ストレージ・ネットワーキング v.1.0

ストレージ・ネットワーキング
第1版
2005 年 7 月
第2版
2007 年 6 月
目次
1.はじめに
2.基礎知識
2−1.NAS(Network Attached Storage) ................................. 2−2.SAN(Storage Area Network) ..................................... 3.ファイバ・チャネル・ネットワーク
4.IPストレージの種類
4−1.FCIP(Fibre Channel over IP) ................................... 4−2.iFCP(Internet Fibre Channel Protocol) ......................... 4−3.iSCSI(Internet Small Computer Systems Interface) .............. 5.NAS と SAN の違い
5−1.I/O の違い ....................................................... 5−2.プロトコルの違い ................................................ 5−3.パフォーマンス .................................................. 5−4.障害ポイント .................................................... 5−5.主な利用目的 .................................................... 6.さいごに
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1.はじめに
素人にはなにかとややこしい NAS と SAN についての基礎知識と、ストレージで利用するネット
ワークについて理解できるよう構成しています。
2.基礎知識
コンピュータシステムで使われているディスクタイプのストレージ装置は、装備されている場
所や接続方法の違いにより、DAS(Direct Attached Storage)または SAS(Server Attached
Storage)、NAS(Network Attached Storage)、SAN(Storage Area Network)の 3 タイプに大別
できる。DAS または SAS はコンピュータ本体に直接接続するタイプなので、今回取り上げるネッ
トワークストレージの範疇には入らない。ネットワークストレージといえば NAS または SAN タイ
プのストレージのことを指す。
Network Attached Storage
Storage Area Network
EtherNet
図1:NAS と SAN 環境概要
2−1.NAS(Network Attached Storage)
NAS はイーサネット上に直接配置されるストレージで、NFS (Network File System)や CIFS
(Common Internet File System)などのファイルシステムが搭載されている専用サーバーと
いう位置づけになる。従って、イーサネットに接続するだけで異なる OS を搭載するサーバ
ー間でファイル共有することができる。ただし、高レベル(ファイルやレコード単位)で
ネットワーク上をデータが行き来するので、後述する SAN よりもネットワークの負荷は大
きくなる。
2−2.SAN(Storage Area Network)
SAN はイーサネットとは別のデータストレージ専用ネットワークを設けてコンピュータ
にストレージを提供するものだ。SAN では、各サーバー側がファイルシステムを搭載する形
を取り、データはブロック単位で行き来するので、ネットワークに対するオーバーヘッド
は NAS よりも小さくなる。ただし、異なるファイルシステムを持つサーバー間ではデータ
共有が難しくなる。SAN には「ファイバチャネル」と呼ばれるシリアル SCSI で接続する
「FC-SAN」と、SCSI の命令体系を IP にマッピングした「iSCSI」
(Internet SCSI)や、フ
ァイバチャネルをベースに IP ネットワークを利用する「FCIP」(Fiber Channel over IP)
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または「iFCP」(Internet Fiber Channel Protocol)で接続する「IP-SAN」の2種類があ
る。単に SAN といった場合には FC-SAN を指す場合が多い。
3.ファイバ・チャネル・ネットワーク
FC-SAN で使われているファイバ・チャネルは、チャネル方式のメリット(広帯域と確実性)
にネットワーク方式のメリット(接続の自由度が高く遠距離通信にも適している)を加味した伝
送方式です。
ファイバチャネルのトポロジにはサーバーとストレージを 1 対 1 でつなぐ Point to Point、
ハブを使って 126 ノードまで接続できる FC-AL(Arbitrated Loop)、スイッチを使って 1678 万
ノードまで接続できる FC-SW(Switched)がある。現在、FC-SAN 製品は 4Gbps までの製品が出荷
されている。
特に広帯域を必要とするストレージ機器との接続に使用されることが一般的である。
4.IPストレージの種類
SAN はファイバチャネル、NAS は IP ネットワークという棲み分けで発展してきたはずのネット
ワークストレージですが、
最近では SAN にも IP ネットワークを適用する動きが出てきています。
IP-SAN に対応したストレージは「IP ストレージ」と呼ばれているが、IP ストレージはファイ
バチャネルが不得意な分野(どこからでも接続可能で距離の制限もない)で注目を集めているだ
けでなく、コスト面(ファイバチャネルではアダプタやスイッチなどの追加コストが高い)や性
能面(イーサネットのギガビット対応)でも魅力的な存在となっている。IP-SAN では、次ペー
ジ以降に説明する通信プロトコルが使われている。
しかしながら、使用用途に合ったシステム構成検討が必要であることは何よりも重要なことで
ある。つまり、どこからでも接続が可能で距離の制限もないが、環境要因によりパフォーマンス
は左右されるといったトレードオフも存在する。選択には十二分な検討と、実装にも十二分な検
証が必要となるだろう。
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4−1.FCIP(Fibre Channel over IP)
FCIP は、ルーセント・テクノロジー社やストレージベンダー各社が共同開発したもので、
独立した複数の FC-SAN を、IP トンネルを使って相互接続し、仮想的に1つの大きなストレ
ージを構成できる技術です。IP ネットワークとファイバチャネルとは、ギガビットイーサ
ネットのポートを搭載した FC スイッチで相互接続されます。
つまり、遠く離れた場所にある FC-SAN 同士を接続することで、LAN と SAN を1つの IP ネ
ットワークに包括することができることで、遠隔データコピー(ディザスタ・リカバリ)
などに応用されている。
4−2.iFCP(Internet Fibre Channel Protocol)
iFCP は、NishanSystems (旧 McDATA、現在は Brocade)社が提案したプロトコルで、FCIP
では IP トンネルを使って FC-LAN を相互接続しますが、iFCP では FC アドレスと IP アドレ
スをマッピングしてルーティングを行うので Any-to-Any の IP ルーティングが可能となり
ます。
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4−3.iSCSI(Internet Small Computer Systems Interface)
iSCSI はシスコが IBM などと共同開発した技術で、SCSI 命令体系を IP にマッピングした
ものです。伝送媒体が FC(ファイバチャネル)から IP に替わっても同じ SCSI 命令体系を
使用することができるので、HBA(ホストバスアダプタ)や NIC のデバイスドライバを変更
するだけで、サーバーシステムは従来の SCSI デバイスを認識することができます。NAS も
IP を利用したストレージですが、iSCSI ではファイル単位ではなくブロック単位のアクセ
スになり、こちらのほうが高速伝送に向いていることになります。
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5.NAS と SAN の違い
結論から言うと、NAS と SAN は、直接比較可能な対象同士ではない。使用用途によって、ネッ
トワーク・トポロジやプロトコルは使い分ける必要があり、それぞれの特徴を生かしたシステム
構成検討が必要となる。とはいえ、以下に主な機能についてまとめてみた。
5−1.I/O の違い
ファイルベースはデータ I/O にファイルシステムを経由するもの、ブロックベースはブ
ロックイメージでの IO データ処理となる。その為、パフォーマンスを重視するようなシス
テムでは SAN が向いている。
5−2.プロトコルの違い
TCP/IP は遠距離への確実なデータ通信を保障するために開発されたものであり、
FibreChannel は高速でのディスク IO 専用ネットワークとして開発された経緯がある。つま
り、距離に制限無く利用したい場合は、CIFS や NFS さらには SCSI コマンドを IP でカプセ
ルするテクニック(FCP,iFCP,iSCSI)を利用した通信手順が向く。この部分では、SAN との
比較はまったく論外であろう。そもそも通信レイヤが異なるからである。
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5−3.パフォーマンス
前述のとおり、TCP/IP は確実な通信を保障するため他のプロトコルに比べ、手順が少々
煩雑である。これを一般的にプロトコルオーバヘッドと呼んでいるがパフォーマンスに重
大な影響を与える場合が多い。一方、高速なディスクアクセスを実現するよう設計された
FibreChannel は、シリアル通信ネットワークかつ最大 4GBps のバンド幅を実装できるため、
通信がボトルネックとなるようなケースは少ない。
5−4.障害ポイント
サーバ/ディスク間データ通信において、通信系路上に存在する機器が多い方が障害ポイ
ントが多いとした。つまり NAS ヘッドが存在すれば、障害ポイントが増えるということで
ある。
5−5.主な利用目的
総合すると、NAS はファイル共有/ユーザ領域に向いている。一方、SAN は、データベー
スシステムやミッション・クリティカル業務が稼動するシステムに向いている。
6.さいごに
NAS と SAN にはそれぞれに利点がある。その利点は、用途によって明らかとなっている。
インフラ環境の側面から見ると、サーバ統合を行う際にファイルサーバをまとめるような場合
は、NAS に代表される TCP/IP によるファイル共有(CIFS、NFS など)が最も有効である。また、
ストレージ・コンソリデーションを意識した場合はストレージ・エリア・ネットワークを利用し
た統合が向いている。
応用層での代表的な分類としては、クライアントに対するファイルサーバ、またはユーザへの
メイル領域としては NAS がコスト的にも最適である。高い信頼性やパフォーマンスが要求される
ミッション・クリティカル用途では、SAN での高速ストレージ環境が適しているだろう。
以上のような経験則を参考として選択の参考にして欲しい。なお、参考の基準がない場合、L2
レベルでエラー訂正が考慮されている FibreChannel と、エラー訂正を TCP/IP に任せる iSCSI
を比較した場合、該当システムはどちらが向いているかということをベースに考えることをお勧
めする。
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