情報社会〔情報・メディア〕 執筆者〔情報社会〕 小林弘忠(こばやし

情報社会〔情報・メディア〕
▽執筆者〔情報社会〕
小林弘忠(こばやし・ひろただ)
セコム(株)顧問・立教大学非常勤講師
1937年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞東京本社メディア編成本部
長を経て、現職。著書は『新聞記事ザッピング読解法』『新聞報道と顔写真』『巣鴨プリズ
ン』『ニュース記事にみる日本語の近代』など。
◎解説のフォーカス〔情報社会〕
環境整ったユビキタス社会
●ブロードバンドが本格化し始めた。DSL(デジタル加入者線)の利用者は300万人
を突破、光ファイバー、CATVともども速さと安さで競争している。一方、街角では無
線LANを使う人の姿も目につくようになった。携帯電話も音プラス映像へと内容充実を
競い、IP(インターネット・プロトコル)技術の進展で、通信の規制緩和にも拍車がか
かり、便利さに磨きがかけられている。
●2003年には電子政府・電子自治体が実現し、24時間どこからでも政府、自治体と
やりとりができ、生活に関連のある身近な申請、届け出が自宅でも可能となる。その03
年は、「鉄腕アトム」が生まれた年だ。「アトム」は、03年を起点とした未来の物語だっ
たが、インターネット利用者が5500万人を超えた現在、夢物語ではなくなり、ユビキ
タス時代といわれる情報社会は環境が整ってきている。
●しかし、法規制も厳しくなってきている。プロバイダ責任法、迷惑メール規制法が02
年に施行された。個人情報漏洩も心配だ。こうした法規制だけではなく、02年にできた
インターネット倫理機構のような自主的な機関による側面からのバックアップもますます
必要となっている。
★2003年の新語〔情報社会〕
★MVNO(Mobil Virtual Network Operator)〔情報社会〕
仮想移動体通信事業者。総務省は、周波数の割当てを受けず第1種通信事業者から通信卸
(卸電気通信役務)を利用してユーザー向けに移動通信サービスを提供する事業者と定義
づけている。DDIポケットのように、PHS通信網の大口割引を使ってデータ通信して
いる事業もMVNOに入る。移動体通信分野では、周波数の制約から事業者数が制限され
寡占状態になる傾向にあるので、総務省はMVNO事業を推進していく方針で、事業化の
ためのガイドラインをつくり、届け出だけで参入が可能となる。電気通信事業法改正(→
別項)によって自由参入が認められればMVNOは加速されそうだ。
★準天頂衛星〔情報社会〕
高度3万6000キロメートルを回る3機の人工衛星を打ち上げ、そのうちの1機をほぼ
日本の真上(天頂)を常時飛ぶ次世代通信衛星。BSやCS放送の中継をうけもつ静止衛
星も同高度を回っているが、準天頂衛星は軌道面が静止衛星より45度傾き、この軌道に
3機を120度ずつずらして打ち上げると、うち1機は必ず日本のほぼ真上を通過する。
静止衛星の仰角は地上から約40度なので、ビルなどに妨害されて電波が届きにくいが、
準天頂衛星は仰角70度なのでまんべんなく電波を送れる。感度のよい自動車放送、精度
の高いカーナビゲーションの実用化が期待できる。2008(平成20)年打上げの予定
だが、05年には超高速インターネット衛星WINDSも打ち上げられ、インターネット
も衛星利用時代に入る。
★システム障害〔情報社会〕
コンピュータシステムの不具合、設計ミスなどで命令どおりにコンピュータが作動せず、
思わぬ事態となる障害で、最近ではみずほフィナンシャルグループの銀行統合(第一勧業、
富士、日本興業銀行)にともなう混乱で話題となった。みずほ事故では、2002(平成
14)年4月1日業務を開始したが、異なった3つのシステムを急遽統合したため障害が
起きてシステム上にエラーが生じて口座振替が不能状態となったうえ、つぎはぎシステム
の欠陥で混乱が増大したとされている。
★イーバンク銀行(e-bank bank)〔情報社会〕
個人のメールアドレスだけでネット上で送金できるインターネット専業銀行。通常必要な
相手先の銀行・支店名、口座番号が不要で、メールアドレスがわかっていればそのアドレ
スが口座を識別してくれるところがネットバンクと違った特徴。送金は従来型の送金方法
がとられるのでネット・ハッキングのおそれはない。2002(平成14)年夏、日本で
もアメリカの決済専門プロバイダと提携した通信、商事会社出資による第1号のネット専
業銀行が開業、今後盛んとなりそうだ。
★インターネット倫理機構〔情報社会〕
若年層の教育には不適切な情報に業界標準のガイドラインを策定し、青少年が簡単にアク
セスできない技術の確立を図るためにインターネット関連業界、有識者でつくられた新し
い機構。アダルト、暴力、犯罪情報などが対象で、年齢別などの条件でサイトへの接続制
限ができる認証手段が検討されている。ゲーム店などでは、未成年者の身元確認に個人の
IDと会員証を共通化することを想定し、将来はプロバイダやコンテンツ配信企業が自主
的に年齢制限を設ける。有害情報の防御手段にはフィルタリングソフト(→別項)があり、
警察庁調べではネット利用の7割の学校が導入、経済産業省外郭団体のインターネット協
会はサイトを格付けして基準を設定している。しかし、情報制限は表現の自由の問題とも
からみ、有害の定義、対象年齢設定も難しい。ネット倫理機構は、情報の遮断が目的では
なく、情報の流通を尊重しながら受け手の立場から制限しようというもので、表現の自由
の規制ではないとされている。
★迷惑メール規制法〔情報社会〕
携帯電話、パソコンに送りつけられる迷惑メールを規制するため特定電子メールの送信の
適正化等に関する法律(総務省所管)と改正特定取引法(経済産業省)が2002(平成
14)年7月1日施行された。この二つをいう。(1)広告、宣伝のための電子メール(特
定電子メール)の送信者は件名に「未承諾広告※」と表示、
(2)送信者の名前、電話番号、
受信拒否を知らせるアドレスをメールの冒頭に表示、
(3)受信拒否に対する再送信の禁止、
(4)架空のアドレスによる送信の禁止などが柱で、違反者に主務大臣は必要な措置を命
ずることができ、命令違反は50万円以下の罰金(総務省所管)、通信販売業者の命令違反
は300万円の罰金または2年以下の懲役(法人は3億円以下の罰金、経産省所管)とな
る。NTTドコモによると、1日約9億5000通の携帯電話メールのうち約8億通はあ
て先が存在しないものという。
★キー・ロガー(Key Loger)〔情報社会〕
パソコンのキーボードに入力した文字列をそのまま記録してしまう盗聴ソフト。ロガーは
ログ(log
記録)する者の意味。このソフトをパソコンに組み込み、他人が入力したあと
で記録を解析すれば個人情報も盗み出せハッキング行為もできる。盗聴は共有のパソコン
で行われる場合が多く、2001(平成13)年に東京都内のネットカフェ(インターネ
ットが使える喫茶店)のパソコンにキー・ロガーが仕組まれてパスワード、IDが盗まれ、
ネットオークションの詐欺に悪用された事件が起きている。01年秋に流行したウイルス
のバッドトランスBはパソコンに記録されているメールアドレス宛てにウイルスを送るだ
けでなく、キー・ロガー機能を組み込むようにもなっていた。
★シーモード(C-mode)〔情報社会〕
財布のように携帯電話で買い物をする自販機の電子決済の一方法。NTTの携帯電話(i
モード)サイトの携帯対応自販機シーモにアクセスし、個人認証マーク(ポイントパス)
を発行してもらう。次にシーモの読み取り機にポイントパスをかざして、入金してある金
額から支払額を操作し、指定した飲料水のボタンを押せば購入できる仕組み。iモードに
電子マネーを蓄積した決済で、商事会社、日本コカ・コーラと全国展開を始めている。
★CBT(Computer Based Testing)〔情報社会〕
筆記に代わってパソコンで入力して資格、語学の認定をするネット試験。マウスで回答す
る方式で、IT関連の資格試験から最近では英語のTOEFLや証券業界の外務員資格試
験、日本語能力検定などにもとりいれられるようになった。マウスでチェックしていくの
で合否がすぐに判定でき、今後増えていきそうだ。入社試験でもあらかじめ個別に与えら
れたパスワードで認証してもらい、どこからでも受験できるネット入社試験も増えるとみ
られている。
▲情報社会と生活〔情報社会〕
◆ユビキタス社会(Ubiquitous society)〔情報社会〕
原義は「あまねく存在する」という意味のラテン語。アメリカ・ゼロックスの研究所が提
唱したコンピュータ使用の概念に組み込まれて一般化した。家電製品のように、コンピュ
ータの存在を意識せず、コンピュータが生活環境の中に自然に溶け込んでいるという意味
に用いられ、現代はユビキタス社会といわれる。ネットワークで、必要な情報を時間、場
所を問わずに迅速に取り出せて活用できるコンピュータを自在に用いる社会だ。それには
安全性が確保されたセキュアな状態でなければならず、サイバーセキュリティ体制が前提
となる。
◆ユビキタスネットワーク(Ubiquitous network)〔情報社会〕
場所やどんな端末、ネットワークでも自在に使える通信サービス。ブロードバンド化、常
時接続が可能となったことで実現した。この環境に向けて、総務省は通信、放送、家電、
自動車業界と研究開発を進めている。例えば超小型のチップを製品につけることで、スー
パーマーケットのレジを通さなくても自動的に料金が払えるシステムや子どもの靴にチッ
プをつければ飛び出しても車が急停車できることなどが考えられている。有線、無線問わ
ずどこででも情報のやりとりが可能で、そのために通信プロトコルと標準化をめざしてい
る。
◆ユビキタスネットワーク市場規模〔情報社会〕
場所や手段を選ばずにネット環境が利用できるユビキタス社会の到来でユビキタスネット
市場の拡大も予想される。総務省の研究会は、2005(平成17)年の市場規模は30
兆円、10年は84兆円との数字をはじいている。研究会の報告では、超小型チップの開
発で自在なネットを構築し、非接触カードでどんな端末でも利用、どこからでもネットに
接続できればこの数字の達成は可能という。総務省は「ユビキタスネットワーキングフォ
ーラム」をつくり、産学官で推進していく。
◆高速ネット各国比較〔情報社会〕
経済協力開発機構(OECD)が2001年6月時点で各国のブロードバンド加入率を調
べたところトップは韓国で100人当たり13・9人、世帯普及率は4割近かった。カナ
ダ、スウェーデンがこれに続き、アメリカは第4位、日本は12位の0・94人。情報技
術で独走していたアメリカのつまずきがめだち、同議会では危機感が高まり普及論議が活
発となっている。
◆情報化投資の経済波及効果〔情報社会〕
総務省がまとめた2002(平成14)年版「情報通信白書」によると、00年の民間企
業の情報化投資は20兆8000億円で、その経済波及効果は38兆6000億円。投資
によって約149万人の雇用が創出された。情報化投資の設備投資全体に占める割合は2
3・5%で、10年間で倍増した。インターネット利用者は前年比18・8%増の559
3万人で世界2位(人口普及率は01年末で16位)、携帯電話インターネット利用率は7
2・3%で世界1位。
◆ブロードバンド競争(Broadband competition)〔情報社会〕
高速大容量通信の代名詞となったブロードバンドの通信サービスの価格、速度技術面での
競争が激化してきた。使い放題という魅力に加えて高速でさまざまな情報がやりとりでき
るので利用者も熱いまなざしをそそぎ、この分野は早くも戦国時代となってきた感がある。
100メガビットの光ファイバーによる通信サービスは月額5000円を切り、回線の均
一性に優れているCATVも同価格以下、300万人以上が利用しているDSLは200
0円台になった。IP電話を使う無線高速ネットも5000円で登場しており、ブロード
バンド市場は安(価格)・大(容量)・速(速さ)でしのぎをけずっている。
◆DSL利用急増〔情報社会〕
ブロードバンドのひとつ、DSL(デジタル加入者線)の利用者が2002(平成14)
年5月末で300万回線を突破した。01年以降7カ月連続で30万回線も増えてブロー
ドバンドの主流となった。現在、DSLの中心はデータを取り込む速度と送る速度が異な
るADSL(非対称デジタル加入者線)で、取込み速度は毎秒8メガビット(1メガビッ
トは100万ビット)、同1・5メガビットが主。月額の平均利用料が2000円台と世界
で最も低料金という価格水準が伸び率を早めている。高速回線による高音質、高画質の環
境も整い、インターネットでクラシック音楽を楽しむ「バーチャル・コンサート」もAD
SLで聴けるようになった。
◆ラストワンマイル(last one mile)〔情報社会〕
基幹ネットワークから利用者までをつなぐ通信回線の最後の1マイル部分をさす。基幹ネ
ットワークが高速化しても、そこから家庭までの回線が低速では意味がないことから、こ
のラストワンマイルが重要視されている。低圧配電線や数ギガヘルツの無線を使ったMM
DS(Multichannel Multipoint Distribution Service)という伝送技術もブロードバンド
社会では注目されてきている。
◆情報リテラシー(Information literacy)〔情報社会〕
インターネットから情報を得て、経済活動をする時代はコンピュータに対する能力が求め
られてくる。そこで、コンピュータへの能力度といったものが情報リテラシーといわれる。
狭義の意味では、コンピュータを自在に扱えるとの意味から、コンピュータリテラシーま
たはメディアリテラシーともいう。リテラシーとは、もともとは読み書きの能力のこと。
情報の取捨選択、評価、利用が情報リテラシーだ。
情報を分析して企業活動に役立てるには自在に情報を引き出せ、データを解釈でき、デー
タを加工できなくてはならない。コンピュータを単に扱えるというコンピュータリテラシ
ーから、自在に扱う情報リテラシーが重要といわれる。
◆デジタル・デバイド(Digital divide)〔情報社会〕
情報社会では情報機器を自由に操れる人ほど社会的に有利になる現象がみられるようにな
っている。情報機器によって生じる経済的格差をデジタル・デバイド(デバイドは境界)
という。1999年、アメリカ商務省が農村部は大幅にネット利用が遅れており、「ネット
ワークからの落ちこぼれ」と報告してから注目された。
◆量子情報通信(Quantum Information Communications)〔情報社会〕
光の波の性質を応用する光ファイバー通信に比べ、ネットワーク上で光子など素粒子の特
性を生かして情報を伝達する通信。現在の1000万倍以上の超高速通信が可能となる。
光子ひとつひとつに「0」か「1」のデジタル情報を伝送する技術なので、第三者がその
情報を盗もうとしても光子が偏光で変化するため送受信している人にわかる。データ盗用
が防げるのでサイバーセキュリティは飛躍的に向上するといわれ、総務省は2001(平
成13)年度から10年計画で産学官による研究会を発足、民間でもNTTなどが取り組
み、アメリカではIBM、AT&Tが研究を始めている。
◆ドメイン名登録訴訟〔情報社会〕
インターネット上の住所のドメイン名(例えば
.cp.jp)は早い者勝ちで使用できるが、
1998(平成10)年の信販会社のドメイン名をめぐっての訴訟で2000年12月、
富山地裁がこの種としては初判断を示して注目された。裁判は信販会社名のドメイン名を
取得した人を被告に、同社を原告にして争われた。判決は、有名企業のホームページにア
クセスする場合、社名が使われていると推測するのが一般的で、ドメイン名はインターネ
ット上の住所にすぎないとし、アクセスには検索エンジン使用が普通とする原告の主張を
退けた。ドメイン名は売買が原則禁止されているが、01年から登録制限が緩和され、日
本語ドメインも使われるようになった。
◆電子商取引推進協議会(ECOM)
(Electronic Commerce Promotion Council of Japan)
〔情報社会〕
電子商取引が活発になることを見越して、スムーズなルールづくりなどを決めるため産業
界、民間企業で結成している団体。2001(平成13)年4月施行された電子署名法(電
子署名及び電子認証に関する法律→「電子署名・認証法」)に対応するため、電子署名利用
者のシステム構築、利用ガイドラインをつくり注目されている。(1)企業が電子商取引を
する場合は、各人に渡される秘密鍵の複製は基本的に行わず、各人の責任で保管する、
(2)
企業は安全対策としてISO15408に準拠したソフトなどを使う、
(3)署名する際は、
電子署名の意味と署名範囲をはっきりさせる、などが内容。
◆行政ICカード(政府多目的カード)〔情報社会〕
国や地方自治体の証明書交付、許可証申請など行政サービスに使えるICカード。役所の
書類を電子化し、役所に行かなくても自宅のパソコンで書類申請できる電子政府が実現す
る2003(平成15)年度をメドに発行する。国民に個人番号を割り振る総務省の住民
基本台帳システムを行政機関が共通して利用、カード1枚で本人確認、個人記録に役立て
ようというものだ。官用だけでなく、買い物代金の決済にも用いようと01年秋、全国5
5市町村で200万枚のカードを配布して実験が行われた。現在では、住民票交付などは
役所に赴かなければならないが、今後はカード処理ですませられ、パソコンで申請しても
カードや暗証番号があれば本人と認定される仕組み。健康保険、介護保険、公立大学学生
証、公立図書館の利用証にも使われるが、カード利用で履歴が残り、プライバシーの侵害
になるとの心配も出ている。
◆モバイルICカード(Mobile IC card)〔情報社会〕
無線を利用したモバイル(移動体)端末によるインターネット利用で用いられるICカー
ド。携帯パソコン、携帯電話使用が活発となってきたため携帯端末でも認証、決済ができ
るカード。総務省が実験を始め実用化をめざしている。モバイル端末に通行証機能をもた
せ、端末を所持していれば認証できたり、出先で取引先と契約する際は金銭を移動しなく
ても決済できたりするモバイル端末+ICカード一体型の課金・決済機能をもたせるシス
テムにする。
◆電子チケット(Electronic ticket)〔情報社会〕
ICカードによってパソコンでも購入できるチケットのことで、音楽会、イベント券が必
要な人は、ICカードをパソコンやコンビニエンスストアのカード読取り機に差し込んで
希望する券購入のボタンを押すとカードにデータが記録され、代金は銀行口座やクレジッ
トで自動引落しされる。このICカードを持って会場に行き、JR発行の「スイカ」同様、
会場入り口の読み取り機にかざすだけで入場できる。チケット取次大手は、磁気式のカー
ド約30万枚を順次専用ICカードに切り換える準備を進めている。
◆ホームページ訴訟〔情報社会〕
保険契約をめぐって東京都内の男性が「保険契約者保護者協会」を名乗り「保険会社詐欺
事件」とのホームページを掲載した。同社は男性を相手にインターネットの公開差し止め
を求める仮処分を東京地裁に申請、同地裁は2001(平成13)年4月、保険会社の主
張を認め公開を禁止する決定を下した。男性が第三者を通じてホームページを公開するこ
と、同社を中傷する他の内容のホームページ公開も禁じた。匿名で企業を批判するホーム
ページが多い中で警鐘を鳴らした決定と注目された。
◆電子メール調停(Electronic-mail arbitration)〔情報社会〕
「商品が届かない」「高い値段を要求された」など増えているインターネット通信販売トラ
ブルを電子メールで仲裁、調停しようと経済産業省が実施をめざしている。現在は弁護士
をかかえる専門の紛争処理機関はなく、消費者は役所の相談室や日本通信販売協会の窓口
に苦情を持ち込むケースが多い。しかし、紛争解決までに時間がかかり、法的手続きも面
倒なため迅速に処理する機関が求められている。計画では電子商取引推進協議会(→別項)
に窓口を設け、アドバイザーが常駐、苦情があれば調停人の弁護士、学識経験者と電子メ
ールで連絡を取り合って解決する。
◆ワン切り/ツー切り〔情報社会〕
携帯電話で1回だけのコールがあって切れ、着信記録に残った番号に電話すると有料番組
につながってしまうワン切りという手口が広がっている。有料、有害情報番組に誘うため
で、2002(平成14)年には、この手口でわいせつな音声テープを流したとして3人
がわいせつ物公然陳列容疑で警視庁に逮捕された。ワン切りの初摘発だ。数万人がひっか
かり、数億円稼いでいたとみられている。最近は2度コールしてきて電話をかけてくるこ
とをねらったツー切り手口も現われ、携帯着信記録の悪用がめだってきた。
02年に阪神地区でワン切りによる大量発信で大規模な通信障害が発生、NTTは障害を
生じさせるおそれのある行為を禁止することを内容とする契約約款を改定、総務省もこれ
を認めた。その後、福岡市内でも大阪市のワン切り業者による通信障害が起きたため、N
TT西日本は同業者に約款改定後初の回線停止措置をとった。
▲電話通信の現状〔情報社会〕
◆電気通信事業法改正案〔情報社会〕
総務省の諮問機関、情報通信審議会が2002(平成14)年の最終答申で盛り込んだ対
策で、IP化が進む「脱電話時代」を見据えた措置。総務省は03年の国会に電気通信事
業法改正案を提出する。柱は、(1)第1種(通信回線・設備を自社で所有、全国規模で電
話、携帯電話、ネットサービスをしている事業者)と第2種(自社で所有せず第1種から
専用線を借りて回線サービスしているプロバイダなど)事業区分の撤廃、(2)通信事業参
入条件の許可制を登録、届け出制にする、(3)公衆網希望の事業者はNTT東西会社と協
議し、同社が応じないときは行政が協議開始命令を下せるなど。この改正で通信網のオー
プン化や競争が期待されるが、届け出項目が増え、かえって規制強化になるとネット業界
は反発している。
◆携帯電話・加入電話契約数〔情報社会〕
NTT東西会社がまとめた2002(平成14)年3月末時点の加入電話契約数は前年同
期比2・6%減の5074万で、97年の6146万をピークに減少し続け、携帯電話な
どの移動電話には00年3月に追い抜かれた。02年3月末の差は2400万に拡大し、
携帯電話は02年5月現在7000万を突破している。ISDNからDSLの切換えには
加入電話が必要なので今後加入契約は若干伸びそうだ。
◆携帯電話市場競争の激化〔情報社会〕
電気通信事業者協会の調べによると2002(平成14)年6月末の携帯電話の加入者数
は7071万台で、人口普及率では55・5%。同月現在の累計加入者はNTTドコモ約
4146万台、KDDI系au約1270万台、ボーダフォン系J‐フォンが約1267
万台で、毎月販売伸び率で熾烈な競争を演じている。コンテンツでもauが高速、大容量
の第3世代(3G)、J‐フォンが内蔵カメラ撮影写真をメール送信する写メールをそれぞ
れヒットさせれば、ドコモもカメラつきで高速の新機種「504i」シリーズで対抗、今
後はauは企業向けのデータ通信、J‐フォンは世界で使用可能の携帯、ドコモはテレビ
電話通信に力を入れ、競争はいちだんと熱を帯びていきそうだ。
◆ユニバーサルサービス基金(Universal service fund)〔情報社会〕
電話料金、サービスを全国同水準にするために通信事業者が資金を拠出する基金で、過疎
地、離島でも均一な電話網を維持するのが目的だ。NTT東西会社は全国一律サービスの
提供が義務づけられているが、過疎地などでは赤字となり、NTTだけが一律サービスで
他の事業者は収益性の高い地域を選んで事業を続けていけばNTTの経営をさらに圧迫す
る点が考慮された。総務省はアメリカ、フランスを例にDSL(デジタル加入者線)事業
者にも基金負担を求める方針をうちだしている。
◆NTTの光ファイバー開放〔情報社会〕
NTT東日本、西日本両社の光ファイバーを他の通信事業者に開放する問題。両社は全国
で7万9000キロメートルの光ファイバーケーブルを敷設、全国シェア85%を占める。
これまで他の通信事業者に貸出しはしなかったが、e‐Japan(→別項)計画を進め
る政府は高速ネット実現のため開放を求め、アメリカ政府も通信の閉鎖性を指摘していた。
NTTは方針を転換して貸出しを認める方針をとり、DSL事業者とのあいだで賃貸契約
を旧郵政省に申請、同省も認可した。設備投資の力がない通信事業者もNTTの全国網が
使えることになれば大容量通信が加速され、低料金競争も期待されている。
◆卸料金制度〔情報社会〕
企業が専用線を使う場合、NTTに専用線の回線料金を支払うが、他の通信事業者が専用
線を用いるときも同料金を支払うので、インターネット接続業者はメリットが少なくなる。
これを直そうという制度。現在、通信回線をもっていない第2種通信事業者約7000社
はNTT東西地域会社の市内網に自社の回線を接続する方法でしか利用者に通信サービス
提供はできない。一般企業向け料金より安くなれば、2種業者はNTTから回線を借りて
の企業向けサービスも可能で、競争原理から通信料も安くなる。アメリカでは卸専用線料
金制度を採用、通信業者には企業より約2割引いて回線を販売している。
◆IP電話競争(IP telphone competition)〔情報社会〕
IP電話は、データをこま切れにして送るIP(インターネットプロトコル)技術を使っ
て音声をやりとりする電話で、2001(平成13)年春にフュージョン・コミュニケー
ションズが全国一律料金で150万人の加入者を集めた。有線電話は通話ごとに回線を占
有するが、IP電話は音声を小さなデータに分割、インターネット網を利用して送る。複
数の人が回線を共有しながら音声のほか画像などさまざまなデータを同時に送受信でき、
料金も安いのが特徴だ。次世代電話の本命とも目されている。パソコンと接続している家
庭に引き込んだADSL(非対称デジタル加入者線)を、ターミナルアダプターという機
器を経由して電話機につなぎ、これを通して一般電話との間で通話する。あるいは家庭の
電話機から交換機まではNTT東西会社の回線を使い、途中をIP電話専用線でつなぐこ
ともできる。KDDIが02年10月からADSLサービス利用者を対象に開始、NTT
グループも交えて、価格の低廉なIP電話サービス合戦が激化しそうだ。総務省はIP電
話用に050の番号を割り当てる。
◆マイライン(My-line)〔情報社会〕
2001(平成13)年5月から始まった電話会社事前登録制度(優先接続制度、電話会
社選択サービス)。利用者はマイライン事業者協議会加盟13社の中から市内、県内・市外、
県外、国際の4分野で会社を選択、番号を登録しておけば「00XY」のような電話会社
の識別番号をダイヤルしなくても、選んだ会社を通じて通話できるので便利になった。
◆携帯電話番号ポータビリティ〔情報社会〕
契約している携帯電話会社を変えても電話番号を変えないで済む制度。固定電話ではすで
に導入されているが、総務省は2003(平成15)年から携帯電話にも本格導入する。
さらに携帯電話会社を変えると電話機も買い換えなければならない不便さを解消するため
に1台でどの会社のサービスでも受けられる技術の標準化もめざす。世界的にもメーカー、
プロバイダがさまざまなOS、アプリケーションを採用、異端末では交信できないケース
が多いので、標準仕様を決める業界団体OMA(オープン・モバイル・アライアンス)が
各国の約200企業が参加して設立され、オープンな環境づくりを図っている。
◆Lモード(L-mode)〔情報社会〕
NTT東西地域会社が開発した家庭電話機を用いた新サービス。Lは、英語の「Living(生
活に役立つ)」
「Local(地域に密着した)」
「Lady(女性と家族のために)」を意味している。
プッシュホンの画面をより拡大し選択ボタンもつける。2∼3万円のLモード電話を使用
し、月額300円程度の料金を支払えば、市内料金でインターネット、メール送受信、ネ
ットバンキングなどができる。
◆次々世代携帯電話(第4世代携帯電話)〔情報社会〕
超高速でハイビジョン映像はじめ高画質の動画を送受信できるネットワーク携帯電話。次
世代携帯電話(→別項)のサービスが2001(平成13)年から開始されているが、次々
世代は現行携帯電話の約1万倍以上の通信スピードがある。CDアルバム1枚なら1分以
内、映画でも3分で配信可能。05年をめどに実用化の計画で準備が進められている。総
務省は通信コストが現在よりも安いインターネット電話のシステムを採用する。05年に
まず30メガビット、10年には100メガビットのスピードを実現、その技術やネット
ワーク専用閲覧ソフトの開発のため電話各社、電機産業会社で組織するモバイルインター
ネット推進協議会をスタートさせている。現在の携帯電話端末には互換性はないが、次々
世代では互換性をもたせ、利用者が買い替え費用を節約できるようにする。
◆次世代携帯電話(第3世代携帯電話)〔情報社会〕
同一周波数で多くの通話ができデータ通信が速く、高速、大容量で世界各地から受発信も
可能なIMT‐2000(International Mobile Telecomunication-2000)という国際規格
に合わせた携帯。NTTドコモとKDDIが2001(平成13)年秋に登場させた。通
信技術にはNTTドコモの日欧方式(W‐CDMA)とKDDIやアメリカが採用してい
るcdma2000式がある。NTTドコモのサービスは通信速度が40倍アップ、KD
DIのは大容量と利用地域の広さに特長がある。次世代はICカードの一種で個人情報入
りUIMカード(User Identity module card)を搭載、カードで個人認証と取引決済もで
きる。携帯端末から情報家電、パソコン、カーナビゲーションなどの端末にも利用でき、
IPv6(→別項)が開発されると、端末を通して遠隔操作できる。普及には仕様標準化
が必要のため総務省はルール化を検討している。
◆携帯電話決済システム〔情報社会〕
携帯電話を暗証番号の入力キーに使って決済するシステム。カード式電子マネーが不人気
なところから開発が進められている。自動販売機には利用されているが、飲食店の支払い
もできる電子財布にしようとの計画だ。KDDIは携帯でコンサートチケットを予約、決
済しその携帯を会場に持参するだけで入場できるサービスを実施している。携帯が財布の
代用になる日も遠くないが、規格統一、手数料問題など課題は少なくない。
◆iモード(i mode)〔情報社会〕
iモードはNTTドコモが1999(平成11)年春開始した携帯電話新サービスで、イ
ンターネットに接続することができるのが特徴。iモードの
i
はインターネット
(internet)、インタラクティブ(interactive)、インフォメーション(information)、を意
味している。iモード携帯電話を購入し、同社に登録すれば携帯電話で電子メール交換、
ホームページ閲覧、銀行振込みなどもできる。専用技術は不要で、対象金融機関も増えて
いるので利用価値は広がり、ドイツなどヨーロッパでもサービスが始まった。
▲サイバーセキュリティの確立〔情報社会〕
◆サイバーセキュリティ(cyber security)〔情報社会〕
サイバー(電脳空間)への不正行為は、(1)侵入(目標のコンピュータに侵入して管理権
限を奪う)、(2)ステップ(他のコンピュータに侵入、そこを踏み台にして目標のサーバ
ーに入り込む)、(3)改ざん(入り込んだコンピュータのデータを改ざんする)、(4)漏
洩(侵入して情報を盗み出したり、内部の情報を漏らす)、(5)なりすまし(他人のパス
ワードを盗んだりしてその人になりすます)、(6)メール爆弾(大量のメールなどを送り
つけ、コンピュータをまひさせる)、
(7)ウイルス(ウイルスのついたメールなどを送り、
情報を破壊する)などがある。つまりサイバー被害は、(1)機密の喪失、(2)情報の破
壊、(3)保存の喪失、(4)不正コピー、に分けられる。セキュリティ対策は、以上のこ
とを考え、不正侵入防止策と予防・検知策、監視策を講じなければならないことになる。
不正侵入防止策はコンピュータ管理者をおいて、アクセス管理、アクセス防御を施すなど
不正に対する直接対策だ。予防・検知策は、パスワード管理、ウイルスのワクチン管理、
コピー防止管理など。監視策はセキュリティ監視、教育などで、いずれも間接対策といえ
よう。
◆サイバーセキュリティ調査〔情報社会〕
総務省が民間企業(東証1、2部全企業2063社対象、有効回答541)に対して20
02(平成14)年実施した。ウイルス予防ソフトは95・1%、ファイアーウォールは
86・9%が導入しているが、侵入検知ツールは17・6%、データの暗号化は33・1%
の実施率で、セキュリティポリシー(→別項)の策定はわずか28・5%という結果だ。
ウイルスや不正侵入の防護はまずまずだが、高度情報社会に向けての根本的なセキュリテ
ィ対策の遅れが浮き彫りにされた。
◆ウイルス実態調査〔情報社会〕
情報処理振興事業協会(IPA)が国内初のコンピュータウイルス実態調査を実施して2
002(平成14)年にデータをまとめた。全国5000の事業所を対象(回答は176
9)に、01年中の感染率、被害額などをまとめたものだ。被害総額は3億3000万円、
平均感染被害額は51万円、1件当たりの平均逸失利益16万円、平均感染率36・7%
という結果。世界6カ国中の感染率順位は4位、感染被害額順位は2位。感染率の高かっ
たウイルスはニムダ、バッドトランスだった。
◆電子署名・認証法(electronic signature / certification low)〔情報社会〕
正式には電子署名及び認証業務に関する法律。通産(現経済産業)、郵政(現総務)、法務
3省が2000(平成12)年4月国会に提出、01年4月より施行。電子ハンコを法的
に効力があると認め、不正防止を図ると同時にインターネットによる電子商取引(eコマ
ース)のバックアップ体制を整え、eコマース市場を活性化するねらいがある。
情報をやりとりする人が間違いなく本人であることを法律で認めようというもので、今後
は電子署名が現在の押印、署名と同じように、「私文書は本人又はその代理人の署名又は押
印があるときは、真正に成立したものと推定する」(民事訴訟法第228条第4項)記録の
証拠として効力をもった。具体的には情報交換者の本人を証明するハンコ登録の役所に相
当する電子認証機関を設置する。例えば企業同士の取引では、商業登記簿謄本などで実在
する企業であれば、認証機関から本人証明である電子証明書(デジタル証明書)が発行さ
れる。情報は公開鍵暗号方式で暗号化してやりとりする。公開鍵暗号は、秘密鍵と公開鍵
からなり、秘密鍵は実印、公開鍵が印鑑登録証明書に相当する。この鍵を使って取引すれ
ば、第三者によるなりすましを心配しなくてすみ、詐欺行為も防げる。
◆ネットワーク犯罪(Network crime)〔情報社会〕
警察庁がまとめた2001(平成13)年のインターネットを悪用した検挙件数は712
件で、前年比228件増。児童買春・児童ポルノ法違反が2倍強の245件、特に児童買
春事件が117件(前年は5件)と急増したのが特徴。ネット利用の詐欺事件も倍近くの
103件(同53件)で、うちネットオークション詐欺が60%を占める。コンピュータ
不正アクセスも含めると警察のネット相談受理件数も前年比55%増の1万7277件と
なっている。
◆不正アクセス犯罪(Injustice access crime)〔情報社会〕
警察庁調べによる2001(平成13)年の不正アクセス認知件数は前年1147件も大
幅に増えて1253件(海外からが448件、国内258件、その他547件)となった。
ホームページの書き換えが813件と激増している。不正アクセス禁止法が00年2月に
施行されても跡を絶っていないのが現状だ。被害を受けたのは企業が429件でいちばん
多く、次いでプロバイダの182件。検挙件数は前年と同数の67件。手口はパスワード、
IDを盗むケースが最高で、管理の甘さが不正アクセスを助長させている。一方、情報処
理振興事業協会(IPA)調べのコンピュータウイルス届け出数は2万4261件で前年
比2倍以上、02年1∼6月の届け出もすでに1万1569件で過去最悪の情勢だ。感染
するとウイルスつきのメールを大量送信するウイルスが多く、同年3月には「クレズ」と
いう新種が流行した。
◆偽造カード犯罪(Forgery cardcrime)〔情報社会〕
日本クレジット産業協会の調べでは2000(平成12)年現在のクレジットカードの利
用枚数は2億3168万枚、01年の不正利用による被害額は275億7000万円で、
被害は前年比33億円ほど減った。しかし、偽造カードによる被害金額は6億円以上増え
ている。カード端末機に機器を仕掛け、カードの磁気データを吸い取って偽造するスキミ
ング手口も横行、カードのIC化が急がれている。
◆サイバーフォースセンター(Cyberforce center)〔情報社会〕
警察庁が2002(平成14)年4月開設したサイバーテロ対策の中核で、重要インフラ
などを24時間監視する施設。電脳部隊といわれるサイバー専門班のサイバーフォースは
前年札幌、仙台、大阪、福岡などにつくられ、専門知識をもった約60人がテロ発生時に
は被害現場で被害回復、サイバーテロ追跡にあたっている。サイバーフォースセンターは、
各地のサイバーフォースの司令塔で東京に設置されている。インフラ施設、行政機関など
約430カ所の同時多発テロの監視をするととともに、テロが発生すればサイバーフォー
ス専門班を指揮する。
◆サイバー安保〔情報社会〕
「サイバー攻撃対策特別行動計画」に基づく政府のサイバー安全保障対策。政府は内閣に
IT戦略本部(本部長・総理大臣、本部員は主閣僚)を、下部機構に官民で構成する戦略
会議をおいて官民連携の確立体制ができた。セキュリティについても民間有識者による部
会がつくられた。サイバー安全保障とは、サイバースペース(電脳空間)への攻撃の対処
法で、例えば防衛庁のサイバースペースに攻撃をしかけられると国防上重大な影響をあた
え、情報通信、金融、電気、鉄道などインフラへの被害は国民生活を混乱させるので、水
際の防御と攻撃時の政府の対応策だ。
◆情報ネットワーク法学会〔情報社会〕
インターネット上の犯罪や個人情報保護などネットワークと法体系の調査研究をする学会。
2002(平成14)年7月に発会した。発起人代表は苗村憲司慶応大学教授。学者、弁
護士、通信事業者、官庁職員らが会員となり、政府に対する提言もする。
◆サイバー犯罪防止条約(Prevention treaty of cyber crime)〔情報社会〕
インターネットを通したサイバー犯罪を国際的に防止する条約で、日本も2001(平成
13)年末に批准した。サイバー犯罪に関しての初の国際条約。ネットを悪用した不正行
為を各国の国内法で犯罪として位置づけることを加盟各国に義務化、捜査機関の連携、接
続事業者(プロバイダ)の通信記録保存の義務づけ、個人情報保護、犯人引渡しなどが盛
り込まれている。携帯電話まで含むあらゆる電子データが証拠収集の対象となり、さらに
通信記録の開示など国内法にないことも取り決められており、法整備が今後の課題となっ
ている。
◆日本ネットセキュリティ協会(JNSA)
(Japan Network Security Association)
〔情報
社会〕
ネットワーク環境整備を目的に設立された団体。日本独自の安全規範をつくるのをテーマ
に、技術、政策、マーケティングの3部会を設置している。業種が多岐にわたっているた
め、これまで統一、横断的な組織がなかった。増加が予想されるサイバーテロに備えるの
と、技術用語統一、独自のセキュリティポリシーづくり、相互接続の評価試験環境提供、
PKI(公開鍵基盤)の技術研究、不正アクセス対策などに取り組む。
◆セキュリティ評価認証制度〔情報社会〕
セキュリティ評価と認証を希望する企業は、ISO(国際標準化機構)の基準に基づく体
制をつくり、これを評価機関が評価、認証機関が審査して「お墨付き」を与える制度。日
本は遅れているが、欧米では整っている。イギリスは特に進んでおり、国内規格にBS7
799(→別項)という認証システムがある。国際的にはアメリカ・イギリスなど6カ国
が94年コモン・クライテリア(CC)名の統一評価認証基準をつくり、98年にはIS
O15408として国際標準化されている。
◆クリプトレック(Cryptrec)〔情報社会〕
暗号技術の評価を推進するために政府の委託を受けた暗号専門家による団体。暗号技術評
価委員会とよばれる。2003(平成15)年度をめどに構築される電子政府に向けてセ
キュリティを確保するのを目的として発足した。暗号技術を公募して技術的、専門的に評
価、電子政府に最も適合した暗号技術を選定する。評価対象となるのは公開カギ暗号、共
通カギ暗号、ハッシュ関数、疑似乱数生成の4方式。暗号技術は、高度情報ネットワーク
社会の最重要問題だけに、継続的な見直しと国際的な標準化が課題となっている。
◆セキュリティ政策体系(security policy outline)〔情報社会〕
2000(平成12)年官公庁のホームページが不正侵入されたサイバーテロ事件は、イ
ンターネットの防護体制の不備が指摘された。サイバー社会を守るため警察庁がうちだし
たサイバーテロに対する強化策。官公庁サイバーテロ事件では、16件中6件が情報を大
量に送ることにより、誤作動させるバッファ・オーバーフロー(buffer overflow)という手
口が使われた。侵入者は大学のサーバーに侵入、さらにステップして官庁に侵入した。こ
のほか最近は目標のサーバーに連続してアクセスし、セキュリティホール(セキュリティ
の不備な個所)を丹念に探すポートスキャン、コンピュータが誤作動を起こしたスキに侵
入するDoS(Denial of service)攻撃など手口も悪質、巧妙になってきたためねばり強い
対抗策が必要となってきた。
◆セキュリティポリシー(security policy)〔情報社会〕
セキュリティ対策の中核をなすもので、セキュリティの方向性、範囲の設定を定める安全
性の理念。利用と禁止の範囲をどのようにするかが大きなポイントとなる。インターネッ
トとイントラネットなど社内ネットワークを接続するかどうか、接続すれば不正侵入の危
険性がふえるが、その場合安全性をどう保つかを策定するのがセキュリティポリシー。情
報システムをつくるうえで欠かせない理念だ。
情報システム作成の手順は、(1)計画、(2)構築、(3)運用、(4)分析、に分けられ
るが、セキュリティポリシーは計画段階で設定される。セキュリティポリシーは企業戦略
の一環ととらえられている。
◆セキュリティ投資(security investment)〔情報社会〕
ハッカーによるホームページの不正侵入、ウイルスによる被害など相次ぐサイバーテロに
よって官民にセキュリティに対する投資関心が高まっている。セキュリティに資本を投ず
るのが結局は経済効果を生むという意識からだ。このためセキュリティビジネスが新産業
として注目されている。不正アクセスを24時間、365日監視する「不正侵入監視サー
ビス」、同様の「ウイルス監視サービス」や不正侵入防止のための本人証明をする「証明書
発行サービス」を始めている企業やセキュリティ専門家を認定、ユーザーの定期検診を行
う企業もある。アメリカではセキュリティビジネスが育成されている。
◆バイオメトリクス(biometrics)〔情報社会〕
個人の生体的特徴をコンピュータの個人識別に用いようとする技術。本人の身体の一部を
利用した本人証明技術ともいわれる。建物の出入り、出退勤、パソコン、OA機器の本人
確認などに使われ、現在は指紋、掌紋、虹彩(黒眼の部分の模様)や顔、声などを登録し
ておいて、他人と識別する実験が活発となり、指紋照合による識別方法は、実用化されて
いる。これは同一ではない指紋によって識別しようとするもので、電子商取引ばかりでな
く、すでにマンションの出入り、企業の出退勤に利用されている。
◆フィルタリングソフト(Filtering Software)〔情報社会〕
有害サイトを遮断するソフト。経済産業省の外郭団体のニューメディア開発協会が無料配
布しており、教育現場で最近利用が増えている。全国の公立小中学校ではほぼ100%パ
ソコンが導入され、うち80%近くがインターネットに接続されている。児童、生徒がア
ダルト、カルト、暴力、殺人などのサイトを見る機会も増えているわけだが、このソフト
を利用すれば有害なキーワードは自動的に遮断され閲覧できない。家庭でも利用されだし
ている。
◆デマメール(circulate mail)〔情報社会〕
ウソのウイルス情報やニセの情報をインターネットにながして正常なネットの情報流通を
疎外する不心得者がネット上で横行して、情報処理振興事業協会(IPA)にも相談が増
えた。「ウイルスがデータを破壊するのでファイルを削除しなさい」との指示で本当は必要
なファイルを削除してしまった例や、「メールを転送しなさい」と受信者に転送を促すチェ
ーンメールも多い。インターネット情報は真偽がつかみにくく出所も不明。ネット上の出
所不明の情報はネットロア(ネット民話)ともいわれているが、今後デマメールの悪質化
が警戒されている。
◆デジタルマナー検定〔情報社会〕
財団法人インターネット協会が2003(平成15)年春からスタートさせる予定のネッ
ト作法の資格のための検定。企業内のネットに関するルール、マナーをチェックし、マナ
ー資格によって情報社会を側面からバックアップし、スムーズなネット社会をつくるのが
目的。新人研修のほか学生の就職活動にも役立てられると期待されている。
◆EIM(Employee Internet Management)〔情報社会〕
従業員インターネット管理といわれている。私的アクセスの低減によりコスト削減を図り、
企業データの流出も防ぐ一方で、勤務時間以外や自費でならアクセスできる多用な管理機
能をもったシステム。アメリカでは年間相当なコストを節減した例があり、有害サイトへ
のアクセスでウイルス感染被害を防止できるセキュリティ面にも効果があるといわれる。
2002(平成14)年開催のサッカーW杯で就業中の従業員がサッカーサイトをアクセ
スすると業務に支障をきたすおそれがあったことから注目された。
▲産業利用とシステム〔情報社会〕
◆電子政府・自治体法〔情報社会〕
役所同士の事務手続きを含め4万7000件もある国、地方自治体への申請、届け出、許
認可を電子化し、在留資格認定など面接審査が必要な222件を除きインターネットで申
請、届け出を可能にする法律。政府は2003(平成15)年度中に母子手帳交付申請、
国民年金手続き、住民票請求、婚姻届、税金の申告、納税手続きの95%オンライン化を
めざし、全国1万カ所に基礎技能サポートセンターを整備、5万人のIT専門家を養成す
る電子政府・自治体推進プログラムを策定している。しかし、自治体の財政赤字、要員不
足のうえに、住民基本台帳ネットシステム(→別項)の利用事務が264件と拡大され、
個人情報の保護問題が指摘されている。
◆知的財産戦略大綱〔情報社会〕
技術の発明、製品のデザイン、商品のブランド、音楽といった経済価値のある情報の権利
(知的財産権、知的所有権)は、日本では認識度が十分ではない。これまでの大量生産型
のものづくりから知的財産をいっそう保護し、基本特許、基礎研究面で国際競争力をつけ
るねらいで政府がまとめた大綱。官民学連携による知的財産増のための新技術の開発、製
品、サービスの付加価値向上を図り、2005(平成17)年度までに知的財産について
の制度改革に取り組む。
◆IT国家戦略〔情報社会〕
政府のIT戦略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)が2001(平成1
3)年に発表した日本のIT化指針。(1)低料金インターネットを01年に実現、(2)
05年までに1000万世帯に光ファイバーの超高速ネットを、3000万世帯にDSL
(デジタル加入者線)やCATV回線の高速ネットインフラを整備、(3)06年に地上波
デジタルテレビを全国で普及させるという内容。06年に光ファイバーやCATV回線網
で、動画情報も常時提供できるようにする計画で、この戦略のもとに、次世代インターネ
ット通信手順を高度化させてe‐Japan(→別項)化を推進、5年以内に世界最先端
のIT国家にする構想。
◆IT基本法〔情報社会〕
正式には高度情報通信ネットワーク社会形成基本法。情報通信技術による社会経済の変化
に対応し、高度情報通信ネット社会形成のための施策を迅速、重点的に推進することを目
的とした法律。2001(平成13)年1月に施行された。
同法は、高度情報通信ネット社会を「高度情報通信ネットワークを通じて多様な情報、知
識を自由、安全に世界規模で入手、共有、発信することで、あらゆる分野で活力ある発展
が可能となる社会」と定義づけ、そのためには全国民がネットワークを利用できる機会を
もち、情報通信技術の恩恵を受けなければならず、ここにネットワーク社会の意義がある
としている。それにはネットワーク拡充、コンテンツの充実、情報活用能力習得の推進、
公正な競争の促進、専門的人材の育成、規制改革、知的所有権の保護に基づいた電子商取
引、電子政府の確立と促進、ネットワークの安全性の確保などを基本施策としてあげ、こ
れらの施策で経済構造改革、雇用創出などを図る。施策を推進するのがIT戦略本部とI
T戦略会議。
◆e‐Japan基本目標〔情報社会〕
IT(情報技術)を普及するために政府のIT戦略本部が決めた2002年度の基本目標。
最高水準の通信インフラ整備(通信規制緩和、国、地方自治体の光ファイバー開放)、電子
商取引の推進(著作権保護システム整備、IT投資への税制優遇)、人材育成(全小中高校
の教室ネット化、地域ITリーダー25万人育成)、行政の情報化(公共事業の電子入札導
入)、ネットワークの安全性・信頼性確保(サイバーテロ対策の強化)の5分野でIT環境
の整備を掲げている。著作権保護としては、不正コピー防止システムの開発、著作権者と
放送局などとの正当な報酬獲得システムの構築があげられている。
◆情報管理システム構想〔情報社会〕
警察庁の捜査活動のための犯罪情報のオンラインシステム。組織犯罪の動き、データがす
ぐに検索でき、スピード捜査に役立てられる。組織の人員と実態、事務所、使用車両、電
話番号、過去のデータなどのデータベース化はほぼ完了、これを全国県警とオンラインで
結ぶ。将来は1260全警察署にも直結させる予定だ。
◆総合防災情報システム〔情報社会〕
各省庁、地方自治体、市民グループが所有する防災関連情報を一元化するネットワーク。
政府は中央防災会議内に「防災情報の共有化に関する専門調査会」を設置、内閣府に情報
を集約するシステムをつくる。現在もネットワークはあるが、各省庁バラバラで対応して
いる。総合システムができると情報が共有され、インターネットでもアクセスできる。
◆重要通信システム〔情報社会〕
テロや大規模災害など緊急事態の際、政府要人や自衛隊、警察、消防署に必ず連絡がつく
システム。総務省が整備にのりだす。緊急連絡途絶による対応遅れに対処するもので、緊
急時要人があらかじめ割り当てられた特別番号を押したうえ、相手のナンバーをかけると
携帯電話でもどこにでもつながり、混雑する電話にも影響されずに通信できる。アメリカ
ではすでに約800機関が独自の電話番号を割り当てられている。電話交換機の改良が必
要なので、実際に運用されるのは数年後になる見込みだ。
◆電子メール傍受法〔情報社会〕
サイバーテロやデジタル犯罪の急増で、電子メールを傍受する動きが世界的に高まり、イ
ギリスでは2000年10月に法律が施行された。アメリカでも立法化の準備が進められ
ている。イギリスの法律は、インターネットのプロバイダが、特定の送受信者のメールを
すべて傍受できる装置(ブラックボックス)をとりつけることを義務づけたほか、暗号で
送受信されるメールは、解読ソフトを捜査当局が入手できるとの内容。犯罪発生前に傍受
体制を整え、犯罪を早期追跡するねらいがある。
◆FTTH(Fiber To The Home)〔情報社会〕
光ファイバーを家庭まで引き込んだ超高速通信サービス。光ファイバーは通信会社によっ
て基幹網には使われてきたが、一般家庭への接続は世界に先駆けて2000(平成12)
年にNTTが実用化した。速度は毎秒最大100メガビット。02年4月現在の利用者は
約3万5000人(総務省統計)でDSL(→「ADSL」)には比較にならないが、前月
比32%以上伸びており、伸び率はDSLより大きい。将来はブロードバンドの主流とな
るとみられている。
◆光伝送交差点〔情報社会〕
警察庁が東京都23区内の幹線道路100カ所に設けた監視カメラつき交差点。これまで
も場所により監視カメラがあったが、雑踏用、車ナンバー撮影カメラで、主に電話回線送
信のため画面分析に時間がかかった。光伝送カメラはデジタルなので鮮明なうえリアルタ
イムで送信され、デジタル処理による画像の数値化、相互通信も可能。交通量、人出数な
どが計算でき、事故、事件のスピード対応に威力が発揮される。
◆VOIP(Voice Over Internet Protocol)〔情報社会〕
画像などを送るデータ通信回線と同じ回線に電話などの音声データの送信を統合するネッ
ト技術。別々の通信回線を利用していたデータと音声をインターネットに接続する機器が
対応する通信手段(IP)によって一緒に送る最先端技術だ。データと音声を信号に置き
換えてばらばらに送信、送信先で統合する。電話は通話ごとに専用回線が必要だが、VO
IPにすると交換局を経由せずデータの塊ごとに空き回線を利用して送れるので、(1)通
信網の効率化、(2)交換局を経由しないことによる低通信料化、(3)画像と音声を使う
ネットサービス化が可能。NTT、KDDIはブロードバンド(→別項)実現のためにA
DSLや無線ネットを使って実用化、2000(平成12)年末から01年にかけては国
内4CATV局と韓国ソウル市内を結んだ2万世帯対象のCATV網通話実験も行われて
いる。
◆位置情報サービス〔情報社会〕
PHSを徘徊高齢者に持たせ、行方がわからなくなった場合位置を確認する行政サービス
として発足したが、最近は全地球測位システム(GPS)と携帯電話の無線通信網を活用
し、徘徊高齢者、幼児ばかりでなく、盗難自動車、オートバイを発見する位置情報サービ
スが注目されてきた。GPSによるので、位置確認の誤差はなくピンポイントで発見でき
るのが特徴。インターネットや電話で位置確認の依頼があれば、すぐに検索して地図を送
付、要請に応じて警察に通報して警備員が捜索活動にあたるセコム方式が代表例。自動車
盗難は年間20∼30%の割りで増加、2002(平成14)年上半期でも2万5000
件に達している。
◆歩行者ITS(Walker Intelligent Transport Systems)〔情報社会〕
最先端の情報通信技術を用いて人、道路、車両を情報ネットワーク化し、事故、渋滞とい
った交通問題の解決を目的に構築する高度道路交通システム(ITS)はナビゲーション
の高度化、自動料金収受システムなど9分野で開発が進められ、歩行者ITSもその一環。
主に視覚、身体障害者、高齢者を対象に注意喚起、現在地確認、経路案内の三つが基本サ
ービス。携帯端末を所持していれば道路に埋め込まれた信号発信機からの位置情報を端末
が読み取り、「現在位置は○○」「5メートル先に段差」「最適な経路は○○」などと音声で
教えてくれる。2003(平成15)年度には実用化される。
◆ヒトGIS(Hito GIS)〔情報社会〕
航空写真測量、地図情報、位置計測技術を生かして、人体をデジタル化して3次元数値デ
ータとして管理する人体管理システム。骨や臓器など人体各部位の位置や病巣の座標値を
磁気共鳴断層像撮影装置などの人体画像を利用してGIS(地理情報システム)でデジタ
ル計測し、部位、病巣をビジュアルに表示、数値化する仕組みだ。体の内部を地図的にと
らえて病気を診断するわけで、経験則、感覚的な判断による診断からデータに裏づけられ
た治療ができる。医療現場、医療教育に役立てる。
◆無線LAN(Wireless Local Area Network)〔情報社会〕
光ファイバー、ADSL(非対称デジタル加入者線)などの通信網を市街地に引いてホテ
ル、駅、ファーストフードなどにホットスポット(→別項)を設置、対応機能カード内蔵
パソコンや携帯情報端末でインターネットを利用する方式。いつでもどこでもインターネ
ットに接続できる。高速で比較的安価なので次第に広がっている。モバイルEC、ユビキ
タスネットワーク(→別項)のひとつ。
◆モバイルEC(Mobil Electronic Commerce)〔情報社会〕
移動体通信、特に携帯電話によるEC(電子商取引)。携帯電話の多機能化で今後携帯電話
ECが活発になると予想されるが、電子商取引推進協議会(ECOM)は課題点として、
(1)
携帯電話紛失時の個人認証方式や本人以外利用できない仕組みの確立、(2)商品を手にと
れる実店舗販売との組合せの模索、(3)電波の届かない地域の決済サービス、(4)GP
S(全地球測位システム)と連動した位置検索によるローカル、リアルタイム情報の提供
などをあげている。
◆著作権権利情報集中機構(J‐CIS)(Japan Copyright Information System)〔情報
社会〕
マルチメディア・ソフトの著作権保護を目的に、文化庁が設立する新しい公益法人。文字、
データ、画像、動画、音声など多岐にわたる著作権を集中的に管理する目的で設立。
マルチメディアは文字、映像、音声などデジタル化された情報をコンピュータで融合する
システムで、複雑な流通経路をたどるため著作権の管理が検討課題だった。種類も膨大で、
しかも融合して利用されるため個々のソフトの著作者をつきとめて許諾を得るのは困難視
されてきた。音楽など著作権の集中管理が行われている分野では、権利者団体のデータベ
ースとJ‐CIS間にコンピュータを接続し、著作権の情報を検索できるようにする。
●キーワード〔情報社会〕
●ホットスポット(Hotspot)〔情報社会〕
光ファイバー、ADSL(非対称デジタル加入者線→別項)などの大容量通信網を引き、
LANケーブルを使わずに無線LAN(→別項)を使用して対応機能カード内蔵パソコン
や携帯情報端末でインターネットを利用する場所のこと。ホテル、駅、ファーストフード
などに設けられ、「街角LAN」が実現している。東京23区では200以上のスポットが
すでにできており、2002(平成14)年度内に拠点は1000に広がった。月額20
00円前後の安い料金で、毎秒最大11メガビットのブロードバンド環境が整ったこと、
基地局、機器対応の伝送コストが廉価になったこと、無線LANの利用周波数(2・4ギ
ガヘルツ)は免許不要なことが普及を後押ししている。電波がスポットから100メート
ルしか届かない弱点はあるが、第3世代の携帯電話に比べれば格安で高速。ただ電波は傍
受されやすく、セキュリティが心配な点、電波干渉によって不安定な通信となるおそれが
課題だ。
●プロバイダ責任法(Provider liability low)〔情報社会〕
インターネット上のプライバシー侵害、中傷などのトラブルをなくすため、プロバイダが
悪意ある情報を削除するのを認めた法律。2002(平成14)年5月27日施行された。
警察庁調べによる名誉棄損事件の検挙件数は01年42件で前年比12件増、警察への相
談件数は383件増の2267件で、年々数字は増えている。しかし、情報を勝手に削れ
ば「通信の秘密」もからんで発信者から訴えられかねない。そこで、(1)情報が他人の人
権を不当に侵している相当の理由がある、(2)発信者に削除の同意を求めて7日以内に返
答がない、のいずれかの場合はプロバイダは削除でき、損害賠償責任も負わない点が定め
られた。中傷された側は、発信者の住所、氏名を開示するようプロバイダに求めることも
できるようになった。しかし、人権侵害の判定基準が難しいのと、発信者の住所、氏名開
示はプロバイダの判断にゆだねられているので運用面では混乱も予想されている。
●BS7799(British Standard 7799)〔情報社会〕
イギリスの規格協会が作ったサイバーセキュリティ対策に関する規格。欧米ではサイバー
セキュリティ規格として広まりつつあり、ISO(国際標準化機構)はBS7799を基
準にして国際規格づくりを計画している。日本でも同規格の認証取得を目的としたコンサ
ルティングサービスが注目されだした。セキュリティ対策が万全でないと取引相手からの
信用が得られないためだ。電機、電子メーカー10社によって日本環境認証機構が設立さ
れ、2001(平成13)年3月にはBS7799取得のための認証・登録機関もでき、
セキュリティ規格意識が高まってきた。
●アジア・ブロードバンド(Asian broadband)〔情報社会〕
アジア地域の超高速インターネット網を整備し、共通基盤で電子商取引市場をつくる支援
事業として政府のIT戦略本部が整備をめざしている構想。アジア各国をネット化する情
報ユニオン計画。2005(平成17)年までに1000億円を投入、高速通信対応の新
通信衛星を打ち上げてアジアのネット化を図るが、02年度中に具体策を立案、03年度
には各国の大学、国立研究機関1000程度を高速ネットで結んで実験し、05年に超高
速ネット化する。言語問題解決のための自動翻訳ソフトの共同開発、技術者の育成と交流、
電子認証、電子署名の標準化を進める予定で、03年の世界情報社会サミットで世界にも
計画推進をよびかける。
●電子投票(Electric Vote)〔情報社会〕
2002(平成14)年6月23日、全国に先駆けて岡山県新見市の市長・市議選は電子
投票で行われて成功、「民主主義の土台のIT化」と話題となった。集計時間はわずか25
分、集計要員は2人(前回は85人)、市長選は1時間、市議選は2時間半開票が短縮され、
無効、疑問票はゼロという結果だった。同市の方式はタッチパネル式。投票カードを受け
取った有権者が液晶画面の投票機にカードを差し込むと画面に候補者と政党が表示され、
備付けのタッチペンか指で名前にふれると確認画面に変わる。「投票する」を選べば操作は
終了、カードを抜き取って返却する手順だ。新見市に続き、広島市、宮城県白石市でも電
子投票に移行する。法律的には電子投票法(電磁的記録式投票特例法)に基づき、地方自
治体の選挙に限られているが、国政選挙でも電子投票が考えられている。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]
情報社会〔情報・メディア〕
▽執筆者〔情報社会〕
小林弘忠(こばやし・ひろただ)
セコム(株)顧問・立教大学非常勤講師
1937年東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞東京本社メディア編成本部
長を経て、現職。著書は『新聞記事ザッピング読解法』『新聞報道と顔写真』『巣鴨プリズ
ン』『ニュース記事にみる日本語の近代』など。
◎解説のフォーカス〔情報社会〕
環境整ったユビキタス社会
●ブロードバンドが本格化し始めた。DSL(デジタル加入者線)の利用者は300万人
を突破、光ファイバー、CATVともども速さと安さで競争している。一方、街角では無
線LANを使う人の姿も目につくようになった。携帯電話も音プラス映像へと内容充実を
競い、IP(インターネット・プロトコル)技術の進展で、通信の規制緩和にも拍車がか
かり、便利さに磨きがかけられている。
●2003年には電子政府・電子自治体が実現し、24時間どこからでも政府、自治体と
やりとりができ、生活に関連のある身近な申請、届け出が自宅でも可能となる。その03
年は、「鉄腕アトム」が生まれた年だ。「アトム」は、03年を起点とした未来の物語だっ
たが、インターネット利用者が5500万人を超えた現在、夢物語ではなくなり、ユビキ
タス時代といわれる情報社会は環境が整ってきている。
●しかし、法規制も厳しくなってきている。プロバイダ責任法、迷惑メール規制法が02
年に施行された。個人情報漏洩も心配だ。こうした法規制だけではなく、02年にできた
インターネット倫理機構のような自主的な機関による側面からのバックアップもますます
必要となっている。
★2003年の新語〔情報社会〕
★MVNO(Mobil Virtual Network Operator)〔情報社会〕
仮想移動体通信事業者。総務省は、周波数の割当てを受けず第1種通信事業者から通信卸
(卸電気通信役務)を利用してユーザー向けに移動通信サービスを提供する事業者と定義
づけている。DDIポケットのように、PHS通信網の大口割引を使ってデータ通信して
いる事業もMVNOに入る。移動体通信分野では、周波数の制約から事業者数が制限され
寡占状態になる傾向にあるので、総務省はMVNO事業を推進していく方針で、事業化の
ためのガイドラインをつくり、届け出だけで参入が可能となる。電気通信事業法改正(→
別項)によって自由参入が認められればMVNOは加速されそうだ。
★準天頂衛星〔情報社会〕
高度3万6000キロメートルを回る3機の人工衛星を打ち上げ、そのうちの1機をほぼ
日本の真上(天頂)を常時飛ぶ次世代通信衛星。BSやCS放送の中継をうけもつ静止衛
星も同高度を回っているが、準天頂衛星は軌道面が静止衛星より45度傾き、この軌道に
3機を120度ずつずらして打ち上げると、うち1機は必ず日本のほぼ真上を通過する。
静止衛星の仰角は地上から約40度なので、ビルなどに妨害されて電波が届きにくいが、
準天頂衛星は仰角70度なのでまんべんなく電波を送れる。感度のよい自動車放送、精度
の高いカーナビゲーションの実用化が期待できる。2008(平成20)年打上げの予定
だが、05年には超高速インターネット衛星WINDSも打ち上げられ、インターネット
も衛星利用時代に入る。
★システム障害〔情報社会〕
コンピュータシステムの不具合、設計ミスなどで命令どおりにコンピュータが作動せず、
思わぬ事態となる障害で、最近ではみずほフィナンシャルグループの銀行統合(第一勧業、
富士、日本興業銀行)にともなう混乱で話題となった。みずほ事故では、2002(平成
14)年4月1日業務を開始したが、異なった3つのシステムを急遽統合したため障害が
起きてシステム上にエラーが生じて口座振替が不能状態となったうえ、つぎはぎシステム
の欠陥で混乱が増大したとされている。
★イーバンク銀行(e-bank bank)〔情報社会〕
個人のメールアドレスだけでネット上で送金できるインターネット専業銀行。通常必要な
相手先の銀行・支店名、口座番号が不要で、メールアドレスがわかっていればそのアドレ
スが口座を識別してくれるところがネットバンクと違った特徴。送金は従来型の送金方法
がとられるのでネット・ハッキングのおそれはない。2002(平成14)年夏、日本で
もアメリカの決済専門プロバイダと提携した通信、商事会社出資による第1号のネット専
業銀行が開業、今後盛んとなりそうだ。
★インターネット倫理機構〔情報社会〕
若年層の教育には不適切な情報に業界標準のガイドラインを策定し、青少年が簡単にアク
セスできない技術の確立を図るためにインターネット関連業界、有識者でつくられた新し
い機構。アダルト、暴力、犯罪情報などが対象で、年齢別などの条件でサイトへの接続制
限ができる認証手段が検討されている。ゲーム店などでは、未成年者の身元確認に個人の
IDと会員証を共通化することを想定し、将来はプロバイダやコンテンツ配信企業が自主
的に年齢制限を設ける。有害情報の防御手段にはフィルタリングソフト(→別項)があり、
警察庁調べではネット利用の7割の学校が導入、経済産業省外郭団体のインターネット協
会はサイトを格付けして基準を設定している。しかし、情報制限は表現の自由の問題とも
からみ、有害の定義、対象年齢設定も難しい。ネット倫理機構は、情報の遮断が目的では
なく、情報の流通を尊重しながら受け手の立場から制限しようというもので、表現の自由
の規制ではないとされている。
★迷惑メール規制法〔情報社会〕
携帯電話、パソコンに送りつけられる迷惑メールを規制するため特定電子メールの送信の
適正化等に関する法律(総務省所管)と改正特定取引法(経済産業省)が2002(平成
14)年7月1日施行された。この二つをいう。(1)広告、宣伝のための電子メール(特
定電子メール)の送信者は件名に「未承諾広告※」と表示、
(2)送信者の名前、電話番号、
受信拒否を知らせるアドレスをメールの冒頭に表示、
(3)受信拒否に対する再送信の禁止、
(4)架空のアドレスによる送信の禁止などが柱で、違反者に主務大臣は必要な措置を命
ずることができ、命令違反は50万円以下の罰金(総務省所管)、通信販売業者の命令違反
は300万円の罰金または2年以下の懲役(法人は3億円以下の罰金、経産省所管)とな
る。NTTドコモによると、1日約9億5000通の携帯電話メールのうち約8億通はあ
て先が存在しないものという。
★キー・ロガー(Key Loger)〔情報社会〕
パソコンのキーボードに入力した文字列をそのまま記録してしまう盗聴ソフト。ロガーは
ログ(log
記録)する者の意味。このソフトをパソコンに組み込み、他人が入力したあと
で記録を解析すれば個人情報も盗み出せハッキング行為もできる。盗聴は共有のパソコン
で行われる場合が多く、2001(平成13)年に東京都内のネットカフェ(インターネ
ットが使える喫茶店)のパソコンにキー・ロガーが仕組まれてパスワード、IDが盗まれ、
ネットオークションの詐欺に悪用された事件が起きている。01年秋に流行したウイルス
のバッドトランスBはパソコンに記録されているメールアドレス宛てにウイルスを送るだ
けでなく、キー・ロガー機能を組み込むようにもなっていた。
★シーモード(C-mode)〔情報社会〕
財布のように携帯電話で買い物をする自販機の電子決済の一方法。NTTの携帯電話(i
モード)サイトの携帯対応自販機シーモにアクセスし、個人認証マーク(ポイントパス)
を発行してもらう。次にシーモの読み取り機にポイントパスをかざして、入金してある金
額から支払額を操作し、指定した飲料水のボタンを押せば購入できる仕組み。iモードに
電子マネーを蓄積した決済で、商事会社、日本コカ・コーラと全国展開を始めている。
★CBT(Computer Based Testing)〔情報社会〕
筆記に代わってパソコンで入力して資格、語学の認定をするネット試験。マウスで回答す
る方式で、IT関連の資格試験から最近では英語のTOEFLや証券業界の外務員資格試
験、日本語能力検定などにもとりいれられるようになった。マウスでチェックしていくの
で合否がすぐに判定でき、今後増えていきそうだ。入社試験でもあらかじめ個別に与えら
れたパスワードで認証してもらい、どこからでも受験できるネット入社試験も増えるとみ
られている。
▲情報社会と生活〔情報社会〕
◆ユビキタス社会(Ubiquitous society)〔情報社会〕
原義は「あまねく存在する」という意味のラテン語。アメリカ・ゼロックスの研究所が提
唱したコンピュータ使用の概念に組み込まれて一般化した。家電製品のように、コンピュ
ータの存在を意識せず、コンピュータが生活環境の中に自然に溶け込んでいるという意味
に用いられ、現代はユビキタス社会といわれる。ネットワークで、必要な情報を時間、場
所を問わずに迅速に取り出せて活用できるコンピュータを自在に用いる社会だ。それには
安全性が確保されたセキュアな状態でなければならず、サイバーセキュリティ体制が前提
となる。
◆ユビキタスネットワーク(Ubiquitous network)〔情報社会〕
場所やどんな端末、ネットワークでも自在に使える通信サービス。ブロードバンド化、常
時接続が可能となったことで実現した。この環境に向けて、総務省は通信、放送、家電、
自動車業界と研究開発を進めている。例えば超小型のチップを製品につけることで、スー
パーマーケットのレジを通さなくても自動的に料金が払えるシステムや子どもの靴にチッ
プをつければ飛び出しても車が急停車できることなどが考えられている。有線、無線問わ
ずどこででも情報のやりとりが可能で、そのために通信プロトコルと標準化をめざしてい
る。
◆ユビキタスネットワーク市場規模〔情報社会〕
場所や手段を選ばずにネット環境が利用できるユビキタス社会の到来でユビキタスネット
市場の拡大も予想される。総務省の研究会は、2005(平成17)年の市場規模は30
兆円、10年は84兆円との数字をはじいている。研究会の報告では、超小型チップの開
発で自在なネットを構築し、非接触カードでどんな端末でも利用、どこからでもネットに
接続できればこの数字の達成は可能という。総務省は「ユビキタスネットワーキングフォ
ーラム」をつくり、産学官で推進していく。
◆高速ネット各国比較〔情報社会〕
経済協力開発機構(OECD)が2001年6月時点で各国のブロードバンド加入率を調
べたところトップは韓国で100人当たり13・9人、世帯普及率は4割近かった。カナ
ダ、スウェーデンがこれに続き、アメリカは第4位、日本は12位の0・94人。情報技
術で独走していたアメリカのつまずきがめだち、同議会では危機感が高まり普及論議が活
発となっている。
◆情報化投資の経済波及効果〔情報社会〕
総務省がまとめた2002(平成14)年版「情報通信白書」によると、00年の民間企
業の情報化投資は20兆8000億円で、その経済波及効果は38兆6000億円。投資
によって約149万人の雇用が創出された。情報化投資の設備投資全体に占める割合は2
3・5%で、10年間で倍増した。インターネット利用者は前年比18・8%増の559
3万人で世界2位(人口普及率は01年末で16位)、携帯電話インターネット利用率は7
2・3%で世界1位。
◆ブロードバンド競争(Broadband competition)〔情報社会〕
高速大容量通信の代名詞となったブロードバンドの通信サービスの価格、速度技術面での
競争が激化してきた。使い放題という魅力に加えて高速でさまざまな情報がやりとりでき
るので利用者も熱いまなざしをそそぎ、この分野は早くも戦国時代となってきた感がある。
100メガビットの光ファイバーによる通信サービスは月額5000円を切り、回線の均
一性に優れているCATVも同価格以下、300万人以上が利用しているDSLは200
0円台になった。IP電話を使う無線高速ネットも5000円で登場しており、ブロード
バンド市場は安(価格)・大(容量)・速(速さ)でしのぎをけずっている。
◆DSL利用急増〔情報社会〕
ブロードバンドのひとつ、DSL(デジタル加入者線)の利用者が2002(平成14)
年5月末で300万回線を突破した。01年以降7カ月連続で30万回線も増えてブロー
ドバンドの主流となった。現在、DSLの中心はデータを取り込む速度と送る速度が異な
るADSL(非対称デジタル加入者線)で、取込み速度は毎秒8メガビット(1メガビッ
トは100万ビット)、同1・5メガビットが主。月額の平均利用料が2000円台と世界
で最も低料金という価格水準が伸び率を早めている。高速回線による高音質、高画質の環
境も整い、インターネットでクラシック音楽を楽しむ「バーチャル・コンサート」もAD
SLで聴けるようになった。
◆ラストワンマイル(last one mile)〔情報社会〕
基幹ネットワークから利用者までをつなぐ通信回線の最後の1マイル部分をさす。基幹ネ
ットワークが高速化しても、そこから家庭までの回線が低速では意味がないことから、こ
のラストワンマイルが重要視されている。低圧配電線や数ギガヘルツの無線を使ったMM
DS(Multichannel Multipoint Distribution Service)という伝送技術もブロードバンド
社会では注目されてきている。
◆情報リテラシー(Information literacy)〔情報社会〕
インターネットから情報を得て、経済活動をする時代はコンピュータに対する能力が求め
られてくる。そこで、コンピュータへの能力度といったものが情報リテラシーといわれる。
狭義の意味では、コンピュータを自在に扱えるとの意味から、コンピュータリテラシーま
たはメディアリテラシーともいう。リテラシーとは、もともとは読み書きの能力のこと。
情報の取捨選択、評価、利用が情報リテラシーだ。
情報を分析して企業活動に役立てるには自在に情報を引き出せ、データを解釈でき、デー
タを加工できなくてはならない。コンピュータを単に扱えるというコンピュータリテラシ
ーから、自在に扱う情報リテラシーが重要といわれる。
◆デジタル・デバイド(Digital divide)〔情報社会〕
情報社会では情報機器を自由に操れる人ほど社会的に有利になる現象がみられるようにな
っている。情報機器によって生じる経済的格差をデジタル・デバイド(デバイドは境界)
という。1999年、アメリカ商務省が農村部は大幅にネット利用が遅れており、「ネット
ワークからの落ちこぼれ」と報告してから注目された。
◆量子情報通信(Quantum Information Communications)〔情報社会〕
光の波の性質を応用する光ファイバー通信に比べ、ネットワーク上で光子など素粒子の特
性を生かして情報を伝達する通信。現在の1000万倍以上の超高速通信が可能となる。
光子ひとつひとつに「0」か「1」のデジタル情報を伝送する技術なので、第三者がその
情報を盗もうとしても光子が偏光で変化するため送受信している人にわかる。データ盗用
が防げるのでサイバーセキュリティは飛躍的に向上するといわれ、総務省は2001(平
成13)年度から10年計画で産学官による研究会を発足、民間でもNTTなどが取り組
み、アメリカではIBM、AT&Tが研究を始めている。
◆ドメイン名登録訴訟〔情報社会〕
インターネット上の住所のドメイン名(例えば
.cp.jp)は早い者勝ちで使用できるが、
1998(平成10)年の信販会社のドメイン名をめぐっての訴訟で2000年12月、
富山地裁がこの種としては初判断を示して注目された。裁判は信販会社名のドメイン名を
取得した人を被告に、同社を原告にして争われた。判決は、有名企業のホームページにア
クセスする場合、社名が使われていると推測するのが一般的で、ドメイン名はインターネ
ット上の住所にすぎないとし、アクセスには検索エンジン使用が普通とする原告の主張を
退けた。ドメイン名は売買が原則禁止されているが、01年から登録制限が緩和され、日
本語ドメインも使われるようになった。
◆電子商取引推進協議会(ECOM)
(Electronic Commerce Promotion Council of Japan)
〔情報社会〕
電子商取引が活発になることを見越して、スムーズなルールづくりなどを決めるため産業
界、民間企業で結成している団体。2001(平成13)年4月施行された電子署名法(電
子署名及び電子認証に関する法律→「電子署名・認証法」)に対応するため、電子署名利用
者のシステム構築、利用ガイドラインをつくり注目されている。(1)企業が電子商取引を
する場合は、各人に渡される秘密鍵の複製は基本的に行わず、各人の責任で保管する、
(2)
企業は安全対策としてISO15408に準拠したソフトなどを使う、
(3)署名する際は、
電子署名の意味と署名範囲をはっきりさせる、などが内容。
◆行政ICカード(政府多目的カード)〔情報社会〕
国や地方自治体の証明書交付、許可証申請など行政サービスに使えるICカード。役所の
書類を電子化し、役所に行かなくても自宅のパソコンで書類申請できる電子政府が実現す
る2003(平成15)年度をメドに発行する。国民に個人番号を割り振る総務省の住民
基本台帳システムを行政機関が共通して利用、カード1枚で本人確認、個人記録に役立て
ようというものだ。官用だけでなく、買い物代金の決済にも用いようと01年秋、全国5
5市町村で200万枚のカードを配布して実験が行われた。現在では、住民票交付などは
役所に赴かなければならないが、今後はカード処理ですませられ、パソコンで申請しても
カードや暗証番号があれば本人と認定される仕組み。健康保険、介護保険、公立大学学生
証、公立図書館の利用証にも使われるが、カード利用で履歴が残り、プライバシーの侵害
になるとの心配も出ている。
◆モバイルICカード(Mobile IC card)〔情報社会〕
無線を利用したモバイル(移動体)端末によるインターネット利用で用いられるICカー
ド。携帯パソコン、携帯電話使用が活発となってきたため携帯端末でも認証、決済ができ
るカード。総務省が実験を始め実用化をめざしている。モバイル端末に通行証機能をもた
せ、端末を所持していれば認証できたり、出先で取引先と契約する際は金銭を移動しなく
ても決済できたりするモバイル端末+ICカード一体型の課金・決済機能をもたせるシス
テムにする。
◆電子チケット(Electronic ticket)〔情報社会〕
ICカードによってパソコンでも購入できるチケットのことで、音楽会、イベント券が必
要な人は、ICカードをパソコンやコンビニエンスストアのカード読取り機に差し込んで
希望する券購入のボタンを押すとカードにデータが記録され、代金は銀行口座やクレジッ
トで自動引落しされる。このICカードを持って会場に行き、JR発行の「スイカ」同様、
会場入り口の読み取り機にかざすだけで入場できる。チケット取次大手は、磁気式のカー
ド約30万枚を順次専用ICカードに切り換える準備を進めている。
◆ホームページ訴訟〔情報社会〕
保険契約をめぐって東京都内の男性が「保険契約者保護者協会」を名乗り「保険会社詐欺
事件」とのホームページを掲載した。同社は男性を相手にインターネットの公開差し止め
を求める仮処分を東京地裁に申請、同地裁は2001(平成13)年4月、保険会社の主
張を認め公開を禁止する決定を下した。男性が第三者を通じてホームページを公開するこ
と、同社を中傷する他の内容のホームページ公開も禁じた。匿名で企業を批判するホーム
ページが多い中で警鐘を鳴らした決定と注目された。
◆電子メール調停(Electronic-mail arbitration)〔情報社会〕
「商品が届かない」「高い値段を要求された」など増えているインターネット通信販売トラ
ブルを電子メールで仲裁、調停しようと経済産業省が実施をめざしている。現在は弁護士
をかかえる専門の紛争処理機関はなく、消費者は役所の相談室や日本通信販売協会の窓口
に苦情を持ち込むケースが多い。しかし、紛争解決までに時間がかかり、法的手続きも面
倒なため迅速に処理する機関が求められている。計画では電子商取引推進協議会(→別項)
に窓口を設け、アドバイザーが常駐、苦情があれば調停人の弁護士、学識経験者と電子メ
ールで連絡を取り合って解決する。
◆ワン切り/ツー切り〔情報社会〕
携帯電話で1回だけのコールがあって切れ、着信記録に残った番号に電話すると有料番組
につながってしまうワン切りという手口が広がっている。有料、有害情報番組に誘うため
で、2002(平成14)年には、この手口でわいせつな音声テープを流したとして3人
がわいせつ物公然陳列容疑で警視庁に逮捕された。ワン切りの初摘発だ。数万人がひっか
かり、数億円稼いでいたとみられている。最近は2度コールしてきて電話をかけてくるこ
とをねらったツー切り手口も現われ、携帯着信記録の悪用がめだってきた。
02年に阪神地区でワン切りによる大量発信で大規模な通信障害が発生、NTTは障害を
生じさせるおそれのある行為を禁止することを内容とする契約約款を改定、総務省もこれ
を認めた。その後、福岡市内でも大阪市のワン切り業者による通信障害が起きたため、N
TT西日本は同業者に約款改定後初の回線停止措置をとった。
▲電話通信の現状〔情報社会〕
◆電気通信事業法改正案〔情報社会〕
総務省の諮問機関、情報通信審議会が2002(平成14)年の最終答申で盛り込んだ対
策で、IP化が進む「脱電話時代」を見据えた措置。総務省は03年の国会に電気通信事
業法改正案を提出する。柱は、(1)第1種(通信回線・設備を自社で所有、全国規模で電
話、携帯電話、ネットサービスをしている事業者)と第2種(自社で所有せず第1種から
専用線を借りて回線サービスしているプロバイダなど)事業区分の撤廃、(2)通信事業参
入条件の許可制を登録、届け出制にする、(3)公衆網希望の事業者はNTT東西会社と協
議し、同社が応じないときは行政が協議開始命令を下せるなど。この改正で通信網のオー
プン化や競争が期待されるが、届け出項目が増え、かえって規制強化になるとネット業界
は反発している。
◆携帯電話・加入電話契約数〔情報社会〕
NTT東西会社がまとめた2002(平成14)年3月末時点の加入電話契約数は前年同
期比2・6%減の5074万で、97年の6146万をピークに減少し続け、携帯電話な
どの移動電話には00年3月に追い抜かれた。02年3月末の差は2400万に拡大し、
携帯電話は02年5月現在7000万を突破している。ISDNからDSLの切換えには
加入電話が必要なので今後加入契約は若干伸びそうだ。
◆携帯電話市場競争の激化〔情報社会〕
電気通信事業者協会の調べによると2002(平成14)年6月末の携帯電話の加入者数
は7071万台で、人口普及率では55・5%。同月現在の累計加入者はNTTドコモ約
4146万台、KDDI系au約1270万台、ボーダフォン系J‐フォンが約1267
万台で、毎月販売伸び率で熾烈な競争を演じている。コンテンツでもauが高速、大容量
の第3世代(3G)、J‐フォンが内蔵カメラ撮影写真をメール送信する写メールをそれぞ
れヒットさせれば、ドコモもカメラつきで高速の新機種「504i」シリーズで対抗、今
後はauは企業向けのデータ通信、J‐フォンは世界で使用可能の携帯、ドコモはテレビ
電話通信に力を入れ、競争はいちだんと熱を帯びていきそうだ。
◆ユニバーサルサービス基金(Universal service fund)〔情報社会〕
電話料金、サービスを全国同水準にするために通信事業者が資金を拠出する基金で、過疎
地、離島でも均一な電話網を維持するのが目的だ。NTT東西会社は全国一律サービスの
提供が義務づけられているが、過疎地などでは赤字となり、NTTだけが一律サービスで
他の事業者は収益性の高い地域を選んで事業を続けていけばNTTの経営をさらに圧迫す
る点が考慮された。総務省はアメリカ、フランスを例にDSL(デジタル加入者線)事業
者にも基金負担を求める方針をうちだしている。
◆NTTの光ファイバー開放〔情報社会〕
NTT東日本、西日本両社の光ファイバーを他の通信事業者に開放する問題。両社は全国
で7万9000キロメートルの光ファイバーケーブルを敷設、全国シェア85%を占める。
これまで他の通信事業者に貸出しはしなかったが、e‐Japan(→別項)計画を進め
る政府は高速ネット実現のため開放を求め、アメリカ政府も通信の閉鎖性を指摘していた。
NTTは方針を転換して貸出しを認める方針をとり、DSL事業者とのあいだで賃貸契約
を旧郵政省に申請、同省も認可した。設備投資の力がない通信事業者もNTTの全国網が
使えることになれば大容量通信が加速され、低料金競争も期待されている。
◆卸料金制度〔情報社会〕
企業が専用線を使う場合、NTTに専用線の回線料金を支払うが、他の通信事業者が専用
線を用いるときも同料金を支払うので、インターネット接続業者はメリットが少なくなる。
これを直そうという制度。現在、通信回線をもっていない第2種通信事業者約7000社
はNTT東西地域会社の市内網に自社の回線を接続する方法でしか利用者に通信サービス
提供はできない。一般企業向け料金より安くなれば、2種業者はNTTから回線を借りて
の企業向けサービスも可能で、競争原理から通信料も安くなる。アメリカでは卸専用線料
金制度を採用、通信業者には企業より約2割引いて回線を販売している。
◆IP電話競争(IP telphone competition)〔情報社会〕
IP電話は、データをこま切れにして送るIP(インターネットプロトコル)技術を使っ
て音声をやりとりする電話で、2001(平成13)年春にフュージョン・コミュニケー
ションズが全国一律料金で150万人の加入者を集めた。有線電話は通話ごとに回線を占
有するが、IP電話は音声を小さなデータに分割、インターネット網を利用して送る。複
数の人が回線を共有しながら音声のほか画像などさまざまなデータを同時に送受信でき、
料金も安いのが特徴だ。次世代電話の本命とも目されている。パソコンと接続している家
庭に引き込んだADSL(非対称デジタル加入者線)を、ターミナルアダプターという機
器を経由して電話機につなぎ、これを通して一般電話との間で通話する。あるいは家庭の
電話機から交換機まではNTT東西会社の回線を使い、途中をIP電話専用線でつなぐこ
ともできる。KDDIが02年10月からADSLサービス利用者を対象に開始、NTT
グループも交えて、価格の低廉なIP電話サービス合戦が激化しそうだ。総務省はIP電
話用に050の番号を割り当てる。
◆マイライン(My-line)〔情報社会〕
2001(平成13)年5月から始まった電話会社事前登録制度(優先接続制度、電話会
社選択サービス)。利用者はマイライン事業者協議会加盟13社の中から市内、県内・市外、
県外、国際の4分野で会社を選択、番号を登録しておけば「00XY」のような電話会社
の識別番号をダイヤルしなくても、選んだ会社を通じて通話できるので便利になった。
◆携帯電話番号ポータビリティ〔情報社会〕
契約している携帯電話会社を変えても電話番号を変えないで済む制度。固定電話ではすで
に導入されているが、総務省は2003(平成15)年から携帯電話にも本格導入する。
さらに携帯電話会社を変えると電話機も買い換えなければならない不便さを解消するため
に1台でどの会社のサービスでも受けられる技術の標準化もめざす。世界的にもメーカー、
プロバイダがさまざまなOS、アプリケーションを採用、異端末では交信できないケース
が多いので、標準仕様を決める業界団体OMA(オープン・モバイル・アライアンス)が
各国の約200企業が参加して設立され、オープンな環境づくりを図っている。
◆Lモード(L-mode)〔情報社会〕
NTT東西地域会社が開発した家庭電話機を用いた新サービス。Lは、英語の「Living(生
活に役立つ)」
「Local(地域に密着した)」
「Lady(女性と家族のために)」を意味している。
プッシュホンの画面をより拡大し選択ボタンもつける。2∼3万円のLモード電話を使用
し、月額300円程度の料金を支払えば、市内料金でインターネット、メール送受信、ネ
ットバンキングなどができる。
◆次々世代携帯電話(第4世代携帯電話)〔情報社会〕
超高速でハイビジョン映像はじめ高画質の動画を送受信できるネットワーク携帯電話。次
世代携帯電話(→別項)のサービスが2001(平成13)年から開始されているが、次々
世代は現行携帯電話の約1万倍以上の通信スピードがある。CDアルバム1枚なら1分以
内、映画でも3分で配信可能。05年をめどに実用化の計画で準備が進められている。総
務省は通信コストが現在よりも安いインターネット電話のシステムを採用する。05年に
まず30メガビット、10年には100メガビットのスピードを実現、その技術やネット
ワーク専用閲覧ソフトの開発のため電話各社、電機産業会社で組織するモバイルインター
ネット推進協議会をスタートさせている。現在の携帯電話端末には互換性はないが、次々
世代では互換性をもたせ、利用者が買い替え費用を節約できるようにする。
◆次世代携帯電話(第3世代携帯電話)〔情報社会〕
同一周波数で多くの通話ができデータ通信が速く、高速、大容量で世界各地から受発信も
可能なIMT‐2000(International Mobile Telecomunication-2000)という国際規格
に合わせた携帯。NTTドコモとKDDIが2001(平成13)年秋に登場させた。通
信技術にはNTTドコモの日欧方式(W‐CDMA)とKDDIやアメリカが採用してい
るcdma2000式がある。NTTドコモのサービスは通信速度が40倍アップ、KD
DIのは大容量と利用地域の広さに特長がある。次世代はICカードの一種で個人情報入
りUIMカード(User Identity module card)を搭載、カードで個人認証と取引決済もで
きる。携帯端末から情報家電、パソコン、カーナビゲーションなどの端末にも利用でき、
IPv6(→別項)が開発されると、端末を通して遠隔操作できる。普及には仕様標準化
が必要のため総務省はルール化を検討している。
◆携帯電話決済システム〔情報社会〕
携帯電話を暗証番号の入力キーに使って決済するシステム。カード式電子マネーが不人気
なところから開発が進められている。自動販売機には利用されているが、飲食店の支払い
もできる電子財布にしようとの計画だ。KDDIは携帯でコンサートチケットを予約、決
済しその携帯を会場に持参するだけで入場できるサービスを実施している。携帯が財布の
代用になる日も遠くないが、規格統一、手数料問題など課題は少なくない。
◆iモード(i mode)〔情報社会〕
iモードはNTTドコモが1999(平成11)年春開始した携帯電話新サービスで、イ
ンターネットに接続することができるのが特徴。iモードの
i
はインターネット
(internet)、インタラクティブ(interactive)、インフォメーション(information)、を意
味している。iモード携帯電話を購入し、同社に登録すれば携帯電話で電子メール交換、
ホームページ閲覧、銀行振込みなどもできる。専用技術は不要で、対象金融機関も増えて
いるので利用価値は広がり、ドイツなどヨーロッパでもサービスが始まった。
▲サイバーセキュリティの確立〔情報社会〕
◆サイバーセキュリティ(cyber security)〔情報社会〕
サイバー(電脳空間)への不正行為は、(1)侵入(目標のコンピュータに侵入して管理権
限を奪う)、(2)ステップ(他のコンピュータに侵入、そこを踏み台にして目標のサーバ
ーに入り込む)、(3)改ざん(入り込んだコンピュータのデータを改ざんする)、(4)漏
洩(侵入して情報を盗み出したり、内部の情報を漏らす)、(5)なりすまし(他人のパス
ワードを盗んだりしてその人になりすます)、(6)メール爆弾(大量のメールなどを送り
つけ、コンピュータをまひさせる)、
(7)ウイルス(ウイルスのついたメールなどを送り、
情報を破壊する)などがある。つまりサイバー被害は、(1)機密の喪失、(2)情報の破
壊、(3)保存の喪失、(4)不正コピー、に分けられる。セキュリティ対策は、以上のこ
とを考え、不正侵入防止策と予防・検知策、監視策を講じなければならないことになる。
不正侵入防止策はコンピュータ管理者をおいて、アクセス管理、アクセス防御を施すなど
不正に対する直接対策だ。予防・検知策は、パスワード管理、ウイルスのワクチン管理、
コピー防止管理など。監視策はセキュリティ監視、教育などで、いずれも間接対策といえ
よう。
◆サイバーセキュリティ調査〔情報社会〕
総務省が民間企業(東証1、2部全企業2063社対象、有効回答541)に対して20
02(平成14)年実施した。ウイルス予防ソフトは95・1%、ファイアーウォールは
86・9%が導入しているが、侵入検知ツールは17・6%、データの暗号化は33・1%
の実施率で、セキュリティポリシー(→別項)の策定はわずか28・5%という結果だ。
ウイルスや不正侵入の防護はまずまずだが、高度情報社会に向けての根本的なセキュリテ
ィ対策の遅れが浮き彫りにされた。
◆ウイルス実態調査〔情報社会〕
情報処理振興事業協会(IPA)が国内初のコンピュータウイルス実態調査を実施して2
002(平成14)年にデータをまとめた。全国5000の事業所を対象(回答は176
9)に、01年中の感染率、被害額などをまとめたものだ。被害総額は3億3000万円、
平均感染被害額は51万円、1件当たりの平均逸失利益16万円、平均感染率36・7%
という結果。世界6カ国中の感染率順位は4位、感染被害額順位は2位。感染率の高かっ
たウイルスはニムダ、バッドトランスだった。
◆電子署名・認証法(electronic signature / certification low)〔情報社会〕
正式には電子署名及び認証業務に関する法律。通産(現経済産業)、郵政(現総務)、法務
3省が2000(平成12)年4月国会に提出、01年4月より施行。電子ハンコを法的
に効力があると認め、不正防止を図ると同時にインターネットによる電子商取引(eコマ
ース)のバックアップ体制を整え、eコマース市場を活性化するねらいがある。
情報をやりとりする人が間違いなく本人であることを法律で認めようというもので、今後
は電子署名が現在の押印、署名と同じように、「私文書は本人又はその代理人の署名又は押
印があるときは、真正に成立したものと推定する」(民事訴訟法第228条第4項)記録の
証拠として効力をもった。具体的には情報交換者の本人を証明するハンコ登録の役所に相
当する電子認証機関を設置する。例えば企業同士の取引では、商業登記簿謄本などで実在
する企業であれば、認証機関から本人証明である電子証明書(デジタル証明書)が発行さ
れる。情報は公開鍵暗号方式で暗号化してやりとりする。公開鍵暗号は、秘密鍵と公開鍵
からなり、秘密鍵は実印、公開鍵が印鑑登録証明書に相当する。この鍵を使って取引すれ
ば、第三者によるなりすましを心配しなくてすみ、詐欺行為も防げる。
◆ネットワーク犯罪(Network crime)〔情報社会〕
警察庁がまとめた2001(平成13)年のインターネットを悪用した検挙件数は712
件で、前年比228件増。児童買春・児童ポルノ法違反が2倍強の245件、特に児童買
春事件が117件(前年は5件)と急増したのが特徴。ネット利用の詐欺事件も倍近くの
103件(同53件)で、うちネットオークション詐欺が60%を占める。コンピュータ
不正アクセスも含めると警察のネット相談受理件数も前年比55%増の1万7277件と
なっている。
◆不正アクセス犯罪(Injustice access crime)〔情報社会〕
警察庁調べによる2001(平成13)年の不正アクセス認知件数は前年1147件も大
幅に増えて1253件(海外からが448件、国内258件、その他547件)となった。
ホームページの書き換えが813件と激増している。不正アクセス禁止法が00年2月に
施行されても跡を絶っていないのが現状だ。被害を受けたのは企業が429件でいちばん
多く、次いでプロバイダの182件。検挙件数は前年と同数の67件。手口はパスワード、
IDを盗むケースが最高で、管理の甘さが不正アクセスを助長させている。一方、情報処
理振興事業協会(IPA)調べのコンピュータウイルス届け出数は2万4261件で前年
比2倍以上、02年1∼6月の届け出もすでに1万1569件で過去最悪の情勢だ。感染
するとウイルスつきのメールを大量送信するウイルスが多く、同年3月には「クレズ」と
いう新種が流行した。
◆偽造カード犯罪(Forgery cardcrime)〔情報社会〕
日本クレジット産業協会の調べでは2000(平成12)年現在のクレジットカードの利
用枚数は2億3168万枚、01年の不正利用による被害額は275億7000万円で、
被害は前年比33億円ほど減った。しかし、偽造カードによる被害金額は6億円以上増え
ている。カード端末機に機器を仕掛け、カードの磁気データを吸い取って偽造するスキミ
ング手口も横行、カードのIC化が急がれている。
◆サイバーフォースセンター(Cyberforce center)〔情報社会〕
警察庁が2002(平成14)年4月開設したサイバーテロ対策の中核で、重要インフラ
などを24時間監視する施設。電脳部隊といわれるサイバー専門班のサイバーフォースは
前年札幌、仙台、大阪、福岡などにつくられ、専門知識をもった約60人がテロ発生時に
は被害現場で被害回復、サイバーテロ追跡にあたっている。サイバーフォースセンターは、
各地のサイバーフォースの司令塔で東京に設置されている。インフラ施設、行政機関など
約430カ所の同時多発テロの監視をするととともに、テロが発生すればサイバーフォー
ス専門班を指揮する。
◆サイバー安保〔情報社会〕
「サイバー攻撃対策特別行動計画」に基づく政府のサイバー安全保障対策。政府は内閣に
IT戦略本部(本部長・総理大臣、本部員は主閣僚)を、下部機構に官民で構成する戦略
会議をおいて官民連携の確立体制ができた。セキュリティについても民間有識者による部
会がつくられた。サイバー安全保障とは、サイバースペース(電脳空間)への攻撃の対処
法で、例えば防衛庁のサイバースペースに攻撃をしかけられると国防上重大な影響をあた
え、情報通信、金融、電気、鉄道などインフラへの被害は国民生活を混乱させるので、水
際の防御と攻撃時の政府の対応策だ。
◆情報ネットワーク法学会〔情報社会〕
インターネット上の犯罪や個人情報保護などネットワークと法体系の調査研究をする学会。
2002(平成14)年7月に発会した。発起人代表は苗村憲司慶応大学教授。学者、弁
護士、通信事業者、官庁職員らが会員となり、政府に対する提言もする。
◆サイバー犯罪防止条約(Prevention treaty of cyber crime)〔情報社会〕
インターネットを通したサイバー犯罪を国際的に防止する条約で、日本も2001(平成
13)年末に批准した。サイバー犯罪に関しての初の国際条約。ネットを悪用した不正行
為を各国の国内法で犯罪として位置づけることを加盟各国に義務化、捜査機関の連携、接
続事業者(プロバイダ)の通信記録保存の義務づけ、個人情報保護、犯人引渡しなどが盛
り込まれている。携帯電話まで含むあらゆる電子データが証拠収集の対象となり、さらに
通信記録の開示など国内法にないことも取り決められており、法整備が今後の課題となっ
ている。
◆日本ネットセキュリティ協会(JNSA)
(Japan Network Security Association)
〔情報
社会〕
ネットワーク環境整備を目的に設立された団体。日本独自の安全規範をつくるのをテーマ
に、技術、政策、マーケティングの3部会を設置している。業種が多岐にわたっているた
め、これまで統一、横断的な組織がなかった。増加が予想されるサイバーテロに備えるの
と、技術用語統一、独自のセキュリティポリシーづくり、相互接続の評価試験環境提供、
PKI(公開鍵基盤)の技術研究、不正アクセス対策などに取り組む。
◆セキュリティ評価認証制度〔情報社会〕
セキュリティ評価と認証を希望する企業は、ISO(国際標準化機構)の基準に基づく体
制をつくり、これを評価機関が評価、認証機関が審査して「お墨付き」を与える制度。日
本は遅れているが、欧米では整っている。イギリスは特に進んでおり、国内規格にBS7
799(→別項)という認証システムがある。国際的にはアメリカ・イギリスなど6カ国
が94年コモン・クライテリア(CC)名の統一評価認証基準をつくり、98年にはIS
O15408として国際標準化されている。
◆クリプトレック(Cryptrec)〔情報社会〕
暗号技術の評価を推進するために政府の委託を受けた暗号専門家による団体。暗号技術評
価委員会とよばれる。2003(平成15)年度をめどに構築される電子政府に向けてセ
キュリティを確保するのを目的として発足した。暗号技術を公募して技術的、専門的に評
価、電子政府に最も適合した暗号技術を選定する。評価対象となるのは公開カギ暗号、共
通カギ暗号、ハッシュ関数、疑似乱数生成の4方式。暗号技術は、高度情報ネットワーク
社会の最重要問題だけに、継続的な見直しと国際的な標準化が課題となっている。
◆セキュリティ政策体系(security policy outline)〔情報社会〕
2000(平成12)年官公庁のホームページが不正侵入されたサイバーテロ事件は、イ
ンターネットの防護体制の不備が指摘された。サイバー社会を守るため警察庁がうちだし
たサイバーテロに対する強化策。官公庁サイバーテロ事件では、16件中6件が情報を大
量に送ることにより、誤作動させるバッファ・オーバーフロー(buffer overflow)という手
口が使われた。侵入者は大学のサーバーに侵入、さらにステップして官庁に侵入した。こ
のほか最近は目標のサーバーに連続してアクセスし、セキュリティホール(セキュリティ
の不備な個所)を丹念に探すポートスキャン、コンピュータが誤作動を起こしたスキに侵
入するDoS(Denial of service)攻撃など手口も悪質、巧妙になってきたためねばり強い
対抗策が必要となってきた。
◆セキュリティポリシー(security policy)〔情報社会〕
セキュリティ対策の中核をなすもので、セキュリティの方向性、範囲の設定を定める安全
性の理念。利用と禁止の範囲をどのようにするかが大きなポイントとなる。インターネッ
トとイントラネットなど社内ネットワークを接続するかどうか、接続すれば不正侵入の危
険性がふえるが、その場合安全性をどう保つかを策定するのがセキュリティポリシー。情
報システムをつくるうえで欠かせない理念だ。
情報システム作成の手順は、(1)計画、(2)構築、(3)運用、(4)分析、に分けられ
るが、セキュリティポリシーは計画段階で設定される。セキュリティポリシーは企業戦略
の一環ととらえられている。
◆セキュリティ投資(security investment)〔情報社会〕
ハッカーによるホームページの不正侵入、ウイルスによる被害など相次ぐサイバーテロに
よって官民にセキュリティに対する投資関心が高まっている。セキュリティに資本を投ず
るのが結局は経済効果を生むという意識からだ。このためセキュリティビジネスが新産業
として注目されている。不正アクセスを24時間、365日監視する「不正侵入監視サー
ビス」、同様の「ウイルス監視サービス」や不正侵入防止のための本人証明をする「証明書
発行サービス」を始めている企業やセキュリティ専門家を認定、ユーザーの定期検診を行
う企業もある。アメリカではセキュリティビジネスが育成されている。
◆バイオメトリクス(biometrics)〔情報社会〕
個人の生体的特徴をコンピュータの個人識別に用いようとする技術。本人の身体の一部を
利用した本人証明技術ともいわれる。建物の出入り、出退勤、パソコン、OA機器の本人
確認などに使われ、現在は指紋、掌紋、虹彩(黒眼の部分の模様)や顔、声などを登録し
ておいて、他人と識別する実験が活発となり、指紋照合による識別方法は、実用化されて
いる。これは同一ではない指紋によって識別しようとするもので、電子商取引ばかりでな
く、すでにマンションの出入り、企業の出退勤に利用されている。
◆フィルタリングソフト(Filtering Software)〔情報社会〕
有害サイトを遮断するソフト。経済産業省の外郭団体のニューメディア開発協会が無料配
布しており、教育現場で最近利用が増えている。全国の公立小中学校ではほぼ100%パ
ソコンが導入され、うち80%近くがインターネットに接続されている。児童、生徒がア
ダルト、カルト、暴力、殺人などのサイトを見る機会も増えているわけだが、このソフト
を利用すれば有害なキーワードは自動的に遮断され閲覧できない。家庭でも利用されだし
ている。
◆デマメール(circulate mail)〔情報社会〕
ウソのウイルス情報やニセの情報をインターネットにながして正常なネットの情報流通を
疎外する不心得者がネット上で横行して、情報処理振興事業協会(IPA)にも相談が増
えた。「ウイルスがデータを破壊するのでファイルを削除しなさい」との指示で本当は必要
なファイルを削除してしまった例や、「メールを転送しなさい」と受信者に転送を促すチェ
ーンメールも多い。インターネット情報は真偽がつかみにくく出所も不明。ネット上の出
所不明の情報はネットロア(ネット民話)ともいわれているが、今後デマメールの悪質化
が警戒されている。
◆デジタルマナー検定〔情報社会〕
財団法人インターネット協会が2003(平成15)年春からスタートさせる予定のネッ
ト作法の資格のための検定。企業内のネットに関するルール、マナーをチェックし、マナ
ー資格によって情報社会を側面からバックアップし、スムーズなネット社会をつくるのが
目的。新人研修のほか学生の就職活動にも役立てられると期待されている。
◆EIM(Employee Internet Management)〔情報社会〕
従業員インターネット管理といわれている。私的アクセスの低減によりコスト削減を図り、
企業データの流出も防ぐ一方で、勤務時間以外や自費でならアクセスできる多用な管理機
能をもったシステム。アメリカでは年間相当なコストを節減した例があり、有害サイトへ
のアクセスでウイルス感染被害を防止できるセキュリティ面にも効果があるといわれる。
2002(平成14)年開催のサッカーW杯で就業中の従業員がサッカーサイトをアクセ
スすると業務に支障をきたすおそれがあったことから注目された。
▲産業利用とシステム〔情報社会〕
◆電子政府・自治体法〔情報社会〕
役所同士の事務手続きを含め4万7000件もある国、地方自治体への申請、届け出、許
認可を電子化し、在留資格認定など面接審査が必要な222件を除きインターネットで申
請、届け出を可能にする法律。政府は2003(平成15)年度中に母子手帳交付申請、
国民年金手続き、住民票請求、婚姻届、税金の申告、納税手続きの95%オンライン化を
めざし、全国1万カ所に基礎技能サポートセンターを整備、5万人のIT専門家を養成す
る電子政府・自治体推進プログラムを策定している。しかし、自治体の財政赤字、要員不
足のうえに、住民基本台帳ネットシステム(→別項)の利用事務が264件と拡大され、
個人情報の保護問題が指摘されている。
◆知的財産戦略大綱〔情報社会〕
技術の発明、製品のデザイン、商品のブランド、音楽といった経済価値のある情報の権利
(知的財産権、知的所有権)は、日本では認識度が十分ではない。これまでの大量生産型
のものづくりから知的財産をいっそう保護し、基本特許、基礎研究面で国際競争力をつけ
るねらいで政府がまとめた大綱。官民学連携による知的財産増のための新技術の開発、製
品、サービスの付加価値向上を図り、2005(平成17)年度までに知的財産について
の制度改革に取り組む。
◆IT国家戦略〔情報社会〕
政府のIT戦略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)が2001(平成1
3)年に発表した日本のIT化指針。(1)低料金インターネットを01年に実現、(2)
05年までに1000万世帯に光ファイバーの超高速ネットを、3000万世帯にDSL
(デジタル加入者線)やCATV回線の高速ネットインフラを整備、(3)06年に地上波
デジタルテレビを全国で普及させるという内容。06年に光ファイバーやCATV回線網
で、動画情報も常時提供できるようにする計画で、この戦略のもとに、次世代インターネ
ット通信手順を高度化させてe‐Japan(→別項)化を推進、5年以内に世界最先端
のIT国家にする構想。
◆IT基本法〔情報社会〕
正式には高度情報通信ネットワーク社会形成基本法。情報通信技術による社会経済の変化
に対応し、高度情報通信ネット社会形成のための施策を迅速、重点的に推進することを目
的とした法律。2001(平成13)年1月に施行された。
同法は、高度情報通信ネット社会を「高度情報通信ネットワークを通じて多様な情報、知
識を自由、安全に世界規模で入手、共有、発信することで、あらゆる分野で活力ある発展
が可能となる社会」と定義づけ、そのためには全国民がネットワークを利用できる機会を
もち、情報通信技術の恩恵を受けなければならず、ここにネットワーク社会の意義がある
としている。それにはネットワーク拡充、コンテンツの充実、情報活用能力習得の推進、
公正な競争の促進、専門的人材の育成、規制改革、知的所有権の保護に基づいた電子商取
引、電子政府の確立と促進、ネットワークの安全性の確保などを基本施策としてあげ、こ
れらの施策で経済構造改革、雇用創出などを図る。施策を推進するのがIT戦略本部とI
T戦略会議。
◆e‐Japan基本目標〔情報社会〕
IT(情報技術)を普及するために政府のIT戦略本部が決めた2002年度の基本目標。
最高水準の通信インフラ整備(通信規制緩和、国、地方自治体の光ファイバー開放)、電子
商取引の推進(著作権保護システム整備、IT投資への税制優遇)、人材育成(全小中高校
の教室ネット化、地域ITリーダー25万人育成)、行政の情報化(公共事業の電子入札導
入)、ネットワークの安全性・信頼性確保(サイバーテロ対策の強化)の5分野でIT環境
の整備を掲げている。著作権保護としては、不正コピー防止システムの開発、著作権者と
放送局などとの正当な報酬獲得システムの構築があげられている。
◆情報管理システム構想〔情報社会〕
警察庁の捜査活動のための犯罪情報のオンラインシステム。組織犯罪の動き、データがす
ぐに検索でき、スピード捜査に役立てられる。組織の人員と実態、事務所、使用車両、電
話番号、過去のデータなどのデータベース化はほぼ完了、これを全国県警とオンラインで
結ぶ。将来は1260全警察署にも直結させる予定だ。
◆総合防災情報システム〔情報社会〕
各省庁、地方自治体、市民グループが所有する防災関連情報を一元化するネットワーク。
政府は中央防災会議内に「防災情報の共有化に関する専門調査会」を設置、内閣府に情報
を集約するシステムをつくる。現在もネットワークはあるが、各省庁バラバラで対応して
いる。総合システムができると情報が共有され、インターネットでもアクセスできる。
◆重要通信システム〔情報社会〕
テロや大規模災害など緊急事態の際、政府要人や自衛隊、警察、消防署に必ず連絡がつく
システム。総務省が整備にのりだす。緊急連絡途絶による対応遅れに対処するもので、緊
急時要人があらかじめ割り当てられた特別番号を押したうえ、相手のナンバーをかけると
携帯電話でもどこにでもつながり、混雑する電話にも影響されずに通信できる。アメリカ
ではすでに約800機関が独自の電話番号を割り当てられている。電話交換機の改良が必
要なので、実際に運用されるのは数年後になる見込みだ。
◆電子メール傍受法〔情報社会〕
サイバーテロやデジタル犯罪の急増で、電子メールを傍受する動きが世界的に高まり、イ
ギリスでは2000年10月に法律が施行された。アメリカでも立法化の準備が進められ
ている。イギリスの法律は、インターネットのプロバイダが、特定の送受信者のメールを
すべて傍受できる装置(ブラックボックス)をとりつけることを義務づけたほか、暗号で
送受信されるメールは、解読ソフトを捜査当局が入手できるとの内容。犯罪発生前に傍受
体制を整え、犯罪を早期追跡するねらいがある。
◆FTTH(Fiber To The Home)〔情報社会〕
光ファイバーを家庭まで引き込んだ超高速通信サービス。光ファイバーは通信会社によっ
て基幹網には使われてきたが、一般家庭への接続は世界に先駆けて2000(平成12)
年にNTTが実用化した。速度は毎秒最大100メガビット。02年4月現在の利用者は
約3万5000人(総務省統計)でDSL(→「ADSL」)には比較にならないが、前月
比32%以上伸びており、伸び率はDSLより大きい。将来はブロードバンドの主流とな
るとみられている。
◆光伝送交差点〔情報社会〕
警察庁が東京都23区内の幹線道路100カ所に設けた監視カメラつき交差点。これまで
も場所により監視カメラがあったが、雑踏用、車ナンバー撮影カメラで、主に電話回線送
信のため画面分析に時間がかかった。光伝送カメラはデジタルなので鮮明なうえリアルタ
イムで送信され、デジタル処理による画像の数値化、相互通信も可能。交通量、人出数な
どが計算でき、事故、事件のスピード対応に威力が発揮される。
◆VOIP(Voice Over Internet Protocol)〔情報社会〕
画像などを送るデータ通信回線と同じ回線に電話などの音声データの送信を統合するネッ
ト技術。別々の通信回線を利用していたデータと音声をインターネットに接続する機器が
対応する通信手段(IP)によって一緒に送る最先端技術だ。データと音声を信号に置き
換えてばらばらに送信、送信先で統合する。電話は通話ごとに専用回線が必要だが、VO
IPにすると交換局を経由せずデータの塊ごとに空き回線を利用して送れるので、(1)通
信網の効率化、(2)交換局を経由しないことによる低通信料化、(3)画像と音声を使う
ネットサービス化が可能。NTT、KDDIはブロードバンド(→別項)実現のためにA
DSLや無線ネットを使って実用化、2000(平成12)年末から01年にかけては国
内4CATV局と韓国ソウル市内を結んだ2万世帯対象のCATV網通話実験も行われて
いる。
◆位置情報サービス〔情報社会〕
PHSを徘徊高齢者に持たせ、行方がわからなくなった場合位置を確認する行政サービス
として発足したが、最近は全地球測位システム(GPS)と携帯電話の無線通信網を活用
し、徘徊高齢者、幼児ばかりでなく、盗難自動車、オートバイを発見する位置情報サービ
スが注目されてきた。GPSによるので、位置確認の誤差はなくピンポイントで発見でき
るのが特徴。インターネットや電話で位置確認の依頼があれば、すぐに検索して地図を送
付、要請に応じて警察に通報して警備員が捜索活動にあたるセコム方式が代表例。自動車
盗難は年間20∼30%の割りで増加、2002(平成14)年上半期でも2万5000
件に達している。
◆歩行者ITS(Walker Intelligent Transport Systems)〔情報社会〕
最先端の情報通信技術を用いて人、道路、車両を情報ネットワーク化し、事故、渋滞とい
った交通問題の解決を目的に構築する高度道路交通システム(ITS)はナビゲーション
の高度化、自動料金収受システムなど9分野で開発が進められ、歩行者ITSもその一環。
主に視覚、身体障害者、高齢者を対象に注意喚起、現在地確認、経路案内の三つが基本サ
ービス。携帯端末を所持していれば道路に埋め込まれた信号発信機からの位置情報を端末
が読み取り、「現在位置は○○」「5メートル先に段差」「最適な経路は○○」などと音声で
教えてくれる。2003(平成15)年度には実用化される。
◆ヒトGIS(Hito GIS)〔情報社会〕
航空写真測量、地図情報、位置計測技術を生かして、人体をデジタル化して3次元数値デ
ータとして管理する人体管理システム。骨や臓器など人体各部位の位置や病巣の座標値を
磁気共鳴断層像撮影装置などの人体画像を利用してGIS(地理情報システム)でデジタ
ル計測し、部位、病巣をビジュアルに表示、数値化する仕組みだ。体の内部を地図的にと
らえて病気を診断するわけで、経験則、感覚的な判断による診断からデータに裏づけられ
た治療ができる。医療現場、医療教育に役立てる。
◆無線LAN(Wireless Local Area Network)〔情報社会〕
光ファイバー、ADSL(非対称デジタル加入者線)などの通信網を市街地に引いてホテ
ル、駅、ファーストフードなどにホットスポット(→別項)を設置、対応機能カード内蔵
パソコンや携帯情報端末でインターネットを利用する方式。いつでもどこでもインターネ
ットに接続できる。高速で比較的安価なので次第に広がっている。モバイルEC、ユビキ
タスネットワーク(→別項)のひとつ。
◆モバイルEC(Mobil Electronic Commerce)〔情報社会〕
移動体通信、特に携帯電話によるEC(電子商取引)。携帯電話の多機能化で今後携帯電話
ECが活発になると予想されるが、電子商取引推進協議会(ECOM)は課題点として、
(1)
携帯電話紛失時の個人認証方式や本人以外利用できない仕組みの確立、(2)商品を手にと
れる実店舗販売との組合せの模索、(3)電波の届かない地域の決済サービス、(4)GP
S(全地球測位システム)と連動した位置検索によるローカル、リアルタイム情報の提供
などをあげている。
◆著作権権利情報集中機構(J‐CIS)(Japan Copyright Information System)〔情報
社会〕
マルチメディア・ソフトの著作権保護を目的に、文化庁が設立する新しい公益法人。文字、
データ、画像、動画、音声など多岐にわたる著作権を集中的に管理する目的で設立。
マルチメディアは文字、映像、音声などデジタル化された情報をコンピュータで融合する
システムで、複雑な流通経路をたどるため著作権の管理が検討課題だった。種類も膨大で、
しかも融合して利用されるため個々のソフトの著作者をつきとめて許諾を得るのは困難視
されてきた。音楽など著作権の集中管理が行われている分野では、権利者団体のデータベ
ースとJ‐CIS間にコンピュータを接続し、著作権の情報を検索できるようにする。
●キーワード〔情報社会〕
●ホットスポット(Hotspot)〔情報社会〕
光ファイバー、ADSL(非対称デジタル加入者線→別項)などの大容量通信網を引き、
LANケーブルを使わずに無線LAN(→別項)を使用して対応機能カード内蔵パソコン
や携帯情報端末でインターネットを利用する場所のこと。ホテル、駅、ファーストフード
などに設けられ、「街角LAN」が実現している。東京23区では200以上のスポットが
すでにできており、2002(平成14)年度内に拠点は1000に広がった。月額20
00円前後の安い料金で、毎秒最大11メガビットのブロードバンド環境が整ったこと、
基地局、機器対応の伝送コストが廉価になったこと、無線LANの利用周波数(2・4ギ
ガヘルツ)は免許不要なことが普及を後押ししている。電波がスポットから100メート
ルしか届かない弱点はあるが、第3世代の携帯電話に比べれば格安で高速。ただ電波は傍
受されやすく、セキュリティが心配な点、電波干渉によって不安定な通信となるおそれが
課題だ。
●プロバイダ責任法(Provider liability low)〔情報社会〕
インターネット上のプライバシー侵害、中傷などのトラブルをなくすため、プロバイダが
悪意ある情報を削除するのを認めた法律。2002(平成14)年5月27日施行された。
警察庁調べによる名誉棄損事件の検挙件数は01年42件で前年比12件増、警察への相
談件数は383件増の2267件で、年々数字は増えている。しかし、情報を勝手に削れ
ば「通信の秘密」もからんで発信者から訴えられかねない。そこで、(1)情報が他人の人
権を不当に侵している相当の理由がある、(2)発信者に削除の同意を求めて7日以内に返
答がない、のいずれかの場合はプロバイダは削除でき、損害賠償責任も負わない点が定め
られた。中傷された側は、発信者の住所、氏名を開示するようプロバイダに求めることも
できるようになった。しかし、人権侵害の判定基準が難しいのと、発信者の住所、氏名開
示はプロバイダの判断にゆだねられているので運用面では混乱も予想されている。
●BS7799(British Standard 7799)〔情報社会〕
イギリスの規格協会が作ったサイバーセキュリティ対策に関する規格。欧米ではサイバー
セキュリティ規格として広まりつつあり、ISO(国際標準化機構)はBS7799を基
準にして国際規格づくりを計画している。日本でも同規格の認証取得を目的としたコンサ
ルティングサービスが注目されだした。セキュリティ対策が万全でないと取引相手からの
信用が得られないためだ。電機、電子メーカー10社によって日本環境認証機構が設立さ
れ、2001(平成13)年3月にはBS7799取得のための認証・登録機関もでき、
セキュリティ規格意識が高まってきた。
●アジア・ブロードバンド(Asian broadband)〔情報社会〕
アジア地域の超高速インターネット網を整備し、共通基盤で電子商取引市場をつくる支援
事業として政府のIT戦略本部が整備をめざしている構想。アジア各国をネット化する情
報ユニオン計画。2005(平成17)年までに1000億円を投入、高速通信対応の新
通信衛星を打ち上げてアジアのネット化を図るが、02年度中に具体策を立案、03年度
には各国の大学、国立研究機関1000程度を高速ネットで結んで実験し、05年に超高
速ネット化する。言語問題解決のための自動翻訳ソフトの共同開発、技術者の育成と交流、
電子認証、電子署名の標準化を進める予定で、03年の世界情報社会サミットで世界にも
計画推進をよびかける。
●電子投票(Electric Vote)〔情報社会〕
2002(平成14)年6月23日、全国に先駆けて岡山県新見市の市長・市議選は電子
投票で行われて成功、「民主主義の土台のIT化」と話題となった。集計時間はわずか25
分、集計要員は2人(前回は85人)、市長選は1時間、市議選は2時間半開票が短縮され、
無効、疑問票はゼロという結果だった。同市の方式はタッチパネル式。投票カードを受け
取った有権者が液晶画面の投票機にカードを差し込むと画面に候補者と政党が表示され、
備付けのタッチペンか指で名前にふれると確認画面に変わる。「投票する」を選べば操作は
終了、カードを抜き取って返却する手順だ。新見市に続き、広島市、宮城県白石市でも電
子投票に移行する。法律的には電子投票法(電磁的記録式投票特例法)に基づき、地方自
治体の選挙に限られているが、国政選挙でも電子投票が考えられている。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]
コンピュータ〔情報・メディア〕
▽執筆者〔コンピュータ〕
南谷
崇(なんや・たかし)
東京大学教授
1946年名古屋市生まれ。東京大学工学部卒。日本電気(株)中央研究所主任、東京
工業大学教授などを経て、現職。著書は『順序機械』『フォールトトレラントシステムの構
成と設計』『フォールトトレラントコンピュータ』など。
◎解説のフォーカス〔コンピュータ〕
急増する多様な脅威・リスクに対する耐性向上を
●世界中に張り巡らされたインターネットに接続される膨大な数の情報資源を、一つの巨
大コンピュータシステムとみて、それらを総合した巨大な計算能力を活用した大量データ
の超高速処理を行うグリッドコンピューティングの研究が欧米を中心に活発に展開され、
わが国でも産学連携研究が開始されている。また、日常、生活する環境のいたるところに
多数のコンピュータが目に見えない形で埋め込まれ、いつでもどこでもだれでも必要に応
じて、意識的あるいは無意識にそのサービス提供を受けることができるユビキタスコンピ
ューティングがさまざまな姿で展開されている。
●コンピュータがネットワーク社会のインフラとして埋め込まれ、ブラックボックス化し
ているため、システム障害によるリスク、サイバーテロの脅威は急速に増しており、ディ
ペンダブルコンピューティングが、企業、国家、国際社会にとって最優先の課題になって
きている。
●生命科学と情報科学が融合したバイオインフォマティクスは生命原理を解明する基礎研
究においても、医療や創薬への応用研究においても、その重要性が急速に高まっている。
★2003年の新語〔コンピュータ〕
★グリッド(grid)〔コンピュータ〕
グリッドコンピューティングあるいは単にグリッドとは、コンピュータネットワークに接
続されている多様で多数の情報資源(スーパーコンピュータ、パソコン、携帯端末、デー
タベース、センサー、ディスプレイなど)にアクセスし、それらを総合した巨大な計算能
力を活用して圧倒的に膨大な量のデータを超高速で処理するための次世代インターネット
利用技術を総称した表現である。グリッドはもともと鉄道、電力、水道、ガスなどの敷設
網を意味する英語であり、世界の隅々まで張り巡らされたコンピュータネットワークを活
用し、どの情報資源を使用しているかを意識することなく、どこからでもだれでも計算サ
ービスを受けることができる状況を例えたもの。現在、欧米を中心として世界中で活発に
研究が行われており、国際的なグリッドの標準化、情報交換の場としてグローバル・グリ
ッド・フォーラム(GGF
Global Grid Forum)が組織化されている。日本でもグリッド
の技術開発や標準化動向の調査、国際的標準化への貢献、テストベッドの運用に関する情
報交流、人的交流を目的として、2002(平成14)年6月に産官学連携で「グリッド
協議会」が設立された。
▲コンピュータの高性能化と高信頼化〔コンピュータ〕
◆スーパーコンピュータ(super computer)〔コンピュータ〕
テクノロジーの進歩でコンピュータの演算性能は向上するが、ひとつの時代のなかで最高
速の演算性能をもつコンピュータの名称。地球環境など自然現象の解析・予測、物理・化
学のシミュレーション、ゲノム情報の解析、飛行機、自動車、船舶などの構造解析など、
大量のデータに対して膨大な計算を要求される大規模科学技術計算の分野で利用されてい
る。この名称は、もともと、多数のデータを並べた行列データに対する同一演算(ベクト
ル演算)をいっせいに並列実行する計算高速化機構(ベクトルプロセッサ)を搭載した超
高速コンピュータCRAY‐1を1976年にクレイ・リサーチ社(その後、96年にシ
リコングラフィックス社に、また2000年にはテラコンピュータ社に買収された)が初
めて販売したときに登場したもので、当初は、ベクトル型コンピュータのみをさしていた。
しかしその後、安価なマイクロプロセッサ(ベクトルプロセッサに対してスカラープロセ
ッサとよばれる)を大量に並べて高速並列処理を行う超並列コンピュータ(→別項)も含
めてスーパーコンピュータとよぶようになっている。
◆超並列コンピュータ(massively parallel computer)〔コンピュータ〕
一般に、少なくとも1000台以上のプロセッサを連結し、それらが互いに協調しつつ並
列処理を行うことによって全体でまとまった超高速計算を行うコンピュータのこと。スー
パーコンピュータ(→別項)とほとんど同義であり、主として科学技術計算の用途に利用
される。
ブルージーン(Blue Jeans)は、IBMが1999年から5年計画で約1億ドルを投入し
て開発しているもので、完成すれば毎秒10億回の演算を行う高性能プロセッサを100
万台並べる巨大な超並列コンピュータになる。その主な用途は病気の診断や治療の中心課
題となるたんぱく質の分子構造解析とされている。
GRAPE‐6は東京大学の牧野淳一郎助教授らが2001(平成13)年に完成させた
世界最高速の重力多体問題専用超並列コンピュータで100テラフロップス(毎秒100
兆回の浮動小数点演算を実行)の計算速度を達成している。
地球シミュレータはNECが文部科学省から受託開発し、02年3月から海洋科学技術セ
ンター横浜研究所で稼働を開始した超並列コンピュータで、大気や海洋などの全地球環境
の変動メカニズムの解析や予測に利用される。8個のベクトルプロセッサからなるメモリ
ー共有型ノードを640台接続した巨大コンピュータで、35・86テラフロップス(毎
秒35兆8600億回の浮動小数点演算を実行)という世界最高速の計算性能を達成して
いる。
◆フォールトトレラントコンピュータ(fault-tolerant computer)〔コンピュータ〕
システムを構成する要素の一部にフォールト(fault
故障)が生じたとしてもシステム全
体としては障害を起こさず正しい動作をする性質あるいは能力、すなわち、フォールトト
レランス(fault tolerance)を備えたシステムあるいはコンピュータ。この場合のフォール
トとは、トランジスタ動作不良、断線、ショート、電磁的ノイズなどの物理的フォールト
や、ソフトウェアのバグ、設計ミス、操作ミスといった人間に起因する人為的フォールト
などがある。フォールトトレラントシステムの考え方、技術は、もともとは宇宙や軍事の
分 野 で 生 ま れ た が 、 現 在 は 銀 行 オ ン ラ イ ン な ど の O L T P ( On-Line
Transaction
Processing)分野をはじめ、原子力施設、リアルタイム制御、航空機、鉄道、情報通信ネッ
トワーク、データセンター、電子政府などの分野で必須である。
▲新しい原理のコンピュータ〔コンピュータ〕
◆量子コンピュータ(quantum computer )〔コンピュータ〕
「異なる物理状態を重ね合わせることができる」という量子力学の原理に基づき、同時に
0と1の両方の値をとることができる「キュービット」を情報処理の基本単位とするコン
ピュータである。n個のキュービットで2n通りの状態を同時に表現することができるの
で、1回のデータ入力だけで2n通りの並列計算を実行できる。1980年代にオックス
フォード大学のD・ドイチェによって基本的概念が提案され、94年にベル研究所のP・
ショルが素因数分解のアルゴリズムを発表したのをきっかけに本格的な研究が始まった。
ナノテクノロジーの応用分野として脚光を浴びており、すでに数キュービット程度の簡単
な回路動作が確認されている。
量子コンピュータは、現在のスーパーコンピュータで1年かかる計算をわずか0・1秒で
処理でき、現在使用されている暗号鍵も容易に解読できるともいわれている。素因数分解、
データベース検索など用途が限定された専用量子コンピュータは比較的近未来に実現され
る可能性が高いと予想されるが、多数のキュービットを自在に扱う高機能汎用量子コンピ
ュータ実現の可能性は現在では未知数である。
◆バイオコンピュータ(bio computer)〔コンピュータ〕
生命現象を利用した新しい原理のコンピュータの総称で、少なくとも2通りの意味で用い
られている。一つは、現在のコンピュータがシリコンや化合物半導体によるトランジスタ
のスイッチ動作で計算処理を行っているのに対して、生物の神経細胞の信号伝達や、たん
ぱく質、核酸などの生物化学反応を利用して計算処理を行うコンピュータを意味する。も
う一つは、現在のコンピュータが命令を逐次解読して実行する逐次的計算処理を行うのに
対して、生物が行っているある種の並列情報処理を模倣した計算原理のコンピュータで、
それを実現する演算素子や計算機構自体は従来の半導体トランジスタを用いる。前者の意
味では分子コンピュータ(→別項)やその特別な場合であるDNAコンピュータ(→別項)
が代表的である。また、後者の意味では、ニューラルコンピュータ(→別項)、脳型コンピ
ュータ(→別項)がある。いずれの場合も現在のノイマン型コンピュータ(→別項)の逐
次処理では扱えないような問題を、生命現象に見られるある種の並列処理を取り入れた計
算機構により解決しようとする点が共通している。
◆分子コンピュータ(molecular computer)〔コンピュータ〕
分子レベルの生物化学的、物理化学的現象をコンピュータの基本論理素子や計算機構に利
用しようとするコンピュータ。現在のシリコンを用いたトランジスタに比べて、速度、消
費電力などの点で潜在的に優位性をもつとされる分子レベルの論理素子実現の研究が盛ん
である。IBM社は2001年8月にカーボンナノチューブを用いて、コンピュータの基
本論理素子の一つであるNOTゲート回路を世界で初めて単一分子で実現したと発表した。
ヒューレット・パッカード(HP)社とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)
は02年1月、希土類元素をシリコン基板と反応させて原始数個分の幅の配線を格子状に
自己形成させ、新開発の「ロタクサン」とよばれる化合物の単分子膜を交差した配線の間
に挟み込み、その分子に信号を流すことで分子スイッチ(論理ゲート)を作成したと発表
した。
◆DNAコンピュータ(DNA computer)〔コンピュータ〕
計算を実現する分子を自由に設計でき、合成も比較的容易で化学的にも安定なDNA(デ
オキシリボ核酸)分子を利用する分子コンピュータ。DNA分子を構成する4種の塩基(A、
T、C、G)の配列を目的に合わせて設計し、その配列をビット列と見立てる。それぞれ
の塩基が1対1で相補的な特定の塩基としか結合しないという性質に基づいて二重らせん
構造を形成するときの同時並列的な分子反応によって高速並列計算を行う。
プリンストン大学では最近、DNAが特定のたんぱく質を合成したりそれらの生産を抑制
する働きのあることを利用し、合成された場合は1、抑制された場合は0として符号化す
ることにより、RNA(DNAを転写する分子)を使ってチェスの問題を解いた。
◆脳型コンピュータ(brain computer)〔コンピュータ〕
人間の脳と同様の原理に従った学習、認識、記憶、思考、直観などによる情報処理の実現
をめざした研究開発の目標となるコンピュータの総称。現在のノイマン型コンピュータの
逐次処理では計算の手間が膨大で扱えないような問題を、人間の脳が果たす並列処理機能
を模倣した計算機構によって解決することを目的としている。
◆ファジーコンピュータ(fazzy computer)〔コンピュータ〕
現在のコンピュータの基礎をなす2値論理では扱うことのできない、すなわち、Yesで
もNoでもない、その中間のあいまいさのある情報を扱うために、カリフォルニア大学の
L・A・ザデー教授が1965年に提唱したファジー理論に基づいて情報処理を行うコン
ピュータ。人間の思考に密接に関係した理論で、制御工学、人工知能分野への応用が進ん
でいる。ファジー理論を応用した製品開発は、家電製品、カメラ等の消費財分野から医療
機器、産業用機械、航空宇宙機器等に至るまで、急速に広がりつつある。新技術開発事業
団とオムロンは、世界最高速のアナログ式ファジー推論用マイクロプロセッサの開発に成
功している。これは、山川烈九州工業大学教授らの研究成果である「ファジー推論用マイ
クロプロセッサーの製造技術」を実用化したものである。
◆ニューラルコンピュータ(neural computers)〔コンピュータ〕
脳を構成しているニューロン(Neuron
神経細胞)やそれらが結合したニューラルネット
ワーク(Neural Network
神経回路網)の構造や情報処理機能をモデル化し、脳のもつ優
れた並列処理能力の人工的実現をめざすコンピュータ。現在のノイマン型コンピュータで
は、計算の手順(アルゴリズム)が明確に定義される場合にはそれを記述したプログラム
によって超高速大規模計算が可能であるが、日ごろ人間がなにげなく行っている「情景を
認識する」とか「言葉を理解する」という処理は非常に難しい。このようなノイマン型コ
ンピュータが不得意とする問題を脳の情報処理機能を模倣した計算モデルで実現しようと
するもので、現在のノイマン型コンピュータの上のソフトウェアとして実現するものと、
神経細胞機能を模倣したニューロン素子を作成してハードウェアとして実現するものとが
ある。
◆光コンピュータ(optical computer)〔コンピュータ〕
情報伝達の媒体としての光がもつ時間的な高速性と空間的な並列性を利用して、これまで
の電子技術を利用したコンピュータより高速かつ大容量の情報処理をめざそうとするコン
ピュータ。レンズ系がフーリエ変換機能をもつことから光による2次元パターンの並列処
理やニューラルコンピューティングにおける並列処理を光で実現した例など、2次元情報
に対する光処理などでは効果を発揮するが、汎用的な「計算」の実現では、光技術が電子
技術にとってかわることは困難と考えられている。一方、近年の電子技術では配線遅延や
通信遅延がコンピュータの性能のボトルネックとなりつつあることから、「通信」における
光の優位性を利用して、システム間、ボード間、チップ間の「光インタコネクション」を
導入したコンピュータの研究が盛んになっている。
◆データフローコンピュータ(data-flow computer)〔コンピュータ〕
現在のほとんどのコンピュータはノイマン型とよばれ、主記憶に置かれたプログラムから
命令を読み出してその内容を解釈しながら逐次的に実行するためのプログラムカウンタと
よばれる逐次実行制御機構をもつ。これに対してプログラムカウンタをもたないコンピュ
ータを非ノイマン型とよぶ。データフローコンピュータは、演算に対応するノードをデー
タの流れに対応するアークで結んだデータフローグラフでプログラムが表現され、グラフ
上のトークンとよばれるデータが流れていくことによって計算が行われる非ノイマン型の
コンピュータである。1970年代初めにマサチューセッツ工科大学(MIT)のJ・B・
デニスによって提案された。わが国では、電子技術総合研究所、NTT通信研究所などで
試作機が作られ、並列計算による高速性が示されている。シャープは画像処理用のデータ
フロープロセッサチップを開発した。
◆非同期式コンピュータ(asynchronous computer)〔コンピュータ〕
データ転送や演算処理のタイミングをクロックとよぶ同期信号で制御する現在の同期式コ
ンピュータに対して、そのようなクロック信号を使わず、部分モジュールがそれぞれの信
号遷移の因果関係に基づいて局所的に生成するタイミングによって動作を進めるコンピュ
ータ。論理回路レベルの動作方式の違いなのでユーザーあるいはプログラマーから見た同
期式コンピュータと非同期式コンピュータの区別はない。VLSI製造プロセス微細化の
進行で、素子のスイッチング遅延よりもむしろ配線遅延が支配要因になり、システム全体
へのクロック分配を基本とするタイミング設計が困難になってきたため、クロックを使わ
ない非同期式設計スタイルの研究が盛んになってきた。非同期式設計スタイルには、(1)
局所計算の平均遅延で性能が決まるので高速計算が可能、(2)遅延変動の影響を受けない
ロバスト性(外的要因に左右されないシステム耐性があること)、(3)必要なときに必要
な場所でしか信号遷移が起きないので低電力消費、(4)タイミング調整の必要がないので
モジュラー設計が容易、などの利点がある。すでに、実用規模の非同期型マイクロプロセ
ッサが東大、マンチェスター大、カリフォルニア工科大などで完成し、稼働している。
◆ジョセフソンコンピュータ(Josephson computer)〔コンピュータ〕
1962年にジョセフソンが見出したジョセフソン効果(二つの超伝導体の障壁を透過し
て、ある臨界電流値までは電圧を発生させずに電流が流れる現象)を示すジョセフソン接
合を利用した超伝導論理素子を用いて実現されるコンピュータ。現在、普通に用いられて
いるシリコン半導体と比較して、
(1)スイッチング速度が高速(数ps∼数十ps)、
(2)
電力消費が小さい(数マイクロワット/ゲート)、(3)超伝導配線による無歪み信号伝送
が可能、などの特徴がある。小規模なプロセッサ、4キロビツトRAMなどが試作され、
超伝導LSIの高速動作が確認されている。
▲コンピュータとネットワーク〔コンピュータ〕
◆コンピュータネットワーク(computer network)〔コンピュータ〕
独立した異種のコンピュータを互いに接続し、パケット交換方式で情報をやりとりする広
域のネットワーク。1969年にアメリカ国内の大学や研究所などのコンピュータを通信
回線で接続し、各地に分散している計算資源、データを共有することを目的として、AR
PANET(→別項)が実験サービスを開始したのがコンピュータネットワークの始まり
とされる。コンピュータ同士が通信を行うにはネットワークプロトコル(通信手順)が必
要であり、77年からISO(国際標準化機構)によって7階層からなるOSI(Open
System Interconnection) 参照モデルを国際標準とする活動が開始された。しかし、現在、
実際には、OSI参照モデルには準拠していないTCP/IP(→別項)が最も広く用い
られている。ネットワークが張られる地域的な規模によってローカルエリアネットワーク
(LAN)とワイドエリアネットワーク(WAN)に大別される。また認証技術を駆使し
てアクセスを企業内に限定したイントラネット、社外の取引先だけがイントラネットにア
クセスできるエクストラネットが構築されている。世界中に存在するこれらのさまざまな
ネットワークを接続したものがインターネットである。
◆イーサネット(ethernet)〔コンピュータ〕
ゼロックス社、デジタル・エクィップメント社、インテル社が共同開発して1980年に
製品化したLANの名称。後にIEEE802・3によって標準化された。LANといえ
ばイーサネットをさすことが多い。すべての端末を共通バスで結合して、衝突検出付きキ
ャリア感知多重アクセス(CSMA/CD)方式に基づき、毎秒10メガビツトの速度で
データ伝送を行う。送信端末はバス上のキャリアを感知し、空いていればデータを送出す
る。バス上でのデータの衝突を検出するとデータ送出を中止し、ランダムな時間待った後
にデータを再送する。
◆インターネット(internet)〔コンピュータ〕
各国、各地域のコンピュータネットワークが接続されてできあがった地球規模の巨大なネ
ットワークあるいはその運用活動。1969年に実験サービスが開始されたアメリカ国防
総省の研究用ネットワークARPANETに端を発し、その後各国のネットワーク運用活
動が連携することによって規模を拡大し、現在は高度情報化社会における地球規模のイン
フラとなっている。複数の異なるコンピュータネットワークの橋渡しをするゲートウェイ
あるいはルータとよばれるコンピュータは、それに接続されているネットワークの形を認
識し、受け取ったパケット(分割された情報の一単位)が自分宛ではない場合、宛先と中
継先の組合せを記述したルーティングテーブルを参照して、パケットを適切な転送先へ送
る。逆に、ルーティングテーブルの情報を意図的に隠すことによってある組織のネットワ
ークへの外部からのアクセスを制限することができる。
◆クライアント・サーバー・モデル(client / server model)〔コンピュータ〕
コンピュータネットワークで実現される分散コンピューティング(→別項)あるいは分散
処理の代表的な計算モデル。果たすべき仕事がいくつかの処理で構成されている場合、そ
れぞれの処理サービスを提供するサーバー(server)と、各サーバーへ必要な処理サービス
を依頼することによって所望の仕事を果たすクライアント(client)に分けて分散処理を実
行する。サーバーには、ネームサーバー、ファイルサーバー、データベースサーバー、計
算サーバー、通信サーバー、プリントサーバーなどがある。
◆ネットワークOS(NOS)(Network Operating System)〔コンピュータ〕
広義には、ネットワーク機能を備えたオペレーティングシステム(OS→別項)であり、
複数のコンピュータが結合していることをユーザーに意識させない分散OSも含まれるが、
狭義には、ネットワークに接続された情報資源を共有、管理するため、既存のOSにネッ
トワーク機能を付加したソフトウェアをさす。クライアントからの処理要求をサーバーに
送り、サーバーがそれに基づいて処理した結果を返す形態を実現するクライアント/サー
バー型OSが主流である。マイクロソフト社のランマネージャ(LAN Manager)やウィン
ドウズNT、ノベル社のネットウェア(Netware)、アップル・コンピュータ社のマックO
SやUNIXなどが代表的である。
◆ネットワークストレージ(network storage)〔コンピュータ〕
ネットワークに直接接続して使用するファイルサーバー専用機。ハードディスクとネット
ワークインターフェース、OS、管理用ユーティリティなどを一体化した単機能サーバー
(アプライアンスサーバー)で、記憶装置をネットワークに直に接続したように見えるこ
とからNAS(network attached storage)とよばれる。ネットワークに接続されたほかの
コンピュータからは、通常のファイルサーバーと同様、共有ディスクとして使用すること
ができる。一方、LANとは独立したストレージ専用のネットワーク環境に大容量ハード
ディスクやテープドライブのようなバックアップ・デバイスを接続し、複数のサーバーで
ストレージを共有可能にするデータ管理システムをSAN(storage area network) とい
う。NASもSANもアプリケーションサーバーのストレージ処理にかかる負荷を軽減す
ることにより、データベースへのアクセスの高速化を実現する。
◆ネットワークコンピュータ(network computer)〔コンピュータ〕
ハードディスクをもたずにOSやアプリケーションプログラムをすべてネットワークのサ
ーバー側からダウンロードして使用するコンピュータ。安価なコンピュータを強力なサー
バーに接続し、ハードディスクやCD‐ROMドライブなど、ネットワーク上のコンピュ
ータ資源をあたかも自分のコンピュータにつながる資源のように使うというコンセプトで
1995年ごろにオラクル社が提唱した。アプリケーションソフトウェアのインストール
やアップデートなどのメンテナンスをユーザーが行う必要がない、端末ごとにソフトウェ
アをインストールするためのハードディスクが必要ない、オペレーティングシステムは最
小限度で済むために大きなメモリーサイズは必要ない、などの利点があり、導入コストや
維持コストが安価になる。
▲コンピュータの応用〔コンピュータ〕
◆バーチャルリアリティ(VR)(virtual reality)〔コンピュータ〕
人間の五感を生じさせる感覚器にコンピュータで生成した人工的な情報や刺激を提示し、
あたかも現実の空間と同等の空間が自分の周囲に存在するような感覚を生じさせる技術や
システムの総称。人工現実感あるいは仮想現実感ともよばれる。バーチャルリアリティで
作り出された人工的な現実空間を仮想空間、仮想環境、仮想世界などとよぶ。バーチャル
リアリティは、各種シミュレーション、ヒューマンインタフェース、娯楽産業、報道、芸
術、医療、工業設計、ソフトウェア作成、ロボットなど多岐にわたる分野において急速に
展開されており、広義にはコンピュータあるいはネットワーク上で作られるあらゆる仮想
環境(サイバースペース)の実現にかかわる。
◆人工知能(AI)(artificial intelligence)〔コンピュータ〕
人間の知的活動の一端を模倣し実行する機械あるいはシステム。人工知能研究には人間の
知能の観察とモデル化に力点をおく立場と、コンピュータによる実現に力点をおく立場が
あるが、研究分野は多岐にわたる。基礎的な分野として、種々のルールを総合して矛盾の
ない結論を導く推論、知識を効率良く蓄積するための知識表現、収集されたデータから一
貫性のある規則を見出そうとする機械学習、多数のデータの中から条件に合うものを見つ
け出す探索、普通の文章に書かれている意味内容をコンピュータに理解させる自然言語理
解、絵の内容を理解させる画像認識、マイクに向かって話した内容を理解させる音声認識
などがある。問題解決の手法、システムとして、両親の特徴が子に遺伝する原理を利用し
た遺伝アルゴリズム、専門家の知見をルールとして推論するエキスパートシステム、生物
の神経の信号伝達の原理を模倣したニューラルネット、簡単な問題を解決できるエージェ
ントが多数集まって問題解決するマルチエージェントなどがある。応用的な研究として、
ゲーム、情報検索、データマイニング、プラニング、ロボットなどがある。
◆パターン認識(pattern recognition)〔コンピュータ〕
画像、音声、文字、波形などのパターンがあらかじめ定義されている複数のクラスのどれ
に当てはまるかをコンピュータにより判定する処理。具体的には、画像認識、顔認識、音
声認識、文字認識、図形認識、3次元物体認識、医用画像診断などの応用分野で実用化さ
れている。パターン認識との関連で、人間のもつ高度な視覚機能を情報科学的観点から解
明し、コンピュータを用いて柔軟な視覚情報処理機能を実現する分野はコンピュータビジ
ョンとよばれる。
◆自然言語処理(natural language processing)〔コンピュータ〕
人間が日常生活で話す言葉や文書として記録する文章として使う言語を、プログラミング
言語のような人工言語との対比から、自然言語とよぶ。この自然言語をコンピュータを用
いて処理し、人間と機械あるいは人間同士のコミュニケーションをより円滑に行えるよう
にする技術を自然言語処理という。応用分野として、外国語を自動的に翻訳する機械翻訳
システム、自然言語によるコンピュータとの対話システム、自然言語による要求を理解し
て必要な情報を収集する情報検索システムがある。
▲コンピュータの基礎用語〔コンピュータ〕
◆ノイマン型コンピュータ(Neumann computer)〔コンピュータ〕
ハンガリー生まれの数学者ジョン・フォン・ノイマンが中心となって1940年代半ばの
草創期に設計したコンピュータEDVACの「プログラムとデータを区別せずに同じメモ
リーに格納し、どちらも等しく演算対象とする」という特徴(ノイマン・アーキテクチャ)
をもつコンピュータ。現在まで実用に供されているコンピュータのほとんどはノイマン型
コンピュータである。この特徴によってプログラム実行中にプログラムを自動的に書き換
えることができ、万能チューリング機械としての計算能力が生まれた。ノイマン型コンピ
ュータは、プログラムカウンタを用いてメモリーから命令を逐次的に読み出し、デコード
し、演算対象をメモリーから読み出して演算し、結果をメモリーに書き込む、というサイ
クルを繰り返す。プログラムカウンタによる命令の逐次読み出しが汎用性という強力な武
器を与えているが、同時に性能向上を抑える要因としてノイマンボトルネックともよばれ、
それを回避した非ノイマン型コンピュータの研究もある。
◆デジタル(digital)〔コンピュータ〕
整数Rを基数とし、0からR‐(マイナス)1までの整数を桁とするR進数で表される情
報やそれを処理する装置を表す形容詞。コンピュータが扱うすべての情報は2を基数とし
て0と1のみを各桁に用いる2進数で表されるので、2値データ、2値論理、2進数など
とほぼ同義に用いられることもある。コンピュータが扱う情報はすべて0と1の列で表さ
れるデジタル情報であり、コンピュータを構成する論理回路は0と1の2値のみをとるデ
ジタル回路である。
◆プログラミング言語(programming languages)〔コンピュータ〕
コンピュータに計算手続きを指示するプログラムを記述する言語。最も広く使われている
のは手続き型言語であり、ノイマン型コンピュータの命令を順次実行して計算手続きを進
めていくことに対応した記述になる。機械語やアセンブリ言語はコンピュータが直接解釈
できる手続き型言語であり、その動作記述は直接ハードウェアの命令に対応しているので
機種に依存する。コンパイラやインタプリタを用いる高級言語は命令に直接対応しないの
で機種には依存しない。手続き型高級言語の例としてFORTRAN、Pascal、C言語な
どがある。手続き型言語とは異なる計算モデルに基づく言語には関数型言語(例
論理型言語(例
Prolog)、オブジェクト指向(→別項)型言語(例
Lisp)、
Smalltalk)などが
ある。JAVAはサンマイクロシステムズ社が開発したインターネット環境で動くプログ
ラムの機能を備えたオブジェクト指向型言語でネットワークとともに広く普及している。
◆コンパイラ(compiler)〔コンピュータ〕
高級言語で書かれたプログラム(ソースプログラム)を入力とし、コンピュータが実行で
きる機械語あるいはそれと1対1に対応するアセンブリ言語で記述したプログラム(オブ
ジェクトプログラム)に変換するプログラム。コンパイラ自身もプログラムなので適当な
コンピュータの上で実行されるが、オブジェクトプログラムが走るコンピュータの上で実
行されるものをセルフコンパイラとよび、それとは異なるコンピュータの上で実行される
ものをクロスコンパイラとよぶ。
◆コンピュータ・アーキテクチャ(computer architecture)〔コンピュータ〕
コンピュータシステムはハードウェアのレベル、オペレーティングシステム(OS)のレ
ベル、さらにその上の応用プログラムのレベル、というように階層構造をもつが、その階
層のあるレベル以下の構成や実現方法をその上位レベルから見た機能として抽象化したコ
ンピュータの構成あるいは様式のこと。もともとアーキテクチャは英語で建築様式あるい
は建物の構造という意味であり、プログラマーから見えるコンピュータの構成、あるいは
ソフトウェア側から見たハードウェアの構成、すなわち、ソフトウェアとハードウェアの
間のインタフェースを定める仕様を意味する。狭義には、コンピュータが直接理解できる
言語である機械語命令とデータ形式を定義した命令セットのことであり、命令セットアー
キテクチャという。
着目するレベルによって、上位ではOSレベルアーキテクチャ、また下位ではプロセッサ
アーキテクチャ、メモリーアーキテクチャ、マイクロ命令アーキテクチャなどを定義する
ことができる。
◆プロセッサ(processor)〔コンピュータ〕
プログラムの命令を逐次取り込んで解読し、その内容(演算、データ転送、制御など)を
実行するコンピュータの中枢部。CPU(Central Processing Unit)、あるいはMPU(Micro
Processor Unit)ともいう。コンピュータは、プログラムやデータを格納する主記憶装置、
各種演算器やレジスタ群からなる演算装置、命令実行を制御する制御装置、通信を含む入
出力装置などの基本要素で構成されるが、そのうち、制御装置と演算装置をまとめた部分
をプロセッサとよぶ。特にそれらを1チップに集積したものをマイクロプロセッサとよぶ。
初期のコンピュータはすべての動作が中央の一つの汎用プロセッサで制御されたのでCP
Uの名があるが、現在は並列動作で処理性能を向上させるため、中央の汎用プロセッサに
加えて、各部の処理と制御に専用の高速演算プロセッサ、信号処理プロセッサ(DSP)、
ファイル制御プロセッサ、通信制御プロセッサ、入出力プロセッサなどを用いることが多
い。
◆VLSI(very large scale integrated circuit)〔コンピュータ〕
1センチメートル四方程度のシリコンチップ上に近年では数百万から数千万個のトランジ
スタを搭載した集積回路。超大規模集積回路あるいは超LSIともいう。過去40年、半
導体集積回路技術の目覚ましい進歩で「トランジスタの集積度は18カ月で2倍になる」
といわれるほど集積度が向上してきたため、時代とともに呼び名が変わってきた。196
0年代には数十から数百個のトランジスタ集積度で集積回路(IC
とよばれていたが、70年代には、大規模集積回路(LSI
Integrated Circut)
Large Scale Integrated
Circuit)とよばれるようになり、80年代にはいると、さらに集積度が向上し、超大規模
集積回路あるいはVLSIとよばれるようになった。その後も集積度は向上し続けたが、
もはや「大規模以上」を表現する適当な形容詞もないため、以後はVLSIあるいは単に
LSIともよばれている。システムLSIの同義語としても用いられる。最新のペンティ
アム4プロセッサは約4200万個のトランジスタを搭載しているといわれている。
◆浮動小数点演算(floating point operation)〔コンピュータ〕
コンピュータで科学技術計算を実行する場合の数値表現である浮動小数点形式のデータに
対する演算。浮動小数点形式はコンピュータの限られたレジスタのビット数でできるだけ
広い範囲の数値を表現するための方法であり、基数Rを2、10、16などと定めたとき、
実数Nは、符号s、指数e、仮数mを用いて、
N=(‐1)s・m・Re
と表される。
現在最も普及しているIEEE標準形式の浮動小数点表示では、Rは2であり、単精度の
場合、符号sに1ビツト、指数eに8ビット、仮数mに23ビットを割り当てた合計32
ビットを用いている。浮動小数点演算では、演算結果を浮動小数点に丸めることによる丸
め誤差が生じ、また計算によっては無限回の反復を有限回で打ち切るために打切り誤差が
生じるため、これらの誤差を最小にする数値計算法が工夫されている。コンピュータの演
算性能を評価する尺度として用いられるFLOPS(フロップス)は1秒間に実行できる
浮動小数点演算の回数を表す。
●キーワード〔コンピュータ〕
●量子情報技術(QIT)(Quantum Information Technology)〔コンピュータ〕
現在の情報技術では電気や光などの「波」の性質を利用して情報を処理、伝達するのに対
して、電子や光などの「粒子」の性質を利用して情報を処理・伝送しようという技術であ
る。量子情報技術により、現在の情報技術では実現不可能なさまざまな機能、例えば、絶
対に解読不可能な暗号通信(量子暗号)、シャノンの定理の限界を打破する超高速通信(量
子通信)、現在のスーパーコンピュータの能力を凌駕する超並列・高速情報処理(量子コン
ピュータ(→別項))、が実現される可能性があることが理論的に証明されている。
●ディペンダブルコンピューティング(dependable computing)〔コンピュータ〕
ディペンダビリティ(dependability)を飛躍的に向上させた情報システム/ネットワーク
を実現するコンピュータ技術の総称である。ディペンダビリティとは、コンピュータシス
テムが安全で信頼できるサービスを提供する能力であり、可用性(availability)、信頼性
(reliability)、安全性(safety)、機密性(confidentiality)、完全性(integrity)、保守性
(maintainability)といった基本属性を総合したシステムの性質である。セキュリティ
(security)とフォールトトレランス(→「フォールトトレラントコンピュータ」)の概念
を包含する、より包括的なシステム概念である。高度に発達した現在の社会インフラとし
て埋め込まれている複雑な情報システムのディペンダビリティ確保は、国家的にも、国際
的にも、最優先課題になってきている。
システム障害を引き起こす原因はフォールト(fault)とよばれ、大別して、
(1)プログラ
ムのバグ、論理ミス、故意の改ざんなどの設計フォールト、(2)製造欠陥、経年劣化、電
磁干渉などの物理的フォールト、(3)入力ミス、クラッカー攻撃などの操作フォールト、
に分けられる。いずれも、自然発生的なものと人為的なものがある。また、人為的フォー
ルトには偶発的なものと故意によるものがある。安全性がきわめて重要な分野で、特に近
年増加が指摘されている設計フォールトに対する耐性を備えた情報システムの実現例とし
て 、 欧 州 地 下 鉄 列 車 速 度 制 御 シ ス テ ム S A C E M ( Continuous
Control
Automatic
Train
System)、欧州鉄道信号制御システムELEKTRA、エアバスA320/A3
30/A340飛行制御システム、ボーイング777飛行制御システムなどがある。
●トロン(TRON)(The Realtime Operating system Nucleus)〔コンピュータ〕
1984年に坂村健(現在、東京大学教授)が提案したリアルタイムシステム組込み用オ
ペレーテイングシステム。仕様が公開された「オープンテクノロジー」として、坂村のリ
ーダーシップのもとで、民間企業と大学が参加するコンソーシアムであるトロン協会を中
心にして仕様の標準化と普及活動が進められている。トロンプロジェクトとよばれるその
活動には、産業機器制御用OSのITRON仕様、ビジネス機器用OSのBTRON仕様、
情報通信ネットワーク用OSのCTRON仕様、分散型マルチプロセッサシステム用OS
のMTRON仕様、32ビットマイクロプロセッサのTRONCHIP仕様などの標準化
と普及活動がある。これらのうち、組込み機器向けリアルタイムOS仕様のITRON仕
様のOSは、国内で開発される組込み機器の約半数で採用され、事実上の業界標準となっ
ている。通信用のCTRON仕様OSは、NTTの交換機の標準OSとして採用されてい
る。ビジネス用のBTRON仕様OSも多文字・多言語が扱える「超漢字」システムが注
目を集めている。
●バイオ・インフォマティクス(bioinformatics)〔コンピュータ〕
生命科学と情報科学が融合してできつつある新しい学問領域であり、生物情報学あるいは
計算生物学(Computational Biology)ともよばれる。ゲノム情報を出発点とした新しい生
命科学分野では生命の原理を解明する基礎研究においても、医療や創薬への応用研究にお
いても近年その重要性が急速に高まっている。例えば、遺伝子発現やたんぱく質の構造決
定、プロテオーム解析などの研究においては、膨大で多種多様な生物情報を効率良く整理・
解析し、その機能や相互作用を研究し、その生物学的、医学的意味を明らかにする必要が
ある。その場合、DNA配列の管理や分析、統計的パターンとしてのDNAパターンのモ
デル化、さまざまなゲノム情報のデータベース構築、ゲノムの発現量の分析法、システム
生物学のための分析ソフトウェアの活用、たんぱく質の視覚化やプロファイリングなどに
おいて、コンピュータ技術の活用が不可欠である。このため、生命科学に情報科学の視点
や概念を導入するバイオインフォマティクスを新しい学問分野として構築して研究開発を
促進するとともに人材を養成することが緊急の課題となりつつある。
●システムLSI(system LSI)〔コンピュータ〕
一つのシリコンチップ上にプロセッサ、メモリー、通信/入出力コントローラなど、シス
テムを構成する主要部分を搭載し、それ自体をひとつのシステムにするLSI。半導体集
積回路技術の進歩によって1980年代にはいるとシステムの主要部分をすべて1チップ
上に収容できるほど集積度が向上したため、「1チップ上に実現されたシステム」という意
味でシステム・オン・チップ(SoC
System on Chip)という設計概念が広まるととも
にシステムLSIという名前も登場した。このころ、集積回路の呼び名もLSIからVL
SIに変わった。したがって、システムLSIという表現は、SoCあるいはVLSIと
同じ文脈でほとんど同義語として用いられることも多いが、VLSIが単に集積規模を表
しているのに対して、システムLSIは、素子技術とシステム技術が融合したSoC技術
によって実現される成果物を意味している。また、最近では、1チップ上に、マイクロプ
ロセッサや画像処理プロセッサなど、複数のプロセッサを搭載する「マルチプロセッサ・
オン・チップ」が可能になるとともに、従来のようにハードウェアが完成してからソフト
ウェアを開発するのではなく、VLSI設計の初期段階から、ソフトウェアとハードウェ
アの分担を最適に調整し、同時進行で協調して設計する「ソフトウェア・ハードウェア・
協調設計」などの考え方も一般的になってきた。システムLSIのメリットとして、シス
テム要素を同一チップ上に搭載することによる、高速化、低電力化、小型化などが挙げら
れる。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]
パソコン〔情報・メディア〕
▽執筆者〔パソコン〕
下島
朗(しもじま・あきら)
フリーライター
1960年東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部卒。企画会社勤務などを経て、フリ
ーに。著書に『パソコン活用法―挫折しないための基礎知識』『パソコン用語
知ったか辞
典2002』などがある。
▲パソコンの概要〔パソコン〕
◆パソコン(Personal Computer)〔パソコン〕
パソコンは、パーソナル・コンピュータの略で、個人向けコンピュータといった意味。英
語では、PCと略すことが多い。コンピュータは当初、大がかりな装置だったが、高性能
化の一方で小型化も進み、1970年代後半にはパソコンの原型となるマイコン(マイク
ロ・コンピュータ)が登場した。その後、81年にアメリカ・IBM社が、IBM
PC
(IBM Personal Computer)を発売。これが現在のPCの原型になる。
◆ハードウェア(hardware)〔パソコン〕
本来は金物といった意味。コンピュータ本体や周辺機器など、形のあるものをハードウェ
アという。略してハードともいう。
◆ウィンドウズ・パソコン(Windows PC)〔パソコン〕
基本ソフトにマイクロソフト社のウィンドウズ(→別項)を使っているパソコンを、一般
にウィンドウズ・パソコンとよんでいる。世界中のパソコンの9割以上がウィンドウズ・
パソコンといわれる。IBM互換機という言葉もあるが、これは本来、IBM
PCと互
換性があるパソコンという意味である。また、かつてIBM互換機で日本語を使うにはD
OS/V(→「DOS」)という基本ソフトを必要としたため、一般にDOS/Vパソコン
ともよばれた。
◆マッキントッシュ(Machintosh)〔パソコン〕
アップルコンピュータ社が発売している独自仕様のパソコン。マックOSという独自の基
本ソフトを使い、ウィンドウズが普及する前からアイコンとマウスによる操作を実現して
きた。熱心なファンをもつがシェアは続落し、国内外とも数%といわれる。
◆ホームパソコン(home PC)〔パソコン〕
明確な定義はないが、家庭で使うことに特化したパソコンやパソコン的な機器。テレビ型
のパソコンや、テレビにつないで使うセットトップボックス(STB
Set Top Box)が発
売されてきた。今後は、ハードディスク等にテレビ番組を録画したり、家電をコントロー
ルするホームサーバーという機器の普及が期待されている。
◆PDA(Personal Digital Assistants)〔パソコン〕
日本語では携帯情報端末とよぶ。パソコンより小型の携帯型の情報機器の総称。シャープ
のザウルス、ウィンドウズCEという基本ソフトを使うハンドヘルドPCやポケットPC、
パームOSを使うパーム端末などがある。パームOSは、パーム社のPDA向け基本ソフ
ト。
◆周辺機器(peripheral equipment)〔パソコン〕
パソコン本体以外の機器を周辺機器とよぶ。プリンタなどがその代表である。また、パソ
コン本体に内蔵されている、ハードディスクやCD‐ROMドライブ等も周辺機器に分類
される。
◆ソフトウェア(software)〔パソコン〕
コンピュータが作業する手順を、コンピュータに適した形で記述したもの。プログラムと
ほぼ同じ意味だが、現在のソフトウェアは複数のプログラムの集合体になっている。パソ
コン本体や周辺機器など形のあるものをハードウェアとよぶのに対して、形のないプログ
ラムをソフトウェアとよぶようになった。一般にソフトともいう。なお、パソコン上で扱
う文書や画像などはデータといって、ソフトウェアとは区別される。
◆基本ソフト(OS)(Operating System)〔パソコン〕
コンピュータ自体の操作に必要な、基本的な機能を提供するソフトウェア。アプリケーシ
ョンソフトが動くための土台にもなる。基本ソフトの中核となる部分をカーネルという。
ま た 、 ア プ リ ケ ー シ ョ ン ソ フ ト 等 と 連 携 を と る た め の A P I ( Application Program
Interface)、GUI(→別項)の機能を提供するユーザーインターフェース(UI
user
interface)、他の機器をコントロールするドライバなどの機能をもつ。最近の基本ソフトは、
これらの基本機能に加えて、インターネット接続機能や簡易アプリケーションソフトなど
も備えている。
◆アプリケーションソフト(application software)〔パソコン〕
ワープロ、表計算、データベース、画像処理、音楽再生、ホームページ閲覧、電子メール
の送受信、ゲームなど、目的に応じて使うソフトをアプリケーションソフトという。アプ
リケーションソフトは、ウィンドウズ版、マック版といったぐあいに対応する基本ソフト
が決まっていて、基本的に別の基本ソフト上で使うことはできない。
▲パソコン本体〔パソコン〕
◆デスクトップパソコン(desktop PC)〔パソコン〕
机の上などに設置して使うタイプのパソコン。机上型パソコンと書くこともある。現在は、
本体を縦置きにしたタワー型と省スペース型が主流。本体とモニターを一緒にした一体型
パソコンもある。
◆ノートパソコン(ラップトップ・パソコン)(laptop PC)〔パソコン〕
本体、キーボード、液晶ディスプレイが一体化した、持ち運び可能な小型パソコン。バッ
テリーを内蔵し電源のない場所でも使える。特に日本で人気が高く、最近は国内出荷の半
分以上を占める。CD‐ROMドライブなどを備えた大柄の機種をオールインワン型とよ
ぶ。このタイプは多機能で便利だが、かなり重量がある。これに対して、持ち歩きを重視
した機種をモバイル(Mobile)型とよぶ。モバイル型は、小型または、薄型で軽い反面、
キーボードが小さい、CD‐ROMドライブが外付けといった制約をともなうことが多い。
◆CPU(MPU)(Central Processing Unit / Micro-Processing Unit)〔パソコン〕
日本語では中央演算処理装置と訳される。コンピュータの中核となる装置で、実際に計算
などの処理を行う。パソコンの場合、一つの部品になっているためMPUともいう。ウィ
ンドウズ・パソコンでは、インテル社のペンティアム4やセレロン、AMD社のアスロン
などが主流となっている。マッキントッシュでは現在、モトローラ社のパワーPC
G3
/G4というCPUが使われている。
◆クロック周波数〔パソコン〕
CPUが作業するテンポを表し、MHz(メガヘルツ)やGHz(ギガヘルツ)という単
位で表す(1000メガヘルツ=1ギガヘルツ)。同じ名称のCPUなら、クロック周波数
が高いほど高性能で作業も速いとされている。
◆メモリー(memory)〔パソコン〕
単にメモリーというと、通常はメインメモリーをさす。カタログ等には、RAMと書かれ
ていることもある。容量をMB(メガバイト)という単位で表し、現在は256メガバイ
トのパソコンが多い。パソコンが使うソフトやデータは、ハードディスク等からメモリー
に呼び出され、CPUで処理されたデータがメモリーに返される。メモリーは、一時的に
データを記録する半導体である。そのため、パソコンの電源を切るとメモリー上のデータ
は消える。したがって、文書等はハードディスクに保存する必要がある。メモリーは、D
RAM等の半導体チップを小型の基板に取り付けた形状で提供されている。形や半導体の
違いでDIMM、RIMMなどの種類があり、パソコンによって対応するタイプが異なる。
◆BIOS(Basic Input / Output System)〔パソコン〕
基本ソフトより深いところで働くプログラムで、日本語では基本入出力システムというこ
ともある。役割は、大きく分けて三つある。まず、パソコンの電源を入れたとき、メモリ
ーやハードディスクなど基本的な機器を確認し、基本ソフトを探してパソコンを起動させ
る。次に、ハードディスク、キーボード、フロッピーディスクといった基本的な周辺機器
を制御する。そして、パソコンの基本設定を保存管理する。例えば、特定の機能やコネク
タを使えなくしたり、省電力機能の有効/無効などを設定できる。
◆マザーボード(mother board)〔パソコン〕
パソコンの中に必ず入っているメインの基板。この上に、CPUを取り付けるソケット、
メモリーを取り付けるスロットなどがある。また、各種半導体部品が直付けされている。
拡張カード(→別項)を取り付ける拡張バス(→別項)も、マザーボード上にあることが
多い。
◆システムバスクロック〔パソコン〕
CPUやメモリーなど、パソコン内の主要部品がデータを送受信するテンポを表す。これ
が速いほど、パソコン全体の処理速度が向上する。最近は、100メガヘルツまたは13
3メガヘルツのパソコンが多いが、より高速な新規格も増えている。メモリーを増設する
際は、このクロック数を合わせる必要がある。ほぼ同じ意味でFSB(Front Side Bus)と
いうこともある。
◆拡張カード〔パソコン〕
デスクトップパソコンに機能を追加するため本体内に取り付ける基板。拡張ボードともい
う。画面表示を受け持つビデオカード、音を生成するサウンドカード、周辺機器を接続す
るためのSCSIカード、LAN接続に必要なLANカード、内蔵モデムなどがある。
◆拡張バス〔パソコン〕
拡張カードを取り付けるためのスロット、およびその規格。具体的には、ビデオカードを
差すためのAGP(Accelerated Graphics Port)バス、現在最も普及しているPCI
(Peripheral
Component
Interconnect)バスなどがある。
◆内部接続規格〔パソコン〕
パソコンに内蔵のハードディスクやCD‐ROMドライブ等は、IDE(Integrated Device
Electronic)方式で接続されている。より正確には、現在はIDEを発展させたエンハンス
ト(Enhanced)IDE(E‐IDE)という方式になっている。これを正式に規格化した
ものを、ATA(AT Attachment)およびATAPI(AT Attachment Packet Interface)
という。ほかに、SCSI(Small Computer System Interface スカジー)方式もあるが、
最近は使用頻度が低い。
◆外部インターフェース〔パソコン〕
パソコンの外に機器を接続するための接合部分のことを、一般にポート(port)とよぶ。主
にモデムの接続に使われてきたシリアルポート、プリンタの接続に使われてきたパラレル
ポート、キーボードやマウスを接続するPS/2ポート、モニター用のコネクタなどがあ
る。このほか、SCSI用のコネクタを追加することもある。ただし、こうした古い方式
は使い勝手が悪くレガシーシステムと揶揄(やゆ)される。最近は、より新しい方式が普
及している。その代表が、ユニバーサルシリアルバス/USB(Universal Serial Bus)で、
パソコン起動中も機器の抜き差しができるほか、最大で127台の機器を接続できる。現
在は、データ転送速度を大幅に向上させたUSB2・0も普及しつつある。デジタルビデ
オ等との接続用に、IEEE1394も普及しつつある。この規格を、ソニーはi・LI
NK(アイ・リンク)、アップル社はFire
Wire(ファイアワイヤー)とよぶ。ま
た、LAN接続用のコネクタをもつパソコンも多い。
▲周辺機器〔パソコン〕
◆キーボード(key board)〔パソコン〕
文字入力に使う機器。ウィンドウズ・パソコンでは109日本語キーボードが標準。マッ
キントッシュは、特殊キーの配列が異なる独自のキーボードを使う。右側にある数字キー
とその周辺のキーをテンキーとよぶ。
◆マウス(mouse)〔パソコン〕
画面上のポインタ(矢印)を動かす小型の機器。ボタン操作でアイコンの選択などを行う。
裏面のボールの転がりで動きを読み取るが、最近は光を使って移動量を読み取る光学式マ
ウスもある。ノートパソコンには、マウスのかわりにトラックパッドやポインティングス
ティックが付いている。これらを、ポインティングデバイスという。
◆モニター(moniter)〔パソコン〕
パソコンの画面を映し出す機器で、ディスプレイともいう。ブラウン管を使ったテレビ型
のモニターをCRTディスプレイという。ノートパソコンには薄型の液晶ディスプレイが
使われている。最近では、液晶ディスプレイを使うデスクトップパソコンも多い。液晶デ
ィスプレイには、方式の違いでTFT、DSTN、HPAといった種類がある。TFTが
最も高画質で、現在の主流になっている。
◆ハードディスク(hard disk drive)〔パソコン〕
ソフトやデータを記録・保存しておく機器。現在は、すべてのパソコンが内蔵している。
必要に応じて増設もできる。密閉された金属の箱に、金属またはガラスの円盤が数枚入っ
ていて、そこに磁気を使ってデータを記録する。HDあるいはHDDと略すことも多い。
◆フロッピーディスクドライブ(floppy disk drive)〔パソコン〕
フロッピーディスク(FD)にデータを書き込んだり、書き込まれているデータを読み出
す装置。現在、ほとんどのパソコンが3・5インチ対応のドライブを1基内蔵している。
FDDと略すこともある。
◆CD(Compact Disk)〔パソコン〕
パソコン用のCDも音楽CDも基本的には同じ仲間で、記憶容量は約650メガバイト。
パソコン用として最も普及しているのはCD‐ROMで、これは読出し専用のCDといっ
た意味。ほかに、一度だけ書き込めるCD‐R、書換えもできるCD‐RWがあるが、利
用するには対応したドライブ(読み書き装置)が必要である。
◆DVD(Digital Versatile Disk)〔パソコン〕
DVDは、見た目はCDと同じだが記憶容量が大きい。記憶容量は、ディスクの種類や記
録方式によって異なるが、最低2・7ギガバイト、最大で17ギガバイト。映画やアニメ
を記録したDVDビデオのほか、パソコン用データを記録したDVD‐ROM、データの
書込みができるDVD‐RやDVD+R、書換えができるDVD‐RAM、DVD‐RW、
DVD+RWがある。それぞれ対応したドライブが必要。書換え可能なDVDの規格乱立
を収束させるため、複数の方式に対応するDVDマルチという規格もつくられている。
◆リムーバブルメディア/リムーバブルディスク(removable media / removable disc)
〔パ
ソコン〕
データの受渡しや保存を目的とした記憶装置や記憶メディア(媒体)。日本では、MO(光
磁気ディスク)の普及率が高かったが、最近はCD-RW等へ人気が移っている。このほか、
ZIPドライブ、フロッピーディスクとよく似たスーパーディスクなど数種類がある。い
ずれも専用ドライブが必要。
◆PCカード(PC card / PCMCIA card)〔パソコン〕
主にノートパソコンに機能を追加するクレジットカード大の機器。厚みの違いでタイプI、
II、III の3種類がある。ただし現在は、ほとんどがタイプ II となっている。パソコン側の
差し込み口をPCカードスロットといい、現在は、従来より高速でデータ転送できるカー
ドバス(Card bus)対応が普及している。PCカードには、USBやIEEE1394の
コネクタを追加するもの、無線LANの子機、LANカード、外付け周辺機器や携帯電話
等の接続アダプタなどの種類がある。複数の機能をもったものをマルチファンクションカ
ードという。
◆メモリーカード(memory card)〔パソコン〕
PCカードより、さらに小型のカード型の機器。現在は、主にデジタルカメラの写真保存
や音楽データの記録などに使われているが、文書などを記録することもできる。コンパク
ト・フラッシュ(CFカード)、スマートメディア、メモリースティック、SDメモリーカ
ードなどの種類がある。それぞれ形状が異なるため、互換性がない。ただし、PCカード
型のアダプタを組み合わせるとパソコンのPCカードスロットでデータの読み書きが可能
になる。
◆プリンタ(printer)〔パソコン〕
文書や画像データを印刷する機器。現在、家庭ではインクジェットプリンタが、オフィス
ではレーザープリンタが普及している。インクジェットプリンタは、液体のインクを紙に
吹き付けて印刷する。レーザープリンタは、コピー機と同様にトナーとよばれる粉を紙に
定着させて印刷する。どのくらい精細に印刷できるかを、dpi(dot per inch)という単
位で表し、基本的には数字が大きいほど美しく印刷できる。
◆イメージスキャナ(image scanner)〔パソコン〕
紙に描かれたり印刷された絵や写真を画像データとしてパソコンに取り込む機器。小型コ
ピー機のようなフラットベッド型、小型のハンディタイプ、写真フィルムから取り込むフ
ィルムスキャナなどがある。スキャナは、画像を点の集まりとして取り込む。どのくらい
精細に取り込めるかを、プリンタと同様にdpiで表す。
◆デジタルカメラ(digital camera)〔パソコン〕
通常は、静止画(写真)を撮るデジタルスチルカメラをさす。これとは別に、映像を撮る
デジタルビデオカメラ(DVカメラ)もある。デジタルカメラはフィルムを使わず、メモ
リーカード(→別項)に直接、画像データとして写真を保存する。デジタルカメラの画質
は、一般にCCD(Charge Coupled Device)の画素数が目安とされている。CCDは、光
の量をデータに変換する電子の目のようなもの。現在は、500万画素を超える高画質タ
イプも登場している。
◆モデム/TA(ターミナルアダプタ)(modem / Terminal Adapter)〔パソコン〕
モデムは、一般の電話回線(アナログ回線)を通じてインターネットに接続するとき必須
の機器。現在、ほとんどのパソコンが内蔵している。通信速度は現在、V・90という規
格に対応した56キロビット/秒が標準。ISDN回線の場合は、モデムの代りにTAと
いう機器を使う。ADSLやCATVの場合は、それぞれ専用のモデムを使う。
◆ルーター(router)〔パソコン〕
本来は、LAN(Local Aria Network)同士を接続するための通信機器。最近は、複数の
パソコンからISDN経由でインターネットに接続するダイヤルアップルーター、ADS
LやCATVから接続する場合に使うブロードバンドルーターといった機器も普及してい
る。
◆無線LAN(Wireless LAN)〔パソコン〕
複数のパソコンを相互接続してLANを組むには、専用ケーブルで物理的に接続するのが
一般的だった。最近は、無線を使って接続することも可能になっている。現在は、IEE
E802・11bという規格に対応した機器が普及しているが、より高速なIEEE80
2・11aに対応した機器も登場している。他社製品との接続が保証された機器にはWi
Fi(ワイファイ)マークが付けられる。無線LANの親機をアクセスポイントとよび、
その電波の届く範囲をホットスポットという。
◆テレビ機能〔パソコン〕
家庭向けパソコンのなかには、テレビ番組を受信・録画できるものがある。この場合、通
常はパソコン内部にその機能をもつが、外付けの機器を追加して実現することも可能だ。
映像はハードディスクに記録される。
▲OSと基本操作〔パソコン〕
◆ウィンドウズ(Windows)〔パソコン〕
マイクロソフト社の基本ソフトで、現在最も普及している。最新版は2001(平成13)
年秋に発売されたウィンドウズXP。パソコン向けのほかに、PDAなどで使われるウィ
ンドウズCEもある。
◆DOS(Disk Operating System)〔パソコン〕
ウィンドウズが登場する前に広く使われていた基本ソフト。MS‐DOS、PC‐DOS、
DOS/Vなどがあった。
◆マックOS(Mac OS)〔パソコン〕
アップルコンピュータ社が開発し、マッキントッシュに組み込んでいる基本ソフト。ウィ
ンドウズ登場前からGUI(→別項)による操作を実現してきた。最新版は2002(平
成14)年に登場したマックOS
X(テン)10・2。
◆ユニックス(UNIX)〔パソコン〕
主に、パソコンよりワンクラス上のワークステーションとよばれるコンピュータで使われ
ている基本ソフト。しかし、なかにはパソコンで使えるものもある。これをPCユニック
スといって、リナックス(Linux)、フリーBSD(Free BSD)、ソラリス(Solaris)等が
ある。
◆GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)(Graphical User Interface)〔パソコ
ン〕
マウスを使い、アイコン、ウィンドウ、メニューなどによってパソコンの主要な操作がで
きること。あるいは、その技術。現在主流の方法となっている。基本の画面をデスクトッ
プとよぶ。アイコンは、画面に表示される絵記号、ウィンドウは画面上に開く小画面のこ
と。
◆ドライバソフト(device driver)〔パソコン〕
周辺機器を動かすために必要なプログラム。周辺機器を買うと対応するドライバソフトが
付属している。ウィンドウズの中にも主要な機器のドライバソフトが用意されている。
◆日本語入力ソフト(IME)(Input Method Editor)〔パソコン〕
パソコンの日本語入力機能は、独立したソフトになっている。ウィンドウズにはMS‐I
ME、マックOSにはことえりというソフトが付属している。ジャストシステム社のAT
OK(エートック)も人気が高い。
◆ユーティリティソフト(utility software)〔パソコン〕
パソコンの使い勝手を良くする小道具的なソフト。画面の焼き付きを予防するスクリーン
セーバー、ハードディスク内を管理するソフト、画面に時計やカレンダー等を表示するソ
フトなどがある。単体で販売されているものもあるが、ある程度の機能は基本ソフトにも
付属する。
◆フォント(font)〔パソコン〕
画面に表示したり、印刷に使う文字をフォントという。点の集まりで文字を表現したビッ
トマップフォントと、輪郭線情報を記録したアウトラインフォントに分類される。アウト
ラインフォントは拡大しても印刷しても美しく、代表的なものにトゥルータイプフォント
がある。また現在は、文字の形に合わせて横幅や文字間隔が変わるプロポーショナルフォ
ントが主流になっている。ただし電子メールでは、幅がそろった等幅フォントを使うこと
が多い。
◆インストール/セットアップ(instal / setup)〔パソコン〕
パソコンにソフトを組み込んで使える状態にすることをインストールという。最近は、セ
ットアップということも多い。ただしセットアップには、周辺機器などを接続して使える
状態にするという意味もある。
◆再セットアップ〔パソコン〕
パソコンの不調などを理由に、購入時の状態に戻すこと。通常、パソコンに付属のリカバ
リーCDを使って基本ソフト、ドライバ類、付属ソフトをインストールしなおす。その後、
プリンタやインターネット接続の設定をやりなおす。文書や画像などのデータ、送受信し
た電子メールの記録なども失われるので、事前に各種リムーバブルメディア(→別項)に
コピーしておき、必要に応じて内蔵ハードディスクに戻す。
▲アプリケーションソフトとデータ〔パソコン〕
◆ワープロ・ソフト(word processor)〔パソコン〕
文書を作成するソフト。日本語入力(漢字変換)機能は、日本語入力ソフトとして別のソ
フトになっている。よく似たソフトにエディタ(editor)がある。これは文章入力にも使わ
れるが、本来はコンピュータ・プログラムの入力用でレイアウト機能などをもたない。
◆表計算ソフト(spreadsheet)〔パソコン〕
企業で広く使われている作表ソフト。グラフ作成機能や簡易データベース機能ももつ。
◆データベース・ソフト〔パソコン〕
大量の情報を、登録・整理・利用するためのソフト。現在は、複数のデータベースを連携
して利用できる、リレーショナル・データベースが主流。
◆オフィス・ソフト(office soft / suite)〔パソコン〕
ワープロ、表計算、データベース等、主要なビジネスソフトをワンパッケージにした製品。
機能的には単体売りの製品と変わらない。これとは別に、機能をしぼりながら1本のソフ
トにまとめた統合ソフトもある。
◆プレゼンテーション・ソフト〔パソコン〕
会議や発表会で使う資料を作成したり、その資料を画面等に映し出すためのソフト。
◆グラフィック・ソフト(graphics software)〔パソコン〕
絵を描いたり、写真を加工したりするソフトの総称。絵を描くソフトには、ペイントソフ
トやドローソフトがある。写真加工ソフトは、フォトレタッチソフトともよぶ。このほか、
立体的な画像を作成する3Dソフトなどがある。
◆インターネット・ソフト〔パソコン〕
最も代表的なものに、ホームページ閲覧用のブラウザと、電子メールの送受信を行うメー
ラーがある。個人ホームページを運営する場合、ホームページ作成ソフトを使うことも多
い。インターネットへの接続自体にもソフトが必要だが、現在は基本ソフトに機能が盛り
込まれている。このほか、情報提供用のコンピュータに組み込む各種サーバーソフトがあ
る。
◆音楽ソフト〔パソコン〕
現在のパソコンは、音楽CDを再生できる。また、音楽データをMP3(→別項)などの
データ形式に変換(圧縮)して楽しむことも人気が高い。パソコンで本格的に音楽を楽し
むことをDTM(Desk Top Music)という。シーケンスソフト(sequence software)を使
ってMIDI規格に準拠したデータを作成・編曲・再生するのが基本だ。
◆ビデオ編集ソフト〔パソコン〕
最近は、デジタルビデオカメラから映像を取り込んで手軽に編集できるソフトが増えてい
る。
◆フリーウェア(freeware)〔パソコン〕
インターネット等を通じて無料で配布されているソフト。これに対して、一定期間の試用
後、使い続けたい場合は少額の対価を払うソフトをシェアウェアという。また、インター
ネットで配布されているソフトをオンラインソフトともいう。
◆圧縮/解凍〔パソコン〕
データなどのファイル容量を小さくすることを圧縮といい、元に戻すことを解凍または展
開という。圧縮・解凍には専用ソフトが必要。データを圧縮すると、ハードディスクなど
の容量を節約できるほか、電子メールで添付ファイルを送るときも送受信の時間を短くで
きる。圧縮のことをアーカイブ(archive)ということもあり、圧縮ソフトをアーカイバと
いうこともある。
◆データ形式〔パソコン〕
ソフトやデータは、ファイルという単位で管理されている。例えば同じにみえる画像も記
録方法の違いなどによってさまざまなデータ形式が存在する。ウィンドウズの場合、ファ
イル名の後に付く3文字の英数字でデータ形式を識別していて、これを拡張子とよぶ。
◆修正プログラム〔パソコン〕
ソフトや機器の発売後に発覚した細かな不具合を回避するためのプログラム。修正モジュ
ール、パッチともいう。
●キーワード〔パソコン〕
●セキュリティホールとワーム〔パソコン〕
ワームとよばれる感染力の強いコンピュータ・ウイルスが猛威をふるっている。しかも、
その被害を拡大しているのは悪意のない一般ユーザーという困った現実がある。最近は、
電子メールの本文を読んだり、特定のホームページを開いただけでワームに感染すること
がある。感染するとワームは、そのパソコン内にある他人の電子メールアドレスを探し、
勝手にウイルス付きメールを発信する。その際、発信元を偽るものもある。つまり、ワー
ムに感染すると自分が被害者になると同時に加害者になってしまう。ワームは、ブラウザ
やメーラー、サーバーソフトなどの欠点を悪用したものが多い。この欠点をセキュリティ
ホールとよぶ。いわば「安全の抜け穴」だ。ソフトの開発元は、新たなセキュリティホー
ルが見つかるたびに対策プログラムを提供している。ウィンドウズの場合、「スタート」メ
ニュー内の「Windows Update」から入手できるので定期的に確認したい。これは、もはや
インターネット利用者の義務といっていいほど重要な作業となっている。
●データの復元と抹消〔パソコン〕
企業などから廃棄された、あるいは中古品として再販売されたパソコンのハードディスク
から重要データが流出するという事態が相次いでいる。通常、不要になったファイルを画
面上のごみ箱に入れただけでは削除されない。ごみ箱を空にする操作をしてはじめて、そ
のファイルを読み出せない状態になる。しかし、それでもまだ不完全だ。データを記録し
たハードディスクは目次付きの本に例えられる。ごみ箱を空にしても、そのディスクをフ
ォーマットしても、読めなくなるのは目次に相当する部分だけ。本文に相当する部分は残
っている。そのため、データ復元ソフトを使うと本文に相当する記録を読み取って目次を
再現、消したはずのデータを読み出すことが可能になる。これを防止する方法は二つある。
まず、ハードディスクを物理的に破壊する方法。もうひとつは、データ抹消ソフトを使っ
て本文に相当する部分に意味のない文字等を上書きすることだ。機密保全のため、パソコ
ン処分の際には必ず実行したい。
●タブレットPC〔パソコン〕
2002(平成14)年秋、タブレットPCとよばれる新型パソコンが複数のメーカーか
ら発売された。このパソコンは基本的にはノート型で、ウィンドウズXPタブレットPC
エディションとよばれる新しい基本ソフトが組み込まれている。最大の特徴は、ウィンド
ウズ自体が手書き入力と音声操作に対応したこと。専用のペンで画面に文字を書き、文章
を入力できる。それをテキストデータに変換することもできるが、手書きのまま記録して
おくこともできる。イラストや図表の書込みも可能だ。手書き入力というとポケットPC
など小型の情報機器(PDA)の印象が強いが、ウィンドウズXPタブレットPCエディ
ションは、ウィンドウズXPプロフェッショナル版の機能をすべてもったうえで手書きや
音声機能が追加されている。つまり上位製品にあたり、既存のウィンドウズ用ソフトをほ
ぼすべて使うことができる。なお、従来のウィンドウズは市販パッケージを購入して自分
でバージョンアップが可能だった。しかし、タブレットPCは手書き機能に対応したハー
ドウェアが必要なため、同ソフトが組み込まれたパソコンを買う必要がある。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]
放送・映像〔情報・メディア〕
▽執筆者〔放送・映像〕
志賀信夫(しが・のぶお)
放送批評懇談会理事長
1929年福島県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。NBA東京セッ
ション実行委員会会長。著書は『テレビ媒体論』『放送』『いまニューメディアの時代』『昭
和テレビ放送史』『デジタルHDTVの時代』『デジタル放送革命』など。
◎解説のフォーカス〔放送・映像〕
地上波デジタルでこう変わる
デジタル移行でのテレビ変容の実態
●総務省は電波の整理作業ともいえるアナアナ変換(アナログ周波数変更対策)費用18
00億円を国費(電波利用料)でまかなう方針を決めたので、アナログからデジタルへテ
レビ放送の本命である地上波テレビを、本格的に具体的に移行する行動計画を発表した。
2002(平成14)年11月から免許申請の受付けを開始、03年12月東京、名古屋、
大阪の3大都市圏を皮切りにスタート、その他の地域でも06年までに始まる。当面の移
行措置としてはアナログもデジタルと平行して放送していく。しかしアナログ放送は11
年7月に打ち切り、空いた帯域を需要の大きい移動体通信などに当てる方針だとしている。
●現在のアナログ放送用のテレビは、11年7月以降そのままでは使えなくなる。その前
に、BS(放送衛星)アナログ放送を取り止めるほうがいいとする案が強力であるが、ま
だ決定されていない。BSとCSとの役割、テレビ番組の内容や質の問題、ブロードバン
ドとテレビ放送のあり方などを議論・検討して、本格的なデジタル放送をどう構築してい
くかについては、02年2月から実際の作業段階に入って明らかにされる。
★2003年の新語〔放送・映像〕
★通信・放送のハード・ソフト分離構想〔放送・映像〕
通信・放送のハード・ソフト分離構想
IT戦略本部のIT関連規制改革専門調査会(座長・宮内義彦)が、2001(平成13)
年12月にまとめた報告書「IT分野の規制改革の方向性」で示された構想。通信、放送
の制度を、事業ごとの縦割りの規制体系から、ハードとソフトの機能ごとの横割りの競争
促進体系に転換し、通信・放送の融合の促進を図るというもの。
ハードとは、通信網や放送網といったネットワーク、ソフトとは、ニュースやドラマなど
のコンテンツをさし、それらに、料金を回収したり、利用者向けのサービスを行うプラッ
トフォームを加えた三つの事業に区分される。
それにともない、法体系も現行の通信関係法規と放送関係法規という区分ではなく、コン
テンツ法、プラットフォーム法、ネットワーク法という区分にする必要があると調査会は
構想をまとめた。
この構想に対して放送事業者は、ハードとソフトが分離されると、災害などの緊急時に対
応が難しくなり、公共的な使命を果たすことができなくなる、と反対している。
また、この構想を支援しているのが経済産業省であるため、現在、総務省が監督する情報
通信分野における、経済産業省の影響力を拡大するねらいがあるという見方もされ、議論
をよんでいる。
★アナアナ変換(アナログ周波数変更対策の略語)〔放送・映像〕
地上デジタル放送への移行手続き
地上デジタル放送は、UHF帯とよばれる周波数の電波を使う。しかし、この周波数帯は
すでに既存のUHF局がアナログ放送に利用しているので、デジタル放送の開始に先立ち、
混信をさけるために、一部のアナログ放送を別の周波数に移動・変換する必要がでてきた。
アナログ放送をアナログのまま周波数を移すために、アナアナ変換とよばれるようになっ
た。
アナアナ変換の作業では、局側の周波数変更と同時に、家庭のアンテナの向きを調整した
り、受信機のチャンネル設定を変えたりする必要がある。これらの費用は電波利用料を財
源にして、国が負担することになった。地上デジタル放送に全面移行した2011(平成
23)年以後は、携帯電話など移動通信用に使われる。
★プラズマ(PDP)・液晶などTV薄型化時代へ〔放送・映像〕
ブラウン管がしだいに消え、薄型テレビ時代に交代しつつある。1897年ドイツの物理
学者K・Fブラウンが発明した電子画像表示装置ブラウン管は、1世紀間隆盛を極め、テ
レビ受像機の象徴的存在だったが、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル
plasma
display panel)や液晶などの薄型テレビに歴史的交代が近づいた。
PDPはアメリカ生まれの日本育ち。アメリカで諦めたプラズマ開発を富士通とNHKが
続行、多様な画面サイズの商品を発売、1インチ1万円という戦略的な価格設定から普及
しだした。特殊ガスに電圧をかけたときに生じる放電現象を利用して表示する方式であり、
国内市場ではメーカー各社がさまざまな画面サイズのテレビ受像機を発売している。
現在まで主に業務用の高価格商品のみだったが、家庭用の32型や37型の普及が進み、
国内ばかりか、ヨーロッパ、香港、シンガポールに続いて北米、中国市場にも投入、PD
Pの世界需要が見込まれている。だが、PDPも液晶もブラウン管のような長寿は望めな
い。それは、早くも折りたためる有機ELやカーボンナノによる薄く柔軟な「ナノテク・
ディスプレイ」が控えているからだ。
★ホームシアター(home theater)〔放送・映像〕
ホームシアターの主な音場技術
DVDを核にして、大画面のPDPテレビなどをつなぎ、AVアンプやスピーカーシステ
ムを組み合わせて、映画館や劇場のような臨場感を楽しめるAVシステム。最近ではAV
アンプ、DVDプレーヤー、スピーカーシステムをワンパッケージにした「ホームシアタ
ー・イン・ワンボックス」の人気が高まり、需要も伸びている。またDVDプレーヤーを
搭載したミニコンポも登場し、手軽に楽しめる環境が整いだした。ホームシアターの明確
な定義はないが、一般的には、家庭を映画館やコンサートホールに変えるAV一式であり、
AVライフの先端をいくもののひとつ。
★ホームシアターの主な音場技術〔放送・映像〕
【ドルビーデジタル】
ドルビー研究所開発の「5.1 チャンネルサラウンド」。音の遠近感、移動感、定位感など
立体感のある音場をリアルに再現できる。
【6.1ch デジタルサラウンド】
5.1ch のサラウンド(リア)側にセンターチャンネルを追加し、空間表現力と定位感をさ
らに高め、360 度回転や頭上を通過するような移動感をより正確に再現。
【DTS】
劇場や映画館などで聴くのと同じような臨場感がでる、DTS社開発の劇場用デジタル
音声システム。より厚みのあるクリアな高音質再生が可能。
【THX】
家庭で楽しむホームシアターで、劇場や映画館などで聴くのと同じような臨場感の音響
効果をだす方式のひとつ。ルーカスフィルム社が提言したもの。
【ドルビープロロジック II】
従来のドルビープロロジックデコーダーを改良し、サラウンドチャンネルのステレオ化
や帯域制限の解除により、5.1ch サラウンドのような移動感や包囲感を実現する。
【DTS96/24】
DTS社の新しいマルチチャンネルデジタル信号フォーマット。DVDオーディオと同
等のマルチチャンネルサラウンドをDVDビデオの映像とともに楽しめる。
★窓ガラステレビ〔放送・映像〕
窓ガラスをテレビにできる新しい表示装置を、三洋電機が開発した。「ガラスに挟んだ溶
液が発光して文字や画像が浮き上がる。ブラウン管なみの明るさを確保した。製造コスト
も安く、5、6年先に業務用ディスプレイとして実用化をめざす」と記してある。
技術的な解説によると、「ECL(エレクトロケミカルルミネッセンス
electro chemical
luminescence)とよぶ表示装置。ECLは溶液中の有機材料同士がぶつかって発光する。
自ら発光するため光源が不要。液晶や有機EL(エレクトロルミネッセンス)などの表示
装置と異なり、ディスプレイを透明にできる。画面の明るさは最大で1000カンデラと
液晶より明るく、ブラウン管の約300カンデラを上回り、実用になったという。業務用
透明ディスプレイとして実用化されれば、窓ガラスもテレビに化けることが可能である。
もうこれ以上テレビに囲まれたくないという声もでるだろう。
▲放送事業〔放送・映像〕
放送のデジタル化をどう進めたらよいかが、当面の放送事業の最大の課題となった。テレ
ビの中心メディアである地上波放送が、2003(平成15)年中に、東京、名古屋、大
阪の3大都市圏において開始されるので、さけられない事態を迎えた。そのためには、放
送関係者だけでなく、視聴者やメーカーの協力が特に重要になってきた。次に、BSアナ
ログ放送をいつ終了すべきかを決め、BSとCSの役割についても改めて問い直す必要が
ある。
視聴者はBSとCSをいかに選択して使い分けているかを調べ、消費者のニーズに応える
姿勢が大切であり、BSとCSとに分けてきたことに対する基本問題についても議論して、
衛星放送のもつ特徴を生かすようにしていくべきだろう。最も重要な課題は、デジタル番
組のあり方であり、アナログ時代の一方通行の送りっ放しの番組ではない、視聴者に役立
つ双方向番組をどのようにして開発したらよいかについて、真剣に取り組むべきである。
ブロードバンドの普及により、番組配信は多様なルートを利用できる。だが、 配信
違う
放送
とは
の特色を、デジタル技術でどう活用するか、視聴者とともに切り開かなけれ
ばならない。
◆NHK(日本放送協会)(Nippon Hoso Kyokai)〔放送・映像〕
東京都渋谷区神南に本部をおき、NHKの電波を直接各家庭に向けて放送する特殊法人。
その運営は主に受信料(2002(平成 14)年度は収入 6486 億円で全収入の 97.0%)で賄わ
れている。NHKの電波は、地上放送と衛星放送の2種、合計して 10 波がある。前者には
総合、教育の2テレビ、ラジオ第1と第2およびFM放送がある。後者にはデジタルハイ
ビジョン、衛星第1テレビジョン・デジタル衛星第1テレビジョンおよび衛星第2テレビ
ジョン・デジタル衛星第2テレビジョンの二つのサイマル(同時)放送が行われている。
このほか、BSデジタル放送では「緊急時に役立つ」「生活をより便利にする」をコンセプ
トに、データ放送、番組ガイド(EPG→別項)などのサービスを実施している。また、
96 年3月からFM文字多重放送を開始している。
海外発信では、NHKワールドTV、NHKワールド・プレミアム、NHKワールド・ラ
ジオ日本の3種。世界各国への正しい日本理解の促進に貢献し、あわせて海外の日本人へ
必要な情報を提供する。前者はテレビ国際放送で1日 24 時間、国内とほぼ同時に視聴でき
る。ニュース・情報番組が中心で、英語ニュースも充実している。中者は映像番組配信で
前者と同じ地域の局にスクランブル(有料コンテンツを契約者だけが見られるようにする
技術)をかけ、1日 24 時間配信する。後者は1日延べ 65 時間、短波で日本語と英語を含
む 22 の言語で放送している。放送法によって以下のようなことが定められている。(1)
豊かで、かつ、良い放送番組を放送し、または委託して放送させることによって公衆の要
望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように最大の努力をはらうこと。(2)全国
向けの放送番組のほか、地方向けの放送番組を有するようにすること。(3)わが国の過去
の優れた文化の保存ならびに新たな文化の育成および普及に役立つようにすること。事業
計画・収支決算は国会の審議を経ることを求められている。なお、運営の基本計画は、全
国から選ばれた須田寛、櫻井孝頴、中村佳子らの広い経験と知識をもつ 12 名の委員で構成
される経営委員会で決める。関連団体は、NHKエンタープライズ 21 などの放送番組の企
画・制作、販売分野が8社、NHKきんきメディアプランなどの地域関連団体が6社、N
HK総合ビジネスなどの業務支援分野が6社、NHKサービスセンターなどの公益サービ
ス分野が7社、福利厚生団体が2社となっており、形態も株式会社、財団法人、社会福祉
法人などさまざまである。2002 年4月の受信契約総数は約 3652 万件、うち地上波テレビ
のみが約 2530 万件、衛星放送も契約しているのが約 1122 万件となっている。大型企画は
21 世紀の日本がかかえる重要な課題に向き合う「21 世紀・日本の課題」や、人類がどのよ
うな未来社会を築くべきなのか視聴者とともに考える「変革の世紀」といった未来志向の
番組がめだった。
◆民放(民間放送)〔放送・映像〕
放送番組や局の経営の費用を、スポンサー(広告主)が支払う広告料金(電波料、製作費、
ネット費)で賄う商業放送、および契約者から視聴料金を取る有料放送のこと。2002(平
成 14)年9月1日現在、地上波系が音声放送 111 社(中波 47 社、短波1社、FM県域 49
社、FM外国語4社、このほかFMコミュニティ 155 社、)、テレビ放送 127 社、テレビ多
重専門(第三者)文字放送2社であり、衛星波系では音声がBSアナログ1社、BSデジ
タル 10 社(衛星デジタル音楽放送が行うサイマル放送を含む)、CSアナログ1社、CS
デジタル7社、(うち東経 110 度CS放送1社)、テレビがBSアナログ1社、BSデジタ
ル7社、CSデジタル 120 社(標準テレビジョン放送。うち、東経 110 度CS放送 15 社、
このほか衛星役務利用放送 16 社)、データがBSアナログ1社、BSデジタル9社(衛星
デジタル音楽放送が行うサイマル放送を含む)、CSデジタル 11 社(うち、東経 110 度C
S放送8社)となっている。
51(昭和 26)年9月1日、名古屋の中部日本放送と大阪の新日本放送(現・毎日放送)が
それぞれラジオ放送を開始。テレビは 53 年8月 28 日、東京の日本テレビが初放送を開始
した。これら地上系に対し、衛星系はJSB(日本衛星放送)が 91 年4月1日に放送を開
始した。WOWOWの設備を利用したPCM音声放送(テレビジョン音声多重放送)セン
ト・ギガは 91 年9月1日に放送を始めた。CS(通信衛星)によるテレビ放送は、日本ケ
ーブルテレビジョン、スターチャンネル、ミュージックチャンネル、の3社が 92 年5月1
日からそれぞれ有料放送を開始した。会員社の 01 年度決算概況によると、衛星系を除く地
上民放 193 社の営業収入は総額2兆 5806 億 2200 万円で、新規開局社などを除いた比較可
能な既存局ペースでは前年比 2.5%の減収となった。経常利益は総額 2534 億 9100 万円で
前年比 20.1%減となった。1998 年度以来の減収減益決算となった。
◆民放連(NAB)
(The National Association of Commercial Broadcasters in Japan)
〔放
送・映像〕
日本民間放送連盟の略称。民放各社の共同の利益を守り親睦を図る目的で、民放誕生の年
(1951(昭和 26)年)、初の免許を受けた 16 社によって設立され、2002(平成 14)年1
月3日現在の会員社は、総数 203 社である。内訳は、地上放送は 193 社で、ラジオ単営が
66 社(うち中波 12 社、短波1社、FM53 社)、ラジオ・テレビ兼営 35 社、テレビ単営 92
社となっている。この地上放送を音声放送とテレビ放送に大別すると、前者が 101 社、後
者が 127 社に分けられる。衛星放送は 10 社で、うち音声放送のみは4社となる。事務所の
所在地は東京都千代田区の文藝春秋西館。
◆放送法〔放送・映像〕
国民生活に大きな影響力をもつ放送が、健全な発達をとげることができるようにする目的
で、放送番組、放送運営の全般を規律するもの。1950(昭和 25)年春の国会で制定され、
国民的基盤に立つ公共的な放送機関としてのNHKの設立、運営、財政、番組、監督につ
いて定め、また、電波法による放送局の免許というかたちで放送事業者としての地位を得
た民放については、番組の編成、広告放送の実施などについて、規定している。まだ民放
テレビが生まれていなかった 50 年に制定された放送法なので、2000(平成 12)年までの
50 年間において、30 回にも及ぶ法改正が行われてきた。その「放送法等の一部を改正する
法律による改正」は、技術の進展にかかわるものが最も多く、ラジオからテレビ、宇宙開
発、放送大学学園法、国際放送の相互交換中継、有線テレビジョン放送、超短波多重放送、
CS放送、BSデジタル放送、デジタル方式のテレビ放送および超短波放送など新しい放
送が導入されてきた経過をたどることができる。
01 年の法改正においては、
「通信と放送の融合」
「放送という概念が必要かどうか」
「特殊法
人NHKをどうするか」などを検討した。
02 年は、政府・与党が通常国会で成立をねらった個人情報保護法案・人権擁護法案、また
青少年有害社会環境対策基本法の三つが、いずれも国会で成立せず、放送法に大きな影響
をあたえなかった。
◆放送番組向上協議会(Commission for better Broadcast Programs)〔放送・映像〕
放送番組向上協議会は、1969(昭和 44)年に、NHKと民放連が「放送倫理の高揚と放送
文化全般の発展に寄与する」ことを目的に共同で設置した団体。放送番組委員会と放送と
青少年に関する委員会の運営に携わっている。
放送番組委員会は、放送倫理、取材・制作のあり方などを含む放送番組全般に関する諸問
題について審議する。放送番組向上協議会の設立以来、放送番組向上委員会という学識経
験者で構成される組織であったが、2002(平成 14)年4月から放送界の自主的活動をさら
に強化するため、放送番組委員会と名称を変え、学識経験者に放送局の幹部も加わり、共
同で議論する組織となった。02 年4月現在、学識経験者委員は6名、放送事業者委員は8
名によって構成され、委員長は木村尚三郎。
放送と青少年に関する委員会は、00 年に新設された組織。視聴者から寄せられる青少年に
対する放送のあり方や放送番組への意見をもとに、各放送局への意見の伝達と審議を行い、
その審議結果と放送事業者の対応等を公表する。7名の委員で構成され、委員長は原寿雄。
◆ A T P ( 全 日 本 テ レ ビ 番 組 製 作 社 連 盟 )( Association of all Japan TV Program
Production)〔放送・映像〕
主たる製作会社で組織された社団法人(静永純一理事長)。1982(昭和 57)年3月に設立。
86 年5月より社団法人となる。2002(平成 14)年8月現在、正会員社が 72 社、準会員社
13 社、テレビ局などの賛助会員社 43 社で構成される。シンポジウムを開いたり、テレビ局
や著作権団体と交渉するなどの活動を行っている。ほかにも、製作会社をめざす人を対象
とした会社説明会とパネルディスカッションを兼ねたATPシンポジウムを毎年開催して
いる。また、毎年6月にATP賞を選んでいる。総務大臣賞、優秀賞、長寿番組賞、新人
賞、特別賞、個人賞、テレビ記者賞を選び、グランプリを決める。02 年のATP賞グラン
プリは「ビートたけしのTVタックル」が受賞した。
◆放送と人権等権利に関する委員会機構(BRC)
(Broadcast and Human Rights / Other
Related Rights Committee)〔放送・映像〕
「多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会」(郵政省(現総務省)放送行政
局長の私的諮問委員会)における苦情対応機関に関する討議を受けて、1997(平成9)年、
放送事業者が自主的に設置した機構。同機構の評議委員会が、放送と人権等権利に関する
委員会の委員の選任を行う。初代委員長には有馬郎人、委員には、飽戸弘、大宅映子、佐
藤庄一郎、清水英夫、田島泰彦、芳賀綏、渡邊眞次が選ばれた。その後、有馬は参院議員・
文部(現文部科学)大臣となり、清水が委員長に選任された。当面は人権にかかわる苦情
にのみしぼって対応していく(電話 03・5212・7333)。
◆NHKアーカイブス(NHK Archives)〔放送・映像〕
放送済みのニュースやドラマなどの番組の映像をデジタル化して体系的に保存するのが
「NHKアーカイブス」であり、NHKによって建設される。「アーカイブ」とは「公文書
の保管所」のことをいうが、映像素材の有効活用を図るとともに、将来は図書館のように、
古い番組を一般人でも閲覧できるような施設をめざしている。民放各局も自前のビデオテ
ープ保管庫をもっているが、NHKアーカイブスは、約 70 万本を収蔵、映像の集積施設で
は国内最大級になる。建設地は埼玉県川口市内の旧NHKラジオ放送所跡地の一部、面積
約 1.6 ヘクタールの敷地に延べ床面積1万 1000 平方メートルの施設を建てる。総工事費は
80∼100 億円の見通し、1999(平成 11)年度内に事業計画を決めて、テレビ放送開始 50
周年に当たる 2003 年2月にオープンする。光ファイバー経由で使いたい映像をすぐ取り寄
せることができ、「公開ライブラリー」も併設が計画されている。フィルムやアナログテー
プをデジタルコピーする費用が 140 億円に達し、建設費を軽く超え、全部終えるのに 20 年
以上かかるという。
◆衛星放送〔放送・映像〕
赤道上空3万 6000 キロメートルの静止軌道上に浮かぶ放送衛星(BS)および通信衛星(C
S)から家庭に直接電波を届ける放送。地球局から衛星に電波を送り(アップリンク)、そ
れを受信した衛星は電波をトランスポンダ(中継器)で増幅して地上に送り返す。家庭で
は、送られてきた電波をパラボラアンテナで受け視聴する。電波が上空から届くので途中
さえぎるものがなく、ゴースト(多重像)のない、きれいな映像が得られる。音声はPC
M(pulse Code Modulation)方式による高品質のデジタルサウンドであるため、低い音か
ら高い音まで、弱い音から強い音まで、きれいに忠実に再現できる。また、衛星一つで日
本全国をカバーできるのも利点のひとつであるが、地域に密着したローカル情報にはむか
ない。さらに地上波に比べ大容量の情報を送れるので、ハイビジョン放送に利用されてい
る。中継局や送電線が必要ないので、災害時や海上、僻地でも受信できることも強み。日
本では 1989(平成1)年にNHKがBS2波による本放送を開始したことにより衛星放送
が始まった。現在、日本で放送に使用されている衛星はBSAT‐1a、BSAT‐2a、
N‐SAT‐110、JCSAT‐2、JCSAT‐3、JCSAT‐4A、スーパーバード
Cの七つである。
◆BS放送〔放送・映像〕
衛星放送のなかでも、放送衛星(BS broadcasting satellite)を使った放送。放送衛星はテ
レビの難視聴解消を主目的として打ち上げられた。通信衛星(CS)と違って、BSは衛
星の位置に取決めがあり、国際的にチャンネル数が割り当てられている。NHKの衛星放
送は、放送衛星2‐bにより試験放送を続けてきたが、1989(平成1)年6月1日から本
放送となった。同年6月3日からは2波による 24 時間放送を開始した。NHK衛星第1テ
レビはニュース&スポーツチャンネルとして、国内外の情報を 100%独自放送し、衛星第2
テレビはカルチャー&エンターテイメントチャンネルとして、娯楽や芸能・文化を中心に
定曜・定時編成し、海外のソフトも放送している。衛星第2は難視聴解消のために、地上
放送の同時放送のほか、先行・時差放送や同種番組の集中編成なども行っている。2001 年
度初頭の衛星放送契約数は 1122 万件となり、1100 万台を超えた。
放送衛星BS‐3が 90 年に打ち上げられ、91 年から2チャンネルが3チャンネルとなった。
それは、民放初の日本衛星放送(JSB
愛称WOWOW
ワウワウ)が放送を開始したか
らである。WOWOWは、音楽、映画、スポーツを中心とした編成をし、01 年7月の加入
世帯は 266 万件である。
現時、BS‐3の1チャンネルはハイビジョンの試験放送にも使用されている。また、放
送衛星を利用した初のデジタル音声放送局、衛星デジタル音楽放送(SDAB
愛称セン
ト・ギガ)は 91 年3月、本放送を開始したけれども、聴取者が少なく、経営に苦しんでい
る(→「BSデジタル放送」)。
◆BSデジタル放送〔放送・映像〕
デジタル放送受信機器需要推移
BSデジタル放送は、2000(平成 12)年 12 月1日から本放送が開始され、デジタルハイ
ビジョン(HDTV)放送、標準テレビ(SDTV)放送、音声放送、データ放送が行わ
れている。
デジタルハイビジョン放送は7社によって放送、高画質・高音質でワイドな多チャンネル
放送が楽しめる。静止画像やデータ信号などによって多彩な情報を届けるデータ放送はテ
レビ事業者8社、データ放送専門事業者8社の計 16 社によって行われ、「見るテレビから
使うテレビ」へと進化したといえよう。
高音質の音声放送は、音声放送専門事業者4社とテレビ事業者6社の計 10 社によって 23
番組が放送されている。テレビ放送においては、NHKはBS1・2でSDTV、BS3
でHDTV放送を行い、大河ドラマをはじめデジタルハイビジョン放送が目玉となる。
民放BS各社はそれぞれ独自の目玉番組を用意しているほか、BS日テレ、BS朝日、B
S‐i、BSジャパン、BSフジは総合編成を計画、WOWOWはHDTVで映画を放送、
スターチャンネルはSDTVでハリウッド映画を中心とした一般向けの編成でのぞんでい
る。
「カラーテレビ以来の画期的な進歩」と関連業界はBSデジタル放送を位置づけ、総務省
は「1000 日で 1000 万世帯」の普及目標を掲げている。
サッカーの「FIFAワールドカップ」を契機に、BSデジタル関連はBSデジタルチュ
ーナーや同チューナー内蔵の大型ブラウン管テレビ、PDPテレビなどが好調に売れ、受
信世帯は 300 万世帯に近づいた。普及目標に達するのは難しいが、メーカーの予測需要推
移を上回る可能性がでてきた。
【デジタル放送受信機器需要推移】
2000 年
36( 21/ 15)
01 年
63( 31/ 32)
02 年
145( 50/ 95)
03 年
356(100/256)
04 年
463(110/353)
05 年
600(120/480)
06 年
740(120/620)
※JEITA予測、単位は万台。カッコ内は(デジタルチューナー/デジタルテレビ)の
数
◆通信衛星(CS)(communications satellite)〔放送・映像〕
1964(昭和 39)年に暫定制度として発足、73 年に恒久制度となったインテルサット(国際
電気通信衛星機構)は、現在約 20 基の通信衛星を配置し、多国間にまたがる通信サービス
を行っている。企業は電話、データ電送、テレビ局は映像電送のため、そのサービスを利
用している。76 年に暫定制度として発足、79 年に国際機関となったインマルサット(国際
海事衛星機構)は、衛星を船舶通信に利用する目的で設立された。しかし、船舶通信だけ
では需要が伸びず、85 年に航空機との通信、89 年には地上の移動体通信に利用できるよう
な条約が改正された。テレビ局や通信社・新聞社が僻地等からのデータ電送に利用してい
る。民間企業としては、欧米間、南北アメリカ間の通信サービスを行うパンナムサットや、
ヨーロッパのアストラ、アジア地域のアジアサットなどが登場した。80 年代にはいり、ユ
ーテルサットやアラブサットなど広範囲ではないものの近隣諸国への電送を可能にする通
信衛星機構が現れた。現在では、ケーブルテレビ向けの番組供給に利用されたり、出力が
あがったこともあって、アストラのようにDTH(直接受信衛星放送)サービスを行う衛
星も増えた。
◆CS放送〔放送・映像〕
通信衛星(CS)を使った放送。周波数は国際的に取り決められるものの、放送衛星(B
S)と違って衛星の軌道位置がいくつもとれるのが特徴。もともとが通信衛星のため、国
際的な対応も可能で、国内から海外に受信することもできる点でBSより自由度が高いと
いえる。また、BSに比べて出力が小さいので、パラボラアンテナの口径が大きくないと
受信できなかったが、最近ではそのアンテナも小型化し、どこの家庭でも簡単に設置でき
るようになった。
1989(平成1)年に日本通信衛星および宇宙通信のCSがそれぞれ打ち上げられた。これ
らのCSを利用した放送サービスを行うため、同年 10 月に放送法と電波法が一部改正され
た。その改正により、放送サービスを行う事業者は、CSを管理・運用する受託放送事業
者とCSのトランスポンダを借用して実際に番組サービスを行う委託放送事業者に分けら
れ、後者の事業者を認可制としている。
◆CSデジタル放送〔放送・映像〕
日本のCSデジタル放送は、世界的にみても進歩している。放送デジタル化の先駆けとし
て、1997(平成9)年1月から本放送を開始したが、最初にスタートをきったパーフェク
TVは、3番目に開局を予定していたJスカイBと合併して、98 年5月からスカイパーフ
ェクTV(スカパー)として再出発した。また、97 年 12 月に2番目に本放送を始めたディ
レクTVは、委託放送事業としてプラットフォームを開き、2社競合が2年半以上続いた
が 2000 年にスカパーに統合されてしまい、スカパーは正式社名を「日本デジタル放送サー
ビス」から「スカイパーフェクトコミュニケーションズ」に 01 年7月に変更した。スカパ
ーの 2002 年末の有料視聴契約者数 282 万。
◆110 度CS放送とイーピー〔放送・映像〕
衛星軌道配置図
110度CSデジタル放送の有料チャンネル
従来のCSと 110 度CSの最大の違いは、同じチューナーとアンテナで、無料放送中心の
BSデジタル放送も受信できること。現在約 1500 万世帯で視聴しているBSアナログ放送
(NHK、WOWOW)は近くBSデジタルに移行するので、視聴可能なチャンネル数は
大変数多くになる。
110 度CSでは、視聴者からの料金回収などを行うサービス会社が2社となった。
「プラット・ワン」はプロ野球・巨人主催ゲーム 70 試合の完全中継が売りの「G+(ジー
タス)」などを擁し、2002(平成 14)年4月から有料サービスを展開しだした。
「スカパー
2」は 59 チャンネルとチャンネル数が多く、月額基本料金は 370 円で、後は見たいチャン
ネルを選択できる。別表以外の料金は、
「タカラヅカ・スカイ・ステージ」
(宝塚歌劇専門)
と「サムライ」(格闘技専門)がともについ月額 2500 円、「TBSチャンネル」(TBSの
過去のドラマやバラエティーが中心)が月額 600 円と決まった。
「イーピー」は「蓄積型放送」という新しいジャンルのサービス。ハードディスク内臓の
チューナー「epステーション」(7万 9800 円)の購入が必要である。同社と契約(月額
1000 円)すれば、110 度BS・CS放送に加え、約 50 チャンネルの「蓄積番組」が見られ
る。このシステムは、衛星から順次送られてくるデータをディスクに記憶させておき、視
聴者が見たいときにそのデータを引き出して視聴するもの。ディスクの空き領域を利用し
て番組の録画もできる。
◆字幕放送〔放送・映像〕
字幕放送時間の推移
NHKと日本テレビが、1985(昭和 60)年に字幕放送を開始した。以来少しずつ放送枠が
増え、2000 年にはNHK総合が 19.8%、民放キー5局平均で 3.3%にとどまり、アメリカ
の3大ネットワークの 90%、イギリスのBBCの 50%、民放2社の 60%に遠く及ばない。
全難聴(全日本難聴者・中途失調者団体連合会)は、1991 年から「字幕放送シンポジウム」
を開催、2001 年のシンポで初めて「放送バリアフリー法案要綱」を提起した。
現状ではまだ遅れているが、NHKは前倒しで 06 年までに 100%の目標を達成するとし、
民放も 80∼90%は達成する計画だという。近年ニュース番組では大きな前進があり、スタ
ジオのアナウンサーの声だけでなく、リポーターや現場の生々しい声にも字幕がつきだし
た。スポーツ中継でも日韓主催W杯から急増、選手たちの生の声に文字で触れた喜びが伝
えられた。「要綱」では 07 年4月以降「視覚障害者のための文字情報の義務づけ」をうた
っているが、それ以前に実施されそうだ。
視聴者にとって見やすい字幕、そのための文字の色、表示の位置などを、視聴者の要望に
そって研究・開発、質の高い字幕放送を実現しようとしている。
◆データ放送〔放送・映像〕
各事業者が想定しているデータ放送内容
放送用電波の隙間を使って、音声、文字、映像などの各種情報を電送するサービス。アナ
ログ放送では送る情報に限界があったが、デジタル化で圧縮技術が進み、大容量の情報で
も送れるようになった。これがBSデジタル放送の特徴のひとつであり、視聴者は時間に
関係なく、画面上に好きなデータを取り出せる。
テレビ番組の内容を補う「番組連動型」と、ニュースや天気予報などの「独立型」の2種
類がある。BSデジタル受信機を購入すれば、データ放送を利用することができ、電話回
線をつなげば、番組の感想や商品申込みなど、視聴者側から情報を発信する「双方向サー
ビス」も可能になる。
テレビ系8社の場合は、本編の番組をより楽しむことが目標であり、スポーツ中継の選手
のデータ、映画出演者のプロフィール、CMの商品データなどの詳しいデータを送る。双
方向機能を生かせば、クイズ番組への参加、ドラマ出演者の服のオークション、CMショ
ッピングの申込みなどが可能になる。公共放送のNHKはショッピングなどの商売になる
ものは除かれ、内容が制限される。
非テレビ系の場合は、すでにテレビ東京系の「ITビジョン」でデータ放送の実績がある
メディアサーブと、気象情報のウェザーニューズの既存2社、BSデジタル用に設立され
た新しい5社、ハイビジョン推進協会の独立型データ放送8社がある。出資者に通信社や
新聞社が加わっているとニュースを提供、レコード会社なら音楽、福祉・医療情報、カタ
ログ通販、チケット予約、銀行と提携したホーム・バンキングや電子メールサービスなど
がある。
また、NHK、BS民放各社のテレビ番組情報を1週間先まで表示、視聴予約、録画予約
までを画面上でできるEPG(番組ガイド)も行う。
そのほか、TBSは松下電器産業・NTTなどと共同で、BSデータ放送などに対し、デ
ジタルコンテンツの制作や電子商取引サービスを提供する新会社「トマデジ」を設立した。
また、北海道テレビ放送は、住友商事、JTBなどと共同、データ放送のシステム開発を
手がける新会社「デイ・キャスト」を設立するなど、データ放送に対するテレビ界の関心
は強い。
【各事業者が想定しているデータ放送内容】
テレビ系
●NHK
〔データ内容〕番組連動と、独立で緊急や生活情報など
〔双方向〕スタジオ参加など
●BS日テレ
〔データ内容〕連動で選手データなど。独立は検討中
〔双方向〕できればやりたい
●BS‐i
〔データ内容〕連動に力。独立は天気予報など
〔双方向〕クイズ、買い物など
●BSフジ
〔データ内容〕タレントの服の競売など連動中心に
〔双方向〕当初からやりたい
●BS朝日
〔データ内容〕連動も、天気予報やニュースなど独立も
〔双方向〕やる方向。買い物など
●BSジャパン
〔データ内容〕連動は旅行情報など、独立はニュースなど
〔双方向〕BS制作番組の中で
●WOWOW
〔データ内容〕やることは決まっている。独立もやる
〔双方向〕検討中
●スター・チャンネル
〔データ内容〕映画の解説、出演者データなど連動で
〔双方向〕しない
非テレビ系
●日本ビーエス放送
〔データ内容〕福祉・医療情報など「人」をテーマに
〔双方向〕通販など
●メディアサーブ
〔データ内容〕生活情報や買い物、ホームバンキングなど
〔双方向〕基本にすえる
●メガポート放送
〔データ内容〕やりたいことは、いっぱいある
〔双方向〕やる。準備中
●ウェザーニューズ
〔データ内容〕防災を含めた気象情報
〔双方向〕やる方向で検討中
●日本メディアーク
〔データ内容〕通信社ニュース、福祉・医療情報など
〔双方向〕ホームバンキングなど
●DCI
〔データ内容〕およそ考えられる、あらゆる情報
〔双方向〕あらゆるものが対象
●日本データ放送
〔データ内容〕テレビと同様、さまざまなニュースなど
〔双方向〕買い物など
◆EPG(電子番組ガイド)(Electronic Program Guide)〔放送・映像〕
テレビ画面上で簡単にチャンネル選択ができるサービス機器。アメリカのベンチャー企業
であるジェムスターが 50%、電通が 42.5%、東京ニュース通信が 7.5%出資して、合弁会
社「インタラクティブ・プログラム・ガイド」を設立、日本で電子番組ガイドのサービス
を提供する。新会社は地上波の民放テレビ局と組み、99 年秋、地上波の電波の隙間を使っ
て家庭のテレビ向けに情報を送るEPGサービスとGガイド・コールドを始めた。画面上
で新しい番組内容を見たり、見たい番組の検索や視聴予約、ビデオ録画予約などがリモコ
ン操作で簡単にできる。BSデジタル放送開始の 2000 年 12 月から本格展開した。新会社
は主に広告収入で運営されることになった。
◆CATV(cable television ; community antenna television)〔放送・映像〕
自主放送を行うケーブルテレビの施設数と加入世帯数
ケーブルインターネット等の利用者数の推移
ケーブルテレビ、有線テレビ。CATVは大別すると都市型と農村型に分けられ、農村型
CATVの地域密着情報システムに対し、都市型CATVの最大の特徴は多チャンネル・
娯楽情報タイプといえる。
1955(昭和 30)年4月にテレビ難視聴対策施設として、群馬県伊香保温泉で誕生したわが
国のCATVは、BS、CS放送といった衛星メディアの台頭や、ソフト面のプラス要素
もあって、これから本格的な発展への重要な段階を迎えるといえそうだ。
96(平成8)年 10 月、武蔵野三鷹ケーブルテレビが商用サービスとしては日本初のCAT
Vを利用したインターネット接続サービスを開始した。放送以外のCATV利用も進み、
電話やインターネットに接続して通信サービスに活路を見出している。デジタル化すれば、
チャンネル数が現在の5倍程度に増え、画質もよくなり、通信事業を推進するうえでも、
大きな強味といえる。CATV網を利用したインターネット接続サービスを行う事業者数
は、2002 年3月末現在、252 社となり、インターネット事業を会社の柱にしようとするC
ATV事業者が急速に増えている。02 年3月末現在、自主放送を行うCATVの加入世帯
数は、1303 万で、対前年度比 24.4%の増加となった。施設数は 994 施設。事業者数は 669
事業者。
都市型CATVの定義は、(1)端子数(加入が可能な世帯数とほぼ同じ意味)1万以上、(2)
自主放送(民放やNHKの再送信ではない放送)が5チャンネル以上、(3)双方向機能があ
るCATVのことである。多チャンネルといっても現実には十数チャンネルから五十数チ
ャンネルが日本の現状で、アメリカのように 150 チャンネルといったものはない。加入時
の費用は、契約料5万円前後とケーブルを家庭に引き込む工事費などがかかる。利用料は
基本が月額 3000 円前後、それに加えて映画などのチャンネルを別料金にしている局もある。
日本初の本格的ペイ・パー・ビュー(視聴ごとに料金を支払う)方式を、日本ヘラルド映
画は通信衛星を使って、1990(平成2)年7月から自社配給洋画の配信について始めた。
このように民間通信衛星の利用が広がって、日本の都市型CATVは、やっと本格的な多
チャンネル時代に入り、今後は放送だけでなく、テレビショッピングやテレビ電話、遠隔
医療への利用も始められており、マルチメディア時代を加速させる新たなネットワークと
して注目されている。現在、インターネットや電話などの双方向通信サービスも急速に進
められている。
CATVの外資規制が撤廃されてから、統廃合がどんどん進んでおり、外資系都市型CA
TV統合の動きがめだってきた。その代表がジュピターテレコムとタイタス・コミュニケ
ーションズの 2000 年9月の統合。
◆コミュニティ放送局〔放送・映像〕
市町村など限られた地域を対象にした小さいFM局で、1999(平成 11)年3月から最大出
力が 20 ワット以下になった。県域FMやAMに乗りにくい地域密着情報を提供する局であ
り、1992(平成4)年1月に制度化された。コミュニティ放送は1地域1局に制限されて
いたが、94 年5月に複数設置が認められ、95 年3月に出力の上限が1ワットから 10 ワッ
トに引き上げられた。総務大臣の放送免許が必要であり、半径数百メートルの範囲にごく
微弱な電波(学園祭などで利用されるもの)を飛ばす。
北海道函館市の「FMいるか」が 92 年 12 月に開局して以来、コミュニティ放送局は増え
続け、2002 年8月現在 156 局。生の話題やニュースが市民の生活情報として役立っている
こともあり、全国各地で開局が相次いでいる。そのきっかけとなったのは阪神・淡路大震
災で被災者の強い味方となったためである。最近はインターネット放送を使っている局も
ある。
◆外国語FM放送〔放送・映像〕
在日外国人向けのFMラジオ放送。1995(平成7)年 10 月に大阪では「関西インターメデ
ィア」が、東京では 96 年4月に「エフエムインターウェーブ」が開局した。英字新聞の発
行会社ジャパンタイムス社が主体となり、三井物産や徳間書店が参加したのが「エフエム
インターウェーブ(インターFM)」。周波数は 76.1 メガヘルツで、東京都、埼玉県、千葉
県、神奈川県は全域で、群馬県、栃木県、茨城県は一部地域で受信できる。音楽番組を主
軸にしながら、ニュースや来日する海外の政治家、経済人などのインタビュー番組、外国
人向けの生活関連情報、娯楽情報なども放送する。関西電力が中心となって設立した「関
西インターメディア」はひとあし早く開局しており、十数カ国語の言語を使い、音楽番組、
情報番組を放送している。これらの外国語FM放送は、ブラジル系の労働者にポルトガル
語放送で喜んでもらったり、国際コミュニケーションに思わぬ貢献をしたりしたが、FM
地域局が増え、関東の一部で混信が起き、苦情も出ている。
◆国会中継専用テレビ〔放送・映像〕
OS(通信衛星)やCATVを媒体として、本会議や各種委員会審議の模様を各家庭に伝
える構想。無編集、ノーカット、コメントなしで、原則として発言者だけを映す。国会テ
レビの構想は、リクルート事件後の政治改革論議を進めるなかで、自民党から提案があり、
1991(平成3)年3月、各党の賛成を得て、衆議院に「国会審議テレビ中継に関する小委
員会」が設けられた。また、参議院でも議員運営委員会を中心に、時期を同じくして調査
会がスタートした。93 年には、日本でのC‐SPAN(アメリカの議会中継専門テレビ局)
の配給会社「C‐NET」の田中良紀社長が、
「国会TVを実現し、21 世紀型国会をつくる
会」を発足させ、国会テレビの推進にあたり、98 年CSデジタル放送を通じて放送を開始
した。
97 年、民間の政治改革推進協議会(民間政治臨調)が財界などの出資で株式会社設立案を
まとめたが、参院の同意を得られず、宙に浮いた。CS放送スカパー(スカイパーフェク
TV)で放映されていた国会TVは、2000 年7月以降月約 600 万円の衛星使用料が未払い
となり、01 年1月には、未納金約 3500 万円を支払わなければ停波すると通告され、01 年
12 月に停波された。現在はインターネットで放送を続けている。
◆放送大学〔放送・映像〕
テレビ・ラジオの放送で学ぶ大学として 1983(昭和 58)年4月設置、85 年学生受入れ開
始。教養学部のみの単科大学3コース、6専攻があり、02 年から大学院が開講された。
98(平成 10)年1月からCSデジタル放送を利用し、放送エリアを全国に拡大した。また
全国の都道府県に設置された学習センターには、すべての放送教材が備えられている。学
生の種類は全科履修生・選科履修生・科目履修生がある。全科履修生は4年以上在学し、
124 単位を取得すると「学士(教養)」の学位が得られる。他は卒業を目的とせず、約 320
の科目の中から自分の学習したい科目を選択して学習する学生。
放送大学は学生を受け入れてから 17 年経ち、2002 年4月現在で、卒業生数2万 1548 人、
在校生数8万 7169 人。面接授業では私語がまったくなく、一般の大学生とは違って自主性
がみられる。
▲放送技術と新事業展開〔放送・映像〕
光ファイバーを使って、テレビ放送も見られる時代がきた。通常の光ファイバー通信のよ
うに、最大毎秒 100 メガビットの高速大容量でパソコン通信ができるばかりでなく、光フ
ァイバー経由で届いた 300 余りのスカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)
全チャンネルの番組を見ることができるようになった。スカパーとNTTが世界で初めて
試みた共同実験の成果である。
光ファイバーは、かねてからブロードバンド(高速大容量通信)時代の主役と期待されて
いた。現在爆発的に広がっているADSL(非対称デジタル加入者線)に比べても 10 倍近
い速度の通信が可能となり、映像の安定性にも優れているためだ。
膨大な映像情報を送受信するには、通信容量が大きい光ファイバーが有利であり、ソフト
が拡充されればハードであるファイバー網への需要も強まる。映像コンテンツの充実が進
めば、この新開発事業は大きく展開されるだろう。
◆シンジケーション事業〔放送・映像〕
アメリカではネットワークを介さないで番組流通を行っている仕組みに、「シンジケーショ
ン」とよばれる番組流通市場がある。ローカル局や独立的ケーブルテレビ事業者にとって、
重要な番組調達手段であるばかりか、番組制作者にとっても、制作費回収のために不可欠
な仕組みであり、各放送地域ごとのローカル局間で競争入札が行われている。
日本でもデジタル多チャンネル時代を迎え、放送番組の多角的な利用やシンジケーション
事業に取り組む事業が現れ、放送番組の流通ルートが多様化されだした。また、デジタル
多チャンネル化によるコンテンツ不足やコンテンツ形態の多様化に対応するために、映画
ソフトへの出資や、インターネット・データ放送の新しいコンテンツ分野の流通のために
も、必要度が増してきた。
テレビ東京メディアネットやサテライトコミュニケーションズ西日本(SCN)などが、
このシンジケーション事業に取り組んだ具体例である。テレビ東京メディアネットは、ア
ニメ番組の企画制作、国内外の地上局や衛星放送などへ番組を供給する会社。そのほかパ
ッケージソフトの企画・マーチャンダイジングといった2次利用などに一貫して取り組ん
でいる。SCNは2000(平成12)年4月から通信衛星を利用した全国のCATV局
向けにコンテンツ流通サービスを開始した。TBS、ソニーピクチャーズ・テレビジョン・
ジャパン、サテライトニュース、日本ビデオニュース、ニューズ・ブロードキャスティン
グ・ジャパンなどが番組供給をする。
◆SNG(satellite news gathering)〔放送・映像〕
サテライト・ニュース・ギャザリングは、通信衛星を利用し、テレビ・ニュースの取材機
能、機動性と配信力を高める送受信システム。現在の主なテレビ・ニュースは、ENG
(electric
news
gathering)で取材しており、遠隔地等で取材したものを局に送信する
場合には、FPU(field
pick-up
unit)でマイクロ電送しているが、離島や遠隔の山間
部からの送信にはやはり困難があった。それを改善すべくSNGシステムが開発された。
アメリカでは早くから実用化され、コーナスというSNG専門のテレビ・ニュース配信会
社が設立された。加盟68社にパラボラと車載局を配置、取材したニュースを1日4∼5
回ネットしている。日本では1989(平成1)年春から実施され、ニュース以外のスポ
ーツ中継、ワイドショーなどの素材送りにも利用すべく、テレビ各社は湾岸戦争以降競っ
て準備を進め、態勢を固めた。
◆ビデオ・オン・デマンド(VOD)/ニュース・オン・デマンド(NOD)
(video on demand ;
news on demand)〔放送・映像〕
現在のCATVでも、数十チャンネルの中から好きな番組を選べるが、放送日時は家庭か
ら指定できない。ところが、「ビデオ・オン・デマンド」は、家庭にいながらにして好きな
番組を見たいときによびだせる。家庭で好きな番組を選び、端末機で注文すると、すぐに
その家のテレビに送信される。ニュース・オン・デマンドは、そのニュース版。
1994(平成6)年7月から、関西文化学術研究都市で始まった、光ファイバーを使っ
たマルチメディア実験では、このビデオ・オン・デマンドが目玉となっており、300の
モニター世帯に光ファイバーを引き、実用化へのステップにした。デジタル時代の受像機
には、サーバーをつけたビデオ・オン・デマンド機能のものが普及するといわれ、アメリ
カでは約10種類ものその種の受像機が売り出されている。
◆ホームサーバー(home server)〔放送・映像〕
放送されている映像を自動的に蓄積し、見たい映像をいつでもよびだせる家庭用録画・録
音装置。例えば見逃した番組を冒頭から見直したり、野球のホームランだけを編集して楽
しんだりできる。BSデジタル放送に対応して商品化される。アメリカではデジタル放送
開始とともにこのホームサーバーを利用した各種の受像機が発売され、録画時間も新機種
開発にともなってしだいに伸びている。現在は1日24時間程度のものが多いが、いずれ
は1週間分ほどの録画が可能になる。アメリカの「リプレイTV」「ティボ」などは30時
間前後の録画が可能であり、テレビ画面上のガイドに従って自ら好みの番組を録画して好
きなときに見るばかりか、自らのつくったチャンネルに好みの番組を「編成」することも
可能としている。ホームサーバーは次世代の有望商品になるものと想定されており、アメ
リカの先行会社と日本の機器メーカーが提携したり、日本独自の開発をしようとしたりし
ており、デジタル時代が進むに従ってこのホームサーバーの需要は相当高まってくるもの
と予測されている。
◆インターレス方式/プログレッシブ方式〔放送・映像〕
テレビ画像を表示する方式。インターレス(飛び越し走査)方式は、1コマ目が偶数番目
の走査線を、2コマ目が奇数番目の走査線を、というように、1コマにつき半数ずつの走
査線を交互に使い画像を表示させる。動画の表示に適している。現在のテレビ放送は、こ
の方式である。一方、プログレッシブ(順次走査)方式は、すべてのコマですべての走査
線を使う。そのため、文字などにちらつきがでないもので、パソコン業界が強く推してい
る。インターレス方式をi、プログレッシブ方式をPの略称で示している。
◆音声透かし技術〔放送・映像〕
透かし技術
と
映像透かし
とはメディアコンテンツの保護と管理を行うためのもので、 音声透かし
の2タイプがある。 映像透かし
では、放送形式等さまざまな画像フォ
ーマットの出現が予想されるため、個別に開発が必要となるが、 音声透かし
はコンテン
ツの音声部分に人間には聞こえないID情報を埋め込んで、それを検出するシステムのた
め、画像化フォーマットに影響されることはきわめて少なく将来優位となることが予想さ
れるほか、無映像のメディアでも利用可能のため応用範囲が広くなる。
◆B‐CASカード〔放送・映像〕
BSデジタル放送の標準的な受信機には、CAS(Conditional Access System コンディシ
ョナル・アクセス・システム
限定受信システム)の機能が内蔵され、有料放送サービス
をはじめデータ放送による双方向サービスやNHKの受信料確認のための自動表示メッセ
ージなどに利用されている。このCAS機能はBSデジタル放送事業者のほか、BSデジ
タル放送を再送信するケーブル事業者、さらに東経110度CSデジタル放送、2003
年からの地上デジタル放送にも活用される。
そのCAS機能のキーとなるのが、B‐CASカードであり、このカードは書替え可能な
メモリー、EEPROM、CPUなどのチップを内蔵、BSデジタルチューナーや同内蔵
のデジタルテレビに装着することでBSデジタル放送が楽しめる。
このB‐CASカードは、受信機メーカーが生産台数に並行して、必要な枚数をB‐CA
Sに発注する。B‐CASは、(1)CAS技術方式の使用許諾など使用権の保持および他
メディアへの普及促進、(2)ICカードの発行管理と所有権の保持、(3)ICカード被
貸与者の基本台帳の管理、(4)ICカード固有の秘密番組(鍵)の管理などを行う。
CASはBSデジタル放送を再送信するケーブルテレビ事業者も対象としていることから、
ヘッドエンド(送信)装置やセット・トップ・ボックス(STB)の標準化に動いている
日本ケーブルラボとのCASをめぐる管理面などの調整が当面の課題として浮上してきた。
▲放送番組関連〔放送・映像〕
◆インタラクティブ・ドラマ(双方向ドラマ)(interactive drama)〔放送・映像〕
視聴者がストーリー展開を電話投票などで選択し、それらによって複数用意された結末の
うちひとつだけが放送されるというドラマ。NTTの電話投票システム「テレゴング」を
利用したが、ドラマでの利用はこれが初めてだが、デジタル時代になれば、双方向ドラマ
への試みは多様に展開されるに違いない。
◆TVショッピング(テレビ通販)〔放送・映像〕
家庭にいながら手軽に買い物ができるテレビ通販(TVショッピング)は、通販市場のな
かで急成長をみせている。一つの商品を時間をかけて説明する「インフォマーシャル」形
式の宣伝が受けているばかりか、録画放送の5倍の販売につながる生放送で、人気タレン
トが消費者の購買欲をあおっており、さらにさまざまなTV媒体を使って長時間にわたっ
て放送されているからである。
「ツーハンマン」と題する連続ドラマが、2002(平成14)年テレビ朝日で放送され、
通販の社会的な評価が高まり、テレビ通信販売で取り扱った商品が東急ハンズなどの有名
専門店の店頭で販売されるようになった。BSデジタル放送、110度新CS放送などの
最新メディアにテレビ通販が登場しつつあるばかりか、携帯電話でもTVショッピングは
可能になり、全米最大のTVショッピング専門チャンネルQVCの日本会社は、毎月15
時間のライブ放送を続けている。
日本の通販市場は全体で約2兆5000億円ほどであるが、テレビ通販はその10%近く
に成長しているとみられている。国際化時代に入り、アメリカ、ドイツ、日本の共同プロ
ジェクトをつくり、イタリア特集のテレビ通販をこの6月に2日間生中継で行った。
◆キラーコンテンツ〔放送・映像〕
悩殺的な魅力をもったソフト。パンチのきいた内容をもった番組。例えば、スポーツ関係
でいえば、プロ野球中継での巨人戦、サッカー・ワールドカップ大会戦などであり、料金
を払ってでもぜひみたい、大衆に人気の高いソフトウェアをいう。
◆視聴率(TV audience viewing ratings)〔放送・映像〕
テレビの、ある時間帯の番組が、特定の調査地域で、どれくらいの人(または世帯)に視
聴されたかをパーセントで表示した数字。試聴した量を測定したものであり、質とは直接
関係がない。人の場合は「個人視聴率」(→別項)、世帯の場合は「世帯視聴率」とよばれ
ており、前者を重視しようという傾向にある。この調査方法には個人日記方式と調査機に
よる方法があり、機械調査会社のニールセン・ジャパンは2000(平成12)年3月末
で視聴率調査を打ち切ったので、機械調査はビデオリサーチ1社の独占状態に入った。調
査機方式は、テレビ受像機にメーターを取り付け、どのチャンネルのどの番組を、何時間
何分見ていたかを記録し、それをただちにコンピュータで集計して算出する。
NHK放送文化研究所が毎年春と秋の2回、7歳以上の全国民(個人)を対象として実施
している全国視聴率調査は個人日記式法であり、「1%は7歳以上の国民110万人」とみ
られるので、1%は110万人と人数計算されるケースもある。視聴率の時間区分として
は通常、テレビ局の放送開始から放送終了を「全日」、午後7時から10時までを「ゴール
デンタイム」、午後7時から11時までを「プライムタイム」とよんでいる。この三つのタ
イムのすべての平均視聴率がトップになったテレビ局が「三冠王」を獲得したと発表して
いる。最近は「ノンプライム」を加えたトップを「四冠王」と自称している。
ラジオ界では聴取率調査を年2回行っており、調査時期が近づくにつれて特別番組が編成
されている。
◆個人視聴率〔放送・映像〕
NHKが実施している日記式個人視聴率調査は7歳以上の全国民を対象にしたものである
が、ビデオリサーチが機械式調査で行っている個人視聴率の調査は、世帯視聴率調査と世
帯内個人視聴率を同時に測定するものであり、関東地区のテレビ所有世帯の中から選ばれ
たサンプル世帯の4歳以上の個人を対象にその視聴を測定している調査である。そのため
この二つの調査は、調査方法もサンプル抽出の方法もまったく異なっており、同じ結果が
出ないのは当然だといえるし、切り離して考えるべきである。
個人をベースとした視聴率をとらえようというニーズが高まり、ニールセンもビデオリサ
ーチも1966(昭和41)年から月1回特定週に、世帯内個人を対称とした日記式個人
視聴率調査を実施したが、87年アメリカでPM(ピープルメータ)調査が実施されると、
わが国でもこの調査システムの導入論が高まり、ニールセンに次いでビデオリサーチが9
7年春から正式稼働させた。世帯と個人の両視聴率を同時に測定できる機械は、このとき
からサンプル世帯に取り付けられ、テレビの見始めと終了時に対象者にリモコンの自分用
のボタンを押してもらい、各個人の視聴を識別する。サンプルは関東地区で600世帯、
約1900人の個人が対象者となっている。ボタンを押さなくてすむ「パッシブメーター」
も開発中であり、デジタル時代になれば、「デジタル対応メーター」も必要になるだろう。
まだ個人視聴率の調査の未来には課題が残されている。
◆ビデオリサーチ〔放送・映像〕
商品種類別CM出稿量上位20(2000年)
民放23社、東芝、電通、博報堂、大広の出資により、1962(昭和37)年9月に設
立された日本最大手の総合調査会社。視聴率測定機によるテレビ視聴率をはじめとするラ
ジオ、新聞、雑誌などの各種媒体接触調査および媒体評価調査、広告効果調査・分析など
のメディア・リサーチ事業を行っている。消費者動向や商品力の市場調査、世論調査およ
び広告・プロモーションをサポートするマーケティング・リサーチ事業、メディア・マー
ケティングデータのデータベースをもとに、デジタル化・ネットワーク化した情報システ
ムサービスおよびシステム開発を事業内容としている。
テレビ視聴率調査は、全国27地区で機械式による世帯視聴率調査を実施。97年4月か
ら関東地区においてPM(ピープルメータ)による個人視聴率調査を開始した。関東地区
以外の地区では日記式を採用している。年間52週調査している地区は11であり、関東
地区は600、関西地区と名古屋地区は250、北九州地区や札幌地区など8地区は20
0のサンプル世帯となっている。熊本地区など16地区は年間24週調査しており、サン
プル世帯は200。
【2000 年の商品種類別年間のCM出稿量上位 20(関東地区)】
※左端数字は 00 年順位、次のカッコ内数字は 99 年順位、商品種別後の数字は年間出稿秒
数、次のカッコ内数字は前年の出稿秒数と前年比
1(1)普通乗用車
970,530(997,950:97.3%)
2(2)他の特殊小売店
884,505(877,515:100.8%)
3(4)郵便・電信・電話
4(3)玩具
733,950(639,915:114.7%)
631,960(848,595:74.5%)
5(10)他の金融
580,935(457,560:127%)
6(57)通信に付帯するサービス
7(6)ビール
523,570(126,245:414.7%)
518,520(530,085:97.8%)
8(11)保健薬
511,770(457,170:111.9%)
9(9)スーパー
502,065(466,035:107.7%)
10(5)レコード
481,070(613,515:78.4%)
11(7)コーヒー
462,315(498,360:92.8%)
12(15)住宅・建材総合
447,615(380,385:117.7%)
13(13)他の非アルコール飲料
14(20)他の化粧品
15(19)洋画
399,135(399,750:99.8%)
398,370(323,805:123%)
356,080(326,200:109.2%)
16(17)化粧品総合
17(8)他の調味料
349,695(329,205:106.2%)
348,810(495,315:70.4%)
18(22)学校
339,245(311,445:108.9%)
19(16)他の食品
335,595(333,360:100.7%)
20(14)即席麺類
334,665(391,875:85.4%)
▲映像とビデオ〔放送・映像〕
◆3D映像(立体映像)(3-dimension scenography)〔放送・映像〕
映像を3次元的に再現する方式をいう。立体的に見える原理は、画像を見る両目の視角を
変えることである。そこで、右目で見た画像と左目で見た画像をスクリーンに投影、左右
の目にそれぞれの画像だけを送り込まなくてはならないので赤・青の色眼鏡で区別をする
か、光の振動方式で区別する偏光フィルターの眼鏡が必要になる。2色焼付けした立体写
真のアナグリフ式はカラー画像ではできない。しかし、観客にとって左右 180 度、前後 125
度の範囲がすべて立体映像で占められるので、完全に画像の中に入り込んだ感じになる。
ステレオスペース方式はポラロイド方式でカラー映像が可能。大型画面にするため 70 ミリ
フィルムを2本使うシステム。また眼鏡なしでも立体映像を体験できる。
◆ハイビジョン〔放送・映像〕
HDTV(High Definition Television 高品位テレビジョン/高精細度テレビジョン)全体
のことをいうこともあるが、そのうちの日本の方式であるBS(放送衛星)アナログのH
DTVの愛称として使われていることが多い。その場合、走査線は1125本(有効走査
線は1080本)であり、BSを使って実用化試験放送を行ってきた。ハイビジョン・ア
ナログ放送はNHKと民放7局が共同で放送してきたが、民放は2000(平成12)年
末から始まるBSデジタル放送に参入するため、NHKのみが放送する。NHKは衛星の
設計寿命がきれる07年をめどに現在のハイビジョン放送を継続していき、なるべく早く
デジタルに切り替える方針である。02年7月総務省「ブロードバンド時代における放送
の将来像に関する懇談会」は、デジタル放送推進のための行動計画において、03年に開
始される地上波デジタルテレビ放送は、1週間の放送時間のうち50%は高精細度放送と
する目標を設定した。
◆アイマックス・シアター(I-max theatre)〔放送・映像〕
映画館の数倍もある大きなスクリーンに立体画像(3D)を映すのがアイマックス・シア
ター。運営母体のソニー・ミュージックエンタテイメント(SME)によると、この方式
を導入した劇場は世界で150以上、国内に22ある。映画というよりは映像アトラクシ
ョンというべき作品だが、従来の映画の約10倍の制作費がかかるため、ソフト不足が現
在の問題点である。
◆サブリミナル的手法(Subliminal)〔放送・映像〕
映像の中に、人間の目では感知しえないほど短い、内容とは関係のないコマ(画像)を繰
り返し挿入する手法。テレビだと、そのコマ数は1秒間30フレームの中に1∼3フレー
ムを挿入する。効果のほどは定かではないが、挿入された映像は見る人の潜在意識に残る
といわれている。1995(平成7)年5月に放送された、TBSの「報道特集」の中で
サブリミナル的手法が使われ議論をよんだ。同年6月15日、TBSは記者会見でサブリ
ミナル的手法が「不適切」であったと陳謝し、同年7月21日、郵政省(現総務省)から
TBSに文書により厳重注意がなされた。
◆ビデオ・ジャーナリスト(video journalist)〔放送・映像〕
小型の市販ビデオカメラを用いて、撮影から取材、編集、解説に至るまでを、1人でこな
す映像記者のこと。略称VJ。映像記者。命名者であるM・ローゼンブルムは、「1人の記
者がペンをもつように、ビデオカメラを常に所持して映像という言葉で表現する人」と定
義づけ、「低コスト、規模縮小の設備で、テレビ界を変革させる武器になる」と断言してい
る。機動性にすぐれ、相手により近づき等身大の取材ができるのが長所。ノルウェーの「テ
レビ・ベルゲン」が、VJを用いた最初のテレビ局で、1990年代になって、アメリカ
のCATV向け24時間ニュース専門局「ニューヨーク1」などでVJが活躍しだした。
●キーワード〔放送・映像〕
●「窓口権」という番組制作会社を拘束する異例の権利〔放送・映像〕
番組は2、3回の放送終了後、再放送用に販売され、2次利用されている。制作会社が著
作権をもつ番組の2次利用を、制作を委託した民放キー局が独占的に管理する仕組みが「窓
口権」であり、NHKは制作権そのものを譲渡させてしまっているため、「窓口権」は発生
していない。
テレビ局に「窓口権」をもたれると、制作会社は番組の2次利用が自由にできなくなる。
著作権は制作会社に属しているが、契約段階でキー局に「窓口権」が設定されると、キー
局から制作会社へは対価は支払われず、7年間という長期間、制作会社は手出しができな
い「塩漬け」状態にされる。
新しい調査によると、制作会社が作った番組のうちの39%の著作権を民放キー局が初め
から握っており、番組制作会社は19%の「窓口権」しかもっていない。制作会社の著作
権要求が高まり、民放キー局は著作権の一部を番組制作会社に認める代わりとして「窓口
権」を設定し、実質的に支配できるようにした。「窓口権」は系列局以外のテレビ局など競
争相手が番組を使用することの歯止めとして必要だと民放キー局は主張する。一方、AT
P(全日本テレビ番組製作社連盟)は、制作会社が正当、適正、公正な権利を保有、行使
すべきだと宣言、まずミニマムギャランティー(最低保証)の支払いを要求している。
●携帯で地上波デジタルやCS放送が受信〔放送・映像〕
TVが見られる携帯電話
プラット・ワンの携帯電話連携サービスの仕組み
地上波デジタル放送は電波状況が悪くても、デジタル信号処理で映像を補正できるうえ、
衛星デジタル放送と違って大型のアンテナが必要ない。このため電車の中で携帯電話で野
球中継を見たり、双方向の通信機能を生かしたモバイルデータ放送などが期待されている。
そこで、半導体開発のメガチップスは携帯電話などの移動体端末で地上波デジタル放送を
受信できるシステムLSI(大規模集積回路)を開発した。高速移動中でも鮮明なテレビ
映像を表示でき、放送と通信が融合したサービスや対応端末の開発に拍車がかかる。
東経110度の衛星を使うCSデジタル放送会社プラット・ワンは、NTTドコモと協力、
テレビ番組の情報を携帯電話に転送して楽しむサービスを2002年5月から始めた。テ
レビ番組で紹介するレストランの割引きクーポンを携帯電話で入手したり、番組を見るだ
けでなく、外出先でも欲しい情報を入手できる新サービスを開始した。テレビの通販番組
での買い物を携帯電話で注文する電子商取引(EC)などにも活用できる。売り物である
双方向通信サービスを拡充して加入者増をねらっている新作戦といえるだろう。
●明暗さまざまな1社提供番組〔放送・映像〕
スポンサーが1社だけという、いわゆる「1社提供番組」は、良質な長寿番組が多いとみ
られていたが、近年では明暗さまざま、時代の変化をまともに受けている。
東芝は46年間にわたって1社提供してきたTBS日曜夜の「日曜劇場」のスポンサーを
2002(平成14)年9月末で徹退した。番組と連動、企業イメージを独占的にアピー
ルしてきたが、厳しい経済状況下で、「広報戦略を見直し、費用対効果を考える」という。
そのほかテレビ東京「演歌の花道」(大正製薬)、フジテレビ「サザエさん」(東芝)など、
1社提供番組は減る傾向にある。
また、企業の不祥事で突然姿を消す場合もあり、テレビ朝日「料理バンザイ!」は、雪印
乳業の関連企業の事件により、20年の歴史を閉じた。1社提供撤退はこのような不況下
の経済状況でのクライアントのやむをえない事情によることが多い。日本テレビの「3分
クッキング」はキューピーの1社提供だが、「かつては何カ月も番組内で自社製品が使われ
ないこともありました。しかし役に立つ番組を提供しているイメージを大事にしました」
と広告宣伝担当者は語っている。フジテレビ「くいしん坊!万才」のキッコーマンも「製
品を露出させたいが、編集権はテレビ局」と局に遠慮しながら頑張っている。
フジ「ミュージックフェア」のシオノギ製薬広報室は「落ち着きのある番組に、と年に1
度局に伝えるだけ。会社としては消費者を裏切らないようにと意識しています」と語る。
02年4月からTBS「カネボウ木曜劇場」を1社提供にしたカネボウは「繊維企業から
スタートしたが、昨年から総合生活消費財企業としてのPRをしたかった」からだという。
企業の姿勢を訴えるには1社提供番組をもつのは好結果をもたらすが、いつそれを停止せ
ざるをえなくなるかが読めないのが21世紀。その存続が企業の明暗を示すといってもよ
い。
●CS利用
教団に広がる〔放送・映像〕
宗教界はCS(通信衛星)など新しいメディアの活用に熱心であり、2001(平成13)
年末の規制緩和でいちだんとはずみがつき、「精神文化映像社」(大阪市)はスカイパーフ
ェクTVの「ベターライフチャンネル」(2‐6ch)に宗教団体から集めた番組を流して
いる。
立正佼成会、真如苑、世界救世教など、新宗教ではない団体から、各地の神社を紹介する
「神社アワー」や、キリスト教の教団がつくる「カトリックアワー」などがある。「初めは
堅い話題ばかりだったが、借金地獄を乗り越えてレストラン経営に成功した女性会員とい
ったドキュメンタリーも増え、番組は変化に富んできた」と並川汎社長は語る。
高野山真言宗、真宗大谷派東本願寺などは「スカイ・A」(285ch)に番組をもってお
り、浄土真宗本願寺派は02年7月から「京都チャンネル」
(726ch)で放送を始めた。
アメリカの「テレビ伝道師」たちは、ほかの宗教家を平気で中傷したり、気に入らない政
党を悪魔呼ばわりすることもあるが、日本では番組検討委員会を独自に設け、「科学を否定
しない」「他教団を中傷しない」などの基準で審査している。修正を求めたケースはこれま
で2件、「入信したから病気が治った」という内容だった。
創価学会は毎月15∼20回、幹部会や教養講座などを流し、300万人以上の信者たち
が見るという。「名誉会長の生の声、映像による訴求効果は大きい」といわれている。立正
佼成会は教会など470カ所に月に2、3本流している。CS放送大手のスカパー・コミ
ュニケーションズ通信事業部は、「1年後には受け入れる宗教団体は広がる」と予想してい
る。
●着メロなどがテレビ局を潤す〔放送・映像〕
減収減益傾向のテレビ局にとって、売上げを伸ばしているのが、携帯電話の着メロ事業。
民放各局が手がけている着メロ事業では、トップクラスをはしっている「テレ朝コンプリ
ート」は、初年度の売上げがいっきに約4億円。会員数は数十万(未公開)だという。
2002(平成14)年春、人気バラエティー番組「ロンドンハーツ」の中で、着メロの
紹介をしたところ、サイトにアクセスが殺到、会員数がさらに増えた。デジタル時代のテ
レビ局は、こうした副業に頼るほかなく、日本テレビは「千と千尋の神隠し」に5億40
00万円を出資し、配当利益28億8000万円を獲得、日テレの子会社「バップ」は「ミ
スター・チルドレン」のCD販売で80億円稼ぎ、テレビ東京は番組販売収入で前期比9・
8%増の55億8900万円売り上げた。
●映像関連企業相次ぎ上場〔放送・映像〕
主な映像関連企業の新規上場の動き
映像の版権などを扱う映像関連企業の株式上場が相次いでいる。BS(放送衛星)デジタ
ルや東経110度上の人工衛星を使った新CS(通信衛星)放送の開始で、チャンネル数
が急増、映像への需要が高まっているからだ。上場で調達した資金で、映像ソフト制作や
版権の獲得に力を入れ、本格的ブロードバンド(高速大容量)時代の到来に備える。
日本ヘラルド映画は9月にも店頭(ジャスダック)市場に上場、公募増資で十数億円を調
達し、映画の買い付けに充てる。東北新社は2002(平成14)年秋、50∼100億
円を調達、映像ソフトとCS放送関連事業をテコ入れする。
【主な映像関連企業の新規上場の動き】
〔映像コンテンツ企業〕
東北新社(映像ソフト制作やCS局運営、CM制作など。2002 年秋上場予定)
日本ヘラルド映画(洋画配給。2002 年 9 月上場予定)
ムービーテレビジョン(洋画テレビ放映権販売。2001 年 12 月上場)
バンダイビジュアル(アニメ作品の企画など。2001 年 11 月上場)
ギャガ・コミュニケーションズ(洋画配給とビデオ化権、テレビ放映権販売。2001 年 6 月
上場)
〔放送事業会社〕
スターキャット・ケーブルネットワーク(ケーブルテレビ事業。2002 年 2 月上場)
WOWOW(映画番組を中心とした放送。2001 年 4 月上場)
スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(映画・スポーツなど専門チャンネルで構成
するCS放送。2000 年 10 月上場)
●DVD(デジタル多用途ディスク)〔放送・映像〕
家庭用DVD録画再生機は売れ行きが伸びているが、現行機と次世代のそれぞれの規格が
入り乱れ、消費者の混乱はさけられそうにない。1度だけ録画できるDVD‐R型と複数
回録画できるRAM型、RW型と二つの記録方式がある。RAMは東芝、松下、日立など
が採用し、高速な記録速度を利用、録画中の再生が可能だが、再生専用機では再生できな
い。パイオニア、シャープ、ソニー陣営のRWは記録速度は劣るが、再生専用機と互換性
がある。テレビ録画機能を搭載したパソコンは、デスクトップ、ノート型ともにRAMと
RWの両方を記録再生できるマルチ型があり、VTRより手軽に操作できる。
ビデオの「VHS対β戦争」と同じ構図にならないよう電機大手17社を中核とする「D
VDフォーラム」を設立、規格の一本化を図ったが、東芝とソニーの対立でまとまらない。
青色レーザーを使い、現在のDVDの5倍を超える容量となる次世代機では、RAM型で
手を組んだ松下と東芝が分裂。ソニーと松下など日欧韓9社による規格と、東芝・NEC
連合の規格が対立している。規格が違う機種の間では、ディスクの交換ができず、消費者
無視といわれている。一方、複数の規格の存立が可能とする見方もあり、規格競争の行方
は混沌としている。
●DVDソフト〔放送・映像〕
DVD(デジタル多用途ディスク)ソフト市場は急拡大している。それは、メーカーが相
次いでソフトを値下げ販売し、「ビデオを借りて鑑賞」していた人が、「DVDを買って見
る」層に変わったからであり、一種の「構造変化」が進行している。
日本映像ソフト協会によると、ビデオカセットとDVDの出荷額が昨年初めて通年ペース
で逆転した。2002(平成14)年1∼5月もビデオが7・1%減、DVDは21・9%
増。この結果、DVDの市場規模はビデオの1・33倍となり、映像ソフトの主役がいち
だんと鮮明になった。
レンタル用DVD販売も02年に入り急速に伸び、1∼5月の出荷額は前年同期の2・6
倍。DVDの全体に占める構成比は01年通年の4・4%に対し、02年5月には10・
3%まで上昇した。DVDは仕入れ原価がビデオより平均2割程度安いので、レンタル店
にはメリット、限られた売り場スペースにより多くのソフトを陳列できるプラス面もある。
人気映画が相次いで商品化され、低価格品の販売も急増しており、ロードショー映画の大
人の鑑賞料金を下回る価格設定が功を奏したという。さらにこれまでレンタル用DVD販
売を見送ってきたアニメ映像メーカーも参入、バンダイビジュアルは第1弾として10作
品をならべた。DVDソフトの茶の間の浸透は急速に進展している。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]
広告宣伝〔情報・メディア〕
▽執筆者〔広告宣伝〕
小林太三郎(こばやし・たさぶろう)
早稲田大学名誉教授
1923年群馬県生まれ。早稲田大学文学部卒、同大大学院修了。著書は『広告管理の
理論と実際』『広告』『生きる広告。12章』ほか。
嶋村和恵(しまむら・かずえ)
早稲田大学教授
1955年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。同大学院商学研究科博士課程単位取得。
著書は『新版・新しい広告』『日本の広告研究の歴史』『現代広告論』ほか。
◎解説のフォーカス〔広告宣伝〕
規制緩和と規制強化、業界ルールの設定
●弁護士広告や医療機関の広告規制が緩和され、従来、広告に積極的でなかった業界が広
告活動に注目し始めている。いまのところ、強烈な広告表現は登場せず、だれもが周囲の
出方をうかがいつつ今後の方針を考えているというところだろう。消費者の選択の助けに
なる広告が生まれることが期待される。
●東京都の屋外広告物条例も緩和され、広告をまとったラッピングバス、車体に広告を付
けた電車が次々登場している。もともとは都営バスの赤字解消をねらっての広告規制緩和
という話もあるが、新しい広告媒体の出現は広告業界にとってはありがたい。今後は、都
市景観のひとつとして広告の評価が高まるような業界の努力が必要になるだろう。
●一方、主に携帯電話をターゲットにした迷惑メールが問題になり、ついに二つの迷惑メ
ール規制法が施行された。問題のある広告活動は規制されて当然とはいえ、広告業界とし
ては、「広告」すなわち「迷惑なもの」と考えられるのは非常に迷惑なところである。
●テレビCM制作取引ルールは広告業界の取引の透明化を促進するための業界ルールであ
る。他の業界ではあまり考えられない口頭の受発注が一般的だった広告業界が、取引近代
化に向けての第一歩を踏み出した。
★2003年の新語〔広告宣伝〕
★車体(利用)広告〔広告宣伝〕
電車、バス、モノレールなどの車体をメディアとして利用した広告を一般に車体広告とい
う。東京都では、2000(平成12)年4月から路線バスの車体を利用した広告の規制
を緩和し、その結果として多くのラッピングバス(→別項)が登場したが、01年10月
からは電車(鉄道、モノレール、新交通システム)、観光バスの車体広告の規制も緩和した。
観光バスは高速道路を走行しない観光バスについてのみ、路線バスと同じ車体の全表面積
の10分の3まで、電車の場合には車体の天井、側面ごとに10分の1までの広告物を認
めている。パンタグラフのない新交通システム「ゆりかもめ」では天井部分に広告をつけ、
周囲のビルから見てもらうことをねらっている。ただし、どの場合においても窓またはド
アなどのガラス部分の広告表示はできない。
★ネーミング・ライツ(命名権)(naming rights)〔広告宣伝〕
スポーツ施設の名称に、スポンサーとなる企業名やブランド名などを付ける権利で、その
施設所有者が命名権を企業などに販売することで施設の建設や運営維持に掛かる資金を得
る。アメリカでは、さまざまなスポーツのスタジアムが命名権を導入している。東京都の
石原知事は2002(平成14)年3月にオープンした調布市の東京スタジアムにネーミ
ング・ライツを導入すると発表した。年間5億円程度で10年契約を見込んでいる。スポ
ンサーになった企業にとっては、自社の社名やブランド名が取り上げられる機会が増え、
商品によっては施設内で独占的に扱ってもらえる利点がある。
★コラボレーションCM(コラボCM)(collaboration CM)〔広告宣伝〕
「コラボレーション」とは合作や共同研究という意味だが、2001(平成13)年秋か
ら広告業界で話題になっているコラボレーションCMとは、複数の広告主が共同で関連性
のあるCMを企画、制作し、話題性と相乗効果をねらったものである。サントリーの缶コ
ーヒー「ボスHG」は、デフスターレコーズ、スカイパーフェクト・コミュニケーション
ズ、KDDI、富士写真フイルム、全日空それぞれと共同し、相互のCMの登場人物が絡
み合うシリーズCMを展開した。視聴者は、サントリー「ボスHG」のCMなのか、他社
のCMなのか戸惑いながらも、これまでにないCM展開を楽しむことになる。個々のCM
は実際には「ボスHG」か相手方かどちらか一方のCMになっているのだが、同じ時期に
2種類の似通った設定のCMが放送されることで、どちらのCMでも2種類の商品の広告
のように受け取られる可能性がある。
★アド生(Ad. Nama)〔広告宣伝〕
缶に、他企業の広告を掲載したサントリーの発泡酒の名前。他企業の広告を缶に載せるこ
とによる広告収入を、発泡酒の値下げの原資に充て、他社の発泡酒の最低価格(135円)
より安い128円の価格を実現した。第1弾としてユニクロの広告が入った缶が発売され
た。
★シティチャネル(City Channel)〔広告宣伝〕
コンビニエンス・ストアや駅、街頭などで映像を投影して広告や情報を発信する2001
(平成13)年設立の新会社。特定のコンビニエンス・ストアの窓ガラスをスクリーンに
し、店内に設置したプロジェクターから各種の情報、コマーシャルなどを投影するシステ
ムもシティチャネルと名付けられている。投影されるコンテンツは、シティチャネルセン
ターからブロードバンド・ネットワークを通じて各店舗に配信される。売り場と直結した
メディアという点で、即効性が期待されている。
▲広告の機能と広告環境〔広告宣伝〕
◆二重価格表示(dual pricing)〔広告宣伝〕
商品やサービスの価格の安さを強調するために、値引き前の価格と値引き後の価格を両方
掲げて表示されているものをいう。表示されている値引き前の価格で販売された事実がな
ければ、二重価格表示をすることで、実際より著しく有利な取引であると消費者に誤認さ
せることになり、景品表示法に違反する。公正取引委員会は、1969(昭和44)年に、
比較対照に使える価格は「最近相当期間、その価格で販売した実績が必要」という運用基
準を公表し、さらに80年には「相当期間」とは「耐久消費財は3カ月、季節商品は1カ
月とする」という解釈を加えていた。しかし、商品のライフサイクルが短くなり、価格表
示の形態も多様化している現代に合わせて、2000年6月に運用基準を改定した。それ
によると、セール開始前8週間のうち、4週間以上の販売実績があれば二重価格表示は可
能である。8週間より短い場合でも、期間の半分以上の販売実績があれば可能。しかし、
生鮮食料品の売れ残りを防ぐタイムサービスのような場合には、同一商品の価格が目の前
で変化するので、問題なく二重価格表示ができる。
◆新聞広告掲載基準〔広告宣伝〕
広告主や広告会社から持ち込まれた広告原稿を、新聞に掲載できるかどうかを判断する基
準。広告が新聞掲載にいたるには、日本新聞協会が制定した「新聞掲載基準」や「新聞広
告倫理綱領」、さらに各新聞社独自の「広告掲載基準」による審査を通る必要がある。各新
聞社は広告の営利性を考慮したうえで、「新聞社の自主的判断によって不良広告や悪質な広
告主を排除」するためにこの種の審査を行っている。
◆日本広告審査機構(JARO/ジャロ)(Japan Advertising Review Organization)〔広
告宣伝〕
広告主、媒体、広告代理業を主体とする会員から構成される広告の自主規制機関。その事
業内容は、
(1)広告、表示に関する問合せの受付、処理、
(2)広告、表示に関する審査、
指導、(3)広告、表示に関する諸基準の作成、(4)広告主、媒体、広告代理業の自主規
制機構との連携、協力、(5)消費者団体、関係官庁との連絡、協調、(6)企業、消費者
に対する教育、PR活動、(7)情報センター機能の確立、(8)その他、目的達成のため
の必要事項、などである。審査、処理部門には関係団体協議会、業務委員会、審査委員会
をおき、諸々の問合せの審議と処理にあたる。審査委員会の裁定の結果、広告主側に非あ
りとすれば、広告主に広告の修正・停止を求める。広告主がこれに従わない場合、この委
員会は公表、媒体各社に広告掲載の差止め処理ができる。事務局は問合せの窓口となり、
可能な範囲で処理することとなっている。
◆公共広告機構(AC)(Japan Ad. Council)〔広告宣伝〕
広告を通して社会と公共の福祉に貢献することを目的に1971(昭和46)年に設立さ
れた非営利組織。広告主、媒体社、広告会社が会員となり、公共広告の企画、制作のため
の資金、広告出稿のための媒体スペースやタイムを提供している。年間のテーマを決めて
全国規模で行う全国キャンペーン、地域ごとのテーマで行う地域キャンペーン、アメリカ
の広告評議会(Ad. Council)と共同で行う日米共同キャンペーンなどを計画実施している。
2002(平成14)∼03年の全国キャンペーンのテーマは「環境問題」「公共マナー」
「親子・教育・家庭」「ボランティア」と「自由テーマ」である。
◆おとり広告(bait and switch advertising)〔広告宣伝〕
おとり広告に関する表示
公正取引委員会が指定する不当表示のひとつ。広告を見て店頭に買い物に行ってみると、
店頭に商品がまったくない、広告商品と実際に販売されている商品とで価格、品質、色、
サイズ、柄、メーカー等が違っている、実際には売る気のない商品が広告されている、広
告では販売数量や販売時間などの制限がないのに実際には制限されているなど、実際に行
われる取引と相違がある広告を「おとり広告」とよび、規制の対象となる。広告商品を買
う目的で店頭に行っても目的達成が不可能なのに、店頭まで引っ張られたために他の商品
の購入が起こる可能性が高い、という意味での「おとり」である。1982(昭和57)
年、公正取引委員会は、景品表示法4条3号に基づき、「おとり広告に関する表示」を不当
表示として規定、その後93年に「おとり広告に関する表示」は変更され、93(平成5)
年5月から施行されている。
【おとり広告に関する表示】
[1993(平成5)年4月 28 日、公正取引委員会告示第 17 号]
一般消費者に商品を販売し、又は役務を提供することを業とする者が、自己の供給する
商品又は役務の取引(不動産に関する取引を除く。)に顧客を誘引する手段として行う次の
各号の一に掲げる表示
(1)取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない
場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示
(2)取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、
その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
(3)取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客の一人当たりの
供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合
のその商品又は役務のついての表示
(4)取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げ
る行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務につい
ての表示
◆オープン懸賞(sweepstakes)〔広告宣伝〕
懸賞によって一般消費者に賞品・賞金などを提供するもので、その告知は主に広告を通じ
て行われる。オープン懸賞は、いかなる場合でも取引に付随しないことを条件とする。「取
引に付随しない」とは、「応募のために商品を購入する必要はない」の意。これに対して、
商品購入を条件として、商品購入者だけに応募させる懸賞をクローズド懸賞という。19
96(平成8)年4月、景品規制の大幅な緩和が行われ、一般業種でのオープン懸賞の景
品類の限度額は、従来の100万円以内から1000万円に引き上げられた。
◆景品(premium)〔広告宣伝〕
景品規制の概要
景品表示法第2条第1項では、(1)顧客誘因の手段として、(2)取引に付随して提供す
る、(3)経済上の利益を景品類と定義している。景品類の提供方法は、総付(そうづけ)
景品、一般懸賞、共同懸賞に分類される。総付景品とは、商品購入者全員、小売店の来店
者全員、申込み順または入店の先着順といった形で、懸賞によらないで景品類を提供する
もの。一般懸賞とは、抽選やじゃんけんのような偶然性を用いたり、パズル、クイズの正
誤、作品や競技の優劣で当選者を決めて景品類を提供するもの。共同懸賞とは、一定の地
域の小売業者、商店街等の商店等、一定の地域の一定の種類の事業者等が、共同して行う
懸賞による景品類の提供をさしている。商店街の小売店が共同して行う場合は、年3回、
70日間という限度もある。
【景品規制の概要】
●景品表示法第3条(景品類の制限及び禁止)
〔一般消費者告示〕
[総付景品(総付景品の最高額の制限)]
取引価額 1,000 円未満:最高額は 100 円
取引価額 1,000 円以上:最高額は取引価額の 10 分の1
〔懸賞景品告示〕
[一般懸賞(懸賞による景品類の最高額及び総額の制限)]
懸賞による取引の価額が 5,000 円未満:最高額は取引価額の 20 倍、総額は懸賞に係る売上
予定額の2%
懸賞による取引の価額が 5,000 円以上:最高額は 10 万円、総額は懸賞に係る売上予定額の
2%
※最高額・総額ともに限度内でなければならない
[共同懸賞(懸賞による景品類の最高額及び総額の制限)]
懸賞による取引の価額にかかわらず最高額 30 万円、総額は懸賞に係る売上予定額の3%
※最高額・総額ともに限度内でなければならない
●独占禁止法
〔オープン懸賞告示〕
[オープン懸賞]
提供できる経済上の利益の最高額は 1,000 万円
◆弁護士広告の規制緩和(deregulation of lawyer advertising)〔広告宣伝〕
従来、弁護士広告は、「日本弁護士連合会則」「弁護士の業務の広告に関する規定」「弁護士
の業務の広告に関する規則」で規制されていたが、近年、弁護士を市民に身近で利用しや
すいものにしようという動きが出始め、2000(平成 12)年3月に広告関連規定が改訂
され、10 月1日に施行された。これによって、弁護士広告は原則自由、例外禁止となった。
例外的に禁止されるのは、(1)客観的事実に合致していない広告、(2)誤導・誤認のお
それのある広告、(3)誇大または過度な期待を抱かせる広告、(6)弁護士の品位または
信頼を損なうおそれのある広告であり、表示できない事項としては、(1)勝訴率、(2)
顧問先・依頼社名、(3)受任中の事件、(4)過去の関与事件である。
▲広告業界〔広告宣伝〕
◆クリエイティブ・エージェンシー(creative agency)〔広告宣伝〕
主に広告のクリエイティブ・サービス(広告制作サービス)を、広告主に対して提供する
会社。マーケティング・サービス、市場調査、広告効果測定、その他のサービスは、でき
るかぎり外部の専門機関を利用して、ユニークな広告クリエイティビティ面に主力をおく。
◆ハウス・エージェンシー(house agency ; inhouse agency)〔広告宣伝〕
特定の広告主によって財務的に管理、所有されている広告会社をさす。広告主からみれば、
自社だけの専属広告会社になる。広告主専属広告会社ともよばれる。
◆メガ・エージェンシー(mega agency)〔広告宣伝〕
広告会社の合併吸収の結果できあがった巨大広告会社がメガ・エージェンシーとよばれる。
広告主のグローバル化と同時に、広告会社もグローバルなネットワークを展開する必要が
出てきており、国内のみならず、外国の広告会社との合併吸収によってグローバル化を達
成しようとする広告会社も多い。
◆広告主(advertiser)〔広告宣伝〕
広告を出稿する主体を広告主(こうこくぬし)という。広告主は広告商品、サービスの提
供者であり、広告で主張される意見の主体であり、広告物に責任を負う立場にある。広告
会社は広告主を、クライアント(client)とかアカウント(account)ということも多い。
一方、テレビ局やラジオ局は、広告主を番組提供者という意味でスポンサー(sponsor)と
よぶことが多い。
◆ビリング(billing)〔広告宣伝〕
広告会社が取引先の広告主に請求する媒体料金(広告スペースやタイムの料金)と、媒体
扱い以外に広告会社が提供するサービス、例えば販売促進活動や調査、PR活動などの代
金の合計がビリングになる。これは広告会社の取扱高ともいわれる。
◆オリエンテーション(orientation)〔広告宣伝〕
広告主が特定のキャンペーンの企画を広告会社に依頼するとき、広告商品の特性、商品の
ターゲット、広告目標、広告期間、利用希望媒体、広告予算などを詳細に説明することを
オリエンテーションという。広告会社はこのオリエンテーションを受けて、広告キャンペ
ーン計画を立案することになる。
◆プレゼンテーション(presentation)〔広告宣伝〕
広告会社が、見込み広告主および取引中の広告主などを対象にして提出する広告キャンペ
ーン計画案の提示・説明活動をいう。プレゼン。広告会社がすでに取引してきた広告主に
対して、取引継続のために提出する広告計画書の提示説明活動を、レコメンデーション
(recommendation)と区別してよぶこともある。プレゼンテーションとは、一般的に広告
会社が広告主を対象にして行う場合が多いが、媒体社がタイム・スペース販売のために広
告会社または広告主に対してあるいは独立制作プロダクションが広告会社、媒体社、広告
主に対して行う特定キャンペーンに関するクリエイティブ企画、特定問題に対する一連の
解決策の提示説明を行う場合をさすこともある。
◆CMプランナー(CM planner)〔広告宣伝〕
CMとは、テレビやラジオで放送される広告をさし、英語ではコマーシャル(commercial)
という。CMプランナーは、広告物のなかでもテレビ、ラジオのコマーシャルの企画を担
当する。コマーシャルにとって重要な音(音楽や効果音など)、言葉、映像といった要素、
テレビコマーシャルなら15秒、30秒、ラジオコマーシャルなら20秒という時間的な
制約を考慮して、企画立案を行う。
◆アカウント・プランナー(account planner)〔広告宣伝〕
広告表現制作と、広告調査の両方に通じた広告のプランナーで、広告主のマーケティング
戦略に基づいた広告活動の企画に責任を負う。ストラテジック・プランナーともよばれ、
1960年代にイギリスの広告会社から誕生したといわれる。アカウント・プランナーは、
科学的な広告表現の制作のために情報収集や調査を行い、他の制作担当者の参考になるよ
うに情報提供する。
◆コピーライター(copywriter)〔広告宣伝〕
印刷広告のキャッチフレーズやボディ・コピーなど、放送広告のナレーションや台詞の部
分など、広告物のコピー(→別項)の部分を書く人。
◆アート・ディレクター(art director)〔広告宣伝〕
広告物の視覚表現の部分を担当する人。どのようなアートをつくりあげ、コピーとアート
をどのようにレイアウトするか、映像全体をどのようにまとめあげるかなどに責任を負う。
◆ストーリーボード(storyboard)〔広告宣伝〕
テレビCMのアイデアを一覧できるように描き出したもので、主要画面をイラストで説明
した「映像部分」と、映像にともなうナレーションや登場人物のセリフ、音楽やサウンド
エイフェクトなどの「音声部分」、状況説明などが一連の流れにそって提示されている。絵
コンテともよばれる。プレゼンテーション(→別項)で広告主にCMのアイデアを説明す
るのに使われる。
◆10桁CMコード(ten digit CM code)〔広告宣伝〕
テレビCM取扱業務の合理化と放送事故防止のため、日本広告主協会、日本民間放送連盟、
日本広告業協会の3団体が合意した「第三者CM放送確認システム」に使われる、個々の
CMに割り振られたコード。10桁の上4桁は広告主を示すコード、下6桁は広告主が自
社のCM素材ごとに付けたコード。コードの発番と管理は共通コード管理センターが行う。
2000(平成12)年12月から稼働しており、放送局は06年には、10桁CMコー
ドの付いていないCMは放送しないようになる。すべてのCM素材にはこのコードが信号
として記録され、調査会社による機械式放送確認が可能になる。
◆メディア・レップ(media rep / media representative)〔広告宣伝〕
広告会社の一形態としてのメディア・レップとは、広告媒体スペースやタイムの販売を専
門にする会社をさし、広告主の広告活動全般を担当するアドバタイジング・エージェンシ
ーと対照される。欧米では、広告会社はアドバタイジング・エージェンシーとメディア・
レップに分かれて発達してきたが、日本ではこれまで媒体の販売に特化したメディア・レ
ップはあまりみられなかった。しかし最近になって、日本でも、インターネット広告を出
稿する広告主のために、ウェブサイトの広告スペース販売を専門にするメディア・レップ
が出現している。メディア・レップはさまざまなウェブサイトの特性に関して専門知識を
もち、広告主にどのサイトが広告掲載に適するかをアドバイスしたり、いくつかのサイト
上に共通の広告枠を企画するなどプランニングを行う。
▲広告計画・広告管理とその周辺〔広告宣伝〕
◆パブリック・リレーションズ(PR)(public relations)〔広告宣伝〕
個人または組織が、相手の意見や態度を好ましい方向に指向する際に行うもので、「個人な
いし組織体で持続的または、長期的な基礎に立って、自身に対して公衆の信頼と理解をか
ち得ようとする活動」と定義されている。企業に例をとれば、一般大衆、消費者、従業員、
販売業者、資材仕入先の関係業者、株主、債権者、銀行などの金融関係、政府諸機関、教
育機関、その他のグループなどがPR活動の対象となる。
◆パブリシティ(publicity)〔広告宣伝〕
パブリシティは、広告と同じように媒体、特にマスコミ媒体を使って行われる情報提供活
動のひとつで、広告と混同されることがある。広告の場合、広告主が自らの管理した広告
物を、料金を支払って媒体に掲載してもらうことが要件である。パブリシティとは、ある
商品や企業がらみのニュースなどを、媒体側が取り上げる価値があると判断したことによ
って、記事や番組に取り込まれたものをさす。
したがって、パブリシティの場合には、取り上げてもらっても媒体料金の支払いはともな
わない。しかも、パブリシティは、広告主から直接発信された情報ではなく、公平な第三
者(この場合は媒体社)が価値を認めたものと受け取られる可能性があり、受け入れられ
やすく、信頼性が高い情報だと評価されることが多い。
一方、広告なら広告主自身が内容を隅々までコントロールすることができるが、パブリシ
ティでは必ずしも好意的に取り上げられるとはかぎらないところに危険性があるともいえ
る。
◆ペイド・パブリシティ(paid publicity)〔広告宣伝〕
媒体料金を支払う必要がないものがパブリシティなので、ペイド・パブリシティ(料金を
支払われたパブリシティ)とは自己矛盾を抱える言葉であるが、パブリシティの効果に着
目して、一見パブリシティに見えるようなつくりにした広告をさす。新聞や雑誌によくみ
られる。
◆コーポレート・コミュニケーション(corporate communication)〔広告宣伝〕
これは次のように解される。(1)PRと同意語、(2)PRとコーポレート・アイデンテ
ィティ(CI)を含む用語、(3)企業または機関とか組織体の各部門、段階のコミュニケ
ーションを統合する統一的コミュニケーション活動。アメリカのある企業はコーポレー
ト・コミュニケーションの中に、(1)プレス関係、社内コミュニケーション、(2)エデ
ィトリアル・サービス(講演、文献・資料提供、投資家関係など)、(3)パブリック・ア
フェアー(政府関係、地域社会関係、消費者関係、慈善活動関係など)、(4)広告などを
含ませているが、これは広義的なものとみてよい。
◆メディア・ミックス(media mix)〔広告宣伝〕
広告媒体、つまり新聞、雑誌、ラジオ、テレビをはじめ屋外広告媒体、交通広告媒体、ダ
イレクト・メール、劇場媒体(または映画広告媒体)、POP広告、新聞折込み広告、その
他の広告媒体などを組み合わせることをいう。メディア・ミックスは広告媒体戦略に関す
るもので、広告主(企業側)にとって所定の広告メッセージを見込み市場に効率的に伝達
するためにはこれがどうしても必要になる。
◆メディア・プランニング(media planning)〔広告宣伝〕
広告メッセージをターゲットに効果的、効率的に到達させるために、予算の範囲内で最適
な媒体を選択し、組合せを考え、出稿計画を練りあげること。最近メディア・プランニン
グが注目されるようになったのは、外資系広告会社がメディア・プランニングを専門にす
る新会社を設立し、攻勢をかけていることが影響している。その結果、日本の大手広告会
社もこぞってメディア・プランニング重視の姿勢を示すようになり、欧米の広告会社が使
っているオプティマイザー(→別項)というメディア・プランニングのサポート・システ
ムを意識して、日本の広告会社各社も独自のシステムを開発している。
◆オプティマイザー(optimizer)〔広告宣伝〕
最適なメディア・プランニング(→別項)を支援するコンピュータ・システムを一般にオ
プティマイザーとよぶ。1980年代から欧米の広告会社は、広告主の要請に応える形で
各社独自のオプティマイザーの開発を行ってきた。オプティマイザーを使えば、広告主の
広告予算、広告のターゲットなどを入力するだけで、その予算のもとで、最大の媒体到達
をもたらすメディア・プランができあがる。これらの中には、テレビの個人視聴率データ
や新聞・雑誌の閲読データなどさまざまなデータが含まれ、ターゲット一人ひとりがどの
ようなビークル(→別項)と日常的に接触しているかがプラン決定のベースとなっている。
◆ビー・トゥ・ビー(B
宣伝〕
to
B)広告(B-to-B advertising / B 2 B advertising)
〔広告
広告主もビジネス、広告の受け手もビジネスである広告活動を、ビジネスからビジネスへ、
という意味でビー・トゥ・ビー広告とよぶ。簡単にビジネス広告ともよばれる。これは、
一般消費者を対象とした消費者広告に対する言葉である。ビー・トゥ・ビー広告には、産
業用品やサービスのユーザーをターゲットとした産業広告、流通業者を対象とした流通広
告(→別項)、医師、弁護士、会計士などの専門職業に従事している人を対象とした専門広
告などがある。なおビー・トゥ・ビーは、B2Bと表記されることもある。
◆流通広告(trade advertising)〔広告宣伝〕
メーカーや卸売業者が広告主となり、卸売業者、小売業者などの流通業者をターゲットと
して行う広告である。同一の商品でも、消費者のニーズを喚起することを目的とし、消費
者に向けて行われれば消費者広告であるが、流通業者に向けて仕入れの促進や売上げ増進
をねらって行われると流通広告となる。流通広告を通して流通経路を刺激し、よりいっそ
うの販売を図る広告である。流通広告には主としてDM広告と業界紙・誌が用いられるが、
ときに業界紙・誌のかわりとして一般紙・誌が用いられることもある。百貨店やコンビニ
エンスストアなどの流通業者が行う広告も、広告を広告主の業種別に分類したときには流
通広告ということがあるので、注意が必要である。
◆意見広告(opinion advertising ; issue advertising ; advocacy advertising ; protest
advertising)〔広告宣伝〕
個人ならびに組織体が特定の重要な事柄についてそれぞれの意見を陳述する広告が意見広
告である。わが国のある新聞社は、これについて「(1)表現が妥当なものは掲載する。た
だしその意見について署名者が責任をもちえないと判断されるものは掲載しない。(2)広
告および広告の機能を否定するものは掲載しない。(3)紛争中の意見は公共性が高いもの
で表現の妥当なものに限り掲載する。ただし裁判中の関係当事者の意見は原則として判決
確定前は掲載しない。(4)個人の意見広告は内容、肩書きを問わず掲載しない」と広告掲
載基準で規定している。
◆タイ・アップ広告/タイ・イン広告(tie-up ad. / tie-in ad.)〔広告宣伝〕
ある広告主が同業者とか関連産業界の諸企業または商店街の諸企業などとタイ・アップす
る広告(水平的共同広告)、さらには広告主が自社の流通経路(例えば販売店など)と共同
して行う広告(垂直的共同広告)をタイ・アップ広告、タイ・イン広告、ジョイント広告、
または共同広告という。
◆リスポンス広告(response advertising)〔広告宣伝〕
広告の受け手から反応を直接得ることを目的とした広告を意味する。この目的に基づいた
ダイレクト・メール、通信販売用の広告などがその一例である。最近は新聞、雑誌、新聞
折込み、ラジオ、テレビなどにもこの広告が掲載または流されるようになった。別名とし
てダイレクト・リスポンス広告、リザルト広告、直接反応広告などがある。
◆ティーザー広告(teaser advertising)〔広告宣伝〕
広告キャンペーン期間の開始時点で、商品の全貌や広告主名をあえて隠し、消費者に「何
の広告だろうか?」という疑問を抱かせ、答えを知りたいという欲望を起こさせる広告が
ティーザー広告である。キャンペーンが進むに従って、徐々に商品名や広告主名を明らか
にしたり、徹底的にじらしたうえである時点で一挙にベールをはいだりすることで、消費
者の注意と関心を高め、さらに購買の段階にまで引っ張っていくテクニック。
◆マルティプル・ページ広告(multiple pages advertising)〔広告宣伝〕
新聞や雑誌の広告で、見開き2ページを超えて何ページにもわたって掲載される広告。マ
ルティプル広告ともよばれる。関連する多くの商品を一度に広告したり、詳細な情報を提
供するためなどに活用される。
◆ブランド・キャラクター(brand character)〔広告宣伝〕
ブランドを象徴的に示す役割をもつ架空、あるいは実在の人物やキャラクター。ブランド・
キャラクターは広告キャンペーンや製品パッケージ、販売促進活動等に活用される。世界
的に有名なブランド・キャラクターとしては、ピルズベリーの「グリーン・ジャイアント」
とよばれる緑色の巨人のアニメ・キャラクター、マールボロの「マールボロ・カウボーイ」、
ミシュランの「ビベンダム(ミシュラン・マン)」などがある。日本では古くは不二家のペ
コちゃん、最近では So-net やポストペットのモモなどがあげられる。
◆タイトル・スポンサーシップ(title sponsorship)〔広告宣伝〕
企業がスポーツの試合を後援していることを明示すべく、試合名(タイトル名)の前に企
業名をつけたもの。日本語では冠スポーツといわれることもある。
◆アンブッシュ・マーケティング(ambush marketing)〔広告宣伝〕
特定のイベントのスポンサーではない企業が、あたかもスポンサーであるかのようにみせ
るマーケティングの手法。オフィシャル・スポンサーになれなかった企業、オフィシャル・
スポンサーとなるための費用をまかなえなかった企業が使う。アンブッシュとは、待ち伏
せという意味。オリンピックや大規模なスポーツ・イベントではオフィシャル・スポンサ
ーになりたい企業が続出するが、実際になれる企業は限られる。そこで、一般的にスポー
ツ全般を支持するような広告を使い、あたかもそのイベントを公式に支持しているような
印象をあたえる。道義的、倫理的に問題があるといわれることもある。
◆オプトイン・メール(opt-in mail)〔広告宣伝〕
インターネットを利用したダイレクトメール配信方法のひとつで、特定ジャンルの情報が
自分宛に配信されることを許可する会員に、希望の情報をメールで届けること。オプトイ
ンメールの配信を専門にしている業者があり、情報を希望するユーザーはその会員になっ
て、自分の希望をあらかじめ伝える。オプトインメールには、メールを受信したり、クリ
ックしたりするとポイントが付いたり、プレゼントが当たるインセンティブ・オプトイン・
メールと、特にインセンティブをつけず純粋にメールを配信するピュア・オプトイン・メ
ールとがある。一般のダイレクトメールが必ずしもユーザーに歓迎されず、無視されてし
まうことが多いのに対して、オプトイン・メールはユーザー側から情報をリクエストして
いることになるので、配信後の反応が高くなるといわれる。
◆アフィリエイト・プログラム(affiliate program)〔広告宣伝〕
インターネット上でビジネスを行う事業者が、提携関係を結んだ特定のサイト(アフィリ
エイト・サイト)に広告を掲載することをさす。ただし、広告を掲載するだけで広告料金
が生じるのではなく、その後の成果、例えば会員獲得、資料請求、商品やサービスの販売
など実際の成果に応じて報酬が支払われるという契約になっている。広告を掲載する事業
者にとっては成果がなければ料金を支払う必要はない。アフィリエイト・サイトにとって
は自分たちのサイトと関連性の高い事業者と提携し、広告を掲載することで広告収入を高
めることが可能になる。
▲広告媒体と広告表現〔広告宣伝〕
◆インターネット広告(internet advertising ; advertising on the internet)〔広告宣伝〕
インターネットを使って行われる広告活動で、モバイル広告(→別項)も含まれる。電通
では、インターネット広告を「独立したコンテンツをもつメディアで広告スペースの取引
に対する料金体系が明確化されているもの」と定義して、広告費を推計している。200
1(平成13)年の日本のインターネット主要サイトの推定広告費は約735億円であっ
た。
◆バナー広告(banner ; banner advertising)〔広告宣伝〕
従来、バナーあるいはバナー広告という言葉が多く使われたのはPOP広告や屋外広告の
領域で、プラスチックや紙や布などで長方形、3角形などの旗状につくった広告物をさし
ていた。旗状の広告物というところから、最近ではインターネット広告(→別項)の分野
でもこの言葉が使われるようになった。
インターネット広告でのバナー広告とは、ウェブの検索ページやさまざまなホームページ
上に登場し、ウェブ・ユーザーの注意を喚起し、広告部分をクリックすると、広告情報の
掲載されたウェブページにジャンプさせる仕組みをもつ。
◆クリック保証広告(click guaranteed ad.)〔広告宣伝〕
ウェブページ上でバナー広告を目にした人が、バナー広告をクリックして初めて広告主の
ホームページに接続される。バナー広告を掲出しただけでなく、実際にネット利用者がそ
れをクリックしてくれて、ホームページにジャンプする回数で広告料金が決まり、契約し
た広告回数だけクリックされるまで広告を配信し続けるという制度がクリック保証広告で
ある。
◆成果報酬型インターネット広告〔広告宣伝〕
インターネット広告は成果がつかみにくい、という広告主の声に応え、クリック保証広告
(→別項)からさらに一歩進めて、バナー広告をクリックして広告主のホームページにい
き、資料請求や、注文といった行動を起こした回数に応じて広告料金を決めるシステム。
「契
約成立」とか「資料請求」とか、広告主が成果として何を求めるかによって広告料金は違
ってくる。
◆バーチャル広告(virtual advertising)〔広告宣伝〕
実在しない広告をデジタル処理で画面に映し出すテレビ広告で、アメリカでは日常的に利
用されるようになっている。サッカー中継の際に、グラウンドのセンターサークルにスポ
ンサー企業のロゴを映し出したり、スーパーボウルの中継の際に、フェンスに広告を映し
出したり、また繁華街のビルの一角をスクリーンとして広告を映し出すというような形で
使われている。
◆ラッピングバス(wrapping bus)〔広告宣伝〕
広告をプリントした粘着シートで車体のほぼ全体をラッピングしたバス。ラッピングに使
われる粘着シートは、コンピュータによって精密で美しいグラフィックや文字などを印刷
することができるだけでなく、新しい接着剤の開発によって、ラッピングしてもきれいに
はがして張り替えることができるのが特徴である。東京都では屋外広告物条例およびその
施行細則を改訂することで実現した。バスの前面と窓へのラッピングは認められていない
が、交通安全の面でも表現にはある程度の制約が課せられる。例えば、漫画のように連続
した絵が描いてあるもの、電話番号やインターネットのURLなどを読ませるものなどは、
ほかの車の運転者や歩行者の脇見運転を誘うおそれがあるので、望ましくない。
◆ビークル(vehicle)〔広告宣伝〕
メディアもビークルも、媒体をさす言葉であるが、新聞とか雑誌とか媒体の種類をさす場
合にはメディアといい、新聞のなかでも、朝日新聞、読売新聞、日経新聞と個別の媒体を
さす場合にはビークルという。個別銘柄媒体という場合もある。
◆POP広告(point of purchase advertising)〔広告宣伝〕
消費者が商品を購買する時点(point of purchase)で、商品への関心を引き、買おうという
気にさせる広告。ポップ広告ではなく、ピー・オー・ピー広告と読む。商品のプライスカ
ードやステッカー類、店頭に飾ってあるポスター、CMに使われるタレントの等身大ディ
スプレイなどがおなじみのものである。
食品売場でその食品の栄養価値や健康への効果、調理方法などを詳細に書いたメモをつけ
たり、ほかの商品と組み合わせて使われることを考慮して、関連製品を近くに陳列すると
いった工夫も考えられ、広告と販売促進の境界的な手段といえる。
◆フロア広告(floor advertising)〔広告宣伝〕
建物の通路の床面を利用した広告で、アメリカではすでに小売店などでPOP広告として
活用されている。日本では交通広告の媒体として、駅構内のフロアなどで展開されている。
◆メディアジャック〔広告宣伝〕
特定媒体ビークル(→別項)内の購入できるスペースやタイムを、すべて一広告主、ある
いは関連のある少数の広告主の広告が占めた状態をメディアジャックとよぶ。ある路線を
走る電車の車両内の広告スペース、ある日の特定の新聞の広告スペース、CS放送テレビ
局の広告タイムが、すべて単一の広告主で占められる状態がそれである。
◆アドカード(adcard / freecard)〔広告宣伝〕
絵はがきの形態の広告媒体で、アドカードというのはアドカード社の登録商標。無料で入
手できるはがきだが、そこに新製品の広告、レストランの広告、試写会の案内などが印刷
されている。レストラン、映画館、レコード店、あるいは駅構内などに専用のラックを置
き、そこに何種類かのカードを入れ、通行人に自由に取ってもらえるようになっている。
◆クーポン広告(coupon ad. ; couponing)〔広告宣伝〕
クーポンとは、特定の商品に関して券面に書いてある金額分の値引きを受けることのでき
る券であり、クーポン広告とは新聞広告、雑誌広告、折込み広告やビラなどにクーポンが
印刷されているものをさす。またクーポンを使って行う販売促進活動をクーポニングとい
う。
◆ダイレクト・メール(DM)広告(direct mail advertising)〔広告宣伝〕
郵便によって直接見込み客へ送り届けられる広告。ダイレクト・アド(直接広告
direct
advertising)の一種で、かつては宛名広告ともよばれていた。
◆CM殿堂入り作品(ACC Permanent Collection)〔広告宣伝〕
全日本シーエム放送連盟(ACC)が、後世に伝えるべき価値のあるCMとして選定した
もので、1983(昭和58)年から2001(平成13)年までの間にテレビCM56
本、ラジオCM30本がある。CM殿堂入り第1号は、61年の寿屋(現サントリー)の
アンクルトリスが登場する「トリス酒場」というアニメーションのCM。
◆ハウス・オーガン(house organ)〔広告宣伝〕
機関誌。企業が、グッド・ウィル(好意とか信頼)の育成、売上高の増加、一般大衆の意
見の創成を意図して、従業員、セールスマン、販売店、消費者一般の理解と信頼を得るた
めに発行する定期・不定期刊行物のこと。一般に無料であり、形式はブックレット形式、
新聞形式、会報形式などがあり、ほとんどは企業の総務部、広報部、広告部、販売部、販
促部、あるいは人事部などでつくられる。
◆インフォマーシャル(informercial)〔広告宣伝〕
インフォメーション(情報)とコマーシャルの二つの言葉から合成されたもので、通常の
コマーシャルより長い時間をかけた、情報量の多いコマーシャル。数分から数十分にわた
るものもあり、商品の使い方、効果効能などを詳細に伝えることができる。ケーブルテレ
ビやCS放送局などのニューメディアを通じた広告によく使われていたが、最近では地上
波テレビでも登場している。そのまま注文を受け付けるダイレクト・リスポンス型のイン
フォマーシャルも多い。
◆比較広告(comparative advertising)〔広告宣伝〕
競争相手のブランドや自社の旧製品等と、自社の現在のブランドを比較対照し、自社ブラ
ンドがいかに優れているかを示す広告表現の手法。比較広告は業界の2番手以下の企業や、
後発ブランドが、リーディング・ブランドを引合いに出して、自社のブランドがリーディ
ング・ブランドと比較しても遜色がないということをアピールするための手法である。し
たがって、通常は業界のリーダーはこの手法に興味を示さないことが多い。
アメリカでもかつては比較対照を具体的に名指しせず、「ブランドX」という形式で提示す
る比較広告が多かったが、かえって消費者に誤認させるおそれがあるため、1972年、
FTC(連邦取引委員会)が名指しによる比較広告を推奨した。日本では、1987(昭
和62年)に公正取引委員会が「比較広告に関する景品表示法上の考え方」を発表し、こ
れが一般には比較広告の解禁と受け取られているが、実際には比較広告が法律で禁止され
ていた事実はなく、広告業界が自粛していたにすぎなかった。適正な比較広告が行われる
と、消費者に多くの情報が提供でき、消費者の賢明な選択が助けられる、独占的な価格設
定がなくなり、商品の価格が下がる、といったメリットが考えられる一方で、各社が自分
たちに都合のいい点だけを比較すると、消費者がかえって混乱するというデメリットも考
えられる。
◆アウトオブホーム・メディア(OOH)(Out of Home media)〔広告宣伝〕
自宅以外で接触する広告媒体のこと。電車やバスなどの車内・車体や駅構内、空港などを
利用した「交通広告」と、建物の屋上、壁面を利用した看板やネオンサイン、道路沿いの
ビルボードなどの「屋外広告」が代表的な例だが、実際にはそれだけに限らず、コンビニ
エンス・ストア店頭のディスプレイ、スポーツ施設の広告、建築中のビルの仮囲いを利用
した広告、街頭でのイベントやサンプリングなどもOOHと考えられる。
◆テスティモニアル広告(testimonial advertising)〔広告宣伝〕
特定の商品について知識が豊富だと考えられている人が、あるブランドを推奨する広告。
プロのヘアスタイリストが使うヘアメイク用品、一流の料理人が推奨する食品、トップブ
リーダーが推奨するドッグフード、という広告がこれにあたる。
◆記事体広告(editorial advertising)〔広告宣伝〕
広告メッセージの形態のひとつで、一見広告らしくなく、記事のような構成でつくられて
いる広告のこと。広告(advertising)と記事(editorial)を合わせてアドバトリアル
(advertorial)ともよばれる。日本新聞協会は新聞記事と混同されるおそれがあるので、
この種の広告には「広告」とか「PR」と表示するよう関係者に働きかけている。
◆コピー(copy)〔広告宣伝〕
印刷媒体の広告では文字の部分、放送媒体の広告ではナレーターやタレントが言葉として
話す部分がコピーである。印刷広告の場合には、
(1)見出し(ヘッド)、
(2)副見出し(サ
ブ・ヘッド)、
(3)本文(ボディ・コピーまたはテキスト)、
(4)小説明(キャプション)、
(5)ブラーブ(またはバルーン、登場人物の口から吹き出しのように出ている言葉)、
(6)
ボックス(またはパネル)、(7)スローガン、ロゴタイプの諸要素からなる。もっと大ま
かに、広告物全体をさして使われることもある。
◆否定訴求(negative appeal)〔広告宣伝〕
広告商品の特徴・便益点を、マイナスのシーンや状況を描き出しながら訴えること。不安
感や恐れをかきたて、いわんとするところに結びつけるのが否定訴求のねらいだが、あま
り暗すぎると逆効果になることもある。この逆が、肯定訴求(positive
appeal)である。
これはこういうプラス、便益があるから魅力的とストレートに訴えるもので、広告では一
般にこの種のアピールが用いられる。
◆シズル広告(sizzle advertising)〔広告宣伝〕
シズルとは油で揚げたり、熱した鉄板に水を落としたときなどのようなジュージューとか
シューシューという音のこと。魅力的な音をたてて、その商品を食べたくさせるような広
告がシズル広告である。その音からの高まる感じがシズル感とよばれる。ステーキを焼く
音、ビールの栓をぬいてグラスに注ぐ音などは、シズル広告、シズル感を説明するうえで
の好例である。
◆3Bの法則〔広告宣伝〕
3Bはビューティ(Beauty
美女)、ベイビィ(Baby
赤ちゃん)、ビースト(Beast
動
物)を意味する。これらの要素は広告の注目率や閲読率を高めやすいから、広告メッセー
ジをつくる際は、3Bを考慮することが大切というのが、3Bの法則で、広告制作上有効
とされてきた経験則である。
◆AIDMA(アイドマ)の原則〔広告宣伝〕
消費者の購買心理過程を表したものといわれ、広告制作での基本原則とされている。Aは
注意(attention)、Iは興味(interest)、Dは欲求(desire)、Mは記憶(memory)、Aは
行為(action)を意味する。
「注意させ、興味を抱かせ、欲しがらせ、心にきざみつけさせ、買わせる」ように意図し
た広告制作が、最も有効な広告物を誕生させるということである。AIDCAまたはAI
DAの原則ともいわれるが、この場合のCは確信(conviction)を意味する。
◆5Iのルール〔広告宣伝〕
広告コピーをつくるときのコピー・ライティング・ルールのなかに5Iのルールがある。
広告は、すばらしいアイデア(idea)から出発すること、直接的なインパクト(immediate
impact)という観点からつくられていること、メッセージは最初から最後までずっと興味
(incessant
interest)をもって見られ読まれるように構成されていること、見込客にとっ
ての必要な情報(information)が十分かつうまく盛り込まれていること、衝動を駆り立て
る力(impulsion)を備えていることを意味する。
◆モバイル広告(mobile advertising)〔広告宣伝〕
携帯電話、PDAなど移動通信端末向けに配信される広告。NTTドコモが1999(平
成11)年にiモードのサービスを開始してから、J‐フォンのJスカイ、au/ツーカ
ーのEZウェブなども含めて、ブラウザ付き携帯電話からインターネットに接続するユー
ザーが急激に増加した。このようなユーザーをねらって、携帯電話用の検索サイトなどに
モバイル広告が掲載されており、モバイル広告はこの種の広告をさすことが多い。
バナー広告、テキスト広告、電子メール広告などが可能である。ディスプレイに表示され
たクーポンを店頭で見せると割引が受けられるというようなプロモーションにも使われる。
将来は、携帯電話の位置確認システムを使い、特定の時間帯に特定のエリアにいる携帯電
話ユーザーにだけ広告を配信するという使い方も可能になる。2002年6月現在でiモ
ードの加入者は約3343万人、EZウェブは約1051万人、Jスカイは約1065万
人、合わせて5400万人以上がモバイル広告にアクセス可能である。
▲広告調査と方法〔広告宣伝〕
◆新聞の面別接触率調査(readership survey by newspaper page)〔広告宣伝〕
新聞の面(政治面、経済面、社会面、家庭面、テレビ面など)による読者数の違いを調べ
る調査。面別接触率が明らかになれば、広告主はどの面に広告を出稿したいという希望を
強くうちだすことが可能になる。しかし、これまでは、希望面を指定しても、掲載希望日
にその面が利用できるかどうかわからなかっただけでなく、どの面でも料金は同じという
不合理がまかり通っていた。面別接触率調査が行われることによって、新聞広告の料金体
系も合理的なものに変わらざるをえない。
◆個人視聴率(people rating)〔広告宣伝〕
性別、年齢など属性の明らかになっている個人が、どのようなテレビ視聴をしているかを
明らかにするためのデータ。かつて視聴率調査会社が提供していた視聴率は、世帯単位で
得られたものが中心で、世帯視聴率とよばれていた。個人視聴率は、世帯内の個個人単位
での視聴率である。広告主にとっては、想定したターゲットが見てくれる時間帯や番組に
コマーシャルを挿入するためのデータとなる。放送局にとっては、番組編成や制作のため
のデータとなる。
◆サーキュレーション(circulation)〔広告宣伝〕
一般に広告媒体の普及の度合いをさす。新聞と雑誌についてはその発行部数もしくは販売
部数を、ラジオ・テレビについてはある時点で使用されているセット数、もしくは一定地
域(聴取・視聴地域)内のラジオあるいはテレビの所有セット数を意味している。また、
屋外広告については、ある特定の屋外広告を見る機会をもっている歩行者、車両利用者の
数をいい、交通広告では広告掲載中の乗客数もしくは各駅の乗降客数をいう。最近、特に
アメリカの媒体分析の専門家の間ではサーキュレーション概念を新聞と雑誌だけに限定し、
他の媒体については、オーディエンス(audience
視聴者・聴取者など)概念を用いる傾
向がでているが、これは新聞と雑誌についてのサーキュレーション数字を、定期的に公表
している組織ABC(Audit
Bureau
of
Circulations
発行部数公査機関)の活動に負
うところが大きいといわれる。
◆フルパッシブ・ピープルメーター(full passive peoplemeter)〔広告宣伝〕
個人視聴率(→別項)を測定するピープルメーターで、調査対象者側がまったく何もしな
いでもよい仕組みをもっているもの。フルパッシブとは、完全に受動的な状態、何もしな
い状態という意味。現行のピープルメーター(→別項)は、調査対象者が自分を識別する
ボタンを押すことが前提で、その煩わしさが巻き起こす問題が多い。例えば、機械に弱い
人や、調査に協力する責任感に欠ける人は、実際にテレビを見ていてもボタンを押し忘れ、
個人が特定できないことがある。また、煩わしい調査だということで、調査協力の受諾率
が下がり、結果的に視聴率にバイアスがかかるおそれもある。自動的にだれがテレビを見
ているかを判断してくれるメーターができれば、この種の問題は解決するはずである。フ
ルパッシブ・ピープルメーターはまだ実用化されていないが、事前に家族の顔を登録して
おき、メーターに付いている小型カメラ付きコンピュータでだれが見ているのかを判断す
るというような方式である。
◆コスト・パー・サウザンド(CPT)(Cost Per Thousand)〔広告宣伝〕
広告が到達したオーディエンスの人数1000人当たりの媒体料金。CPM(Cost per Mil)
ということもある。広告に使用する媒体の経費効率を比較するための指標として一般に利
用される。
CPT=広告料金/到達読者(視聴者)
1000
◆CPR(Cost Per Response)〔広告宣伝〕
広告によって引き出した一反応(リスポンス)当たりのコスト。媒体料金を読者、視聴者
からのリスポンスの回数で割ることで得られる。リスポンスとは、実際の商品注文だけで
なく、問合せ、資料の請求、セールスマンの訪問の要求などを意味する。1注文当たりの
コストであればCPO(Cost Per Order)ということもできる。
◆リーチ(reach)〔広告宣伝〕
特定の広告物を媒体に出稿した結果、ターゲットの中で最低1回でもその広告物に接触し
た人の割合を示す。到達率ともいう。テレビコマーシャルを例にとると、普通は同一のコ
マーシャルが何回も放送されることになるが、コマーシャルに接触した回数は関係なく、
最低1回は接触していればリーチがあったと考える。広告キャンペーンでは、さまざまな
媒体をミックスして使い、ターゲットに効率的に到達しようと考えるので、1種類の媒体
だけでなく、複数の媒体を使った結果のリーチを考えることも重要である。
◆フリクエンシー(frequency)〔広告宣伝〕
特定の広告物を媒体に複数回放送、あるいは掲載したとき、それに接触した人1人当たり
の平均的な接触回数をいう。頻度ともいう。正確には、アベレージ・フリクエンシー(平
均視聴頻度)。計算上では、GRP(→別項)をリーチで割ることで求められる。
◆GRP(Gross Rating Point)〔広告宣伝〕
特定の広告キャンペーンで、広告主が特定の媒体を利用して得たターゲットのリーチの総
和。テレビの場合なら、延べ視聴率、ラジオなら延べ聴取率とよばれる。テレビの場合、
あるコマーシャルを複数回放送したときの視聴率の総和。かりにあるコマーシャルを5回
放送したとして、それぞれの視聴率が10%、15%、15%、20%、25%だったと
すれば、この間のGRPは85%(85GRPともいう)となる。理論的にはGRPは無
限大に大きくすることが可能で、GRPが大きくなればなるほどリーチは100%に近づ
き、フリクエンシーも高くなる。
GRPは電波媒体以外にも使われ、その場合には延べ到達率とよばれる。
◆TRP(Target Rating Point)〔広告宣伝〕
GRP(→別項)同様、テレビCMがどの程度視聴されたかを示す指標。GRPが世帯視
聴率の総和であるのに対して、TRPはターゲットとなる層の個人視聴率の総和を示す。
個人視聴率データは年齢、性別、職業別等で得られるので、製品のターゲットにあわせた
TRPが用いられる。例えば、M1(男性20∼34歳)、M2(男性35∼49歳)、M
3(男性50歳以上)、F1(女性20∼34歳)、F2(女性35∼49歳)、F3(女性
50歳以上)という区分のTRPや、会社員、自由業、商工自営業、学生、専業主婦など
といった職業別区分でのTRPが使われる。ピープルメーターの導入以降、個人視聴率調
査の精度が増し、GRPよりもTRPを重視する広告主が増えてきている。TARP
(Target Audience Rating Point)、TGRP(Target GRP)とよばれることもある。
◆フォーカス・グループ法(focus group method)〔広告宣伝〕
広告の事前テスト法のひとつで、企業がねらう見込み標的市場から10∼20名内外をし
ぼり、抽出し、この人たちを一つのグループにし、テストすべき特定のトピックについて
討議させる。訓練を受けた有能な面接調査員が、テスト資料とか資材をこの人たちに上手
に提示するとともに、グループのディスカッションをうまくガイドする。ディスカッショ
ンは、一般にテープにおさめられ、この会合終了後、調査員がこの話し合いを分析し内容
や合意点をまとめあげる。グループ・インタビューともよばれる。
◆ピープルメーター(PM)(peoplemeter)〔広告宣伝〕
個人視聴率(→別項)を測定するためのメーター。メーターによるテレビ視聴率測定は、
かつては世帯単位で行われていたので「世帯視聴率」といわれていた。これに対して「個
人視聴率」は、当初は、調査対象者に視聴記録をつけてもらう日記式調査であったが、調
査対象者の負担が重く、しかも記録のミスが多くて、集計にも時間がかかるものであった。
日記式にかわって、継続的に個人視聴率が測定でき、すばやく集計が可能な方法として考
えられたのがピープルメーターである。現行のピープルメーターは、調査対象者に自分に
割り当てられたボタンを押してもらうという負担を強いるものであり、積極的な協力が必
要なのでアクティブ式といわれている。これに対して、だれがテレビ視聴をしているかを
メーターが自動的に識別する、調査対象者はまったく何もしなくていいというメーターを
フルパッシブ・ピープルメーター(→別項)といい、開発が期待されている。日本でのピ
ープルメーターを使った調査は、エーシー・ニールセンが1994(平成6)年から開始
したが、同社は2000年3月をもって日本でのテレビ視聴率調査から撤退した。ビデオ
リサーチは97年4月から関東地区、01年4月から関西地区でピープルメーターを利用
した調査を行っている。
◆インターネット視聴率調査(internet rating research)〔広告宣伝〕
インターネットの各ウェブサイトのアクセス数、オーディエンスの特性、バナー広告のリ
ーチやクリック数などを把握するための調査。インターネット広告ビジネスの進展にとも
なって、正確なデータが求められるようになっている。日本でインターネット視聴率調査
を行う代表的な企業として、アイ・エス・ティ、ネットレイティングス、ビデオリサーチ
ネットコム、ジュピターメディアメトリックスがあげられる。
●キーワード〔広告宣伝〕
●迷惑メール規制と「未承諾広告※」
(regulation of unsolicited mails and
advertisement
without consent")〔広告宣伝〕
受信者の意思にかかわらず一方的に送りつけられる電子メール、いわゆる「迷惑メール」
は、近年社会問題化している。特に携帯電話を利用した電子メールが一般化するにつれて、
ランダムな英数字を組み合わせたアドレスにあてずっぽうに大量の電子メール広告を発信
する業者も出現し、携帯電話の通信トラブルの原因となることもあった。さらに受信者側
は、希望しない内容の広告メールが送られてくると、標題だけではそれが広告だとわから
ず、わざわざ通信料金を払って不必要なメールを開封してしまう迷惑を被っていた。
2002(平成14)年7月1日より総務省は「特定電子メールの送信の適正化等に関す
る法律」、経済産業省は「改正特定商取引法」を施行し、迷惑メールの規制が行われること
になった。総務省の「特定電子メール」とは、受信者の同意がないのに送りつけられる広
告メールをさしている。7月1日から施行された二つの法律では、広告メールを送りつけ
られた後で送信拒否の通知をした受信者に対し、送信者がさらに広告メールの送信をする
ことを禁止している。送信者に対する表示義務として、(1)標題部に「未承諾広告※」と
表示すること、(2)送信者の氏名または名称および住所、(3)送信に用いた電子メール
アドレス、(4)送信者の受信用の電子メールアドレスがあげられている。
これにより、受信者は「未承諾広告※」で始まるメールは開封しないで削除することもで
きるし、送信者に対して以後の送信を拒否すると通知することも可能になる。拒否の通知
をしたにもかかわらず再度広告メールを送信してくる業者や、表示義務に違反する業者に
はどちらの法律にも罰則が設けてある。
●医療機関の広告規制緩和(deregulation of hospital advertising)〔広告宣伝〕
厚生労働省は、わが国の医療の質を高めるには、医療に関する情報開示を進め、患者の選
択の拡大を図ることが重要であるとの認識のうえで、医療機関の広告規制の緩和を行って
いる。2001(平成13)年3月に施行された改正医療法および厚生労働省告示では、
広告できる事項として診療録(カルテ)の開示実施、医師、歯科医師の略歴・年齢・性別、
手話、点字を含む対応可能な言語、費用の支払い方法(使用可能なクレジットカードなど)
などが定められた。
02年4月施行の厚生労働省告示では、さらに広告できる事項が広がり、医療の内容に関
する情報(専門医の認定、治療方法、手術件数、分娩件数、平均在院日数、疾患別患者数)、
医療機関の構造設備・人員配置に関する情報(医師・看護婦等の患者数に対する配置割合、
売店・食堂、一時保育サービスなど)、医療機関の体制整備に関する情報(セカンドオピニ
オンの実施、電子カルテの導入、患者相談室の設置など)、医療機関に対する評価((財)
日本医療機能評価機構の個別評価結果)、医療機関の運営に関する情報(病床利用率、理事
長の略歴など)、その他(ホームページアドレスなど)が加わった。
医療機関の広告はしだいに自由度が増しているようにみえるが、実際には広告は原則禁止
で、医療法と厚生労働省の告示により、特定の事項のみ広告できるというのが現状である。
●環境広告(environmental advertising)〔広告宣伝〕
製品やサービスがいかに環境保全に配慮しているか、企業が環境保全にどのように取り組
んでいるかを示す広告を環境広告という。消費者の地球環境問題への関心の高まりによっ
て、製品の製造工程、使用中、使用後の廃棄やリサイクルに至るまで、企業が環境保全に
どのように対処しているかが問われるようになっている。従来から、環境をテーマにした
広告は存在していたが、「地球にやさしい」「環境に安全」というようなあいまいな表現が
根拠なく使われることもあり、消費者の誤認をまねくおそれがあるといわれていた。
国際標準化機構(ISO)は、広告も含めた環境ラベルに、正確かつ検証可能で、誤解を
生じさせないこと、科学的実証方法による根拠があり、何度実験しても同じ結果が出るこ
となど九つの一般原則(ISO14020)を提示している。また、第三者機関が環境保
全に関する基準を設定し、その基準を満たした製品やサービスに所定のマーク等の使用を
認める場合(環境ラベル・タイプI、ISO14024)、製品やサービスの環境保全につ
いての配慮を事業者自身が宣言する場合(同・タイプ II、ISO14021)、事前に設定
された指標で定量的環境情報を表示する場合(同・タイプ III、ISO14025)とラベ
リングの分類をしている。
タイプIは、日本ではエコマーク、Rマーク(再生紙使用マーク)などがある。ISO1
4000シリーズは日本工業規格(JIS)でもすでに制度化されている。
●テレビCM制作取引ルール(rules for creative advertising business)〔広告宣伝〕
これまで広告業界では、CMの制作に関する受発注や内容の決定などが習慣的に口頭で行
われており、そのために随所にムリ・ムダ・ムラが生じるといわれていた。全日本シーエ
ム放送連盟(ACC)は、2001(平成13)年12月、広告主、広告会社、制作会社
の3者が合意する「テレビCM制作取引ルール」を発表し、今後のCM制作取引の透明性
を高め、制作コストの合理化を図ることをねらっている。
同ルールでは、CM制作プロセスに確認のための定型書類を導入し、3者が情報を共有し
ながら制作作業を行える環境を整えることとしている。定型書類は、(1)内容指示書(広
告主から広告会社へ提出)、(2)制作計画書(広告会社から制作会社へ提出)、(3)PP
M(プリ・プロダクション・ミーティング)合意書(3者同時確認)、(4)作業完了報告
書(広告会社、制作会社が広告主に提出)の4種類ある。PPMとは、CM制作の前に3
者の最終合意を徹底するためのもので、特に重要視されている。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]
ジャーナリズム〔情報・メディア〕
▽執筆者〔ジャーナリズム〕
浅野健一(あさの・けんいち)
同志社大学教授
1948年香川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。共同通信社社会部・外信部・ジャ
カルタ支局長などを経て、同志社大学文学部教授。著書は『犯罪報道の犯罪』『マスコミ報
道の犯罪』『天皇の記者たち』『松本サリン事件報道の罪と罰』など。
◎解説のフォーカス〔ジャーナリズム〕
「新聞離れ」とメディア法規制
●日本の新聞・通信各社が2000(平成12)年末から、相次いで新たな苦情対応機関
を開設したが、実際に報道された個人からの苦情申立ては毎年数件にすぎない。各社幹部
は「苦情がこないのはわが社が人権に配慮しているからだ」と自慢しているが、ほとんど
の報道被害者は「あんなところに言っても仕方がない」とあきらめているのだ。
●個人情報保護法案と人権擁護法案は7月末、国会で継続審議になったが、一般市民がメ
ディア法規制に危機感を深めているとは言い難い。報道機関が市民の知る権利を代行して
いるという実感が年々うすれている。その原因は、
「報道」が政治家、官僚、企業の「巨悪」
を十分に監視していないからだ。
●どこの国でも、新聞はジャーナリズムの本流だが、日本でも「新聞離れ」が顕著になっ
てきた。7月に発表された内閣府の「情報化社会と青少年調査報告書」(2001年11月
に12歳から30歳までを対象)によると、
「新聞をまったく読まない」が22.3%で、5
年前の15.4%から7ポイント近くも増加した。
●報道界は、市民とともに取材・報道のあり方を検証する北欧型のメディア責任制度を導
入しなければ法規制が導入されてしまう危機的状況にある。
▲2002年のトピックス〔ジャーナリズム〕
◆朝鮮「拉致」報道〔ジャーナリズム〕
朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮/本項では北朝鮮と表記せず、朝鮮とする)の金正日総書
記が2002(平成14)年9月17日「拉致」を認めて以来、日本のメディアは、朝鮮
を「無法者の国」などと非難し、「拉致一色」となった。テレビ各局は、家族たちの声を生
のまま伝えた。「国民一丸となって国家犯罪に立ち向かおう」「北朝鮮に制裁を」。家族がそ
う言うのはよく理解できる。しかし、歴史的経緯を考えず、そのまま伝えるのではニュー
ス・ポーター。外務省・公安警察のリーク情報の垂れ流しも相変わらずで、「記事の質が均
一で、ナショナルな情緒のみをしきりに煽るという、この国独特のパック・ジャーナリズ
ムの病理」(辺見庸氏、「サンデー毎日」02年10月20日号)がまた露呈した。
「拉致」に無関係の在日朝鮮人への暴力が頻発したのも、一方的な断罪報道に主要な原因
がある。日朝首脳会談前に、「Aさんら3人の帰国が認められる」(Aさんは実名、朝鮮は
死亡と発表)という誤報があった。
海外では、朝鮮非難の論調がほとんどない。日本の35年に及ぶ朝鮮民族への強制連行な
どの国家犯罪について、半島の北半分を占める朝鮮の国家と人民に対して、戦後57年間、
謝罪もせず敵視政策を続けてきたことを知っているからだ。
◆メディア規制2法案〔ジャーナリズム〕
政府与党は2002(平成14)年度通常国会に個人情報保護法案(継続)、人権擁護法案
のメディア規制2法案を上程した。自民党が提出を予定している青少年社会環境対策基本
法案を含めて「3点セット法案」ともよばれる。2法案は7月31日継続審議となった。
個人情報保護法案は、報道機関に、民間の「個人情報取扱事業者」の義務は適用しないも
のの「利用目的の制限」など5項目の基本原則は適用する。
また人権擁護法案は、独立した権限をもつ人権委員会を法務省の外局に設置すると規定。
メディアによるプライバシー侵害や過剰な取材による「報道被害」も委員会が積極的に救
済を図るべき人権侵害行為とされた。「私生活に関する事実をみだりに報道し、その者の名
誉または生活の平穏を著しく害すること」「取材を拒んでいるにもかかわらず、(取材を)
継続的にまたは反復して行い、その者の生活の平穏を著しく害すること」などの報道によ
る人権被害の対象者は(1)犯罪被害者、(2)犯罪行為を行った少年、(3)犯罪被害者
または犯罪行為を行った者の配偶者、直系・同居の親族、兄弟姉妹、に限定。
「つきまとい」
「待ち伏せ」、電話やファクスでの「執ような」取材も「過剰取材」に当たるとしている。
法案にある「犯罪行為を行った者(少年)」という表現は不適切であり、
「被疑者・被告人」
とすべき。
2法案は国民の人権を守るといいながら、本来の目的である国家権力による人権侵害の監
視より、メディア統制をねらっており、すべての表現者の取材・報道の自由を侵害するた
め、マスコミ団体、作家などはこぞって反対を表明した。
◆通信社配信記事賠償責任〔ジャーナリズム〕
ロス銃撃事件の被害者、三浦和義氏が 1985(昭和 60)年9月以降、共同通信が配信した記
事などで名誉を傷つけられたと主張して共同通信や記事を掲載した新聞社に損害賠償を求
めた 63 件の訴訟のうち最高裁に上告されていた 20 件で、最高裁第3小法廷と第2小法廷
は、2002(平成 14)年1月 29 日と3月8日、犯罪報道の分野では、通信社の配信記事と
いうだけで、掲載新聞社が損害賠償責任を免れることはできないとする初めての判断を示
した。
第3小法廷は「私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とする分
野における報道については、通信社の配信記事を含め、報道が過熱するあまり、取材に慎
重さを欠いた真実でない内容の報道がまま見られるのであって、一定の信頼性を有してい
るとされる通信社の記事であっても、わが国においては当該配信記事に摘示された事実の
真実性について高い信頼性が確立しているということはできない」と認定。
三浦氏が問題にしたのは、「伊勢丹を脅迫か
ロンドンから航空便脅迫状」などの記事 14
本。共同側は記事が真実でないことは認めたが、新聞社には責任がないと主張。アメリカ
などでは、定評のある通信社の配信記事を掲載した場合には、名誉毀損があっても、通信
社だけが責任を負い、新聞社側を免責する「配信サービスの抗弁」という考え方を認める
例が多く、新聞社の掲載責任については、高裁段階で判断が分かれていた。
◆NHKネット事業〔ジャーナリズム〕
総務省は2002(平成14)年3月8日、NHKによるインターネット事業のあり方や
子会社の業務範囲について、ネット情報の提供期間は「番組終了後、1週間程度」に、予
算は年額10億円程度を上限とする新指針を決めた。NHKの肥大化を批判してきた日本
新聞協会メディア開発委員会は7月30日、NHKの運用で民間サービス圧迫などの影響
が出たため、総務省に指針の見直しを求めた。
◆ウルトラマンコスモス〔ジャーナリズム〕
人気テレビ番組「ウルトラマンコスモス」の主演俳優の杉浦太陽氏が2002(平成14)
年6月14日、19歳だった00年10月17日に大阪府内で知人の少年を殴って3週間
のけがを負わせたうえ、45万円を脅し取ったとして逮捕された。朝日新聞が「ウルトラ
マンコスモス逮捕」という見出しで報じるなど、マスコミは犯人視した。しかし、同日の
アリバイがあり、少年を殴ったのは別人と分かり、不起訴処分に。警察の捜査に依存する
犯罪報道の構造的な人権侵害だった。逮捕直後、番組を制作する毎日放送は放送を打ち切
っていたが、未放送分を再構成して7月20日から放送した。
◆オウム報道で訂正掲載命令〔ジャーナリズム〕
「サリン研究を継続」という見出し記事で名誉を傷つけられたとして、オウム真理教(ア
レフに改称)が毎日新聞に1000万円などの賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は
2002(平成14)年3月28日、同社の上告を退ける決定をした。見出しを削除する
内容の訂正記事の掲載を命じた2審の東京高裁判決が確定した。裁判所による訂正記事の
掲載命令は異例。
◆最高裁が人格権で初の出版差止め〔ジャーナリズム〕
芥川賞作家柳美里(ユウ・ミリ)氏のデビュー作「石に泳ぐ魚」をめぐり、登場人物のモ
デルとなった在日韓国人女性が「無断で小説化されてプライバシーや名誉を侵害され、精
神的苦痛を受けた」として、柳氏や発行元の新潮社側に出版差し止めなどを求めた訴訟で、
最高裁第3小法廷(上田豊三裁判長)は2002(平成14)9月24日、「人格権に基づ
く出版差し止めは表現の自由を定めた憲法の規定に違反しない」と認定し、出版差し止め
と計130万円の賠償を命じた2審判決を支持した。柳氏側の敗訴が確定した。裁判長は
「公共の利益にかかわらない女性のプライバシーを公表することによって、公的立場にな
い女性の名誉、プライバシー、名誉感情を侵害した」と認定。「出版されれば、女性に回復
困難な損害を与えるおそれがある」と述べた。最高裁が人格権に基づいて小説の出版差し
止めを認めたのは初めて。文壇だけでなく、私人に関する犯罪報道などにも影響をあたえ
そうだ。
◆「噂の眞相」名誉棄損で編集長に有罪〔ジャーナリズム〕
作家の和久峻三氏らに関する記事をめぐり、名誉棄損罪に問われた月刊誌「噂の眞相」岡
留安則編集長に対し、東京地裁(木口信之裁判長)は2002(平成14)年3月20日、
懲役8カ月執行猶予2年の判決を言い渡した。一緒に起訴された同誌編集部員は懲役5カ
月執行猶予2年とした。2人は控訴した。雑誌や新聞への名誉棄損罪の適用は異例で、有
罪となったのは1984(昭和59)年の「月刊ペン」事件差し戻し控訴審以来。
判決は、和久氏らの著作活動に関する記事部分は「公共の利害」に関する事項だと認めた
が、私生活上の行状を取り上げた記事について「社会的活動とは関連がない」と公共性を
否定し、「裏付けのための十分な取材・調査をしていない」「書かれた者の受けた精神的被
害は大きい」と判断した。
岡留編集長は「起訴は、本誌が検察批判をしてきたことへの意趣返しで、判決は不当だ」
と表明した。
◆テレビ東京「窃盗団報道」〔ジャーナリズム〕
テレビ東京が2002(平成14)年5月27日に「ニュースウォッチ」と「ニュースア
イ」で「スクープ犯行・逮捕の瞬間」というタイトルで、窃盗団が事務所(東京・江戸川
区)へ侵入する様子を撮影しトップで放映した。記者が窃盗団のメンバーから事前に情報
提供を受け、通報者の被疑者に現金35万円を払って、5月25日未明に事務所への侵入
などの一部始終を撮影していたことが7月2日、毎日新聞の報道で明らかになった。通報
を受けた警視庁は窃盗未遂の現行犯で3人を逮捕。テレビ東京記者(報道では実名がない)
は犯行団の1人から「近く犯行が行われる」という情報を入手、情報提供者に接触し、窃
盗団の下見にも同行していた。
テレビ東京は3日、金銭贈与が会社の信用を傷つけたとして、横銭部長を役職はく奪1カ
月、減給3カ月(2・5%)に、担当記者を減給2カ月(同)とするなどの社内処分を発
表した。テレビ東京の菅谷定彦社長は7月25日の定例会見で「被疑者にお金を渡したり、
被害者へ思いが至っていなかった」と謝罪した。
NHKの海老沢勝二会長は7月4日の会見で窃盗団報道について、「犯罪を起こす者に金を
渡したことは、共犯と言われても仕方ない。私が被害者なら怒って訴える」と激しく批判
した。
テレビカメラが撮影していることを承知のうえで警察が捜査したことも問題。スペシャル
番組で放送される「警察密着24時」などの当局と一体となったパブリシティ番組のつく
りかたを再考すべきだ。
テレビ東京は、阿部専務編成制作本部長を委員長とする「窃盗団報道問題検証委員会」の
調査結果を発表。このなかで同社は取材で撮映した3人の顔写真を警察に提供していたこ
とを9月8日に明らかにした。
◆「ザ・スクープ」打切り〔ジャーナリズム〕
埼玉県桶川市のストーカー殺人事件で警察の告訴もみ消しを暴くなど調査報道と検証ドキ
ュメンタリーに定評のあるテレビ朝日の報道番組「ザ・スクープ」が2002(平成14)
年9月末で打ち切られた。テレビ朝日は「視聴率の低迷」と経費削減を理由に挙げ、今後
は「ザ・スクープスペシャル」として年間数本の放送を続ける。
鳥越俊太郎・元「サンデー毎日」編集長がキャスターを務め、仙台市の筋弛緩(しかん)
剤事件での被告人の冤罪主張、検察の裏金づくり、オウム信者の子どもたちなど硬派のテ
ーマを掘り下げてきた。
1989年に番組が始まった当初、土曜日午後6時からの放映枠だった。一時、日曜午後
7時のゴールデンタイムに移ったが、2001年10月からは土曜午前10時50分に変
更され、放送エリアも全国から関東、東海地区に縮小された。
鳥越氏は「こういう番組をやめるのは愚かだ」と批判している。
この打切りについて、ファンから番組続行を求める400通以上のメールがテレビ朝日や
鳥越氏あてに届き、番組ファンの弁護士や文化人が番組存続を求める会を作った。
◆記者クラブ占有使用料〔ジャーナリズム〕
東京都庁にある都庁記者クラブ加盟の常駐社は都との協定に従い、2001(平成13)
年10月から各社のブースの専有面積(平均約30平方メートル)に応じて、光熱費、水
道料金、清掃料などを支払っている。法令に基づく徴収ではなく、新聞・通信、放送各社
は個別に代表が都知事と協定を結び、自発的に支払う形式をとっている。マスコミはこの
支払いについてほとんど報じていない。
日本新聞協会は、記者室の設置は公的機関による行政の責務として公共目的のために置く
べきだと主張しており、記者室の占有使用にランニングコストを払うというのは、一般の
表現者とは違って公共性の強い特権集団「ザ・プレス(→別項)」を自称する報道機関の自
殺行為。田中康夫・長野県知事の「脱・記者クラブ」宣言(→別項)に刺激されての試み
であろうが、「記者クラブ」の矛盾を深めるだけである。
◆ザ・プレス〔ジャーナリズム〕
田中康夫長野県知事の「脱・記者クラブ」宣言(→別項)が、マスコミ企業の記者と、雑
誌、ミニコミ、インターネットなどで情報を発信する「表現者」とをまったく平等に扱う
と表明したのを受けて、新聞労連の元委員長である藤森研・朝日新聞論説委員や新聞労連
法規対策部長の山田健太氏(青山学院大学講師)らが、新聞協会加盟の報道機関の記者集
団を「ザ・プレス」と規定した。記者クラブには「記者室スペースを占有する権利、優先
取材の権利がある」とまで指摘した。
今田高俊・東工大教授は「いかがわしい雑誌社が入ってくるなどの混乱も予想される」と
述べ、桂敬一・東京情報大学教授も「長野県政の記者クラブはふんどしを締め直して田中
知事と対峙してほしい」(産経新聞)と「ザ・プレス」に檄を飛ばした。マスコミ企業内記
者と市民を差別して当然というのは暴論。
田中知事は、「思い上がりだ」と藤森氏や田島泰彦教授を批判した。
「ザ・プレス」が排他的な親睦クラブをつくるのは自由だが、税金でつくられている官庁
の1室を独占使用する権利は絶対にない。「報道機関」と「すべての表現者」を同一視する
のは間違いだというのなら、「報道機関」だけで官庁街に近い貸しビルの1室を借りて看板
を掲げるべきである。東京外国特派員協会(JFCC)は、東京・有楽町の駅前ビルの二
つの階を借りている。
◆政府首脳発言〔ジャーナリズム〕
福田康夫官房長官が2002(平成14)年5月31日、
「非核3原則見直し」に言及した。
発言の場がオフレコが条件の懇談取材だったため、マスコミは「政府首脳」と表現した。
記者団が「長官は政府首脳に真意を確認したか」と尋ね、当の福田長官が「政府首脳」発
言について論評するという迷走ぶりだった。
記者団が政府首脳の実名を出すことを求め、福田長官もこれに応じたため、6月3日以降、
福田長官の発言として報じた。
福田発言は、安倍官房副長官が「憲法上は原子爆弾の保有も問題ではない」と早大での講
演で発言したとする「サンデー毎日」の報道がきっかけ。日本が核武装可能だという発言
を記者はなぜ報道しないのだろうか。
◆「人権と報道」6団体共同アピール〔ジャーナリズム〕
報道の自由を守る立場から、メディアの市民に対する人権侵害を批判し、メディア自身に
よる自主的な問題解決を訴え続けてきた6つの市民団体が2002(平成14)年5月2
2日「メディア規制法案の廃案とメディアの自己改革を求める共同アピール」(事務局・F
AX03・3341・9515)を発表した。
「人権と報道・連絡会」
「人権と報道・関西の会」
「マスコミと人権を考える東海の会」
「『人
権と報道』研究会」(仙台)、「報道について語る福岡の会」「報道と人権の会」(札幌)で、
アピールは、権力が報道を法律で規制することに反対したうえで、「一般市民に対する、多
人数の押し掛け取材、プライバシー報道、容疑者犯人視報道などによる人権侵害は、黙視
することができない。メディアは、多くの批判・警告・提案にもかかわらず、問題の解決
に真剣に取り組んではこなかった。それが権力の法規制による介入という事態をまねく一
因となっている」と指摘。
メディア横断的な市民参加のプレスオンブズマン・報道評議会の設立や、実名報道原則を
根本的に見直すことを提唱。東京で、この「共同アピール」を報じたのは、共同通信だけ
だった。
◆ネット上名誉棄損で賠償命令〔ジャーナリズム〕
インターネットの掲示板「2ちゃんねる」に「ヤブ医者」「詐欺」などと書かれて名誉を傷
つけられたとして、東京都内の動物病院が管理人に損害賠償などを求めた訴訟で東京地裁
(山口博裁判長)は2002(平成14)年6月26日、400万円の支払いと問題の記
載の削除を命じた。
判決は、不特定多数のアクセスがある場合、「管理人が名誉棄損の記載を知った段階で、た
だちに削除などの措置をとる義務が生じる」と述べた。そのうえで、記載の存在を知った
前年6月の段階で削除すべきだったと判断した。管理人側は控訴した。
インターネット掲示板をめぐって管理人に賠償を命じた判決は初めてとみられる。
判決を伝える新聞記事で、「掲示板を使った批判ができなくなり、表現の自由が大きく制約
される」などというコメントを発表したのが「管理人側の代理人」と仮名になっていた。
◆名誉棄損で経営者責任を初認定〔ジャーナリズム〕
和歌山市の毒物カレー事件で裁判を受けている女性が、法廷内の姿を隠し撮りした写真や、
イラストを写真週刊誌「フォーカス」
(2001(平成13)年8月休刊)に掲載され、
「肖
像権を侵害された」などとして、新潮社と山本伊吾・元編集長、佐藤隆信社長ら役員6人
の計7人を相手に、計2200万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が02年2月19
日、大阪地裁(岡原剛裁判長)であった。裁判長はいずれも肖像権侵害に当たると判断し、
新潮社側に計660万円の支払いを命じた。
女性が盗撮されたのは1998年11月に和歌山地裁で開かれた勾留理由開示の法廷内で、
半年後の初公判を伝える99年5月26日号に掲載された。さらに、女性が新潮社と山本
元編集長を相手に肖像権侵害の損害賠償訴訟を大阪地裁に起こすと、同年8月25日号で
「本誌を訴えた○○○○殿へ―絵ならどうなる?」(記事では実名)と題して手錠をかけた
女性のイラストを記事とともに掲載。女性はこれについては、取締役の注意義務違反も問
う訴訟を起こした。
法廷内の隠し撮り写真やイラスト掲載をめぐる初の民事訴訟で、名誉棄損で経営陣の責任
を問う裁判も前例がなかった。岡原裁判長は、「『フォーカス』の違法行為防止の社内体制
を整備していない重過失があった」とし、役員のなかで佐藤社長だけを新潮社、山本元編
集長との連帯賠償責任の対象とした。メディア訴訟で、経営者の責任が問われたのは初め
て。
女性勝訴の報道で各紙は、「被告勝訴」などと伝えていたが、この民事裁判における被告は
新潮社側。民事裁判ではメディアの不法行為かどうかが争われているわけで、被告という
肩書きをつけるのは不当だ。
◆雑誌人権ボックス〔ジャーナリズム〕
日本雑誌協会が2002(平成14)年3月1日、人権問題にかかわる苦情や異議申立て
を受け付ける窓口として開設した。
届いた申立てを、協会スタッフが内容を確認したうえで、当該記事の編集長と責任者に渡
す。申立てに対する判断や回答は、協会では行わないが、「経過報告書」を義務づけること
により、フィードバック体制の確立をめざす。
7月末までに25件の申立てがあり、うち3件を当該雑誌に送付した。
申立ては名前、住所、連絡先を明記したうえ、問題の雑誌、発行年月日、タイトル、掲載
ページ、問題の内容を記入し、FAX(03・3291・1220)または郵便(〒101-0062
東京都千代田区神田駿河台1‐7、日本雑誌協会「雑誌人権ボックス」)で。
▲報道をめぐる事例〔ジャーナリズム〕
◆皇太子妃出産報道〔ジャーナリズム〕
皇太子妃、雅子氏が2001(平成13)年12月1日午後、女の子を出産した。岡弘文・
宮内庁総務課長が1日午後3時過ぎ、記者会見をして明らかにした。まる1日の間、NH
Kと民放は皇室に電波ジャックされた。
「男子の場合は、皇太子さまに次ぐ皇位継承順位第2位の皇族となる」(毎日新聞)と、男
子の誕生を前提にした報道もめだった。女子の場合はどうなのかは書いていない。NHK
は宮内庁病院、皇居二重橋、東京都目黒区にある雅子氏の両親宅から生中継。商店街では、
出産を記念して小さなちょうちんを約3000個用意し配ったと、アナウンサーが笑顔で
リポート。父親の元外務官僚小和田恒氏の出身地である新潟県村上市からも伝えた。
また、経済界の大物が「暗いニュースのなかで、希望を与えてくれた」と述べ、音楽家が
「空から一筋の希望の光が射した」などと神がかりなコメント。
新聞各紙も1日朝刊で「雅子さま
笑み浮かべ
沿道に向かって手振る」(朝日)、毎日は
社会面記事の中で、「列島各地で、人々は無事出産の知らせを待ち望んでいる」と書いた。
特定の赤ちゃんの誕生に対して、敬語を乱発し、洪水のような量の報道で、全市民に祝賀
を強制することに問題がある。
◆脱・記者クラブ宣言(Declaration of Departure from Kisha Club System)
〔ジャーナリ
ズム〕
長野県の田中康夫知事は2001(平成13)年5月15日、「『脱・記者クラブ』宣言」
を発表し、県庁内にある三つの記者クラブに対して、6月末までに退去を命じた。宣言は、
クラブに部屋をタダで提供しているうえに、クラブの世話をする職員の人件費などが、年
1500万円分の便宜供与に相当すると指摘。長野県政記者クラブは同年5月22日、「抗
議と申入れ」文書を出した。記者クラブは期限までに退去した。都道府県レベルでの記者
クラブ廃止は初めて。
クラブの部屋があった空間に「表現センター」と名付けたプレスセンターが正式に開設さ
れるまでの間は、県庁本館5階の会議室を「仮設表現センター」とした。
上智大学の田島泰彦教授は、すべての「表現者」に開かれる点について、「メディアやジャ
ーナリストと一般市民とを『素朴な平等論』で同じ扱いにしていいのか」
(7月1日付の「新
聞労連」機関紙)と批判した。
田中知事は表現センターを作るため01年6月の定例県議会の総務警察委員会(10人)
に改装費約3000万円を提案したが全員一致で予算案から削除され、本会議でも共産党
が賛成しただけで削除された。知事は9月の定例県議会にも約1800万円に減額して再
提案したが、再び削除され、結局表現センターは仮設のままとなっている。
県議側は「脱・記者クラブ」宣言に記者クラブ側がいまだに合意しておらず、適切なプロ
セスで進められたとは言い難い、などと説明したが、記者クラブを解体するのが知事の宣
言なのだから、理由にならない。
長野県政記者クラブは02年9月27日、宣言やセンターについて「現時点でクラブとし
て一致できる新見解をまとめるにはいたっていない」と筆者に回答した。
表現センターができれば日本における理想的なプレスセンターの誕生となったはずだ。
田中知事の失職にともなう知事選挙(02年9月1日)でも、マスコミと対立候補は記者
クラブ問題について論じなかった。
成り立ちそのものが不当な「記者クラブ」をいったん解体して、公的機関を取材するジャ
ーナリスト(表現者)集団の新秩序をつくりだすしかない。田中知事の宣言を全国化すべ
き。
◆「NHK爆弾漁法でやらせ」訴訟〔ジャーナリズム〕
月刊『現代』(講談社)2000(平成12)年10月号は、NHKジャカルタ支局のイン
ドネシア人元助手フランス氏らが「前支局長の坂本つとむ氏が、1997年8月24日、
スラウェシ島マカッサル近くの島で、『爆弾漁法』の常習者である漁師D氏に、現金を渡す
約束をしたうえで、爆弾を海に投げさせ、浮いてきた魚を獲るシーンを撮影した」と告発
していると調査報道した。映像は、97年8月29日の総合テレビ「ニュース11」など
で放映された。カメラ助手、ガイド役の大学職員ムクシン氏、D氏らの証言をもとに記事
にした。
NHKと坂本氏は9月4日(発売日前日)、「虚偽の報道で名誉を傷つけられた」として講
談社などを相手どり、総額1億2000万円の損害賠償と謝罪広告を求める損害賠償訴訟
を東京地裁に起こした。NHKが名誉棄損で提訴したのは初めて。
フランス氏が2002(平成14)年2月5日に坂本氏のやらせ撮影の模様を証言。3月
5日にはムクシン氏がNHK側証人として出廷、「NHKの撮影のために、D氏に現金を渡
した」と明言。また、「坂本氏が当初、漁民が爆弾を製作するところから撮影したいと言っ
てきて、50万ルピアを渡され、爆弾漁をしている人に仲介してもらうために島のC氏に
渡した」と別のやらせ未遂も暴露した。
5月7日には坂本氏が「ムクシン氏からD氏に金銭が渡ったことを、(本裁判のための現地
調査班の一員として)01年7月に行くまで知らなかった」という事実を証言した。
「金銭授受の事実確認もしないで提訴したのか」という講談社代理人の質問に、坂本氏は
明確に答えられなかった。また、「金銭を渡して何かをやってもらうことを、メディアで何
と言われているか」という問いには、「やらせと言います」と回答した。
7月9日に双方の最終弁論があった。裁判所が2回和解協議の場を設けたが、講談社は「N
HKが提訴を伝えた00年9月4日のニュース7で、ムクシン氏に『やらせはなかった』
と言わせた内容を訂正放送しないかぎり、和解を拒否する」と表明。NHKが訂正放送を
拒否したため、裁判所は判決日を決めることになり、11月19日に判決を言い渡すと伝
えた。
◆和歌山カレー事件報道〔ジャーナリズム〕
マスメディアは1998(平成10)年7月25日に和歌山市園部地区の夏祭り会場で起
きた毒物混入カレー事件を大きく報道した。「朝日新聞」が8月25日に、地区内の男性が
ヒ素中毒症状を起こしており、「民家の住人」に保険金疑惑があると報道。40日間にわた
って民家を報道陣が包囲した。夫妻が10月4日に別件逮捕された際には500人を超す
報道陣が殺到。妻がカレー事件で逮捕されたのは12月9日(4回目の逮捕)だった。
和歌山地裁は2000年10月、夫に懲役6年(求刑8年)の判決を言い渡し確定した。
検察は02年6月5日妻に死刑を求刑したが、動機については明確にできなかった。9月
18日に行われた弁護側の最終弁論は求刑報道に比べると極端に小さい扱い。判決は02
年12月11日。
◆脳死臓器移植報道〔ジャーナリズム〕
脳死臓器移植法が施行されて初めての脳死移植が1999(平成11)年2月28日、高
知赤十字病院で行われた。その後、20例の脳死臓器移植があった。
1例目の第1報は、NHKが2月25日、「ニュース7」で「高知県の44歳の女性に、臓
器提供を前提とした脳死判定へ」と報道。病院にメディアが殺到、死を待つかのような報
道が展開された。28日午前、脳死と判定。
◆ロス疑惑報道〔ジャーナリズム〕
1984(昭和59)年1月から『週刊文春』が長期連載した「疑惑の銃弾」で始まった
三浦和義元貿易会社社長に対する人権侵害報道。三浦氏は81年11月18日、ロサンゼ
ルスで妻Kさんの写真を撮っていたとき3人組の強盗に襲われた。Kさんが頭部を撃たれ、
三浦氏も脚を撃たれた。Kさんは日本の病院で1年後に死亡。『週刊文春』は、三浦氏に対
し、保険金を目当てに、友人O氏に銃撃させたと糾問。警視庁も動き、85年9月、ロス
のホテルで81年8月、元女優にKさんの頭をハンマーで殴らせたとする殴打事件で三浦
氏と元女優を逮捕。88年10月にはロス銃撃事件で三浦氏と、実行犯としてO氏を逮捕
した。
銃撃事件で東京地裁(松本昭徳裁判長)は94(平成6)年3月31日、三浦氏に無期懲
役を言い渡した。O氏を無罪とし、「氏名不詳者による銃撃」という論理で三浦氏を有罪に
した。98年7月1日、東京高裁(秋山規雄裁判長)は逆転無罪判決を出し、三浦氏は釈
放された。検察は最高裁に上告した。O氏については上告せず、無罪が確定した。
三浦氏による487件にのぼる対メディア民事訴訟で、時効分を除いて約80%勝訴して
いる。
▲人権と報道〔ジャーナリズム〕
◆日テレ「不倫報道」ワイドショー敗訴
名誉棄損にあたる〔ジャーナリズム〕
タレントの川崎麻世さんと不倫関係にあるという内容の日本テレビのワイドショー「ルッ
クルックこんにちは」(2001(平成13)年2月21日放送)で名誉を傷つけられたと
して、舞台女優が同社に1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(綿引万里子
裁判官)は4月11日、220万円の支払いを命じる判決を言い渡した。判決は、番組が
「2人は不倫関係にある」との印象を与えると判断。日本テレビは「本人の反論も放送し
ており、全体としては名誉棄損とならない」と主張したが、判決は「視聴者は新聞や雑誌
を読む場合と違い、直接的印象を受けやすい。放送された程度の反論では女優が否定して
いることが分かるだけで、全体の印象は変わらない」と退けた。テレビにおける名誉棄損
は活字の場合と異なるという踏み込んだ判断。
◆集団取材の報道被害(Media group victims)〔ジャーナリズム〕
大きな事件・事故が起きると、数百人の報道陣が現場に押し掛けて、被害者・被疑者個人
や地域全体への集中豪雨的な取材で住民の平穏な生活を破壊する報道被害。特に新聞・雑
誌とテレビのカメラによる市民にまとわりつくような執拗な取材が原因。1社ごとの対応
で人権侵害を防ぐことは困難。神戸連続児童殺傷事件、高知・脳死臓器移植、和歌山毒物
カレー事件、アメリカ原潜「えひめ丸」事故などで社会問題化。京都・小学生刺殺事件で
は、人権と報道・関西の会が2001(平成13)年1月『マスコミがやってきた!
取
材・報道被害から子ども・地域を守る』(現代人文社)を出版した。
日本新聞協会(154社)と日本民間放送連盟(203社)は01年12月、集団取材に
よる人権侵害を「集団的過熱取材」と規定してそれぞれ見解をまとめた。新聞協会の見解
は、保護されるべき対象は「被害者、容疑者、被告人とその家族や周辺住民を含む関係者」
とし「なかでも被害者に対しては、集団的取材によりいっそうの苦痛をもたらすことがな
いよう、特段の配慮がなされなければならない」と述べた。また新聞協会編集委員会の下
部機関として02年5月、対策小委員会を発足させ、各社協議の枠組みを設けた。
日本雑誌協会(93社)も5月ほぼ同様の対応策を決めた。
川崎の「安楽死」事件取材をきっかけに、神奈川県警記者クラブが良識ある取材活動を申
し合わせるなどの動きもある。
いずれの団体も「現場での自主解決」を求めているが、管理職やデスクがこれまでのよう
に、当事者や近所の人に話を聞けとか、顔写真を撮れという命令をやめなければ意味がな
い。
一部マスコミが使う、
「メディアスクラム」
(media scrum)という表現は、イギリスなどで
は報道陣という形態をさし、日本で問題となっているような集団での取材による人権侵害
という意味はない。
◆名誉毀損賠償の高額化〔ジャーナリズム〕
数十万円が相場といわれてきた名誉棄損やプライバシー侵害訴訟で2001(平成13)
年3月以降、高額の賠償を命じる判決が相次いだ。東京高裁は3月、巨人の清原和博選手
が『週刊ポスト』を発行する小学館を相手にした訴訟で1000万円。7月には「近所と
トラブルを起こした」と報じられた大原麗子氏の訴えで、東京高裁は1審どおり、光文社
に500万円の支払いを命令。大原氏が控訴していなかったため認定額は変わらなかった
が、「慰謝料額は1000万円を下回るものではない」と述べた。東京地裁は同月、野中広
務自民党幹事長(当時)が「政敵にスキャンダルを仕掛けた」などとする記事を載せた『日
刊ゲンダイ』に500万円の支払いを命じた。また、東京地裁は9月、テレビ局アナウン
サーが学生時代に風俗店に勤務していたと書いた『週刊現代』『フライデー』(講談社)に
770万円を賠償するよう命じた。
02年2月には歌手の尾崎豊さんの死をめぐって、妻が「死因が他殺で、殺害に関与した
ように報道され名誉を傷つけられた」としてフリージャーナリストを訴えた事件で、最高
裁第2小法廷は、500万円の支払いを命じた東京高裁判決を支持。また、「週刊文春」記
事で名誉を傷つけられたとして、「ジャニーズ事務所」などが損害賠償などを求めていた訴
訟で、東京地裁は3月27日、計880万円の支払いを命じるなど高額判決が続いている。
裁判での賠償金の高額化については、「裁判所が、3点セットで進むメディア規制の先頭に
立っている」(飯室勝彦東京新聞論説委員)、「社会的地位も影響力もあり、反論もできる公
人の賠償額をあまり高くすべきではない」(喜田村洋一弁護士)などの批判があるが、これ
まで低額すぎた。提訴するのがほとんど公人、準公人で、高額な弁護士報酬、印紙代のた
めに私人が提訴しにくい状況を変えるべきだ。
◆匿名報道主義〔ジャーナリズム〕
犯罪報道における人権侵害を減らすため、書かれる側の不利益を意識し、名誉・プライバ
シーを侵害しないように一般刑事事件の被疑者・被告人と被害者の「実名報道」をやめ、
匿名を原則とすること。犯罪を個人だけに還元せず、社会全体の問題としてとらえようと
いう立場をとる。浅野健一がスウェーデンの犯罪報道における人権重視について報告した
『犯罪報道の犯罪』(1984年)のなかで提唱した。スウェーデンでは、74年報道倫理
綱領に「一般市民の関心と利益の重要性が明白に存在しているとみなされる場合のほかは、
姓名の報道は控える」(15条)と定めている。公人、準公人による職務上の犯罪、疑惑は
顕名報道する。日本は未成年者と精神医療ユーザーを除き、逮捕・強制捜査という当局の
アクションを実名の根拠とする「実名報道主義」をとっている。
◆被害者の実名報道に批判〔ジャーナリズム〕
殺人事件で女性が被害者になると、被害者の住所、姓名、学校名、学年、年齢、家族関係
などを報じる。テレビのワイドショーは通夜や葬儀の模様を追いかけ、遺族にカメラとマ
イクを向ける。アメリカなどでは当局が告知した後、遺族の意向を聞いてから報道する。
2000年11月にオーストリアのアルプスで起きたケーブルカー火災で死亡した10人
のうち2人の遺族が日本大使館に氏名公表をしないように要請し、報道されなかった。
01(平成13)年6月の東京・新宿歌舞伎町の火災でも、被害者の実名・写真入り報道
が遺族を傷つけた。警視庁、東京消防庁は「実名発表」について遺族の意向を優先する意
向を示した。
被害者のプライバシー保護が政府のメディア法規制案(→別項)の根拠とされている。
事件・事故の被害者だからといって、実名報道がいつも許されるわけではない。犯罪の内
容や被害者の姓名に重要な意味のある場合を除いて、個人名を特定して報道する意味はな
い。
◆死者の人格権〔ジャーナリズム〕
1987(昭和62)年1月に死亡した女性エイズ患者の遺影を掲載して、「主に外国人船
員相手の売春バーに勤めた」(『フォーカス』87年1月30日号、新潮社)、「不特定の男
性相手に売春」(『フラッシュ』87年2月10日号、光文社)と報じた両誌の取材記者と
両社を相手に、女性の両親が損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁は89年12月27日、
両社がそれぞれ慰謝料を支払うことを命ずる判決を下した。遺族の人格権侵害という形で、
間接的に死者の人格権の保護を認めた初の判断を示した。
◆マスコミ裁判(press trial)〔ジャーナリズム〕
テレビ、新聞、雑誌が事件報道にあたって被疑者を犯人扱いにする例がいっこうになくな
らない。
「重要参考人」も「被疑者」も「犯人」ではない。法的には有罪確定までは「無罪」
と推定される。
「被疑者」を「犯人」よばわりし、被疑者の過去、私生活などをあばきたて、
読者の憎しみをかきたてようとする。被疑者の家族や友人まで巻き込む例も少なくない。
◆被疑者の呼び捨て廃止〔ジャーナリズム〕
毎日新聞社は1989(平成1)年11月1日付から、犯罪報道のときそれまで呼び捨て
にしてきた被疑者の氏名の後ろに、「容疑者」の呼称をつけることにした。法的には、有罪
判決確定までは無罪と推定される、などの理由による。12月1日までに残りのほとんど
すべての新聞社、通信社、放送局が同様の措置をとった。読売新聞社は社告で、犯罪者に
対する社会的制裁機能を否定した。
84(昭和59)年からNHKとフジ・サンケイ・グループが自民党田中派の圧力で、呼
び捨てを原則的にやめていた。
◆少年犯罪の実名報道〔ジャーナリズム〕
少年法61条は、満19歳以下の「少年」の犯罪の報道に関し、
「氏名、年齢、職業、住居、
容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又
は写真を掲載してはならない」と規定している。日本新聞協会は1958(昭和33)年
12月、「(1)逃走中で、放火、殺人など凶悪な累犯が明白に予想される場合、(2)指名
手配中の犯人捜査に協力する場合など、少年保護よりも社会的利益の擁護が強く優先する
特殊な場合」を除き、匿名報道にすると決めた。少年法の精神を尊重した自主規制。
東京の女子高校生コンクリート詰め事件では『週刊文春』89年4月20日号が逮捕され
た少年4人を実名報道した。過去にはこのほか、60年浅沼社会党委員長が17歳の少年
に刺殺されたときにもマスコミ各社が実名で報道している。
97年の神戸の小学生殺傷事件で『週刊新潮』と『フォーカス』が被疑者とされた少年の
実名や顔写真を掲載。
大阪府堺市で1998(平成10)年1月に起きた死傷事件で殺人罪に問われた少年が、
月刊誌『新潮45』で名前と写真を掲載されたとして新潮社らに損害賠償を求めた訴訟で、
大阪高裁(根本眞裁判長)は2000年2月29日、新潮社側に賠償を命じた大阪地裁判
決を取り消し、訴えを棄却する判決を下した。少年は上告したが、同年12月に取り下げ
た。この判決後、愛知県豊川市主婦殺害、西鉄バス乗っ取り、など少年による凶悪犯罪が、
「またもや17歳の犯行」というように、報道された。
◆放送と人権等権利に関する委員会機構(Broadcast and Human Rights / Other Related
Organization)〔ジャーナリズム〕
NHKと日本民間放送連盟は1997(平成9)年6月から番組苦情対応機関、「放送と人
権等権利に関する委員会機構(BRO)」をスタートさせた。BRO議長は伊藤正己。また
機構内に8人の委員で構成する「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」(委員長・
清水英夫)を設置。郵政省(現総務省)・自民党によるマスコミ統制の動きに対し放送界が
自主的に運営する制度が誕生した。
2002年8月末までの申立ては、1万1511件。97年度の900件余りから200
1年度2600件を超えた。事務局スタッフは11人。BROについての01年度のスポ
ットCMは10万回。
委員会決定は8月末まで8例。
◆新聞労連の「報道被害相談窓口」〔ジャーナリズム〕
日本新聞労働組合連合会が1998(平成10)年3月に新聞、通信社の取材・報道で人
権侵害を受けた人の苦情を受け付けるために設置。報道被害ホットラインともよばれる。
新聞労連は97年2月に報道評議会設立に向けて努力することを決定。新聞などの経営者
が加盟する日本新聞協会に働きかけているが、協会はこれに応じないために、労連だけで
相談窓口を発足させた。
相談は郵便(〒101-0061
東京都千代田区三崎町3‐5‐6
造船会館5階
新聞労連「報
道被害相談窓口」係)かFAX(03・5275・0359)で。
人権と報道に取り組む弁護士の有志が01年7月18日、報道被害救済弁護士ネットワー
ク(電話・FAX
03・3351・6066)を設立した。
▲報道に関する制度と取組み〔ジャーナリズム〕
◆新聞倫理綱領〔ジャーナリズム〕
1946(昭和21)年7月23日、全国日刊紙の代表が集まって採択。これが日本新聞
協会(会長
渡辺恒雄・読売新聞社社長)の発足のきっかけになった。協会にはNHK、
民間放送の多くが加盟しており、新聞倫理綱領は、新聞・放送を通じての自主規制コード
となっている。
新聞協会は2000(平成12)年6月21日、総会を開き、新しい新聞倫理綱領を制定
した。99年秋から「新聞倫理綱領検討小委員会」(委員長
中馬清福・朝日新聞社専務)
を設置、外部の有識者の意見も聴きながら、検討を続けていた。新綱領は、前文の冒頭に、
初めて国民の「知る権利」が民主主義社会をささえる普遍の原理であると規定。また、「公
共的、文化的使命を果たす」ために「自らを厳しく律し、品格を重んじなければならない」
と規定した。「自由と責任」「正確と公正」「独立と寛容」「人権の尊重」「品格と節度」の5
項目を規定。「人権の尊重」では、報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もな
く相手を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供する」と述べている。
◆新聞社の「第三者」苦情対応機関〔ジャーナリズム〕
毎日新聞が2000(平成12)年10月14日に「『開かれた新聞』委員会」を設置。0
1年元日、朝日新聞も「報道と人権委員会」を創設するなど計20社が作った。名称はさ
まざまで、組織形態も活動内容も異なる。各社にある記事審査室(64社にある)や広報
室の延長線上の新組織。毎日新聞、新聞労連と一部研究者は「日本独自のオンブズマン」
「社
内オンブズマン制度」(社内オンブズマンは誤訳で社別オンブズマンとすべき)などと過大
評価している。
各新聞社がその新聞に「理解がある有識者」を選んでいるから、被害者が安心して訴える
ことはできない。看板を掲げただけで、国際的な基準を満たした報道評議会やオンブズマ
ンではない。
◆新聞再販制度と言論の自由〔ジャーナリズム〕
1997(平成9)年4月1日、日本新聞協会は「新聞再販制度の見直しは必要かと題す
る研究報告書を発表した。(1)多様な新聞が戸別配達制度により全国に配布されるシステ
ムは表現の自由や国民の知る権利の観点から憲法の保障を受けている。(2)表現の自由を
制約する方策を執ろうとする場合、制約が高度の必要性をもつこと、および、ほかに方法
がないことを立証する責任を負う、などと述べ、公正取引委員会の再販問題小委員会が9
5年7月の中間報告でうちだした新聞再販見直し論にはこの観点が欠けていると批判。同
委員会は2001年1月23日、新聞、雑誌、音楽用CDなどの再販制度について、「競争
政策の観点からは廃止すべきだが、当面は存置することが相当だ」とする結論を発表した。
このなかで、関係業界に対し、価格設定の多様化などを要請した。
◆言論に対する襲撃・暴力〔ジャーナリズム〕
1987(昭和62)年5月3日夜、兵庫県西宮市にある朝日新聞社阪神支局2階の編集
室で何者かによって記者が撃たれた。小尻知博記者(当時29)は死亡、1人が重傷を負
った。9月には同名古屋本社社員寮を襲い(死傷ゼロ)、東京本社でも側壁から銃弾が発見
された。阪神支局襲撃事件は02年5月3日午前0時に時効となった。これらの事件直後
にはいずれも「赤報隊」名の犯行声明が通信社に送られてきた。また、市議会で「天皇に
戦争責任はある」と発言した本島等・長崎市長が、90年1月18日、右翼にピストルで
撃たれて重傷、さらに政教分離の立場から、他のキリスト教系3大学長とともに大嘗祭を
批判した弓削達・フェリス女学院大学長の自宅に、4月22日銃弾が撃ち込まれる事件も
起きた。ジャーナリストへの偶発的でない襲撃は、1918(大正7)年「白虹貫日事件」
で村山龍平・朝日新聞社長が右翼に暴行を受けたのが始まり。皇室を題材にした小説の掲
載を理由に、61年2月1日、嶋中鵬二・中央公論社長邸が右翼の少年に襲われ、家人2
人が殺傷された。
◆メディア責任制度(media accountability system)〔ジャーナリズム〕
メディアに対する法的な規制は、憲法上も、権力を監視し批判する健全なジャーナリズム
活動のためにも、あってはならない。そこで、メディアが自らの責任で、報道の自由と名
誉とプライバシー擁護を両立させるためにつくった仕組み。(1)メディア界で統一した報
道倫理綱領の制定と、(2)ジャーナリストが倫理綱領を守っているかどうかをモニターす
る報道評議会・プレスオンブズマンの設置、をセットにした制度である。報道評議会とプ
レスオンブズマンは同義語と考えてよい。両者ともメディアと報道される市民の間に立っ
て仲介する「第三者」機関ではない。報道された市民や団体の訴えに耳を傾け、大メディ
アに対して対等な関係に立てるようオンブズ(スウェーデン語で「代理する」の意)し、
調査・審理する。メディアが倫理綱領に違反したと判断した場合は、叱責の裁定文を公表
する。「公的オンブズマン」は誤訳。潮見憲三郎著『オンブズマンとは何か』(講談社)が
詳しい。日本弁護士連合会(日弁連)は87(昭和62)年と99(平成11)年にメデ
ィア責任制度を設立するよう求める要望書をメディア界に送っている。報道被害者、市民、
記者、法律家らでつくる「人権と報道・連絡会」
(〒168-8691
東京都杉並南郵便局私書箱
23号、FAX03・3341・9515)は、85年からメディア責任制度の確立を求
めて運動している。
◆報道評議会(Press Council)〔ジャーナリズム〕
(1)プレスの自由の擁護、(2)倫理綱領の遵守に対する監視、(3)読者からの取材・
記事に対する苦情対応、(4)新聞間、新聞とニュース・ソース間の問題の処理、を目的と
する活動を行う評議会。1916年スウェーデンで設けられた。台湾も63年に設立し、
世界約30カ国にある。イギリスの報道評議会は、1949年「新聞に関する王立委員会」
の勧告によって58年に発足。62年、第2次王立委員会の勧告は、報道評議会の強化と、
新聞界以外から評議会委員に参加を求めるべきことなどを含み、64年から新定款に基づ
く報道評議会が活動を開始した。91年に報道苦情委員会に改組。日本弁護士連合会は9
9(平成11)年10月、日本にも新聞評議会を設立すべきだと提言した。
◆プレスオンブズマン(press ombudsman for the general public)〔ジャーナリズム〕
オンブズマンとは1809年スウェーデンで創設され、多くの国々で採用されている一種
の議会行政監察官で市民の代理人のこと。スウェーデン語では男女とも「オンブズマン」
であり、オンブズパーソンと言い換える必要はまったくない。スウェーデンは、1969
年報道評議会制度改革のひとつとして、この「一般市民のためのプレスオンブズマン」を
設けた。ほかのオンブズマンと異なり、法律に基づかない民間機関。新聞・雑誌に対する
苦情はすべてプレスオンブズマンに寄せられ、オンブズマンはその苦情に基づいて、ある
いは自らの発意によって調査し、苦情が正当であると判断したときは、該当の新聞・雑誌
に自発的な訂正か反論の掲載を求める。自発的解決が得られなかった場合は、自らの判断
と編集者の弁明とを添えて報道評議会に回付する。報道評議会による裁決は全文1字の削
除もなく、当の新聞、雑誌がめだつところに掲載しなければならない。アメリカ・カナダ
などでは全国的レベルではなく、いくつかの新聞社が独自においている。特に「ワシント
ン・ポスト」の制度はよく知られる。
◆自主規制〔ジャーナリズム〕
(1)法令に基づく言論規制としてではなく、(2)マス・メディア企業またはその連合体
の意思、またはメディア労働者個人の心理によって、(3)情報が受け手にあたえるであろ
う効果を予測し、その効果を消滅もしくは減殺させる目的で、(4)その情報を破棄したり
改変する行為。自主規制には「明示された規制」(「倫理綱領」など)と「明示されない規
制」(メディア企業自身の事前規制)の2種類が存在する。
◆検閲(censorship)〔ジャーナリズム〕
言論・表現を事前に抑制し、情報の伝達を阻害すること。日本国憲法21条2項は検閲を
「絶対的」に禁止することを規定している。歴史的に、検閲の禁止が言論の自由の基礎を
なしてきた。1695年、イギリスは出版許可法(The
Licensing
Act)を廃止し、アメ
リカでも憲法修正第1条によって言論の自由を確立する法理となった。日本国憲法の検閲
禁止規定はそれ以上の意義を有している。
◆報道協定〔ジャーナリズム〕
「誘拐事件のうち、報道されることによって被害者の生命に危険が及ぶおそれがあるもの
について」結ぶ協定。1960(昭和35)年東京で起きた「雅樹ちゃん事件」が引き金
となり、同年6月、日本新聞協会編集委員会が「誘拐報道の取り扱い方針」を定めた。こ
の方針はその後何回も改定され、70年、「人命に危険の及ぶおそれのある誘拐事件、また
はこれに準ずる事件」と改められた。報道側で一致すれば自主的に解除できる。
◆記者クラブ〔ジャーナリズム〕
各省庁、都道府県庁、市役所、警察署、団体など、主要なニュース・ソースの記者室にお
かれている取材のための機関。西山武典・元共同通信編集主幹が86年に調査したところ
によると、共同通信記者が加盟している記者クラブは612あった。全国紙が96年に行
った調査では781だった。記者クラブの第1号は、1890(明治23)年、第1回帝
国議会の新聞記者取材禁止の方針に対して「時事新報」記者が、在京各社の議会担当に呼
びかけ、「議会出入記者団」を結成、10月には、これに全国の新聞社が合流し、名を「共
同新聞記者倶楽部」と改めたことによる。1941(昭和16)年5月、新聞統制機関「日
本新聞連盟」の発足にともない、クラブの数が3分の1に減らされ、クラブの自治が禁じ
られた。戦後の49年10月26日、日本新聞協会は「記者クラブに関する方針」を作成
して、記者クラブを「親睦社交を目的として組織するものとし取材上の問題にはいっさい
関与せぬこと」と規定。
新聞協会は97年12月、公的機関が保有する情報へのアクセスを容易にする「取材のた
めの拠点」と改めた。2002年1月23日には、「取材・報道のための自主的な組織」と
する新見解をまとめた。また、「開かれた記者クラブ」を実現するために「一定の実績があ
り、継続取材し、報道倫理を厳守するジャーナリスト」に記者クラブ参加を認めると表明。
「記者室」と記者クラブは別個の存在だと考える」などをうたっている。しかし、新聞倫
理綱領の順守などについて、だれがどういう手続きで審査するかは明らかにされていない
し、フリーの記者が入会できる可能性はほとんどない。一方で、「公的機関が主催する会見
を一律に否定するものではない」と述べ、記者クラブの会見開催権にはこだわらないなど、
長野県の「脱・記者クラブ」宣言を受けた内容になっている。新聞労連も02年2月8日、
独自の記者クラブ改革案を発表したが、記者会見の開催権について、「国や自治体、政党な
どの公権力が主催する会見」も認めた。
官庁は「記者クラブ」を広報機関とみなしている。京都市に住む住民が京都市と京都府の
記者クラブを訴えた裁判で、最高裁は「府は広報活動の一環として提供しているのであり、
行政財産の目的内使用」と認定した。02年7月24日の新聞協会報によると、同編集部
によるアンケート結果で、行政側は「広報活動の一環として記者クラブを運営」
(鳥取県)、
「広報・報道活動の一環として記者室を設けている。記者室の維持管理にかかる経費は、
行政上の経費に含まれる」(大阪市)などと回答。記者クラブがなくなると権力の監視がで
きなくなるといわれるが、行政は広報活動の一環とみなしている。
◆法廷内写真取材〔ジャーナリズム〕
最高裁大法廷が開廷前3分間に限って写真取材を認めているなど、ごく少数の例外を除い
て、日本では法廷での写真取材を禁止してきた。それが1987(昭和62)年12月1
5日からスチール・カメラ、ビデオ・カメラ各1、開廷前2分間だけ、という条件つきな
がら、全国の裁判所で取材が認められることになった。
敗戦直後は法廷での写真取材はかなり自由だった。ところが49年1月、刑事訴訟規則が
施行されて、
「公判廷における写真の撮影、録音または放送は、裁判所の許可を得なければ、
これをすることができない」と定められたこと、このころから公安・労働事件で「荒れる
法廷」が続出したことなどから、撮影を認める裁判所が急速に減少した。さらに最高裁は
68年6月、「裁判所の庁舎等の管理に関する規程」を制定し、公判廷はおろか、裁判所構
内すら写真取材が難しくなった。
週刊誌などが廷内盗撮するケースが絶えないが、「週刊ポスト」(小学館)02年9月20
日号が、オウム真理教の麻原彰晃被告の廷内写真3枚を掲載したため、東京地裁は9月初
め、小学館に発売中止と雑誌の回収を要求した。6月21日に東京地裁で開かれた公判で
撮影した。同誌は1996年5月にも麻原被告の廷内写真を載せて抗議を受けた。
◆NIE(Newspaper In Education)〔ジャーナリズム〕
「教育に新聞を」の略で、小学校から大学までの教育に新聞を教材として使うための、新
聞社と学校との共同活動。半世紀前からアメリカで始まり、現在、アメリカ新聞発行者協
会加盟の日刊紙約1500社のうち約600社がNIE計画を実施。学校で教育に使われ
る新聞は約300万部、定価の半額で提供される。日本でも、若い世代の活字離れに対応
するため、日本新聞協会が1988(昭和63)年2月、NIE委員会を設置。小中高校
の現場教師たちも「NIE研究会」をつくって、新聞を利用した授業例の研究をしている。
98(平成10)年4月にNIE委員会が日本新聞教育文化財団に移管。2000年10
月横浜情報文化センター内にNIE全国センターを開設。実践校は348校(約8万人の
児童・生徒)。
▲ジャーナリズム一般〔ジャーナリズム〕
◆ジャーナリズム(journalism)〔ジャーナリズム〕
時事的な事実や問題の報道・論評の社会的伝達活動。もともとは、ラテン語の「ディウル
ナ」(diurna)、つまり日刊の官報を意味し、そこから英語に転化して「日々の記録」を意
味するようになった。現在ではニュースを収集し、選択し、解説し、そして継続的・定期
的に伝達する行為、というのが一般的定義。ジャーナリズムは、生起した出来事の中から、
市民の次の行動決定のために必要な事実や議題をピックアップして、できるだけ早く、で
きるだけ広く伝えることが要求される。
◆ジャーナリスト(journalist)〔ジャーナリズム〕
主体的・積極的に現実を把握し、解釈し、表現することを任務としてジャーナリズム活動
を行う。一般的に、ジャーナリズム活動を、日々行い続けるものが、職業(専門)的なジ
ャーナリストといわれるが、職業的ジャーナリストがもっている権利(ニュース・ソース
への接近など)は、市民一人ひとりがもっている権利(「知る権利」など)と、まったく同
等なのである。
◆マス・コミュニケーション(mass communication)〔ジャーナリズム〕
不特定多数の受け手を対象にマス・メディアを通じて、大量に情報を伝達するコミュニケ
ーション過程のこと。マス・コミュニケーションの特徴としては、次のようなことがあげ
られる。(1)送り手は通常大規模に組織された集団である、(2)機械的・技術的手段で
情報を大量に複製する、(3)これを、分散した不特定多数の受け手に伝達する、(4)受
け手が、送り手になれる機会は少なく、送り手と受け手の役割分化がはっきりしている、
(5)
受け手から送り手へのフィードバックがむずかしい。つまり、情報の流れは、送り手から
受け手へ、一方的である。マス・コミュニケーションが社会に対して行う活動は、次の諸
点があげられる。(1)出来事についての情報を収集し、伝達する活動(報道活動)、(2)
その出来事について評価し、解説し、論評して、受け手の行動を指示する活動(論評活動)、
(3)社会の価値を後世に伝達する活動(教育活動)、(4)受け手に娯楽を提供する活動
(娯楽活動)。そのほか、(5)広告を伝達する活動(広告媒体としての活動)もある。
◆マス・メディア(mass media)〔ジャーナリズム〕
マス・コミュニケーションの過程で、送り手と受け手を結ぶ媒体。新聞、雑誌、書籍、テ
レビ、ラジオ、映画、ビデオやオーディオのテープなどがあげられる。日本語の「マスコ
ミ」とは、通常このマス・メディアをさすことが多い。なお、メディアとは複数形で、単
数形ではミーディアム(medium)である。
◆知る権利(right to know)〔ジャーナリズム〕
(1)マス・コミュニケーションにおける送り手の活動の自由を要求するものであり、
(2)
民衆一人ひとりが国政に関する情報を請求する権利。1945年1月、アメリカのAP通
信社専務理事ケント・クーパーが「知る権利」を提唱する講演をしたことでこの言葉が生
まれた。クーパーが提唱したのは、第2次大戦中の政府によるニュース操作と公的宣伝の
ために、民衆が真実から遠ざけられ各国間に反目と憎悪を激化させた反省から、国家権力
に対抗する新しい民衆の権利概念を対置させる必要を感じたからであった。この考えは6
6年に「情報自由法」
(Freedom
of
Information
Act)が制定される運動にも発展した。
◆アクセス権(right of access to mass media)〔ジャーナリズム〕
マス・メディアを開かれたものにし、人々がそれに参入し利用する権利。アクセス権は、
(1)
批判・抗議・要求・苦情、(2)意見広告、(3)反論、(4)紙面・番組参加、(5)運営
参加に分類できる。1967年、アメリカの法律学者ジェローム・バロンが提唱。
◆プライバシーの権利〔ジャーナリズム〕
(1)私生活をみだりに「知られない権利」としてだけでなく、(2)個人一人ひとりが公
的機関および企業(生命保険、小売業、不動産業、金融機関など)が保有する自分のデー
タについて「知る権利」をもち、(3)そのデータが誤っていれば訂正・修正させる権利を
もつという積極的・能動的な権利。日本では、プライバシーの権利はもっぱら私生活を他
人に「知られたくない権利」(right
to
be
let
alone)としてのみ理解され、このこと
から「知る権利」と対立する概念のようにとらえられている。しかしこれではプライバシ
ーとは保護されるもの、侵害されてはならないものという守勢的・受動的な権利でしかな
い。アメリカでは1974年プライバシー法(Privacy
Act)が制定され、プライバシー
の積極的・能動的権利を確立させた。
◆発表ジャーナリズム〔ジャーナリズム〕
官庁や民間企業などのニュース・ソース側が記者クラブなどを通じて積極的に発表・提供
する情報を、そのまま右から左に報道するジャーナリズム。そのような情報を「玄関ダネ」
といい、またそのような報道をアメリカでは「ステノグラフィック・リポーティング」
(stenographic
reporting
速記報道)という。原寿雄・共同通信元編集主幹が、とりわ
け日本では「客観報道主義」がそれを支えているとして「客観報道を問い直す」ことを提
唱してから、改めて活発に議論されるようになった。
◆インベスティゲイティブ・レポーティング(investigative reporting)
〔ジャーナリズム〕
調査報道。警察・検察にたよらず、ジャーナリズムが意識的主体的に、政治の腐敗、税金
の浪費、大企業の腐敗組織化された犯罪を対象とし、また権力が国民に隠そうとする問題
を独自取材・調査し、あばくこと。「ワシントン・ポスト」によるウォーターゲート事件報
道が代表的。つまり本来、調査報道の対象となるのは公的な問題であって日本における「ロ
ス疑惑」報道のようなものは「調査報道」とはいえない。しかし1988(昭和63)年、
神奈川県警が途中で捜査を放棄した川崎市助役に対するリクルートコスモス社からの贈賄
事件を、朝日新聞横浜・川崎両支局が独自に取材を続け、「リクルート疑惑」をあばきだし
たことは、特筆すべき調査報道だった。
◆パブリック・ジャーナリズム(public journalism)〔ジャーナリズム〕
シビック・ジャーナリズムともよばれる。メディアと市民の双方向性を強化するために、
従来の客観報道の枠を越えて市民がかかえる諸問題をほりおこし、何をすべきかを明らか
にする紙面、番組づくりをしようという新たな報道手法。1988年の大統領選挙でネガ
ティブ・キャンペーンが問題になって、「ウィチタイーグル」紙の編集長が90年の中間選
挙で導入した。読者視聴者に依存しすぎてジャーナリストとしての議題設定がないとの批
判も出ている。
◆センセーショナリズム(sensationalism)〔ジャーナリズム〕
大衆の原始的本能を刺激し、好奇心に訴え、興味本位の報道をすること。特ダネ意識―「特
ダネを抜いて同僚、同業他社や世間をアッと言わせたい」―のようなジャーナリストの心
理もセンセーショナリズムと結びついている。マス・メディアの商業主義から発している。
◆パック・ジャーナリズム(pack journalism)〔ジャーナリズム〕
1985(昭和60)年6月19日、豊田商事会長刺殺事件がおきた。約50人の報道人
の目の前での殺人。同年9月11日、「ロス疑惑」の元輸入雑貨販売会社社長が殺人未遂容
疑で逮捕された現場へ、各新聞やテレビ、週刊誌などの取材記者、カメラマンが詰めかけ
た。このような日本のジャーナリズム情況を「ニューヨーク・タイムズ」が「殺人を防ぐ
努力をせず、同一歩調をとり、好奇心をあおる」
「パック・ジャーナリズム」
(寄合い報道、
報道軍団)と指摘した。
◆イエロー・ジャーナリズム(yellow journalism)〔ジャーナリズム〕
(1)大見出し主義、(2)センセーショナリズム、(3)感情に訴える(わいせつな表現
など)、(4)ニュースを自分でつくる(デッチあげ)、などの傾向をもつジャーナリズム。
19世紀末、ジョセフ・ピューリッツァーの「ニューヨーク・ワールド」紙に連載中だっ
た「イエロー・キッド」(続き漫画の主人公である中国人の子どもの名前。黄色のインクで
印刷されていた)の書き手をウィリアム・ランドルフ・ハーストの「ニューヨーク・モー
ニング・ジャーナル」紙が買収して新聞に載せたことに始まる。
◆ニュー・ジャーナリズム(new journalism)〔ジャーナリズム〕
事件や関係者などの取材対象(特定の人物)に密着取材し、文学的表現を用いて表現され
るルポルタージュの一種。ウォルター・リップマンも使っていた言葉だが、現在の意味で
使われるようになったのは、トルーマン・カポーティの『冷血』
(1966年)以来、トム・
ウルフらアメリカのジャーナリストが主張してからである。ゲイ・タリーズやノーマン・
メイラーの作品にその影響もみられる。
◆書き得報道〔ジャーナリズム〕
「書き得(どく)」というのは、真相がはっきりしない事件で、しかもどのように書き立て
ようとも、どこからも文句を言われるおそれがなく、したがって面白くセンセーショナル
に書いたほうが得、という場合をいうジャーナリズム内部の用語。
◆アナウンス効果(announcement effect)〔ジャーナリズム〕
アナウンスメント効果ともいう。候補者や政党が現在おかれている状況についての情勢報
道が、有権者の投票意図や投票行動に、なんらかの変化をもたらすこと。例えば、選挙の
予測報道で、優勢と報じられた候補者にさらに票が集まる「勝ち馬効果」や、逆に苦戦と
伝えられた候補者に判官びいきで票が集まる「負け犬効果」などが考えられている。アナ
ウンス効果は存在しないとする説もある。
◆キャンペーン(campaign ; press campaign)〔ジャーナリズム〕
ある特定の世論を喚起させるために新聞の紙面やマス・メディアを一定期間動員すること
によって、継続的集中的に行う言論活動。もともと「平原」を意味し、そこで繰り広げら
れる「戦闘」が転化し、「一定の場における行動、特別の目的をもった組織的活動」の意味
になった。
◆クオリティー・ペーパー(quality paper)〔ジャーナリズム〕
高級紙。教養ある知的な読者を対象とする新聞。センセーショナリズムを排し、重要な事
項についての詳細な記録、高度な論評を内容とする。特にヨーロッパでは高級紙と大衆紙
(popular
paper)とが、厳然と分かれている。イギリスの「ザ・タイムズ」、フランスの
「ル・モンド」などが代表的。
日本では実質的に高級紙にあたるものはない。
◆フリー・ペーパー(free paper)〔ジャーナリズム〕
無料紙。広告収入だけで製作され、読者に無料で配布される新聞。日本では、1960年
代の初め、団地向けに始まり、70年代に入ってサンケイ新聞社が「サンケイリビング」
を発行したのをきっかけに、各新聞社が競って発行。配布地域を細分化して限定している
ため、地域の小規模広告主を吸収でき、広告収入をあげられる。
◆タブロイド判(tabloid paper)〔ジャーナリズム〕
普通の新聞の大きさをブランケット判(blanket
sheet)というが、その半分の大きさの新
聞。特にサイズの規定があるわけではない。
1919年、アメリカのシカゴ・トリビューンが「イラストレイテッド・デイリー・ニュ
ース」をタブロイド判で出したのが始まりといわれる。一般紙が扱う記事は要約し、代り
にセンセーショナルな記事・写真を満載しているのが特徴。
◆マク・ペーパー(Mac-paper)〔ジャーナリズム〕
「マクドナルド新聞」。簡単に読めるジャンクフード風の新聞のこと。各記事は短く、わか
りやすく、レイアウト、写真、グラフを多用して、視覚に訴える。むずかしい解説や、調
査報道、長いルポルタージュなどは載せない。ページ数も、アメリカの新聞としては薄い
40ページ程度に抑える。代表的なのが「USAトゥデイ」。
▲取材・編集用語〔ジャーナリズム〕
◆編集権〔ジャーナリズム〕
1948(昭和23)年3月、日本新聞協会が発表した「新聞編集権の確保に関する声明」
に基づく政治的概念。同声明によると、「編集権とは
新聞編集に必要ないっさいの管理
を行う権能」であり「編集権を行使するものは経営管理者およびその委託を受けた編集管
理者に限られる」「定められた編集方針に従わぬものは何人といえども編集権を侵害したも
のとしてこれを排除する。編集内容を理由として印刷・配布を妨害する行為は編集権の侵
害である」。この「編集権」概念は新聞ばかりでなく出版にも持ち込まれ、放送でも「編成
権」という言葉になって使われている。「編集・編成権」は、占領軍の権力を背景として戦
後の日本で生み出されてきた独特の概念であり、諸外国にはない。現在なお新聞各社の労
働協約・就業規則のほとんどには「編集権」が経営者側にあることを明記している。この
ことは、「思想の表明の自由」を損なうものであり、「国民の知る権利」を侵害するという
問題も示している。
◆公正の原則(fairness doctrine)〔ジャーナリズム〕
マス・メディアの伝える情報・思想など、争点に関して提起された対立見解に異論をもつ
視聴者(読者)に、そのマス・メディアを利用して反論を述べる機会をあたえること。特
に放送事業に適用される。日本では、放送法第3条で「政治的に公平であること」「意見が
対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」と定め
られている。
◆取材源の秘密〔ジャーナリズム〕
「ニュース源の秘匿」ともいう。情報やニュースの出所・提供者名を、本人の承諾なしに
外部に漏らさないこと。ジャーナリストや報道機関が守るべき基本的な倫理(モラル)の
ひとつ。ウォーターゲート事件を追及した「ワシントン・ポスト」の2人の記者には、政
権内部でティップ・オフしてくれた重要な情報源があったが、それは「ディープ・スロー
ト」という匿名のままで、いまだに氏名は公表されていない。日本では、取材源の秘匿は
法的に規定されてはいないが、1979(昭和54)年、札幌地裁、同高裁で、80年に
最高裁で、記者が取材源を明らかにしない「証言拒否権」が、民事上、保護されるべき「職
業上の秘密」として認知された。
◆オフレコ発言〔ジャーナリズム〕
日本新聞協会は、1996(平成8)年2月、前年11月に江藤隆美総務庁長官(当時)
が過去の歴史に関して行った「オフレコ発言」が韓国の新聞にもれて辞任に追い込まれた
件について「外部にもれたのは、倫理的見地から遺憾。オフレコの約束は破られてはなら
ない」との見解をまとめた。
「メモをとらない、報道はしない」との約束を前提にニュース・
ソース側が情報提供したり、見解・意見を述べるのがオフレコだが、報道規制に利用され
るおそれがある。
◆記者懇談〔ジャーナリズム〕
記者会見と異なり、カメラマンを入れず、記者はメモをとらず取材対象の氏名を伏せて取
材する形式。取材対象と日常的に接触している記者に限られるので、通常の会見より一歩
ふみこんだ情報の入手が可能になるとされる。記者団に対し、手短にコメントを出すのが
「プレス・リマークス(press remarks)」、ニュース・ソース側がジャーナリストに対して
状況説明を行うのが「ブリーフィング(briefing)」。もともとはアメリカ軍の「戦況要約」
のこと。
◆ブラ下がり〔ジャーナリズム〕
首相や有力政治家が首相官邸や国会内の廊下などを歩くとき、記者が囲んで歩きながら取
材すること。
◆リーク〔ジャーナリズム〕
情報源(当局者)が個人的に特定のジャーナリストにひそかに流すこと。記者会見、発表
などの「オン・ザ・レコード」と異なり、リークは提供された情報の中身は報道してもい
いが、情報の提供者の名前は公表しないことを前提にした、「バックグラウンド・ブリーフ
ィング」のなかでも最も秘密度の高い情報提供の方法。不確かな内部告発、ライバル攻撃
などの特別の意図をもって行われることが多く、アメリカなどでは慎重に対応することに
なっている。リークが情報提供者の側に有利なのは、報道された結果について責任をとら
なくてよいからだ。
◆スクープ(scoop)〔ジャーナリズム〕
(1)ニュース・ソース側(大部分は、政治権力や資本など)が隠したり歪めたりしてい
る「事実」の正確な貌をあばきだすこと。(2)ニュース・ソース側が、いずれ発表しよう
としている事柄を、何日か早く入手して出すこと。(3)公知の事実であって、みんなが重
視していない事柄に新しい問題性をみつけ、その事実のもつ意味を新たに明らかにしてみ
せること。一般的には特ダネ・出し抜くこと、を意味する。
◆やらせ〔ジャーナリズム〕
狭義では、フィルム・ドキュメンタリーで、ありもしない事実を演出したり、事実を再現
するために事前に依頼して演技をさせることをいう。広義では、ドキュメンタリーばかり
でなく、クイズからスポーツに至るまでの八百長までを含む。やらせは、やらせであるこ
とを視聴者に明示すれば、やらせでなくなる。1992(平成4)年9月30日に放送さ
れたNHKスペシャル「奥ヒマラヤ禁断の王国・ムスタン」でのやらせが有名。
◆わいせつ図画〔ジャーナリズム〕
刑法第175条は「猥褻ノ文書、図画其他ノ物ヲ頒布若クハ販売シ又ハ公然之ヲ陳列シタ
ル者」は処罰されることになっている。従来警察は、ヘアが見えるヌード写真を厳しく取
り締まってきた。だが1993(平成5)年3月、ヘアが写っている写真集を出した3出
版社が自粛要請されたのを最後に、逮捕はもちろん、
「警告」も「自粛」要請もなくなった。
ところが警視庁は、女性器を撮影したものはわいせつ、という基準を設けたらしく、94
年3月、女性器が写った写真を無修整で掲載した写真集が摘発され、出版社の社長、編集
者が逮捕された。
◆降版協定〔ジャーナリズム〕
新聞の紙型取りの時刻を定めそれ以降のニュースは翌日回しとする各新聞社間の協定。時
刻は地域によって異なる。
◆テレゴング(telegong)〔ジャーナリズム〕
大規模電話投票システム。アメリカで始まり、日本ではNTTが、1993(平成5)年
11月から運用を開始した。放送局で生放送中、視聴者に質問を出し、あらかじめ最大6
項目の選択肢ごとに電話番号を設定しておき、それぞれの番号に電話をかけてもらい、か
かった数(コール数)を即座に放送局に通知する仕組み。視聴者がかけた電話は最寄りの
電話局につながり、そのコール数はホスト・コンピュータに集積され、5秒ごとに放送局
のパソコンに自動的に通知される。
同じ人間が何回かけてもわからない。世論の正確な縮図とはいえない。
◆インナー・サークル(inner circle)〔ジャーナリズム〕
普通は権力の中枢の取り巻きグループのこと。アメリカのメディアでは、ホワイトハウス
や官庁の高官から特別の背景説明を受けたり、食事に招かれたり、ニュースをリークされ
たりするエリート・メディアをさす。3大テレビ・ネットワークとCNN、新聞は「ニュ
ーヨーク・タイムズ」「ワシントン・ポスト」「ロサンゼルス・タイムズ」「ウォールストリ
ート・ジャーナル」の4紙、それに『ニューズウィーク』『タイム』の2週刊誌の計9社を
いう。
◆パパラッチ(paparazzi)〔ジャーナリズム〕
イタリア語で、はえのようにぶんぶんうるさい虫のことで、単数ではパパラッツォ。フェ
デリコ・フェリーニ監督の映画『甘い生活』で、ゴシップ雑誌記者とともに働くフォトグ
ラファーに名付けられ、芸能人や政治家のスキャンダルやプライバシーを暴いた写真をね
らう写真家をさす。1997年8月31日、パリで交通事故死したダイアナ妃が乗ってい
た車を、オートバイなどで追いかけた記者たちが「パパラッチ」だったことで一般的に知
られた。
◆コンバット・プール(combat pool)〔ジャーナリズム〕
戦争取材プール。プール取材とは、取材に大勢の報道陣が参加して、めいめいが記事や写
真を送稿することが困難な場合、代表だけが取材し、残りのメンバーはその素材を利用す
る方法。湾岸戦争では、アメリカ国防総省が事前にこの戦争の取材はプールに限定するこ
とを明らかにし、プールの代表は体力テストに合格することを義務づけた。ベトナム戦争
のとき戦争の現実が報道されたため、ベトナム戦争反対の世論が高まったことへの反省が
根本にある。
◆ブラック・アウト(black out)〔ジャーナリズム〕
もともとは空襲に備えての灯火管制のこと。それから転じて、軍・警察などによる報道管
制をさす。湾岸戦争で地上戦が始まった1991年2月23日夜(アメリカ東部時間)か
ら25日まで、アメリカ中東軍シュワルツコフ司令官は、
「作戦成功と将兵の安全のために」
情報の完全ブラック・アウトを命令した。このためアメリカのマスコミは湾岸戦争につい
てまったく沈黙しなければならなかった。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]
◆ピュリッツァー賞(Pulitzer Prize)〔ジャーナリズム〕
毎年、ジャーナリズム・文学・音楽などで功績のあったアメリカ市民に授与される賞。ハ
ンガリー生まれのアメリカ人ジャーナリストで新聞経営者だったジョセフ・ピュリッツァ
ー(Joseph
Pulitzer
1847∼1911)の遺志で、その遺産をもとに1917年に創
設された。新聞ジャーナリズムに関しては、国際報道、国内報道、調査報道、フィーチャ
ー、解説、論説などの部門がある。
●キーワード〔ジャーナリズム〕
●放送テープ証拠採用〔ジャーナリズム〕
和歌山市カレー毒物混入事件で殺人罪の被告人の公判で、和歌山地裁の小川育央裁判長は
2002(平成14)年3月22日、別件逮捕された1998年10月4日から初公判が
あった99年5月13日までに、民放4局が放映した延べ6番組を、和歌山県警捜査員が
録画・編集した2本のテープを証拠採用した。
決定理由は「報道、取材の自由も、適正な刑事裁判実現のためには一定の制約を受ける」
と判断した。被告人は黙秘を貫き、供述調書が1通も作成されていない。テレビ取材に対
する発言を被告の供述証拠として採用したのは初めて。被告人の黙秘権を侵害する不当な
決定だ。
民放6局は「報道番組の一部が報道目的以外に利用されると報道機関に対する信頼を失い、
取材できなくなって報道の自由の制約になる」という抗議声明を出した。
しかし、民放各局は被告人と夫に対し、有名キャスターを使って、「われわれも無実と信じ
る」などと偽って近付き取材した。逮捕の1カ月半前から200人以上の報道陣が自宅を
24時間取り囲み、子どもたちが通学できない状況があった。テレビ界は、警察の非公式
情報をうのみにして、当局と二人三脚で夫妻を犯人に決めつける世論をつくった自らの「取
材と報道」への反省なしに、権力の介入反対と言っても虚しい。
●朝鮮王族の血縁認める天皇発言報道自粛〔ジャーナリズム〕
記者クラブで最も閉鎖的なのが宮内庁にある「宮内記者会」だが、このクラブは天皇の声
さえ闇に葬ろうとした。
明仁天皇は2001(平成13)年12月18日、同月23日の天皇誕生日に報道を解禁
するという条件で宮内記者会と会見した。天皇は日韓共催のサッカーW杯の共同開催国、
韓国に対する思いを問われたなかで、「宮内庁楽部の楽師の中には、当時の(韓国からの)
移住者の子孫で、代々楽師を務め、いまも折々に雅楽を演奏している人があります。(略)
私自身としては、桓武天皇の生母が百済の武寧王(ぶねいおう)の子孫であると続日本紀
に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています」(朝日、産経両新聞のHP)など
と述べた。
12月23日朝、朝鮮王族との血縁関係に関する発言を報じたのは朝日と産経だけだった。
毎日新聞、読売新聞、東京新聞、共同通信、NHK、民放ネット局などは、孫の誕生を喜
ぶなどと報じるだけで、この発言をブラックアウト。韓国各紙が24日朝刊で「韓(朝鮮)
半島との血縁を天皇自ら初めて発言した」などと大きく報じたのを受けて初めて伝えた。
朝鮮半島の北半分に住む朝鮮民族への偏見に満ちたマスコミ報道が氾濫するなかで、タブ
ーを破って朝鮮との血縁関係を公的に認めた天皇は、戦争の悲惨さについて無知な記者よ
りも、よほどまともな歴史観をもっている。
●「松本サリン」被害者の河野義行氏が県公安委員に〔ジャーナリズム〕
松本サリン事件の被害者で当初、長野県警による家宅捜索や事情聴取を受けたうえ、メデ
ィアによって犯人視報道された会社員の河野義行氏が2002(平成14)年7月13日
付で、長野県の公安委員に就任した。田中康夫知事が6月定例県議会に提案。一部の保守
系県議が「名誉職にふさわしくない」とか「サリン事件は裁判で係争中で不適格」などと
反対していたが、知事の不信任案が可決される直前に承認された。
河野氏は「警察官から流れる非公式情報が堂々と新聞記事になっている。内部告発など市
民のために必要な場合は別だが、公務員が職務上知り得た情報を報道機関に漏洩するのは
公務員法違反なので、チェックしたい」と抱負を語った。
長野県警の関一本部長は、7月15日の任命式の前に本部長室を訪れた河野氏に、「事件の
捜査の過程で多大なご迷惑とご心労をおかけしましたことにつき、長野県警察として誠に
申し訳なく思っております」と直接、謝罪した。県警による河野氏への直接の謝罪は初め
て。県警の謝罪の事実は、河野氏が19日に県公安委員の初仕事に就いた際、報道陣に明
らかにされた。河野氏は、
「県警が私に謝罪したことを公表することで、県警も救われるし、
私もわだかまりをなくすことができた」と評価している。
報道界は河野氏のような報道被害者を「第三者」委員に選任すべきだと提唱してきたが、
知事の卓越したアイデアで警察が一足先に自浄能力を示した。メディアは猛省すべきだ。
[株式会社自由国民社
現代用語の基礎知識 2003 年版]