2014 日立駅周辺商店街の活性化方策 茨城大学 学生提案・実践 ―工学部都市システム工学科 3 年次授業「設計演習Ⅰ」成果報告(茨城大学推進研究プロジェクト)― 平成 27 年 3 月 茨城大学工学部都市システム工学科 学部 3 年生/交通地域計画研究室 本報告書では、2014 年度の茨城大学工学部都市システム工学科授業「都市システム設 計演習Ⅰ」で学生がグループに分かれ、日立駅周辺商店街の活性化方策を検討および実践 した結果の一部をまとめ、紹介しています。PART1 では、実際に活性化策を実践した実践 班の取り組み内容(空き店舗を活用した無料学習室の開放)、PART2 では各グループが現 地調査をもとに課題を整理し、活性化方策を具体的に検討した結果を紹介しています。 PART3 では商店街の現状と課題について調査分析した結果を紹介しています。 CONTENTS 01 はじめに 1 ― 都市システム工学科について ― 対象地域 -日立駅周辺商店街ってどんなところ?- ― 日立市の人口推計について ― 授業の流れ 02 -設計演習Ⅰとはどのような講義か- PART 1:日立駅前商店街活性化方策の実践 3 「空き店舗を活用した無料学習室の開放:At A Mall あったまる」 03 04 05 PART 2:日立駅前商店街の活性化方策の提案 27 (A) 健康を楽しむ商店街 28 (B)ACTIVE STATION~趣味でふれあうゲストハウス~ 35 (C)ふらっと立ち寄りたくなる商店街:DeliMall~デリモ 41 PART 3:日立駅前商店街の現状と課題に関する調査分析 47 (A)高校生の日立駅周辺商店街に対する意識調査 48 (B)日立市商店街における現状ニーズの把握と変遷 53 (C)日立駅前商店街消滅シミュレーションと行動分析 56 (D)パティオモール商店街のやる気ヒアリング調査用紙 65 おわりに 72 付録: 「商店街の空き店舗を活用した無料学習室の開放」~工学部都市システム工学科 3年次授業「設計演習Ⅰ」実践班の取り組み(学内報告用文書:2014 年 9 月) 日立駅周辺商店街の詳細地図 地図出典:Google Map ―01 はじめに― 都市システム工学科について 茨城大学工学部の都市システム工学科では、「安全の創造」「環境の創造」「快適の創造」の 3 つを学びま す。「安全の創造」では、地震に対する防災や海岸侵食からの国土保全、地盤を含めた強くてしなやかな構造 物の設計・材料・建設技術を学び、 「環境の創造」では、地球温暖化や水質汚染など環境破壊の原因を解 明し、自然と共生できる環境を創造するための学問を学びます。さらに、「快適の創造」では、美しい景観を保 った空間の設計や都市計画の理論と実際について学びます。都市システム工学科の特徴は、これらを総合 的に捉え、自然環境-人間社会-物的施設の相互関連を理解し、都市空間をトータルシステムとして考える 視点を重視しています。 対象地域 ―日立駅周辺商店街はどんなところ?― 日立駅周辺商店街は東から、パティオモール・まいもーる・銀座モール の 3 つのモールからなる商店街です。日立駅周辺商店街は日立駅と国道 6 号の約 800m を東西に結び、飲食店・食料品店・衣類雑貨など多くの店 が軒を連ねる商店街です。設営当初は賑やかな商店街でしたが、時代の 流れによって利用者は減少傾向にあります。現在、商店街では「ゆるゆる 市」や「ひたち国際大道芸」などのイベントやマスコットキャラクターのモルち ゃんなど、活性化に向けた取り組みがおこなわれています。 日立市の人口推計について 人口推移予測では、今後も人口は減少傾向にあると されています。8 年前は約 20.3 万人いた人口が 2013 年には約 19.2 万人となっており、1 万人以上も減少し ています。しかし未成年、非高齢人口が減少していくと 考えられてる一方、高齢人口は現在よりは増加すると 予測されます。このように相対的に高齢者の人口が増 加することで、活力の低下が危惧されます。しかしなが ら 65 歳以上の人口は、2020 年以降は横ばいであり、 75 歳以上の人口も 2025 年以降は横ばいとなるとされ ています。また、日立市全域だけでなく日立駅周辺の 人口推移も全体的に減少傾向にあります。 1 出典:パティオモールブログ 授業の流れ ―設計演習Ⅰとはどのような授業か― 都市システム工学科では 3 年の前期に設計演習Ⅰという授業をおこないます。この授業は学生 がグループごとに指定された地域の現状を把握し、どうすれば地域を活性化できるかを最終的に 提案する講義です。2012、2013 年度には日立駅周辺商店街を扱い、交通量調査やヒアリング、聞 き込み調査などからデータを採取し、分析をすることで様々な提案を行いました。2014 年度は実 際に活性化策を実践する「実践班」を 1 班設け、本稿の PART1 で紹介している通り「空き店舗を活 用した無料学習室の開放」を 1 週間限定で実践しました。その他の班も活性化策の提案や活性化 策を検討するための現状把握・課題分析を行いました。実践班の取り組みは NHK や茨城新聞等に も報道され,地元で大きな話題にもなりました。 ◎現状調査 実際に商店街へ赴き、自らの目で見ることで対象地域がどういったところなのかを確認しました。また、 交通量調査や商店経営者への聞き込みを実施することで商店街のデータや歴史、対象地域の人はどの ように考えているかなど、生きた情報を収集しました。 ◎問題点の把握 現状調査で得た数々のデータを集計・分析することで数値に隠れているデータを見つけ出し、そのデ ータから商店街では何が問題となっているのか、強みは何か、などを見つけ出しました。 ◎中間発表(問題点の共有) 各班で行った現状調査及び問題点を発表することでデータ共有を図りました。発表はパワーポイントを 用いて行い、発表後に教員や大学院生に意見をいただきました。 ◎データ分析・活性化策の検討・実践 共有したデータやさらなる調査によって得たデータを分析し、活性化策を見出しました。活性化策につ いては突飛なアイデアにならないように注意し、実現可能性を考慮しました。 ◎最終発表(活性化策の提案) 分析から各班で考え出した活性化策の提案や実践内 容を商店会や市役所の職員の方を学内に招き、発表し 意見をいただきました。最終発表はスライドショーでの発 表と提案書にて行いました。その後、個人ごとに発表会 の結果を反映させた報告書を提出しました。 2 PART 1: 日立駅前商店街活性化方策の実践 「空き店舗を活用した無料学習室の開放 :At A Mall あったまる」 3 日立駅前商店街活性化策の実践: 「空き店舗を活用した無料学習室の開放」 at a Mall~あったまる~ 国立大学法人 茨城大学 工学部 都市システム工学科 実践班: NGUYEN HUY HOANG 鈴木ひかり 増子沙也香 相馬嵐史 守谷 4 健 佐藤慎吾 鶴若洋平 LEI QING 3年 PART1 目次 1.背景・目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2.テーマ設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.at a Mall~あったまる~実践までの流れ ・・・・・・・・・・7 3-1.ブレーンストーミングによる企画の決定 ・・・・・・・・8 3-2.空き店舗の調査&選定 ・・・・・・・・・・・・・・・・9 3-3.資金調達 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 3-4.宣伝 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 3-5.空き店舗の掃除と準備 ・・・・・・・・・・・・・・・・12 3-6.実践 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 4.実践するまでの主な問題点とその解決方法 5.実践結果 ・・・・・・・・・13 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 6.ワークショップ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 6-1.提案の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 6-2.目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 6-3.実施内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 6-4.結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (1)当日の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 (2)役割と参加者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 (3)発表記録・感想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 7.アンケート結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 8.今後の課題と解決策の提案 ・・・・・・・・・・・・・・・24 ■報道関係資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 5 1.背景・目的 茨城大学都市システム工学科では,プロジェクト型学習として地域の抱える様々な問題に 対して,学生がチームとなって主体的に課題解決策を考える授業を,20 年近く前から導入 し,続けています。これが 3 年次前期の「都市システム設計演習Ⅰ」という授業です。 平成 24 年度から 2 年間,日立駅周辺商店街の活性化を目的とし,活性化策の提案を行っ てきました。それらの成果を踏まえつつ,平成 26 年度は何か実践できないかと考え,有志 学生によって私たち実践班が編成されました。 2.テーマ設定 実践班には,失敗覚悟でとにかく実践をすることが求められていました。先生や先輩方か ら参考としていくつかのテーマを与えられました。まず私たちは,方向性を決定するにあた り,商店街の歴史から調査することにしました。 空き店舗の増加によって商店街全体の売り上げが減少し,商店街の衰退や治安の悪化に繋 がります。これにより,利益が出ない店舗が増え,新規参入者の減少し,空き店舗が増加す るという負の連鎖になると考えました。 空き店舗の増加 商店街全体の 新規参入の減少 売り上げの減少 負の連鎖 商店街の衰退 地価に割り合わ ない利益 治安の悪化 次に,商店街の存在意義について考察しました。 かつて商店街とは,主に商品を求めに来る場でありましたが,現在の商店街の在り方とし ては,ただの商業機能だけでなく,むしろコミュニティ機能が重要視されていると考えまし た。そこで,私たちは,「空き店舗の開放」をテーマとして設定しました。空き店舗を開放 することで商店街衰退の原因を取り除き,負の連鎖を止めることを期待しました。 6 3.at a Mall~あったまる~実践までの流れ ブレーンストーミングによる企画の決定 空き店舗の調査&選定 資金調達 宣伝 空き店舗の掃除&準備 実行 7 3-1.ブレーンストーミングによる企画の決定 まず,空き店舗の利用案を可能な限り出し,それらの案を集客性と継続性の大小でグルー プ化しました。 ・学習スペースとしての利用 ・リサイクルステーションの常設(利用ポイント制度を設け商店街の買い物に利用) ・朝市(珍しい野菜や、周辺農家の品質には問題ないがスーパーには売れない訳あり品を安 く売る場) ・商店街の新作品や、新規事業者の… ・映画上映会(プロジェクターによる上映) ・コンサートやライブなど娯楽に関する個人利用 ・企業による商品展示 ・学校行事(発表会)の会場 ・パブリックアート ・個人の趣味(絵や陶芸品など)の展示スペース ・小中高校生の交流 ・中高生の勉強会(自習場に大学生が講師として) ・オシャレなカフェ ・地元の高校生が帰りに寄り道する場所 ・地元民による料理教室や裁縫教室など様々な教室 ・託児所(子育て相談所) ・商店街の人と利用者によるまち(商店街)づくりのワークショップ これらの案の中で,集客性と継続性の高く,費用面や授業期間内に実行できるかどうか を考慮した結果,学習室とリサイクルステーション,朝市に絞りました。ここで,仮に本 格的に継続する場合に,イベント性よりも息長く常に集客ができる企画であること,そし て何より,私たち自身が高校生であった時に,学校でも図書館でもない学習空間が欲しか ったという理由から,学習室に決定しました。また,空き店舗を学習室として利用するこ とで,商店街内に人を集め,コミュニティの拠点として周辺店舗への波及効果を起こすこ とを期待しました。 商店街周辺には,シビックセンター内の図書館に学習室があります。この学習室は,行 列ができる程利用客が多く,飽和状態でありました。この背景から,学習室としての利用 価値があると判断しました。また,既存の学習室との差別化として,私語厳禁でなく話し 合える空間にすること,開放時間を既存の学習室よりも遅い時間にすることで,差別化し ました。 8 ブレーンストーミング結果 3-2.空き店舗の調査&選定 まず, はじめに 3 モールのうち,どの場所の空き店舗を利用するのかを話し合った結果, 3 モールの中心であり,最も商店街全体への波及を期待できるまいモールを第一希望とし ました。 実践班学生のアルバイト先のオーナーの方からの情報提供により,まいモール入口の空 き店舗の交渉を試みましたが,学習室としての利用がオーナーの方のイメージする活性化 と異なっていたため,交渉決裂となってしまった。 次に,集客が最も見込めるパティオモールを検討しましたが,賃貸料が高いため,断念 しました。 空き店舗の賃貸ができずに,企画が停滞していたところ,商店会の方々から情報提供や 紹介を受け,銀座モールにあるベストケアスクール様から 1 階を貸していただけることに なりました。当初はまいモールでの開放を目指していましたが,費用や時間の制約上,タ イミング良く紹介して頂いた銀座モールでの実施を決めました。 9 銀座モール 3 モールの位置 パティオモール 10 3-3.資金調達 学習室の運営をするにあたって,資金調達が大きな壁でありました。大よそ見積もりを 立てたところ,約 5 万円かかることがわかりました。授業の一貫であったため資本金がな く,すべて自分たちで資金を確保しなければなりませんでした。そこで,学習室に案内所 を設置することによって,協賛店の宣伝を可能にし,協賛金を取れる仕組みを作りました。 自ら学習室の企画書を作成し,商店街店舗を回り協賛金を集めました。 以下,協賛をしていただいた店舗を一覧で紹介します。 (株)喜聞屋 様 Second Earth。 Diner 日立本店 みどり園 様 M's Factory 様 Sushi Dining かっぱ寿司 様 かっぱのめし屋 威風 様 American Diner cotton's 様 春秋舎 様 SNACK IRIE 様 ドーナツの店 はせ川 様 平塚薬品 様 さくらカフェひたち 様 趣味の店 あいざわ 様 やきとり金太 様 よって家 fm 様 ベストケアスクール 様 様 (順不同) この他,同学科の学生からもカンパを集め,資金を確保しました。 3-4.宣伝 今回の企画では,高校生を対象にしたため,周辺高校,特に日立駅を利用することと,進 学校であるかどうかをポイントに選定しました。宣伝を行った高校を以下に記載します。 ・日立第一高等学校 ・日立第二高等学校 ・明秀学園日立高等学校 ・日立北高等学校 宣伝方法としては,SNS(Facebook,Twitter)や,ビラ配布を行いました。ビラの配布 に関しては,直接各高校に足を運び,ビラを掲示してもらいました。宣伝開始が実施 1 週 間前だったため,宣伝効果が得られるか不安でした。 11 facebook Twitter 3-5.空き店舗の掃除と準備 休日を利用し,空き店舗の掃除と準備を行いました。この時点で開店 2~3 日前であっ たため,学科のメンバーに協力をしてもらい,掃除,内装,机,椅子の搬入や,看板と協 賛店チラシの作成などの準備を行いました。机と椅子の備品は,ベストケアスクール様よ り貸していただいたものと,都市システム工学科計画研究室より貸していただいたものを 使用しました。看板は,協賛店である M’ s factory 様に無償で作成していただきました。 以下が看板の写真です。 12 表 裏 3-6.実践 日程の詳細は以下の通りです。 日時:平成 26 年 7 月 1 日(火)~7 月 7 日(月) 時間:平日 17 時~21 時 土日 13 時~18 時 ワークショップ 日時:平成 26 年 7 月 6 日(土) 10 時~12 時 4.実践するまでの主な問題点と解決方法 問題点 • 宣伝時間がなく,行き届いてい ない • 開放に伴って必要となる資金の 確保 • 場所が分かりにくい • 人手不足 • 空き店舗の確保 解決方法 • 近隣の高校にチラシを配っても らった。SNSを用いた宣伝 • 広告による宣伝や,デリバリー を条件に協賛金をいただいた。 また,学科のメンバーからの融 資をしていただいた。 • チラシ,SNSに地図を載せ,ま た通りから見えるように看板を 設置することで対応した。 • 都市システム工学科のメンバー に協力者を募った。 • 商店会の方々へ相談し空き店舗 の所有者を紹介していただい た。 13 5.実践結果 学習室名:“at a Mall”~あったまる~ キャッチフレーズ:あなたは何に恋する?勉強?それとも…? 実施期間:平成 26 年 7 月 1 日(火)~7 月 7 日(月) 土日含む 運営時間:平日 17 時~21 時 休日 13 時~18 時 実施場所:銀座モール ベストケアスクール 1 階 〒317-0072 日立市弁天町 1-11-4 収容人数:約 30 名 設備:冷暖房完備 開放日時 7月1日 火曜日 7月2日 水曜日 7月3日 木曜日 7月4日 金曜日 (雨天) • 利用人数 • 5人 • 15人 • 来客者:JWAY,NHK水戸,市役所 職員 • 11人 • 来客者:NHK水戸 撮影&取材 • 茨城新聞 取材 • FMひたち 出演 • 1人 7月5日 土曜日 • 12人 7月6日 日曜日 • 7人 7月7日 月曜日 • 6人 14 15 6.ワークショップ 6-1.提案の背景 商店街に対しては,前述の背景・目的の通りであり,そのなかで,学生である私達の 考えや行動のみではなく,商店街や住民の方々と商店街について一緒に考えていくこと で,より良い案を生み出せるのではないかと考えました。さらに,商店街について様々 な視点を持った方々と話し合いたいという思いもあって,ワークショップを企画するこ とにしました。 6-2.目的 ・意見交換を行い,意見を共有することで,商店街の今後に生かすこと。 ・根本的なことから話し合い,目的や目標を定め,より良い商店街をつくること。 ・今まで関わることの無かった人の意見を聞き,各々の考えを深めること。 6-3.実施内容 ~ワークショップ~ テーマ 商店街と学ぶ~茨大生がつくるシェアスペース~ 日時:平成 26 年 7 月 5 日(土) 10:00~12:00 場所:銀座モール ベストケアスクール 1 階 〒317-0072 日立市弁天町 1-11-4 収容人数:約 30 名 スケジュール:9:30~ 受付開始 10:00~10:30 茨城大学 昨年度,今年度活動報告 10:30~10:50 グループディスカッション <15 分休憩> 11:05~11:30 グループディスカッション 11:30~12:00 全体討論 まとめ 6-4.結果 (1)当日の流れ 8:00~8:45 ガスト日立駅前店でミーティング 9:00~9:30 ワークショップの準備 9:30~10:15 受付 ※参加者の集まりが悪かったため,15 分時間を延ばした。 10:15~10:35 茨城大学 昨年度,今年度活動報告 10:35~11:00 グループディスカッション① テーマ:この学習室の問題点や課題 ※早めに帰る予定の参加者がいたことや,話し合いが盛り上がっていたた めに予定していた休憩時間を無くした。 11:00~11:55 グループディスカッション② テーマ:今後,学習室を続けていくには? 11:55~ 12:05 まとめ 16 準備 受付 活動報告 ワークショップ議論中 17 (2)役割と参加者 ファシリテーター B3 鈴木ひかり B3 相馬嵐史 計2人 書記 B3 鶴若洋平 B3 増子沙也香 計2人 記録係 B3 NGUYEN HUY HOANG 計2人 準備係 M1 白石勇人 M1 福田有希 B3 守谷 健 参加者 草野敬 様(シビックセンター) 小山修 様(日立市役所) 菊池奈津美 様(茨城大学人文学部) 佐藤裕子 様(NPO 共楽館を考える集い・ひたち親子の広場) 鵜木賢剛 様(銀座モール) 大和田茂 様(SEC) 赤津浩史 様(株式会社赤津工業所) 平田輝満 先生 梶山大貴 さん 青木慎之介 さん B3 佐藤慎悟 計3人 計 11 人(外部:7 人) (3)発表記録・感想 次のページに記載したように多くの意見を頂き,議題の内容について,様々な視点からの 意見を得ることができました。しかし,議題から話がずれたことや,予定していた休憩時間 も必要なかったほど話が盛り上がりで,ファシリテーターがその場をコントロールするのは 困難でした。 1 人 1 人が日立駅周辺商店街をより良くしようという熱い気持ちが伝わり,ワークショッ プを行ったことは,参加者や私達にとって,とても良い経験となり,これからの日立駅周辺 商店街の活性化に繋げていけるものであると思いました。 18 19 7.アンケート結果 各日の人数 1日目の集客数が少なかったのは広報が 行き届いていなかったためであると考える。 これは,広報活動を開始するのが遅かったた めであり,広報活動が遅れたことは反省すべ き点である。2日目,3日目に集客数が伸び たのは,一度来た人の口コミ効果が少なから ず表れたことと,最寄りの高校である日立二 高の試験期間であったことが要因であり,4 日目と7日目に集客数が一番少なかったの は,雨天による影響と考えられる。 利用回数 アンケート結果から,1 週間という期間に対 し,リピーターが多かったことが大きな収穫で あった。事業化した際に,安定した集客が見込 めるが,この数をどれだけ増やせるかが,今後 の課題である。 学校別人数 アンケート結果から,日立二高の利用者 が多かった。これは,学習室開放期間に, 日立二高のテスト期間が重なったことと, 学習室から 1 番近い高校であることが要因 であると考える。 進学校である日立一高や日立北高校の利 用者は,情報が広まればさらに集客率は上 がると思われる。 20 男女別人数 アンケート結果から,女性の利用者が大 多数を占めていることから,女性のほうが, 口コミが広がりやすいことがわかる。また, 今後継続する上で,女性をターゲットにす ることが成功するポイントとなると考え る。 学習室を知ったきっかけ アンケート結果から,学校への宣伝効果 があったと言える。また,SNS の宣伝効果 はもちろんだが,口コミによる宣伝も有効 であることがわかる。 今回は宣伝期間が短かったため,メディア による宣伝効果は薄かった。 普段の学習場所 アンケート結果から,高校生の普段の学 習場所は学校もしくは家の回答が多かった ことから,塾や予備校に通わない学生の利 用が多かったと言える。このことから,塾 や予備校に通わない学生の新たな勉強場所 になる可能性が十分にあると考える。 21 学習室にある広告を見たか アンケート結果から,広告を見ない利用 者が多かったことが分かる。これは,対象 が高校生だったことが影響していると考え る。また,学習室内に広告を掲示する有意 性は低いと思われる。 このような学習室があったらまた利用したいか アンケート結果から,今後も利用したいと 回答した利用者が大多数であったことから, 学習室にニーズがあると考えられ,長期間の 開放であっても,安定した集客効果が得られ ると考えられる。 22 良い点 • 教えてくれてよかった,また来たい • 学校から近くてよい • お兄さんたちが教えてくれてよかった • 付き添って教えてくれたためよかった • 優しく教えてくれたのでよかった • わからないことを教えてくれてよかった,気さくに話しかけてくれた • 分からないところもきちんと教えてくれて楽しかった • 分かりやすい説明ありがとうございました • 楽しかったです。また来たいです • 優しく,分かりやすく教えてくれてよかったです。勉強しやすい環境だと思う ので,続けてほしいです • 分かりやすく丁寧に教えてもらえてよかった • 学校で習うよりずっと分かりやすく,分からなかった所ができるようになりま した。とても助かりました • 勉強だけでなく勉強方法などをきけてよかったです • 大学のことが聞けてよかったです!!! • 分からない所を詳しく教えていただけて納得できたので良かったです。ありが とうございます • 家より集中できた • よかったです。夏休みにも来てほしいです。来年も来てほしいです • とても集中できた。楽しかった。また来たい • 誰もが利用できる学び場,素晴らしいですね。また来たいと思う場所でした。 次回も期待しております。 • このような学習室を増やしてほしい 悪い点 • テーブルをグループ型にしてほしい • 椅子が痛い 23 8.今後の課題と解決策の提案 今回“at a Mall”~あったまる~を運営するにあたって,商店街で長期的に運営できること を重要視しました。実際に運営してみた結果,様々な問題点が明確になりました。そこで, 私たちは事業化する際の課題と解決方法を以下に提案しました。 まず,今回の活動において,大学生が常駐していることが大きなポイントでした。仮に長 期間続ける場合,大学生の負担が大きくなることが課題です。そこで,このボランティア活 動を,大学や市に認定してもらい,将来的に学生にとって有益になればと考えます。単位を 与えるという案も出ましたが,就職活動に有利に生かせる方が,学生の意欲が向上し,積極 的にボランティア活動に取り組むことができると考えます。 次に金銭面の課題解決について提案します。長期的に継続する場合,事業で利益を生み出 す方法を考えなければなりません。そこで,スポンサーを付けることで,資金を確保できる と考えます。もちろんスポンサーを付けた場合は,双方にメリットがある仕組み作りが重要 になるので,協議が必要になります。今回行ったように,商店街の店舗の広告やビラを置く など,商店街への波及効果を狙った要素を取り入れるべきであると考えます。 さらに,場所や管理・運営の課題もあります。今回実際に学習室を開放しましたが,場所 が分かりにくいという意見を多く頂きました。これは,分かりやすい情報発信を継続するこ とで解決できると思いますが,アクセス面や賃料を考慮した場所選定が重要となります。ま た,管理・運営については,主体となる組織をどの団体とするかがポイントとなります。学 生が主体となってしまうと授業等に支障が出てしまうため,商店街が主体となることが適切 であると考えます。 以上のような多くの課題が存在するが,ここで終わらせずに,継続していくためのビジネ スモデルを考え,事業化できるように今後も取り組んでいきたいと思います。 24 ■報道関係資料 FM ひたち 出演の様子(2014 年 7 月 3 日) NHK の報道の様子(2014 年 7 月 4 日) 25 ワークショップの開催内容を伝える新聞記事(出典:茨城新聞 2014 年 7 月 15 日朝刊) 26 PART2: 日立駅前商店街の活性化方策の提案 (A)健康を楽しむ商店街 (B) ACTIVE STATION ~趣味でふれあうゲストハウス~ (C)ふらっと立ち寄りたくなる商店街:Deli Mall~デリモ~ 27 (A) 健康を楽しむ商店街 1.コンセプト ~健康を楽しむ商店街~ 現代の買い物は、自動車で大型店舗に行き、その中で全ての買い物を終えてしまう事が ほとんどです。更には、部屋の中で買い物が終わってしまう事もしばしばあります。しか し、その便利な生活の裏には、外の空気を吸って体を動かしたり、近隣の住民と偶然出会 い会話を弾ませるといった、日常的な行動の幅を狭め、生活習慣病やうつ病などを引き起 こす危険が多く潜んでいます。そこで私たちは健康というワードに着目しました。そして、 健康の中でも誰でも気軽に行えて楽しめるものであれば、趣味としても機能し、交流も生 じるのではないかと考えました。これらの事から、私たちは現代の利便性を追求した買い 物のスタイルに対抗する商店街として、広大な空間と古くから続く商業機能、経営者の経 験の力を活かした、健康的な行動を楽しむことも出来て、買い物も出来るような形態を、 日立駅前に、「健康を楽しむ商店街」として提案します。 新たな機能と活性化の繋がり このコンセプトの主軸となる新 たな機能は以下の4つです。 ・商店街の憩いの場であり情報伝 播の中心、足湯 ・健康の溜り場であり、健康の意識を広 げる銭湯 ・誰でも気軽にアクティブに、ウォーキン グコース ・健康を追求する健康体操教室 28 1)足湯の概要 ① コンセプト 商店街の憩いの場とし て設置する。外壁などは あえて設けず、開放的な スペースでリラックス できるようにします。ま た、掲示板を設置する事 で商店街の情報を利用 者に知ってもらいます。 足湯パース ② 施設の位置と大きさ 位置・・・日立市幸町1-13-9付近(パティオモールとけやき通りの間の空きス ペース) 大きさ・・・総面積 8.4m×3.7m=34.08 ㎡ 浴槽面積 5.0m×1.1m=5.5 ㎡ 浴槽の深さ 0.4m 浴槽の容積 5.0m×1.1m×0.4m=2.2 ㎥(2200L) 利用可能人数 ③ 同時に片側7人(両側で 14 人) 施設の検討 概要・・・稼働日 基本的 に年中無休(悪天候の時は 休止) 稼働時間 夏季(5~10 月) 7:00~19:00 冬季 (11~4 月) 湯平面(単位:mm) 9:00~18:00 湯の設定 温度は 38℃。1 時間あたり1100L 流入。 総工費・・・1000 万円程度 1 日当たりの水道、ガス代 ・・・夏季(12 時間) 冬季(9 時間) 4815 円 7623 円 29 ※夏季は 20℃→38℃に加熱、冬季は 0℃→38℃に 加熱は都市ガスを用いるものとして試算した。 炭酸足湯・・・イベント的に月1回行う。お湯1L 当りにクエン酸 1.5g、重曹 5g を混ぜます。 表 価格・・・1947 円/h 2)掲示板 ・概要 足湯の隣に設置します。足湯の 利用者はもちろん、学生や主婦、 高齢者といった幅広い通行人に 見てもらう事で商店街を認知し 関心を持ってもらいます。表面は ウォーキングコース及び3モー ルの概要について掲示する。ウォーキングのみどころや店舗の基本情報を載せます。 (広 告料をいただく事で、足湯の経営に貢献する。)裏面は商店街で行われるイベントを中 心に宣伝する。ポスターや3モールが発行している新聞等の掲示や新規店舗の紹介、細 かなセール情報、定期的な店舗紹介を載せます。 ・周辺への影響 日立駅前商店街の基本情報やセール情報が分かりやすくなることで、足を伸ばす機会が 増える。 裏 イベントの告知による商店街のイ メージアップ。 足湯の集客効果の質を高める。 30 3)銭湯 ・コンセプト 1階 2階 健康を楽しむ商店街の溜り場として、老若男女様々な人々がゆっくりとくつろぎ、健康を 受付 考え情報を交換することのできる小規模な銭湯を提供する。 脱衣所 ・施設の位置 休憩所 まいもーると銀座モールの間にある駐車場の敷地を半分利用する。もともと利用者が少な く、空きが多い駐車場なので、銭湯の創設をきっかけにここ自体の利用者の増加とこの場 下駄箱 電気湯 荷物置き場 所を起点とする商店街他店舗の利用者増加を促す。 浴槽 薬湯 ・建設の検討 1階2階平面図 建設費はスーパー銭湯が 500 坪程度で、約 5 億円。建設予定の施 設の大きさは 100 坪程度(16m×18m)であり、駐車場は既に整備さ れている事から、建設費は約1億円。起業にあたり日立市の優遇 制度等を利用し補助を得る事は不可欠であると予想される。 所有者に関しては、この銭湯自体を現在まいもーる付近にある東 湯という銭湯のリニューアルオープンという形にし、その所有の 方に経営をしていただく形にしたいと考えている。 1階イメージ図 左側が座敷になっていて、銭湯利用者 ・概要 二階建てで一階は休憩スペースとし、二階に浴場を設置する。 に限らずウォーキングをする人など様々 浴場を出入りする際に、必然的に休憩スペースを 通る構造となっている。 入浴料金は大人 450 円、学生 300 円、子供 200 円。 営業時間は朝のウォーキングの時間帯と被るよ うに午前 5 時~午前 7 時、 昼の高齢者利用と夜の社会人の利用を考えて午 ↑創設前(ストリートビューより抜粋) 前 10 時~午後 11 時を検討している。 飲料水等を設置。 フィットネスクラブと提携し、サービスやイベントを行 う。 荷物置き場の設置(ウォーキングサービス) ↑創設後のイメージ図 ・銭湯の出現により期待される商店街への影響 買い物以外の商店街を訪れる目的ができる 31 ・銭湯による気分転換 ・ウォーキング、ランニングの休憩地点 ・休憩所での交流 ↓ 商店街への定期的な人の流れができる 家族で銭湯を訪れた帰りに商店街で買い物など、他店舗への波及効果が期待される。 4)ウォーキングコース 現在、日立駅周辺にはウォーキングコースが設定されて いる。しかし、そのウォーキングコースの認知度はとても 低く、あまり活用されていない。 (看板も古いものとなって いる。)そこで、現在のウォーキングコースの改善案を提案 する。 〈コンセプト〉 誰でも気軽に利用できるウォーキングコース。花屋が季 現在の看板 節毎に入れ替える花壇と平和通りの桜が魅力のコース 商店街を歩く事で、商店街の魅力を再発見する。 〈概要〉 ・ウォーキングコース1周の距離 3.1 ㎞→1.5 ㎞ 距離を短くすることで、主婦や高齢 者に気軽なウォーキングの印象を 与えて、歩きやすくする。 ウォーキングコースにまいもーる 入り口からの距離や消費カロリーを 提示する事(通りにある柱に設置)で、 健康意欲を刺激する。 ・掲示板による宣伝ウォーキングの起 点となる足湯にコースの全容(みどころ 商店の紹介等)を示して、宣伝する。 ・荷物の置き場の確保 買い物後にウォーキングをする事も想定し、荷物の置き場を銭湯に配置する。生もの等も 預かれる様に、冷蔵保存も可能とする。ただし、冷蔵保存は有料とする。 32 ・サービス 銭湯のもう一つのサービスとして、会員となる事で歩数計のレンタルを行う。歩数が一定 を超えた人には飲み物の提供等を行う。歩数の記録も行い、ランキングを作成する。順位 により景品も用意する。会員費は有り。 ・ベンチの設置 休憩しながらウォーキングできるように、ベンチの数を増やす。 ・景観 ウォーキングコースに緑を増やすことで景観を改善し、楽しくウォーキングできるように する。また、商店街の花屋さんと協力し、花をお店の外に出して販売することで景観の改 善にもつながる。 5)健康体操教室「まいフィット」の概要 ○コンセプト 商店街の主な利用者である主婦、高齢者 に商店街内で運動してもらい、定期的に足 を運ぶきっかけをつくる。 ○施設の大きさと位置 ・まいモール内の空き店舗の 1 階を利用する。 (日立市弁天町1丁目16-7) ・縦約 10.1(m)×約横 8.4(m) の 面積 84.84(m2)の空き店舗を利用する。 ○施設の機能 ・会員予約制とし、1 回 60 分で 5 人をインストラクタ ー(指導員)が指導する。 ・1 か月に何回でも予約をとって利用することができも のとし、会費 2500 円とする。 (以下に示してあるテナント料から逆算すると会員 数 55 人で 1 か月のテナント料) ・営業時間 9:00~12:00、13:00~18:00 とすると 1 日最大 40 人。・「バランスボール運動」、「エアロビクスダンス」、 「ストレッチ」、「ヨガ」など年齢を問わず取り組みやすい運度を行い 健康の維持・増進をはかる。 ・施設の隣に月極駐車場があるため、そこを施設の駐車場として有効利用する。 33 ○費用の検討 ①空き店舗のテナント料 1 坪あたり 3500 円~5500 円(昨年の先輩の調査より)であることから今回、設置を提案する空き 店舗は約 25 坪であるため計算すると、約 87500 円~137500 円程度となる。 ②改装費用 ③月極駐車場 5 台分 ○既存の施設との関係・期待できる効果 ・運動後、主婦や高齢者の商店街・イトーヨーカドーの利用増加が期待できる。 ・日立市に既存のスポーツジムやフィットネスクラブ(平均月会費 5000 円~6000 円)があるがマシン トレーニングや室内プールなどを取り入れないことで料金を抑えて手軽さを与えることで差別化す る。 6) 提案内容実施後の人の動きの想定 高齢者 主婦 学生(下校時) 会社員 8:00 公園でラジオ体操 14:00 フィットネスク 16:00 銭湯の水飲み 18:30 銭湯 場で休憩 20:00 商店街の ラブ 8:20 ウォーキング開始 9:00 銭湯 15:15 足湯 or 銭湯 16:30 10:00 よって家fmで休 15:30 ドトールでひと 17:00 商店街をまわる 22:00 二次会(飲 (食べ歩き) み直し、カラオケ) 足湯 憩および昼食 息 12:30 商店街をまわる 16:20 イトーヨーカド 13:30 イトーヨーカド ー ーで暇つぶし 17:20 帰宅 or カラオケ ー 15:00 17:30 イトーヨーカド 18:00 電車に乗り帰宅 帰宅 34 居酒屋 (B) ACTIVE STATION ~趣味でふれあうゲストハウス~ 1.コンセプト ACTIVE STATION ~趣味でふれあうゲストハウス~ 日立市商店街では、社会や需要の変化 により、空き店舗の増加、経営者間・利 用者間の交流の喪失といった課題を抱え ている。そこで、私たちは商店街の空き 店舗の再活性化と商店街内の交流の促進 を目的とし、ゲストハウスを提案する。 まず、日立市への出張など短期で訪れる 労働者や大学生の訪問が多い、という特 性を踏まえ、宿泊施設を企画した。次に、 商店街で最も重要なのは、店舗の魅力だ と考える。この ACTIVE STATION には、現代的で、趣味やイベントを通して交流をする参 加型の魅力がある。また、イベント時には商店街の他の店舗と協力することで交流を生み 出すようにする。この、ACTIVE STAITON の特徴は、1 階のフリースペースと2階のホテ ルという 2 つの機能が 1 つの店舗の中にあることである。特に、1 階のフリースペースは、 平日ではリビングや趣味の場として、休日は商店街と協力してイベントを開催するなどと いった拡張性に優れる空間となっている。また、安価であること、短期・長期どちらの宿 泊にも対応できるという点も特徴である。 2.活性化策 配置図 建物は、銀座モールのまいもーる側にある。現 在、よって家 fm として使われている建物が空き店 舗となったことを想定し、改装して使用する。国 道 245 線への抜け道や国道 6 号線に近く、車での 交通に便利である。日立駅から、徒歩 12 分程度で ある。 35 外観 建物の 1 階部分は、ガラス張りとする。図面左側が 展示、中央が入り口、右側が掲示板である。建物の 2 階は、赤レンガを組み合わせたデザインとした。商店 街にあっても違和感がなく、宿泊施設であるので清潔 感や落ち着いた雰囲気を大事にした。 平面図 現状の平面図と、提案する平面図を比較する。 1F 現状平面図 2F 現状平面図 1F 提案平面図 2F 提案平面図 36 客室 CTIVE STATION には、1 人部屋が 6 部屋、2 人部屋が 1 部屋、4 人部屋が 1 部屋ある。それ ぞれの部屋の様子を紹介する。 1 人部屋 これは、1人部屋全体をドアの位置からみた図である。ホ ワイトグレーの床をはじめとした、落ち着いた空間となって いる。1 人部屋の大きさは、(3.5m×2m)または (3m×2.5m)の 2 種類が用意されている。ベッド(1.2m×1.9m)、机(70cm×70cm)、 椅子、エアコン、照明、カーテン、洋服掛け、無線 LAN が 設置されている。 2 人部屋 基本的には、1 人部屋と同じだが、2 人で宿泊できる部屋 である。部屋の大きさは、(5m×2m)と(1m×2.5m)がくっついた L 字型の部屋となっている。基本的には、1 人部屋と同じで あるが、2 人部屋は 2 段ベッドとなっている。ベッドの大き さは(1.2m×1.9m)、高さが一段 1.2m となっている。 友人との旅行などに適した間取りとなっている。 4 人部屋 基本的には、1 人部屋と同じだが 4 人で宿泊できる部屋で ある。部屋の大きさは、(4m×6.5m)となっている。2 人部屋と 同様の 2 段ベッドが 2 つ置かれている。机と椅子は、人数分 おかれている。 趣味の仲間や会社の同僚との宿泊に適した 間取りである。 1階 これは、フリースペース中央から奥方向を見たパースである。 入口を入ると、右側に受付がある。また、入り口付近には、展 示・販売スペースがある。展示・販売スペースでは、ゲストハ ウスでその時に開かれているイベントに関連した商品が並べ られていたり、利用者が作成した物を商品として販売したりす る。奥に進んでいくと生活空間となり、テーブル・キッチン・ テレビなどが置かれている。このテーブルは折りたたみ式で状 況に応じて配置を変えることができる。 37 フリースペース以外には、多目的室がある。多目的室 1階の部屋 は、スタッフルームやイベント時の更衣室などに使用 する。また、1 階にはトイレが 2 箇所ある。これは、 キッチン (3×5m) 既存の設備を適宜修繕して使用する。奥には、倉庫が 多目的室 (4.5×1.5m) あり、備品などを格納できる。平日の午前中は、ゲス 西側トイレ (1.5×3.5m) トハウス利用者だけではなく、商店街の人や通りがか 倉庫 (8.5×1.5m) りの人も利用する。例えば、商店街の会合・同じ趣味 南側階段・トイレ の高齢者の親睦会などである。また、毎週あるテーマ fm ひたち の趣味(後述)が開かれており(平日は小規模)、そこで週 替わりの趣味を楽しむこともできる。 2階 これは、2 階中央部から、奥側(上)と手前側(下) を見たパースである。上の図でコーヒーを入れ ている人がいるのが休憩室で、中央のガラスの 壁(80cm)で囲まれている部分が吹き抜けである。 右奥方面が客室、左奥方面がトイレやシャワー ルームである。手前側には、1 人部屋の入り口ド ア 3 つと 4 人部屋の入り口ドア、北側階段が見 える。 2 階の空間はホテルとして使う。ホワイトグリーン系の壁紙で心が落ち着く廊下となってい る。廊下には、写真を貼ることができるボードがあり、ゲストハウスでの思い出を残せる ようになっている。廊下の中央には、1 階を見おろせる吹き抜けがある。休日には、1 階の フリースペースでイベントが開かれるため、それを覗きこんだりできる。吹き抜けをつく ると構造物の強度が弱くなるが、1 階の天井部分に 2 本の大きな梁を通すことで、強度を強 くする。 2 階の部屋 スタッフルーム (1m×3.1m) 休憩室 (8.6m2) コンロ・冷蔵庫あり トイレ(洋式) (90cm×110cm) ×3 洗面台 (幅 3m×奥行き 0.8m) 脱衣所 (1m×5m) 洗濯機・洗面台あり シャワールーム (1m×1.5m) 38 費用・料金 空き店舗の改装費 工事 一般的なリフォームの工事から、大まかに試算する。 費用(万円) 解体工事 80 実例 外装工事 150 ・店舗をリフォームして別の店舗として使用する場合 内装工事 600 電気・空調工事 80 給排水工事 30 その他 30 700~1300 万程度 ・同様の物を新しく建てる場合 1800~2800 万程度 経費 10% 合計 1050 料金設定 ホテル調査や所有者に聞いた使用料をもとに算出した。 ・現在の使用料(1 階+2 階) 200000 円/月 大きな利益を出すことを目的とせず、経営者が ACTIVE STATION の運営で生活できる 程度の収入を得られるよう設定する。 ・1人部屋 3500 円 (1 人 1 日当たり) ・2人部屋 3000 円 (1 人 1 日当たり) ・4人部屋 3000 円 (1 人 1 日当たり) このような料金を設定したが、主な対象者を数日~1 か月程度仕事のために日立に来る会社 員やインターンシップの大学生(2~3 週間)としている。そのため、2 週間以上連泊すると料 金が 200 円程度安くなるという割引サービスも考える。 また、イベントの参加費などでも利益が出るように経営する。 商店街への影響 空き店舗を利用したゲストハウスを作ることで、上の図のような影響が考えられる。 1 つめは、商店街主催のイベントやフリースペースでのふれあいにより、交流が増加する。 これは、経営者間・利用者間両方を含んでいる。このゲストハウスでのイベントが商店街 内で協力して何かをすることのきっかけになれば良いと考えた。 2 つめは、ゲストハウスの利用者は、男性会社員や大学生が多いと考えられる。そのため、 39 仕事やインターンシップの後に外食をすることが考えられる。よって、商店街の飲食店の 利用が増える。また、日用品などを商店街で買い揃えることがあれば、商店街全体の収益 が上がる。 3 つめは、商店街の知名度の向上である。商店街に珍しいゲストハウスができることで、 知名度が上がる。イベントの実施や fm ひたちでの宣伝を通して、日立市商店街周辺や日立 市外の人が 3 もーる商店街に興味を持つきっかけになればよいと思う。 4 つめは、空き店舗があると商店街の賑わいがなくなり、さまざまな問題が生じる。例え ば、景観・防犯性・安全性などである。特に空き店舗は、寂れたイメージを抱かせてしま うので、店舗が入れば賑わっているイメージとなる。結果として、商店街への印象がよく なり、多くの人が利用したいと思うようになると考えた。 40 (C) ふらっと立ち寄りたくなる商店街:Deli Mall~デリモ~ 1.コンセプト ~ふらっと立ち寄りたくなる商店街へ~ はじめに、空きスペースを活用して商店街の活性化に役立つような場を提案しようと考 えた。そこで考え付いたのは、「食」による活性化だ。私たちの生活の上で「食」は必要不 可欠なものであり、飲食店の多く集まる商店街が活気に満ち溢れている事例が多いことか ら、「食」は商店街の活性化に重要なものだといえる。 実際に商店街へ行ったときに、商店街の飲食店は店内の様子や店員の顔が見えないなど、 どこか入りづらい印象を受けた。そこで私たちは、空きスペースでの店外販売というスタ イルが有効であるという結論に至った。そこで、私たちは対象者を下校時の高校生とした。 昨年度の調査から、周辺高校の学生のほとんどが電車通学のため日立駅を利用しているこ とがわかっている。日立駅へと向かう途中の高校生がふらっと立ち寄りたくなるような店 外販売をデザインし、それによる波及効果で 3 モール商店街の活性化につながると考えた。 2.活性化策 Deli Mall~デリモ~ 提案場所…パティオモールの~交差点付近の広場「水のパティオ」 この場所は、交差点に位置していて道路から見え やすい。さらに、日立二高や明秀日立などの周辺高校の学 生が駅通学のために多く利用する。バス停にも近いため、 バス利用者の集客も狙える。以上の点から、学生が立ち寄 るというコンセプトに合っていたためこの場所を選んだ。 また、この「水のパティオ」は本来噴水が出る機能を持っ ているが、現在は管が詰って使えないため、今では大道芸 などのイベントの一角としてしか使われていない。 提案の概要 水のパティオ内に、「立ち寄りやすさ」をテーマにした店舗をつくり、3 モールとその周 辺にある飲食店からそれぞれの店の自慢の一品を提供してもらい、それらを主に高校生を 対象として販売する。また、この広場を魅力的に買えるための新しい空間作りを提案する。 41 ・営業時間…11:00~19:00 ・経営者…各協賛店 ・店舗の規模…縦 3700mm 横 6700mm 高さ 3000mm ・主要な対象者…下校のため日立駅を利用する高校生 商店街の味を知ってもらう ○提案への経緯 私たちの提案する「デリモ」は食によって商店街を活性化させるのが主な目的だが、新 しい何かを売るのではなく、商店街にもともとある各飲食店の「自慢の一品」を提供して もらい、それらを駅利用者対象に売ることで、商店街の味を知ってもらおうと考えた。お 店の味を知り、そのお店のほかの商品を求める客が協賛店へと流れ、それによって商店街 に人の流れを作るのが狙いだ。 ○具体的な提案 <店舗> 私たちの班は、実際に商店街の 4 店舗の飲食店にこの提案を紹介し、協賛をえること ができた。よって今回はその 4 店舗でシミュレーションをしていこうと思う。 ①登利要(とりよう) 肉屋さん。提供物はコロッケ。 ②おふくろ弁当 弁当屋さん。提供物はから揚げ。 ③Happy DELI 惣菜屋さん。提供物はポテトサラダなどサラダ系。 ④いがわ お菓子屋さん。提供物は焼き菓子など。 42 <売り方> ・売る人 売る人①:協賛店に、「もうひとつの売り場」という形で場を提供し、自分たちで売っ てもらう。 売る人②:学生(主に大学生)や主婦にバイトとして売ってもらう。協賛店には、店 を紹介する広告料として品物を定価より安く提供してもらい、その差額か ら人件費を出す。 ・値段 値段は、上記の売る人①、②に関係なく、協賛店で売られている定価で販売する。 コロッケ からあげ ポテトサラダ 焼き菓子 ・セット販売 単品での販売のほかに、各店舗の品を 1 つにまとめ、それを 500 円ほどの値段で販売す るセット販売をする。一度に多種の店の味を楽しめ、紹介できる工夫となっている。 <サービス券について> 商品を売るときに、その商品を提供している店舗のサービス券(割引券など)をつけて 販売する。これにより、商店街の飲食店への人の流れが増えることが期待できる。 <包装について> 包装は、どの商品も同じ色にし、同じマークを載せることで統一感をもたせる。また、 裏面などに商店街の地図を載せ、店舗の位置と簡単な店舗情報を載せ、宣伝に使う。包装 の端に切り取って使えるサービス券をつける。 以下、包装のデザインを載せる。 43 魅力ある広場へ「新広場 DeliMall」 人が集まる広場にするためにイベント会場としての整備と大型ビジョンの設置をする。 水のパティオを大道芸などの年に数回の イベントの時だけでなくもっと色々なイベ ントに利用できるような広場へ造り変える。 木や街灯などは撤去し水のパティオを 1 つの 広いスペースとし、タイルを色分けすること でステージと広場を分けることでイベント 会場として利用しやすくする。 イベント内容として大食い・早食い大会や企 業を誘致しての試供品の配布など観客参加 型のイベントを行う。 大型ビジョンを設置することで普段からふらっと立 ち寄れる広場にする。 縦 4m×横 2.7m×ピクセルドット 20mm 程度を想定し、 その大型ビジョンをたばこ屋の DeliMall 側の 2 階壁面 に設置し、普段は最新のニュースなどを放映する。 イベント時はライブモニターとして利用し、またワー ルドカップやオリンピックなどの時パブリックビュー イングを開催し広場と連動した利用をする。 デリモでつながる商店街 デリモを知る 案内看板によるデリモの存在の宣伝 デリモを宣伝する案内看板を駅の中央口や国道 6 号、245 号線など交通量の多い場所に設 置することでデリモのことを知ってもらえるようにする。 44 掲示板を使って商店街の宣伝 デリモの店舗の北側壁面に掲示板を設置し歩行者の目に入るようにする。 45 周囲への影響 デリモに人が集まる デリモでの集客が成功すれば、訪れた人々 が商店街の味を知り、その店の商品を求めて 商店街に人の流れができる。デリモによって 協賛店にも人が流れる 協賛店も栄えていると知った商店街内の他 のやる気のある店舗がデリモへの協賛を志 願する。このようにして、協賛の輪をどんど 売れるなら…と協賛店が増える ん拡大していけば、デリモと商店街が活性化 していく。 活性化 ○イトーヨーカドー、コンビニとの差別化 今回私たちがシミュレーションしている 4 品目の類似品は、イトーヨーカドー、コンビ ニではどのくらいの値段で売られているかの調査結果を以下に記す。 イトーヨーカドー coco ストア ローソン (惣菜売り場) ・コロッケ 105 円 ・コロッケ 125 円 ・野菜コロッケ 112 円 ・から揚げ棒(3 個)105 円 ・から揚げ(5 個)200 円 ・から揚げ(100g)183 円 ・ポテトサラダ 189 円 ・ポテトサラダ 240 円 ・大判焼き 100 円 ・シュークリーム 110 円 ・大福 80 円 上からもわかるように、値段ではイトーヨーカドーやコンビニとは差別化できない。し かし、デリモは「立ち寄りやすさ」をコンセプトとしていて、他の店舗より気軽に立ち寄 れることで差別化をはかれる。また、商店街の飲食店の方々は、自分の店の味や素材に誇 りを持っている人が多いことが聞き込みでわかった。こういう生の声の説得力を活かし、 商品にキャッチコピーをつけるなどの工夫で差別化をはかることもできるだろう。 おふくろ弁当、店主さんの声 うちのから揚げはコンビニのから揚げとは違います。 まず、使っている肉の良さがぜんぜん違う。 それから、味付けで使っているお酒も高級なもの。 食べ比べればわかります。ぜひ食べてみてください。 46 PART3: 日立駅前商店街の現状と課題に関する調査分析 (A)高校生の日立駅周辺商店街に対する意識調査 (B)日立市商店街における現状ニーズの把握と変遷 (C)日立駅前商店街消滅シミュレーションと行動分析 (D)パティオモール商店街のやる気 47 (A)高校生の日立駅周辺商店街に対する意識調査 1 テーマの概要 私たちは、高校生に対する日立駅周辺商店街への意識調査を行った。もしも日立駅を利 用している高校生たちを日立駅周辺商店街の利用客として取り込むことが出来れば、日立 駅周辺商店街の活性化に繋がるのではないかと考えたためである。 2 現状と課題 私たちはまず、高校生の 日立駅周辺商店街の利用状 況の現状について調査を行 った。日立駅周辺商店街の 利用頻度、そして高校生が 帰宅時にどのようなルート で駅まで行くのかを調査す ることで、 「店舗で買い物を 行う」という利用と「商店 街を使う」という利用。そ れぞれの利用状況について調査した。この結果から、日立駅を利用している高校生の約半 数以上は日立駅周辺商店街をほとんど利用したことがないという事が分かった。また月に 1度以上利用している高校生の割合は1割程度と、かなり低くなっている。 次に利用ルートについての結果からほとんどすべての高校生が商店街を通る事なく帰宅 しているという現状がわかる。 日立駅を多くの高校生が利用しているにもかかわらず、 ほとんど日立駅周辺商店街を利用してもらえていないということが分かった。 10 2 48 62 3 調査分析 高校生の日立駅前商店街に対する意識調査 調査ではクロス分析を利用した。 初めに、男女による日立駅前商店街の利用頻度の違いを示したものを示す。 これより、男性より女性のほうが利用頻度は高いと言える。女性のニーズに合わせた商店 街を目指すことも活性化の 1 つであることがいえる。 次に、出来てほしい店舗(1位,2 位,3 位)ができた場合の利用頻度の変化を表したも のをそれぞれ示す。ここで出来てほしい店舗というのは、あらかじめアンケートに店舗の 種類を挙げておき、その中から選んでもらった。挙げた店舗は、流行廃りのないような店 舗というものを念頭におき、例として挙げた。 49 ここから、高校生の出来てほしい店舗(1 位,2 位,3 位)を日立駅前商店街に出店すること で、商店街利用する高校生は増加すると考えられ、出店することに大きな意味があると言 える。 次に出来たら良い店舗の 1 位~3 位を集計したものと、詳しい人数を示したものを示す。 これより、利用頻度の変化は、出来たら良い店舗が 1 位のとき最も大きく増加し、2 位のと き、3 位のときと続く。ゆえに新たに店を出すとなったときは、出来たら良い店舗 1 位に着 50 目し、その中のさらに順位の高いものほど優先的に出店していけば、効率的に日立駅前商 店街の利用者する高校生を増やすことができる。 次に帰宅方法による商店街の利用頻度の違いを示す。 グラフを見ると、電車(日立駅)→徒歩の人の日立駅前商店街をほとんど利用したことがな い人の割合が他の帰宅方法に比べ、大きいことが分かる。日立駅を利用するということは、 日立駅前商店街の近くを通ることなので、これらの人を取り込むことが活性化に必要と考 えられる。 次に出来てほしい店舗で 1 位・2 位・3 位に服・雑貨店を選んだ人の、現在の利用頻度と、 服・雑貨店が出来た場合の利用頻度の変化を表したものを示す。 現在の利用頻度 服・雑貨ができたときの利用頻度 この結果より、利用したことがない人が大幅に減り、毎週利用する人・月に 1 度利用する 人は大幅に増加しているため、服・雑貨品などの品物を扱えば、利用者は増え、活性化に 寄与できると考えられる。今現在は、高校生に向けた服・雑貨店はない状態なので、この ような店舗を作ることに意味があると言える。 51 同様に、カフェと本屋についても分析を行った。 現在の利用頻度 カフェができたときの利用頻度 現在の利用頻度 本屋ができたときの利用頻度 カフェと本屋の場合も、利用者が増えるという結果を得られた。また、カフェは地域交 流の場所などとして活用できること、高校生だけでなく幅広い世代が利用できることから、 活性化に大きく寄与できる。本屋の場合も、世代を問わず利用される施設なので、商店街 の活性化に十分つながると考えられる。 最後に「あなたが日立駅前商店街を利用しない主な理由は何ですか」という問いに対す る回答の結果を示す。 利用しない主な理由は、1 位が 「利用したい店舗がない」で 94 人 (51%)、2 位が「存在を知らない」 で 55 人(30%)、3 位が「遠い」で 18 人(10%)という結果になった。 ここから、「利用したい店舗」が増 えれば、利用者は増え活性化に繋が ると考えられる。つまり、高校生の ニーズにあった店舗の出店は、活性 化に不可欠である。 52 (B)日立市商店街における現状ニーズの把握と変遷 1.テーマの概要 我々、第 3 班がテーマ設定をする際、日立市商店街をよりよくするために「商店街」 の「店」に注目して「どのような店」が必要なのかを考えた。現在も「日立市商店街」に は多くの「店」があり、存在する店は「需要・ニーズ」をある程度満たしている店と考え た。また、逆に「需要・ニーズ」があるのにもかかわらず存在しない業種の店を「調査・ 分析」することによって日立市商店街におけるニーズを調査することを第一のテーマ設定 にした。 次に、日立市商店街に密接に関わっている人を考え、今回は「日立製作所」および「日立 市役所」の職員をターゲットにし、ニーズの調査を行うことにした。 また、日立市商店街の歴史を紐解き、誕生した理由から、 「日立市商店街に求められている こと」について原点に立ち返り考察し、調査・分析する必要性があると考えた。日立市商 店街の時代を追っていき、 「ニーズの変遷」としてまとめることによって総合的な「ニーズ」 の発見ができると考え、本テーマの設定とした。 2.現状と課題 ≪現状≫ ・2014 年度調査(商店街での買い物) 商店街全体での買い物の内容についてのヒアリング調査である。食品・雑貨・日用品な ど生活必需品が多く占めている。世代別利用金額の合計は非高齢女性が最も多く、非高 齢男性、学生、高齢者と続く。平日は学生や非高齢男性の利用が減少する。休日・平日 間に非高齢女性の利用金額はほぼ変化なし。主婦と思われる方々が多く利用しているこ とがわかる。 3 モールの通行者数は若者:非高齢者:高齢者=11:7:5 であり、重みづけをすると、需 要は食料、衣料、趣味・娯楽、衣料、日用品、雑貨、本の順である。 ・2013 年度調査(パティオモール内の立ち寄り者の年代) 利用者は非高齢者、若者、高齢者の順に多い。 (以上昨年度調査結果資料参照) ⇒日立商店街利用者は非高齢女性(主婦層)で、食品を目的とする買い物が 4 分の 1 を占めていることがわかっている。また、需要も食料が半数を占めている。 53 ≪課題≫ 主婦層によるニーズに対応するのも重要だが、のびしろが少なく、平日の非高 齢男性の利用を増やすことが可能だと考えた。日立商店街誕生の起源となってい る日立製作所や近接する職員の多い日立市役所の方々は、商店街を活気づけよう とするにあたり、何らかの影響を寄与し得ると考えている。2 つの機関の方々に アンケートを行うと、日立商店街は日立に必要であるという意見が多くあった(ア ンケート結果・分析後述)。利用の有無に関わらず、このような意見を尊重し、日 立商店街を消失させない必要がある。まず、この 2 つの機関で働く方々に日立商 店街に必要とされるのは、既存の店舗なのか新たな店舗なのかを調査し、需要や ニーズを明確にする。更なる利用客の獲得のために、利用して頂けるような商店 街を形成していき、商店街利益の増加と客足の伸びをのぞむ。 3.調査と結果 調査方法: ・調査はアンケートを実施して行う。 ・アンケートは配布、回収と集計の効率を考え、web アンケートを利用した。 ・日立市役所の方々のご協力をいただき市役所職員へのネットアンケートの広報、日立 製作所へのアンケート調査の依頼をした。 ・日立製作所へのアンケートは、都合により紙媒体でのアンケート実施となった。 ・アンケート結果を集計し、商店街活性化への有力な項目などを分析する。 結果: アンケートデータの詳細については,アンケート実施上の制約から本報告書では割愛す る. 54 4.日立駅前商店街活性化についての結論 日立市の歴史から見た日立商店街と日立製作所の関係から、日立製作所の方は今まで供 給所の存在によって福利厚生を受けていたが、2006年に最後の供給所が閉店した。さ らに日立製作所の工場内では、アンケートの結果から書籍などの趣味・娯楽の充実化が求 められていることがわかった。 よって日立製作所の方を顧客として呼び戻すためには.. . . 日立製作所工場内で揃えることの出来ない物かつ、ニーズに沿うものを取り扱う店(書 籍などの趣味・娯楽)を増やす。通勤、退勤時に書店(趣味・娯楽)などの施設を利用す るついでに周りの商店も利用してもらえるという波及効果もあるのではと考えられる。 また、商店街の利用実態とどんな店が欲しいか(ニーズ)のアンケート結果から、飲食 店を利用または求める傾向が強かったので、さらなる飲食店の充実を図ることで活性化に つながる。 飲食店をよりよくするためには.. . . 日立市役所の方々へのアンケートで多く意見のあった、独自性、専門性のある飲食店を 増やす。例を挙げるとオープンカフェのようなおしゃれで高級感のあるカフェ、安くてお いしく、食べ歩きのできる惣菜店、スポーツバーなどの飲食店だが、より専門性の高い店 舗を増やせば、今の利用実態で多く利用されている飲食店の顧客はキープしつつ、新たな 顧客を獲得できるのではないかと考えられる。 また、活性化に必要なのは「居心地の良さ」と考えられる。「居心地が良い」ということ は、「人がいる」ということである。時代の流れから「ネット通販」に流れているので、魅 力的な商店街を作り上げ、人をいかにして呼び込むことが大切だと考える。つまり、魅力 的な商店街=ニーズが満たされている商店街ということである。例を挙げると食べ歩き、 休憩所、自習室など。 そのなかで、アンケート結果の中で「飲食店の充実」を求める声が非常に多かった。一 口に「飲食店」といっても、なぜ「飲食店の充実」を求める声が多かったのかというと、 それは「その場でしか経験できない事」だからであり、すべては「人がいるからこそでき る」ということである。今回はアンケート数が少なかったので、十分とは言えないが、日 立市商店街を活性化する最も大事なキーワードとして 「人がいるからこそできる、ここでしかできない経験」 ということを忘れないようにしたい。 55 (C)日立駅前商店街消滅シミュレーションと行動分析 1. テーマの概要 私たちの班では、過去の商店街 の利用調査の結果から、商店街が どのように利用されているのか事 前にある程度調査されていること が分かった。そのことから既存の 商店街の調査ではなく実際に日立 地区 3 モール商店街から商店街を 無くしてみると周辺にどのような 影響が出るのかを考えていくこと とした。実際に商店街を無くして みると様々な業種のお店が無くな るので他の場所への波及効果が生 まれると考えられる。実際にどのような影響があるか利用者への調査のもと分析してい く。また、もう一つのテーマとしてある無作為の個人を抽出してその人の毎日の行動を 分析していき定量的にどのような損益があるかを分析していく。この調査をもとにシナ リオライティングをしていき商店街を無くした時にどのように生活環境が変化していく か各年代においてどのような影響が起きるのかを考察し、商店街をどのような方向性に するかを考えることによって活性化に寄与していく。 下記の図は商店街を無くす対象地域の図である。 2. 現状と課題 近隣自治体への転出や出生率などによる人口減少が続いており、人口の維持が行政問 題となっている。若年層の市外への流出も顕著になっており、将来的な労働人口不足が危 惧されている。今後の人口減少に伴う税収不足が懸念されている。このため、行財政改革 の推進、財源の安定的確保と効果的重点的な予算執行や人的資源の有効活用への取り組み が必要である。これらの観点に立つと、市民、企業、行政、大学が協力し合ってまちづく りを進めることが必要となっている。 これまでに育まれてきたコミュニティ組織や多くの市民活動団体などの活動を生かし、 さらに若年層の参加促進や活動ノウハウの継承などを支援するなど、協働によるまちつく りを進める仕組みの充実を図ることが重要である。 ヒアリング調査によれば 20%程度の個店にしか後継者が存在していない状況であり、こ の状況下では近い将来、個店の存続、商店街の維持が困難になることは明らかである。 56 このような状況を打開するためには、後継者に発掘とその育成が急務であるといえる。 企業規模が小さい商業においては、社内や家族の中で後継者が存在しないことも予想され、 後継者を第三者から公募することも検討する必要がある。 商店街ヒアリング調査より(ある商店街からの声) 地域の人口が減少する中、各個店では後継者の問題が大きい。少し前までは息子が戻っ てきて後を継ぐ動きがみられたが、規制緩和でスーパーなどでも酒類販売ができるように なり、後を継いだはずの息子さんが再就職している状況もある。 後継者に関するアンケート調査 今はいないが 後継者がいる いずれ継ぐ 後継者が いない 後継者は 必要ない わからない 件数 130 18 141 39 117 比率(%) 29.3 4 31.6 8.8 26.4 (平成23年度茨城県商店街実態調査報告書より) 日立市は県内でも転出率が高く、同様の状況がうかがえる。そのため、日立市商店街でも 後継者不足が問題となっている。 銀座通りに展開する 3 つの商店街(ひたちぎんざもーる商店会、まいもーる商店会、パ ティオモール商店会により構成され、「3 モール商店街」と呼ばれている。)では、約 1km の区間にかつては 300 件の店舗が立地していたが、現在では 120 店舗程度に減少している。 空き店舗だけではなく、建物を取り壊し駐車場に転用するなど商店街としての景観さえ失 われつつある。 また、現在、商店街で購入できる商品を見ても、生鮮食料品などの最寄品が圧倒的に不 足しているのは従来通りだが、加えて、せともの屋、紳士服屋、時計・貴金属店などのい わゆる専門店が閉店・撤退をしており、商店街として提供できる商品(コンテンツ)が不 足している状況となっている。 今後の人口構成を考慮すると、ますます高齢者が増大することは明白であり、高齢者を 主要顧客としてとらえた商店街、個店の事業展開が求められている。 また、少子化や核家族化の傾向が顕著となっている中、「子育て支援カフェ」のような機 能を商店街が提供する事例も全国的には珍しいものでなくなっている。 人口規模・人口形態に応じた商店街つくり 参照(日立市商工振興計画~商業と工業の連携から見える新しいまちづくり~) 57 人口減少 まちの空洞化 労働人口の不足 マイモール・銀座モー ルの交通量の減少 商店街の後継者不足 個店の存続、商店街維持の困難 商店街を見合った規模に縮小 そもそも商店街はあまり利用されて なく、皆別の場所を利用 商店街を無くし、代替する新しいも のに変えれば、活性化するのでは 3. 調査分析 (1)調査の概要 私たちの班では、プレアンケートによって、 商店街の利用の有無、商店街に新たに求める機 能、商店街消滅に対する行動・考え を調査し た。 その結果、商店街をあまり利用していない、 特に新たな機能を求めていない、大型スーパー を利用するなどの回答が得られた。 プレアンケートの結果を考慮に入れ、商店街 を商業のみで考えず、ノスタルジック、防犯、 交流などの観点も含めたアンケートを実施 した。 消滅して困るものが商店街に 必要とされているのでは!! 58 (2) 市役所職員へのインタビュー調査 平成 26 年 6 月 13 日 9:00~11:30 に日立市役所にて市役所職員の方への質問をし、以下 のご意見を頂いた。 1。今後、商店街をどのようにしていくのか。(市の政策として) 商店街の魅力を向上させるために、後継ぎの発掘・育成、民芸品や芸術などを伸ばすこ と、及び茶店でおいしいお茶の入れ方や民芸品店で民芸品つくりなどのお店のノウハウを 教える街ゼミを進めていく。市役所はあくまで商店街のサポートをする立場で、主役は商 店街である。 2。資金や活動の面で商店街に協力していただけるのは可能であるか。 商店街が市役所に補助金を申請すれば、市・県が 2/3 の補助金を出す(商店街は 1/3 の負 担が必要)。実際に、去年はゆるゆる市と街ゼミの申請があったので、商店街に対して、茨 城県と日立市から 60 万円ずつの補助金があった。また、国の補助金もあるので、申請すれ ば採択される可能性があり、市役所は申請の手続きを手伝うことはできる。どちらとも、 商店街からのアクションが必要で、商店街のやる気がないと資金の協力ができない。 3。もし商店街が消滅したら 困る人はいると思うが、今まで使っていた人は別のところに流れるそのため、消滅して も大きな変化はしないと思う。 山の中でも人は生活できるため、無いなりに人は生活する。「なぜこんな店が残っている のか」と外目からは分からなくても、その店が残っているのには理由があり、すべての店 がなくなることはないので、商店街の全てが無くなるというシミュレーションは、非現実 的だと思う。 ・商店街を中心市街地として考えたときに、消滅したデメリットは? 商業機能なくなることによる、にぎわいの喪失などがある。計り知れない。 4。市の商店街への要望はあるか。 市だけが空回りすることが多いので、もっと商店街からの提案、動きが欲しい。しかし、 商店会は高齢者が多いことから、アクションを起こすのも難しいのが現状である。 5。 規模の縮小 市としては、規模縮小して集約した方が良いと思うが、モールを短くしたり、減らした りといった規模の縮小は難しい。空き店舗が多いことから、どこか一か所に集約できたら 良いと思う。 6。商店街の役割 人通りがあり、にぎわいあることで、税収が上がり、福祉、道路、インフラの整備に繋 がる。 7。商店街は中心市街地の役割を果たしているか 昔より廃れてはいるが、ニーズを満たしていることから、果たしていると言える。 59 (3) ヒアリング調査 第1回 平成 26 年 6 月 4 日 10:00 ~12:30 の時間において 3 モール商店街にてヒアリング調査 を行った。これは、今後商店街消滅の影響について考えていった際に使用したものであり、 実際に現地で聞いた意見から今後の影響を考えていくことにした。 今回のアンケートで商店街を利用していると答えてくれた方は 4 名。そのうち 3 名は飲 食店を利用している。母数は少ないが、他の商店街の利用状況の結果を参考にしても商店 街に飲食・交流を求めてくる人は多いと言えるだろう。 小売は本屋と花屋だけで小売店の店舗数から考えると少ない印象を受けた。しかし、ど ちらもイトーヨーカドーに同じ業種の店舗があるのにこちらを選んでいるのに何か理由が あるのでは。 (調査不足) 美容に関しては店舗数自体が少ないため利用者が少ないことはしょうがない。しかし、 近隣住民の方がここ以外にどこで髪を切ったりしているのか気になるところ。(調査不足) ○利用者の交通手段 自転車が一番多い結果となった。 歩き 1 名 自家用車が 1 人もいないのは、 自転車 2 名 高齢者が多いのが原因か、無料駐 バス 1 名 車場がないことが原因か。 ○利用者の声 ・さびしくなる なくなったら特別困るという意見は見られなかった。 ○商店街を利用しない理由 ・店がない 3 名 ・イトーヨーカドーに行く 2 名 ・興味がない 1 名 ・行く必要がない 1 名 ・入りづらい 1 名 ・なくなっても良い 1 名 計9名 商店街に行かない理由の大部分がわざわざ商店街に行く用がないからだと解釈した。入 りづらいは個人営業の店独特のものだと判断。店と人が少ないのも要因のひとつだと考え られる。 ○どのようになったら商店街を利用するようになるか ・なんでもそろう 2 名 それ以外の方は無回答、もしくは利用することはないと回答。 おそらく相当なことがなければ(何でも揃う、激安、相当おいしい等々)逆転は不可能。 現状少し発展した程度では利用者は増えないだろう。 ○自由意見 ・コーヒー館、銀行、イトーヨーカドーのみ利用 ・商店街ではなく駅ビルがほしい 60 ・白ボタン(刺繍屋)、シビックセンターはよく利用 ・あじさいが狭い ここで出てきた店舗は商店街外と判断された店舗。ピタッチやシビックセンターをよく 利用するという人は少なくない。手狭な施設のサテライトや移転先となるといった意見も 出てきた。 (4) KJ 法 私たちはプレアンケートの結果を基に商 店街を無くすことに対する影響を考えてい くことにした。これは、商店街を無くした 時にどのような影響があるのかを図にする ことによってそれぞれの影響を把握し、こ の影響に基づく根拠づけを街頭によるヒア リングで行っていくために作成したもので ある。 (5) ヒアリング調査 第2回 KJ 法 調査日:平成 26 年 7 月 11、14、18 日 調査対象:3 モール商店街利用者 114 人 調査方法:ヒアリング調査、アンケート調査 調査範囲:日立駅前、3 モール商店街(パティオモール、まいもーる、ぎんざもーる) KJ 法で挙げた項目を裏付けしていくためにアンケート調査を行った。質問事項によって は平成 26 年 1 月 11 日、1 月 23 日に日立市が行ったアンケート項目の内容も含む。 来訪者の約 4 割が男性、約 6 割が女性となった。 来訪者の約 3 割は 60 代以上である。 来訪者の約 6 割が日立市民という結果になった。その他は、水戸市、下妻市、常陸太田市、 北茨城市、笠間市、千葉県、東京都から来ている。 来訪者の利用頻度は「利用しない」が約 3 割を占めている。 来訪者の目的としては、食料品・飲食店の割合が高かった。 61 ノスタルジック 商店街が消滅した場合、どのようなことを感じるかを質問したところ、寂しい、 不便、治安が悪くなる、日立ではなくなってしまう気がする、などという意見が寄せられ た。この背景には、地元である、昔使っていた、個店の経営者と立ち話をするのが楽しみ、 などがある。 防犯 商店街がすべて住宅街になったとしたら「暗くなると思う」という意見が多数寄せられた が、現在の商店街が防犯に貢献しているかと質問したところ「貢献していない」と答えた 人が多かった。この背景には、現在の商店街は夕方以降には閉店する店舗が多く、イトー ヨーカドーも比較的早い時間に閉まるため、商店街にいる人の数が少なくなり、夕方以降 には防犯の役割がないためである。 商店街消滅による利用店舗の変化 商店街が消滅し、現在利用している店舗がなくなったら代わりにどの店舗を利用するかと 質問したところ「イトーヨーカドー、カスミ、しまむら、コンビニ、ヨークベニマル、地 元の店舗」を利用するという回答であった。 商店街消滅による交通手段の変化 商店街が消滅し、現在利用している店舗がなくなり別の店舗を利用する場合、交通手段は 変化するか。 また、変化する場合どの交通手段を利用するかと質問したところ 「変化なし、自家用車、バス、自転車、徒歩」などの回答であった。一番多かったのは「変 化なし」である。 この背景には、商店街にあった店舗はイトーヨ-カドー等で補えるため、今まで商店街を 利用していた人は代わりにイトーヨーカドー等を利用するため、「変化なし」という回答が 多かった。 (6) シナリオライティング (3)~(5)における調査を基にして消滅後にどのような影響を出るのかをシナリオライティ ングしてみた。最初の 3 つのシナリオライティングは商店街が消滅したあとに各年代にお いてどのような影響が出るのかを記したもので、後半の 2 つは消滅した後に新たな土地利 用をしたときにどのような利用方法があるのかを考えたものである。 シナリオライティングはアンケート対象者の中から選択した。商店街消滅後どのような 行動をするかはアンケート結果に基づいている。 ①20 代の場合 カラオケで遊ぶことがあるため、商店街消滅後はひたちなかで買い物や娯 62 楽を行う。 ②40 代の場合 家族で商店街に訪れており、一度に多くの店に行くため、商店街消滅後は 日立の代わりに水戸の商店街に行く。 ③60 代の場合 よって家 FM の常連客であるため、商店街消滅後はよって家 FM の代わり に他の交流場所・休憩所に行く。 以上の中から、例として 40 代のシナリオライティング下記に示す。 コンセプト 商店街は大きく変化した。不景気、ニーズの変化などの影響で商店街は消滅 し、住宅街となったのである。唯一残っているのはイトーヨーカドーだけであり、専門店 は日立市内には少なくなってしまった。そのため、多くの人は水戸などへ出かけている。 私は日立市在住の会社員(42)だ。私は生まれも育ちも日立である。日立市内の小学校、中 学校、高校を卒業し、茨城大学に入学し、卒業後は日立市内の企業に就職した。毎日、会 社には自転車で通勤している。 この町に住んで 40 年近く経つが、この町は大きく変化した。小学生のころは商店街の駄 菓子屋に毎日通っていたため、店主のおばあちゃんにはかわいがってもらっていた。20 年 近く前には商店街は活気にあふれ、当時大学生だった私は毎週商店街に通っていた。そこ には多種多様な店舗があり、茨城県内でも特に発展していた。学生時代にしか楽しめない と思い、クラブにも何度も足を運んだ。大人になった今では、すごく懐かしく、鮮明に覚 えている。しかし、時代の変化によりニーズが変化し、商店街から撤退する店が増えてい った。駄菓子屋も少子化の影響を受けたり、店主が年を取り、体が不自由になったため営 業できなくなってしまった。その結果、商店街は消滅し、住宅街となった。現在、私は妻 と子供の 3 人暮らしである。平日は仕事のため、子供の面倒は妻に見てもらっている。休 日はなるべく家族と過ごそうとしている。家族で過ごすことが日々の生活の癒しになって いる。週末には家族で水戸やひたちなかに出かけることがある。「私が子供のころの商店街 はこんなだった」と子供に見せてあげられないのが悲しさを感じる。 「昔のような活気があ る商店街であれば、わざわざ水戸へ行く必要もないのになあ」と思いながら、陽気な日の 光の中電車に揺られている。 商店街消滅前:週末は朝 8 時に起き、子供とテレビを見ながらくつろいでいた。妻がお 弁当を作り、11 時ころに商店街へと出かけた。妻と子供のショッピングに付き添い、その 後喫茶店に行き飲み物を買い、たまには公園で食事もする。 商店街消滅後:週末は、電車の時間もあるため朝 7 時に起き、すぐに支度をする。準備 ができてからようやくくつろげる。子供はテレビが見たいと駄々をこねている。水戸まで は時間がかかるため 9 時には家を出る。休日なこともあり、人込みであふれている。駅ビ ルは大きいため、目的の店まで行くのに疲れる。お昼はレストランで食事する。買い物が 多いと帰るのがとても疲れる。 63 まとめ 人口減少や少子高齢化によるまちの空洞化や労働者不足が、商店街の交通量の減少・後 継者不足へと繋がり、商店街の存続が困難となっているのが現状である。総長約1kmの 区間にかつて 300 店舗も連なっていた 3 モール商店街は、現在 120 店舗程度に減少し、空 き店舗・空き地や駐車場が乱立している。店舗が連続的に立ち並ばなくなった今、総長約 1 kmという規模は不適であり、空き店舗・空き地や駐車場は寂れた印象を与えることから、 さらに客足が遠のく悪循環になる。 このことから、人口規模・人口形態に応じた商店街つくりが必要で、つまりは商店街を見 合った規模に縮小し、店舗を集積させることで、賑わいができ、商店街が活性化すると考 えられる。 そこで、商店街消滅をシミュレーションし、損益を探ることで、逆説的に商店街の必要 性を見出して、その部分を残していくことにした。しかし、プレアンケートにて、商店街 消滅に対する行動・考えなどを調査したが、大型スーパーを利用するなどの回答が得られ、 消滅したら特別困るという意見は見られなかった。 この結果より、商店街消滅の損益は小さく、商店街に代替する新たなものに変えた方が活 性化するのではないかという予想に変わった。 その後、プレアンケート結果を考慮に入れ、商店街利用者を対象に、商店街を商業以外 の観点で考えたものも含めたアンケートを実施し、その中から数人の行動でシナリオライ ティングを実施した。シナリオライティングでは様々な年代、性別で考え、商店街消滅後 の行動を記述した。 アンケート、シナリオライティングの結果から商店街消滅による影響を調査し、商店街に は何が要求されているかを利用者の目線から考えると、交流の場、買い物や飲食ができ、 遊べる場、年齢比に合った場などが挙げられる。年齢比に合った場とは、少子高齢化によ る高齢者の増加から高齢者に配慮した場にすることである。 これらの利用者のニーズより、既存の商店街でも満たしている部分があることから、商 店街を代替する新たなものに変えるのではなく、既存の商店街にあるニーズを満たしてい るものを残しつつ、コンパクト化させ、高齢者に配慮した空間に変えていくことが活性化 に繋がると考えられる。 以上が調査・分析により、得られた成果である。 64 (D)パティオモール商店街のやる気 1.テーマの概要 「やる気」はビジネス界や,スポーツ界などで「成果」を出すには必要な要素である。 しかし,昨年度の調査結果より,「活性化」とはまだ言えない状態であることがわかった。 (これから述べる)このことから,商店街の「やる気」を調査分析しようと考えた。また, 日立駅前商店街はパティオモール,銀座モール,まいもーるの 3 モールから成り立ってい る.しかし,昨年度の先輩方が行ったアンケート結果より,商店街利用者のモールに対す る印象は,プラスの印象が21%(28/131),マイナスの印象が79%(103/13 1)と大多数が 3 モール商店街に対して,マイナスの印象をもっていて,具体的にどのよ うな印象であるかというと,商店街利用者からは, 「寂しい・疲れている」 「人が少ない」 「活 気がない」などの声が多かった。そのマイナスの印象を抱えている 3 モール商店街だが, その中でも,商店街の繁栄度は違う.各モールの立寄り数(人/日)は,イトーヨーカドー を除いてパティオモール商店街が1018(人/日),まいもーる商店街が165(人/日), 銀座もーる商店街が365(人/日)という結果となり,パティオモール商店街が 3 モール の中で一番,繁栄度が高い商店街である ことがわかる.また,パティオモール, まいもーる,銀座もーるの 3 モールにつ いては立寄り数の観点から重みをつけ, 一番,立寄り数が多く,繁栄度が高い, パティオモール商店街の「やる気」はど うなっているのかを調査分析しようと 考えた. やる気イメージ図 2.調査分析の内容 ○調査目的 ・商店街を経営している側の商店街への考えを聞き出す ・やる気の低下原因をみつける. ○調査対象 ・パティオモール商店街の各店舗の店主 ○調査の方法 ・昨年度の調査結果の分析,アンケート調査,ヒアリング調査 ○規模 ・パティオモール商店街 65 パティオモール商店街図 ○手順 ①昨年度までの調査結果の分析&今回ほしい情報を決め、アンケート(ヒアリング式) の作成 ②パティオモール商店街へアポを取り、アンケート(ヒアリング式)調査 (予備調査) ~ヒアリング内容~ a.商店街について 1,商店街のよいところについて 2,商店街の改善してほしいところ ③アンケート結果の分析&結果と今後についての話し合い ④中間発表準備&中間発表 ⑤中間発表を踏まえて話し合い&そこから必要となった情報を聞き出すためのアンケー ト、ヒアリング内容(本調査)の作成 ⑥パティオモール商店街への各店舗に対するアポ&アンケート、ヒアリング調査の実施 (本調査) ~アンケート内容~ a. 自身の店についてこれからどうしていきたいか(複数回答可) 1. 今より売り上げを良くしたい 2. お店の規模を大きくしたい 3. たくさんの人に来てほしい 66 4. 現状維持 5. お店を閉める 6. その他 b. パティオモール商店街について今後どうなってほしいか(複数回答可) 1. 人通りは多くなってほしい 2. 商店街の設備等(景観など)を改善してほしい 3. 現状維持 4. 商店街の建物や道などの形だけは残し、お店のみを変える 5. 商店街の建物や道などの形をなくし、新しい商店街の形を作る 6. その他 ~ヒアリング内容~ (仮想分析法) c. 商店会費が現状よりあがることが決まったとして、あなたならいくらまで出せますか (現状からいくら上げられるかを調査) 1. アンケート、ヒアリング調査の集計&分析 2. 最終発表へ向け話し合い&報告書、発表用 PPT の作成 ○分析方法 アンケート調査、ヒアリング調査(仮想評価法等)を行い文章で回答してもらったものは 似ている内容でまとめ、あらかじめ回答を複数用意して聞いたものは、回答ごとに人数を 集計し、グラフ化して集計。 3.ヒアリング調査 アンケート調査より、具体的に自身の店があるパティオモール商店街に対して、仮想分 析法により商店会費を用いて、商店街の「価値」や商店街に対する「思い」を調査した。 ヒアリング調査内容としては「現在の商店会費が上がることが決まったとします。あなた ならいくらまでなら支払いますか?」といった質問を行った。商店会費を題材にした理由 として、商店会費は商店街を運営、維持、管理するために商店街の会員から徴収するお金 のことである。商店街をより良くするためにその会費が上がったとしたとき、いくらまで なら支払えるかと聞き、例えば、「1000 円までならあげてもいい。」「10000 円までならあ げてもいい。 」と具体的な金額を調べることで、定量的な分析ができ、そのお店自身の商店 街に対する思いの度合いも調べることができる。以下は定性的なヒアリング調査結果であ る。 67 1) 商店街会費をあげてもいいかという 質問に対し 36%が「商店街会費をあ げてもいい」 、36%が「現状維持」、7% が「下げてほしい」、21%が「無回答」 となった。 「無回答」に関しては調査 日に店主がいない、または、会費の 管理者が商店街の店にはいない。な どで、データが取れなかった。また、 「商店街会費をあげてもいい」とい う回答は「正直あげたくはないけど商店街が活性化するならあげてもいい」という考 えのもとの調査結果である。右の円グラフは「会費を上げてもいい」という意見の中 で「どのくらいまで上げてもいいのか」を表した定量的な調査結果である。 以上の結果より,1000 円~2000 円が多い結果となったが、中には、10000 円まで、あ げてもいいという結果もあった。ここで、先ほどの自身の店ではなく、自身の商店街 についてのアンケート調査結果で商店街については「1、人通りが多くなってほしい」 の項目で、はいと答えた人が 93%、 「3、現状維持」の項目で、いいえと答えた人が 93% という結果が出たため、商店街を活性化させたいという気持ちが強いことがわかった が、定性的なヒアリング調査結果を見ると、「商店会費をあげてもいい」という意見が 36%ほどしかなかった。 また、調査を行う上で貴重なご意見を頂いたので以下に述べる。 ●会費を上げてもいい ・商店街が決定したことなら、従う。 ・会費があがり、集客につながるのならあげてもいい。 ・正直上がらないのが一番。 ●会費は現状維持 ・今が精一杯。 ・これ以上はあげられない。 ●会費を下げる ・会費が高い。 ・商店街が活性化したところで自分のところの利益があがると考えるのは難しい。 ・商店街に活気があふれても、関係がないのに、商店会費が高すぎる。 ●その他 ・商店街の不公平性 パティオモール商店街の中には、商店会員になっていない店もある。商店会費 68 は商店街に流れている有線代、街灯の電気代、清掃代など商店街を運営、維持、 管理するうえで、重要な要素である。商店会員は、商店街の中で商売を行ってい るため、商店街の景観を良くし、人に来てもらうために、会費を払っているのに、 それを払わないで、自分の店だけ、運営しているのは不公平である。また、商店 街に店を構えるうえで会員になるという法的な手段がないため、どうしようもで きない。などである。 ・一時的なイベント(祭り、炊き出し)は無意味 一時的に商店街に人は集まるが、利用客が店に入って、物を買うだとかはない。 あったとしてもそれっきりで、店のリピーターにはならない。また、炊き出しな どは、人が商店街に集まって、外から見たら、にぎやかで良い気がするが、炊き 出しをもらいに来る人達だけで、売り上げにはつながらず、材料費などだけがか かり、結局は不利益しか生じない。 以上のことからヒアリング調査をまとめると、商店街に対しての「やる気」は 調査結果からは感じられることは少ない。要因としては、自分の店のことで精一 杯で商店街にまで手が回らないことや、自分の店の利益は商店街の活性化には関 係ないことや、また、商店街の不公平性でやる気がそがれる。などである。と考 えられる。 4.アンケート結果と分析 私たちは調査のためお店の店主の方にアンケートを実施した。質問内容は以下である。 Ⅰ あなたは今後このお店をどうしたいと考えますか。 1、今よりも売り上げをよくしたい。 2、お店の規模を大きくしたい。 3、たくさんの人に来てほしい。 4、現状維持 5、お店を閉める。 Ⅱ あなたは今後この商店街がどうなってほしいですか。 1、人通りが多くなってほしい。 2、商店街の設備等(景観など)が改善してほしい。 3、現状維持 4、商店街の建物や道など形だけの残し、お店を変える。 5、商店街の建物や道など形をなくし、新しい商店街をつくる。 69 次にアンケート結果をグラフにまとめた。 Ⅰ あなたは今後このお店をどうしたいと考えますか。 1、今よりも売り上げを よくしたい 2、お店の規模を大きく したい はい 13% いいえ 33% 回答数 はい 67% は 3、たくさんの人に来て 欲しい はい:2 4、現状維持 はい 27% いいえ 33% いいえ 73% 回答数 はい 67% はい:10 回答数 はい:4 4、商店街の建物や道 など形だけの残し、お 店を変える。 5、商店街の建物や道 など形をなくし、新しい 商店街をつくる。 はい 7% はい 13% 回答数 いいえ 93% 回答数 いいえ 87% 回答数 はい:1 いいえ 87% はい:2 アンケート結果の分析 アンケート結果から、Ⅰでは『売り上げをよくしたい』『たくさんの人に来てほしい』と いう項目が否定に比べ賛同意見が多かった。『お店の規模を大きくしたい』『現状維持』『お 店を閉める』という項目では否定の方が賛同意見を上回った。この結果からお店を閉める、 70 現状維持などの否定的な意見よりも売り上げをよくしたいなどの前向きな意見の方が多い 結果となった。一方でお店の規模を大きくしたいという意見は前向きでありながら否定的 な意見が多かった。この理由は現実的には商店街という決まった枠組みの中ではお店を大 きくすることは難しい、お店の改築に必要な資金を用意できないなどの理由があるためと 考えた。店主側としてはお店が繁盛してほしいという願望があり、一方でこれ以上お店の 規模を大きくできない事情があり現状維持や閉店という選択をするお店もあることが分か った。 Ⅱでは『人通りが多くなってほしい』という項目に調査した結果では 9 割の店主が賛成 していた。現状維持』『商店街の建物や道など形だけを残し、お店を変える』『商店街の建 物や道など形をなくし、新しい商店街をつくる』という項目ではいずれも否定意見が約 9 割という結果となった。 『商店街の設備等(景観など)が改善してほしい』では肯定が 43%、 否定が 53%と約半分に意見が分かれた。この結果から商店街の店主は人通りが多くなるこ とを第一に望んでいることが分かった。また商店街の現状には満足してはいないが新規に 新しい商店街を形成することや新たなお店を誘致することには否定的という結果となった。 商店街の景観や設備の改善には慎重な人もいれば肯定的な人もいた。 以上のことをまとめると、商店街にあるお店は以下の 5 つに分類できる。 1、商店街の発展に対して積極的な店主 2、少なくとも自分のお店を繁盛させたいと考えている店主 3、現状を維持し人が増えることで商店街の発展を目指そうとしている店主 4、どこか諦めがちで商売や商店街の発展には消極的な店主 5、商店街の発展に積極的であり商売の面でも余裕がある安定した店主 71 05 おわりに 本報告書では、茨城大学工学部都市システム工学科授業「都市システム設計演 習Ⅰ」で学生がグループに分かれ、日立駅前商店街の活性化方策を検討および実 践した結果の一部をまとめ、紹介しました。今回は失敗覚悟で臨んだ実践班の試 みでしたが、初年度から地域の関心を強烈に惹きつける程の成果を出す結果と なり、ひとえに学生諸子の能力と努力の賜物でした。一方で、実践班の学生は当 該授業以外の授業や課題、実験等を行いながら、その空いた時間で上記のような 活動をしており、相当な負担であったことは確かです。貴重な経験であったとは 思いますが、そのような負担の上に成り立っていた成果でもあります。その他に も授業の一環でやるには様々な課題もあります。大学と地域の連携、それによる 地域の活性化が謳われて久しいですが、今回の演習授業の成果は、地域にとって の大きな交流人口たる大学学生が、地域連携の中でどのように貢献することが 可能なのか、学生自身が何を学べるか、高校生と大学生さらには地域の老若男女 の交流がどのように促進され地域がどう活性化できるかなど、今後の大学と地 域の連携を考える上で大きな参考となるのではないかと思っています。今年度 は試験的に実践を試みましたが、次年度以降どうするかは今年度の成果を踏ま えて検討中です。地域の方々との意見交換の場でのご意見も踏まえて今後の展 開を考えたいと思います。 72 付録:学内報告用文書 「商店街の空き店舗を活用した無料学習室の開放」 ~工学部都市システム工学科3年次授業「設計演習Ⅰ」実践班の取り組み~ ■2014 年度の新たな試み~演習授業内での地域活性化策の実践 茨城大学都市システム工学科では、プロジェクト型学習として地域の抱える様々な課題に対して学生 がチームとなって主体的に課題解決策を考える授業を、20 年近く前から導入し、続けています。3 年次前 期の「都市システム工学設計演習Ⅰ」という授業です。 今回対象としている日立駅周辺商店街の活性化については、2012 年度から 2 年間で活性化策の提案(下 記報告書参照)までは行ってきましたが、それらの成果を踏まえつつ、2014 年度は何でも良いからとに かく何か実践できないかと考え、有志学生による特別チームを編成し、まさに失敗覚悟で、学生に自由に 企画・実践をしてもらいました。 地元商店会、市とも連携しながら、基本的に学生だけの力で、 企画、運営、財源調達まで行い、他の授業や実験の合間の時間 をみつけて、短期間で相当な苦労をしながら、なんとか実践ま でこぎつけてくれました。 設計演習Ⅰでは、最初の 1 か月は個人ごとに対象地域を調査 し、地域の抱える課題を発見、整理して発表を行います。最近 学会でも多いポスター発表形式です。その後、8つの班に分か れて具体的な地域活性化方策を検討するフェーズに入るのが 従来のやり方でしたが、2014 年度は同地域で 3 年目というこ ともあり、従来通りの活性化方策提案班に加え、有志学生によ る実践班を募るとともに、その他にも地域の抱える問題やニー ズに関してオリジナルの調査・分析を深く行うことも OK とし ました。この調査・分析を選んだ班は、独自の問題意識や仮設 を検討し、地元高校生や日立製作所などへのアンケート調査を 行いました。詳細は割愛しますが、短期間で有益な Output を出 すのは極めて難しいなか、各班はオリジナルのアンケート 2012~13 の学生提案報告書 (WEB アンケート技術も援用)を実施し、一定程度の結果を http://trans.civil.ibaraki.ac.jp/sekkeiensyu 得ることができました。 2013report.pdf ■実践班による企画 さて、今回紹介する実践班の取り組みですが、実践した内容は「商店街の空き店舗を活用した無料学習 室の開放」です。実践内容の検討段階では、班内でブレーンストーミングを行い、集客性と継続性の 2 軸 から様々な案を検討し、学習室を含め、朝市やコンサート、映画上映など様々な案が出ていたようです が、集客性、そして何より継続性を重視して学習室に決定したとのことです。今回は授業の一環で短期間 の実施ですが、仮に本格的にやろうとした時にイベント性よりも息長く常に集客ができる企画を重視し ていました。実際にこれまでも月 1 回のイベントは商店街で多数開催してきた実績があり、その瞬間は 多数の来客がありますが、通常時への波及効果が大きな課題だったのです。 最終的に決定した「学習室」。当初は実践班学生の確信とは裏腹に、教員の反応は実は鈍い面もありま した。短期の実践で本当に客が来るのか、既存の施設との差別化はどうか、などが気になりましたが、彼 らの高校時代の実体験、放課後に友人同士で勉強できるカフェやファストフード店の撤退、日立シビッ クセンター学習室のキャパオーバー(机確保のために行列している) 、それら学習スペースの制約(静か にしないと怒られ、色々と相談しながら勉強できない)など、中高生が感じている問題やニーズを的確に 調査、分析し、商店会の方からも背中を押してもらい、 「学習室」案で決定しました。短期間のみの実践 でありながらイベント性を捨てた企画ということで大きなチャレンジであったと思います。この「学習 室」の基本コンセプトとしては、 「商店街に散在する空き店舗を有効活用し、単なる商業機能ではなくコ ミュニティ機能、たとえば「第 3 の場」の提供により商店街への来訪者を増やし、商店街・中心市街地の 活性化につなげる」ことです。そのための前提条件や考慮した点は、①長期での継続性(上述)、②地元 高校生の学習スペースへのニーズ(上述)と既存学習室との差別化、③学習室に協賛店の広告・デリバリ ーメニューを掲示(後述)です。②については、図書館などの既存学習スペースと差別化するため、私語 厳禁ではなく「教えあう」空間の創出、また、現役大学生が勉強を教え、実際の大学生活を学生に話すな どをし、コミュニケーションをとることで、高校生と大学生のつながりを形成、さらに、高校生のニーズ をもとに開放時間を延ばすことでも差別化を行ったとのことです。 そして、その後は学習室の運営内容の詳細検討に加え、場所と財源の確保へと検討のフェーズは移りま した。 実践企画案の検討段階資料 ■商店街空き店舗の調査・選定・交渉と資金調達 実践班学生のアルバイト先オーナーの方からの情報提供や本授業に協力を頂いている地元商店会の方 からの紹介を頂き、二転三転しながらも、最終的に日立商店街銀座モールのベストケアスクール 1 階の スペースを借りることができました。短期で借りることの制約、賃料・光熱費、部屋の清掃や什器類の設 置可否など、多くの壁が立ちはだかり、何度か教員や TA にも相談を繰り返しつつ、最後は絶対にやり遂 げるという彼らの信念と努力で、ギリギリのタイミングで契約までこぎつけてくれました。この時点で 学習室開放まで3週間を切っていました。 賃料を含めた運営費も、基本的に学生だけの力でマネージしました。教員からの援助は受けない!とい うド根性精神で、地元商店・企業へ企画書を持って協賛金集めに奔走です。ここでの一計は、学習室に商 店街のお店を案内・宣伝できる案内板を設置し、協賛店の宣伝を可能にしたことです。近年の商店街のあ り方としてコミュニティ機能に着目した企画でしたが、従来からの本来的な商業機能への波及効果もね らい、学習室への来客者が協賛店の案内ちらしと特別デリバリーサービスを使って、飲食物を購入でき るようにしたのです。ここも教員の予想を大いに裏切り、教室開放の直前までで16商店からの協賛を 集め、そこに 3 年生全員からのカンパも加え、運営費を確保したのです。 ■広報・宣伝、会場準備 実施までの壁はまだ続きます。肝心の集客方法です。今回の企画は地元高校生を対象にしたので、商店 街の周辺高校、特に日立駅を利用することと進学校であるかどうかをポイントに高校を選定し、彼らの 母校も含め周辺4校へ直接宣伝に行きました。高校の掲示板にちらしを貼ってもらいましたが、在学生 への積極的な広報は困難だったようです。最近の学生さんらしく Facebook と Twitter といった SNS もフ ル活用でした。あとは知り合いを通じた口コミによる草の根広報活動です。実際、広報・宣伝を始めたと き、教室開放まで 1 週間を切っていたため、極めて短期間の広報でした。前期の講義期間の中で企画から 会場確保、資金調達、実践、事後分析と報告まで全てを行うこと自体に限界があり、広報に十分な時間を 使うことはできませんでした。開店日2~3日前から空き店舗の掃除、内装、机・椅子の搬入、看板や協 賛店チラシの作成など、会場の準備も大急ぎで行いました。このような中、運命の開店日 7 月 1 日を迎 えたのです。宣伝不足もあり、実践班学生本人たちも本当にお客さんが来てくれるか不安そうでした。教 員サイドも、ここまでの成果だけで既に十分という気持ちもありましたが、多くのお客さんが来て彼ら の努力が報われて欲しいと祈るような気持ちでした。 SNS(Twitter、Facebook)による宣伝 商店街協賛店の案内・デリバリー受付コーナー ■茨大生による無料学習室の開放 7 月 1 日(火)17 時、いよいよ学習室の実践・開放の日を迎えました。学習室の名称は「At a Mall~あ ったまる」に決定。始まる前からそれまでの準備で既に班員学生は疲労困憊の様子でした。担当教員・TA も開放時間の少し前に会場に向かいました。開店 30 分前にはすでに2名の高校生が入口前で開店を待っ ていました。草の根口コミの成果のようでした。開店後、少しずつですが新たな高校生が来室し、実践班 である大学生と楽しく談笑しながら、翌日の高校での定期試験に向けた勉強をしていました。初日は 5 名 の高校生が来室。短い広報期間にも関わらず初日から来客。地元高校生のニーズに対する彼らの仮説を さっそく証明してみせたのです。 学習室はトータル 1 週間の開放なので、あと 6 日間続きます。翌日からも彼らは集客の手を緩めませ ん。学習室を走らせながら、一方で追加の広報作戦も展開します。場所が分かりづらいという意見を聞い たので Facebook 上で各高校からの詳細な経路を地図で示したり、各高校からの帰宅学生に路上で宣伝し たり・・・、既に一授業の枠を超え、やるからにはトコトンやる覚悟と、一方で疲労も限界まできている が実際の来客を見た後の彼らの誇らしげな顔、楽しそうな姿を見て、教員サイドも彼らの活動を誇らし く見守りながら、どこまで成功するか非常に楽しみになっていました。教室開放の直前には大学の広報 室にも宣伝を依頼し、そのお陰もあって、地元ケーブルテレビ JWAY、FM ひたち、NHK 水戸、茨城新聞 の取材を受けることにもなりました。2 日目はなんと・・・15 名の来客!茨大学生のパワーと能力に脱帽 した瞬間でした。 7 月 4 日には JWAY、NHK で学習室の取り組みが放映され、放映をみた方の来室もありました。学生 達は連続取材に対応し、最後の方はすっかり取材慣れしていました。雨天の時など客足が止まった日も ありましたが、土日も含め、最終的にはトータルで53名の利用でした。大成功です。途中、実践班以外 の学生さんもヘルプで講師役を務めてくれていました。なお、中には NHK ニュースなどをみて利用した 小学生もいました。 来室した高校生にアンケート調査も行っており、ほとんどの人が企画内容に肯定的で満足して帰って いきました。今後も続けてほしいという要望も数多くありました。実践班のねらい通り、単なる学習スペ ースとしての機能だけでなく、現役大学生と直接話ができ、今後の進路を考えている高校生にとって、大 学で学ぶ内容や授業のこと、生活の様子などを聞けることも大きなメリットのようでした。 学習室の様子 勉強を教えている様子① 勉強を教えている様子② ■ワークショップの開催 学習室の開放だけではなく、7 月 6 日(土)の午前には「商店街と学ぶ~茨大生がつくるシェアスペー ス」と題してワークショップも開催しました。目的は、地元商店街、周辺住民、市役所、学生といった多 様な関係者と、今回実践した学習室の内容や今後の展開可能性について議論を行うことです。この企画 も実践班の学生自身が行い、土曜の午前だけ学習室をお休みにして、このワークショップを開催しまし た。こちらも積極的に広報を行い、結果 20 名の参加者を集めることができました。最初に、昨年度取り 組んだ学生(4 年生)から過去の経緯や提案した活性化方策の概要を紹介し、次に今回の実践内容につい て実践班から紹介を行いました。その後、円卓を囲んで、実践班の 2 名がファシリテータとなって議論を 展開しました。議論は盛り上がり、最終的には今回のアイデアの可能性と今後への期待を共有しつつ、本 格的に継続運営するためには色々な課題があること分かり、それに対する新たなアイデアも多く出され ました。詳細は別の機会に譲りますが、1 年を通した中高生の学習室へのニーズや提供すべきサービスの 内容は何か、大学生が先生役で参画するインセンティブが欲しい、大学生と高校生の交流という面では 他の大学学生にも来て欲しい、大学の夏休み時は日立へ帰省する大学生も参加可能、スペースの提供を 含め地域、商店街、市、大学、学生が連携して事業化し、地元の活性化に繋げるべき、といった意見が出 ていました。ワークショップの運営自体も実践班学生にとっては貴重な体験だったようです。 ワークショップの開催内容を伝える新聞記事(出典:茨城新聞 2014 年 7 月 15 日朝刊) ■今後の展開 7 月 23 日の最終成果発表会では、商店会の方・地元地域計画のシンクタンクの方なども招き、他の班 (調査分析班・提案班)の発表も含め、実践班からの報告も行いました。今回の企画・実践の成果と分析、 また、今後の展開に向けた課題と対策についても考察してまとめています。これらの内容は別途報告書 などでまとめたいと考えています。今回は失敗覚悟で臨んだ実践班の試みでしたが、初年度から地域の 関心を強烈に惹きつける程の成果を出す結果となり、ひとえに学生諸子の能力と努力の賜物でした。一 方で、実践班の学生は当該授業以外の授業や課題、実験等を行いながら、その空いた時間で上記のような 活動をしており、相当な負担であったことは確かです。貴重な経験であったとは思いますが、そのような 負担の上に成り立っていた成果でもあります。その他にも授業の一環でやるには様々な課題もあります。 大学と地域の連携、それによる地域の活性化が謳われて久しいですが、今回の演習授業の成果は、地域に とっての大きな交流人口たる大学学生が、地域連携の中でどのように貢献することが可能なのか、学生 自身が何を学べるか、高校生と大学生さらには地域の老若男女の交流がどのように促進され地域がどう 活性化できるかなど、今後の大学と地域の連携を考える上で大きな参考となるのではないかと思ってい ます。今年度は試験的に実践を試みましたが、次年度以降どうするかは今年度の成果を踏まえて検討中 です。地域の方々との意見交換の場でのご意見も踏まえて今後の展開を考えたいと思います。 最終成果発表会の様子 学習室の実践終了後の記念撮影(実践班メンバー。学習室前にて。) 文責:平田輝満(茨城大工学部) 茨城大学工学部授業「都市システム設計演習Ⅰ」・茨城大学推進研究プロジェクト 参画者 金利昭・茨城大学工学部教授 山田稔・茨城大学工学部教授 熊澤貴之・茨城大学工学部准教授 平田輝満・茨城大学工学部准教授 一ノ瀬彩・茨城大学工学部助教 原口弥生・茨城大学人文学部准教授 乾康代・茨城大学教育学部准教授 田鍋一樹・茨城大学工学部社会人博士 相馬嵐・茨城大学工学部都市システム工学科 3 年生(本報告書作成協力) 守谷健・茨城大学工学部都市システム工学科 3 年生(本報告書作成協力) 茨城大学工学部都市システム工学科 交通・地域計画研究室 博士前期課程学生一同(TA) 茨城大学工学部都市システム工学科 3 年生一同 小山修・日立市産業経済部商工振興課 北見孝之・日立市産業経済部商工振興課 佐藤洋一郎・パティオモール商店会会長 久保田時治・株式会社常陽産業研究所フェロー (敬称略.順不同.2014 年 7 月現在の所属)
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