弁護士法人 淀屋橋・山上合同

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会社法施行以前に設立されていた有限会社はどうなったのでしょうか。取締役会、監査役が設置さ
れていない株式会社との違いについても教えてください。
第1 会社法施行以前に設立されていた有限会社について
会社法施行以前に設立されていた有限会社は、会社法の施行に伴い廃止され(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に
関する法律(以下「整備法」といいます)1条3号)、会社法施行後は株式会社として存続することになります(整備
法2条1項)。もっとも、会社法以前に設立されていた有限会社は、法的類型としては株式会社となりますが、引き続
き「特例有限会社」として、従前の有限会社法のもとでの規律とほぼ同様の規律のもとで事業を継続することができま
す(整備法3条)。
特例有限会社に移行するにあたり、定款変更や登記手続は必要ありません。また、特例有限会社は、「有限会社」が入
った商号をそのまま使用することになり、株式会社や他の会社の名称を使うことはできません(整備法3条1項、2項
)。
特例有限会社は株式会社ですから、従前の社員は株主、社員の持分は株式、出資1口は1株、社員名簿は株主名簿とみ
なされます(整備法2条2項、8条1項)。また、旧有限会社の資本の総額を出資1口の金額で割った数が特例有限会
社の発行可能株式総数及び発行済株式総数となります(整備法2条3項)。さらに、発行する全株式は譲渡制限株式で
ある旨の定款規定があるものとみなされます(整備法9条1項)。
機関設計については、株主総会と取締役は設置しなければなりませんが、取締役会、監査役会、会計監査人、会計参与
、委員会を設置することはできません(整備法17条)。また、監査役は置くことができますが、監査役を設置する旨
の定款の定めがある場合は、監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めが置かれているものとみなされます(
整備法24条)。
なお、特例有限会社は、いつでも定款を変更して株式会社に商号変更を行い、登記も行うことにより、特例有限会社で
はない通常の株式会社となることができます。
第2 取締役会、監査役が設置されていない株式会社との違い
取締役会、監査役会が設置されていない株式会社の場合、取締役の任期については制限がありますが、特例有限会社に
おいては、取締役の任期に制限はありません(整備法18条)。
また、株式会社においては、一定の重要事項については特定の取締役に委任することができないとされていますが(会
社法348条3項)、特例有限会社においては委任することができます(整備法21条)。さらに、株式会社の場合、
大会社においては内部統制システムの構築義務を負いますが(会社法348条4項)、特例有限会社の場合、大会社で
あっても内部統制システムの構築義務を負いません(整備法21条)。
会社の計算についても違いがあります。株式会社の場合、決算を公告する必要がありますが(会社法440条)、特例
有限会社は、決算の公告は不要です(整備法28条)。また、株式会社は、計算書類を支店に設置する必要があります
が、(会社法442条2項)、特例有限会社は、計算書類を支店に設置する必要はありません(整備法28条)。
(執筆者 岩本 文男)
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