1) 男性更年期とは? 性ホルモンは正常人では加齢によって徐々に低下することがわかっております。特に女 性では顕著な低下が認められ、女性ホルモンは閉経後にはほとんど存在しなくなってしま います。以前から同じような変化が男性にも起こることが指摘されておりましたが、高齢 化社会が進む中、最近になって男性更年期障害がより注目を集めております。一般的に男 性ホルモンが低下することで起こる随伴症状が男性更年期障害と言われております。 2)加齢と男性ホルモン 男性ホルモンは年齢を重ねていくと精巣の機能が衰えるため、人によっては 20 歳を過ぎ るころから男性ホルモンの量はゆっくりと減少していきます。一般的に、35 歳くらいから は誰しも男性ホルモンの減少が目立つようになり、60 歳の男性は、40 歳の時と比べて平均 25%もホルモン量が低下しているという研究結果が出ています。しかし女性ほど急激な変 化はなく、個人によって差があるのが実情です。またそのため同様の症状でも個人により 男性ホルモンの値に差があります。当院ではまず問診から行いそれに該当する方にホルモ ン測定を勧めております。 3)男性更年期の症状 男性ホルモンとの関与として、1)性欲、勃起能などの性機能、2)体内脂肪と筋肉量、 3)骨、4)記憶力、5)体がだるい、やる気がないなどの精神症状、6)ほてり、発汗 などの身体症状、7)赤血球を増やすなどです。しかし、加齢に伴い男性ホルモン以外の 影響も考えられるため全てが男性ホルモンのせいではないことは忘れてはなりませんが、 これらの症状があるような場合、また AMS 質問紙に当てはまる方は一度、外来でホルモン の検査を受けてみることを勧めします。 4)男性更年期外来での診療の流れ 1) 問診(家族歴、既往歴(高血圧、高脂血症、糖尿病などの有無も聴取いたします。) 現病歴(排尿状態、早朝勃起、性交の状態も含む) 2) 身体所見(特に直腸指診で前立腺の状態-硬結の有無、肥大の有無をチェックし ます。) 3)血液検査はフリー男性ホルモン、総男性ホルモン、PSA(前立腺特異抗原)、 一般採血 5)男性更年期の治療 以上の検査を行い、男性ホルモンが年齢基準値より低下している場合にホルモン補充療 法(3 週間から 1 ヶ月に一回)を行いますが、前立腺癌が疑われる方は除外され前立腺の精 査となります。また重度の肝機能障害、多血症の方もホルモン治療の対象から除外されま す。治療期間としましては 3 ヶ月、6ヶ月ごとで判定し効果が認められる方は継続致しま す。また効果不十分な方は漢方薬、抗うつ薬などの治療をご本人と相談の上検討いたしま す。 また男性更年期の症状があるにもかかわらず男性ホルモンが正常な方には漢方薬での治療 を行っております。 中には男性更年期障害の症状に似たうつ病が隠れていることもありますので自己判断です ませずに、一度外来での検査をお勧めいたします。
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