第6学年 道徳学習指導案

第6学年
道徳学習指導案
平成27年11月11日(水)
第6学年2組 35名
授業者
1
主題名
かたよらない心
2
資料名
森川君のうわさ(出典:光文書院「ゆたかな心」)
3
主題設定の理由
曽我
真琴
4-(2)公正・公平、正義
(1)ねらいとする価値について
人はそれぞれが違った価値観、感情をもっている。そのため相手によって態度を変えたり、自
分の気分や好き嫌いで行動したりしてしまうことがある。社会正義の実現のために、そのような
私たちの心の弱さに目を向け、接し方や態度に偏りがないか、また自分本位の感情にとらわれず、
物事の本質を正しくとらえることができているか、己を振り返り、厳しく見つめていくことが大
切である。
誰に対しても公正・公平に接していこうとする態度、正義を貫こうとする態度は、良好な人間
関係を養う上で、そして社会生活を送る上で重要なことである。
(2)児童の実態
本学級の児童(男子20名、女子15名、計35名)は、明るく活発な児童が多い。しかし、
友達が間違った判断をしたり、間違った行動をしたりしていても、そのままにしている児童も少
なくない。この時期の児童にとって、友達との出会いや関係は大きな意味をもつ。しかし、その
関係は小さな理由で揺らいだり、崩れたりすることがある。心身のバランスが伴わず、不安定な
時期であるため、うわさや集団心理による仲間外れやいじめも起こりやすい。
そこで、本時の学習を通して、おかしいと思ったことがあっても黙ってその場をやり過ごそう
とするような弱い心が自分にも友達にもあるということを自覚させたい。おかしいと思うこと、
理不尽な扱いに対して常に公正、公平な態度であり、正義の実現を妨げる物に対して立ち向かえ
る心情を育ませていく。
(3)資料について
本資料は、ささいな理由で友達から仲間はずれにされる森川君、明確な理由や根拠がないまま
に森川君のうわさを流し、無視までするようになった石山君たちを中心に物語は進んでいく。そ
の様子を周りで見ている、第三者の「ぼく」は、
「おかしい」と思いながらも発言することができ
ない。
そこで問題を解決しようと動いたのが、いつもはおとなしく、発言もしない順子さんである。
順子は「ぼく」とは対照的に、おかしいと思うことをみんなの前で堂々と発言した。それを見て
いた「ぼく」は自分の間違い、恥ずかしさに気付き、自分も順子さんのように発言しなければな
らないという思いを抱いたところで話は終わる。
『なぜ「ぼく」は行動に移すことができないのか』また、
『順子さんが発言したときの、
「ぼく」
の気持ち』を考えることで、自分の弱い心と向き合い、それを正していこうとする「ぼく」に自
分の姿を重ね合わせて考えることができる。そして同じような問題が起きたとき、自分自身が友
達とどのように接していけばよいかについて、改めて考える機会となる。
正義の実現のため、勇気をもって行動することの大切さ、友達に対して公平、公正な態度をと
る道徳的価値を理解し、今後の友達との接し方に生かすことのできる資料である。
-1-
4
研究主題との関連
研究主題
自分を見つめ、友達の思いを大切にする子供の育成
-道徳授業の充実を通して-
研修主題に迫るために、第六学年では、目指すべき児童像を
・自分の性格や考えを知り、自分の悪いところを見直し、よいところを積極的に伸ばす子
・よりよい目標をもって生活する子
・相手の意見を受け止め、自分と異なる意見や立場も大事にする子
とした。また、本時における目指すべき具体的な児童像を
・自分の性格や考え方を知り、心の弱さに気付ける子
・正義の実現を目指し、かたよりのない心で友達と接しようとする子
・多様な友達の考えに触れ、自分の成長に生かせる子
とし、以下のような手だてを考えた。
<ねらいとする価値に迫るための工夫>
(1)発問の工夫
公正・公平な態度とはどのような行動かを理解するために、様々な登場人物の気持ちを理解し
ていく必要があるが、発問は精選しなければならない。そこで、よりよく生きようとする主人公
の心の変化に焦点を当て、①変化する前の心情、②正義ある行動に触れ、公正・公平な心に目覚
めていく心情の2つに発問をしぼった。
さらに、展開の後段では、資料を離れて、自分の生活を振り返り、価値に対する判断力や実践
力を高めるための揺さぶりの発問を取り入れた。
(2)資料掲示の工夫
登場人物の顔の絵を使い、話のあらすじをつかめるようにした。さらに主人公「ぼく」の心情
の変化をとらえやすくするため、変容前の「ぼく」→きっかけとなる出来事→変容後の「ぼく」
という順に板書し、視覚的に心情の変化をとらえられるようにした。
(3)資料の工夫
児童にとってねらいがとらえやすい資料を選定した。資料の内容が児童の身近にいつでも起こ
り得る内容であり、子供たちが公正や公平、正義について考えやすい資料である。また対照的な
二人の行動を比べることにより、正義を貫くとはどのような態度、行動なのかが児童にとってわ
かりやすい資料である。
(4)話し合い活動の工夫
中心発問では、聞き合い、話し合いがしやすいようペア(隣同士)での話し合いを取り入れ、
全体へと広げていく。振り返りでは意見の交流によって多様な価値観があることに気付かせるよ
う、グループ(生活班)での話し合いを取り入れた。
-2-
5
本時の授業
(1)ねらい
自分の中にある弱い心に気付き、それを乗り越える力を考えることを通して、誰に対しても公
正・公平に接し、正義の実現に努めようとする実践的意欲を育む。
(2)展開
学習活動
(○基本発問、◎中心発問、
・予想される児童の反応)
指導上の留意点
(★評価)
導 1 友達との接し方について振り返る。
・ねらいにとする価値への方向付けのため
入 ○うわさが本当のことではないと思ったとき、友達
に、友達に対して「おかしい」と思って
に「ちがう」と言えますか。
展 2
もなかなか言い出せなかった経験を想
起させる。
資料『森川君のうわさ』を読み、話し合う。
開
・教師が範読する。
・「ぼく」の気持ちを考えながら範読を聞
くよう促す。
・物語のあらすじ、対人関係をつかませる
ために絵を表示する。
・「ぼく」が本当のことを知っていたこと
を押さえる。
○だんだん無口になっていった森川君を見ていた
「ぼく」はどんな気持ちだったのでしょうか。
<正しい心>
・みんなに本当のことを言ったほうがいい。
・初めに、本当のことを言えばよかった。
・何とかしてあげたい。
・かわいそう。
<弱い心>
・石山君たちと言い争いになるのは嫌だ。
・言っても信用してもらえるかわからない。
・自分が仲間はずれになるかもしれない。
・もう3学期も終わるから、自分から目立って
何かをしたくない。
-3-
・公平ではないとわかっていてもできない
という価値の実現の難しさに触れるた
めに、「ぼく」の気持ちに共感させ、公
平・公正な心があった事を押さえる。
・中心発問につなげるために、〈弱い心〉
の気持ちが出ないときは補助発問(「な
ぜ石山君たちに「ちがう」と言えなかっ
たのだろう」)をする。
・中心発問での「ぼく」の気持ちと比較す
るために、葛藤の末、〈自分を守る心〉
の気持ちが上回り、発言できなかったこ
とを押さえる。
◎順子さんの発言を聞いた「ぼく」は、どんなこと
を思ったのでしょう。
〈後悔〉
・自分が情けない。
・分かっていたのに行動できなかった自分が
恥ずかしい。
〈決意〉
・ぼくも森川君のために発言しよう。
・自分も順子さんのように思っていることを
つらぬきたい。
・やはり、間違いは正した方が良い。
・活発に意見を出させるために、ペアで話
し合ってから全体で話し合う。
・ねらいとする価値に迫るために、正義を
貫こうとした順子の発言・行動から「ぼ
く」の気持ちが〈弱い心〉から〈正しい
心〉へと高まり、行動に移そうとしたこ
と押さえる。
・発言できた時の「ぼく」の晴れやかな気
持ちを押さえ、その心地よさに共感させ
るために、
「もし、
「ぼく」がこの後発言
できたとしたら、どんな気持ちになった
と思うか。」と問いかける。
・ぼくも本当のことを言うべきだ。
・今からでも遅くない。
3 公平・公正な心について生活を振り返る。
○順子さんにあって、自分にない力、足りない力は ・今後のねらいとする価値に対する判断力
何でしょう。どうしたら順子さんのように正しく
や実践力を高めるため、資料から離れ、
考え、行動できるようになるのでしょう。
・自分をもつ
児童の心を揺さぶる発問をする。
・児童の考えを深めるために、一人で考え、
・理想の自分を貫く力
・人の目を気にしない力
・勇気
カードに記入し、その後、生活班(4~
5人)で話し合わせる。
・正義感
・思いやり
・学習の内容を自分の生活へとつなげてい
くために、弱い心に傾きそうになった
時、公正・公平な心を目覚めさせ、正し
く判断し、実践できるよう促す。
○今日の授業を通して気付いたこと、考えたことを ・価値の自覚を深めるために、自分の経験
書きましょう。
を学習の内容と照らし合わせて考えさ
・ワークシートに振り返りを書く。
せる。
終 4
末
教師の説話を聞く。
・正義を貫くこと、公正・公平に接するこ
との良さを説くため、ジェームス・アレ
ンの名言を読む。
(3)評価
自分本位の感情にとらわれず物事の本質を正しくとらえ、誰に対しても公正・公平に接し、
正義の実現に努めようとする実践的意欲を高めることができたか。
-4-
(4)板書計画
ぼく
正義
勇気
覚悟
決心
思いやり
自分
す
っ
き
り
・
言
っ
て
よ
か
っ
た
を
つ
ら
ぬ
き
た
い
。
う
に
思
っ
て
い
る
こ
と
・
自
分
も
順
子
さ
ん
の
よ
・・
・
にぼ今言ぼ
発くかうく
言もらべも
し森でき本
よ川もだ当
う君遅。の
。のく
こ
たな
と
い
め
を
。
・・
・
恥自き本
ず分だ当
かがっの
し情たこ
いけ。と
。な
を
い
言
。
う
べ
ど
ん
な
こ
と
を
思
っ
た
の
で
し
ょ
う
。
森川君
順
子
さ
ん
の
発
言
を
聞
い
た
「
ぼ
く
」
は
順子さん
まけ判う
すな断わ
。いしさ
とてで
思は人
いいを
。
-5-
仲
間
は
ず
れ
石山君たち
ぼく
て
何
か
を
し
た
く
な
い
。
・
も
う
3
学
期
も
終
わ
る
か
ら
、
自
分
か
ら
目
立
っ
・
自
分
が
仲
間
は
ず
れ
に
な
る
か
も
し
れ
な
い
。
・
石
山
君
た
ち
と
言
い
争
い
に
な
る
の
は
嫌
だ
。
・
み
ん
な
に
本
当
の
こ
と
を
言
っ
た
ほ
う
が
い
い
。
・
あ
の
時
本
当
の
こ
と
を
言
え
ば
よ
か
っ
た
。
・
何
と
か
し
て
あ
げ
た
い
。
森
川
君
の
う
わ
さ