InterBEE2015 REPORT ノンリニアビデオ編集関連の分野

InterBEE2015 REPORT
ノンリニアビデオ編集関連の分野
佐脇 清一 51 年 目 を 迎 え た、 今 回 の
で は Rec.2020 に 対 応 し た カ メ ラ や モ
は現在のところ作業効率を考慮するとノン
InterBEE2015 は 登 録 来 場 者 数 が
ニター、測定器等の製品が随所で見られ
リニアシステムが最善であろう。
35,646 人(昨年は 37,959 人)となり、
た。Rec.2020 は、 現 行 の 色 域 で あ る
このクォンテルは今年の 9 月に「スネ
出 展 社 数 は 過 去 最 多 と な る 996 社・ 団
Rec.709 よりも、はるかに広い色域表現
ル・ ア ド バ ン ス ト・ メ デ ィ ア(SAM)
」
体(昨年は 977 社・団体)であった。来
ができ、全体的に鮮やかで、特に中間色の
(http://www.s-a-m.com) と改称してから
場者数は国内景気や海外の事件などが影響
表現が豊かに思われた。この HDR 技術や
初の InterBEE となった。ブランドイメー
して減ったのであろうか。しかし今回はア
Rec.2020 は、4K や 8K 放送のみならず、
ジを一新したブースでは、ポストプロ製品
ジアからの来場者が以前よりも多いように
次世代のブルーレイディスク規格「Ultra
として“Quantel Rio 8K”
、ファイルベー
思われた。展示会場やセミナー会場では昨
HD Blu-ray」
(UHD BD)や映像配信サー
ス向けソリューションとして“Alchemist
年から引き続き 4K や 8K といった高精細
ビスでも導入を検討している、或いは採用
XF”と“Momentum”
、ブロードキャス
関連をメインテーマにしているブースが多
が決まっている、既に配信している企業な
ト 製 品 と し て“LiveTouch” な ど が 展 示
く、さらに今年は HDR(High Dynamic
どもある。また家庭用 AV 機器の分野でも
されていた。ブランド改変に伴い、従来の
Range) 技 術 や 広 い 色 域 規 格 で あ る
各メーカーの開発が進んでおり、既に発売
“Pablo Rio”が“Quantel Rio”という製
Rec.2020 に関する展示が目立っていた。
しているメーカーもある。
品名に変わった。
“Quantel Rio”は、高性
HDR 技術は CG(コンピュータ・グラフ
ノンリニアビデオ編集システムが誕生し
能のオンライン編集、カラー及びフィニッ
ィックス)や写真の分野で以前から使われ
てから今年で約 30 年が経過している。そ
シングのシステムで、最大 8K/60p のリ
ていた技術であるが、近年では内部で自動
の当時は D1(ITU-R BT.601)と呼ばれ
アルタイム性能と総合的なフィニッシング・
的に合成処理を行うデジタルカメラの機種
る 4:2:2 コンポーネント方式のデジタ
ツールセットを装備している。
“Quantel
も多くなってきている。またアップルの携
ルビデオが規格された頃で、インターフェ
Rio”には HD、4K、8K にそれぞれ対応
帯電話である iPhone4 にも、この HDR 機
ースも現在 SDI で使用されている BNC コ
したターンキーがあり、あらゆるカラーツ
能を搭載しているなど、誰でも容易に HDR
ネクターではなく、D サブ 25 ピンと呼ば
ールにボタン 1 つでアクセスできる Neo
で合成された写真を撮影できるようになっ
れるコネクターを使用したパラレルインタ
パネルとコンパクトな Neo Nano パネル
てきている。この HDR 技術は、より肉眼
ーフェースであった。
2 種類のカラーパネルから選択が可能で
に近い画像表現を得るために開発されたの
この頃、ノンリニアビデオ編集システ
ある。また、ソフトウェアのみの導入も可
であるが、過度にこの技法を用いると違和
ムとして発表されたのがクォンテルの
能 で、
“Quantel Rio 4K” ソ フ ト ウ ェ ア
“HARRY”である。記録ユニットは高さが
と“Rio Assist”の 2 種類が用意されて
感のある表現になることもある。
色 域 規 格 で は、2012 年 8 月 に ITU
HDCAM-VTR の 2 倍ほどの大きさで、こ
いる。なお新ソフトウェアの V3.0 では
(International Telecommunication
の記録ユニットを 4 台使用して、記録時間
HDR や Rec.2020 にも対応している。ブ
Union: 国 際 電 気 通 信 連 合 ) か ら「Rec.
は最大 70 秒程であった。この“HARRY”
ースでは“Quantel Rio 8K”の 8K/60p
ITU-RBT.2020」
( 以 下 Rec.2020 と
の登場によりノンリニアビデオ編集が始ま
を 85 イ ン チ 8K モ ニ タ ー で デ モ を 行 っ
略)が発行され、今回の InterBEE2015
り、ビデオ編集の作業環境が大きく変化し、
ていた。新製品の“Alchemist XF”はハ
現在ではほとんどの編集システムがノンリ
ー ド ウ ェ ア ベ ー ス の“Alchemist Ph.C-
ニアである。4K や 8K 映像を編集するに
HD”のアルゴリズムを継承し、さらに進
化させたファイルベース・ワークフローの
ための高画質フレームレート・方式変換ソ
フトウェアである。
「Adaptive Cadence
Technology」により映像の状態を自動的
に解析して、必要に応じて動的に新しいフ
レームを作成し、最大の解像度でスムーズ
な映像を生成することができる。システム
面では拡張性があり、マルチ GPU による
Rec709 と Rec2020
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Quantel Rio 8K
処理の高速化、クラウド上での柔軟的なワ
InterBEE 2015 REPORT
(10.11.1. 以上)である。ハードウェアで
は iMac の場合、iMac Retina 5K(2014
以 降 ) で キ ャ プ チ ャ ー に は AJA(http://
www.aja-jp.com/) の Thunderbolt2 対 応
の“Io 4K”を、ストレージも PROMISE
テ ク ノ ロ ジ ー (http://jp.promise.com)
の Thunderbolt2 対 応 の“Promise
Pegasus2 R8”モデル、ペンタブレット
に は ワ コ ム (http://www.wacom.com/)
の“Intuos Pro”シリーズとなっており、
Mac Pro(2013 以降)の場合は上記周
辺機器の他にディスプレイとして解像度が
松田通商
ークフロー構築、複数のノードによるクラ
1,920 × 1,200(ドット)以上の機器と
なっている。
スター化など柔軟なシステム構築が可能で
ビジュアル・グラフィックス
また、Mac 版と Linux 版ではいくつかの
ある。
“Momentum”はインジェストから
きる。空きレーンにはフルハイト・フルレ
機能的な違いがあり、Mac 版には主に以下
目録の作成、QC、編集、トランスコード
ングスの PCIe カードをインストールする
の制限がある。
やマルチプラットフォーム納品に至るまで、
こともできる。
“SILVERSTOR PCIe”モ
・GPU デベイヤーなし
合理的で柔軟なオートメーションとコント
デルはコンパクトなシャーシに 8 ベイ又
・Background Reactor 非対応
ロール機能を有するメディアリソース管理
は 10 ベイの 3.5 インチ 3Gb/s あるいは
・リアルタイムデリバラブル非対応
ソリューションである。また同ブースの他
6Gb/s の SAS/SATA-II ストレージを一つ
・フローティング・ライセンス・サーバなし
に報映産業 (http://www.hoei.co.jp) のブ
のシャーシに搭載することができ、また 3
・コントロールパネルなし(Tangent)
ースでは“Quantel Rio 4K”
(ターンキー
レーンの PCI Express Gen2 x16 を内蔵
・VTR アーカイブなし
システム)及びそのソフトウェア版や高性
しているので、PCIe 拡張ユニットとしても
日本における税別の希望販売価格は、次の
能フレームレートコンバーター
“Alchemist
使用可能で、RAID で最大 48TB、JBOD
ようになっている。
Ph.C HD”及びその廉価版である“Kudos
で最大 60TB のストレージ容量
Pro”
、柔軟性に優れたフリーアサインルー
を確保できる。
“MPRO-HORZ”
ター“Vega”の展示を行っていた。
は、MacPro を EIA19 イ ン チ
ま た 松 田 通 商 (http://mtc-japan.com)
ラックまたは壁面に取付けるこ
ではプロダクションスイッチャー“Kahuna
とができるブラケットで、スライディング
9600”とそのコントロールインターフェ
機構もあるのでインストールやメンテナン
販売パートナーに確認の事。
)
ースである“Maverik”を展示していた。
スが容易に行える。
この変更に関する Q & A もオートデスク
松 田 通 商 の ブ ー ス で は、 こ の 他 に
ビ ジ ュ ア ル・ グ ラ フ ィ ッ ク ス (http://
のサイトに掲載されている。
JMR(https://www.jmr.com/) の 製 品
www.vgi.co.jp) では、国内初公開となるオ
http://area.autodesk.jp/product/
も 展 示 し て い た。
“LTNG-XQ-8-DT( ク
ートデスク (http://area.autodesk.jp/) の
flame/file/Creative_Finishing_
ワ ッ ド ス ロ ッ ト エ ク ス パ ン ダ ー)
”は
Mac OSX 版“Autodesk Flame 2016
Changes_QA_JP_translation.pdf
Thunderbolt2-PCI Express Gen2 x16
Extension2”のリリース情報と Linux 版
この他にビジュアル・グラフィックスの
エ ク ス パ ン ダ ー に 8 ベ イ の 2.5 イ ン チ
“Autodesk Flame Premium”の最新バー
ブースでは 56Gbs イーサネット / インフ
SFF(Small Form Factor) ド ラ イ ブ キ
ジョンの新機能紹介を行っていた。新しい
ィニバンド対応の高速ニアラインストレー
ャリーが実装されたデスクトップ型モデル
Desktop Subscription で“Flame” の
ジ”WiredServer”やアドビ (http://www.
で、4 レーンの PCI Express Gen2 x16
入手方法が変わっている。また“Flare”
、
adobe.com/jp/) のプライベートクラウド
Autodesk Flame
Autodesk Flame Assist
Autodesk Flare
Autodesk Lustre
1 ヵ月単位
3 ヶ月単位
1 年単位
¥124,000 ¥331,000 ¥996,000
¥66,000 ¥174,000 ¥531,000
¥66,000 ¥174,000 ¥531,000
¥124,000 ¥331,000 ¥996,000
(永久ライセンスも選択可能で、詳細は認定
の内 1 レーンの PCI Express Gen2 には
“Flame Assist” が 単 独 製 品 と し て 入 手
ベース協調制作プラットフォーム“Adobe
ATTO の SAS RAID コントローラーが実
可能になった。
“Flame”のプラットフォ
Anywhere”
、分散型スケールアウトファイ
装され、それを介して 8 ベイの 2.5 イン
ームが Linux または OS X から選択可能
ルシステム搭載の“EditShare EFS”の特
チ SFF ドライブキャリーが接続おり、この
に な り、Mac OSX 版 の 推 奨 シ ス テ ム は
徴を、実機でプレゼンテーションしていた。
SFF ドライブには 6Gb/s の SAS HDD/
OS のバージョンが、10.9.5 Mavericks
ア ビ ッ ド テ ク ノ ロ ジ ー (http://www.
SSD を 最 大 32TB ま で イ ン ス ト ー ル で
ま た は 10.10.x Yosemite、El Capitan
avid.com/jp) では“Avid 4K 編集スタータ
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ングの確認がリア
ルタイムでできる
“Live Grade Pro”
や“Silverstack
v3”は撮影データを
確実にバックアップ
日本オラクル
シナジー
し、映像品質チェッ
マイクロコ
ーパッケージ”や新製品“ISIS | 1000”
レ コ ー ダ ー / ス イ ッ チ ャ ー“Apollo” や
ク、メタデータ編集、レポート作成、メデ
などの展示があった。
“Avid 4K 編集スタ
IO Industries のグローバルシャッター搭
ィア管理機能を搭載し、編集や加工工程の
ーターパッケージ”は、ノンリニア編集ツ
載 4K 解像度コンパクトカメラモジュール
下準備等映像データ管理に特化したツール
ール“Meida Composer”
、メディア共有
“FLARE 4KSDI”等々多様な製品群を展示
である。また Flavoursys の“Strawberry”
ストレージ“ISIS | 1000”
、ビデオ・イ
していた。
はノンリニアビデオ編集環境のネットワ
ンターフェース“Artist | DNxIO”を組
アドビシステムズ (http://www.adobe.
ーク共有ストレージ上で、独自の仮想抽
み合わせたターンキーシステムで、SD/
com/jp/) では、今年もインテル (http://
象化レイヤ技術でプロジェクトとコンテ
HD/2K/4K/UHD や カ ス タ ム ラ ス タ ー
www.intel.co.jp) と 共 同 出 展 し て い た。
ンツ、ユーザーとグループを管理するツ
までサポートしている。
“ISIS | 1000”
ブ ー ス で は“Adobe Creative Cloud”
、
ー ル で あ る。 マ イ ク ロ コ ム で は (http://
は、Avid ISIS 共有ストレージのパフォー
“Adobe Premiere Pro CC”、“Adobe
www.microcom.jp)、 イ ン ド に 本 社 を 置
マンスと信頼性を小規模ポストプロダクシ
After Effects CC”、“Adobe Audition
く Venera Technologies(http://www.
ョンやオーディオ・ポストプロダクション
CC” な ど の 最 新 の 映 像 制 作 に 対 応 す る
veneratech.com/) の QC(品質管理)ソ
用に最適化した、よりコストパフォーマン
ア ッ プ デ ー ト を 紹 介 し て い た。HDR や
フトウェア“Pulsar”とライブストリーム・
スに優れたエントリーレベルのメディア共
Rec.2020、H.265(HEVC) の ネ イ テ
モニタリングサービス“NOVA”を展示し
有ストレージで、HD/2K/4K/UHD まで
ィ ブ 読 込 / 出 力 に も 対 応 し て、4K で 最
ていた。
“Pulsar”は HD サイズのファイ
対応し、最大 4 台までストレージエンジ
大 300fps、8K で 120 や 300fps 等 の
ルを 4 倍速(実時間の 1/4)で処理し、ノ
ンを追加可能で容量を最大 80TB、帯域幅
HFR(High Frame Rate)も可能になっ
イズだけでなくパカパカチェックも行うこ
1.2GB/s まで拡張が可能であり、最大 24
た。インテルでは HEVC や VP9 といった
とが可能である。
“NOVA”はライブストリ
クライアントまで同時接続可能となってい
ビデオ符号化規格向けのビデオ解析をサポ
ーミング時にエッジ・サーバーの出力側で
る。価格は 468 万円(税別)からとなっ
ートする総合ツールスイート“Video Pro
品質チェックを行うツールである。
ている。なお、同社は今年 6 月に 3D リア
Analyzer”や同社の Xeon プロセッサー及
こ の 他 に も 4K 対 応 製 品 や 8K を 見 据
ルタイム・グラフィックで実績のある Orad
び SSD750 シリーズを搭載した 4K リア
え た 製 品、HDR、HFR、Rec.2020 対
Hi-Tec Systems 社を買収している。
ルタイム編集が可能なハイエンドワークス
応製品等々、今回の InterBEE2015 も見
テ ク ノ ハ ウ ス (http://www.
テーションの展示も行っていた。
応えがあった。特にネットワーク関連で
technohouse.co.jp) で は、 今 年 10 月 に
この他の出展社では、初出展のエレコ
はイーサネットの伝送速度が 40Gb/s や
フィルムライト (http://www.filmlight.ltd.
ム (http://www.elecom.co.jp) は PC
100Gb/s の製品が目立ち始めていた。感
uk/jp/) と代理店契約を結んでいる。同社ブ
周 辺 機 器 の 開 発・ 販 売 を 手 掛 け て お り、
覚的にではあるが 4K 関連が 7 割、8K が
ース内のフィルムライトコーナーでは、カ
Thuderbolt2 対応の“LaCie”製品を中心
3 割くらいであったように思う。現在の各
ラーグレーディング・フィニッシングシス
に展示していた。
メーカーの開発スピードを考慮すると近々
テム“Baselight TWO”
、ニアセット・カ
日本オラクル (http://www.oracle.com/
に割合が逆転するであろう。その先には何
ラーグレーディングシステム“Daylight”
、
jp/) で展示していたテープライブラリシス
があるのであろうか。
「美しい国・・・」と
オンセット・カラーグレーディングシステ
テム“StorageTek SL150”は、テープ
いう意味の浅い標語を言った者もいるが、
ム“FLIP”
、 そ し て“Meida Composer”
でありながらランダムアクセスを可能にし
HDR や Rec.2020 の利用で映像表現が豊
や“Final Cut Pro”
、
“NUKE” な ど の ノ
ているファイルシステム「LTFS(Linear
かになって、より「鮮やかな国・・・」と
ンリニアソフトウェアにプラグインとし
Tape File Sistem)
」を採用しており、テ
なるよう期待したい。
て提供される“Baselight Edition”のデ
ープ 30 巻から 300 巻まで容量拡張が可
モが行われていた。同ブースでは、この
能で、USB 接続や NAS による複数接続
他 に ConvergentDesign の レ コ ー デ ィ
も 可 能 と な っ て い る。 シ ナ ジ ー (http://
ングモニター“Odyssey7Q +”
、ポータ
www.synergykk.com/) で は、Pomfort
ブル 4ch 同時記録対応 HD マルチカメラ
の撮影現場でデータを管理し、グレーディ
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FDI・2016・01
Kiyokazu Sawaki
Office SKD