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プロジェクト実習レポート
「SK-Ⅱの顧客リ・デザイン ~キレイのヒ・ミ・ツ~」
2005 年 8 月 20 日
【グループ7】
053B231B 澤井恭子
051B232B 柴田一馬
050B233B 清水
敦
058B234B 杉田拓臣
056B235B 高田佳子
〔目次〕
1.はじめに
2.マックスファクター株式会社及び SK-Ⅱの概要
3.市場環境と SK-Ⅱの位置づけ
3.1.スキンケア市場の現状
3.2.化粧品流通の概況
3.3.競合他社の動向
4.4.SK-Ⅱの業績
4.SK-Ⅱのマーケティング戦略
4.1.SK-Ⅱのプロダクト戦略
4.2.SK-Ⅱの流通戦略
4.3.SK-Ⅱのプロモーション戦略
4.4.SK-Ⅱの価格戦略
5.競合との比較
5.1.プロダクト戦略の比較
5.2.価格戦略の比較
5.3.流通戦略の比較
5.4.プロモーション戦略の比較
5.5.その他
6.まとめ
7.最後に
本稿では、SK-Ⅱについて、1980 年より 25 年間変らない形・価格を打ち出し、
競合ブランドが次々と登場する中、売上を伸ばし続けていることに注目する。検討して
いくに当たっては、市場環境と SK-Ⅱの位置づけ、SK-Ⅱのマーケティング戦略、
競合との比較を行った。そこから、不変のスタンスによるロイヤルカスタマー維持と、
時代に合わせた顧客関係のリ・デザインを行うことによって顧客のニーズに即した新製
品投入とプロモーションを展開した結果、ロイヤルカスタマーと同時に新たな顧客を囲
い込み、高級スキンケア市場での地位を不動のものとしている SK-Ⅱの優位性を導き出
した。
キーワード
25 年不変の形・価格、高級スキンケア、不変のスタンス
絶え間ない変化、顧客関係のリ・デザイン
1.はじめに
SK-Ⅱのフェイシャルトリートメントエッセンスはなぜ 25 年もの長い間、顧客から支持され続けてい
るのかについて我々は興味を持ち、発売して 25 年たった今でも形・価格を変えず存在している SK-Ⅱ
の化粧水の強さの秘密について、顧客関係のリ・デザインという観点から検討を重ねることにした。
化粧品市場は、大きく 6 つの品目別市場にわけられる。その 6 つとは、スキンケア、メイクアップ、
フレグランス、ヘアケア・ヘアメイク、ボディケア、メンズコスメティクスである。SK-Ⅱは主にスキ
ンケア市場に位置づけられる。スキンケアとは、年齢や環境によって酷使される肌を整え、健やかに保
つ製品のことであるが、同市場においては競合ブランドが次々と登場し、成長の乏しいマーケット状況
下にある。しかし、SK-Ⅱは年々売上を伸ばし続け、2004 年のスキンケア市場ではブランドシェア第3
位を維持している。また、上位 2 ブランドとは一線を隔した高級スキンケアブランドとしての地位を欲
しい儘にしている。
SK-Ⅱの伝統と革新の融合から、そこに潜む不変のスタンスと、時代と顧客のニーズに合わせた絶え
間ない変化を続けている顧客との関係のリ・デザインを検証するため、本稿の構成としてマックスファ
クター株式会社の概要と SK-Ⅱの製品概要、市場環境と SK-Ⅱの位置づけを 4C のフレームを用いて明
らかにし、SK-Ⅱのマーケティング戦略、競合との比較については 4P フレームの用いて明らかにして
いく。
2.マックスファクター株式会社及び SK-Ⅱの概要
マックスファクター株式会社は、1987 年 6 月に設立(1953 年 6 月創業)され、1991 年には P&G が、
全世界のマックスファクター事業部を買収し P&G グループの一員となる。資本金 4 億円、売上高は 2004
年度において約 9053 億円である。事業内容は、日本における化粧品・ビューティーケア製品・医薬品
などの販売、輸出入を行い、事業所は本社:神戸市灘区、支店:PS 北海道、PS 東北、PS 東京、PS 関東
1、PS 関東 2、PS 愛三岐、PS 近畿 1、PS 近畿 2、PS 中四国、PS 九州、TODS 工場:滋賀にある。従業員
1
数は約 1700 名、商品ブランドとして、3 ブランドを展開している。主力の高級スキンケアブランド「SKⅡ」をはじめ、化粧品総合ブランド「マックスファクター」
(1998 年発売)、スキンケアブランド「イリ
ューム」(2001 年発売)がある。
同社の歴史は、1900 年初頭マックスファクターI 世がハリウッドで映画スターをより美しく映し出す
ために化粧品の開発を始め、現在ではあたりまえのように使っているマスカラやリップブラシなど、今
では馴染み深い化粧品の多くを次々と生みだしたことにはじまる。日本進出は 1950 年代であり、それ
まで、口紅は「赤」が常識であった時代にピンクやベージュといったカラーを提案し、日本女性が持っ
ていた美の常識を覆す。更に 1980 年には天然酵母から生み出された SK-Ⅱフェイシャルエッセンスを日
本で開発、発売する。自然界の成分を使ったこれまでにない画期的な商品となり、25 周年を迎えた今も
SKⅡのファンを増やし続けている。
1991 年には世界にネットワークを持つ P&G グループの一員となり、
日本で生まれた SK-Ⅱは、アジアを中心として多くの国でカウンターがオープンしている。
マックスファクターはその創設者マックスファクターI 世から受け継いだ革新的、斬新的なアイデア
と技術革新力で次々と画期的な商品を開発し、落ちない口紅リップフィニティプロ、これまでにはない
塗布方法で多くの女性の話題となったエアータッチファンデーションなどを発売している。
SK-Ⅱは、マックスファクター株式会社の一製品ブランドである。1980 年に高級スキンケアとして、
フェイシャルトリートメントエッセンス(化粧水)が発売されたのが最初である。同製品は以降 25 年間
一貫して形・価格を変えていない。販売価格は発売当時から今も 1 本 15000 円である。また、周辺製品
は、毎年新たな製品が加わり、中身をパワーアップさせながら SK-Ⅱブランドを支えている。
周辺製品のなかでは特に、美白を打ち出した「ホワイトニングソース」や保湿クリーム「アドバンスト
サインズトリートメント」などがあり、リピート率が高い。
SK-Ⅱのフェイシャルトリートメントエッセンスには、ピテラ™という成分がほぼ 100%配合されてい
る。同社では、化粧水を開発するに当たり、杜氏(酒造所で働く人々)の手がなぜ白くて美しいのか?
という疑問を持ち、酵母や発酵の基礎研究が始まった。当時、自然界に存在した酵母はおよそ 350 種以
上あり、そのひとつひとつを分析した結果、ひとつの酵母からできた発酵代謝液に、肌にもともとある
潤い成分と似た組成のものが含まれていることがわかった。この発酵代謝液が、SK-Ⅱ〈ピテラ 〉(サ
ッカロミコプシス培養液)である。これは酵母が発酵する過程で作り出される自然なもので、アミノ酸、
有機酸、ビタミン類などが肌に有用な成分が絶妙のバランスで含まれている。また、ピテラ™は肌の潤
い成分として、もともと存在する NMF(自然保湿因子)と同じ働きをしていることから、SK-Ⅱの生み出
す最新テクノロジーを駆使した商品に必ず配合されている。SK-Ⅱの名前の由来は「明日の素肌美を得
る秘密の鍵」の意味「Secret Key」から名づけられ、培養の元となった酵母は、サッカロミコプシス SK
株と名づけられている。
2
3.市場環境と SK-Ⅱの位置づけ
続いて、SK-Ⅱを取り巻く環境を 4C のフレームを用いて、顧客動向(Consumers)、流通(Customer)、
競合(Competitors)、自社(Company)について明らかにしたい。
3.1.スキンケア市場の現状(Consumers)
スキンケア製品のメインターゲットは、10 代後半~50 代ま
での女性と非常に幅広い。市場の現状を洞察するにあたり、そ
の女性の年齢別の人口比率を見てみたい。右図が、総務省統計
局資料から抜粋した人口動態データであるが、一見するとわか
るように、スキンケア市場のメインターゲット層のうち、30 代
前半~半ばの層の人口が突出している。これはいわゆる「第 2
次ベビーブーム」と呼ばれる昭和 46 年~49 年生まれの層で、
スキンケア商品を消費する層としては、最も厚く、市場を下支
えしていると思われる。
では、その最も厚い層である 30 代半ばまでの女性には、ど
のような特色が見られるか。下図は、女性の平均初婚年齢、第一子出産平均年齢、出生率を、昭和 30
年から平成 14 年に至るまでの推移で図示したものであるが、晩婚化、少子化が非常に顕著である。
すなわち、スキンケア市場におけるメインターゲット層のうち、30 代前半~半ばの女性層は、過去
と比べて、独身・子供なしで働き続ける人が増加傾向にある。いわゆる「女性の社会進出」と呼ばれ
る現象がこれである。彼女らは、働いて得た収入を、家族ではなく、自分のために消費することがで
きると推察できる。
3
3.2.化粧品流通の概況(Customer)
スキンケア商品をはじめとする化粧品の流通形態としては、百貨店、訪問販売、化粧品店、ドラッ
グストア、量販店、通信販売などがメインとなるが、その構成比は下図のようになる。
チャネル別動向
その他
業務用
通販
訪問
CVS
百貨店
通販 量販店
ドラッグストア
化粧品店・薬局
百万円
1,000,000
900,000
通販
通販
通販
訪問
訪問
訪問
訪問
500,000
百貨店
百貨店
百貨店
百貨店
400,000
量販店
量販店
量販店
800,000
700,000
600,000
300,000
200,000
100,000
0
ドラッグストア ドラッグストア ドラッグストア
量販店
ドラッグストア
化 粧 品 店 ・ 薬 局化 粧 品 店 ・ 薬 局化 粧 品 店 ・ 薬 局化 粧 品 店 ・ 薬 局
2001
2002
2003
2004
全体を俯瞰すると、パイはほぼ横這い。ボリュームとしては、化粧品店・薬局・薬店、訪問販売、
通信販売がそれぞれ 24%、18%、17%を占め、大きなチャネルとなっているものの、訪問販売は下降
傾向にある。
以下で主なチャネルの概要を述べたい。
〔ドラッグストア〕
伸び率を見てみると、ドラッグストアがセルフブランドの好調に後押しされて堅調な伸びを示して
いる。また、カウンセリングにも注力している。
〔百貨店〕
百貨店では、外資系ブランドが好調に推移し、百貨店全体で前年比 102%(2004 年時点)と上昇傾
向を示している。また、百貨店は、20 代~30 代の比較的自由に所得を費やせる層が中心顧客となっ
ているのが特徴である。
〔CVS〕
CVS は、規模としては僅かであるが、安定した需要で好調に推移している。
これらのチャネルのうち、SK-Ⅱの主戦場となる高級化粧品を取り扱うチャネルとしては、百貨
店、化粧品店、ドラッグストア、GMS がメインチャネルとなる。
3.3.競合他社の動向(Competitors)
SK-Ⅱを取り巻く競争環境を論じるにあたり、先ずは市場全体の動向を見てみたい。以下の図はス
キンケア市場の直近 10 年の日本国内の販売実績金額推移である。90 年代半ばまでは高い伸び率を示
していたが、2000 年あたりから不況による買い控えなどにより、急速に市場が悪化し、販売実績も
下落した。ここ 2 年は、需要が復調傾向になるとともに、アンチエイジング、ホワイトニングなどの
高機能訴求商品によってようやく回復の兆しが見られたが、それでも国内市場の頭打ち感は否めず、
4
大手各社の、中国をはじめとする海外進出が顕著になってきている。
このような横這いに近い微増状態のパイの中で熾烈な戦いが活況を呈している。1 兆円弱の規模
市場の中で約 200 もの企業がひしめき合っており、下図の通り市場トップ 10 のシェアを合算しても
45.9%と過半数に満たない、極めて過密な市場である。
メーカー別販売実績・シェア TOP10
販売実績
シェア
販売額(百万円)
600,000
54.1%
60.0%
500,000
50.0%
400,000
40.0%
300,000
30.0%
200,000
20.0%
12.6%
6.5%
100,000
5.1%
4.7%
4.3%
3.5%
2.5%
2.4%
2.2%
10.0%
2.1%
0
マ
また、右図は、化粧水、クリームといった化粧品の品目
別生産集中度(ハーフィンダール指数)を算出し、他品目
と比較した表である。
このハーフィンダール指数は市場の集中度を示す指標で
あり、一般的にこの値が 3,000 を越えると寡占市場である
と言われているが、化粧品業界では 1,000 前後の値を示し
ており、絶対的なマーケットリーダー不在のブランド乱立
市場であるということが、右図からも明らかである。
5
他
の
そ
テ
ッ
ト
ビ
ア
フ
ィ
ノ
エ
資
生
堂
ン
品
ビ
オ
ア
ル
ッ
ク
ス
フ
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ー
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化
粧
タ
ー
セ
ー
コ
ー
王
花
DH
C
ボ
ウ
カ
ネ
資
生
堂
0.0%
シェア(%)
2003年度スキンケア商品
3.4.SK-Ⅱの業績(Company)
〔販売実績〕
では、そのような厳しい市場環境の中で、SK-Ⅱはいかなる実績を残しているか。以下に SK-Ⅱの
直近 4 年の販売実績、及びシェアの推移を示したグラフを掲載する。
上位10ブランド 販売シェア
ソフィーナ(花王)
5.0%
DHC(ディーエイチシー)
SKⅡ(マックスファクター)
4.5%
アーティストリー(日本ア
ムウェイ)
ニュースキン(ニュースキン
ジャパン)
ドモホルンリンクル(再春
館製薬所)
ファンケル(ファンケル)
4.0%
SKⅡ
販売実績
3.5%
エリクシール(資生堂)
25,000
3.0%
24,500
2.5%
24,000
百万円
23,500
2.0%
23,000
1.5%
22,500
22,000
1.0%
21,500
21,000
0.5%
20,500
2001
2002
2003
2004(見込)
0.0%
2001
2002
2003
2004(見込)
横這いの成長が続く市場の中で、SK-Ⅱは売上、シェア共に堅調な伸びを示している。
〔P&Gのブランド戦略の特徴〕
続いて、SK-Ⅱの供給元であるマックスファクター株式会社を 1991 年に買収したP&Gのブラン
ド戦略の特徴について簡単に触れておく。
P&Gはアメリカに本社を置く外資系トイレタリーメーカーであり、多様な日常生活用品を扱う大
手企業であるが、そのマーケティング戦略には独特の思想が垣間見え、そのブランドに関する特徴的
な考えを以下に列記する。
・企業ブランドと製品ブランドの考え方
P&Gでは、企業名とブランド名を結びつけることはせず、各ブランドには「P&Gから新発売」
というメッセージを発売後 6 ヶ月間だけ、しかも TVCM の最後に音声として流すことしか許されて
いない。
・メガブランド戦略
画期的な新テクノロジーが誕生した際、新しいブランドを設定しがちであるが、主要ブランドにそ
の新テクノロジーを使用することに躊躇しない。
これらブランドに関する基本的なスタンスは、マックスファクターでも踏襲しているものと思われ、
SK-Ⅱの成功を論じる上では不可欠なファクターであると考える。
6
4.SK-Ⅱのマーケティング戦略
以下、SK-Ⅱが顧客とのインターフェイスをどのようにリ・デザインして成長をし続けているか、マー
ケティング・ミックスの視点からまとめていく。
4.1.SK-Ⅱのプロダクト戦略
2005 年に発売から 25 周年を迎えた SK-Ⅱは、雑誌等を通じて 25 年間の「変わらない」製品・価格
を「伝統と革新」というテーマでとりあげ、大規模な広報活動を行った。成熟した競争市場である国内
スキンケア市場で、製品を変えることなく、しかも値下げをすることもなく成長を続ける製品に隠され
た理由は、SK-Ⅱの製品群の展開も見られる。
SK-Ⅱは化粧水であるフェイシャル・トリートメント・エッセンスを「名品」と位置づけ、25 年間ほ
とんどデザインを変えることなく、価格も一定に保っている。このことによる利点は、「ロイヤルカス
タマーの維持」にあると考えられる。肌というきわめて個人差のあるものに対して機能する化粧品は、
一度試してうまくいった場合、他のブランドに乗り換えるのになかなか勇気がいるものである。つまり、
スイッチング・コストの高い製品なのである。ところが競争の激しいスキンケア市場においては、ブラ
ンドのライフサイクルが短く、せっかく獲得したロイヤルカスタマーを逃してしまうリスクが高い。SKⅡはその「伝統」を守り続けることで、ロイヤルカスタマーに安心感を与え続け、購入の維持に成功し
ているのである。
しかしながら、仮に化粧水のみを販売していたのでは、一人当たり売上高の成長が期待できず、購入
客数を増やすことでしか売り上げの増加が図れない。これは人口の増加率がほぼゼロに近い国内市場に
おいては、競合からシェアを奪うことによってのみ可能であり、仮に成功したとしてもかなりのコスト
がかかることが想像される。
そこで SK-Ⅱは同一ブランド名の下にマスク、ファンデーション、クレンジング、ホワイトニング等、
次々にライン・エクステンションを行ってきた。これにより、時代に即した様々なニーズを満たし、ロ
イヤルカスタマー一人当たりの購入金額の増加に成功しているのである。
7
つまり、SK-Ⅱは長寿製品と新規商品のプロダクト・ミックスで、SK-Ⅱが提供するソリューションを
増やし、ロイヤルカスタマーにとっての SK-Ⅱとのインターフェイスを進化・増大させ続けているので
ある。
4.2.SK-Ⅱの流通戦略
SK-Ⅱは流通戦略においても顧客インターフェイスのリ・デザインを続けてきた。以下、売り上げの
5割を占め「パートナーズ・ストア」と呼ばれる化粧品専門店チャネルと同 2 割を占める百貨店チャネ
ルの2つの事例を取り上げる。
〔パートナーズ・ストア〕
国内スキンケア市場においては化粧品専門店チャネルが最大であり、メガ・ブランド戦略をとる SKⅡにとっては、ここでいかにして売り上げを拡大するか、がブランド全体の売り上げを左右する重要な
チャネルである。イメージとしては自営業者が家族で経営している「町の化粧品屋さん」といったとこ
ろである。SK-Ⅱはこういったお店での接客法・セールスメッセージの研修・伝達のために大規模な投
資を行っている。神戸本社・各地営業拠点での研修の徹底はもちろんのこと、「マックス会」とよばれ
る同業ネットワークを構築して、会報などを通して常に成功事例を提供し続けている。たとえばそうい
ったパートナーズ・ストアの経営者が会報等を通じて「売らないことで売り上げをあげる」などといっ
た成功の秘訣を共有している。このようにして横のネットワークを構築することで、各地のパートナー
ズ・ストアは常に顧客である消費者とのインターフェイスをリ・デザインし続け、更なる売り上げ拡大
に貢献している。
〔百貨店チャネル〕
SK-Ⅱは競合他社に先駆け、三越日本橋店との協働で ECR のコンセプトを百貨店チャネルに導入、
美容部員の生産性の向上に成功した。また、百貨店が SK-Ⅱを取り扱うことの付加価値を高めるために、
ドラッグや化粧品専門店といった他チャネルとの差別化を図ってきた。「ワンランク上の体験」という
コンセプトのもと、百貨店美容部員の販売研修に航空会社の客室乗務員と同じトレーニングを加えたり、
旗艦店となる小数の百貨店にのみエステティック・サロンの要素を加えたりしてきた。
まとめると、
「パートナーズ・ストア」
「百貨店チャネル」いずれのチャネルに関しても常に顧客のニ
ーズを満たすために、たゆまぬインターフェイスのリ・デザインが図られる工夫がなされている。また
このように多様なチャネルを幅広く用いて、売り上げの増大を達成するために、それぞれのチャネルを
通して触れる顧客とのインターフェイスに、それぞれ理にかなった特色を持たせていることが特徴とし
て挙げられる。
4.3.SK-Ⅱのプロモーション戦略
SK-Ⅱといえば桃井かおり、桃井かおりといえば SK-Ⅱと言われるほどに、SK-Ⅱの宣伝広告は一貫
して桃井かおりをキャラクターとして用いて、そのコミュニケーションのトーンを変化させていない。
8
通常ビューティーケアの製品のプロモーション戦略を考える際、年齢によるセグメンテーションが常套
であるため、10 年以上の長期にわたって一人の女優を使い続けるということは考えにくい。これは、一
人の女優が使われ続けると、今後ロイヤルカスタマーとなる若い世代のひとにとって「年配のブランド」
というネガティブなイメージがついてしまうからである。ところが、SK-Ⅱは「美容にお金と時間をか
ける人」という行動・価値観にそったセグメンテーションを行っているため、新たなロイヤルカスタマ
ーとなる若い世代の囲い込みを行うとともに、桃井かおりと一緒に年齢を重ねたロイヤルカスタマーの
維持にも力を注ぐ。そこで、桃井かおりと同じ時期に若者にも人気の小雪をテレビコマーシャルのキャ
ラクターに採用した。これにより、これまでのロイヤルカスタマーの「SK-Ⅱ離れ」を避けつつも、新
たなロイヤルカスタマーの予備軍となる若手へのアプローチを可能にしたのである。これは、顧客を集
団としてとらえたときには、広義の顧客関係のリ・デザインといえるものであり、珍しい事例である。
4.4.SK-Ⅱの価格戦略
価格戦略についてもプロダクト戦略と同様に、
「名品」に関しては 25 年にわたってほとんど価格の変更
を行っていない。同時に、より高機能・高付加価値の製品群を展開することによって、さらに高単価の
製品の投入に成功している。ここでも、顧客にとって「名品」との価格を通じての関係は不変であるの
に対し、新たな製品との価格関係を築くことで、トータル・ブランドとしてリ・デザインに成功してい
る。
9
5.競合との比較
次に上述した SK-Ⅱのプロダクト・流通・プロモーション・価格といった 4P における戦略を、競合
ブランドとなる資生堂のクレ・ド・ポー ボーテ(以下「クレ・ド・ポー」とする)のそれと照らし合わせ
ることで SK-Ⅱの強さの秘密を検証してみる。
※クレ・ド・ポー:国内トップの化粧品メーカーである資生堂が長年に渡る研究の成果を凝縮させた
発売後 10 年の最高級スキンケアブランド
クレ・ド・ポーとの比較①
Cle de peau -BEAUTE (資生堂)
•25年間不変の名品(ピテラ成
分)でブランドエクイティの
堅持
•発売より今年で10年。当初のヒ
アルロン酸からシグナディレク
ターへと訴求を変更
•周辺製品の投入でブランド全
体の売上高増大
•多様な機能を多様なブランドで
別展開「SHISEIDO」
(競争優位性に差異なし)
Price
Product
SK-II
•不変の価格設定
•高付加価値・高価格品の投入
製品機能の競争優位とそれを活かしたメガブランド戦略
製品機能の競争優位とそれを活かしたメガブランド戦略
13
プロジェクト実習Group 7
5.1.プロダクト戦略の比較(Product)
4.1 の項で述べたように、SK-Ⅱでは化粧水フェイシャル・トリートメント・エッセンスを不変の名品
と位置づけてほとんどデザイン・価格を一定に保つと同時に、SK-Ⅱ全製品に含まれる整肌保湿の主成
分ピテラも不変として、その「伝統」を守り続けることでブランドエクイティを堅持する一方で、ブラン
ド名の下にマスク、ファンデーション、クレンジング、ホワイトニングなど次々と周辺商品を追加投入
することで時代に即したニーズを満たし、顧客との接点を拡大している。
それに対してクレ・ド・ポーでは、当初は保湿成分としてSヒアルロン酸の高配合を消費者に訴えか
けていたものを、新成分シグナディレクターへとその訴求のポイントを変更して新たなスキンケアシリ
ーズとしてリニューアルし、また抗老化成分セブラエンを配合した新ライン「シネルジック」を導入する
など変化させている。
10
5.2.価格戦略の比較(Price)
価格戦略においては、SK-Ⅱとクレ・ド・ポーのいずれもそれぞれのメーカーにとって高付加価値ハ
イエンドのブランドに位置付けられ、高価格となっており、両ブランドの差異は認められない。
クレ・ド・ポーとの比較②
SK-II
Cle de peau -BEAUTE (資生堂)
•ほぼ100%を百貨店チャネルで
展開
Promotion
Place
•パートナーストア(50%)の
活用
•百貨店(20%)のGMSとの差別
化
•普遍のトーン&マナー(女優
を変えない広告戦略)
•不特定な女優による広告
•雑誌中心の広告戦略
•新・旧2人の女優の併用した
大規模TV広告
マーケットにあわせたチャネル戦略とロイヤルカスタマーを維持そ
マーケットにあわせたチャネル戦略とロイヤルカスタマーを維持そ
して拡大をはかる広告戦略
して拡大をはかる広告戦略
14
プロジェクト実習Group 7
5.3.流通戦略の比較(Place)
SK-Ⅱでは、最大チャネルであるパートナーズ・ストア(化粧品専門店)に対して、同業ネットワー
クを構築し接客法やセールスの面で支援すると同時に、百貨店チャネルでは「ワンランク上の体験」をコ
ンセプトとしてエステティック・サロンの要素を加えるなど、特定のチャネルに偏ることなくチャネル
別でアプローチ法を使い分け、幅広く用いている。
資生堂では化粧品専門店専用ブランドや百貨店専用ブランドといったカウンセリング化粧品、ドラッ
グストアや GMS 向けのセルフ化粧品というように流通チャネル特性に合わせたブランドづくりを進め
ており、クレ・ド・ポーは、ほぼ 100%を百貨店チャネルで展開している。
5.4.プロモーション戦略の比較(Promotion)
SK-Ⅱでは一貫して桃井かおりをキャラクターに用いて、不変のトーン&マナーを堅持してきた。そ
の一方で若者にも人気のある小雪を起用し、新旧 2 人の女優を併用した大規模TV広告を展開している。
クレ・ド・ポーでは、人気女優をキャラクターとはせずに不特定のモデルを用いており、広告媒体は
雑誌中心で展開している。
11
5.5.その他
P&Gと資生堂のブランドに対するスタンスをみてみると、P&Gの有する化粧品ブランドは、メー
キャップラインも含めて、SK-Ⅱ・マックスファクター・イリゥームの3ブランドであるのに対して、
資生堂のブランド数は圧倒的に多く、国内化粧品市場の流通・競争環境の変化への対応により一時は 100
以上にブランドを増加させている。2001 年度からの経営改革において、特定ブランドに絞り込んでコ
ストを集中するというブランド体系の再編に注力してはいるが、それでも特定する育成ブランド数は 35
にのぼる。
資生堂と比較して、P&Gは、より企業ブランドよりも製品ブランドに重きを置いて、メガブランド
に育てあげようとしているといえる。
6.まとめ
以上のように、SK-Ⅱの顧客インターフェースの特徴とは、
「不変のスタンスと時代と顧客のニーズ
に合わせた絶え間ない顧客関係のリ・デザインの MIX」と考えられる。
「不変のスタンス」とは、前述の資生堂のクレ・ド・ポーのように、時代の風潮にあわせて前面に
打ち出す有効成分を変えるのではなくピテラという成分に絶対的な自信を持ち、それを柱にパッケージ、
プロモーションのトーンを SK-Ⅱ固有のものとして維持することによって、ロイヤスカスタマーのハー
トをしっかりとつかむという戦略である。
一方「時代と顧客のニーズに合わせた絶え間ない顧客関係のリ・デザイン」とは、時代の流れにあわ
せ、顧客ニーズに即した新製品およびプロモーション展開である。
例えば、近年の美白ブームにあわせてホワイトニングソースラインを発売。また、
「負け犬の遠吠え」
で有名になった 30 代未婚のワーキングシングルの美容に対する興味の高さ、高級化粧品を購入できる
だけの経済力に目をつけ新規消費者をターゲットにすべく、SK-Ⅱの第二の顔として小雪を採用するな
どの変化があげられる。 ただし、従来から SK-Ⅱの顔であった桃井かおりも、そのままメインの顔と
して起用しつづけることで、ロイヤルカスタマーへのトーン&マナーは維持されている。
変わらない絶対的な製品やコミュニケーションでロイヤルカスタマーを囲い込み、絶え間なく変化
する時代や顧客ニーズに、新商品と新プロモーションで対応するその柔軟な姿勢が、高級スキンケア化
粧品市場での SK-Ⅱの優位を生み出しているといえる。
12
7.最後に
さて、このレポートをもって 4 月から開始した最初のグループワークであるプロジェクト実習も幕を
閉じようとしている。全体として、プロジェクト計画の立て、テーマを設定、各種ブレインストーミン
グ、仮説の設定、担当者の方へのインタヴューによる仮説の検証など、計画的にすすめることができた
ことは今後それぞれの研究をすすめていく上での自信となった。8 月 6 日の発表後、まとめの段階で、
研究した成果を出し切ることが出来ていなかったのではないか、またはもう少し深く掘り下げることも
できたのではないかというメンバーの声もあったことから、それらのポイントを今後のレポートおよび
論文作成時の課題としたい。
最後に、この研究を進める上でご協力いただいた方々に感謝を表したい。幾度もご助言をいただいた
石井先生、ならびに忙しい中インタヴューにも快く応じてくださったP&Gの SK-Ⅱ担当マーケターで
あるM2の高岡様のご助力がなければ、研究をここまで進めることは難しかったと思われる。お二方の
ご協力に改めて感謝するとともに、今後のさらなる研究レベルの向上を計りたい。
【参考文献】
SK-Ⅱ
ホームページ
http://www.sk2.com/jp/jp_top.jhtml
ウィメンズ・ウエア・デイリー・ジャパン(2005)「25th ANNIVERSARY SK-Ⅱ」
株式会社富士経済(2004)「富士経済マーケティング要覧 2004」
厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/index.html
総務省統計局ホームページ http://www.stat.go.jp/
チャールズ・L・デッカー(1999)「P&Gのブランド戦略」ダイヤモンド社
中島美佐子(2005)「よくわかる化粧品業界」日本実業出版社
毎日就職ナビ 2006 マックスファクター株式会社概要
2005 年 8 月 9 日
http://job.mycom.co.jp/07l/pc/visitor/search/corp65072/outline.html
水尾順一(1998)「化粧品のブランド史」中公新書
三田村蕗子(2004)「最前線
化粧品業界
知りたいことがスグわかる」こう書房
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