インターネットはいかに構成されているか? ~知られざるISP相互接続力学~ 2007.1.29 インテック・ネットコア 荒野高志 はやわかりルーティング技術 実トラフィックを送る前にAS単位に経路情報を交換しておく Autonomous System≒ISP 実トラフィック(パケット)の流れは経路情報の流れと逆 1,3行きのパケッ トはこちらへ! (つまり2は×) 1行きのパケット はこちらへ! AS 1 1 3 1,3 2 5 2 2,4 2 4 4 2007年4月18日 1行きのパケットは経 路情報に従い転送 2 1,2,3,4,5 6 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. トランジットとピア 2種類の接続の関係 お互いのネットワーク間だけのトラフィック配 送を可能にする: ピアリング BGP的には: 送る 自ネットワークの経路のみを相手に 背後にあるthe Internetへのトラフィック配送を 可能にする: トランジット BGP的には: 2007年4月18日 すべての経路を相手に送る 3 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. ピアリング peering =対等な関係 AS20000のみの経路情報 peering peering × ネットワークA AS 20000 ネットワークB AS20001のみの 経路情報 AS 20001 AS20001からAS20000へのトラフィック AS20001からAS20000を介して他ネットワーク へのトラフィックは許容しない 2007年4月18日 4 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. トランジット transit =接続の上下関係 the Internet すべての経路情報 peering peering ネットワークA AS 20000 ネットワークB AS20001のみの 経路情報 AS 20001 AS20001からAS20000へのトラフィック AS20001からAS20000を介して他ネットワーク へのトラフィックも可能 = 全インタネットへの接続が可能 逆方向はAS20000->AS20001のみ 2007年4月18日 5 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. トランジット(II) 「すべての経路」をフルルートと呼ぶ フルルートを提供し、相手にトランジットを許す立 場は上流プロバイダとなる 自ネットワークを使わせてあげるということから、下流 プロバイダに料金を請求 2007年4月18日 6 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. 双方向トランジット? 双方がフルルートを提供しあうような対等な関係 はありえないのか? ビジネスの関係においては、通常はない 学術研究ネットワークで一部の例外あり 例: IPv6の研究ネットワーク 6boneでは、まだネットワーク が未発達であるため、双方向トランジットを基本としてコネク ティビティの向上を狙う 後述 同一事業者で複数ASをもつときに、こういう形態をも つところもあり 2007年4月18日 7 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. より正確に言えば… 「自ネットワーク」とはその下流のASすべてを含む AS20000, AS30000, AS50000の経路情報 peering ネットワークA AS 20000 AS20001, AS40000の 経路情報 ネットワークB AS 20001 transit transit AS30000 2007年4月18日 AS50000 AS40000 8 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. あるASの立場から見れば 典型的な例 The Internet AS40000 AS40001 transit トランジットを受けることにより インタネットへの到達性を確保 ピアリングによりお互いへの より良好な到達性を確保 ネットワークA AS50000 peering トランジットを渡すことによりインタ ネットへの接続性を顧客に提供 AS30000 2007年4月18日 上流 9 AS 20000 AS50001 peering transit AS30001 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. 上流の上流はどうなってる? 全ページAS20000の例では、インタネットへの接 続性は上流プロバイダAS40000及びAS40001から のトランジットに頼っている では、AS40001, AS40002及びさらにその上流はど うやってインタネットへの接続を確保しているの か? 最上位は?? 2007年4月18日 10 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. Tier1プロバイダ 最上流のプロバイダをTier1プロバイダという Tier1プロバイダはTier1プロバイダ同士のピアリングだけで インタネットへの接続性を確保 インタネットの総経路=ΣTier1プロバイダが配下にもつ経路 Tier1プロバイダ群 peering 2007年4月18日 11 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. Tier構造 Tier1からトランジットを受けているプロバ イダをTier2, Tier2の次のレベルをTier3とい う。このようにインタネットは階層化構造 (Tier構造)になっている Tier1 Tier2 Tier3 Tier4 2007年4月18日 12 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. Tierの実態 Tierはpeering/transitによって規定される Peering関係は互いの守秘義務契約によって成り立 つことが多い 関係は常に変動 Tierの実態は正確にはわからない 現在のTier1は? 米国を拠点とするプロバイダのみ 日本資本のものはVerio(NTT Com)だけ 他の日本プロバイダはどこもこれらのうちのどこかからtransitを 購入しているTier2以下の立場 実際的にはきれいな階層構造(木構造)にはなっ ていない マルチホーム(上流を複数もつ) Tier1とTier2のpeerあり 2007年4月18日 13 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. ピアリング お互いに合意した2者が相互のトラフィック交換 のために接続 ピアリングのための相互契約をする。 IXを介してのピアリングは、簡易なメモをとりかわすので済ま す場合もある 通常、片一方がピアリングの意義を認めない場合には不 成立、切断などが起こる 2007年4月18日 14 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. ピアリングの意義 アップストリームに流すトラフィック量を減らす コストに直結 品質の向上/品質のコントロール 特にプライベートピア(後述)の場合 IXの場合は必ずしもあたらないこともある 2007年4月18日 15 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. IXとプライベートピア ピアリングを行うやり方として IXを介して行う プライベートピアリング の2種類がある IXとは? さまざまなプロバイダが相互接続のためにつなぎこむための相互接 続点 Layer2が主流だが、Layer3のものもある 一地点か、あるいは比較的距離の近い(コストのかからない)リンク で接続された数地点からなる 最近ではMPLX-IXなど広域のものも出始めている プライベートピアリングとは? 2者間でピアリングのための専用線を用意し、ピアを行うこと 2007年4月18日 16 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. プライベートピアリングの実態 2者間での機密契約になることが多い 2者間で協議して、コスト分配など決める 全面的に一方が専用線の費用をもつ さらに一方がピア接続料(トランジットよりは安い)を 払うケースもあり(paid peerという) 対等な場合は、専用線の料金折半や、複数本持つ場合に は東京の専用線はA社、大阪の専用線はB社というような 配分の仕方もある(これは契約者の名義がはっきりする ので一般的にはうれしい) これらは2者の力関係によって決まる 2007年4月18日 17 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. TransitとPeering再考 なぜ大手ISPは中小ISPに対してpeeringして くれないの?? 2007年4月18日 18 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. Peering交渉 階層をめぐっての激しい交渉合戦がある Tier2プロバイダがTier1プロバイダとpeer交渉/Tier1か ら拒否あるいは料金を請求(paid peer) Tier1プロバイダが他のTier1プロバイダにpeerの打ち切 りを宣言 Tier1プロバイダの理屈 おれのバックボーンでパケットを運んでやるだから金を払え! 大プロバイダの方がバックボー ン運営にコストがかかる 小プロバイダ 2007年4月18日 大プロバイダ 19 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. なぜいろいろなピアリングポリシーがあるの? だれもがトランジット提供側になりたい(当然) A) ピアリングをすることはトランジットを提供する可能性 を減らす。すなわち自分を選ばなくなる B) ピアリングによってトラフィックの疎通はよくなり、自 分のユーザにはよいサービスを提供できる A)とB)は相互矛盾 → 各社さまざまなピアリングポリシー(考え方)がある 2007年4月18日 20 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. さまざまなピアリングポリシー オープン型 とにかく誰とでもピアリングしよう ピアリング交渉を主体的にもちかけよう 言われたら断らない クローズ型 ピアリングするISPとしないISPをわけよう 基準はさまざま ある一定以上の大きさのISPとはピアリングしよう コンテンツをもっているISPとはピアリングしよう 資本関係があれば断れない☺ ピアリング要請を受けたらとりあえずトランジットをセールス してみる 2007年4月18日 21 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. Tier1再考 どうやって現在のTier1はできてきたのか? 歴史的経緯 最初にTier秩序ができはじめる時点ですでに規模が大きかったISP同 士がTier1になっていった 大きいISPほど顧客にとって魅力的なのでますます大きくなっていく 密室的ピアリング交渉が後発のISPを締め出していく 地理的条件 米国は欧州/アジア両地域からみてファイバ構成的に中間に位置 2007年4月18日 22 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. 何によってTier1になれるのか? Peeringをしたいと思わせるかどうか?がそのISPの力であ る。 要因は世の中の状況に合わせて変わっていく トラフィック量の多少 地理的なひろがり 当初はアメリカ東西だったのが、最近はグローバルな展開が条件 コンテンツをもっているかどうか? ファイナンシャルな状況 要は強いやつがルールを決めていく 2007年4月18日 23 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. Tier1のジレンマ 新しい地域(例えばアジア)に進出 進出しないとTier1を維持できない ピアリングポリシーどうする? 顧客(Tier2/企業)を集めるためにはローカルな経路が必要で、ローカ ルなIXなどでたくさんのピアを張る必要 しかし、ピアをはりすぎると顧客がとれない さらに、その地域の大きいISPは決して「よそ者」にピアを くれない(別問題) 特に中国ISPは強気! 2007年4月18日 24 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. IPv6時代のTier1は? IPv6インターネットでは、現状世界のほとんどの ところではお互いにフルルート交換 全体のコネクティビティを向上させるため IPv6商用サービスの登場により、徐々にこの風習 は消え、IPv4と同様のトランジット/ピアリング に移行しつつある これからTierの秩序が作られていくと考えられる 現在は、日本の多くのIPv6ネットワークはまだ Tier1であり、IPv6ネットワーク展開が早い日本や ヨーロッパがTier決定の主導権をとれないか、とい う構想もある 2007年4月18日 25 Copyright © 2007, Intec NetCore, Inc., All rights reserved. 情報サイト ビジネスon v6 http://www.biz6.jp/ 個人ブログ http://blog.goo.ne.jp/v6arano/ ご清聴ありがとうございました - ご質問・お問い合わせ先 - E-mail : [email protected] URL : http://www.inetcore.com/ IPネットを活用した 技術戦略支援は ネットコアで
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