新会社法 定款の実務

新会社法
定款の実務
記載事項に登記事項を反映させた
定款変更の実務事例集
駒澤大学法科大学院講師・司法書士
田 沼
-1-
浩
著
-2-
はじめに
平成 17 年 2 月 9 日法制審議会が法務大臣に答申した「会社法制の現代化に関
する要綱」は、
「会社法案」
「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
案」として第 162 回通常国会に平成17 年 3 月22 日提出、衆議院で一部修正審議
を受けた後、平成 17 年 6 月 29 日参議院で可決されて、
「会社法(平成 17 年法律
第 86 号)」
、
「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成 17 年法律
第 87 号)」として成立しました。(公布日は平成 17 年 7 月26 日)
「会社法」と「整備法※」は平成 18 年 5 月 1 日に施行され、それに伴い株式
会社などを対象に、定款の記載事項の変更など、早急に対応すべきこととなりま
した。そこで、
「会社法」
、
「整備法」
、
「会社法施行規則」
、
「会社計算規則」
、
「電
子公告規則」及び「法務省通達」に基づいて、変更すべき定款事項と登記事項の
要領を作成いたしました。本書の作成にあたり、定款事項に登記事項を単に反映
させるだけでなく、調査サンプルを特定の有名上場会社に絞らず、時間的に可能
な限り、できるだけ広範囲に情報を収集することで、作成が可能になりました。
また、定款の記載事項と登記事項を分析するにあたり、会社法に対する深い考察
だけでなく、有名企業とのリサーチ契約で培ったネットワークを利用したリサー
チとプロファイル技法を使うことで法情報学の観点からも高い精度を求めまし
た。
本書は、具体的な議案・定款の記載事項・登記事項について、
「取締役会設置
会社・監査役設置会社又は監査役会設置会社・会計監査人設置会社」である株式
会社を前提に、委員会設置会社の内容も加味しながら作成しました。ただし、基
本的な部分は、すべての株式会社において共通です。もっとも数が多いと考えら
れる「資本金 1 億円以下、取締役会設置会社・監査役設置会社」においても、十
分に利用できます。
本書の定款の記載事項と登記事項については、そのまま利用していただいても
-3-
結構ですが、定款全体のバランスや利用される会社の特徴を十分考慮してくださ
い。また、内容については、必ず会社法・整備法・会社法施行規則・会社計算規
則・電子公告規則の各条文、及び該当する法務省通達等で確認してください。
なお、本書を大学及び法科大学院、専門学校、会社総務部・法務部などで使用
していただければ幸いです (駒澤大学法学部及び駒澤大学法科大学院の講義用
参考テキストとして使用する予定です。) 。
本書を出版するにあたり、ご相談させていただいた駒澤大学前法学部長同大学
教授 故山田泰彦先生の御冥福を心からお祈り申し上げます。
平成20 年 3 月吉日
駒澤大学・同法科大学院兼任講師・司法書士
田 沼
浩
※整備法とは、
「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」を示す。
以下「整備法」という。
【カバーデザイン/佐藤シノブ】
-4-
目 次
Contents
1 会社法等における定款の記載事項と登記事項
…………………………………………………………… 15
[1] 定款の記載事項
15
[2] 登記事項
15
[3] 定款の記載事項と登記事項
19
[4] 会社法等における定款の記載事項と登記事項、その変更の意義
19
[5] 分類
20
[6] 整備法の経過措置
25
①「旧大会社等の定款に関する経過措置」
25
②「旧小会社等の定款に関する経過措置」
27
③「取締役会及び監査役を置く旨の定めに関する経過措置」
27
④「譲渡制限の定めに関する経過措置」
28
⑤「株券発行に関する経過措置」
28
⑥「名義書換代理人等に関する経過措置」
29
⑦「端株に関する経過措置」
30
⑧「種類株式等に関する経過措置」
30
-5-
[7] 会社施行によって廃止・変更される登記事項と定款の記載事項の 32
関係
[8] 新たに追加、変更を加えた定款の記載事項でそれが登記事項であ 32
るために、登記事項の変更登記の申請を要する場合
2 会社法施行により変更すべき定款の記載事項(登
記事項を反映したもの)………………………………… 34
[1] 「総則」の章に記載される定款の記載事項
34
①「機関の設置」or「委員会等設置会社に関する特例→機関の設置」 34
②「公告の方法→公告方法」
37
[2] 「株式」の章に記載される定款の記載事項
39
①「発行する株式の総数→発行可能株式総数」
39
※「種類株式」
42
②「自己株式の取得→市場取引等による株式の取得」
47
③「相続人等に対する売渡しの請求」
48
④「1 単元の株式の数→単元株式数」
49
⑤「名義書換代理人→株主名簿管理人」
50
⑥「株式取扱規則」
51
⑦「株主の住所等の届出」
52
⑧「株券の発行に関する定め」
54
参照 株券に関係する定款の記載事項をすべて削除する場合
55
⑨「株券の不発行→削除」
57
⑩「基準日」
57
⑪「株式の譲渡制限」
62
⑫「株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合」
65
-6-
[3] 「株主総会」の章に記載される定款の記載事項
66
①「株主総会の招集」
66
②「株主総会参考書類等のインターネット開示とみなし提供」
67
③「株主総会の招集地」
68
④「議決権の代理行使」
69
⑤「株主総会の決議の方法」
71
⑥「株主総会の議事録」
72
[4] 「取締役及び取締役会(並びに委員会)」の章に記載される定款の
73
記載事項
①「取締役の選任」
73
※補欠役員制度の導入について
74
※(取締役等の資格)「取締役、監査役、執行役を株主でなければなら
ないとする」旨の定款の定めについて
75
②「取締役の任期」
77
③「代表取締役及び役付取締役」
79
④「取締役会の決議方法」
80
⑤「取締役会の決議の省略」
81
⑥「取締役会への報告の省略」
82
⑦「取締役会の議事録」
82
⑧「取締役の報酬及び退職慰労金→取締役の報酬等」
83
⑨「取締役の責任免除」と「社外取締役に関する責任軽減契約」
84
⑩「執行役の任期」
87
⑪「代表執行役及び役付執行役」
88
⑫「執行役の報酬→執行役の報酬等」
89
⑬「執行役の責任免除」
90
-7-
[5] 「監査役(及び監査役会)」の章に記載される定款の記載事項
91
①「監査役の選任」
91
②「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め」
93
③「監査役の任期」
94
④「常勤監査役」
95
⑤「監査役会の権限」
96
⑥「監査役会の招集」
97
⑦「監査役会の議事録」
98
⑧「監査役の報酬及び退職慰労金→監査役の報酬等」
100
⑨「監査役の責任免除」と「社外監査役に関する責任軽減契約」
101
[6] 「会計監査人」の章に記載される定款の記載事項
102
①「会計監査人の選任」
103
②「会計監査人の任期」
104
③「会計監査人の報酬等」
105
④「会計監査人の責任免除」と「会計監査人に関する責任軽減契約」 106
[7] 「会計参与」の章に記載される定款の記載事項
107
①「会計参与の選任」
108
②「会計参与の任期」
110
③「会計参与の報酬等」
112
④「会計参与の責任免除」と「会計参与に関する責任軽減契約」
113
[8] 「計算」の章に記載される定款の記載事項
114
①「営業年度(決算期)→事業年度」
114
②「利益配当金→剰余金の配当」
115
③「中間配当」
117
④「(会社法第459 条の)剰余金の配当金を取締役会が決定する旨の
119
-8-
定款の定め」
⑤「配当金の除斥期間」
121
(参照 執行役社長を株主総会の招集権者としている場合)
122
3 株主総会の目的である定款の一部変更の議案に
ついて……………………………………………………123
4 整備法の経過措置と定時株主総会等
……………………………………………………………126
[1] 株主総会、取締役・取締役会・監査役等について
① 会社の資本金が 1 億円以下株式会社の場合、3 月末決算
126
126
(A) 平成 18 年 6 月頃に開催される予定の定時株主総会
(1) 計算書類の作成、監査、承認
(2) 定時株主総会の招集決定のための取締役会
(3) 定時株主総会
(B) 臨時株主総会
129
(1) 平成 18 年 4 月 30 日までの臨時株主総会
(2) 平成 18 年 5 月 1 日以降の臨時株主総会
(C) 取締役・取締役会・監査役等
② 会社の資本金が 1 億円以上 5 億円未満株式会社の場合、3 月末
決算
131
③ 会社の資本金が 5 億円を超える株式会社の場合、3 月末決算
131
(A)平成 18 年 6 月頃に開催される予定の定時株主総会
(1) 計算書類の作成、監査、承認
(2) 定時株主総会の招集決定のための取締役会
-9-
131
(3) 定時株主総会
(B) 臨時株主総会
133
(1) 平成 18 年 4 月 30 日までの臨時株主総会
(2) 平成 18 年 5 月 1 日以降の臨時株主総会
(C) 取締役・取締役会・監査役等
④ 平成18 年中に株式会社が設立された場合、3 月末決算
134
135
[2] 株主総会、取締役・取締役会・監査役等についてその他の例外 135
①「営業の譲渡等に関する経過措置」
②「株式会社の合併等に関する経過措置」
[3] 会計帳簿
136
[4] 株主名簿
136
[5] 株券喪失登録
136
[6] 社債
136
5 整備法 76 条第 4 項による「株券を発行する旨」
の定めがあるものとみなされる会社に対する「株券
を発行する旨」の定款の定めの廃止の手続きについ
て…………………………………………………………138
① 旧商法の「株券不発行の旨」の定款の定めがない株式会社にお
ける会社法施行後の定款の記載事項と登記事項の状態
139
(1) 会社法施行時の定款の記載事項
(2) 登記簿に掲載されている登記事項
②「株券を発行する旨」の定款の定めを廃止する手続き
(1) 整備法第 76 条第 4 項による「株券を発行する旨」の定款の定
めの廃止の定款変更の株主総会の決議
- 10 -
139
(2) 会社法第 218 条第 1 項の公告と株主及び登録株式質権者への
通知
(3) 株券を発行する旨の定款の定めの廃止の登記
③ 株式の全部について株券を発行していない株券発行会社がその
株式に係る「株券を発行する旨の定款の定めの廃止」に関する文例
142
(1) 「株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更」の
株主総会議案
(2) 会社法第 218 条第 4 項の公告
(3) 会社法第 218 条第 3 項の通知書
6 「株主総会の決議の省略」の手続きについて……145
(1) 株主総会決議事項に対する同意依頼書
(2) 株主総会決議事項についての取締役の提案に対する同意書
(3) 会社法第 319 条第 1 項に係る会社法施行規則第72 条第 4 項の
株主総会議事録
7 「取締役会の決議の省略」の手続きについて……150
①「監査法人との監査契約締結」について、取締役会の決議の省略に
よる手続きを用いる場合
151
(1) 取締役会決議事項に対する同意依頼書
151
(2) 取締役会決議事項についての取締役の提案に対する同意書
153
(3) 会社法第 370 条に係る会社法施行規則第101 条第 4 項の取締 154
役会議事録
②「代表取締役の選定」について、取締役会の決議の省略による手 155
続きを用いる場合
- 11 -
(1) 取締役会決議事項に対する同意依頼書
155
(2) 取締役会決議事項についての取締役の提案に対する同意書
156
(3) 会社法第 370 条に係る会社法施行規則第 101 条第 4 項の取締 157
役会議事録
(確認株式会社と整備法について)
158
8 整備法等による職権登記について (株式会社
と特例有限会社)…………………………………………159
[1] 会社法施行に伴う関係法律の整備等に関する法律等による職権登
記事項
159
[2] 職権登記の作業
159
[3] 支配人登記を移記する作業(会社の種類を問わず)
160
[4] それ以外の整備法等による職権登記の作業
160
① 株式会社について
160
(1) 登記事項が廃止されるもの
ア 株券を発行しない旨の定め
イ 議決権制限株式を有する株主の権利に関する定め
ウ 開業前の利息の配当の規定
エ 登録機関の氏名及び住所並びに営業所
オ 代表取締役又は代表執行役の共同代表に関する規定
カ 重要財産委員会を置く旨及び重要財産委員の氏名
キ 委員会等設置会社である旨
ク 清算人の共同代表に関する規定
ケ 支配人の共同代表に関する規定
(2) 登記事項を新に記載すべきもの
- 12 -
162
ア 株券発行会社である旨
イ 取締役会設置会社である旨
ウ 監査役設置会社である旨
エ 特別取締役による議決の定め及び特別取締役の氏名
オ 委員会設置会社である旨
(3) 登記事項名が変更されるもの
② 特例有限会社について
163
164
(1) 登記事項が廃止されるもの
164
ア 出資 1 口の金額
イ 取締役の共同代表に関する規定
ウ 合併等の公告する方法
エ 清算人の共同代表に関する規定
オ 支配人の共同代表に関する規定
(2) 登記事項を新に記載すべきもの
165
ア 発行可能株式総数及び発行済株式の総数
イ 株式の譲渡制限に関する定め
ウ 公告をする方法
(3) 登記事項名が変更されるもの
[5] 支店所在地の職権登記の作業
166
様式 1(株式会社の本店所在地における登記)
167
様式 2(有限会社の本店所在地における登記)
170
参考資料 1 会社法施行後の現在事項証明書(登記簿謄
本) ………………………………………………………172
(1) 株式会社
172
- 13 -
(2) 特例有限会社
176
参考資料 2 法務省資料に基づく株式会社の手続きに係
る標準定款・定時株主総会議事録・取締役会議事録等
……………………………………………………………178
「標準」定款 P180~188、P198~205
「標準」定時株主総会議事録 P220~222、P226~229
「標準」臨時株主総会議事録 P233~235、P241~243、P248~249、P254~255
「標準」取締役会議事録 P222~223、P237~238、P243~244
「標準」(取締役会を設置していない会社の)取締役互選書 P229~230
「標準」清算人会議事録 P250
「標準」資本金の額の計上に関する証明書 P193~195、P214~216
「標準」(設立後の)就任承諾書 P224、P230、P251
- 14 -
1
会社法等における定款の記載事項と登記事項
[1] 定款の記載事項
会社法における株式会社の定款の記載事項は、会社法第27 条各号 (「(1)絶対
的記載事項(目的、商号、本店の所在地)」)、第28 条各号「変態設立事項」に掲
げる事項と第 29 条(定款の定めがなければその効力が生じない事項「(2)相対的
記載事項(「変態設立事項」も含む)」及びその他の事項で会社法の規定に違反し
ないもの「(3)任意的記載事項」)に分類され、株式会社の自治的な法規として定
められるものである。
[2] 登記事項
会社法における株式会社の登記(すべき)事項は、次のとおり会社法第911 条第
3 項各号に定められた事項をいう。
一 目的
二 商号
三 本店及び支店の所在場所
四 株式会社の存続期間(旧「存立期間」)又は解散の事由についての定款の定
めがあるときは、その定め
五 資本金の額(旧「資本の額」)
六 発行可能株式総数(旧「発行する株式の総数」)
七 発行する株式の内容(旧「株式の譲渡制限の定め」も含まれる。種類株式
発行会社にあっては、発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
八 単元株式数(旧
「1単元の株式の数」
)についての定款の定めがあるときは、
- 15 -
その単元株式数
九 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
十 株券発行会社であるときは、その旨(旧商法では「株券を発行しない旨の
定め」が登記されていたが、職権で削除される。)
十一 株主名簿管理人(旧「名義書換代理人」)を置いたときは、その氏名又は
名称及び住所並びに営業所
十二 新株予約権を発行したときは、次に掲げる事項
イ 新株予約権の数
ロ 第二百三十六条第一項第一号から第四号までに掲げる事項
ハ ロに掲げる事項のほか、新株予約権の行使の条件を定めたときは、その
条件
ニ 第二百三十六条第一項第七号並びに第二百三十八条第一項第二号及び
第三号に掲げる事項
十三 取締役の氏名
十四 代表取締役の氏名及び住所(第二十二号に規定する場合を除く。
)
十五 取締役会設置会社であるときは、その旨
十六 会計参与設置会社であるときは、その旨並びに会計参与の氏名又は名称
及び第三百七十八条第一項の場所
十七 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨
の定款の定めがある株式会社を含む。
)であるときは、その旨及び監査役の氏名
十八 監査役会設置会社であるときは、その旨及び監査役のうち社外監査役で
あるものについて社外監査役である旨
十九 会計監査人設置会社であるときは、その旨及び会計監査人の氏名又は名
称
二十 第三百四十六条第四項の規定により選任された一時会計監査人の職務
- 16 -
を行うべき者を置いたときは、その氏名又は名称
二十一 第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定め(旧
商法では、
「重要財産委員会を置く旨及び重要財産委員の氏名」が登記されてい
たが、職権で削除される。)があるときは、次に掲げる事項
イ 第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあ
る旨
ロ 特別取締役の氏名
ハ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
二十二 委員会設置会社(旧商法では「委員会等設置会社である旨」が登記さ
れていたが、職権で削除される。)であるときは、その旨及び次に掲げる事項
イ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
ロ 各委員会の委員及び執行役の氏名
ハ 代表執行役の氏名及び住所
二十三 第四百二十六条第一項の規定による取締役、会計参与、監査役、執行
役又は会計監査人の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定め
二十四 第四百二十七条第一項の規定による社外取締役、会計参与、社外監査
役又は会計監査人が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定め
があるときは、その定め
二十五 前号の定款の定めが社外取締役に関するものであるときは、取締役の
うち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
二十六 第二十四号の定款の定めが社外監査役に関するものであるときは、監
査役のうち社外監査役であるものについて、社外監査役である旨
二十七 第四百四十条第三項の規定による措置をとることとするときは、同条
第一項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその
提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
- 17 -
二十八 第九百三十九条第一項の規定による公告方法についての定款の定め
があるときは、その定め
二十九 前号の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるとき
は、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者が
その提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 第九百三十九条第三項後段の規定による定款の定めがあるときは、その
定め
三十 第二十八号の定款の定めがないときは、第九百三十九条第四項の規定に
より官報に掲載する方法を公告方法とする旨
(整備法により廃止され、登記所の職権で抹消される登記事項は次のとお
りである。)
×「株券を発行しない旨の定め」
×「議決権制限株式を有する株主の権利に関する定め」
×「開業前の利息の配当の規定」
×「登録機関の氏名及び住所並びに営業所」
×「代表取締役又は代表執行役の共同代表に関する規定」
×「重要財産委員会を置く旨及び重要財産委員の氏名」
×「委員会等設置会社である旨」
×「清算人の共同代表に関する規定」
×「支配人の共同代表に関する規定」
- 18 -
[3] 定款の記載事項と登記事項
会社法における定款の記載事項と登記事項は、必ずしも同一ではない。よって、
それぞれの定款の記載事項が登記事項であるのか、そうでないのかによって、会
社法との整合性や必要性を考えながら、個別に判断して定款を変更しなければな
らない。(1-6 整備法の経過措置を参照)
[4] 会社法等における定款の記載事項と登記事項、その変更の意義
旧株式会社(旧商法の規定による株式会社であって法の施行の際現に存するも
の)は、平成18 年5 月 1 日の会社法施行後、会社法の規定による株式会社として
存続することになり、そして、旧株式会社の定款は新株式会社(会社法の株式会
社)の定款とみなされることになる(整備法66 条Ⅱ)。
旧株式会社の定款の記載または記録は、原則として、これに相当する新株式会
社の定款における会社法第 27 条各号(第四号を除く。
「絶対的記載事項(目的、
商号、本店の所在地)」
)及び第 28 条各号「変態設立事項」に掲げる事項並びに
同法第 29 条(定款の定めがなければその効力が生じない事項「相対的記載事項
(「変態設立事項」も含む)」及びその他の事項で会社法の規定に違反しないもの
「任意的記載事項」
)に規定する事項の記載又は記録とみなすもの(整備法 76 条
Ⅰ)としている。よって、定款の記載または記録は、会社法と整合性を持たさな
ければならず、定款を変更しなければならなくなる。
定款は、株主総会の決議によって、変更することができる(会社法 466 条)が、
今回の会社法の施行では、法律の廃止または改正に伴い必要な経過措置が整備法
の中に定款変更に関する規定として定められている。旧株式会社に係る経過措置
としては、整備法 第 1 章 法律の廃止等 第 4 節 「株式会社の監査等に関する商
法の特例に関する法律(以下「旧商法特例法」)の廃止に伴う経過措置」と、第2
章 法務省関係 第 1 節 商法の一部改正等「商法の一部改正に伴う経過措置」で
- 19 -
ある。
一方、登記事項は、会社法施行によって整備法の経過措置が適用される。それ
に伴い平成18 年 1 月19 日法務省民商第 103 号「会社法の施行に伴う関係法律の
整備に関する法律等の規定による職権登記実施要領について(職権登記実施要
領)」で定められた登記事項は、登記所の職権で登記され、それ以外は会社自ら
の申請によらなければならない。
会社法の施行によって、整備法に具体的な規定がなくても、会社法との整合性
から定款の事項を変更しようとする場合は、株主総会の決議を要することになる。
「株券の不発行」の定款の定めのように職権登記実施要領により職権で廃止・変
更された登記事項が、当該株式会社の定款の記載事項であったにも関わらず、整
備法に規定がないときは、会社法との整合性から定款の記載事項を変更(削除)
しようとすると、定款変更のために株主総会の決議を経なければならなくなる。
[5] 分類
以上から会社法等における定款の記載事項と登記事項について、次のように分
類することができる。
1.
定款の記載事項には、登記事項である定款の記載事項と登記事項でな
い定款の記載事項に分類することができる。
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