最新の放射線治療で治療します。

前立腺癌を最新の放射線治療装置で治療しましょう。
国際医療センター 包括的がんセンター 放射線腫瘍科
土器屋 卓志(どきや たくし)
はじめに
米国の男性のがんでは前立腺癌が最も多く、その治療には多くの実績と経験が
あります。
最近急速にわが国でも前立腺癌が増加してきており、今後とも増加し、肺癌に
次いで多くなると推定されます。
そこで前立腺癌の治療には米国のいままでの経験がとても参考になりますが、
そればかりでなく、さらに日本人の体質にあった治療を実施しなければなりま
せん。
米国の最近の報告では
前立腺癌の治療では手術と放射線治療が丁度半々の
割合で選択されております。
治療法の選択は最終的には御本人の考えを一番大事にします。本日の講演会
ではあまりなじみの無い放射線治療についてどのようなものかを紹介して、皆
様の考え方の参考になればと思います。
放射線治療について
放射線治療は癌に集中的に強い放射線を当てて癌を治します。その方法にはい
くつかあります。
1、 外部照射
体の外から放射線を照射します。いくつかの方向から照射して集中的に癌を
攻撃します。
使われる放射線治療装置は大型のもので、放射線が外に漏れないように厚い
壁に囲まれた治療室で治療します。そのせいで放射線治療を最初に受けると
きはとても心理的な圧迫感や不安感があるものです。しかし一回経験すれば
すぐに慣れてきます。
使われる放射線の種類は
X線が一般的ですが、特別な装置として陽子線や
重粒子線があります。
装置の名前としては
テラピーなどが
リニアック、サイバーナイフ、ガンマナイフ、トモ
挙げられます。
2、 小線源治療
放射線をだす小さな放射線源を癌の組織のそばに直接配置するかまたは刺し
たりします。
1)
腔内照射
子宮癌や食道癌など体腔内にしようを配置して治療します。子宮頚癌
の標準的な治療です。
2)
組織内照射
癌に直接
針を刺して小線源を配置します。口の中の癌や前立腺癌に
使います。
(1)一時挿入治療:一定時間針を刺して抜きます。
(2)永久挿入治療:放射性の小さな粒状金属(シード)を入れっぱなしに
します。ゆっくりと放射線は出なくなります。
前立腺癌の放射線治療
1、前立腺癌の外部放射線治療
前立腺に集中的に放射線を照射しますが、照射する範囲は癌の広がりの具合
によって小さくしたり、大きくしたりします。放射線治療を行う前の CT や MRI
検査で癌の広がりを丁寧に検討します。
国際医療センターに今回設置されました最新のトリロジーリニアックとい装
置は世界でも最高の装置であり、日本では始めてのものです。最も精度の高い
IMRT(Intensity
Modulated Radiotherapy、強度変調放射線治療)が可能とな
りました。
前立腺は鶉の卵形をしておりますので、このような不正形な形態に沿って放
射線を集中させる技術です。そうすれば前立腺のすぐ後ろにある直腸には無駄
な照射をせずに、副作用の少ない治療ができます。
通常の放射線治療では一回の照射時間は正味1~2分で終わります。着替え
たり、治療台上でセッティングしたりする時間も合わせれば10分以内にすべ
て終わります。これを通常30-35回(一日1回)続けます。治療期間は67週間です。外来治療が原則です。仕事を続けながら治療される方も多くいら
っしゃいます。自宅が遠方の方や体が不自由な方は入院していただく場合もあ
ります。
治療中の副作用は治療が始まってから3-4週間目ぐらいから放射線による
尿道炎、膀胱炎症状として排尿痛や頻尿が出てきます。また下痢になる場合も
あります。
2、
組織内照射(一時挿入治療)
高線量率イリジウム照射治療とも言います。直腸から入れた超音波用のプ
ローブで前立腺を映し出して、前立腺に正確に会陰部から針を刺します。この
針の中にイリジウム 197 という放射線源を一定時間(15 分ぐらい)挿入して前立
腺癌に直接照射します。
操作はコンピュ-タ-で制御します。すこし進んだ癌に効果的です。
3、組織内照射(シード永久挿入療法)
新聞などでよく紹介される新しい治療ですが、欧米では 10 数年前から標準的
な治療として行われてきております。日本では 2003 年から開始されました。
早期の癌に対してとても効果的です。一時挿入と同じような手順ですが、
I-125(ヨード125)という小さな線源を入れっぱなしにします。一回だけの
治療で終わりです。とても治療成績が良くて、欧米では大変人気のある治療で、
日本でもこの治療を希望される方が多くなっております。
埼玉医科大学国際医療センターでは以上の最新の放射線治療のすべてが可能と
なります。手術も含め、もっとも効果的である治療法をご一緒に考えて提供さ
せていただきます。