交通広告新媒体の実態と認知

交通広告新媒体の実態と認知
目次
第一章
1-1
1-2
第二章
ページ
研究目的
――――――――――――――――― 2
研究目的
仮説の設定
交通広告の現状
―――――――――――――― 3
2-1 今までの交通広告について
2-2 交通広告新媒体について
2-2-1 交通広告新媒体とは
2-2-2 交通広告新媒体登場の経緯
2-2-3 交通広告新媒体の実例と販売料金
第三章
方法
――――――――――――――――――― 1 4
3-1 アンケート調査
3-2 今回の調査での問題点
第四章
結果と考察
―――――――――――――――― 1 6
4-1 交通広告新媒体の認知度
4-2 接触と認知の関係
4-3 広告の費用対効果の比較
第五章
5-1
5-2
5-3
結論
――――――――――――――――――― 2 1
仮説の検証
本研究のまとめ
今後の対策と課題
1
第一章
研究目的
1 ―1.研究目的
テレビ広告や新聞広告がテレビや新聞に掲出される広告であるのと同様に、交通広告
とは、公共交通車両(電車・路面電車・バス・モノレール等)に掲出される広告のこと
を指す。交通広告は、大都市圏を中心とする鉄道利用者に対し、習慣的に繰り返し接触
させることで確実な認知を獲得し、訴えたい層に効率的に内容訴求を行うことで、購買
行動に強い影響を与えることができる媒体である。また、他メディアと組み合わせて利
用することによって、より一層の効果を期待でき、日常生活の中で効果的にコミュニケ
ーション機会を創出するメディアとして活用できる。
また交通広告は、路線別ごとに様々な特性を持ち、広告訴求目的により T.P.O に合わ
せた広告展開が可能なメディアである。
具体的な交通広告の特性について3点挙げる。先ず、目的別・エリア別訴求も可能な
メディアであること。つまり、路線限定での広告も可能であるため、エリアを絞った広
告展開も可能な媒体である。また、印刷媒体では最大級のサイズの広告も可能である。
二番目の特性として、長時間のコマーシャルタイムが可能であるメディアであること
が挙げられる。つまり、習慣的に接触するメディアであり、長時間のコマーシャルタイ
ムが実現可能であるため、情報伝達と共に、理解促進型メディアとしての特性を持つ。
また、マス4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)では捉えにくいとされるサラリーマ
ン・OL を中心に、幅広い層に対する訴求力を発揮できる。
最後の特性として、購買行動に近いところで接触が行われるメディアであることが挙
げられる。交通広告は、移動中に接触する機会が多いため、購買意欲を喚起しやすく、
購買行動に直結しやすいのである。(JR 東日本企画 HP 参照)
このように、交通広告はそれ単体でも、また他メディアと関連しても、非常に有効価
値のあるメディアである。本論文では、これらの最近の交通広告について、実態の調査
と認知の分析をしていきたいと考える。
1-2.仮説の設定
最近、交通広告に新たな媒体が登場した。先ずバスにおいて、車体一面を広告で覆う
ラッピング・バスが登場し、次いで電車においても、車体広告、また時期においてはそ
れらより前になるが、車内貸切広告が登場している。
本論文では、先ずそれらの登場経緯や背景について考察する。なぜなら、上記のよう
に交通広告は非常に有効価値のある媒体であるため、これらの新媒体は以前から存在し
2
ていてもいいのではないかと疑問に思ったからである。そこで、なぜこれまで登場しな
かったか、その背景について調査する。
次に、代表的な新媒体として、都バスのラッピング広告と JR 山手線の車体広告と車
内貸切広告の3つを取り上げ、それぞれについて認知を分析する。また同時に、その広
告主・商品に対する興味や利用についても調べる。なぜならば、もともとその広告主や
商品に興味があったり、利用している人の方が、それに興味ないもしくは利用していな
い人に比べて、広告自体の認知が高いと推測するからである。
そして最後に、それらの費用対効果について比較分析する。これについては、都バス
の広告枠販売費用と JR のそれに非常に大きな差があったためである。
そうすることで、
消費者に認知を与えることに一番効果的な媒体を探ろうと思う。
以上の3点について次章から述べていく。
第二章
交通広告の現状
2-1.今までの交通広告について
本論文で取り扱う、交通広告新媒体について説明する前に、先ず本節では、交通広告
の媒体として以前から存在した、車両メディアについて説明する。
車両メディアは、車内中吊りポスターに代表されるように掲載期間が2~3日と短く
て、乗客に速効性のある情報伝達を可能にするものから、掲載期間の長いステッカーの
ように、理解促進型のものが存在する。
以下に、具体的な車両メディアの説明と特徴について述べる。また、以下の各メディ
アの名称については、
(株)JR 東日本によるものである。
1. 中吊りポスター
天井から吊るす B3 サイズポスターのことを言う。掲載期間が2~3日と短いため、ニュ
ース性に富み、告知広告に適している。掲載位置の高さ、掲載面が窓に対して直角である
ことから注目される範囲が広い媒体である。
2.中吊りワイドポスター
天井から吊るす B3 の2倍サイズの横長ポスターのことを言う。単にスペースが2倍
というだけでなく、その場所の視界を占有できる特性を持つ。
3.ステッカー
身の回りの商品広告に使用されることが多い。掲載場所がドアの横で、乗客の目線の
3
位置とほぼ同じになるので目にとまりやすい特性を持つ。首都圏をほとんどカバーでき
るので、無駄のない展開が期待できる。
4.ドアガラスステッカー
乗客の視線とほぼ同じ高さのため、見やすく、目立つ特性を持つ。長期の掲載期間の
ため、乗客の反復認知が期待できる。
5. ツインステッカー
ドアの上部に掲出するステッカーを言う。とても見やすく注目率は抜群である。ドア
の左右に1枚ずつ、2枚1組のユニークな媒体なので、これまでに無いさまざまな表現
が可能になる。
図1
中吊りポスター掲載位置例(図中の斜部が中吊りポスター)
(JR 東日本企画 HP より抜粋)
図2
各ポスター・ステッカー掲載位置例(JR 東日本企画 HP より)
窓上ポスター
ツインステッカー
ドアガラスステッカー
ドア横新 B ポスター
ステッカー
4
6. ドア横新 B ポスター
B3サイズでドアの横に掲載する。高さも乗客の目線の位置にほば同じなので、目に
つきやすく、しかも1枚ごとにフレームに入って掲載されるためクオリティの高さを強
調できる特性を持つ。1車両4枚組まので、それぞれに違うビジュアルでの掲載もでき、
ストーリー性を持った展開が可能になる。
7. 窓上ポスター
B3サイズ(ワイドも可能・料金別途)。電車のドア上又は網棚上の部分に掲出するポ
スターのことを言う。4日間掲載でき、料金は中吊りの約半分である。2面ワイドの掲
載で連続表現も可能になる。
2-2.交通広告新媒体について
2-2-1.交通広告新媒体とは
前節で述べた、これまでにも存在した交通広告の車両メディアに加えて、最近新たに
交通広告の新媒体として登場したメディアのことを、本論文では“交通広告新媒体”と
呼ぶことにする。本節では、その各新媒体について説明する。
1.車体広告
公共交通車両の外側、つまり車体に貼る広告のこと。乗客に、車内時ではなく、乗降時
やホーム上にいる時において広告をアプローチすることができる特性を持つ。また、バス
においては、バス利用客だけではなく、歩行中または自動車走行中の消費者に対しても広
告をアピールすることができる特性を持つ。
同様に、バスの車体広告は、東京都交通局により“ラッピング広告(全面車体広告)”と
名づけられており、そのバスは“ラッピング・バス”と名づけられている。また、地下鉄
大江戸線のそれについては、同じく“ラッピング・ライナー”、都電については“ラッピン
グ・都電”と名づけられている。
2.
車内貸切広告
一編成全ての広告媒体を、一つの広告主で貸し切ることを指す。ドアステッカー・額面
ポスター・中吊り等の既存の車両メディア全てを一社の広告主で占めることができる。オ
プションで車体広告にも及ぶこともある。(もちろん、車内の広告主と車体広告のそれは同
じに限る。)車内のどこを見回しても、全ての広告が一広告主なため、パワフルな訴求力が
あり、理解浸透・販売促進に効果的な特性を持つ。
JR 山手線においては、この車内貸切広告の電車のことを「AD トレイン」と言い、地下
鉄都営大江戸線のそれは、
「地下鉄メディア・ライナー」、営団地下鉄においては、
「U ライ
ナー」と名づけられている。
3. JR 山手線 液晶モニター
5
2002年に、山手線に新車両が登場した。それによって、新しい広告媒体が登場した。
それがこの液晶モニターであり、各ドアの上に2つづつ液晶の画面がついた。これにより、
山手線に初めて動画広告を流せるようになった。山手線1編成につき計192台の液晶画
面が付いている。2002年7月現在、3編成が走行している。2004年までには13
編成、平成17年までには山手線全52編成に投入の予定である。
一般的なテレビ CM のような動画が流されているが、音声はなし。音声については、安
全で正確な運送業務という鉄道の大目的から外れないために流されていない、業務用案内
音声のインパクト・訴求性の低下を恐れてのことである。
2-2-2.交通広告新媒体登場の経緯
(1) ラッピング・バスについて
なぜ、これまで車体にラッピングを施した車両が存在しなかったかというと、それは
「東京都屋外広告物条例」による屋外広告物に対する規制があったからに他ならない。
この都条例は、屋外広告の表示方法に一定の枠を設けるもので、1949年に制定され
た。「美観風致の維持」と「公衆に対する危害の防止」が、その目的である。前者は、
野放図な図柄や色彩の氾濫を防止するものであり、後者は、看板の落下など直接的な要
素だけではなく、交通信号の視認性を妨げる形状や色彩の規制などの意味が含まれてい
る。また、注目度が高すぎたり、長文を読む必要があったりすると、本来、注意をはら
わなくてはならない対象から意識が離れてしまうため、そういった要素も危害防止の範
囲に含まれてくる。
電車やバス等の交通機関については、都内に車庫をもつ事業者が対象とされ、196
7年には車体広告の規制が全面改定されて、路線バスと路面電車の広告も、掲示場所や
大きさが規定され、1台あたり 2.7 平方mまでとされていた。電車に関しては、所有者
以外の広告は原則禁止であった(1955年)。このため、東京都内を運行する鉄道で
は車体広告を施した電車などは見られず、バスや都電も側面の看板程度だった。
こうした状況が一転したのは、深刻な赤字経営を続ける都バスについて、石原慎太郎
都知事が就任まもない1999年 7 月、
「動く広告塔として収入を得てはどうか」と発
言したことによる。
都知事の発言をきっかけに諮問された、東京都広告物審議会が2002年2月に車体
広告の大きさの規制を緩和すべきであるとの答申を出し、同年4月、東京都屋外広告物
条例の施行規則が改正された。従来、バスや路面電車の広告は2.7平方mが上限だっ
たが、これが30平方メートルおよび車体面積の3/10までとなった。標準的なバス
の車体面積は約100平方mで、小さな車両であれば総面積の3/10まで、総面積1
00平方m以上の大きな車両であれば30平方mまでとされたのである。ここに示され
る車体面積とは、床下を除く5面体の部分をいう。
以上の経緯で、2000年4~5月に都営バス、そして都電荒川線にラッピング広告
6
で装った電車が登場して、これが最初に大いに話題となった。同じ時期、東京・世田谷
区内を走る東急世田谷線でも、車両の置換えにあわせて、同年春から編成ごとに異なる
色彩・デザインの広告車両の運転を開始している。つまり、2000年4月を境にして,
東京で車体広告されたバスや路面電車が急速に目立ってきたのである。
実際に運行され始めたラッピング・バスやラッピング・都電であったが、ラッピング・
バスの当初年間広告収入の見込み額が年間5億円であったのに対し、実際には6億35
00万円(東京都交通局調べ)という好結果となった。
また、ラッピング・バスを含めて都営路面電車や都営地下鉄線には、広告物が街中を動
くという性質上、それ以外の多くのものや建物・交通物の妨げにならないように、東京都
が東京都交通局車体利用広告デザイン審査要領第11条に基づき、東京都交通局車体利
用広告デザイン審査基準を次のように定めている。以下は、その抜粋と概要である。全
文については、付録参照のこと。
広告デザイン審査基準の抜粋と概要
一般事項
車体利用広告物は、次の事項を満たすものとする。
(1) 都市景観との調和を損なうものでないこと。
(2) 道路交通の安全を阻害する恐れがないものであること。
(3) 掲出面積は規則で定める面積を超えないこと。
禁止事項
車体利用広告物は、その広告物が次の事項のいずれかに
該当するときは、表示または設置してはならない。
(1) 運転者の誤認を招くような広告物。
(2) 運転者の注意力が散漫となる広告物。
(3) 広告物が車体の窓またはドア等のガラス部分に
表示されているもの。
(4) 信号機又は道路標識等の効用を妨げる恐れのある広告物。
留意事項
デザイン審査に当たっては、次に掲げる事項に留意するが、
トータルデザインを充分考慮するものとする。
(1) 美観を損ねるような、くどく・どぎついデザインでないこと。
7
(2) デザインは、イメージで表現し、文字を手段とする情報は
必要最小限にとどめること。
(3) 窓上部分に文字を記載していないデザインであること。
(4) 性を意識させるようなデザインでないこと。
(5) 身体の一部を強調するようなデザインでないこと。
(2)
電車の車体広告について
2001年12月1日、JR東日本山手線に、年末に丸の内から有楽町にかけての街
路をイリミネーションで飾る「東京ミレナリオ」の広告とその協賛企業名を描いたステ
ッカー貼りの電車が走り始めた。また、2002年1月には「BSデジタル放送8社」
の車体広告電車が試験的に運行された。
一方、臨海副都心をゆく「ゆりかもめ」には、11月29日から車体の屋根にまで広告
を入れた列車が登場した。
また、1年前の2000年9月18日には都営地下鉄大江戸線で車体全体を広告のラ
ッピングフィルムで包んだ列車が登場した。
車体広告を施した電車の計画が始まったきっかけは大きく2つあり、東京都屋外広告条
例の緩和(2001年10月18日)とラッピング・バスの話題性の影響である。
それでも、電車についてはまだ条例が厳しくて、車体広告は電車の全側面に対して広告
の占める面積が10分の1以下でないといけない。しかし、非営利目的の広告または、鉄
道会社が自社のイベント等に利用する場合は、デザイン的に良好なものが予想されるとの
判断で、3/10までの利用が認められた。同時に、路線バスや路面電車に関しては、30
平方mの制限が取り外され、3/10までという制限に一本化された。また、地下の広告物
は、屋外広告物にあたらないため、100%の面積で車体広告が可能である。しかし、一
度でも車両が地上に出る場合は、それは不可能になるため、現時点で100%面積で車体
広告が可能な路線は都営大江戸線のみになる。
ところで、電車の車体広告の普及については、都条例以外にも3点の制限が存在する。
一つは話題性である。全ての路線車両に車体広告を施すと、話題性・訴求性の低下が考え
られるからである。2つ目の制限は、東京都以外も走る電車についてである。話題性とい
う点からはクリアできる人気路線であっても、東京都以外へも伸びている路線車両に関し
ては、東京都以外の区域に入った時点で都条例の効力は失われ、その各政令指定都市、各
市条例の効力区域に入ってしまうため、走行不可となるからである。3番目の問題は、車
体の塗装の問題である。例えば、中央線であったら車体にオレンジ色の塗装が施してある。
広告物を貼り付けることによって、粘着物の影響でその塗装が剥げてします問題があるか
らである。
このように、条例と以上の3点の制限が、現在の電車の車体広告に影響を及ぼしている。
8
2-2-3 交通広告新媒体の実例と販売料金
(1) 山手線車体広告について
(1)-A 山手線車体広告の実例
都条例の規制緩和より以前、エコロジー問題・意識を促すことを目的に、京浜東北線と
山手線の最全部と最後部のみに、例外として、広告(広告主なし)を掲出したことはあっ
たが、試験的ではあるが正式な広告として、最初に車体広告を施したのは、平成13年1
2月1日から走った JR 山手線の東京ミレナリオ号(広告主:東京ミレナリオ協賛企業)で
ある。この、東京ミレナリオ号は、特別に車体側面広告を8編成、車体前面ステッカーを
50編成(車体前面ステッカーを実施する50編成には、車体側面広告を実施する8編成
を含む。)運行した。
2002年5月15日の段階で、車体広告を施して走っているのは7編成のみであり、
広告主と各編成数は以下の表1のとおりである。ちなみに、山手線は全部で52編成運行
しており、一編成は11両から成っている。
図3
都バス
ラッピング広告例(広告主:リプトン(日本リーバ)
)、
(Go!Go!ラッピングバス HP より抜粋)
図4
JR 山手線
車体広告例
(広告主:朝日新聞)
(Go!Go!ラッピングバス HP より抜粋)
9
表1.山手線車体広告電車の広告主とその編成数(2002年5月15日現在)
広告主
※
編成数
スカイパーフェクト TV
4
JCB カード
2
モッズ・ヘア ―(日本リーバ)
1
モッズ・ヘア ―はアドトレインのオプションとして。
(1)-B
山手線車体広告の販売料金について
山手線車体広告の広告販売金額は、一ヶ月単位では、2500万円(4編成単位)で、
短期集中露出のキャンペーンをねらいとして販売している。また、3ヶ月単位で3000
万円(2編成単位)というものがあり、これら2種を基本としている。これは、企業広告
等の長期浸透をねらいとして販売している。
この他に、ADトレインのオプションとして車体広告を付加した商品を2編成(販売は
1編成単位)設定している。また、山手線全52編成のうち、最大12編成を車体広告編
成として販売している。
(2) 山手線 AD トレインについて
(2)-A 山手線ADトレインの実例
2002年5月段階で、車内貸切広告を施して運行している車両は、2編成のみであり、
具体的な広告主と編成数については、以下の表2-1のとおりである。ADトレインは半
月単位で張り替えられ、上期と下期で分けられている。ADトレインの媒体商品の種類と
掲出枚数と位置については以下の表2-2と図6のとおりである。
表2-1
ADトレイン広告主とその編成数(2002年5月段階)
広告主(5月1日~15日)
編成
アサヒ飲料
1
日本リーバ
1
広告主(5月15日~末日)
編成
JAL
1
トヨタ自動車
1
※ トヨタ自動車は特別で、中吊りのみ・5月23日~29日のみ。
10
図5
AD トレイン例(広告主:オンワード樫山(自由区)、本人撮影)
図6
AD トレイン・広告物掲載位置と掲載枚数例(中間車の例、JR 東日本企画 HP より
抜粋)
11
ADトレイン商品の種類と掲出枚数(JR 東日本企画 HP より)
表2-2
商品名
1両あたり基
1編成の合
本掲出枚数
計掲出枚数
28枚
308枚
中づりポスター
基本サイズ
持ち込み枚数
B3(ワイド
370枚
可)
窓上ポスター
54枚
532枚
B3(一部ワ
620枚
イド可)
ドア横ポスター
20枚
216枚
B3
250枚
ドア上ステッカー
6枚
66枚
タテ 14.4*ヨ
90枚
コ 102.8(cm)
特殊使用ステッカー
20枚
192枚
タテ 16.5*ヨ
230枚
コ 20.0(cm)
9インチ液晶モニター24台(6ドア車1両あたり)
6ドア車液晶モニタ
ーCM
*液晶モニターCMについては、文字放送やJRの業務放送の間に60秒のスポットC
Mを音声なしで流す。
(2)-B
山手線ADトレイン販売料金について
ADトレイン販売料金については、以下の表2-3に記すとおりである。月によって、
広告料金が異なる理由については、例えば夏休み期間や年末年始期間は人の移動量が増
え、それに伴ない山手線の乗降客数も増加するためであると考えられる。他月の料金設
定の差についても、乗降客数の増減等の理由による差だと考える。
表2-3
AD トレイン販売料金表
1月
2月
3月
A
C
B
A
C
B
B
A
9月 10 月 11 月 12 月
期別
4月
5月
6月
7月
8月
上期
A
C
A
A
C
A
A
A
下期
B
B
A
B
C
A
A
A
* A・・・1430万円
* B・・・1215万5千円
* C・・・929万5千円
また、以下に AD トレインと車体広告をセットにした場合の広告料金表を載せておく。
2002年5月段階のこのセットの広告主は、(1)-A 山手線車体広告の実態のとこ
ろに記載してある。
12
AD トレイン+車体広告セットの広告料金表
表2-4
価格帯
掲載期間
販売単位
A
広告料金
2100万円
B
半月
1編成
C
1800万円
1400万円
* 表2-4の価格帯は、表2-3の価格帯による。
(3)都営バスのラッピング・バス
(3)-A 都営バスのラッピング・バスの実例
都営バスは電車と違い、23区をくまなくカバーするバスであるから、企画次第で活用
の幅が生まれる特徴を持つ。例えば、都営バスの営業所選択において、若者ターゲットの
渋谷・お台場 を絞ることができたり、ビジネス狙いの新宿・東京だったり、 ファミリー
層にアピールの川の手エリアと限定することもできる。よって、よりターゲットを絞り込
んだ広告展開が可能になる媒体である。
このように、都営バスの営業所選択において、活用の幅が生まれるわけだが、旅客営業
の都合上、基本的に路線指定・ダイヤ指定はできない。(同営業所・グループランクの複数
路線を、日替わりローテーションで走ることになる)。路線・ダイヤが決定するのは、前日
の夕方であり、運行実績は、月ごとの走行時間の形で提供する(15日以下の場合はカウ
ントしない)スタイルをとっている。
ラッピング・バスの運行数としては、都営バス全約1500台中、640台(2002年
5月末日現在)が実際にラッピング・バスとして運行している。また、営業所別の人気に
ついては、渋谷営業所が一番人気で、渋谷を走る都営バスのうち、約80%がラッピング・
バスとして運行している。
(3)-B
都営バスのラッピング・バスの販売料金について
都営バスのラッピング・バスの販売商品種類については、1年単位と、1ヶ月の2種
類がある。しかし、以下の表3-1には実際にラッピングする際にかかる制作費用は含
まれていない。また、その制作費用は平均一台あたり、約150万円かかるため、ほと
んどの広告主は1年単位で契約をしている実態がある。
また、広告料金は、営業所ごとにランク分けされていて、そのランク別に料金が変わ
ってきている。このランクについては、営業所ごとのバスの乗降客数に応じて、決定さ
れていると思われる。
13
表3-1
都営バスのラッピング広告のランク別広告料金表(2002年現在)
ランク
一年料金
一ヶ月料金
S
300万円
30万円
A
200万円
20万円
B
160万円
16万円
C
120万円
12万円
D
80万円
8万円
E
60万円
6万円
*営業所ランクについては、以下の表3-2を参照。
(4) 地下鉄ラッピング・ライナー(都営大江戸線)
(4)-A 地下鉄ラッピング・ライナー(都営大江戸線)の実例
都営大江戸線の地下鉄ラッピング・ライナーの一番の特徴は、上記のように、屋外広
告物条例適用外なため、100%の車体面積での広告が可能ということであろう(以下図
4参照)。これにより、地下鉄ラッピング・ライナーの与えるインパクトは相当なものが
予想される。
また、都営大江戸線の地下鉄ラッピング・ライナーは8両1編成単位となっている。
また、電車の中をポスターで占拠する「メディア・ライナー」との組み合わせも可能で
ある。(メディア・ライナー4週間実施の場合、1ヶ月分のラッピング広告料金は1回に限
り無料)運行ダイヤについて、特別な注文はできない。ダイヤが決定するのは、当日の朝
となっている。
都営大江戸線全53編成中、地下鉄ラッピング・ライナーは2編成運行しており、広
告主は不二家と小笠原観光協会である(2002年5月末日現在)。
図4 都営大江戸線の地下鉄ラッピング・ライナーのラッピング広告例
(広告主:不二家、東京都交通局 HP より抜粋)
14
(4)-B
地下鉄ラッピング・ライナー(都営大江戸線)の販売料金
地下鉄ラッピング・ライナーには、山手線の車体広告にはなかった、1年間契約の販売
種が存在する。そのため、一年間契約すれば、シーズンごとの商品ラインナップ張替えで
キャンペーンにも対応できる特徴を持つ。
販売料金については、以下の表4-1のとおりである。
表4
地下鉄ラッピング・ライナーの販売料金表
掲載期間
販売料金
1ヶ月
150万円
1年
1500万円
第三章
方法
3-1.アンケート調査
第二章で紹介した、各交通広告新媒体の中から代表的な媒体として、山手線車体広告と
AD トレインとラッピング・バスの3つを取り上げ、それぞれの接触度と認知度をアンケー
ト調査した。
早稲田大学生は、大学から山手線高田馬場駅までほとんどの人が10分くらい歩き、ま
たその道沿いが都バスの巡回路にもなっていることから、それぞれ3つの媒体に接触する
可能性から考えて、早稲田大学でアンケート調査を実施することにした。
具体的な内容については、以下にまとめるとおりである。また、アンケート本文につい
ては、付録参照のこと。
日時:11月7日
場所:早稲田大学文学部キャンパス内食堂および談話室と同学部開講の授業
サンプル数:食堂および談話室・・・65、授業・・・75、計・・・140
調査方法:大問8問、小問ふくめて16問から成る全問選択式のアンケートを、食堂およ
び談話室では休憩している人達、授業では出席者全員に5分程度の時間をもら
い、記載してもらった。
質問項目:・山手線の最近一ヶ月の利用頻度
・最近一ヶ月の早稲田・高田馬場周辺での都営バス利用頻度
・最近一ヶ月で、早稲田・高田馬場周辺で都営バスを見た回数(乗降時を除く)
15
・山手線を週3回以上利用する区間数
・AD トレインと山手線車体広告とラッピング・バスのそれぞれの写真を計9点
(内訳:AD トレインが3点、山手線車体広告が2点、ラッピング・バスが4
点)見せて、それぞれの広告についての見た印象を、みていない・見たと思
うが印象に残っていない・はっきりと覚えている、の3択で選択
・一社で AD トレインと車体広告の両方を同時に行った広告を見せて、AD トレ
インと車体広告のそれぞれの見た印象を上記と同様の3択で選択
・印象を聞いた広告の中の、9点の広告それぞれの広告主、または商品名に対
して、興味があるかないか、また利用しているかいないかを選択
ここで、アンケートで使った広告主についてそれぞれ明記しておく。
表4
広告主(アンケート使用)
掲載媒体
広告主
自由区(オンワード樫山)
AD トレイン
平和島競艇
大学連合
山手線車体広告
朝日新聞
J ―PHONE
AD トレイン+山手線車体広告 クレマチスの丘
東京リーガルマインド
ラッピング・バス
リプトン
読売新聞
スピードネット
3-2.
今回の調査での問題点
今回、アンケートのサンプルを早稲田大学文学部キャンパス内食堂および談話室と同学
部開講の授業の2箇所で採取したわけだが、食堂および談話室で協力してくれた学生の中
には、あまり真剣に答えてくれなかった人がちらほらいた。やはり、授業中と違って休憩
したり何か用事をしたりしている人達対象だったので、そういう結果になったと考える。
本来は授業で全て採取する予定だったのであるが、都合がつかずこういうことになった。
この結果を反省し、次の機会に生かしたいと思う。
16
第四章
結果と考察
4-1.交通広告新媒体の認知度
4-1-1.山手線 AD トレインと車体広告について
この節では、前章でも述べたように、代表的な交通広告新媒体として、山手線 AD トレ
インと山手線車体広告とラッピング・バスの3媒体を取り上げ、それぞれの認知度について、
アンケートデータをもとに検証していく。
下の表5は、山手線の AD トレインと車体広告の認知率と興味・利用率をまとめたもの
である。表中の「大学連合」の興味・利用率については、今回のアンケート調査の対象者
が現役大学生ということと、広告主の性格の関係性上、あえて興味・利用率については聞
かなかった。
表5 山手線 AD トレインと車体広告の認知率と興味・利用率
広告主
車
内
体
認知率(%)
掲載期間
興味・利用率
(平成 14 年)
A*
B*
A+B
(%)
自由区
1
10/1~15
22.3
4.3
26.6
20.1
平和島競艇
1
10/17~11/1
13.7
4.3
18.0
6.5
大学連合
1
10/16~31
30.9
8.6
39.5
―――
1
9/16~9/30
5.2
4.4
9.6
10.1
5.3
2.3
7.6
クレマチスの丘
車
編成数
クレマチスの丘
朝日新聞
2
9/30~10/27
16.5
23.0
39.5
48.2
J-PHONE
4
10/6~11/2
24.4
33.3
57.7
43.8
*A:見たと思うが、印象にあまり残っていない
B:はっきりと覚えている
上の表5において、先ず車内貸切広告について、「平和島競艇」と「大学連合」の2つが
掲載期間がほぼ同じであり、アンケート実施日(11月7日)に一番近かった。そういっ
た意味で2つの認知率を比較すると、「大学連合」の方が「平和島競艇」より約2倍近い認
知を得ている。ここで、
「大学連合」の興味・利用率が分からないが、学生が競艇に参加す
るのが法律で禁止されていることに影響してか、今回アンケートで採った広告主・商品に
対する興味・利用率の中で「平和島競艇」に対する興味・利用率は一番低い結果となった。
このこととアンケート対象者が大学生ということを踏まえると、「大学連合」に対する興
味・利用率は「平和島競艇」のそれよりも高いことが予想される。こういったことが、こ
の2つの広告に対する認知の差として影響したのではなかろうか。
また、表5において、認知率を見てみると広告主によって大きく差があるのが分かる。
これらの理由に関しては、第2節(4-2)で検証することにする。また、山手線車体広
17
告の認知率が高いこともわかる。しかし、山手線の編成数が全部で52編成あり、上表の
車両編成数が1編成から4編成ということを考えると、全体的に認知率は充分に高いとい
えるのではないか。広告主または商品に対する興味・利用から見る認知率に関しても、以
下の第2節(4-2)で述べる。
4-1-2.
ラッピング・バスについて
都バスについても山手線と同様に、広告の掲載期間と編成数(ここでは、ラッピングさ
れているバスの台数を指す)と認知率と広告主または商品に対する興味・利用率を以下の
表6にまとめた。
表6
都バスにおけるラッピング広告の認知率と興味・利用率
広告主
編成数
掲載期間
認知率(%)
興味・利用率
A*
B*
A+B
(%)
東京リーガルマインド
5
H12 年4月~
26.9
49.2
76.1
11.6
リプトン
3
H12 年4月~
26.9
37.7
64.6
50.4
読売新聞
2
H12 年4月~
28.5
24.6
53.1
35.3
スピードネット
1
H14 年4月~
17.1
13.2
30.3
14.4
A:見たと思うが、印象にあまり残っていない
B:はっきりと覚えている
上の表6について、「スピードネット」以外の3種のラッピング・バスについては、それ
ぞれ掲載期間が同じである。編成数については、それぞれ異なっている。山手線 AD トレ
インや車体広告と比べると、こちらの方が認知率は大きくなっている。これは、掲載期間
が山手線と比べて圧倒的に長いことも影響しているかもしれない。また、各編成数と認知
率がおよそ比例関係になっていることがわかる。また、「東京リーガルマインド」の広告主
に対する興味・利用率が一番低いにもかかわらず、認知率が一番高いことがわかる。これ
は、編成数による影響なのだろうか。
4-2.接触と認知の関係
4-2-1.山手線 AD トレインと車体広告について
ここでは、表5における広告主ごとの認知率の差についての原因を、広告に対しての接
触と広告主または商品に対する興味・利用の観点から分析していこうと思う。
接触度合いについては、アンケート結果をもとに、1.山手線利用回数
2.山手線利
用区関数(週3回以上利用する区間数)3.利用回数*利用区関数(1*2)
ある。以下の表 7 は、それらの相関をまとめたものである。
18
の3点で
表7
接触/興味と認知度との相関について
1.利用回数と認 2.利用区関数と 3.( 利 用 回 数 * 4.興味・利用と
広告主
知度との相関係
認知度との相関
利用区関数)と
認知度との相関
数
係数
認知の相関係数
係数
自由区
.088
.130
.095
-0.02
平和島競艇
.118
.161
.085
0.66
大学連合
.068
.064
-0.03
―――
クレマチスの丘(車内)
.124
.190 *
.149
.232 **
クレマチスの丘(車体)
.179 *
.100
.118
.331 **
朝日新聞
.424 **
.194 *
.217 *
.167
J-PHONE
.248 **
.221 *
.179 *
.090
*・・・・5%水準で有意(両側)
**・・・1%水準で有意(両側)
この表7を見ると、
「大学連合」の(利用回数*利用区関数)と認知の相関係数と「自由区」
の興味と認知度との相関以外は全て正の相関となっていることが分かる。特に、車体広告
(「クレマチスの丘」、「朝日新聞」、
「J-PHONE」)においては有意な結果が多く出ているこ
とが分かる。これは、車体広告が接触と認知に相関関係があるといえるだろう。つまり、
車体広告は純粋に乗降時に広告を見やすいという結果だろう。車内広告は人ごみや友人と
の会話や視線のやり方に人それぞれの違いがある。その結果、必ずしも、接触と広告の認
知にはっきりとした相関が見られなかったのだろう。それに比べて車体広告は広告掲載位
置や大きさや話題性から、乗降時により多くの割合で人が広告を見ているといえるのでは
なかろうか。
また、興味や利用率と認知率の相関については、全ての項目で有意な結果が出なかった
が、これに関しては、各広告の編成数の差や広告掲載期間の差などが他の要因として存在
しているため、このような結果となったと考える。
4-2-2.
ラッピング・バスについて
ここでは、表6におけるラッピング・バスの広告主ごとの認知率の差についての原因を、
広告に対しての接触と広告主または商品に対する興味・利用の観点から分析していこうと
思う。
接触度合いについては、アンケート結果をもとに、1.利用回数
2.都バスを外側か
ら見た回数の2点である。以下の表8は、それらの相関をまとめたものである。
19
表8
接触/興味と認知度との相関
1.利用回数と認知度
2. 外 側 か ら 見 た 回 数
3.興味と認知度との
広告主
の相関係数
と認知度の相関係数
相関係数
東京リーガルマインド
.237 **
.233 **
.160
リプトン
.133
.184 *
.109
読売新聞
.149
.165
.098
スピードネット
.169
.282 **
.123
* ・・・5%水準で有意(両側)
**・・・・1%水準で有意(両側)
この表8を見ると、全ての項目で正の相関が出ていることが分かる。また、外側から見
た回数と認知度の相関については、3項目において有意な結果が出ている。この結果につ
いては、山手線の車体広告と同様に、ラッピング・バスが車体広告ということと、広告が
バスの車体一面に施されており、バスの車体から離れて見てもはっきりと目につくことか
らこのような結果になったと考える。また、この結果は表6において、バスの運行数と認
知率がほぼ比例関係にあることからも同じことが言えるだろう。
4-3.広告の費用対効果についての比較分析
ここでは、これまで見てきた広告に対する認知率をもとに、山手線 AD トレインと山手
線車体広告とラッピング・バスの3つの広告費用に対する効果を比較分析してみようと思
う。
以下の表9と表10は、各広告主に対する媒体販売費用をまとめたものである。料金計
算に関しては、販売基本枠に合致するものとしないものがあったが、しないものに関して
は正確な料金は判りかねるが、ここでは一応単純に割り算して算出した。
表9
山手線 AD トレインと車体広告の広告枠販売料金
広告主
広告料金(単位:万円)
備考
自由区
1430
10 月上期:A ランク
平和島競艇
1430
10 月下期:A ランク
大学連合
1430
10 月下期:A ランク
クレマチスの丘
2100(車体+車内)
9月下期:A ランク
朝日新聞
1250
J ―PHONE
2500
*広告製作費・作業費は含まず。
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表10
ラッピング・バス
広告主
平成14年10月までにかかった広告掲載料金
広告料金(単位:万円) 備考
早稲田・小滝橋営業所の広告料金
東京リーガルマインド
ランクは A。A ランク広告料金:
517
リプトン
一年契約で 200 万円
読売新聞
117
スピードネット
月割り計算
*広告製作費・作業費(約 150 万円)は含まず。
ここで、表5と表6をもとに各広告主の認知率を考慮しながら、この表9と表10を比
較検討してみると、圧倒的に山手線 AD トレインと車体広告の販売料金がラッピング・バ
スの広告料金に対して割高であることが分かる。
この結果に関しては、先ずラッピング・バスが東京都によるものであることが大きいと
考えられる。また、山手線の広告枠販売料金が認知率をもとに計算されているのではなく
て、山手線の乗降客数をもとに計算されていることも、このような結果になったことに影
響していると思われる。
第五章
結論
5-1.仮説の検証
先ず、もともとその広告主や商品に興味があったり、それを利用している人の方が、
それに興味ないもしくは利用していない人に比べて、広告自体の認知が高いのではない
かという仮説に対しての検証を行う。山手線 AD トレインと車体広告とラッピング・バ
スの3媒体全てにおいて、おおかた正の相関は得られたが、完全に有意な結果というわ
けにはいかなかった。これは、3媒体において、それぞれの広告掲載数や掲載期間など、
他の要因に差があったためだと考える。逆に、そういう差があっても、多くの項目で正
の相関が得られたということは、少しは商品または広告主に対する興味や利用というの
がその広告の認知に影響を与えるというこいとが言えるのではないか。また、JR 山手
線の車体広告とラッピング・バスにおいては、接触と認知の関連性があると言えた。こ
れに関しては、純粋に乗降時に車体広告を見やすいということと、ラッピング(車体)
広告の話題性や広告自体の注目性ということらの結果とも言えるだろう。
次に、各媒体の費用対効果について検証していく。費用対効果に関しては、4-3で
も述べたように、認知率と広告枠販売費用と比較検討すると、ラッピング・バスの方が
山手線より割安だということが分かった。この理由に関しては、広告枠の権利所有元が
JR 東日本と東京都という民間企業と公企業の差からくるものだと考える。
21
5-2.本研究のまとめ
以上のように、本研究では、「交通広告新媒体とは、」に始まり、それらの登場経緯や実
態についての調査を行い、またそれらの新媒体の存在意義を問う認知率についての調査、
そしてそれらの認知率に影響を与える要因、最後にそれら新媒体の費用対効果について検
証してきた。
認知率に影響を与える要因には、接触回数と広告主または商品に対する興味・利用の2
つが総合していることが分かった。また、認知を高める要因として、接触回数を増やす、
つまり編成数を増やすことが効果的であるという結果が分かった。また、費用対効果の比
較分析についても、はっきりとした結果が出た。
このように、本研究の目的である仮説の検証に関しては、全て行うことができたと考え
る。しかし、今回の研究に関しては、多くの課題も残されていると考える。次節では、そ
のことに関して述べる。
5-3.今後の対策と課題
今回の調査は、早稲田大学生を対象に行った。その理由としては、JR 山手線と都バスの
両方に接触可能であるということからであった。しかし、このことが今回の調査結果に偏
った結果を与えたかもしれない。つまり、早稲田大学生のほとんどの人は、JR 山手線高田
馬場駅と大学の往復を徒歩で10分くらいしている。その徒歩道は都バスの巡回路になっ
ており、その間幾度となく行き交う都バスを目撃しているわけである。また、徒歩のみで
学校に通う人達にとっても、早稲田大学の前の道が都バスの巡回路になっているため、学
校に通う日は毎日都バスを目撃することになる。こういった経験は、東京都民平均の消費
者の都バス目撃回数や利用回数を上回っている可能性が高い。そのことが、今回の調査結
果に偏った影響を及ぼした可能性が予想される。
また、今回の調査は大学生という消費者全体にとって特殊な年代をのみ対象としている
ことも、今回の調査結果に偏った影響を及ぼしていることが予想される。特に、今回アン
ケートで取り上げた広告主の中に、
「平和島競艇」や「大学連合」など大学生にとって特殊
な広告主が入っていたことも、同様である。
また、広告の認知に関しては、その広告自体のデザインやコピーなど内容も十分影響を
与えると思う。そういったことを今回の研究では、無視してきた。
このような課題を残した今回の研究であったことを反省し、次回の研究に生かしたいと
考えたところで、本論文を終了とする。
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―――参考文献 ―――
http://www.jeki.co.jp/
JR 東日本企画 HP
http://www.joy.ne.jp/toaa/index.html
(社)東京都屋外広告協会 HP
http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/
東京都交通局 HP
http://www.gallery.to/bus/
Go!Go!ラッピングバス
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