4-3b. 夜空はなぜ暗い?(補充活動) 宇宙が膨張していることを4-3.で考えてみました。けれども、宇宙が膨張していな ければ、無限に広がっていてはいけないことは、膨張が発見されるよりも遙かに以 前から知られていました。どのように考えれば、そんなことがわかるのでしょう か? 簡単な図を描くことで私たちも考えてみましょう。 ○ 星は点光源か? 太陽は典型的な恒星です。その直径は地球の100倍あまりあります。このような光源 でも点だと言ってよいのでしょうか? (問 1)太陽の直径は約139万kmで、地球と太陽は1億5000万km離れている。縮尺を 自分で決めて図に描いてみよう。この図から考えて、太陽は地球から見て点光 源だといってよいだろうか? 実際の太陽は点光源だろうか? 図(縮尺: ) 結論: (問 2)太陽に一番近い恒星はケンタウルス座α星で、距離は4.4光年離れている(1 光年は9兆4600億km)。上と同じ縮尺で図を描くとしたら、どれくらい遠くに 描けばよいだろうか? この星の直径が太陽と同じだと仮定して、太陽の何分 の1の大きさに見えているのだろうか? この星は地球から見て点光源だと いってよいだろうか? 図の上での距離: 見かけの大きさ: 結論: 太陽の 分の1 ○ 見える星の数 宇宙には星がいっぱいあります。宇宙はどこも同じだと考えて、そこには同じよう に星があると考えてみましょう。宇宙が無限だとすると、どのくらいの星が見える ことになるのでしょうか? 1点からある方向を見ると、普通、光はまっすぐに進むので、直線上のものだけが、 その方向に見えます。 このことを考えると、地球からの距離が増えるにしたがって、その範囲に見える星 の数は、どう変わるのでしょうか。 (問 3)同じ方向の範囲を見ているとしたとき、100光年を1cmに縮小した図を描い て考えてみよう。30度の範囲を見ると、500光年、1000光年、1500光年、2000 光年離れたところで、それぞれ、何光年の範囲を見ていることになるだろう? 距離 500光年 1000光年 1500光年 2000光年 上の図で見えている範囲 (問 4)実際の夜空では同じ方向の範囲を見ているとしたとき、空を見ている方向 は、上下左右の広がりがある。これを考えると、地球からの距離が増えるにし たがって、見えている範囲の大きさはどう変わるだろうか? 距離が2倍、3 倍、4倍になると、見えている範囲の大きさはそれぞれ何倍になるだろう? 宇宙に星が一様に散らばっているとしたら、一定の範囲に見える星の数は見えてい る範囲の大きさに比例します。 (問 5)このことを考えると、地球からの距離が増えるにしたがって、見えている 星の数は、どう変わるだろうか? ○ 夜空の明るさ ここまでで確かめてきたように、全ての星の明るさが同じだとすると、遠い星ほど 暗く見えます。一方、遠いほど、空の同じ範囲に見える星の数は増えます。 (問 6)1つずつの星の明るさが暗くなるのと、見える星の数が増えるのとでは、 どちらの方が影響が大きいだろうか? 距離が2倍になると、その距離にある 星の明るさの合計は何倍になるだろう? (問 7)宇宙の大きさが無限だとしたら、空の明るさの合計はどうなるだろうか? それは実際の夜空と比べて異なっているだろうか? ○ 矛盾の原因はどこに? (問 8)前の設問の答えは、どう考えればよいのだろうか。これまでに、この節で 考えてきた話の中で、当たり前だと思っていたところをどこか1つ変えるこ とで、結論はどのように変わるだろうか? 怪しいところをできるだけ多く あげてみよう。 [Teachers' Note] 4-3b.夜空はなぜ暗い? (補充活動) この節では、「オルバースの逆説」を考えることで、論理によって導かれる結論が観測事実と 矛盾した場合、どのように考えるべきかを具体例として考えることが目的。スペクトル学習と は本来独立な話題なので完全に省略してもよい。 ○ 星は点光源か? (問 1)と(問 2)では、作図から、星の大きさと距離との関係を掴んでもらおうというもの。 校庭の利用などで太陽系の大きさを体感してもらう教材と組み合わせてもよいかもしれ ない。例えば200億分の1の縮尺模型を作ると太陽の直径約7cmに対して、ケンタウルス 座α星までの距離は2000kmほどになる。 ○ 見える星の数 (問 3)から(問 5)まででは、作図から、空の同じ角度範囲に見える、同じ距離の星の数が、 距離の自乗になっていることを納得してもらうことが目的。既に平面上の作図と立体図 形との対応が履修者に理解できていると思われるならば、(問 3)と(問 4)とはまとめて 逆自乗則へ直結してしまってもよい。 ○ 夜空の明るさ (問 7)は、前提として、明るさが距離の自乗に反比例して暗くなることを認識しておく必要 がある。これはHOUの 補充活動19 で扱っている。この設問の回答は無限大に発散するこ とになるが、学習者の回答としては感覚的にわかれば十分で、「暗い夜空にならない」 ことがわかればよい。これが「オルバースの逆説」と呼ばれる問題である。 ○ 矛盾の原因はどこに? (問 8)については、矛盾の解決策は1つとは限らないので、あれこれ考えてみることが大切。 この時点では、「宇宙が膨張しているため」ということが結論になる可能性は低い。歴 史的にも、「宇宙では星々は無限に一様に広がっているわけではない」、「宇宙は有限 である」ということとして理解されていたようである。この設問を、「宇宙が膨張して いると考えると、(問 7)の結論はどうかわるだろうか?」と変えてもよかろう。
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