電機・ 2 0 0 8 ・ 1 35 IEC/TC1 0 5(燃料電池)パリ会議報告 社団法人 日本電機工業会 新エネルギー部 課長(燃料電池担当) 井原 卓郎 1. はじめに 2. 全体会議の概要 3. WG 会議の概要 4. おわりに 1.はじめに 2 0 0 7年1 0月2 5日 と2 6日 の 両 日、IEC(International Electrotechnical Commission)の燃料電池 専 門 委 員 会(Technical Committee1 0 5:TC1 0 5) の第8回全体会議が、パリのエッフェル塔近くにあ 図1 TC105会議状況 る UIC ( Union Internationale des Chemins de Fer)で開催された。会議には、投票権を持つ P メ ン バ ー(Participating member)1 5ケ 国 の う ち ア 2.全体会議の概要 メリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イ タリア、中国、韓国、日本の1 0ケ国が出席した。 全体会議では、始めにホスト国のフランス NC オブザーバを含む参加者総数は1 3カ国5 3名で前回 (国内委員会)から歓迎の挨拶があり、続いて DKE (第7回)の東京会議とほぼ同じであった。今回の (電子技術の標準化などを行うドイツの機関)の TC1 0 5全体会議は、IEC 総会に合わせて開催され、 Imgrund 氏が副セクレタリに就任したことの紹介 通常の単独開催とは異なり、オープニングパーティ があった。全体会議は、藤澤議長の巧みな議事進行 はセーヌ川でのクルーズ、farewell party はリドの により当初のタイムスケジュール通りに進行した。 ショー観劇など、パリらしい演出を交えての開催で ! IEC/本部からのインフォーメーション あった。 IEC 中 央 事 務 局(ス イ ス・ジ ュ ネ ー ブ)の TC 全体会議では、IEC 中央事務局からの情報連絡、 1 0 5担当 Jacquemart 氏から、最近の IEC 動向、運 各 WG(Working Group)のコンビナによる進捗状 営上の主な変更点について説明が行われた。主な点 況報告、他の委員会、ISO など他機関との連携など を以下に列挙する。 の ほ か、日 本 と フ ラ ン ス か ら 燃 料 電 池(Fuel ◆投票用委員会原案(Committee Draft for Vote: Cell:FC)に関するアクティビィティのプレゼン CDV)で反対国がなかった案件は、コンビナの テ ー シ ョ ン が 行 わ れ た。ま た、全 体 会 議 の 直 前 判断により、最終国際規格案(Final Draft Inter- (1 0/2 2∼1 0/2 4)に は、WG1(用 語) 、WG7(ポ ー national Standard:FDIS)投票を省略して国際 タブル燃料電池) 、WG8(マイクロ燃料電池−互換 標 準(International Standard:IS)を 発 行 で き 性)の会議も開催された。 る。 以下にパリ会議の概要について報告する。 ◆IEC、ISO、ITU の間で特許に関する共通のポリ シーを定めた。 ◆各国の投票状況を把握できるようになっており、 36 電機・ 2 0 0 8 ・ 1 現在1カ国のみ投票に参加していない国がある。 の4つである。 中央事務局から勧告が出される。 8 0 1改定 版、 !IEC/TS6 2 2 8 2―1、"日本の JISC8 ◆2 0 0 7年に新規に発足した TC の紹介があり、各 #米国の SAE (Society of Automotive Engineers) 国に参加要請が行われた。 J2 5 7 4、 $ FCTESTNET 用語 ( The Fuel Cell TC1 1 3:ナノテクノロジー、TC1 1 4:海洋エネル Testing and Standardization NETwork) "WG2(モ ジ ュ ー ル) :コ ン ビ ナ Huppmann 氏 ギー(波力、潮力) ◆TISS(技術情報支援サービス)より各種サービ (ドイツ) 国際標準 IEC6 2 2 8 2―2が既に発行されている。 ス(ツール)の説明が行われた。 ! 各 WG の進捗報告 2 0 0 7年3月にアメンドメントの発行も終了し、 現在、TC1 0 5は図2に示 す よ う に WG1∼WG1 1 まで計1 1の WG で構成されている。いずれも燃料 電池の種類によらない規格の作成を行っており、 WG3∼WG1 0はシステムの利用形態により分類さ 今後2 0 0 8年にメンテナンス作業を開始する予定 であることが報告された。 #WG3(定置用―安全要件) :コンビナ Hecht 氏 (米国) 2 0 0 7年4月に IEC6 2 2 8 2―3―1が発行された。各 れている。各 WG のコンビナより順次進捗状況の 報告が行われた。 国でのこの規格の採用状況(見通し)について議 !WG1(用語) :コンビナ Hecht 氏(米国) 論があり、以下の説明があった。 用 語(Terminology)の 技 術 仕 様 書(Techni- E U:既に EN6 2 2 8 2―3―1として発行済み。 cal Specification:TS)が2 0 0 5年3月 に 発 行 さ アメリカ:国内規格(CSA America FC2 1)との れている。この IEC/TS6 2 2 8 2―1は TC1 0 5の他の 調和作業を実施中。カナダとの統一化 WG で使用する用語のみをまとめたものであり、 も視野に、2 0 0 9年1 2月を目標に北米 採用されている用語数が少ない(7 4語)ため、 用規格として発行したい。 2 0 0 5年のフランクフルト会議で、より多くの用 日 本:内容を JIS の中に取り込み済み。但し、 語を取り込むことが決議されている。2 0 0 9年初 現在は PEFC(固体高分子形)のみで めの改定版発行に向けて、用語のピックアップ、 あり、SOFC(固体酸化物形)につい 定義付けの作業を精力的に進めていることが報告 て作業中である。 された。作業の基本となっている主な資料は以下 $WG4(定置用―性能試験法) :コンビナ 山本氏 図2 TC105の WG 構成図 電機・ 2 0 0 8 ・ 1 →橋本氏(日本) 37 1 1月に CDV 回覧予定であることが報告された。 2 0 0 6年3月に国際規格 IEC6 2 2 8 2―3を発行済み。 まず、メタノールを対象とした規格を作成し、他 コンビナの山本氏が退任された。日本に定置用 の液体燃料については、多少の手直しで対応する FC のコンビナが不在となる事態を避けるため、 予定であること、気体燃料については別の規格番 後任に橋本氏(松下電工)を推薦することとし、 号を付ける予定であることなどが説明された。 藤澤議長の計らいもあり、希望通りコンビナの交 (WG1 1(単セル試験法) :コンビナ 小関氏(日 代が承認された。新コンビナのもとで改定に向け た作業の準備が既に開始されている(改定版は 2 0 1 0年発行予定) 。 "WG5(定置用―設置要件):コンビナ Huppmann 氏(ドイツ) FDIS(最終国際規格案)の投票で承認され、 近く国際規格として発行される見通しであること が報告された(その後、1 1月1 4日に発行済み) 。 #WG6(輸送用)コンビナなし、現在停止中で報 告なし。 $WG7(ポータブル―安全性):コンビナ Wichert 氏(米国) IEC6 2 2 8 2―5―1を2 0 0 7年2月に発行。性能に関 しては当面規格化作業は行わないこと、現在の規 格に関する意見を求める文書(DC)を発行する 予定であることが報告された。 %WG8(マイクロ FC―安全性) :コンビナ Jones 氏(米国) 2 0 0 7年1 0月に CDV(投票用委員会ドラフト) 本) WG1 1は日本から新規提案を行って2 0 0 7年4 月に発足したばかりの WG である。日本案をベ ースとしたドラフトの審議を開始し、2 0 1 0年を 目標に、まず、TS(技術仕様書)として発行予 定であることが報告された。 ! WG6(移動体用燃料電池、自動車用を除く) の今後の扱いについて 現在休止中となっている WG6の今後の活動の進 め方について議論が行われた。各国代表からいろい ろな意見が出され、最終的に以下の結論となった。 ・市場動向、将来ニーズなどを調査するためのアド ホックグループを立ち上げる。 ・アドホックグループのコンビナには Tsotridis 氏 (EU Joint Research Center)が就任する " 各国アクティビィティの紹介 今回は日本とフランスの2カ国が自国でのアクテ ィビティの紹介を行った。日本からは、小関委員長 が FC 実証事業、マイクロ FC の開発、SOFC のデ 投票で承認され、2 0 0 8年中には規格発行の見通 ータ集積などについて幅広く紹介した。また、これ しであることが報告された。また、マイクロ FC らの活動の結果集積されたデータを基に、多数の では、各国の輸送機関で認めてもらうことが重要 JIS 規格を発行もしくは準備中であることを説明し であり、WG8のメンバーの多くが規制機関との た。 交渉に参加していることが強調されていた。また、 # 新規提案 将来燃料の種類等が追加され、規格を分割する場 合 に 備 え て、規 格 の 番 号 を、6 2 2 8 2―6―1か ら 今回、新規提案はなかった。 $ 他の委員会・機関との連携問題(リエゾン)に 6 2 2 8 2―6―1 0 0と変更することが報告された(WG9、 ついて WG1 0も同様の変更に同意) 。 ISO/TC1 9 7(水 素 技 術) 、ISO/TC2 2/SC2 1(電 &WG9(マイクロ FC―性能試験法) :コ ン ビ ナ 横山氏(日本) 気 自 動 車) 、IEC/TC1 0 8(Consumer Electronics) 、 IEC/TC3 1/MT6 0 0 7 9―2 9(ガス検知器)など他の委 既に最終案を事務局に送付済みであり、2 0 0 7 員会・機関との連携に関して各々担当から報告が行 年中に規格が発行されることを期待するとの報告 われた。特に現状問題となる事項はなかったが、ほ が行われた(後日、1 1月1 4日に発行済み) 。規 とんど内容がなかった前回の報告と比べて連携が深 格成立直後ではあるが、反対投票を行った国から まっている印象は感じられた。 の要請により2 0 0 8年早々に改定審議を開始する % その他 こととなった。 ! CEN / CENELEC ( European Committee Stan- 'WG1 0(マイクロ FC―互換性) :コンビナ 上野 氏(日本) CD に対する6 0 0以上のコメント審議が終了し、 dardization / European Committee for Electrotechnical Standardization)の燃料電池ガスヒー ティング機器規格案に対して IEC を通して日本 38 電機・ 2 0 0 8 ・ 1 からコメントを提出しており、このコメントの扱 作成作業の方針とスケジュール いについて質問を行ったところ、全て取り入れら # WG8(マイクロ燃料電池―安全要件) れなかったとのことであった。その理由が明確で なく、不満の残る結果であった。 !全体会議予定 第9回:2 0 0 9年 春 韓 国 で 開 催、場 所 は 未 定 アメリカ、カナダ、ドイツ、韓国、中国、エジプ ト、日本から3 5名が参加。 開 催 日:1 0月2 2日∼2 4日 審議内容:CDV に対する各国コメントへの対応 (ソウルか済州島) 第1 0回:英国開催が決定していたが、立候補を 4.おわりに 取り下げたため未定 今回の全体会議は、藤澤議長、Winkler 幹事のも 3.WG 会議の概要 とでの3回目の会議となり、円滑な進行のもと、ほ ぼ予定通りのスケジュールで終了し、コンビナの円 全体会議の前に開催された WG の概要を示す。 滑な交代など日本にとっても満足できる内容であっ 開催場所は全体会議と同じ。 た。新規に発足した WG1 1を除いて、提案済みの ! WG1(燃料電池用語) 規格は全て発行済みもしくは発行の目処が立つ状態 アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、スペイ に達している。但し、これらの規格は、発展途上に ン、韓国、日本から1 5名が参加。 ある燃料電池の技術開発を妨げないように配慮した 開 催 日:1 0月2 4日 概要規格となっている。今後、これらの規格が有効 審議内容:改定版に収録するためにピックアップさ に利用されるためには、より詳細な内容を付加して れた用語の定義付け " WG7(ポータブル燃料電池―安全要件) アメリカ、カナダ、ドイツ、エジプト、韓国、日 いく必要があり、各国の利害もからみながら改定作 業が進められていくことになる。 なお、今回のパリ会議参加にあたっては、経済産 本から1 5名が参加。 業省や NEDO からのご支援、多くの企業、団体か 開 催 日:1 0月2 3日 らのご協力を頂いた。心から深く感謝致します。 審議内容:FDIS 以降のコメント審議および改定版
© Copyright 2024 Paperzz