平成22年度研究報告書

平成22年度研究報告書
テーマ「中国税制度を研究し、中国への進出で成功する法」
社団法人 熱田法人会
税 制 委 員 会
目
次
1.平成22年度
税制委員会研究テーマ決定の経緯 ···················· 1
2.研究実施スケジュール························································ 1
3.第1回 平成22年12月10日 研究会
テーマ「日本・中国・香港 税制比較」 ····························· 2∼15
4.第2回 平成23年3月25日 研究会
テーマ「最低限知っておきたい中国税制の基本と日系企業の対応」
∼周りの風評に踊らされない為に∼··············· 16∼28
5.研究報告 ········································································· 29∼30
6.今年度研究の結論······························································ 31
1.平成22年度
税制委員会研究テーマ決定の経緯
平成21年11月27日熱田法人会税制委員会を行い、平成22年度(社)熱田法人会
税制委員会研究テーマを検討した。
経済のグローバル化、バブル崩壊以降成長の足踏みしている日本経済の現状を踏まえ、
大企業はもとより中小企業にいたるまで、生産コスト削減のため生産拠点を東アジア中心
に海外に移管する動きが顕著になってきた。特にこの20年間は、中国本土に合弁・自弁
を問わず生産拠点を移し、さらにこの10年は、中国経済の成長に伴い、生産だけではな
く中国国内での販売を行う企業が増えている。
しかし、自由経済体制を根幹とする日本・韓国・アメリカ・ユーロ圏と異なる政治体制
の中、中国独特の制度・習慣・国民性、特に中国の税制度に対する知識不足、開かれた自
由主義体勢の国々との税制度・国民性の違いからの失敗が増えてきている。この点を法人
会会員はもとより会員外の皆さんに参加いただき、中国への企業進出で成功する方法を、
中国籍税制度のスペシャリスト、長年中国内で税制並びに企業進出に携わった日本人公認
会計士をアドバイザーに迎えテーマを「中国税制度を研究し、中国への進出で成功する法」
とした。
2.研究実施スケジュール
研究会
第3回
税制委員会研究会
平成22年5月19日
第4回
税制委員会研究会
平成22年8月25日
第5回
税制委員会研究会
平成22年12月2日
第1回
講
平成22年12月10日
師
北京雷科中日諮詢有限公司 首席代表 金 徳俊 氏
テーマ「中国の税制度を勉強しよう」
参加者 176名
第6回
第2回
講
税制委員会研究会
平成23年1月19日
平成23年3月25日
師 公認会計士・マイツグループ CEO 池田 博義 氏
テーマ 「最低限知っておきたい中国税制の基本と日系企業の対応」
∼周りの風評に踊らされない為に∼
参加者 128名
第7回税制委員会研究会 平成23年3月17日
平成22年度税制研究のまとめ
3.第1回
平成22年12月10日
【資料】テーマ
研究会
「日本・中国・香港
第一章 税制の概要
税制比較」
1.税目及び基本税率の比較
以下、表1は、日本、中国本土、香港の主要な税目の比較です。
税目をみますと、法人の所得に対する税金は、中国、香港では地方税がないこと、個人
の所得に対する税金は、香港では給与に対する税目とその他の所得に対する税目が異なる
こと、流通課税では、香港には日本の消費税に相当するものがないことが特徴的です。
税率は、法人の所得に対する実行税率は日本が突出していることが分かります。個人の
所得に対しては、香港では給与に対する課税が累進税率と標準税率のいずれか有利な方を
選択できることが特徴的です。単純に税率だけを比較すると日本の所得税の税率は高いよ
うにみえますが、扶養控除など各種控除額が税額計算に大きく関係しますので、どの地域
が有利かについては次回以降に解説したいと思います。
流通課税は、中国の増値税が高税率となっています。増値税は物の販売や輸入などを行
う際に課される税金ですが、還付率が度々変更されるなど何かと話題の多い税目です。
<表1>
1
課税の対象
日本
中国
香港
法人の所得
(所得課税)
法人税
事業税
法人住民税
(実行税率40.87%)
企業所得税
(25%)
事業所得税
(16.5%)
2
個人の所得
(所得課税)
3
資産の譲渡等
と輸入
(流通課税)
給与所得税
(標準:16%、累進
所得税
個人所得税
課税2∼17%)
(累進課税5∼40%) (累進課税5∼45%)
事業所得税
(16%)
増値税
(基本17%)
消費税
営業税
−
(5%)
(3%,5%が主。
一部20%もあり)
*1:流通課税には他に、特定の物品に対して課税される中国の消費税、香港の物品税があ
るが、日本の消費税と性格が異なることから省略している。
*2:税率は、日本及び中国は2008年度、香港は2008/09年度の税率。
2.税収の比較
グラフ1は日本、中国、香港の税収の構成です。比較年度は異なりますが、日本及び香
港は所得課税による収入が過半を占めるのに対して、中国は流通課税が6割以上を占め、
その中でも増値税の占める割合が高いことが特徴となっています。
日本では、法人所得課税の実効税率が高い、消費税の税率をアップするといった議論があ
りますが、停滞気味の経済環境のなかで税収を確保するためには、ある税目の税率を下げ
れば、他の税目の税率を上げる、或いは税目を増やすことになることはやむを得ないとい
えます。
<グラフ1>
日本:2006 年度
中国:2007 年度
香港:2007-08 年
また、税収額の比較は表2の通りです。日本の税収額はまだ中国よりも多いですが、前
年度比では中国、香港の伸びが著しいです。経済成長の伸びがここからもみてとれます。
<表2>
日本
中国
香港
2007 年度
2007-08 年
90.6 兆円
4.94 兆CNY
2,007 億HKD
(104%)
(131%)
(129%)
換算額
90.6 兆円
76.6 兆円
2.81 兆円
換算ルート
−
1CNY=15.5 円
1HKD=14.0 円
2006 年度
(前年度比)
原通貨額
(注)グラフ1、表2とも以下の資料を参考に作成。
・日本:総務省 国税、地方税の税収内訳
(法人税は、法人税、事業税、法人住民税の合計。所得税は所得税と個人住民税の合計)
・中国:国家税務総局 税収収入統計
・香港:香港特別行政区政府税務局 税収概況
3.租税条約
税金に関する規定には、自国の法制度によるものの他に、二国間の取り決めによるもの
があります。この取り決めは、二国聞の二重課税の回避及び脱税の防止のために、日本と
中国の間は租税条約として、中国と香港の間は租税協定として、個人の所得及び法人の所
得について規定されており、原則的に自国の法規定に優先して適用されます。なお、日本
と香港の間には租税条約はありません。
一例として183日ルールの規定があります。中国の個人所得税法の規定では、非居住者
の賃金給与につき次の①②③の条件を満たせば納税義務は発生しませんが、日中租税条約
及び中国香港間の租税協定では①の滞在期間は183日と規定されています。
①
中国における滞在期間が暦年で連続若しくは累計90日以内であること
②
賃金給与は中国外の雇用主から支払われていること
③
賃金給与は中国内の会社等の負担とされていないこと。
但し、この 183 日は、日中租税条約では暦年単位でカウントすることになっていますが、
中国香港間の租税協定では暦年単位ではなく、いずれかの 12 ヶ月間でカウントする規定
となっていますので注意が必要です。
第二章
法人税
一般事業会社の法人の所得に対する課税について比較します。税目では、日本の法人税、
中国の企業所得税、香港の事業所得税(Profits Tax、中国語名「利得税」)です。細かな
内容はそれぞれ異なりますが、基本部分は、日本と中国は似通っており、香港は日本や中
国と比較すると特徴的な点がいくつかあります。
1.基本項目の比較
以下の表1は法人所得課税の基本項目の比較です。日本の法人所得課税には、法人税の
ほかに地方税である事業税と住民税がありますが、この連載では法人税のみを比較対象と
します。
まず①の税率ですが、基本税率が一番低いのは香港です。基本税率のほかに日本と中国
は軽減税率が設けられています。日本の場合、期末資本金額が1億円以下の法人に対し、
年800万円以下の所得金額には22%の税率が適用されます。平成21年度の税制改正の大綱
には、来年度より2年間、この22%を18%に引き下げることが盛り込まれています。中国
では小規模低利益企業に対しては20%を、ハイテク企業には15%の税率が適用されます。
小規模低利益企業の条件は、工業企業の揚合は年間課税所得が30万元以下、従業員数1OO
名以下、かつ資産総額3,000万元以下の企業で、その他の企業の場合は、年間課税所得が
30万元以下、従業員数80名以下、かつ資産総額1,000万元以下の企業です。また、ハイテ
ク企業の条件は、中核的な自社知的財産権を有し、製品(サービス)は《国家が重点的に
支援するハイテク分野》が規定する範囲に入っている、ハイテク製品(サービス)による
収入が企業の当年の総収入の60%以上を占めることなど種々の条件があり、ハイテク企業
の認定を受けるハードルは高いものとなっています。
②の納税義務者は、その分類により③の課税所得の範囲が異なってきます。日本と中国
は自国の法制度に基づき設立された法人については全世界の所得が課税対象となります
が、香港の場合、香港源泉の所得のみが課税対象となります。香港源泉の所得の意味は、
香港内で生じた或いは香港からもたらされた事業所得をいいます。そのため香港の法人は、
海外で発生した所得(オフショア所得)や利子、株式の配当、株式の売却などにより生じ
たキャピタル・ゲインは課税対象外となっています。
④の課税所得の計算ですが、日本、中国、香港とも、会計上の税引前利益に税務上の調
整を加えて税務上の利益(=課税所得)を求めます。代表的な調整項目について表3にま
とめましたので後ほど解説します。
⑤の課税年度は、会計年度が1年である場合、日本及び香港はその会計年度が課税年度
となります。中国の課税年度は暦年ですが、企業の会計年度も暦年であるため、日本、中
国、香港とも基本的には課税年度は会計年度と一致することになります。
⑥申告納付は、日本と中国の制度は似通っていますが香港は少し異なります。まず“制
度”ですが、日本と中国は、納税者自らが所得や税額を税務局に申告し、申告により確定
した税額を自ら納付する申告納税制度を採っていますが、香港では、納税者自らが申告書
を記載し税務局に提出するものの、税額の確定は税務局が行う賦課納税制度を採っていま
す。次に“確定申告”の申告及び納付期限ですが、日本は課税年度終丁後2ヶ月以内、中
国は翌年5月末までです。賦課納税制度の香港は、通常4月1日に政府より税務申告書が
発行、送付され、発行日から1ヶ月以内が提出期限となっています。
ただし、会計事務所など税務代理人を選任している場合には、税務代理人から延長申請
を行うことを条件に表2の期限まで延長できます。
また、“予定納税”ですが、日本の場合は半期に1度中間申告を行い、前期納付税額の
半分の税額若しくは中間決算による申告税額を半期末後2ヶ月以内に納めます。中国の場
合、四半期(3,6,9,12の各月末)ごとに仮決算を行い求めた税額を翌月15日以内
或いは税務局指定日までに申告納税します。これに対し香港では、翌課税年度の課税所得
は当期と同額とみなして、当期の確定税額の納付時に翌課税年度分の予定税額を前払いす
ることになっています。(通常2回に分割して予定納付します。)
表1−基本項目の比較
税目
日本
法人税
中国
企業所得税
香港
事業所得税
30%
25%
16.5%(2008/09年度)
①税率
基本税率
軽減税率
②納税義務者
中小企業の1部課税所 小 規 模 低 利 益 企 業 は
得は22%
20%、ハイテク企業は15%
内国法人
居住企業
外国法人
非居住企業
−
在香港事業者で香港源
泉の利益を得るもの
③課税所得の範囲
内国法人:国内及び国 居住企業:国内及び国
香港を源泉とする所得
外源泉所得
外源泉所得
非居住企業:国内源泉
外国法人:国内源泉所 所得(PEの場合、PEに帰
得
属する国外源泉所得も
含む)
④課税所得の計算
( 税 務 上の ) 収 益 − 費
用・損失=課税所得
日本と同様
日本と同様
⑤課税年度
会計年度
暦年(=会計年度)
会計年度
⑥申告納税
制度
確定申告
申告納税
申告納税
賦課納税
原則:税務申告書発行
日から1ヶ月以内
課税年度終了後2ヶ月
翌年5月末
以内
実務:申告期限の延長
予定納税
中間
当期分の納税時に翌期
予定分を併せて納税
四半期
表2−香港の事業所得税申告期限(法人)
決算月
延長可能期限
4月∼11月決算
延長不可(4月30日)
1月∼3月決算(黒字の場合)
11月15日
12月決算(2007年の場合)
8月22日
2.調整項目の比較
一般的な事業会社が課税所得を算出する際の代表的な調整項目を表3に記しました。
減算項目とは、会計上は収益とされますが税務上は収益とされないため課税所得から減
額させる項目などをいいます。日本の受取配当金で国外関連者からのものは課税と記載し
ていますが、平成21年度の税制改正の大綱には、外国子会社配当益金不算入制度の導入が
盛り込まれ、外国子会社からの配当のうち95%は非課税となります。中国の場合、国外関
連者からの受取配当金は課税となりますが、現在の日本と同様に外国税額控除の制度があ
ります。香港は、株式の配当金や株式の売却などにより生じたキャピタル・ゲイン及び海
外を源泉とするオフショア所得は課税対象外のため減算の調整を行います。
加算項目は、会計上は費用とされますが税務上は費用とされないため課税所得を増額さ
せる項目などをいいます。次回は、加算項目の比較をしたいと思います。
表3−調整項目の比較
日本
中国
香港
●減算項目
・受取配当金
国内関連会社から
国外関連会社から
・海外事業の利益
非課税
非課税
課税対象外
課税(=調整なし)
課税(=調整なし)
課税対象外
−
−
課税対象外
●加算項目
・減価償却
会 計 上 の 減 価 償却 費
税 務 上 の限 度 額を 超 税 務上の限度 額を 超
は一旦全額加算し、税
える部分が課税
える部分が課税
法 上 の 減 価 償 却費を
減産する。
初 年 度 に つ い ては特
別償却あり。
・引当金
・交際費
貸倒引当金、返品調整
引 当 金 のみ限 度額 を
超える部分が課税。他
の引当金は全額課税。
中小法人:支出交際費
400万円までは10%課
税、400万円超部分は
全額課税。
大法人:全額課税
・福利費
・海外事業の損失
調整なし
−
税 務局査定の 引当 金 要 件 を 満 た し たも の
以外は課税。
は調整なし。
支出額の40%が課税。
売 上 額 の 0.5 % が 限
度。
調整なし
給 与総額の 14% 超 え
る部分が課税
調整なし
−
課税対象外(=損失と
して認められない)
*日本:中小法人は期末資本金額が1億円以下の法人、大法人は期末資本金額が1億円超
の法人をいう。
続いて一般事業会社の法人の所得に対する課税について比較します。会計上の費用の税
務における取り扱いは様々で、税率だけでなく税務上の利益である課税所得の大小が税額
に大きく影響することが分かるかと思います。
1.調整項目の比較
引続き一般的な事業会社が課税所得を算出する際の調整項目のうち加算項目について
解説します。加算項目とは、会計上は費用とされますが税務上は費用とされないため課税
所得を増額させる項目などをいいます。表1は代表的な加算項目の比較です。
減価償却費は、日本、中国、香港とも税法の償却限度額を超えた金額が加算されます。
中国は、日本と比較して法定償却方法が定額法であること、法定耐用年数が5区分(建物
20年、機械10年、備品5年、一般車両4年、パソコンなど電子設備3年)とシンプルである
ことが特徴的です。香港は、税法上の減価償却資産が、産業用建物、商業用建物及び機械
設備の3つに区分されており、それ以外の資産の償却費は原則税務上の費用とは認められ
ません。機械設備の税法上の定義はありませんが、備品や車両、パソコンなどの事業活動
を行うための資産も含まれます。また、香港には初年度特別償却の制度があり、機械設備
の場合は、取得価額の60%が取得年度の償却費として通常の償却費に加算されます。表2
は香港の減価償却制度をまとめたものです。
次に引当金ですが、日本の法人税では貸倒引当金と返品調整引当金以外の引当金は税務
上費用としては認められません。これに対し中国及び香港は、税務上の費用として認めら
れる引当金は明記されておらず、中国の場合は実務上如何なる引当金も税務上の費用とす
るのは困難で、香港の場合は金額をほぼ正確に見積もることができるなどの要件を満たせ
ば税務上の費用とできる可能性はありますが、税務局の判断に拠ることになります。
交際費は、日本及び中国は支出をすれば必ず一定額は税務上費用として認められないの
に対し、香港は原則全てが費用として認められます。
福利費は中国のみ限度額が設定されており、限度額を超える部分は課税となります。以
上の調整項目のほかに、中国では税務局指定の領収書(発票)のない費用は税務上の費用
として認められません。
2.欠損金の繰越
各課税年度で発生した税務上の欠損は、日本、中国、香港とも以後の年度に繰越し、以
後の年度で発生した税務上の所得と相殺することが出来ます。繰越すことが出来る年数は、
日本は7年間、中国は5年間、香港は永久に繰越すことができます。
表1−加算調整項目及び欠損金繰越年数の比較
日本
中国
香港
●加算項目
・減価償却
・引当金
・交際費
・福利費
・海外事業の損失
税務上の限度額を超 税務上の限度額を超
える部分が課税
える部分が課税
貸倒引当金、返品調整
引当金のみ限度額を
超える部分が課税。他
の引当金は全額課税。
中小法人:支出交際費
400万円までは10%課
税、400万円超部分は
全額課税。
大法人:全額課税
会計上の減価償却費
は一旦全額加算し、税
法上の減価償却費を
減算する。
初年度については特
別償却あり。
税務局により査定を
受けていない引当金
は課税。
要件を満たしていな
いと判断されたもの
は課税。
支出額の40%が課税。
売 上 額 の 0.5 % が 限
度。
原則調整なし
原則調整なし
給与総額の14%超え
る部分が課税
原則調整なし
−
−
課税対象外(=損失と
して認められない)
●欠損金の繰越
7年
5年
無期限
*日本:中小法人は期末資本金額が1億円以下の法人、大法人は期末資本金額が1億円超
の法人をいう。
表2−香港の減価償却
資産区分
産業用建物
商業用建物
初年度償却
建築原価×20%
−
年次償却
建築原価×4%
建築原価×4%
年次償却方法
定額法
定額法
機械設備
取得価額×60%
未償却残額×償却率
(10%,20%,30%)
定率法
*「特定固定資産」として定義された、工場設備及び機械装置並びにコンピュータ関連資
産は支出した課税年度において全額税務上の費用とすることができます。
3.税額控除
税額の計算は、会計上の税引前利益に税務上の調整を加減算し求めた税務上の利益であ
る課税所得に税率を乗じて行いますが、この税額から更に控除できるものがあります。
日本では、預金の利子などにかかる所得税額の控除、試験研究費にかかる税額控除或い
は海外支店での所得など海外で生じた所得について外国税額が課された場合の外国税額
控除など、中国や香港に比べ様々な税額控除の制度があります。
4.税額の計算
表3は、課税所得と税額の比較です。日本、中国、香港がどのように異なるかイメージ
として感じてもらうため単純化した例としています。日本は、期末資本金額が1億円以下
の中小法人と大法人で交際費などの調整項目の取り扱いが異なっていたり、税額の計算も、
中小法入は800万円までの所得については法人税率が22%であるなど区分されています。
日本の税率は、法人税のほか、法人住民税及び法人事業税を含んだ税率で、中小法人につ
いては、課税所得により法人税及び法人事業税の税率が異なるため、大体の税率を用いて
います。
売上原価のうちの減価償却費は、取得価額1,000の機械設備の2年目の費用で、日本の税
務上費用とできる金額200を会計上の費用とした場合を想定しています。香港の税務上の
減価償却費が84と少ないですが、これは取得年に一時償却60%と通常償却30%を行ってい
るため2年目以降の税務上認められる減価償却費が少なくなるためです。
次に貸倒引当金ですが、中国、香港では実務上税務上の費用とするのは難しいですが、
日本は一定の計算方法で計算した金額までは税務上の費用とすることができます。ここで
は目本の税務上全額認められる金額を会計上計上しています。交際費は日本の大法人は全
額税務上加算調整が行われます。銀行預金の受取利息は香港では課税対象外です。こうし
て計算した結果、日本の中小法人の課税所得が最も少ないこととなりました。税額はやは
り税率の低い香港が1番少ない結果です。こうした比較をするまでもないですが、同じ事
業活動を行った場合でも最終利益である税引後利益には大分差がでることが分かります。
表3−課税所得と税額の比較
税務
会計
日本(中小法人)
売上
日本(大法人)
中国
香港
10,000
10,000
10,000
10,000
10,000
8,500
8,500
8,500
8,400
8,384
200
200
200
100
84
1,500
1,500
1,500
1,600
1,616
505
500
455
425
445
給与
150
150
150
150
150
貸倒引当金
60
60
60
-
-
交際費
50
45
その他
245
245
245
30
245
50
245
5
5
5
5
-
1,000
1,005
1,050
1,180
1,171
売上原価
内、減価償却費
売上総利益
販管費
銀行預金受取利息
税前利益・課税所得
税率
-
32%
40%
25%
税額
-
322
420
295
193
678
580
705
807
税引後利益
16.5%
第3章
流通課税
前章は法人の所得に対する税の比較でしたが、今回は一般事業会社が行う資産の譲渡や
貸付、サービスの提供などに対する税の比較です。
流通課税とも言いますが、その内、日本の消費税とこれに相当する中国の増値税と営業
税について解説します。中国には他に、貴金属やお酒など特定品目に対して課税する消費
税がありますが、日本の消費税と性格が異なるため省略します。また、香港には日本の消
費税に相当する税金がないため2力国での比較となります。
1.基本項目の比較
表1は基本項目の比較です。日本の消費税に相当するものは、中国では増値税と営業税
の2つの税目に分かれており税率や税額の計算方法などが異なります。①の課税対象の範
囲からも想像できますが、中国の場合、設備の販売と据付サービスなど1つの取引のうち
に増値税と営業税の課税対象取引が含まれていることがあります。こうした取引を混合販
売といいますが、増値税及び営業税の規定により、原則として、その会社が生産、卸売、
小売に従事している場合にはその混合販売取引を物品の販売とみなして増値税のみが課
税されます。また、1つの会社が増値税の課税対象となる物品の販売と営業税の課税対象
となるサービスを提供していることもあります。これを兼営といいますが、この揚合、そ
れぞれの売上額を区分して増値税額及び営業税額を計算し納税するのが原則です。区分計
算しない場合は、税務局により売上額を査定されることになります。課税の対象とならな
い取引についても日本と中国では異なるものがあります。日本の場合、土地の譲渡及び貸
付、貸付金の利子などについては原則消費税の課税対象にはなりませんが、中国では、土
地使用権の譲渡及び貸付、貸付金の利子は営業税の課税対象となります。
次に②納税義務者ですが、中国の増値税は納税義務者を一般納税者と小規模納税者に区
分しています。小規模納税者の基準は、製造業などは年間の課税売上高が50万元以下、卸
売業や小売業などは同80万元以下です。一般納税者は税務局より一般納税者としての認定
を受ける必要があるため、税務局に申請をする必要があります。日本には課税事業者につ
いてこうした区分はありませんが、免税事業者というものがあります。これは前々事業年
度の消費税の課税売上高が1,000万円以下の会社は、当事業年度の消費税の納税が免除さ
れるというものです。但し、免税事業者となる場合でも、課税事業者の選択の届出をする
ことにより課税事業者となることも出来ます。(免税事業者は課税されないかわりに還付
も行われないため、固定資産の購入などで消費税の還付が見込まれる場合に課税事業者を
選択することも考えられます。)
③税率と④税額の計算方法ですが、消費税と増値税は売上にかかる税額から仕入等にか
かる税額を控除した差額を納税し、申告及び納税は事業者、税金の負担は消費者となりま
す。但し、増値税の納税義務者のうち小規模納税者は税率が低い反面、仕入等にかかる税
額を控除することは出来ません。営業税は表2のとおり業種などにより税率が異なります。
営業税には仕入控除の制度がなく、納税義務者が税金の負担者となります。支払った営
業税はその企業のコスト(費用)となるため、例えば100を売上げて営業税が5発生した
場合、実質の収入額は95となります。
日本の消費税額の計算方法には、課税売上高から納付する税額を求める簡易課税制度と
いうものがあります。これは、仕入等にかかる消費税額を、実際の仕入等の金額から計算
するのではなく、売上にかかる消費税額にみなしの仕入率を乗じた金額を、仕入等にかか
る消費税額として税額を求めるものです。このみなしの仕入率は、卸売業は90%、製造業
は70%など事業区分によって異なります。簡易課税方式を選択した場合、税額の計算は簡
便になりますが、みなし仕入率を用いて税額を計算するので還付ということはなく、輸出
売上の割合が大きかったり、多額の固定資産の購入などにより還付が発生する状況となっ
た場合には不利となります。この簡易課税制度を選択適用できる事業者は、前々事業年度
の消費税の課税売上高が5,000万円以下の者です。
⑤仕入控除の方式は、日本の消費税では帳簿方式、中国の増値税ではインボイス方式を
採っています。帳簿方式は、帳簿及び請求書等の保存を仕入控除の要件とし、基本的に会
計帳簿に計上された仕入等にかかる消費税額が控除されます。これに対し増値税のインボ
イス方式では、増値税の専用領収書に記載された増値税額のみ控除できます。そのためこ
の専用領収書でなく市販の領収書などを取得した場合には仕入税額控除ができないこと
となります。帳簿方式はインボイス方式に比べ事務処理の負担が軽い反面、食料品には軽
減税率を導入するなどといった複数税率の採用が難しいと言えます。
⑥申告・納税は、中国の増値税及び営業税には中間申告の制度がありません。増値税及
び営業税の課税期間は、制度上は1ヶ月未満や四半期もありますが、通常1ヶ月の課税期
間で申告及び納税は翌月15日以内です。
上記①から⑥の項目以外に、中国の増値税の還付制度は日本の消費税と比較して特徴が
あります。消費税、増値税とも、輸出売上に税金は発生せず、輸出物品に関連した国内で
発生した仕入等にかかる税額は還付を受けることができます。(増値税の還付制度の対象
となるのは輸出入権を持つ一般納税者です。)この税額は全額還付されるのが基本ですが、
増値税は輸出物品ごとに還付率が定められており、還付率が基本税率17%より低い揚合に
は、17%と還付率の差が実質課税となる仕組みになっています。
そのため、原材料の100%を免税で輸入し、製品の全量を輸出するような進料加工企業
でも、輸出製品の還付率が17%未満の場合は、増値税が課されることになります。
表1:基本項目の比較
日本
税目
①課税対象の
範囲
消費税
国 内 に お ける資 産
の譲渡、資産の貸付
及 び 役 務 ( サー ビ
ス)の提供
②納税義務者
の種類
−
③基本税率
5%(輸出は0%)
中国
増値税
国内における物品の販売
又は加工、修理、補修役
務の提供及び物品の輸入
取引
営業税
国 内 に お け る役 務
( サ ー ビ ス) の 提
供、無形資産の譲渡
及び不動産の販売
小規模納税
−
者
17%(輸出 3%(輸出は 3%,5%娯楽業は
は0%)
0%)
5-20%
一般納税者
売上に係る
売上に係る税額-仕 税 額 - 仕 入 売 上 高 ×
等に係る税 3%
入等に係る税額
額
営業額×税率*
帳簿方式
インボイス 仕入控除不
方式
可
仕入控除不可
確定申告
課 税 期 間 末日の 翌
日から2ヶ月以内
基本的に毎月申告(当月
分を翌月15日まで)
増値税と同様
中間申告
直 前 課 税 期間の 消
費 税 額 の 金 額に 応
じて0から11回
④税額の計算
方法
⑤仕入控除の
方式
⑥申告・納税
−
−
−
* 営業額とは、相手から受け取る全ての代金と、相手から受け取る手数料、立替金額(1部立
替運送費を除く)などの価格外費用を含んだ金額。
表2:営業税の税目・税率表
税目
税率
1
交通運輸業
3%
2
建築業
3%
3
金融保険業
4
郵便通信業
3%
5
文化・体育業
3%
6
娯楽業
5%‐20%
7
サービス業
5%
8
無形資産の譲渡
5%
9
不動産の売却
5%
平成22年12月10日(金)
北京雷科諮詢有限公司 首席代表 金
徳俊 氏
「中国の税制度を勉強しよう!」
Q 中国でレストランを経営されているという、先生のご友人が、売上げを低くして申告
している、とのことだが、仮に領収書を発行しても、それが正確な申告として見られる
基になるのか。
日本のように銀行が発行している小切手や手形帳のようなものでキチッと抑え、それ
を発行した以上は、その店に何番から何番まであり、どれだけ発行したかをしっかり
チェックされているような、そんなシステムなのか。あるいは、単に領収書を発行し
て終わり、というものなのか。
A
Q
A
Q
A
中国では、ニセの領収書を作り、発行している業者もあるが、国はそれらを認めてい
ない。国が定めた領収書だけで税金を徴収するようになっている。
また、企業別に税務署が領収書を作り発行しているので、その発行した額に基づいて
税金を徴収している。
それだけで許されるのか。それだけで売上げが信頼されることになるのか。
大中国が、そういう形で許しているとは信じがたく、理解できない…。
売上げはしっかりつかめない仕組みになっているのではないか。
殆どの企業がしっかりやっているというイメージは持っているが、周囲の友人も申し
上げた方法でやっているようなので、不思議だとは思う。
しかし、最近中国では、税の増収を図るため、不正業者に対する税金対策の一環とし
て、検査を厳しくやっている。
特に、オンラインショップでは、ネット決済のため領収書が発行されないことから不
正が多いため、小さいところも含めて、すべての企業が銀行の取引内容に応じて、金
がネットバンキングで行ったり来たりしているので、そこに目を付けて、全ての金の
動きを調べ、監査して徴収している、そうしたことをやっている。
今は領収書を発行していないところもあるが、私の予想では今後5年以内に、全ての
企業で領収書を強制的に発行させる制度を打ち出すはずだ。
中国で儲かった場合、日本に持って帰るいい方法はあるか。
そうした相談はよく受けるし、方法はいろいろあるが、現実には難しい点がある。
最近流行っているポータルサイトを経営している china.com では、その本社は中国国
内ではなく、南太平洋のある島国に登録されており、そこを介して全ての金の動き、
流れは海外でされていることになる。
中国では、原則として海外で動く金に基づいては徴税できない制度になっている。少
なくとも国内でやっているような厳しい規制はない。
不動産関連では、逆に中国で儲かった分を日本の不動産に投資、そのための金を日本
に入れたり、といった方法もいろいろあるが、結構難しいポイントがある。
以上
4.第2回
平成23年3月25日
研究会
【資料】テーマ
「最低限知っておきたい中国税制の基本と日系企業の対応」
∼周りの風評に踊らされない為に∼
講師
マイツグループCEO
公認会計士 池田 博義
Ⅰ.講師略歴
1976 年:公認会計士・税理士登録
1987 年:株式会社マイツ設立(現在資本金:9,600 万円)
1994 年:上海に駐在員事務所として進出(スタート 3 名)
1999 年:上海マイツ咨詢有限公司設立
2001 年:大連マイツ咨詢有限公司設立
2003 年:天津大野木マイツ咨詢有限公司設立、上海マイツ咨詢有限公司
蘇州分公司設立、上海マイツ会計師事務所設立
上海クイックマイツ明勝人材咨詢服務有限公司設立
2006 年:上海マイツ会計師事務所が、上海市公認会計師協会より
優秀技術会計師事務所を受賞
2010 年:上海マイツ広州分公司設立、香港マイツ咨詢有限公司設立
上海マイツ会計師事務所が全国 85 位にランクイン
2011 年:大連マイツ瀋陽分公司設立
現在:社員数 350 名
クライアント件数 1,600 社(全て日系)
Ⅱ.中華人民共和国制定からの歴史
1.1949 年:中華人民共和国制定
2.1954 年:大躍進政策の失敗
3.1966 年∼76 年文化大革命
4.1972 年:日中国交回復
5.1978 年:改革開放政策
6.1989 年:天安門事件(第一次投資ブーム)
7.1992 年:社会主義市場経済導入、南巡講和
8.1994 年:税制改正(第二次投資ブーム)
9.1997 年:香港返還、アジア通貨危機
10.1999 年:建国 50 周年
11.2001 年:WTO加盟(第三次投資ブーム)
12.2005 年:反日デモ勃発
13.2008 年:企業所得税内資・外資の統一
北京オリンピック開催
リーマンショック(4 兆元の経済対策)
14.2009 年:流通税 3 法(増値税、営業税、消費税)、企業再編税
税の改正
年車輌販売世界 1 位(1,300 万台)
15.2010 年:上海万博開催
尖閣諸島問題発生
ストライキ勃発(所得倍増政策)
世界GDP第 2 位に躍進
広州アジア大会開催
車輌販売台数:1,800 万台
Ⅲ.中国進出編
∼如何にスピーディーに、目的に合った、
サイズピッタリ、場所バッチリの進出を果たすか!!∼
(1).中国進出形態の種類
形
態
無店舗方式
内
容
中国企業を指導し
生産を委託
駐在員事務所
営業行為
不可
現法設立方式
中方より問題提起
多
赤字でも配当要求
有
中方と権利、
義務を決めて設立
独資企業
小
中方と出資割合を
決めて設立
合作企業
初期投資資金
日本本社の
一駐在員事務所
合弁企業
メリット・デメリット
100%日方出資
本社裁量
自由
Ⅲ.中国進出編
(1).中国進出形態の種類(番外編)
日本人、日本企業
出資金の貸付
中
国
人
中国内資企業設立
資本金のハードル低い
法人代表には、日本人
問題点
1.利益の配当送金不可
2.中国人と問題が生じた時に、法人の権利を主張されれば、中方に権利がある
(2)進出できる業種とできない業種
外商投資企業産業分類
奨励業種
許可業種
(奨励、制限、禁止業種に該当しない)
制限業種
禁止業種
(合弁、マジョリティー中方などの制限)
Ⅲ.中国進出編
(3)進出目的を明確にせよ!!
安い労働力、品質、輸送基地、日本人駐在員の
製造&輸出
必要性、材料調達の方法、工場設立の可能性
(環境・汚染)、資本金調達の有無、独資がベスト
安い労働力、品質、輸送基地、日本人駐在員の
必要性、材料調達の方法、工場設立の可能性
製造&内販
(環境・汚染)
、資本金調達の有無、代理店網、
他社製品も販売するのであれば、卸・小売の免許が
必要、合弁がベスト(内陸部も可能)
輸送最適地(上海?)
、日本人駐在員の必要性、
卸売or小売
商品調達ルート、資本金調達の有無、代理店網、
飲食、サービス
中国企業のソーシング、優秀な中国人人財、
合弁がベスト、
(内陸部も可能)Tasting は?
(4)進出場所
華北
ハルピン、長春、瀋陽、
重化学工業、車輌、IT 関連、
大連、北京、天津
コールセンター、環境技術
中国
上海、蘇州、無錫、
華東
南京、杭州、南通、
アパレル、車輌、IT 関連、環境技術、
卸・小売、サービス、飲食
青島
広州、深圳、恵州、
華南
中山、アモイ、珠海、
仏山、花都
靴、車輌、精密機器、スポーツ用品、
卸・小売、サービス、飲食
Ⅲ.中国進出編
(4)進出場所(番外編)
内陸部の進出をどう考える?
四川省、湖南省
中国人気質をリサーチ
=宵越しの金は持たない
ヨーカ堂、平和堂の成功
強い国営企業との合弁
湖北省武漢=東風集団
→ホンダシビック生産
1.ワーカーの技術力
出来れば
2.高級管理職の不在
3.日本人駐在員が住むには厳しい
沿海部が良いのでは??
(4)進出場所(番外編)
税制上の優遇は?
経済特別区などの優遇地はなくなった
ハイテク産業、環境技術などの優遇は
依然として残されている
上海マイツ会計師事務所は
この認定事務所に指定されている
Ⅳ.人材編
∼社員のポテンシャルを最大限発揮し
経常的に利益を獲得する為に∼
(1)人材の採用
採用をジョブで選ぶか人で選ぶか?
欧米系:ジョブ
中国人気質:
日系:人
自己のスキルアップ→ジョブ
卒業証書などは必ずチェック
日本語人材採用時には、必ず論文試験を入れる
管理者人材に対しては、過去の管理手法を確認
Ⅳ.人材編
(1)人材の採用
70%
中国人人材
狩猟型人材
欧米系企業に
30%
農耕型人材
日系企業に
30%から人材を発掘せよ!!
(2)人材のモチベーションアップ&リテンション
福利厚生行事の実行:
①運動会、②忘年会、③誕生会、
④慰安旅行、⑤映画鑑賞、⑥スポーツ
朝礼などで経営理念、社是、社訓を浸透させる
日本人からコミュニケーションを取る:
①挨拶の励行、②誕生メッセージメール、③結婚式の参加
● 理念なき行動は凶器である
研修制度の充実(スキル面、人間学面)
● 行動なき理念は無価値である
管理職には、必ず目標をコミットメントさせる
Ⅳ.人材編
(2)人材のモチベーションアップ&リテンション
職務給か職能給か?中国では職務給
職務等級制度の確立(Job description の確立)
評価の方法(BSCの採用)
先ず彼等の
言い分を聞く
面談は根気よく行う
経営理念、社是、
社訓を忘れずに
BSCとは何ぞや??
BSCは、企業・事業部・課・社員の戦略構築と事業計画を統合したもの
ビジョン
ミッション
戦略と事業計画
目標と目的
BSC
企業・事業部・課・個人の
業績測定と報告制度
Ⅴ.中国進出成功の鍵
日本人駐在員は、本業に使いなさい
BPOの活用
横並びの給与支給はやめなさい
世界で一番ひどい格差社会(13倍)
中国人と一緒に経営を考えなさい
1千万元の赤字企業が、1千万元の黒字に転換
Ⅵ.チョコッと税務
税務機関の組織構造と調査部署
国
務
院
税
関
総
政
署
税制司
部
国家税務総局
財
Ⅵ.チョコッと税務
中国の主たる税金
花
税
税
税
印
通
契
流
個人所得税
企業所得税
消費税
営業税
増値税
Ⅵ.チョコッと税務:企業所得税
1.税率:25%
2.納税者:営業許可証取得後1ヶ月以内に税務登記が必要
3.企業の決算期:暦年基準(1月∼12月)
4.申告方法:四半期納税制度
(1)1月∼3月:4月15日に申告・納税
(2)4月∼6月:7月15日に申告・納税
(3)7月∼9月:10月15日に申告・納税
(4)10月∼12月:翌年1月15日に申告・納税→5月末に最終精算
Ⅵ.チョコッと税務
国家税務総局の組織と調査部署
移転価格の税務調査
国家税務総局
1.国家税務総局
企業所得税、増値税、営業税(金融機関・保険会社等の一部)、
消費税、個人所得税(預金利子源泉)など
2.地方税務局
営業税、都市維持保護建設税、個人所得税、土地増値税、
固定資産税、車両船舶使用登録税、印紙税、契税など
安易にサインしない!!
庁
税務調査項目
公
Ⅵ.チョコッと税務
弁
国家税局と地方税務局(同居)がある
政策法規部
貨物と役務税部
所得税関係部
財産・教育付加税部
国際税務部
計画統計部
部
納税サービス部
査
大企業税収管理部
調
部
財務管理部
事
観察内部審査部
人
この下に、省級局、地方級局などがあり、
平成23年3月25日(金)
公認会計士・マイツグループ CEO 池田 博義 氏
「最低限知っておきたい中国税制の基本と日系企業の対応」
∼周りの風評に踊らされない為に∼
Q
今から中国へ出ようかなと思っているのですが、中国で儲かった利益はどうなるので
すか?
A
基本的に利益が出たものに対して、その年度の年度監査を受けて、正しいですよとわ
かったら、当事会、日本で言うなら株主総会をして、その年度の税金関係が全部納税
されてますという納税証明書があれば、その3点セットがあれば、いくらでも送れま
す。
Q
儲かった分、全部、日本に持ってこれるのですか?
A
はい、持ってこれます。
Q
税金を払った後の、純利益でも?
A
中国で稼いだ部分を、日本に送ってこないことには、日本の方がやっていけないので、
毎年、配当で送ってくる分が、7,000 万円ぐらい送ってきます。
Q
簡単に銀行かなんかを経由してですか?
A
当日、送ってこれます。
Q
PE認定の事について、中国にあると思うのですが条件とはどういう条件ですか?
A
PE認定とは、中国の方に日本の親会社が向うの方に、あたかもあるでしょうという
ような形で、企業所得税を課税しますよという事。
例えば、技術指導を皆さん方が子会社にされていて、この期間が6ヶ月を越えるよう
な場合、一つのプロジェクトで日本の社員の方が、中国に行って、6ヶ月を越える期
間、業務に従事をされて、その分のお金を例えば、子会社の方から日本の本社の方に
送金されるとかのようになれば、その時は、PE認定の課税になりますよというよう
なことです。
以上
5.研究報告
我々の研修の第一弾として会員各社において、中国への進出を考える企業は年々大増加
しており、既に進出した会社及び検討中の会社を対象に今後の中国ビジネスの有り方を
勉強することから始める必要性を感じての研修会となりました。
金 徳俊 氏は中国北京大学を卒業後、北京電科中日諮詢有限公司 首席代表として、
中国進出企業のコンサルタント業務を行っております。
池田 博義 氏は公認会計士マイツグループCEOとして、中国国内での日本人公認会計
士の先駆者としてとして、数多くの日本企業のコンサルタント業務の実績を有するエキ
スパートであります。
熱田法人会税制委員会では、中国人から見た中国の発展と将来性について研究すると
共に、日本人から見た中国進出の難しさを研修し、失敗しない日本企業の中国進出を勉
強することが、我々中小企業の将来を模索する重要なポイントであると考えます。
無論、今後中国に進出するに当たっては、中国税制の研究等の基礎的な勉強も必要とな
っていくと考え、今回の研修を手始めとして今後は、より一層の中国税制の研修会を
開催も視野に入れた研修会となりました。
研修では、現在中国に進出している企業は、何を目的として中国に進出したかです。
多くの大企業、中堅企業は日本との給料格差における生産コストの削減を主眼として
自社製品を中国国内で生産し、日本国内及び海外への輸出を行い利益を上げる目的であ
りました。
中国政府も外国からの企業誘致の為、様々な税制での優遇を行いそれに乗じて多くの
企業が中国に行けば安く物が作れて儲かる理論で進出してきたのが、この20年間の
中国進出の実態と考えます。
そして中国は世界の生産工場となりました、ただ残念ながら多くの世界の企業が中国で
物を作っているだけで、中国独自の技術で発展しているとは言えません。
今後の中国ビジネスの鍵として、中国を生産のみを委ねる生産国として見るか、生産国
として発展し経済成長した中国を消費マーケットとして見るかが、中国進出の重要なポ
イントとなります。
中国進出には、二通りの進出方法があると言われております。
1.合弁企業方式
日本の企業と中国の企業が共同出資し、中国国内に新会社を作る方式です。
多くの企業がこの合弁事業において、中国進出を行いその中には成功した事例も
失敗した事例も多くあります。
我々が多くの失敗事例を耳にするのは合弁事業と思われますが、実際には多くの
成功事例があり、その成功した事例と方法は各社の経営ノウハウとして、教えられ
る事が少なく、情報の少ない進出方法です。
しかし、今後中国国内にローカルな事業展開を行う為には有効な企業形態で有り、
研究する必要があると考えます。
2.独資企業方式
中国の企業の資本を入れず、日本国内の企業が単独で新会社を作る方式です。
中国企業との関係が無い分、企業経営としては楽に思われますが、中国国内の
商売の慣習等が分からないので、自社製品を中国で生産し中国国内の日本企業及び
海外への輸出は出来ますが、中国国内商売は殆んど出来ないのが実状です。
中国経済はこの20年間で急速な発展をしてきました、特に給与面では日本企業が
進出し、安い労働力で製品を作り海外へ輸出し、利益を上げた時代から経済の発展に
伴う給与の上昇と生活レベルの上昇から単純な生産工場ではなく、大きなマーケット
として研究する必要が有ります。
今後の中国進出では、中国国内市場に対しどのように対応できかが重要なポイントと成
ってきます。
法人会に所属する企業の殆んどが中小企業であり、大きな資本力を有しません。
我々の中国進出は、企業生命に係わる大切な決断が必要となります、中国へ行けば何と
かなる時代から、自社の中国進出の目的が何であるかを明確化し、その目的によっての
事前準備を十分行ってからの中国進出を行わないと、失敗を招く結果となります。
例えば、中国では沿岸部の都市が発展しており、内陸の都市は遅れていると思われて
います。しかし中国マーケットに進出したイトーヨウカ堂の中国及び日本国内の売り上
げNO.1店舗は中国四川省 成都店です。
沿岸部から遠くはなれた内陸の都市の店がNO.1となるには、イトーヨウカ堂の中国
進出における事前調査が確りとしていた結果と言えます。
また、製造業で安い賃金を要求するなら、沿岸部の賃金と比べてまだ安い内陸部に工場
を持つのも目的に合っていると思います。
この様に我々の中国進出は、自社の製品を中国で何をするかによって進出の方法、
パートナー、進出地区など様々な検討材料があり、進出目的と事前調査が確りしている
会社のみが成功すると言えます。
また、我々が注意しなければならない重要ポイントとして、中国の複雑な許認可制度と
増地税に代表される税金のシステムです。
これに対応するには、コンサルタント及び中国に精通した日本の会計事務所等の協力が
必要であることです。
6.今年度研究の結論
1.中国進出目的を明確にする。
中国を自社製品の生産国とするか、マーケートとするか?
2.中国構内の事情を自分の目で見て調査する。
沿岸部と内陸部ではどちらが自社の進出に合っているか?
3.人材確保をどうするか。
日本人のみでは進出は出来ません、中国語と日本語を話す確りした
現地スタッフが必要です。
4.許認可及び税金面でのサポート体制が出来ているか。
中国の商取引に精通したコンサルタントが必要と考えます。
法人会税制委員会として、今後も機会あるごとに中国進出のあり方と最低限知っておく
必要な中国税制について、会員各社に研修会を通して広めていくことが重要と考えます。
税制委員会研究会構成員
・担当副会長 (株)鈴活印刷
・委員長
(株)荒川製作所
鈴木 幹雄
荒川 雅義
・副委員長
・副委員長
・委 員
・委 員
・委 員
・委 員
鈴木
小山
吉田
水野
岡本
久田
・委
・委
・委
員
員
員
・委
員
鈴将鋼材(株)
(株)コヤマケミカル
(株)光商会
愛知機械工業(株)
岡本食品(株)
(株)小池製作所
康司
潔
明弘
孝彦
喜代嗣
修資
田口ヂーゼル自動車(株)田口 道行
西野工業(株)
西野 彰洋
中部ユニフォウム(株) 江村 公一
(株)ナゴヤダイス
山口 和子