世界一の麺包 麺包(メンパオ)とは中国語でパンの意味。台北には麺包を売るホームベーカリー(工房を併設す るパン屋)を街のそこかしこで見かけます。高級ホテルのレストランでも採用される「福利麺包(フ ロリダベーカリー」をはじめ、気軽に買えるチェーン店のホームベーカリーがたくさん。どの店も地 域住民で賑わう様子を見て、台北でのパン人気の高さを伺うことができたのです。 ワールドチャンピオンに輝いたパン職人の店へ パンの本場、パリでは 4 年ごとにベーカリーワールドカップ「coupe du monde(クープ・デュ・モン ド)de la boulangerie」(国別対抗戦)を開催。世界から選ばれた 12 カ国が参加し、各国 3 名で構成 されるチームが指定された作業場と与えられた材料を使って、規定の品目を 8 時間以内に仕上げ、 技術、スピード、芸術性を競うというもの。この大会の予選と本選出場者のなかから審査でとくに 優秀であると選出された個人がパン職人世界一を決める大会「coupe louis lesaffre :masters de la boulangerie( マスター・ドゥ・ブーランジュリー)」への出場機会が与えられます。フランスパンな ど穀粉、イースト、水、塩だけで作る食事パンとそのバリエーションの「バゲット・パンスペシオ部 門」、菓子パンの「ヴィエノワズリー部門」、「飾りパン部門」からそれぞれ 8 名ずつ、計 24 名が選 出。技術と知識、芸術性を競い合い、各部門の優勝者には「マスターベーカー」の称号が与えられ ています。この「マスター・ドゥ・ブーランジュリー」の 2010 年大会で「バゲット・パンスペシオ部門」 においてマスターベーカーに輝いたパン職人の店が高雄のほか、台北にもあると知って、ぜひ世 界的に評価されたパンを食べてみたいと思いました。店は松山文創園區の敷地内にあるショッピ ングモール「誠品生活・松菸店(the eslite spectrum)」の地下 2 階に入っています。パン職人の名 は呉寶春さんで、店名は「呉寶春麥方店(WU PAO CHUN BAKERY)」といいます。 ▲誠品生活・松菸店と呉寶春麥方店の外観 行列を覚悟したけれど・・・ 取材に先駆けていろいろと読み漁った 2015 年版の台北ガイドや台北特集の雑誌では、「呉寶 春麥方店」でパンを買うには長蛇の行列を覚悟、といった文言を目にしました。このブログネタに ぜひ訪ねてみたいと考えていたものの、並んで待つのが大の苦手。混雑が予想される週末、おそ るおそる足を運んでみたら、並ばずスムーズに入店できたことに拍子抜け。実は話題のレストラン など、ほかにも行列必至という店の記述をいくつも目にしていたのですが、半年以上前のガイド、 雑誌情報はすでに時流から遅れているのかもしれません。それらの人気店の多くが空いていたの です。東京以上に台北の人はトレンドにいちはやく飛びつき、また心離れるのも速いのでしょうか。 ▲焼きたてパンが種類豊富に並ぶ週末の午前中。意外と空いていました 上品で多種 店に入って驚かされたのはパンの種類の多さ。パリで認められた食事用パンはもちろん、菓子 パン、惣菜パンが多種多様に並んでいます。トースト用 6 種の食パン、クリームパンやカレーパン などのジャパニーズスタイルのパン、バゲッドやベーグルなどヨーロピアンスタイルのパン、6 種の クロワッサンなどなど、どれもが上品なたたずまい。いろいろな好みに応じる品揃えのうえ、見た 目も実においしそう。どのパンを買うか目移りしてしまいます。街なかの気軽なホームベーカリーと は店と商品のクオリティが明らかに違うなと率直に感じました。大いに迷いながらも、ゆったりと吟 味できる空間。上質な店の雰囲気も作用して、とても気分が高揚します。11 時の開店から昼まで、 昼から午後 3 時まで、午後 3 時から 5 時までと 3 段階で焼かれたパンが店頭に出されていくので すが、ホームページではそのパンの名前と出されるタイミングを公開しています(中国語)。それを 参考に店を目指す時間を判断したらいいと思います。 ▲どれも大ぶりで食べごたえありそう。きびきびと朗らかな接客も上質。撮影もにこやかに許可してくれました 受賞パンをおみやげに 欲しいものは訪問前から心に決めていました。それはベーカリーワールドカップで受賞した食 事用パン。2010 年の「マスター・ドゥ・ブーランジュリー」の食事パン部門で世界一のパン職人と なったときに焼いていたのが「荔枝玫瑰麵包(Taiwan Litchi Rose champion Bread)」。ライチリキ ュール、ドライライチ、カリフォルニアのクルミ、オーガニックなバラの花びらなどを主材料とするパ ン。どうせならば世界一のパンをと心動きましたが、結局手を伸ばしたのは「酒釀桂圓麵包 (Taiwan Longan with Red Wiine Bread)」というパンでした。こちらは 2008 年大会で第 2 位に入賞 を果たし、赤ワイン、クルミ、果実のリュウガン(龍眼)が主材料。バラの香りよりもリュウガンの風 味に惹かれて求めることにしたのでした。それにしてもどちらのパンも大きく、ずしりと重い。値段も 350 元(約 1,400 円)と立派ですが、ひとくち食べたら、噛むほどに材料の味わいが増していくおい しさが特別な食の感動をもたらしてくれます。 ▲「酒釀桂圓麵包」。弾力に富み、生地がぎっしり。常温で 30 時間、切り分けて冷凍すれば 2 週間はおいしく食べられるそうです
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