SaaS生産管理、営業支援システム導入

SaaS生産管理、営業支援システム導入
パソコンさえあれば使えるネット配信型ソフトで導入を一貫支援
(有)シグマアイ・コンサルティング
馬場
賢
E-mail:CYB05451@nifty.com
URL:http://members2.jcom.home.ne.jp/sigma-i/
SaaS(Software as a Service)は最新の Web 技術やプラットフォーム技術を利
用した情報システムで、一つのシステムを複数の企業で利用する(マルチテナント方式)
ため、従来の類似の情報システムASP(Application Service Provider)(シングル
テナント方式)に比較し低コストで高度なサービスが提供できる。初期導入費用も安く、
利用ユーザー数に応じたサービス費用を支払う。このためIT投資力が低い中小企業に
とっても、比較的低コストでIT環境を整備することができる。当社は、自社所有形式
(パッケージソフト)の統合生産管理システムTPiCS導入支援に加え、SaaS形
式の生産管理、営業支援システムの導入支援に取り組むことにした。
1.中小企業 IT 化の現状と改善手段としてのSaaS
中小企業への IT 導入状況は、図1の「平成 18 年中小企業実態基本調査」に示されるように、
パソコンやインターネット環境の導入は進んでおり、電子メールソフト、ホームページ、WOR
D、EXCELに代表されるオフィス系ソフト等の普及は中規模企業にいたるまで進んでいる。
しかし、企業の規模別に見ると、20 人以下の中規模企業、小規模企業へは、IT化による生産性
向上や競争力強化に寄与する給与計算、財務会計、販売管理、生産管理等の業務用ソフトの普及
はいまだ進んでいない。
これまで中小企業は、「IT導入資金がない」「ITスキルを持った人材がいない」などの要因
でIT化が進まないといわれている。近年、高度な業務処理サービスをインターネット上で提供
する Software as a Service(SaaS:「サース」と発音)は、これら課題を解決し中小企業にと
って使いやすい新たな IT サービスを普及・促進する有力な手段として考えられている。
SaaSとは、インターネットを通して必要なアプリケーションを利用できる仕組みであり、
利用者は自社でシステムを構築、あるいはアプリケーションソフトを購入・インストールしなく
ても、インターネットに接続されたPCがあれば、ブラウザ経由で業務アプリケーションを利用
することができる中小企業にとって魅力あるシステムといえる。
1
図1
平成 18 年中小企業実態基本調査
2.シグマアイ・コンサルティングからの提案
(1)生産管理、営業支援分野でのSaaS方式の提案
当社は、自社所有形式(パッケージソフト)では、中堅・中小製造業における生産管理のニー
ズに柔軟に適合する統合生産管理システムとして、製造現場のニーズを取り込みながら、現在で
も成長を続けている(株)TPiCS研究所が開発した統合生産管理システムTPiCSを推奨
している。しかし、統合生産管理システムの導入をしたいが、初期費用もかかるし、システム専
任要員の確保も難しい特に中規模、小規模経営者の皆様に、図2に示すようなSaaS方式を提
案したい。また、自社所有形式(パッケージソフト)と一般的なSaaS形式との特徴比較を表
1にまとめる。
図2
SaaSのシステム構成
2
表1.SaaS形式と自社所有形式(パッケージソフト)の比較
SaaS形式
システムの所有/利用
利用
システム設備の自社負担
常時接続のインターネットとク
ライアントPC
事前検討
業務分析、業務設計/見直し等が
必要。(外部に委託する場合は、
コンサルティング費用が必要)
SaaS提供者が提供する基本
システム/機能
アプリケーション開発
(基本機能)
アプリケーションの
カスタマイズ
初期導入(システム)
初期導入(その他)
クライアントの管理
メ ン テ ナンス の タ イミン グ
(サーバ側)
管理者、ヘルプデスク
セキュリティ
運用管理
費用
顧客の希望により、範囲の制限が
あるがカスタマイズが可能(要求
仕様を示して画面やデータ項目
表示名等を作成することなどが
必要)
・ネットワーク環境およびクライ
アントの準備
・ネットワークおよびクライアン
トのセキュリティ対策の実施
・また、他のアプリケーションと
連携するばあいは、連携部分の
作りこみが必要
利用者の操作および情報モラル
教育
セキュリティの観点からOSな
どPCソフトを最新の状態に保
持する
SaaS提供者に依存
基本操作に関する管理者やヘル
プ対応要因は必要
・クライアントの管理は必要
・アプリケーションはSaaS提
供者が運用
・クライアントの管理は必要
・アプリケーションはSaaS提
供者が運用
サービスの提供内容に即したコ
ストの負担
(「SaaS向けSLAガイドライン
3
自社所有形式
(パッケージソフト)
所有
左記に加えて、サーバ、アプ
リケーションソフト、データ
センタ設備など
同左
パッケージベンダが提供する
基本システム/機能
顧客が自社に合った仕様を提
示し、プログラムのカスタマ
イズが可能(基本的には、SIer
等によるカスタマイズ開発を
伴う)
・サーバおよびクライアント
の双方の導入が必要
・ネットワーク、サーバ、お
よびクライアントのセキュ
リティ対策の実施
・システム開発の専任要員の
確保・育成
・利用者の操作および情報モ
ラル教育
左記に加えて、アプリケーシ
ョンソフトのバージョンアッ
プ作業などが必要
利用者の都合でメンテナンス
期間や時間を設定
システム全般の管理やヘルプ
要員が必要
・すべて自社での対応
すべて自社で対応
(第三者ベンダに外部委託す
る場合もあり)
将来の拡張性等も考慮した、
余裕を持った設備投資が必要
平成 20 年 1 月 21 日
経済産業省」より引用)
(2)シグマアイ・コンサルティングが導入支援するSaaS形式パッケージソフト
統合生産管理システムとSaaS形式の特徴を最大限に生かした営業支援システムとして次の
パッケージソフトを推奨。(図3、図4、図5参照)
①
クリアワークス:製品レベルの統合ソフト(株式会社スマイルワークス)
・販売ワークス、給与ワークス、会計ワークスがデータ連動できる3機能統合ソフト
・導入し易い販売・仕入れ管理:販売,在庫,仕入
・充実した売上管理:得意先別,担当者別,商品別,各売上推移,各売上順位表
②
ジェネシス 2009i:構成部品レベルの生産管理(株式会社イー・コモード)
・導入し易い生産管理:シンプル,コンパクト,使い易い
・実践的な生産計画,在庫管理:中核の2機能,充実
③
CR−Mate:営業支援(株式会社富士通中部システムズ)
・計画的な営業活動:商談プロセス,営業マン日程,顧客情報(商品,担当者等)
・顧客への迅速・適切な対応:全社情報共有、重要情報の通知、携帯連携
図3
シグマアイが導入支援するSaaS型ソフト
図4
営業支援システム
「CR−Mate」
4
図5
図6
製品レベルの統合ソフト
クリアワークス
構成品レベルの生産管理システム
5
ジェネシス機能構成図
3.シグマアイ・コンサルティングの導入の進め方
(1)情報化プロセスの一貫した導入支援
図7に示すように、当社は「IT活用企画」のみではなく、「適合化設計」「導入・運用」まで
切れ目なく一貫した導入支援を行っている。また、情報、現場、経営に強い当社のベテランメン
バーが、実務の内容まで踏み込んで適合化を行っている。
(2)導入支援プログラムの内容とツール
シグマアイ・コンサルティングは、情報化システム導入のプロセスに沿って、次のような導入
支援プログラムを実行する。
①
IT活用企画―経営課題との整合を取り情報化の方向付けを行う
製造業での豊富な現場経験を持つ経営コンサルタントの立場から、現状分析、業務分析を通
じて経営課題と現場ニーズの双方を踏まえてシステム構築を行う。このステージにおいては、
「業務分析―情報化企画」を示すわかりやすい分析シートをツールとして提供している。
IT活用企画
目的明確化→方向付け
切れ目なく一貫支援:
目的明確化から導入まで
適合化設計
シグマアイが通して支援
現場運用とIT適合化
マスタ整理・構築支援
現場運用とITを適合化:
「情報,現場,経営」に強い
導入・運用
当社が現場に入り適合化
システム導入・運用支援
図7
②
シグマアイの導入の仕方
適合化設計―現場運用とITを最適に適合化
SaaS提供者が提供する基本システムは、カスタマイズの範囲に制限があるが、現場業務
に可能な限り画面やデータ項目表示を適合させる設定を行うことが重要である。特に伝票・管
理帳票類は顧客対応および現場での使い易さ、蓄積された現場ノウハウを活かす等の点から可
能な限りのカスタマイズを推奨している。
6
このステージにおいては、業務と管理ポイント・管理方法に対してSaaS提供者が提供す
る基本システムの使用する機能、マスター・システム環境設定条件を明らかにする独自の「業
務プロセス設計書」をツールとして提供している。
(3)システム導入・運用支援と標準的なスケジュール
導入体制としては、通常図8のようなプロジェクト体制によって行う。情報化導入の成否は、
質的・時間的の両面において、推進体制とメンバーの意識如何に掛かっており、この面でも
参画し支援している。標準的なスケジュールは、統合生産管理システム(ERP)の例で示すと
図9のように準備5ヶ月でテスト稼動を目指しているが、企業規模ほか各種要因で調整が必要と
なる。
図8
プロジェクト体制の例
図9
標準的なスケジュール
4.シグマアイ・コンサルティングのプロフィール
当社は 2000 年に統合生産管理システムTPiCSを導入するグループ(TPiCS研究所の
登録SI)としてスタートし、2003 年9月に法人化した。現メンバーは、情報系製造業出身の中
小企業診断士を主体に6名である。ERPは「電子台帳化・全社即時情報共有」をベースに業務
改革を進める強力なツールであるが、同時に情報面でのリスクがある。従って情報セキュリティ
マネジメントシステム(ISMS)構築支援にも取り組んでいる。
この度、上記に加え従来IT化に困難を抱えていた中・小規模の企業の方々に魅力的な「Sa
aS生産管理、営業支援システム導入」に取り組むことにした。
7
(参考文献)
(1)小規模企業へのSaaS展開に向けて
(2)SaaS向けSLAガイドライン
(SLA:Service
Level
平成19年12月5日
平成20年1月21日
経済産業省
経済産業省
Agreement)
(3)中小企業向けSaaS活用基盤整備事業について
(4)株式会社富士通中部システムズ
平成20年12月
経済産業省
ホームページ
http://crm.fjcl.fujitsu.com/
(5)株式会社スマイルワークス
ホームページ
http://www.clear-works.jp/index.html
(6)株式会社イー・コモード
ホームページ
http://www.e-commode.co.jp/product/index.html
以上
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