パラグアイ内政・外交報告(5月分) 政治情勢 2015年6月作成 内政では,会計検査院及び国家警察庁における汚職スキャンダルが立て続けに発覚した。両 汚職事件については,世論の関心も高く,当地主要紙が連日,関連報道を行った。他方で,7月 に控えた法王フランシスコの当国訪問のプログラムが発表され,政府,教会,市民など様々なレ ベルで受け入れ準備が開始され,国全体が歓迎ムードに包まれつつある。 外交では,ロイサガ外相がスペインを訪問し,良好な二国間関係を確認するとともに,6月に 控えたカルテス大統領のスペイン訪問に向けた準備を行った。また,ソト・エスティガリビア国防 相が台湾を訪問し,軍事面における更なる両国間協力につき協議を行った。 1 内政 (1)法王フランシスコのパラグアイ訪問 ●8日,アリオッティ当地バチカン大使は記者会見を開き,法王フランシスコの当国訪問のプログ ラムを発表した。同プログラムによれば,法王は7月10日午後にシルビオ・ペティロッシ国際空 港に到着し,同日,カルテス大統領との会談等,11日,カアクペ教会及びアスンシオン大聖堂に おけるミサ等,12日,洪水被災者居住地区視察,ヌ・グアス公園におけるミサ等を行い,同日夕 刻にローマに向け出発する予定。 (2)カルテス大統領の独占インタビュー ●23日及び24日付ウルティマ・オラ紙は,カルテス大統領への独占インタビューを掲載したとこ ろ,主な概要は以下のとおり。 <国家警察の汚職> ●国家警察による公用車のガソリン代の大規模な架空請求スキャンダルを巡り,幹部を更迭し たが,右は現政権が一貫性をもった政権運営を行っていることを示すために行ったもの。警察機 構のトップであるデ・バルガス内相は,バイクを利用した強盗や殺人事件の件数を減少させるな どの成果を挙げている。アマンバイ県とカニンデジュ県を除いた場合,パラグアイの殺人率は北 欧諸国のそれに匹敵するほど低く,同内相の成果は統計により立証済み。引き続き,同内相を 支援する。 <その他の政府内の汚職> ●税関,港湾,警察などある程度独立性を有する政府系機関に汚職が存在することは事実であ る。税関や警察での汚職が発覚しただけで,政府全体が汚職まみれと考えるのは短絡的である。 汚職事件については,真摯に対応し,その1つ1つに対策を講じていく。 (3)元下院議員殺害事件 ●5日,コンセプシオン県ウブジャウ市において,マグダレーノ・シルバ元下院議員(コロラド党), 同氏の子息,同氏の身辺護衛の男性ら計4名が銃撃を受け殺害される事件が発生した。殺害さ れたシルバ元下院議員は,昨年9月にも,自身の所有するラジオ局において襲撃を受けており, 被害者本人の密輸や麻薬組織への関与も疑われていた。 ●同日,与党コロラド党上院議員グループは記者会見を開き,同記者会見において,アブド・ベ ニテス上院議員が,犯行は政治的な動機によるものである旨述べるとともに,同事件を含めた 治安の悪化の責任がデ・バルガス内相にあるとして,同内相に対して辞任を要求した。 ●同日,デ・バルガス内相は,国家警察庁幹部らとともに記者会見を行い,未だ捜査途中である とした上で,同事件が組織的犯罪である可能性に言及した。また,与党コロラド党上院議員グル ープからの辞任要求に対しては,自身に対し迅速な捜査を要求しつつ,同時に辞任を求めること は,明らかな矛盾である旨述べ,辞任を否定した。 (4)会計検査院における汚職事件 ●10日,当地主要各紙は,会計検査院院長の私設秘書のパオラ・ドゥアルテ女史が残業時間 を水増しするなどし,閣僚と同等の給与を受け取っている旨報じた。同秘書は,残業手当等を含 め.月に2,900万グアラニ(約5,800米ドル)を受け取っていたと見られる。 ●20日,同秘書が辞職した。今後,同事件の捜査が行われる予定。 (5)国家警察庁における汚職事件 ●13日,当地主要各紙は,国家警察において,パトカーのガソリン代の大規模な架空取引が発 覚した旨報じた。同事件は,国家警察庁の警察官とガソリンスタンドが共謀し,法人用ガソリンカ ードを利用しパトカーにガソリンを入れたように見せかけ,代金を不正取得していたもの。 ●16日,本件への関与が疑われているオソリオ巡査長が,エステ市において逮捕された。 ●21日,同事件の責任を取る形でアルバレンガ国家警察庁長官が辞任し,新たにクリスプロ・ ソテロ氏が長官代理に就任した。 (6)FIFAを巡る汚職事件 <米国司法府によるレオス元南米サッカー連盟会長の訴追> ●27日,米国司法省が汚職の疑いにより9名のFIFA幹部及び5名の企業幹部を不正・汚職の 疑いにより起訴したことを発表し,被告の中にニコラス・レオス元南米サッカー協会会長(パラグ アイ人)が含まれていた。 ●同日午前,本件に関し,ルベン・オルティス・パラグアイ外務省法務課長は当地米国大使館か ら,レオス元会長の拘留及び身柄引渡しの要請を受けた旨述べた。また,同課長は,レオス元 会長が組織犯罪,資金洗浄,汚職を米国で行った旨訴状に記載されている旨述べた。 ●29日,レオス元会長の弁護士は,同元会長が高血圧や肝臓の病気を理由に26日から自身 の経営するアスンシオン市内の病院に入院している旨述べた。また,同元会長が報道で本件訴 追を知り,非常に驚いている旨述べるとともに,病状を考慮すると身柄引渡しは困難であるとの 見通しを示した。 <南米サッカー連盟の特権免除を巡る動き> ●27日、当地主要各紙は,法律1070/97号によって,パラグアイのルケ市に所在する南米 サッカー連盟本部には,国連事務所と同等の特権免除が認められているため,検察が同連盟 内に保管されている書類等を押収することは不可能である旨報じた。 ●28日,本件に関し,ウーゴ・ルビン下院議員(国民会合党)は,同法を廃止する法案を議会に 提出することを発表した。 2 外交 (1)ロイサガ外相のスペイン訪問 ●4日,スペインを訪問したロイサガ外相は, ガルシア=マルガージョ外務・協力相との会談を行 い,二国間アジェンダ,太平洋同盟などの地域統合体,国連での協力等につき協議を行うととも に,政策協議に関する覚書に署名した。なお,同会談の主なポイントは以下のとおり。 - 6月8日~9日の日程でのカルテス大統領のスペイン訪問が確定。 - ガルシア=マルガージョ外務・協力相に対し,6月のパラグアイ訪問招待。 - カルテス大統領スペイン訪問時の空輸及び治安に関する取極署名に合意。 - 地方道路整備に関する150百万ドルの借款契約の早期署名に合意。 ●4日,ロイサガ外相は,外相会談に先立ち,EFE 通信とカサ・アメリカの共催で行われたセミナ ーに参加し,パラグアイの投資先としての潜在力,法的安定性等につき,講演を行った。ロイサ ガ外相は,同講演において,スペインの対パラグアイ投資は増加傾向にあり,パラグアイ政府と して,今後も必要なすべての便宜を図る旨述べた。また,パラグアイへの進出に当たって,通行 料(賄賂)は必要でない旨述べ,投資するに当たり何か問題があれば,政府全体で相談に乗る 旨述べ,パラグアイへの投資を呼びかけた。 (2)ソト・エスティガリビア国防相の台湾訪問 ●25日,台湾を訪問したソト・エスティガリビア国防相は,総統府において馬台湾総統への表敬 を行った。ソト・エスティガリビア国防相は,今次表敬において,軍事面での既存の協力を含め, 二国間関係について協議を行った旨述べた。これに対し,馬総統は,台湾国防大学での研修を 通じた協力を強化させるとともに,台湾の軍関係者をパラグアイに派遣し,パラグアイ国軍向け の研修を行うことに関心を有する旨述べた。 ●また,同国防相は軍事施設や軍需工場を視察するとともに,高廣圻・台湾国防部長から叙勲 を受けた。 (3)対イスラエル外交 ●5日,シャビット駐アルゼンチン・イスラエル大使(パラグアイを兼轄)がカルテス大統領を表敬 し,軍事面での両国間関係等につき協議を行った。なお,同大使によれば,イスラエル政府は, 2002年に閉館した当地イスラエル大使館を6月中旬を目処に再開させる予定。 3 要人往来 (1)来訪 ●27日,ラゴス・チリ元大統領(カルテス大統領表敬等) (2)往訪 ●3日~6日,ロイサガ外相,スペイン訪問(ガルシア=マルガージョ外務・協力相との会談) ●5日~9日,バイアルディ女性相,メキシコ訪問(世界経済フォーラム・ラ米会議出席) ●6日~8日,ペーニャ蔵相,米国訪問(BBVA 関連会議出席) ●14日~24日,バリオス厚生相,スイス訪問(世界保健総会出席) ●16日~22日,ヒメネス・ガオナ公共事業通信相,日本訪問(企業との会合参加) ●16日~24日,ラ・フエンテ教育文化相,韓国訪問(世界教育フォーラム出席) ●18日~22日,アベド司法相,オーストリア訪問(国連関係会合出席) ●22日~30日,ソト・エスティガリビア国防相,台湾訪問(馬総統表敬等)
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