「ホームファッション(Home Fashion 以下 HFa)とは何か」。いろいろな

「ホームファッション(Home Fashion 以下 HFa)とは何か」
。いろいろな解釈があ
りますが、初めに整理し定義をして、本文を進めます。
似た言葉の「Home Furnishing(以下 HFu)
」は、「住まいを楽しく便利にするた
めの設備や器具や装飾を取り付けること」
(
『大辞泉』
)とあります。小売業的には、
内装、設備、家具、大型家電などのハードな商品とサービスを付加したフォーマット
を言います。購買頻度は、おのずと低くなります。
一方、HFa は、家庭用品とカーテン、カーペット、
ベッドリネン(寝具)などを組み合わせて扱うことを指します。
つまり、置くだけ、掛けるだけで使える商品を取り扱うフォーマットで、施工などを
必要としない購買頻度が高い品群を中心に取り扱っています。
HFa か HFu の違いは、家具を扱うか否かが基準です。▼購買頻度の高い商品を主
力に取り扱う店舗が HFa 企業。工事付き商品、配達の必要な家具などを販売してい
る店舗は HFu 企業に分類できます。どちらにしても“HOME”(家の中)“ROOM“(部
屋の中)をいかに快適に過ごすかがテーマであり中心になっています。
次に、
どのような店、または品揃えを指すか具体的な事例を交えながら解説します。
まず、HOME について先駆的な欧米の小売業、店で考えます。米国において HFu、
HFa を中心に扱う代表的なフォーマットは、百貨店と GMS(総合スーパー)でした。
中でも SEARS は、1886 年に通信販売から創業し、1960 年代にリージョナル SC
(ショッピングセンター)の核として急拡大、80 年代までチェーンストア売上げ全
米ナンバーワンの小売業となります(残念ながら 2012 年は 11 位)。その SEARS の
取扱商品の中で、HFu は中心的なカテゴリーとして急成長していきます。
それを支えたのは堅牢な品質の PB でした。
代表的なものとしては、
家電の“Kenmore”
です。当時の大型冷蔵庫、洗濯機など、マーケットシェアの 40%をとっていました。
一方で、家具、カーペット、カーテン、ベッドリネン、タオル、キッチン用品など、
HOME 関連商品を横断的にコーディネートできる“OPEN HOME”を開発していま
した。
当時は、各カテゴリーの商品がそれぞれ専門のメーカーによって生産され、品種間
の横断的なマーチャンダイジングを行うのも難しい状態でした。そのような状況下、
NB の品揃え型から開発商品によるトータルコーディネートに成功した MD の先駆
けとなります。
家具、家電、敷物、壁紙、カーテン、寝室用品、バス用品、キッチン用品、ダイニン
グ用品などを展開していました。先述の分類だと、このフォーマットは、Home
Furnishing という事になります。
●RSC,SRSC の核店舗で多店舗化に成功した SEARS
同じころ英国の代表的な小売業 M&S でも PB 商品の開発が進んでいました。
その後、Home Furnishing から Home Fashion へ、購買頻度の高いカテゴリーを重
点的に品揃えした Home Fashion store(HFaS)が出現します。
1985 年 550 坪の 1 号店を Bed Bath&Beyond(BBB)が開店させます。
主力商品は、寝具、バス、キッチン 売場面積は 1000 坪~1500 坪、15000~20000
アイテムを品揃えする HF のカテゴリーキラーの誕生となったわけです。
●BBB の寝具売場。棚の上は在庫で、はしごは従業員の作業用
日本ではジャスコ(現イオン)が、10 年に及ぶ開発研究を経て、80 年にトータル
コーディネートの先駆けとなる PB や“HOME COODY”をスタートさせています。
HFu は、購買頻度の高いカテゴリーの品揃えを中心とした HFa へと進化していきま
す。
現在の日本の小売業で業態別(HFaS、白貨店、GMS、ホームセンター)に、各カ
テゴリーの取り扱い状況、PB の開発状況をアイテム別に整理してみました。
●Home Fashion &Furnishing の品揃え
◎PB トータルコーディネート○PB △ NB+PB ×NB
HfsS(ニトリ)
Dept(三越)
GMS(イオン) HC (カインズ)
布団
◎
×
△
毛布
◎
枕&カバー
◎
ベッド(家具)
◎
カーテン
◎
ラグ&マット
◎
クッション
◎
ソファ(家具)
◎
調理道具
◎
キッチン家電
◎
食器
◎
DK テーブル
◎
掃除用品
◎
収納用品
◎
造花・花器
絵・額
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
メ
ー
カ
ー
ブ
ラ
ン
ド
別
・
セ
レ
ク
ト
シ
ョ
ッ
プ
展
開
△
△
○
○
△
△
△
△
△
△
商
品
開
発
型
品
揃
え
、
コ
ー
デ
ィ
ネ
ー
ト
商
品
と
△
NB
品
種
間
を
横
断
す
る
コ
ー
デ
ィ
ネ
ー
ト
・
色
・
柄
の
組
み
合
せ
×
○
×
○
◎
×
×
が
混
ざ
る
◎
×
×
◎
◎
◎
○
○
○
△
△
○
○
○
品
種
間
を
横
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る
コ
ー
デ
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ネ
ー
ト
・
色
・
柄
の
組
み
合
せ
×
×
冒頭で Home Furnishing 、Home Fashion ともに大きな違いは購買頻度が違うとい
う事を申し上げました。購買頻度の違う商品が混在するという事は無駄なことが多く
なります。
TPOS( 使う時、場所、動機、スタイル)で品揃えを構築し購買頻度をできる限り同じ
ものを集めていくことが「もう一品を買ってもらう」ことにつながります。ところが、
現状は、カテゴリー別にバイヤーが担当していて分類の壁によって横断的な売場の編
成ができないことが多く発生しています。これは改めないといけません。
HfaS の重要な戦略である“トータルコーディネート”
、品種間を横断的にコーディ
ネートができることが必要です。
●TPOS のそろった売場。冷凍食品とキッチン用品が一つの売場で構成されている。
ニトリの子供部屋の商品の売場を見ると、お客が子供部屋の商品を買いに来たら、つ
いもう一品買ってしまう品揃えと売場ができています。 接客なしでもうー品買って
もらう戦略はセルフサービス小売業の技術的手法です。
●学童の生活という TPOS とコーディネートが考えられているニトリの売場
次に、価格について解説します。初めに、ポピュラープライスからベター、ベスト
プライスまで価格階層をイメージして図表②のようなピラミッド階層を作りました。
各フォーマット、各企業が自社の価格ポジションを作り業態競争をしています。
図表② プライスポジション
まず、
米国の有力チェーンストアの商品構成グラフ
(図表③)から考えてみましょう。
これを見ると、ウォルマートの圧倒的な価格の強さポジションが明確になっています。
しかし、対抗するターゲット、JCペニー、コールズ、ポッタリーバーンがそれぞれ
のポジションで品揃えと商品開発を行い、売場の提供方法を変え、互いに差別化を図
っています。
図表③
ピロー・シーツの商品構成グラフ
売場を見れば、ウォルマートのピロー・シーツセットの売場は、整然と並ぶ商品がサ
イズ、カラー共明確に分類されています。商品を選ぶための必要最小限が確実に実施
されています。
●ウォルマートのピロー・シーツセットの売場。商品を選ぶ必要最小限が実現されている。
反対に、最も高い売価のポジションで販売されるポッタリーバーンの売場は、生活し
ている状態をイメージできます。部屋の中にいるような錯覚を覚えるようなプレゼン
テーションですが、もちろんトータルコーディネートは欠かせません。
●寝室をイメージさせるポッタリーバーンの売場。
日本では、厳しい価格でお客に人気のカインズの商品構成グラフを見てみましょう
(図表④)。2012 年 3 月に品揃えされていた 498 円のオープンプライス商品は、同
年 11 月にはなくなっています。また、1480 円だったプライスポイントは、13 年 11
月の調査では 1980 円となり、さらに 2480 円の売価が新設定されています。
図表④
カインズの商品構成グラフ
増税を契機に、14 年を起点に日本の小売業は大きな変革を迫られています。これ
から始まる消費増税、円安、海外生産地のコストアップ等々、向かい風に立ち向かわ
なければなりません。売価が右寄りに高くなってくるのは必至の状態にあります。
それらを踏まえ HFa(志向)企業にとって MD 上どのような対策が必要なのか、
何をいち早く解決しなければならないかを整理したのが図表⑤です。
図表⑤ 2014 年~市場環境の変化に対応していく方向
14 年以降の MD は、各社の政策面の戦いと MD を実践するバイヤーの技術面の戦い
が始まります。バイヤーは、HFa 先進国の欧米小売業を視察されることを勧めます。
未来は、予測することは不可能ですが、創造することは可能です。未来を創造するた
めの情報を欧米小売業から学ぶべきでしょう。