41 ) / h1 = (325.48 + 209.38) / 4 = 133.7 kN
Q25 = −( M 25 + M 52 ) / h1 = (381.02 + 320.46) / 4 = 175.4kN
Q36 = −( M 36 + M 63 ) / h1 = (335.10 + 228.62) / 4 = 140.9kN
Q47 = −( M 47 + M 74 ) / h2 = (58.42 + 76.61) / 3 = 45.0kN
Q58 = −( M 58 + M 85 ) / h2 = (131.94 + 140.34) / 3 = 90.8kN
⎫
⎪
⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.14)
⎪
⎪⎭
Q69 = −( M 69 + M 96 ) / h2 = (82.46 + 110.26) / 3 = 64.2kN
上式で、各層の層せん断力を計算すると、第 1 層では 450kN、第 2 層
では 200kN となり、外力と釣合っていることが分かる。
次に、梁のせん断力を求める。梁は、全て梁中央に集中荷重が加わっ
ているため、せん断力は、梁を 2 つに分けて、式(7.12)と(7.13)を用い
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第7章
7- 10
機械的作表法による釣合式
て計算する。
Q4 c = −2( M 45 − M c 45 ) / l1 = −(267.76 − 52.77) / 2 = −107.5kN
⎫
⎪
⎪
⎪⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.15)
⎪
⎪
⎪
⎪⎭
Qc 5 = −2( M c 45 + M 54 ) / l1 = −(52.77 + 262.22) / 2 = −157.5kN
Q5c = −2( M 56 − M c 56 ) / l2 = −(190.10 − 14.54) / 3 = −58.5kN
Qc 6 = −2( M c 56 + M 65 ) / l2 = −(14.54 + 311.02) / 3 = −108.5kN
Q7 c = −2( M 78 − M c 78 ) / l1 = −(76.6 − 33.99) / 2 = −21.3kN
Qc8 = −2( M c 78 + M 87 ) / l1 = −(33.99 + 108.62) / 2 = −71.3kN
Q8c = −2( M 89 − M c89 ) / l2 = −(31.7 − 35.72) / 3 = 1.34kN
Qc 9 = −2( M c89 + M 98 ) / l2 = −(35.72 + 110.26) / 3 = −48.7 kN
次に、部材の軸力であるが、先に述べたように、たわみ角法では軸方
向の変位を無視しているため、自動的には決定できない。そこで、各節
点で、外力とせん断力、及び、軸力との力の釣合より求めることになり、
左上の節点より順次計算すればよい。これは、読者の演習とする。
以上の計算で求めた曲げモーメント、せん断力、軸力より、骨組の曲
げモーメント図、及び、せん断力図、軸力図を以下に示す。
108.6
76.6
−71.3
110.3
140.3 31.7
−21.3
131.9
58.4
209.4
320.5
267.8
+1.34
+90.8
+45.0
311.0
82.5
228.6
190.1
−157.5
−107.5
381.0
+64.2
−108.5
−58.5
+133.7
325.5
−48.7
+140.9
+175.4
355.1
図 7-9(a) 曲げモーメント図
図 7-9(b) せん断力図
−155.0
−64.2
−72.6
+21.3
−161.3
+128.8
−48.7
−76.7
−171.6
−157.2
図 7-9(c) 軸力図
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第7章
7- 11
機械的作表法による釣合式
各層の床位置における水平変位は、部材角を用いて次式で求められる。
K0 =
2 EI 2 ⋅ 20500 ⋅ 23500
=
= 3.212 ⋅ 106
h2
300
δ1 = R1 h1 =
−ψ 1 h1 220.79 ⋅ 100 ⋅ 4 ⋅ 100 8.832 ⋅ 106
=
=
= 0.917cm
−3 K 0
3 ⋅ 3.212 ⋅ 106
9.636 ⋅ 106
δ 2 = δ1 + R2 h2 = 1.22 +
= 0.917 +
−ψ 2 h2
−3K 0
214.38 ⋅ 100 ⋅ 3 ⋅ 100
6.431 ⋅ 106
=
0.917
+
= 1.584cm
3 ⋅ 3.212 ⋅ 106
9.636 ⋅ 106
⎫
⎪
⎪⎪
⎬ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ ⋅(7.16)
⎪
⎪
⎪⎭
次に、SPACE を用いて数値計算を実施する。まず、SPACE
を起動する。この SPACE の「ファイル」→「新規作成」メ
ニューを用いて、「たわみ角法演習解析モデル」-「第7章」
フォルダ内の「課題 1」フォルダ中にコントロールファイ
ルを作成する。コントロールファイルの名前を「2 層 2 ス
パン骨組.ctl」としよう。その後、各種のコントロール情
報を設定した後、モデラーを起動する。モデラーによる骨
組の設定は、前章とほぼ同じであり、異なる部分のみ説明
することになる。
最初は、初期設定ウイザードが自動的にダイアログを表
示させるので、これに従ってデータを入力すれば良い。ま
ず、図タイトルを入力し、次に平面フレームを選択し、構
図 7-10 構造物の規模
造物の規模として、図 7-10 のように「スパン数」を 2 に、階
数は 2 にセットする。次に、図 7-11 に示すように、スパン長
を 400cm と 600cm に、各層の階高を 400cm と 300cm にセット
する。
図 7-11 スパンと階高の設定
さらに、使用する部材断面を作成登録する。部材モデルで
は、鉄骨を選択し、材料は SS400 を、また、部材モデルは弾
図 7-12 部材断面の設定
性とする。
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第7章
機械的作表法による釣合式
7- 12
断面は、H-400x200x8x13 とし、DB 値を採用する。図 7-12 に示すよう
に、梁用の断面を G1 として設定する。また、柱用は、同じ断面で設定
し、記号を C1 とする。この骨組では、各層の梁・柱の剛比が異なるた
め、図 7-13 に示すように、柱は 2 種、梁は 4 種設定する。要素データ
の設定が終了後、OK ボタンを押して、CAD 画面に戻る。
図 7-13 課題に合
わせて要素を登録
する
図 7-15 のように CAD 画面を使用して骨組を構築し、次に境界と荷重
を割り付ける。梁と柱を割り付ける際、第 1 層では、C1 と G1、G2 を、
第 2 層では、C2 と G3、G4 を用いる。また、柱の回転角は規定値として
-90 度となっているが、平面問題では 0 度として使用する。
さらに、前章と同様に、
「要素登録」機能を利用して、図 7-14 のよう
に要素データを変更する。ここでは、たわみ角法の解析結果と比較する
ために、断面積を 1000 倍に、また、梁・柱の断面二次モーメントを課
題の剛比に合わせるために、次の表のように変更する。
1 層柱 C1:k=2、h1/h2=1.333((断面二次モーメントを 2.667 倍する)
2 層柱 C2:k=1
2 階梁左 G1: k=2、l1/h2=1.333(断面二次モーメントを 2.667 倍する)
2 階梁左 G2: k=2、l2/h2=2(断面二次モーメントを 4 倍する)
R 階梁 G3: k=1、l1/h2=1.333(断面二次モーメントを 1.333 倍する)
R 階梁 G4:k=1、l2/h2=2(断面二次モーメントを 2 倍する)
図 7-14 解析モデ
ルに合わせるため
に、断面特性を変
更する
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第7章
機械的作表法による釣合式
7- 13
図 7-7 を参照して、解析モデルを図 7-15 のように構築する。ここで、
荷重を鉛直方向荷重(長期化荷重)と水平方向荷重(短期荷重)に分け、
前者を静的荷重 1 に、また、後者を静的荷重 2 とする。解析を行う前に、
節点情報を選択して、図 7-16 のように荷重の状態を確認しよう。
図 7-15 CAD 画面で解析モデルを設定する
図 7-16 節点情報から荷重の状態を確認する
解析モデルを全て設定した後、メニューの「ファイル」→「ファイル
への出力」を選択し、図 7-17 に示すダイアログで、「構造ファイル」と
「静的荷重ファイル_1」、「静的荷重ファイル_2」、情報ファイルを指定
し、OK ボタンを押して出力する。
解析パラメータを設定する前に、図 7-18 に示す形状データのファイ
ルチェックダイアログを表示させ、静的荷重に用いる荷重として、荷重
ファイル No.1 と No.2 に図のようにチェックマークを挿入する。
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第7章
7- 14
機械的作表法による釣合式
次に、解析パラメータを設定す
る前に、形状データのファイルチ
ェックダイアログで、図 7-17 のよ
うに 2 つの荷重ファイルにチェッ
クマークを入れる。この操作によ
って、今回の静的解析では、2 つ
の荷重が加えられることになる。
図 7-17 解析モデルの情報を
ファイルへ出力
図 7-18 形状デー
解析用パラメータとして、図
タファイルダイ
7-19 と 7-20 を示すように各種の情
アログで、2 つの
報を設定する。特に、図 7-19 の荷
荷重ファイルを
重増分用の段階数を 2 とし、それ
チェックする
に合わせて、荷重増分段階の1、2
図 7-19 静的解析解析用コントロールデータ
図 7-20 静的解析の出力・解析制御に関する
コントロールデータ
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第7章
機械的作表法による釣合式
7- 15
のそれぞれで 20 ステップづつセットし、また、荷重係数の欄には、ス
テップ1では、S1 の欄に 0.05、ステップ 2 では、S2 の欄に 0.05 とす
る。この設定によって、最初、鉛直方向荷重が加わり、その後、水平荷
重が加わることになる。
解析パラメータを設定した後、静的ソルバーを起動し、線形解析を実
施する。解析が正常終了した後、解析結果を出力表示で確認する。SPACE
のメニューより、「表示」→「静的解析の途中経過の表示」を選択し、
解析経過と結果を表示させる。ファイルの最後に出力されている 40 回
目の解析結果を図 7-21 に示す。たわみ角法で求めた図 7-9 の結果と、
下図の断面力は良い一致を示している。
図 7-21 課題の静的解析結果である部材断面力
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第7章
7- 16
機械的作表法による釣合式
次に静的プレゼンターを起動し、図 7-22 に示すようにせん断力図と
曲げモーメント図を表示させる。下右図とたわみ角法で求めた図 7-9 の
曲げモーメント分布とせん断力分布は一致している。同図の左は解析
20 回目の断面力分布を示し、鉛直方向荷重が加わった際の応答である。
また右は鉛直荷重に水平荷重が加わった場合の断面力分布を示してい
る。
図 7-22 課題のせん断力分布と曲げモーメント分布
さらに、図 7-22 の柱頭位置で、Ctrl キィとマウス右ボタンを同時に
クリックすることで、図 7-23 のダイアログを表示させ、その節点の解
析結果の情報を観察する。このダイアログから分かるように、各層の水
平変位は、式(7.14)に示される節点変位と同じ値となっている。
図 7-23 各層柱頭の水平方向変位
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第7章
7- 17
機械的作表法による釣合式
7.6 まとめ
本章では、多層・多スパンの整形骨組に対し、機械的にたわみ角法の
釣合式を作成する手法を学んだ。この方法によれば、比較的大きな骨組
でも、容易に釣合式が得られる。さらに、SPACE を用いて例題を数値計
算し、たわみ角法で計算した結果と比較して、互いにその結果を検証し
た。
7.7 問題
問題 7-1 次の骨組の応力解析をたわみ角法で実行し、曲げモーメント
図、せん断力図及び軸力図を描き、さらに、反力を求めて、
外力と反力との力の釣合を確認せよ。なお、鋼材は SS400 を
使用し、部材断面として、梁は全て H-400x200x8x13 を、柱は
□125x25x12 を使用するものとする。また、SPACE を用いて、
同上の解析を実施し、互いの結果を比較することで、たわみ
角法の結果を検証しなさい。(断面二次モーメントやヤング
係数は、SPACE のデータベースの値を用いなさい。また、設
定した断面より、剛比を計算して、たわみ角法を適用しなさ
い。)
100kN
100kN
4m
140kN
4m
50kN
4m
140kN
4m
50kN
160kN
160kN
4m
6m
4m
4m
50kN
6m
問 7-1
4m
問 7-2
注意:問 7-2 では、柱の中央に集中荷重として、50kN の部材荷重が
加わっている。
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