Circulation (arrhythmia) 基本事項確認問題 期外収縮 期外収縮は( )性不整脈である。期外収縮には上室性(⼼房性+房室結節性)と⼼室性がある。 心房性では,( )が原因で期外収縮が起こる。期外収縮時,心電図上では,P 波は( ),QRS は通常 は( )だが,( )が⾒られるときは QRS は延⻑し,脚ブロック様となる。治療は( )。 房室結節性では,( )が原因で期外収縮が起こる。期外収縮時,心電図上では,P 波は( ), QRS は( )。治療は( )。 心室性では,( )が原因で期外収縮が起こる。期外収縮時,心電図上では,P 波は( ),QRS は( )。治療は通常( )が,( )の患者には( )を投与する。 WPW 症候群 WPW 症候群は,( )と呼ばれる副伝導路が存在することで,不整脈を起こす可能性のある疾患である。 WPW 症候群の患者のうち,不整脈のうち 70-80%は(病名: )が占め,残りの 20-30%は (病名: )が原因である。どちらも副伝導路を通って,刺激が⼼房や房室結節へリエントリーすることが原因。 治療は,前者の場合( ),後者の場合( )を投与する。後者の治療に⼀般的に用いられている ( )や( )は,WPW 症候群では副伝導路の刺激伝導を( c)する可能性があり,禁忌 である。また,これらの不整脈を根本的に治療するために,外科的治療として( )が⾏われている。 心房細動・心室細動 心房が細かく振動することを心房細動,心房粗動という。1 分間に 300 回以上を心房細動,それ以下を心房粗動として区別し ている。心房細動の原因は,心房への( )による。心電図では P 波は( ),基線は ( ),QRS は( )。治療は,頻脈時のレートコントロールには( )や( ) を静注する。また心房細動では( )が生成されやすいので,( )を投与することも多い。除細動は電気的に ⾏う前に,( )によって内科的に試みる。 ⼼室細動は,極めて重篤かつ緊急な治療を要する疾患である。⼼電図では,無秩序な正弦波が認められる。⼼室細動が認めら れたら,直ちに( )を⾏う。 洞房ブロック 第2度洞房ブロックのうち,Wenckebach 型では PQ 時間が次第に( )して,ついに QRS 波が欠如する状態である。 MobitzⅡ 型では,PQ 時間は不変だが突然 QRS 波が欠如する。 第3度洞房ブロックでは P 波は( )する。 房室ブロック 第1度房室ブロックは,徐脈(⼼拍数 50 以下)の状態であり,PQ 時間は( )秒以上に延⻑する。その他の異常は⾒られ ない 第2度房室ブロックのうち,Wenckebach 型では PQ 時間が次第に( )して,ついに QRS 波が欠如する状態である。 ( )でのブロックが原因である。MobitzⅡ 型では,PQ 時間は普遍だが突然 QRS 波が欠如する。( )と( )間のブロックが原因である。危険な不整脈は( )型の⽅である。Wenckebach 型の治療は( ccccc), MobitzⅡ 型の治療は( )となる。 第3度房室ブロックでは,⼼房と⼼室は無関係に収縮するため,P 波と QRS 波との間に相関性はない。QRS 波形が正常であ れば( )ブロックが,QRS 波形が⻑ければ( )ブロックを疑わせる。聴診では( )という( )⾳ が時々亢進する現象が認められる。治療は( )となる。 発作性頻拍 発作性上室性頻拍は,リエントリーに起因するものが多く,7割が( )による。この際,( )波は⾒られな い。P 波は( )。 心室頻拍では,P 波を伴わない QRS 波が認められる。また P 波と QRS は無関係に収縮する。治療は( )を用いる。 Page. 1/16 Circulation (arrhythmia) 基本事項確認問題【基準解答】 期外収縮 期外収縮は頻脈性不整脈である。期外収縮には上室性(⼼房性+房室結節性)と⼼室性がある。 心房性では,⼼房での異所性興奮が原因で期外収縮が起こる。期外収縮時,心電図上では,P 波は変形,QRS は通常は正常だ が,⼼室内変⾏伝導が⾒られるときは QRS は延⻑し,脚ブロック様となる。治療は必要ない。 房室結節性では,房室結節での異所性興奮が原因で期外収縮が起こる。期外収縮時,心電図上では,P 波は陰性・変形,QRS は正常。治療は必要ない。 心室性では,⼼室での異所性興奮が原因で期外収縮が起こる。期外収縮時,心電図上では,P 波は欠如,QRS は延⻑。治療は 通常必要ないが,虚血性心疾患の患者にはⅢ群抗不整脈薬を投与する。 WPW 症候群 WPW 症候群は,Kent 束と呼ばれる副伝導路が存在することで,不整脈を起こす可能性のある疾患である。 WPW 症候群の患者のうち,不整脈のうち 70-80%は発作性上室性頻拍(PSVT)が占め,残りの 20-30%は心房細動が原因で ある。どちらも副伝導路を通って,刺激が⼼房や房室結節へリエントリーすることが原因。 治療は,前者の場合 Ca 拮抗薬/ATP,後者の場合 Ia 群抗不整脈薬を投与する。後者の治療に⼀般的に用いられているジギタリ スやカルシウム拮抗薬は,WPW 症候群では副伝導路の刺激伝導を亢進する可能性があり,禁忌である。また,これらの不整 脈を根本的に治療するために,外科的治療としてカテーテル・アブレーションが⾏われている。 心房細動・心室細動 心房が細かく振動することを心房細動,心房粗動という。1 分間に 300 回以上を心房細動,それ以下を心房粗動として区別し ている。心房細動の原因は,心房へのリエントリーによる。心電図では P 波は認められない,基線は細かく振動する(f 波), QRS は通常正常。治療は,頻脈時のレートコントロールには Ca 拮抗薬やジギタリスを静注する。また心房細動では血栓が生 成されやすいので,ワーファリンを投与することも多い。除細動は電気的に⾏う前に,Ia 群抗不整脈薬によって内科的に試み る。 ⼼室細動は,極めて重篤かつ緊急な治療を要する疾患である。⼼電図では,無秩序な正弦波が認められる。⼼室細動が認めら れたら,直ちに電気的除細動を⾏う。 洞房ブロック 第2度洞房ブロックのうち,Wenckebach 型では PQ 時間が次第に短縮して,ついに QRS 波が欠如する状態である。 MobitzⅡ 型では,PQ 時間は不変だが突然 QRS 波が欠如する。 第3度洞房ブロックでは P 波は欠如する。 房室ブロック 第1度房室ブロックは,徐脈(⼼拍数 50 以下)の状態であり,PQ 時間は 0.2 秒以上に延⻑する。その他の異常は⾒られない。 第2度房室ブロックのうち,Wenckebach 型では PQ 時間が次第に延⻑して,ついに QRS 波が欠如する状態である。房室結 節でのブロックが原因である。MobitzⅡ 型では,PQ 時間は普遍だが突然 QRS 波が欠如する。ヒス束とプルキンエ線維間のブ ロックが原因である。危険な不整脈は MobitzⅡ 型の方である。Wenckebach 型の治療は特に必要ない,MobitzⅡ 型の治療は 人工ペースメーカーとなる。 第3度房室ブロックでは,⼼房と⼼室は無関係に収縮するため,P 波と QRS 波との間に相関性はない。QRS 波形が正常であ れば AH(房室結節)ブロックが,QRS 波形が⻑ければ HV(ヒス束-プルキンエ)ブロックを疑わせる。聴診では大砲音という Ⅰ⾳が時々亢進する現象が認められる。治療は人工ペースメーカーとなる。 発作性頻拍 発作性上室性頻拍は,リエントリーに起因するものが多く,7割が WPW 症候群による。この際,∆ 波は⾒られない。P 波は変 形。 心室頻拍では,P 波を伴わない QRS 波が認められる。また P 波と QRS は無関係に収縮する。治療はリドカインを用いる。 Page. 2/16 Circulation (arrhythmia) 診断問題(基本編) 問題. 次の心電図から診断名をつけなさい。 ECG 問 1. 問 2. 問 3. 問 4. Page. 3/16 Circulation (arrhythmia) 問 5. 問 6. 問 7. 問 8. Page. 4/16 Circulation (arrhythmia) 問 9. 問 10. Answer & Comments. 波→高さ,幅は 3mm 以内。PQ 間隔→3〜5mm 以内。QRS 幅→3mm 以内 問 1. ★☆☆ PQ 間隔が徐々に延⻑し,ついには QRS 波が消失している。よって房室ブロック Wenckebach 型。 問 2. ★★☆ ∆ 波が⾒られる。WPW 症候群 問 3. ★★☆ V5,V6 誘導の⼼電図のみが出たら左脚ブロック,というのは安易すぎる。基線が常に揺れており f 波が確認で きる。心房細動。 問 4. ★★☆ 正常な心電図。意外に難しい。 問 5. ★★☆ 典型的な期外収縮波形が2番目の QRST 波の後に⾒られる。2番目と4番目の PP 間隔は,ちょうど PP 間隔の 2 倍であり,おそらくこの期外収縮の中に3番目の P 波が隠れているのだろう。3mm 以上の広い QRS が認められ,心室性期 外収縮。右脚ブロックと間違えた⼈は,次問の⼼電図と⾒⽐べて欲しい。 問 6. ★★☆ V1 誘導でこのような波形が⾒られるのは,右脚ブロックの典型である。QRS 幅が 3mm 以上なので,完全右脚 ブロック。rSR'波がキレイに出ているので,教科書などで再チェックしたい。 問 7. ★★★ STEP などの教科書には載っていないので難しかったかも知れないが,不完全右脚ブロックである。V1 誘導で rSR'波が出ているので右脚ブロックと判定するのは易。QRS 幅が 3mm 未満なので,不完全右脚ブロックである。 問 8. ★★☆ 心電図を並べているうちに,何の疾患か忘れてしまった。V5 や V6 で QRS 幅が 3mm 以上に延⻑しており,左 脚ブロックと考えられる。なお V5 誘導には二峰性の R 波が⾒られる。 問 9. ★☆☆ pulse150-180 程度であり,頻脈と診断した⼈がほとんどだろう。本当は WPW 症候群発作時の発作性上室性頻 拍(PSVT)(おそらくは AVNRT)なのだが,そんなことを分かるはずがない。 問 10. ★★★ 心室細動と間違えた人もいそうである。心室細動 の心電図を参考までに右図に載せておくが,心室細動はこんなに 規則的ではない。P 波を伴わない変形した QRS 波が連続しており, 心室頻拍。この人もやはり pulse180 程度である。pulse が 150 を超えるのは,通常心室頻拍か PSVT である。 P Page. 5/16 Circulation (arrhythmia) 101G20 38 歳男性。頻回に生じる動悸発作を主訴に来院。 主訴 現病歴 以前から年に数回、1〜2 時間持続する動悸を自覚していたが自然に消失するために放置していた。意識を消失 したことはない。 ⾝体所⾒ 血圧 126/72mmHg。⼼⾳と呼吸⾳とに異常を認めない。 検査所⾒ 非発作時の心電図を以下に示す。 Case.1 問 1. この心電図より判断できることを述べなさい。 問 2. この患者の発作時動悸の原因と考えられるのは,次のうちどれか。 (1) 洞房ブロック (2) 心房粗動 (3) 心室性期外収縮 (4) 上室性頻拍 (5) 心室性頻拍 問 3. この患者に投与すべき薬は,次のうちどれか。 (1) β ブロッカー (2) Ia 群抗不整脈薬(プロカインアミド) (3) ベラパミル (4) ワーファリン (5) ATP Page. 6/16 Circulation (arrhythmia) Comment. 問 1. 心電図より WPW 症候群が分かる。本症例には紹介されていなかったが,恐らく右軸偏位もあるだろう。 特に第Ⅱ,Ⅲ,V6 誘導で分かりやすいが,デルタ波が観察される。デルタ波とは,緩徐な⽴ち 上がりの波を指し,WPW 症候群特有の波形である。また PQ 時間が 0.12 秒を切っていることも, 副伝導路の存在を⽰唆している。 以上の点と,V1 誘導が陽性 R 波であることから,WPW 症候群 Type A(左房・左室間に副 伝導路が存在)と診断できる。 WPW 症候群とは,左房-左室ないし右房-右室間に Kent 束と呼ばれる副伝導路が存在する疾患である。平時は無症状。 ただし,問 2 のコメントで述べる通り,発作性上室性頻拍ないし心房細動を起こしやすい。 問 2. WPW 症候群では,副伝導路が存在することにより,右房へのリエントリーが⽣じ,その結果,発作性上室性頻拍や発作性心 房細動を起こしやすい。そういう点で選択肢を⾒ると,(5)となる。特徴と治療を,以下にまとめておく。 症候群による,発作性心房細動 主徴 Adams-Strokes 症候群 動悸 ⻑期間の⼼房細動によって,⼼房内に血栓が⽣じ,その結果,各種血栓症。 治療 プロカインアミド,ジベリゾンなどの Ia 群抗不整脈薬。Ca 拮抗薬(ベラパミル)・ジギタリスは禁忌 検査 心電図に基線の揺れ(f 波)が⾒られる。 WPW 症候群による,発作性上室性頻拍(PVST)(房室回帰性頻拍 AVRT) 主徴 Adams-Strokes 症候群 動悸 治療 Ca 拮抗薬(ベラパミル)/ATP 血管迷⾛神経刺激:Valsalva 法(いきみ),顔を冷⽔につける 検査 心電図:Ⅱ,Ⅲ,aVf 誘導で陰性 T 波が⾒られる。 ※ジギタリスやベラパミルは,副伝導路の房室伝導を亢進させる。従って,これらの薬剤を⼼房細動時に用いると,⼼室細動 を惹起する可能性があり,禁忌である。 WPW Answer. 問 1. WPW 症候群 A 型(デルタ波),(右軸偏位) 問 2. (発作性)上室性頻拍(PVST) 問 3. ATP/ベラパミル Check Point. 症候群 主徴 普段は無症状。発作時に発作性上室性頻拍(PSVT),心房細動(Af)を合併。 治療 発作性上室性頻拍→迷⾛神経刺激(いきみ,顔を冷⽔につける) 心房細動→プロカインアミドなどの Ia/Ic 群抗不整脈薬。 レートコントロールに Ca 拮抗薬・ジギタリスは禁忌(β-blocker などを使う) 検査 ⼼電図にデルタ波が⾒られる(ただし発作時デルタ波が⾒られない場合,非発作時もデルタ波が⾒られない場合 もある)。QRS の延⻑。 WPW Page. 7/16 Circulation (arrhythmia) 100D14 Case.2 主訴 現病歴 ⾝体所⾒ 検査所⾒ 歳の男性。⾼血圧で通院中、自覚症状はなかったが不整脈が発⾒された。c 高血圧で通院中,自覚症状はなかったが不整脈が発⾒された。c 163cm/70kg BT 36.5℃ pulse 84/irregular BP 142/90mmHg 眼球結膜に貧血,⻩疸を認めない。 頚部視診・触診異常なし。 心尖拍動は左鎖骨中線上第 5 肋間に認める。 胸部聴診では⼼拍の不整を認めるが、呼吸⾳に異常は認めない。 心電図検査を以下に示す。 58 ECG 問 1. この⼼電図を⾒て分かることを答えなさい。 問 2. 治療について,簡単に述べなさい。 Comment. ⾝体所⾒では,⼼尖拍動部位は通常で,異常なし。⼼電図では不整脈,基線の細かいフレ(f 波)が認められ,心房細動(Af)と診 断できる。 心房細動(Af) 主徴 Adams-Strokes 症候群 動悸 ⻑期間の⼼房細動によって,⼼房内に血栓が⽣じ,その結果,各種血栓症。 治療 除細動には,プロカインアミド,ジベリゾンなどの Ia 群抗不整脈薬。 頻脈時には,レートコントロールのために,Ca 拮抗薬,ジギタリス(WPW には禁忌) 血栓防止のため,ワーファリン。 検査 心電図に基線の揺れ(f 波)が⾒られる。 Answer. 問 1. ⼼房細動,不整脈 問 2. Ia 群抗不整脈薬(プロカインアミドなど),ワーファリン 必要に応じてレートコントロールにベラパミルかジギタリス Page. 8/16 Circulation (arrhythmia) 99H11 mod. Case.3 急性⼼筋梗塞で⼊院中の 68 歳男性。突然けいれんを起こした。30 秒後,緊急コールで,あなたは 40 秒後にこの患者の元を 訪れた。 問. この患者を⼼電図を⾒て,あなたはまず何の治療を開始しますか。 Comment. や医龍など,医療系ドラマを⾒ている⼈には,毎度おなじみの⼼電図である。これは,⼼室細動 Vf である。緊急な処置を 要する状態である。 心室頻拍 VT と間違えた人もいるかも知れないが,心室頻拍ではこんなに規則性のない波は出ない。詳しくは心電図基本編問 10.を参照して欲しい。今回は心室細動である。 ⼼室細動の治療は,気道確保,⼈⼯呼吸,⼼マと併せて,電気的除細動を⾏うのが鉄則である。発症後 30sec 以内であれば, 電気的除細動で良い。電気的除細動は,200J→300J と増やして⾏う。 ER Answer. 気道確保後,⼈⼯呼吸,⼼臓マッサージと平⾏して,電気的除細動 Page. 9/16 Circulation (arrhythmia) 99A19 Case.4 主訴 現病歴 ⾝体所⾒ 歳の男⼦。自覚症状はない。c 脈の不整を指摘され来院した。成⻑・発達に異常はない。 BT36.5℃。脈拍 60/regular ⼼雑⾳は聴取しない。呼吸⾳は正常である。腹部に異常を認めない。 13 問. この不整脈は,次のうち,どれによるものか。 (1) 洞房ブロック (2) 房室ブロックⅠ度 (3) 房室ブロックⅡ度 (4) 房室ブロックⅢ度 (5) 完全右脚ブロック Comment.&Answer. 頻出問題であり,確実に解答したい。 ⼼電図を⾒ると,やや右軸偏位気味で,不整脈が⾒られる。pulse 70/min 程度で正常。 不整脈の部分で P 波は規則正しく現れているのにもかかわらず,QRS 波が一回飛んでいる。P 波が現れているということは, ⼼房へ興奮は伝わっている→洞房ブロックは否定される。このことから,房室ブロックと判断できる。 房室ブロックには,3種類ある。 Ⅰ度 QRS は脱落しない。PQ 延⻑(>0.20)。 治療は必要なし。 Ⅱ度 PQ 時間が徐々に延⻑し,時々 QRS が脱落する Wenckebach 型(房室結節ブロック) 治療は必要なし。 PQ 時間は一定だが,突然 QRS が脱落する MobitzⅡ 型(ヒス束-プルキンエ線維ブロック) ペースメーカーの適用 Ⅲ度 完全房室ブロック。P 波と QRS 波の関係性がなくなる。 ペースメーカーの適用 房室ブロックの緊急時は,イソプロテレノールかアトロピン(AH ブロックの場合のみ)を投与。 当患者は,PQ 時間が徐々に延⻑しており,QRS が脱落していることから,房室ブロックⅡ度,Wenckebach 型と診断で きる。 Page. 10/16 Circulation (arrhythmia) 97A17 Case.5 主訴 現病歴 検査所⾒ 歳の男性。脈の不整に気付き来院した。⼩学校時からサッカー選⼿として活躍し、現在も続けている。既往 歴に特記すべきことはなく、自覚症状もない。 小学校時からサッカー選手として活躍し、現在も続けている。既往歴に特記すべきことはなく、自覚症状もな い。 心電図を以下に示す。 33 問 1. この心電図を診て,診断しなさい。 問 2. 適切な処置を述べなさい。 Comments. 前回の問題の復習である。PQ 間隔が徐々に延⻑し,QRS が一回飛ぶ。P 波は規則的に出ている。よって房室ブロックⅡ度, Wenckebach 型となる。Wenckebach 型は,自覚症状がないのであれば,経過観察となる。 Answer. 問 1. 房室ブロック第Ⅱ度 Wenckebach 型 問 2. 経過観察 Page. 11/16 Circulation (arrhythmia) 101D18 Case.6 主訴 問診 ⾝体所⾒ 歳の⼥性。突然の動悸c 意識は清明 血圧 118/70mmHg 29 問 1. この⼼電図から,この患者の異常を診断せよ。 問 2. この患者への治療⽅針を答えよ。 Comment. この⼼電図では,右軸偏位が⾒られる程度で,不整脈は⾒られない。pulse 180 程度で,QRS 幅は正常であり,恐らくは発作 性上室性頻脈(PSVT)と考えられる。治療は,ベラパミルや ATP でレートコントロールを⾏うのが⼀般的である。 なお,この心電図で ∆ 波がないからといって,WPW 症候群を否定するのは危険である。WPW 症候群による PSVT では,∆ 波 は⾒られないからである。本症の最大の原因は WPW 症候群であり,従ってその可能性は十分に精査する必要があると言える。 Answer. 問 1. 発作性上室性頻脈 問 2. ベラパミル/ATP で,レートコントロールを⾏う。 Page. 12/16 Circulation (arrhythmia) 96D18 Case.7 主訴 現病歴 歳の⼥性。 失神発作のため救急⾞で搬⼊された。今朝、隣の⼈と会話中に急に意識を失って倒れた。すぐに気がついたが、 病院へ来る救急⾞の中でも1分以c内の意識消失発作が 2 回出現した。 検査所⾒ 血圧 160/72mmHg。⼼拍ごとにⅠ⾳の強度が変動する。 72 問 1. この⼼電図から,この患者の異常を診断せよ。 問 2. この患者への治療⽅針を答えよ。 Comments. まず明らかなのが,徐脈(40bpm 程度)である。RR 間が 3 マス未満ならば頻脈,6 マス以上ならば頻脈というのは,暗記事項 というより,ECG を⾒て直感的に感じるようにしたい。 さて,P 波と QRS 波を同定していくと,P 波と QRS 波の出現に全く相関性はないことが分かる。よって房室ブロックⅢ度と 判断できる。なお,Ⅲ度ブロックでは大砲⾳と呼ばれるⅠ⾳の規則的亢進が起こることも,当診断の目安である。 Answer. 問 1. 房室ブロックⅢ度 問 2. ペースメーカー埋込 Page. 13/16 Circulation (arrhythmia) Case.8 Original 主訴 58 歳男性。 現病歴 最近数回めまいがするため,来院。 ⾝体所⾒ pulse 65/min irregular,BP 132/85mmHg,眼瞼結膜:貧血なし。 検査所⾒ 第Ⅰ誘導の図を上に示す。 問. 診断しなさい。 Comments. 第 3 波形の後に不整が⾒られます。不整部では P 波も QRS 波も認められません。つまり洞停⽌か洞房ブロックと推定されます。 不整が⾒られている前後の PP 間隔は,通常の 2 倍であることから,洞房ブロックと診断されます。(洞停⽌では整数倍にはな りません) 時々 P 波が⽋如するパターンなので,第Ⅱ度洞房ブロックになります。PP 間隔は徐々に短縮している様子は少なくともこの心 電図上では確認できず,MobitzⅡ 型と推測されます。 2倍 PP 間隔 通常 PP 間隔 Answers. 洞房ブロックcMobitzⅡ 型 Page. 14/16 Circulation (arrhythmia) 95G16 mod Case.9 状況 14 歳の⼥⼦。⼼電図アラームが鳴り,あなたは病室にかけつけた。 現病歴 遺伝性 QT 延⻑症候群と診断され,発作を起こして⼊院中。β 遮断薬を処方されている。 検査所⾒ 問. この患者を診断し,適切な処置を答えなさい。 Comments. 難問。STEP などではすごい計算式が書いてあるが,QT 時間が 0.45sec 以上(13mm 以上)の場合,QT 延⻑症候群と⾒なし てよい。QT 延⻑症候群では,⼼室頻拍発作を起こしやすく,その時の波形を Torsades de Points(TdP)と呼ぶ。フランス語 を学んだ人なら分かるはずだが,正確な発音は「トルサードゥ・(弱くドゥ)・ポアントゥ」が正確な発音であり,某教科書 のように「トルサード・ポワーン」というクレヨンしんちゃんのボーちゃんのような間の抜けた発音はしない。TdP 波形は以 下に示したようなものである。TdP では,QRS の振幅が逐一変化し,紡錘形を形成する。 心室細動 Vf と診断した人がほとんどだろうが,これは心室頻拍である。しかし TdP から⼼室細動に進⾏することは稀ならず, どちらも除細動をすれば良いので,Vf と TdP は臨床的には区別する必要はない。実際国試でも,TdP 様心室頻拍か Vf かを判 断させる問題は⾒当たらない。もし TdP と断定できるならば,硫酸マグネシウムを急速静注する。 QT 延⻑症候群(LQTS)は,Romano-Ward 症候群を初めとする遺伝性と,Ia 群抗不整脈薬などが原因の後天性がある。先天性 (遺伝性)では β 遮断薬の服用が,後天性では ICD 埋め込みなどで治療を⾏う。Ia 群,Ⅲ群不整脈薬は,QT 時間延⻑につな がり,禁忌。 なお余談だが,この問題の元となった 95G16 問題では,14 歳の⼥児がプールで⽔泳中に突然沈み,⼼肺蘇⽣を受けながら搬 送されてきた設定になっている。某参考書でその点に全く⾔及されていなかったのは滑稽だが,⽔泳は遺伝性 LQTS のあるタ イプに TdP を引き起こすことが知られている。そのため,この患者は遺伝性 LQTS で TdP を起こしておぼれたと考えられる。 Answers. 遺伝性 QT 延⻑症候群による Torsades de Points 様⼼室頻拍。硫酸マグネシウムの急速静注。 Page. 15/16 Circulation (arrhythmia) Case.10 Original 主訴 現病歴 ⾝体所⾒ 検査所⾒ 歳男性。 健康診断で⼼電図の異常を指摘され,来院。 pulse 72/regular,BP 134/87 ⼼雑⾳あり(Ⅱ⾳分裂) 43 問. 診断しなさい。 Comments. 最後の問題であり,この⻑大編にふさわしいよう,作りました。右脚ブロック(RBBB)と診断した⼈は,この資料をよく勉強さ れました。しかし実際にはそんなに簡単な問題ではありませんでした。ではゆっくりと最後の診断をしていきましょう。 まずよく⾒ると,V2,V3 誘導で ST が上昇しています。この患者は,実は STEMI(ST 上昇性⼼筋梗塞)です。もっとも ST 上昇だけで STEMI とは判断できないので,これを指摘する必要性はありません。恐らく前壁梗塞と考えられます。 それ以上にさらに判定が難しいのが,左脚前枝ヘミブロックです。まずこの患者,Ⅱ誘導の R/S 比では求めにくいですが,Ⅰ 誘導とⅢ誘導から診断するに,-45 度程度の左軸偏位を⽰しています。その他の所⾒からも,左脚前枝ヘミブロックと診断で きます。従って,この患者は STEMI による右脚+左脚前枝ブロックと診断できます。Brugada 症候群に近い心電図ですが, V1 誘導で ST 上昇が⾒られず,この可能性は否定されます。 Answer. 完全右脚ブロック+左脚前枝ブロック 補⾜:軸変異について 軸変異については慣れればぱっと⾒て分かるのですが,ここでは簡潔かつ確実な求め⽅をお教えします。 まず,Ⅰ誘導,aVf 誘導の R 波の基線からの高さを測ります。次に,xy 平面において,原点 O を中心に,第Ⅰ誘導を x 軸, aVf 誘導を y 軸に書きます。従って,Ⅰ誘導の R 波高が上向きに 7mm,aVf 誘導の R 波高が下向きに 6mm の場合,次のよう なグラフになります。 I 誘導(上向正) O aVf 誘導(上向正) これをベクトル合成すると,ベクトルがおよそ-40 度になります。 このベクトルが-90〜45 度が正常。45 度〜180 度が左軸偏位,-90〜-180 度が右軸偏位と呼ばれます。 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