JR 九州 豪華列車 「ななつ星 in 九州」の概要

寄稿
JR 九州 豪華列車
「ななつ星 in 九州」の概要
1. はじめに
ており、客室 14 部屋、最大定員 30 名の贅
日本初の陸のクルーズで、和の魅力にあふ
沢な客室空間となっている。製造所は、機関
れた九州をめぐり、今までにない心ゆたかな
車が川崎重工業、客車の 1 ~ 3 号車は小倉
時間を提供する、豪華列車クルーズトレイン
総合車両センター、4 ~ 7 号車は日立製作所
「ななつ星 in 九州」が平成 25 年 10 月 15 日、
である。車両のデザインは、これまで多くの
運行を開始した。
D&S( デザイン&ストーリー ) を手がけてきた
コンセプトを「新たな人生にめぐり逢う、
水戸岡鋭治氏が担当した。
旅。」としており、列車名は、「九州の 7 つの
県」、「九州の主な 7 つの観光素材 ( 自然、食、
2.DF200 形ディーゼル機関車の概要
温泉、歴史文化、パワースポット、人情、列車)」
“ななつ星 in 九州”( 以下「ななつ星」とい
「7両編成の客車」に由来し“ななつ星in九州”
う ) 専用牽引機である DF200-7000 は、JR
と名づけた。
貨物殿開発の DF200 形式電気式ディーゼル
列車はすべて新製車両で、DF200 形ディー
機関車をベースに客車牽引仕様とした。
ゼル機関車と 77 形客車 7 両の固定編成とし
駆動システムは、発電用ディーゼルエンジ
ン、交流発電機を 2 群搭載し、発電した電力
をインバータ装置により三相交流に変換し、
6 台の走行用誘導電動機を駆動する。エンジ
ンの定格出力は合計 2,648kW、最大引張力
は327kN、運転最高速度は100km/hである。
ブレーキは、DF200 だけでなく、他形式
でのプッシュプル運転にも対応できる様、電
気指令式、空気指令式、電空変換式の 3 パター
ン設けている。
2013.9.13 車両初公開式典の様子
(小倉総合車両センターに於いて)
九州旅客鉄道株式会社
運輸部車両課
沖 真司
DF200-7000 外観
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鉄道車両工業 469 号 2014.1
寄稿
3. 77 形客車の概要
管理、各車両の水量監視、機器故障情報確認
3.1 外観デザイン
を行える。また、各部屋との連絡インターホ
車体は、強度、遮音性、断熱性に優れたア
ンや、全車一斉放送、BGM の制御ができる
ルミダブルスキンとした。発電エンジン発電
AV モニタも設けており、総合受付としての
機を備えた 1 号車、2 号車の床下は側面をカ
機能も兼ね備えている。
ウルで被い、3 ~ 7 号車はミニスカートを
取付けるデザインとし、騒音対策も合わせて
行っている。側窓ガラスは室内空調の快適化
と防音のため UV カットのペアガラスとし、
客室にはロールカーテン、障子、木製を備え
ている。側引戸にはステンドグラスを採用し
た。カラーリングは、この車両のために調合
した、重厚感のある『古代漆色』で、水磨ぎ後、
クリア塗装をしている。さらに、車体側面に
は高級感に満ち溢れた金色のエンブレムを施
し、ピカピカに輝く車両となった。
1 号車室内より車端の展望窓を見た様子
3.3 2号車 ( ダイニングカー )
2 号車 ( マシフ 77-7002) には厨房設備を
設け、格子天井に照明を組み込んだ光天井か
ら降り注ぐやわらかい光の下、九州各地の新
鮮で旬な食材を召し上がっていただける。床
や壁はペアウッド木材を採用し、1 号車とは
異った明るい色調の車両としている。車内に
は、さくらの木を使用した二人掛けと四人掛
けのテーブルの他、ガラスで覆ったセミコン
パートメントの四人席や日本の伝統に触れて
光沢あるボディーに光輝くエンブレム
いただける立席の茶室を用意している。
3.2 1 号車 ( ラウンジカー )
1 号車 ( マイ 77-7001) は、サービスの拠
点となる車両で、展望席やバーカウンターが
あり、落ち着いた「大人の時間」を過ごせる
スペースとなっている。アーチ状の格子天井
や矢筈模様のフローリング、金色に縁取られ
たガラスのパーティションに金色のオリジナ
ル照明、大きな組子細工等など豪華なものを
備えた車内で、ヴァイオリン・ピアノの生演
奏を聴きながら、お客さま同士やクルーとの
2 号車の光天井と車内の様子
交流をお楽しみいただくことができる。また、
3.4 3号車~6号車 ( スイートルーム )
バーカウンターでは、モニタ装置による空調
3 ~6号車 ( マイネ 77-7003 ~ 7006) の
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項
定
目
1号車ラウンジ車
2号車ダイニング車
3号車スイート車
4号車スイート車
5号車スイート車
6号車スイート車
7号車DXスイート車
マイ77
マシフ77
マイネ77
マイネ77
マイネ77
マイネ77
マイネフ77
車 号
7001
7002
7003
7004
7005
7006
7007
座 席 数(寝台数)
-
-
6
6
6
6
4(6)
形
員
式
立 席 数(荷重)
-
-
-
-
-
-
-
重 量
自重/空車重量(t)
42.9/45.3t
42.5/45.2t
42.5/45.4t
42.0/44.3t
41.4/44.3t
41.8/44.2t
42.1/45.1t
主要寸法
最大長(mm)
20500mm(連結面間)
最大高(mm)
4080mm
車体外部の幅(mm)
2936mm
台車中心間距離(mm)
14150mm
最高運転速度(km/h)
台
車
形
100km/h
TR407K
式
車輪直径(mm)
810mm
固定軸距(mm)
2100mm
空気ばね
枕 ば ね
連結器
先頭:密着式自動連結器 中間:密着連結器
緩衝装置
電源機関
形
ゴム式緩衝器
式
SA6D140HE-2
SA6D140HE-2
-
-
-
-
-
定格出力(PS)
377PS
377PS
-
-
-
-
-
回転速度(rpm)
1800rpm
1800rpm
-
-
-
-
-
1
1
-
-
-
-
-
台 発電機
形
数
式
電源容量(kVA)
発生電圧(V)
暖房装置
冷房装置
方
式
DM700K
-
-
-
-
-
440kVA
-
-
-
-
-
AC440V
AC440V
-
-
-
-
-
電気暖房
電気暖房
電気暖房
電気暖房
電気暖房
電気暖房
電気暖房
容 量
4kW×2
4kW×2
形式×個数
AU700K×2
AU700K×2
容 量
ブレーキ方式
DM700K
440kVA
1.5kW×2(1台当り) 1.5kW×2(1台当り) 1.5kW×2(1台当り) 1.5kW×2(1台当り) 1.5kW×2(1台当り)
AU701K×5
AU701K×5
AU701K×5
AU701K×5
空気指令併用電気指令式
常用/非常ブレーキ
空気圧縮機
AU701K×5
21000kcal/h(1台当り) 21000kcal/h(1台当り) 6000kcal/h(1台当り) 6000kcal/h(1台当り) 6000kcal/h(1台当り) 6000kcal/h(1台当り) 6000kcal/h(1台当り)
-
-
-
運転保安設備
スクロール回転式
-
スクロール回転式
-
運転状況記録装置
客車主要諸元
スイートルームは各車 3 室 ( 定員 2 名 ) 設けて
リー仕様として車いすのお客さまに配慮した
おり、「美と機能を兼ね備えたスペシャルな
通路幅、入り口幅を確保し、オストメイトも
スイート」を目指した。各部屋の床から天井
設置している。
まで、それぞれ異なった木材(ウォールナット、
メイプル、サクラ、ペアウッド、米松等全9
種類 ) を使用し雰囲気を変えている。全室に、
冷蔵庫、温水洗浄機能付き暖房便座、ヒノキ
に覆われたシャワールームを装備し、洗面台
の鉢には故十四代酒井田柿右衛門氏の作品を
設けている。天井は、ドーム型に、木材と漆
喰シートで格子のモールで装飾した仕上げと
している。窓には、カーテン、板戸、障子、
木製ロールブラインドの4つの遮光器具を構
302 号室の様子
成し、その時々のお好みの外光を選んでい
ただける。1、2 号車と同様に客室にも、な
3.5 7号車 ( デラックススイートルーム )
なつ星のためにデザインした金メッキ仕上げ
7 号車 ( マイネフ 77-7007) に「特別なあ
のオリジナル照明を用意し、枕もとの操作パ
なたにふさわしい、最高の居心地」を提供す
ネルにて調光できる仕様とした。昼間にはソ
るためデラックススイート2室 ( 定員各室3
ファーとなるオリジナルのベッドに横たわり
名 ) を設けた。デッキの床には黒御影石、客
ながら景色を楽しめるよう、目線を考慮し車
室に至る通路には真鍮製のななつ星マークが
窓を配置している。3号車の1室はバリアフ
組み込まれた大理石を使用している。その通
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鉄道車両工業 469 号 2014.1
寄稿
路には源右衛門氏の手洗い鉢が置かれてい
4. おもてなし
る。701 号室の部屋の広さは約 21 ㎡あり、
4.1 地元の方々によるおもてなし
床、壁にはペアウッド木材を採用し壁はモー
「ななつ星」が走る九州各地において、到
ル仕上げとした。ペアウッドに箔押加工の格
着駅や沿線での多くの地元の方々によるおも
子天井や、ベッドルームの仕切りは組子を採
てなしや、各観光地では貴重な文化に触れる
用し、就寝時に組子を閉めると幻想的な空間
ことができる。3泊4日コースでは薩摩焼の
を醸し出す。デスクのスタンドライト、エキ
地元である「沈壽官窯」で絵付けを体験して
ストラベッドのサイドテーブルに置かれたス
いただくほか、年に一度しか公開されない茶
タンドライトは故十四代酒井田柿右衛門氏の
室を特別に見学することができる。また、薩
作品である。車端部の一面には1号車と同等
摩藩島津家の別邸「仙巌園」では鹿児島の伝
の展望窓を設け、パノラマビューを楽しんで
統工芸品である薩摩切子の工房でガラス作り
いただける。この窓にある電動スクリーンを
体験を楽しんでいただいている。1泊2日
降ろし、可搬式のプロジェクタ、ブルーレイ
コースでは九州の北西部を周遊でき、異国情
プレーヤーで映画鑑賞が可能である。702 号
緒あふれる「長崎さるく」等が堪能できる。
室は広さが約 17 ㎡であり、照明器具には今
4.2 クルーによるおもてなし
泉今衛門氏の作品が置かれている。
専門教育を受けた専属のクルーが旅の全工
程をお供する。ラウンジカーでの食事の提供、
客室案内・清掃・ベッドメイキング等、ご乗車
のお客さまが快適に心地よい時間を過ごすこ
とができるよう、きめ細かなサービスを提供す
る。特に走行中の車内でのシャンパン等の飲み
物や食事提供には細心の注意を払っている。
5. おわりに
これまでに、平成 26 年 6 月出発分までの
701 号室の様子
抽選は終了しており、倍率は 9 倍と九州に限
らず、全国各地から多くのお申し込みをいた
だき、期待の大きさを感じている。10 月 15
日の営業開始日より立ち寄る駅や沿線で多く
の方々が旗を振り、地元の方によるイベント
等、歓迎をしていただいている。新しい魅力
的な鉄道の旅を創造し、日本全国、そして世
界へ発信していくという「ななつ星」は今そ
の一歩を踏み出した。九州旅客鉄道 ( 株 ) はこ
の新しいサービスを高いレベルで維持し、さ
702 号室の様子
らに磨きをかけ、育てていく所存である。
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