【平成24年度】 NHK ハート展 入賞 林 誠悟(中学部2年) 作品は、こちら

【平成24年度】
○NHK ハート展
入賞
林
誠悟(中学部2年)
◎作品は、こちら
◎NHK ハートプロジェクトは、こちら
○読書感想文県コンクール
教育委員会賞
浅山留衣(高等部1年)
「自立に向けて」
高等部
浅山
留衣
私は、一年前に事故に遭い、現在、車いすで生活しています。体力をつけ、日常生活でで
きることを増やすため、病院へリハビリにも通っています。
ある日、病院で、私と同じように車いすに乗っている女の人に出会いました。その人は自
分で車に乗って、一人で来ていました。今は誰かの手を借りて車に移乗している私が、自分
一人でできるようになるための参考にと、その人に少し話を聞きました。その人は色々なこ
とを教えてくれました。お互いにリハビリがあるので長い時間は話せなかったですが、身近
に車いすに乗って生活している女性の方がいると知り、私はうれしくなり、自分もがんばろ
うと自信を持つことができました。
後日、病院に行った時、リハビリの先生が、「この前、車のことを教えてくれた人があな
たに本をくれたよ。」と、一冊の本が入った袋を渡してくれました。鈴木ひとみさんが書い
た『命をくれたキス』私と同じように事故で車いすでの生活になりましたが、結婚や仕事も
し、いろいろなことに挑戦して生きている女性が書いた本でした。
私はあまり本を読むのが得意ではありませんが、まだ出会ったばかりで互いのことをよく
知らないのに、車いすのことを教えてくれた親切なあの人がくれた本だと思い、その本を読
むことにしました。
足が動かないとわかり、母親や恋人に八つ当たりをしてしまう場面では涙が出るなど、自
分のことと重ね合わせて読むことができる部分もあり、すらすらと一気に読めました。
私は車いすでの生活になってからというもの、誰かの力を借りなければ生きていけない。
人に助けを求めるのは当たり前だと心のどこかで思っていました。母やリハビリの先生から、
これからは自立に向けてリハビリをするのだと言われた時も、そんなに焦る必要もないと理
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由をつけて逃げていました。
しかし、著者の鈴木さんは違いました。本の中に、「障害者はこう生きるべきなんて、だ
れがどういう基準で決めたの?それは自分が決めることだよ。そのためには障害を受け入れ
て自分ができることをやっていけばいい。」「だれかに寄りかかって生きるのではなく、社
会の中でひとりの女性、ひとりの障害者として自立すること。それが私にとっての幸せ」と
いう部分があります。車いすだからと言う特別扱いは許されない、自分でできることは自分
でするという考えでした。私はこれまでの自分の考えがどれだけ甘いことだったのかと思い
知らされました。
鈴木さんは元々モデルの仕事をしていて、恋人もいました。そして、結婚の直前に交通事
故で頸椎を損傷し、両足が動かなくなり、車いすでの生活になりました。車いすだからとい
って恋人や親に頼ってばかりではなく、自分で第二の人生を歩んでいます。車いすに乗って
いるからこそ分かることを活かし、バリアフリーアドバイザーという仕事をしながら、年間
九十回ほどの講演を行っています。自分の体験を話し、講演に来て下さる人に元気を与えて
いるそうです。
私は自立するということを甘く考えていました。今の私は、一人で完璧にできることはあ
まりなく、誰かの手を借りなければならないことが多いです。自分でできることは人の手を
借りずに自分で行う必要があります。しかし、私は自分でできることさえも、人に甘えて頼
ることがありました。車いすなのだから、人よりできないことが多いのは確かです。でも、
それをできるように努力することが大事。ましてや自分でできることなのに車いすを理由に
し、人に頼っていた自分。私はなんて最低なことをしていたのだろうと思いました。初めて、
母やリハビリの先生が言っていた「自立に向けて」という言葉が心に響きました。
私をいつも手伝ってくれる人がいつまでもそばに居続けることはできないと思います。手
伝ってくれる人にすべて任せっきりになるのではなく、将来のために、自分でできることを
増やして、できないことは助けを自分から求め、自分の生き方、自分にとっての自立を確立
することが大事なのだと思えるようになりました。
鈴木さんは結婚し、家事もこなしています。また、バリアフリーアドバイザーとして仕事
もこなしています。車いすだということを感じさせない生き方が本当にすごいと思いました。
私も鈴木さんのように、自分の障害を活かした、誇れるような仕事につきたいと思いました。
私は車いすでの生活になってから、周囲の人の優しさをそれまで以上に感じるようになり
ました。しかし、その優しさに甘えるだけではなく、自分で何でもできるようになるために
努力していきたいです。
自立することの大切さをこの本が教えてくれました。
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