えーつ、こんなのもDVなの!? 「彼が帰ってくるまでに家に戻っておかなくちゃ」 「友だちとのみに行ってもいいかなぁ」 これを言ったら彼の機嫌が悪くなるかもしれない・・・。いつも彼女だけが相手の機嫌 を気にしているのなら、ふたりは対等な関係ではないでしょう。それは彼女が彼の「力 と支配」のもとにあるということです。対等な関係からはDVは起こりません。対等で ないと関係はDVにつながります。 夫や恋人と一緒にいて安心できない、彼のことを恐いと思えばすべてDVです。 なぜ、やり返さないの? 夫や恋人がひどいことをしても、逆らえないと思っている女性がかなりいます。DV を受けたこと自体がショックで、気持ちのうえで対抗できないこともあります。つまり 既に彼と彼女の関係に支配関係があると、とても恐くてやり返すなんてできません。 たとえ彼女がやり返しても、解決にはならないのです。 別れればいいじゃない!なぜ別れないの? 一度は愛した彼の長所をよく知っています。彼は常に暴力をふるうわけではなく、優 しい時もあります。暴力をあやまり、変わると約束してくれる時もあり、期待してしま います。また、「私が悪かったかもしれない」「私が変われば彼も変わるかも」と考える こともあります。 そのうえ、子どもには父親が必要だとか世間体を考えて、「私さえ我慢すれば」と思 います。経済的不安もあります。既に暴力という恐怖に支配されているので、逃げたら もっとひどい目に遭うかもしれないと思って逃げることができない場合もあります。 2 2. 配偶者からの暴力の実態 <配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害です。> ■ 暴力の形態 暴力には男性が女性を身体的にも心理的にも支配し、自分の思うようにしようとする行 為すべてを含みます。一口に「暴力」と言っても様々な形態が存在します。これらの様々な形態の 暴力は単独で起きることもありますが、多くは何種類かの暴力が重なって起こっています。また、あ る行為が、複数の形態に該当する場合もあります。 身体的暴力・・・・殴る、ける、引きずりまわす、突き飛ばす、首を絞める等 心理的暴力・・・・無視する、大切にしているものを壊す、大声でどなる、おどす、ののしる等 社会的暴力・・・・交友関係や電話、手紙などを細かく監視する、実家とのつきあいを制限する、 外出させない等 経済的暴力・・・・生活費を渡さない、「誰のおかげで、食べられるんだ」という、お金を取り上げ たり、貯金を勝手におろす、仕事を辞めさせる等 性 的 暴 力・・・・無理やりポルノなどを見せる、避妊に協力しない、性的な行為を強要する、暴 力的なセックスをする等 3. 暴力が与える影響 <暴力は被害者だけでなく、子どもにも影響を与えます。> ■ 被害者に与える影響 被害者は暴力により、ケガなどの身体的な影響を受けるにとどまらず、PTSD(post-traumatic stress disorder:外傷後ストレス障害)に陥るなど、精神的な影響を受けることもあります。 【PTSD とは】 地震や台風といった自然災害、航空機事故や鉄道事故といった人為災害、強姦、強盗、誘拐監禁などの犯罪被害 等の後に生じる特徴的な精神障害ですが、配偶者からの繰り返される暴力被害の後にも発症することがあります。 PTSD の症状としては、自分が意図しないのにある出来事が繰り返し思い出され、そのときに感じた苦痛などの気持 ちがよみがえったり、体験を思い出すような状況や場面を、意識的または無意識的に避け続けたり、あらゆる物音や 刺激に対して過敏に反応し、不眠やイライラが続いたりするこのなどがあります。 ■ 子どもに与える影響 暴力を目撃したことによって、子どもに様々な心身の症状が表れることもあります。また、暴力を 目撃しながら育った子どもは、自分が育った家庭での人間関係のパターンから、感情表現や問題 解決の手段として暴力を用いることを学習することもあります。 平成16年の児童虐待の防止等に関する法律の改正によって、児童が同居する家庭における配 偶者に対する暴力その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うことは、児童虐待に当 たることが明確化されました。 子どもが配偶者からの暴力を目撃することによる心理的虐待だけでなく、配偶者からの暴力のあ る家庭に、身体的虐待などの児童虐待が存在している場合も多数あります。 ■ 地域社会に与える影響 暴力は、被害者やその子どもに影響を与えますが、同時に、私たちが生活する社会に対しても 影響を与えます。配偶者からの暴力は、平穏な暮らしを脅かす身近な犯罪です。 3
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