ISSN 1348-6616 Education Center for International Students (ECIS) Nagoya University 名古屋大学留学生センター Journal of the ISSN 1348-6616 名古屋大学留学生センター 紀要 第 紀要 Volume 3 号 3 Contents Foreword • Four Years at ECIS ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ SUEMATSU Yoshikazu 1 Ⅰ Research Papers • Current Issues in Study Abroad at Japanese National Universities: 目 次 A comparative case study based on performance indicators of internationalization ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ YOKOYA Nami 巻頭言 5 ・留学生センターの4年間 …………………………… 留学生センター長 末松 良一 Ⅱ Reports • ECIS and Community Liaison ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙UKIBA Masachika 19 • ECIS Community Project: ‘Foreign Pupils in Schools and the Community’. ・国立大学における派遣留学の現状と課題 ……………………………… 横家 奈美 ー 国際化の成果指標を用いた事例比較を通じてー 5 Ⅱ報告 Language Volunteers ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙UKIBA Masachika 21 ・地域社会との連携 …………………………………………………………… 浮葉 正親 19 • 4th ECIS Open Forum: ‘The facts and fiction of, “If you study abroad, ・名古屋大学留学生センター地域貢献事業 you will pickup the lingo” ’. (Prof. Yoshikazu Watanabe) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ HORIE Miki 27 小中学校教員・日本語ボランティア研修会「外国人児童・生徒をめぐる地域と学校」…… 浮葉 正親 21 • ECIS Research Conference: ‘International Dimensions of Higher Education ・第4回留学生センターオープンフォーラム – What you don’t know may hurt you.’ (Prof. Joseph A. Mestenhauser) 「『留学すれば喋れるようになる』のウソとホント」渡辺義和氏 講演報告 …… 堀江 未来 27 ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ HORIE Miki 31 ・留学生センター講演研究会 International Dimensions of Higher Education ‒ What you don t know may hurt you ジョセフ・A・メステンハウザー氏 講演報告 ………………………………… 堀江 未来 31 Ⅲ Annual Report No. 12 (April 2004 ~ March 2005) • Japanese Language & Cultural Education∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 42 • Japanese Language Education Media & Systems Lab (JEMS) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 78 • Advising & Resource Services (ADRES) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 82 • Nagoya University Program for Academic Exchange (NUPACE) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 114 • Data ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 146 Guidelines for Contributors ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 182 1 Ⅰ論文 Seminar for Elementary & Junior High School Teachers and Japanese 2005 第3号 Ⅲ年報 No.12(2004年 4 月∼2005年 3 月) ・日本語・日本語文化教育部門 …………………………………………………………… 42 ・日本語教育メディア・システム開発部門 ……………………………………………… 78 ・教育交流部門 ……………………………………………………………………………… 82 2 0 0 5 ・短期留学部門 ……………………………………………………………………………… 114 ・資料 ………………………………………………………………………………………… 146 投稿規定…………………………………………………………………………………………… 182 ISSN 1348-6616 Education Center for International Students (ECIS) Nagoya University 名古屋大学留学生センター Journal of the ISSN 1348-6616 名古屋大学留学生センター 紀要 第 紀要 Volume 3 号 3 Contents Foreword • Four Years at ECIS ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ SUEMATSU Yoshikazu 1 Ⅰ Research Papers • Current Issues in Study Abroad at Japanese National Universities: 目 次 A comparative case study based on performance indicators of internationalization ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ YOKOYA Nami 巻頭言 5 ・留学生センターの4年間 …………………………… 留学生センター長 末松 良一 Ⅱ Reports • ECIS and Community Liaison ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙UKIBA Masachika 19 • ECIS Community Project: ‘Foreign Pupils in Schools and the Community’. ・国立大学における派遣留学の現状と課題 ……………………………… 横家 奈美 ー 国際化の成果指標を用いた事例比較を通じてー 5 Ⅱ報告 Language Volunteers ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙UKIBA Masachika 21 ・地域社会との連携 …………………………………………………………… 浮葉 正親 19 • 4th ECIS Open Forum: ‘The facts and fiction of, “If you study abroad, ・名古屋大学留学生センター地域貢献事業 you will pickup the lingo” ’. (Prof. Yoshikazu Watanabe) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ HORIE Miki 27 小中学校教員・日本語ボランティア研修会「外国人児童・生徒をめぐる地域と学校」…… 浮葉 正親 21 • ECIS Research Conference: ‘International Dimensions of Higher Education ・第4回留学生センターオープンフォーラム – What you don’t know may hurt you.’ (Prof. Joseph A. Mestenhauser) 「『留学すれば喋れるようになる』のウソとホント」渡辺義和氏 講演報告 …… 堀江 未来 27 ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ HORIE Miki 31 ・留学生センター講演研究会 International Dimensions of Higher Education ‒ What you don t know may hurt you ジョセフ・A・メステンハウザー氏 講演報告 ………………………………… 堀江 未来 31 Ⅲ Annual Report No. 12 (April 2004 ~ March 2005) • Japanese Language & Cultural Education∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 42 • Japanese Language Education Media & Systems Lab (JEMS) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 78 • Advising & Resource Services (ADRES) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 82 • Nagoya University Program for Academic Exchange (NUPACE) ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 114 • Data ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 146 Guidelines for Contributors ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 182 1 Ⅰ論文 Seminar for Elementary & Junior High School Teachers and Japanese 2005 第3号 Ⅲ年報 No.12(2004年 4 月∼2005年 3 月) ・日本語・日本語文化教育部門 …………………………………………………………… 42 ・日本語教育メディア・システム開発部門 ……………………………………………… 78 ・教育交流部門 ……………………………………………………………………………… 82 2 0 0 5 ・短期留学部門 ……………………………………………………………………………… 114 ・資料 ………………………………………………………………………………………… 146 投稿規定…………………………………………………………………………………………… 182 巻頭言 留学生センターの4年間 末 松 良 一 塚越規弘先生のあとを受けて,2001年4月からセン すが, 式に出席して大きな充実感をいつも覚えるのは, ター長を務めさせていただきました。2005年4月に次 日本語研修コース及び日本語・日本文化研修コースの 期センター長の江崎光男教授に引き継いでいただくま 修了式でした。 数十人の修了留学生が上手な日本語で, での4年間,貴重な経験をさせていただきました。 日本語の先生方への感謝,名大での生活の楽しさ,多 私は,30年間以上,本学工学部・工学研究科に籍を くの忘れがたい友達ができたことなどを話し,別れを 置き,工学分野の教職員や学生だけと付き合ってまい 惜しむのを聞くたびに,この修了生たちは,きっと世 りました。そんな私が,留学生センターへ来て,日本 界平和と日本の国際交流に貢献してくれるという喜び 語・日本文化,教育交流,短期交換留学などさまざま を覚えるのでした。同じ思いを,NUPACE 留学生の な分野の先生方と議論し,率直な意見交換を行うこと サマーパーティやウインターパーティにおいても経験 ができたことは得がたい経験となりました。 させていただきました。同時に,日本語研修コースや 着任早々の2001年6月,全国留学生センター長・留 NUPACE プログラムの実行には,効率的な運営とは 学課長会議が名古屋大学で開催され,当番校として進 無縁な,多くの教職員の多大な労力が費やされている 行役を務めることになって,大学が抱える留学生問 ことも実感いたしました。 題・国際交流問題などの概略を知ることができたので 留学生受入れ基本方針が打ち出され,全学組織であ した。それから4年間,名古屋大学の留学生センター る留学生相談室が2004年1月に留学生センターの松浦 は,独立行政法人化など新たな課題を抱えているのが 助教授(2004年7月教授昇任)を室長として発足しま 現状です。私がセンター長を務めた留学生センターの した。各部局に配置された留学生担当講師の先生方の 出来事を振り返って思い付くままに記させていただき との連携協力によってすべての留学生に平等な相談環 ます。 境を整えるという設置趣旨にはまだまだ多難な現状で この4年間は,センターの教員がかつてないほど大 すが,新しい教員を迎えることも決まり,関係各位の きく異動した期間でした。日本語の藤原先生,教育交 努力により徐々に整備されていくことを祈っておりま 流の三宅先生が定年前に大学を去り,許斐ナタリー先 す。 生が AC21推進室へ移り,メディア部門のハリソン先 名古屋大学の国際交流のあり方についての議論もこ 生に続いて大野先生が他大学へ移られました。それぞ の4年間,数多くの委員会で多大な時間を要して検討 れの夢,人生目標に基づいての決断で惜しみつつも受 されました。国際交流機構(仮称)の組織化について け入れなくてはなりませんでした。その度に,センター の2年間以上の議論の末,文科省の国際交流戦略統括 の先生方と相談し,センターの将来を真剣に考え教員 本部構想のプロジェクト募集への名古屋大学からの提 公募要領案を検討しました。幸運なことに,若くて意 案として,国際企画室を中心とした全学組織との連携 欲的で優秀な人材を迎えることができました。日本語 協力を目指す国際交流推進本部が打ち出されました の李先生,NUPACE 部門の筆内先生,教育交流部門 が,関係各位の努力が報いられて名大からの提案は採 の堀江先生,そしてメディア部門の石崎先生と佐藤 択されたと聞きました。 限られた資金を有効利用して, 先生 (2005年6月着任 ) を迎えることができたのです。 真に名古屋大学の国際交流を推進する組織に育つこと 4年間でセンター教員の3分の1が入れ替わるという を願っております。 変化を乗り越えることができたのもセンターの皆様の 独立行政法人化は,留学生センターにも大きな影響 お陰だと感謝しております。 を与えつつあるといえます。従来は細かい費目ごとに 留学生センター長の役目として,各期の留学生に対 文科省から大学へ来ていた予算が,運営費交付金とい する歓迎送迎会や開講式・修了式等での挨拶がありま うひとくくりでまとめられ,それを何に当てるかは各 −1− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 大学の裁量に任されるようになったのです。旅費や人 と判断する行動をやりっぱなしでもよかったのです 件費に当てる自由度は増加しましたが,非常勤講師費 が,第三者による判断・評価のための説明と証拠の提 用などが削減の対象となる恐れが生じてしまいまし 出が義務付けられるという時勢になったと解釈されま た。教職員や学生がほとんど従来のままで,独立行政 す。 法人となったことに戸惑いを抱くことも多いと思いま このセンター紀要は,2004年度のセンターの教職員 すが,その変化を端的にいえば,独立行政法人化した による活動の内容と成果をまとめたものです。 本書が, 組織は,必ず外部からの定期的な評価を伴うことに変 学内外の皆様の名古屋大学留学生センターに対するご わったといえます。中期計画・中期目標の設定と実行 指導・ご協力の一助となること願っております。 は,その具体化です。従来は,各自・各組織が正しい 2005年5月 −2− 論 文 国立大学における派遣留学の現状と課題 ―国際化の成果指標を用いた事例比較を通じて― 名古屋大学大学院教育発達科学研究科教育科学専攻 高度専門職業人養成コース 横 家 奈 美 2.2 調査の方法 要旨 (1)調査内容 本稿は,黎明期にある我が国の国立大学における派 (2)調査対象 遣留学の現状についての事例研究を試みたものであ (3)調査方法 る。近年,諸外国の大学においては,主体的な教育戦 2.3 調査結果 略として学生を海外の大学等へ送り出し,帰国学生に (1)Q1(実践の有無)について よって内部の国際化を図っていく派遣留学が積極的に (2)領域別の検証結果 展開されている。本稿ではこうした動向をふまえ,我 (3)Q2(重要な10項目以内の選択)に が国の国立大学における派遣留学の現状と課題を明ら ついて かにするために, 「国際化の成果指標」を事例分析の (4)Q3(自由記述回答)について 枠組みとしたアンケート調査を実施した。具体的には, 3.考察とまとめ 名古屋大学と同大学との学生交流が活発に行われてい 参考文献 るノースカロライナ州立大学を対象に調査を行った。 付録資料 これにより,国立大学において派遣留学の推進体制を 構築するための課題として,人材育成の視点を含む国 際教育の戦略プランの策定,全学的な協働体制の強化, 1.はじめに リーダーシップを活かした推進体制の確立の必要性と この研究は,派遣留学の重要性を認識し,その黎明 いった課題が明らかになった。 期にある国立大学の現状についての事例研究を試みる ものである。グローバル化によるボーダレスな社会に おいては,世界に通用する人材を育成することが急務 キーワード の課題とされている。人材養成を担う大学に対しては 国立大学,派遣留学,大学の国際化,成果指標,国際 国際社会をリードできる高度な人材を育成する教育プ 化グッド・プラクティス・モデル ログラムを整備することが求められている。派遣留学 は,こうした人材を育成するために極めて重要な手段 となりうるものであり,諸外国が積極的に派遣留学政 目次 策を展開している理由はここにあると考えられる。 1.はじめに 我が国では「留学生受入れ10万人計画」により,受 1.1 先行研究 入れ中心の留学生政策が図られてきたが,近年では, 1.2 派遣留学の動向 外国の大学との連携を強化し学生を主体的に海外に派 (1)諸外国の動向 遣する教育プログラムがとくに一部の私立大学を中心 (2)我が国の動向 に取り組まれており,この傾向は今後強まっていくと 2.名古屋大学とノースカロライナ州立大学に 考えられる。 おける事例調査 そ こ で, 国 際 化 の 成 果 指 標(Performance Indi1 を現状改善の指針 cators in International Education) 2.1 国際化の成果指標を用いた分析方法 −5− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 として利用し,名古屋大学と,同大学との学生交流が を身につけた学生を育成する教育手段となっている。 活発に行われているノースカロライナ州立大学の事例 その結果,帰国学生がその経験をキャンパスに持ち帰 を分析し,効果的な派遣留学の推進体制をつくりあげ ることによりキャンパスの国際化を推進するものとさ るための課題について考察したい。 れている。 政府レベルで推進されている例としては,ヨーロッ 1.1 先行研究 パでは,EU のエラスムス計画が挙げられる。欧州単 我が国では,「10万人受入れ政策」に支えられた留 位互換制度(ECTS)を利用して EU 域内の学生の流 学生の受入れが国際教育交流における優先的政策で 動性を高め,人材育成を図ると同時に EU の統合を推 あった。このため,喜多村(1987)や江淵(1997)の 進している。また,アジア太平洋地域内に目を向ける 研究に見られるように,留学生の受入れという観点か と,EU の取組みに倣い,1991年に UMAP(アジア ら大学の国際化に関する研究が発展していったが,そ 太平洋大学交流機構)が誕生し,短期留学交流をはじ れは外国人留学生を受け入れることにより内部の国際 めとする域内の高等教育機関間の協力を推進する動き 化を図るという受動的国際化の視点に立つものが主流 がある。 であった。 以上のように,諸外国では,派遣留学が機関レベル 本稿では,派遣留学を「大学が主体的な教育戦略と の国際化施策として,または国家的人材育成戦略の一 して学生を海外の大学等へ一定の期間送り出し,それ 環として位置づけられる傾向にあり,我が国でも今後 により育った帰国学生によって内部の国際化を図る取 優先度の高い課題として各機関レベルにおいて取組み 組み」と定義するが,この観点に立った研究は,現在 が進むことが予想される。このことは, 「特色ある大 のところ多くはみられない。 学教育支援プログラム(特色 GP)」や,今後の展開 派遣留学に関する研究の数少ない例としては,留学 が予想される「大学教育の国際化推進プログラム」に 生センターの現場で研究する堀田の「海外留学と日本 よる「戦略的国際連携支援」などの文部科学省の政策 企業における雇用機会」が挙げられる(堀田,2004)。 誘導的な姿勢にも現れている。 日本の大学がどのような短期派遣留学プログラムを実 施していくべきかという実施レベルの現状と課題を追 (2)我が国の動向 求し,派遣留学を経験した学生が社会にどのように受 わが国においては, 「留学生受入れ10万人計画」を 入れられ,また逆にどのような付加価値を持った人材 1983年に策定し,留学生数の拡大と,総合的な留学生 が社会から求められているかといった派遣留学の成果 政策の実施に取り組んできたが,こうした受入れ中心 に焦点をあてて調査を行っている。その成果として, の留学生政策にも近年変化が見られる。日本の大学か 日本の大学が目指すべき短期交換留学プログラムおよ ら学生を海外へ派遣することについては,政府レベル び学内の国際カリキュラム開発のための課題を提案し でその重要性が強調されることはなかったが,平成15 ている。 年12月の中央教育審議会答申「新たな留学生政策の展 開について∼留学生交流の拡大と質の向上を目指して 1.2 派遣留学の動向 ∼」においては留学生交流の双方向性政策が新たに登 (1)諸外国の動向 場し,ポスト10万人の新たな留学生政策として提案さ 諸外国の留学プログラムの動向をみてみると,人材 れることとなった。ここでは,日本人の海外留学への 育成の視点を主眼に置いたプログラムが推進されてい 支援について,「受入れ中心から相互交流重視へ」と る。たとえば,アメリカにおいては,学士課程のとく いう政策方向の転換の必要性が指摘されている。より に3年次を中心とした1年間に,海外の大学で学ぶ 多くの日本人学生が短期留学や学位取得を目指して海 ジュニア・イヤー・アブロードをはじめとする派遣留 外留学することが望ましいとされ,国がそれらを推進 学プログラムを高等教育機関や国際教育関係者が全国 していく必要性が強調された。 レベルで積極的に推進しており,それらは国際的視野 国立大学においてはこのような政策動向を受け,留 1 これに関しては,第2章に詳述する。 −6− 学生の受入れを中心に様々な施策が推進されてきた 研究」 (平成16年度より科学研究費補助金研究プロジェ が,日本側から学生を積極的に海外へ留学させるため クト)が注目できる。そこでは,ヨーロッパにおける の体制整備は着手されたばかりであり,組織的・戦略 IQRP(Internationalisation Quality Review Process) , 的に取り組む体制が充分に整備されていない。 ア メ リ カ の American Council on Education(ACE) たとえば,学生を交換留学生として協定大学へ派遣 が取り組んでいる「国際化のための自己点検ガイドラ するためには,個々の学生に対し履修や留学準備等に イン」3 などに着目して,日本の大学の視点から国際 関する指導を行ったり,願書やビザなど煩雑な手続き 化の推進に向けた評価指標の開発が進められている。 等についての説明が必要となる。国立大学において, 国際化の指標については未だ開発途上であり,そ これらは留学生センター等に所属する数少ない教員に の有効性や有用性についても明確になってはいない。 よる部分的な取組みに委ねられているのが現状であ しかし,本稿では国際教育に関する機関レベルのパ る。事務的支援も,事務局の留学交流を担当する部署 フォーマンスについて,インディケータ( 「成果指 に派遣担当の職員が若干名配置され,他の業務を兼任 標」と訳する)を使って測定および評価を行うため している場合が多い。 に 開 発 さ れ た Paige の“Performance Indicators in このように,派遣留学に関する国立大学の状況は未 International Education” (2005)を利用することとす だ黎明期の段階にある。また,いかなる条件のもとで る。 どのように推進すべきかといった共通のガイドライン これを採用した理由としては以下のとおりである。 や全学的なポリシーが存在していないというのが実情 国際教育の分野では第一人者である Paige は,35年間 である。 にわたる活動経歴を有している。この成果指標は,彼 一方,一部の私立大学においては,独自の建学の精 の豊富な国際経験と知識を背景に,世界の大学国際化 神や教育理念に基づき,時代のニーズに見合った留学 に関する文献のレビューを行い,評価および成果指標 プログラムの開発・運営に積極的に取り組んでいる。 のコンセプトを検討することにより,生まれたもので ある。そのため,国際化の進捗状況を診断するための 実用的なツールになっていると判断した。 2.名古屋大学とノースカロライナ州立大学に この国際化の成果指標において,派遣留学は10に分 おける事例調査 類される主要なカテゴリーのうちの一つとして位置づ 2.1 国際化の成果指標を用いた分析方法 けられている。これを用いて,派遣留学を推進するた 本稿では,派遣留学の効果的な推進体制を探求する めの要件,すなわち「国際教育のグッド・プラクティ ためには,派遣留学の取組みそのものだけでなく,大 スのモデル」を明らかにするために,次の方法により 学全体の国際化の取組み状況を分析することが有用で 分析を行う。 あると考えたため,その分析枠組みとして「国際化の まず,成果指標を枠組みにして「国際教育のグッド・ 成果指標」を用いることにした。とくに我が国の国立 プラクティスのモデル」を判断するための調査票の設 大学にように,派遣留学プログラムをこれから開発し 計および作成を行う。次に,その調査票に基づき名古 ていく段階にある状況においては,その前提条件とし 屋大学とノースカロライナ州立大学の取組みの比較お ての国際化戦略計画全体が重要となると考えられる。 よび分析を行い,その知見をまとめる。 大学の国際化指標に関しては,前述の江淵が,『大 学国際化の研究』において,共通の分析尺度として 2 2.2 調査の方法 の「大学の国際化」指標の策定を試みている 。また, (1)調査内容 最近の研究としては,大阪大学が中心となって取り組 調査内容として採用した Paige の成果指標は全部で んでいる「大学国際化の評価指標策定に関する実証的 82項目からなる4。82項目は大分類と中分類の階層構 2 江淵,1997, pp. 33-65 3 “Internationalizing the Campus: A User’s Guide” (ACE, 2003)にその研究が紹介されている。 4 Paige, R. M. (2005),“Internationalization of Higher Education: Performance Assessment and Indicators”, Nagoya Journal of Higher Education, Vol. 5(『名古屋高等教育研究』第5号,名古屋大学高等教育研究センター編) −7− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 造に整理されている。大分類としての10分野の“Key より,40の質問項目に対し,実践の有無に関して「Yes Performance Categories” (「 主 要 成 果 カ テ ゴ リ ー」) (はい)」,「No(いいえ)」の回答を求めた(Q1) 。な は下記のとおりである。 お,名古屋大学と比べて国際教育交流活動が豊富な経 この10分野のもとに中分類の40領域が整理されてい 験を有するノースカロライナ州立大学に対してはこれ る。たとえば,University Leadership for Internation- に加えて,同じ40項目について大学全体の国際化を推 alization(全学リーダーシップ)の分野の下には,A. 進するために重要とみなす観点から,10項目以内の選 Mission Statement(ミッション) ,B. Promotion and 択を求めた(Q2)ほか,国際化という文脈のなかで Publicity(広報) ,C. Budget(予算)など計6領域が の派遣留学推進についての課題と,国際化を推進する 分類されている。 うえでの成果指標の有効性について自由記述を求めた (Q3) 。 Internationalization Model(国際化モデル) : Key Performance Categories (2)調査対象 1. 調査の対象として,名古屋大学とその交流相手校で University Leadership for Internationalization (全学リーダーシップ) 2. Internationalization Strategic Plan(戦略プラン) 3. Institutionalization of International Education あるノースカロライナ州立大学の二大学とした。ノー スカロライナ州立大学を選定したのは,名古屋大学と 活発に学生交流を行い,良好な関係を築いていること (全学組織) 4. Infrastructure ― Professional International から,今後の参考となる結果が得られると考えたため Education Units and Staff(専門組織) である。ここで,両大学のプロフィールを概観する5。 5. Internationalized Curriculum(カリキュラム) 6. International Students and Scholars(受入れ体制) 7. Study Abroad(派遣留学) 8. Faculty Involvement in International Activities 名古屋大学は,1939年に帝国大学として創設され たのち,1949年には新制大学となり, 「自由闊達」な 学風をもとに,優れた人材を育成し,先端的な学術 (教員の参画) 9. 研究分野における大学院を中心とする研究・教育活 Campus Life ― Co-Curricular Programs 動を展開している。平成16年現在,職員数は約3,400 (学生生活) 人,学生数は約15,800人となっており,そのうち留学 10. Monitoring the Process(評価活動) 生は約1,200人(全学生の約7.5%)を占める。海外の 調査票の設計手順としては,中分類に該当する40領 大学・研究機関との学術交流協定は180を越えており, 域をキーとして,全82項目のなかから,全学の国際化 2002年に設立された国際学術コンソーシアム(AC21: を推進する要件として重要であると判断した40項目を Academic Consortium 21)の取組み等により,国際 精選し,再構成した。精選の方法は,調査票が簡潔で 連携活動に関する評価は高い。 ありかつポイントを押さえたものとするため,中分類 ノースカロライナ州立大学(North Carolina State 40領域ごとに重要度の高いと判断した1項目を質問項 University:以下“NC State”と記す)は,ノースカ 目として選んだ。 ロライナ州ローリー(Raleigh)に位置するランド・ たとえば,University Leadership for Internationaliza- グラント大学であり,1887年に設立された。工学,織 tion 分野の Mission Statement 領域においては, “The 物業研究,林学,建築学といった分野において産業界 university’s mission statement includes international との結びつきが強く,生命農学,工学などの10学部 education.” (大学のミッションに国際教育が含まれて が設置されている。学生数約3万人のうち留学生は い る ) お よ び“The university’s mission statement 約1,500人(全学生の約5%) ,教員は約1,700人である。 sets international education as a university priority.” また,海外へ留学した学生は2003−2004年度実績で (大学のミッションに国際教育が優先的に掲げられて 623人となっている。これは,全学生数の約2%の学 いる)の2項目のうちの前者を重要と判断した。 生が海外留学を経験していることになり,全米の大学 こうして作成したアンケート調査票(付録資料)に における海外留学者が1% であるのに比べて高い水 5 両大学の情報は,ホームページ(http://www.nagoya-u.ac.jp, http://www.ncstate.edu)やパンフレット等から得た。 −8− 準となっており,過去5年間で倍増している。 表1:Questionnaire on good practice model of International Education(Q1)の回答結果7 質 問 事 項 (3)調査方法 名古屋大学の取組みについては,筆者自身が名古屋 大学の刊行物およびホームページ等を確認し,回答 を作成した。なお,定性的な回答が必要となる部分 については,適宜関係者にインタビューを行った6。 ノースカロライナ州立大学については,スタディー・ アブロード・オフィスのディレクターである Ingrid Schmidt 氏と,日本の大学との交流の窓口の役割を担 うノースカロライナ・ジャパン・センターの Francis A. Moyer 氏に対して,2004年10月29日と11月15日に それぞれ電子メールによりアンケート調査票(Q1か ら Q3を含む)を送付し,12月10日と12月12日に回答 A 大学のミッションに国際教育が含まれて いる ○ ○ B 国際教育プログラムの情報を教職員と学 生に向けて冊子等により広報している × ○ C 国際化を推進する活動や職員および組織 のための予算がある ○ ○ D 全学の執行部に国際教育担当の責任者が いる ○ ○ E 教員の昇進や雇用の評価基準に国際活動 の実績が含まれている × × F 学生募集のなかで学生生活に国際的な活 動があることを謳っている × ○ 8 2 Internationalization Strategic Plan(戦略プラン) を得た。 2.3 調査結果 (1)Q1(実践の有無)について 40の質問項目に対する両大学の結果を表1に示し た。「Yes(はい) 」の数について全体をみると,全40 項目のうち,NC State が30,名古屋大学は20である。 これを見る限り,NC State の方が全体として国際化 の推進が進んでいる。 A 大学戦略プランには国際教育の基本目標 が設定されている × × B 大学戦略プランには国際教育の行動目標 が設定されている × × C 大学戦略プランには国際活動のための予 算や人材資源の裏づけがある × × D 大学戦略プランには全学,学部および学 科に対して国際教育を実践する具体的な 行動計画を記載している × × E 国際化に向けた実行計画と到達目標を策 定している × × 3 Institutionalization of International Education (全学組織) 次に,10の分野別にみていくと,全項目に「Yes(は い) 」と回答したのは,NC State においては, 「全学 組織」,「専門組織」 ,「派遣留学」,「教員の参画」およ び「学生生活」 の5分野である。名古屋大学においては, 「専門組織」 ,「教員の参画」および「学生生活」の3分 野である。 「全学組織」と「派遣留学」の分野において, NC State の方が進んでいることがわかる。 他方,両大学とも全項目に「No(いいえ)」と回答 したのは,「戦略プラン」の分野である。他の分野に 比べて取組みが遅れていることがわかる。 6 名古屋大学 NC State 1 University Leadership for Internationalization (全学リーダーシップ) A 国際教育に責任を持つ全学委員会を設置 している ○ ○ B 国際化に向けた調査統計収集・分析を担 当する職員がいる × ○ 4 Infrastructure ― Professional International Education Units and Staff(専門組織) A 留学生および外国人研究者受入れのため の組織がありプロフェッショナル職員が 配置されている ○ ○ B 派遣留学を担当する組織がありプロ フェッショナル職員が配置されている ○ ○ C 大学の国際化を支援する全学組織があり プロフェッショナル職員が配置されてい る ○9 ○ インタビューの相手によって見解の相違が生じた部分は,筆者が判断し,回答を作成した。 7 「Yes(はい) 」は「○」,「No(いいえ)」は「×」と表示した。 8 国立大学では法人化により中期目標・計画の策定が義務付けられるとともに,年度計画・年度評価が実施されることとなり, 戦略プランニングとは本質的に異なるものの,目標計画に基づく事業の実行を行いうるスキームが整いつつある。しかし,本調 査の段階では,中期目標等の運用に不透明な点が多く,戦略プランと断ずるには早計であると判断し,「×」とした。同様の理由 により,領域10 Monitoring Process(評価活動)の取組みも現段階では「×」とした。 9 留学生センターに置かれた「海外留学室」は全国の国立大学においては先進的な取組みであり,専任の教員が全学の学生の交 換留学をはじめとする海外留学に関する相談窓口の役割を果たしている。 −9− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 5 Internationalized Curriculum(カリキュラム) C 異文化交流プログラムを提供している A 学部教育に地域研究,国際学や外国語な どの国際分野を主専攻とするコースがあ る 10 Monitoring Process(評価活動) B 学部教育に国際分野を副専攻とするコー スがある × ○ × ○ C 学部教育の「コア・カリキュラム」に国 際分野のコース(たとえば国際政治など) × がある ○ D 学部教育では外国語(second language) が必修である ○ ○ E 学部生向けにスタディー・アブロードのた めの大学独自の奨学金プログラムがある × ○ F 国際教育に特化した全学カリキュラム委 員会がある × × ○ ○ A 全学的な実績評価システムがある × ○ B 国際化に関する成果指標がある × × C 国際活動に関する自己点検評価活動を毎 年行っている × × (2)領域別の検証結果 Q1の調査では,回答では「Yes(はい) 」となって いるが,取組みが不十分である項目や「No(いいえ)」 となっていても現在改善に向け取り組んでいる項目も みられ,「Yes」または 「No」 の回答だけでは単純に診 断できない項目が多く見られた。このため,とくに派 6 International Students and Scholars(受入れ体制) 遣留学の推進とその体制づくりに関連が深いと思われ A 留学生のための大学独自の奨学金プログ ラムがある × ○ る領域について,両大学の具体的な取組状況の調査・ B 留学生オフィスがありアドバイザーがいる ○ ○ 検証を行った。その検証結果の一部を以下に紹介する。 C 留学生自身を学習材料とする教育プログ ラムがある × × (1)1− A「大学のミッションに国際教育が含まれて 10 7 Study Abroad(派遣留学) いる」 A 単位認定を伴うスタディー・アブロード・ プログラムがある ○ ○11 B 単位認定を伴わないインターンシップや 海外研修プログラムがある ○ ○ C 特定の学部・学科に向けたスタディー・ アブロード・プログラムがある ○12 ○ D スタディー・アブロードを必修としてい る学部・学科がある × ○ E 海外の大学と学生交流協定を締結してい る ○ ○ F スタディー・アブロードのための大学独 自の奨学金プログラムがある ○ ○ 1)名古屋大学 平成12年に全国の大学に先駆け制定された大学の憲 法というべき「名古屋大学学術憲章」に大学の基本理 念を謳っている。その基本目標の一つとして「国際的 な学術連携と留学生教育」を掲げ, 「国際的な拠点形成」 を目指すとしている13。 また,平成16年度の中期目標・中期計画においては, 全学のミッションとして「国際的な学術連携及び留学 生教育の一層の充実を図り,世界とりわけアジア諸国 8 Faculty Involvement in International Activities (教員の参画) との交流に貢献する」ことを掲げ,国際交流に関する A 教員が学会等で海外へ渡航する際の出張 サポートや,資金援助を行っている ○ B 教員が海外で活動することを目的とした 交流協定がある ○ ○ C 教員に国際的な外部資金による活動を行 うための時間を与えている ○ ○ 目標としては,「研究と教育の国際交流と国際協力プ ○ ロジェクトの参画とを通して名古屋大学のプレゼンス を高める」としている14。 以上により,名古屋大学は国際化を全学ミッション の一つの柱と位置づけていることがわかる。 9 Campus Life - Co-Curricular Programs(学生生活) A 国際交流活動を所管する学生生活支援組 織がある。 ○ ○ 2)NC State B 国際性のある学生組織がある ○ ○ 一方,NC State は1996年に,の全学ミッションを 10 この分野では “Study Abroad”を「派遣留学」と訳すが,個々の指標では原文にできるだけ忠実に,「スタディー・アブロード」 と表記する。 11 NC State 両者の回答は,この項目を除いてすべて一致した。両者の回答が異なったこの項目については,改めて事実を確認し, 「Yes(はい) 」とした。 12 部局独自のプログラムとして,たとえば国際開発研究科の海外実地研修 (OFW: Overseas Fieldwork) がある。 13 名古屋大学学術憲章(http://www.nagoya-u.ac.jp/index2.html) 14 名古屋大学中期目標・中期計画(http://www.nagoya-u.ac.jp/out/nu-plan.html) −10− 次のとおり策定している。 担当副学長)に報告し,学部長および国際プログ “Enhancing its historic strengths in agriculture, ラムコーディネータと大学国際化に向けて協力す science, and engineering with a commitment to る。) excellence in a comprehensive range of academic disciplines, North Carolina State University provides (3)2− A「大学戦略プランには国際教育の基本目標 leadership for intellectual, cultural, social, economic, and technological development within the state, the nation, and the world”. 15 が設定されている」 両大学ともに未整備であるが,総合的な国際化戦略 プランを検討中である。なお,名古屋大学については, (歴史的に優れた農業,科学,工学分野といっ これに類するものとして,平成16年度に策定された中 た広範囲にわたるを学問領域の卓越性へのコミッ 期目標・計画があり,そこでは次のように国際化の推 トメントを促進することにより,ノースカロライ 進を図るための記述がある。 ナ州立大学は,州内,国家,そして世界における ① 国際協力・交流の拠点の形成と事業活動 知的,文化的,社会的,経済的,技術的発展のた 国際社会及び地域社会に開かれた国際協力・交 めにリーダーシップを発揮する。) 流の全学拠点を形成し,関連の事業活動を組織 Schmidt 氏によると,文末に“world”ということ する。 ばが含まれているため,このミッションは国際的な視 ② 国際共同研究・協力の促進 点に立つものであるとしているが,飛躍的な国際化を 国際社会をリードする国際共同研究・国際協力 推進するには不十分であるとのことである。 を促進する。 ③ 留学生・外国人研究者の受入れ,派遣体制の整 (2)1− D「全学の執行部に国際教育担当の責任者が いる」 備・拡充 留学生・外国人研究者の受入れと派遣に対し, 1)名古屋大学 相談・助言のサービスに責任を持つ全学的拠点 平成16年の国立大学法人化により7名の理事が置か を組織し強化する。 れ,そのうちの一人が研究・国際交流担当理事(副総 長)となっている。しかしながら,研究担当との兼務 このように,「 国際化 」 全体を対象とした指針は であったり,教育担当理事との役割分担がやや不明確 存在している。しかし,「国際教育の基本目標(inter- であることも指摘できる。 national education goals) 」という領域に合致するも のとはなっておらず,国際教育をいかに実現するかと 2)NC State いう視点からの実施可能な具体的なプランは未整備で 9名の副学長(Vice Provost)のうちの一人が国際 ある。 担当(Vice Provost for International Affairs)となっ ており,国際担当副学長の役割は次のとおりとなって (4)7− A「単位認定を伴うスタディー・アブロード・ いる。 プログラムがある」 “The Vice Provost for International Affairs is 1)名古屋大学 the leader of University International Programs, 大学全体のプログラムとしては,授業料不徴収を伴 reports to the Provost, and collaborates with College う大学間交流協定大学への交換留学制度がそれにあた Deans and their International Coordinators in the る。ただし,単位認定については帰国後に必ずしも認 16 internationalization of the University”. 定されるわけではなく,交換留学に参加する学生に (国際担当の Vice Provost は全学の国際プログ とって4年間で卒業することは現実的に困難であるの ラムを統括するリーダーとなり,Provost(学務 が現状である。 15 University Planning& Analysis(http://www2.acs.ncsu.edu/UPA/strategicplan/mission.htm)参照。 16 OIA(http://www.ncsu.edu/oia/oiaadmin.html) −11− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 一方,部局独自のプログラムとしては,たとえば国 (3)Q2(重要な10項目以内の選択)について 際開発研究科の海外実地研修(Overseas Fieldwork, NC State では, 「専門組織」(両者とも3項目を選 OFW)がある。研究者や実務者の人材育成を目的に, 択) 「カリキュラム」(両者が2ないし3項目を選択), , 発展途上国での臨場体験をさせるために毎年約30人 「派遣留学 」(両者が1ないし2項目を選択)がとく の学生を発展途上国に20日程度派遣している。研修 に重視されている。以下に共通に選ばれた項目を列挙 内容は,準備のための事前研修(Intensive Lecture する。 Course)と海外実地研修からなり,それぞれ4単位, ➢ 留学生および外国人研究者受入れのための組織 合計8単位の取得が可能となり,カリキュラムの一環 がありプロフェッショナル職員が配置されてい として実施している。 る ➢ 2)NC State 派遣留学を担当する組織がありプロフェッショ ナル職員が配置されている ➢ 交換留学プログラムとしての“NC State Exchange Programs”がある。種類としては,① NC State と学 大学の国際化を支援する全学組織があり,プロ フェッショナル職員が配置されている ➢ 17 生交流協定を締結する外国の大学 との直接交流プロ 18 グラム(Direct Exchanges) ,② ISEP により運営さ 学部教育の「コア・カリキュラム」に国際分野 のコース(たとえば国際政治など)がある れ,世界120カ国以上のプログラムが用意されている ➢ 学部教育では外国語が必修である プログラム(ISEP Semester Programs) ,③ UNC-EP ➢ 単位認定を伴うスタディー・アブロード・プロ (University of North Carolina Exchange Program) グラムがある 19 がある 。 アメリカの学生にとって,スタディー・アブロード 以上の結果から,全学の国際化を推進するうえでは, に参加した場合の単位認定や成績は,GPA の維持の 専門組織とプロフェッショナル職員の存在が不可欠で ために極めて重要であり,計画的な履修が求められる。 あり,全学生に国際性のあるコースや外国語を必修に NC State ではよりスムーズに単位認定が行われるた し,単位認定を伴う派遣留学の取組みが重要視されて めに,オンラインによる学生へ情報提供を行っている。 いることがわかる。 以下に,二つのオンラインシステムを紹介しておく。 ① Study Abroad Transfer Course Database20 (4)Q3(自由記述回答)について スタディー・アブロード・プログラムにより各 学部で認定される単位がデータベース化されて おり,学生がプログラム参加前に確認すること NC State から得られた回答の一部を翻訳したもの を以下に紹介する。 (1)指標および調査についての記述 ➢ 「この指標は役立つものではあるが,捉え方に ができる。 21 ② Credit Hour Guidelines for Study Abroad よっては誤解を招きかねない紛らわしい表現も 派遣先大学で取得する単位が,NC State の何 あり,もっと具体的にする必要な部分がある。」 単位に相当するかを換算するガイドラインがあ ➢ 「Q1の質問項目は,役に立つものである。どの る。これにより,卒業に必要な単位の計画的履 要素を強化しなければならないのか,そして何 修を促している。ここでは,ECTS の他,協定 が欠けているのかを改めて気づかされる。」 ➢ 「Q2はもっと役に立つものである。国際教育推 を持つ13カ国の基準が示されている。 17 日本とは3大学(広島修道大学,名古屋大学,上智大学)を含む18カ国39大学とのプログラムを展開している。 18 ISEP(International Student Exchange Program)とは,米国内外の加盟校間で学生交換留学を推進する,非営利法人の全世界 的なコンソーシアム(大学連合組織)であり,加盟校は世界で245校に上る。 19 UNC-EP は,ノースカロライナ大学(University of North Carolina)大学が提唱するノースカロライナ州16大学による海外留学 のためのコンソーシアムであり2003-2004年度では,35カ国以上に300人以上のノースカロライナ州内の学生を派遣している。 20 Study Abroad Transfer Course Database(https://www.acs.ncsu.edu/scripts/ugadmiss/saequiv.pl) 21 Credit Hour Guidelines for Study Abroad(http://www.ncstate.edu/studyabroad/staff/equiv.html) −12− 進のために強化すべき表面的な解決策を提案す 性についても率直な意見が得られた。 るというより,むしろ批判的な視点に立ち,何 が国際化のゴールを高めるものであるかを見極 めることができる。」 (2)大学の国際化およびスタディー・アブロードに 3.考察とまとめ 名古屋大学とノースカロライナ州立大学の国際化推 ついての記述 進状況を,成果指標による定量的評価を通じて分析を ➢ 「スタディー・アブロードは総合的な国際化計 行った結果は,図1のレーダーチャートのように示す 画において重要な要素であり,その経験は学生 ことができる22。 にとって必要不可欠であるべきである。」 これを見る限り,全体的には NC State の方が国際 ➢ 「スタディー・アブロードへの参加率は決して 化の取組みが進んでいる。また,両大学ともに,「戦 100% とはならないため,参加しない学生には 略プラン」は他の分野に比べて取組みが遅れている。 国際的視野をキャンパスで経験させることが必 他方,乖離が大きい分野は「カリキュラム」であり, 要である。たとえば,履修やキャンパスコミュ 名古屋大学において実践の遅れが見られる。 ニティーで可能な講義やイベントに参加させた 本研究の狙いは,派遣留学の推進体制に向けたグッ り,留学生をキャンパスに溶け込ませたり,帰 ド・プラクティス情報を得ることであったが,そのた 国したスタディー・アブロード参加者たちが他 めに使用した Paige の成果指標の有効性については以 の学生たちとその見識を共有させる仕組みを提 下のように考えられる。まず,上記に示す調査結果が 供することが必要である。」 得られたのは指標が体系的に整理されているためであ ➢ 「スタディー・アブロード・プログラムによる り,国際化推進状況を診断するためのツールとしては, 単位認定の是非については長年の課題である 一定の効果があったといえる。ただし,それは各機関 が,教員側はこれらを解決するために,リーダー が戦略プランに基づき行う取組みを診断する場合に限 シップをもっと発揮する必要がある。」 り有用であると考えられる。そしてその際には,アン ➢ 「国際化の重要性に対しては,大学の公式なコ ケート票による定量的な評価だけでなく,回答結果の ミットメントがあるにも関わらず,やらなけれ 質的な検証も併せて行う必要があるだろう。 ばいけない仕事は,各部署の限られた人数の職 また,この指標はアメリカの大学制度を背景として 員の肩に大きくかかっており,大学全体の価値 作成されたものであり,日本の事例に適用した場合, 観に反映されていない。」 たとえばテニュアなど,比較できない項目も含まれて ➢ 「多くの教員は真に国際化に貢献し,学生に広 い視野を育成すべく活動を行い,派遣留学を勧 全学リーダーシップ め,その活動を世界の研究者との連携を深める 評価活動 うえで役立てている。しかし,これらの活動は, 結局多くの教職員,学生の個人的な意向により 戦略プラン 学生生活 全学組織 教員の参画 専門組織 実行されているのが現状である。」 ➢ 「執行部のリーダーシップによる明確で活発な コミットメントがない限り,キャンパスの国際 化は依然として一部の者による活動にすぎず, 派遣留学 成果のない活動にとどまることになる。」 カリキュラム 受入体制 ノースカロライナ州立大学 名古屋大学 以上のように,成果指標の有用性についてだけでな く,全学の国際化を図るための課題として,リーダー シップの必要性およびスタディー・アブロードの重要 22 図1: 2大学の国際化推進状況に関する評価結果 領域ごとに「Yes(はい) 」の数が項目数全体に占める割合を示してある。 −13− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 いる。現時点では,日本の大学に適合した国際化指標 協働体制の強化,リーダーシップを活かした推進体制 の開発は発展段階にあり,指標の改善を図るためには, の確立の3点が名古屋大学における派遣留学推進体制 国際化戦略を計画的に策定・実施している大学の成果 整備の課題として明らかになった。これらを,問題意 を取り入れて反映させていくことが大切であろう。そ 識を共有する多くの国立大学への示唆とし,本研究の して,今後は特に組織体制づくりのための新たな指標 まとめとしたい。 の探求が必要となると考えられる。この点については, たとえば先述した大阪大学の「大学国際化の評価指標 参考文献 策定に関する実証的研究」プロジェクトの動向などに ・『名古屋大学留学生センター外部評価報告書1998-2002国際 交流拠点としての留学生センター』, 2003, 名古屋大学留学 期待したい。 最後に,本研究の結果明らかとなった名古屋大学に おける効果的な派遣留学の推進体制をつくりあげるた 生センター. ・江淵一公 , 1997,『大学国際化の研究』玉川大学出版部 . ・喜多村和之 , 1987,『大学教育の国際化−増補版 外から見 めの課題を以下にまとめる。 た日本の大学』玉川大学出版部. 第一に,今回の調査から,名古屋大学においては全 学の国際化ミッションはあるが,それを実現するため の具体的な戦略プランが弱いことが明らかになった。 ・堀田泰司 , 2004,「海外留学と日本企業における雇用機会」 『広島大学留学生センター紀要』第14号. ・“Internationalizing the Campus: A User’s Guide”(ACE: American Council on Education Madeleine F. Green and 実践現場においては,部局単位のプログラムや教員個 人による優れた活動が着実に行われている。派遣留学 Christa Olson, 2003). ・Paige, R. M. (2005), “Internationalization of Higher をより推進するためには,それらの活動を大学執行部 が十分に認識したうえで,人材育成の視点を含む国際 教育を国際化ミッションのひとつとして取り上げ,国 際教育活動を全学的に展開していくための戦略プラン を策定することが不可欠である。 第二に,名古屋大学には,法人化により国際交流担 当理事が置かれ,全学的な視点から国際化を推進する ための枠組みが整備されつつある。しかし,国際化の ミッションの実現にむけて各部局等がそれを実行に移 していくための組織間の連携が不十分であり,全学的 な協働体制を一層強化することが必要であることが, インタビューの過程で明らかになった。 第三に,国際交流担当理事,事務局国際課および留 学生センターの組織内にある海外留学室との関係が必 ずしも明確になっていないことが,成果指標を用いた 調査や回答結果の検証から明らかになった。従って, 理事のリーダーシップを活かした推進体制の確立は 急務の課題であると考えられる。因みに,NC State においては,国際担当の Vice-Provost(副学長)の もとに,全学の国際交流プログラムを統括する OIA (Office of International Affairs) ,派遣留学を推進す る SAO(Study Abroad Office),海外からの学生・研 究者の受入れをケアする OIS(Office of International Services)というように,具体化されたミッションに 沿って組織が構築されている。 以上,国際教育活動の戦略プランの策定,全学的な −14− Education: Performance Assessment and Indicators” , Nagoya Journal of Higher Education, Vol. 5(『名古屋高等 教育研究』第5号,名古屋大学高等教育研究センター編). 付録資料 国際教育のグッド・プラクティスの モデルに関するアンケート調査票 Questionnaire on good practice model of International Education This questionnaire was developed based on “Performance Indicators in International Education” which was suggested by Dr. Michael R. Paige, Professor of University of Minnesota in his paper “Internationalization of Higher Education: Performance Assessment and Indicators” (to be published in March, 2005, in Nagoya Journal of Higher Education, Vol. 5, Center for the Studies of Higher Education, Nagoya University). He presented ten key performance categories as an internationalization model that can be operationalized and subjected to a performance assessment. Q1. Please check the applicable box (Yes/No) in Q1. Q2. Please mark the appropriate cells of Q2 less than 10 indicators which you think are the most important items among all indicators for promoting your institution-wide internationalization. Q3. Finally, please tell me your thoughts on the pro- motion of study abroad programs in the context of internationalization at the university. Do you think the above used indicators are useful for you to think about the implementation of internationalization? Performance Indicators Q1 1. University Leadership for Internationalization A. Mission Statement □ Yes The university’s mission statement includes □ No international education. B. Promotion and Publicity The university has written materials describ- □ Yes ing international education opportunities for □ No faculty, staff, and students. C. Budget □ Yes The university has a budget for international □ No activities, staff, and offices. D. Leadership Positions □ Yes The university has a cabinet level administra□ No tive position for international Education. E. Promotion and Tenure □ Yes Faculty members get promotion and tenure □ No credit for international activities. F. Student Recruitment □ Yes The international education dimension of □ No university life is used in student recruiting Q2 −15− 2. Internationalization Strategic Plan A. Goals □ Yes The plan sets international education goals □ No for the university. B. Objectives □ Yes The plan sets objectives for the university. □ No C. Inputs □ Yes The plan provides budget resources for □ No international activities. D. Activities □ Yes The plan lists specific internationalization □ No activities for the university. E. Timelines and Targets □ Yes The plans establish timelines and targets for □ No internationalization. 3. Institutionalization of International Education A. Committees The university establishes a university-wide □ Yes committee responsible for international □ No education. B. Accountability Structures The university has a delegated officer □ Yes responsible for data collection and analysis □ No regarding international activities. 4. Infrastructure – Professional International Education Units and Staff A. International Students and Scholars The university has an international student □ Yes and scholar office (ISSO) and qualified □ No professionals running the office. B. Study Abroad The university has a study abroad office □ Yes (SAO) and qualified professionals running □ No the office. C. International Exchanges, Projects, Grants, Contracts □ Yes The university has an international programs □ No office (IPO) to support university initiatives and qualified professionals running the office. 5. Internationalized Curriculum A. International Majors The university has undergraduate majors that □ Yes are international in character such as area □ No studies, international studies, and foreign languages. B. International Minors □ Yes The university has undergraduate minors that □ No are international in character. C. International Courses The university has “core curriculum” interna- □ Yes tional course requirements for undergraduate □ No (e.g., international politics). D. Languages □ Yes The university has a second language □ No requirement for undergraduates. E. Scholarships and Awards □ Yes The university has scholarships and awards □ No for undergraduate students to study abroad. F. Resources □ Yes The university has an international education □ No curriculum committee. 6. International Students and Scholars A. International Student Recruitment □ Yes The university has scholarships and awards □ No for international students. B. International Student Support □ Yes The university has an international student □ No office and advisors. 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 B. Exchange Agreements The university has exchange agreements with partner universities that enable faculty members to work abroad. C. International Grants and Contracts The university provides release time for faculty to work on international grants and contracts. 9. Campus Life – Co-Curricular Programs A. Campus Life Office The university has a campus life office responsible and the international aspect of campus life is among its responsibilities. B. Student Organizations The university has student organizations with an international focus (e.g., nationality clubs) C. Campus Programs The university offers international and intercultural programs on campus. 10. Monitoring the Process A. Performance Assessment Process The university has a formal performance assessment process in place. B. Performance Indicators The university has developed performance indicators for internationalization. C. Performance Reviews The university holds internal performance reviews of internationalization activities annually. C. Integration of International Students into University Life □ Yes The university has academic programs that □ No utilize international students as learning resources. 7. Study Abroad A. Academic Study Abroad □ Yes The university has study abroad programs for □ No academic credit. B. Work and Tourism Abroad □ Yes The university has non-academic programs □ No abroad such as work and tourism programs. C. Specialized Academic Study Abroad The university has academic study abroad □ Yes programs designed for specific departments □ No and faculties. D. Study Abroad Requirements □ Yes The university has a # of departments and □ No faculties with study abroad requirements. E. Exchange Agreements □ Yes The university has study abroad exchange □ No agreements with partner universities abroad. F. Student Support □ Yes The university has scholarship for study □ No abroad students. 8. Faculty Involvement in International Activities A. Faculty Support □ Yes The university provides travel support for □ No faculty to attend conferences abroad. −16− □ Yes □ No □ Yes □ No □ Yes □ No □ Yes □ No □ Yes □ No □ Yes □ No □ Yes □ No □ Yes □ No 報 告 地域社会との連携 浮 葉 正 親 平成14(2002)年度には地域貢献特別事業費,平成 1.これまでの経緯 15(2003)年度には地域貢献特別支援事業個別事業費 留学生センターは教育交流部門を中心として長年に の交付を受け,連絡会での討議をもとに以下の共催事 わたり地域社会との連携を図ってきたが,留学生セン 業を行った。 ター全体が主体的に地域社会との連携を目指す取り組 2003年3月 日本語ボランティア現職者研修会 みを始めたのは平成13(2001)年度からである。平成 「地域日本語教室の運営を考える∼運 14(2002)年度にはセンター内に地域連携委員会を設 営の方法と教え方∼」 け,地域連携事業をセンターの活動の一つの柱として 2004年2月 小中学校教員セミナー 位置づけた。これまでの連携事業は,大きく「オープ 「教師のための異文化理解実践―留学 ンフォーラム」と「地域連絡会」の2つに分けられる。 生とのふれあいをとおして」 また,平成16(2004)年度には留学生センターの予 ⑴ オープンフォーラム 算で,以下の共催事業を行った。 留学生センター教員の教育・研究の成果を地域の 2005年3月 小中学校教員・日本語ボランティア現 人々に知ってもらうと同時に,地域の声を聞くことを 目的としてセンター主催のオープンフォーラムを開催 職者研修会 「外国人児童・生徒をめぐる地域と学 してきた。 校」 第1回 2002年3月 「地域日本語教育の方法を考 える」 2.平成16(2004)年度の活動 第2回 2002年12月 「多文化共生社会を生きる」 第3回 2004年3月 「ネットのリソース 地域の 本年度は,上記の通り,センター主催第4回オープ ンフォーラムおよび共催事業として小中学校教員・日 日本語教育」 第4回 2005年3月 「『留学すれば喋れるようにな 本語ボランティア現職者研修会を開催した。この二つ についてはそれぞれ別途報告する。 る』のウソとホント」 今年度はさらに日本語ボランティアのグループ「さ ⑵ 地域連絡会 くらの会」と本学留学生との定期的な交流(学期中, 平成14(2002)年に㈶愛知県国際交流協会,㈶名古 週2回)を4月から開始した。「さくらの会」は名古 屋国際センター,東海日本語ネットワークの3団体に 屋市民大学の日本語ボランティア養成講座の修了生を 呼びかけ,地域における日本語教育活動や異文化理解 中心に結成されたグループである。「日本人と日本語 教育に関する事業について情報・意見交換のための連 で話そう」というタイトルで,センター所属の留学 絡会を設けた。これまでに下記の通り6回の会合を開 生(日本語研修生,日本語・日本文化研修生)や短期 いた。 交換留学生との定期的な交流を開始した。週2回,研 第1回 2002年10月 修コースの授業終了後,午後3時から5時まで,セン 第2回 2003年1月 ターの教室で交流が実施されるようになった。日本語 第3回 2003年3月 の授業とは異なるリラックスした雰囲気で話ができる 第4回 2003年10月 ので,留学生にも好評である。社会経験豊富なボラン 第5回 2004年3月 ティアの方々との会話から日本の社会や文化について 第6回 2004年10月 学ぶことも多い。「さくらの会」のメンバーには日本 −19− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 語授業のゲストをお願いしたり,ホームビジットにも 協力して頂いている。次年度以降も協力関係を維持し ていきたい。 3.平成17年度の計画 来年度は,⑴オープンフォーラムの開催,⑵地域連 絡会の話し合いにもとづく共催事業の実施,⑶日本語 ボランティアと本学留学生との定期的な交流会の開 催,⑷日本語ボランティアの研修会,という4つの活 動を計画している。 地域社会への貢献は,留学生センター中期計画の重 要な柱の一つである。日本社会が急速に多文化化して いく中で,地域における日本語教育,外国人児童生徒 の学校教育,日本人住民の外国人理解,異文化理解は 重要な社会的課題となっている。留学生センターとし てはその人的,物的リソースを最大限に生かし,中期 計画の達成に向けた取り組みを進める。 −20− 名古屋大学留学生センター地域貢献事業 小中学校教員・日本語ボランティア研修会「外国人児童・生徒をめぐる地域と学校」 浮 葉 正 親 【事業の概要】 (別紙案内チラシ参照 p. 26) はじめに 1990年の入管法の改正によって,3世までの日系人 【参加者】小中学校教員および教育委員会職員29名, とその配偶者に日本に定住して働く資格が与えられ 語学相談員4名,日本語ボランティア54名,その他8名 た。その結果,南米からの定住外国人が急増し,学校 (主催者側) 計95名 現場では日本語教育を必要とする外国人児童・生徒が 増え続けている。その数が全国でもっとも多い愛知県 【講演】 「学力につながる日本語指導―教師とボランテ では,日本語教育を担当する教員(加配教員)を配置 ィアの役割―」 するとともに,日本語の堪能なブラジル人語学相談員 講師:田中薫氏(大阪市立豊崎中学校教諭,関西地 を派遣してきた。しかし,加配教員には日本語教育や 区日本語指導者研究会事務局代表) 児童・生徒の母語に知識のある教員が少なく,孤軍奮 闘を強いられることが多い。また,語学相談員も愛知 まず田中氏は,学力につながる5つの法則を紹介し 県全体で数名しかおらず,各学校を1学期に1度訪問 た。 するのが精一杯の現状では十分に対応できない。さら ・集中しないと聞けない,覚えられない。 に,最近では,外国人児童・生徒の学校への適応をめ ・近づくことで学ぶ道が切り開かれる。 ぐって,不就学の問題がクローズアップされており, ・自分の力を信じれば,自信が生まれる。 日本語教育ばかりでなく,教科教育の重要性が指摘さ ・辞書があれば読める。 れている。 ・書かなければ成長しない。 そこで,この研修会では,大阪市のセンター校( 「帰 これらが田中氏のこれまでの経験の中で鍛錬された 国した子どもの教育センター校」)で15年以上にわた 技法や信念であることがやがて聴衆にも分かってく って外国人児童・生徒の教育に携わり,独自の指導法 る。例えば,田中氏は関連語彙を一気に教えることを を開発している田中薫氏(大阪市立豊崎中学校教諭, 勧める。学習者の集中力を途切れさせないためには畳 関西地区日本語指導者研究会事務局代表)を講師に迎 み掛けるような授業が効果的だという。それと関連し えることにした。 「∼すべき」の理念的な講演ではなく, 現場の経験に基づいた具体的な指導法を披露してもら うのがねらいであった。愛知県,名古屋市の各教育委 員会に後援名義をもらい,外国人児童・生徒が在籍す る愛知県内の小中学校には校長宛に案内を送り,現場 の教員に参加を呼びかけた。また,愛知県の状況に詳 しい松本一子氏(愛知淑徳大学非常勤講師)にコメン テーターをお願いし,休憩時間には会場となった愛知 国際プラザの「日本語教育リソースルーム」の見学を 行うことにした。 −21− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 表1 配付資料より 「日本語指導の段階ごとに,教科指導につなげる視点がある」 戦法 学習段階 指導目標ポイント 増強する戦力 学級担任 事前 将を知る 初期面談 学力を知る 信頼を得る 気構えを持たせる 失 礼 は 初 対 面 の と き 担任を見極める 通訳・母語作文 に。 学校のスタイルとの友 好関係を築く レベル1 陣を固める レベル2 体力を養う 初期日本語 動詞学習期 授業に慣れる 板書の要点理解 ノート・プリント等の 交流ができる宿題 整理 辞書の利用法 多人数との接触 辞書 レベル3 味方を増やす 5W1H・感情表現 サ変動詞・可能動詞 使用語彙を増やす 会話力の増強 友達の援助を得る 教科書のルビ打ち 辞書・対訳手助け 自ら質問の準備 カリキュラム チェック レベル4 敵を知る 動詞の過去形・て型習 1教科ずつ学習法 得 作文力の基礎 要点把握の方法 テストの導入 基礎の補充 予習方法 クイズ本 漫画本 レベル5 戦略を考える 自動詞・他動詞 全科予習法の会得 作文力の補強 学習計画 文章による交流 活躍の場の設定 学習の整理 混乱の修正 新聞 レベル6 攻め込む つなぎの言葉 受身・使役 長文読解力の補強 時制・否定文強化 未習部分の補充 作文の添削 未習部分の補充 参考書・問題集 レベル7 敵陣で陣取る 修飾用法 練習量・参考書利用 読書の奨励 母語の強化 書籍・メディア 日本語導入期 「あいうえお」 形容詞基礎学習時 集中力・持続力 教科名,友達の名前 日本語での記憶力を養 自己紹介による交流 う 日本語指導者 ボランティア 連携方法の確立 何を使って 資料 座席表 カード 形容詞 て,算数の重要性を指摘する。計算などは日本語がで (6頁),実際の教材をまとめた資料(10頁)を参加者 きなくても理解可能である。そこで,数字の読み方, に配ってくださった。その資料のなかで,田中氏は学 単位を表す助数詞,記号の読み方などを教え,その言 習者の日本語習得の段階を7段階に分け,それぞれの い方の種類をまとめて覚えるようにすれば定着が早 段階での指導ポイント,学級担任の役割,日本語指導 い。「3たす5は8」と「3に5を加えると8」が同 者やボランティアの役割,補助教材を一覧表にしてい じことであることを教えれば,教室でも戸惑わないし, る(表1) 。学習者の習熟度に適した指導が可能にな 日本語の勉強にもなる。算数の授業は答がすぐ出るの るので,とても便利である。また,イラストを多用し で集中力が持続し,成果を確認しやすいので,それが た教材の多くはすぐに使えるものが多く,参加者に好 自信につながる。また,田中氏は自国語と日本語の対 評であった(図1) 。 訳辞書を使い,クラスメートとコミュニケーションを とることを勧める。身近なクラスメートの助けがあれ 【日本語教育リソースルームの見学】 ばいちいち先生に助けをもとめることもない。教科書 30分の休憩時間に,会場となった愛知国際プラザの にルビをふるのを手伝ってもらえば学習効率がアップ 「日本語教育リソースルーム」を見学した。(財)愛知 するだけでなく,クラスメートを仲間にすることで心 県国際交流協会が運営するこの部屋には,愛知県内の 理的な安心感を生む。さらに,辞書を使って早い段階 日本語ボランティア教室の情報や各教室で使用してい から作文をすることの重要性を指摘する。こまめに添 る教材,文化庁や自治体の報告書類も並べられている。 削をすることで自分の弱点を意識化できる。そして, 日本語によって自己を表現し,世界を認識するツール 【コメント】 を獲得していくことが可能になる,というわけである。 田中氏の講演を受けて,愛知県教員研修センターの 田中氏は講演に当たり,「日本語指導の点検《指導 講師を務める松本一子氏(愛知淑徳大学非常勤講師) チェックと指導方法例》 」という冊子(35頁) ,日本 からコメントを頂いた。松本氏は愛知県では加配教員 語能力判定基準法と日本語基礎レベル診断カード AB が増員されたこと,静岡県では各種学校設立の基準が −22− 図1 配付資料より ①使える語彙量を増やす。単語は一気に教える ②気持ちを表す形容詞 緩和され,浜松市のペルー人学校が認可されたこと, るという。 児童・生徒の不就学の実態についても文科省が調査に 乗り出す予定であることを報告された。また,ブラジ 【質疑応答】 ルのサンパウロでは,ポルトガル語版の教育ガイドブ (質問)集中力が続かない子どもをどう教えたらいい ックが発行され,日本に来る時また日本から帰る時ど んなことが必要か,漫画で分かりやすく説明されてい か。 (答)5分ごとに内容を切り換える。説明に間を空け −23− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 ないで,畳み掛ける。先に質問を用意しておく で異なる国の生徒を数名教えていくことは非常に難し などの工夫が必要。早く算数をやるのがいい。 く,センター校で個に応じた支援ができると良いと思 (質問)対訳辞書の使い方についてもう少し知りたい。 った。 (答)ヘボン式の読み方を日本の子どもに教える。辞 ○大阪の学校教育は進んでいると思いました。学校教 書を引かせて,外国人児童がポルトガル語を教 育は子どもたちの一生にも社会にも大きな役割を果た えることも可能。そのようにしてクラスの雰囲 すのに,名古屋では立ち遅れています。何とかしてい 気作りをしていく。 かなければと思います。 (質問)同じ言語の外国人児童がいると自国語のコミ ○教科指導に関しては試行錯誤で行ってきたが,とて ュニケーションが多くなり,日本語が伸びな も参考になりました。 名古屋市は各学校に派遣なので, い。 担任の先生のカラーで指導内容も変わるので,やはり (答)同じ言語の子どもが二人いるとどちらかが通訳 最初の見極めが大切です。なかなか取り出しができな になってしまう。できればクラスに一人が望ま い場合があります。しかし,今回のレベルでの指導の しい。日本人とどうしてもコミュニケーション 資料等で説明できるのはと思いました。 をとらなくてはならない時間を設け,同国人ど <子ども対象の相談員,指導員> うしの時間と切り替えができるような体制を作 ○すごく勉強になりました。現在,学校で日本語教育 ることが重要。 や入学前の準備学級がありますが,カリキュラムがあ まりよくなく,一年で田中先生がおっしゃったレベル 【アンケートの集計結果】 まで達している子どもが少ないと思います。今日の内 参加者59名からアンケートを回収した。その結果, 「今日のセミナーは期待に沿うものでしたか」には44 容をお話して,カリキュラムを考え直したいです。 ○本当にしっかり計画され,努力されている田中先生 名(75%)が「期待以上で,とても満足した」と答え, の話に感動しました。さっそく帰ったら取り入れたい 14名(24%)が「期待通りでまあまあ満足した」と回 ところが一杯です。 答している(無記入1名)。以下,自由記述欄に寄せ ○非常にレベルの高いお仕事をされていると思いまし られた感想を拾い出してみる。 た。子どものレベルの合わせてやるべきことが明確に <小中学校教員> 整理されていて,とても参考になりました。 ○国際教室を担当して5年が過ぎます。毎年児童の入 ○現場で働いている方のお話なので,学習レベルや学 れ換えはありますが,外国人児童は40名近く在籍して 習法などが具体的で分かりやすかったです。指導に当 いるので,今回の研修会も役に立つと思います。ブラ たって綿密な計画と教材準備が大切だと改めて考えさ ジル人30名,他アルゼンチン,ペルー,フィリピン, せられました。 中国籍の児童です。楽しい説明でよく分かりました。 ○子どもたちにもっと早く算数を覚えさせることが大 関西弁も巧みに使われて,おもしろく聞かせて頂けた。 事だと思いました。ひらがなを先にしていたことを変 ○センター校の必要性を強く感じた。取り出しの授業 えて算数に力を入れます。 −24− ○田中先生の指導で,短期間で日本語の成果があがっ 系含む)に対する日本語指導の方法,運営の仕方等の ていることに驚きました。しっかりした指導方針がい セミナー」 ,「日本語学習と母語保持の問題」,「東海地 かに大切かということだと思います。 方の現状についてもう少し具体的なお話が聞きたかっ <日本語ボランティア> た」 (以上,日本語ボランティア) ,「実際のクラスを ○帰国子女を連れて帰った経験上,そういう子どもた ビデオ撮影などして公開していただけると参考になる ちに対しは公立学校では無理だと思っていましたが, と思います」, 「地域ボランティアとプロ教師との連携」 しっかりとしたシステムが作られているところもある ことにビックリした。田中先生の指導のもと日本語を (以上,大学教員その他)という答が寄せられた。今 後の参考にしていきたい。 学べる生徒たちはラッキーだと思う。海外にいて入り 込み授業の通訳に頼らない,というのは身をもって感 【おわりに】 じていました。自分のやり方がまちがってなかったと この研修会は,留学生センターの地域貢献事業とし 安心しました。 て,(財)愛知県国際交流協会,(財)名古屋国際セン ○現在,成人対象ですので,実際に子どもの対応はし ター,東海日本語ネットワークとの共催で行ったもの ていませんが,成人へのヒントもえられましたし,子 である。留学生センターとこの三団体との連携は4年 どもたちの実情も分かってよい機会でした。 前に始まり,平成14年度は地域の日本語教室の運営を, ○子どもの様子がお話を聞いてとてもよく分かりまし 15年度は小中学校の異文化理解教育をテーマに研修会 た。書くことの大切さを感じました。 を開催し,16年度の研修会が3回目となる。回を重ね ○今後ボランティアをする上で,とても勉強になりま るたびに参加者も増え,今年度は定員60名に対して, した。4コマ漫画などは本当に面白そうだと思いまし 参加希望者85名,当日の参加者は95名を数えた。愛知 た。 県ばかりでなく,岐阜県,三重県,静岡県からも参加 ○教科学習はしていないが,中学生が教室に来ている 者が集まり,東海地方における外国人児童・生徒の問 ので,集中力や自信を持たせることなど,参考になっ 題に対する関心の高さを裏付ける結果となった。 た。 今回の研修会では,33名の学校関係者(小中学校教 ○質問の時間が十分あり,田中先生には丁寧にお答え 員,語学相談員等)の参加を得たことがもっとも大き いただき,大変よかった。 な成果といえる。しかし,外国人児童・生徒をめぐる ○たくさん参考資料を提供していただけたのが嬉しか 諸問題の解決には,現場の加配教員や語学相談員の努 ったです。 力だけではなく,周りの教員のバックアップが不可欠 ○具体的な日本語力成長段階を示してもらえてとても である。この研修会に出てこないような学校関係者に 参考になった。授業中のノートを活用させる方法も勉 どうやったら関心を持たせるか,という点が今後の課 強になった。 題となる。また,学校と地域のボランティアとの関係 なお,この研修会の対する意見や今後の希望するテ がもっと風通しのよいものにならない限り,地域の国 ーマについては,「もっとどのように教えればいいか, 際化の動きに学校現場が取り残される可能性もある。 実際にやっている場面や教材の使い方の研修会をやっ 限られた人員で孤軍奮闘する教員や相談員と日本語教 てほしい」,「外国人児童の教科に対する評価要録につ 育の経験,児童・生徒の母語や文化に知識を持つ地域 いて」,「外国人の指導相談について」(以上,小中学 のボランティアをどのように結びつけるのか,という 校教員),「今日のようなテーマをさらに深めるような 点も今回の研修会で残された課題となった。 セミナー,教科指導の具体的なセミナー等」,「母語保 年に1回の研修会ではあるが,定期的に共催事業を 持について」 (以上,子ども対象の相談員,指導員) , 実施することで4団体の連携は密になりつつある。次 「もう少し大人向きのお話をぜひお願いしたいと思い ます」, 「ここ数年急激に増加しつつあるブラジル人(日 年度もこれまでの蓄積を生かして,より充実した研修 会を開催したい。 −25− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −26− 第4回留学生センターオープンフォーラム 「 『留学すれば喋れるようになる』のウソとホント」 渡辺義和氏 講演報告 堀 江 未 来 日時:2005年3月23日㈬ 13:30−16:00 参加者にとって優先順位の高い目的であることがわ 場所:CALE フォーラム かった。 講師:渡辺義和氏(南山大学総合政策学部助教授) では, 「語学ができるようになる」というのは具体 的にどのようなことなのか。参加者からは, 「無意識 今回のオープンフォーラムは,派遣留学と語学の関 に自然にはなせるようになる」 「日常会話ができるよ 係に焦点を当て,「『留学すれば喋れるようになる』の うになる」 「完璧に喋る」「仕事で使え,信頼感が得ら ウソとホント」と題して開催した。留学希望者の中に れる」 「わからない言葉が出てきても文脈の中で話が は「留学させすれば語学力は向上する」という考え方 できる」 「読み書きではなく,聞いたり話したりでき がよく見うけられる。それはちまたの留学業者による ること」 「考えていることがお互いに分かること」など, キャッチフレーズの影響もあり,かなり一般的に信じ 様々なレベルに渡る意見が出された。講師からは,な られている。しかし,留学をすれば自動的に語学力が んとなく意思疎通ができればいいな,というレベルを 向上するなどといったことは決してあり得ない。つま 求めているなら,それは留学すればたぶんできる。し り,この「留学すれば喋れるようになる」という命題 かし,もっと高いレベルを目指して欲しい,との要望 は「ウソ」である。 が示された。つまり,高いレベルの目的を設定するこ 語学力向上のためにはそれなりの留学生活の送り方 とによって,意気込みが出る。意気込みがあるという というものがあり,また留学を充実させるためにはそ ことこそが, 語学向上につながるからである。まずは, れなりの語学力向上に対する取り組みというものがあ 例えば「1年しか留学してないのに,どうしてそんな る。したがって,取り組みさえしっかりしていれば, にできるの?」 と聞かれる位のレベルを目指すような, この命題は「ホント」ともなりうる。今回のオープン 「欲」を持って欲しいということである。 フォーラムは,この命題を「ホント」にするためには 例えば「英語を話せる」といっても,いろいろな種 各自どのような学習への取り組みをすべきかについ 類がある。例えば, 流暢であっても内容がない。また, て,学習者にヒントと希望を与えることを目的とした。 内容があっても流暢ではない,など。ある程度の流暢 講師には,南山大学総合政策学部助教授の渡辺義和 さは留学によって何となく身に付けることはできるか 氏を迎えた。講師は,社会言語学者でありかつ英語の もしれないが,流暢であってかつ内容のあるコミュニ 教師でもある。また,自身が留学生として数回に渡り ケーションができることを目指してほしい。 留学をした経験や,語学学習が日常的趣味といえるほ では,流暢かつ内容のある「喋れる」レベルに達す どのこだわりを持っている背景から,様々な示唆に富 るにはどうしたらいいのだろうか。一つには,留学す んだ講演を聴くことができた。以下,講演内容を簡単 る前の過ごし方が重要である。留学の期間は,現地に にまとめて報告したい。 いる間だけではなく,行く前から留学は既に始まって いる。なぜなら,留学中にのびる語学力は,留学前に あなたの留学の目的は?冒頭,講師から参加者に対 どれだけ蓄えられるかによるからである。 し,このような質問が投げかけられ,それぞれシート 講師は,かつて家の中にいるときもずっと辞書を持 に8つの留学目的を記入する時間が設けられた。様々 ち歩いていた。とにかくわからない言葉を思いつけば ある留学目的の中でも,「語学力の向上」は,多くの 辞書を引き,待ち時間が数分あれば辞書を読む,とい −27− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 う時間の過ごし方をしたという。語学力の蓄積は,ま のは,人間関係を作るためのツールであり,言語がそ ずはどれだけその言語に触れていられるかという時間 の役割を果たしていない時は,言語の本当の機能を と情報の量によるというのが重要なポイントである。 使っていないことになる。例えば,その言葉を使って 一方,語学力がのびない最も大きな理由は「やめてし 誰かに何かを頼んでみる,その結果受入れられた,ま まう」 「続けない」というところにある。語学力のの たは受入れられなかったという経験には,様々な感情 び方は階段状であり,一定のペースでのびるものでは 的な反応が伴う。例えば,恥をかいたときに聞いた言 ない。一定の氷河期があって,しばらく粘ると,ある い回しは一生忘れない。留学中に,人間関係を全く作 時ぱっとのびる。その繰り返しを意識して,いくらの らない環境の中でいくらその言語を勉強しても,語学 びない時期が続いても,そこでしつこく続けることが 力が向上することはない。人間関係を構築する中で, 肝心である。そのじっくり蓄える時期をまず留学前に 言語が感情と引っかかる場所を作れば作るほど,その 持っておくことで,留学中の効率をあげることが可能 言葉が身に付くのである。 となる。 日本から英語圏に留学する人は多いため,英語圏の 受験のための英語の勉強であっても,無駄ではない。 留学先では日本語を話す機会が多いという状況はよく なぜならば,その蓄積を使えるように変換することが ある。言語に触れる絶対量を増やすという意味では, 可能だからである。受験勉強で蓄積した知識は,実際 それは障害になっている。講師が2回目に留学した にほとんどは使えるものである。問題は,それを自分 時,周りの日本人学生から, 「英語が出来るようにな の中でどう処理するかである。 りたいけどどうしたらいいのか」という相談を持ちか では帰国してからはどうか。これも同じで,努力を けられたので, 「じゃあ,これからは英語だけで話さ やめればすぐに力は落ちていく。当然,帰国後も同じ ない?」という提案をしてみた。そして, 留学期間中, ように取り組みを続けていかなければならない。言語 その親しい日本人学生との間では一切日本語を使わな にもよるが,勉強のための様々な材料を見つけること かった。反感を覚えた人がまわりにいたかもしれない が出来るので,積極的に努力を怠らないことが肝心で が,とにかく限られた期間に語学力をのばすには,意 ある。それを続けていれば,下がることはないだろう。 思が重要であり,そのような環境を作ることが出来た 言語をその現地で学ぶのと,日本で学ぶのとでは, のは,その日本人留学生たちにとっては非常に意義深 二つの大きな違いがある。まず一つは,絶対量。その いものであっただろう。 言語に触れる時間や情報量が圧倒的に現地の方が多 自分より語学力が上の人と話さないと自分のために い。現地では, 「寝ても覚めてもその言葉に触れている」 ならない,というのは良くある誤解だ。その言語に触 という状況を,意識すれば簡単に作ることが出来る。 れる絶対量を増やすという意味では,相手は問題では もう一つは,その言語を通して,感情的なコミュニ ない。自分自身が喋ることのきっかけを作ることが出 ケーションができることである。つまり,言語と感情 来ればいい。独り言でも話し続けてみて,自分が何を が連動する瞬間を経験することが出来る。言葉という 言えないのかに気づくことも意味がある。 −28− 自分の学生の中に,実際留学前から指導をして,帰 思われていることが多いが,実際は外国語学習に関し 国後にものすごくのびた例がある。その学生は,留学 ては大人の方が有利なことも多い。赤ちゃんが言葉を 前から準備の努力はしていたが,さらに,留学中に日 覚える時の認知レベルは非常に低い状態。一方,大人 本人とも英語を話すということを実行していた。そう の場合は,母語が既に出来ていて,認知レベルも非常 いう行動をとったことで,日本人グループから奇異な に高い。概念や言葉の差別化やカテゴリー化などもで 目で見られ,あるパーティに誘われなかったことがあ きるようになっている。大人の場合は, 「説明」がで り傷ついたそうだ。しかしそこで彼女が気づいたのは, きる。つまり,既に使える知識や認知能力を応用して 「ということは,つまり,これは自分の計画とおりに 言葉を取り入れることができる。逆に,赤ちゃんと同 進んでるんだ!」ということだった。つまり,一瞬は じアプローチでやっていると無駄なことが多い。それ つらかったけども,長い目で見れば自分の目的は思 でもある程度は出来るかもしれないが,赤ちゃんが費 惑通りに着々と進行していることに気がついたのだっ やせるような時間は,私たちにはない。効率よくやり た。 たければ,意識をして,すでにある知識や概念,認知 「外国語ができる,わかる」というのはどういうこ 能力の蓄積を利用して,言語習得に望むことである。 とだろうか。私たちは,自分の言語で話を聞いている 「発音をどうしたらいいのか」という質問もよく聞 時,相手が次に何を言おうとしているのか,常に予想 かれる。実は,発音も意識で学習できる。赤ちゃんの しながら聞いている。全部の音を聞いて意味を理解し 場合は耳で聞いて音をまねるが,その最初の段階で ている訳ではなくて,先を常に読みながら聞いている。 は,必ずしもその音が正しく把握されているわけでは つまり,人間の言語理解は予測に基づいているという ない。例えば英語では,th の発音を f と混同するケー ことであり,予測ができるためには,その元となる情 スも多い。大人にとっては,th の音は歯と舌の間か 報を蓄えておくデータベースが必要になる。読めば読 ら空気が出てこすれる音とわかっているから,f の音 むほど,書けば書くほど,予測のためのデータベース と混同することはない。これは,認知レベルで音の構 情報が増える。その言語でのコミュニケーションにお 造を頭で学んでいるからである。発音に関しては,話 いて予測が出来るということが,その言語が出来ると している人の映像を意識的に見て口の形や動きを理解 いうことになる。 し,同時に音を聞くことで,正しい発音を理解できる。 さらに,予測ができるだけではなくて,トピックの その言語に対して常に意識して取り組むことで,常に 関連づけが出来るということも必要である。あるト 新しい発見があり,それによって自分の言語を軌道修 ピックに関して,関連する可能性のあるトピックが頭 正し続けることができる。 の中にどれだけあるか。それによって,コミュニケー なんとなく外国語ができるというレベルなら,ほと ションのスムーズさが変わってくる。逆にそのトピッ んど誰でも可能だろう。しかし,出来る人から見て「す クの蓄積がないと,話を理解するのが困難になる。 ごい」といわれるほどの,そして仕事で使って差し支 では,予測や関連ができるようになるにはどうした えない語学力を身につけるには,意識をして,自分を らいいのか。それは意識することである。聞くときも, 客観的に見て,目的を忘れずに取り組み,それを継続 ただ聞いているのではなくて,能動的に「聴く」こと すること。これで始めて「留学すれば喋れるようにな が重要である。赤ちゃんが言葉を覚えるプロセスと, る」ということが言える。 大人のプロセスは全く違う。赤ちゃんの方が有利だと −29− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −30− 留学生センター講演研究会 International Dimensions of Higher Education-What you don’t know may hurt you ジョセフ・A・メステンハウザー氏 講演報告 堀 江 未 来 日 時:2005年3月18日(金)15:30−17:00 を持ち続けてきたこと。第二に,同じ興味を持つプロ 場 所:CALE フォーラム フェッショナルな人々や教育者,学生とともに時間を テーマ:International Dimensions of Higher Education- 過ごせること。第三に,長い間同僚として友人として What you don’t know may hurt you 多くを学ばせてもらった,尊敬するジョー(メステン 講 師:Dr. Josef A. Mestenhauser (Professor ハウザー氏)とともに時間が過ごせることによります。 Emeritus, University of Minnesota, U.S.A ジョーは特別な人間なんです。この人のどこがそ and Honorary Consul of the Czech Republic) んなにすごいの?と思う人もいるかもしれませんね。 進 行:益子エレン氏(東京財団理事) まず,ジョーは,教授であり,研究者であり,また 参加者:18名 とんでもなくすばらしい教師であります。管理職も 経験し,そして様々な組織のリーダーとしても活躍 今回の講演研究会は,ジョセフ・A・メステンハ されました。NAFSA:Association for International ウザー博士(ミネソタ大学名誉教授,在米チェコ共 Educators の元会長でもあります。一人の人間がこれ 和 国 名 誉 領 事 ) を 招 き,“International Dimensions ほどの役割を十分にこなし,また高い評価を得るのは of Higher Education-What you don’t know may hurt まれなことでしょう。 you(高等教育における国際的側面の検証)”と題し 国際的な経験も豊富にお持ちです。多くの人は, て行われた。進行役は,メステンハウザー博士と長い ジョーをいろいろな地域と結びつけて考えると思いま 親交のある益子エレン氏(東京財団理事)である。参 す。実際,インドネシア,フィリピン,日本,チェコ 加者として学内外の国際教育交流関係者が集まり,活 で幅広い仕事をされてきました。 発な議論が行われた。以下は,益子氏による紹介及び ジョーは,世界中の教育者の中でも「international メステンハウザー氏の講演をほぼ全文日本語訳したも educator」と呼ぶにふさわしい非常に貴重な存在だと のである。 思います。高等教育のレトリックを様々な方面から切 り取り,学習という現象に焦点を当て,また,大学全 益子エレン: 東京財団から参りました益子エレンです。今日の私 の役割は,進行役に徹することだと理解していますが, 最初に,私自身について少しお話しします。私は,日 系3世として,ハワイに生まれました。日本では長い 職歴がありますが,それはすべて,フルブライト事務 局での面接から始まったことです。そこで私は三宅政 子さんに出会いました。それは1973年のことでした。 私は,今回,この講演会の司会が出来ることをとて も光栄に思いますし,自分にとっての特権だとも感じ ています。それには3つの理由があります。第一に, このテーマは,自分がライフワークとして心から興味 −31− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 体の動きも常に彼の視野にあります。そして,ジョー 連する様々な理論をみなさんに紹介し,一緒に考えて が「学習」や「学習コミュニティ」を語る時,それは いただきたいと思います。 単にいわゆる学生だけではなく,教職員も含まれるの まず,あるエピソードをお話しします。私は,以 です。 前,サバティカルの期間中に東京のある大学で教え 私はジョーから多くを学びました,ジョーの手にか ていたことがあります。そこでは実験的な学習環境 かると,データは情報となり,もっと重要なことに, を 作 り ま し た。 そ の 直 前, 私 は「 留 学 生 か ら 学 ぶ その情報は次に概念化されます。ジョーによって作り (Learning from foreign students) 」というブックレッ 出された概念モデルは独特で,他の専門家によって提 トを出版しており、留学生が,一般の学生とどのよう 唱されるものとはひと味違います。ジョーの発想は私 にコミュニケーションをとり,お互いにどんな学習経 たちの考えに影響を与えます。なぜなら,彼は専門知 験をするのか,その可能性に興味があったのです。当 識を持っているだけではなく,そこから批判的議論を 時私の受け入れ先となったこの日本の大学では,私が 繰り出す知恵を持っているからです。例えば本日の副 Intercultural relations の授業において,そのような 題「what you don’t know may hurt you」のような。 実験的環境を作り出すことに協力的でした。私はこの これからジョーが50分程度講演を行い,その後全体 授業の目的を,学生のコミュニケーション能力をのば 討議とします。ディスカッションのときに,日本語 すことと設定しました。ちょうど28人のアメリカ人学 で発言なさりたい方はそうされても結構です。では, 生と28人の日本人学生が参加しました。このアメリカ ジョー,お願いします。 人学生は1年間の交換留学生で,アメリカでも有数の 名門校から来ている学生もたくさんいました。日本人 メステンハウザー博士: 学生の方は,これから交換留学生としてアメリカに行 この紹介はほめ過ぎのように思いますが,ありがと くことになっている学生たちです。そんな実験環境が うございます。あらためて,みなさんがこの講演会に できあがりました。私は学生を1対1のペアに分け, 来て下さったこと,そしてこの機会を作ってくださっ 授業の他に毎週2時間必ず会うことを義務づけまし たことに感謝いたします。今回の日本滞在で,私は自 た。その2時間は,まず最初の1時間は英語を使い, 分の過去と再会しています。長年の友達にも会えまし その間はアメリカ人の学生が会話をリードします。次 たし,私の元指導生がちゃんと仕事をしていることも の1時間はその逆で, 日本語で話し,日本人学生がリー 確認できました。私は「国際教育の分野そのものを国 ドします。毎週の授業時には,その時の感想をジャー 際化する」ことが必要だと常々考えていますが,その ナルに書いて提出することになっていました。 プロセスの中核にあるべきなのは,こうやって人に 最 初 に 私 が 出 し た 宿 題 は, ア メ リ カ 人 学 生 は 会って温かい気持ちになることなのです。この機会に 「individualism」という概念を,日本人学生は「表と 心から感謝します。 裏」という概念をそれぞれパートナーに説明すること 今回の講演タイトルは,実は,American Counsel でした。それについてかかれたジャーナルは,なんと of Education という全米の大学総長がメンバーとなっ もすごい量で,まるで小説のようでした!私はまだそ ている組織の出版物と同じものです。このタイトルが のジャーナルを持っています。私もそこから学ぶこと 暗に批判しているのは,「自分が知らないことは存在 が多かったのです。大変おもしろかったのは,28人の しない」という認識上の危険性です。国際教育にも同 日本人学生すべてが書いていたこと,つまり, 「アメ じことが言えます。私はこのところ,学習心理学の理 リカ人学生と話すまでは individualism についてあま 論を国際教育の概念に適用することを試みています りピンときてなかったけど,individualism というの が,国際教育の分野は今のところ異文化間コミュニ はつまり『自分勝手』ということだとわかった」と, ケーションの諸理論に独占されているような状態で みんな書いていたことです。 す。それも確かに重要な分野ですが,より挑戦的な もちろん私はアメリカ人学生の記述にも目を通しま 視点として,国際教育の何が教育的なのか(what is した。そこでさらにおもしろかったことは,まず第一 education about international education)ということ に,これらのアメリカ人学生は,もうすでに日本に半 を考えたいと思っています。今日は,このテーマに関 年以上滞在して勉強をしてきたというのに,「表と裏」 −32− という言葉を聞いたことがなかったのです。「表と裏」 うのは,二つの独立した概念ではなく,コインの表裏 という概念は,日本文化を理解する上で非常に重要で であり,同じ全体に属する部分であるので,かならず あるにもかかわらず,彼らの学習内容にはそれまでそ しも「信頼できない」ものではないはずです。片方が の概念は入っていなかったということです。この例は, 正しければ片方がまちがっているというような,アメ 世の中で一般に「学問」とされているものの本質を示 リカ人的な分析型の思考方法に基づくものではありま しています。つまり,「文化に関する概念」は学問の せん。このように全体として物事を把握する傾向は日 主流に含まれていないのです。 本の知的伝統にもみられますが,アメリカ人にはなか アメリカ人学生の記述から,まず第一に,彼らが日 なか理解できないのです。一方,日本人学生にとって, 本人学生と話が出来たことをとても喜んでいたことが 「私が,私が,」と自分の話ばかりしているアメリカ人 分かりました。しかし彼らが「表と裏」概念の説明と 学生の行動は,「自分以外のものには興味がない」態 して書いていたのは,「日本人はあることを言いなが 度に見えます。すでに自分の視点からお互いを見てい ら,他のことを意味している。だから,日本人は信用 るところに,この宿題によってさらにそのステレオタ できない」ということでした。これが,彼らにとって イプを強化してしまったことには,彼らは気付いてい の「表と裏」なのです。 ませんでした。 それ以来,私はこのことをとても深く考えるように 日本人学生の言った「自分勝手」という言葉は,個 なり,そこでいくつかの理論や概念にたどりつきまし 人の性格を描写するものであって,文化の特徴を説明 た。今日はそれについて皆さんにお話ししたいと思い する概念ではありません。どんな文化においても自分 ます。今日もっと時間があれば,皆さんにもこのストー 勝手な人はいます。 「individualism」は具体的な性格 リーの意味することを深く考えてもらい,皆さんの意 を描写する言葉ではなく,文化を説明する抽象概念で 見を伺いたいところですが。 す。私は,この点について旧社会主義国において非常 私は,国際教育交流の現場は,「学習の実験室」だ に難しい状況にあってきました。それらの国の教育シ と強く信じています。このエピソードでわかったこと ステムでは,未だに共産主義的思考が影響力を持って は,つまり,文化の概念を正確に学習させるためには, おり,抽象的な思考というものが破壊されたままなの 何らかの教育的仲介や事前トレーニングが必要だとい です。彼らは,文化の影響を全く考慮せず,何もかも うことです。私たちや学生が海外に行くとき,事前ト すべて個人の資質に理由を求めるのです。 レーニングの有無にかかわらず,私たちは「自分自身 先ほどお話ししたとおり,これらのアメリカ人学生 を翻訳する(translate yourself) 」ことが必要となり は,日本に9ヶ月以上も住んで日本語を勉強していな ます。それは,アメリカ人である,または日本人であ がら,まだ思考方法が完全にアメリカ人の枠内にあり るということが自分にとってどんな意味があるのかを ました。というのも,彼らは毎日一緒にいて,英語を 理解し,それをコミュニケーションに反映するための 話し,「留学生」というカテゴリーの中で生活してき 思考方法が必要ということです。このような思考方法 たからです。「自文化中心主義(ethnocentlism) 」は, は,冷戦終結後の現在,かつてないほど重要となって 国際教育の現場においては大前提として存在するもの います。 です。なぜなら,私たちは基本的に,個人として,国 もう一つの重要な点は,この日本人学生もアメリカ 民として,社会化されてきたからです。 「自文化中心 人学生も,「individualism」や「表と裏」を説明する 主義(ethnocentlism) 」は,アイデンティティであり 上で彼ら自身のフィルターを通していたということで 性格傾向でもありますが,ここでは,自分自身の枠組 す。ここでコミュニケーション理論が関連してきます。 み以外を使って自分を説明出来ないこと,と定義しま コミュニケーション理論では,メッセージの送り手と しょう。 受け手,メッセージそのものの3つがコミュニケー 関連する概念に,「エミックとエティック(emic ションを構成する主な要素ですが,「文化」はその3 and etic) 」という概念があります。これは言語学から つに影響を及ぼします。例えば,アメリカ人学生が「表 生まれたものです。私たちは自然状態ではエティック, と裏」を理解するためには,その前に日本人の行動傾 つまり,他の文化をその外側から見ます。つまり,他 向を知っておかなければなりません。「表と裏」とい の文化を自分の文化的見方で理解しているという点で −33− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 自文化中心主義的であると言えます。あなたの文化的 た。この知覚による作用もまた,我々の脳から発信し 背景によって,あなたが見ようとすることの枠組みが ているという点において,れっきとした学問知識なの 決まります。その文化の内部にいる人がどのように物 です。 事を見るのかを知るためには,エティックからエミッ この知覚作用が文化においてどのような役割を負っ クへの大きな発想の転換が必要です。エミックのアプ ているのかを明確にする必要があります。大学教員は ローチは,文化人類学者が誰よりもよく使っています。 知識の専門家と見なされていますが,すべての人はあ つまり,その文化を内部から理解するために,自分の らゆる文化的文脈の中における経験から学習している ものの見方をその当事者のものに引き寄せるのです。 のであり,専門家から学んでいるだけではないので これは自然にできるものではありません。こうやって す。ここで次に繋がるのが,「経験学習(experiential いろいろな場所に旅して人に出会い,文化を経験する learning) 」です。または「潜在的学習(implicit learn- ことができることが出来る幸運にめぐまれているとし ing) 」とも呼ばれます。 てもです。エミックとエティックはともに「知る」た 留学の価値を説明するとき,多くの人はその有益性 めに有効な知的スキルです。ある国について知ろうと を証明しようとします。しかしそれは彼らにとって難 する場合,エティック的アプローチとエミック的アプ しいことなのです。なぜなら,留学の成果というのは ローチで得た知識は異なる側面を示すでしょう。その 多面的であり,それを説明するためにふさわしい概念 二つはとても異なることもあるでしょうが,重要なの が整理されていないからです。こういう場面において は,その時,異なる二つのものの見方の間をうまくシ も,「経験学習」という考えは考慮されていません。 フトして対象物を理解するということです。国際教育 これはアングロサクソン的な発想ですが,経験学習 において,これは重要なポイントです。 の学習サイクルという概念は広く知られています。学 留学生は,よく,留学先でその文化に染まりすぎる 生がサイクルにそって経験から学ぶプロセスは強力で ことを恐れます。しかし,ある文化をその内部の視点 あり,本人が意識していなくてもその学習プロセスは から理解するために,必ずしも自分のアイデンティ 続くことがあります。これは強力な学習です。留学生 ティを変えたり失ったりする必要はなく,多文化間で が,授業よりも日常生活で偶然学んだことの方が大き 視点を移動できることは知的スキルなのです。そのこ い,と言っているのをよく耳にしますが,経験学習が とを学生に説明することは,我々が教育者として挑戦 強力であることの一つの証明といえるでしょう。大学 すべきことだと思います。 教員によっては耳の痛い話ですが。 次 の 問 題 は, 「 学 問 知 識(academic knowledge) 」 そこで私たち国際教育担当者がしなければならない と「 知 覚(perception) 」 の 対 立 で す。 こ の 問 題 は, ことは,このように学生が無意識に経験していること 個別の学問分野を国際化しようとするときに必ず現れ を意識的な学習へと本人が意味付けし,説明できるよ るものです。あるセミナーで,著名な研究者がしてい うに,教育的なサポートをすることです。それはセミ たプレゼンテーションで,彼が知覚態度(perception ナーやトレーニングでも可能ですし,先に述べたよう attitude)や価値観(value)というものに全く注意を な授業においてお互いの誤解を解いていくことによっ 払っていないことがとても印象的でした。実証主義者 ても可能です。先に述べた授業でその後起こったこと にとっての「本当の知識」というのは,目に見えるも は,ビデオにでも撮っておけたら良かったですね。学 の,客観的に証明可能なものだけで,知覚という概念 生の頭の上で,豆電球が光るのが見えるのです。自分 は全く軽視され,知識としての価値は低く見られてい の頭の中に以前は存在しなかった発想が突然現れると ます。最近のアメリカの大統領選の一連の動きを見れ いう,認知革命(cognitive revolution)が起こってい ばおわかりの通り,知覚作用というのは非常に強力な たのでした。このような認知革命は,様々な点で私た 働きをするのです。知覚の作用によって人は搾取され ちに絶大な影響をもたらします。私たちの脳の中には, ることもあります。今回の大統領選,特に共和党では, 様々な経験がバラバラに蓄積されていますが,それが エスニックグループに対するメッセージなど,考えう あるきっかけで繋がり始めるのです。それによって新 るすべての発言についてそれがどう受け止められるか しいカテゴリーが生まれ,整理され,さらには次の経 が検討されていて,それは強力なメディアとなりまし 験を蓄積するための空間を脳の中に作ることも出来ま −34− す。脳には許容量がありますが,この認知革命によっ はいつも, 「行き先で外国のことがよくわかった,ど て新しく空間を作ることが出来るのです。つまり, 「豊 こにいっても人は人だ」と言いますが,それを聞くと かな者はもっと豊かになる(richer gets richer) 」と 私はいつも当惑した気持ちになるのです。これは自文 いうことです。このようなことが国際教育の現場で起 化中心主義の表れだからです。つまり,人はみな,自 こっていることを,みなさんには確信を持っていただ 分が行動するのと同じように行動すると思っているの きたいと思います。証拠は多すぎるほどですし,そこ です。これはつまり,例えば1年間日本に留学したア に可能性があることも私たちはわかっています。教育 メリカ人学生も,まだやはり日本社会では部外者でし の実践においてそれが起こるためには,少し時間がか かいられなかったということであり,国際教育の本当 かるかもしれませんが。 の目的をほとんど達成していないことになります。日 このような変化はあらゆるところで起こっていま 本社会に深く入ることを促されなかったこと, そして, す。例えば,ビジネス界においては,最近,「信頼 日本社会が意識的に彼らを一員として招き入れなかっ (trust)」が一つの資本であることが重視され始めて たことによるものでしょう。このことは,われわれ国 います。明らかに,経済学者にとって資本は投資の対 際教育関係者が常に乗り越えなければいけない課題で 象です。異文化教育においても,「信頼」という概念 す。 は重要で,相手に自分自身を理解してもらうための基 私たちの大学は,そのようなことを可能にする学習 本的な方法とも言えます。 環境を作り出しているでしょうか。部外者的存在の学 私がインドネシアで仕事をし始めた時,歓迎会をし 生が,全くの内輪の一員になることはできないでしょ ていただきました。それは同時に,私の前任者の送別 う。でも,きわめて近い存在にはなれるはずです。そ 会でもあったのですが,私の現地での上司にあたる現 のような変化が必要です。前にも述べましたが,それ 地の教育大臣が,こんなことを言いました。「あの方 は複雑なものです。なぜなら,文化について考慮する は本当に私たちを援助するためにここに来ていたこと とき,考えるべき学問分野や側面は多様だからです。 に,やっと気がつきました」。つまり,当時のインド ここで,様々なレベルにまたがるこの複雑な構造が ネシアでは旧植民地の記憶が鮮明で,インドネシアに どのように機能するのか,お見せしましょう(図1)。 来るすべての外国人は搾取目的と思われる傾向があっ 私はこのモデルを認めていますが,多くの研究者はか たのです。旧植民地支配の経験からこのような精神性 ならずしもそうではありません。特に心理学者にとっ を持つに至った国は,インドネシアだけではありませ て,すべての基本となる仮定部分に「文化」の概念を ん。東欧諸国も,ロシアに対して同様な関係にありま もってくることにはかなり抵抗があるようです。この す。私の前任者は,1年の間に信頼を得ることに対し モデルでは,すべての基本となる考え方の中核に「文 てどれだけ責任があったのか考えたこともなかったよ 化」の概念があります。文化はいろいろなことに影響 うですが,とにかく最後に初めて地元の教育大臣に信 します。「知覚」や「概念枠組み」という概念も,こ 頼されたことがわかったのです。それまでの間は,そ のことについて確信を持つことは出来ませんでした。 私たちは,信頼関係を築くことは自分の責任であると いうことを,あまり考えません。そして,信頼に満ち た関係は組織のあらゆるレベルに存在し得ます。信頼 関係のない組織では訴訟が多発したり,または官僚的 な組織体系によってお互いの行動を逐一監視する,と いうようなことが起こってきます。 先ほどのエピソードは,他にも示唆するものがあり ます。まず,学生に対して,私たちが本当に国際的な 教育を行っていると,どうやって確認できるのでしょ うか。彼ら自身,どうやってそれに対して確信を持つ ことが出来るでしょうか。留学先から帰ってきた学生 −35− 図1 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 のカテゴリーに属します。それをさらに取り囲む形で, す。彼らは,自分の教えていることは世界中で通用す 行動様式や技術というものがあります。この周辺部分 る,普遍的なことだと信じています。あなたが教えて は,例えば箸を使うとか床に座るといった目に見える いることが世界中で適用可能だというなら,あなたは 部分,つまり実証主義者が主に研究対象とする部分で 世界中のすべての地域について何もかも熟知していな す。 ければならないと, 私は同僚にいやみを言っています。 「文化」は私たちが国際教育の現場で扱っているこ 大学教員はこういうことを言われるのをいやがります との中核にあります。文化は,個人にも,個人のコミュ ね。 ニケーションにも,組織にも影響しますし,組織文化 ここで本日のタイトルをもう一度見て欲しいと思い や国家文化というものも存在します。超国家文化とい ます。私たちは,自分の無知ゆえに足下をすくわれる うものはまだ確認できていませんが,最近はヨーロッ 可能性があるのです。なぜなら,私たちは自分の行っ パに行くたびにヨーロッパ文化というものができつつ ている教育が世界中でも価値があると信じ,自分たち あることを感じます。国家を超えた地域での文化のく に見えない部分を見ていないからです。経済開発援助 くりを作り出すには様々な困難が伴います。また一方, のために私の故郷であるチェコ共和国に来ているアメ それぞれの個別文化の外郭を理解しておくことも重要 リカ人経済学者とは,たびたび議論が対立してきまし であり,かつ有益です。ヨーロッパ人は何世紀もの間 た。彼らは,どの文化にいっても経済は経済,利益は 戦争を経験してきましたが,最近になってやっと統合 利益である,と言います。しかし,実際はそうではな の方向に向いているのです。しかもそこでは,固有性 いのです。文化的側面は,たとえば起業をするときや を排除しないことも同時に重視されています。最低限 経営管理などに大きく影響します。この点について, のレベルでの同意を得ようとしているのです。 ヨーロッパ人はアメリカ人とは全く異なる立場をとっ コ ー ド・ シ フ ト(code shifting) と い う 概 念 ています。 は, 概 念 シ フ ト(concept shifting) や 認 知 シ フ ト (cognitive shifting)とも呼ばれますが。これは前に 次に紹介したいのは,留学生が自分の文化と出会う ことについてです。 ある文化に一定期間住んでいると, も述べましたが,何かを見るときに,ある視点を別の 自分自身の文化と対立してしまう状況が起こってきま 視点へと意識的に切りかえる能力のことです。その別 す。異文化に触れることで,それまで無意識で行って の視点を好きか嫌いかは問題ではありません。ある いたことが意識レベルに上がってくるのです。その時 フェミニズム関連の論文では,西洋諸国においては, がまた,認知革命のチャンスです。自分の文化を理解 女性の方が男性よりもこのコード・シフト能力が高い し直し,そこでうまく機能するにはどうしたらいいの としています。つまり,社会化の過程において,男性 かを概念化するのです。多くの留学生は自国に帰る際 は自分の意見が通りやすいためにすぐに物事の決断を にリエントリー・ショックを経験します。日本人留学 してしまう一方,女性は自分の意見を頭の中でよく考 生にもよくあることで,特に女性はよく経験している えたり比較する必要にさらされてきた,ということで ようですが,これは認知革命の絶好のチャンスでもあ す。自分の意見が通りやすいと,自然と,それ以外の ると理解できます。 選択肢は頭から排除され,認知的意識の中からなく では,このような認知革命を起こす「国際教育」は なってしまうのです。 どこに存在しているのでしょう?私は,基本的には国 アメリカに来る留学生は,アメリカで起こってい 際教育交流の現場にあると考えています。ここにある ることに対していろいろな批判的意見を持っていま チャート(図2)は,そのような教育現象が起こるで す。彼らは,必ずしもアメリカ文化を勉強しに来て あろう様々な分野をまとめたものです。例えば,国際 いるわけではない。そういう人もいるかもしれないけ 関係学,地域研究,外国語教育などです。さらに,そ ど,多くは言語を勉強したり,またはこの文化の中で れぞれの学問分野にも国際的な側面があり,国際化を 何か特定の分野を勉強しに来ているのです。学問文 すすめたいのは特にこの部分ですね。それから,留学 化(academic culture)自身が文化的存在ですが,多 交流もあります。これらはすべての他の部分と関連し くの大学教員は自分が教えていることが文化の産物で ています。留学生は,私たちの教え方や教育内容が, あることに気がついていません。そのことは問題で 彼らのニーズにあったものであるかどうかを常に問い −36− 図2 図3 ます。それは私たちにとっては重要な挑戦です。 り多文化的な視野に立ったものになっているとおもい アメリカでは,あらゆる大学が国内外の大学と連携 ます。 私の友人であるニューヨーク州立大学の学長が, していて,超国家的存在としての役割を担おうとして こんなことを本に書いていました。私たちがやってい います。それぞれの大学の将来は,いかに自らを世界 ることは,アメリカの高等教育のカリキュラムを国際 と統合できるかにかかっていますが,今のところは余 化しているのではなくて,国際教育の内容をアメリカ りうまくいっていません。なぜなら,自分自身をその ナイズしているのだと。これは人間が社会化の過程で ように位置づけていないからです。ヨーロッパで出版 自分の文化に受入れられるように育つのと同じ原理で されたある本には,こんなことが書いてありました。 す。 今の大学は,これまでにないほど国家機関としての機 ところで, 国際教育のどの点が「国際的」なのでしょ 能を高めている。そしてそのことは,自文化中心主義 うか。それから,国際教育における「教育」とは何で を強化している,と。ヨーロッパ的な意味の「統合」 しょうか。高等教育の国際的な側面に関する概念,特 という概念は,大学にとっては大きな課題になってい に「国際化(internationalization) 」と「グローバリゼー ます。しかし,未来を展望すれば,そのようなネット ション(globalization) 」の二つの概念はよく混同さ ワークが重要であることは明らかです。それはただ れます。グローバリゼーションというのは,外圧のこ メールを送りあうだけの関係ではなくて,共通の改善 とですが,それは必ずしも新しいものではなくて,植 課題に向かって協力体制を築いていくような,根本的 民地主義時代から続いているものです。最初にグロー な人間関係の問題なのです。 バリゼーションについて議論を始めたのは,宗教学者 次のチャート(図3)は,国際教育に関係のある研 でした。宗教は,植民地化の方法の一つです。今もな 究分野を配置したものです。中心に来ているのは,文 お,多くの国はグローバリゼーションによる外圧を受 化人類学,外国語教育,そして教育学です。そして, け続けています。一方, 「国際化(internationalization) 」 他の分野,例えば言語学や政治学,心理学などは周辺 は,国家自身やそれに付随する機関が,自国の教育の にあります。これらの分野は,国際教育にとっては中 あり方に対して取り組むものです。ある意味,国際化 心的な存在とも,周辺的な存在ともなりえます。関わ の流れには,一部,グローバリゼーションの影響があ り方によって異なってくるのです。例えば,歴史学。 ることも否めませんし,グローバリゼーションが,自 アメリカ史を教えるにしても,多文化の視点から教え 国の教育に対する国家の役割を弱めているのも事実で ることが出来ます。このことにもっと私たちは注意を す。そしてその現場は,当然のことながら,ビジネス 払うべきです。社会心理学や文化人類学,コミュニケー や市場原理によって牛耳られています。 ション学など,これらの分野の理論や概念は,はかな 我々はそういった流れに適応しなければなりません −37− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 が,同時に,教育改革としての「国際化」について, 我々 解している」と思い込んでいます。さらには,自分が 自身が戦略を持っておくことが重要になります。しか 教えている内容こそが,高等教育における最重要事項 しこのことは,多くの大学の現場では理解されていま だと思っている人も少なくありません。 せん。多くの人が思い描く「国際化」は,学内に散在 学習という事象は,結果重視型とプロセス重視型に するプログラムをひとまとめにしたり,学生を海外に 分けることができます。例えばコミュニケーション学 送ることです。しかし実際の「国際化」が目指すのは は, 学習の結果もプロセスも重視します。このことは, それ以上のものです。なぜなら,「国際化」のプロセ 教育は学習結果こそがすべてであると信じている人に スは,学問的理論や知識によって牽引されるべきだか とっては全く受入れられません。したがって,さまざ らです。そういった知識や理論は,先ほど見た図で示 まな能力の向上は,いくつかの分野においては重要な された多様な学術分野から引き出され,統合されたと 課題であることに間違いないのですが,そういう議論 ころにあります。 は堅物の教授たちにいやがられます。 それぞれの学問分野には,その成果物である知識を 留学プログラムについて議論する際,私たちはいろ いかに使うかについての固有の哲学があります。例え いろな視点に立つ必要があります。特にその視点を ばコミュニケーション学や心理学などは,その知識に 与えてくれるのは,「文化外交(cultural diplomacy) 」 よって人を助けることが前提といえるでしょう。ま 理論と, 「知識の移転(knowledge transfer) 」理論です。 た,コミュニケーションの諸理論は,異文化間コミュ 留学生はすべて,留学先で何かを学んで自国に持ち帰 ニケーションや異文化間カウンセリング,異文化教育 ろうとしている,つまり,留学交流の現場は,まさに の分野にも応用されていて,そしてその知識はやはり, 知識の移転がおこっている現場なのです。このことは それによっていかに人を助けることが出来るか,とい 軽視される傾向があります。なぜなら,留学交流の分 う状況で役立てることができるでしょう。一方,政策 野では,留学生の文化適応や問題解決の方にばかり力 科学(policy science)はまた異なった方向性を持っ が注がれてきたからです。どちらも同様に重要な課題 ています。物事の分析に重きが置かれ,そこでは「文 として扱われるべきです。 化」という概念は重要な変数としては考えられていま 「ギャップ(gap) 」という概念も検討の価値があり せん。常に,分析枠組みを提供することが第一義となっ ます。例えば,中国における文化大革命が終わった時, ているのです。毎日の新聞紙上にはあらゆる事柄につ 政府は,5000人規模で若者を海外に送り出しました。 いてのアナリストたちが登場します。ここで大学関係 それは,文化大革命の期間に中国が取りこぼした知識 者は注意しなければなりません。そういったアナリス を取りこみ,諸外国に追いつくためでした。政府は, トたちは,それぞれ商売ベースの団体の意見を反映し 中国の教育システムが破壊されてしまったことを理解 ており,よく大学からも資金を奪っていきます。つま していたのです。彼らは,何を具体的に失ったのかは り,政策科学分野における知識の使途が,そのような 分からないが,とにかく失っていたことは知ってい 前提になっているのです。 ました。これが「知識のギャップ(knowledge gap) 」 次に教育の側面について。大学教員の多くは,教育 の原理です。私たちは,自分には知らないことがある 者としての教育を受けていません。彼らは,それぞれ という事実に常に注意を払うべきです。 そうしないと, の分野において自分の先生を見て育ってきています。 何も見えてきません。 つまり,彼らは,教育の現場で何をすべきかについて 最後に, 「未来志向(future orientation)」について は,自分で見て学んだ独自の理論をもっているだけで 触れたいと思います。 国際教育や国際化のプロセスは, す。よくあるものに,「学生は教室で一番多くを学ん 明らかに未来のためにあるのです。そのために必要な でいる」という考え方があります。これは,留学先や 概念を深く掘り下げなければなりません。この点につ 教室外での学習や成長を全く無視したものです。彼ら いて深く議論する時間がないのが残念ですが,この辺 は,「講義形式こそがもっともいい教授法で,それに で終わりにしたいと思います。ご清聴ありがとうござ よって学生がどのように学習しているのかを自分は理 いました。 −38− 年 報 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディア・システム開発部門 教育交流部門 短期留学部門 資料 日本語・日本文化教育部門 FD 活動の報告 …………………………………………………………… 尾崎 明人 42 報告1…………………………………………………… 服部 淳・大羽かおり 42 報告2…………………………………………………………………… 嶽 逸子 45 第50期(2004年4月期)日本語研修コース ………………………… 鹿島 央 48 第51期(2004年10月期)日本語研修コース ………………………… 鹿島 央 50 第23期 日本語・日本文化研修コース(2003年10月∼2004年9月) …………………………………………………………………………… 籾山 洋介 52 全学向け日本語講座2004年度 ………………………………………… 李 澤熊 54 学部留学生を対象とする言語文化〈日本語〉………………………… 村上 京子 57 短期留学生日本語プログラム 平成16(2004)年度 ………………… 浮葉 正親 67 第5期 日韓理工系学部予備教育コース ……………………………… 李 澤熊 71 第二言語習得研究会全国大会…………………………………………… 村上 京子 73 (資料)平成16(2004)年度・各コースの担当者 …………………………………… 74 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 FD 活動の報告 尾 崎 明 人 留学生センターは,「教育の質の評価と改善をめざ え,何をしたか,結果はどうだったか,が具体的に分 す」という中期目標にそって,平成16年度は FD 活動 かるもの」 「報告の内容が他の教員にも参考になるも に関して, の」という2つの観点を重視した。 ⑴ FD 委員会を設置し,日本語教育担当教員全員で 以下に活動報告2編を提示し,平成16年度留学生セ FD 活動を推進する ンター FD 活動の報告とする。 ⑵ 教員が個別に行う授業評価を継続的に実施する という二つの年度計画を立てた。 ⑴に関しては,平成17年2月の企画運営委員会で FD 委員会の設置が正式に決まり,FD の計画立案, [報告1] ダイアログの授業における試み 服部淳・大羽かおり 実施にかかわる責任体制が整えられた。 ⑵に関しては,すでに平成14年から日本語・日本文 化教育部門の中に専任教員・非常勤講師からなる FD 1.ダイアログの授業の問題点 班が設けられており,教員個々の教授能力の向上と日 教科書のモデル会話を素材として行っているダイア 本語プログラムの改善をめざした取り組みを続けてき ログの授業について話し合ってみた。その結果,次の ている。 ような問題点を共有していることが分かった。 この2年間の活動を踏まえ,今年度の FD 活動は, ⑴ 内容理解に時間がかかり,練習に十分時間が取れ ない。 日本語授業の改善に直結するようなテーマを個人また はグループで設定し,それぞれが適当と考える方法 ⑵ 授業の仕方が固定化してしまっている。 で FD 活動を行うこととした。また,個別に行われる ⑶ 学生が受身になりがちである。重要な表現を覚え FD 活動に関する情報を日本語教員全員が共有し,よ て練習することが中心になり,学生を積極的に活 りよい FD 活動につなげることを目的として,年度末 動させることができない。時間の制約もあり,学 には個人,グループそれぞれが FD 活動の年次報告を 生が自発的に発話したいという気持ちに応えられ 書くことにした。 ていない。 その結果, 「ダイアログの授業における試み」 「チェッ ク項目による学習者同士のフィードバック」 「読解授 2.改善への試み 業における音読の効果」 「漢字マッチングゲームの試 上記の問題点をすべて解決するのは困難である。そ み」「上級の作文の授業での試み」など合計21の FD こで,⑶の問題点を中心に考えていくことにした。そ 活動報告が集まった。これらの FD 活動では,授業評 れによって,⑴,⑵の問題点の解決にも有効だと考え 価の方法として学生からの授業評価アンケート以外に たためである。従来のやり方だと,学生は,予め用意 も自己の授業の録音,録画資料を利用しているものも されたものをインプットすることが中心となってしま ある。いずれの報告も授業をめざした試みとそれに関 い,覚えるのは大変だ,無理だという気持ちになって する自己評価が含まれており,各教員の FD 活動に対 いるように思われる。自分と「モデル会話」の距離が する真摯な取り組みがうかがわれる。 遠いと感じているのではないだろうか。そこで,その 21点の FD 活動報告をすべて年報に掲載することは 距離を近くするために,教科書のモデル会話を提示す 紙幅の関係で不可能なので,FD 委員会・FD 班が21 る前に,学習する会話を自分で考えてみるという作業 点の中から2点を選んで年報に掲載することとした。 をしてみてはどうかと考えた。そうすることにより, この2編を選ぶにあたっては,「授業について何を考 モデル会話の理解,記憶,練習もうまくいくのではな −42− 日本語・日本文化教育部門 いかと思う。また,自分たちで作った会話とモデル会 いでしょうか。」 話との違いに注目させることにより,自然な日本語の ・「どこで(落としたんですか)。」にど 習得へのヒントを与えることにも役立つと思う。 う答えるか:「(それが)よく分からな いんです。」 ・詳細説明の要求(財布を最後に見たの 3.授業での実践・学生の感想 はどこ・いつ?)にどう答えるか: 「地 2で述べた方法を日本語研修コースの各自の授業で 下鉄に乗る前に駅で電話したときは 2004年後期に試みてみた。2人が同じダイアログで試 あったんですけど。」 みることができればよかったが,スケジュールの都合 00:25 でできなかった。そこで,服部が202クラス(未習者 ③ 前半部分のテープを通して1回聞かせる。 (単語表を見ながら) 対象のクラス)で,大羽が203クラス(初級前半修了 →自分たちの文と違うところは無いかを 者対象のクラス)で実施してみて,学習者のレベルに よる反応の違いも見てみることにした。本報告では, チェックする。 00:27 ④ 前半部分のテープを一文ずつ止めて聞か 字数の制限上,今回の試みの中心となる授業の前半部 せる。(教科書のモデル会話を見ながら) 分のみを記述した。 →自分たちの文との違いをチェックし,ど うして違うのか考える。 3.1 服部の担当授業 00:35【以後,QA(大意把握) ,詳細解説,練習, クラス:202 (8名) 応用練習など。】 内 容:A COURSE IN MODERN JAPANESE (REVISED EDITION)Vol. 2 ⑵ 202の学生の評価 Lesson 11-1 落し物 肯定的評価 時 間:90分 ・状況がはじめにわかったので,覚えやすかった。 ・状況が分かった後で自分で会話を作ったので,実 ⑴ 授業計画 際の場面でも使えると思う。 00:00 新出単語確認(重要表現等も含む。 ) 00:10 ・自分の考えた会話とモデル会話を比べることで自 ①【状況説明】 分の日本語の足りないところがよく分かった。 あなたは毎日地下鉄に乗ります。今 ・自分の作った文がなぜ不適切なのかが分かってよ 日,地下鉄に乗る前に駅で友だちにテレ フォンカードで電話をしました。電話が かった。 ・ただ与えられた会話を覚えるのでなく,キーセン 終わって,テレフォンカードを財布に入 れました。地下鉄を降りて駅を出ました。 テンス以外は自由に作れたのがよかった。 ・自分たちで意見を出し合って会話を作るのが面白 財布がありません。多分,財布を落とし かった。 たんだと思います。どこに連絡しますか。 否定的評価 分かりません。それで,foreign student ・教師と練習した後,学生間でも練習した方がいい。 advisor’s office の 山 田 さ ん に 相 談 し ま ・教師が受け持ったロール(山田)の練習ができな す。 かった。 ② 会話を少しずつ考えさせる。考えた文は なお,同様の試みを Lesson 13 Dialogue 13-1「道を 板書する。 聞く」でも206N クラス(203クラスと同じレベルの学 ・まず,何と言うか: 「山田さん,ちょっ 生のクラス)において実施した 。 モデル会話全体を2 と教えてください。」 つ(①いいカメラ屋を聞く ②道教え)に分けて実施 ・状況の説明: 「財布を落としたんです したが,紙幅の関係で詳細は割愛する。 が,」 ・助言を求める: 「どこに連絡すればい −43− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 3.2 大羽の担当授業 意見を聞く。(いつにする。) (∼はどうする。) クラス:203 (7名) 提案する。(∼どう。 ) 内 容:A COURSE IN MODERN JAPANESE (REVISED EDITION) Vol. 2 00:30 ③ テープ(アリス「高すぎる。」まで)を Lesson 17-1 相談する 通して1回聞かせる。(単語表を見なが 時 間:70分 ら) →自分たちの作った文とどこが違うか考え ⑴ 授業計画 る。 00:00 インフォーマルスピーチの復習(lesson 15で 00:32 学習したことを簡単に復習。) ④ テープ(アリス「高すぎる。」まで)を 通して1回聞かせる。 00:05 新出単語確認・発音練習(終助詞「わ」 「な」, , 「かしら」 ,「かな」の使い方も含む。例文を :教科書のモデル会話,単語表を見ながら →自分たちの文との違いをチェックする。 挙げて説明。次の会話につなげる。) どこが問題なのかチェックする。 00:15 モデル会話冒頭の「ねえ,みんなと友達になっ たのに,まだ,一度も全員でパーティしてい ⑤ テープ(アリス「高すぎる。」まで)を ないね。 」「そうだね。 」の2文のみは,テー 一文ずつテープを止めて聞かせる。(教 プを聞かせ,意味を確認した上で,板書して, 科書のモデル会話を見ながら) →詳細理解・発音練習 状況の説明に使う。 ⑥ 表現のまとめ(誘う,賛同,意見を聞く, ①【状況説明】 提案する,など。) アリスさんとルインさんとカーリンさ →後半もこれらの表現を意識させる。板書 んが日本語のコースのパーティを計画し に残し,後半部分にも使う。 ています。アリスさんがパーティをする ことをみんなに提案します(propose)。 00:45【以後,後半部分の理解・練習,全体を通し ルインさんも賛成します(agree)。とて て の 練 習。 応 用 練 習 は, 後 日 の Discourse もパーティがしたいようです。それで, Practice「パーティの話し合いをする」で行 パーティの日を決めるために他の2人に う。】 聞きます。アリスさんが来週の金曜日を 提案します。カーリンさんも賛成します。 ⑵ 203の学生の感想 次に,アリスさんが会費について他の2 肯定的評価 人に考えを聞きます。それから,ルイン ・最初に自分たちで会話を考えたので,覚えるのが 簡単になった。楽しかった。 さんが人数のことを聞きます。人数が変 わると会費が変わります。カーリンさん ・自分で作った文が正しいかかどうかを確かめるた めにテープを聞くのは,覚えるのに役に立った。 も「何人来る?」と言います。 ② 上記のような説明を教師が少しずつしな がら,学生に会話を考えさせる。モデル ・いつもより今日の授業の方がいい。 ・とてもよかった。学生が自分で文を作るから。楽 しかった。 会話に出ているアリスの「高すぎる。 」 という発話までの部分を考えさせる。学 ・こういう授業の仕方はよかった。 生が考えた文は板書する。 否定的評価 ・インフォーマルスピーチを意識させる。 ・この授業のやり方は好きじゃない。いつものやり 方のほうがいい。 ・男女の違いを意識させる。(終助詞の使 い方。) ・ロールプレイが少なかった。もっと練習の時間が あったほうがいい。 ・話し合いに使う表現を意識させる。 誘う。(パーティーしない。) 積極的な賛同。(いいね。しよう。しよう。) −44− 日本語・日本文化教育部門 分の理解が済んでいれば,スムーズに作ることがで 4.授業後の感想 き,他の部分に時間をかけることができ,モデル会 今回の試みについて,報告者は2人ともほぼ,同様 話全体の流れもつかみやすくなると思う。ダイアロ な感想を持った。 グと Discourse Practice の順序を変えるのが不可能な 肯定的感想 Lesson もあるが,一部を除き,可能であると思われる。 ・ほぼ全員の学生が積極的に会話作りに参加し,い 今後,検討してみたい。 つもより,活気のある授業になった。 モデル会話が長くなればなるほど,ここなら使える ・自分たちが正しく作れた部分と間違った部分が明 とか,ここだけは覚えて使ってみようと思わせるやり 確になったので,学生は丸暗記ではなく,各自の 方が必要になると思う。受身になりがちなダイアログ ポイントを押さえた発話練習を心がけていたよう の授業が学生の積極的な参加によるものになるよう検 に思う。 討を続けていきたい。 ・応用練習も比較的スムーズにできた。 ・自分がこの場面に適した文を作ることができたと いうことで,自信を持つことができたように思う。 否定的感想 ・時間がかかる。時間的に余裕のあるスケジュール [報告2] チェック項目による学習者同士のフィー ドバック 嶽 逸子 でないと,実施できない。この方法を採らない部 分に使う時間が少なくなってしまう。 ・できるだけ正しい文を作らせるための誘導が難し 実施クラス:全学向日本語講座中級Ⅰ(学習者数16名) く,たいへんである。既出の単語を覚えていない 実 施 時 期:2004年後期,『現代日本語コース中級I』 第4課「許可をもらう」の用法練習とモ 場合,誘導に苦労した。 デル会話の学習が終わった後。 5.今後への展望 学生の感想からもこの方法は有効であることはわ 1.授業の背景と目的 かったが,時間がかかることが難点である。全体を作 全学向け中級クラスには,このレベルで要求される らせることは時間的に不可能であるので,モデル会話 日本語らしい話し方がなかなか身につかず,初級レベ の一部分で実施することが実状に合っているように思 ルを抜け出せない学習者もいる。学習者が自ら問題点 う。重要な部分,実用的な部分などでやってみるのが を認識するためには録音して聞くのが一番だが,全学 有効と思われる。今回は Vol. 2のダイアログで行って 向けのクラスでは,人数が多いことや週に1回という みたが,語彙の問題,状況説明が複雑になる,時間が ことから,その時間が持てない。これまで数名の会話 足りない,などの理由から,Vol. 2レベルより Vol. 1 を録音し,教師がフィードバックを行って問題点を共 レベルでのほうがこの方法は使いやすい。また,この 有してもらうという方法を数回とってみた。しかし, 方法が可能な Lesson と不可能な Lesson がある。 この方法ではやはり当事者以外の学習者には自分の問 クラスのレベルに拘らず,多くの学生に好評であっ 題として受け止められないようであった。 たが,好きではないと感想を書いた学生も1名いた。 そこで,2004年度後期は1コマの中でクラス全員の 自分から発言をすることが苦手な学生には配慮が必要 会話を録音してフィードバックまで行うという目標を であると思う。いかに全員をまきこんで進めていくか 立てた。フィードバックは学習者全員で,4つの項目 も課題である。 について行うことにした。4つの項目とは①文体,② 現在のコースのスケジュールでは,モデル会話を 表現,③状況や理由の説明のしかた,④発音やイント 学 習 し て か ら,Discourse Practice を し て い る が, ネーションに関するもので,いずれも学習者の多くが Discourse Practice をしてからのほうがスムーズに会 問題を持つ点である。目的は学習者がこれらの項目に 話が作れる場合もあるのではないかと思う。重要な部 注目して会話を聞き,自分の問題点に気づくこと,そ −45− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 してよりよい話し方について考えるきっかけとするこ とである。クラスでは10月の授業開始時期より,(1) 3.教師の観察とアンケート結果 文体が使い分けられること,(2)その課の表現が正し 授業には16名が出席していたが,録音までの流れは く言えること,(3)状況や理由を上手に説明できるこ スムーズだった。多くの学習者が自分の日本語を聞く と,(4)聞き手にわかる発音やイントネーションで話 のは初めてだということで,練習を繰り返したり,録 せること,の4点を「今より上手に話すために必要な 音し直したりした。録音会話を聞くと,「(項目の)① こと」とした。(2)は4課なら「許可をもらう」ため はよかったが,③は『ちょっと。・・・』と言ったほう の文そのものを指す。(3)は「んです」や中止文など がいい」,「②は助詞が違うと思う」,「④はまあまあ を用いた,より自然な日本語で状況や理由が説明でき だった」, 「一番上手だった」などの意見や感想が活発 ることを指す。(4)にはその場にふさわしい音調で話 に出た。学習者の方から, 「よくわからなかったから, せることも含めた。それぞれの項目のキーワード(上 もう一度聞かせてほしい」と言うことも数回あり,ほ 記の下線部分)はたびたび板書し,学習者に印象づけ かのペアの会話も熱心に聞いていたことがよくわかっ るように心がけた。 た。遠慮がちな学習者には教師から「②はどうだった か」などと聞き,発言を促した。学習者が①②③の問 題点に気づいても,どう直したらいいか意見が出ない 2.授業の流れ とき,あるいは問題点に気づかないときは,教師がヒ 授業は以下のように行った。 ントを出し全員で考えるようにした。学習者は録音会 1)教師が授業の流れを説明する。 話を最後まで興味を持って聞き,全員が何らかの意見 2)学習者は2人1組のペアになる。 を述べた。 3)「許可をもらう」会話の状況設定と流れが2つ書 この授業について16名にアンケートをとった。以下 いてあるシートを学習者に渡し,教師がそれを説 に質問と5段階評価(5が一番いい評価)の平均を示 明する。 す。 4)各ペアは2つのうち1つを選び,会話を作成し練 〔1〕ペアで考えて会話を録音するのは勉強になりま 習する。 したか。 5)練習が終わったペアから録音する。録音が終わっ 〔2〕ほかの人の会話を4つの点から聞いて問題点を考 たペアはもう1つの会話を考える。 6)教師はフィードバックのための項目を板書する。 ①話し方は丁寧だったか。②許可をもらうための 4.7 えたのはよかったですか。 4.6 あなたの役に立ったと思いますか。 4.6 〔3〕自分の問題点について考えましたか。 文はきちんと言えたか。③状況説明は上手に言え 16名全員が「はい」 たか。④発音やイントネーションはわかりにくく 自分の問題点はどんなことだと思いましたか。 なかったか,の4点である。 (自由記述) 7)すべてのペアの録音終了後,全員でそれを聞く。 4つの項目について学習者同士でフィードバック 〔4〕授業に積極的に参加できましたか。 〔5〕授業についての意見を書いてください。 する。問題はどこか,どう言えばよかったか当事 者も含めて意見を出し合う。 4.8 (自由記述) 自分の問題点についての記述では,丁寧な話し方につ 教師が会話の状況設定をしたのは,全員が状況設定 いての記述が5名,発音の悪さ,イントネーションの を把握している方が,聞くときわかりやすく,項目に 不自然さについての記述が6名,状況説明の難しさに 注目しやすいと考えたからである。数を2つに限った ついて書いたものが4名,文法について4名,自分の持 のは全員が録音を終えるまでの待ち時間を有効に使え つ話の進め方と日本語のそれとの違いについて書いた ること,また2つなら全員がどちらも学ぶことができ ものも2名あった。授業についての意見には「これか ると考えたからである。同時に,複数のペアが考える らこのような授業方法をもっとすればいいです」 「本 ことによって,違いが明らかになることもねらった。 当におもしろいし,役に立ちました」など好意的な意 見が多かった。しかし,「少し速くて,ついていくの −46− 日本語・日本文化教育部門 がちょっとむずかしい」という意見も1名あった。 者も十分それに対応できるということがわかった。学 習者がフィードバックの項目にすぐ対応できたのも, 授業開始時期から繰り返しそれらを示し,教師の意図 4.まとめと今後の課題 を理解していた結果だと考える。 アンケート結果や教師の観察から,学習者は概ねこ 2005年度から全学向けの会話の時間は週1回から2 の授業に積極的に取り組み,お互いフィードバックし 回になる。今回「速い」という意見があったが,少し 合うことによって,自分の問題点を認識することがで ゆっくりできるであろう。今後はフィードバックの項 きたと考えられる。 目をさらに検討して,学習者に様々な角度から話し方 これまで人数の多さや時間不足を理由に,全員の録 について考えてもらえるようにしたい。また学習者が 音とフィードバックはとても無理だと考えていた。し 項目を考え,それに基づいてフィードバックを行うと かし今回の試みから,やり方次第で可能であり,学習 いう機会も設けたいと考えている。 −47− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 第50期(2004年4月期)日本語研修コース 鹿 島 央 本学の日本語研修コースは,名古屋大学への進学生 た。ただし,未習クラスにも多少学習経験のある学生 が主であるが,最近の傾向としては,近隣の公私立大 もいたためコース最初で授業内容を変更したが,最終 学へ進学する留学生も増えている。今回は23名の国費 的には履修内容は他の未習者とほぼ同じものであっ 留学生のうち,6名が他大学への進学生である。 た。 1.研修生 3.時間割と日程 A.大使館推薦(研究留学生) 授業は月曜日から金曜日まで,午前8時45分から午 文部科学省より配置された大使館推薦の国費研究留 後2時30分まで90分授業を3コマ,さらに火曜日を除 学生は,14ヶ国23名で,進学先は名古屋大学17名,滋 く毎日午後4時15分まで個人的な質問,会話練習に 賀大学,愛知教育大学,愛知大学,名古屋市立大学, よる復習などの個別学習を行った。 南山大学,藤田保健衛生大学がそれぞれ1名であった。 コースの日程は以下の通りである。 今回,名古屋大学進学者のうち2名(ブラジル:国際 4月13日開講式,4月14日授業開始,夏季休業7月 言語文化研究科,英国:理学研究科)は,レベルが高 22日∼8月27日,8月30日授業再開,9月14日修了式。 かったため全学向けの日本語講座を受講した。 夏季休業中,希望者は全学向け夏季集中日本語講座(7 月26日∼8月10日)を受講した。 B.学内公募(私費留学生) 学内からは法学研究科2名(ブラジル,カンボジア), 国際言語文化研究科1名(ベルギー),工学研究科8 4.カリキュラム 名(イラン,インドネシア,エジプト,中国4名,ベ 1)初級学習者(3クラス) トナム)の合計11名受講申し込みがあり,面接と筆記 カ リ キ ュ ラ ム は, こ れ ま で の よ う に ⑴ 主 教 材 A 試験の結果,全員について受講を認めた。今回は学内 Course in Modern Japanese [Revised Edition], Vols. 1 推薦のうち7名が既習者であったが,大使館推薦の学 & 2 (名古屋大学日本語教育研究グループ編)を中心 生の既習レベルと同程度であったため受け入れること とする授業,⑵ Topic Oriented Program ,⑶専門に とした。 ついて話す,の3つで構成した。以下に,概要につい 以上のように,第50期は研究留学生23名,学内推薦 て報告する。 留学生11名の合計34名で,既習者が12名(うち2名は 全学向け日本語講座),未習者が22名であった。なお, 1)未習者 全学向け日本語講座を受講していた大使館推薦の留学 ⑴ 教科書を中心とする授業 (1∼14週) 生1名は,家庭の事情により,6月初旬に研修生を辞 夏 休 み 前 に 主 教 材 で あ る A Course in Modern 退した。 Japanese, Vols. 1 & 2 が終了するようなカリキュラム を編成した。 ・ ドリル ( 各課の文法練習 ) 2.クラス編成 ・ Dialogue(会話) 授業は,5クラス編成とし,専任教官2名,非常勤 ・Discourse Practice & Activity 講師11名の計13名が担当した。クラスは既習者のため 会話の運用練習として各課の Discourse Practice に特別クラスを2つ設け,残り3クラスを初級者とし にもとづいて口頭練習を行った。また,まとま −48− 日本語・日本文化教育部門 りのある話をする練習として,先期と同じテーマ 設けた。1つは,初級前半修了程度の日本語力があ (「たのしかったこと」「趣味について」「国の観光 る5名,他の一つは初級後半修了程度の5名である。 地」「国との違いについて」)について原稿を書い カ リ キ ュ ラ ム は, ⑴ 教 科 書『A Course in Modern てから話す活動を行った。また,日本人ゲストに Japanese [Revised Edition], Vols. 1 & 2』 ,『現代日本 インタビューする活動も2度行った。 語コース中級I』 (名古屋大学日本語教育研究グルー ・書く練習 プ編)を中心とする授業,⑵ TOP,⑶専門について 話す練習と融合させる形で書く練習を行なった。 話す,の項目で構成した。 ・読む練習 ⑴の教科書を中心とした授業は,初級前半修了生に 話す活動と連動するように行った。 ついては,Vol. 1の復習を最初の3週間で終了し,11 ・ Sound Practice 週目の後半で Vol. 2が終わるような進度であった。そ アクセントとリズムを同時に導入・練習する方法 の後,『現代日本語コース中級I』に進み,3分の を行っている。 2程度までカバーした。初級後半修了生については, ・ ホームビジットプログラム Vol.2を7週目後半までで修了し,その後,『現代日本 ホームビジットプログラムを第12週目の土,日に 語コース中級I』に入り,夏休み前までに終了した。 実施した。訪問の日の前に,教室活動として電話 さまざまな活動については,未習クラスと同様のこと のシミュレーション練習や実際に訪問家庭に電話 を行った。 することも行っている。訪問後には教室でレポー ⑵ TOP プログラムは,初級前半修了生については トをし,訪問家庭へのお礼の書状も学生自身が書 初級レベルの学生と同じトピックで行った。初級後半 くことになっている。学生にはおおむね好評な活 修了生については, 「名古屋港水族館」「名古屋市役所」 動である。このプログラムは,名古屋国際センター 「東山動物園」 「愛知県警」にインタビューにでかけた。 のご協力と非常勤の先生にお力添えをいただいて このうち, 「愛知県警」には学生の都合で出かけられず, いる。 キャンセルした。 ⑵ TOP(Topic Oriented Program) (第15週) ⑶専門については,他の学生と同じように行った。 CMJ20課 終 了 後, 夏 休 み 後 の 5 日 間 に わ た っ て TOP プログラムを実施した。TOP はトピックを決め て,これまでに学習した項目を活用して4技能を総合 5.まとめと問題点 的に伸ばすことを目的にした活動である。第47期から 1)研修期間中に,何らかの理由で日本語習得に集中 は, 「国について聞く」という共通のトピックのもとで, できないため,日本語学習と専門が両者ともにおろそ 日本人にインタビューし,留学生の国について,日本 かになる事例はこれまでにも述べてきた。今回も,家 人がどのような知識があるか,どのようなイメージを 庭の事情のため研修コース自体をやめなければならな もっているかなどを調査する活動としている。活動で かった留学生がいた。研究上の理由もあったようであ は,インタビューの仕方,結果の発表の仕方などを学 るが,事前の指導教官との打合せの不足も感じた。辞 び,資料などを用いて発表した。 退理由については,国際課に文書として残してある。 他に理由は,入試,ゼミへの出席,身体的な不具合, ⑶「専門について話す」(第16週) 個別指導を行った後,各留学生の専門領域について 学習発達障害であった。 発表した。発表は201教室,206教室の2クラスにわか 2)研修コースは,集中度の高いコース(週15コマ) れて行った。 であり,かなりの予習と復習が必要である。今回は学 内公募で受講した私費留学生の場合,ゼミなどの出席 2)既習者(2クラス) で欠席が多かった。これについては,指導教官ともお 既習者10名を2つのレベルに分けて特別のクラスを 話しをし,文書での事情説明もいただいた。 −49− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 第51期(2004年10月期)日本語研修コース 鹿 島 央 昨年の10月期と同様に,研究留学生の配置が少なく 既習者(13名)のために特別クラスを2つ設け,残り なり,4月期とのアンバランスが大きくなってきてい 3クラスを初級者(23名)とした。 る。 1.研修生 3.時間割と日程 A.大使館推薦(研究留学生) 時間割は50期と同様である。 文部科学省より配置された大使館推薦の国費留学生 コースの日程は以下の通りである。 は,11ヶ国17名で,うち4名は日韓理工系学部予備教 10月12日開講式,10月13日授業開始,冬季休業12月 育生である。進学先は名古屋大学12名,滋賀大学1名, 27日∼1月7日,1月11日授業再開,3月10日修了式。 愛知教育大学4名であった。このうち,6名は教員研 春季休業中,希望者は全学向け春季集中日本語講座(2 修生で,残りの7名が研究留学生であった。今回,名 月14日∼3月8日)を受講した。 古屋大学進学者のうち1名(ベトナム:国際開発研究 科)は,初級レベルであったが,研究活動のため全学 向け日本語講座を受講した。 4.カリキュラム 1)初級学習者(3クラス) B.学内公募(私費留学生) 未習クラスのカリキュラムは50期の内容とほぼ同じ 今期も法学研究科から国費特別コース7名および であったので省略する。ただ,Web-CMJ の改訂版が JICE(日本国際協力センター)支援無償留学生(JDS) できたので,授業内で使用し,評価をしてもらった。 10名を受け入れた。他に学内からは情報科学研究科1 名(中国),国際言語文化研究科2名(中国),工学研 2)既習者(2クラス) 究科2名(インドネシア,中国),連携基盤センター (a) 既習者13名を2つのレベルに分けて特別のク 1名(中国),教育発達科学研究科1名(インドネシア), ラスを設けた。1つは,初級前半修了程度の日本語 経済学研究科1名(ロシア)の合計8名受講申し込み 力がある7名,他の一つは初級後半修了程度の6名 があり,面接と筆記試験の結果,全員について受講を で あ る。 カ リ キ ュ ラ ム は, ⑴ 教 科 書『A Course in 認めた。 『現 Modern Japanese [Revised Edition], Vols. 1 & 2 』, 以上のように,第51期は国費大使館推薦留学生13名, 代日本語コース中級I』 (名古屋大学日本語教育研究 学内推薦留学生25名の合計38名で,既習者が13名,未 グループ編)を中心とする授業,⑵ TOP,⑶専門に 習者が25名(うち1名は全学向け日本語講座)であった。 ついて話す,の項目で構成した。 なお,未習者の大使館推薦の留学生1名は,体調不良 ⑴の教科書を中心とした授業は,初級前半修了生に により一時帰国し,12月初旬に再来日したが,その後 ついては,Vol. 1の第6課から始め,最初の3週間で は,全学向け日本語講座初級1で学習を続けた。した 終了し,10週目の後半で Vol. 2が終わるような進度で がって,本コースでは36名が受講したことになる。 あった。その後, 『現代日本語コース中級I』を学習 した。 2.クラス編成 (b) 初級後半程度の修了生は,法学研究科 JDS の 授業は,5クラス編成とし,専任教官2名,非常勤 学生6人で,本国で350時間程度,7月に来日後120時 講師11名の計13名が担当した。クラスは50期と同様に 間程度の日本語学習を行っている。 −50− 日本語・日本文化教育部門 このレベルの目標は,以下の3点である。 ・フリーター(2コマ) ・中級レベルの総合的な日本語運用能力の育成 ・日本国憲法(3コマ) ・大学での勉学,研究に必要なコミュニケーション能 漢字 力の向上 初級教科書300字および中級教科書・読解教材307字 ・専門課程で必要とされる読解能力の養成 を導入,練習した。 学習内容 授業でのワークシートは学生の負担を考え,15字中 前年と同様に,5週目までに『A Course in Modern 5字のみ各自で調べてくるような方法をとった。参考 Japanese [Revised Edition], Vol. 2 』を終了し,6週目 資料として『KANJI CONTEXT 中・上級者のため から中級教科書による学習を行った。中級段階での教 の漢字と語彙』を用いた。 科書以外の学習内容は49期と同様である。その内容は, 専門の発表について 学生の発表,作文,グラフの説明,インタビュー活動 他の学生と同じように個別指導を行い,既習者のみ 2回,読解教材および専門の発表である。 で発表を行った。 インタビュー活動 インタビューにより情報を集め,資料を作成し口頭 発表を行う活動である。テーマは,名古屋大学の学生 5.まとめと問題点 の生活に関するものと,自分の専門に関係のある分野 1)国費研究留学生の配置が少なくなる中で,10月期 について1回ずつ行った。自分の専門に関する分野 については学内公募の方が多い状況が続いている。こ では,司法試験をこれから受験する学生へのインタ の傾向については,国が今後どのような研究留学生の ビュー,法律事務所で弁護士として活動している方へ 受け入れ方針とも関連するので,機会を捉え,説明を のインタビュー,および名古屋地方裁判所でのインタ うけ,今後の日本語教育プログラムに生かしていく必 ビューを行った。 要を感じる。 読解 2)支援無償留学生(JDS)の中には,本国で250時 49期と同様の内容で行った。 間以上学習してくる学生もいるが,これまでも再三言 ・日本の人口構成(2コマ) 及されているように,ほとんどが初級レベルからのや ・日本の歴史(3コマ) り直しを行っている。本国での日本語学習への時間の ・日本の政治(2コマ) 使い方について,少し考慮する必要があるのではない ・日本の会社組織(2コマ) かと考えられる。 ・就職活動(2コマ) −51− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 第23期 日本語・日本文化研修コース(2003年10月∼2004年9月) 籾 第23期日本語・日本文化研修コースは,「上級レベ 山 洋 介 いても90分×1∼2回の講義を行った。 ルの日本語能力の習得(話す・聞く・読む・書くのす べてにわたって) 」「日本に関する基礎的理解」「各自 ⑶ 作文 (研究レポートのための基礎訓練) (1∼2月) の専門分野の基礎的な研究方法の習得と実践」の3つ 研究レポート作成に必須の基礎知識を体系的に身に を目標として,2003年10月∼2004年9月の期間に行わ 付けることを狙いとして,「書き言葉と話し言葉の基 れた。学習者は13カ国,20名(インド:4名,中国: 本的な違い」 「文末表現の諸相」「図やグラフの説明の 3名,タイ:2名,韓国:2名,ミャンマー:1名, 仕方」 「引用の仕方」「要約の仕方」などについて学習 インドネシア:1名,イラン:1名,カザフスタン: した。 1名,アメリカ:1名,ハンガリー:1名,ロシア: 1名,ウクライナ:1名,ブラジル:1名)であり, ⑷ 発展読解・発展聴解(10月∼4月) 10名の教員が指導に当たった。授業は基本的に3クラ 発展読解として,新聞などの生教材の読解,本の読 スに分けて行った。 解(エッセイ・小説など,教員が用意したものの中か 以下,主要なプログラムおよびアンケートの結果に ら,学習者が興味のあるものを選択) ,特別読解(学 ついて概説する。 生が自分で読解の素材を用意し, 学生主体で行う授業) などを行った。また,発展聴解として,テレビ番組な ⑴ 教科書による日本語学習(10月∼4月) どの生教材を用いて,聴解力の向上を目指した。 『現代日本語コース中級Ⅰ』『現代日本語コース中級 Ⅱ』 『現代日本語コース中級Ⅰ 聴解ワークシート』 『現 ⑸ スピーチ(10月∼7月) 代日本語コース中級Ⅱ 聴解ワークシート』(いずれ 自国の紹介をはじめとする様々なトピックについ も名古屋大学日本語教育研究グループ編,名古屋大学 て, 学生がスピーチを行った(10分程度)。また,スピー 出版会)を教科書として日本語学習を行った。補助教 チの録音に基づき個別指導を行った。 材として,「プリテスト(予習のチェック)」「プリテ スト:補足(連語など)」 「復習クイズ」 「読解シート」 「文 ⑹ 研究レポート(1月∼7月) 法補足説明」を使用した。また,3課ごとにテスト(筆 学生各自がテーマを決め,教員の個別指導のもとで 記テストおよび話すテスト)を実施した。話すテスト 研究レポートを作成した。分量は原稿用紙換算で50∼ については,録音に基づき個別指導も行った。 100枚程度である。 研究成果は『2003∼2004年度日本語・ 日本文化研修コース 研究レポート集』として発行し ⑵ 入門講義・特殊講義(10月∼4月) た。また,中間発表会(5月,発表:12分/質疑応答: 日本に関する基礎知識を身に付けること,研究レ 8分) ,最終発表会(7月,発表:10分/質疑応答:5 ポートのための基礎知識および基本的な研究方法を習 分)を実施した。研究レポートの題目は以下の通りで 得することを狙いとして,「国際関係論」「日本語学・ ある。 日本語教育学」「言語学」の3つの分野について入門 講義(各科目90分×12回)を行った。なお,学生は3 科目のうち2科目以上を選択することとした。 アグラハリ・アプルワ(インド)「外来語について ―分類と和語・漢語と外来語の類義語分析―」 また,特殊講義(必修)として「日本語情報技術」 (90 分×15回)および「音声学」(90分×5回)を行った。 さらに,「辞書」「日本文学」「日本の歴史」などにつ −52− アヤット・ホセイニ(イラン)「生成文法と認知言 語学の比較」 エヴェツカ・オリガ(ウクライナ) 「『砂の女』の主 日本語・日本文化教育部門 人公としての「砂の女」」 モリオカ・レイナルド・コウジ(ブラジル)「死語に 袁鐘(中国)「グローバル化の中の日中関係」 ついて ―人を指す表現を中心に―」 カリベコウァ・ローザ(カザフスタン)「婉曲語法 ユユット(スバン ワーユ エディ) (インドネシア) ―言い換えの理由と分類―」 「「たけくらべ」 ―女性作家の目で見た遊郭―」 キョウ・カイエン(中国)「ボランティア活動を通し て見た日本の大学生」 ⑺ 総合演習(5月∼7月) ケティミィン(ミャンマー)「ことわざからみる二国 の文化 ―日本とミャンマーの比較―」 日本事情・日本文化に対する理解を深めることと上 級レベルの総合的な日本語力を養成することを狙いと ジョン・マイケル・ラウ(アメリカ)「日本語音声認 識システムと日本語学習者」 して,新聞や雑誌の記事やテレビ番組などの生教材を 用いて,総合演習を行った。テーマは「報道のあり方 ジン・ヒョンジョン(韓国)「村上春樹の『ノルウェ イの森』論 ―「死」を中心として―」 について考える」「変化する日本の政治」「スポーツ: 心技体の世界」の3つである。各テーマの実施期間は ゼンタイ・ユディット(ハンガリー)「新しい医療法 1∼2週間である。 としての全人的医療の始まり ― 江戸時代から明治 への動きを中心に」 ⑻ その他 張楊(中国) 「『キッチン』と『満月』における“死” と“生”」 以上に加えて,独話練習,討論会(ディベート) , ことばのクラス(ゲームなどを通して日本語力を高め ナッタポーン・パンサワット(タイ)「行列待ち現象 ―若者を中心に―」 るプログラム),定期的な漢字テストなども行った。 さらに,本学の学部生向けに開講されている教養科目 ニシャ・パラメシワラン(インド) 「夏目漱石『こゝろ』 における先生の人物像 ―その複雑な心理と性格を の1つである「留学生と日本:異文化を通した日本理 解」にも参加した。 めぐって―」 バクレ・プラサード(インド)「「フリーター問題」を めぐって ―働き方とは何か―」 ⑼ アンケート 2004年7月に,学習者に対して,コースの内容など ブティ(インド)「日本の環境問題をめぐる住民・市 民運動」 に関するかなり詳細なアンケートを行った。以下, 「全 体としてコースの内容に満足していますか」という質 許京姫(韓国) 「映画「ぽっぽや」の分析 ―題名,対比, 乙松の死,色,音を中心に―」 問のみについて,アンケート結果を紹介する。 満足度 ムーシナ・イリーナ (ロシア) 「日本語の歌のメロディー は歌詞のアクセントをどれだけ反映しているのか」 メーティニー・ヌッチャナーカー(タイ)「日本の童 満足していない 満足している 評価 0 1 2 3 回答者数 0人 0人 7人 13人 謡における擬音語・擬態語」 −53− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 全学向け日本語講座2004年度 季 全学向け日本語講座は,名古屋大学に在籍する留学 生(大学院生,研究生など),客員研究員,外国人教 澤 熊 2.期間と内容 師などを対象に,日常生活や大学での研究生活に必要 ⑴ 前期全学向け日本語講座 とされる日本語運用能力の養成を目指して開講されて 開講期間:2004年4月15日㈭∼7月15日㈭12週間 いる。 開講クラスと内容: 2004年度は,例年と同様,前期・後期に各12週間, 1)初級Ⅰ さらに夏季休業期間中に12日間,春季休業期間中に17 『A Course in Modern Japanese, Revised edition 日間の集中講座を開講した。 Vol. 1』を主教材とし,他に適宜補助教材を使用し た。週4コマのうち3コマは,文法・会話,残り1 コマを文字の指導と読む練習にあてた。 1.2004年度の概要 2)初級Ⅱ 1)できるだけ多くの学生に,より良い学習環境を提 『A Course in Modern Japanese, Revised edition 供するために今年度から「Web 中上級」クラスを Vol. 2』を主教材とし,「コミュニケーション活動」 新たに設けた。これは,日程の都合で通常の授業に も取り入れながら,話す技能の強化を図った。週4 参加できない中級修了者(あるいは,中級を修了し コマのうち3コマは,文法・会話,残り1コマを漢 たが,上級のクラスは少し難しすぎると考えている 字と読む練習にあてた。 者)が対象となる。前期と後期のみ開講。 3)初中級 2)例年と同様,初級Ⅱ以上を希望する受講者を対象 初級Ⅰ,Ⅱで学んだ文法事項のうち重点項目を選 にクラス分けテストを実施し,日本語能力レベルに んで復習し,それが実際に使えるように運用練習を 応じたクラス編成をした。なお,今年度からはクラ 行った。また中級レベルで必要となる漢字力,読解 ス分けテストの会場を2つ設け,上級レベルを希望 力を含め,日本語運用能力の基礎を固めることを目 する者については,別途にテストを実施している。 指した。使用教材は,初中級用市販教材などを参考 3)各クラスにおいて,出席および成績の管理を行 にし,教師が作成した。授業は,週4コマ実施し, い,授業修了時に出席率および成績から合格者を発 表し,合格者は次期進級する際クラス分けテストを それぞれ会話・漢字・読解・文法練習にあてた。 4)中級Ⅰ a,Ⅰ b 免除している。再履修者についても同様である。た a,b 各クラスとも技能別授業を以下の教材を使 だし,上級Ⅰ,Ⅱにおける再履修者は定員を超える 用して,各1コマずつ,計週4コマ行った。 申し込みがあった場合,受講を制限することにして ・会話:『現代日本語コース中級Ⅰ』会話練習 いる。 ・聴解:『現代日本語コース中級Ⅰ』聞く練習およ 4)全学向け日本語講座は,基本的には単位取得をす び『中級ワークシート中級Ⅰ』 る授業ではないが,短期留学生の日本語プログラム ・読解:『現代日本語コース中級Ⅰ』読む練習 の上級Ⅰ,Ⅱについては,本講座に組み込まれた形 ・文法:『現代日本語コース中級Ⅰ』文法および談 となっている。 話練習 5)昨年度に引き続き,FD 活動の一環として学生に 5)中級Ⅱ a,Ⅱ b よるコース評価をレベル・科目別に行った。 a,b 各クラスとも技能別授業を以下の教材を使 用して,各1コマずつ,計週4コマ行った。 ・会話:『現代日本語コース中級Ⅱ』会話練習 −54− 日本語・日本文化教育部門 ・聴解:『現代日本語コース中級Ⅱ』聞く練習およ び『中級ワークシート中級Ⅱ』 中級Ⅰ, 中級Ⅱ(2クラス),上級Ⅰ,上級Ⅱの7レベル・ 9クラスであった。今年度も,木浦大学から15名の参 ・読解:『現代日本語コース中級Ⅱ』読む練習 加があった。クラス配置は,初級Ⅱ3名,初中級2名, ・文法:『現代日本語コース中級Ⅱ』文法および談 中級Ⅰ2名,中級Ⅱ8名であった。 話練習 初級,初中級の使用教材,授業内容は前期と同じで 6)上級Ⅰ あった。中級Ⅰ,Ⅱの教材は市販の『文化中級日本語 大学での勉学に必要な口頭表現,文章表現の能力 Ⅰ,Ⅱ』を使用した。上級Ⅰでは市販の『上級で学ぶ を養うことを目指した活動を行った。使用教材は, 日本語』 (研究社)と生教材を使って,口頭表現,文 上級用市販教材,新聞,雑誌,テレビ番組などを使っ 章表現の能力を養うことを目指した。また,上級Ⅱで て教師が作成した。授業は週4コマ行った。内容は は新聞,雑誌,テレビ番組などの生教材を用いて,総 以下の通りである。 合的な運用能力の育成を目指した。 ・読解:新聞や雑誌などから抜粋した生の文章を迅 速,的確に読みとる技術。 ⑷ 春季集中講座 ・文章表現:小論文を書くために必要な技術。 開講期間:2005年2月14日㈪∼3月18日㈫17日間 ・口頭表現:ゼミなどで発表したり,討論に参加す 開講クラスと内容: るための技術。 開講レベルは,初級Ⅰ,初級Ⅱ(2クラス),初中級, ・聴解:ニュース解説や講義などを聞き取る技術。 7)上級Ⅱ 中級Ⅰ(2クラス),中級Ⅱ(2クラス),上級Ⅰ,上 級Ⅱの7レベル・10クラスであった。使用教材,授業 上級Ⅰ修了または日本語能力試験1級程度の日本 内容は夏季の授業に準ずる。 語能力を有する学生を対象に,大学での勉学に必要 な口頭表現,文章表現の高度な能力を養うことを目 指した活動を行った。使用教材は上級Ⅰと同様,上 3.受講生数 級用市販教材,新聞,雑誌,テレビ番組などを使っ 以下に2004年度の登録者数と修了者数の一覧を示 て教師が作成した。授業内容についても基本的に上 す。以下からわかるように,登録者数と修了者数には 級Ⅰと同じであるが,ここでは,さらなるレベルアッ 大きな差が見られる。これにはいくつかの理由があげ プを目指した活動を行った。 られる。まず,全学向け日本語講座は単位を取得する 授業ではないため,本学に在籍している留学生なら誰 8)Web 中上級 読解,作文能力を高めることを目標にして,Web でも簡単に受講でき,また自由にやめられる。そのた 上で教材の提供・回答の添削等を行う。受講者は学 め専門の授業以外の時間帯を利用して補習という感覚 内 LAN で,日本語入力可能なものに限る。登録者 で参加している学生が多い。また,現在登録はインター にはパスワードを発行し,毎週1回オフィースア ネット登録となっているため,授業に参加できるかど ワーを開設する。なお,プレイスメントテストは不 うかわからなくても,登録が可能である。そのため, 要である。 自分の専門の授業と重なったり,論文などで忙しく なったりして,実際には授業に参加できなくなった人 ⑵ 後期全学向け日本語講座 も登録者数に含まれてしまう。専門の授業と時間帯が 開講期間:2004年10月18日㈪∼2005年1月28日㈮12 重なってしまい授業に参加できない学生については, 時間割の検討,クラスの増設,授業科目の新設など様々 週間 な面で対策を考えている。 開講クラスと内容:前期と同様である。 ⑶ 夏季集中講座 前期 開講クラスと内容: 開講レベルは,初級Ⅰ,初級Ⅱ,初中級(2クラス), −55− 後期 登録者数 修了者数 登録者数 修了者数 初級Ⅰ 28 17 29 24 初級Ⅱ 27 15 28 16 開講期間:2004年7月26日㈪∼8月10日㈫12日間 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 初中級 31 18 26 16 を組んでほしい(工夫してほしい) 」「自分の専門分野 中級Ⅰ a 22 12 23 15 と関係のある授業項目も取り入れてほしい」などと, 中級Ⅰ b 22 10 24 19 昨年とほぼ同様の要望があった。 中級Ⅱ a 30 14 23 13 中級Ⅱ b 30 17 24 14 上級Ⅰ 40 17 27 16 上級Ⅱ 36 14 19 9 以上のアンケート結果を受けて,来年度からはさら 7 4 16 6 にプログラムを改善・拡充することにした。大きな変 273 138 239 148 Web 日本語 計 夏季 ⑵ 今後の課題(日本語教育プログラムの改善・拡充) 更点は以下の通りである。 1)全学向け日本語講座のクラス数・時間数が増える。 春季 ・集中コース・標準コース 登録者数 修了者数 登録者数 修了者数 初級Ⅰ 20 14 22 13 短期留学生を含む全学の外国人留学生,研究者, 初級Ⅱ a 18 11 24 15 教員を対象としたコースで,学習者のレベルや希 初級Ⅱ b* ‒ ‒ 11 9 初中級 a 15 9 21 13 初中級 b* 14 11 ‒ ‒ 中級Ⅰ a 16 10 17 11 中級Ⅰ b 17 12 18 13 中級Ⅱ a 14 7 10 5 提供する。 中級Ⅱ b 15 7 11 6 ・オンライン日本語コース 上級Ⅰ 20 15 17 10 上級Ⅱ 9 5 8 6 158 101 159 101 計 望に合わせて「集中コース」(週20時間12週,4 レベル)と「標準コース」(週10時間12週,8レ ベル)のいずれかを選択できる。 2)授業に出られない学生のためにオンライン授業を 日本語の授業に出席することが時間の関係などで 難しい留学生のために,Web 上で教材を配布し, [注]*初級Ⅱ b は,日本語研修生(6ヶ月)が継続して学 習が行えるように設定したクラスである。 日本語研究コースで既に学んだ初級Ⅱの内容を復習できるよ うにシラバスが作られている。教鞭をとったのは,大学院国 際言語文化研究科日本語文化専攻の鷲見幸美助教授の指導を 受けた同専攻の院生であった。また,初中級 b については, 夏季集中に初中級レベルに学生が集中したため,中級Ⅰを1 クラス減らし, 初中級を2クラスにするという措置をとった。 今後も,登録状況によってはクラス変更の可能性がある。 学習者からの解答に対しフィードバックを返すと いうものである。今年度から開講している Web 日本語をさらに拡充したものである。 3)学習者のニーズに合わせたアラカルト授業を新た に設ける。 ・漢字コース なかなか一人では勉強が進まない,ついくじけて しまいそうになる漢字学習を少しでも支援するの が目的である。初級・中級といったレベルに関わ 4.学生によるコース評価と今後の課題 らず,誰でも受講することができる。漢字100字, ⑴ アンケートの実施 300字,1000字の3レベルを設ける。 昨年度と同様に授業改善と教授能力の向上を図るた ・入門講義 めに,前期と後期に受講者を対象に,コース内容に関 日本文化論,国際関係論,言語学など専門分野を するアンケートを実施した(授業時間,教材,授業内 やさしく解説する入門講義形式で授業を行い,日 容などについて)。回答者数は前期と後期それぞれ186 本語運用能力を高め,日本を理解するのを助ける。 人と149人である。回答の内容は全般的に良好な評価 講義はすべて日本語で行っているため,日本語能 結果が得られたが, 「授業時間数をもっと増やしてほ 力試験2級程度の日本語力を備えていることが条 しい」「自分の専門の授業と重ならないように時間割 件となる。 −56− 日本語・日本文化教育部門 学部留学生を対象とする言語文化〈日本語〉 村 2004年度言語文化〈日本語〉の科目及び受講生数は 上 京 子 授業のねらい:大学という環境において日本語の使用 以下の通りであった。 能力を高める,特に,大学で日本語ネイティブと同 じクラスで講義を聞くための基礎的な力をつけるた 前期 1年 めに,ノートの取り方と内容を短くまとめて理解す る方法を学ぶ。また,日常生活にいてもわかりやす 対象 時間 担当者 科目名 受講者数 文系 月3限 秋山 文章表現 12 文系 木3限 西田 口頭表現 12 理系 火2限 村上 文章表現 2 理系 木2限 魚住 口頭表現 3 工学系(国) 月2限 西田 口頭表現 6 して,短いニュースを聞き,質問に答えるという課 工学系(私) 月2限 村上 文章表現 9 題をし,講義の聞き取りの練習を行い,授業の最後 工学系(国) 水2限 魚住 文章表現 6 に学生によるスピーチを行った。授業の中核は,講 工学系(私) 水2限 鷲見 口頭表現 9 義のテープや社会問題などの解説のテープを聞い 鹿島 文章表現 7 2年 文系 火1限 い説明ができるような能力を養う。 授業内容: ・メインの授業では,まず,授業の最初に耳慣らしと て,ノートをとり,内容について確認するというも 後記 のである。 1年 ・ノートをとるためのポイントとして「キーワードを 対象 時間 担当者 科目名 受講者数 文系 木3限 村上 口頭表現 12 聞き取る」 「記号を使う」 「短く書く」 「箇条書き」 「ナ 文系 金2限 秋山 文章表現 12 ンバリング」 「ラベリング」などを扱った。 理系 火2限 村上 文章表現 2 理系 木2限 魚住 口頭表現 2 工学系(国) 月2限 西田 口頭表現 6 ピングや順序だった説明など)の一環として,メ 工学系(私) 月2限 秋山 文章表現 10 ニューや交通案内などをグループに分かれて考え, 工学系(国) 水1限 魚住 文章表現 6 作成した。 工学系(私) 水1限 鷲見 口頭表現 9 鹿島 文章表現 8 2年 文系 木1限 ・わかりやすいノートの取り方と話し方の練習 (グルー ・また目上の人に対するeメールの書き方を学んだ。 ・さらに全体のまとめとして,それぞれ自分の視聴し クラス たい映画についてインターネットなどで調べ,クラ 文系:文学部・教育学部・法学部・経済学部・情報 スメートに発表しておもしろさを伝えるという課題 文化学部社会システム情報学科 を与え,クラスメートにもっとも支持された映画を 理系:医学部・理学部・農学部・情報文化学部自然 情報学科 視聴した。 ・毎回の授業の最後に学生によるスピーチを行った。 工学(国):工学部(国費留学生・政府派遣留学生) 1人5分程度で,テーマは自由に決めてよいものと 工学(私):工学部(私費留学生・日韓理工系留学生) した。このスピーチにについては,T. A. のフィー ドバックを受けて直した後,最後の授業でもう一度 授業報告 発表した。 ・全体のまとめとして,それぞれ自分の視聴したい映 1年前期 画についてインターネットなどで調べ,クラスメー 口頭表現 トに発表しておもしろさを伝えるという課題を与 文系クラス え,クラスメートにもっとも支持された映画を視聴 受講者:12名,担当:西田瑞生 した。 −57− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 理系 かったが,各自が選んだテーマが内容的に身近な話題 受講者:3名,担当:魚住 の域を出なかったのが少し残念であった。他の人の発 授業のねらい:大学の勉学に必要な日本語運用能力の 表を聞いたり,相互批評をすることで,互いに刺激し うち,特に口頭能力を強化する。高度な聴解能力お 合った面はあると思う。学生の要望により,会話練習 よび情報をまとめて伝達する能力,コミュニケー も授業に取り入れたため,予定していた内容で取り扱 ション能力の向上をめざす。ポイントを整理して論 えなくなったものもあった。 理的に考えを述べる能力を養う。 授業内容: 工学系・国費政府派遣クラス ・視聴覚材料を用いて情報を取る練習や,ノートテー 受講者:6名,担当:西田瑞生 キング,ディスカッション,ポイントを整理して話 授業のねらい:大学という環境において日本語の使用 す練習,口頭発表などを行う。 能力を高める,特に,大学で日本語ネイティブと同 ⑴ ビデオの視聴とディスカッション じクラスで講義を聞くための基礎的な力をつけるた ビデオを見て,内容を理解し,関連する内容につい めに,ノートの取り方と内容を短くまとめて理解す て,ディスカッションを行う。 る方法を学ぶ。 テーマ:お花見,名古屋弁・名古屋紹介,生殖医療, 授業内容: 原子力事故による被爆,熱帯雨林 ・メインの授業では,まず,授業の最初に耳慣らしと ⑵ ノートテーキング して,短いニュースを聞き,質問に答えるという課 講義を聞くための練習として,ノートテーキングの 題をし,講義の聞き取りの練習を行い,授業の最後 仕方を練習。 に学生によるスピーチを行った。授業の中核は,講 使用教材:『留学生のための大学の授業へのパスパー 義のテープや社会問題などの解説のテープを聞い ト』 て,ノートをとり,内容について確認するというも 使用材料:上記で視聴したビデオ,他の学生の口頭 発表 のである。 ・ノートをとるためのポイントとして「キーワードを ⑶ ポイントを整理して話す練習 聞き取る」 「記号を使う」 「短く書く」 「箇条書き」 「ナ 論理的で分かりやすく話すために,列挙,原因理由, ンバリング」「ラベリング」などを扱った。 比較対照などの文についてポイントを整理した話し方 ・わかりやすいノートの取り方と話し方の練習 (グルー を練習する。発表し,相互批評を行う。 ピングや順序だった説明など)の一環として,メ ⑷ 口頭発表 ニューや交通案内などをグループに分かれて考え, 毎回1人が自分でテーマを決めて発表。ポイントを 作成した。 整理して話すことを課題とし,相互批評を行う。発表 ・また目上の人に対するeメールの書き方を学んだ。 者は,フィードバック後,発表原稿を訂正し提出する。 ・さらに全体のまとめとして,それぞれ自分の視聴し 他の学生は,メモをもとに発表内容の簡単な要約とそ たい映画についてインターネットなどで調べ,クラ れについての意見を提出する。 スメートに発表しておもしろさを伝えるという課題 ⑸ その他 を与え,クラスメートにもっとも支持された映画を ・会話練習 視聴した。 待遇表現に注意して,頼む,誘う・受ける・断る, ・毎回の授業の最後に学生によるスピーチを行った。 許可をもらう,などの function 練習を行う。 1人5分程度で,テーマは自由に決めてよいものと ・レジュメの書き方 した。このスピーチにについては,T. A. のフィー 評価: ドバックを受けて直した後,最後の授業でもう一度 小テスト,期末試験(筆記試験と口頭発表) ,発表・ 発表した。 課題・提出物などの平常点,授業への参加態度,出席 状況: 工学系・私費クラス *少人数のクラスだったため,口頭発表の回数が多 受講者:9名,担当:鷲見幸美 −58− 日本語・日本文化教育部門 授業のねらい:口頭運用能力,及び,聞き取り能力の 向上を目指す。 工夫・反省: ・インタビューに徐々に慣れ,自信をつけていくこと 授業内容: をねらい,できるだけ多くの人にインタビューをす ⑴ ネイティブスピーカーへのインタビューを行っ るように促したが,インタビューの数は限られてい た。 た。講師が活動に取り組む動機を十分に高めること ・インタビューのテーマ(興味,関心を持っているこ ができなかったこと,及び,受講生がインタビュー と,日本人に聞いてみたいこと),質問項目,イン 相手をうまく探せなかった(依頼しにくかった)こ タビューの相手(複数)を受講生各自が決めた。 とが主な原因であったと思う。今後この点について ・ロールプレイにより,インタビューの練習を行った。 工夫が必要だと感じている。 インタビューの依頼(切り出し),質問の展開のさ ・聞き取り練習は, 「講義を聞いて内容を理解し,ノー せ方を練習するとともに,説明要求,内容確認,話 トをとる」ための練習であることを意識できるよう 題の軌道修正,あいづち等を意識的に行うように促 に心がけ,聞き取りの過程でいかなる問題が生じる した。 か,その問題にいかに対処するかを考えたり,話し ・各自が教室外で行ったインタビューを録音し,それ 合ったりした。多少はストラテジーの意識化につな を授業で互いに聞き合い,評価し合った。 がったと思うが,それによって聞き取り能力が向上 ⑵ インタビュー結果,インタビュー結果を踏まえて したかどうかについては疑問が残る。 の各自の意見を口頭で発表した。 ・発表のためのハンドアウトを作成した。 文章表現 ・ロールプレイにより,質疑応答の練習をした。 文系クラス ・発表を録画し,それを見て互いに評価し合った。 受講生:12名,担当:秋山 豊 ⑶ NHK の教養番組(クローズアップ現代)や報道 授業のねらい:読む力,書く力の養成。脱国家的な地 番組(おはよう日本まちかど情報室)などから,工学 球的問題群のひとつを共通テーマとして取り上げ 部の学生が興味を持ちそうなものを選んで視聴し,聞 る。テーマについての理解を深める過程で読む力, き取り練習を行った。 書く力の向上をめざす。最終目標は,共通テーマに 評価:出席,授業内外の課題への取り組み,口頭発表 精通することである。 によって評価した。 授業の内容: 共通テーマ:グローバリゼーション テーマの理解 言語技能の重点的養成 巨視 微視 産出 受容 1 2 3 ジハードとマックワールド ・情報化の進展と社会変動 ・市場原理の拡大 ・市民の形骸化 読む 精読 書く: 要旨を短文で 読む 4 5 グローバル・キャピタル ・多国籍企業の市場戦略 ・多国籍企業と国家 聞く/読む 大意/選択 書く: 要旨・意見を短文 で 聞く 6 7 グローバリゼーションへの 懸念 ・「画一化」への不安 ・「勝ち組」「負け組」論 ・painstaking と risktaking 読む 速読: 大意/選択/ マッチング 書く/話す: 賛否両論を文章で 読む 8 9 10 11 各国事情(日本) ・負の相互依存 ・「社会の絆」の脆弱性 読む 速読: 大意/選択/ マッチング 話す/書く: 自国事情を文章で &報告 読む/聞く −59− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 12 13 14 (まとめ:レポート作成を めざして) ― ― 話す: レポート構成など を検討 聞く 評価:授業への参加度,タスクシート,レポート るように留意している。学生同士のピア・レスポンス 工夫・反省:授業に積極的に参加し,随時の課題をこ は,大変好評で活発に意見が出され,授業後修正した なしていけば,最終的にレポートの作成につながる 文章を再提出させているが,文章の学習には効果的だ ように工夫する。 と思われる。毎週与えるメールの宿題は, 「アポイン トをとる」「本を借りる」「欠席の詫び」などである。 理系 留学生の教室外の活動をいつも意識しながら学習活動 受講者:2名,担当:村上 を考え,実際に使えることを目指して教室活動を行う 授業のねらい:文章表現能力の養成:レポートの書き ようにしている。 方の基礎を学ぶ 授業内容: 工学系・国費政府派遣クラス ・メール文の書き方:メール文の文例をもとに皆で意 受講者:6名,担当:魚住 見を言いながら添削しあい,実際に教員にメールを 授業のねらい:大学の勉学に必要な日本語運用能力の 出す練習をする。 うち,特に文章表現能力を強化する。 ・資料を読み,意見を言う・まとめて書く:新聞記事 読解力,語彙力の養成と,レポートを書くために必 をポイントをつかみながら読み,要約し,意見を言 う。その後短くまとめた文を書く練習をする。 要な論理的な文章を書くための基礎力を養う。 授業内容: ・レポート・論文に用いられる語彙・表現を学ぶ:「ク 主に,読解,要約,意見,ポイントを整理して書く リティカル進化論」(北大路書房)を用いて,話し 作文練習を中心に行った。 言葉と書き言葉の使い分けや論文に用いられる語彙 ⑴ 読解:新聞 etc. ・表現の練習を行なった。 全員で読んで,ワークシートに答え,内容について ・説明の文章の書き方:操作手続きやものの形状を説 話し合う。その後,要約および意見を書く。 明する文を読み手の視点から点検し,分かりやすい テーマ:名古屋の大学生の活動,名古屋文化紹介,イ 文を書く練習をする。 ラク人質事件,イラク虐待事件,核問題,自然エネル ・レポートを書く:「留学生のための論理的な文章の ギー,コンピューターによる VDT 症候群,日本のロ 書き方」 (スリーエーネットワーク)の文例を分析 ボット しながら,「遺伝子組み替え」「クローン」に関する ⑵ 論理的文章を書くための基礎技術 レポートを仕上げた。 ・原稿用紙の書き方,句読点の打ち方,文体 評価:授業への参加度,タスクシート,レポート ・要約練習 工夫・反省: ・ポイントを整理して書く練習 授業前オリエンテーションにおいて,これまでの日 列挙,原因理由,比較対照などの文について,ポ 本語学習歴のほか日本語学習のニーズや興味のある分 イントを整理して作文を書く。書いた作文は発表し, 野を調べ,Can-do-statements と記述試験で学習者の 相互批評を行う。小見出し・アウトラインの整理の 診断をする。この結果に基づいて,教材や目標設定の 仕方も学ぶ。 調整を行った。 ⑶ 新聞記事の発表練習(インターネット利用) 実際に教師宛にメールを出す宿題を与え,そのメー ・インターネットで各自興味のある新聞記事を探し, ル文を使って,どこをどう直せばいいのかなどをディ ネット上の読解支援システムを利用して読み,要約 スカッションしながら,指導するようにしている。は と意見を発表する。レジュメも提出する。 じめから答えを与えるのではなく,学習者自身の気づ ・レジュメの書き方 きを重視して,後日一人で書くときに自己修正ができ ⑷ その他 −60− 日本語・日本文化教育部門 ・板書文字の読み方 を仕上げた。 ・メールの書き方 参考図書 評価:小テスト,提出物などの平常点,レポート(各 「日本語を書くトレーニング」 自好きな記事1本を読み,要約・意見を書く),口 野田尚史・森口稔 ひつじ書房 頭発表(レポート内容の発表,レジュメ提出),授 「ことばのエクササイズ」 青木三郎 ひつじ書房 業への参加態度 「クリティカル進化論」 工夫・反省:発表した作文などの相互批評を通じて, 互いに刺激しあい,ポイントを整理することに意識 道田泰司・宮元博章 北大路書房 「留学生のための論理的な文章の書き方」 が向きやすくなったのではないかと思う。読解教材 二通信子・佐藤不二子 スリーエーネットワーク としては,学生からイラク問題というホッとな話題 評価:授業への参加度,タスクシート,レポート の要望があったため取り上げた。前年度,非漢字圏 工夫・反省:授業前オリエンテーションにおいて,こ の学生にとっては生の新聞記事を自分で読むことは れまでの日本語学習歴のほか日本語学習のニーズや 大変そうだったため,今年度はインターネットの読 興味のある分野を調べ,Can-do-statements と記述 解支援システムを利用して読ませることにし,負 試験で学習者の診断をする。この結果に基づいて, 担軽減を図った。作文やワークシートなどの間違い 教材や目標設定の調整を行った。 箇所については,教師は指摘するにとどめ,学生が 実際に教師宛にメールを出す宿題を与え,その 授業外で T.A. の助けを借りて自己訂正し再提出さ メール文を使って,どこをどう直せばいいのかなど せる方法をとったが,熱心に取り組んでいる学生も をディスカッションしながら,指導するようにして いたが,全体として学生の負担感が大きくなってし いる。はじめから答えを与えるのではなく,学習者 まったようである。再検討が必要である。 自身の気づきを重視して,後日一人で書くときに自 己修正ができるように留意している。学生同士のピ 工学系・私費クラス ア・レスポンスは,大変好評で活発に意見が出され, 受講者:9名,担当:村上 授業後修正した文章を再提出させているが,文章の 授業のねらい:日本語運用能力の特に文章表現能力を 学習には効果的だと思われる。毎週与えるメールの 磨くことを目指す。文章理解および論理的な文章を 宿題は,「アポイントをとる」「本を借りる」「欠席 書くことを学習する。 の詫び」などである。留学生の教室外の活動をいつ 授業内容: も意識しながら学習活動を考え,実際に使えること ・メール文の書き方:メール文の文例をもとに皆で意 を目指して教室活動を行うようにしている。 見を言いながら添削しあい,実際に教員にメールを 出す練習をする。 1年後期 ・資料を読み,意見を言う・まとめて書く:新聞記事 口頭表現 をポイントをつかみながら読み,要約し,意見を言 文系 う。その後短くまとめた文を書く練習をする。 受講者:12名,担当:村上 ・レポート・論文に用いられる語彙・表現を学ぶ:「ク 授業のねらい:口頭発表やディスカッションにおいて, リティカル進化論」(北大路書房)を用いて,話し 論理的に意見を述べるための口頭練習を行なう。 言葉と書き言葉の使い分けや論文に用いられる語彙 授業内容: ・表現の練習を行なった。 ・ロールプレイによる場面表現練習:依頼・断わり・ ・説明の文章の書き方:操作手続きやものの形状を説 文句を言うなど日常生活で遭遇する可能性が高く, 明する文を読み手の視点から点検し,分かりやすい 対人的な配慮を考えると実際には難しい場面のロー 文を書く練習をする。 ルカードを用意し,録画した画像をもとにみんなで ・レポートを書く:「留学生のための論理的な文章の ディスカッションをする。各自想定会話を書き提出 書き方」 (スリーエーネットワーク)の文例を分析 しながら,各自関心のあるテーマに関するレポート する。 ・提言スピーチ:全員が1人15分程度で様々な内容の −61− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 提言を行い,その意見の言い方やスピーチの構成に ついて聞き手側から評価表に書き込み,それをもと トラインにまとめる。 ・アウトラインを見ながら,ビデオの内容について話 に話し合う。「日本の広告について」 「年金制度」 「オ す。 リンピックと国家主義」「マンガ文化」など各自ふ ・関連する内容についてディスカッションを行う。 だんから関心をもっている内容について調べ,それ テーマ:クマ出没,ネット集団自殺,狂牛病,ひき に対する自分の意見と将来に向けての積極的提言を こもり殺人,中越地震と不安,ヨン様,成果主義, 行った。 スマトラ沖地震と津波 ・ディベート:ディベートに関してその意義や方法, ⑵ ポイントを整理して話す練習 表現など学習した後で,6回分のテーマと担当,審 論理的で分かりやすく話すために,ポイントを整理 判と記録シートの記入法などを決め,毎回1つのテー していろいろな話し方を練習する。 マでディベートを実施した。3人のグループで事前 方法説明の仕方,提言・提案の仕方,論点を整理し に作戦を練り,授業中は約30分でディベートを行い, て行うディスカッション,ディベートなど。その他, 反省の時間を多くとった。「国際結婚」「公共施設の 意見の述べ方,ディスカッションの表現なども練習。 前面禁煙」「安楽死」などのテーマで行われたが, 参考教材:『日本語口頭発表と討論の技術』 すべてビデオ録画し,ディベート後ビデオを見なが ⑶ 口頭発表 ら意見を言い合った。各テーマで討論した内容につ ・自分で選んだテーマ,または与えられた上記ポイン いて意見をまとめて書いてくる宿題が課された。 トまたはテーマで発表。ポイントを整理して話すこ 評価:授業への参加度,録音・録画された口頭表現資 とを課題とする。質疑応答,ディスカッションを行 料,レポート う。レジュメも提出する。 工夫・反省:TA がついたため,ビデオ録画をしても ・授業中にフィードバック。フィードバック後,発表 らえた。デジタル化された録音資料は各自にメール 原稿を訂正し,提出する。 で送られ,フィードバック時に表現や発音などの注 評価:小テスト,期末試験(口頭発表:授業に関連の 意を受けた内容を各自自分で再度確認でき,有効 あるテーマで,国の状況について述べる), 発表・ だった。ビデオ録画は当初恥ずかしいなどと不評で 課題・提出物などの平常点,授業への参加態度,出 あったが,次第に慣れ,授業終了時にはコピーがほ 席状況 しいと多くの学生から要求されるなど抵抗がなく *非常に少人数ではあったが,フィードバックも十分 なったようである。 行え,きめの細かい指導ができた。学生も意欲的で, 確実に課題をこなしていった。また,学生の能力に負 理系 うところも大きいが,ディベートも深みのある内容と 受講者:2名,担当:魚住 なった。 授業のねらい:日本語 (口頭表現) 1での学習を踏まえ, さらに口頭表現能力,聴解能力の強化を目指す。特 工学系・国費政府派遣クラス に,情報をまとめて伝達する能力,ディスカッショ 受講者:6名,担当:西田瑞生 ン能力の向上を目指す。ビデオの視聴を通じて日本 授業のねらい:前期にひきつづき,他の人に対して話 社会への理解を広げるとともに,発表,ディスカッ す能力を高める。1つは,自分の専門について,話 ションの方法などについても学ぶ。 し合ったり,説明したりする能力を高めることであ 授業内容: り,もう1つは,日常生活などおける語用論的にわ ビデオの視聴とディスカッション,ポイントを整理 かりやすい話し方を学ぶことである。 した話し方と口頭発表を中心に授業を行う。 授業内容: ⑴ ビデオの視聴とディスカッション ・「問い合わせをする」 「道の案内をする」 「宣伝をする」 ・ニュースやドキュメンタリー番組のビデオを見て, メモを取り,内容を理解する。 などの様々な場面に関して,適切ではない会話を聞 き,どこが適切でないかを話し合い,よりよい会話 ・メモをもとに,話の内容を整理し,ポイントをアウ −62− (話し方)を考えるという練習をした。 日本語・日本文化教育部門 ・専門的な内容に関しては,数回の個人面接を行った 評価:出席,授業内外の課題への取り組み,口頭発表, 後,ハンドアウトを作り,発表する練習をした。 ディベートによって評価した。 ・専門的な内容の発表に関しても,わかりにくかった 工夫・反省:ディベートは,受講生が予想以上に積極 り魅力的でなかったりする発表を聞き,その理由を 的に取り組み,前後期を通して,最も盛り上がるも 話し合い,よりよい発表を心がける練習をした。 のであったと同時に,最も学びの多い活動であった ・発表のとき気をつけるポイントとして,ナンバリン と思う。後期はディベートを中心とした授業計画を グとラベリング,難しい単語の説明の仕方,身近な たてていたにもかかわらず,その他の活動に時間を 話題との関係などを挙げた。 とられ,担当講師としては準備時間の不足が心配で ・発表のときどのように質問すればよいかも考えた。 あった。しかし,受講生が自分たちの意志で,授業 時間外に集まったり,メール交換をしたりして準備 工学系・私費クラス を進めてくれた。講師と TA で審判をつとめ,勝 受講者:9名,担当:鷲見幸美 敗を決めたが,その結果に対する受講生の反応から 授業のねらい:アカデミックな場面で必要とされる高 も,意欲的に取り組んだことが窺えた。フィードバッ 度な口頭運用能力の向上を目指す。 クの時間が十分にとれなかったことが非常に残念で 授業内容: ある。今期は,受講生の積極性,協調性に助けられ, ⑴ 『大学で学ぶためのアカデミック・ジャパニーズ』 ある程度の学習成果が得られたと思うが,今後ディ (The Japan Times)の一部を用い,アカデミック ベートをする際には,準備の過程に工夫が必要であ な内容を読んだり,聞いたりして,それを正確に, ると考える。 わかりやすく伝える練習,得られた情報を基に,論 理的に考えをまとめる練習を行った。 文章表現 ⑵ 口頭発表を行い,それを録画したものを見て,互 文系 いに評価し合った。発表は2回行い,一回目は発表 日本語(文章表現2)[文系クラス] の内容(正確であること・論理的であること),二 受講生:12名,担当:秋山 豊 回目は発表の仕方に重きを置いた。 授業のねらい:読む力,書く力の養成。脱国家的な地 ⑶ 受講生の協議により決定されたテーマ「人クロー 球的問題群のひとつを共通テーマとして取り上げ ンは人類にとってプラスである」でディベートを る。テーマについての理解を深める過程で読む力, 行った。 書く力の向上をめざす。最終目標は,共通テーマに ⑷ 授業の最初に「まちが絵さがし」 「伝言ゲーム」等, 精通することである。 雰囲気作りのためのアクテビティーを行った。 授業の内容: 共通テーマ:グローバリゼーションと文化 テーマの理解 言語技能の重点的養成 巨視 微視 産出 受容 1 2 食文化: ・マクドナルド 読む 精読 書く: 要旨を短文で 読む 3 4 5 文化産業: ・ディズニーランド ・ハリウッド映画 読む 大意/選択 書く: 要旨を短文で 読む 6 7 アイデンティティーと文化: ・英語支配 読む 精読 書く/話す: 要旨を短文で 読む 8 9 10 11 各国事情(日本) ・英語公用語論 読む 速読: 大意/選択/ マッチング 話す/書く: 賛否両論を文章で &報告 読む/聞く −63− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 12 13 14 (まとめ:レポート作成を めざして) ― ― 話す: レポート構成など を検討 聞く 評価:授業への参加度,タスクシート,レポート インの作成,見出しのつけ方,表現・見本読み他), 工夫・反省:授業に積極的に参加し,随時の課題をこ 各自好きなテーマでレポートを作成。テーマ・目的, なしていけば,最終的にレポートの作成につながる アウトラインを発表し,相互批評を行う。最後にレ ように工夫する。 ポート集を作成。 参考教材: 工学系・国費政府派遣クラス 『研究レポートの方法』『論理的な文章の書き方』 受講者 6名,担当:魚住 学生が選んだレポートテーマ: 授業のねらい:日本語 (文章表現) 1での学習を踏まえ, 「宇宙の存在:イスラム教の見方」「クォークとレ さらに高度な読解力の向上を目 指す。特に,多く プトンの世界」「宇宙太陽発電所」「テレビ」「乗 の資料を自分の力で読めることを目指す。また,レ り物と生活の時代による変化」 「フィリピンの売 ポートが書けるよ うになるために,日本語レポー 春問題」 ト作成の基礎的な書き方を学ぶ。 評価:小テスト,課題・提出物などの平常点,レポー 授業内容: ト(テーマ・材料は各自好きなものを選択),口頭 主に,新聞読解および発表,レポートの書き方およ 発表(レポート内容の発表,レジュメ提出),授業 びそれに関連する技術の練習とレポートの作成を行う。 への参加態度 ⑴ 新聞読解および発表(インターネット利用) 工夫・反省:各種の発表などの相互批評を通じて,互 各自,インターネットで興味のある新聞記事を探し, いに学び合うことができたのではないかと思う。非 ネット上の読解支援システムを利用して読み,分かり 漢字圏の学生にとってインターネットの読解支援シ やすくポイントを整理して内容を発表する。レジュメ ステムを利用して読むことは,より多くの資料を読 も提出する。その後,質疑応答・討論,相互批評を行 み,情報を取る上で助けになったのではないかと思 う。発表者は関連情報も調べ,討論に備える。発表後, う。また,新聞読解やレポートのテーマを自由選択 発表内容をレポート形式にして提出する。その他の学 にしたことで,前期よりも積極的な態度が感じられ 生も同じ記事を読み,発表後,要約を提出する。 た。 ⑵ レポートの書き方および関連技術 ・図表の説明の仕方 工学系・私費クラス 説明の仕方・表現について学び,図表の説明文を書 受講生:10名,担当:秋山 豊 いて,発表する。 授業のねらい:読む力,書く力の養成。脱国家的な地 ・引用の仕方・参考文献の書き方 球的問題群のひとつを共通テーマとして取り上げ ・レポートの書き方 る。テーマについての理解を深める過程で読む力, プリント教材を使って,レポートの書き方の基礎的 書く力の向上をめざす。最終目標は,共通テーマに なポイントを学び(構成,資料の探し方,アウトラ 精通することである。 授業の内容: 共通テーマ:グローバリゼーション テーマの理解 言語技能の重点的養成 巨視 1 2 3 ジハードとマックワールド ・情報化の進展と社会変動 ・市場原理の拡大 ・市民の形骸化 読む 微視 精読 −64− 産出 書く: 要旨を短文で 受容 読む 日本語・日本文化教育部門 4 5 グローバル・キャピタル ・多国籍企業の市場戦略 ・多国籍企業と国家 聞く/読む 大意/選択 書く: 要旨・意見を短文 で 聞く 6 7 グローバリゼーションへの 懸念 ・「画一化」への不安 ・「勝ち組」「負け組」論 ・painstaking と risktaking 読む 速読: 大意/選択/ マッチング 書く/話す: 賛否両論を文章で 読む 8 9 10 11 各国事情(世界・日本・中国・ 韓国) ・負の相互依存 ・「社会の絆」の脆弱性 ・各国事情 読む 速読: 大意/選択/ マッチング 話す/書く: 自国事情を文章で &報告 読む/聞く ― ― 話す: レポート構成など を検討 聞く 12 13 14 (まとめ:レポート作成を めざして) 評価:授業への参加度,タスクシート,レポート 『日本語作文 II』専門教育出版 工夫・反省:授業に積極的に参加し,随時の課題をこ 産業短期大学日本語教育研究会著(1996) なしていけば,最終的にレポートの作成につながる 『研究発表の方法』 ように工夫する。 評価:毎回の授業内での書く作業の課題,参加度によ る。 2年前期 工夫・反省:学生の興味を多くの資料を読むことで絞 文章表現 り込み,後期の論文作成につなげ,共通の話題で全 (文系)火曜1限,担当:鹿島 央 員が書けるようにもっていこうとした。しかしなが 授業のねらい:大学の勉学に必要な日本語運用能力の ら,それほど多くの資料が読めず興味も分散したま うち,特に文章表現能力を強化する。高度な読解能 まに終わった。後期には引き続き,様々の資料を読 力やレポートなどを書く力を養成する。日本社会・ むことから始めた。 時間配分にむずかしさがあった。 日本文化に関する問題を扱った文献等を読んだり, それに対する自分の考えをまとめる練習を通して, 2年後期 他の授業などで役に立つ文章表現能力の向上をはか 文章表現 る。 (文系)木曜1限,担当:鹿島 央 授業内容: 授業のねらい:2年前期で学んだ日本語(文章表現) 以下の3点を授業の柱とした。 をふまえ,より高度な読解力・文章表現力の向上を ⑴ 日常的なメールの作成:指導教官に本を借りる, めざす。さまざまなテーマを扱った文献の正確な読 レポートの提出期限について,コンパにさそう,欠 み取りと,それを通じて日本社会の諸相に関する理 席願い,暑中見舞い,一時期国のあいさつなど,毎 解を深める。レポート及び論文作成のための,論理 回5分程度で書く課題 的な文章の書き方をきめ細かく学習する。 ⑵ 現代日本社会の問題点について,新聞,雑誌など の資料を読むことで内容把握をする 授業内容: 以下の3点を授業のポイントとした。 ⑶ 書くための技術的な方法を確認:句読点,引用, 書き言葉,論文で使うことば,要約など ⑴ 語彙を増やすための練習問題 ⑵ 「論文とは何か」について,序論,本論,結論に 共通のテーマとして,「少子化」をとりあげ,それ ぞれの意見をまとめ,最終レポートとした。 わけて解説し,練習問題をする ⑶ テーマを「日本は豊かか」に決め,自分の立場を 参考資料:新聞,雑誌などの記事 C&P 日本語教育・教材研究会編(1993) 明らかにし,少しずつ授業にそって書く 参考資料:新聞,雑誌などの読解 −65− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 浜田麻里等(1998) か学生には肌で感じ取ることができたように思われ 『論文ワークブック』くろしお出版 る。最終的に提出してもらった論文形式の提出物を 小林康夫,船曳建夫編(1994) 読むとそのことが理解できる。ただ,本論での議論 『知の技法』東大出版 を深めるために,論拠となる資料を収集することが 河野桐子他(2003) 時間的な関係で少しできにくくなり,必ずしも十分 『語彙力ぐんぐん1日10分』スリーエーネットワーク な内容とはいえないことが残念であった。論文であ 評価:毎回の授業内での書く作業の課題,参加度によ るので,このあたりの対応を次回はよく考えて実施 る。 したいと思う。 工夫・反省:今回の授業では,論文がどのようなもの −66− 日本語・日本文化教育部門 短期留学生日本語プログラム 平成16(2004)年度 浮 葉 正 親 ⑶ 開講時間数 : 1.プログラムの概要 短期の4コースではいずれも毎日1コマ, 週5コマ, ⑴ 開講期間 : 一学期合計60コマの授業を行った。 春学期:2004年4月12日㈮−2004年7月14日㈬ 秋学期:2004年10月6日㈬−2005年1月21日㈮ ⑷ 受講者数 : 表1に受講者数を示す。なお最終成績も一覧にして ⑵ 開講クラス : 示した。 JL101(初級前半),JL102(初級後半),JL201(中 級前半) ,JL202( 中 級 後 半 ) の 4 ク ラ ス を 開 講 し 2.プログラムの内容 た。 上 級 レ ベ ル の 学 生 は 全 学 向 日 本 語 講 座 上級1 ⑴ プレースメント・テスト (UW301)または上級2(UW302)のコースを受講し た。ただし,秋学期には JL202に相当する受講者が1 プレースメントテストの受験者数とクラス分けの結 名しかおらず,その受講者は全学向日本語講座中級2 果は表2の通りである。 (UW202)と作文個人指導を受講した。 表1:平成15年度コース別受講者数および最終成績 レ ベ ル JL101 学 期 JL102 春 秋 春 秋 (単位:人) JL201 JL202 UW301 UW302 春 秋 春 秋 春 秋 春 秋 合計 春 秋 通年 総計 韓 国 − 1 1 1 2 1 2 − − − 2 2 7 5 12 中 国 1 7 1 1 − − 1 − 2 2 − − 5 9 14 イ ン ド ネ シ ア 2 1 1 3 − − − − − − 1 − 4 5 9 タ − 1 1 − − 1 − − − − − − 1 2 3 ウズベキスタン 1 − 1 1 − − − − − − − − 2 1 3 イ ギ リ ス − 1 − 1 2 − 1 1 − − − − 3 3 6 フ ラ ン ス − 1 1 2 1 1 − − − − − 2 4 6 イ ド ベ イ ル ギ ツ 1 1 1 1 1 − − − − − − − 3 2 5 ー − − − 1 − − − − − − − − 0 1 1 − − − − − − − − 4 2 6 1 ポ ー ラ ン ド 3 1 1 1 デ ン マ ー ク − − − − 1 − − − − − − − 1 0 1 − − − − − − − − − − 0 1 1 1 7 3 3 6 2 − − − − 13 10 23 ス ウ ェ ー デ ン ア メ リ カ オーストラリア 合 1 1 − 1 − 1 − 計 10 15 15 15 11 9 6 − − − − − 1 1 2 1 2 2 3 2 47 44 91 成 績 A 5 10 11 12 7 9 6 0 2 2 3 2 34 35 69 成 績 B 2 2 2 2 2 0 0 1 0 0 0 0 6 5 11 成 績 C 0 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 2 1 3 不 合 格 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 講 3 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 3 8 聴 3 (注:秋学期202受講者は全学向日本語講座の UW202と作文個人指導を受講した。) −67− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 『現代日本語コース中級I聴解ワークシート』 表2:プレースメント・テスト受験者数とクラス分けの結果 (単位:人) 名古屋大学出版会 春学期 秋学期 (4月7日) (10月1日) 受験者総数 13 101の受講者数 授業内容: 26 ①会話・用法練習 ②談話・文法練習 6 ③聞く練習 ④読む練習 102の受講者数 7 9 201の受講者数 2 8 202の受講者数 2 1 全学向日本語講座上級受講者数 2 2 ⑤漢字セミナー ⑥作文・スピーチ 4)その他の活動 7月と12月に JL102の学生たちが幹事役となって パーティーを行った。パーティーには,短期留学プ プレースメント・テストの結果と学生が受講を希望 ログラム担当専門教官,日本人学生も招待した。 するレベルが食い違う場合には個別に話し合ってコー スを決めた。 3.試験と成績評価 ⑵ コースの概要 シラバスに明記されている評価項目と配点は4クラ 教育内容に大きな変更はなかった。概要は以下の通 スとも以下の通りである。 りである。 Attendance 10% Homework 10% Quiz (Kanji) 10% Class Performance 10% Oral Test (mid-term) 10% ①音声 ②文字(ひらがな,カタカナ,漢字) Written Test (mid-term) 10% ③ディクテーション ④文法ドリル Oral Test (final) 20% ⑤聴解 ⑥ダイアローグ Written Test (final) 20% 1)JL101 教科書: 『A COURSE IN MODERN JAPANESE, VOL. 1, Revised edition 』 授業内容: ⑦コミュニケーション活動 Total 100% 2)JL102 教科書: 『A COURSE IN MODERN JAPANESE, 各コースともほぼ毎日ディクテーションや漢字クイ ズ,宿題を課した。試験は中間と期末に筆記試験と話 VOL. 2, Revised edition』 補助教材:『JL102 コミュニケーション活動』 す試験を行った。 授業内容: 成績は,表1に示す通りである。クラスによって成 ①文法ドリル ②会話 績は違うが,春学期,秋学期とも全体では8割の学生 ③コミュニケーション活動 ④漢字 が総合評価「A」(80%以上)を得ており,「B」(70 ⑤読解 ⑥プロジェクトワーク ∼79%)は数名だった。「C」は春学期2名,秋学期 聴解練習は宿題にし,クラスでは特別な時間を 1名だった。 設けなかった。 4.学生の授業アンケート 3)JL201および JL202 教科書: 各クラスでコース終了時に学生のコース評価アン JL201 ケートを実施した。学生の評価は全般的にきわめて良 『現代日本語コース中級I』名古屋大学出版会 好と判断された。授業内容に応じて質問項目を設定し 『現代日本語コース中級I聴解ワークシート』 ているので,アンケートの内容はコースによって異な るが,各コースに共通して尋ねた質問のうち3つの項 名古屋大学出版会 目について学生の回答を報告する。 JL202 『現代日本語コース中級I』名古屋大学出版会 −68− 日本語・日本文化教育部門 質問1:コースの内容は自分の日本語のレベルに合っていたか。 表3:学生のコース評価 ⑴ (単位:人) 101 102 201 202 合計 春 秋 春 秋 春 秋 春 春 % 秋 % 1. はい,合っていた 7 9 6 7 8 6 5 26 74.3 22 75.9 2. いいえ,少し難しかった 1 1 2 1 1 1 4 11.4 3 10.3 1 1 1 3. いいえ,とても難しかった 4. いいえ,少しやさしかった 1 3 5. いいえ,とてもやさしかった 回答者合計 9 12 秋 2 5.7 1 3.5 1 2 5.7 3 10.3 1 1 2.9 0 35 100.0 29 10 10 10 7 6 − 100.0 春学期,秋学期とも約75%が「レベルに合っていた」 ラスを受講しているケースが多い。本人の希望をどの と回答している。 「少し難しかった」と回答している 程度尊重するのか,という問題が残る。 学生は,プレースメント・テストの結果よりも上のク 質問2:授業の進み方はどうだったか。 表4:学生の授業評価 ⑵ (単位:人) 101 102 201 春 秋 春 秋 1. はい,ちょうどよかった 1 4 3 2. いいえ,少し速かった 6 3 2 3. いいえ,とても速かった 1 2 3 4. いいえ,少し遅かった 1 3 1 5 5. いいえ,とても遅かった 回答者合計 202 春 秋 春 4 5 2 2 4 4 1 1 10 7 合計 秋 春 % 秋 % 5 14 40.0 10 34.5 1 13 37.1 9 31.0 3 8.6 3 10.3 5 14.3 7 24.1 35 100.0 29 99.9 1 9 12 10 10 6 − 授業進度が「速い」と感じていた学生が4割ほどい に対してある程度勉強の圧力をかけること,すなわち たことが分かる。しかし,このことはコースに対する demanding なコースであっても学生たちはそれを肯 満足度(質問3)に影響していないようである。学生 定的に評価していると思われる。 質問3:コースの内容に満足しているか。 表5:学生の授業評価 ⑶ (単位:人) 101 102 201 春 秋 春 秋 1. はい,とても満足している 3 7 4 2. はい,まあまあ満足している 5 5 5 3. いいえ,あまり満足していない 202 春 秋 春 6 7 3 6 4 3 4 合計 秋 1 春 % 秋 % 20 58.8 16 87.5 13 38.2 4 12.5 1 2.9 34 99.9 32 100.0 4. いいえ,全然満足していない 回答者合計 8 12 10 10 10 7 6 − (注:春学期に1名の学生がこの質問に回答していなかった。) 学生たちの満足度はきわめて高い。 「とても満足」 「ま と言える。特に秋学期は9割近い学生が「とても満足 あまあ満足」を合わせると,ほぼ全員が満足していた している」と回答している。 −69− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 ⑵ 日本語プログラム全体の改編とその影響 5.今後の課題 次年度,当センターの日本語プログラムが大きく改 ⑴ クラス分け 編される予定である。短期交換留学生は全学日本語プ 学生たちが本国で学習した内容と本プログラムで学 ログラムの中から,週5コマの「標準コース」ないし 習する内容には違いがある。本国で2年程度勉強して は週10コマの 「集中コース」を選択することになる。 「集 も,場合によっては101から勉強した方がいいと思わ 中コース」を選択した学生が「標準コース」にクラス れる学生もいる。学生の自己評価や受講希望コースと を変えることはできるが,その逆は授業時間の関係か プレースメント・テストの結果が食い違う場合の対応 ら不可能なので,事前によく説明した上でコースを選 はむずかしい。テスト結果だけでなく,学生の希望に 択させる必要がある。これまでのような短期交換留学 も配慮してクラスを決め,修学状況を見ながら最終的 生のクラスがなくなるので,彼らの出席や宿題提出状 にもっとも適したクラスに入るよう個別に指導してき 況等をこまめにチェックすることがコーディネーター たが,クラス分けにはなお一層細心の注意を払う必要 の役割となる。 がある。 −70− 日本語・日本文化教育部門 第5期 日韓理工系学部予備教育コース 李 澤 熊 以下,日本語のプログラムについて報告する。 1.概要 第5期日韓理工系学部予備教育コースは,平成16年 2.期間と内容 10月4日から平成17年3月10日までの6ヶ月間(実 スケジュール 質20週),3名の学生を対象に開講された。このコー スは,工学部入学後,勉学や生活に支障のないように, 10月4日㈪ 歓迎会 日本語運用および専門基礎能力を養成するために行わ 10月5日㈫ 学習オリエンテーション れるもので,日本語に関しては,日常生活に必要な会 10月6日㈬ 生活オリエンテーション 話練習のほか,科学読み物を読む,レポートを書く, 10月7日㈭ 日本語診断テスト 講義形式のまとまりのある話を聴く等の練習が行われ 10月12日㈫ 開講式 る。また,教養科目,日本事情の授業を通じての異文 10月13日㈬ 授業開始 化理解教育も含まれる。専門基礎教育に関しては,数 10月27日㈬ バス旅行(奈良) 学・物理・化学の各科目について,入学後工学部の講 11月8日㈪ トヨタ自動車見学 義を無理なく受講できるように,専門用語の習得を予 12月27日㈪∼1月7日㈮ 冬休み期間 習することを主眼に行われる。このほか,工学部で短 2月1日㈫ 工学部入試のため休講 期留学プログラムのために英語で開講されている入門 3月8日㈫ レポート発表 講義等を受講し,英語で専門分野の講義を聞く訓練も 3月10日㈭ 閉講式 含まれる。 表1.科目別時間および担当者、内容 科目 コマ数 担当 内容 日本語 10 留学生センター教官・謝金講師4名 会話練習・聴解・文法・作文・ 読解・漢字 専門科目 3 工学部教官・謝金講師3名 物理・数学・化学 日本事情 授業見学 2 留学生センター教官・謝金講師 ビデオ・新聞等 課外学習 全学教養科目 1 留学生センター教官 日本人学生との合同クラス 専門英語 1 工学部教官 NUPACE 工学部授業 昨年と同様,5期生は10月初旬に渡日できたため, 表2.時間割 予定通り順調に進んだ。4期生からは予備教育に入る 1限 2限 3限 段階で,すでに大学配置が決まっていたため,勉学へ 月 作文 教養科目 数学 の意欲が低下し,問題となっていたが,今回本学に配 火 読解 文法 物理 置された3人に関しては,そういった問題は見られな 水 会話・練習 NUPACE 専門授業 聴解 かった。 木 聴解 会話・練習 化学 2月末までは,主に教科書による日本語学習が行わ 金 会話・練習 漢字・語彙 日本事情 れた。時間割と主なテキストは以下の通りである。 −71− 4限 会話・語彙 授業見学 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 主なテキスト 発表を行った。 学生が作成したレポートのタイトルは, 会話:「現代日本語コース中級Ⅰ,Ⅱ」名古屋大学 出版会 「睡眠」 「時間について」 「スペースシャトル」であった。 3月8日の発表会には日本語教員のほか,工学部教員・ 聴解:「現代日本語コース中級Ⅰ,Ⅱ 聴解ワーク TAや先輩学生の参加があった。 シート」名古屋大学出版会 作文:「留学生のための理論的な文章の書き方」ス リーエーネットワーク 読解:「大学・大学院 留学生の日本語 読解編」 3.その他 昨年と同様,受け入れに先立ち,9月に韓国におけ る予備教育機関である慶熙大学を留学生センターの職 アカデミック・ジャパニーズ研究会 漢字:「KANJI IN CONTEXT 中・上級学習者の 員とともに訪問した(写真参照) 。その中で,5期生 と面談し,不安に思っている点などに答えた。また, ための漢字と語彙」The Japan Times 名古屋大学での予備教育のカリキュラム・シラバスや 会話,聴解に関しては「プリテスト」「復習シート」 ハンドブックなど印刷物による大学情報の提供を行っ などの補助教材を使用しながら,日本語運用能力の基 た。本学では,従来からインターネットのホームペー 礎を固めることを目指した。3課ごとにテスト(筆記 ジの充実をはかっており,既に学部に進学している テストおよび話すテスト)を行った。 1期生から4期生の学生たちとの交流がインターネッ 作文では,レポート作成に必要な基礎知識を身につけ トのチャットなどを通して活発に行われているが,予 ることを目標に,「要約の仕方」「引用の仕方」「図や 備教育担当教員が直接予備教育機関を訪問できたこと グラフの説明」などについて学習した。 は,学生・教員双方にとって大きな意義があった。 読解・漢字は学部入学後,専門の授業で必要となる 今回の5期生は,受け入れの際は4人であったが, 基礎知識を養成することをねらいとして,漢字の読み 途中1名がコースの辞退を希望したため,予備教育の 書き練習,様々な科学読み物の学習を行った。 修了者は3名となった。辞退の理由は進路変更である。 日本事情では,「博物館見学」「新聞社見学」などの課 本学でコースの辞退を希望したケースは今回がはじめ 外活動を通して,日本の文化を理解した。また,日本 てであるが,今後このような進路変更が理由で辞退す の大学生活に慣れるために,学部や研究室の授業見学 ることがないように,選抜試験の段階で何かしらの工 も行った。 夫が必要であろうと感じた。 最終の2週間は個人指導によるレポート作成と口頭 韓国慶熙大学にて −72− 日本語・日本文化教育部門 第二言語習得研究会全国大会 村 上 京 子 ◆◆ 12月12日㈰ ◆◆ 研究会報告 10:00 【講演】 2004年12月11日,12日第二言語習得研究会全国大会 中島和子氏(名古屋外国語大学) を共催した。当日参加者は260名を超え,大変盛会で 児童・生徒のバイリンガル習得 あった。 【口頭発表】 11:30 第15回 第二言語習得研究会全国大会 日本語論説的文章における指示詞の使用 ―日本語母語話者と日本語学習者の「この」 (留学生センター・第二言語習得研究会共催) 「その」― 浅井美恵子(名古屋外国語大学) 大会テーマ:コーパスを利用した言語習得研究 12:00 2004年12月11日㈯∼12日㈰ 言語転移の可能性と日本語の語彙習得 ―中国語の多義語“開” “看”の典型度に 名古屋大学シンポジオン(名古屋市千種区不老町) 基づいて― 加藤稔人(University of New South Wales) プログラム 13:30 語彙習得におけるインターアクションの役割 ―気付きを導くデバイスとしての役割を ◆◆ 12月11日㈯ ◆◆ 13:00 13:10 15:00 開催校挨拶 中心に― 末松良一センター長 韓成求(早稲田大学大学院) 【講演】 14:00 マレー語母語話者の「初対面の場面」におけ E. Kellerman 氏(University of Nijmegen) る文体の習得に関して Hands across the ocean ―来日前と来日後において― The manual dimension of second language acquisition JAMILA MOHD 【パネルディスカッション】 (名古屋大学大学院国際言語文化研究科) 電子化コーパスを利用した言語習得研究 14:30 司会 村上京子(名古屋大学) 日本語名詞修飾節の習得は普遍的習得難易度 階層に従うか ― KY コーパスの分析から― 学習者コーパスを使った英語の習得研究 大関浩美(東京大学留学生センター) 杉浦正利氏(名古屋大学) 15:15 会話データの分析 ― CHILDES について― 日本語中級及び上級学習者のコミュニケー ション・タスク力分析 ― KY コーパスの 宮田 Susanne 氏(愛知淑徳大学) ロールプレイパートに着目して― 日本語作文コーパス 安井朱美(南山大学生外国人留学生別科) 大曽美恵子氏(姫路獨協大学) 15:45 日本語会話コーパスの分析 準備時間が口頭産出に与える効果 田島ますみ(中央学院大学) ―KYコーパスを使った習得研究の概観― 16:15 鎌田 修氏(南山大学) 17:00 【総会】 18:00 【懇親会】シンポジオン2階 ユニバーサルクラブ 日本語条件表現の習得に見られる普遍的側面 と母語の影響 ―コーパス調査によるプロト タイプ性に基づいて― −73− 堀恵子(麗澤大学日本語教育センター) 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 [日本語・日本文化教育部門資料] 平成16(2004)年度・各コースの担当者 1.日本語研修コース 土 肥 治 美 久 野 伊津子 〈4月期:第50期〉 中 川 康 子 佐々木 八寿子 鹿 島 央 西 田 瑞 生 宗 林 由 佳 大 野 豊 三 輪 柾 子 高 橋 伸 子 神 田 紀 子 向 井 淑 子 高 安 葉 子 村 上 京 子 魚 住 友 子 大 羽 かおり 嶽 逸 子 3.教養科目「留学生と日本ー異 文化を通しての日本理解」 椿 由紀子 土 肥 治 美 加 藤 理 恵 浮 葉 正 親 中 川 康 子 久 野 伊津子 松 浦 まち子 西 田 瑞 生 須 沢 千恵子 田 中 京 子 三 輪 柾 子 高 橋 伸 子 堀 江 未 来 向 井 淑 子 坪 田 雅 子 安 井 澄 江 服 部 淳 4.全学向け日本語コース 松 木 玲 子 〈前期〉 安 井 澄 江 〈夏季集中〉 李 澤 熊 李 澤 熊 尾 崎 明 人 浮 葉 正 親 石 川 公 子 秋 山 豊 鹿 島 央 加 藤 理 恵 石 川 公 子 神 田 紀 子 久野伊 津 子 佐々木 八寿子 魚 住 友 子 佐々木 八寿子 宗 林 由 佳 大 羽 かおり 宗 林 由 佳 高 橋 伸 子 加 藤 理 恵 高 橋 伸 子 高 安 葉 子 久 野 伊津子 高 安 葉 子 嶽 逸 子 須 沢 千恵子 嶽 逸 子 椿 由紀子 高 橋 伸 子 椿 由紀子 坪 田 雅 子 坪 田 雅 子 坪 田 雅 子 土 肥 治 美 服 部 淳 土 肥 治 美 中 川 康 子 松 木 玲 子 中 川 康 子 西 田 瑞 生 安 井 澄 江 西 田 瑞 生 向 井 淑 子 三 輪 柾 子 安 井 澄 江 2.日本語・日本文化研修コース 向 井 淑 子 三 輪 柾 子 〈2003年10月 ∼2004年 9 月: 安 井 澄 江 〈10月期:第51期〉 第23期〉 籾 山 洋 介 〈春季集中〉 〈後期〉 浮 葉 正 親 李 澤 熊 尾 崎 明 人 李 澤 熊 秋 山 豊 李 澤 熊 秋 山 豊 石 川 公 子 秋 山 豊 石 川 公 子 伊豆原 英 子 石 川 公 子 鷲 見 幸 美 佐々木 八寿子 加 藤 理 恵 佐々木 八寿子 −74− 日本語・日本文化教育部門 宗 林 由 佳 6.短期留学生日本語プログラム 高 橋 伸 子 〈春期〉 7.日韓理工系学部留学生日本語 プログラム 高 安 葉 子 浮 葉 正 親 嶽 逸 子 尾 崎 明 人 村 上 京 子 椿 由紀子 宗 林 由 佳 李 澤 熊 土 肥 治 美 高 安 葉 子 三 谷 閑 子 中 川 康 子 嶽 逸 子 八 木 健太郎 西 田 瑞 生 椿 由紀子 廣 瀬 裕 子 三 輪 柾 子 李 善 姫 〈秋期〉 5.学部留学生を対象とする言語 文化科目〈日本語〉 〈前期〉 〈2004年10月∼2005年 3月〉 浮 葉 正 親 尾 崎 明 人 宗 林 由 佳 村 上 京 子 高 安 葉 子 鹿 島 央 嶽 逸 子 秋 山 豊 椿 由紀子 魚 住 友 子 鷲 見 幸 美 西 田 瑞 生 〈後期〉 村 上 京 子 鹿 島 央 秋 山 豊 魚 住 友 子 鷲 見 幸 美 西 田 瑞 生 −75− 日本語教育メディア・システム開発部門 日本語教育メディア・システム開発部門報告………… 村上 京子・石崎 俊子 78 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 日本語教育メディア・システム開発部門報告 村上 京子・石崎 俊子 日本語教育メディア・システム開発部門(JMES) メール添付で送り返すという方法で,14回分の問題が では,2004年度に以下の活動を行なった。 やりとりされた。中級レベルを修了した学習者を対象 に毎週1回600字程度の読解文と問題が送付される。 1.オンライン日本語コースの運営 受講者は文章を読み,語句や漢字の確認,意味理解を 2.オンライン日本語文法学習教材(WebCMJ)の 問う問題に答え,さらに問題文に関連した作文(200 改訂 字∼400字)を書く課題に解答する。前期は7名の学生 3.オンライン漢字コースの教材作成 が登録し,4名の学生に修了証が出された。残りの3 4.Academic Consortium 21(AC21)協定校を対象 名については途中まで解答を返信していたが専門の研 としたニーズ調査 究が忙しくなり中断した者と,レベルが合わない(難 5.日本語・日本文化研修生に対する「日本語情報技 術」授業の担当 しすぎる)ため解答しなかった者がいた。メールのや りとりであったため,学習者に問題の送付がすぐ伝わ り,問題文以外にもやりとりができた。週1回設けた 1.オンライン日本語コース(中上級読解・作文コー ス) オフィースアワーに質問や相談に定期的に来る学生も おり,実施の手ごたえが得られた面は評価できた。 全学の留学生,外国人研究員などを対象に実施して 解答の採点・添削はできるだけその日のうちに返す いる全学向け日本語講座は,受講したいという希望が ことを心がけて進めていったが,1人の教師が学習者 あっても授業時間に他の授業などが重なり、出席でき 一人一人にフィードバックすることは負担が大きい。 ない学習者が多いことがかねてからの問題であった。 より効率的な方策を検討していたところ,情報連携基 2000年の全学留学生を対象としたアンケート(注1) 盤センターから WebCT Vista というシステムの利用 でもインターネットを利用したコースの希望が多数寄 を示唆され,後期から導入することになった。 せられていた。また,全学の教師を対象にした日本語 〈後期〉 教育に関する調査(注2)でも,「作文を指導して欲 WebCT Vista に前期と同様,読解・作文の問題文 しい」,「文章作成スキルを高めて欲しい」という要望 と課題を載せた。質問形式が多種類である WebCT が指導教員の側からも高いことがわかった。 Vista の利点を生かし,語句や漢字の確認,意味理解 このことから,中級から上級への読解能力の橋渡し の読解質問を作ることを試みた。これらは自動採点シ 的な教育,アカデミックな文章を書くスキルの養成教 ステムで学習者に即時に判定が知らされる。しかし文 育が必要とされていることを確認し,これをふまえ, 章の要約,感想・意見を述べる作文については,教員 全学向け日本語プログラムの中に,コンピュータを利 の添削が必要なため,前期と同様に,解答を Word 文 用した授業を開講することになった。希望の多かった 書に移してから,添削を行い,メールで直接学生に返 読解と作文能力の養成と保持を目的に,オリジナルの 却することにした。 読解教材を学習者に配布し,学習者からの解答に対す また,学習者に毎週問題の更新を知らせるために, るフィードバックを返すという日本語読解・作文授業 新たに作成した読解問題が公開されるとともにメール が前期と後期に設けられた。 ツールを利用して学生に問題の更新等を通知する方法 〈前期〉 を試みた。 前期授業期間においては,読解教材と課題を Word 開講時のオリエンテーションには12名の学生が参加 文書のメールの添付ファイルとして学生に配布し,解 した。毎週火曜日に1回分の読解問題を学生に公開し 答を書き込んだファイルを教師が採点・添削し,再び た。理系の学生が多かったため,理系の学生が興味を −78− 日本語教育メディア・システム開発部門 持つような分野の文章を用意した。漢字などについて プ,名古屋大学出版会2002) が出版され,その内容に は,ネット上のリソースで学生が調べることができ あわせて,問題・形式等を全面改訂した WebCMJ(New ることを前提としたので,制限を特に設けなかった。 edition) が公開された。以上の開発は,留学生センター WenCT システムの自動集計を利用することによっ 教員が中心となり,コンピュータ・システムのソフト て,コースを続けて受講した学生は8人で,1回分の 開発業者に一部発注する形でなされてきた。 問題に対して2,3回チャレンジする学生もいたこと WebCMJ(New edition) がわかった。 http://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/~webcmjml/ 情報連携基盤センターのスタッフの協力のおかげ WebCMJ を使用するための説明の文章や問題指示 で,今回はじめて WebCT Vista の利用を試みたが, 文は,2003年の時点までは,英語でのみ表記されてい 問題送付や読解のフィードバックに関しては教員の たが,日本語学習者の世界分布を考えたとき,学習者 負担が減軽したことと,学生が WebCT Vista を使う 人口のもっとも多い韓国・中国の学習者の利便性を配 ことには予想したほどには抵抗がないことがわかっ 慮して,韓国語,中国語(簡体字)・中国語(繁体字) た。今後 WebCT Vista の機能を活かした問題の作成, による WebCMJ 多言語版の開発が2004年度に行なわ フィードバックの仕方を工夫していきたい。 れた。 注1)村上京子(2000)名古屋大学留学生日本語学習 調査「国際化の視野からみた言語文化科目の 2)WebCMJ の特徴 教育改善」報告書 pp. 27-81 国内外の初級日本語学習者を対象にした文法に関す 注2)村上京子(2004)日本語教育に関する全学調査 る問題が20課構成で,合計約2000問の問題が含まれて ―教員アンケート結果報告― http://www. いる。各文法項目につき,穴埋め問題,選択問題,正 ecis.nagoya-u.ac.jp/opinionpoll.pdf 誤判断問題などが出題され,学習者が解答を入力し, 正誤フィードバックを受けた後,要求すれば正答を見 2.WebCMJ の開発と改訂 たり,その課の成績や所要時間を表示できる。そのた 名古屋大学版初級教材の改訂(Course in Modern め,学習者は個人で自習用に使用することもできる。 Japanese vols. 1 & 2, Revised edition)に伴い,1998 無料でいつでも学習ができ,特に海外で学習する学習 年に Web 化した WebCMJ も全面改訂を行なった。 者にとっては有効な学習教材であると考えられる。さ 新しいバージョンでは,これまで実現しなかった成績 らにまた,クラス単位で教師が学習者の成績を管理し の管理システムや多言語(中国・台湾・韓国)版も加え, うる機能も組み込まれているため,授業で運用するこ より充実したものになった。 とも可能である。 1)開発・改訂の経緯 名 古 屋 大 学 出 版 会 か ら1983年 に『A Course in 3)WebCMJ の今後の改善 Modern Japanese Vol. 1 & 2』が出版された。これは 名古屋大学留学生センター日本語 EJ コース, IJ コー アカデミック・ジャパニーズ(大学で用いられる日本 ス,SJ コースで補助教材として使用しており,その 語)の基礎を培うことを目的とし,大学や大学院での 使用報告から問題点を取り上げ改善していく。現在, 活動を主な会話場面とした初級日本語教科書であり, クラス運用時の成績表示の改善案等出されており,検 基礎的文法力と共に,コミュニケーション能力,社会 討中の事項数点に取り組んでいる。 言語学的能力の養成と,音声言語理解力が獲得できる また,海外の学習者・教師からの声にも留意し,で よう編集されている。その文法及び漢字学習補助教材 きるだけ多くの学習者の便宜を図っていく予定であ としてコンピュータ教材CMJが開発された。 これは, る。 当初は stand-alone で動いていたが,その後インター 留学生センター日本語教育メディア・システム開発 ネット発信ができるように改善した。これが1998年に 部門の教員を中心に月に2回前後の検討会を開き,必 完成した WebCMJ(Original)である。 要に応じ業者やアルバイターの支援をうけながら作業 その後,改訂版『A Course in Modern Japanese(改 を進めている。 訂版)Vol. 1&2』( 名古屋大学日本語教育研究グルー −79− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 3.オンライン漢字コースの教材作成 に関するニーズ調査票を協定校の日本語教育担当者に 2005年度からはじまる全学留学生対象「漢字コース」 インターネットを通じて送った。この回答を集計し, の副教材としてオンラインで漢字が練習できるような 今後の開発の方向性を検討していくつもりである。3 教材を作成した。学内の情報連携基盤センターの協力 月現在,まだ未回収の大学が多いが,回収終了後分析 を得て行なわれた。このシステムに関しては,2005年 し,結果をまとめ,公表していく予定である。 度4月公開に先駆け,3月の日本語教育方法研究会で 発表し,他大学日本語教育教員との情報交換を行なっ 5.日本語・日本文化研修生に対する「日本語情報技 た。 術」授業の担当 前年度に引き続き日本語・日本文化研修コースの授 4.Academic Consortium 21(AC21) 協定校を対象と したのニーズ調査 業の1つとして開講されている「日本語情報技術」を JEMS 教員が担当したもので,23期生によるホーム 大学の国際交流に関する中期目標の中でも重要な位 ページ作りを行なった。(http://topaz.ecis.nagoya-u. 置を占める AC21事業の一環として,日本語教育支援 ac.jp/%7Eichinen2003/) −80− 教育交流部門 留学生センター留学生相談室205号室 ……………………………… 松浦まち子 82 学生支援を通した大学・地域社会への貢献 ∼留学生センター相談室(204号室)活動報告∼ ……………………………………………………………… 田中 京子・柴垣 史 89 海外留学室……………………………………………… 堀江 未来・柴垣 史 99 異文化交流実践を授業へフィードバック ………………………………………… 松浦まち子・浮葉 正親・田中 京子 104 Ⅰ 基礎セミナー A(前期開講)「多文化社会を生きる」 Ⅱ 教養科目(後期開講)「留学生と日本−異文化を通しての日本理解」 Ⅲ 大学院授業「異文化接触とコミュニケーション」国際言語文化研究科 (資料)平成16(2004)年度 1.地域社会と留学生との交流 …………………………………………………… 108 2.奨学金採択一覧表(平成15年9月∼平成16年8月)………………………… 110 3.留学生の宿舎状況 ……………………………………………………………… 111 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 留学生センター留学生相談室205号室 松 はじめに 浦 ま ち 子 Ⅰ.留学生相談業務と相談内容 2004年度は,私が室長を併任する「名古屋大学留学 【指導教員・進路】 生相談室」(以下「留学生相談室」と記述)が実質的 博士後期課程6年目の留学生が,学位取得に関して に立ち上がり,どのように運営するかが課題であった。 文部科学省へ直訴の手紙を送ったため,その内容に関 留学生センターの相談室と「留学生相談室」の業務の して真相究明依頼があり当該部局の留学生担当教員に 棲み分けの必要もあった。内容的には,留学生に関わ 調査を依頼した。また,研究に行き詰って研究に集中 る一般的な相談を受けながらも,主として国際理解教 できないが,期待してくれている指導教員にそのこと 育への留学生派遣や地域の人々との交流,さらに留学 を言えずに苦しんでいる留学生から相談があり,学生 生家族の日本語コース運営を「留学生相談室」の業務 相談総合センターと連携して助言した。留学生は勇気 とし,それらに関する日常業務は非常勤職員に委ねた。 を出して指導教員に窮状を話し,さらに相談室担当者 2005年度中にはメンタルヘルス分野を専門とする助教 からも重ねて留学生の状況を説明し先生の理解と対応 授1名(年俸制,任期付)の着任が想定されており, で救われた。進路関係では,短期交換留学生から大学 それによって留学生の精神的適応への支援体制も整備 推薦を含む名古屋大学への再留学の相談や日本語・日 できる予定である。時間配分は,留学生センターの相 本文化研修生から10月以降研究生として名古屋大学に 談時間を月・水・金とし, 「留学生相談室」は火・木 残るための手続きの問い合わせなどがあった。また, としたが,実際には業務増加に伴う会議等で相談室を 国費留学生から協定校への1年間の留学希望があった 不在にすることもあり,相談業務に従事する時間確保 が奨学金支給との関連を説明し時期尚早と断念させ が困難になっているのが実情である。この年報には「留 た。 学生相談室」で受けた相談も含めて記載する。 また,2004年度7月から独立行政法人日本学生支援 【日本語・勉学】 機構(JASSO)の留学生地域交流事業「児童養護施 学位記の公印証明の手続きについて問い合わせがあ 設の児童と留学生のこころの交流と思い出づくり」の り,外務省証明班を紹介した。また,博士前期課程2 企画に関わり,JASSO 職員とともに留学生を巻き込 年生の学生から論文執筆中にパソコンを修理に出すこ んで実施した。これは「子どものこころ」をキーワー とになったため,パソコンを借りたいと相談があった。 ドとした社会性のある有意義な事業であり,2005年3 留学生のチューターに指名されたが,どのような役割 月,JASSO 名古屋支部から報告書が刊行された。 を期待されているのか尋ねてきた日本人学生がいた。 その他,2004年度の特徴的な改革としては,国際交 チューター制度に関しては,名古屋大学院生協議会(名 流会館付き留学生相談主事として就任した1993年以 院協)から総長交渉でチューター制度の整備要請があ 来,毎年4月と10月に行ってきた国際交流会館での入 り,留学生教育交流委員会およびその WG でチュー 居オリエンテーションを10月から担当職員とチュー ター制度を検討しているが,2005年度に向けては4月 ターに全面的に委譲した。さらに,同じく4月と10月 の新学期開始とともに,新入留学生にチューターをつ に行ってきた新入留学生オリエンテーションにおける けることになった。 生活上の注意事項説明の担当を,2005年度4月から留 学生教育交流委員会委員に委譲したことが挙げられ る。 【一時帰国・帰国】 帰国に際して荷物の発送の相談があり,郵便局から 送ることを勧めた。また,留学生の帰国途中,中国で −82− 教育交流部門 乗り継ぎトラブルが起きて名古屋へ送り帰されるとい 2.公営住宅 う事態が生じた。関係者の対応で,翌日には帰国でき 県営住宅に入居している留学生が一時帰国中に,そ たが,その間,すでに日本を出国して有効なビザを の部屋から大量のゴキブリが発生したと近所から苦情 持っていないこの学生は空港に留め置かれ不安な一日 があり,管理事務所からの連絡で所属の留学生担当教 を過ごした。かかった経費は,とりあえず留学生後援 員が母国の留学生と連絡を取り,了解を得て留守宅の 会で立替払いした。また,メンタルブレークダウンし ゴキブリ駆除が行われた。その経費の支払いが留学生 た留学生が一時帰国したが,その学生に関しても急な に求められたが,駆除は1回と思っていたところ実際 帰国だったため必要経費の一部を留学生後援会で貸付 には3回行なわれ,常識的に考えてもかなりの高額 けた。 だった。留学生は1回分の支払いには同意したが,そ れ以上は了解していなかったこと,さらに経済力がな 【入国・在留】 いため支払いできないと相談があった。交渉の末,か インドネシア人留学生から韓国への入国ビザの相談 があり韓国領事館に問い合わせた。また,経済的事情 なり減額してもらい不足分は愛知留学生会後援会の 「緊急援助金」を申請して何とか支払った。 で半年間休学した留学生が,在留期間更新にあたり, 休学中のアルバイト時間数を気にして相談に来た。経 3.社員寮 済的事情による留学生の休学は,日本に滞在している 社員寮の入寮生募集の際には面接を行い適切と思わ 場合には不法就労の危険性もあり,大学の管理責任を れる留学生を推薦し,廉価で安全・清潔な寮で少し 問われるため,どのように対応すべきか今後の課題で でも勉学に専念してもらいたいと思うが,中には勉 ある。 学をおろそかにする留学生がおり退寮してもらった。 「NGK インターナショナルハウスは, 『スタディールー 【宿舎】 ムがありよい論文が書ける』と先輩から聞きました」 1.名古屋大学国際交流会館 と言った留学生がいた。 留学生会館家族室に入居したばかりの学生から,赤 ちゃんがいるのに部屋が汚くて不衛生であるとクレー 4.民間アパート等 ムがあった。前入居者がきれいに掃除しなかったた 4月に向けて,プリマベーラ5室,ブルーハイツ重 め,結果的にはボランティアに掃除をお願いすること の井1室,相生山住宅1室への入居者推薦と契約手続 になった。また,友人等非居住者を宿泊させたいとい きを行った。いずれも留学生に好意的であり長年にわ う希望があったが,規則に従って断った。さらに,レ たってご提供いただいているアパートである。一般の ジデンス近くの路上で,夜,ひったくりがあり留学生 民間アパートの場合には,退去時に高額の請求に驚い が被害をうけたため注意喚起を掲示した。 た留学生が相談に来るケースが時々ある。家主や仲介 2005年度に向けて,職員宿舎である猪高町宿舎の一 の不動産会社に話して,大抵の場合は留学生の立場を 部が改修・整備され研究者宿舎として生まれ変わった。 理解してもらい,金額を最小限に抑えていただいてい 空室に留学生を入居させてもらうことにしたため,少 る。中には大学が機関保証しているため原状回復費用 し留学生の宿舎状況がよくなった。また,留学生会館 は保険で支払われるとの誤解からしっかり請求してく の1階のホワイトベアー退去後のスペースも留学生が るところもあったが,これも話して減額してもらっ 使用できる場所として改修された。 た。一方,借主の留学生の水道料金が急に増え,疑念 名古屋大学国際交流会館では,緊急に避難場所(シェ をもった留学生が相談に来たが,水道管を調べても漏 ルター)が必要な事態に陥った留学生に対して,人道 水箇所もないため,結局は本人が使用したとしか考え 的配慮から空室があれば短期間でも入居させている。 られないケースもあった。理想の宿舎 「プリマベーラ」 例えば,一人住まいの女子学生宅への不審者の侵入や に関しては,昨年度に家賃や電気料金未納等,経済的 ストーカー被害,DV など柔軟に対応している。 トラブルがあったため今年度から機関保証制度を活用 することにし, 入居留学生には「留学生住宅総合補償」 に加入させた。また家主のご理解をいただいて,建替 −83− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 えのため4ヵ月間の宿舎を探していた留学生を入居さ で一歩も前に進めなくなり帰宅してしまう学生がいた せてもらった。アパートにパラボラアンテナを設置し り,さらには DV による心の傷を抱えていたり,他に たいという留学生がいたが,ケーブルテレビ事情に詳 もメンタルブレークダウンを起こした留学生について しい家主や仲介業者が留学生に代わって対応してくだ 報告されている。このような精神的問題を抱えた留学 さった。 生への対応は,1対1でなく周囲の関係者の理解と協 力(チームワーク)が大切であるが,それでも当該留 【奨学金・授業料】 学生所属の留学生担当教員の対応への時間や労力,さ 国費留学生の奨学金延長申請に関して,志望研究科 らには精神的支援には並々ならぬものがあり,担当教 不合格による延長不可の決定があり,留学生からの相 員のおかげで状況のさらなる悪化が抑制されたことは 談を受けて出身国大使館に状況を説明した。また,諸 事実である。 「留学生相談室」に異文化適応を含む留 機関の合併や大学の法人化の影響もあって4月の国費 学生のメンタルヘルスを担当する教員を要望している 奨学金の支給が大幅に遅れたため,問い合わせが多 のはまさにこれら実情への緊急対策であり,留学生を かった。国内採用申請結果を不満に思った留学生が文 受け入れている大学として当然のことと考えている。 部科学省に直訴の手紙を送ったため,名古屋大学の選 考方法を当該留学生に説明した。また,国内採用申請 【生活・適応】 者で採用の可能性が高いことを理由に,当面の必要経 ストーカーのように,ここ1∼2日車で尾行されて 費として愛知留学生会後援会事業「緊急援助金」から いると怯えた様子で留学生が相談に来た。留学生の話 返済を条件に借金した学生がいた。予想通り国費留学 ではいつも同じ車が後をつけているとのこと。病院や 生に採用されたが,あちこちの借金を清算し最終的に 銀行へ寄ってもいつの間にかまた同じ車が後ろにいる は半年かかったが完済した。2月から3月にかけて と気味悪がっていた。留学生は原付きに乗っていて, は,毎年国内採用の申請結果を聞きに来る留学生が1 バックミラーで尾行する車のナンバーを見ていたた ∼2名いる。彼らは何度も何度も相談室に足を運んで め,警察に通報し善処を依頼したところ,結果的には くるが,その様子は必死であり,幸い採用されるケー 車は警察の車だったことが判明した。ひったくり犯人 スが多いので一緒に喜ぶことができるが,万が一不採 に良く似た留学生が疑われていたらしい。警察からは 用だったらどんなにがっかりするだろうかと思う。国 通訳アルバイトを頼まれることもあり,いつもは役に 費留学生から支給期間延長申請書に指導教官の印鑑が 立っているはずの留学生が捜査の容疑者になっている もらえないと相談があり,当該部局留学生担当教員に とは想像もしなかった。留学生の恐怖を思うと笑えな 事情を尋ね善処を依頼した。 い笑い話だった。 学位取得・卒業を控えた博士後期課程3年の留学生 アルバイトというか地域交流というか, 2005年の愛・ から授業料が支払えないとの相談があり,調べたとこ 地球博にかかわって,通訳や市民プロジェクト等への ろ前期の授業料免除許可通知を通年の許可だと勘違い 留学生の参加協力依頼があった。完全にボランティア して,後期の免除申請をしなかったことがわかった。 というものから,交通費が支給されるもの,報酬が支 日本語能力が原因とも思われるが,いずれにしても本 払われるもの等いろいろだったが,できれば交通費は 人責任で友人から借金することを助言するしかなかっ 実費支給してもらいたい。通訳は留学生にとってよい た。中には,どうしても授業料が工面できず未納によ アルバイトであるが,雇用主から留学生の社会人とし り除籍された学生もいた。 てのマナーについて苦情が持ち込まれ,留学生に状況 説明を求め仲裁したこともあった。 【医療・健康】 留学生は奨学金や医療費補助の受け取りのため,銀 異国での生活は,特に最初の頃はホームシックに罹 行口座を開設するが,その際,外国人留学生に対して りやすいが,授業についていけないと落ち込んだ学生 も署名(サイン)ではなく印鑑を使用させたがる日本 が悩んだ末,留学を中断して帰国した。2ヵ月間の日 のやり方には疑問を持った。 本滞在だった。同じく精神的健康に関しては,心理的 留学生の交通事故相談で保険会社との折衝などを相 原因で長期間不登校の学生がいたり,大学へ来る途中 談室が行うことが増えてきている。留学生は自転車で −84− 教育交流部門 被害者の場合が多いが,精神的肉体的ダメージが勉学 を中断させる結果になるため自転車に乗る時は気をつ けることをオリエンテーションで説明している。 留学生の日本での就職に関しては,11月に JAFSA 月例研究会「留学生の日本での就職:現状と可能性」, および12月に愛知学生支援コンソーシアム主催「留学 生就職支援ガイダンス」が開催され,留学生の就職が やっと問題として認識されたように感じた。また,内 定した留学生から日本企業で働くにあたり,ビジネス マナーの講座はないかと問い合わせがあった。 留学生に独自の貸付を行なっている部局があるが, 家族の日本語コース「日本の文化―おりがみ」 申請後時間がかかりすぎて留学生が困惑・困窮してい るため当該部局長に連絡し担当職員に注意をしても 実際のところは不明のままであったが,配偶者が母国 らったこともあった。また,地域のボランティアが留 で就労していることが原因らしいと耳にした。また, 学生にお金を貸したが,留学生と連絡が取れなくなっ 夫婦ともに留学生の二人から,母国で生まれた赤ちゃ たことを心配した貸主が相談室に連絡してきたことも んを急いでいたので在留資格「短期滞在」で連れて来 あった。これは留学生が一時帰国していたことが判明 てしまったが在留資格「家族滞在」に変更できるかと して解決した。 いう相談もあった。名古屋栄ライオンズクラブから支 留学生後援会の一事業として貸付金制度があるが, 援をいただいている留学生の家族のための日本語コー 返済期限切れの留学生に連絡して早く返すよう注意し スは,前期受講生25名,後期受講生47名であり,支援 た。留学生は返済したが,年度末には授業料未納によ 開始の1994年秋から延べ人数にして1,109名の留学生 り除籍となり気の毒だった。元国費留学生が留年など 家族がその恩恵に与った。12月1日のライオンズクラ で私費留学生になった場合,収入の激減と生活レベル ブ例会では崔美那さん(韓国)と陳新さん(中国)が がアンバランスであり,経済的破綻をきたすケースが 日本語でスピーチして日頃の学習成果を披露した。毎 時々見られるため,奨学金を受給している期間にきち 年出席させていただいているこの例会でのスピーチ んと修了できるよう頑張ってもらいたい。 は,受講生にとって晴れ舞台であり,その準備に対す る努力を評価したい。また, 「ひろば」というグルー 【家族】 プが,留学生家族の日本語コース受講中のベビーシッ 「家族呼び寄せ」の在留資格認定証明書交付が立て ターサービスを担当し,授業の前後に受講生と日本語 続けに不許可になり,理由を入国管理局に問い合わせ でおしゃべりする時間を設けて学習した日本語の活用 たが,「個人的に来てもらえば話します」とのことで を支援している。授業最終日は, 「日本の文化紹介」 ということで,地域のボランティアの方々の協力を得 て「おりがみ教室」と「着物着付け教室」を開催し好 評だった。 「家族の日本語コース」の受講生(留学生 の配偶者)が入院したが,その際は日本語教師が病院 へ何度も足を運んでくださるなど献身的なお世話をい ただき大変有難かった。 【地域・交流】 ⑴ 地球家族プログラムは,心機一転して,学内教職 員にホストファミリーを呼びかける案内文書を作成 し,年度末に全教職員に配布した。地球家族プログ ラムでは,ホームステイ,ホームビジットの紹介だ 家族の日本語コース「日本の文化―きもの」 −85− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 けでなく,合気道教室(通年) ,おにぎり講習会(10 せられた。これは2005年3月から9月まで開催され 月),しめなわ講習会(12月)等も行っている。ホー る「愛・地球博」によるところが大きいだろう。留 ムステイに参加した留学生からはとても楽しかった 学生にとっては自分の生まれ育った国を多くの人に と感謝の言葉があった。 紹介できる機会であるだけでなく,日本の社会に対 して何らかの貢献をしているという達成感や満足感 ⑵ トヨタ自動車(株)主催「トヨタ見学会」を8 を得られる機会になっているようだ。ひとたび派遣 月,11月,3月に実施した。11月の第2回目はトヨ された留学生は,その後も国際理解教育に積極的に タ自動車の都合でキャンセルされたため,代替案と 関わろうとして,その後何度か交流活動に出向く傾 して留学生センターの学生(6ヶ月コース,1年 向がある。これは大変喜ばしいことなのだが,その コース)と NUPACE 生に対して,日程を変え二日 一方で国際理解の授業に慣れていない,あるいは国 間にわたって見学会を実施していただいた。また, 際理解の授業を初めて行う学校の中には授業の内容 医学部から8月の見学会に医学研究科の YLP 生全 について十分な検討がなされていない印象を受けた 員を参加させたいという希望が出たため,7月中旬 ところもあった。依頼者が留学生に何を求めている に YLP 生のみの見学会を別途実施していただいた。 のかが見えないことも多く,実際留学生から何をす 3月の見学会は,11月に2回実施したこともあり, ればいいかわからないといった話も多く寄せられ 留学生からの参加が少なかったので,留学生家族の た。依頼者には留学生の熱意や能力を十分に発揮で 日本語コースから約10名参加することができた。結 きるような授業内容を検討していただくと同時に, 局,名古屋大学の留学生に対して5回実施していた 依頼者のニーズに的確に応えられるような下準備が だいたことになった。 できるように留学生にも働きかける必要があるだろ う。 「留学生相談室」は両者のコーディネータとして, ⑶ いけばな教室は,未生流加藤千鶴子先生のご好意 実のある国際理解教育を行えるようにサポートして により,月1回水曜日の昼休みに留学生センターで いきたい。 開催していたが,10月が台風で中止になった後,担 当職員が退職し水曜日開催が困難となって中断した ⑹ 独立行政法人日本学生支援機構から留学生地域交 ままである。4月に留学生センターラウンジで開催 流事業の相談があり,事業「児童養護施設の児童と したときには,NUPACE の学生を中心に14名の留 留学生のこころの交流と思い出づくり」を企画,実 学生の参加があり賑わった。新入留学生を歓迎する 施した。名古屋市内外の2施設への訪問交流に多く 意味でこれら留学生のいけばな作品展を2日間開催 の留学生が応募,参加した。現実社会の厳しさを体 したが,ラウンジが華やかだった。 験し,親と一緒に暮らせない子どもたちにより多く の笑顔を与え,多様な楽しみを体験させ,さらには ⑷ 名古屋栄ライオンズクラブから留学生図書の継続 日本留学という大きな目標を達成した留学生の「夢」 支援の打診があり中央図書館に照会し,2004年度は を話してもらうことで異文化体験とともに希望や夢 30万円,翌年から20万円分の図書を寄贈していただ を持って強く育ってほしいと願うものである。一方, けることになった。これらの寄贈図書は中央図書館 留学生にとっても,経済先進国の先進的な面を勉強 の「留学生コーナー」に配架された。 するだけでなく現実社会に触れることは人間的成長 につながると期待している。留学生の心の豊かさが ⑸ 小中学校の国際理解教育への留学生派遣について 子どもたちを自然に受け入れ,子どもたちのこころ は,「留学生相談室」で担当している。ここでは担 を温かく包むこの活動を広げていきたいと考えてい 当者(白石慶子)からの報告を記載する。後述の〈教 る。 育交流部門資料―地域社会と留学生の交流〉も参考 にしてもらいたい。 ⑺ 愛知留学生会後援会では,留学生支援として「緊 ◇ 地域の小中学校や地域団体から国際理解教育を目 急援助金」事業を行っている。これは,留学生に理 的とした留学生の派遣依頼が月1∼3件の割合で寄 解のある地域の篤志団体からの寄付によって運営さ −86− 教育交流部門 れているもので,『緊急』に経済的困難に陥った私 費留学生に対して援助金を支給している。一人当た りの支給金額はそれほど多くないが,実質的に経済 的困難を軽減することはもちろんであるが,むしろ 留学生からのお礼状によれば「助けてくれる人がい る」 「自分は一人じゃない」と感じて,もう一度頑張っ てみようという前向きの気持ちを引き出すなど精神 的支援の役割を果たしている。この事業は愛知県内 の大学を対象に行われているが,2004年度は15大学 35名に対して総額231万円が支給された。うち名古 愛知留学生会「第40回留学生の夕べ」 屋大学の留学生は17名であった。 関係者の代表として受け取った。 ⑻ 愛知県観光協会が留学生に対し愛知の観光ツアー を毎年実施しているが,2004年度は中部国際空港の ⑶ インドネシア留学生会の2004年度の会長は,工学 開港を待って3月はじめに実施された。 研究科のエフェンディさんだった。2004年12月26日 のスマトラ沖大地震と巨大津波の被害者支援のた 【人間関係】 め,インドネシア留学生会は街頭募金を行い,さら 卒業した元留学生から留学期間中における指導教官 に2005年2月28日に「被災者支援を考える会」を開 の言動に起因する教育責任に関して賠償請求があっ 催した。 た。関係者間で話し合ってきたが,指導教官が定年退 官し未解決のままである。能力,人格ともに優秀な学 ⑷ 愛知留学生会(AFSA)の2004年度の会長は,名 生だっただけに過去に固執していることが残念にも思 古屋大学工学部のニルマル・メータさん(タンザニ える。 ア)で,副会長は名城大学のアスタさん(ネパール) だった。愛知留学生会後援会,ACE などとの合同 【NUFSA・留学生会】 会議を年数回行い,5月のリトルワールドでの新入 ⑴ 名古屋大学留学生会(NUFSA)の2004年度の会 留学生歓迎会,11月の富士山へのバス旅行,12月の 長は,教育発達科学研究科の武小燕さん(中国)だっ 「留学生の夕べ」 ,2月の AFSA 役員歓送迎会が定 た。彼女は NUFSA 役員とともに4月と10月のバ 番化してきたが,いずれも役員たちは忙しい勉強の ザー,6月の名大祭,9月の新潟大学留学生会との 合間をぬってよく頑張ってくれた。特に「留学生の 交流会等を行なった。名大祭では, 「Performance 夕べ」は日本人と留学生の約500名が交流を楽しん for peace」をテーマとして民族衣装でのお国紹介 だ。 に加え,ドイツ平和村への寄付金を集めて留学生が 発信する世界平和への願いとして新聞にも報道され た(2004/05/28中日新聞)。 おわりに 2004年度は「留学生の就職」がクローズアップされ ⑵ 名古屋地域中国人留学生学友会の2004年度の会長 た年だったとも言える。日本の少子化,あるいはグロー は,工学研究科の馬翔さんだった。10月1日には, バル化で日本語が理解でき,日本人や日本社会を多少 中華人民共和国建国55周年を祝って「日中友好感謝 なりとも理解している留学生が優良な人材として注目 と記念の集い」が名古屋市公会堂で開催され,中国 され始めた。特に愛知県では,この地域で学んだ留学 人留学生を支援してきた55名の市民に感謝状が贈ら 生を東海地域の産業発展のために定着させたいという れた。名古屋大学で長年留学生相談業務を担当して 希望もあり,12月,初めて愛知学生支援コンソーシア きた筆者(松浦)もその栄誉に与り,歴代会長から ム主催の「留学生就職支援ガイダンス」が開催された。 手渡される感謝状を中国人留学生に関わるすべての 2005年度には愛知県が国際交流大都市圏構想絡みで留 −87− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 学生向けの企業説明会的事業を企画・予定している。 らに,外国人従業員がいるということは,当然彼らの 一方で,留学生も日本の企業で働くための就職活動の 子どもたちの教育に関する問題も起きてくる。日本の ノウハウやビシネスマナーを含む社会人としての心得 学校教育における教育体制の柔軟性,日本人と同様に を習得したいと考えるようになっている。日本社会で あるいはそれ以上の教育を受けることができる体制が 外国人雇用が進めば職場や地域での異文化衝突は避け 求められている。いろいろな面で開かれた日本が期待 られないと思うが,それは別の視点から見れば日本人 されている。 の国際化のために大いに奨励したいことでもある。さ −88− 教育交流部門 学生支援を通した大学・地域社会への貢献 ∼留学生センター相談室(204号室)活動報告∼ 田 中 京 子 ・ 柴 垣 史 取り合っている,知り合いがいる,という状態になっ はじめに た。 2004年度から,国立大学が法人化し国立大学法人と なった。これまでの活動評価や今後の活動計画のため ⑵ 到着後オリエンテーション(留学生センター所属 の方法や様式について大学全体で模索が続き,それに 学生対象) 取り組むために多くの知恵と時間を要する一年であっ 新入生には, 彼らの名古屋到着時に,留学生センター た。 からの歓迎メッセージとその後の予定を記したパンフ オリエンテーション,ワークショップや日々の相談 レットを,宿舎で待つ ACE(Action group for Cross- 活動を通した学生支援を着実に行うとともに,これま cultural Exchange)から手渡した。到着翌日(平日) での知識や経験を更に学内の国際化に生かすために学 には,地域ボランティアの協力で区役所で外国人登録 内委員会等での活動に力を入れ,また,地域社会にも と国民健康保険加入を行い,この手続きの際使用した 貢献すべく,他機関との連携協力を強化することに重 新入学生の氏名のカタカナ表記を,ボランティアメン 点をおいた。相談室204号室は引き続き田中と柴垣が バーがファックスで留学生センターに送付するという 担当し,継続が力となるよう,惰性に陥らないよう, 方法を続けた。これにより,その後大学で使用するカ 新たな発想を心がけながら教育活動を行った。 タカナ表記が,健康保険等に使用する表記と統一でき るようになった。 後日留学生センターでオリエンテーションを行っ 1.オリエンテーション:情報提供,信頼関係 た。留学生センターオリエンテーションは,事務室に 構築,交流促進 よる書類記入,日本語教育メディア・システム開発部 2002年度の調査結果(柴垣・田中,2003年度『留学 門によるコンピュータ室使用説明,相談室による生活 生センター紀要』,p18−27)をもとに,渡日前から 関係の説明,日本語コースについての説明を,部門間 修了後に至るまでの継続型,交流型,日本語・英語併 で連携して行った。 用型オリエンテーションを充実させた。 ⑶ ワークショップ型オリエンテーション(全学学生 ⑴ 渡日前オリエンテーション(留学生センター所属 学生対象) 対象) これまでのワークショップ型オリエンテーションを 新入予定の学生が,渡日前から留学生センターのス 再編すべく,前期は準備期間とし,引越しについての タッフや学生たちと交流して信頼関係を築いていける 説明会のみ行った。 よう,事務室との協力で渡日前情報を作成,郵送した。 後期には新たな試みとして,次のような点を変更し 同内容を電子メールでも発信し,その後新入予定者, てワークショップを行なった。 学生,スタッフ,等が互いに連絡を取り合った。情報 ・授業と重ならない時間設定を望むというアンケート の中には,在学留学生でその期の情報提供者として登 結果を取り入れ,これまでと異なる時間を設定し 録した学生のリスト及び彼らからの渡日にあたっての た。新学期にはセンター長によるワークショップ, アドバイスを含めた。多くの新入学生にとって,渡日 その後,災害対策室との連携で地震に関するワーク 時には名古屋大学のスタッフや学生の中に既に連絡を ショップ,そして引越し準備の時期に相談主事によ −89− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 る引っ越しオリエンテーションをとり入れ,それ以 ないで当日の都合によって参加を決める学生が多いた 外は,通常授業がない時期に時間を設定した。留学 め,事前の参加人数把握ができないという特徴があり, 生センター内で日本語の春季集中講座が開催されて 準備する側にとっては難点となった。今後改善しなが いる時期の,日本語講座の後の時間に行なうことに ら,日本語の春季・夏季集中コースの時期に行なう方 より,全学の学生たちが出席しやすいように配慮し 式を継続する可能性を検討したい。 た。 ・講師の交通費や材料費,通訳への謝礼の一部が支出 できるよう,わずかではあるが予算を得た。 ・連続ワークショップの時期を「日本週間」と名づけ, 5回シリーズの配布資料を一冊のパンフレットにま とめて使用した。 ・希望する者には受講証明書を発行した。 これまでと同様,ボランティア講師や通訳の協力を 得て,日本文化,日本社会について考える機会とし (資料1/2)。日本人学生や外国人研究者,留学生の 家族,といった様々な身分の人が参加することによっ ワークショップ「日本の習慣とマナー」 て,交流のきっかけともなるオリエンテーションをめ ざした。また,言語習得度の異なる人々が参加できる よう,すべてのオリエンテーションを日本語・英語併 用で行った。 ほとんどのワークショップでは,講師,通訳,進行 役の三者がチェックリストをもとに事前に学外で打ち 合わせを行い,内容についての共通理解を持ったうえ で当日のセッションに臨んだ。 時間帯の変更により,出席者の顔ぶれはこれまでと 異なっていた。これまでは留学生センター所属の学生 の出席が多かったのに対し,今回は他部局の学生や家 族の参加を得ることができた。この場合事前登録をし ワークショップ「華道」 ワークショップ概要 開催日 トピック 講師 通訳 7/13 引越し 松浦まち子(留学生センター) 11/2 日本の技術文化 末松良一(留学生センター) 11/16 地震が来る? 災害対策室/田中・柴垣(留学生 ワンゲ アナンド ムクンド(日本語・ センター) 日本文化研修生) 1/18 引越し 松浦まち子(留学生センター) 2/14 日本の伝統衣装 着物 加藤かつ子(駒きもの学苑) 2/15 書道 2/16 日本の習慣とマナー 2/17 日本人のコミュニケー 堀江未来(留学生センター) ションスタイル 2/18 華道 参加者数 20名 ヌーワー エイ(国際開発研究科) 19名 40名 25名 ラジュディープ セート(国際言文) 14名 藤井尚美(藤井書道教室) ストラヒル イバノフ バストゥホフ (理学部) 20名 勝山峯子(全日本作法会) ディーピカ カウシク(日本語・日本 文化研修生) 18名 13名 ディーピカ カウシク(日本語・日本 文化研修生) 大澤万香(八代流) 19名 (計188名) −90− 教育交流部門 ⑷ ホームページ・電子メールによるオリエンテー ⑴ 相談時間 ション(留学生センター所属学生) これまでと同様,週に7コマから8コマ(1コマは ほとんど全ての学生が電子メールアドレスを持ち, 90分)の相談時間を設定し,その時間内は最低限相談 宿舎や留学生センターで頻繁にメール交信を行ってい に応じることができるようにした。その他の時間も可 る状況から,相談室からの情報提供等を電子メールも 能な時には開室して相談に応じた。 (資料3) 使用して行ってきた。事務・生活情報を適宜発信し, 修了後にも手続き関係の情報,今後の協力願い,など ⑵ 相談件数 を発信し電子メールの利便性を活用した。電子メール 相談室のホームページを見てメールで留学相談や生 による情報提供においては,そのコピーを留学生セン 活相談を発信する人が増え,電子メールによる相談件 ター内の各自のメールボックスにも配付するようにし 数が増えている。昨年度急激に増えたインターネット た。留学生センター全体のホームページ整備の中で, 接続に関する相談は今年度は安定し,情報が整理され 相談室のホームページ充実についても検討している。 てきたことがうかがえる。 ⑶ 相談内容 2.学生個別教育:相談 ◆指導教官 相談室での相談活動を,個別教育と位置づけ,名古 組織変革の時期,大学教員は通常にも増して多忙で 屋大学の留学生に限らず,在学生や他大学へ進学した あった。相談内容からは,十分な時間を使って学生と 学生,地域構成員などの相談に対応した。結果として, 向き合うことができない現状がうかがえる。学生側に 多面的に名古屋大学および地域の国際化進展に貢献す は,共通言語の問題がある場合にはポイントをまとめ ることをめざした。 て書いて見せながら話すこと,メールで簡単に内容を 伝えてから面談すること, などをアドバイスしてきた。 相談件数 相談者 相談内容 日本語研修生 日本語・日本 文化研修生 短期留学生 他学部留学生 他大学留学生 その他 合 計 指導教官 15 0 0 13 10 25 63 勉学 48 13 10 63 0 92 226 帰国・一時帰国 0 0 0 10 0 0 10 入国・在留 0 9 0 41 0 0 50 事務手続き 10 4 0 28 5 0 47 医療・健康 12 20 0 18 2 2 54 家族 21 0 0 36 18 16 91 宿舎 29 0 0 113 59 52 253 適応 5 0 0 26 0 21 52 経済 52 0 0 49 0 10 111 地域交流 0 14 17 16 10 220 277 仕事・アルバイト 0 0 0 0 0 10 10 旅行・クラブ・趣味 0 0 16 15 12 10 53 電話 0 0 0 0 0 0 0 インターネット 0 0 5 9 0 1 15 その他 14 0 0 22 5 9 50 合計 206 60 47 459 121 468 1361 E-mail 556 来訪 /TEL 805 1361 −91− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 また時には,感情的になりがちな口調や文の調子を, センター長及び国際課長の迅速な対応により,学生は 事実を端的に伝え改善を提案するという建設的な内容 無事に帰国できたが,母国に着くまで出入国に際して にすることをアドバイスすることもあった。交渉方法 の注意を促す必要があることを再認識させられた。 の文化差や個人差についてあまり意識していない学生 旅行中に盗難にあった学生があり,パスポート等す や,逆に過剰に敏感になって一歩を踏み出せないで悩 べて盗まれた。入国管理局と連絡しながら再入国の支 む学生があり,コミュニケーションの問題は,どこか 援をした。 で一歩を踏み出すか,譲歩をするか,変化しなければ ◆事務手続き 解決しない問題である。しかしそれは同時に,教員側 市・県民税や国民年金について役所から書類を受け に必要なことでもある。 取ってその処理について相談に来る学生は多い。税金 ◆勉学・研究 についても国民年金についても,住民としての自覚を 留学生相談室がインターネット上にホームページを 持つよう指導しているが,書類の内容についての説明 開設していることから,入学に関する電子メールでの や記入の援助などには知識や時間が必要である。関係 問い合わせが多くあった。また田中が数年前ペルー 機関と連携しながら進めていきたい。 の元日本留学生の同窓会誌に執筆した記事がインター ◆医療・健康 ネット上に公開されているため,これを見て問い合わ 幸い SARS の再流行はなく,関係者は入国・出国 せをするスペイン語圏の留学希望者も多く,電子メー を予定通り計画・実施することができた。癌などの深 ルによる相談件数が増加している。電子メールによる 刻な病気と闘う学生は決して少なくない。関係の方た 問い合わせの対応に,相談員は時間管理と判断力を求 ちの協力を受けながら,相談室としても可能な限り支 められている。 援を続けている。また,精神的に危険な状況になった 入学後数ヶ月で退学した学生が数名いた。入学して 学生もいたが,幸い献身的な友人たちや関係機関の協 みて始めて,留学が自分の希望する道ではないことが 力で危機を脱出することができた。 わかり,進路を変えることにしたというケースである。 留学ビザの残り期間が1年未満の学生が家族を呼び 厳しい選考を通り,様々な事務手続きを踏んで得た奨 寄せたところ,予定滞在期間が1年に満たないことか 学金を辞退する場合には,それなりの責任ある行動を ら家族が国民健康保険に加入できないという相談が するよう指導した。 あった。今後注意が必要である。 学内外において異文化理解等の分野で勉強をする学生 学内外で不審者の出没や路上強盗などの犯罪事件が から外国人留学生へのアンケート調査の協力依頼に関 何件かあり,関係機関により早急に対策がとられた。 する相談が数件あり,留学生センターで掲示するなど ◆家族 の協力をした。 家族の呼び寄せについて,経済的に扶養される必要 ◆入国・在留 がある人以外には家族滞在の在留資格認定証明書が発 入国・在留については, 出入国管理体制の強化に伴っ 行されない例が多く,母国で職業を持つ配偶者が,休 て,引き続き厳しい状況となった。つまり,これま 職して日本で留学生と共に家族滞在するという可能性 では在留資格認定証明書が発行されることが多かった が少なくなっている。このため,同居を望む配偶者は ケースや短期滞在の延長が認められることが多かった 短期滞在の資格で日本に滞在することになるが,滞在 ケースについて,審査の厳格化によってこれが認めら 期間の問題はもとより,健康保険に加入できないため れない例が多く見られた。配偶者と子供の呼び寄せが 通院や入院の際の経済的負担が大きくなる問題があ 認められずに予定変更を余儀なくされた例が多くあっ る。このため母国でしっかりした保険に加入してくる た。相談室としては,友人や先輩など過去の事例を参 こと,確固たる経済基盤を条件に渡日すること,など 考にして入国・家族呼び寄せを計画しがちな留学生に, が必要となる。しかし実際問題としてこれらは留学生 制度や審査基準は常に変更するものであることを伝え の力を超えることもあり,日本留学の質そのものにも るようにしている。 影響を与えることになる。 学生が帰国の際,乗継ぎ手続きのトラブルにみまわ また,子どもと同居を始めたが,時間的経済的に自 れ,日本へ強制的に戻されたケースがあった。留学生 分の能力範囲を超え,その結果苦労をし,周りへ無理 −92− 教育交流部門 な要求をしてしまう学生があった。最近は配偶者を呼 い明細書を見ると,資格外活動許可の規定時間を越え ばずに子どもだけ呼んで同居する場合が見られ,この てアルバイトをしていたことが判明した,ということ 場合の時間管理の重要性を予め認識している必要があ があった。学生たちには,規定時間以上の仕事をする る。 ことは違法であり,違法行為の中ではたとえ相手側に 一方,学内に保育園が設置されることが決定した。 問題がある事件が起こっても解決が困難になることを 認可保育園と異なり保育料への補助はあまり望めない 認識させるようにしている。これは他の件についても であろうが,外国籍の家族の特性も考慮したものにな 同様であり,法律を遵守することの大切さを伝えてい るよう,これまで相談に応じてきた経験をふまえた意 る。 見を今後も伝えていきたい。 ◆電話・インターネット ◆宿舎 インターネットに関する相談は,サービス会社に関す 家主との誤解や考え方の違いについての相談,修繕 る情報提供を求めるもの,サービス解約に関わる相談 範囲についての相談等があった。民間宿舎については, が数件あったが,サービス会社における手続きの簡素 家主に何か疑問や問題があればいつでも学生本人に, 化から,昨年度の相談件数からみれば激減した。 難しい場合は相談室にも相談できるような信頼関係を ◆旅行・クラブ・趣味 築くことを第一とし,文化差からの誤解があるような クラブ紹介,旅行代理店などの情報を求められた。 場合には仲介者として双方の理解を促すよう努めた。 名大のクラブ・サークルについては年度初めに集めた おおよそのことは学生たちと家主たちとの話し合いで チラシ等の情報をファイルし,閲覧してもらい,クラ 解決している。 ブ・サークルへの連絡・参加は自己の責任において行っ ◆適応 てもらうようにした。しかし,実際に連絡先へコンタ 学生の人間関係に関して深刻な事例が数件あり,関 クトしても返事がない,言葉の問題からうまく意思が 係機関と調整のうえ,解決へ向けて多くの時間と知恵 伝えられないこともあり,最初のきっかけをつかむ補 を使った。 助もときには必要となった。 ◆経済 ◆その他 授業料免除が受けられない,奨学金が得られないな 家族へ,家族からの送金方法について,郵便の送り どの状況で,経済的に苦境にたつ学生からの相談は依 方について,クレジットカード申し込みについての質 然として多い。授業料は学生本人が支払うものである 問などがあった。財政貯蓄運用に関心の高い学生もお という基本にたち,経済的に自立するためのアドバイ り,外貨預金等についての情報を求められたことも スをしたり,場合によっては休学帰国や中途退学の可 あった。 能性を検討することもある。一方で,優秀な学生たち 日本のみならず世界各地で頻発する大地震により, に大学独自の奨学金を創設することが,引き続き求め 災害時の対策について関心を寄せる学生も増え,彼ら られている。 の不安を取り除くためにも名大災害対策室との協力に ◆地域交流 よりワークショップで正しい情報提供に努めた。国内 地域からは,留学生の行事参加協力について相談が での大地震への関心が高まる中,スマトラ沖地震津波 あり,また留学生からは地域行事について相談がある。 により,学生の家族,知人,友人に甚大な被害が及び 今年度は全学の「留学生相談室」が中心となってこの 精神的・物質的に打撃を受けた学生が多くいた。大家 点を強化してコーディネートするようになった。諸機 族のうち30名が亡くなった,友人が40名亡くなった, 関や学生たちとの連絡は手間や配慮が欠かせない仕事 など想像を絶する状況があり,母国救済のための活動 であるため,コーディネートする機関ができたことは を行う学生もいた。相談室でも活動へのアドバイスや たいへん心強いことである。近隣地域や町内会との交 広報など可能なことを行なった。 流,連携は今後更に進めていく必要があると考えてい る。 3.学部・大学院教育:授業 ◆仕事・アルバイト アルバイト先からの支払いについての相談時に支払 基礎セミナー(学部一年生)向けの「多文化社会を −93− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 生きる」を前期に開講し,松浦教授が代表者となって 講師との打ち合わせ,資料作成,当日の進行などを行 教員チーム(三宅, 浮葉,田中)で担当し, 柴垣が技術・ なった。 (参加者26名) 資料面でサポート,国際言語文化研究科の大学院生が TA として活躍した。入学後すぐの時期に12名という 小人数で多文化社会について考え発表する機会を持つ 5.学生パートナーシッププログラム のはたいへん意義深いことであると考え,国際交流ア ⑴ 運営,実施状況 ドバイジングの仕事で得た知見をできる限り学生たち 次年度に引き続き,今年度6月末まで専門の知識と に還元し共に学ぶことをめざして授業に臨んだ。(詳 経験のある海外留学室のボランティアスタッフ羽柴千 しくは p.104参照)後期も例年の教養科目「留学生と 都子氏に運営のご助力を頂き,7月から教育交流部門 日本」を継続し,浮葉助教授を代表として松浦・堀江, でそのノウハウと運営を引き継いだ。今年度の日本人 田中の教員チームで学部2年生および日本語・日本研 学生,留学生登録者数,及びマッチング数は下表の通 修留学生の合同授業を担当した。クラスの半数ほどが りである。 外国籍の学生,あと半数ほどが日本人学生であり異文 化交流の機会となった。今期は日本人学生たちの気付 ホスト(日本人学生)登録者数 男性 きと積極性が大きく向上したと思われる。(詳しくは 文学部 p.105を参照)。 女性 1(3) 文学研究科 また田中は,国際言語文化研究科での「異文化接触 合計 10(7) 11(10) 1 教育学部 1 1 1 とコミュニケーション」の授業を通年で担当した。日 法学部 本語教育や国際交流の分野で研究者・実践者となる大 経済学部 学院生たちに,国際交流アドバイザーとして培ってき 経済学研究科 1(1) 1(1) た経験を共有できるよう努めた。15名の受講者の出身 情報文化学部 3(2) 3(2) 情報科学研究科 1(1) 理学部 1(1) 多元数理学研究科 2(1) 国籍は様々で,全員日本語に堪能であったが,第3の 言語として英語を共通語として使用し,理解をはかる (1) 2(1) 2(2) (1) 5(4) 5(5) 1(1) 1(1) 2(2) 2(1) という実践的な授業を行った。英語を母語とする学生, 医学部 第一外国語とする学生,第二外国語とする学生,等, 医学部保健学科 様々な言語能力が混在・葛藤する中での討論や活動は 工学部 7(3) 工学研究科 1(2) (1) 1(3) 18(16) 22(16) 40(32) 男性 女性 合計 非常に興味深いものであった。 合 計 4.地域連携:学外講演,文化交流 1 1 1(2) 2 1(2) 9(3) 留学生登録者数 大学と地域の連携,大学の地域貢献の重要性は益々 増大している。学外で生涯学習センターを中心として 田中が進めてきた市民向けの講座を,今年度は一部留 NUPACE 6 6ヶ月コース 1 1年コース 1 4 5 3 3 1* 2 学生センターとの「連携講座」として行ない,企画の 教育学部 段階から関わりながら職務のひとつとして行なった。 法学研究科 1 経済学部 1 工学部 5 ○2004年5月27日,6月10日,6月24日 生命農学研究科 天白生涯学習センター市民講座「わたしから始まる 言語文化部 3 9 1 1 5 1 1 1 1 国際理解」のうち,第2回∼5回を留学生センターと 国際言語文化研究科 1 4 5 の連携講座「ことばと文字で世界を旅する」とし,そ 国際開発研究科 2 1 3 のうち1回は名古屋大学を会場にして行った。フラン 情報科学研究科 1 1 18 19 37 合 計 ドル語,シンハラ語,ヒンドゥー語を取り上げ,講師 を市内大学に在籍する留学生3名,コーディネーター を田中が担当した。企画の段階から相談室が関わり, ( )は,2004年度にマッチングした数であり,前年度以前 に登録した日本人学生のマッチングも数えた。 *研究員 −94− 教育交流部門 登録にあたっては,交流目的,趣味などを聞き,で また,昨年度から引き続き,日本人学生登録者数は留 きるだけ共通点のある者を紹介するよう試みたが,ホ 学生登録者数を上回ったため,待機者が出た。 スト側の日本人学生の登録者には,目的の一つとして 「外国語(特に英語)のスキルアップ」を希望するこ ⑵ アンケート とが多く,特にパートナーとのコミュニケーション言 これまで,パートナー紹介後,学生から疑問や相談 語に固執する場合,あるいは出身国籍/地域を限定す があれば適宜問題解決のためのアドバイスを行ってき る場合は,留学生パートナーに該当者がいなければ紹 たが,プログラムとして積極的なフォローは行ってい 介が遅れる旨を伝えた。 なかった。 プログラムで提供する「交流のきっかけ」が, 登録から6ヶ月以上のパートナー未紹介者に対し どのような展開を生み,また,どのような問題点を抱 て,登録状況を報告するとともに,登録継続の意志が えているのかを知り,今後の効果的なプログラムの改 あるかどうかを確認するための文書を送付した。これ 良に役立てるため,今年度にマッチングして在籍して は,登録時の学生の興味が変化していないか,学生生 いる学生にアンケートを実施した。設問とその回答の 活が研究や就職活動なので忙しくなっていないか等を 一部を別表で紹介する。 確認するためでもあった。 (文書送付者41名に対し, 登録継続申し出は5名) ⑶ プログラムの今後について 日本人学生の登録者が学部生(特に1,2年生)が 1人のパートナー紹介というきっかけから,自由な 多いのに対し,留学生の登録者が大学院レベルの研究 交流を目指すプログラムとして存在してきたが,登録 生あるいは研究者である場合,マッチングの際に双方 者の中から「交流の仕方が分からない」「他のプログ の交流目的を再度確認し,年齢差があることを了解し ラム参加者との交流の場が欲しい」という意見が多く てもらった上で紹介をしてきたが,年齢差が大きすぎ 寄せられ,パートナー紹介後にも「交流展開」のきっ て日本人学生を紹介できない留学生,研究者がいた。 かけや,異文化コミュニケーションについて理解を図 学生パートナーシッププログラム アンケート結果 (設問)これまでに,どこで,どのような交流をしましたか? *毎週一回昼食,週末は飲みにいく。登山等,名古屋観光 *顔合わせをかねてお昼を一緒にとっただけ *留学生センターで日本語,留学生の母国語の会話 *喫茶店でおしゃべり,私の自宅でミニパーティー * I don’t keep contact with him. He disappeared after the first meeting * We played Shogi a couple weeks ago. But we’ve actually only met twice. (設問)パートナーとなって困ったこと,悩んだことはありますか?あればお聞かせください。また,問題があった時,どのよ うに解消しましたか? *こちらが就職活動時期とかさなり,あまり交流がもてずにいて心苦しい *日本人は本当にいい人ですけどいつも“また会いましょう”と言うのに,日付を決めるのはいつも私だ。最初に,私は忙しかっ たから合える時間が少なかったです。後は彼女は忙しくなりました。でも,自分意志でメールを送ってくれませんでした。私 のメールに返事をしますけど。私と会うには会ったが2回しかではありませんでした。今は私はメールを待つことにしました から待っています。 (設問)プログラムに関して皆さんからのアドバイスや意見がありましたら,どんなことでも構いませんので,どうぞお聞かせ ください。 *もっと相手からの発信があるとうれしいけれど,こちらの英語力も不十分なのでなんともいいがたい。 *1対1の付き合いだとどうしても,息が詰まりがち。プログラムに参加している人たち同士が交流できるような機会があると 面白いと思います。こういったアンケートのようなフィードバックをもう少し行うと,お互いの経験の共有の機会になると思 います。ネット上の掲示板があると面白いかもしれません。 *英語の会話相手を望んでいたが,いないということで残念でした。 * I think it would be better if we could meet more students before setting someone as a partner. Because there are different personalities and some people may not fit each other. * Choose people who are really interested in cultural exchange. *欲を言えば,もう少し年齢が近い人の方が良かったかもしれない。 (日本人学部生に院・留学生) −95− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 るセミナー等を提供する必要性が感じられる。また「1 これらの委員会活動を通して,多学部のスタッフと 対1」という枠にとらわれず,交流目的や言語能力に 知り合い協働する機会を得たのは,今後の教育指導に 応じて,交流の場をグループという形で紹介すること とってもたいへん有益なことだったと思う。 も考えられるが,定期的に交流の場を設けること,登 しかしながら,様々な活動に関わることによって日 録者が全員参加できるイベントを企画するなど,意図 常の相談業務が手薄になってはいけない。土台がしっ 的にグループをまとめる人材が必要である。あるいは かりし,様々な活動がその土台にもさらに栄養を与え ワークショップ,ボランティア等様々な異文化交流プ るような工夫が必要である。今年度は通常よりも多く ログラムと連携しながら,一人一人の目的に適う交流 田中が相談室外の仕事を受け持ち,その結果相談室の の場を提供していくことも必要である。 様々な教育活動を,柴垣が広範囲に担当することに なった。超過勤務やサービス残業にならないよう,ス タッフの志気も向上し自己実現がはかれるような工夫 6.コンピュータ室スーパーバイザー調整 をしながら活動したい。 留学生センター内のコンピュータ室のスーパーバイ ザーとして,所属する学生にコンピュータのシャット ダウン,戸締り,建物全体の戸締り,緊急時の連絡等 おわりに の仕事を依頼した。学生が安全に,責任を持って仕事 2004年6月,留学生センター創設時より12年間教育 を行えるよう,相談室でマニュアルを作成し,学生に 交流部門(元 指導相談部門)を率いてくださってき はチェックリストを提出してもらっている。現在のと た三宅政子教授が,バリ島での生活を始めるべく退職 ころ大きな問題はなく,毎日夜10時までの開室が実現 された。国際教育交流や学生指導,人間性の育成に関 している。 する多くの知見と経験を,大学や国の枠を越えて分か ち合ってきてくださった。これまで共に仕事をするこ 7.学内委員会 とができたことに感謝し,三宅教授から学んだ多くの 今年度,田中は学内委員会に多くの時間を割くこと ことを今後に生かしていきたい。 になった。 大きな期待,夢,緊張を,世界のいろいろな地域か 男女共同参画推進委員会の下にある育児支援ワーキ ら運んで来る学生たちのエネルギーの大きさとダイナ ンググループでは,学内保育所設置をめざして打ち合 ミズムは,驚異的とも言える。そのエネルギーとダイ わせや視察を行なった。候補地選定のために学内の数 ナミズムを受けとりながら相談員も力をもらい,それ 箇所を見学,検討したり,他園を見学してその内容や を還元しながら活動している。 形態を検討したりした。その結果,学内保育園の設置 多岐に渡る教育活動を行いながら,研究も進め論文 が実現のはこびとなり,更に作業を進めている。国際 を発表していくという仕事の中で,時間管理・スケ 貢献型という位置づけの当保育園のために,これまで ジュール管理,特に何を優先し何をあきらめるのかに 留学生や外国人研究者たちとの相談活動の中で培った 関わる仕事の位置づけ,また,スタッフ自身の健康管 知識や経験を生かせるよう願っている。 理が非常に重要である。相談員二人は,家族の病気等 また,全学同窓会の幹事として広報委員を担当し, で欠勤することはあったものの,これまで自身の健康 今年度のニュースレターの編集まとめ役となった。多 上の理由で欠勤したことはないという誇らしい(?) 様な人々の意見をとり入れ,また多様な同窓生に向け 記録を持つ,が油断はできない。今後も無理のない, て発信できるニュース作成をめざして,他の委員たち 着実な,しかもダイナミックで創造的な仕事をしなが と協力して編集・発行した。これも日常の活動の糧を ら教育交流に寄与したい。 還元する場となった。 −96− 教育交流部門 資料1 −97− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 資料2 資料3 −98− 教育交流部門 海外留学室 堀 江 未 来 ・ 柴 垣 史 リンク先のリソースが役に立っている。 はじめに 今年度は, 新たに「イギリス留学説明会」を試みた。 今年度は,海外留学室の担当者が7月1日を区切り これは,ブリティッシュカウンシルより講師を招き, に交代した。6月末をもって退職された三宅政子氏は, 専門家による情報提供を行ったものである。来年度以 1997年から派遣留学支援体制整備を始められ,それは, 降は,同様に各国の留学情報提供機関や関連機関に講 国立大学における派遣留学の組織的な教育支援体制整 師協力を依頼し,定期的な説明会として開催したいと 備の先駆けでもあった。それから8年経った現在,名 考えている。 古屋大学においては,様々な目的で「留学したい」と いう希望を持った学生が情報を収集し,担当者に相談 〈セミナー・説明会・ガイダンス〉 をし,目的を実現させるプロセスを支援する基礎的な ① 新入生生活ガイダンス(一部) 体制ができあがっている。海外留学室を新しく担当す 日 時:4月2日(金) ることになった堀江は,このようにできあがった基盤 場 所:豊田講堂 をもとに,名古屋大学における派遣留学を量的にも質 対 象:新1年生 的にもさらに充実させるべく,海外留学室の活動をよ 目 的:名大における留学と国際交流の機会の紹介 り活発化させたいと考えている。 非常勤スタッフの柴垣史氏は,三宅氏在職時から週 ② 工学部・工学研究科学生対象留学説明会 1回海外留学室業務を担当しており,三宅氏から堀江 (主催:工学部・工学研究科国際交流室) への業務引き継ぎにおいては重要な役割を担ってい 日 時:4月13日(火)16:30−17:30 る。以下に報告する2004年度における活動のほとんど 場 所:工学部1号館1階会議室 は前年度から引き継いだものであり,実施においては 対 象:工学部・工学研究科学生 柴垣氏の経験に支えられる部分が大きかった。 目 的:留学機会の紹介,情報収集・準備教育指導 以下に,海外留学室における2004年度の活動を, 「情 参加者:61名(内訳:別表1) 報提供」「個人相談」「派遣留学生に対する支援」の3 つに分けて報告する。最後に,来年度以降についての ③ 海外留学入門セミナー 課題を提起したい。 日 時:学期中の毎週木曜日 12:15−12:45 場 所:留学生センター201教室 対 象:全学の学生・教職員 1.情報提供 目 的:留学機会の紹介,情報収集・準備教育指導 海外留学室における情報提供活動は,名大生の海外 参加者:101名(年度合計。内訳:別表2) 留学促進と支援の要となる。海外留学室における情報 提供の形には2つあり,説明会やセミナーの形をとる ④ 交換留学(全学間協定)応募説明会 ものと,ホームページや資料提示によるものがある。 日 時:10月5日(火)12:10−12:50 前者の,説明会やセミナーなどを行って積極的に留学 場 所:CALE フォーラム に興味のある学生を取り込もうとする活動は,三宅氏 対 象:全学の学生,交換留学応募希望者 によってアウトリーチプログラムと位置づけられた。 目 的:交換留学 (全学間協定)への応募に関する説明 また,説明会には足を運べないが自分で情報収集を行 参加者:約40名 いたいとする学生には,ホームページにおける情報や −99− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 ⑤ イギリス留学説明会 2.個人相談 日 時:11月30日(火)16:30−17:30 場 所:CALE フォーラム 海外留学室では,学期中相談時間(週約8時間)を 対 象:学内外の学生・教職員,イギリス留学希望者 設け,予約なしで個別相談が受けられるようにしてい 目 的:イギリス留学についての一般的な情報提供, る。それ以外の時間や休暇中は,予約制で受け付けて いる。個別相談を利用する場合,海外留学入門セミナー 質疑応答 講 師:ブリティッシュカウンシル名古屋センター やそれに準ずる説明会などに出席し,ある程度自分の 副所長 Gemma McGoldrick 氏 留学計画に対する考えをまとめ,情報収集を行ってい 参加者:11名(内訳別表3) ることが前提となっている。 2004年度(7月以降),個人相談を利用したのはの べ181名であった。利用者の姿や相談に寄せられるテー 〈ホームページ運営〉 海 外 留 学 室 ホ ー ム ペ ー ジ(http://www.ecis. マは多様である。後に述べるような,交換留学派遣が nagoya-u.ac.jp/abroad)は,昨年度に引き続き,柴垣 決まった学生の手続サポートのような具体的な相談も 氏が中心となって運営した。情報更新を週1回以上行 あり,その場合はこちらで答えを用意する,または情 い,様々な新しい情報を出来るだけ早く,また分かり 報検索の仕方を提示することで解決することが多い。 やすく提供することにつとめた。ヒット件数等は記録 一方,多くの相談は, 「留学したいがどうしたらい していないが,海外留学室主催の説明会や個人相談の いかわからない」というものである。その中でも,実 申込のきっかけを「ホームページをみたから」とする 際の手続がわからないケースもあれば,「自分の進路 利用者が増えている実感はある。また,新入生へのガ において留学をどう位置づけたらいいのか分からな イダンス時など,多くの情報を提供できない場合, 「海 い」「留学したいという気持ちは漠然とあるが,具体 外留学に関するホームページがある」ということだけ 的に進めていいのだろうか」というような,不安や疑 でも伝えておくと,効果があるようだ。 問を抱いているケースもある。そのような場合,つま 来年度には留学生センターのホームページが全面的 り,本人が留学に対する希望と不安と疑問の中で揺れ にリニューアルされることになり,この機会に海外留 ているような場合は別の対応が必要となる。留学した 学情報についても整理し直し,より分かりやすいホー いが,親に反対されている,指導教員に反対されてい ムページにする予定である。 る,など,人間関係上の要因によって本人の留学計画 が前に進まないというケースや,自分の理想と現実の 間で取捨選択が出来ずに悩むケースもある。このよう 〈留学関連資料提供〉 海外留学室では,留学関連資料(図書,留学体験談 な状況に対しては,こちらが答えを用意するのはふさ 報告書,各協定校資料等)をロビーにおき,自由に閲 わしくないため,本人が自分の考えや行動計画をまと 覧できるようにしている。しかし,場所がロビーであ める援助を行うことを主眼としている。具体的には, ることなどから,貸し出しの管理等が行えず,したがっ 基礎的なカウンセリングの手法に基づき,継続的に相 て資料の更新等ができていない状態であった。そこで, 談を行っている。留学の準備から実施のプロセスを進 新たに新規図書を購入し,貸し出し管理ができる体制 めるには,本人の強い意思が必要であり,準備段階で を整えるよう,準備を始めた。海外留学室(104号室) 「自分がやる」という考えをしっかりさせておくこと は限られたスペースであるが,そこに書架をおき,閲 が重要だからである。 覧スペースを作る予定である。また,情報閲覧用のパ 個人相談の他,メールによる相談も増加した。しか ソコンを用意することが出来た。現在の留学情報は, し,メールのやりとりで説明できる事柄には限界があ ホームページ上で最新のものを一次情報源からとって る。メールで送られてくる質問には,行く通りもの文 くることが有効である。またオンライン出願を必要と 脈の可能性があり,本人の意図や希望が見えない場合 する海外の大学も増えており,このようなニーズに対 が多いからである。メールでの相談を入り口とし,説 応できるようになった。 明会参加や個人面談の利用をするよう働きかけている。 −100− 教育交流部門 生命農学研究科 男子1名 3.派遣留学生に対する支援 備 考:NCSU Japan Center の奨学金により,5名 交換留学(全学間協定)を含め,いくつかの派遣留 分までの全額授業料(または10名分半額)が 学プログラムに参加する学生の留学手続のサポートを 免除される。 行っている。今年度は以下のプログラムについて,受 入れ校との協議及び手続支援を行った。また,派遣が 〈木浦大学校夏期研修〉 決まった学生のうち,一部に対し,出発前オリエンテー 期 間:2004年8月2日∼12日 ションを行った。 参加者:法学部 男子1名,女子2名, 工学部 男子1名 ① 留学手続支援 備 考:名古屋大学より4名まで授業料及び宿舎費が 〈全学間協定に基づく交換留学〉 全額免除される。 イギリス ブリストル大学 教育発達科学研究科 女子1名 ② 渡航前ガイダンス フランス グルノーブル大学 〈フランス プログラム8〉 文学部 女子2名 日 時:5月26日(水)12:10−12:50 法学部 女子2名 場 所:留学生センター201教室 フランス ストラスブール大学 対 象:2004年度フランスプログラム8留学予定者 法学部 女子3名 目 的:渡航前情報提供 アメリカ セント・オラフ大学 講 師:プログラム8留学経験者 法学部 女子1名 情報文化学部 男子1名 〈セント・オラフ大学〉 アメリカ 南イリノイ大学 日 時:6月28日(月)16:30−17:30 情報文化学部 女子1名 場 所:留学生センター206教室 アメリカ シンシナティ大学 対 象:2004年度セント・オラフ留学予定者 教育発達科学研究科 女子1名 目 的:渡航前情報提供 アメリカ イリノイ大学 講 師:セント・オラフ大学 Dr.Ito 理学部 女子1名 工学研究科 男子1名 おわりに:今後の課題 アメリカ ノースカロライナ州立大学 〈異文化教育プログラムの開発・実施〉 法学部 女子1名,男子1名 文学部 女子1名 海外留学室での派遣留学支援教育は,留学生相談室 経済学部 女子1名 や短期留学部門で行っている留学生受入れと関連させ 韓国 梨花女子大学校 ることで,総合的な異文化教育プログラムとして発展 医学部 女子1名 可能である。特に,交換留学によって半年から1年間 の留学をする学生にとって,準備期間と帰国直後の整 理期間を十分に活用することで,異文化体験による学 〈ルノー財団プログラム〉 Programme Renault 習を最大化することが出来ると考えられる。このよう 経済学部 男子1名,文学部 女子1名 な視点からの異文化教育プログラムを開発すること (MBA − IP 及び Master Paristech は今年度該当なし) は,留学生の受け入れと派遣に関わる総合的教育支援 を同じ組織で行っていることのメリットを活かすこと 〈ノースカロライナ州立大学夏期英語研修〉 にもなるだろう。 期 間:2004年7月6日∼8月6日 このようなプログラムの具体的な例としては,派遣 参加者:法学部 男子1名 留学生に対する準備教育に短期留学生を組み合わせる −101− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 ことで,お互いの文化理解とコミュニケーション能力 るが,現在の交換留学や夏期研修プログラムへの応募 向上をはかるものが考えられる。堀江が来年度担当す 状況を見ていると,とても多くの学生が積極的に情報 る異文化コミュニケーションの授業においては,短期 を得ているとは思えない。名古屋大学ほどの学生規模 留学生だけでなく一般学生にも門戸を開くことで,留 があれば,現在の交換留学の競争率はもっと高くても 学予定者が英語による授業履修を経験し,また異文化 よいはずである。 コミュニケーションの理論学習を,留学生との議論を 一方,留学したいと思い始め,情報収集を始めて見 通じて実践的に体得することを目指す予定である。ま たものの,実行するには時間がなさすぎるというケー た,短期留学生にとっては,日本人学生と深い議論を ルがある。例えば,交換留学に応募したいが TOEFL する貴重なチャンスとなることを期待している。 を受けていないために応募が間に合わない,などとい 同様に,授業外でもこのような活動を促進すること うケースである。これは,半年でも早くから準備のス が考えられる。留学生の受入れサポートに留学経験者 テップを理解していれば,容易にクリアできる問題で や留学予定者が関わることは,自分が経験したことや ある。したがって,ただ情報を与えるだけでなく,そ これから経験することとの関連から,より高い共感が れが準備に十分間に合う時期でなければならない。新 可能であるし,留学生にとっても心強いサポートが与 入生へのガイダンスにおいて10分間の説明時間をいた えられるのではないか。同様に,帰国報告会を開催し, だいているのは, こういう点から非常に有意義であり, 帰国前の留学生のリエントリーショック対策とするこ ありがたい。 とも考えられる。さらに,このような一連の活動を一 より多くの留学希望者が何らかの形で目的を達成で 般学生にも開放することで,内なる国際化を部分的に きるようにしたい。また,交換留学への応募者が増え 促進することが可能となる。 ることで留学交流を質的にも量的にも拡大したい。そ また,当然ながらこのような活動を行うには,短期 のためにも,まずは海外留学室の活動と,名大におけ 留学部門や教育交流部門留学生相談担当者との情報交 る留学の可能性そのものについて広く周知する働きか 換と緊密な連携が必須である。 けが必要である。 〈海外留学室についての広報活動〉 〈危機管理体制の整備〉 名古屋大学においても,中期目標等で見られるよう 海外留学・渡航に関する危機管理体制の整備もま に,派遣留学の促進は重要課題となっている。留学促 た,全学的な取り組みが必要な課題である。今年度は, 進には全学的かつ長期的な取り組みが必要であるが, 国際課と留学生センターの共同で,派遣留学生データ 海外留学室としてまずしなければならないことは,海 ベースの開発に着手した。これにより,交換留学生以 外留学室の活動そのものを学生,教職員の間で広く周 外の海外渡航情報についてもまとまったデータを用意 知することと考える。海外留学室の認知度がどのくら することが出来,海外における事件や事故発生時にお いあるのか全く想像もできないが,決して高くないだ ける学生の安否確認のために活用できる。 ろう。 一方,危機回避のための教育も重要である。今年度 どのようなレベルであれ,「留学したい」と思い始 までは,行き先別の渡航前オリエンテーションはいく めた学生がそのまま漠然とあきらめるのではなく,少 つか行ってきたが,総合的なものはまだない。異文化 しでも具体的な行動を起こすことが出来るように,サ 適応やコミュニケーション,心身の健康管理について ポートする必要がある。海外留学室の存在を知ってい の注意などに加え,危機回避についての教育を渡航前 れば,少なくともホームページを見たり,入門セミ に行うことは派遣を行う大学の責任でもある。来年度 ナーに出席するという第一歩を起すことができる。そ 以降,このようなプログラムの開発と実施に着手した のような第1歩を踏み出している学生は,ホームペー い。 ジや各部局での掲示にも注意を払っていると考えられ −102− 教育交流部門 表1:工学部・工学研究科「派遣留学についての説明会」参加者内訳 1 男 人 数 2 女 13 合 計 男 15 13 3 女 男 5 6 20 4 女 男 13 6 M1 女 男 1 5 M2 女 男 D1 女 1 14 男 D2 女 1 5 男 D3 女 男 女 1 1 合計 男 女 55 1 1 6 61 表2:海外留学入門セミナー参加者内訳 総計 文学部 13 文学研究科 2 教育学部 4 教育学研究科 1 法学部 7 法学研究科 2 経済学部 12 経済学研究科 1 1年 男 女 1 4 2年 男 3年 女 男 女 5 1 2 4年 男 女 M1 男 女 M2 男 D1 女 男 D2 女 男 D3 女 男 女 他 男 女 2 11 2 2 2 1 1 2 2 1 1 2 1 4 1 4 1 2 2 1 1 2 1 情報文化学部 7 1 理学部 6 1 医学部(医学科) 2 2 医学部(保健学科) 1 4 2 2 5 1 1 7 5 1 1 1 6 1 2 1 3 3 理学研究科 2 1 1 医学研究科 工学部 22 8 2 2 4 1 4 1 4 1 18 4 1 9 工学研究科 農学部 10 生命農学研究科 1 国際開発研究科 3 情報学研究科 2 5 1 1 2 1 3 2 2 多元数理科学研究科 国際言語文化研究科 1 環境学研究科 4 小 計 合 計 101 1 17 13 6 17 11 6 9 5 1 2 1 1 3 6 4 3 1 30 23 17 14 9 7 1 1年 2年 3年 4年 M1 D1 D2 文学研究科 1 法学部 1 理学部 2 工学部 1 農学部 1 国際開発研究科 1 環境学研究科 1 その他 2 小 計 合 計 11 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 その他 女 男 女 1 1 2 1 1 1 1 1 2 2 2 0 1 1 0 1 1 0 0 2 2 −103− 0 1 1 1 1 0 0 1 1 51 101 表3:イギリス留学説明会参加者内訳 総計 3 50 1 0 2 2 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 異文化交流実践を授業へフィードバック 松 浦 まち子 ・ 浮 葉 正 親 ・ 田 中 京 子 Ⅰ.基礎セミナー A(前期開講)「多文化社会を 生きる」 6/17 発表準備(Power Point 作成) 6/24 レポートを書く時の留意点と文献検索方 法,発表準備 1.授業のねらい 7/1 発表と討論 外国文化を持って日本で暮らす人々に焦点をあて, 7/8 発表と討論 彼らの視点を通した日本を知ることによって,日本社 7/10 発表と討論 会の課題に気づき,様々な文化を持つ人々が共に生き 7/15 発表と討論 ることについて考えた。 7/22 まとめ 3−2 口頭発表テーマ 2.受講者及び講師 ・世界の競馬 開講2年目の授業で,受講生は12名(内訳:文学部 ・韓国での日本文化の開放 2名,教育1名,法学部2名,経済学部1名,情報文 ・ドイツシュタイナー教育 化学部1名,理学部2名,工学部1名,農学部2名), ・社会主義国の政治 TA は国際言語文化研究科の Elitsa Marinova(ブル ・見えない文化の違い ガリア出身留学生)だった。ゲストスピーカーとし ・ネイティブアメリカン て稲垣達也・アイダご夫妻(5/13) ,姜信和氏,原 ・外国人が見た日本(日本人) 田芳裕氏,岩田梓氏(以上5/20) ,張玉玲氏(5/ ・JAZZ の多文化性 27),岩村ウイリアン雅浩氏(6/10)に参加しても ・移民を考える∼オーストラリア編 らった。平成16(2004)年度は,三宅政子,浮葉正親, ・ドイツの音楽文化 田中京子,松浦まち子(責任者)の4名が担当した。 ・日泰寺とタイ ・世界のマナー 3.授業内容等 3−3 レポート集 3−1 スケジュール 日本人学生は口頭発表より自分の意見を文章にする 4/8 オリエンテーション,自己紹介,プレゼン ほうが得意と感じる。レポートはどれもよくできてい テーション実演 た。担当教員全員が学生一人一人にコメントを書き, 4/15 自分と異なる文化を持つ隣人について それをまとめてレポート返却時に各学生に渡した。受 4/22 TA の出身国「ブルガリア」を学ぶ 講生が12名と少数であるからこそできるきめ細かい指 5/6 効 果 的 な プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン,Power 導である。さらに昨年度同様「レポート集」を作成し Point とは何か? て配布した。 5/13 国際結婚した人たちの暮らしを詳しく知ろ う(ゲストスピーカー) 4.評価 5/20 在日韓国人の人たちの暮らしを詳しく知ろ う(ゲストスピーカー) き,それぞれの立場から話をしてもらい,その後全体 5/27 在日華僑の人たちの暮らしを詳しく知ろう (ゲストスピーカー) で意見交換した。テーマは⑴国際結婚,⑵在日韓国人 やその血筋の人々の暮らし,⑶在日華僑の人々の暮ら 6/10 在日ブラジル人の人たちの暮らしを詳しく 知ろう(ゲストスピーカー) このゼミでは、ゲストスピーカーを4回延べ7名招 し,⑷在日ブラジル人の暮らしの4つである。毎回学 生に感想を書かせる宿題を与えたが,とりわけ在日韓 −104− 教育交流部門 国人のあり方については大きな反響があった。ゲスト よかったです。充実した授業だったと思います。 スピーカーが熱意を込めてありのままの気持ちをさら け出してくださったことが学生に伝わったものだが, 学生の純粋な受け止め方に感動した。わずか数ヶ月の ことで,学生の視野が広がっていく様子に教育効果の Ⅱ.教養科目「留学生と日本―異文化を通して の日本理解―」浮葉 正親 すばらしさを実感した。また,TA は留学生を採用し, 1.授業のねらい 日本人学生が地域の多文化の一端を担う留学生の存在 外国人留学生と日本人学生が討論や協同作業を通じ を身近に感じるよう配慮した。 て,両者の日本に対する理解と相互の理解を深めるこ 来年度への反省点は,学生のテーマ決定に制限を設 とを目的とする。名古屋大学内およびこの地域で異な けなかったため,地域の多文化という視点が抜けて, る文化を持つ人々が共に学び生きることの意味を考え 異文化であればなんでもありのようなテーマが見られ 直し,多文化共生のあり方を模索する。 たことで,そのため来年度はゲストスピーカーの話に 基づくテーマ設定を指導予定である。また,わずか12 2.受講者 名の受講生でありながら,いつも,学生とゲストスピー 学部生は29名(日本人学生28,学部留学生1) 。受 カー,学生と教員という1対1の関係性が多く,学生 講生の学部別内訳は,文学部3,教育学部3,法学部 同士の親密化が思うほど進まないため,クラスの雰囲 6,経済学部3,理学部1,工学部6,農学部4,医 気の緩和策として来年度はグループ発表を導入するこ 学部3である。学部留学生の国籍は中国である。これ とを考えている。 に10月に渡日した日本語・日本文化研修生21名(中国 【参考】学生からのコメント(アンケート自由記載欄 4,インド3,ベトナム2,ウクライナ2,ポーラン より) ド2,韓国1,タイ1,インドネシア1,イタリア1, ★ この授業は毎回考えさせられることばかりですご ウズベキスタン1,ブルガリア1,ルーマニア1,ブ く勉強になりました。多文化共生社会というのは, ラジル1) ,日韓共同理工系留学生3名を加え,日本 私にとってもすごく興味のある分野で,本当に難し 人学生28/留学生25,計53名で授業を行った。 い問題ですが,この基礎セミナーを通して,そうし 平成16(2004)年度は,浮葉正親,田中京子,松浦 たことについてじっくり考えることができました。 まち子,堀江未来の4名がこの科目を担当した。全14 ありがとうございました。 回の授業内容と担当は以下のとおりである。 ★ 異文化について直接いろいろな話(体験談など) が聞けたし,みんなのいろいろな意見が聞けて,自 3.授業内容 分の視野を広げることができてよかったです。 3−1 スケジュール及び担当者 ★ 在日韓国人の方や在日中国人の方など様々な方の 10/4 オリエンテーション(1)(全員) ゲスト講演が百聞は一見に如かずで,とても現実味 10/18 オリエンテーション(2)(全員) を持って聴けてよい勉強になった。ただ教材だけで 10/25 異文化との出逢い(田中) 学ぶよりも深く印象に残り,問題意識の根付きと 11/1 在日留学生と日本社会(松浦) なった。TA の方のサポートも微に入り細に入り大 11/8 異文化コミュニケーション(堀江) 変よくサポートして頂いた。プレゼンでは,自分の 11/15 グループ活動について(浮葉) 社会に対する関心,興味を改めて確認できたと同時 11/22 グループ発表準備(全員) に他の学生の関心もよく理解できて面白かった。特 11/29 グループ発表準備(全員) にあらゆる学部から学生が来ていたので興味深かっ 12/6 グループ発表と討論(全員) た。 12/13 グループ発表と討論(全員) ★ 毎週毎週違う刺激があってとても楽しい授業でし 12/20 グループ発表と討論(全員) 1/17 ケースから学ぶ異文化(田中) た。 ★ 基セミの授業は私が前期にとった授業の中で一番 面白かったです。アットホームな感じがとても心地 1/24 留学体験について考える(堀江) 1/31 まとめ(全員) −105− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 3−2 グループ発表のテーマ のフィードバックで自分と似ていることを感じた人, グループ1:日本人とお化け 逆に気づかなかったことに気づいた人がいる,という グループ2:日本の結婚事情―非婚・晩婚化と言わ ことが分かってよかったです」とあり,不満や疑問に れているが― 感じていたことを相対化するよい機会となったようで グループ3:なぜ日本人は英語を話せないか? ある。そして,グループ内のコミュニケーションのあ グループ4:日本の結婚式事情について―タン&ア り方を異文化間コミュニケーションの理論から捉え直 ンナの結婚式編― す講義を行い,状況をよく観察することの大切さ,他 グループ5:日本語のあいまいな表現について 者を評価することの難しさ,危うさ等を確認した。次 グループ6:男女の言葉はなぜ違う? 年度もグループ活動のフィードバックを必ず実施した グループ7:レディーファーストと日本 い。 グループ8:バイトについて Ⅲ.大学院授業「異文化接触とコミュニケーショ 4.評価 昨年に引き続き,グループ活動に対する評価を重視 し,全体の40%(発表30%+自己評価10%)とした。 ン」:国際言語文化研究科 日本言語文化専 攻応用言語学講座(担当:田中京子) その他は,レポートが30%,出席10%,クラス討論へ の参加度10%,宿題提出10%である。グループ発表に 2003年度に開講した科目を,2004年度も継続した。 対する評価は,五つの評価項目を作り,4名の教員に よる評価を15%,他の学生による評価を15%とした。 1.授業のねらい 結果的には,どのグループも積極的に発表に取り組み, 母語や背景となる文化が異なる人たちが,意思疎通 24∼27%を獲得した。発表のなかには演劇を用いたグ をはかりながら共に生活しようとする時,どんな創造 ループが3つあり,インタビューやアンケートによる や衝突があるか,文献購読や経験学習,討論を通して 調査の結果をパワーポイントにまとめたグループも多 考え学ぶ。 く,全体に工夫が感じられた。 コースの中では,共通言語として英語を使用して話 ただし,グループ活動に対するアンケートには次の し合いや実習を行うことによって,言語能力が様々な ような感想も書かれていた。「留学生の疑問に答える 人たちの間のコミュニケーションの特徴を実体験し, 他の日本人学生が固定観念の固まりで,誤解を招かな 積極的で公平なコミュニケーションについて考察す いようフォローしなければならなかった。また,細部 る。 にこだわって全体が見えない,あまり話し合いに参加 しない,いつまでたっても『結局どうしよう』しか言 2.受講者 わないなど,私自身はグループに対してかなり不満を 国際言語文化研究科日本言語文化専攻・多元文化専 持った」 。教員の目の届かないところで,学生たちは 攻の大学院生12名,他研究科の大学院生,研究生など 慣れないグループ活動に葛藤を感じていたのだろう。 含めて,16名が受講した。学生の出身国は6カ国,地 17年度は,グループ発表終了の2週間後,グループ 域は東アジア,南アジア,アメリカ,ヨーロッパに渡っ 活動での体験を話し合った。留学生からは,「話し合 ていた。 いの中で分からない言葉があっても,話の流れを止め てしまうので聞きにくい」とか,「知っている単語の 3.TA 意味を何度も確認されて嫌だった」という感想が出さ 今年度は TA 予算がつき,教員と TA の二人三脚 れる一方,日本人学生からは「留学生の日本語の間違 で授業の内容を深め,学生に還元していくことができ いをどの程度直していいのか分からない」という感想 た。 が出された。また,グループ全体のまとまりを重視し 前期:教育発達学研究科 博士後期課程 中島葉子 たグループと発表の内容の精度を重視したグループが 後期:教育発達学研究科 博士後期課程 ラセガー あったことも分かった。その授業の感想には,「今回 −106− ド・ジェームス 教育交流部門 TA は異文化コミュニケーションを専攻しており, について全員が話し合い,更に,内省してそれをまと レポートへのコメント,参考文献の紹介,授業への参 め,伝えるという作業を通して,学習内容が深まった。 加,発表などを行なった。 しかし全員討論の場では自然,英語の運用能力の高い 参加者が多く発言するという状況が起こりがちで,そ 4.授業内容 の場合全体の意見もそちらへ傾く,という傾向が感じ ⑴ 経験学習(疑似体験学習,ロールプレイ等) られた。 ⑵ 事例考察 コース後の学生による評価では,異文化についての ⑶ 討論 学びが多かったという面以外に,言語力による影響力 ⑷ 文献購読(宿題) の差についても触れられていた。「自分がクラスをハ ⑸ 文献についてのレポート(宿題) イジャックしていなければよいのだが…」「言語能力 ⑹ 発表(事例作成,討論進行) が低い人ももっと積極的に発言してほしかった」 (英 語母語話者) ,「自分がこれほど寡黙なこともあるとは 5.評価 思わなかった」 (英語中級者) 。また, 「たまたま参加 教員はこれまで行ってきた国際交流関連業務や留学 者に恵まれていたので多く学ぶことができたが,参加 生相談の中で培った異文化コミュニケーションに関す 者の質によってはこうはいかないと思う」と,討論の る経験や知識を,個別教育(相談)だけでなく授業の 難しさを実感したという意見もあった。しかしコース 中でも生かすべく積極的にとり組んだ。また,この授 の内容を消化しきれずに終わった学生が数名いたかも 業を逆に個別教育に還元して相談活動を発展させるこ しれない。彼らからは評価を提出してもらうことがで とも意識した。留学生センターでの活動の独自性を活 きなかった。 かし,大学院教育に貢献できたと思う。 今年度もセクシュアルハラスメント相談所に1コマ 参加者にとって,母語であったり,第2,第3の言 研修をお願いした。ジェンダーの問題を扱う内容は, 語であったりする英語を使用することは,英語運用能 コース内容に深く関連するものであったが,苦情処理 力の初中級者から母語話者までが混在するグループで 方法,相談所の説明はコースの目的と異なっており, いかに共通理解をはかるかを考える実践の場となり, 今後工夫の必要がある。授業後すぐにその旨の意見を 結果よりも過程そのものに重点を置いた授業となっ 伝えてくれた学生もあった。前期 TA に,「外国籍の た。専攻や年齢,国籍,言語運用能力の異なる参加者 子どもたちの教育」について,1コマ使って発表して 全体の間に生まれるコミュニケーションはダイナミッ もらった。身近な地域の例を具体的に知り考えるよい クで,時には緊張したものとなった。 機会となった。 前期に毎回宿題として出した文献購読とレポート提 このコースで発表した事例と討論した内容を土台 出にほぼ全員が真剣に取り組んだ。各授業の後に TA に,“Different Cultures, Different Interpretations” と教員がレポートについて検討会を持ち,コメントを の本の編纂を行なうことになった。幸いこの活動のた 書いてレポートを返却した。後期は一人1時間使って めに JAFSA(日本国際教育交流協議会)の研究・調 事例を発表し,その解釈についてグループ討論し,更 査補助金が支給されることになり,2005年度前期の完 に宿題として参加者が自分の意見や解釈を書いて発表 成をめざして有志で研究会を継続し,本の編集を進め 者と教員に提出するという形をとった。ひとつの事例 ている。 −107− −108− 名古屋を明るくする会 Let's Sing Together ‼ 「 愛・地球博 」PR お国紹介 平成クラブディナーブッフェ 国際交流事業 Let's Sing Together ‼ 2004/11/20 2004/12/1 2004/12/1 2004/12/8 岐阜県立加納高等学校 名古屋市立昭和橋小学校 平成クラブ 豊川市国際交流協会 岐阜県立加納高等学校 留学生交流見学ツアー(奈良) 2004/11/17 津島市立南小学校 2004/11/13 「 ぼくら津島の地球人 」 2004/10/22 名古屋市立正木小学校 名古屋市立滝川小学校 国際交流の授業 2004/10/22 南知多町立内海小学校 名古屋市立守山中学校 名古屋市立若宮商業高等学校 名古屋市立昭和橋小学校 名古屋市立引山小学校 愛知教育大学附属名古屋中学校 名古屋市立高針小学校 名古屋市立正木小学校 西春町立西春小学校 名古屋大学教育学部付属高等学校 愛知教育大学附属名古屋中学校 名古屋大学教育学部付属高等学校 依頼団体 2004/11/1−11/18(4回) 国際理解教室 国際交流教室 国際交流活動 2004/7/15 守山中学校ホームページコメント募集 帰国生のための語学保持授業 2004/7/9 2004/9/28 高針夏まつり及び留学生との交流会 2004/7/2 2005/8/30 国際交流の授業 2004/6/26 国際交流活動 にしはるワールドウィーク2004 2004/6/18 2004/7/17−7/22(3回) 付属高校からの訪問 2004/6/4 国際交流事業 国際交流活動 2004/7/16 付属高校からの訪問 2004/5/ 下旬 行事名 2004/5/6 行事年月日 4 4 5 2 3 21 7 3 2 2 掲示 1 4 7 派遣不可 3 4 5 2 3 4 派遣留学生数 (名)/ 対応者 1.平成16(2004)年度 地域社会と留学生との交流(教育交流部門による地域への連携・貢献活動) 中国・マレーシア・ブルガリア・バングラデシュ 各1名 インドネシア1名・ウズベキスタン2名・ジャ マイカ1名 モンゴル・インドネシア・ドイツ・チェコ・ポー ランド各1名 ペルー・フィリピン各1名 中国・マレーシア・ブルガリア各1名 中国20名・モンゴル1名 スリランカ2名・インドネシア3名・中国1名・ ブラジル1名 中国3名 モンゴル・インドネシア各1名 モンゴル・中国各1名 マレーシア インドネシア1名・ウズベキスタン2名・ジャ マイカ1名 インド・モンゴル・インドネシア・アルジェ リア・中国・ウズベキスタン・ジャマイカ各 1名 国指定で該当留学生見つからず タイ・インド・中国各1名 モンゴル・タイ・ナイジェリア・インドネシ ア各1名 タイ・インド・カザフスタン・ロシア・中国 各1名 インド2名 インド2名・中国1名・韓国1名 備考 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 〈教育交流部門資料〉 英語活動を通しての国際理解 国際交流事業 国際交流活動 国際交流活動 雛人形を飾る会 留学生と遊ぶ会 2005/2/ 中旬 2005/2/15 2005/2/17 2005/2/18 2005/2/20 2005/2/22 −109− 国際交流の第一歩―身近なアジアを学ぶ― 千種生涯学習センター 2005/5/27−6/1 2005/6/16・6/23(2回) いのちの歌文化交流協会 母の日に贈る感謝状 WAFCA 車いすバスケットボールアジア アジア車いす交流センター 交流大会 in 愛・地球博 「 自然と人の歳時記 」 プロジェクト 揚輝荘の会 名古屋市立柴田小学校 尾張旭市立瑞鳳小学校 スペシャルオリンピクス冬季世界大 会・長野 名古屋市立見付小学校 名古屋大学職員宅 名古屋市立新明小学校 名古屋市立新明小学校 名古屋市立昭和橋小学校 名古屋市立豊が丘小学校 名古屋市立藤が丘小学校 名古屋市立白沢小学校 名古屋を明るくする会 大府市長草公民館 岐阜県笠原町立笠原中学校 国際ソロプチミスト名古屋 依頼団体 2005/5/2−5/8 自然と人の歳時記 文化に親しむ会― 留学生と 「 揚輝荘 」 をつなぐ―日本の伝統 2005/3/27 2005/3/20 国際理解教育 留学生との交流会 2005/1/ 下旬 国際理解の学習 国際交流活動 2005/1/26 2005/3/1 新春懇親会・懇談会 2005/1/22 2005/2/25 外国を知る 2005/1/8−2/5(5回) スペシャルオリンピックス冬季世界大会 笠原中学校国際交流の日 2004/12/18−12/19 2005/2/22−3/6 家庭訪問 行事名 2004/12/18 行事年月日 1 掲示募集 掲示募集 掲示募集 掲示募集 1 3 掲示募集 2 掲示募集 1 2 4 派遣不可 派遣不可 2 6 1 掲示募集 派遣不可 派遣留学生数 (名)/ 対応者 モンゴル 2005年2月募集 2004年10月より募集 2004年10月より募集 オーストラリア タンザニア・ペルー・フィリピン各1名 中国2名 オーストラリア 中国2名 インドネシア1名・ウズベキスタン2名・ジャ マイカ1名 先方の都合により中止 先方の都合により中止 フィリピン2名 中国5名・モンゴル1名 エチオピア 先方の都合により次年度に延期 備考 教育交流部門 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 2.平成16年度 奨学金採択一覧表(平成15年9月∼16年8月 実績) 〈大学推薦応募〉 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 奨学団体名 部局(グループ) 愛知県・愛知留学生 旭硝子奨学会 アジア国際交流奨学財団 市原国際奨学財団 イノアック国際教育振興財団(初年度) イノアック国際教育振興財団(2年目) エプソン国際奨学財団 KANSAI PAINT(AIEJ) 共立国際交流奨学財団 共立メンテナンス奨学基金 公益信託井深大記念奨学基金 公益信託川嶋章司記念スカラシップ奨学基金 国際コミュニケーション基金 国際ソロプチミスト名古屋 国際ソロプチミスト名古屋 国際日本文化研究交流財団 国際文化教育交流財団 SEIHO 小林国際奨学財団 佐川留学生奨学会 サトー国際奨学財団 実吉奨学会 神内留学生奨学金(AIEJ) 大幸財団(育英・学部) 大幸財団(学芸・院) タカセ国際奨学財団(秋・特別コース) タカセ国際奨学財団(春) 朝鮮奨学会(学部) 朝鮮奨学会(MC) 朝鮮奨学会(DC) ドコモ(AIEJ) 豊田通商 豊秋奨学金(旧西秋奨学会) 名古屋 I ゾンタクラブ NGK 留学生基金(学部) NGK 留学生基金(大学院) 橋谷奨学会 服部海外留学生育英会 坂文種報徳会 ヒロセ国際奨学財団 船井情報科学振興財団 学部 船井情報科学振興財団 院 平和中島財団(学部) 平和中島財団(大学院) 平和中島財団(招致) BPW 東海クラブ ベターホーム協会 牧田国際育英会 みずほ国際交流奨学財団 三菱信託山室記念奨学財団 村田海外留学奨学会 名鉄国際育英会 ユアサ国際教育学術交流財団 ロータリー米山記念奨学会(学部) ロータリー米山記念奨学会(院) 綿貫国際奨学財団(院レベル) 学習奨励費 大学院レベル16AD 学習奨励費 学部レベル16AG・RG 学習奨励費 大学院レベル15TD 学習奨励費 学部レベル15TG 学習奨励費 大学院レベル15WD 学習奨励費 学部レベル15WG 名古屋国際センター(支援金)15 合 計 奨学期間 2年6ヶ月 2年 1年 1年 1年 1年 2年 2年 2年 1年 最短年限 1年 1年 1年 一時金 2年 2年 2年 2年 2年 1年 2年 1年 1年 1年 1年 最短年限 最短年限 最短年限 2年 最短年限 1年 1年 1年 1年 最短年限 最短年限 最短年限 2年 1年 1年 2年 2年 2年 1年 1年 2年 2年 最短年限 1年 2年 1年 2年 2年 1年 1年 1年 6ヶ月 6ヶ月 3ヶ月 3ヶ月 1年 金 額(円) 100,000 90,000 70,000 50,000 40,000 50,000 100,000 120,000 100,000 60,000 150,000 100,000 150,000 80,000 300,000 150,000 50,000 100,000 100,000 130,000 20,833 100,000 33,333 33,333 100,000 100,000 25,000 40,000 50,000 120,000 70,000 50,000 30,000 120,000 160,000 100,000 50,000 70,000 100,000 100,000 100,000 100,000 120,000 200,000 100,000 60,000 100,000 120,000 100,000 12,500 80,000 100,000 120,000 150,000 150,000 73,000 52,000 73,000 52,000 73,000 52,000 10,000 応 募 採 択 継 続 1 1 2 4 9 − 1 1 2 1 1 1 2 2 3 1 1 2 1 12 3 1 3 6 1 1 0 2 0 − 5 1 1 1 10 1 − 3 2 1 1 1 1 0 1 − − − − 7 10 1 1 18 0 99 14 8 2 4 0 89 347 0 1 0 3 4 − 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 3 0 1 3 1 1 0 1 0 − 3 1 0 1 10 0 − 2 1 1 0 1 0 0 1 − − − − 7 1 1 1 7 0 99 14 8 2 4 0 27 213 2 1 0 0 0 1 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 2 0 1 0 1 7 1 0 0 0 0 0 0 0 24 応 募 採 択 継 続 0 0 6 16 0 − 7 1 24 92 − 2 2 0 150 0 0 0 0 0 0 6 0 − 1 0 2 − 0 9 0 0 0 0 0 0 11 0 0 0 0 0 0 0 11 合 計 2 2 0 3 4 1 1 0 0 0 2 1 0 0 0 0 0 1 1 0 3 0 1 3 1 1 0 1 1 0 3 1 0 1 11 0 0 3 1 1 0 1 1 0 1 0 0 1 2 7 2 1 2 14 1 99 14 8 2 4 0 27 237 〈個人直接応募〉 1 2 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 奨学団体名 部局(グループ) アサヒビール芸術文化財団 青峰奨学財団(学部) 青峰奨学財団(大学院) 伊藤国際教育交流財団 岩谷直治記念財団 岩國育英財団 交流協会 公益信託 斉藤稜兒イスラム研究助成金 とうきゅう外来留学生奨学財団 日商岩井国際交流財団 ( 学部 / 院) 日本生命財団 富士ゼロックス小林節太郎記念基金 朴龍九育英会 盛田国際教育振興財団 合 計 奨学期間 金 額(円) 1年 最短年限 最短年限 2年 1年 2年 2年 100,000 50,000 70,000 180,000 150,000 120,000 184,000 2年 2年 1年 1年 / 件 1年 1年 160,000 70,000/10,000 150,000 1,000,000 70,000 1,000,000 −110− 合 計 0 0 0 0 0 0 17 0 0 1 0 2 0 0 20 −111− 0 7 0 0 大学等による借り上げ宿舎 留学生用宿舎 (地方自治体設置) 留学生用宿舎 (民間団体設置) 民間企業の社員寮 その他 合 計 民間下宿・アパート 〇内はホームスティで内数 0 133 214 81 14 0 3 5 0 0 30 0 126 28 1 一般学生用宿舎 (自校・他校設置) 公営及び住宅・都市整備公 団住宅 52 22 0 15 0 0 0 1 0 0 6 12 0 11 0 0 0 0 0 0 1 女 男 男 女 政府派遣 国 費 留学生用宿舎 (自校及び他校設置) 宿 舎 区 分 3.留学生の宿舎状況 406 6 228 67 14 15 8 0 4 64 男 10 699 ① 162 18 42 42 0 8 213 計 407 1194 ① ① 4 238 ① 53 4 24 21 0 3 60 女 私 費 政府派遣 私 費 255 0 164 6 0 3 11 0 1 70 42 0 16 16 0 0 1 0 0 9 50 0 18 29 0 0 0 0 0 3 31 0 24 0 0 0 1 0 0 6 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 598 ① 6 374 ① 11 17 35 26 0 7 122 102 2 47 43 1 4 3 0 0 2 留学生会館52名,レジデンス105名, 国際嚶鳴館60名 備 考 服部留学生会館16名, NGK インターナショナルハウス26名 10 699 ① 竹越住宅3名,高針住宅3名,中村住宅2名, 中平住宅2名 他 市営住宅 梅森荘18名,本地荘12名,高坂荘5名, 新楠荘5名,大根荘3名,戸田荘2名, 中希望荘2名 他 162 県営住宅 平針住宅8名,野並住宅8名,猪子 石住宅8名,伝治山住宅5名,梅森坂住宅3名, トヨタ自動車3名,中部電力2名,山田商会2名, 18 東邦ガス2名,ノリタケ1名,建光社1名, デンソー1名 他 42 42 国際留学生会館42名 0 8 213 計 115 1194 ① 2 56 57 0 0 0 0 0 0 単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族 国 費 留学生の入居者数 平成16年5月1日現在 教育交流部門 短期留学部門 ●名古屋大学短期交換留学受入れプログラム(2004年度報告)…… 野水 勉 114 ● When Reality Bites! NUPACE and Diminishing JASSO Largesse ………………………………………………………………… Claudia Ishikawa 125 ● NUPACE のグループダイナミックス―学生の個性が集う場所― ………………………………………………………………………… 筆内 美砂 139 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 名古屋大学短期交換留学受入れプログラム (Nagoya University Program for Academic Exchange - NUPACE) 2004年度報告 留学生センター・短期留学部門 (兼任)国際学術コンソーシアム(AC21)推進室 (兼担)工学研究科・マテリアル理工学専攻 野 水 勉 平成16(2004)年度に9年目を迎えた本学の短期交 魅力を感じてもらっていることが何よりの要素です。 換留学受入れプログラム(以下,短期留学プログラム) 平成15(2003)年度の短期交換留学受入れ実施委員 は,14ヶ国44大学より計67名の短期留学生を受け入れ, 会では,教育プログラム充実のための議論を行い,全 これまでの最大受入れ人数を大きく上回りました。そ 学留学生専門委員会にいくつかの提言を行いました のうち,自費留学による参加学生は19名にも上ってお が,それを受けて平成16年度の留学生専門委員会で, ります。新たに3協定大学からの短期留学生が加わっ 協定大学間の単位互換をより円滑に進めるためにアジ ており,大学数も在籍国の数もこれまでの最大です。 ア太平洋大学交流機構(UMAP)が提唱する「UMAP 図1の通り,相変わらず多数の応募があり,全地域を 単位互換方式(UCTS) 」の適用について検討を進め, 平均した競争率は3倍以上に達し,選考に大変苦心し 最終的に NUPACE に適用することを決定しました。 ております。このような背景から平成17年度は選考基 平成16(2004)年7月には,名古屋大学が発起して 準・方法の見直しを検討しています。自費参加が急増 設立された国際学術コンソーシアム(AC21)の国際 した背景には,平成15年度から受入れ滞在期間を6ヶ フォーラムとサテライトフォーラムがシドニー大学で 月以上ではなく,実質的な講義が行われる4ヶ月以上 開催され,学生交流関係フォーラムで短期留学部門・ (4−7月または10−1月)としたことが大きく影響 石川講師が招待講演を行い,活発な議論が行われま していると思われますが,自費でも参加したいという した。また,平成17(2005)年2−3月には短期留 図1.短期留学プログラムの応募者数、奨学金割当、受入れ人数、自費参加学生数の推移 (*平成13年度5名、14年度3名、15年度4名の追加配分を含む) −114− 短期留学部門 学部門として初めて中国・韓国の協定大学を訪問し, 変更されて,割当を大きく減少させたことに対して, NUPACE の PR とともに,協定上の懸案事項の討議 多くの大学が不満を述べました。短期留学プログラム や学生交流等の情報交換を行いました。 を運営するどこの大学も,協定大学と連絡を取り合い 以下,平成16(2004)年度の短期交換留学プログラ ながら受入れ数を調整しており,奨学金割当数の突然 ムを中心とした短期留学部門の活動を紹介いたしま の削減方針は,短期留学プログラムの運営に大きな影 す。 響を及ぼすからです。 「短期留学推進制度(受入れ) 」は,平成7年度発足 以降6年間にわたり,毎年のように制度や割当方針の 1.短期留学奨学金と短期留学生受入れの現状 変更が頻繁に行われ,関係者はその度に一喜一憂して 1.1 日本国際教育協会「短期留学推進制度(受入 れ)」奨学金割当数について おりましたが,平成14年度以降この数年は落ち着いて おりました(国費留学生制度がほとんど変わらないの 表 1 は「 短 期 留 学 推 進 制 度( 受 入 れ ) 」に基づ とは対照的) 。しかし,昨年の本稿で心配したように, き, 文 部 科 学 省 外 郭 団 体 で あ る 日 本 学 生 支 援機構 平成16年度に国立大学が法人化されたことと,奨学団 (JASSO)から各主要大学へ割り当てられた平成16, 体が「 (財)日本国際教育協会」から「(財)日本学生 17年度の短期留学生(受入れ)向け奨学金割当数です。 支援機構」に衣替えされたことが契機となり,上記の 表から明らかなように,一部を除き多くの大学の割当 ように方針が大きく変更された模様です。 そもそも 「短 数が大幅に減っています。実際に英語による短期留学 期留学推進制度」は,国立大学での短期留学プログラ プログラムを実施している国立大学に調査を実施した ムを推進するために創設された経緯がありますが,国 ところ,この1−2年にプログラムを開始した大学を 立大学が法人化される中で特別扱いが難しくなってい 除いて,ほとんどの大学が2∼3割前後の減少となっ ることが日本学生支援機構の担当者から強調されまし ています。この原因について,本年3月に国立大学短 た。 期留学プログラム関係者の協議会を開催し,日本学生 本学の割当数は, 48名から41名への7名減でしたが, 支援機構担当者から説明を受けました。その際の説明 割合としては15%減でしたので,2−3割減となった 要旨は以下の通りでした。 他大学に比べると, まだましだったのかもしれません。 ⑴全体予算が増加せず,派遣留学の新しいプロジェ 表1を見ると国立大学の中で筑波大学に次いで高い割 クトが加わる中で,全体の割当数を1割減とせざ 当数を維持しています。 本学の短期留学プログラムは, るを得なかった。 ⑵国立大学を中心とした英語による短期留学プログ ラムのための各大学の特別枠割当数を,従来の16 表1.「短期留学推進制度(受入れ)」奨学金の大学別割当 数上位大学 名から10名とした。 平成16年度 ⑶従来は各大学が12月に提出する当該年度の受入れ 平成17年度 順位 大 学 名 1 関西外国語大学 68 1 関西外国語大学 60 2 早 稲 田 大 学 60 2 早 稲 田 大 学 60 3 筑 学 53 3 筑 学 46 4 名 古 屋 大 学 48 4 名 古 屋 大 学 41 5 東 北 大 学 40 5 慶 学 32 6 大 阪 大 学 36 6 東京外国語大学 32 7 広 島 大 学 35 7 大 阪 大 学 31 8 東京外国語大学 33 8 広 島 大 学 28 8 慶応義塾大学 33 8 東 北 大 学 28 10 横 浜 国 立 大 学 31 10 九 州 大 学 24 10 九 31 10 東京工業大学 24 計画数に基づいて割当を算定していたが,今回か ら前年度の受入れ実績数を基礎とすることにし た。とくに,日本学生支援機構の奨学金に頼らな い,私費(自費)留学生の受入れ実績数が多いと ころを配慮した。 ⑷今後しばらくは,短期留学プログラム特別枠を減 らさないが,事務が繁雑なため特別枠は減らして いきたい。減らした分は一般枠を増やしているの で活用してほしい。決して短期留学推進制度を無 くそうと意図ではない。 これに対して,予告もなく突然のように割当方針が −115− 波 州 大 大 割当数 順位 大 学 学 波 応 大 大 名 割当数 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 表2.名古屋大学短期留学生受け入れ実績(平成14年4月∼平成17年4月) −116− 短期留学部門 表2.(つづき) −117− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 a)在籍大学別・地域別内訳 b)受入れ部局別内訳 c)受入れ学生身分別内訳 図2.名古屋大学短期留学生の内訳(1996年2月− 2005年4月:全490名) 図3.平成16年度短期留学生の在籍大学別・地域別内訳(2004年4月− 2005年3月:全67名) −118− 短期留学部門 平成13年度に奨学金割当が大きく落ち込んだ際に,自 米25%,ヨーロッパ28%と従来の平均よりも欧米の割 費参加希望学生の積極的な受入れ方針を掲げた結果, 合が増加しています。 以降は10名前後の自費参加学生を受入れてきており, 自費参加学生19名のうち,アジア8名,米国5名, 奨学金が減っても自費参加留学生によってプログラム ヨーロッパ地域5名, オセアニア1名という状況です。 の規模を維持できるように努力してきました。その結 授業料相互不徴収と大学宿舎(国際嚶鳴館やインター 果,平成16年度は自費留学生が19名にも達し,全体の ナショナル・レジデンス)入居の条件で月額8万円程 受入れの1/3近くを占める状況となっています。日本 度の滞在費なら何とかしようという学生が増えていま 学生支援機構は,平成17年度分から前年度実績を配慮 す。米国5名の自費参加は,いずれも4月受入れの時 して奨学金を割当てたと説明しており,本学の平成16 期ですが,4−7月滞在を認めたことによって,在籍 年度自費留学生の受入れ実績は,良い効果があったも 大学でのカリキュラムとの衝突を最小限にでき,4ヶ のと思われます。 月程度ならば滞在費も負担にならない,という考えが 私立大学の関西外国語大学や早稲田大学は,すでに 広まってきています。中国と韓国からの自費参加希望 20年以上前から「短期留学推進制度」の援助のない中 学生も増えています。9年前に NUPACE を開始して で短期留学プログラムを運営しており,独自奨学金や 数年間は,ほとんど考えられない状況でしたが,両国 多数の自費留学生の受入れ実績を持っているために, の経済発展の中で,この数年は大きく様変わりしてい 多くの割当数が維持されたものと思われます。筑波大 る状況です。 学は英語による短期留学プログラム以外での協定大学 間の交換留学を推進しており,その実績が認められて いる模様です。 2.短期交換留学受入れ実施委員会と留学生専 門委員会 「短期留学推進制度(受入れ)」奨学金の今後の行方 は,決して楽観できない状況です。短期留学プログラ 全学の留学生専門委員会の下に,短期交換留学受入 ムが奨学金の割当方針の変更に大きく左右されないよ れ実施委員会(委員長: (前)末松良一留学生センター う,奨学金割当が減ったとしても,自費参加学生が増 長)が組織され,各学部・研究科の代表委員と留学生 える魅力ある短期留学プログラムの維持が必要と思わ センター関係者で構成されています。例年,年4回(4, れます。自費参加学生を少しでも財政的にバックアッ 7,11及び1月頃)ほどの審議を行っており,年2回 プできるような名古屋大学の自己資金を作り出すこと の受入れ時期に対する候補者の選考,短期留学受入れ ができれば,自費参加をさらに促すことが期待されま プログラムの基本方針,カリキュラムの内容,受入れ す。 候補者の選考基準,受入れ学生への対応,予算等が審 議,決定されています(平成17年度から短期交換留学 1.2 短期留学生受入れの現状 受入れ実施委員会は,派遣選考委員会と合体し,交換 過去3年間の各受入れ時期における大学別受入れ実 留学実施委員会(委員長:江崎光男留学生センター長) 績を表2に示します(平成13年度以前のデータは当留 に改組されました) 学生センター年報 No. 9 参照) 。図2には,プログラ 平成15年度の実施委員会では,教育カリキュラムの ム開始以来の490名全体の a)大学所在国および地域 改善に対する全学への提言として①英語による講義担 別の内訳,b)受入れ部局別,c)学生身分別の割合を, 当者へのインセンティブ,②学部講義の成績評価体系 図3には平成16年度分の大学所在国および地域別の割 の大幅な見直し,③非常勤講師予算の拡充,について, 合を示します。 留学生専門委員会への提言をまとめ,同年度末に報告 平成16年度は,14ヶ国,44大学より計67名の短期留 を行いました。平成16年度は,これを受けて留学生専 学生を受入れを実現し,そのうち19名が自費参加学生 門委員会にて,UMAP 単位互換方式(UCTS)検討ワー です。国別では,米国,中国,韓国の順となっていま キンググループが編成され,集中的な議論が行われま す。図2a)の通り,過去9年にわたる受入れ大学の した。ワーキンググループからの提言を受け,各部局 地域別割合はアジア52%,北米22%,ヨーロッパ23% での検討を経て,平成16年12月1日の留学生専門委員 ですが,図3b)の平成16年度だけで見た場合では北 会にて,短期留学プログラム(NUPACE)へ限定し −119− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 表3.名古屋大学の成績評価の UCTS への変換表 た適用を条件に,UMAP 単位互換方式の採用が決定 名古屋大学 されました。表3の変換表により,UCTS 評価基準に A Excellent (優) 成績 (100点満点) UMAP 単位互換 方式(UCTS) 変換します。UCTS の推薦基準では,成績評価分布の A* 100 - 90 A Excellent A 89 - 80 B Very Good B Good(良) 79 - 70 C Good C Satisfactory(可) 69 - 60 D Satisfactory 論に付した結果,当面明示しない形となりました。実 F Fail(不可) 59 以下 F Fail 際の運用は,平成17年度秋からを予定しております。 相対的な割合も明示されていましたが,成績分布の目 安を%で示すか,示さないかについても,全学的な議 日本語研修コース 標準コース( 4 単位): 日本語初級 I ∼日本語上級 II(8 レベル) 集中コース( 8 単位): 日本語初級 I ∼日本語中級 II(4 レベル) 日本語による概論講義 各科目2単位 日本研究・国際理解研究 各科目2単位 地球社会(秋・春)(*J) 日本語・日本文化論入門(秋)(*J) 日本語学入門(秋・春)(*J) 日本文化論(秋・春)(*J) 言語学入門(秋・春)(*J) (留セ) (文) (留セ) (留セ) (留セ) 多文化環境におけるコミュニケーションと人間関係(春) 現代日本社会(春) 異文化間コミュニケーション(秋) 日本史入門(秋) 日本政治学入門(春) 日本経済学入門(秋) 日本近代史と戦後国際関係論(春) 日本の科学と技術(秋) (留セ) (留セ) (留セ) (留セ) (留セ) (留セ) (文) (工) 専門科目 日本語・日本文化研修プログラムを除き各科目2単位 留学生センター 日本語・日本文化研修プログラム(1年[秋→春]:全28単位) 社会法制論 : 日本と国際社会(春) 文学部 言語と言語習得 I・II(秋・春) 生成文法入門 I・II(秋・春) 教育学部 日本の教育(春) 法学部 日本の政治と法(秋) 経済学部 開発経済(春) 医学部 健康保険制度と医療行政および関連セミナー(秋・春) 臨床実習 工学部 化学・生物産業概論(春) 物理・材料・エネルギー先端科学(春) 電気・電子・情報先端工学(秋) 生産工学概論(春) 社会環境工学概論(秋) 農学部 生命農学概論(秋) 国際開発研究科 国際開発入門(春) 社会調査法特論(日本の開発経験) (秋) 国際言語文化研究科 批判的言説分析(春) 環境学研究科 環境学先端研究(春) 情報科学研究科 情報科学入門(春) その他 国際開発研究科と法学研究科の一部の科目 個人勉学(研究) 指導(Guided Independent Study-GIS) 学位取得を目的とした正規学生向け科目(*J) *J=講義言語:日本語 担当部局 (留セ) (留セ) 秋=秋学期開講 春=春学期開講 図4.2005−2006 名古屋大学短期留学生プログラム(NUPACE)の全体構成 −120− 短期留学部門 短期留学受入れ実施委員会が留学生専門委員会に提 るようになり,その規定の内容について交渉が難航し 言した3件の提言のうち,①は十分に議論が煮詰まら ていましたが,法務室の松浦室長と短期留学部門とが ず,③については大学の法人化に伴う全学での非常勤 連携し,2年越しの交渉によって合意となり,本年3 講師枠の大幅見直しの中で,議論もできない状況でし 月に更新が行われました。 た。残念ながら,短期留学プログラムの教育カリキュ ラム改善の取り組みに対して,全学の積極的な協力を 得るまでに至っていないことを痛感しています。 3. 2 国際学術コンソーシアム (Academic Consortium 21,AC21) 図4に2005年秋から2006年春に実施される予定の教 本件は,一昨年からこの稿で報告していますが,平 育カリキュラムの全体構成を示します。 成14(2002)年6月に名古屋大学で国際フォーラム (第1回)を開催し,その際に参加した25大学がメ ンバーとなって国際学術コンソーシアム(Academic 3.国際交流活動 Consortium 21)が設立されました。筆者は,準備段 3.1 学術交流協定と授業料不徴収協定 階から留学生交流担当の立場で関わっています。 本学の活発な国際交流を反映して,平成16年度も全 平成16 (2004)年7月21−24日には,オーストラリア・ 学で学術交流協定締結が進められ,平成16年度末累計 シドニー大学にて,第2回の AC21総会,国際フォー 数で198大学・機関との学術交流協定締結(全学間協 ラムが開催され,その他に6件のテーマによるサテラ 定は52大学・機関)と97大学との授業料不徴収協定を イト・フォーラムが開催されました。学生交流に関す 含む学生交流協定(全学間39大学・機関)が締結され るサテライトフォーラムでは,当部門の石川講師が招 ています(図5参照)。 待講演者の一人として講演し,ノースカロライナ州立 平成16年度中に締結された協定関係では,フランス・ 大学の招待講演者(学生交流担当)も,本学との10年 パリ第7大学(窓口:多元数理研究科),オーストラ 近い学生交流の意義をとくに強調したほか,シドニー リア・フリンダース大学(窓口:環境学研究科) ,南オー 大学から NUPACE に参加した学生とシドニー大学へ ストラリア大学(同左),アデレード大学(同左)と 本学から派遣された学生がそれぞれ留学体験を語り, の全学間学術交流協定締結のための協定文書作成に関 双方向の学生交流の意義が強く印象づけられました。 与しました。また,シドニー大学との学生交流協定(窓 シドニー大学関係者からは,単位互換の推進,新たな 口:工学研究科)更新においては,オーストラリアの 短期間(夏期6週間)交流プログラムなどの提案もあ 最近の法律で,同国内の大学の留学生受入れおよび派 り,今後の検討課題となりました。 遣に関する損害補償規定を細かく定めることを要求す 図5.大学間学術交流協定と授業料不徴収協定の累積数(各年度末) −121− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 3.3 中国・韓国拠点大学訪問 学院進学多数),国際政治学院しか関与しておらず, 文部科学省予算を受けて,本学が学術交流協定を締 今後他部局へも拡げていくべきであること,実績の少 結している中国5大学(上海交通大,復旦大,北京工 ない本学から同大学の学生派遣を大変期待している旨 業大,北京大,清華大)および韓国3大学(ソウル国 が伝えられました。 立大,漢陽大,高麗大)を平成17(2005)年2月27日 北京工業大学は,工学部同士の部局間協定ですが, から3月5日に訪問し,短期交換留学を中心とした情 NUPACE の開始直後より名古屋大学に学生を派遣し 報交換と今後の国際交流の展開について懇談を行いま てきており,プログラム当初に特別研究生として派遣 した。本短期留学プログラムを開始して以来,短期留 された一人は,現在,同大学の副総長に就任している 学部門として米国3回,ヨーロッパ(英・独・仏)3 との話もあがり,NUPACE が貢献していることが高 回,タイ・オーストラリア1回の海外出張を行ってい く評価されました。同大学もプロジェクト予算を獲得 ますが,中国・韓国は初めてでした。少し詳しくなり して,建物の新設・整備が相次いでおり,ホテルを思 ますが,以下に報告します。 わせる新設ビルの学長関係フロアーの一角に国際交流 上海交通大学は,江沢民前中国国家主席の出身大学 関係オフィスが配置され,国際交流への意気込みが強 であり,上海地区における理工系大学のトップ大学で く感じられました。 す。中国大学のトップ10の重点大学にも選ばれ,中国 北京大学とは,2つの部局間交流協定を基礎に,4 の最近の経済的急成長を受け,中国政府から手厚い予 年前の2001年に全学間の学術交流協定を締結しました 算の恩恵を受けている模様です。国際学術コンソーシ が,どの協定でも,授業料不徴収協定を含む学生交流 アム(AC21)の幹事大学として,その貢献に大変意 協定締結が進んでいませんでした。この状況を打開す 欲的な大学です。懇談では,各国との学生交流をすで るための懇談を行いましたが,国際交流関係者から上 に様々に展開している様子が紹介され,同大学で学部 層部に伝えるとの発言は得られましたが,締結は困難 1−2年を過ごした後,米国ミシガン大学やフランス な見通しです。 の大学に移って学部3−4年を過ごし,両方から学位 清華大学とは全学間協定を1989年から締結し,1998 を取得するツイニング・プログラムを実施し,修士で 年から同大学公共管理学院と国際開発研究科との間の も1+1年のツイニング・プログラムを実施していま み授業料不徴収協定が締結されていますが,全学間に す。同大学から本学への短期留学受入れ実績は2年前 ついては交渉が難航しています。同大学公共管理学院 の2名に留まっており,懇談では具体的な派遣計画の 関係者と懇談し,打開のために本部に伝える旨の回答 提案もあり,積極的な姿勢が感じられましたが,本学 をもらいましたが,現在進展していません。北京大学 の情報が必ずしも十分に伝わっておらず,学生交流担 も清華大学も,半分のキャンパスは古い威厳をもった 当者レベルのコミュニケーションの重要性を改めて感 建物を残しながら, 残りの半分のキャンパスには, 次々 じさせました。 と新しい建物が建てられている模様です。清華大の場 復旦大学は,人文・社会科学系で上海地区トップ大 合,建物建設のために学外から寄付を集めると,その 学であり,やはり中国大学のトップ10の重点大学に選 同額の予算が大学から提供される仕組みのため,教授 ばれています。近く予定されている100周年記念事業 陣が必死に寄付を集める努力をしている話が披露され に向けて,今年秋の竣工が予定されている40階近いツ ました。 イン高層ビルやデザインも斬新な大規模体育館など, 韓国ソウル国立大学とは,1993年に同大学自然科学 建物や周辺道路の建設が相次いでおり,上海地域の活 部と本学理学部との部局間協定が結ばれていました 力が強く反映している様子が感じられました。同大学 が,短期留学プログラム(NUPACE)への応募がこ も活発に国際交流を推進しており,多数の留学生を受 れまで皆無であり,懇談の結果,全学間大学協定と授 け入れる一方で,英国 Birmingham 大学へ25名の学部 業料不徴収協定を含む学生交流協定の締結を推進し, 学生を毎年派遣しています(ほとんどが奨学金なし)。 来年9月学生派遣を実現させたい,という強い希望が 本学との学生交流は同大学国際政治学院と本学法学研 伝えら,双方で鋭意努力することとなった。 究科との部局間協定が発端となっており,本学へ多数 漢陽大学は,昨年全学間学術交流協定と学生交流協 の学生が派遣されていますが(10名の短期留学生や大 定を締結したばかりですが,今春一名の派遣と受入れ −122− 短期留学部門 が実現し,相互の学生交流が始まりました。大学長の が経過しました。60名の留学生と230名の日本人学生 直轄として国際協力室が組織され,韓国の他大学に比 との共同生活のため,最初は毎週夜に行われるブロッ べても動きやすい環境であることが強調され,交流開 ク会議やゴミの分別問題などに戸惑うこともあるよう 始を契機に,本学との学生交流の拡大を大変期待して ですが,半年∼1年経過すると日本人学生との親密な いることが伝えられました。漢陽大学では,5∼6年 交流を経験できたことで,大きな満足感を持って帰国 前から全学生に対して学部学生の卒業に TOEFL 560 しているようです。寮自治会と短期留学部門や国際課 前後の英語力(英文科はさらに上のスコア)を要求し との信頼関係が築かれていることも大きな要素です。 ており,1学年5000名前後の学生のわずか100名がそ 平成16(2004)年度末に,教職員用独身寮の一部を の条件を満たせずに留年しただけだとの話が披露され 外国人研究者用宿舎に改修したことに伴い,大学のも ました。また現在は,入学した学生にすぐに TOEFL つ留学生宿舎の入居者数が拡大する予定となりまし を受けさせると2/3が上記の条件を満たし,それらに た。そこで,短期留学受入れ実施委員会から,短期留 学生に対しても,20名以下でディスカッションをする 学生の受入れ優先枠を従来の55名から60名に増やすこ 英語教育を必修として課していることが披露され,学 とを国際交流会館運営委員会に申し入れ,承認を受け 生の英語力の充実ぶりは目を見張るものでした。 ました。 高麗大学は,訪問当初から副学長との実質的な懇談 日本学生支援機構(JASSO)からの奨学金割当は, の場が用意され,現在2部局(教育発達科学研究科・ 増加するどころか減少する状況となっていますが,最 教育学部と国際開発研究科)の部局間協定の下で学生 近は自費参加希望者が急増しており,宿舎優先枠の拡 交流を行っていますが,全学間協定に発展させたいと 大は,学生の受入れ規模を維持または拡大する上で, の本学の意向に対して全面的に賛意が表せられ,直ち 極めて重要な要素です。全学的な配慮に大変感謝いた に協定案の議論が交わされました。同大学はすでに します。 1/3近くの講義が英語で行われている,という説明で した。国際交流,英語教育の面では,高麗大学の方が 4.2 短期留学部門および事務の体制 さらに進んでいる,というのが漢陽大学の関係者の話 平成15年度の大きな動きとは異なり,平成16年度の でした。 短期留学部門は3名の強力な体制でした。一方,事務 今回訪問した中国・韓国の拠点大学がいずれも,積 体制の方は,同一の部屋になっていた留学生課と国際 極的な学生交流を推進しており,欧米大学とのツイニ 交流課がさらに平成16年度から一つの課として国際課 ング・プログラムを展開したり,英語力強化策を推 となり,二つの組織の壁が無くなり,国際交流が一つ 進しており,その効果がはっきりと表れている状況 にまとめられました。連携が弱かった過去と比べると でした。英語力をもった学生が参加できる,本学の 画期的なことです。しかし,文部科学省の職員海外派 NUPACE は,このような中国・韓国拠点大学の学生 遣プログラム LEAP プログラム(1年間)を経験し 受入れの受け皿としての積極的な役割を果たし得ると た短期留学掛の担当者が1年経たずに交代することと 思われます。中国・韓国の学生達の英語力向上が著し なり,後任の方は大学外の機関との人事交流で派遣さ い状況に対して,本学の学生の英語力強化があまり進 れてきた方でしたが,国際業務の経験がなく,本人に まない状況に,危機感を感じざるを得ないのが正直な とっても予想外の業務だったようで,2ヶ月経たずに 感想です。訪問した大学のいずれも,強い権限をもっ 休職となってしまいました。人事交流の意義は理解で た国際交流組織が構築されており,すばやい行動力を きますが,留学生とも接する機会がなかった組織から, 痛感しました。 突然に短期留学掛に配置する人事異動や目まぐるしい 交代は首を傾げます。経験の蓄積が必要な国際交流関 係の事務職員を育成・強化する話とは逆行する動きと 4.その他 なっているように感じざるを得ません。 4.1 宿舎 平成17(2005)年4月時点で,留学生と日本人学生 4.3 コンピュータ環境 の混住寮である国際嚶鳴館への入居が始まって2年半 日本語教育メディアシステム開発部門と協力して, −123− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 4年ほど前より留学生センター3階に40台近い PC を なり,自費参加学生も19名という数は,全国の国立大 置き,Windows 2000多言語対応として,ファイルサー 学に誇ることのできる数字ですが,この実績は何より バー方式に基づく一括管理の下で運用しています。コ も全学的な協力体制によって支えられた結果です。大 ンピュータ室は,ID カード・セキュリティー管理と 学の法人化や日本国際教育協会から日本学生支援機 学生ボランティアによる点検に基づき,夜10時までお 構(JASSO)への改組を契機として,奨学金割当数 よび土日利用もできる環境です。 の今後の増加は期待できず,プログラムを維持してい 平成15年度から無線 LAN サービスも開始し,最近 くためには,自費参加学生を確保することが重要と は利用者が拡大しています。また,平成16年度末には, なってきます。また,自費学生の数が多いほど奨学金 講義用にノートパソコン20台を一括購入し,すべて無 割当ても多くなる方針であることが日本学生支援機構 線 LAN でインターネット接続をする方式としました。 (JASSO)より示唆されました。 さらに,留学生センターのサーバーが不調になってき 自費でも参加したい学生が増えるためには,プログ たため,更新を行うと同時に,サーバーの維持管理を ラム全体がもっと魅力を持たなければなりません。自 全学技術センターに依頼することになりました。 費でプログラムに参加して内容に不満を持って帰るこ とになれば,その後の自費参加希望者に大きな影響を 4.4 短期留学生の再留学 与えます。英語による教育カリキュラムは,プログラ NUPACE での短期留学を終えて帰国した後に,本 ムの中核をなす意味で大変重要ですが, 充実した構成・ 学の大学院入学した学生,あるいは研究生,特別研究 内容にはまだまだの状況であり,一部の献身的な先生 員などで再留学してきた学生は,平成16年度は3名を 方の講義に依存している状況です。英語による授業の 数え,累計で41名となりました。平成15年度までに帰 意義は,日本人学生の英語力向上にも重要と思われ, 国した学生数は423名ですので,やはり1割の学生が 本稿で紹介した最近の中国・韓国の大学の英語力向上 本学への再留学を果たしてくれています。平成16年度 の取り組みは, 一考に値するものであると思われます。 はこの数年間では最も少人数になってしまいました。 ただし,講義への満足度が高くなくても,受入れ教員 このことが一時的なものであるかどうかは判断できま の個人指導が充実している場合には,全体として高い せん。再留学を相談してくる短期留学生は少なくない 満足度となります。そのような事例もプログラムの高 状況ですので,再留学を支援できる奨学金制度などが い評価を維持している理由であろうと思われます。 あれば,再留学を実現する学生はさらに増えることと このような努力の中で,名古屋大学学生の海外留学 予測されます。 も着実に伸びてきています。徐々にですが,名古屋大 学の国際化が進みつつあるように感じられるこの頃で す。 5.最後に 今後とも,全学の教職員の皆様方の相変わらずのご 平成16年度は67名という最大規模の学生受入れ数と 支援とご協力をよろしくお願いいたします。 −124− 短期留学部門 When Reality Bites! NUPACE1 and Diminishing JASSO2 Largesse Claudia Ishikawa Assistant Professor, NUPACE A. Introduction B. Glasnost at JASSO In retrospect, the year 2005 may well mark a turning On Tuesday, March 15, 2005, a ‘Study Meeting point for NUPACE. Will the programme, in its tenth on the Short-term Student Exchange Promotion year of operation, embark upon a newly independent Programme at National University Corporations’ stage of development? Or will it dwindle, slowly but (literal translation) 3 was held at Tokyo Institute of surely, into non-existence? Overdramatic? Perhaps. Technology. The meeting attracted 47 participants However, 2005 will go down as the year when short- from 23 institutions nationwide, the focus of interest term term exchange programme administrators comprising a keynote address by the section chief heard straight from the horse’s mouth that the age of for International Scholarships at the Japan Student increasing scholarship allocations had come to an end. Services Organisation (JASSO). The immediate cause Of course, it was an inevitable end to an unusually for setting up the meeting may be attributed to general long honeymoon. And, it was an end that all predicted angst amongst short-term exchange programme co- and could have taken steps to limit the fallout from. ordinators in, 1) discovering that JASSO scholarships However, in a scene reminiscent of Oliver Twist, (inbound) for the academic year 2005~2006 had everybody had just kept on hoping for more. decreased by 10% from the previous year, dropping from 2,000 to 1,8004 and, 2) learning that scholarships The following report is divided into two parts, the first specially reserved for institutions having established deals principally with JASSO’s public policy of fiscal programmes taught in English had unilaterally been retrenchment vis-à-vis exchange programmes for slashed to a maximum of 10 per institution. An incoming students, and consequent challenges facing explanation was called for. this particular programme; the second briefly outlines developments in NUPACE student composition and the In accepting the invitation and addressing an anxious academic programme. audience, the JASSO took an unprecedented step in making public policy developments. And, criticism of 1 NUPACE is the acronym for the Nagoya University Program for Academic Exchange, Nagoya University’s short-term student exchange programme for incoming students. Students enrolled in degree programmes at institutions with which Nagoya University has concluded academic exchange agreements are eligible to apply for the programme. Courses that constitute the NUPACE programme are principally taught in English; Japanese language proficiency is not a prerequisite. 2 JASSO (Japan Student Services Organisation < 日本学生支援機構 >) is a public corporation with a strong affiliation to the Monbu- kagakusho. The organisation provides short-term exchange students with scholarships comprising a round-trip airfare, settling-in allowance and monthly stipend. Incidentally, the Association of International Education, Japan <AIEJ> was dissolved at the end of the fiscal year 2003~2004, its duties now being assumed by JASSO. 3 4 「国立大学法人における短期留学推進制度に関する勉強会」2005年3月15日開催。 平成17年度短期留学推進制度(受入れ)奨学金支給割当人数審査概要 in JASSO Document No. 266(学支国奨第266号)of Janu- ary 21, 2005. −125− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 this policy aside, JASSO is to be lauded for introducing estimate of the number of applications to short-term a more transparent and accountable approach to exchange programmes that they expected to receive. divulging policy decisions. The key points of the Not surprisingly, some institutions grossly bloated address may be summarised as follows: these projected numbers, anticipating that they would thus be awarded a greater number of scholarships. In 1. General Budget Allocation: At the Losing End of Competing Interests attempting to stem this development, JASSO, as of this fiscal year, has taken to determining scholarship JASSO received an operational budget of 22.7 billion allocation on the basis, not of projected numbers of yen for the academic year 2005~6, over half of which applications, but of actual exchange student admission has been allocated to supporting international student in the previous academic year, including that of activities. The largest portion of this budget has been independently-financed students. appropriated for financial assistance to independentlyfinanced students, with the number of ‘honours 3. The Scaling-down of ‘Special Category’ Scholarships5 scholarships’ for foreign undergraduate and graduate students earmarked to increase by 100 and 300, The allocation to institutions of JASSO scholarships respectively. Exchange student pilot schemes such as for special projects within the scope of the Short-term the ‘Joint French-Japanese Doctoral Programme’ and Student Exchange Promotion Programme (Inbound) ‘EU-Japanese Pilot Project’ have also been marked out (see note 5 below) has, as of 2005~2006, been for budget allocation. screened more rigorously, with the efficacy of these very projects being questioned. Consequently, the With regard to the Short-term Student Exchange Pro- number of ‘special category’ scholarships awarded has motion Programme, which includes JASSO scholarships dropped to approximately 28% of the total number of for NUPACE students, the fiscal year 2005~2006 scholarship allocations. Henceforth, in order to benefit witnessed an operational budget increase of 5 million from scholarships earmarked for the special UMAP yen. However, this increase has been allocated category, Japanese institutions will need to incorporate exclusively to supporting the ‘outbound’ part of the a commitment to UCTS in exchange agreements with programme, the budget for incoming exchange students partner universities. Importantly, institutions have remaining static. Moreover, rising costs incurred in the also witnessed a cut in the number of special category purchase of air tickets have had the adverse effect of scholarships awarded for the establishment of academic actually reducing scholarship numbers for incoming programmes taught in English, each institution now students to 1,800 nationwide, as mentioned above. receiving a maximum of 10 scholarships for such programmes. (In Nagoya’s case, the cut constitutes 2. Determining JASSO Short-term Student Exchange a 37.5% decrease from 16 scholarship places in the Scholarship Allocations: From Estimates to previous year.) Institutions will now be penalised Actualities through the withdrawal of one or more scholarships in Until the fiscal year 2004~2005, JASSO determined this category for failing to submit adequate exchange the allocation of inbound scholarships by requesting student study reports, or in the event that they grossly all institutions concerned to simply provide an overestimate the number of exchange students due 5 In addition to general (ippan) short-term scholarships, JASSO customarily reserves a specified number of scholarships for 1) institutions having established programmes taught in English, 2) UMAP member institutions, 3) consortium member institutions (i.e., bigovernment sponsored inter-university exchange agreements taking the form of consortium <university bloc> agreements), and 4) institutions incorporating internships into their programmes. −126− 短期留学部門 to participate in their English-language programmes. henceforth, to examine the extent to which the Institutions that cannot sustain an exchange student allocation of ‘special category’ scholarships is justified capacity of 20 students per annum for programmes in terms of policy efficacy and, moreover, review the taught in English will henceforth receive no scholarship future direction of and method of financial support for allocation for this particular category. the short-term student exchange promotion project in general. 4. Budgetary Concerns: Europe and the Issue of Travel Expenses The problem has been compounded by the fact Albeit an increasing number of applications are that, since national universities have been relabelled received from students enrolled at partner institutions national university corporations, not surprisingly, in Europe, JASSO, for budgetary concerns, has felt the private universities have seen fit to criticise JASSO need to curtail scholarship allocations for this region to for discrimination against them, particularly in the 19.5% of the total. Indeed, notwithstanding the budget allocation of short-term exchange scholarships for allocation of 224,000 yen for a round-trip air-ticket programmes taught in English. For reasons of fairness per scholarship place, students from Europe consume and transparency, JASSO intends to narrow the gap on average 320,000~330,000 yen on a standard one- existing between national university corporations and way ticket alone. As a result, JASSO is facing a 400 private institutions in the allocation of these ‘special million yen deficit on a travel budget of 850 million category’ scholarships. yen, equivalent to approximately 400 scholarship places. The cut in the total number of JASSO short- Finally, the actual notion of any continued support for term scholarship places to 1,800 comprises the direct short-term exchange programmes is being questioned. consequence of this deficit. As is the case with Europe’s ERASMUS scheme, funding for the programmes could theoretically be According to the JASSO representative, restrictions maintained in the initial five-year period following provided for in regulations pertaining to travel establishment, with institutions themselves being asked expenses, as well as frequent requests by exchange to make arrangements for financing incoming exchange students to change their travel itinerary, have rendered students after this time. The representative assured the the purchase of discount air tickets impossible. One audience that with scholarships for programmes taught tentative solution touted at the meeting was the in English already seriously eroded, JASSO would make provision of a fixed travel grant. Here, rather than every effort to maintain current scholarship numbers arranging and supplying successful applicants with for this category, especially in light of the general round-trip air-tickets, monetary assistance (somewhere policy significance of providing English programmes in the region of $500~$1,000) would be extended to at Japanese universities. Nevertheless, programme help defray travel expenses. co-ordinators also learnt that with new projects in the ascendant, any general increase in short-term 5. JASSO & the Short-term Student Exchange student exchange programme scholarships is close to Promotion Programme (Inbound): Evaluation and inconceivable, and that the Ministry of Education is of Future Policy Considerations the conviction that short-term exchange programmes JASSO has (somewhat belatedly) recognised the need to become more self-sustaining. necessity of evaluating the Short-term Student Exchange Promotion Programme that it established. Author’s Comments: Although the organisation finds an assessment The reaction amongst exchange programme co- of academic quality beyond its purview, it plans, ordinators to the above address, apart from general −127− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 deflation, was an interest in mounting an appeal to the that I would like to quibble with: Ministry of Education. And indeed, the importance 1. Whilst basing future scholarship allocation on past of short-term exchange programmes in fostering records of exchange student admission, rather than relations between universities at an international contrived estimates of possible applications, should level, promoting the internationalisation of Japanese be considered an improvement, this policy renders universities, and acquainting foreign students from all it difficult for institutions to meaningfully expand corners of the world with some notion of the substance their short-term student exchange programmes. of Japan, cannot be overemphasised. For example, institutions concluding new student exchange agreements would find it difficult to Simultaneously, however, in view of the reality of the secure scholarship support for students coming decreasing number of JASSO scholarships available, from these new partner universities, as no past institutions need to, either consider ways in which to record of student admission would exist. attract a constant supply of independently-financed 2. One short-term student exchange programme exchange students, or watch their programmes dwindle co-ordinator at the meeting proposed increasing into insignificance. Needless to say, exchange students the number of JASSO scholarships whilst who are financing their own stay in Japan will demand simultaneously reducing their individual value. This value for money and time spent away from their home proposal was rebuffed by the JASSO representative institutions. Many will gravitate to programmes that on the grounds that a minimum standard of living ensure a smooth transfer of credits and grades, in order should be guaranteed to scholarship recipients. to minimise any financial losses incurred. The academic Considering that independently-financed students quality of programmes taught in English in general will successfully manage to participate in short-term be put to the test. exchange programmes alongside scholarship recipients, and in view of the fact that close to 90% In order to prepare them for future challenges, it of foreign students enrolled in degree programmes may comprise a worthwhile endeavour for Japanese at Japanese universities are defined as being self- universities that co-ordinate short-term student financed, this argument rings hollow. If the result exchange programmes to undergo an external quality were an actual increase in scholarship numbers, assessment. What I refer to here is a comprehensive then I would argue that JASSO scholarships of evaluation of all facets of the programme, ranging slightly diminished value should be seriously from academic issues such as the curriculum and considered as an alternative to slashing scholarship teaching quality through to operational concerns, allocations per se. including budget use. Such external assessments should be conducted not by peers at national university corporations, all of whom face a similar predicament, but by professionals involved in comparable projects C. JASSO Retrenchment in Figures 1. Scholarship Provisions and Categories: An Overall Synopsis at either private institutions in Japan or at overseas How does this new JASSO picture translate into figures? institutions. Utilising graphs and tables, this section of the report As far as JASSO’s policy shift is concerned: In view of aims to illustrate the major trends in the allocation of the gaping chasm in the balance between the number JASSO short-term student exchange scholarships and, of incoming and outgoing exchange students, a tilt in by extension, go some way to elucidating the system scholarship allocation that favours the latter was only itself. to be expected. There are, however, two developments −128− 短期留学部門 Table 1. AIEJ (JASSO) Scholarship Provisions: April 1995 ~ March 2004 Year Scholarships Category 1995~1996 1,000 No Categorisation 1996~1997 1,750 1997~1998 1,900 1998~1999 1,500 No Categorisation 1. ¥80,000 monthly stipend (6~12 months) 2. Economy class round-trip air ticket 3. ¥25,000 settling-in allowance 1999~2000 1,803 No Categorisation 1, 2 & 3 as for 1998~1999 2000~2001 1,732 2001~2002 1,761 Provisions 1. ¥100,000 monthly stipend (6~12 months) 2. Economy class round-trip air ticket 3. ¥50,000 settling-in allowance *P&F 1,100 *S-t 650 P&F 1, 2 & 3 as for 1995~1996 S-t 1. ¥80,000 monthly stipend, 2 & 3 (as above) P&F 1,120 S-t 780 P&F 1, 2 & 3 as for 1995~1996 S-t 1, 2 & 3 as for 1996~1997 S-t ? *I ? *B ? S-t 1, 2 & 3 as for 1998~1999 I ¥80,000 monthly stipend (3~5 months) No Categorisation 1, 2 & 3 as for 1998~1999 2002~2003 1,618 No Categorisation 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2 & 3 as for 1998~1999 2003~2004 1,950 No Categorisation 1, 2 & 3 as above 2004~2005 2,000 No Categorisation 1, 2 & 3 as above 2005~2006 1,800 No Categorisation 1, 2 & 3 as above *P&F = Peace & Friendship Scholarship *S-t = Short-term Scholarship *I = Intensive Short-term Scholarship B ¥40,000 monthly stipend (3~12 months) *B = Bridging Scholars Table 1 depicts scholarship categories and provisions apply for and are allocated scholarships according as allocated by JASSO (formerly the AIEJ) since the to this set of classifications. To recap, in addition to establishment of the scholarship programme in 1995. ‘general’ (ippan) JASSO short-term scholarships, As mentioned above, if a simple comparison with a specified number of scholarships are customarily figures for the fiscal year 2004~2005 is to be made, reserved for 1) institutions having established suffice to say that the overall number of scholarships programmes taught in English 6, 2) UMAP member for 2005~2006 decreased considerably from 2,000 to institutions7, 3) consortium member institutions, and 1,800, a 10% cut. 4) institutions incorporating internships into their programmes (refer to Table 2, Pie Chart 1, and Graph As referred to above, since April 2001 a variety of 1). ‘General’ scholarships, as the name suggests, are scholarship categories, reflecting Ministry of Education not project-oriented, and institutions are at liberty to policy priorities, were incorporated into the framework award these scholarships to any exchange student from of the JASSO Short-term Student Exchange Promotion a partner institution. Program (Inbound). Japanese participating institutions 6 It was a Ministry of Education prod, urging the establishment at Japanese universities of programmes taught in English, that resulted in the establishment of the AIEJ (now JASSO) Short-term Student Exchange Promotion Program (Inbound). The percentage of JASSO scholarships allocated to this particular category now comprises only 19.5% of the total. 7 The acronym for University Mobility in Asia and the Pacific. UMAP aspires to promote student mobility in the region, an essential component of which comprises the transfer of credits between participating institutions (UCTS). −129− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 Table 2. JASSO Scholarship Classification – Overall Total: April 2005 ~ March 2006 (1) Of Which Special Category: Total No./ Scholarships Region Eng-Language Programme UMAP Consortium Internship Total No./Special Scholarships 800 141 31 27 16 215 C/S. America 46 6 2 0 0 8 Middle East 22 2 0 0 0 2 Africa 30 3 0 0 1 4 N. America 411 78 11 17 5 111 Oceania 140 19 13 5 1 38 Europe 351 102 4 9 4 119 1,800 351 61 58 27 497 Asia Total Pie Chart 1. JASSO Scholarship Classification – Overall Total (2). JASSO Scholarships According to Classification: April 2005 ~ March 2006 (Total: 1,800 Scholarships) Graph 1. Trends in JASSO Scholarship Allocation According to Scholarship Category. An Annual Comparison: April 2001 ~ March 2006 −130− 短期留学部門 Graph 2. Trends in JASSO Scholarship Allocation according to Recipient Region. An Annual Comparison: April 2002 ~ March 2006 Graph 1 provides a comparison of the overall none of the major players managed to increase their scholarship allocation according to classification since allocation of JASSO scholarships, although awards to the academic year 2001~2002, when the categorisation Waseda University were stationary. And whilst Nagoya of scholarships commenced. The figures are revealing University maintained its residual fourth place in the in that they more than demonstrate JASSO’s increasing pecking order of JASSO scholarship awards, it suffered ambivalence towards the granting of special category a damaging 15% cut in the allocation chase. scholarships. ‘General’ scholarships have seen their share of the pie rise from 48% in 2001~2002 to 72% in Actually, closer scrutiny of the table casts a shadow 2005~2006, in stark contrast to the atrophy of those upon JASSO’s new policy of determining scholarship special category scholarships reserved for English- allocation based on actual admission of exchange language programmes, consortiums, UMAP and students in the previous year. Why would Tohoku internships. University, which admitted 65 exchange students in 2004-2005, i.e., 25 more than its JASSO allocation, A glimpse at the regional distribution of JASSO be penalised by a 30% scholarship loss this academic scholarships (Graph 2) reveals an across the board year? Why would Tokyo University of Foreign Studies cut in allocations. Proportionally, the heaviest losers lose only 1 scholarship, even though the number in 2005~2006 comprised the Middle East and Africa, of exchange students that it admitted exceeded its respectively, a somewhat ironic result considering the scholarship allocation by a mere 11? It seems as though fact that JASSO’s budget is derived exclusively from JASSO’s explanation of its policy shift is not entirely ODA. The lightest losses were incurred by Central & convincing. South America and Oceania, both regions securing scholarships at levels well above 90% of last year’s 2. Nagoya University’s Scholarship Quotas: A Breakdown allocation. Table 4 depicts the number of scholarships made Table 3 presents the premiere division of universities in available specifically to Nagoya University for the the JASSO scholarship league. Readily deducible from academic year 2005~2006, divided according to the table is the fact that in the fiscal year 2005~2006 admission period and region. As noted above, if drawing −131− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 Table 3. JASSO Scholarship Allocation – Top Recipient Universities: April 2005~March 2006 Rank & Institution in 2005~2006 Total JASSO Scholarships 2005~2006 Short-term Exchange Students Admitted in 2004~20058 Kansai Gaidai U. 60 (68) <-12%> ? Waseda U. 60 (60) < = > ? Tsukuba U. 46 (53) <-13%> 106 4 (4) Nagoya U. 41 (48) <-15%> 67 5 (8) Tokyo U. of Foreign Studies 32 (33) <-3%> 43 1 (1) (2) 3 (3) (8) Keio U. 32 (33) <-3%> ? 7 (6) Osaka U. 31 (36) <-14%> 71 8 (5) Tohoku U. 28 (40) <-30%> 65 Hiroshima U. 28 (35) <-20%> 44 (7) 10 ( - ) (10) Tokyo Institute of Technology 24 (27) <-11%> 52 Kyushu U. 24 (31) <-23%> 54 ( ) = Rankings/Figures for 2004~2005 Table 4. JASSO Scholarship Quotas for the Academic Year April 2005~March 2006: Nagoya University Region Asia Scholarships Awarded Breakdown: C/S. America N. America 0 (1) 12 (11) 15 (19) Oceania 1 (3) Europe Total 13 (14) 41 (48) Apr 5 (5) 0 (0) 3 (3) 1 (1) 3 (4) 12 (13) Oct 10 (14) 0 (1) 9 (8) 0 (2) 10 (10) 29 (35) ( ) = Figures for 2004~2005 a comparison with the last academic year, NUPACE relation to Asia, Oceania and Central/South America. may well be concerned that its scholarship allocation Moreover, scholarships awarded to students enrolled was slashed by 15%. When one reflects upon the 58 at institutions in ‘Western’ industrialised nations now scholarships that were allocated to NUPACE in the account for 63% of the total, as opposed to 60% last peak year of 1999~2000, one will note an overall drop year. of 30% from this highpoint. Moreover, the still relatively large JASSO scholarship The Table reveals that, with the exception of North pool at Nagoya University comprises little consolation America, all regions are losers this year. Students to the majority of NUPACE applicants. Graph 3 applying for scholarship assistance from Asia and highlights that NUPACE consistently receives far more Oceania, in particular, will find admission to the applications than it can hope to allocate scholarships programme to have become radically competitive. to. Roughly, only 1 in 4 of all NUPACE applicants will benefit from JASSO awards in any given year; Pie Chart 2 depicts scholarship allocation as divided competition between students from Asia usually being by region. If compared to last year, one will note that particularly conspicuous with a ratio of approximately the proportion of scholarships allocated to Europe 6 applicants per place. Interestingly, NUPACE is also and North America have, to some extent, risen in receiving an increasing number of applications from 8 Actual statistics for short-term exchange students admitted to the three private universities listed on this table (i.e., Kansai Gaidai, Waseda, and Keio) were unknown to the author at the time of writing. All other universities listed are national university corporations, for which figures on actual short-term exchange student admission are available. −132− 短期留学部門 Pie Chart 2. JASSO Scholarship Breakdown by Region: April 2005~March 2006 (Total: 41 Scholarships) Graph 3. Proportion of NUPACE Applications per JASSO Scholarship Place: February 1996~March 2005 students enrolled at European partner institutions. In The regional composition of incoming students over the fiscal year 2004~2005, applicants from this regions NUPACE’s nine-year lifespan is depicted in Graph outnumbered available scholarships by a ratio that was 4. The steady ascent of Europe and North America in excess of 3:1. is particularly noticeable when viewed from the perspective of this graph. Factors contributing to the shift in student composition may be considered D. NUPACE: Student Breakdown to be the consequence of an adjustment in the Now moving onto the reality of student admission, the regional allocation of JASSO scholarships, as outlined remainder of this report will limit itself to illustrating to above, and an increasing willingness on the part the reader NUPACE as it currently stands, commencing of exchange students from North American and with the breakdown of students who actually came to European institutions to participate in NUPACE in Japan to participate in NUPACE in the academic year an independently-financed capacity (see Table 5). 2004~2005. The introduction, effective from April 2002, of a minimum exchange period of 3 months, as opposed A comparison with figures last year demonstrates that to the 6 months that had been the norm until the students enrolled at institutions in North America academic year 2001, has also opened NUPACE to saw the largest gain in the academic year 2004~2005, those exchange students who previously felt unable jumping from 20% to 25% of total student composition. to absent themselves from their home universities for All other regions witnessed a slight decrease in their the stipulated six-month minimum. This liberalisation portion of the pie. of the programme is particularly popular with students −133− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 Pie-chart 3. NUPACE Students by Region of Home Institution: April 2004~March 2005 (Total: 67 Students) Graph 4. Students by Region of Home Institution: February 1996 ~ March 2005 (Total: 466 Students) Table 5. NUPACE Students by Source of Funding: April 2004~March 2005 (Total: 67 Students) Region April 2004 Admission JASSO-funded September 2004 Admission Self-financed JASSO-funded Self-financed Regional Sub-Total JASSO-funded Self-financed Asia 5 5 16 3 21 8 Europe 4 1 10 4 14 5 N. America 3 4 9 1 12 5 Oceania Total 1 1 0 0 1 1 13 11 35 8 48 19 enrolled in partner institutions in the United States, students for academic year 2004~2005: whose academic calendars tends to differ from that in In the fiscal year 2004~2005, 72% of 67 exchange Japan. students admitted to NUPACE benefited from JASSO Table 5 summarises data on the ratio of JASSO- funding. This comprises a marked decrease from the 9 91% of NUPACE students enjoying such support funded students in relation to independently-financed 9 Not all independently-financed students are entirely self-supported. A certain number receive some form of financial assistance from their home institutions or other organisations, although NUPACE is not currently aware of the extent of this assistance. −134− 短期留学部門 in the year 2003~2004, and readers will note that an exchange programme, none of the NUPACE faculty students from North America and Europe have become members are adequately versed in either public increasingly willing to support themselves for the relations or budget keeping to ensure the success of 10 duration of their exchange . Taking into consideration the programme in the absence of JASSO aid. As alluded the declining availability of JASSO funding, one would to above, it may comprise a worthwhile endeavour for hope that this trend continues, and it may be a good NUPACE, in the first instance, to undergo an external omen that only 50% of the 24 students admitted to quality assessment, as conducted on all facets of the NUPACE in April 2005 received JASSO awards, with programme, managerial and academic. And again, such the remainder opting to participate in the programme an external assessment should be conducted not by as independently-financed students. NUPACE’s peers at national university corporations, but by professionals involved in comparable projects at either private institutions in Japan or at overseas E. Concluding Comments: The Next Step institutions. Although it not yet entirely obvious to those involved in the programme, NUPACE is, in fact, confronting On the local level, it may also be of value to conduct a crisis. The possibility was mentioned in my article a university-wide questionnaire on the operation 11 in last year’s ECIS Journal , but what has become of NUPACE. Although NUPACE comprises Nagoya apparent is that this programme can no longer take University’s representative short-term student Ministry of Education/JASSO largesse for granted. exchange programme, no meaningful attempt has Indeed, JASSO has unequivocally asserted that it is been made to gauge the opinion of the trustees, expecting universities to shoulder more of the financial deans, faculty members, or administrative officers burden for hosting exchange students themselves. As of this University with regard to the running of the such, in order to remain a viable programme, NUPACE programme. For our post-JASSO survival, I believe it will need to find means of attracting independently- imperative to reinforce university-wide involvement in, financed students. and support for NUPACE and, thereby, to ensure that it is not seen as a remote project capable of sustaining However, NUPACE is a comparatively self-contained itself indefinitely12. programme and, although experienced in co-ordinating 10 The vast majority of NUPACE students are enrolled at institutions with which Nagoya University, or a School of Nagoya University has concluded a tuition-waiver agreement. Hence, independently-financed students do not, in principle, pay tuition fees to this university. They are responsible for maintenance only. 11 NUPACE – Back on the Starting Block. University Autonomy and the Balance Challenge, pp. 133~147 in『名古屋大学留学生 センター紀要 第2号』(2004年). 12 Feedback to this article should be addressed to the author at [email protected]. −135− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 Appendix 1. Institutions Sending Students to NUPACE – February 1996~March 2005 Country Australia Belgium Brazil Cambodia Canada China (PRC) Denmark France Germany India Indonesia Korea (ROK) Mongolia Philippines Poland Russia Sweden Taiwan Thailand UK USA Uzbekistan Vietnam 23 Countries Institution Agreement with Macquarie University University of South Australia University of Sydney Institut Supérieur de Traducteurs et Interprètes, Brussels University of Brasilia Royal University of Phnom Penh Toronto University Beijing 2nd Foreign Language Institute Beijing University of Technology Central South University of Technology China University of Political Science and Law East China Normal University East China University of Politics & Law Fudan University Harbin Institute of Technology Jilin University Nanjing University Northeastern University Peking University Shanghai Jiaotong University Tongji University Tsinghua University Xi’an Jiatong University Zhejiang University University of Copenhagen University of Grenoble University of Lyon III University of Paris-Sorbonne (Paris IV) University of Strasbourg Technical University of Braunschweig Technical University of Chemnitz Technical University of Munich University of Freiburg University of Poona Bandung Institute of Technology Gadjah Mada University Padjadjaran University Surabaya University Chungnam National University Ewha Women’s University Gyeongsang National University Korea Maritime University Korea University Mokpo National University National University of Mongolia University of the Philippines, Los Banos Warsaw University of Technology University of Gdansk Moscow State Institute of Engineering Physics Moscow State University Russian Academy of Science, Siberian Division Lund University National Chenchi University Chulalongkorn University Kasetsart University University of Bristol University of Manchester University of Sheffield University of Warwick Harvard University North Carolina State University New York University St. Olaf College Southern Illinois University at Carbondale University of California, Los Angeles University of Cincinnati University of Illinois (Urbana-Champaign) University of Kentucky University of Michigan University of Pennsylvania Tashkent State Institute of Law University of World Economy and Diplomacy Hanoi University of Technology 73 Institutions *GSID *U *U *Languages and Cultures *U *Law *Education *Languages & Cultures *Engineering *Engineering *Law *Education *Law *U U/Engineering *U *U *Engineering U *U *U U/*GSID *U *U U *U/*Letters *GSID *Letters *U U *U *U *U U *Engineering/*Science *U *Letters *U *Economics *U *U *Engineering *Education/*GSID *U *Law *GSID *Engineering *Medicine *Engineering *Information Science *Agricultural Sciences *Law *Law *U *U *U *Science *U *U *Medicine *U *U *U *U Education *U *U *Engineering *Engineering *Medicine *Law *Law *Information Science No. Admitted 5 2 6 1 1 1 2 9 9 7 7 6 2 10 1 5 6 6 2 2 2 6 1 2 1 12 5 1 10 1 5 2 7 2 4 23 2 5 9 7 36 2 9 13 1 11 11 9 2 1 1 1 1 22 10 3 5 13 8 3 54 7 7 2 1 11 5 1 6 5 5 1 2 466 Students (* indicates that a tuition-waiver agreement has been concluded) −136− 短期留学部門 Appendix 2. NUPACE Students by Country of Institution: February 1996~March 2005 (Total: 466 Students) Appendix 3. NUPACE Academic Programme 2005~2006: An Overview Japanese Language Courses Standard Course (4 credits): Intensive Course (8 credits): Elementary Japanese I ~ Advanced Japanese II (8 levels) Elementary Japanese I ~ Intermediate Japanese II (4 levels) Introductory Courses Taught in Japanese 2 credits each Global Society I, II (A/S) Introduction to Japanese Language & Culture (A) Introduction to Japanese Linguistics I, II (A/S) Introduction to Japanese Society & Culture I, II (A/S) Introduction to Linguistics I, II (A/S) Japan Area & Intercultural Studies 2 credits each Communication and Human Relations in Cross-Cultural Contexts (S) Contemporary Japanese Society (S) Intercultural Communication (A) Introduction to Japanese History (A) Introduction to Japanese Politics (S) Introduction to the Japanese Economy (A) Modern Japan & its Post WWII International Relations (S) Science & Technology in Japan (A) Courses in the Student’s Major 2 credits each, with the exception of Advanced Studies in Japanese Language & Culture Education Ctr. for Int’l Students Adv. Studies in Japanese Language & Culture I, II (1-yr. course; A~) Japan as an International Society: A Socio-legal Perspective (S) Agricultural Sciences Introduction to Bioagricultural Sciences (A) Economics Developmental Economics (S) Education Education in Japan (S) Engineering Introduction to Applied Physics, Materials & Energy Engineering (S) Introduction to Chemical & Biological Industries (S) Introduction to Civil Engineering & Architecture (A) Introduction to Production Engineering (S) Overview of Adv. Elec., Electronic & Information Engineering (A) −137− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 Environmental Studies Highlights of Environmental Studies (S) Information Science Aspects of Information Science (S) International Development Introduction to International Development (S) Japan’s Development Experience (A) Languages & Cultures Introduction to Critical Discourse Analysis (S) Law Politics & Law in Japan (A) Letters Linguistics & Language Acquisition I, II (A/S) Overall Architecture of English I, II (A/S) Medicine Health Service Systems, Administration & Relevant Seminars (A/S) Others Selected Grad. School of Int’l Development and Law Courses Guided Independent Study (GIS) Regular courses available to all degree-seeking students (*J) *J = Medium of instruction is Japanese −138− A = Autumn Semester S = Spring Semester 短期留学部門 NUPACE のグループダイナミックス −学生の個性が集う場所− 留学生センター・短期留学部門 助手 筆 内 美 砂 2004年度春学期の特徴として、継続生が主導的役割 はじめに を発揮したことが挙げられる。半年の留学生活を経験 名古屋大学短期交換留学受入れプログラム した継続生は、新規 NUPACE 生に対して「先輩」の (NUPACE)に携わり、2年が経過した。NUPACE 立場にあり、継続生が率先して「後輩に教えてあげよ に 参 加 す る 留 学 生( 以 下「NUPACE 生 」 ) の う ち、 う」とする姿勢が顕著であった。特に一部の継続生は 在籍期間が短い学生は4ヶ月でプログラムを修了する 春学期が近づくにつれ、自分たちが「先輩である」こ ため、来日時に短期留学室で交わした挨拶やオリエン とを意識することで自信が増し、より活動的になる変 テーションの記憶も鮮明なまま、あっという間に別れ 化が見られた。 を告げなければならない。NUPACE 生の入れ替わり この傾向は学生の性格によるものが大きいが、併せ は驚くほど早く、毎学期目にするグループダイナミッ て継続生の日本語力の向上が後押ししていることも考 クスはとても興味深い。 えられる。半年の留学生活を通して日本語によるコ 筆者の2003年度活動報告(『名古屋大学留学生セン ミュニケーションに自信をつけ始めた継続生は、新規 ター紀要』、第2号、P.148-151)では筆者の業務概要 NUPACE 生の中でも特に日本語初心者の学生にとっ を紹介したが、2004年度は、春・秋学期それぞれの て、言葉の面でも頼りになる存在であり、継続生が積 NUPACE 生の傾向と生活環境に焦点を当てて報告す 極的にサポートする動機づけとなっている。新しい仲 る。 間を迎え入れる雰囲気は継続生によって盛り上げら れ、春学期を通して、NUPACE 生の交友関係は特に A.2004年度・春学期(2004年 4 月−2004年 9 月) 活気があったと思う。 しかし残念ながら、来日後1ヵ月で早期帰国を申し A-1.NUPACE 生の傾向 出る学生がいた。特に落ち込んでいる様子も見せず、 2004年春学期の在籍 NUPACE 生は、合計53名で 笑顔で挨拶する場面もあったため、プログラム関係者 あった。そのうち、2003年秋学期から継続して在籍し も周囲の友人も大変驚いた。これまで家族と一緒に暮 ていた NUPACE 生(以下「継続生」 )は29名である。 らしてきたこの学生にとって、日本への留学は初めて (図1参照) の異文化であることに加え、初めての「一人暮らし」 であった。新しい環境に慣れること、食事や身の回り 図1.2004年度春学期 NUPACE 在籍状況 地域別人数(継続生+新規受入れ生 内訳) (人) の雑用、日本語の勉強などが大きなプレッシャーと なっていたようで、数度の話し合いを経て助言をしな がらも、最終的に本人の意向に従って帰国の手続きを 取った。 2004年度春学期のもうひとつの特徴として、多く の NUPACE 生が入居する国際嚶鳴館(日本人学生と 外国人留学生の混住寮)におけるコミュニケーショ ンの活発化、寮生活の改善を目指した日本人学生や NUPACE 生の活動が挙げられる。この点について、 次の二つの項目で紹介する。 −139− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 A-2-1.国際嚶鳴館−入居オリエンテーション 国際嚶鳴館は名古屋大学学生総合支援課の管轄の 下、入居学生の自治によって寮生活が運営されてい 表1.国際嚶鳴館 BK の参加状況 (2004年度夏帰国生アンケー トより) ※ 国際嚶鳴館入居者35人のうち28人回答(複数回答 含む) る。自治会委員は半年ごとに任期を交代するため、新 日本語 BK のみ 規 NUPACE 生のための入居オリエンテーションの準 英語 BK のみ 備は、新しい自治会委員との顔合わせに始まり、具体 両方参加した 的な話し合いを重ねて企画・実施する。 途中で参加しなくなった 1人 16人 1人 12人 2003年度秋学期は短期留学部門、教育交流部門、旧 留学生課(現国際課)と自治会委員が連携して入居オ く異なるという意見が多い。また、英語 BK に「留 リエンテーションを実施したが、寮規則の説明、混乱 学生アドバイザー」の日本人自治会委員が同席する の多いゴミ分別の指導は、インターナショナル・レジ が、最低限の伝達事項を伝えるだけの傾向にあり、 デンス(外国人留学生、研究者専用の大学宿舎)の日 NUPACE 生にとっても参加する意義を見出せなくな 本人チューターの力も借りた上、大学側が主導を取っ り、途中で参加をやめる学生もいる(表1参照) 。BK た。 のあり方については、日本人、留学生ともに、引き続 2004年度春学期は、国際嚶鳴館の自治会委員が中心 き改善の余地があると考えている。 となって企画・実施するよう促した。その結果、寮規 2004年度春学期の NUPACE 生は、国際嚶鳴館の生 則は寮長が日本語で、アメリカ人の継続生が英語で逐 活環境の改善を求めて、日本人学生に働きかける動き 次通訳し、 「自治による寮運営」をアピールできるよう、 が活発であった。そのひとつの現れとして、国際嚶鳴 オリエンテーションの進め方を改善した。 館の寮大会への参加が挙げられる。寮大会は国際嚶 ゴミ分別の説明は、実際に入居している学生自ら説 鳴館で年に2回開催され、寮規則の変更や取り決め 明することが最もわかりやすいと考え、日本語と英語 を審議・議決する場として、原則として全入居者の の説明はどちらも継続生に依頼した。これは英語圏出 参加が求められている。これまでも一部の NUPACE 身の継続生が多く在籍していただけでなく、日本語が 生が参加していたと思われるが、2004年度春学期は、 堪能な継続生も数名いたこと、さらに意欲的な継続生 NUPACE 生が大会進行の逐次通訳を担当するだけで の団結力によって実現した。寮生活の細部まで把握で なく、留学生の立場から要望を申し出るなど、積極的 きない大学関係者よりも細やかな説明がなされ、継続 に関わる姿勢が見られた。 (主な要望は、共有設備と 生の誠意が伝わるオリエンテーションであった。 してオーブンの購入、館外者の入居スペースへの立ち 春学期の入居オリエンテーションは、自治会委員と 入り許可など。)NUPACE 生の要望は認められなかっ 継続生が主導を取ることで、自治会委員の外国人留学 たが、寮生として意見や要望を申し出て、寮内に働き 生への働きかけや双方のコミュニケーションを促すた かけたことは評価されうる。 めの弾みとなったと思う。特に大学関係者が進行役を 日本人入居者との交流については、フロアによって 務めるオリエンテーションと違って、「自治運営」の 雰囲気も違い、NUPACE 生の感想もさまざまである。 特色を打ち出したオリエンテーションを試みたこと 特に日本人入居者との接点や交流が少ない理由につい で、自治会委員の意識を変えるきっかけとなったと言 て、帰国直前の NUPACE 生から意見を集めた(表2)。 える。 言葉の壁だけでなく、留学生との混住寮であるという 意識が日本人入居者には必要であると主張する意見が A-2-2.国際嚶鳴館−寮生活および寮大会への参加 多かった。毎学期初めの入居オリエンテーション時に 国際嚶鳴館では毎週、ぞれぞれの階の部屋区分(ブ は、自治会委員と連絡を取り、日頃の NUPACE 生の ロック)ごとに BK(ブロック会議)を開き、寮生 意見や助言を伝えているが、約230人もの大所帯に対 活について日本語で話し合っている。NUPACE 生 しては、自治会委員を中心に地道な働きかけが必要で の多くは留学生を対象とした英語 BK に参加してい ある。 る。この英語 BK は2003年から実施されているが、 NUPACE 生の感想として、日本語 BK と内容が大き −140− 短期留学部門 表2.国際嚶鳴館における日本人との交流について(2004年度夏帰国生アンケートより) ※ 国際嚶鳴館入居者35人のうち28人回答 【質問:日本人学生との交流が難しいと感じる理由は何ですか。】(複数回答可) 語学の問題 18人 生活時間の違いにより、会う頻度が少ない。 12人 外国人留学生と日本人学生の比率 5人 イベントなど、交流イベントが少ない 9人 その他(以下、自由記述) 5人 ・ 年齢的な違い(日本人入居者は全員学部生であるのに対し、NUPACE 生は学部生か ら大学院生まで年齢層が多岐に渡る。) ・ 共有できる話題が少ない。 ・ 女子フロアは(フロアごとに占める)外国人留学生数が多い。 ・ 日本人入居者に対して、留学生に関する情報が十分でない。 ・ 留学生への興味が薄い。交流をしたがっている人が多くない。 ・ 男子学生は、(女子学生に対して)積極的に話しかけようとしない。(シャイである。) A-3.帰国に向けて 図2.2004年度秋学期 NUPACE 在籍状況 地域別人数(継続生+新規受入れ生 内訳) (人) 通常の帰国前オリエンテーションの中で新たに試み たことは、滞在期間中の体験、思い出について発表す る方法である。これまで一人ずつ話をしてもらう形式 を取っていたが、時間的制約を考慮し、数名ごとにグ ループ分けをし、模造紙に「良かった点」 「悪かった点」 を思いつくまま書き出すよう指示した。グループごと に作業することで、楽しかったこと、笑い話、苦労し たことを共有できるだけでなく、このアクティビティ がブレーンストーミング的な役割を果たし、帰国前の 慌しい時期に、自分の留学体験を振り返る時間となる ことを目指した。 インターナショナル・レジデンスに入居する少数の B.2004年度・秋学期(2004年 9 月末−2005年 3 月) NUPACE 生については、国際嚶鳴館の生活と比べて B-1.NUPACE 生の傾向 日本人学生との接点が少ないこと、NUPACE の仲間 2004年春学期の在籍 NUPACE 生は、春学期と同じ たちと離れていることに孤独感や不満があるかもしれ く合計53名であった。そのうち、2004年春学期からの ないと懸念していたが、結果的には、継続生を中心と 継続生は10名である。(図2参照) した友好的なムードもあり、留学生活全般への満足度 春学期と違い、秋学期の継続生は、日本語を得意と はバランスが取れていたようである。 するアジア圏の NUPACE 生が多くを占めた。また性 アンケート調査への協力にも積極的で、回収率が高 格的にも比較的おとなしい学生たちであったため、春 かった。これまで配布していたアンケート(NUPACE 学期と同じ形で国際嚶鳴館の入居オリエンテーション プログラム全般・授業評価)に加え、特に宿舎につい に関わってもらうことができなかった。例年、夏に帰 て詳しく問うアンケートを渡したところ、率直な意見 国する NUPACE 生が多いため、秋学期に入って、継 が多く寄せられ参考となった。今後の改善点を模索す 続生と新規生の人数バランスに差が出てしまうことは るための資料として、継続して調査していきたい。 避けえない。国際嚶鳴館の入居オリエンテーションは、継 続生が1名だけ打ち合わせに参加する程度に留まった。 入居オリエンテーションの詳細については後述する。 2004年度秋学期に来日した NUPACE 生は、春学期 −141− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 と比べ、NUPACE 生の間でも交友関係がやや消極的 に感じられた。同じ国・地域の出身者同士で集まるこ とは比較的自然なことであるが、積極的にネットワー 表3.国際嚶鳴館 BK の参加状況 (2004年度春帰国生アンケー トより) ※ 国際嚶鳴館入居者18人のうち12人回答 日本語 BK のみ クを広げようとする傾向が全体的に弱かったように感 じられる。 ひとつの理由として、2004年夏後半に留学生セン 0人 英語 BK のみ 5人 両方参加した 5人 途中で参加しなくなった 2人 ター1階ロビーに導入されたワイヤレス LAN の影響 が考えられる。以前から自分のラップトップを持参す る NUPACE 生は存在し、寮または留学生センターの 治会委員の間でノウハウを引き継いでいってもらいた コンピューター室で使用していたが、ロビーで自由に い。 パソコンを使える環境は、寮の自室やコンピューター BK については、日本語力のある継続生が比較的多 室より開放感があるだけでなく、センター入り口に近 くいたことから、日本語 BK と英語 BK の両方に参加 いため、友達と会ったり会話をすることも容易にでき した学生がいたことがアンケートからわかる(表3参 る。使用環境の利便性が増したことで、NUPACE 生 照)。 がパソコンと向き合い、母国の家族や友人とチャッ しかし依然、語学の壁に問題意識を持っていること トや IP 電話を楽しみ、ブログの書き込みに費やす時 は変わらない(表4参照)。語学力は早急に変化する 間が伸びたのではないかと思われる。これらの要因を ものではないため、 その差を少しでも補うものとして、 NUPACE 生の交友関係の傾向に結びつけ、その原因 語学以外の要素におけるコミュニケーション能力を高 と断定するのは短絡的であるが、ひとつの着目点とし めること、さらに寮の特色である混住寮の意義を強調 て今後も観察していきたい。 し、日本人入居者の意識を変えていく努力が必要であ 2004年度秋学期は、母国からの来訪者(家族など) ると考える。 が多かったこと、NUPACE 生の海外渡航率が高かっ たことも顕著であった。海外渡航の目的は、休暇を利 用して近隣アジア諸国に遊びに出かけたり、母国に一 表4.国際嚶鳴館における日本人との交流について(2004 年度春帰国生アンケートより) ※ 国際嚶鳴館入居者18人のうち13人回答 時帰国するためである。これまで日本国内を旅行する 学生が一般的であったが、日本にいる機会を利用しア 【質問:日本人学生との交流が難しいと感じる理由は何です か。】(複数回答可) ジア諸国も回るという発想が広まったことは、秋学期 語学の問題 10人 の特徴として挙げられる。 生活時間の違いにより、会う頻度が少ない。 外国人留学生と日本人学生の比率 2人 B-2.国際嚶鳴館−入居オリエンテーションと寮生活 イベントなど、交流イベントが少ない。 1人 秋学期の入居オリエンテーションは、前述のとおり その他(以下、自由記述) 1人 継続生の参加が芳しくなかったが、自治会委員の活躍 ・ 年齢的な違いから、共通する話題が少ない。 5人 は引き続き評価できる。到着後間もない NUPACE 生 にとって、説明を長々とすることは効果的でないとい B-3.帰国に向けて う意見が挙がり、要点を押さえた解説に改善が見られ 2003年度に引き続き、2004年春および夏に帰国した た。特にゴミ分別、諸経費の支払い方法については、 NUPACE 生から、帰国後の生活、心境、母国環境へ 模造紙にイラスト入りでポイントを描くなど、発表方 の再適応に関する体験談やアドバイスなどの情報収集 法に創意工夫が見られた。自治会委員がただ「説明す をし、帰国前オリエンテーションで参考資料として配 る」だけでなく、 「聞いてもらうためにどう発表すべ 布した。日本の生活習慣やコミュニケーションスタイ きか」という視点をもって準備したことは大きな前進 ル、気候や環境に慣れた NUPACE 生は、帰国後の生 である。オリエンテーション後の感想として、「発表 活について、留学前には感じなかった違和感を覚えた することに不慣れであったが、やってみてよかった。 り、新たな捉え方をすることもある。離れている間に 達成感があった。」とのコメントも聞かれ、今後も自 生じる周囲の人々との価値観や考え方のギャップも予 −142− 短期留学部門 想され、帰国後も多かれ少なかれ、「異文化」が待ち 受けていることを認識してもらうことが大切と考えて おわりに いる。NUPACE の先輩たちの実体験は後輩にとって 2004年度は、前年度にも増して NUPACE の参加者 心強いだけでなく、筆者自身にとっても、一部ながら 数が伸び、ますます多様なグループダイナミックスが も帰国生の様子を追跡する機会となっている。 展開された年だったと思う。半年毎に学生が入れ替わ 毎学期聞かれる感想に、「一学期間の留学は短すぎ ることで、NUPACE 全体の雰囲気もがらりと変わる。 る」という声が多い。実際、2004年秋学期に来日した 多くの NUPACE 生が生活する国際嚶鳴館では、日 NUPACE 生の中で、母国大学の先輩(NUPACE 一 本人入居者の学生層も変わってきており、新設当初と 学期間修了)から、一学年間の留学を勧められてその 比べると留学生との寮生活にも変化が見られる。英語 決断をしたケースが見られる。 によるコミュニケーションの問題は依然残り、日本語 プログラム応募者にとって留学期間を選択できるこ 力と英語力を両方もつ NUPACE 生に対しては寮内の とは、在籍状況や進路に応じた決断が可能となり、よ 橋渡し役としての依存度が高いが、日本人入居者の間 り多くの学生に留学のチャンスが広がる。しかし一学 でも、留学生との生活を「楽しむ」余裕が少しずつ生 期間では、生活に慣れて余裕が出てきた頃に帰国とな まれてきている。大学の授業だけでは得られないもの るため、勉学や研究、その他の活動において探求に限 を、国際嚶鳴館の生活を通して享受してもらいたい。 りはある。NUPACE 修了後に日本に戻るための情報 留学生活をいかに有意義なものとするかは、学生本 (奨学金、留学プログラム)を求める学生も少なくない。 人の努力はもちろんのこと、受入れに携わる関係者の 帰国時期になると頭を悩ませることは、宿舎の退去 支えも大きい。本年度は早期帰国のケースも見られた である。友人との別れを惜しむ学生の気持ちは十分理 が、学生は最後までプログラムを全うする可能性と力 解できるが、最後の晩までパーティーをし、パッキン を持っている。指導教員を始め、多くの教職員、地域 グや部屋の清掃、不要品の片付けもままならないケー ボランティアの方々の力添えに感謝するとともに、ま スが必ず数件出てくる。宿舎や国際課の職員に迷惑を すます個性的な NUPACE 生の輪を、学内外に広げて かけることも多々あり、学生のけじめと責任感が問わ いけるよう努めたい。 れる時期でもある。未然に防ぐことができるものにつ いては、引き続き対処法を検討していきたい。 −143− 資 料 ●留学生センター概要…………………………………………………………………… 146 ●留学生センター沿革…………………………………………………………………… 150 ●平成16年度 留学生センター・国際課教職員 …………………………………… 152 ●平成16年度 留学生センター各種委員会委員 …………………………………… 153 ●平成16年度 留学生センター・国際課関連行事等記録 ………………………… 156 ●平成16年度 授業担当および学位論文審査 ……………………………………… 168 ●留学生センター主催研究会記録……………………………………………………… 169 ●日本語研修コース(第50期)修了生 ……………………………………………… 170 ●日本語研修コース(第51期)修了生 ……………………………………………… 172 ●日本語・日本文化研修コース(第23期)修了生 ………………………………… 175 ●平成16年度 短期交換留学生(NUPACE) ……………………………………… 177 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 留 学 生 セ ン タ ー 概 要 現在は日本語・日本文化教育部門,日本語教育メディ 目 的 ア・システム開発部門,教育交流部門,短期留学部門 1993年に学内共同教育研究施設として設立された留 の4部門で構成されています。留学生に対する日本へ 学生センターは,設立当初よりその機能を拡張し続け, の案内役というだけでなく,名古屋大学の国際化を担 組織図 国際交流委員会 留 学 生 専 門 委 員 会 短期交換留学生受入れ実施委員会 セ ン タ ー 連 絡 会 議 日 本 語 研 修 コ ー ス センター企画運営委員会 日本語・日本文化研修コース センター協議会 学 部 留 学 生 向 け 授 業 日本語・日本文化教育部門 全 学 向 け 日 本 語 講 座 短期留学生向け日本語授業 日韓共同理工系学部留学生予備教育 教 材 開 発・ 研 究 活 動 グローバルな日本語教育 シ ス テ ム の 構 築 総 日 本 語 教 育 メ デ ィ ア・ シ ス テ ム 開 発 部 門 長 インターネットを活用した マルチメディア教材の開発 調 セ ン タ ー 長 留 査 研 学 究 生 活 相 動 談 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン 教 育 交 流 部 門 海外留学に関する情報提供 交 流 ネ ッ ト ワ ー ク 調 査 研 究 活 動 教育プログラム計画立案 短 期 留 学 部 門 教育プログラムコーディネーション 受入実務コーディネーション 短期留学プログラム海外広報 研究協力・国際部 国 際 課 教 材 開 発・ 研 究 活 動 −146− う中心的施設として重要な役割を期待されています。 また10月から翌年の1月まで,初級から上級までの能 留学生が自立した学生生活を営めるように,日本語や 力別で日本語の授業を行っています。春休みおよび夏 日本文化の教育,そして生活上・修学上のさまざまな 休みの期間には1日5時間から7時間の日本語の集中 問題に関して支援システムを確立し対応しています。 講座が行われています。 一方,短期留学プログラムでは,短期留学生に日本の いずれのコースも受講は無料で,単位を取得するこ 大学生活を紹介するのみならず,日本人学生にも国際 とはできません。部局に情報が提示されますので,受 社会の一端を経験する機会を作っています。更に21世 講希望者は決められた期間に受講申し込み手続きを行 紀のインターネット学習の教材開発やネットワーク構 ない,レベル分けテストを受けてください。名古屋大 築をめざしています。 学の学生または研究者であることを証明する学生証や 入学許可書等が必要です。 5.短期留学生日本語講座 組 織 短期交換留学制度を利用して,本国の大学や大学院 1996年8月短期留学部門が本稼動となり,同年11月 に在籍したまま1学期あるいは1年間本学で学ぶ短期 には指導相談部門を教育交流部門に名称変更,更に 留学生を対象とする日本語講座です。日本語能力のレ 1999年4月日本語教育メディア・システム開発部門が ベルによって3つのクラスで,毎日2時間の授業を 新設されました。 行っています。 6.日韓共同理工系学部留学生予備教育 日韓共同事業によって日本に留学した韓国の理工系 活動内容 学生たちが,学部に入学する前に受ける6ヵ月間の日 本語および専門科目のコースです。学部入学後,速や 日本語・日本文化教育部門 1.日本語研修コース かに勉学生活に適応できるように高度な日本語運用能 「日本語研修生」のためのコースです。本学または 力の養成と日本語による専門科目の予備教育を行いま 近隣の大学に配属された国費留学生のうち,研究留学 す。 生および教員研修留学生で日本語の予備教育が必要な 7.日本語教育の教材開発および研究活動 人を対象に,4月から9月まで,または10月から翌年 初級・中級テキストおよび上級の教材を開発してい 3月までの6ヵ月間に,16週間の集中的な日本語教育 ます。また,日本語教育に関する国内外の情報収集や が行われています。 調査・研究も積極的に行っています。 2.日本語・日本文化研修コース 「日本語・日本文化研修生」のためのコースです。 日本語教育メディア・システム開発部門 10月から翌年9月までの12ヵ月間に31週間にわたっ JEMS は,インターネットおよびマルチメディアの て,日本語,日本事情,日本文化に関する特殊講義。 技術を利用した日本語学習ソフトを開発し,遠隔教育 レポート作成指導がすべて日本語で行われています。 による日本語学習を実現するモデルを研究するという 後半には,学部の専門科目の講義を聴講することもで 目的で,1999年4月に設立されました。 きます。 日本語学習ソフトの開発は,学習者がそれぞれの必 3.学部留学生向け日本語授業 要性と速度に合わせて使用できる自律学習モデル,お 各学部の1年生,2年生を対象とした上級の日本語 よび学習者と教師が共通の達成目標を定めて,イン 教育です。専門書を読む,レポートを書く,講義を聞く, ターネットや創造ツールを用いて共に学習するという ゼミで発表するなど,大学での勉学に必要とされる日 共働もモデルのふたつのモデルを基盤としています。 本語の技能を伸ばすことが目的です。学生は週に4時 JEMS は,インターネット技術の活用によって,外 間から6時間の授業を受け,単位を取得しています。 国語としての日本語教育に携わる機関が資源を共有し 4.全学向け日本語講座 協力しながら新しい日本語学習ソフトを開発したり, 全学の外国人留学生および外国人研究者等を対象と 新たな日本語学習環境を創出することをめざして,全 した日本語の授業です。平常は,4月から7月まで, 世界とのネットワークを構築しています。 −147− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 教育交流部門 学生のニーズに答えるためさまざまな専門の講義が用 1.留学生相談 意されています。短期交換留学受入れ実施委員会のも 海外からの留学生に対して日本での研究や生活が有 と,大部分の講義が英語で開講されています。プログ 意義なものとなるよう,留学生の修学上の問題や日本 ラムへの応募資格は,名古屋大学と学術交換協定を締 社会での生活上の問題について一人一人を大切にした 結している大学の正規学生で,6ヶ月または1年の留 指導・助言を行っています。相談内容は多岐にわたり, 学期間を選択できます。NUPACE に関する業務は, 事務手続き,指導教官,奨学金,在留資格,宿舎,健康, 教育プログラムの作成,実施,コーディネーション, 家族,さらに留学相談等を扱っています。よくわから また国内外での広報活動,学生の入学許可まですべて ないこと,困ったことがある時の最初の窓口です。 を短期留学室(NUPACE Office)が行っています。 2.オリエンテーション 1.教育プログラム計画立案 ① 4月と10月の年2回,新しく入学した全学に留学 日本語・日本文化教育部門が提供する日本語授業以 生を対象に,大学紹介ビデオ放映,留学生センター 外に,学部生を中心とした短期留学生のために英語を および留学生課の紹介,各学部の留学生相談室と担 中心としたカリキュラムを全学的な支援を受けて構築 当者紹介,奨学金,宿舎,在留資格,医療,交通ルー しています。国内外の状況を調査し,留学生や教官等 ル等に関する説明を行っています。 の意見を反映させながら,当面の間毎年更新される教 ② 同じ時期,国際交流会館への新規入居者に対し, 育プログラムの計画や基本構成について立案し,「実 入居に関する諸注意事項の説明。職員の紹介などを 施委員会」に提案しています。 行っています。オリエンテーションは,入居者の親 2.教育プログラムコーディネーション 睦交流を兼ねたティーパーティー形式で,インター 開講する教育プログラムの実施にあたり,シラバス・ ナショナルレジデンスと留学生会館で開かれます。 実施要項作成,スケジュール調整,オリエンテーショ 3.教育交流部門充実のための調査研究活動 ン,勉学相談,履修・成績管理等の教務関係の連絡・ 教育交流部門では,留学生に関するさまざまな研究 調整を行っています。 に多面的に取り組み,その成果や情報の提供を通じて, 3.受入実務コーディネーション 留学生に対する理解を促進したいと考えています。 短期留学の応募受付,学内調整,選考,奨学金申請, 4.地域社会との交流ネットワーク形成 受入れ,宿舎,その他の環境整備,派遣元大学との連 地域自治体や国際交流ボランティア団体とのネット 絡等,受入れ実務関係の連絡・調整を行っています。 ワークを形成し,相互の情報交換を活発にすることで, 4.短期留学プログラム海外広報 留学生と地域社会との交流を促進する活動を行ってい 本学と大学間学術交流協定を結んでいる,または協 ます。 定締結を準備している世界各国の大学から短期留学生 5.在学生の海外留学相談および情報提供 を受け入れるために,英文パンフレットの作成,イン 近年増加している在学生の海外留学に関する相談お ターネット・ホームページの開設,電子メールの情報 よび情報の提供を行い,豊かな国際経験を積み社会に 交換,短期プログラムの海外出張宣伝などの業務を 貢献できる人材の育成に努めています。 行っています。 5.教材開発・研究活動 短期留学部門の教官は,短期教育プログラムの授業 短期留学部門 名古屋大学短期交換留学プログラム(NUPACE) の一部を担いながら,短期留学生のニーズに合ったよ は(財)日本国際教育協会(AIEJ)の支援で1996年に り良い講義内容を目指して,教材開発に取り組んでい 発足しました。NUPACE ではその教育プログラムを ます。また,短期留学関連の各種研究会に参加し,日 通じて国際化を図るのみならず,国を越えた友好を広 本の各大学で行われている短期プログラムの研究交流 め,これからの国際社会に貢献できる人材育成を目標 を進めています。さらに,各教官の専門分野である材 としています。 料計測工学,異文化交流,歴史・民族研究などの研究 NUPACE の教育プログラムでは日本語,日本研究, 活動を進めています。 国際理解・異文化コミュニケーションの授業に加え, −148− 3.資格外活動許可申請取次 国 際 課 国際課は,研究協力・国際部に所属し,本学の国際 4.帰国留学生のアフターケア 学術研究協力,国際教育交流に関するあらゆる事務を 5.国際交流会館の入退去および民間宿舎に関する 所掌する中で, 留学生関係業務及び「留学生センター」 こと 並びに「留学生相談室」の事務も担当し,留学生が安 6.学生の海外留学 心して勉学に専念できるよう,各部局と連携をとりな 7.学術交流協定締結,授業料不徴収協定 がら,留学生に対し修学上,生活上の支援業務を行っ 8.留学生のデータベース管理及び各種調査 ています。また,留学生関係事業として見学旅行や新 9.留学生後援会に関すること 入留学生歓迎懇談会を実施しています。 10.日本語研修,日本語講座等関係事務 留学生関係業務の主な内容は次のとおりです。 11.愛知県留学生交流推進協議会に関すること 1.外国人留学生の受入れ 12.その他 2.外国人留学生の奨学金及び福利厚生 −149− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 留 学 生 セ ン タ ー 沿 革 日 本 語・日 本 文 化 教 育 部 門 1977 語学センターが非常勤講師による外国人 留学生のための日本語教育を開始 1978 専任講師着任,「全学向け日本語講座」 授業開始 1979 語学センターと教養外国語系列が総合さ れ,総合言語センター発足 総合言語センターの1部門として「日本 語学科」設置 「日本語研修コース」開講 1981 「日本語・日本文化研修コース」開講 1984 教養部在籍留学生対象一般教育外国語科 目「日本語」開講 1991 総合言語センターが言語文化部に改組。 それに伴い一般教育外国語科目「日本語」 は言語文化科目「日本語」として開講さ れる 1993. 4 教育交流部門(指導相談部門) 短期留学部門 学内共同教育研究施設として,「留学生センター」設置 (「日本語・日本文化教育部門」・「指導相談部門」の2部門体制) 留学生センターとして,これまで通り「全 学向け日本語講座」 「日本語研修コース」 「日本語・日本文化研修コース」言語文 化科目「日本語」を開講 1994. 4 留学生センター研修生規定が定められ, (1994.2),研修生の受け入れ開始 5 「短期留学調査検討委員会」設置 1995. 3 「短期留学受入れ実施に関する検討 委員会」設置 10 「短期留学受入れ実施に関する検討 委員会」最終報告書の学内合意を 得て,「短期交流留学受入れ実施委 員会」発足。「名古屋大学短期留学 受入れプログラム(NUPACE) 」の 基本構成を構築 12 短期留学担当助手採用(石川) 1996. 2 4 短期留学生受入れ開始 短期留学生対象日本語授業開始 独立した「留学生相談室」確保 8 短期留学担当教授着任(野水) 10 11 「短期留学部門」発足(留学生セン ター3部門体制となる) 「短期留学受入れプログラム (NUPACE) 」本格稼動。短期留学 担当助教授採用(太田) 新スタッフ3名揃う 「指導相談部門」から「教育交流 部門」へ名称変更 −150− 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディア・ システム開発部門 教育交流部門 (指導相談部門) 1997. 5 短期留学部門 「短期交流留学生受入れ実 施委員会」から「短期交換 留学生実施委員会」へ変更 10 留学インフォメーション 室を留学生センター分室 に開設 1998. 1 「留学生パートナーシップ プログラム」開始 インターネットによる WebCMJ のオンライン開始 12 「地球家族プログラム」開 始 1999. 4 「日本語教育メディア・シ ステム開発部門」発足(留 学生センター4部門体制 となる) 1999. 8 担当助教授着任(ハリソン) 2000. 3 実務コーディネート担当 助教授転出(太田) 2000. 4 二人目の担当助教授着任 (大野) 6 担当助手採用(白戸) 2001. 3 留学生センター新棟完成 2001. 4 「留学インフォメーション室」 を「海外留学室」に改名 2001. 12 担当助手退任(白戸) 2002. 8 留学生相談主事の所属を 留学生センターに変更 2002. 4 担当助手採用(許斐) 2003. 3 教授1名退任(藤原) 2003. 4 講師1名採用(李) 担当助手配置換え(許斐) 2003. 5 担当助手採用(筆内) 2004. 2 2004. 3 助教授1名転任(ハリソン) 助教授1名退任(神田) 2004. 11 助教授1名採用(石崎) 2004. 6 教授1名退任(三宅) 2004. 7 教授1名昇任(松浦) 助教授1名採用(堀江) 2005. 3 助教授1名転任(大野) 留学生センター在籍者数 短期交換留学生数 日本語・日本文化研修生(※) 日本語研修生 前期 33 平成10年度 18 後期 30 前期 22 平成11年度 20 後期 37 前期 36 平成12年度 16 後期 42 前期 26 平成13年度 20 後期 50 前期 26(8) 平成14年度 17 後期 54(23) 前期 35(3) 平成15年度 20 後期 41(22) 前期 34(11) 平成16年度 21 後期 42(25) ※日本語・日本文化研修生については,5月現在の在籍者数を示す ※( )内は他部局に所属し日本語研修を受講した人数(内数) −151− 研究生 計 3 100 (31) 97 (36) 年 度 平成7年度 〃 8 〃 〃 9 〃 〃 10 〃 〃 11 〃 〃 12 〃 〃 13 〃 〃 14 〃 〃 15 〃 〃 16 〃 人数 23 31 47 41 53 45 51 55 56 67 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 平成16年度 留学生センター・国際課教職員 センター長 国際課 教 課 授 末 松 良 一 長 北 條 泰 親 課 長 補 佐 市 岡 高 日本語・日本文化教育部門 門 林 勝 國 教 尾 崎 明 人 国際企画掛 掛 長 細 川 雪 文 授 〃 〃 鹿 島 央 事務職員 横 家 奈 美 〃 村 上 京 子 〃 今 津 衣美乃 助 教 籾 山 洋 介 〃(AC21推進室)久 田 淳 子 〃 浮 葉 正 親 〃(AC21推進室)滝 智 仁 李 澤 熊 学術交流掛 掛 長 合 田 由美子 事務補佐員 吉 田 幸 代 国際交流会館掛 掛 長 加 藤 公 子 事務補佐員 谷 口 優 子 (留学生会館) 事務補佐員 兼 松 英 代 留学生掛 長 奥 田 重 美 事務職員 古 田 知 美 短期留学生掛 掛 長 横 井 利 行 (留学生相談主事) 事務補佐員 岡 嶋 静 江 助 教 授 田 中 京 子 留学生センター掛 掛 長 坂 口 敏 弘 助 教 授 堀 江 未 来(2004年7月着任) 事務補佐員 林 佳生子 留学生相談室 事務補佐員 白 石 慶 子 講 授 師 日本語教育メディアシステム開発部門 助 教 授 大 野 裕 教育交流部門 教 授 三 宅 政 子(2004年6月退任) 教 授 松 浦 まち子(2004年7月教授昇任) 短期留学部門 教 授 野 水 勉 講 師 石 川 クラウディア 助 手 筆 内 美 砂 国際学術コンソーシアム(AC21)推進室 助 教 授 許 斐 ナタリー −152− 掛 平成16年度 留学生センター各種委員会委員 全学委員会委員 平成16年7月1日現在 委 員 会 名 委 員 留学生センター協議会 セ ン タ ー 長 鹿 島 央 国 際 交 流 委 員 会 セ ン タ ー 長 学術交流専門委員会 セ ン タ ー 長 全 学 教 育 協 議 会 セ ン タ ー 長 教 立 設 会 セ ン タ ー 長 セクシャル・ハラスメント 防 止 専 門 委 員 会 セ ン タ ー 長 留 学 生 専 門 委 員 会 (オブザーバー) (オブザーバー) (オブザーバー) 野 水 勉 松 浦 まち子 籾 山 洋 介 堀 江 未 来 派 遣 選 考 委 員 会 堀 江 未 来 野 水 勉 養 準 教 備 育 委 院 員 任期 期 間 平成16年4月1日∼平成17年3月31日 2年 平成16年4月1日∼平成18年3月31日 外国人留学生の奨学金等 採択均等計算ルール WG 野 水 勉 一 般 廃 棄 物 管 理 者 野 水 勉 教 養 教 育 院 統 括 部 言 語 文 化 科 目 部 会 村 上 京 子 1年 平成16年4月1日∼平成17年3月31日 教養教育院運営委員会 村 上 京 子 2年 平成16年4月1日∼平成18年3月31日 セクシュアル・ハラスメント 防 止 対 策 委 員( 相 談 員 ) 筆 内 美 砂 2年 平成16年4月1日∼平成18年3月31日 全 学 同 窓 会 幹 事 会 田 中 京 子 自己評価実施委員会 鹿 島 央 2年 平成16年4月1日∼平成18年3月31日 国際交流会館運営委員会 田 中 京 子 松 浦 まち子 2年 平成16年4月1日∼平成18年3月31日 キャンパス情報ネットワーク 技 術 専 門 委 員 会 大 野 裕 2年 平成16年4月1日∼平成18年3月31日 附属図書館商議委員会 ( オ ブ ザ ー バ ー) 尾 崎 明 人 1年 平成16年4月1日∼平成17年3月31日残任分 学 術 振 興 基 金 委 員 会 専 門 委 員 会 籾 山 洋 介 2年 平成16年1月1日∼平成17年12月31日 総合保健体育科学センター 運 営 委 員 会 松 浦 まち子 2年 平成15年4月1日∼平成17年3月31日 名 古 屋 大 学 情 報 メ ディア教育センター 言語教育専門委員会 大 野 裕 2年 平成15年11月1日∼平成17年3月31日 名 古 屋 大 学 ス ペ ー ス・ コラボレーション・システム 事 業 委 員 会 共通教育棟子局運営委員会 李 澤 熊 1年 平成16年4月1日∼平成17年3月31日 育 田 中 京 子 児 支 援 W G 平成14年5月8日∼ −153− 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 委 員 会 名 委 員 短 期 留 学 実 施 委 員 会(委員長) セ ン タ ー 長 野 水 勉 尾 崎 明 人 松 浦 まち子 田 中 京 子 石川クラウディア 筆 内 美 砂 国際学術コンソーシアム専門委員会 セ ン タ ー 長 国際学術コンソーシアム推進室会議 野 水 勉 大 野 裕 任期 期 間 16年4月1日∼17年3月31日 学 生 生 活 委 員 会 (学生宿舎小委員会) 松 浦 まち子 野依記念学術交流館 運 営 委 員 会 許 斐 ナタリー 2年 16年4月1日∼18年3月31日 災 害 対 策 室 会 議 田 中 京 子 2年 16年4月1日∼18年3月31日 留学生教育交流委員会 松 浦 まち子 田 中 京 子 堀 江 未 来 野 水 勉 石川クラウディア 筆 内 美 砂 −154− センター内委員会委員 平成16年7月1日 委 員 会 名 委 員 企 画 運 営 委 員 会 ・セ ン タ ー 長 ・セ ン タ ー 教 員 教 会 ・村 上 京 子 ・尾 崎 明 人 経 理 整 備 委 員 会 ・鹿 島 央 ・野 水 勉 ・李 澤 熊 ・大 野 裕 日 本 語・日 本 文 化 論 集 編 集 委 員 会 ・籾 山 洋 介 ・浮 葉 正 親 広 会 ・松 浦 まち子 ・浮 葉 正 親 ・筆 内 美 砂 ・李 澤 熊 将 来 計 画 委 員 会 ・セ ン タ ー 長 ・鹿 島 央 ・国 際 課 長 ・村 上 京 子 ・野 水 勉 ・大 野 裕 ・松 浦 まち子 ・尾 崎 明 人 研 究 会 準 備 委 員 会 ・田 中 京 子 ・籾 山 洋 介 ・大 野 裕 自己評価実施委員会 ・尾 崎 明 人 ・浮 葉 正 親 ・松 浦 まち子 ・大 野 裕 ・野 水 勉 ・鹿 島 央 特 務 報 昇 委 委 員 会 ・尾 崎 明 人 ・田 中 京 子 ・尾 崎 明 人 ・村 上 京 子 ・鹿 島 央 日 本 語・ 日 本 文 化 研 修 コ ー ス 運 営 委 員 会 ・李 澤 熊 ・籾 山 洋 介 ・浮 葉 正 親 教育交流部門運営委員会 ・松 浦 まち子 ・田 中 京 子 ・堀 江 未 来 短期留学部門運営委員会 ・野 水 勉 ・石川クラウディア ・筆 内 美 砂 国際課・留学生センター 連 絡 会 議 ・セ ン タ ー 長 ・野 水 勉 ・鹿 島 央 ・国 際 課 長 ・松 浦 まち子 ・大 野 裕 ホームページ委員会 ・大 野 裕 ・田 中 京 子 ・野 水 勉 ・李 澤 熊 ・石川クラウディア ・堀 江 未 来 紀 要 編 集 委 員 会 ・尾 崎 明 人 ・堀 江 未 来 ・石川クラウディア 地 域 連 携 委 員 会 ・尾 崎 明 人 ・松 浦 まち子 ・浮 葉 正 親 PC室管理運営委員会 ・野 水 勉 ・筆 内 美 砂 ・大 野 裕 ・田 中 京 子 防 会 ・鹿 島 央 ・田 中 京 子 ・筆 内 美 砂 環 境 安 全 委 員 会 ・鹿 島 央 ・田 中 京 子 ・筆 内 美 砂 委 員 ・田 中 京 子 日 本 語 研 修 コ ー ス 運 営 委 員 会 災 委 員 員 −155− −156− 春季新入留学生オリエンテーション(日本 語・図書館) 4月教員会議 7日㈬ 全学向け日本語講座前期授業開始 第50期日本語研修コース授業開始 第1回企画運営委員会 14日㈬ 15日㈭ 日本語・JEMS 臨時合同会議 第50期日本語研修生開講式 13日㈫ 海外留学入門セミナー 工学部・工学研究科学生対象留学説明会 日本語研修生オリエンテーション 全学向け日本語講座前期クラス分けテス ト 12日㈪ NUFSA 留学生家族の日本語開講式 日本語研修生オリエンテーション 日本語研修生オリエンテーション 新入生生活ガイダンス(海外留学と国際交 流について) 非常勤職員初出勤 教育交流部門 留学生相談室 名古屋大学公開講座友の会総会 名古屋地域中国留学生学友会「新入中国留 学生歓迎交流会」 第50期 日 本 語 研 修 コ ー ス オ リ エ ン テ ー ション(2回目) 第23期日本語・日本文化研修コース授業再 開 第50期 日 本 語 研 修 コ ー ス オ リ エ ン テ ー ション(1回目) 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 11日㈰ 9日㈮ 春季新入留学生オリエンテーション(ビデ オ・生活) 国際嚶鳴館日本人学生へのオリエンテー ション NUPACE 開講式 レジデンス入居オリエンテーション 6日㈫ 8日㈭ 全学教育科目担当教員 FD 留学生会館入居オリエンテーション 国際嚶鳴館入居オリエンテーション 留学生センター 国際課 5日㈪ 3日㈯ 2日㈮ 1日㈭ 2004年 4月 日付 平成16年度 留学生センター・国際課関連行事等記録 国際嚶鳴館入居オリエンテーション(名大 生,留学生合同) NUPACE 春期専門科目授業開始 NUPACE 春期開講式・教務オリエンテー ション NUPACE 生活オリエンテーション NUPACE 銀行,図書館,コンピューター オリエンテーション(∼4/9) 国際嚶鳴館入居オリエンテーション(留学 生対象) 短期留学部門 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −157− 日本語・JEMS 合同会議 25日㈫ OSIP 留学生を犯罪から守る会(中警察署) 春季新入留学生歓迎懇談会(ECIS) ADRES 会議 第2回留学生教育交流委員会 24日㈪ 海外留学入門セミナー 20日㈭ AFSA 後援会新入留学生歓迎会&総会 木浦大学校韓国言語・文化研修生選考 NUFSA 家族の日本語校外学習(東山公園) 14日㈮ 22日㈯ 海外留学入門セミナー 13日㈭ 12日㈬ 11日㈫ 10日㈪ 6日㈭ 広報委員会 5月教員会議 第2回企画運営委員会 4月いけばな教室 AFSA 後援会常任幹事会 28日㈬ 海外留学入門セミナー NUFSA 地域連絡会(バザー反省会) NUFSA 家族の日本語ミーティング 27日㈫ 2004年 5月 第1回留学生教育交流委員会 26日㈪ 海外留学入門セミナー NUFSA 春のバザー 多言語災害情報翻訳システム Web 版デモ ンストレーション 日本語・JEMS 合同会議 24日㈯ 23日㈮ 22日㈭ 21日㈬ NUFSA Welcome Afternoon Tea (ECIS) 教育交流部門 留学生相談室 20日㈫ 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 ADRES 会議 NGK スカラシップ認定授与式 留学生センター 国際課 19日㈪ 日付 ドイツ・フライブルグ大学より来訪者 フランス留学フェア フランス Program 8 関係者との懇談(於: 名古屋国際交流会館) 中国ハルピン工業大学より来訪者 日仏共同博士課程日仏コンソーシアム総 会(於:東京・日仏会館) 第1回短期交換留学受入れ実施委員会 短期留学部門 キャンパスクリーン 天白生涯学習センターとの連携講座(2) 10日㈭ −158− 国立大学法人留学生センター留学生指導 担当研究協議会(東京大学) JEMS 教員選考委員会 1日㈭ 2日㈮ 広報委員会 海外留学入門セミナー 国立大学法人留学生センター留学生指導 担当研究協議会(堀江) 6月いけばな教室 2004年 7月 30日㈬ 海外留学入門セミナー 県国際交流大都市圏構想事業化検討グ ループ AFSA & 後援会合同会議 海外留学入門セミナー 渡航前ガイダンス(セント・オラフ大学) 第3回留学生教育交流委員会 日本語・JEMS 合同会議 日本語・JEMS 臨時合同会議 海外留学入門セミナー 海外留学入門セミナー 28日㈪ 24日㈭ 留学生交流研究協議会(福井,∼6/25) 天白生涯学習センターとの連携講座(3) 社員寮面接(東邦ガス) 18日㈮ 23日㈬ 名古屋入国管理局との情報交換会 17日㈭ 16日㈬ 15日㈫ 第3回企画運営委員会 9日㈬ 4日㈮ 3日㈭ 2日㈬ 2004年 6月 6月教員会議 海外留学入門セミナー 31日㈪ 天白生涯学習センターとの連携講座(1) 教育交流部門 留学生相談室 27日㈭ 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 渡航前ガイダンス(フランス・プログラム8) 瑞穂生涯学習センター「女性セミナー」 5月いけばな教室 留学生センター 国際課 26日㈬ 日付 セントオラフ大学来訪者 第2回留学生専門委員会 UMAP 単位互換 検討 WG 明治村フィールドワーク 第1回留学生専門委員会 UMAP 単位互換 検討 WG 短期留学部門 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −159− 留学生会館視察 w/ 成瀬部長 留学生専門委員会 第4回企画運営委員会 8日㈭ 13日㈫ 14日㈬ 愛知県留学生交流推進協議会第21回運営 委員会 30日㈪ 31日㈫ 浮葉助教授海外出張(∼9/5 韓国) ㈶服部奨学会表彰式(総長室) 23日㈪ 日本語・JEMS 合同会議 第50期日本語研修コース授業再開 全学向け日本語講座夏季集中授業終了 10日㈫ 5日㈭ 4日㈬ 2日㈪ 2004年 8月 トヨタ見学会 海外留学入門セミナー 29日㈭ ADRES 会議 海外留学入門セミナー 県国際交流大都市圏構想事業化検討グ ループ 第2回短期交換留学受入れ実施委員会 30日㈮ NUPACE 春期専門科目授業終了 AFSA 後援会常任幹事会 28日㈬ AC21サテライトフォーラム(野水教授,石 川講師,於:シドニー大学,7/20∼7/26) , 石 川 講 師 発 表“ International Student Exchange as a Mechanism for Change.” NUPACE サマーパーティー 帰国オリエンテーション(夏帰国生対象) 短期留学部門 23日㈮ 7月いけばな教室 海外留学入門セミナー 全学向け日本語講座夏季集中授業開始 第50期日本語研修コース夏季休業 22日㈭ 全学向け日本語講座夏季集中クラス分け テスト 20日㈫ 海外留学入門セミナー ADRES 会議 ワークショップ 「 引っ越し 」 海外留学入門セミナー NUFSA 家族の日本語七夕まつり 教育交流部門 留学生相談室 21日㈬ 第23期日本語・日本文化研修コース夏季休 業 全学向け日本語講座前期授業終了 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 19日㈪ 16日㈮ 社員寮面接(NGK,中部電力) JEMS 教員選考委員会 7月教員会議 7日㈬ 15日㈭ JEMS 教員選考委員会 留学生センター 国際課 6日㈫ 日付 −160− 日本語・JEMS 合同会議 4日㈪ 1日㈮ 2004年 10月 30日㈭ 29日㈬ 広報委員会 NUPACE 開講式 愛知県留学生交流推進協議会第13回総会 日中友好感謝と記念の集い(中国建国50周 年記念式典,市公会堂) NUFSA 地域連絡会 JASSO 児童養護施設打合わせ(和進館児 童ホーム) JAFSA 日中交流シンポジウム(上海,∼ 9/26) 23日㈭ 28日㈫ JASSO 第1回企画委員会 AFSA & 後援会合同会議 国際嚶鳴館入居オリエンテーション 浮葉助教授海外出張(∼9/30 韓国) 22日㈬ 21日㈫ 科研費補助金公募要領学内説明会 第5回企画運営委員会 15日㈬ 17日㈮ 第50期日本語研修生修了式 第23期日本語・日本文化研修生修了式 14日㈫ JAFSA 大会(軽井沢,∼9/13) ルノープログラム応募説明会 NUFSA &新潟大学留学生会(ISAN)と の交流会 教育交流部門 留学生相談室 12日㈰ 李講師海外出張(∼9/13 韓国) 第23期日本語・日本文化研修コース授業再 開 尾崎教授海外出張(∼9/9 イギリス) 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 海外研修(∼9/21 堀江:イタリア・EAIE 総会出席) NUFSA 家族の日本語ミーティング 9月教員会議 国際交流会館運営委員会 留学生センター 国際課 10日㈮ 9日㈭ 8日㈬ 6日㈪ 3日㈮ 1日㈬ 2004年 9月 日付 NUPACE 銀行,図書館,コンピューター オリエンテーション(∼10/7) NUPACE 秋期専門科目授業開始 NUPACE 秋期開講式・教務オリエンテー ション NUPACE 生活オリエンテーション 国際嚶鳴館入居オリエンテーション 空港出迎えオリエンテーション 短期留学部門 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −161− 国際嚶鳴館入居オリエンテーション 留学生会館入居オリエンテーション 第51期日本語研修生開講式 第24期日本語・日本文化研修生開講式 第6回企画運営委員会 8日㈮ 12日㈫ 13日㈬ 26日㈫ ECIS 地域連絡会 JASSO 第2回企画委員会 NUFSA 秋のバザー 25日㈪ 23日㈯ 海外留学入門セミナー AFSA &後援会合同会議 地球家族プログラム(おにぎり講習会) 将来計画委員会 21日㈭ 22日㈮ 台風23号のため休講 第24期日本語・日本文化研修コース授業開 始 19日㈫ 20日㈬ 全学向け日本語講座後期授業開始 NUFSA Welcome Afternoon Tea(ECIS) 医学系研究科博士課程設置記念式典・講演 会 15日㈮ 18日㈪ 海外留学入門セミナー NUFSA Welcome Afternoon Tea(留学生 会館) ルノープログラム(Master Paristech)学 内選考 NUFSA 家族の日本語開講式 日本語研修生オリエンテーション 日本語・日本文化研修生オリエンテーショ ン 14日㈭ 第51期日本語研修コース授業開始 第5期日韓プログラム授業開始 第24期日本語・日本文化研修コースオリエ ンテーション 全学向け日本語講座後期クラス分けテス ト 第51期 日 本 語 研 修 コ ー ス オ リ エ ン テ ー ション(2回目) 海外留学入門セミナー 秋季新入留学生オリエンテーション レジデンス入居オリエンテーション 7日㈭ 第5期日韓プログラムオリエンテーション 日本語・JEMS 合同会議 日本語研修生オリエンテーション 日本語・日本文化研修生オリエンテーショ ン 第51期 日 本 語 研 修 コ ー ス オ リ エ ン テ ー ション(1回目) 10月教員会議 教育交流部門 留学生相談室 6日㈬ 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 交換留学(全学間協定)応募説明会 JASSO 児童養護施設打合わせ(知多学園 松籟荘) 留学生センター 国際課 5日㈫ 日付 第3回短期交換留学受入れ実施委員会 短期留学部門 −162− 11月教員会議 10日㈬ 海外出張(∼11/18 堀江:フランス・ルノー 財団及び関係校訪問) ワークショップ 「 地震に備えよう 」 JASSO 留学生選考会 海外留学入門セミナー JAFSA 月例研究会(留学生と就職,名大) 派遣留学フォーラム(野水教授,於:富山 大学) AFSA & 後援会合同会議 海外留学入門セミナー JASSO 事前セミナー & 打ち合わせ 16日㈫ 17日㈬ 18日㈭ 19日㈮ 24日㈬ 25日㈭ 27日㈯ 地震防災訓練実施 豊秋奨学会国際学生交流会 海外留学入門セミナー NUFSA 家族の日本語ミーティング 交換留学生選考(∼11/12) 留学生ハンドブック改訂 WG AFSA &後援会日帰りバス旅行(富士山) JASSO 児童養護施設子どもフェスティバ ル参加 ハルピン工業大学学長以下5名の来訪者 (於:名古屋大学本部) 韓国,KAIE 総会出席(筆内助手 ∼10/31) ブリュッセル外国語大学来訪者 短期留学部門 13日㈯ 12日㈮ 第7回企画運営委員会 トヨタ見学会(NUPACE,1年コース) 9日㈫ 11日㈭ トヨタ見学会(NUPACE,6ヶ月コース) 8日㈪ 6日㈯ 日本語・日本語教育研修会 海外留学入門セミナー 4日㈭ 5日㈮ ワークショップ「ものづくり」 秋季新入留学生歓迎懇談会(名古屋大学) 2日㈫ 1日㈪ 2004年 11月 海外研修(∼10/31 堀江:韓国・KAIE 総 会出席) JAFSA 月例研究会(北大) 海外留学入門セミナー 29日㈮ 留学生後援会審査委員会 教育交流部門 留学生相談室 28日㈭ 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 NUFSA 地域連絡会(バザー反省会) 留学生センター 国際課 27日㈬ 日付 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −163− AFSA 第40回留学生の夕べ(NIC) 第5期日韓プログラム冬季休業 第51期日本語研修コース冬季休業 27日㈪ 28日㈫ 全学向け日本語講座後期冬季休業 23日㈭ 21日㈫ 御用納め 17日㈮ 20日㈪ キャンパスマスタープラン2005策定に関 する検討 WG 16日㈭ ADRES 会議 国立大学法人留学生指導研究協議会(堀 江:大阪大学) NUFSA 家族の日本語イヤーエンドパー ティー 地球家族プログラム(しめなわ講習会) 海外留学入門セミナー 年度計画・評価担当者会議 15日㈬ 第24期日本語・日本文化研修コース冬季休 業 第二言語習得研究会全国大会 12日㈰ ADRES 会議 第二言語習得研究会全国大会 11日㈯ 海外留学入門セミナー 第4回留学生教育交流委員会 海外留学入門セミナー ADRES 会議 NUFSA 家族の日本語ライオンズクラブ例 会出席 14日㈫ 尾崎教授海外出張(∼12/12 韓国) 日本語・JEMS 臨時合同会議 9日㈭ 8日㈬ 6日㈪ 12月教員会議 第8回企画運営委員会 留学生就職支援ガイダンス(愛知学生支援 コンソーシアム) 4日㈯ 5日㈰ 留学生専門委員会 3日㈮ 2日㈭ 1日㈬ 日本語・JEMS 合同会議 イギリス留学説明会 2004年 12月 センター長海外出張(∼12/5 シンガポール) 教育交流部門 留学生相談室 30日㈫ 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 運用定員申請ヒアリング 留学生センター 国際課 29日㈪ 日付 NUPACE ウィンターパーティー メキシコ・モントレー工科大学来訪者 短期留学部門 日本語・JEMS 合同会議 −164− 2月教員会議 キャンパスマスタープラン2005策定に関 する検討 WG 2日㈬ 3日㈭ 1日㈫ 2005年 2月 31日㈪ 28日㈮ 日本語・JEMS 合同会議 全学向け日本語講座後期授業終了 海外留学入門セミナー ワークショップ打ち合わせ 「 着物 」 海外留学入門セミナー JASSO 第1回国際理解教育プログラム検 討委員会 AFSA 合同会議 26日㈬ 社員寮面接(NGK,服部留学生会館) JASSO 児童養護施設訪問(和進館児童ホー ム) 22日㈯ 27日㈭ 海外留学入門セミナー チューター面接 臨時教員会議 20日㈭ 19日㈬ ワークショップ 「 引っ越し 」 大学入試センター試験監督(2日目) 16日㈰ 海外留学入門セミナー JASSO 児童養護施設訪問(知多松籟荘) チューター制度見直し WG 大学入試センター試験監督(1日目) 15日㈯ CIEE 担当者来訪 教育交流部門 留学生相談室 18日㈫ 大学入試センター試験監督者説明会 13日㈭ 第51期日本語研修コース授業再開 第24期日本語・日本文化研修コース授業再 開 全学向け日本語講座後期授業再開 第5期日韓プログラム授業再開 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 17日㈪ 1月教員会議 セクシャル・ハラスメント防止研修会 第9回企画運営委員会 仕事始め 留学生センター 国際課 12日㈬ 11日㈫ 4日㈫ 2005年 1月 日付 NUPACE 秋期専門科目授業終了 第4回短期交換留学受入れ実施委員会 帰国オリエンテーション(春帰国生) 短期留学部門 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −165− 第3回全学評価担当者会議 尾崎教授海外出張(∼3/6 ロシア極東3都 市) ADRES 会議(年度計画・評価) AFSA 役員歓送迎会 海外出張(∼3/5 堀江:中国及び韓国協定 校訪問) 27日㈰ 留学生専門委員会 22日㈫ 25日㈮ 卒業・修了留学生を送る夕べ 21日㈪ チューター制度検討 WG JAPAN WEEK「華道」 18日㈮ 20日㈰ 海外留学入門セミナー JAPAN WEEK「日本人のコミュニケー ションスタイル」 日仏共同博士課程選考 JAPAN WEEK「日本の習慣とマナー」 JASSO 第2回国際理解教育プログラム検 討委員会 16日㈬ 17日㈭ アメリカ留学担当者説明会(堀江:日米教 育委員会,米国大使館) JAPAN WEEK「 書道 」 JAPAN WEEK「日本の伝統衣装 着物」 全学向け日本語講座春季集中授業開始 14日㈪ 15日㈫ JASSO 児童養護施設訪問(和進館児童ホー ム) 第24期日本語・日本文化研修コース春季休 業 11日㈮ 海外留学入門セミナー 国際交流大都市圏構想事業化検討グルー プ ワークショップ打ち合わせ 「 華道 」 教育交流部門 留学生相談室 12日㈯ 第51期日本語研修コース授業終了 第10回企画運営委員会 9日㈬ 全学向け日本語講座春季集中クラス分け テスト 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 10日㈭ OSIP 第5回総会 留学生センター 国際課 8日㈫ 4日㈮ 日付 中国,韓国協定校訪問(野水教授,堀江助 教授,筆内助手,国際課短期留学掛・横井 主任/上海交通大学,復旦大学,北京工業 大学,北京大学,清華大学,ソウル国立大 学,漢陽大学,高麗大学,∼3/5) 短期留学部門 −166− JEMS 教員選考委員会 3月教員会議 第11回企画運営委員会 第51期日本語研修生修了式 毎日新聞との共催によるシンポジウム 留学生センター地域貢献事業 「 小中学校教 員・日本語ボランティア現職者研修会 」 8日㈫ 9日㈬ 10日㈭ 11日㈮ 12日㈯ 留学生センター講演研究会(メステンハ ウザー博士)‘International Dimensions of Higher Education’ 18日㈮ 19日㈯ JEMS 教員選考委員会 17日㈭ 15日㈫ 14日㈪ 日欧国際シンポジウム(東京,大阪,∼3/6) 「欧州における日本語日本文化教育の展 望」 5日㈯ 4日㈮ 村上教授海外出張(∼3/26 中国) 留学生センター講演研究会 CIEE 担当者来訪 JASSO 留学生地域交流事業企画委員会 JAFSA トップセミナー(∼3/13 堀江) JASSO 地域交流事業シンポジウム(堀江) JAFSA 企画委員会 ピア・サポーター養成講座(学生相談総合 センター) NUFSA 家族の日本語ミーティング 巨大津波の被災者支援を考える会(インド ネシア留学生会) 教育交流部門 留学生相談室 JASSO 第3回国際理解教育プログラム検 討委員会 NUFSA 家族の日本語(日本文化紹介) 全学向け日本語講座春季集中授業終了 第5期日韓プログラム授業終了 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 3日㈭ キャンパスマスタープラン2005策定に関 する検討 WG 国際交流会館運営委員会 社員寮面接 留学生センター 国際課 1日㈫ 2005年 3月 28日㈪ 日付 短期留学プログラム関係者協議会(野水教 授,石川講師,於:東京工業大学)野水教 授発表「短期留学プログラムの課題と今後 の行方」 短期留学部門 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 −167− 31日㈭ 30日㈬ 29日㈫ 日本語・JEMS 合同会議 JASSO 児童養護施設打合せ(金城六華園) NUFSA 地域連絡会 AFSA 後援会常任幹事会 外国人学部留学生ガイダンス 26日㈯ JEMS 教員選考面接 名古屋大学卒業式 25日㈮ 28日㈪ 留学生センターオープンフォーラム 留学生センターオープンフォーラム(渡辺 義和助教授) 「留学すればしゃべれるよう になるのウソとホント」 教育交流部門 留学生相談室 23日㈬ 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディアシステム開発部門 ルノー財団会議(堀江:東京) 第5回留学生教育交流委員会 留学生センター 国際課 22日㈫ 日付 受入れサポート・空港出迎えオリエンテー ション 短期留学部門 名古屋大学留学生センター紀要 第3号 平成16年度 授業担当および学位論文審査 田中京子・浮葉正親: Ⅰ.授業担当(大学院・学部・NUPACE) 基礎セミナー「多文化社会を生きる」 (前期1 コマ 2単位) 1.大学院 浮葉正親 (代表) ・松浦まち子・田中京子・堀江未来: 国際言語文化研究科 全学教養科目 鹿島 央:日本語音声学(通年1コマ 4単位) 「留学生と日本―異文化を通しての日本理解」 籾山洋介:現代日本語学概論(通年1コマ 4単位) (後期1コマ 2単位) 大野 裕:日本語文法論(通年1コマ 4単位) 村上京子: 尾崎明人:日本語談話分析論(通年1コマ 4単位) 全学基礎科目 村上京子:日本語教育評価論(通年1コマ 4単位) 「言語文化Ⅰ日本語1」(前期2コマ 3単位) 石崎俊子: コンピューター支援日本語教育方法論 「言語文化Ⅰ日本語2」(後期2コマ 3単位) (通年1コマ 4単位) 鹿島 央: 田中京子:異文化接触とコミュニケーション(通年 1コマ 4単位) 全学基礎科目 「言語文化Ⅱ日本語1」(前期1コマ 1.5単位) 浮葉正親:日韓比較文化論(通年1コマ 4単位) 「言語文化Ⅱ日本語2」(後期1コマ 1.5単位) 李 澤熊:日 本 語 教 育 方 法 論 概 説( 通 年 1 コ マ 4単位) 工学部 野水 勉:セラミック材料学(後期1コマ 2単位) 文学研究科 3.名古屋大学短期交換プログラム(NUPACE) 籾山洋介:理論言語学(通年1コマ 4単位) 野水 勉(コーディネーター) : 工学研究科 現代日本社会(前期1コマ 2単位) 野水 勉:物質計測工学特論Ⅰ 石川クラウディア: (前期1コマ 2単位) 社会法制論―外国人労働者 (前期1コマ 2単位) 物質計測工学特論Ⅱ 日本史入門(後期1コマ 2単位) (後期1コマ 2単位) 筆内美砂: 物質計測工学セミナーⅠ 異文化間コミュニケーション (後期1コマ 2単位) (前期2コマ 2単位) 物質計測工学セミナーⅡ Ⅱ.学位(博士)論文審査 (後期2コマ 2単位) ○村上京子(主査) 2.学部 論文提出者:劉百齢 提 出 論 文:CALL 教材における学習者要因の検討 教養教育院 松浦まち子(代表)・三宅政子(2004年6月まで) ・ −168− および CALL システム環境の提案 留学生センター主催研究会記録 (2004年 4月∼2005年 3月) ◆日 時:2004年 3月12日㈯ 13:20∼16:30 ◆日 時:2005年 3月18日㈮ 15:00∼16:30 場 所:愛知国際プラザ2F 研修室 場 所:アジア法政情報交流センター2F ホール (愛知県三の丸庁舎内) 内 容:講演会「今日における国際交流の意義と理 内 容:小中学校教員・日本語ボランティア現職者 研修会「外国人児童・生徒をめぐる地域と 念」(英語) 講 師:Josef A. Mestenhauser 氏(ミネソタ大学 学校」 名誉教授,在米チェコ名誉領事) 講 演:田中薫氏(大阪市立豊崎中学校教諭,関西 地区日本語指導者研究会事務局代表) 指定討論者:益子エレン氏(東京財団理事) 「学力につながる日本語指導―教師とボラ 参加者:学内外の国際教育交流関係者,比較高等教 ンティアの役割―」 育研究者等,17名 コメンテーター:松本一子氏 (愛知淑徳大学非常勤講師) ◆日 時:2005年 3月23日㈬ 13:30∼16:00 参加者:小中学校教員,語学相談員,日本語ボラン 場 所:アジア法政情報交流センター2F ホール ティア現職者等,95名 内 容:オープンフォーラム 共 催:㈶愛知県国際交流協会,㈶名古屋国際セン 「『留学すれば喋れるようになる』のウソと ター,東海日本語ネットワーク 後 援:愛知県教育委員会,名古屋市教育委員会 ホント」 講 師:渡辺義和氏(南山大学総合政策学部助教授) 参加者:高校生,本学学部生,大学院生,教官等, 20名 −169−
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