ヒト遺伝子資源の管理に関する経過措置 中華人民共和国国務院の承認のもとに、国務院弁公庁(事務局)が1998年6月10日 に施行 科学技術部および衛生部 中華人民共和国 第1章 総則 第1条 ヒト遺伝子資源の管理に関する経過措置(以後「経過措置」と呼ぶ)は、ヒト遺伝 子研究と関連技術開発を強化し、公正性と相互利益を基本とする国際協力を促進 するために中華人民共和国のヒト遺伝子資源の効果的な保護および理性的な利用 を目的として制定される。 第2条 経過措置における「ヒト遺伝子資源」という用語は、ヒトゲノム、遺伝子、遺伝 子産物を含むヒトの器官、組織、細胞、血液検体、遺伝子組み換え体などの遺伝 物質、およびこのような遺伝物質に関連する情報のことをいう。 第3条 ヒト遺伝子資源の採取、収集、研究、開発、取引、輸出にかかわる者、またはヒ ト遺伝子資源を中華人民共和国の国外に持ち出そうとする者はすべて本経過措置 を順守しなければならない。 第4条 国家は、指定地域における重要な家系や遺伝子資源の申告および登録制度を採用 する。指定地域における重要な家系や遺伝子資源を発見または所有する機関もし くは個人は、関連部門に速やかに申告しなければならない。いかなる機関や個人 も、許可なく、ヒト遺伝子資源の採取、収集、研究、開発、取引、輸出、ヒト遺 伝子資源の中華人民共和国外への持ち出し、または他国への提供をしてはならな い。 第5条 ヒト遺伝子資源とその関連情報や関連データが国家科学技術の秘匿事項に分類さ れる場合には、国家科学技術秘密保護法が順守されなければならない。 第2章 管理 第6条 国家は、ヒト遺伝子資源を異なるレベルで規制する統一的な審査・承認制度を採 用する。 1 第7条 国務院の科学技術管理部および衛生管理部は、中国国家レベルでのヒト遺伝子資 源の管理を共同で担当し、日常業務の遂行のために中国ヒト遺伝子資源管理部 ((Human Genetic Resources Administration of China:HGRAC)を共同で設立する。 第8条 HGRAC は、当初、国務院の科学技術管理部の下に置かれる。国務院の科学技術管理 部および衛生管理部指導の下に HGRAC は、次の責務を負う。 1)関連規則と必要書類の作成、承認後の規則の施行、調整と監視による経過措置の実 施の確認 2)指定地域における重要な家系や遺伝子資源の登録管理 3)中国ヒト遺伝子資源を利用する国際協力計画の審査・評価 4)ヒト遺伝子資源の輸出申請の審査と承認、承認後のヒト遺伝子資源輸出許可証((以 後「許可証」とする)の発行 5)中国ヒト遺伝子資源管理に関するその他の責務 第9条 HGRAC は、研究計画の策定への関与、国際協力計画の審査と評価の補佐、関連技術 評価、専門家による相談のために、専門委員会を設置する。 第10条 各省、自治区または中央政府の直轄自治体の科学技術管理部および衛生管理部 (以後、 「地域管理部」とする)は、管轄地域のヒト遺伝子資源の管理を担当する。 国務院の関係各部は、担当する管理領域内でのヒト遺伝子資源の管理を担当する。 第3章 第11条 申請、審査および承認 中国ヒト遺伝子資源が国際協力計画に利用される場合には、中国の協力団体は、 正式な手続きによる承認申請をしなければならない。中央政府直轄機関は、国 務院の関係管理部に申請し、地方の機関および行政各部による監督がない機関 は、地域管理部に申請する。関係各部の承認を受理した後、正式な契約を結ぶ 前に中国の協力団体は HGRAC に評価・承認を申請しなければならない。 国際協力計画の審査に当たって国務院の関係各部および地域管理部は、ヒト遺伝子資源 が採取される地域の関係地域管理部と相談しなければならない。 経過措置の施行前に開始され、終了していない国際協力計画は、経過措置にある申請と 同様の評価・承認のための事後承認申請をしなければならない。 第12条 中国ヒト遺伝子資源を利用する国際協力計画は、申請・承認の正式な手続きの 2 ために、申請書と次の書類を提出しなければならない。 1)ヒト遺伝子資源の提供者またはその法的代理人のインフォームド・コンセント同意 書 2)契約案 3)その他に審査・承認を行う管理部に要求された書類 第13条 第12条による申請で、次の各情況にあるものは承認されない。 1)明確な目標や目的の欠如 2)外国協力団体の適切な研究能力の欠如、研究や開発における優位性の欠如 3)中国協力団体の共同研究に要求される基盤や条件の欠如 4)所有権や知的所有権の配分の不公平、または不明瞭 5)協力計画が適正範囲や時間制限を逸脱 6)ヒト遺伝子資源の提供者またはその法的代理人のインフォームド・コンセントの欠 如 7)関連国家法および規制の違反 第14条 中華人民共和国の国外へのヒト遺伝子資源の輸出および外国の機関や個人への ヒト遺伝子資源の提供は、厳重な管理下に置かれなければならない。 国際協力計画が既に審査・承認されている場合には、中華人民共和国国外のヒト遺伝子 資源について報告する計画を整え、申請書が作成され、HGRAC の輸出許可証が発行されなけ ればならない。 特別の事情により一時的に他国にヒト遺伝子資源を提供する必要がある場合には、申請 書を作成して HGRAC に提出し、地域管理部または国務院の関係各部の審査と承認を経て、 HGRAC の承認を得なければならない。その後、輸出許可証が HGRAC より発行されなければな らない。 第15条 HGRAC は、国際協力計画およびヒト遺伝子資源の中華人民共和国国外への輸出の 申請を四半期ごとに処理する。経過措置に規定されている要件をすべて満たせ ば、申請は承認され、輸出許可証が発行され、商品の名称および分類について の統一システムの規定による符号が付けられる。経過措置に規定されている要 件を満たさない申請は、承認されない。必要な書類を欠く申請も、修正のため に返却され、修正後の再申請が認められる。 第16条 手荷物、郵送あるいは輸送により輸出されるすべてのヒト遺伝子資源は、正直 3 に中国税関に申告しなければならない。中国税関は、HGRAC の輸出許可証が添付 されていれば通関を認める。 第4章 第17条 知的所有権 中国の研究開発機関は、中国内のヒト遺伝子資源についての情報、特に指定地 域における重要な家系や遺伝子資源の情報および関連データ、情報と検体を利 用する優先権を持つ。許可なくヒト遺伝子資源を多施設に移すことは禁止する。 外国の機関や個人は許可なく、上記の情報を公表、出版、特許権の申請、また はその他の方法による公開をしてはならない。 第18条 ヒト遺伝子資源を利用する国際協力計画は、相互利益、信用と誠実、共同参加、 成果の共有の諸原則に従わなければならない。各団体の権利と義務は、各々の 知的所有権を完全にかつ有効に保護するために詳説されなければならない。 第19条 中国と外国の機関による中国ヒト遺伝子資源の共同研究および共同開発におい て、知的所有権は次の原則によって取り決められなければならない。 1)協力の成果が特許化可能な場合には、両方の団体が共同で特許申請を行い、特許権 は共同で保持されなければならない。どちらの団体にも、契約により特許を単独ま たは共同で実施する権利を有する。しかし、特許権の第三者への委譲や、第三者に 特許実施の許可を与える場合には、双方の合意の下に行われなければならない。こ れによって得られた利益は、各々の貢献の度合いに応じて、分配されなければなら ない。 2)協力による科学的成果の利用、移譲、共有の権利は、両団体によって署名された協 力契約または協定に明記されなければならない。両団体は、契約または協定に明記 されていない成果の利用には、同等の権利を持つものとする。しかし、第三者への 成果の委譲は、双方の合意の下に行われなければならない。これによって得られた 利益は、各々の貢献の度合いに応じて、分配されなければならない。 第5章 第20条 賞罰 重要なヒト遺伝子資源を発見し、報告した機関または個人は皆、称賛され、褒 賞を与えられなければならない。違法行為を摘発した者は、褒賞を与えられ、 保護されなければならない。 第21条 経過措置の規定に違反して、中国内の機関あるいは個人が許可なく、手荷物、 郵送あるいは輸送によりヒト遺伝子資源を輸出した場合に、ヒト遺伝子資源は 関税で没収され、その機関または個人は、状況の軽重に応じ、行政処分から起 4 訴までの範囲で、法務部から罰せられなければならない。経過措置の規定に違 反して、許可なく外国の機関にヒト遺伝子資源を提供した者は皆、ヒト遺伝子 資源は没収され、その機関または個人は、罰金を科せられなければならない。 深刻な状況の場合は、中国国家法により法的責任が追及されなければならない。 経過措置の規定に違反して、許可なく、手荷物、郵送あるいは輸送によりヒト 遺伝子資源を輸出する者は、ヒト遺伝子資源は関税で没収され、状況の深刻度 に応じ、法務部から罰せられるか、または法的責任を問われなければならない。 第22条 経過措置の規定に違反して、中国外の機関あるいは個人が許可なく、中国人か ら検体の採取、中国ヒト遺伝子資源の収集、輸出をした場合には、所有するヒ ト遺伝子資源は、没収され、その機関または個人は、罰金を科せられなければ ならない。深刻な状況の場合は、中国国家法により法的責任が追及されなけれ ばならない。経過措置の規定に違反して、許可なく、手荷物、郵送あるいは輸 送によりヒト遺伝子資源を輸出する者は、ヒト遺伝子資源は関税で没収され、 罰せられるか、または法務部による起訴処分を受けなければならない。 第23条 管理部の職員と申請の審査にかかわる専門家は、申請内の技術秘密の守秘義務 を負う。職務怠慢や私利私欲による違法行為で技術秘密の漏えいやヒト遺伝子 資源の紛失を引き起こした者は、行政処分から法的責任の追及までの範囲での 罰を負わなければならない。 第6章 第24条 附則 軍隊は、経過措置の規定に沿った特別の実施規定を自ら策定し、HGRAC に登録し てもよい。武装警察は、経過措置を順守しなければならない。 第25条 国務院の科学技術管理部および衛生管理部は、経過措置の説明義務を負わなけ ればならない。 第26条 本法は、その公布日より施行する。 注:これは中国科学技術部、衛生部による英訳版を東海大学医学部生命倫理学でさらに和 訳したものです。 5
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