企業におけるゲーム開発技術の課題と研究 三宅 陽一郎 (株式会社フロム・ソフトウェア) [email protected] 2007.5.29 筑波大学 Contact Information Youichiro Miyake • Mail: [email protected] • Twitter: @miyayou • Blog: http://blogai.igda.jp • LinkedIn: http://www.linkedin.com/in/miyayou • Facebook: http://www.facebook.com/youichiro.miyake 本プレゼンテーションの主旨 (1)ゲームテクノロジーを研究される人に、 企業におけるゲーム開発の現状を知らせる。 (2)企業のゲーム開発が持つ技術的課題を提示する。 (3)ゲーム技術における研究の役割について、 研究者と一緒に議論したい(貴重な機会)。 コンテンツ 第1章 企業におけるゲーム開発 第2章 企業におけるゲーム開発技術の問題点 第3章 研究の役割 第1章 企業におけるゲーム開発 コンシューマー・ コンシューマー・ゲーム開発 ゲーム開発の 開発の歴史と 歴史と現状 FC SFC SS, PS PS2,GC,Xbox 1999 DC Hardware 2005 Xbox360, PS3, Wii (次世代) 次世代) 時間軸 TV game 3D 成長期 成熟期 インパクト Network Physics AI 現在(2007年5月):「次世代機への開発の移行期」の「収束の始まり」の時期 (Xbox360: 2005/11 PS3: 2006/11 Wii 2006/11) 企業におけるゲーム開発機構 経営企画 ゲームの ゲームの製作本数 開発費、 開発費、収益予測 プロデューサー ディレクター 広報/宣伝 宣伝 ゲームの ゲームの方向、 方向、プラットフォーム 具体的な 具体的なゲームコンテンツ製作 ゲームコンテンツ製作 企画 製作管理 ゲームデザイン / シナリオ製作 シナリオ製作 データ・ データ・人材・ 人材・機材・ 機材・ デバッグ工程管理 デバッグ工程管理 デザイナー グラフィッカー サウンド デバッガー データコンテンツ製作 データコンテンツ製作 デバッッグ プログラマー システム製作 システム製作 データコンテンツを データコンテンツをコントロール 全体として考えていること 低コストで質の高いコンテンツ 量産、かつ、ハイクオリティー 製作工程のライン化と分業化 開発者個人が考えていること 面白いコンテンツを作りたい アイデア、そして、技術が欲しい ゲーム、エンターテインメント、技術研究 ゲームコンテンツ製作構造 企画 デザイナー グラフィッカー ソフトウエアツール コンテンツデータ ゲーム システム プログラマー プログラミング環境 プログラミング 環境 サウンド 現在はゲームコンテンツ製作構造の変革期 企画 デザイナー グラフィッカー サウンド 拡張 ソフトウエアツール 増大 対応 コンテンツデータ ゲーム システム マルチコア、SPU、 マルチコア、SPU、 Wiiコントローラ プログラマー 改善 プログラミング プログラミング環境 環境 効率化( 効率化(分散コンパイル 分散コンパイル、 コンパイル、 ソース管理 ソース管理) 管理) 基本システムの技術導入の時期(5年に1度) 製作プランニング 製作の 製作の方向 仕様の 仕様の決定 企画 基本要素の 基本要素の 組み合わせ プロトタイプ デザイン・ 市場調査・ 自社開発力の ゲームシステ ム・ 検討 技術の検討 量産体制 出荷準備 本制作 デバッグ コンテンツ量産・ 各ステージ仕様決定・ α版・β版・マスター版 デバッグ・ メーカーチェック コンテンツに コンテンツに依存する 依存する技術導入 する技術導入の 技術導入のチャンス( チャンス(タイトル毎 タイトル毎、タイトル開発期間 タイトル開発期間は 開発期間は平均1 平均1~3年) コンテンツに コンテンツに依存する 依存する技術導入 する技術導入の 技術導入のチャンス 各段階で チェックがあり があり、 見込みが みが無 ければ製作中止 製作中止になることもある になることもある。 各段階 でチェック があり 、見込 みが 無ければ 製作中止 になることもある 。 出荷 ゲーム会社が技術を導入するタイミング 長期 プラットフォームの変革期 現在、主にマネージメント、技術サポート部署 開発工程を効率化するための技術 短期 各タイトルの企画、プロトタイプ製作開始まで 常時、ゲームタイトル開発者 そのタイトルを面白くするための技術 第2章 企業における ゲーム開発技術の問題点 アカデミズムとゲーム開発 大学・研究機関・研究者 ゲーム開発企業・開発者 ユーザーを ユーザー を楽しませる までにない、 しい可能性 可能性を 今までにない 、新しい 可能性 を 開く 企画 アイデア デザイナー サウンド 計算、製作、実験 デバッガー グラフィッカー データ解析、作品検証 ゲーム製作 ゲーム製作への 製作への技術導入 への技術導入 = ゲーム製作 ゲーム製作サイクル 製作サイクル を変化させること 変化させること 発表 論文、作品 どんな研究 研究を っているか、 どんな 研究 を行っているか 、ということが 研究者の 研究者 のアイデンティティー 研究至上主義 プログラマー 発売 ゲーム(商品) どんなゲーム ゲームを っているか、 どんな ゲーム を作っているか 、ということが ゲーム開発者 開発者の ゲーム 開発者 のアイデンティティー タイトル至上主義 ゲーム会社と技術の関係 (1)量産システムが一度出来ると大きくは変革しない 一度出した したタイトル タイトルに に載った技術 技術は は安心 安心できる 一度出 したタイトル った技術 できる 開発者が がノウハウ ノウハウを を蓄積 蓄積している している。 。 開発者 している 工程を を固定化 固定化することで することでゲーム ゲーム量産 工程 することで ゲーム 量産 (2) 新しい技術に対しては保守的 実験をしている をしている余裕 余裕がそれほどない 実験 をしている 余裕 がそれほどない 時間 人材 情報 能力 : : : : 導入の チャンスは くない。 導入 のチャンス は多くない 。 けない会社 会社が 人が割けない 会社 が多い。 平均的に って専門的 専門的な 論文を まない、 めない。 平均的 に言って 専門的 な論文 を読まない 、読めない 。 平均的に って数学 数学、 英語力、 抽象的思考力の 不足。 平均的 に言って 数学 、英語力 、抽象的思考力 の不足 。 ゲームへどうやって へどうやって活 かしたらよいかわからない。 ゲーム へどうやって 活かしたらよいかわからない 。 開発に に組み込み成功 成功するという するという見通 見通しが しが立 立てられない 開発 するという 見通 しが ゲーム開発者と技術の関係 (1)技術者は高卒、専門学校、大卒、院卒、中途採用まで様々。 技術的バックグラウンドは様々、共通項はプログラミングぐらい。 (2)開発ラインにおいて普通に仕事をしていると大学との接触は殆どない。 タイトルによっては、研究成果を取り入れることもある。[限定的な結びつき] (3)幸運な場合を除いて、大学で行った研究がそのまま役立つことはない。 ゲーム開発の殆どがルーチンワーク、かつ(超)多忙。20~30の若手中心。 (4)企業はたいていの場合「ゲームプログラマー」を育てて行く。 「エンジニア」「研究者」ではなく「プログラマー」になって行く。 (プログラマー文化 >> エンジニア文化 >> 研究者文化) しい挑戦 挑戦= プログラムレベルでの での新 しい挑戦 挑戦」」 「新しい 挑戦 =プログラムレベル での 新しい 挑戦 (5)学術的成果と、自分たちのゲーム開発には距離があると思っている。 大学、大学院での研究との結びつきを持てない。 学術的成果を使ったゲーム開発のチャンスが少ない(と思っている)。 アカデミズムとゲーム開発 大学・研究機関・研究者 ゲーム開発企業・開発者 ユーザーを ユーザー を楽しませる までにない、 しい可能性 可能性を 今までにない 、新しい 可能性 を 開く 企画 アイデア デザイナー サウンド 計算、製作、実験 デバッガー グラフィッカー データ解析、作品検証 プログラマー 発表 論文、作品 時間が 時間が経つとこの輪 つとこの輪は だんだんと硬直化 だんだんと硬直化する 硬直化する (ひきこもり) ひきこもり) どんな研究 研究を っているか、 どんな 研究 を行っているか 、ということが 研究者の 研究者 のアイデンティティー 研究至上主義 発売 ゲーム(商品) どんなゲーム ゲームを っているか、 どんな ゲーム を作っているか 、ということが ゲーム開発者 開発者の ゲーム 開発者 のアイデンティティー タイトル至上主義 ゲーム開発の現状 ゲーム開発 同じところをぐるぐる 研究フィールド 広いフィールドがあるのに、 狭いフィールドの中で競争している。 結果的に ゲームと 自分たちの たちの可能性 可能性を 制限している している。 結果的 にゲーム と自分 たちの 可能性 を制限 している 。 第3章 研究の役割 これからのゲーム業界のために必要なこと 開発者に常にデジタル空間の可能性を提示し続ける。 ゲーム開発をより広い技術的フィールドの中で展開する。 ゲームとゲーム開発者の可能性を最大限引き出す。 ゲーム開発 研究フィールド 研究者・開発者 開発者に常にデジタル空間の可能性を提示し続ける。 開発者 ゲーム開発をより広い技術的フィールドの中で展開する。 ゲームとゲーム開発者の可能性を最大限引き出す。 新しいゲーム、新しいゲーム開発の流れ 人工知能分野における試み 「人工知能技術の可能性を見せる」 社内AIセミナー (週1回2時間、~80回) 開発タイトルにおける 人工知能技術導入 社外AIセミナー・講演 IGDAゲームAI連続セミナー CEDEC,AOGC 基礎技術の 紹介と 基礎技術 の紹介 と ゲームへの への応用 応用の ゲーム への 応用 の議論 実際の タイトルで 実際 のタイトル で実装 ゲームAI AI技術体系化 技術体系化((全6回) ゲーム AI 技術体系化 ゲームAI テキスト製作 ゲーム AI テキスト 製作 + 実装例の 実装例 の紹介 ゲームへの への応用 応用の ゲーム への 応用 の議論 社内では部分的に成功、日本のゲーム産業全体ではこれから… クロムハウンズ紹介 ゲームにおける自律型エージェント、 マルチエージェントを目指して クロムハウンズ紹介 デモ Openning_Movie.avi クロムハウンズAI 設計図 自律型エージェント クロムハウンズAI 設計図 時間の流れ 思考の流れ 記憶の流れ 人工知能 意思決定 世界 プラナー 知識表現 sensor 評価値による ゴール選択システム 主要オブジェク トプレイヤーに 関する情報 act ion ゴール act ion 世界 effecter act ion プラン ターゲット 武器選択 事前解析 パス検索 主要オブジェクト プレイヤーに関 する情報 動作選択 リアルタイム更新 リアルタイム更新 Working Memory エージェントごとに別 ナビゲーションメッシュデータ( ナビゲーションメッシュデータ(世界表現) 世界表現) 全てのエージェントで共通 Chromehounds AI 設計図 ゴール指向プランニング ゴールを自ら設定して、プランを組む思考 Conquer_Combas_TeamAI.avi ナビゲーション・メッシュ 移動のための世界表現データ NavMesh.avi ゴール評価値による意思決定システム 自律型エージェントとして完成 Evaluation_value_2.avi マルチエージェント・システム エージェント同士が連携する Protect_CB_TeamAI.avi マルチエージェントによる戦闘デモ 自律型エージェント12体による戦闘 m07_001_01_ComvsCom.avi m07_001_02_ComvsCom.avi m07_001_03_ComvsCom.avi ゲームAIの進化は非連続的 AI 群知能 マルチエージェント エージェント プランニング GA FSM If ..then.. アルゴリズム If ..then.. 状態数((ゲーム ゲーム世界 世界、 キャラクターアクション))の増加 状態数 世界 、キャラクターアクション FC SFC SS, PS PS2,DCGC,Xbox Xbox360, PS3, Wii IGDA日本 ゲームAI連続セミナー(全6回) 技術的地平を を「なるべく なるべく遠 遠くまで くまで見 見せる せる」」 そして そして開発 開発へ へ… 技術的地平 開発 第5回 進化と学習 第4回 オートマトン 第3回 群知能、マルチエージェント 第2回 プランニング 第1回 知識表現(世界表現) 社内、社外セミナーからの教訓 (1) 技術導入は、個人ではなく開発ラインに対して 行うもの。 企画、プログラマー両者に説明する (2)企画はその技術がどうゲームの面白さに関係するか に関心がある。 実際のゲームにおける効果を説明する (3) 新しい技術には不安があり、かつ技術者には 導入に際してライン全体を説得する必要がある。 工程の組み方、技術的注意点、 チューニングの仕方、デバッグの方法まで解説する 研究者と開発者の理想的関係 大学・研究機関・研究者 ゲーム開発企業・開発者 ユーザーを ユーザー を楽しませる までにない、 しい可能性 可能性を 今までにない 、新しい 可能性 を 開く 企画 アイデア デザイナー サウンド 計算、製作、実験 デバッガー データ解析、作品検証 互いに いに独立 独立した した存在 独立 した 存在 かつ相互作用 相互作用する かつ 相互作用 する 発表 論文、作品 どんな研究 研究を っているか、 どんな 研究 を行っているか 、ということが 研究者の 研究者 のアイデンティティー 研究至上主義 グラフィッカー プログラマー 発売 ゲーム(商品) どんなゲーム ゲームを っているか、 どんな ゲーム を作っているか 、ということが ゲーム開発者 開発者の ゲーム 開発者 のアイデンティティー タイトル至上主義 研究者からのアプローチ (1) 自分の研究をゲーム開発者にわかりやすく説明すること ゲーム開発者を驚かす (2) 自分の専門の分野をゲーム開発者向けに説明すること。 テクノロジーの可能性を見せる (3) ゲーム開発者と対話すること。 相互作用 研究と開発は独立した存在であるべきだが、 相互作用を持つことはお互いの仕事の批判となり得る。 開発者からのアプローチ (1) 自分たちの技術的な開発内容を公開する。 研究側からの批判を受ける (2) 新しい技術を取り入れるキャパシティーを 空ける。 技術的柔軟さを持ち発展性を保つ (3) 研究者と対話を持つ。 相互作用 これができれば… 開発者に常にデジタル空間の可能性を提示し続ける。 ゲーム開発をより広い技術的フィールドの中で展開する。 ゲームとゲーム開発者の可能性を最大限引き出す。 ゲーム開発 研究フィールド まとめ (1)企業のゲーム開発は、開発ラインのルーチンワークを 単位とし、技術導入は長期的には開発工程のための技術、 短期的にはコンテンツに依存する技術が要求される。 (2)企業におけるゲーム開発技術の問題点は、開発ラインの中で 技術が固定化し、柔軟性を失って行くことであり、これは、 ゲーム産業全体で見られる。 (3)企業におけるゲーム開発をより広い技術的フィールドにおいて 展開するためには、技術研究が切り拓くデジタル空間の 可能性を継続して開発者に提示する必要がある。 付録: 欧米と日本におけるゲームAI における産学の関係相違 欧米におけるアカデミズムとゲーム開発 ゲーム開発企業・開発者 大学・研究機関・研究者 までにない、 しい可能性 可能性を 今までにない 、新しい 可能性 を 開く ユーザーを ユーザー を楽しませる 企画 アイデア デザイナー サウンド 計算、製作、実験 デバッガー データ解析、作品検証 発表 情報提示・・ 情報提示 情報提供 相互批判 論文、作品 どんな研究 研究を っているか、 どんな 研究 を行っているか 、ということが 研究者の 研究者 のアイデンティティー 研究至上主義 グラフィッカー プログラマー 発売 ゲーム(商品) どんなゲーム ゲームを っているか、 どんな ゲーム を作っているか 、ということが ゲーム開発者 開発者の ゲーム 開発者 のアイデンティティー タイトル至上主義 (例)欧米における産学の例 http://www.4gamer.net/specials/gdc2004/gdc2004.html GDC(Game Developer Conference) GDC を初めとする大小多数 めとする大小多数の 大小多数の会議 会議 AI Game Programming Wisdom Game Programming Gems 論文(記事)集 テキスト F.E.A.R(MIT) Halo2(MIT) Killzone AIの分野における成果物 日本におけるアカデミズムとゲーム開発 ゲーム開発企業・開発者 大学・研究機関・研究者 までにない、 しい可能性 可能性を 今までにない 、新しい 可能性 を 開く ユーザーを ユーザー を楽しませる 企画 アイデア デザイナー サウンド 計算、製作、実験 デバッガー データ解析、作品検証 発表 情報提示・・ 情報提示 情報提供 相互批判 少ない 論文、作品 どんな研究 研究を っているか、 どんな 研究 を行っているか 、ということが 研究者の 研究者 のアイデンティティー 研究至上主義 グラフィッカー プログラマー 発売 ゲーム(商品) どんなゲーム ゲームを っているか、 どんな ゲーム を作っているか 、ということが ゲーム開発者 開発者の ゲーム 開発者 のアイデンティティー タイトル至上主義 (例)日本における産学の例 希少 CEDEC(CESA Developer Conference) IGDA,AOGC 会議 希少 AI Game Programming Wisdom Game Programming Gems 論文(記事)集 希少 AIの分野における成果物 テキスト
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