ナミビア月報 (2016年9月) 在ナミビア日本国大使館 【内政】 ●イヤンボ副大統領倒れる ●ナミビア警察長官、インターポール総裁に立候補 ●大統領、NEEEFは悪案? 【外交】 ●気候変動枠組条約パリ協定を批准 ●ムシェレンガ国際関係・協力副大臣、非同盟諸国首脳会議に出席 ●ガインゴブ大統領、国連総会出席他で約 3 週間余訪米 ●大統領夫人、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の特別唱道者(special advocate)に 【経済】 ●ガソリン価格引下げ ●政府、AREVA の海水淡水化プラント購入を断念 ●国際格付機関 Fitch、ナミビアの格付見通しを「stable」から「negative」に変更 ●LED 電球で、全国的省エネ ●漁獲割当枠配分のための新たなフォーミュラ導入へ ●ホセア・クタコ(ウィントフック)国際空港入札白紙は違法。国は控訴へ ●財政見直し(10 月)まで、全ての入札凍結 ●8月の消費者物価指数(CPI)は先月から 0.2 ポイント下がり 6.8% ●IMF、2016 年のナミビアの経済成長率を 2.5%と予測 ●第2四半期は 2013 年以来のマイナス成長 ●6 月末の政府累積債務の対 GDP 比 35.8%、外貨準備高は輸入 2.7 ヶ月分 【社会】 ●水危機なし? ●世界競争力ランキングでナミビアは84位 1.内政 ●イヤンボ副大統領倒れる 3日、イヤンボ副大統領が出張先のツメブ(Tsumeb)で倒れ地元病院に搬送されたが、関 係者によれば、副大統領はその後ウィントフックの自宅に戻り、体調は平常に戻った。 1 ●ナミビア警察長官、インターポール総裁に立候補 27 日付ニューエラ紙(政府系)はナミビア警察長官の Sebastian Ndeitunga がインター ポール総裁に立候補したと報じた。それによれば総裁職を巡って中国の候補者(公共安全 副大臣)と争っている。 ●大統領、NEEEFは悪案? 訪米(10 日~)のタイミングでNEEEFに対して積極的でないガインゴブ大統領の発 言が報じられ、混乱した。報道された発言を取り上げると次の通り。 ・「なぜNEEEFが未だ閣議でも承認されていない段階で拒否されるのか理解できない。 自分は誰かから何かを取り上げて他の誰かにそれを与えることには与しない。 (反対する なら)代替案を示してくれ。 」 (9日の訪米前の記者会見。12日付ナミビアン紙他) ・ 「所有権の 25%を白人から黒人へ移転するNEEEFは悪案(bad idea)だ。そんなことは 起きないことを我々は既に知っている。」 (南アの Daily Maverick 紙インタビュー。14 日 付サン紙他) 国債格付機関 Fitch がナミビアの経済見通しを stable から negative に変更(下記経済 の項参照)した際に、NEEEF導入により海外からの投資が減るとの見方を示したこと が大統領の発言に繋がったとの見方があるが、主管しているクーゴンゲルワ=アマディー ラ首相は引き続き本件を進めるとしており(14 日付けナミビアン紙)、今後の動向が注目さ れる。 (注)New Equitable Economic Empowerment Framework。 南アのBEEに類似した黒人優 遇経済政策案。6項目(うち、所有権、経営権、技術支援の 3 項目は 10 ポイント以上が 必須)からなるポイント制で総合ポイントが50に満たない企業は政府調達への入札や 政府からの許認可取得で制限を受けることとなる。例えば会社所有権の最低25%、或 い は 取 締 役 会 の 構 成 員 の 最 低 50 % は 黒 人 ( 原 案 で は ”previously disadvantaged people”)であればそれぞれ 10 ポイント獲得、等。達成比率が高くなるほどポイントも 高くなる仕組み。2月からパブコメに付され、未だに議論が続いている。主要経済団体、 有識者等は概ね反対の立場(NEEEFは現在の富の再配分にはなり得ても国富の拡大 には資さない。政府の貧困格差解消という主題は理解するが、NEEEFではなく経済 成長戦略をとるべし、等) 。 2.外交 ●気候変動枠組条約パリ協定を批准 15日、国民議会は気候変動枠組条約パリ協定を批准し、批准書は9月21日、国連に 寄託された。 ●ムシェレンガ国際関係・協力副大臣、非同盟諸国首脳会議に出席 15日~18日にベネズエラで開催された非同盟諸国首脳会議(15日~16日は閣僚 会議)に出席。 2 ●ガインゴブ大統領、国連総会出席他で約 3 週間余訪米 ガインゴブ大統領は夫人と共に 10 日から訪米し、国連総会一般討論演説(21 日)を挟み、 各種経済セミナー、大学での公開講演(コロンビア大、ハーバード大)等に出席した。 ●大統領夫人、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の特別唱道者(special advocate)に 22 日、UNAIDS はモニカ・ガインゴス大統領夫人を、同機関が新たに開始した Start Free, Stay Free, AIDS Free agenda を特に若い女性を中心に広めるための特別唱道者 (Special Advocate for Young Women and Adolescent Girls)に任命した。 3.経済 ●ガソリン価格引下げ 鉱山・エネルギー省は、9月のガソリン価格を引き下げると発表。無鉛ガソリンは N$0.46 引き下げ N$10.48/l に、また、ディーゼルについては N$0.34 引き上下げ、N$10.28/l(Diesel 500pm)及び N$10.33/l に。同時にガソリン税引き上げを 9 月 7 日に実施すると発表(当初 8 月 1 日から適用するはずが事務手続き等で実施が遅れていたもの。)。無鉛ガソリン税は 1 リットル当たり 12 セントが 25 セントに、ディーゼル税は 1 リットル当たり 10 セントが 25 セントに。 ●政府、AREVA の海水淡水化プラント購入を断念 1日、ムトルワ農業・水・森林大臣は、仏企業 AREVA がスワコップムント近郊に所有す る年間生産量 2000 万立方規模の海水淡水化プラントは購入しないと発表した。ナミビア政 府は沿岸地方の水不足に対応するため同プラントの購入について検討してきたが、同プラ ントの売却価格は 30 億ナミビアドルともいわれ、結局政府財務常任委員会は右購入を認め なかった。 「ム」大臣は AREVA プラントは依然として現在の水供給源として必要でありそれ との関係は維持するが、将来用として別途 PPP で新たに海水淡水化同プラントを建設する と述べた。 ●国際格付機関 Fitch、ナミビアの格付見通しを「stable」から「negative」に変更 2日、国際格付機関 Fitch Rating (London)は、ナミビアの格付見通しを「安定(stable)」 から「引下げの可能性有り(negative)」へ変更すると発表。ただし発行体デフォルト格付 (IDR)は現行の「BBB-」を維持。見通し変更の理由として、2015 年度の政府財政赤字対 GDP 比(8.3%)及び政府累積債務の対 GDP 比(38.9%)がそれぞれ政府目標の 5%及び 35%を上回 ったこと、さらに 2015 年の経常収支赤字が対 GDP 比 14.1%と 2013 年の 8.9%から大幅に 拡大していることなどを指摘した。これに対しシュレットヴァイン蔵相は、ナミビア経済 の後退は近隣諸国、特に南ア及びアンゴラ経済の悪化の影響に加え国際的資源安が重なっ たものと分析しつつ、いずれにせよ格付機関指摘の点を踏まえ、10 月中にムダ支出削減と 経済成長のための政府財政見直しを実施すると明言。 3 ●LED 電球で、全国的省エネ 5日、ナミビア電力公社(NamPower)は、100 万個の LED 電球の家庭への無償配布を開始(一 家庭 6 個) 。これにより、来年 5 月までに 30MW(43GWh 相当)の省エネ効果が期待される。 同公社の Kahenge Houlof 社長は、 「電球無料配布にかかる経費は 135 百万ナミビアドル。 これは 30MW の発電所を建設するよりはるかに格安。 」と発言。 ●漁獲割当枠配分のための新たなフォーミュラ導入へ 8日、エサウ漁業・海洋資源大臣は記者会見に於いて、来年度の全ての魚種に関する権 利者への漁獲割当枠を検討するための資料として新たな計算フォーミュラを導入すると発 表。各権利者は9月末までに同フォーミュラに必要事項を記入・掲出が求められる。「エ」 大臣は右フォーミュラ導入は、公平かつ透明性のある漁獲枠配分行うためとした。 ●ホセア・クタコ(ウィントフック)国際空港入札白紙は違法。国は控訴へ。 昨年末、入札により一度中国企業への委託が決まった 70 億ナミビアドル相当のホセア・ クタコ国際空港施設改善・拡張プロジェクトについて、ガインゴブ大統領が入札等の手続 きが不適切であった等の理由により入札の白紙撤回を指示した件に関連し、当該中国企業 が右大統領指示を踏まえ発出された公共事業・運輸大臣による当該入札実施の停止を命じ た書簡撤回を求める裁判を起こしていたところ、9 日、高等裁判所は右書簡は違法かつ無効 であるとの判決を下した。これに対しガインゴブ大統領は出張先の米国で控訴する意向を 表明(14 日) 。 ●財政見直し(10 月)まで、全ての入札凍結 12 日、シュレットヴァイン蔵相は財務省次官(入札評議会(Tender Board)議長)に対し、 10月に予定している財政見直しまでの間、全ての入札、F/S 等の凍結を命ずる書簡を発出 した。 ●8月の消費者物価指数(CPI)は先月から 0.2 ポイント下がり 6.8% 15 日に国家統計局(NSA)が公表した8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比 6.8% で、前月より 0.2 ポイント下がった。 ●IMF、2016 年のナミビアの経済成長率を 2.5%と予測 21 日、対ナミビア 4 条協議のため来訪中のIMF関係者は記者会見に於いて、2016 年の ナミビアの経済成長率を 2.5%と予測していると述べた。2015 年の成長率 5.3%(注)から の大幅下降についてIMFは、南ア経済の落ち込みに起因するSACU(南部アフリカ関 税同盟)からの収益減少、継続する一次産品価格の低迷、格付引下げの可能性等を指摘。 なお、ナミビア中央銀行は7月に発表した経済見通しでは 2016 年の経済成長率を 4.4%と しており、IMFの予測はそれよりはるかに厳しい数字となった。 4 (注:ナミビア国家統計局は 8 月に公表した Annual National Account 2016(確定版)に おいて、暫定版で公表した 2015 年の経済成長率 5.7%を 5.3%に下方修正した。一方 2014 年は 6.3%から 6.5%に上方修正。 ) ●第2四半期は 2013 年以来のマイナス成長 26 日、国家統計局(NSA)が公表した 2016 年第 2 四半期 GDP 成長率(前年同期比)は 2013 年第 1 四半期以来初めてマイナス(▲1.2%)に。昨年同期の 7.0%に比すると大幅な減少。 NSA は今回の数字の落ち込み主要原因として建設(▲19.9%)、ホテル及びレストラン(▲ 15.5%)、鉱山(▲13.2%) 、製造業(▲9.4%)等を指摘した。これを受け、ナミビアは不 況(recession)に入ったとの見方がある一方、ナミビア中央銀行の Director of Strategic Communications は、数字は季節調整も必要であり、連続して2つの四半期でマイナス成長 とならない限り不況である判断することはできないと述べた(30 日付ナミビアン紙) 。 ●6 月末の政府累積債務の対 GDP 比 35.8%、外貨準備高は輸入 2.7 ヶ月分 30 日にナミビア中央銀行が公表した Quarterly Bulletin によれば、6 月末の時点で政府 累積債務は総額 611 億ナミビアドル、対 GDP 比 35.8%となり、昨年同時期に比して債務は 57.6%増。債務増加の主要因は昨年発行した 7 億 5000 万米ドルのユーロ債。一方、外貨準 備高は 210 億ナミビアドル相当で輸入の 2.7 ヶ月分。 4. 社会 ●水危機なし? 16 日、ムトルワ農業・水・森林大臣はスワコップムントでの記者会見に於いて、ウィン トフックに水を供給する3つのダムが枯渇しても、近郊の地下水源(aquifer)を活用するこ とで断水の危機はないと明言。右水源はウィントフックの水利用13年分に匹敵するとも 発言する中、同席したナミビア水公社シヴテ社長は、節水を継続しなければ同水源も3年 で枯渇すると警告。 「ム」大臣は、中部ナミビア水問題解決のための長期的計画として(1) アンゴラ国境の河川からパイプライン等で水を引く、 (2)海水淡水化プラントを建設する、 の2案を提示。 ●世界競争力ランキングでナミビアは84位 28日に国際経済フォーラムが公表した世界競争力ランキングでナミビアは138ヶ国 中4位(前回85位) 、アフリカではモーリシャス、南ア、ルワンダ、ボツワナ、モロッコ に次いで6位(前回5位) 。因みに日本は世界第8位。 (了) 5
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