パリ通信5(2015 年 12 月 12 日 フランス・パリ)

パリ通信5(2015 年 12 月 12 日
フランス・パリ)
パリ合意草案の最終案1(FCCC/CP/2015/L.9)
12 月 10 日(木)午後 9 時にパリ委員会が開かれ、パリ合意草案(Draft Paris Outcome、
FCCC/ADP/2015/L.6/Rev.1)の新しいバージョン(Version 2 of 10 December 2015 at 21:00)
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が公表されました。当初予定されていたスケジュールでは 10 日午後に公表される予定で
したが、夜 9 時の公表となりました。ファビウス COP21 議長は、このパリ委員会のあと、
①締約国がバージョン 2 のテキストを読むために 2 時間半空けて、「インダバ」スタイルの
協議をあらためて開き、夜を徹して締約国が一致できる着地点(ランディング・ゾーン)
を検討する作業を継続する、②最終案を 11 日に出すと述べ、午後 9 時 17 分に会議を終え
ました。
12 月 11 日(金)は、当初設定されたスケジュールでは COP21 の最終日でしたが、終日、
協議が行われていたようです(インダバは私たちオブザーバーには公開されていません)
が、パリ委員会は開かれず、COP21 は会期を延長することになりました。
12 月 12 日(土)
、正午からパリ委員会が開かれ、オランド仏大統領、潘基文(パン・ギ
ムン)国連事務総長、フィゲレス条約事務局長が出席するなかでファビウス COP21 議長は、
交渉はほぼ終わりにさしかかっていると述べ、まもなく締約国に配布される最終案のテキ
ストについてこれまでの協議の結果を反映したものであると報告し、会場内の閣僚級およ
び政府代表団から満場の拍手が沸き起こりました。続いてパン・ギムン国連事務総長がス
ピーチし、
「これは世界を低排出への経路に置くものだ」と述べました。さらにオランド・
仏大統領がスピーチし、
「私たちは決定的な瞬間にいる。皆さんへの問いかけは、合意をし
たいかということだけだ。
」と述べました。パリ委員会はいったん閉会し、午後 3 時 45 分
に再開することがアナウンスされました。パリ合意草案の最終案(FCCC/CP/2015/L.9)は
午後 1 時半に公開されました。
合意されたパリ協定の内容
目的(2 条)
1.5℃未満目標が入りました。
「世界の平均気温を工業化以前から 2℃未満に維持し、1.5℃
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FCCC/CP/2015/L.9、< http://unfccc.int/resource/docs/2015/cop21/eng/l09.pdf>
DRAFT TEXT on COP 21 agenda item 4 (b)、Version 2 of 10 December 2015 at 21:00、
<http://unfccc.int/resource/docs/2015/cop21/eng/da02.pdf>
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未満への努力を継続する(pursue effort to limit the temperature increase 1.5℃)」
とされています。
緩和(4 条)
ピークアウトの表現はバージョン 1 と同じですが(パリ通信 4)
、バージョン 2 にあった
「今世紀後半に、温室効果ガス中立性(greenhouse gas emissions neutrality)を目指す」
との表現が、
「今世紀後半に、人為起源からの排出量と温室効果ガスの吸収源による除去量
とのバランスを達成するため(achieve a balance between anthropogenic emissions by
sources and removals by sinks of greenhouse gases in the second half of this century)
」
となっています。そもそも、
「温室効果ガス中立性」との表現が分かりにくいとの指摘もあ
り、よりわかりやすくなりました。
締約国は、国内の削減対策を進めなければならないこと、現在の対策から後退させては
ならないことも規定されています。
(4 条 2、3)
また、各国は 5 年ごとに約束草案を再提出ないし改訂することになりました(4 条 9)
。
適応(7 条)
適応能力およびレジリエントの強化、脆弱性の軽減などについての適応の世界目標
(global goal)をつくることになりました。こうした途上国への適応の取組については、
パリ協定の第 1 回の会議で決定されることになっています。
ロス・アンド・ダメージ(損失と損害)
(8 条)
ロス・アンド・ダメージ(損失と損害)について独立した条項が設けられました。これ
は途上国側の主張が通ったことになります。
資金(9 条)
先進国が途上国に資金供与をする義務があることが明記されています。また、その他の
国も自発的に資金供与をすることが奨励されています。これは、資金供与を行う締約国を
先進国だけでなく、経済的に発展してきている新興国(OECD に加盟しているメキシコや韓
国はもちろん、中国やブラジルなど)にも広げたいという先進国の主張を反映しています。
また、パリ協定案のバージョン 2 では、現在の毎年 1000 億ドルの資金供与を 2020 年以
降、1000 億ドルを下限(floor)にして増加させる(progression)との文言が入っていま
したが、パリ協定からは「1000 億ドルを下限(floor)」の文言は COP 決定に移されていま
す(パラグラフ 54)
。
グローバル・ストックテイク(進捗確認)
(14 条)
パリ通信 4 で記述したパリ協定案バージョン 2 と基本的に変わっていません。
発効要件(21 条)
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通信 4 で書いたように、12 月 9 日夜 8 時から開催されたパリ委員会で、日本の丸川環境
大臣が排出量の割合がなくなったことに異議をとなえたこともあり、発効要件が 55 ヵ国及
び世界の排出量の 55%を超える国の批准が要件になっています。
事前協議
COP 決定のパラグラフ 23 と 24 は、2025 年目標を提出している国(アメリカやブラジル
など)も、2030 年目標(日本や EU など)を提出している国も、2020 年までに新しい削減・
行動目標を出すよう要請し、関連するパリ協定の会議の 9~12 ヵ月前までに条約事務局に
提出することを義務づけています(パラグラフ 25)
。これは、新たに提出される各国の削減・
行動目標を事前に協議・検討することを意図していると思われます。リマの COP20 の前に
アメリカなどが提案していた「事前協議(ex-ante)手続」が復活しています。
CASA 声明
CASA は 12 月 12 日 COP21 の会場から以下の声明を発表しました。
COP21・CMP11 CASA 声明
人類の未来につながるパリ協定に合意!
2015 年 12 月 12 日(フランス・パリにて)
地球環境市民会議(CASA)
11 月 30 日から開催されていた気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(COP21)と京都議定
書第 11 回締約国会合(CMP11)は、パリ時間 12 月 12 日午後 7 時 26 分、パリ協定(Paris
Agreement)と COP 決定を採択して終了した。
パリ協定は、批准手続と発効要件を備えたことで、明確に法的拘束力を持つことになっ
た。工業化前からの平均気温の上昇を 2℃未満に保持し、1.5℃未満に向かう努力を継続す
る長期目標に合意し、現在提出されている各国の削減目標・行動(約束草案)を 5 年ごと
に見直す仕組みも入った。すでに起こっている深刻な地球温暖化の影響に対応するロス・
アンド・ダメージ(損失と損害)についてもパリ協定に独立した条項が設けられた。
COP 決定では、資金について、
「2020 年までに年 1000 億ドル」の資金供与を超える数値
目標を、2025 年までに作ることになった。
なによりも COP21 に向けて、185 の締約国から削減目標・行動が提出されたことは、今後
につながるものとして評価したい。
今回のパリ協定や COP 決定が積み残した課題も多いが、
未来につながる合意ができた。COP21 は基本的にその任務を果たしたと言ってよい。
日本政府は、京都議定書第 2 約束期間の法的拘束力ある目標を拒否し、国際公約となっ
ていた 1990 年比 25%削減の 2020 年目標を放棄し、増加目標に後退させるなど、交渉を妨
害してきた。また、日本政府の約束草案は、2030 年に 1990 年比で 18%削減という先進国
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では最低レベルで、その前提となっている長期エネルギー需給見通しは、石炭火力を増加
させるなど、地球温暖化対策に逆行する内容になっている。パリ協定は、長期目標に向け
て各国が国内対策を強化することを求めている。日本政府は、パリ協定を速やかに批准し、
2℃未満に向けた国内対策の充実・強化に直ちにとりかかるべきである。
2011 年の COP17 から 4 年にわたる ADP での交渉の結果、パリ協定が合意されたことを喜
びたい。しかし一方で、10 月 1 日までに国連に提出された約束草案では 2℃目標には足り
ず、2100 年におよそ 2.7℃上昇すると予測されている。
このパリ合意は、人類の健全な生存のために必要な 2℃未満そして 1.5℃未満への道への
第 1 歩であることを確認しなければならない。
会議場から
COP21 は、思ったより早く決着したというのが率直な感想です。パリ時間 12 月 10 日(木)
午後 9 時に出されたパリ協定案(バージョン 2)は、多くのブラケット(括弧)がとれ、オ
プションも減っていましたが、資金の条項については先進国と路上国の両方から異議が出
ているとか、ロス・アンド・ダメージ(損失と損害)の項目はバージョン 1 と変わってお
らず、協議が難航していることが予想されました。12 月 12 日午前 9 時からパリ委員会を開
催するとアナウンスされていたことから、
「12 日午前 9 時からのパリ委員会で途中経過が報
告され、その後再び非公開のインダバソリューション(締約国の間の意見の違いを超えて、
妥協を見出すために『インダバ』スタイルで開催された協議)に戻り、決着は 12 月 12 日
(土)の深夜ないしは 12 月 13 日(日)の早朝になるだろう」と予想していました。パリ
協定が合意されて、正直、ほっとしました。2009 年のコペンハーゲンの COP15 で合意に失
敗し、ここでまた合意に失敗すると、後が大変厳しくなると思っていたからです。午後 7
時 26 分に採択された瞬間から、5 分以上拍手が鳴り止みませんでした。なかには涙ぐんで
いる交渉官もいました。鳴り止まぬ拍手と交渉官の涙は、この交渉がいかに困難であった
かを示しています。このパリ協定は多くの問題を先送りにしています。それでも、合意が
成立したことは、未来につながるものだと喜びたいと思います。
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発行:地球環境市民会議(CASA)
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#これまでの通信は、以下のサイトをご覧ください
http://www.bnet.jp/casa/cop/cop.htm
#CASA の facebook ページ
https://www.facebook.com/ngocasa1988
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