新規酵素固定化用担体の開発と酵素阻害剤スクリーニングへの適用 ○飯田泰広 神奈川工科大学 安藝 翔 佐藤 生男 [目的] 近年、薬剤スクリーニングが精力的に行なわれているが、そのスクリーニングにおいて最も重要な点は、 得られる薬剤の性質が表現型であるスクリーニング法に依存する点であり、その活性評価法により取得でき るリード化合物が異なってくることである。一般に、酵素阻害剤を対象としたスクリーニングには、バッチ システムが用いられているが、基質と試料(阻害剤)が共存しており、薬剤濃度の変化を考慮した阻害効果 の評価が難しい。本研究室では、これまでに固定化酵素とFIA(Flow Injection Analysis)システムを組み合 わせることにより、その点を容易に評価、より実質的に有用な薬剤をスクリーニングできる可能性を見出し ている。本研究では、スクリーニングの高効率化、微量サンプルを対象とすることを念頭に置き、新規の酵 素固定化担体を開発、その特性を評価するとともに、酵素阻害剤スクリーニングへの適用を試みた。 [方法] 開発した新規固定化担体は、立体網目状構造を持ち、体積が小さくても大きな表面積を有するモノリスシリ カカラムを基本としている。通常ではカラムを形成させた後、酵素固定化用にアミノ基を導入するが、本実験で は、予めモノリスシリカの骨格にアミノ基を導入して作製することにより、煩雑なアミノ基導入の操作を簡略化 することを可能としている。 γ-APTES(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)に等量の pH5.5 50mM クエン酸塩緩衝液 キャリヤー溶液 0.2 mL/min 回転式注入弁 20μL (Boc) 2 O ( 二炭酸 ジ -tert- ブ チル ) を加え ることによ り、 排出 Boc-APTES を合成、 NMR,GC-MS により構造を確認した。 Boc-APTES、 N2 PEG(ポリエチレングリコール)、酢酸、TMOS(テトラメトキシシ ラン)を混合、乾燥させることにより、あらかじめアミノ基の導 入されたモノリスシリカカラムを作製した。また、作成に用い る試薬の濃度などを変更し、固定化担体としての適性を比較、 N2 検討した。その評価には、GFP(緑色蛍光タンパク質)を用いて 検出器 排出 ポンプ 0.05 mM ブロモチモールブルー pH 7.6 0.2mL/min 酵素カラム一体型 ガス拡散デバイス 記録計 図1 FIAシステム モノリスシリカカラム表面での固定化状態を蛍光顕微鏡で確認 するとともに、固定化率の計測を行った。また、キャピラリー内にモノリスシリカカラムを作製、FIA(フローイ ンジェクション分析)システム(図 1)に導入し、送液時の圧力などの比較を行った。 [結果] 作製したモノリスシリカカラムにタンパク質を固定化可能であるかを検討した結果を図 2 に示す。図 2(b) に示すように、グルタルアルデヒド処理を行った後、GFP をカップリングさせたものは GFP 由来の蛍光を示 すのに対して、GFP を作用させなかったもの図 2(a)からは蛍光が観察されず、当該カラムが予めアミノ基を 骨格に有していることが示された。次に、当該カラム作成条件の検討を行った。作製の際、試薬を様々な比 率で混合し、作製されたモノリスシリカに固定化を行い、その固定化率を評価するとともに、FIA システム に導入した際の圧力を評価した結果を図 3 に示す。TMOS:Boc-APTES:PEG 溶液が 1:2:3 の作成条件が固定化 率も高く、圧力もそれほど高 くないことから以後の実験 (a) (b) には、条件g)により作製す ることとした。開発した新規 モノリスシリカカラムを担 体として、酸性ウレアーゼを 固定化、FIA システムと組み 合わせることにより、酸性ウ レアーゼ阻害剤のスクリー ニングに適用した。 図2 GFPを固定化させた新規モノリスシリ カカラムの高校顕微鏡像 (a) モノリスシリカカラムにグルタルアルデヒド処理 を行ったもの(GFPを固定化していない)。(b) モノ リスシリカカラムにグルタルアルデヒド処理を行い、 GFPを固定化させたもの。
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