PDF版 - 大阪医療センター

サンフランシスコ海外研修で看護について学んだこと
∼平成13年度 H I V 感染症研究者海外研修報告∼
国立大阪病院総合内科病棟 岩見 有里子
はじめに、平成 12 年度の当院の海外研修報告では、サンフランシスコの現状や支援
者の役割について大変具体的に書かれていますので、ここでは、看護婦として私が感じ
た看護のポイントについてまとめてみました。研修では知識不足を感じただけでなく、
HIV 患者に関わる医療者としての姿勢についても学ぶことが出来ました。はずかしな
がら看護の基本的なことばかりなので、実際に看護をしているのに学んだことがこの程
度かと思われるかもしれませんが、研修の中で一番心に残ったことを整理すると、この
ような内容になりました。中でも一人の患者様との出会いは、女性とエイズについてや
看護として出来ることは何かを考えるきっかけとなりました。患者様の背景が見えない
と私の文章だけでは感じたことが伝わりにくいので、本文の中で少し紹介させていただ
きます。(文中では患者とさせていただきます。)
Ⅰ.看護として大切なこと
1. 患 者 が 病 院 を 訪 れ る 背 景 を 理 解 し て 接 す る こ と
患者の中には、すでに保健所などで抗体検査を受け、陽性である事がわかって病院
を訪れる人、病院でたまたま検査や手術のための事前検査をしてわかる人、病院に抗
体検査を受けに来てわかる人などさまざまですが、今回、まだ妊婦に対する抗体検査
がルチーン化されていない時代に出産後 HIV 陽性であることがわかった患者と接す
る機会を得ました。
「子供が生まれる直前に様子がおかしくなり、帝王切開をした。
子供を産んだ後調子がおかしくなったがいくら調べてもわからなかった。ノイローゼ
だとか鬱だとか言われ、神経的におかしいのではないかと言われているのではないか
と思うようになった。そしてある病院に受診しエイズであることがわかった。すでに
CD4 は 36、ウイルス量は高い状態であった。」
このようにいろいろな病院へいっても原因がわからずようやく訪れる患者もいる
のです。患者がどういう状況で、または気持ちで病院を訪れているかということを思
いやり接していくことが大切であると思いました。
2 . 患者が病気を知ったときに支えとなる
どういう状況で病院を訪れるにしても病気をわかったときの患者のショックは図
り知れません。何も考えることが出来ずボーゼンとしたり、絶望感に打ちひしがれる
かも知れません。いかりや悲しみがこみあげとりみだす人もいるでしょう。そんな時、
外来で関わるスタッフたちは次のように対応されています。患者にとって泣かせてく
れる(感情をはきださせてくれる、そっとテッシュを差し出してくれる)、手を握りそ
ばにいてくれる、一杯のお茶を差し出し気持ちが落ち着くまで待っていてくれる・・・
そのような存在が必要です。この患者はこんなとき、「必要以上にかわいそうとか、
大丈夫とか言わないでほしい」と言われていました。決して方法論が大切なのではあ
りませんし、HIV/エイズに限ったことではありませんが、告知を受けた患者の気持
ちを理解し、支えていくことが大切であると思いました。また、病棟で勤務する私な
どは、外来でいろいろな経過を経て入院に至っているということをよく理解して関わ
っていく必要があると感じました。
3 . 希望を与える
患者との話の中で、
「看護婦は希望を与えてくれた。セラピストは勇気を与えてく
れた。医師との関係、夫、母親との関係の悩みにおいてよいアドバイスをくれた」と
いいます。患者が病気を告知された時、ナースプラクティショナーと出会い、
「あな
たは死なない、これから生きていけるんだから」と励まされたそうです。又、医師か
らも「私も手伝います。あなたもがんばりましょう」と声をかけられたそうです。慢
性疾患と言われるようになった今も、エイズ=死と思っている人は少なくありません。
絶望感から患者を救い、生きる希望がもてるよう支援することも看護婦として大切な
ことであると思いました。
4 . 疾患をよく理解し、正しい知識、最新の知識をもつこと
患者に、「医療者とはじめて会う時にどうして欲しいか」という質問をしたところ
「昔と今の状況は違うと言うことを話して欲しい(9 年前、10 年前とは違うこと)、そ
して事実のみを教えてほしい」という返事でした。治療についてはめまぐるしく変わ
ります。患者が自分の病気と向き合いこれからのことを自己決定していくためには、
正しい知識、最新の知識が必要です。また、事実のみというのは、医療者側の考えを
押し付けけるのではなく、患者自身が選択できるだけの情報を必要としているという
ことです。看護婦としては、学習できる機会を活用し自己研鑽に努めていくことが大
切であると思いました。またチームカンファレンスなどでもそれぞれの立場からの意
見を聞くことは最新の情報などを得るチャンスでとはないかと思います。
5 . 必要な情報が提供できること
「日本の病院では、医者にはどうしたらいいか何度も聞くけど、失礼だけど看護婦さ
んには聞かないだろうな」
。これは研修中に聞いた一言です。日本の事情もよく知る
学生さんです。アメリカでは看護も分散化しており、専門化しています。知識も高い
と感じます。医師と同じようなレベルで働くナースプラクティショナーもいます。し
かし、日本でも専門的に頑張っている看護婦もおり、学 習の機会もあります。私自身
に言われたとすると痛いところをつかれたといったところでしょうか。
患者は、「感染した事実がわかた時、そこからどうすればよいのか教えて欲しい」
「HIV の患者が情報が得られる場所や、どの雑誌、インターネットで情報があるか
を教えて欲しい」と言います。医療者からの情報だけでなく、患者自身も病気につい
て学習し、自己決定していけるよう、情報が得られる方法についても望まれているこ
とがわかりました。サンフランシスコの病院では患者が利用できる図書館があったり、
パンフレットも充実していました。治験なども掲示板に張り出されており、患者に目
に付きやすく申し込みやすい環境が提供されていました。そういう工夫も必要ではな
いかと思いました。
また、患者が鬱の状態をみて看護婦はカウンセラーを紹介しています。患者は病気
を知り、「人に守られなければ生きていけないことが辛かった」といいます。この方
の場合は、セラピーなしには自立を考えられなかったそうです。カウンセラーだけで
なく、ソーシャルワーカーや社会資源についても患者に応じて提案していくことが必
要であると思いました。
6 . H I V に関心を持ち、思いやりをもって接する
研修で接した方々からは、自信と、パワーを感じました。患者に対する思いやりや
やさしさもとても強いものがあります。医療者である私でさえ、このひとなら信頼で
きる、支えてくれるという安心感や、希望さえ感じました。日本では偏見や差別がま
だまだあります。私はこの人たちのような姿勢で患者と接しているかととても反省さ
せられました。ふと国立大阪病院を振り返ると、自信をもって言えるすばらしい人た
ちがたくさんいることに改めて気づきました。
7 . 薬を飲むことの大変さを理解する
抗 HIV 薬は薬の形状が大きく、数も多く、飲み方も薬によりさまざまで副作用も
あります。飲み始めると一生のみ続けなければならず、飲み忘れれば耐性ができやす
いものです。薬の開始はガイドラインだけでなく、経済的なことや、アドヒアランス
の問題、キーパーソンがいるか、飲み続けることが出来るかなど総合的にアセスメン
トし、薬の投与は慎重にすることが大切です。当院の医師も研修に参加されていまし
たが、薬に対する知識の高さや、患者のことを本当によく考えて薬を処方している現
状を知り、すばらしいと感動しました。
8 . 症状による苦痛が緩和される方法を積極的に行なう
ナースプラクティショナーは、
「下痢は副作用だから仕方がないととらえない」と
いいます。麻薬を使い便秘にするケースや繊維質をとらせる、カルシウム剤を飲ませ
る,脂肪分解酵素剤を飲ませるなどもちろん患者に合わせた方法を選択することが必
要ですがいくつかあります。また、緊急で運ばれる患者で多いのが脱水症状だそうで
す。
在宅看護支援では家族に 18 時間かけて、症状や痛みの管理について指導を行なっ
ています。水溶性の下痢が 6 回以上を下痢ととらえ、バナナや、重湯、リンゴジャム
やトースト、カフェインの入っていないティ、サミュータム:下痢の時に使う片栗粉
のようなものをとらせてみるなどの方法を指導しているようです。当院でも下痢で苦
しむ患者に医師が「方法はまだある」と希望をもたせ、科学的に対応しています。看
護婦としてもまだまだ出来ることがあると思いました。吐気や不眠症などについても
同様です。
9 . 病気の特性を理解しておく
どんな病気にも特性があります。感染経路やセクシャリティについてはとりだたされ
がちですが看護として以下の点についても理解しておく必要があると感じました。
1 ) エイズ末期患者をみるにあたり理解しておかなければならないこと
①エイズで死ぬ人は若い人が多い。そのため家族の受け入れができない
②末期で寝たきりとなると、るいそうにより褥そうができたり、ちょっとした傷から感染
し皮膚の状態が悪くなったり、下痢で頻回にオムツを交換しなければならないことになる
と世話をする人がうつるのではないかと恐怖感をいだいたりしていることが患者にとって
はつらいことである
③HIV は、膿や血液や髄液で感染することはあるが、目に見えて血液が混じっていない限
り、便や尿や唾液などではうつることはない
④転びやすい事実がある
⑤バイタルサインの中に痛みがあるかないか、痛みがあるとしたらどの位か聞いておく必
要がある。(慢性疾患の場合問題になる)
⑥ソーシャルサポートがいない人をみていることを意識する
⑦死とは病気で死んでいくことではないし、死んでいくことを治さなければならない病気
ではない。患者の苦痛をやわらげ、安らかに死をむかえることができるよう支援すること
である(この患者は良い死に方をした)
⑧末期の患者のところへ毎日行き、医療者は患者を見捨ててはいないことを示し、そして
何か自分に出来ることがあればしますよと言うことを伝えていくことは大切なことである
⑨DNR:自分が死ぬときにどんな形で死にたいか、どうしてほしいかを早い時期からはっ
きりさせておくことが重要である
⑩うつ病となげきについては、なげきというものはでてくるものであるが、患者がうつに
なりそれ以上、苦しまなくても良いように、予後6ヶ月であってもうつの治療をすること
は必要である。定期的にうつがあるかスクリーニングする
ⅰ.日常生活に支障がでているか
ⅱ.自分の意思決定ができないなど
⑪アメリカのホスピスケアは 9 割が自宅でおこなっている
2 ) 女性とエイズの問題を理解しておく
患者は、自分がエイズとわかったとき、子供や夫が感染していないか心配し、夫からう
つったのではないかと疑ったりもしたといいます。また、出産後子供の世話が出来ない
中、夫は子供の世話を何も言わずにしてくれたが自分が動けないことや病気であること
で、緊張関係があったそうです。母親も世話に来てくれるようになり、治療に専念する
ことができたようですが、子育てにおいて、夫と母親との間にも緊張関係が生じたよう
です。今、薬でコントロールでき、普通の生活ができるようになりましたが、今度は時々
夫に自分が病気であることを思い出させないといけないようです。子供にもわかるよう
に自分の病気を告知しています。いろんなケースがありますが起こってくることを予測
して看護していくことが大切であると教えていただきました。また、妊娠期には、抗
HIV 薬を飲むことで奇形児になるのではないかという不安や、出産後母乳を与えられ
ない女性としての苦悩などあります。看護の特性として理解しておくことが大切です。
・女性のほうが男性よりも感染しやすい
・母親がエイズで赤ちゃんがうつる可能性 0.2%
・垂直感染は、AZT 一剤でもあれば子供にかなりうつらない
・ウイルス量が男性1万と女性 2 万と同じレベル
・子宮経癌に気をつけなければならない
・妊娠時奇形になる薬はさけなければならない
・子供に HIV をどう伝えていくか
・妊娠から出産、子供までトータルでみていく
・感染症、婦人科、小児科、産科、ソーシャルワーカー、薬剤師、かかりつけ医のチーム
で医療をし、話し合いをしたりする
・垂直感染を防ぐ、または減らすという女性がもっているニーズに適切に答えていくガイ
ドラインがある
・HIV 陽性の女性には、妊娠をする前にチームにあってもらい、薬、妊娠のリスク、妊娠
したときに気をつけること、相手が陰性なら感染減となるものは何があるか、妊娠する前
に妊娠をしたいカップルに教育しどの程度理解しているかを把握しておく
・エイズがあるかどうかを考えるだけでなく、高血圧や糖尿病のことについても考えてお
く
・予防注射も妊娠前にしておかなければならない必要性についても説明しておく
・薬を飲むか飲まないか、すでにのんでいる人はどうするか、薬をはじめて飲む人の飲む
時期について相談し出産計画をたてていく。また、出産後 HIV 検査の必要性についても説
明しておく
・何も予防措置をとらなければ 4 人に 1 人、もしくは 5 人に 1 人感染する。感染したばか
りであればリスクは高くなる
・赤ちゃんが HIV 陽性になったらどうしたらいいか
何もしなくてもかからない率は 4 分の 3 あることを知らせてあげる。ただ薬を飲むように
というだけではない。
4 人のうち 3 人の人がうつらないがもっと防ぐ方法があるそれが HAART である
・AZT をつかうと 5%∼5%以下に感染率下げることができる
・HAART を使うと 1∼2%弱になる
・薬を飲むことで感染率を減らすことは出来るが、母体について薬を飲むことがいいこと
か
CD4 350 以下ならはじめる。350 以上なら必ずしもすすめられることではない。なぜなら
薬の副作用が出るから
・妊娠中 CD4 が下がる
・女の人はウイルス量が低い数でも進行はやい。男は 1 万から 1 万 5 千でも心配ないが女
の人は心配。状況が悪いと考える。
・薬を飲んでいない人は 13 週までまってからはじめる。どうせ飲んでいないのであればこ
こまで待つことがいいこと
・飲んだり、飲まなかったりを防ぐためにも妊娠初期は避けるほうがいいかも(つわりが
あるから:耐性になる菌が出たりするかもしれないから)しれない
・生活のリズムの中でどのタイミングに飲めば飲みやすいか、その人の生活を聞いてスケ
ジュールを決める
・冷蔵庫に保存する薬の保管方法や、薬を変更しないといけないときどうするかについて
も考えておく
・副作用では肝臓・すい臓・貧血に気をつける酵素があがれば薬を変える。40 週待たずに
37 週で出産してもらう
・D4T DDI は乳酸アシドーシスでる。副作用の嘔気と、つわりを間違えないようにする
ためにも測定していく
・患者が来院してきたら、妊娠が健康か正常か調べる。超音波など、18 週から 20 週にも調
べる
・血液検査、4∼6 週もウイルス量が低いとき、毎月、34 週目であがってきていないかをみ
る。ウイルス量が高いとき、出産状況をかえる、薬をかえる
・帝王切開のガイドラインがある
HAART の薬を飲んでいない人で AZT 単剤で飲んできた人、破水していない、38 週目であ
り、それ以上すすんでいない人
・HIV 陽性の人が子供を産んだ場合ウイルス量 1000 よりも少ない場合帝王切開をしてもか
わらない
・帝王切開をしたいか、したくないかは患者が決める
看護婦や医師は、正確な情報を伝えていく
・帝王切開は 38 週から 39 週を超える前にはじめる
陣痛、破水の出る前にする
・出産時用の予防パッケージをつくる
出産時にあわてなくていいように
・普段飲んでいる薬でなく、出産時違う場合を作っておき用意しておく。
(処方しておいて
もらう)
・陣痛中は AZT を点滴で入れていく
・34 週以前で単剤の人にどう対応するかのパッケージもある
・赤ちゃんには液体のシロップを飲ませる
34 週以上は 6 時間毎、体重や何週で生まれたかによって投与量かわる
・女の人 D4T 飲んでいて産む場合、D4T はのまない(赤ちゃん生まれるまでは)AZ T
と D4T では薬効落ちる
・出産後の女性に対するケア
母乳からの感染:ミルクを飲ませないように、スタンダードなパッケージの中に、母乳を
飲ませるセットはあらかじめはずしておき、母親がみえないですむようにしておく
・AZT は 15 歳までは問題ない
・セフティバは飲ませない。妊娠中中枢神経を障害し、奇形児が出来るから科学的根拠の
ないものは強くすすめない
・赤ちゃん陰性なのに、母乳を飲んだため陽性となった人は 14%。それをわかって飲ませ
た人はいない。赤ちゃんが生まれた後すぐ液体を吸引し、それが体に入って感染するのを
守る。赤ちゃんが指をなめる、目を触るのを防ぐため、ざっと体を拭いた後、手を巻いて、
ドライにしてから母親に渡す
・新生児の入浴は、状態が安定してから入れるが、温度も普通に入れる。
AZT は 8 時間たってから入れる。生まれてから 48 時間、6 週、4 ヶ月、6 ヶ月、12 ヶ月、
18 ヶ月目に血液検査をする
・コンドームを使って破けた場合、抗体テストをする。ピルを飲んでいても妊娠すること
がある
・妊娠をした女性のためのサポートの場がある
・社会的要因がある場合、帝王切開をしないほうが予後がいい
3 ) 高齢者とエイズ
高齢者への告知や、薬をどうするかといった問題も出てきます。患者の QOL を考えた援
助が必要となってきます。
1 0 .人間にはいろいろな性の指向があることを理解し、偏見や差別の目で見ない
セクシャリティについて、自分の価値観やものの考え方について見つめてみる事が必要
です。患者を理解しようとするときには自分のそれは少し横に置いておき、まずは患者自
身を受け止めていくことが大切です。グローバルにものを考える、人間をとらえることが
必要であると思いました。
1 1 .病気をもった患者ではなく一人の人間として接すること
患者は、「時間がなくても病気のことばかりでなく、病気以外の人生があることを知って
欲しい」といいます。週末どう過ごしたかや、子供の運動会はどうだったかなど、患者と
しての側面だけでなく、一人の人間として接していくことが大切であると感じました。
1 2 .患者にも質問できるタイミングをつくること
患者は、「医療者が今言ったことがわかったかどうか患者に確認をしてほしい」といいま
す。病気や薬のことなど難しい話もあり、わかりやすく説明しても患者は質問のタイミン
グさえつかめないでいるようです。途中で理解できているか、質問はないかなどこちらか
ら声をかけていく必要があります。
1 3 .患者がどういう人生を過ごしたいかを確認しておくこと
日本では、末期になって、患者自身が最期をどうしたいか言えない状況になって、家族
の意向を優先することがあります。患者の人生ですから本人がどうしたいかが大切です。
どういう死に方をしたいか、薬がきかなくなったとき、飲めなくなったときどうするか
について、アメリカでは早い時期から患者の意思を確認しています。また、患者の意思を
記したものがあれば、法的に効力があり、家族の意向と異なっても患者の意思が尊重され
ることになっています。日本でも早い時期から患者と話をし、これからのことを患者自身
も見つめることが出来るようにすることが必要ではないかと思いました。
1 4 .医療チームを組み、情報を共有していくこと
患者看護はチームで関わることが大切です。また、患者にとって、プライバシーにかか
わるようなことを何度も聞かれたりするのは苦痛です。それぞれがもっている情報をすべ
て明らかにすると言うのではなく、必要な情報をうまく使って、患者の問題解決につなげ
ていくことが必要です。
1 5 .予防教育を積極的に行なうこと
サンフランシスコでは早い時期から予防活動に力を入れており、現在エイズの患者の曲
線は下がってきています。しかし、日本では直線状に増え続けており、海外での日本人の
エイズ患者の増加もみられます。しかし日本人は身近な問題としてとらえている人がどれ
だけいるでしょうか。若い人のエイズが増えているのは、もう昔の病気であるとか、薬を
飲めば死ぬことはないなど安易に考えているのではないでしょうか。今は感染のリスクの
低い女性なども増えています。エイズをなくしていくためには、プライバシーに関わると
いうことから積極的に踏み込めていなかったパートナー告知や、セーファーセックスにつ
いてもきちんと向き合い指導していくことが必要であると思います。患者が感染させるか
もしれないということを医療者が知っていて感染させれば、サンフランシスコでは医療者
の責任も問われます。医師の今の関心は、「病気をどうやって治そうかということに力を費
やすよりも、感染が蔓延しないようにどうやって予防していくかということである」とい
います。看護として出来ることを行なっていくことが大切であると思います。HIV 再感染
といって、すでに薬を飲んでいる人が新しいタイプのウイルスに感染したときに薬がきか
なくなるケースがあるそうです。
おわりに
海外研修というとても貴重な体験をさせていただきました。患者が求めている看護を追
及していけるよう、看護婦として専門性を高めていく必要性を感じました。微力ながらも
患者を支えるチームの一員としてこれから頑張っていきたいと思います。今回、お世話に
なりました関係者の方々に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。