[解説2]ローカル産業・企業の中国進出

26 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 27
解説 2
ローカル産業・企業の中国進出
21 世紀中国総研事務局長 中村公省
図表 2-1 清酒酒造会社の中国進出
宝酒造㈱ 京都府京都市
【資本金】10 億円【業務内容】酒類、酒精、清涼飲料、調味料、その他の食料品及び食品添加物の製造並
びに販売など
北京宝酒造醸造有限公司 北京市豊台区
【投資形態】合弁【資本金】1 億 3000 万元【設立時期】1995【業務内容】酒類、酒精、調味料
中谷酒造㈱ 奈良県大和郡山市
【資本金】1000 万円【従業員】5 人【業務内容】酒造業
天津中谷酒造有限公司 天津市東麗経済開発区
【投資形態】独資【資本金】7000 万円【設立時期】1995【業務内容】日本酒
本書『中国進出企業一覧 [非上場会社篇]
』には
六代目当主の中谷正人社長は、商社マンを経て家
CD-ROM を添付しているが、この CD-ROM を利用
業を継いだが酒造業の先行きに限界を感じ、中国で
すると、
本社企業の社名・住所・業種などで検索ができ、
醸造する構想をめぐらした。安価な中国産有機米を
さらに現地拠点の社名・住所・業務内容で検索が出
磨きに磨く。吟醸なら精米歩合 60%、大吟醸なら精
来る。そして、この本社企業と現地拠点の情報を組
米歩合 35%まで。熟練の杜氏は工程の完全な数値管
み合わせると、
中国進出企業の実態が浮かび出てくる。
理とマニュアル化で代替する。困難な水処理も水処
本章では、この CD-ROM の機能をフルに活用し、ロー
理技術の進歩により、精密濾過を安価に行う装置を
カル産業・企業の中国進出例を摘出してみたい。
導入できた。販売は日本に輸出(無関税)する一方、
1.食品製造企業の中国進出
(1)清酒
【資本金】1000 万円【従業員】35 名【業務内容】味醂の製造・販売。清酒の製造・販売。梅酒の製造・販売。
味醂のオーガニック商品の製造・販売
愛丹造酒有限公司 江蘇省丹陽市
【投資形態】独資【設立時期】1995【業務内容】本味淋、清酒、梅酒
久米仙酒造㈱
沖縄県那覇市
【資本金】3000 万円【業務内容】泡盛、純米焼酎、みりん、もろみ酢等の生産
中国全土のホテル、日本食レストランなどを行脚し、
内蒙古万楽醸造有限公司 内蒙古自治区ウランホト市
【投資形態】独資【設立時期】1994【業務内容】泡盛、焼酎、清酒
大連、上海、広州、北京と次々に販売事務所を開設
チョーヤ梅酒㈱ 大阪府羽曳野市
した。2004 年 5 月、年間醸造量 2000 石(360 キロ
リットル)を達成。中国市場で清酒シェア 25%、純
米酒だけならシェア 90%。若社長は本業の合間に
『若
清酒酒造業は中小企業経営革新支援法の「特定業
社長のマル珍中国日記』
(2001 年蒼蒼社刊)をもの
種」に指定されている。1992 年に 2260 あった蔵元
して、新聞・雑誌・テレビにもちょくちょく顔を出す
が 2002 年には 1904 に急減し、その 1904 蔵元のう
甘強酒造㈱ 愛知県海部郡蟹江町
【資本金】2800 万円【従業員】140 名【業務内容】梅酒、かりん酒等の果実リキュール、ブランデー、薬味酒、
ワイン、梅干、食品、飲料などの製造販売
蝶矢梅酒(上海)有限公司 上海市浦東星火開発区
【投資形態】独資【資本金】49 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】梅酒、清酒、ワイン
全国の総出荷額の 50% を占めている。その寡占トッ
ろが、なんと当のワダカン食品工業が 1999 年 4 月破
ち 99.6%が資本金 1 億円未満・従業員 300 人未満の
プメーカーであるキッコーマンは世界で醤油の代名
産してしまったのだ(負債 172 億円)
。黒字を出して
清酒「観月梅」ブランドを南京にほど近い丹陽で
詞になっているほどだが、中国には 2000 年になっ
いる中国の出資会社は、破産管財人によって処分さ
中小企業なのである。1 億円以上 300 人以上の大会
醸造しているのは愛知県海部郡蟹江町の甘強酒造だ
社はわずか 8 社で、上位 16 社が全生産量の 40.6%
(資本金 1000 万円、従業員数 35 名)
。同社の主力商
て漸く進出した。上海の隣の江蘇省昆山に台湾の統
れたはずだが、何処の誰の所有に帰したのか。この 5
一企業と共同で工場を稼動、製品を上海のコンビニ、
年間というもの、その行方が杳として知れなかったが、
を寡占している。
苦境にさらされた地酒蔵元の経営革新策はさまざ
(http://www.sake-asaka.co.jp)
。
品は中国産もち米を使った本味醂で、中国で蒲焼業
スーパーマケットに並べ、日本式醤油が上海人に浸透
者に卸し、残り半数は日本に持ち帰る。
し始めている。中国醤油市場は現地メーカーを介して
2005 年 9 月 14 日、ついにその一端が浮上した。
「株式会社ミツカングループ本社(本社 : 愛知県半
まだが、中国に生産拠点を築く若手経営者も出現し
久米仙酒造(沖縄県那覇市、資本金 3000 万円)の
ネスレ、ハインツ、ダノン、ユニリバなど欧米勢も進
田市、社長 : 中埜又左エ門和英)は、中国・北京地
ている。中国には酒造に適した安くて良質な米と労働
泡盛は内蒙古自治区ウランホトで造られている。ブラ
出しており、すでにグローバルな市場競争が熾烈で
区において和田寛ブランドで知られる食酢と醤油を
力があるからである。
(図表 2-1)
ンド名は「響天」
。内蒙古産の有機栽培ジャポニカ米
ある(図表 2-2)
。
中心とした食品会社 北京和田寛食品有限公司 、北
大手の宝酒造(本社=京都市)は北京の合弁会社
から醸造する。従業員 50 人弱で日本人は 1 人。出来
で「松竹梅」や本味醂、焼酎を、大関(本社=西宮市)
た泡盛の 7 割は陸路厦門を経て定期航路で那覇に運
北京のコンビニ、スーパーマケットには寛の字を
亀甲で囲った和田寛ブランドの醤油が陳列されている
限公司 3 社(04 年度合計売上高 : 約 14 億円)の持
ち株会社である和田寛(香港)投資控股有限公司を
は瀋陽において技術提携で「大関」を製造・販売し
ばれ、関税はゼロ、沖縄を経由して日本内地でも販売
が、これは青森のワダカン食品工業が 1995 年に北京
ている。しかし、中国における日本酒のトップブラン
されている。
の食品会社と合弁で設立した北京和田寛食品有限公
ドは吟醸「朝香」なのである。
「朝香」の本社は奈良
の薬師寺近くの造り酒屋・中谷酒造
(資本金 1000 万円、
従業員数5名)で、中国の拠点は天津中谷酒造有限
公司である(1995 年設立、資本金 7000 万円、独資)
。
(2)醤油
醤油製造業は全国に 1600 余、清酒よりも一段と地
場メーカーの淘汰が進んでいて、上位 5 メーカーで
京龍門和田寛食品有限公司 、北京虎王和田寛食品有
司(Beijing Wadakan Food Co.,Ltd.)の製品である。
日本の設備、日本の技術指導をうたい市場で好評を
博し、北京龍門和田寛食品、北京虎王和田寛食品の
ほか河北、西安、武漢にも系列会社が広がった。とこ
100% 買収いたしました。和田寛(香港)投資控股
有限公司は北京和田寛食品有限公司に 69.5%、北京
龍門和田寛食品有限公司に 55%、北京虎王和田寛食
品有限公司に 55% の出資をしており、当社はこの食
品会社 3 社の合弁事業に参入することになります。
」
28 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 29
図表 2-3 ノリ養殖・加工・販売商社の中国進出
図表 2-2 醤油醸造会社の中国進出
ニコニコのり㈱ 大阪府大阪市
キッコーマン㈱ 千葉県野田市
【資本金】4 億 9000 万円【従業員】198 名【業務内容】乾のり加工・販売。一般食品製造・販売
【資本金】115 億 9900 万円 昆山統万微生物科技有限公司 江蘇省昆山市
【投資形態】独資(台湾統一企業と共同出資)
【資本金】1100 万米㌦【設立時期】2000
【業務内容】醤油の製造・販売
㈱ミツカングループ本社 愛知県半田市
【従業員】約 2,570 名【業務内容】ミツカングループ全体の経営統括、戦略策定、海外事業推進、新規事業
創出に向けた研究開発。1998 年 ( 平成 10 年 )12 月「分社型カンパニー制」を導入し、
新しいミツカングルー
プを創立。その他の食料飲料卸
北京虎王和田寛食品有限公司 北京市
【投資形態】合弁 【設立時期】1993、2005M&A【業務内容】醤油の醸造・販売
北京和田寛食品有限公司 北京市
【投資形態】合弁 【設立時期】1995、2005M&A【業務内容】醤油 調味品の製造・販売
北京龍門和田寛食品有限公司 北京市
【投資形態】合弁 【設立時期】1995、2005M&A【業務内容】醤油 調味品の製造・販売
㈱高橋弥次右衛門商店〔兵庫県貿易㈱〕 栃木県今市市 【従業員】170 名【業務内容】しょう油等製造
你口四洲(汕頭)有限公司 広東省汕頭市
【投資形態】独資【資本金】2400 万 HK ㌦【設立時期】1996【業務内容】加工海苔の製造・販売
㈱ヤマコ〔小淺商事㈱〕 愛知県安城市
【資本金】2 億 4000 万円【従業員】556 名【業務内容】乾海苔専門の加工業者
連雲港高羽紫菜有限公司 江蘇省連雲港市
【投資形態】合弁【資本金】600 万米㌦【設立時期】1993【業務内容】のりの養殖・加工・販売
連雲港神仙紫菜有限公司 江蘇省連雲港市
【投資形態】合弁【資本金】180 万米㌦【設立時期】1992【業務内容】のりの養殖・加工・販売
連雲港秦山島紫菜有限公司 江蘇省連雲港市
【資本金】220 万米㌦【設立時期】1993【業務内容】のりの養殖・加工・販売
連雲港仙橋紫菜有限公司 江蘇省連雲港市
【投資形態】独資【資本金】188 万米㌦【設立時期】1993【業務内容】のりの養殖・加工・販売
連雲港雅瑪珂紫菜有限公司 江蘇省連雲港市
【投資形態】独資【資本金】500 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】海苔取引所及び海苔の冷蔵・加工・販売。
養殖機械・設備の販売
鞍山遠東醤油製造有限公司 遼寧省鞍山市
【投資形態】合弁【資本金】114 万米㌦【設立時期】1994【業務内容】醤油・タレなど製造
㈱高岡屋 東京都台東区
マルキン忠勇㈱ 香川県小豆郡内海町
南通海達水産食品公司 江蘇省如東県
【投資形態】合弁【資本金】250 万米㌦【設立時期】1992【業務内容】中国海苔の加工
【資本金】2,773 百万円【従業員】連結 482 名【業務内容】醤油、調味料の製造販売、漬け物等加工食品の
製造販売、健康食品の製造販売、清酒の製造販売、所有建物及び設備の賃貸、その他
大連丸金食品有限公司 遼寧省大連市
【投資形態】独資【資本金】280 万米㌦【設立時期】2002【業務内容】醤油・調味料等食品の製造・販売
(ミツカングループ本社プレスリリース http://www.
る。国産海苔は卸値で平均 1 枚 10 円弱だが中国海苔
mizkangroup.co.jp/newsrelease/2005news/050914.
はその半額以下である。グローバル化が進む中で徐々
html)
に数量制限が拡大する趨勢にあり、全国 6500 余の海
言うまでもなくミツカンは食酢のトップメーカーだ
苔養殖業者は戦々恐々としている。
【資本金】4800 万円【従業員】110 名【業務内容】海苔糸状体の培養から海苔の養殖、製造、販売まで
寧波高岡屋海苔開発有限公司 浙江省寧波市
【投資形態】合弁 【設立時期】1994【業務内容】海苔の養殖事業
上海高岡屋食品有限公司 上海市閔行区
【投資形態】合作【資本金】50 万米㌦ 【業務内容】海苔製品加工
㈱白子 東京都江戸川区
【資本金】3 億円【従業員】347 名【業務内容】海苔加工品等の製造及び販売
南通太陽食品有限公司 江蘇省南通市
【投資形態】合弁【資本金】100 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】海苔など製造・販売
が、ブランド、販路を確立している北京醤油 3 社の
中国の海苔の産地は山東省、江蘇省から広東省ま
M&A によって、中国醤油市場に一気に大きな橋頭堡
での沿海部に広がっているが、主要産地は江蘇省沿
までを日本の海苔商社がトータルに仕切った。10 年
め、海苔(中国産・韓国産)は海外で消費されてい
を築いたわけである。なお、和田寛(香港)投資控
岸の連雲港、塩城、南通などである。この地に日本
余の間に生産量はうなぎのぼりで、近年は 20 億枚に
る、というのが実情です。ヤマコは、将来の水産物輸
股有限公司は香港の会社ではなく、タックス・ヘーブ
式海苔の養殖・加工の技術・ノウハウを伝授したのは、
入自由化に向けて、
今後とも国内外での積極的な活動、
ンのバージン島法人である。
SUSHI ブームで需要が高まる欧米への輸出を狙った
達している(ちなみに国産海苔の生産量は 1000 億枚
弱でその 2% 程度に相当)
。生産量が増えれば海苔生
アピールを続けていきます」
(http://www.yamako.
産者が最大の消費地である日本マーケットを狙うのは
net/world/kokusai.html)
。
(3)海苔
中国産海苔の輸入が 2005 年から解禁された。海苔
日本の海苔商社である。1992 年、ヤマコ(本社 = 愛
知県安城市)
、小淺商事(本社 = 名古屋市)連合が連
当然のことで、業界団体が結成され、中国行政当局に
輸入商社の立場と国内生産業者の立場は鋭く対立
雲港に海苔の養殖・加工法人を設立し、高岡屋(本
日本市場を開放させるようプレッシャーをかけ、つい
している。全国海苔貝漁業協同連合会では以下のよ
に制限つきながら日本市場への輸出を実現させたとい
うにアピールしている。
はこれまで輸入割当制度(IQ)で韓国産に限定され
社 = 東京都台東区)が如東県に海苔加工場をつくり、
ていたが、これは中国海苔に対する貿易障壁だという
開発輸出プロジェクトが推進された(図表 2-3)
。日本
中国の強力な抗議にあい、門戸を開放させられたもの
から専門家を派遣して養殖技術を教え、日本製の機
である。韓国海苔は塩と胡麻油の味付け海苔が主流
械を販売して製造・加工技術を移転し、海苔の取引
う成り行きである。
連雲港に 5 つの現地法人を展開するヤマコは以下
のように訴えている。
「ノリ IQ 枠を堅持しなければならない。……海外
への資金の流出をいかに水際で食い止めるか、今後
の大きな課題である。加えて日本のノリ生産は外国
で、さほど国産海苔の脅威にならなかったが、中国海
所を開いて製品を買い付け冷蔵保存し、米国・東南
「現在、海苔は IQ 品目に指定されており、限られ
産ノリとの差別化が重要な鍵を握る。消費者に安全
苔は国産海苔と見た目に変わりなく、しかも安価であ
アジアに輸出するという海苔ビジネスの川上から川下
た範囲内での輸入しか認められておりません。そのた
安心で、おいしいノリを提供するとともに、コストの
30 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 31
中国の OEM 業者に委託生産する。OEM 業者のほう
が、実はこれらは岡山県の地場メーカーのブランドな
は利益率は低いが、裁断―縫製―検品―仕上げプレ
のである。BIG JOHN は岡山県倉敷市児島、Betty
㈱マツオカコーポレーション
ス―包装を一気通貫で受託する大量生産方式で総利
Smith も同じ倉敷市児島、BOBSON は岡山市平野に
上海茉織華股份有限公司 上海市
【投資形態】合弁【資本金】3 億 5350 万元【従業員】1600 名【設立時期】99.1
【業務内容】衣料品、衣料品副資材、服装機械、印刷製品、印刷機械
益を上げて商売を成り立たせる。
本社を置く。
図表 2-4 マツオカコーポレーションの中国拠点
マツオカコーポレーションでは、取引先から注文を
国産ジーンズは BIG JOHN が先駆け、1960 年代
受けた製品を上海及び平湖市にある専門 10 工場で製
半ばに初めての国産ジーンズを、
70 年代初めにはジー
浙江茉織華製衣有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】合弁 【従業員】930 名【設立時期】90.11【業務内容】製衣工場
造して、輸出入業務を自ら手がけ、コンピューター管
ンズ向けの国産デニムを開発して純日本製のジーン
理で顧客の
「品質・納期・価格」
のニーズを満たす。モッ
ズを作り出した。若者のジーンズ人気でブームに火が
嘉興羅馬製衣有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】独資【資本金】281 万 9400 米㌦【従業員】140 名【設立時期】92.
【業務内容】製衣工場。主要製品はワイシャツ
トーは「よいものをスピーディに、ハイクオリティ、
つき、同業者が輩出し、倉敷市児島周辺はジーンズ
嘉興吉成製衣有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】合弁 【従業員】1000 名【設立時期】93.【業務内容】製衣工場。主要製品はジーンズ
嘉興松岡製衣有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】合弁 【従業員】866 名【設立時期】93.【業務内容】製衣工場。主要製品はスポーツウェア
嘉興茉織服飾有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】合弁 【従業員】1218 名【設立時期】96.
【業務内容】裁断・縫製・検品・仕上げプレスと包装。ボタン打ち。パンツ、ジャケット、スカート
ローコストで仕上げる」
。中国での年間生産能力最大
のメッカとなり、デニム織物や染色・加工業者が集積
は 3500 万点規模、月産 200 万点を生産して不良品
していった。岡山経済研究所によれば、児島、井原
発生率 1% 未満の信頼度という。
町、広島県福山をあわせた三地域が国産ジーンズの
このビジネスモデルで 10 年間に売上げを 17 億か
50-60% 程度を生産し、デニム織物や製品の洗い加工
ら 270 億に飛躍させた。本社は非上場会社だが、従
では 80-90% のシェアを有し、さらにデニム生地では
業員はわずか 117 人、平均年齢 35.8 歳、資本金 1 億
カイハラ(福山市)
、日清紡(徳島市)
、クラボウ(岡
7250 万円、一人当たり年間売上げ 2 億 3400 万円、
山市)が約 8 割を制するという(大崎泰正「岡山のジー
経常利益 18 億円と発表している。
「メイド・イン・チャ
ンズ」
『地域開発』2005.5)
。岡山県アパレル工業組
浙江茉織華実業発展有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】独資【資本金】8000 万元【従業員】212 名【設立時期】99.【業務内容】スーツ工場
イナ」で最も成功した会社だと言っていいだろう。
合は宣伝に巧みで、毎年、かっこいいジーンズのは
上海マツオカは、しかし相対的にマツオカコーポ
き手にベストジーニスト賞を贈って話題を提供してい
嘉興茉織華漂染有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】合弁【資本金】100 万米㌦【従業員】90 名【設立時期】00.12
【業務内容】衣料の水洗い・退色・染色加工
レーションから自立しており、創始者の浙江商人・李
る(ちなみに 2005 年の受賞者は男は歌手の氷川きよ
勤夫の商才に率いられている面が強い。マツオカコー
し、女は浜崎あゆみ)
。
嘉興松富発展有限公司 浙江省平湖市
【投資形態】合弁【資本金】40 万米㌦【従業員】866 名
【業務内容】縫製業、小売業 スーツ工場 アンコンジャケット・ジャケット・コート
更なる削減を図るための技術、経営面での工夫が必
要となってくる。原料原産地表示はあらゆるノリ製品
に必要であることは言うまでもない。その表示が国内
企業である(図表 2-4)
。
マツオカコーポレーション(本社 = 広島県福山市、
資本金 1 億 7250 万円)の前身は、備後地区メーカー
ポレーションは 2000 年 12 月に、この男に撤回不可
ジーンズの人気は、米国、イタリアのブランド、次
の「経営権委託依頼書」を与え、10 年間、無条件で
いで国産ブランドで、中国産はイマイチであるが、本
経営を任せている。上海マツオカはアパレル分野に
場のメーカーが中国に進出することによってレベル
とどまることなく、デジタル印刷や環境保護製紙業に
アップし中高級品が生産されるようになっている。
も参入し、多角化を急いでいる。第 1 事業のアパレ
パイオニアの BIG JOHN は香港を拠点にして広州
ルでは、マツオカとの 10 工場のほかに 8 工場を展開
市の南沙開発区に委託加工工場を持っている。国内
し、第 2 事業の印刷では米 SIRSPEED 社とのデジタ
販売網を確立している BOBSON は上海浦東の星火開
ル印刷チェーン販売ネットを北京、上海を中心に広
発区でジーンズ・カジュアルウェア及びその関連製
品を開発・製造・販売している(図表 2-5)
。
のノリを守る十分な手段となるよう自信と自覚をもっ
のシャツの賃加工工場で、各種繊維製品の製造加工
たノリ生産が求められる」
(http://www.zennori.or.jp/
を展開していた。90 年に中国へ進出、成功の見通
げている。また、第 3 事業の製紙では日本製紙、日
genjo_h17/pdf/genkyo_h17.pdf)
。
しを得て、生産拠点を全面的に中国へ移管し、1994
本紙パルプ商事の出資、技術指導を受けて(平湖市
OEM(相手先ブランドによる生産)に強い西江デ
の浙江景興紙業股)
、段ボール原紙の生産を始めてい
ニムは香港と浙江省嘉興市とに製造拠点を築き、嘉
浙江省平湖市に展開している。その主力中国工場は
る。事業拠点となっている平湖は李勤夫の生まれ故
興では主に原反洗い、デニム製品加工全般、製品染
OEM(相手先ブランドによる生産)にあり、カジュ
郷である。
等の後処理工程を行っている。この後処理工程は、
年から中国本社と 8 つの工場を上海及び上海近くの
2.アパレル企業の中国進出
(1)福山のアパレル OEM= マツオカ
中国株に関心ある人ならマツオカコーポレーション
の社名を知らない人はいないであろう。上海茉織華
股有限公司(上海マツオカ)は、上海証券市場 A 株
(国内向け)
、B 株(外国人向け)に上場している優良
アルウェアを中心にして、ワーキングウェア、スポー
郷に入らば郷に従えで、現地法人は現地の実情に
ファッション性が高くなった最近の古着風ジーンズの
ツウェア、スーツなどを手がけるアパレルメーカーで
精通した中国人経営者に任せ、現地化するのが望ま
決め手で、軽石や酵素を使っての染料落とし、はき
ある。
しい。よきパートナーに恵まれることが、中国ビジネ
シワや破れ目をつける加工、裾やポケットのダメージ
ス成功の要諦である。
加工など芸術的センスを必要とする。
OEM を発注するのは、ユニクロ、良品計画のよう
Apparel)と呼ばれる、商品企画から生産・物流・販
企業で、その株式の 42% はマツオカコーポレーショ
売まで一貫してコントロールする企画力をもった製造
ンが直接所有し、31% を所有する中国側の筆頭株主
小売業者である。SPA は利益率の高い川上の企画と
平湖茉織華実業発展有限公司もマツオカ出資の合弁
女性ジーンズを開拓したのが Betty Smith である。
な、SPA(=Speciality store retailer of Privatelabel
川下の販売は直接手がけるが、利益率の低い製造は
男物と信じられていたジーンズに女物が台頭したの
(2)岡山のジーンズ・メーカー
BIG JOHN
Betty Smith
BOBSON
は 90 年代以降で、96 年以降は比重が逆転して、い
といった
まや女物が市場を圧倒している。Betty Smith は上
ジーンズのブランドはアメリカ西部開拓を連想させる
海に近い江蘇省張家港でレディース・ジーンズ・カ
32 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 33
図表 2-6 イトキンの中国製造・販売拠点の展開
図表 2-5 岡山ジーンズ・メーカーの中国進出
㈱ボブソン 岡山県岡山市
藍星牛仔服装(上海)有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】249 万 5000 米㌦【設立時期】94.12 認可【業務内容】各種ジーンズの製造・
販売
㈱ビッグジョン 岡山県倉敷市児島
BIG JOHN CHINA MANUFACTURING CO., LTD. 香港・広東省広州市
【業務内容】ジーンズカジュアルウェア及びその関連製品の開発・製造・販売
㈱ベティスミス 岡山県倉敷市児島
張家港貝蒂史密斯製衣有限公司 江蘇省張家港市
【業務内容】レディースジーンズカジュアル企画・製造・販売
㈱西江デニム 岡山県井原市
1989 年
1990 年
2002 年
上海絲金時装有限公司開業
(注)ゴチックは販売拠点
上海絲金針織有限公司開業
青島絲金時装有限公司開業
北京絲金時装有限公司開業
大連絲金時装有限公司開業
青島絲金花飾有限公司開業
大連伊都錦時装(中心)有限公司開業
哈爾浜伊都錦時装有限公司開業
上海伊都錦時装中心有限公司開業
普寧伊都錦時装有限公司開業
北京伊都錦中芸製衣有限公司開業
杭州伊都錦時装有限公司開業
瀋陽伊都錦時装有限公司開業
上海伊都錦家具有限公司開業
上海中絲伊都錦有限公司(百貨店「上海伊都錦商厦」
)オープン
営口伊都錦木業有限公司開業
天津伊都錦時装有限公司開業
上海商品センター増床
2003 年
上海伊都錦商厦リニューアルオープン
1991 年
1992 年
1993 年
1994 年
1995 年
1996 年
西江(香港)有限公司 香港
【設立時期】1999【業務内容】ジーンズ製品の製造・販売
西江服装後整理(嘉興)有限公司 浙江省嘉興市
【投資形態】合弁 【業務内容】主に原反洗い、デニム製品加工全般、製品染等の加工
1997 年
タカヤ商事㈱ 広島県福山市
上海高屋時装有限公司 上海市松江区華陽鎮 164
【投資形態】独資【資本金】500 万米㌦【設立時期】95.4【業務内容】ジーンズ、
ユニホームの縫製、
洗い加工、
販売
大連伊都錦商厦(大連イトキンファッションプラザ)オープン
青島伊都錦商厦(青島イトキンファッションプラザ)オープン
ジュアルを企画・製造・販売しているが、需要に生
キャミソール 230 元(2990 円)を 68 元(884 円)に
産が追いつかない。2005 年春に張家港工場を増強し、
女性用ズボン 260 元(3380 円)を 78 元(1014 円)に
従来の安価な国内量販店向けの商品のほかに高額ブ
ワンピース 460 元(5980 円)を 138 元(1794 円)に
ランド「ベティスミス」やメンズ「ビッグスミス」の
女性用ジャケット830 元(10790円)を 248 元(3224円)に
増産に踏み切っている。
男性用シャツ 290 元(3770 円)を 88 元(1144 円)に
(3)イトキンの中国国内販売
イトキン(本社 = 東京都渋谷区・大阪市、資本金
=9 億 2450 万円)を地域・地場企業として取り上げ
子供服 130 元(1690 円)
を 38 元(494 円)
に KLEIN DOEIL ジャケット(女)590 元(7670 円)を
288 元(3744 円)に MK ズボン(女)690 元(8970 円)を 268 元(3484 円)に
るのは異論が出ようが、大阪発祥企業であり、中国国
内販売を成功させた先進企業として、アパレル・繊
これを見ると価格は日本のイトキンとほとんど変わ
維関係者のみならず中国販売をもくろむ各社の製品
りない。日中間で一物一価の原則を守った商売が行わ
販売モデルともなっているところから、あえてここで
れているのである。上海人の年間可処分所得は平均
紹介しておきたい。
20 万円そこそこであり、上位 10% の最高所得層でも
イトキンの旗艦店は上海の繁華街・南京東路にあ
年間 50 万円ほどである(
『上海統計年鑑』2004 年版)
。
る 9 階建て自社商業ビル・伊都錦上海商場(ITOKIN
その 10 倍以上の収入がある日本人にとっては上記の
FASHON PLAZA)である。この大型総合ファショ
プライシングは割安感があるが、上海人にとっては
ンショップは 1997 年に開店して、2005 年に開店 8
高級品に違いない。一般市民はウインドウ・ショッピ
周年を迎え 6 月に開店記念バーゲンセールを開催し
ングをするのみで、イトキンで買い物するのは一部富
たが、その目玉商品は以下のごとくであった(1 元
裕層に限られていると見なければならない。イトキン
=13 円で換算)
。
で買い物ができるということ、
「MK クランプリュス」
2004 年
天津伊都錦商厦(天津イトキンファッションプラザ)オープン
(資料)イトキンのホームページ(http://www.itokin.com)
「a.v.v.」
「オフオン」
「iiMK」などのイトキンブランド
ち 1-6 階がイトキンの売り場で 1 階 : レディズ & メン
を身に着けることは、金持ちの証、ステイタス・シン
ズカジュアル、2 階 : レディズ・キャリア & メンズカ
ボルとなっていよう。同店の後藤滿董事長兼総経理
ジュアル、3 階 : ファミリー & レディズ・キャリア、
は「どの層のお客様をターゲットにするかをはっき
4 階 : レディズ・カジュアル & キャリア、5 階 : レディ
りさせることが大切です」と断じている(WALKER
ズ・クリエーター、6 階 : レディズ・デザイナーとい
CHINA 2003.11)
。上海の戸籍人口は 1300 万人余で、
その 30% と言われる富豪層はざっと 40 万人である。
今のところ、こうしたごくごく上層の金持ちを狙った
ニッチ市場商売だと見ていいであろう。
う配置でイトキンの 40 余のブランドがフルに品揃え
されている。同様の大型総合ファッションショップの
2005 年建設地点はハルビンだという。
イトキンは大型自社商業ビルのほかに、百貨店、
急激な高度成長で中国沿海部大都市には、上海
ショッピングモールなどへ出店するインショップと
と同じ富裕層が生まれている。これを見て、イトキ
中国全土をカバーするフランチャイズ店によって販
ンは 2003 年に上海伊都錦商厦リニューアルオープ
ン、大連伊都錦商厦オープン、青島伊都錦商厦オー
プン、そして 2004 年天津伊都錦商厦オープンと、一
気に大型総合ファッションショップ拡大策に打って出
た(図表 2-6)
。このうち青島伊都錦商厦は、資本金 1
億 8000 万円、建築面積 2 万 6000 平方メートル。歩
行者天国に立地し、地上 12 階、地下 4 階。そのう
売網を形成しているが、その数は 2004 年 12 月末で
170 店舗(大型総合ファションショップを除く)
。そ
れを 2005 年前半に 230 店、2005 年末に 300 店まで
増やす計画を打ち出している。上海でも既存 40 店を
2005 年内に 60 店近くまで伸ばし、郊外型のショッピ
ングモールにも出店するという。新規出店のうち、初
めて出す都市はウルムチ(新疆ウイグル自治区)
、南
34 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 35
図表 2-7 イトキンの中国製造拠点
上海絲金時装有限公司 上海市
【投資形態】合弁【資本金】2 億 8000 万円【設立時期】1989【業務内容】高級婦人服の製造・販売 北京絲金時装有限公司 北京市
【投資形態】合弁【資本金】180 万米㌦【設立時期】1991【業務内容】婦人衣料 上海絲金針織有限公司 上海市
【投資形態】合弁【資本金】170 万米㌦【設立時期】1992【業務内容】ニット高級ファッション、コーディ
ネイトファッション
製造拠点としての中国から市場としての中国へと次第
or.jp/~yabuki/doc/mri9605.htm)
、それを参照いただ
にシフトして行っているわけである。
きたい。
中国国内販売に本格的に乗り出している SPA はイ
クロダ( 資 本 金 =1000 万 円、 従 業 員 45 名 )は
トキンだけではない。ワールドは CORDIER、FA:
1986 年の上海進出を手始めに中国に展開し、上海と
GE ブランドをメインに 1 年間に 46 店舗を増設して
河南省輝県市の 4 カ所の工場で皮手袋のほかにニッ
156 店舗としている。オンワード樫山は 23 区、ICB
ト手袋、ニットマフラーなどを生産している。クロダ
ブランドで 50 店舗、ダーバンは 27 店舗をすでに展
が 2005 年 9 月に上海に設立した手袋などの品質検査
開している。ユニクロはまだ上海に 9 店舗しか持た
と出荷を手掛ける新会社はこの業界に新しい風を吹
大連絲金時装有限公司 遼寧省
【投資形態】合弁【資本金】1132 万元【設立時期】1992【業務内容】婦人用服飾品の縫製・販売 ないが、黒字化の見通しが立ち、日本国内の経営再
かせるかもしれない。検品新会社は現在合弁現地法
編が出来次第、中国店舗数を拡大していくであろうこ
人で手掛けている手袋製造を順次、中国企業に委託
青島絲金花飾有限公司 山東省青島市
【投資形態】合弁【資本金】310 万米㌦【設立時期】1993【業務内容】造花 とが予想される。
するのに対応したものであるからだ。
北京伊都錦中芸製衣有限公司 北京市
【投資形態】独資【資本金】500 万米㌦【設立時期】1994【業務内容】婦人服装品 哈爾浜伊都錦時装有限公司 黒龍江省哈爾浜市
【投資形態】合弁 【設立時期】1994【業務内容】衣料品 上海伊都錦時装中心有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】6500 万米㌦【設立時期】1995
【業務内容】アクセサリー・カバン・衣服・服飾・衣服補助材料 ところで、図表 2-8 掲載会社のほかに実は㈱ウルシ
3.雑貨製造企業の中国進出
(1)東かがわの手袋
香川県大川町の三町が合併して 2005 年東かがわ市
ハラ(資本金 =7500 万円、従業員 94 名)という有力
メーカーがあった。トラサルディ、レノマ、パーソン
ズといったブランドの手袋・帽子を企画、製造、販売し、
30 種を越えるブランドの独占製造販売権を持った完
全独立企業で、2001 年 1 月期には 52 億 3600 万円
が生まれたが、この地は手袋の里として名高い。ゴル
上海克愛服飾輔料有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】60 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】衣料補助材料 を売り上げていた。中国には 1993 年に進出を果たし、
フ、スキー等スポーツ用革手袋、ドレス用皮手袋、編
天津で手袋、カバン、帽子でそれぞれ 1 社、合計 3
大連伊都錦時装(中心)有限公司 遼寧省大連市
【投資形態】独資【資本金】1800 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】衣服・服飾品・ニット製品 手袋、縫手袋などの生産に 100 余社が携わり、全国
社の現地法人を経営していた。
の手袋生産量の 90% を占めている。手袋製造工程は
すべてを過去形で語っているのは、ウルシハラが
杭州伊都錦時装有限公司 浙江省杭州市
【投資形態】独資【資本金】300 万米㌦【設立時期】1996【業務内容】衣料品・服飾品・その他縫製品 労働集約的であり、皮手袋を例にとれば、原皮―荒
2005 年 3 月自己破産したからである。この破産は単
打ち―小断―飾り―縫製―ひげみつ―つみかえし―
純な中小企業の破産ではなかった。中国製手袋を国
上海伊都錦家具有限公司 上海市
【投資形態】合弁【資本金】250 万米㌦【設立時期】1996【業務内容】高級家具、室内装飾品 ぼたん・ホック付け―仕上げ―検品というフローで、
産と偽って販売し、2003 年 11 月に公正取引委員会
工場内は縫製用のミシンがずらっと並ぶ。
から排除命令を受けたため、受注が激減し、倒産に
営口伊都錦木業有限公司 遼寧省
【投資形態】独資【資本金】1800 万米㌦【設立時期】1997【業務内容】家具 天津伊都錦時装有限公司 天津市
【投資形態】独資【資本金】1300 万米㌦【設立時期】1997【業務内容】ニット・衣料品
労働集約的だから、東かがわの手袋製造業者は比
較的早くから中国に製造拠点を移転してきた。本書に
は 8 社、17 拠点を収録しているが(図表 2-8)
、双璧
追い込まれたのである。公正取引委員会の排除命令
には以下のようにあった。
「ウルシハラは、
(中略)中華人民共和国に所在す
上海丸加服飾有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】20 万米㌦【設立時期】2002【業務内容】ハンカチ、スカーフ、服飾雑貨 はスワニーとクロダである。
る事業者に製造を委託して中国の工場で製造された
先鞭をつけたのはスワニー(資本金 =1 億 7400 万
ものを輸入した後、国内において商標名の縫付け等
青島絲金時装有限公司 山東省青島市
【投資形態】合弁【資本金】5 億 625 万米㌦ 【業務内容】高級婦人服 円、従業員 70 名)で 1984 年に昆山に進出し、昆山
の加工又は蒸気による整形加工を行い、全国の百貨
のほか太倉、嘉興と江蘇省 4 拠点でスポーツ手袋や
店を通じて一般消費者に販売している。
」
瀋陽伊都錦時装有限公司 遼寧省瀋陽市
【投資形態】独資【資本金】450 万米㌦ 【業務内容】衣料品 ファッション手袋を製造してきた。スワニーの三次鋭
生鮮野菜ではメイド・イン・ジャパンとメイド・イ
郎社長はパブリシティがうまい。雑誌・インターネッ
ン・チャイナとの消費者評価の差が大きいが、手袋に
トで紹介しているアメリカセールス物語、中国創業
おいても同種の差があるものらしい。この差がある限
物語は、起業家精神が横溢している。最近の話題づ
り、東かがわの手袋製造業はまだ生き延びられる余
本業のアパレル製造工場が大半を占めるが、ほかに
くりは、新製品の、杖にもなるカバン「ウオーキング
地があると見ていいのではないだろうか。
以上のような販売ネットワークにオリジナル商品を
造花、家具、アクセサリーなどのイトキン店舗取扱商
提供しているのが、中国各地に広がるイトキンの 18
バック」開発物語で、某テレビで放映されている。旧
品の製造工場がある。このうち上海工場では、シルク・
の製造拠点である(図表 2-7)
。イトキンの中国進出
聞に属する NHK スペシャル「突然の撤退勧告――
麻・カシミヤなどの特産品にハンドメイド刺繍を施し
は比較的早く、1989 年、上海の高級婦人服工場を嚆
日中合弁企業の 11 年」
(1996 年 3 月 10 日放映)に
た高付加価値製品を送りだしている。これらの製品は
矢とする。その後、主に 1990 年代に東北(大連、瀋
90 年代中頃までは日本に持ち帰る比率が高かったが、
まつわるスワニーのパフォーマンスについては矢吹
福井県鯖江市はメガネ枠の産地として名高い。国
陽、ハルビン)に 4 拠点、華北(北京、天津、青島)
90 年代末からは中国国内販売の比率が高まっている。
晋 21 世紀中国総研ディレクターが批評しているので
内メガネ枠の 95% を生み出し、世界三大産地を標榜
(
「スワニー問題の NHK 大誤報」http://www25.big.
する。その SAVAE の眼鏡産業誕生百周年を祝うイベ
寧(広西チワン族自治区)など内陸部の省都にも及ん
に 6 拠点、華東(上海、杭州)に 7 拠点を配置した。
でいる。
(2)鯖江のメガネフレーム
36 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
図表 2-8 東かがわ手袋企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 37
ントが 2005 年 10 月に開催され、
「産地を次の世代に
江最大のメーカーである。自社ブランドは「シャルマ
引き継いでいくことが我々の使命」と打ち上げたが、
ン」
「アリスター」
。中国へは 1991 年香港から入って
㈱スワニー〔㈱中虎〕【資本金】1 億 7400 万円【従業員】70 名
その前途は決して楽観できる状態にない。中国への
製造・販売体制を整えた。広東省東莞の委託加工工
昆山中虎手袋有限公司 江蘇省昆山市
【投資形態】独資【資本金】100 万米㌦【設立時期】1996
【業務内容】スキー、スノーボード、アウトドア、モーターサイクル等のスポーツ手袋
生産シフトが一気に進み、受注が激減する一方、単
場は 2500 人を擁する大工場で、中国内販においては
価の引き下げを迫られる。輸出は頭打ちで、安価な
広州、上海、北京と拠点を広げている。
蘇旺呢手套有限公司 江蘇省昆山市
【投資形態】独資【資本金】135 万米㌦【設立時期】1989
【業務内容】スキー、スノーボード、ゴルフ用手袋
中国製品の輸入は増える一方である。地域産業の空
鯖江市産業振興支援課のマーケット調査によれ
洞化が叫ばれ、かつての繁栄を取り戻すのは難しい
ば、中国の眼鏡の値段は①中国製 200 元以下、②日
のではないかと危惧されている。さまざまな回復施策
系企業の中国工場製 500-600 元、③日本製の輸入品
太倉蘇旺呢手套有限公司 江蘇省太倉市
【投資形態】合弁【資本金】110 万米㌦【設立時期】1990【業務内容】皮革ファッション、カジュアル手袋
が練られ試行錯誤がつづいているが、その有力策の
1500-1800 元、④欧米ブランド品 4000 元以上という。
ひとつとに福井県の「東アジア・マーケット開拓戦略
人気の商品はメタル(チタン)フレームでプラスチッ
中国蘇旺呢有限公司 江蘇省昆山市
【投資形態】独資【資本金】150 万米㌦【設立時期】1984【業務内容】スキー・スノーボード用手袋
プラン――中国市場での販路開拓」がある。守るも、
クレンズのタイプ。中国人は見栄っ張りで、一点豪華
攻めるも中国である。
主義の買い物をする性向があり、所得に比して高価な
長城蘇旺呢手套有限公司 浙江省嘉興市
【投資形態】合弁【資本金】115 万米㌦【設立時期】1988【業務内容】ファッショングローブ
㈱クロダ 【資本金】1000 万円【従業員】45 名
上海黒田運動用品有限公司 上海市
【投資形態】合作【資本金】120 万米㌦【設立時期】1994
【業務内容】運動用品、手袋全般、刺繍加工、ニット加工、帽子、靴
鯖江市、福井市を中心に福井県内には 300 余の眼
眼鏡にもお金を使う。中国の眼鏡人口は 3 億、上海
鏡製造業者(企業・事業所)があるが、そのうち中国
の近眼率は 40% で、マーケットとして大きな広がり
に現地法人を持つ鯖江本社の企業は図表 2-9 のとお
を持つ。日本のメガネ小売店では、すでにパリ - ミキ
りである。野尻眼鏡工業、シャルマン、三谷オプチカ
が上海周辺にチェーン店 91 店舗を張り巡らしている。
ル、サンリーブ、青山眼鏡の 5 社で、そのうち大手の
SAVAE のメガネフレームの中国市場における販路開
野尻眼鏡工業が 3 拠点、シャルマンが 3 拠点を展開
拓は決して夢ではない。
上海黒田時装用品有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】20 万米㌦【設立時期】1995
【業務内容】ニット手袋・ニットマフラー・帽子・ホームソックス
している。
上海黒田手套有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】340 万元【設立時期】1986【業務内容】手袋全般 はチタンフレームを開発したリーディングカンパニー
野尻眼鏡工業(資本金 9800 万円、従業員 110 名)
(3)YKK のファスナー、建材
YKK、
吉田工業の創業者・吉田忠雄(1908~1993 年)
新郷黒田明亮製革有限公司 河南省輝県市
【投資形態】合弁【資本金】33 万 3700 米㌦【設立時期】1995【業務内容】皮革原材料加工
だが、中国進出でも先行し、1990 年上海に合弁で上
は、富山県下新川郡下中島村(現魚津市)の出身で
海野尻眼鏡を設立、翌 90 年からメガネ枠の生産を始
ある。
「生地工場」は「黒部工場」と改称されている
新郷黒田明亮皮具有限公司 河南省輝県市
【投資形態】独資【資本金】20 万米㌦【設立時期】1996【業務内容】革製品
めた。次いで 93 年にはメガネ枠部品と宝飾品の製造
が、数ある国内外の工場の「メッカ」として存在して
のために独資で上海服嘉宝飾を設立した。野尻眼鏡
おり、
「吉田忠雄記念室」
「黒部市吉田科学館」がある。
工業が非凡なのは、当初から中国市場に向けて製品を
YKK はいまや日本の企業の中で最もグローバル化し
販売し、チタンフレームを中心に高級イメージの野尻
ている企業で、主力のファスナー事業は、世界全域
昆山約克斯服飾有限公司 江蘇省昆山市
【投資形態】合弁【資本金】160 万米㌦【設立時期】1994【業務内容】手袋・帽子・服飾雑貨
ブランドの浸透を図ったことである。97 年には上海
59 ヵ国に展開し、72 関連会社、68 工場、海外の従
福井国際貿易を設けて内外の流通販売に本腰を入れ
業員は 1 万 5000 人にのぼり、その海外生産の比率は
㈱ハシセン 【資本金】7500 万円【従業員】30 名
ている。2004 年 6 月にはメッキ処理ラインを含むチ
75% に達している。即ち、今様に言えば、YKK はロー
天津橋千服飾有限公司 天津市
【投資形態】独資【資本金】42 万 1000 米㌦【設立時期】1994
【業務内容】ゴルフ手袋製造業。ほぼ全量を日本ダンロップ向けに納品
タンフレーム一貫生産工場である上海野尻光学を立
カルかつグローバルなグローカル企業の代表である。
ヨークス㈱ 【資本金】4600 万円【従業員】117 名
北京約克斯毛針織品有限公司 北京市
【投資形態】合弁【資本金】95 万 6500 米㌦【設立時期】1994【業務内容】手袋、カバー
㈱橋輝 【資本金】1600 万円【従業員】41 名
ち上げて、ノジリグループの世界への発信基地とする
布石を打った。
しかし、その一方で野尻眼鏡工業はニセモノに悩
YKK の中国におけるファスナー事業は、大連と上
海に集中していて、大連に 4 工場、上海に 2 工場と
1 販売会社がある(図表 2-10)
。大連のは 1992-95 年
昆山橋輝服飾手套有限公司 江蘇省昆山市
【投資形態】独資【資本金】90 万米㌦【設立時期】1994【業務内容】手袋、マフラー等編立
まされている。その製造・販売グループの一つを上
進出のファスナー工場であり、上海のは 1998 年進出
興和グローブ㈱ 【資本金】3000 万円
海当局と共同して摘発、犯人を逮捕することが出来た
のファスナーと 2002 年に進出したばかりのスナップ・
が、犯人の顔を見てびっくり。グループ 3 人のうち 2
ボタンの生産・加工工場である。中国進出の理由とし
人は、同社上海工場の元従業員だったそうである(福
て、井上ファスナー事業部長は、原材料や賃金の安
井県上海事務所藤井昌和駐在員レポート「知的財産
さのほかに、新興メーカー対策という特殊理由を挙げ
権侵害について――野尻眼鏡工業のケース」
)
。
ている。すなわち、中国市場では高付加価値製品の
無錫高達針織有限公司 江蘇省無錫市
【投資形態】合弁【資本金】85 万米㌦【設立時期】1993
【業務内容】メリヤス縫製手袋、軍手、作業用スムス手袋、軍手、ビニール加工手袋、滑り止め手袋
上海紅商事渡邊久士手套有限公司 上海市
【投資形態】合弁【資本金】20 万米㌦【設立時期】1990【業務内容】ゴルフ手袋ほか
福田手袋㈱ 【資本金】1000 万円【従業員】16 名(2005 年 4 月 1 日現在)
福可達工芸品(上海)有限公司 上海市
【設立時期】2000【業務内容】手袋を中心とした服飾雑貨
一方、シャルマン(資本金 1 億 5927 万 5000 円、
需要は小さいが、低品質・安価な製品を牽制してニ
従業員 388 名)
は、
メガネフレーム、
サングラスを企画・
セモノ対策をする必要性に迫られたという(財務省研
デザイン・製造して世界 10 カ国に販売網を広げる鯖
究会、2002 年 1 月 30 日第 3 回報告)
。
38 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 39
図表 2-9 鯖江メガネ枠メーカーの中国進出
野尻眼鏡工業㈱
【資本金】9800 万円【従業員】110 名
上海野尻眼鏡有限公司 上海市
【投資形態】合弁【資本金】216 万米㌦【設立時期】1990【業務内容】メガネの製造
上海福嘉宝飾有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】350 万米㌦【設立時期】1993【業務内容】メガネ枠部品、宝飾品の製造
上海福井国際貿易有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】20 万米㌦【設立時期】1997【業務内容】メガネの貿易サービス
㈱シャルマン
【資本金】1 億 5927 万 5000 円【従業員】388 名
ARISTAR CO., LTD. 香港
【投資形態】独資【資本金】3661 万 HK ㌦【設立時期】1991【業務内容】メガネ枠の製造・販売
CHARMANT (HK) CO., LTD. 香港
【投資形態】独資【資本金】2400 万 HK ㌦【設立時期】1991【業務内容】メガネ枠の販売
DONGGUAN CHARMANT CO., LTD. 広東省
【投資形態】独資【資本金】2022 万 8850 元【設立時期】1997
【業務内容】メガネフ枠の中国小売店への直接販売
三谷オプチカル㈱
【資本金】1 億 5000 万円【従業員】106 名
上海三谷眼鏡有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】300 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】メガネ枠製造及び外国への輸出
図表 2-10 YKK の中国進出
威可楷(中国)投資有限公司 上海市浦東新区銀城東路 101 号
【投資形態】独資【資本金】3000 万米㌦【設立時期】02.12【業務内容】東アジア子会社の事業統括。各事
業の統括や持ち株機能に加え、資金調達、物流業務、ブランド管理、間接業務などを一元管理
大連吉田建材有限公司 遼寧省大連市経済技術開発区准河西路 31 号
【投資形態】独資【資本金】2500 万米㌦【設立時期】96.3
【業務内容】YKK アーキプロダクツと住宅向け樹脂サッシ・販売
大連吉田拉鏈有限公司 遼寧省大連市山鉄山西路 50 号
【投資形態】独資【資本金】2000 万米㌦【設立時期】95.12
【業務内容】ファスナー、面ファスナー、ボタン、前カン、その他の金属類、樹脂類、繊維雑貨
蘇州吉田精密模具機械有限公司 江蘇省蘇州市蘇州工業園区
【投資形態】独資【資本金】400 万米㌦【設立時期】02.12【業務内容】ファスニング事業と建材事業に関連
する製造機械、金型等の製造及び製造ラインの総合エンジニアリング
上海鈕美仕鈕扣有限公司 上海市閔行区滬閔路 3988 号
【投資形態】独資【資本金】30 万米㌦【設立時期】02.1【業務内容】スナップ・ボタン
上海吉田拉鏈有限公司 上海市浦東新区銀城東路 101 号
【投資形態】独資【資本金】4200 万米㌦【設立時期】92.5【業務内容】ファスナーなど
上海 YKK 国際貿易有限公司 上海市浦東新区銀城東路 101 号
【投資形態】独資【資本金】100 万米㌦【設立時期】93.3
【業務内容】国際貿易業務全般(ファスナー、ファスナー部品)
吉田拉鏈 ( 深圳 ) 有限公司 広東省広州市建設六馬路 33 号
【投資形態】独資【資本金】5000 万米㌦【設立時期】95.12【業務内容】ファスナーなど
㈱サンリーブ
吉田建材(深圳)有限公司 広東省深圳市宝安区沙井鎮西部工業園
【投資形態】独資【資本金】2900 万米㌦【設立時期】01.2【業務内容】アルミ建材
蘇州三麗眼鏡有限公司 江蘇省
【投資形態】独資【資本金】287 万米㌦【設立時期】1993【業務内容】メガネ枠の製造・販売
蘇州威可楷愛普建築装飾工程有限公司 江蘇省蘇州市蘇州工業園区蘇春東路
【資本金】250 万米㌦【設立時期】04.4【業務内容】住宅内装エンジニアリング
【資本金】2 億 950 万円【従業員】98 名
青山眼鏡㈱
【資本金】9360 万円【従業員】250 名
北京日青山眼鏡有限公司 北京市
【投資形態】独資【資本金】450 万米㌦【設立時期】1998
【業務内容】メガネ枠製造、金型、メガネ部品製造
YKK の事業は、ファスニングだけではなく、建材
事業、工作機械事業を合わせて、三つを柱にしている。
れている。
YKK グループの第 3 の事業である工作機械では、
このうち、建材事業は中国では、大連、蘇州、広州に
2002 年に蘇州に初めて蘇州吉田精密模具機械有限公
3 拠点を構えている。最大の大連工場は、ファスニン
司を設立した。中国におけるファスニング事業と建材
グ 3 工場と並んで大連経済技術開発区内に立地して
事業に関連する製造機械、金型を製造する工場であ
おり、樹脂サッシばかりか、窓枠、滑車、ガラス、鍵、
る。
ゴムなどを自前で製造している(2000 年設立)
。華南
そして、以上の中国における 10 社、出資額 3 億
の広州工場は 2001 年設立、上海経済圏の蘇州工場は
ドル以上(認可ベース)の事業を統括しているのが
2002 年設立で、ともに樹脂サッシを製造・販売して
上海の YKK(中国)投資有限公司である。同社は統
いる。樹脂サッシは断熱性・気密性に優れた高性能・
括事業に加え、資金調達、物流業務、ブランド管理、
高品質の建材で、中国の需要は日本の 20 倍と見込ま
間接業務などの一元管理、業務効率化の任務を負っ
吉田建材(蘇州)有限公司 江蘇省蘇州市蘇州工業園区星龍街 458 号
【投資形態】独資【資本金】8000 万米㌦【設立時期】02.12
【業務内容】中国国内外への部品供給基地、並びにアルミ建材及び樹脂サッシの中国国内への供給
ている。2004 年に中国は YKK グループ最大の生産
確保されるであろうが、社内産業構造の転換によって
国に駆け上がった。
川下から川上に連鎖する地域の産業連関の環が断ち
その一方で、YKK の日本国内生産は 21 年連続で
減少し、製造基地としての地位は急激に低下しつつ
切られる。創業者の故郷の地域経済構造は大きく変
容することを避けられない。
ある。工場の中国移転でメッカ黒部の「生地工場」は
どうなるのか。製造量・金額の絶対的減少であるか
ら、地元製造業が空洞化に向かっていることは間違
いない。YKK では黒部工場を製造基地から研究開
発(R&D)
、管理拠点に変えていく構想を示している。
人事、総務、給与計算など管理部門の社員の 3 分の
2 を黒部事業所に集め、
管理業務を黒部で集中処理し、
4.機械製造企業の中国進出
(1)諏訪の土着国際企業・セイコーエプソン
黒部は管理、R&D の中枢となるという。しかし、従
情報関連機器、電子デバイス、精密機器などのトッ
業員はブルーカラーからホワイトカラーにかわり、地
プメーカー・セイコーエプソン(本社 = 長野県諏訪市、
元住民の雇用に影響が及ぶ。国・自治体への税収は
資本金 532 億円、2003 年 6 月東証一部上場、中国名
40 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 41
= 愛普生)の旧社名は時計メーカーの諏訪精工舎で
海)信息産品がある。サービス網の構築には 92 年か
あったが、プリンタ事業の躍進で 1985 年に現社名と
らかかり、全国 55 都市に 60 カ所の拠点を築いてい
なった。国内 36 社、海外 74 社を擁し、海外生産比
る。ブランド作戦として 2003 年北京市中関村に開い
率 67% のグローバル企業に成長した今も「諏訪が本
た「エプソンスクエア北京」は、自分で撮った写真
社」を貫き、諏訪 40 ㎞圏内にすべての事業部を置き
を自由に編集して、自分の好きなサイズで、きれい
シナジー効果を生み出している(草間三郎「
『エプソ
に、しかも簡単に印刷する楽しさを普及するための
ンのものづくり』と諏訪」
『地域開発』2004.10)
。
ショー・ルームである。
セイコーエプソンの事業は、主に情報関連機器、
以上のような製造・販売拠点を統括して中国本社
電子デバイス、精密機器の 3 事業からなっており、
として機能しているのが、北京にある持ち株会社・愛
2004 年度の売上構成は、情報関連機器 61%、電子デ
普生(中国)有限公司である(資本金 100 万 5000 元、
バイス 31%、精密機器 5% となっている。このうちウ
1998 年設立)
。セイコーエプソンの中国での投資を束
オッチなどの精密機器は諏訪精工舎時代からの初期
ね、現地法人を統合・調整するとともに、エプソン製
産品で、諏訪から海外(香港)への工場移転は早く
品の販売支援、アフターサービス業務支援を行う。愛
も 1974 年のことであった(表 2-11)
。
ミニプリンターの「エプソン」ブランドが出来たの
は 1975 年、コンピュター用プリンター「M-80」を発
普生(中国)は 2004 年に「地域本部」の資格を取得
し、
「輸入権及び中国国内販売権」
、
「アフターサービ
スパーツの輸入を含めてのアフターサービスの提供」
、
売したのが 1980 年であったが、香港・深圳工場はこ
「国内外企業のアウトソーシング・サービス業務の受
のプリンターを製造するために築かれた(1980 年愛
託」
、
「物流配送サービス業務」
、
「傘下企業に関する
普生香港、1985 年愛普生技術〔深圳〕
)
。深圳工場は
財務サービス業務の提供」などの業務を可能にして
当初はミニプリンター生産が主力であったが、10 年
いる。
余後の 99 年に新工場を竣工し、インクジェット・プ
リンターのプラスチック成形、電子基板、ヘッド組立
(2)諏訪の中小精密機械製造企業
などから完成品までの一貫工場を築き、欧州向けカ
長野県諏訪圏(諏訪市、岡谷市、茅野市など)は、
ラー・プリンターの主力輸出工場としている。プリン
戦前は製糸業、製糸機械工業で栄え、戦後は時計、
ターではその後拠点の増設が続き、部品、ソフト工場
カメラ、オルゴールの産地として「東洋のスイス」と
を除いて 1989 年プリンターヘッド、パネルユニット
言われた。しかし、手仕事の職人仕事とは違って、
の天津愛普生、1991 年プリンタ・ミニプリンタ用イ
大量生産の大工場機械産業は、時代の波をまともに
ンクカートリッジの業全電子(深圳)
、1998 年インク
かぶる。
「東洋のスイス」が通用したのは 1970 年代
ジェット・プリンターの福建愛普生実達電子を築いて
までのことで、1980 年代に時代の主要産品はコン
いる。
ピューター、プリンターなどのメカトロニクス、さら
電子デバイスはセイコーエプソンになってから生み
に 90 年代後半からはナノテク、DVD、HDD などの
出した製品であり、このために 1996 年に江蘇省蘇州
デジタル機器へと急激に変転し、その構造変化に対
に蘇州愛普生が設立された。ここでは携帯電話やモ
応して諏訪の精密機械製造企業は変容を強いられた。
バイル機器向けの中小型液晶パネルや水晶デバイス
さらに 85 年以降の円高のなかではセイコーエプソン、
などを生産し、世界的な需要増に対応して 2001 年に
オリンパス光学工業、三協精機をはじめとする大企
液晶パネルに特化した第二工場を増設した。1995 年
業が中国などに海外移転を図り、親会社―下請け会
には上海に二つの関連製品製造拠点が設立されてい
社の共存共栄構造が崩れていった。諏訪の製造業は
るが、上海愛普生電子のほうは半導体の設計・開発、
1991 年をピークにマイナス成長に転じ、2001 年以降
上海愛普生磁性器件のほうは希土類ボンド磁石の製
は IT(情報技術)バブル崩壊の荒波を受け、中小機
造工場である。希土類ボンド磁石は中国でしか産出さ
械製造企業主は空洞化の脅威におののき、自立を迫
れない希少金属を原料とした超強力磁石で、セイコー
られた(
『地域開発』2004.10 「特集 日本のものづ
エプソンはこの生産量で世界第 2 位に位置している。
くりを支える――諏訪圏の挑戦」
)
。
一方、販売拠点としては 1999 年設立の愛普生(上
諏訪の中小機械製造企業主が、苦闘の中で生み出
図表 2-11 セイコーエプソンの中国進出
セイコーエプソン㈱
愛普生精工(香港)有限公司 香港
【投資形態】独資【資本金】8160 万 2000 米㌦【設立時期】1974
【業務内容】精密機器及び電子機器の製造
愛普生香港有限公司 香港
【投資形態】独資【資本金】200 万 HK ㌦【設立時期】1980【業務内容】プリンターなど情報画像製品、
LSI、LCD、水晶振動子、ミニプリンター、プラスチックパーツなど、各種電子部品の販売及びアフターサー
ビス(メーカー)
愛普生技術(深圳)有限公司 広東省深圳市
【投資形態】独資 【設立時期】1985【業務内容】プリンターの一貫生産(プリンタ組み立て、プラスチック
成形、電子基板、ヘッド組み立て、メタルプレス)
天津愛普生有限公司 天津市
【投資形態】合弁 【設立時期】1989【業務内容】プリンターヘッド、パネルユニットの組立
業全電子(深圳)有限公司 広東省深圳市
【投資形態】独資【資本金】2960 万 HK ㌦【設立時期】1991
【業務内容】プリンタ・ミニプリンタ用インクカートリッジの製造・販売
北京愛普生電子有限公司 北京市
【投資形態】独資【資本金】2 億 1000 万円【設立時期】1991
【業務内容】コンピューターのソフトウェアの開発及び販売
愛普生電子技術開発(深圳)有限公司 広東省深圳市
【投資形態】独資【資本金】300 万 HK ㌦【設立時期】1994【業務内容】電子部品の設計、技術サポート
上海愛普生磁性器件有限公司 上海市
【投資形態】合弁 【設立時期】1995【業務内容】希土類ボンド磁石の製造・販売
上海愛普生電子有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】350 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】半導体の設計・開発
蘇州愛普生有限公司 江蘇省蘇州市
【投資形態】独資【資本金】102 万 7000 元【設立時期】1996
【業務内容】水晶デバイス液晶表示体の製造・販売
愛普生(中国)有限公司 北京市
【投資形態】独資【資本金】100 万 5000 元【設立時期】1998
【業務内容】持株会社。中国内投資の統括管理、製品販売、アフターサービス支援
福建愛普生実達電子有限公司 福建省福州市
【投資形態】合弁【資本金】700 万米㌦【設立時期】1998
【業務内容】インクジェットプリンターの製造・販売
愛普生(上海)信息産品有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】1600 万元【設立時期】1999
【業務内容】コンピューター周辺機器などの完成品の販売事業
愛普生(北京)技術服務公司 北京市
【設立時期】2000
【業務内容】情報関連機器、電子デバイス、精密機器その他の開発・製造・販売・サービス
42 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 43
図表 2-12 諏訪圏中小機械製造企業の中国進出
㈱ミクロ発條 長野県諏訪市
【資本金】5000 万円【従業員】55 名
上海米克羅弾簧有限公司 上海市
【投資形態】独資【資本金】50 万米㌦【設立時期】1997【業務内容】精密バネの製造・販売
米克羅弾簧(大連)有限公司 遼寧省大連市
【投資形態】独資【資本金】115 万米㌦【設立時期】2001【業務内容】精密機器用バネの製造
㈱スワコー 長野県岡谷市
【資本金】4500 万円【従業員】220 名
SWACOO(HK)LTD. 香港
【投資形態】独資【資本金】100 万 HK ㌦【設立時期】1994
【業務内容】電子・電気・光学分野でプラスチックのフィルム・板・発泡材を主体とした 2 次加工
舒旺高電子科技(深圳 ) 有限公司 広東省深圳市
【投資形態】独資【資本金】220 万米㌦【設立時期】2003
【業務内容】電子・電気・光学分野でプラスチックのフィルム・板・発泡材を主体とした二次加工
㈱みくに工業 長野県岡谷市
【資本金】3000 万円【従業員】240 名
中国には、1997 年、独資 50 万米㌦で、はじめて
では、組立てメーカーのトヨタが海外に進出すると
進出した。中国が世界の製造工場となるにつれて OA
き、
「ジャスト・イン・タイム」はどうなるのか。
「ト
部品リモート・コントローラー用の微細スプリングの
ヨタグループ」のアイシン精機、デンソー、豊田工機
需要が増大することを予測して、需要のあるところに
などの基幹部品メーカーがトヨタにつきしたがってワ
最適立地して競争者を制し、顧客の開発を図ることを
ンセットで異郷の地に赴くのは理の当然であるが、数
意図した。微細スプリングは、1 個数十銭にすぎず、
百にものぼる協豊会レベル以下のサプライヤーはそう
超量産をしなければビジネスにならないが、この点、
はいかない。サプライヤーの方の事情はさておき、現
ものづくり大国は可能性を期待できた(小島信勇「世
地では国産化率を向上し、現地産業・企業の育成を
界トップシェアのものづくり」
『地域開発』2004.10)
。
願望しているから、可能な限り現地調達で「ジャス
2002 年上海工場は生産を拡大し、当初の 6 倍の規模
ト・イン・タイム」を満たすしかない。親会社は、ど
に成長した。
うしても現地調達が出来ない部品について、系列サプ
ミクロ発條は 2001 年、今度は倍額の資本を投じ
ライヤーに一緒に海外進出することを要請する。親会
て(独資 115 万米㌦)
、北の大連に打って出た。中国
社に声をかけられるにしろ、かけられないにしろ、協
市場への可能性を現実のものとしたミクロ発條小島信
豊会レベル以下のサプライヤーは海外に行くべきか、
勇社長は、この経験を諏訪の仲間にも広げようと、地
いかざるべきか、逡巡する羽目になる。その一方でト
元に「諏訪大連会」を組織する一方、諏訪市にはた
ヨタ系列外のサプライヤーにとっては、これは新たに
らきかけ、大連経済開発区の常設展示センターに「諏
トヨタに売り込む千載一遇のチャンスであり、機先を
深圳宝安美高仁精密電子厰 広東省深圳市
【設立時期】1992【業務内容】精密加工業、コネクター製造針製造
訪ブース」を設置させた。これがきっかけで、大連に
制して海外進出を敢行することにもなる。
進出する諏訪圏企業が続出した。2002 年カクショウ
珠海美高仁精密電子有限公司 広東省珠海市
【投資形態】合弁【資本金】260 万米㌦【設立時期】1995【業務内容】ソケット、ヘッドホンステレオなど
中国は 21 世紀に入るやいなやモータリゼーション
工業㈱の大連角正金属有限公司、2003 年渋江精密工
が始まって、世界の自動車メーカーがこぞって「最後
業㈱の大連保税区渋江精密機器有限公司などが、そ
の大市場」の制圧に乗り出しているが、トヨタは天津、
れである。
長春、四川、広州の 4 カ所で乗用車、SUV 車、小型
香港美高仁精密電子有限公司 香港
【投資形態】独資【資本金】1 万 HK ㌦【設立時期】2000
【業務内容】腕時計部品(針等)
、コネクタ用コンタクトピン、小径切削部品など精密電子部品の販売
深圳美高仁電子有限公司 広東省深圳市
【投資形態】独資【資本金】300 万 HK ㌦【設立時期】2003
【業務内容】コネクタ用コンタクトピン、小径切削部品の製造・販売
(3)天津の愛知県自動車部品製造企業
バスの生産をはじめている。天津では第一汽車と合弁
で、
乗用車のヴィオス
(2002 年 10 月生産開始)
、
カロー
トヨタ自動車躍進のカギのひとつである「ジャスト・
ラ(2004 年 2 月)
、クラウン(2005 年 3 月)
、第一汽
イン・タイム」は、
「必要な時に、必要なものを、必
車の本拠の長春では、
SUV 車ランドクルーザー(2003
要なだけ生産する」ことによって、部品在庫、製品在
年 9 月)と乗用車プリウス(2005 年)
、また四川では
庫を最小限に抑える。この方式が実行可能なのは「必
小型バス・コースター(2000 年 12 月)とランドクルー
国の WTO 加盟が現実 化した 2001 年から急 増し、
要な時に、必要なものを、必要なだけ」納品する優
ザー(2003 年 10 月)を生み出している。そして広州
「諏訪圏工業メッセ」は、諏訪圏 6 市町村の商工会議
2001 年 4 件、2002 年 4 件、2003 年 4 件、2004 年
秀な部品サプライヤーが、トヨタの周辺に集積してい
では広州汽車と組んでカムリの製造基地を建設中で
所、工商会が主催し、諏訪圏域の製造業の実力を示
3 件となり、諏訪市と岡谷市の中小機械製造企業が自
るからである。トヨタ自動車が「トヨタグループ」と
(2006 年生産予定)
、これは欧州市場に向けて輸出さ
し、ビジネスマッチングによる受注獲得、市場拡大に
力で中国に進出していくようになったことが如実に示
呼んでいるメーカーは、アイシン精機、デンソー、豊
れる。いまのところトヨタの中国における最大の製造
期待する「工業専門展示会」である。2002 年から毎
されている。以下では、このうち元気のいい ミクロ
田工機、豊田合成、トヨタ紡織など 10 数社に限られ
拠点は天津であり、トヨタの開業に向けての歴史も長
年開催され、2005 年は第 4 回目で、出展企業 255 社。
発條(本社 = 長野県諏訪市、資本金 5000 万円、従
ており、そのほとんどは愛知県本社企業である。
「ト
かったところから、トヨタの部品サプライヤーの集積
関東経済産業局、日本商工会議所などの後援も受け、
業員 55 名)の中国進出具体事例を紹介してみよう。
した自立策のひとつが「諏訪圏工業メッセ」である。
ヨタグループ」に次ぐ組織は協豊会で、1 車種 2 万を
も厚い。そこで以下では、天津における愛知県自動車
ミクロ発條の発條とはバネのことで、加工線径 0.1
超える部品を提供するサプライヤーで、日本全国に
部品メーカーの集積状況に探りを入れてみることにし
ミリ以下の微細なスプリングを製造している。代表的
208 社を数え、うち半数以上の 116 社が愛知県を中
たい。
製品にボールペンの先に使われるチップ用スプリン
心とする東海地区に存在する。トヨタと直接取引きす
図表 2-13 は、基幹部品サプライヤー「トヨタグルー
から諏訪市と岡谷市の中小機械製造企業(精密機器、
グがあり、車載用スプリングや各種電子部品用スプリ
る系列メーカーの下層には第二次、第三次サプライ
プ」の天津現地法人を一覧したものである。アイシン
電機機器、一般機械、金属製品)の中国進出動向を
ング、
ファインスプリング(髪の毛ばね)
、
血管用カテー
ヤーが裾野状に広がっているのは言うまでもないこと
精機はオートマチックトランスミッション、ブレーキ
抽出してみよう(図表 2-12)
。中国現地法人 32 社を
テルコイル等を手がけている。ミクロ発條はこうした
で、世界に君臨するトヨタ城は、愛知県を中心に広が
コンポーネントなどで 4 社、デンソーはカーエアコン、
設立時期順に並べてみると、1990 年から始まり 2000
微細スプリングの 24 時間無人稼動製造設備を自社開
る地域・地場部品サプライヤーによって持っていると
オルタネータ、スタータなどで 11 社、配下の子会社
年までは各年 1 件ないし 2 件で推移して来たが、中
発している。
言って過言でない。
を合体再編成したトヨタ紡織はシートや内装部品・外
地域産業再生のモデルと仰がれるまでになっている
(http://www.suwamesse.jp/)
。
ここでは中国進出企業がテーマであるから、本書
44 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
図表 2-13 天津進出の「トヨタグループ」
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 45
装部品で 3 社、
豊田合成はボディーシーリング、
ブレー
国の別の地点に現地法人を設けている場合も少なく
キホースなどで 3 社、そして豊田工機は自動車電子
ない。例えば、シロキ工業(ドア部品。昆山、広州)
、
アイシン精機㈱ 刈谷市
部品で 1 社の現地法人を設けている。天津にはトヨ
中央可鍛工業(鋳鉄製品。蘇州)
、
不二越(ベアリング。
天津艾達自動変速器有限公司
【投資形態】合弁 【設立時期】2004【業務内容】FR 車用オートマチックトランスミッション
愛信天津車身零部件有限公司
【投資形態】合弁【資本金】1 億 0060 万元【設立時期】2001【業務内容】自動車部品(ドアロック・ウィンドレギュ
レータ・ドアヒンジ・フードロック・フードヒンジ・アウトサイドハンドル・インサイドハンドルなど)
高丘六和(天津)工業有限公司
【投資形態】独資【資本金】250 万米㌦【設立時期】2001【業務内容】自動車鋳鍛造部品
愛徳克斯(天津)汽車零部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】1208 万米㌦【設立時期】2004【業務内容】自動車用ブレーキコンポーネント
㈱デンソー 刈谷市
天津電装空調有限公司
【投資形態】合弁【資本金】1508 万 8000 米㌦【設立時期】1997【業務内容】カーエアコン、ラジエータ等
天津電装電機有限公司
【投資形態】独資【業務内容】オルタネータ、スタータ
天津富奥電装空調有限公司
【投資形態】合弁【資本金】1225 万米㌦【設立時期】2003【業務内容】カーエアコン
天津電装汽車電機有限公司
【投資形態】合弁【資本金】1 億 3800 万元【設立時期】1995【業務内容】スタータ、オルタネータ
天津豊田紡汽車部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】230 万米㌦【設立時期】2004
【業務内容】エアフィルター、オイルフィルター、キャビンエアフィルター
天津電装電子有限公司
【投資形態】合弁【資本金】21 億 9000 万円【設立時期】1997
【業務内容】自動車用電子部品 (EFI /ヒューエルポンプ )
天津吉愛希(GAC)空調有限公司
【投資形態】独資【資本金】2 億 5000 万円【設立時期】2004
【業務内容】カーエアコン部品の生産、エアコン用ホース、配管
天津阿斯莫汽車微電機有限公司
【投資形態】合弁【資本金】6884 万元【設立時期】1996【業務内容】自動車用小型モーター
電装(天津)空調部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】4200 万米㌦【設立時期】2005【業務内容】カーエアコン用熱交換器、ラジエータ
日聯汽車零部件貿易(天津)有限公司
【投資形態】合弁【資本金】40 万米㌦【設立時期】2004
【業務内容】自動車市販製品、自動車用アフターマーケット製品
電装(天津)汽車導航系統有限公司
【投資形態】合弁【資本金】100 万米㌦【設立時期】2005【業務内容】カーナビゲーションシステム
トヨタ紡織㈱ 刈谷市
天津英泰汽車飾件有限公司
【投資形態】合弁 【設立時期】2003【業務内容】自動車用内装部品と外装部品
天津華豊汽車装飾有限公司
【投資形態】合弁【資本金】2 億 3108 万元【設立時期】1995【業務内容】シート及び内装品・成形品
天津豊田紡汽車部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】230 万米㌦【設立時期】2004
【業務内容】エアフィルター、オイルフィルター、キャビンエアフィルター
豊田合成㈱ 西春日井郡春日町
天津星光橡塑有限公司
【投資形態】合弁【資本金】6749 万 7000 元【設立時期】1994【業務内容】自動車用ボディーシーリング製品
天津豊田合成有限公司
【投資形態】合弁【資本金】3200 万元【設立時期】1996
【業務内容】自動車用ブレーキホース及び CVJ ブーツ、ガスケット、燃料ホースなどゴム機能部品
豊田合成(天津)精密製品有限公司
【投資形態】独資【資本金】705 万米㌦【設立時期】2004【業務内容】携帯電話等の精密部品
豊田工機㈱ 刈谷市
豊田工機汽車部件(天津)有限公司
【投資形態】独資【資本金】3107 万 2000 元【設立時期】2003【業務内容】自動車電子部品
タ自身も、大物プレス金型の豊田一汽(天津)模具、
上海、東莞)
、大豊工業(軸受。煙山)
、大同メタル工
鍛造粗形材の天津豊田汽車鍛造部件、乗用車エンジ
業(軸受けメタル、蘇州)といった具合で、中国沿海
ンの天津豊田汽車発動機、
ステアリング、
プロペラシャ
中央部の上海近辺に拠点を置いて、南北沿海あるい
フトの天津津豊汽車底盤部件、等速ジョイントの天津
は長江沿い内陸部の複数セットメーカーとの関係を狙
豊津汽車伝動部件や R&D の豊田汽車技術中心
(中国)
う布陣を敷いているところが目立つ。その中には小糸
を配置しており、これらが天津トヨタの製造核心部を
製作所のように中国では上海フォルクスワーゲンや上
形成している。
このほか「トヨタグループ」メーカーには豊田自動
海 GM の自動車用ライトをつくって、トヨタ系列離れ
を起こしているメーカーもある。
織機と愛知製鋼がいるが、豊田自動織機は江蘇省昆
次に図表 2-15 は、天津進出の協豊会メンバー外の
山市にあってフォークリフトを製造する一方で鋳造部
愛知県サプライヤーを一覧にしたものである。これ
品や金型を供給している。また、愛知製鋼は上海で
らの企業はトヨタと直接取引きしていないところに特
自動車用鍛造品をつくって南北のトヨタ製造拠点に供
徴がある。マイティミズタニは自動車部品の金型メー
給態勢をとっている。
カーであり、フタバ産業が主要取引先である。プラセ
図表 2-14 は、
トヨタのサプライヤー協豊会メンバー
スはプラスチック部品の金型設計を行い、自動車のほ
でしかも愛知県本社企業の、天津にある現地法人 19
か OA 機器、エレクトロニクス分野に手を広げている。
社を抽出したものである。上場企業も非上場企業も
丸三金属は金型加工業で自動車モールも作るが、製
あるが、平均的には資本金 100 億前後、従業員 2000
缶板金、建築樹脂部品、IT 関連フィルムインサート
余という大企業が多く、資金力、組織力、技術力があ
成形もやる。そして、豊通エンジニアリングは自動車
り、独立性がある。専業部品メーカーと素材メーカー
生産ラインの工程整備のほかに計測・制御機器ソフ
とがあり、自動車製造にとって最も重要な機能・役割
ト開発、各種機械の設計・制作など手広い。
を果たすものばかりである。このうち愛三工業はキャ
これらの企業はトヨタと直接取引きはないが、
「ト
ブレター、スロットルボディなど、フタバ産業は燃料
ヨタグループ」あるいは協豊会メンバーを介してビジ
タンク、ボディ部品を製造している。アドヴィックス
ネスが開けている。事実、図表 2-15 の 4 社のうち 3
は ABS などブレーキ系統に長じてひときわ技術力が
社(マイティミズタニ、プラセス、豊通エンジニアリ
高い。また、中央発條はバネ専業で制御用ケーブル、
ング)は豊田通商との共同出資で天津に出て行ってい
サスペンション部品を、東海ゴム工業はゴム専業で防
る。豊田通商は「トヨタグループ」の一員で、トヨタ
振ゴム、
内装部品などを供給している。アイシン・エィ・
の自動車部品・素材の調達支援をビジネスの中核に
ダブリュ、アイシン高丘のようにアイシン精機の系列
すえており、中国における自動車部品、素材製造企業
会社もここに並んでいる。
をオルガナイズしている。豊田通商が一部出資して自
これらのメーカーの多くは、トヨタの第 4 の拠点で
あり、ホンダ、日産も拠点を構える広州を中心とする
動車部品専門メーカーとともに築いた中国の部品製造
現地法人は 30 社近い。
華南にも 2004 年以降すでに結集している。愛三(佛
しかしながら、協豊会メンバー外のトヨタ部品サプ
山)汽車部件、広州双葉汽車部件、佛山東海理化汽
ライヤーは、日本において協豊会 208 社の数倍はあ
車部件、東海橡塑(広州)
、アドヴィックス(広州)
ると思われるが、中国に進出している企業は微々たる
汽車部件などがそれである。この華南拠点が系列外
比率である。トヨタ城下の中小部品サプライヤーは、
の現地外資組み立てメーカーの受注を狙っているの
トヨタの中国進出に際してその後につきしたがうこと
は言うまでもない。
が出来ていないと見られる。中国における新たなトヨ
東海地区の協豊会メンバーは 116 社を数えるから、
タの出城で第二次、第三次サプライヤーとなっている
天津に進出しているプライヤーは 5 分の 1 ほどで、
のは、中国で生産活動をしている外資系サプライヤー
中国に行っていない企業も多いが、天津ではない中
や中国地場の自動車部品メーカーと見て間違いない
46 [解説 2]ローカル産業・企業の中国進出
[解説 2]ローカル産業・企業の中国進出 47
図表 2-14 天津進出の協豊会・愛知県サプライヤー
上場企業
愛三工業㈱ 大府市
天津愛三汽車附件有限公司
【投資形態】合弁【資本金】7918 万元【設立時期】1995【業務内容】自動車用キャブレター、
スロットルボディ
愛三(天津)汽車部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】1 億 2800 万元【設立時期】2003【業務内容】スロットルボデー、キャニスタなど
フタバ産業㈱ 岡崎市
天津双葉協展機械有限公司
【投資形態】独資【資本金】100 万米㌦【設立時期】2004【業務内容】燃料タンク・ボディ部品の製造及び金型
天津双協機械工業有限公司
【投資形態】独資【資本金】300 万米㌦【設立時期】2002【業務内容】自動車ボディ部品
㈱東海理化電機製作所 丹羽郡大口町
天津東海理化汽車部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】800 万米㌦【設立時期】2001【業務内容】スイッチ類を中心とした自動車部品
天津井上高分子材料製品有限公司
【投資形態】独資【資本金】80 万米㌦【設立時期】2004
【業務内容】ウレタン・ゴム・プラスチックなど高分子素材製品
中央発條㈱ 名古屋市
天津中発華冠機械有限公司
【投資形態】合弁【資本金】2382 万元【設立時期】2003【業務内容】制御用ケーブル
天津中発富奥弾簧有限公司
【投資形態】合弁【資本金】4000 万元【設立時期】2003【業務内容】自動車用サスペンション部品
東海ゴム工業㈱ 小牧市
東海橡塑模具(天津)有限公司
【投資形態】合弁【資本金】2 億 8080 万円【設立時期】2003
【業務内容】自動車用ゴム・樹脂金型及び治工具並びに関連部品
東海橡塑(天津)有限公司
【投資形態】合弁【資本金】1400 万米㌦【設立時期】1995
【業務内容】各種自動車用ゴム製品並びに産業用ゴム製品、樹脂製品
東海化成(天津)汽車部品有限公司
【投資形態】独資【資本金】3 億 5000 万円【設立時期】2004【業務内容】自動車用内装部品
東海模具(天津)有限公司
【投資形態】合弁【資本金】1400 万米㌦【設立時期】2003【業務内容】防振ゴム用金型
非上場企業
㈱アドヴィックス 刈谷市
愛徳克斯(天津)汽車零部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】1208 万米㌦【設立時期】04.2【業務内容】自動車用ブレーキコンポーネント
アイシン・エィ・ダブリュ㈱ 安城市
天津艾達自動変速器有限公司
【投資形態】合弁【資本金】3000 万米㌦【設立時期】04.3【業務内容】FR 車用オートマチックトランスミッション
アイシン高丘㈱ 豊田市
高丘六和(天津)工業有限公司
【投資形態】独資【資本金】250 万米㌦【設立時期】01.10【業務内容】自動車鋳鍛造部品
マルヤス工業 名古屋市
天津馬魯雅斯管路系統有限公司
【投資形態】合弁【資本金】3571 万 7500 元【設立時期】04.3【業務内容】曲げ加工/端末加工
㈱中外 名古屋市
天津日特固防音配件有限公司
【投資形態】独資【資本金】120 万米㌦【設立時期】03.9【業務内容】自動車防音材
㈱三五 西加茂郡三好町
天津三五汽車部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】500 万米㌦【設立時期】03.4【業務内容】自動車用排気系部品及び鉄鋼二次加工品
豊田鉄工㈱ 豊田市
天津豊鉄汽車部件有限公司
【投資形態】独資【資本金】420 万米㌦【設立時期】03.4【業務内容】自動車プレス、溶接部品
図表 2-15 天津進出の愛知県中小企業サプライヤー
㈱マイティミズタニ 瀬戸市
【従業員】87 名【業種】機械
天津双葉協展機械有限公司
【投資形態】独資【資本金】100 万米㌦【設立時期】04.1
【業務内容】フューエルタンク・ボディー部品及び金型
㈱プラセス 宝飯郡小坂井町
【資本金】1510 万円【従業員】国内 164 名【業種】化学
富来精工(天津)有限公司
【投資形態】独資【資本金】4 億 2000 万円【設立時期】03.9
【業務内容】OA 自動車エレクトロニクスなどの樹脂金型、樹脂精密、特殊成型部品
㈱丸三金属 安城市
【資本金】4600 万円【従業員】55 名【業種】金属製品
丸東(天津)技研有限公司
【投資形態】独資【資本金】165 万米㌦【設立時期】95.1【業務内容】自動車モール
豊通エンジニアリング㈱ 豊田市
【資本金】6000 万円【従業員】254 名【業種】卸売業
天津豊通汽車設備有限公司
【投資形態】独資【資本金】50 万米㌦【設立時期】03.12【業務内容】自動車設備のエンジニアリング
であろう。
小公庫レポート No.2002-2)
コスト競争力の優位を武器に中国における自動車
なお、協豊会メンバーは愛知県に限らず、関東地
部品の生産が増加すれば、その余波は愛知県をはじ
区に 63 社、関西地区に 28 社存在するが、彼らのな
めとする日本国内にも及び、中小自動車部品メーカー
かで天津に進出しているものが 12 社いる。煩雑にな
の受注量が減少することが予想される。愛知の中小自
るので、一覧表は割愛して社名だけを掲げると、以下
動車部品メーカーは改めて次のような選択を迫られる
の通りである。
であろう。
㈱ソミック石川、関西ペイント㈱、スタンレー電
(ⅰ)中国への事業展開(直接展開、技術供与等)
気㈱、古河電気工業㈱、住友電気工業㈱、住友電装
(ⅱ)中国での生産価格をベンチマークとしたコスト
㈱、住友電気工業㈱、関西ペイント㈱、富士通テン㈱、
競争力の追求
(ⅲ)開発力の強化による製品高度化、差別化
矢崎総業㈱、日東電工マテックス㈱、アスモ㈱。
また、協豊会メンバー外で、しかも愛知県外という
(ⅳ)異業種・新分野への展開
アウトサイダーの自動車部品サプライヤーで、天津に
(ⅴ)他者(社)との補完的協業
進出している企業は以下の通りである。
(中小企業金融公庫調査部西岡正『大手自動車メー
カーの中国進出と中小部品産業への影響と対応』中
オリジン電気㈱、古河スカイ㈱、㈱多賀製作所、
東邦亜鉛㈱。