公開特許公報 特開2015-131928

〔実 19 頁〕
公開特許公報(A)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-131928
(P2015−131928A)
(43)公開日 平成27年7月23日(2015.7.23)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
C09D 11/101
(2014.01)
C09D
11/101
4D075
C09D
7/12
(2006.01)
C09D
7/12
4F100
C09D 201/00
(2006.01)
C09D
201/00
4J038
B32B 27/18
(2006.01)
B32B
27/18
Z
4J039
B32B 27/16
(2006.01)
B32B
27/16
審査請求 未請求
(21)出願番号
特願2014-5318(P2014-5318)
(22)出願日
平成26年1月15日(2014.1.15)
請求項の数3
OL (全27頁) 最終頁に続く
(71)出願人 000001100
株式会社クレハ
東京都中央区日本橋浜町三丁目3番2号
(74)代理人 110001070
特許業務法人SSINPAT
(72)発明者 上遠野
正孝
東京都中央区日本橋浜町三丁目3番2号
株式会社クレハ内
(72)発明者 町田
克一
東京都中央区日本橋浜町三丁目3番2号
株式会社クレハ内
Fターム(参考) 4D075 BB26Z BB37Z DA06
EA19
EA21
EB11
DA23
EA17
EB22
EB31
EC07
最終頁に続く
(54)【発明の名称】近赤外線硬化型組成物およびその用途
(57)【 要 約 】
【課題】充分な近赤外線吸収性を有し、かつ透明性に優れ、色調への影響が少ない近赤外
線吸収剤を含有する、インクまたは塗料として用いられる近赤外線硬化型組成物を提供す
ること。
1
【解決手段】本発明の近赤外線硬化型組成物は、少なくとも一般式(1)[式中、R は
、−CH2 CH2 −R
1 1
で表される1価の基であり、R
1 1
は水素原子、アルキル基またはフ
ッ素化アルキル基を示す。]で表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線吸収剤と、樹脂お
よび重合することによりポリマーとなる化合物から選択される少なくとも一種の成分とを
含み、インクまたは塗料として用いられる。
【選択図】なし
( 2 )
JP
1
2015-131928
A
2015.7.23
2
【特許請求の範囲】
には紫外線吸収剤が用いられるが、紫外線硬化型のイン
【請求項1】
クや塗料に紫外線吸収剤を用いた場合には、紫外線照射
少なくとも下記一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩
による硬化が阻害されるという問題があった。
を含む近赤外線吸収剤と、
【0004】
樹脂および重合することによりポリマーとなる化合物か
これらの問題を解決するために、紫外線ではなく、近赤
ら選択される少なくとも一種の成分とを含むインクまた
外線の照射により硬化する近赤外線硬化型のインクや塗
は塗料として用いられる近赤外線硬化型組成物。
料が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【化1】
近赤外線硬化型のインクや塗料には、一般に近赤外線吸
収剤が含まれるが、充分な近赤外線吸収性を有し、かつ
10
インクや塗料中に含有させた際に色調への影響が少ない
近赤外線吸収剤を用いた近赤外線硬化型のインクや塗料
は知られておらず、いまだ改良が望まれていた。
【0005】
また、特定の酸化タングステンを、近赤外線の熱入力量
1
[式中、R は、−CH2 CH2 −R
基であり、R
1 1
1 1
で表される1価の
を増加させるために用いることが提案されている(例え
は水素原子、炭素数1∼20のアルキル
ば特許文献4参照)。
基、または炭素数1∼20のフッ素化アルキル基を示す
【先行技術文献】
。]
【特許文献】
【請求項2】
【0006】
請求項1に記載の近赤外線硬化型組成物を基材上に印刷 20
【特許文献1】特開2009−57548号公報
または塗布し、次いで該近赤外線硬化型組成物に近赤外
【特許文献2】特開2012−140516号公報
線を照射し、硬化させることにより得られる積層物。
【特許文献3】特表2007−526379号公報
【請求項3】
【特許文献4】特表2011−503274号公報
請求項1に記載の近赤外線硬化型組成物を、近赤外線を
【発明の概要】
用いた光造形法により、射出、硬化することにより得ら
【発明が解決しようとする課題】
れる立体造形物。
【0007】
【発明の詳細な説明】
本発明は、充分な近赤外線吸収性を有し、かつ透明性に
【技術分野】
優れる近赤外線吸収剤を含有する、インクまたは塗料と
【0001】
して用いられる近赤外線硬化型組成物を提供することを
本発明は、近赤外線硬化型組成物およびその用途に関し 30
目的とする。
、詳しくはインクまたは塗料として用いられる近赤外線
【課題を解決するための手段】
硬化型組成物およびその用途に関する。
【0008】
【背景技術】
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意研究を重ねた
【0002】
結果、特定の銅塩を含む近赤外線吸収剤を含む近赤外線
近年、インクや塗料として、紫外線を照射することによ
硬化型組成物は、該特定の銅塩を含む近赤外線吸収剤が
り硬化する紫外線硬化型インク、紫外線硬化型塗料が用
透明性に優れるため、インクまたは塗料として好適に用
いられている(例えば特許文献1、2参照)。
いることが可能であることを見出し、本発明を完成させ
紫外線硬化型のインクや塗料は、加熱することなく印刷
た。
や塗布が可能であるため、近年多くの分野で実用化され
ている。
【0009】
40
すなわち本発明のインクまたは塗料として用いられる近
【0003】
赤外線硬化型組成物は、少なくとも下記一般式(1)で
しかしながら、紫外線硬化型のインクや塗料は、硬化速
表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線吸収剤と、樹脂
度の膜厚や色に対する依存性が高く、改善が望まれてい
および重合することによりポリマーとなる化合物から選
た。
択される少なくとも一種の成分とを含む。
また、紫外線硬化型のインクや塗料として、紫外線の照
【0010】
射によりラジカル重合が行われる組成物を用いた場合に
【化1】
は、酸素が存在すると重合(硬化)が阻害され、紫外線
の照射によりカチオン重合が行われる組成物を用いた場
合には、その重合中に強酸が発生するという問題があっ
た。また、一般に印刷面や塗布面の耐光性を高めるため 50
( 3 )
JP
3
A
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4
【0011】
【0019】
1
[式中、R は、−CH2 CH2 −R
基であり、R
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1 1
1 1
1
で表される1価の
1 1
[式中、R は、−CH2 CH2 −R
は水素原子、炭素数1∼20のアルキル
基であり、R
1 1
で表される1価の
は水素原子、炭素数1∼20のアルキル
基、または炭素数1∼20のフッ素化アルキル基を示す 10
基、または炭素数1∼20のフッ素化アルキル基を示す
。]
。]
本発明の積層物は、前記近赤外線硬化型組成物を基材上
前記一般式(1)におけるR
に印刷または塗布し、次いで該近赤外線硬化型組成物に
チル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基
近赤外線を照射し、硬化させることにより得られる。
、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デ
【0012】
シル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テ
本発明の立体造形物は、前記近赤外線硬化型組成物を、
トラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプ
近赤外線を用いた光造形法により、射出、硬化すること
タデシル基、オクタデシル基、パーフルオロエチル基、
により得られる。
パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パー
【発明の効果】
フルオロへキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフ
【0013】
20
1 1
としては、水素原子、メ
ルオロデシル基等が挙げられる。
本発明の近赤外線硬化型組成物は、充分な近赤外線吸収
【0020】
性を有し、かつ透明性に優れる近赤外線吸収剤を含有す
近赤外線吸収剤を製造する際には、前記一般式(1)に
るためインクまたは塗料として用いられる。
おける前記R
【図面の簡単な説明】
あると、分散性が低下する傾向があるため、R
【0014】
は、水素原子、炭素数が1∼10のアルキル基または炭
【図1】実施例7で得られた積層体の透過光スペクトル
素数が1∼10のフッ素化アルキル基であることが好ま
である。
しい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
【0015】
本発明に用いられる近赤外線吸収剤は、少なくとも一般
次に本発明について具体的に説明する。
30
1 1
が炭素数の大きな基、分子鎖の長い基で
1 1
として
式(1)で表されるホスホン酸銅塩を含んでおり、一般
本発明の近赤外線硬化型組成物は、少なくとも下記一般
式(1)で表されるホスホン酸銅塩のみからなる近赤外
式(1)で表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線吸収
線吸収剤であってもよく、一般式(1)で表されるホス
剤と、樹脂および重合することによりポリマーとなる化
ホン酸銅塩および他の成分からなる近赤外線吸収剤であ
合物から選択される少なくとも一種の成分とを含み、イ
ってもよい。
ンクまたは塗料として用いられる。
【0022】
【0016】
一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩および他の成分
〔少なくとも一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩を
からなる近赤外線吸収剤としては、例えば一般式(1)
含む近赤外線吸収剤〕
で表されるホスホン酸銅塩の製造の際に分散剤を用いる
本発明の近赤外線硬化型組成物は、少なくとも下記一般
ことにより得られる、一般式(1)で表されるホスホン
式(1)で表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線吸収 40
酸銅塩および分散剤からなる近赤外線吸収剤、一般式(
剤を含有する。
1)で表されるホスホン酸銅塩からなる微粒子あるいは
【0017】
一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩および分散剤か
なお、本発明において、少なくとも下記一般式(1)で
らなる微粒子が樹脂で被覆された近赤外線吸収剤、一般
表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線吸収剤を、単に
式(1)で表されるホスホン酸銅塩からなる微粒子ある
近赤外線吸収剤とも記す。
いは一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩および分散
【0018】
剤からなる微粒子がポリシロキサンで被覆された近赤外
【化2】
線吸収剤等を用いることができる。なお、前記樹脂やポ
リシロキサンで被覆された近赤外線吸収剤を、被覆され
たホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤とも記す。な
50
お、被覆されたホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤
( 4 )
JP
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5
6
は、ホスホン酸銅塩が樹脂やポリシロキサンで覆われて
般式(1)で表わされるホスホン酸銅塩以外の銅塩であ
いるため、樹脂および重合することによりポリマーとな
ればよい。前記銅塩としては例えば、無水酢酸銅、無水
る化合物から選択される少なくとも一種の成分や、他の
蟻酸銅、無水ステアリン酸銅、無水安息香酸銅、無水エ
成分のホスホン酸銅塩への影響を抑制することが可能で
チルアセト酢酸銅、無水ピロリン酸銅、無水ナフテン酸
ある。このため、樹脂および重合することによりポリマ
銅、無水クエン酸銅等の有機酸の銅塩、該有機酸の銅塩
ーとなる化合物から選択される少なくとも一種の成分や
の水和物もしくは水化物;酸化銅、塩化銅、硫酸銅、硝
、他の成分として、一般式(1)で表されるホスホン酸
酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩、該無機酸の銅塩
銅塩と反応性を有する成分を用いる場合には、被覆され
の水和物もしくは水化物;水酸化銅が挙げられる。なお
たホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤を用いること
が好ましい。
、銅塩としては、一種単独で用いても、二種以上を用い
10
てもよい。
【0023】
【0028】
本発明に用いられる近赤外線吸収剤の製造方法について
銅塩としては、無水酢酸銅、酢酸銅1水和物が、溶解性
以下説明する。
や副生成物の除去の点から好ましく用いられる。
本発明に用いられる近赤外線吸収剤が、被覆されたホス
前記一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩を製造する
ホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤以外の場合、すなわ
際には、好ましくは分散剤が用いられる。分散剤を用い
ち、被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線
ると、一般式(1)で表わされるホスホン酸銅塩の分散
吸収剤、例えば一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩
性が向上するため好ましい。前記分散剤としては、リン
からなる近赤外線吸収剤、一般式(1)で表されるホス
酸エステル化合物が挙げられ、例えば一般式(3a)で
ホン酸銅塩および分散剤からなる近赤外線吸収剤の場合
表されるリン酸エステル化合物および一般式(3b)で
には、例えば以下の方法で製造することができる。
20
表されるリン酸エステル化合物から選択される少なくと
【0024】
も1種のリン酸エステル化合物、該リン酸エステル化合
一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩の製造方法とし
物中のリン酸、すなわち水酸基を塩基で中和した化合物
ては、溶媒中で、下記一般式(2)で表わされるホスホ
が挙げられる。なお、中和に用いる塩基としては水酸化
ン酸化合物と、後述の銅塩とを、好ましくは分散剤存在
リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化
下で混合し、反応混合物を得る工程(以下、反応工程と
セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が
も記す)、該反応混合物中の溶媒を除去することにより
挙げられる。
ホスホン酸銅塩からなる微粒子を得る工程(以下、溶媒
【0029】
除去工程とも記す)
【化4】
を有する方法が挙げられる。
【0025】
30
【化3】
【0026】
1
[式中、R は、−CH2 CH2 −R
基であり、R
1 1
1 1
で表される1価の
は水素原子、炭素数1∼20のアルキル 40
基、または炭素数1∼20のフッ素化アルキル基を示す
【0030】
[式中、R
2 1
2 2
、R およびR
2 3
は、−(CH2 CH2 O)
5
。]
n
前記一般式(2)で表わされるホスホン酸化合物におけ
あり、R は、炭素数6∼25のアルキル基又は炭素数
るR
1 1
は、前述の一般式(1)におけるR
1 1
と同様であ
R で表される1価の基であり、nは4∼65の整数で
5
6∼25のアルキルフェニル基を示す。ただし、R
2 2
2 3
2 1
、
る。
R およびR
は、それぞれ同一でも異なっていてもよ
【0027】
い。]
なお、一般式(2)で表されるホスホン酸化合物として
前記一般式(3a)で表されるリン酸エステル化合物お
は、一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
よび前記一般式(3b)で表されるリン酸エステル化合
前記銅塩としては、2価の銅イオンを供給することが可
物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合
能な銅塩が通常用いられる。前記銅塩としては、前記一 50
物において、R
2 1
、R
2 2
2 3
およびR は、−(CH2 CH2
( 5 )
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8
O)n R で表される1価の基(ポリオキシアルキル基)
テルとしては、例えばリン酸トリエステルが挙げられ、
である。nは4∼65の整数であり、6∼45の整数で
該リン酸トリエステルは、単独で用いても、前記特定の
あるとより好ましい。nが4未満である場合には、本発
リン酸エステル化合物と共に用いてもよい。
明の近赤外線硬化型組成物を用いて積層物や立体造形物
【0036】
を得た際に、近赤外線吸収剤が近赤外線硬化型組成物の
前記一般式(3a)で表されるリン酸エステル化合物お
色調に影響を与えることがある。また、nが65を超え
よび前記一般式(3b)で表されるリン酸エステル化合
ると、近赤外線吸収剤が近赤外線硬化型組成物の色調に
物から選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合
影響を与えることを防止するために必要なリン酸エステ
物としては、市販されているリン酸エステル化合物、例
5
ル化合物の量が増え、コスト高の原因となることがある
。
えばDLP−8、DLP−10、DDP−8、DDP−
10
【0031】
10、TDP−8、TDP−10(以上、日光ケミカル
ズ(株)製)や、プライサーフA219B、プライサー
5
また、R は、炭素数6∼25のアルキル基または炭素
フA210B(以上、第一工業製薬(株)製)等を用い
数6∼25のアルキルフェニル基であり、炭素数6∼2
ることもできる。また、これらのリン酸エステル化合物
5のアルキル基であることが好ましく、12∼20のア
中のリン酸、すなわち水酸基を適当な塩基で中和した化
5
ルキル基であることがより好ましい。R が、炭素数6
合物を用いることもできる。中和に使用する塩基として
未満の基であると、近赤外線吸収剤が近赤外線硬化型組
は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
5
成物の色調に影響を与えることがある。また、R が、
ム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カル
炭素数25を超える基であると、近赤外線吸収剤が近赤
シウム等が挙げられる。
外線硬化型組成物の色調に影響を与えることを防止する
【0037】
ために必要なリン酸エステル化合物の量が増え、コスト 20
また、前記一般式(2)で表わされるホスホン酸化合物
高の原因となる。
は、前記銅塩中の銅1モルあたり、0.4モル以上であ
【0032】
ることが好ましく、0.5∼1.5モルであることがよ
前記一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩を得る際に
り好ましく、0.7∼1.2モルであることが特に好ま
は、前記一般式(3a)で表されるリン酸エステル化合
しい。前記範囲内では、積層物や立体造形物の色調や、
物、前記一般式(3b)で表されるリン酸エステル化合
耐熱性が特に優れるため好ましい。前記一般式(2)で
物の少なくとも一方が用いられることが好ましいが、前
表わされるホスホン酸化合物は、前記分散剤1モルあた
記一般式(3a)で表されるリン酸エステル化合物、前
り、5モル以上用いることが好ましく、8∼100モル
記一般式(3b)で表されるリン酸エステル化合物の両
用いることがより好ましく、10∼80モル用いること
方を用いることがより好ましい。
が特に好ましい。5モルを下回ると、近赤外線硬化型組
【0033】
30
成物の、近赤外線の吸収特性が悪化する場合や、耐熱性
前記一般式(3a)で表されるリン酸エステル化合物お
が低下する場合がある。
よび前記一般式(3b)で表されるリン酸エステル化合
【0038】
物を用いると、本発明の近赤外線硬化型組成物を用いて
前記溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコ
製造した積層物や立体造形物の色調や、耐熱性に優れる
ール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルム
傾向があり好ましい。前記一般式(3a)で表されるリ
アミド(DMF)、水等が挙げられ、良好に反応を行う
ン酸エステル化合物、前記一般式(3b)で表されるリ
観点から、エタノール、THFまたはDMFが好ましい
ン酸エステル化合物の両方を用いる場合には、一般式(
。また、反応工程は、好ましくは室温∼60℃、より好
3a)で表されるリン酸エステル化合物と、一般式(3
ましくは20∼40℃の温度条件で、好ましくは0.5
b)で表されるリン酸エステル化合物との割合は、特に
∼50時間、より好ましくは1∼30時間行われる。
限定されないが、通常はモル比((3a):(3b)) 40
【0039】
で10:90∼90:10である。
前記反応工程では、前記一般式(2)で表されるホスホ
【0034】
ン酸化合物と、前記銅塩とが反応し、該反応によって、
また、前記一般式(3a)で表されるリン酸エステル化
前記溶媒に溶解しない微粒子状のホスホン酸銅塩(一般
合物としては、一種単独で用いても、二種以上を用いて
式(1)で表されるホスホン酸銅塩)が生成する。前記
もよく、前記一般式(3b)で表されるリン酸エステル
一般式(3a)で表されるリン酸エステル化合物および
化合物としては、一種単独で用いても、二種以上を用い
一般式(3b)で表されるリン酸エステル化合物から選
てもよい。
択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物は、反
【0035】
応時に良好な分散剤として作用することができるため、
また、リン酸エステル化合物分散剤としては、他のリン
前記ホスホン酸銅塩は分散性が高く保たれ、凝集を抑制
酸エステルを用いることも可能である。他のリン酸エス 50
することができる。
( 6 )
JP
9
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A
2015.7.23
10
【0040】
で製造することができる。
なお、前記反応工程では、前記一般式(2)で表される
【0046】
ホスホン酸化合物と銅塩との反応のみではなく、例えば
まず、一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩からなる
前記一般式(3a)で表されるリン酸エステル化合物お
微粒子あるいは一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩
よび一般式(3b)で表されるリン酸エステル化合物か
および分散剤からなる微粒子が樹脂で被覆された近赤外
ら選択される少なくとも1種のリン酸エステル化合物と
線吸収剤の製造方法について説明する。
、銅塩の一部とが反応してもよい。また、原料の一部が
【0047】
反応せずに残存していてもよい。
前記樹脂で被覆された近赤外線吸収剤は、前記被覆され
【0041】
ていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤からな
なお、前記ホスホン酸銅塩からなる微粒子の製造方法で 10
る微粒子を樹脂で被覆することにより得ることが可能で
は、通常、前記反応混合物から、少なくとも前記溶媒の
ある。該近赤外線吸収剤を製造するためには、樹脂を得
一部を除去することにより、ホスホン酸銅塩からなる微
るために以下のモノマーが通常は用いられる。
粒子を得る。
【0048】
【0042】
前記樹脂としては、成形性の観点から、モノマーの少な
溶媒除去工程では、反応混合物中から、少なくとも前記
くとも一部として単官能性モノマーを用いて形成される
溶媒の一部を除去する。溶媒除去工程では、溶媒以外に
ことが好ましく、単官能性モノマーとしては、例えば単
も、反応混合物中の液体成分を合わせて除去してもよい
官能芳香族ビニル化合物、単官能(メタ)アクリル酸エ
。
ステル、α‐オレフィンが挙げられ、これらは一種で用
溶媒除去工程では、通常反応混合物を加熱することによ
いても、二種以上で用いてもよい。
り、少なくとも前記溶媒の一部を除去するが加熱条件は 20
【0049】
、通常、室温∼70℃であり、好ましくは40∼60℃
前記単官能芳香族ビニル化合物としては例えば、スチレ
である。
ン、α‐メチルスチレン、エチルスチレン、tert−
また、溶媒除去工程は、常圧下で行ってもよく、減圧下
ブチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、
で行ってもよい。減圧下で溶媒除去工程を行う場合には
メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ヒドロキシメチル
、加熱を行わなくてもよい場合や、加熱温度が低くても
スチレンが挙げられる。
よい場合がある。
【0050】
【0043】
前記単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば
また、溶媒除去工程を行った後に、ホスホン酸銅塩から
、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル
なる微粒子中に含まれる不純物の除去を目的として、ホ
アクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアク
スホン酸銅塩からなる微粒子を、分散媒に分散した後に 30
リレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアク
、該分散媒を除去する工程を設けてもよい。
リレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチ
【0044】
ルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2
前記ホスホン酸銅塩は通常、平均粒径が1∼1000n
−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメ
mである。平均粒径が1∼1000nmであれば、近赤
タクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメ
外線硬化型組成物に近赤外線吸収剤が偏在することなく
タクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ラウリ
分散することが可能である。平均粒径としては、樹脂お
ルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシ
よび重合することによりポリマーとなる化合物から選択
ルメタクリレート、n−ステアリルアクリレート、n−
される少なくとも一種の成分への分散性や近赤外線硬化
ステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート
型組成物の色調に悪影響を与えない観点から、5∼30
0nmであることがより好ましい。
、イソボルニルメタクリレート、ベンジルアクリレート
40
、ベンジルメタクリレート、メトキシエチルアクリレー
【0045】
ト、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルア
次に、本発明に用いられる近赤外線吸収剤が、被覆され
クリレート、エトキシエチルメタクリレート、フェノキ
たホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤である場合、
シエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレー
例えば一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩からなる
トが挙げられる。前記単官能(メタ)アクリル酸エステ
微粒子あるいは一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩
ルとしてはメチルメタクリレート、n−ブチルメタクリ
および分散剤からなる微粒子が樹脂で被覆された近赤外
レート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が好まし
線吸収剤、一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩から
い。
なる微粒子あるいは一般式(1)で表されるホスホン酸
【0051】
銅塩および分散剤からなる微粒子がポリシロキサンで被
前記α−オレフィンとしては、通常炭素数4∼18のα
覆された近赤外線吸収剤の場合には、例えば以下の方法 50
‐オレフィンが用いられ、例えば、1−ブテン、1−プ
( 7 )
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ロペン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等が
重合を行い、ホスホン酸銅塩からなる微粒子および樹脂
挙げられる。
からなる重合物を得て、必要により重合物を粉砕するこ
【0052】
とにより、樹脂で被覆された近赤外線吸収剤が得られる
また、前記樹脂としては、近赤外線吸収剤の耐熱性の観
。
点から、モノマーの少なくとも一部として架橋剤を用い
【0058】
て形成されることが好ましい。
モノマーの重合法としては、特に限定はなく、塊状重合
架橋剤とは、一分子中に少なくとも2つ以上、ラジカル
、懸濁重合、乳化重合等の重合法によって行われる。こ
重合可能な官能基をもつ化合物であり、例えば多官能芳
れらの中でも、重合が容易な塊状重合が好ましい。なお
香族ビニル化合物、多官能(メタ)アクリル酸エステル
、塊状重合では得られる重合物が、バルク(塊)の形で
が挙げられ、これらは一種で用いても、二種以上で用い 10
得られるため、該重合物を粉砕することにより、樹脂で
てもよい。
被覆された近赤外線吸収剤が得られる。
【0053】
【0059】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、
樹脂で被覆された近赤外線吸収剤を製造する方法との具
「メタクリル酸」および「アクリル酸」を意味する。
体例としては、前述の方法で得られた被覆されていない
前記多官能芳香族ビニル化合物としては、ジビニルベン
ホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤の微粒子をモノ
ゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼン
マーに分散させ、銅塩含有モノマーを得て、前記銅塩含
が挙げられる。
有モノマーを塊状重合し、重合物を得て、前記重合物を
【0054】
粉砕することにより、粉末状の樹脂で被覆された近赤外
前記多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば
線吸収剤を得る方法が挙げられる。
、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレング 20
【0060】
リコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジ
前記銅塩含有モノマーを得る方法としては、被覆されて
メタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレー
いないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤からなる
ト、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−
微粒子を分散媒に分散し、分散液を得て、該分散液にモ
ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジ
ノマーを添加した後に、分散媒を除去することにより銅
オールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリ
塩含有モノマーを得る方法が挙げられる。
ロキシエトキシフェニル)プロパン、トリシクロデカン
【0061】
ジメタノールジメタクリレート、トリメチロールプロパ
分散媒としては、前記ホスホン酸銅塩からなる微粒子を
ントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタク
分散することが可能なものが用いられ、通常は低沸点の
リレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが
有機物が用いられ、例えば塩化メチレン、アセトン、メ
挙げられる。
30
タノール、クロロフォルム等が用いられる。
【0055】
【0062】
架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート
前記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線
、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等が好ま
吸収剤からなる微粒子を分散媒に分散させる方法として
しい。
は、例えば分散媒を前記被覆されていないホスホン酸銅
前記樹脂としては、通常はモノマーとして架橋剤と、単
塩からなる近赤外線吸収剤からなる微粒子に添加し、超
官能(メタ)アクリル酸エステルとを用いて形成される
音波照射、ホモジナイザー、攪拌、加温攪拌等の方法に
ことが好ましい。
よって、前記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる
【0056】
近赤外線吸収剤からなる微粒子を分散媒中に分散させる
前記樹脂を製造する際に用いるモノマー100質量部あ
方法が挙げられる。
たり、架橋剤を1質量部以上、単官能性モノマーを99 40
【0063】
質量部以下用いることが好ましく、架橋剤を5∼99質
次いで分散液に前述のモノマーを添加することにより、
量部、単官能性モノマーを1∼95質量部用いることが
モノマーを好ましくは溶解させる。次いで分散媒を除去
より好ましく、架橋剤を10∼90質量部、単官能性モ
することにより、前記被覆されていないホスホン酸銅塩
ノマーを10∼90質量部用いることが特に好ましい。
からなる近赤外線吸収剤からなる微粒子が分散した、銅
【0057】
塩含有モノマーを得ることができる。
一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩からなる微粒子
【0064】
あるいは一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩および
分散媒を除去する方法としては、特に限定はなく、例え
分散剤からなる微粒子が樹脂で被覆された近赤外線吸収
ば減圧による分散媒の除去、加温と減圧の組み合わせに
剤の製造方法としては、特に限定はないが例えば、前述
よる除去等が挙げられる。
のホスホン酸銅塩からなる微粒子存在下で、モノマーの 50
なお、分散液にモノマーを添加する場合には、モノマー
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の一部を分散液に添加し、分散媒の除去を行った後に、
ることがより好ましい。前記範囲内では、本発明に用い
残りのモノマーをさらに添加し、混合を行ってもよい。
る近赤外線吸収剤が、透明性に優れるため好ましい。
【0065】
【0071】
このようにして、被覆されていないホスホン酸銅塩から
なお、本発明において、樹脂で被覆されているとは、被
なる近赤外線吸収剤からなる微粒子がモノマーに分散し
覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤
た銅塩含有モノマーを得ることができる。なお、被覆さ
からなる微粒子の表面の少なくとも一部が樹脂で覆われ
れていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤から
ていることを意味し、樹脂で被覆された近赤外線吸収剤
なる微粒子と、モノマーとの使用量の割合としては、被
としては、被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近
覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤
赤外線吸収剤からなる微粒子の表面全体が樹脂で覆われ
からなる微粒子1質量部に対して、モノマーを0.01 10
ていることが好ましい。
∼20質量部用いることが好ましく、0.1∼15質量
【0072】
部用いることがより好ましい。モノマーの量が0.01
次に一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩からなる微
質量部より少ないとホスホン酸銅塩からなる微粒子を被
粒子あるいは一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩お
覆することができない場合があり、モノマーの量が20
よび分散剤からなる微粒子がポリシロキサンで被覆され
質量部よりも多いと、近赤外線吸収剤と共にもちいる樹
た近赤外線吸収剤の製造方法について説明する。
脂および重合することによりポリマーとなる化合物から
【0073】
選択される少なくとも一種の成分の物性に影響を与える
前記ポリシロキサンで被覆された近赤外線吸収剤は、前
恐れがある。
記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸
【0066】
収剤からなる微粒子をポリシロキサンで被覆することに
なお、近赤外線吸収剤を製造する際には、前述のように 20
より得ることが可能である。
銅塩含有モノマーを塊状重合する方法が挙げられるが、
【0074】
塊状重合では、モノマーを好適に重合するために、通常
前記近赤外線吸収剤を構成する、ポリシロキサンとして
はラジカル重合開始剤を、モノマーを分散液に添加する
は、前記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤
のと同時、あるいはモノマーを添加した後に添加し、ラ
外線吸収剤からなる微粒子を被覆することが可能であれ
ジカル重合開始剤を含む銅塩含有モノマーを得ることが
ばよく、特に限定は無い。
好ましい。
【0075】
【0067】
ポリシロキサンとしては、アルコキシシラン、アルコキ
前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定はなく、例
シシランの加水分解物、およびこれらの縮合物から選択
えば有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開
される少なくとも1種のケイ素系化合物から形成される
始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤は、通 30
ことが好ましい。
常モノマー100質量部に対して、0.3∼5.0質量
【0076】
部用いられる。
前記アルコキシシランは、一種単独で用いても、二種以
【0068】
上を用いてもよい。アルコキシシランは一般にケイ素原
前記銅塩含有モノマーを塊状重合し重合物を得る際には
子にアルコキシ基が結合した構造を有しているが、アル
、例えばモールドや試験管等に前記銅塩含有モノマーを
コキシシランとしては、ケイ素原子に四つのアルコキシ
注入し、通常は重合温度20∼200℃、重合時間1∼
基が結合した四級のアルコキシシラン、三つのアルコキ
40時間の条件で重合が行われる。
シ基が結合した三級のアルコキシシラン、二つのアルコ
【0069】
キシ基が結合した二級のアルコキシシランの何れを用い
前記塊状重合により得られた重合物を、粉砕することに
てもよい。また、一つのアルコキシ基が結合した一級の
より樹脂で被覆された近赤外線吸収剤を得ることができ 40
アルコキシシランを、アルコキシシランの一部として用
る。前記重合物を粉砕する方法としては、特に限定はな
いてもよい。
いが例えば、サンドミル、ジェットミル、ボールミル、
【0077】
アトライター、振動ミル等を用いて行うことができる。
前記アルコキシシランの具体例としては、テトラメトキ
【0070】
シシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラ
樹脂で被覆された近赤外線吸収剤は、例えば前述の方法
ン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシ
で製造することが可能であり、前記被覆されていないホ
ラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシ
スホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤からなる微粒子が
シラン、ブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエト
樹脂で被覆された粉末である。得られた樹脂で被覆され
キシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルト
た近赤外線吸収剤の平均粒径としては、0.05∼10
リエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチ
0μmであることが好ましく、0.05∼50μmであ 50
ルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエ
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チルジエトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシ
ル、アトライター、振動ミル等を用いて反応物を粉砕す
シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ることができる。
、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−
【0083】
メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ
前記ポリシロキサンで被覆された近赤外線吸収剤を得る
−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、
ために用いる、前記被覆されていないホスホン酸銅塩か
γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、
らなる近赤外線吸収剤からなる微粒子と、ケイ素系化合
γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、
物との使用量の割合としては、前記ケイ素系化合物が、
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプ
前記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線
ロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。アルコキ
吸収剤からなる微粒子中の銅1質量部に対して、SiO
シシランとしては、テトラメトキシシラン等が好ましい 10
2
。
.5∼15質量部用いることがより好ましい。前記ケイ
【0078】
素系化合物の使用量が前記範囲を下回ると被覆が不充分
一般にアルコキシシランは、酸、アルカリ存在下では容
で固体として得られず実施に適さない恐れがあり、前記
易に加水分解・縮合反応が起こる。またアルコキシシラ
範囲を上回ると作業性の低下および赤外線吸収効果を得
ンの加水分解物やアルコキシシランは加熱されると縮合
るために必要な添加量が多くなり実施に適さない恐れが
反応が起こる。ケイ素系化合物としては、アルコキシシ
ある。
ラン、アルコキシシランの加水分解物、およびこれらの
【0084】
縮合物の混合物を用いてもよい。
なお、SiO2 換算の質量部とは、前記ケイ素系化合物
【0079】
としては様々な構造の化合物を用いることが可能である
特に、取り扱いが容易なことから縮合物を用いることが 20
が、ケイ素系化合物が有するケイ素原子の量を求め、ケ
好ましい。
イ素系化合物が、該量のケイ素原子を有する二酸化ケイ
前記縮合物としては、市販品を用いてもよい。市販品と
素であると仮定した場合の質量部である。
しては、メチルシリケート51、メチルシリケート53
【0085】
A、エチルシリケート40、エチルシリケート48(コ
前記ポリシロキサンで被覆された近赤外線吸収剤は、例
ルコート(株)製)、Mシリケート51、シリケート4
えば前述の方法で製造することが可能であり、前記被覆
0、シリケート45(多摩化学工業(株)製)、等が挙
されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤か
げられる。
らなる微粒子がポリシロキサンで被覆された粉末である
【0080】
。得られたポリシロキサンで被覆された近赤外線吸収剤
前記ポリシロキサンで被覆された近赤外線吸収剤は、前
の平均粒径としては、0.01∼100μmであること
記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸 30
が好ましく、0.03∼50μmであることがより好ま
収剤からなる微粒子がポリシロキサンで被覆された粉末
しく、0.05∼1μmが特に好ましい。前記範囲内で
であり、その製造方法としては特に限定は無いが、例え
は、本発明に用いる近赤外線吸収剤が、透明性に優れる
ば、前記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤
ため好ましい。
外線吸収剤からなる微粒子存在下で、前記ケイ素系化合
【0086】
物を加水分解・縮合することによりポリシロキサンとす
なお、本発明において、ポリシロキサンで被覆されてい
ることにより、前記被覆されていないホスホン酸銅塩か
るとは、前記被覆されていないホスホン酸銅塩からなる
らなる近赤外線吸収剤およびポリシロキサンからなる反
近赤外線吸収剤からなる微粒子の表面の少なくとも一部
応物を得て、該反応物を粉砕することにより、前記ポリ
がポリシロキサンで覆われていることを意味し、ポリシ
シロキサンで被覆された近赤外線吸収剤を得ることがで
きる。
換算で0.3∼20質量部用いることが好ましく、0
ロキサンで被覆された近赤外線吸収剤としては、前記被
40
覆されていないホスホン酸銅塩からなる近赤外線吸収剤
【0081】
からなる微粒子の表面全体がポリシロキサンで覆われて
加水分解・縮合するための反応条件としては、通常は1
いることが好ましい。
0∼250℃、より実施に対して好ましいのは室温∼1
【0087】
00℃である。また、反応を加速させるために、酸、塩
〔樹脂および重合することによりポリマーとなる化合物
基などの触媒を用いてもよい。また、乾燥を行う際には
から選択される少なくとも一種の成分〕
、通常は10∼250℃、好ましくは50℃∼200℃
本発明の近赤外線硬化型組成物は、樹脂および重合する
で行われる。
ことによりポリマーとなる化合物から選択される少なく
【0082】
とも一種の成分を含む。
また、反応物を粉砕する方法としては、特に限定は無い
【0088】
が、メノウ乳鉢、サンドミル、ジェットミル、ボールミ 50
前記樹脂としては、一般にインクや塗料に含まれている
( 10 )
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ものであればよく、特に限定はなく、熱硬化性樹脂を用
【0094】
いてもよく、熱可塑性樹脂を用いてもよい。なお、本発
エチレン系アイオノマーとしては、エチレン・不飽和カ
明の近赤外線熱硬化性組成物をインクとして用いる場合
ルボン酸共重合体のアイオノマーが透明性と強靭性に優
には、通常は熱可塑性樹脂は用いられない。
れるため好適に用いられる。前記エチレン・不飽和カル
【0089】
ボン酸共重合体は、少なくともエチレン由来の構成単位
前記熱硬化性樹脂としては例えば、エポキシ樹脂、ウレ
および不飽和カルボン酸由来の構成単位を有する共重合
タン樹脂、ポリアロマティック樹脂、アクリル樹脂、ユ
体であり、他のモノマー由来の構成単位を有していても
リア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノ
よい。
ール樹脂、エステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン
樹脂が挙げられる。
【0095】
10
前記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリ
【0090】
ル酸、マレイン酸等が挙げられ、アクリル酸、メタクリ
前記熱可塑性樹脂としては、酢酸ビニル樹脂系(PVA
ル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
c)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレン
前記他のモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタ
酢酸ビニル樹脂(EVA)、塩化ビニル樹脂(PVC)
クリル酸エステル、1−ブテン等が挙げられる。
、アクリル樹脂(PA)、ポリアミド、セルロース樹脂
【0096】
、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレン(P
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、該
S)、シアノアクリレート樹脂、ポリビニルアセタール
共重合体が有する全構成単位を100モル%とすると、
樹脂、ポリオレフィン樹脂、アイオノマー樹脂、アクリ
エチレン由来の構成単位を75∼99モル%有すること
ロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、エ
が好ましく、78∼97モル%有することがより好まし
ステル樹脂、PLA樹脂(ポリ乳酸)が挙げられる。
20
く、不飽和カルボン酸由来の構成単位を1∼25モル%
【0091】
有することが好ましく、3∼22モル%有することがよ
本発明の近赤外線硬化型組成物は、印刷または塗布され
り好ましい。前記範囲内では、引張物性等の機械物性に
る基材の材質や、立体造形物の用途、目的に応じて樹脂
優れるため好ましい。
の種類を適宜選ぶことができる。例えば基材がガラスで
【0097】
ある場合には、前記樹脂としてはアイオノマー樹脂、ポ
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは
リビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ア
、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボ
クリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が、良好に
キシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和または架
塗布または印刷する観点から好ましく、基材がポリエチ
橋することにより得られるアイオノマー樹脂であるが、
レンテレフタレートである場合には、ポリオレフィン樹
該カルボキシル基の中和度は、通常は5∼100%であ
脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ 30
り、好ましくは10∼90%である。
樹脂、シリコーン樹脂が、良好に塗布または印刷する観
【0098】
点から好ましい。また、立体造形物を得るためには、樹
本発明に用いられるアイオノマー樹脂におけるイオン源
脂としてアクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂
としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウ
、ABS樹脂、PLA樹脂(ポリ乳酸)を用いることが
ム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシ
好ましい。
ウム、亜鉛等の多価金属が挙げられ、ナトリウム、亜鉛
【0092】
が好ましい。
一般に樹脂としては、アイオノマー樹脂、エチレン酢酸
【0099】
ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリ
本発明に用いられるアイオノマー樹脂の製造方法として
コーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂
は特に限定はなく、従来公知の製造方法によって、製造
、ABS樹脂およびPLA樹脂から選択される少なくと 40
することが可能であり、市販品を用いてもよい。
も一種の樹脂であることが汎用性の観点から好ましい。
前記エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)としては、塗料
【0093】
に使用される分子量、エチレン−酢酸ビニル組成比であ
前記アイオノマー樹脂としては、特に限定は無く、様々
れば、特に限定はない。また、従来公知の製造方法によ
なアイオノマー樹脂を用いることができる。アイオノマ
って、製造することが可能であり、市販品を用いてもよ
ー樹脂としては、エチレン系アイオノマー、スチレン系
い。
アイオノマー、パーフルオロカーボン系アイオノマー、
【0100】
テレケリックアイオノマー、ポリウレタンアイオノマー
前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリ
等が挙げられ、強度、硬度、耐久性、透明性および接着
プロピレン、ポリブテンおよびそれらエチレン、プロピ
性に優れるエチレン系アイオノマーを用いることが好ま
レン、ブテン等の炭素数2∼4のα‐オレフィンの共重
しい。
50
合体等が好ましい。また、ポリオレフィン樹脂としては
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、塗料に含まれているような分子量、組成比であれば、
よい。
特に限定はない。また、従来公知の製造方法によって、
【0105】
製造することが可能であり、市販品を用いてもよい。
前記シリコーン樹脂としては、オルガノポリシロキサン
【0101】
構造を有する樹脂であればよく、特に限定はないが、末
前記ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブ
端にビニル基を有するポリオルガノシロキサン型樹脂等
チラール(PVB)を用いることが、接着性、分散性、
が挙げられる。これらは加熱および触媒の作用により付
透明性、耐熱性、耐光性などの観点から好ましい。
加反応し、硬化物を形成する。また、シリコーン樹脂と
前記ポリビニルアセタール樹脂は、必要な物性に応じて
しては、インクや塗料に含まれているような分子量、組
、二種以上を組み合わせたブレンド物であってもよく、
成比であれば、特に限定はない。また、従来公知の製造
アセタール化時にアルデヒドを組み合わせてアセタール 10
方法によって、製造することが可能であり、市販品を用
化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂で
いてもよい。
あってもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂の分子量
【0106】
、分子量分布およびアセタール化度は特に限定されない
前記アクリル樹脂としては、インクや塗料に従来から用
が、アセタール化度は、一般に40∼85%であり、好
いられていたものが制限なく使用できる。アクリル樹脂
ましい下限は60%、上限は75%である。
とは、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル由来
【0102】
の構成単位を有する樹脂である。前記アクリル酸エステ
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹
ルやメタクリル酸エステルとしては、例えばメチル(メ
脂をアルデヒドによりアセタール化することにより得る
タ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−
ことができる。上記ポリビニルアルコール樹脂は、一般
、i−、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル
にポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られるもので 20
ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アク
あり、鹸化度80∼99.8モル%のポリビニルアルコ
リレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチ
ール樹脂が一般的に用いられる。上記ポリビニルアルコ
ルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシ
ール樹脂の粘度平均重合度は好ましい下限は200、上
クロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(
限は3000である。より好ましい下限は500、上限
メタ)アクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸
は2200である。なお、ポリビニルアルコール樹脂の
の炭素数1∼24のアルキルエステルまたはシクロアル
粘度平均重合度、および鹸化度は、例えば、JISK
キルエステルが挙げられる。
6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて
【0107】
測定することができる。
また、アクリル樹脂は、アクリル酸エステルやメタクリ
【0103】
ル酸エステル以外のモノマー由来の構成単位を有してい
アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、炭素数が 30
てもよく、例えばメトキシメチルアクリレート、メトキ
1∼10のアルデヒド等が挙げられ、より具体的には、
シエチルアクリレート等の炭素数1∼24のアルコキシ
例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド
ル基含有不飽和単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アク
、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルテヒド
リレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
、n−へキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、
ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有
n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルム
不飽和単量体;アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキ
アルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が
シル基含有不飽和単量体;スチレン、(メタ)アクリル
挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−へ
アミド、酢酸ビニルなどに由来する構成単位を有してい
キシルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が好ましい
てもよい。また、アクリル樹脂としては、各種変性が行
。より好ましくは、炭素数が4のブチルアルデヒドであ
る。
われていてもよい。アクリル樹脂は従来公知の製造方法
40
によって、製造することが可能であり、市販品を用いて
【0104】
もよい。
前記エポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有す
【0108】
る樹脂であればよく、特に限定はないが、ビスフェノー
前記重合することによりポリマーとなる化合物としては
ルA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール型エポ
、一般にインクや塗料に含まれているものであればよく
キシ樹脂、脂環式の分子構造をもつエポキシ樹脂等が挙
、特に限定はなく、一般にインクや塗料に含まれている
げられる。これらは加熱により酸無水物やアミン等と反
モノマー、オリゴマー等を用いることが好ましい。
応し、硬化物を形成する。また、エポキシ樹脂としては
【0109】
、インクや塗料に含まれているような分子量、組成比で
前記重合することによりポリマーとなる化合物としては
あれば、特に限定はない。また、従来公知の製造方法に
特に限定はなく、重合することによりポリシロキサンと
よって、製造することが可能であり、市販品を用いても 50
なるケイ素系化合物を用いてもよく、後述のモノマー、
( 12 )
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オリゴマーを用いてもよい。
ト、ビスフェノールFポリエチレングリコールジメタク
【0110】
リレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレー
前記重合することによりポリシロキサンとなるケイ素系
ト、トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート、
化合物としては、アルコキシシラン、アルコキシシラン
トリメチロールプロパントリプロポキシトリアクリレー
の加水分解物、およびこれらの縮合物から選択される少
ト、トリメチロールプロパントリプロポキシトリメタク
なくとも1種のケイ素系化合物を用いることが好ましい
リレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレー
。
ト、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、
【0111】
トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート
アルコキシシラン、アルコキシシランの加水分解物、お
、トリメチロールプロパンポリエトキシトリメタクリレ
よびこれらの縮合物から選択される少なくとも1種のケ 10
ート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ
イ素系化合物としては、前述の〔少なくとも一般式(1
アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリ
)で表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線吸収剤〕の
コールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペン
項で記載したものを用いることが好ましい。
タアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタク
【0112】
リレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
なお、本発明において、ポリシロキサンとは、シロキサ
、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、トリ
ン結合(Si−O−Si)の連鎖を有する化合物を意味
ペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、テトラペ
し、シリカ(SiO2 )についてもポリシロキサンに包
ンタエリスリトールのアクリル酸エステル、トリペンタ
含される。
エリスリトールのメタクリル酸エステル、テトラペンタ
【0113】
エリスリトールのメタクリル酸エステル等のエチレン性
前記モノマー、オリゴマーとしては、特に限定はないが 20
不飽和基を含有するモノマーおよびこれらのオリゴマー
、例えば、重合することより前述の樹脂となるモノマー
を用いることが好ましい。
、オリゴマーを用いることができるが、それ以外のモノ
【0117】
マー、オリゴマーを用いてもよい。
本発明の近赤外線硬化型組成物をインクに用いる場合に
【0114】
は、前記樹脂としては例えば、ビスフェノールA型、フ
該モノマー、オリゴマーとしては1種単独で用いても、
ェノールノボラック型等のエポキシ樹脂、エポキシ化大
2種以上を用いてもよい。
豆油、エポキシ化ロジン、エポキシ化ポリブタジエン等
該モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、メ
のエポキシ樹脂とアクリル酸およびメタクリル酸との反
タクリル酸エステル、α−オレフィン等のエチレン性不
応物であるエポキシアクリレート類、エポキシメタクリ
飽和基(炭素・炭素二重結合を有する基)を含有するモ
レート類、前記エポキシアクリレート類およびメタクリ
ノマー、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有 30
レート類のウレタン変性物、脂肪酸変性アルキット樹脂
するモノマー、エポキシ基を有するモノマー、アミノ基
のアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル等の
を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマー
エチレン性不飽和基含有樹脂を用いることが好ましい。
、イミダゾール基を有するモノマー等が挙げられる。該
【0118】
モノマーとしては、前述の官能基を一つ有するものでも
なお、樹脂および重合することによりポリマーとなる化
、二つ以上有するものでもよい。
合物から選択される少なくとも一種の成分としては、樹
【0115】
脂のみを用いても、重合することによりポリマーとなる
これらのモノマーとしては例えば、エポキシアクリレー
化合物のみを用いても、樹脂および重合することにより
ト、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート
ポリマーとなる化合物を用いてもよい。また、前記樹脂
、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート
等が挙げられる。
としては、1種のみを用いても、2種以上を用いてもよ
40
く、重合することによりポリマーとなる化合物としては
【0116】
、1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
また、前記オリゴマーとしては、数100個以下の前述
【0119】
のモノマーが結合したものを用いることが可能である。
〔近赤外線硬化型組成物〕
本発明の近赤外線硬化型組成物をインクに用いる場合に
本発明の近赤外線硬化型組成物は、前述の少なくとも一
は、前記モノマーやオリゴマーとしては例えば、ウレタ
般式(1)で表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線吸
ンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシア
収剤と、樹脂および重合することによりポリマーとなる
クリレート、エポキシメタクリレート、ビスフェノール
化合物から選択される少なくとも一種の成分とを含む。
Aエトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェ
また、本発明の近赤外線硬化型組成物は、インクまたは
ノールAテトラエチレングリコールジメタクリレート、
塗料として用いられる。
ビスフェノールFポリエチレングリコールジアクリレー 50
【0120】
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本発明の近赤外線硬化型組成物は、近赤外線の照射によ
0質量%含有する。
り硬化するため、基材上に印刷または塗布し、次いで該
【0126】
近赤外線硬化型組成物に近赤外線を照射し、硬化させる
本発明の近赤外線硬化型組成物は、紫外線硬化型組成物
ことにより、基材上にインクまたは塗料からなる層を形
と異なり、紫外線吸収剤が含まれる場合であっても、硬
成することが可能であり、積層物が得られる。また、硬
化の際に何ら問題とならない。さらに、その他の成分と
化させるための光として近赤外線を用いた光造形法によ
して紫外線吸収剤を用いると、近赤外線硬化型組成物を
り、近赤外線硬化型組成物を射出、硬化することにより
用いて得られた積層物や、立体造形物の耐光性向上が可
、立体造形物を得ることもできる。
能であるため好ましい。
【0121】
【0127】
本発明の近赤外線硬化型組成物が含有する、少なくとも 10
本発明の近赤外線硬化性組成物が、紫外線吸収剤を含む
一般式(1)で表されるホスホン酸銅塩を含む近赤外線
場合には、紫外線吸収剤を通常は、組成物100質量%
吸収剤の量は、少なくとも一般式(1)で表されるホス
中に、通常は0.001∼80質量%、好ましくは0.
ホン酸銅塩を含む近赤外線吸収剤と、樹脂および重合す
01∼60質量%、より好ましくは1∼50質量%含有
ることによりポリマーとなる化合物から選択される少な
する。
くとも一種の成分との合計100質量部あたり通常は0
【0128】
.001∼30質量部であり、好ましくは0.01∼2
なお、前記その他の成分は、近赤外線硬化型組成物を得
0質量部であり、より好ましくは0.1∼10質量部で
る際に、近赤外線吸収剤や、樹脂および重合することに
ある。また、樹脂および重合することによりポリマーと
よりポリマーとなる化合物から選択される少なくとも一
なる化合物から選択される少なくとも一種の成分の量は
種の成分と共に添加されてもよく、前述の近赤外線吸収
、通常は70∼99.999質量部であり、好ましくは 20
剤を製造する際に添加されてもよく、樹脂および重合す
80∼99.99質量部であり、より好ましくは90∼
ることによりポリマーとなる化合物から選択される少な
99.9質量部である。
くとも一種の成分を製造する際に添加されてもよい。ま
【0122】
た、例えば前述の樹脂および重合することによりポリマ
なお、本発明の近赤外線硬化型組成物は、前述の近赤外
ーとなる化合物から選択される少なくとも一種の成分が
線吸収剤、樹脂および重合することによりポリマーとな
、市販されているインクや塗料に由来する成分である場
る化合物から選択される少なくとも一種の成分以外の成
合には、市販されているインクや塗料中に含まれる樹脂
分(以下その他の成分とも記す。)が通常は含まれてい
および重合することによりポリマーとなる化合物から選
る。
択される少なくとも一種の成分以外の成分、例えば重合
【0123】
開始剤、硬化剤、着色料も前記その他の成分として、近
その他の成分としては、例えば重合開始剤、硬化剤、重 30
赤外線硬化型組成物に含まれてもよい。
合禁止剤、可塑剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤
【0129】
、光安定剤、フィラー、シリカ、ポリマー、溶媒、分散
前記その他の成分が含まれる場合には、通常は近赤外線
媒、蛍光増白剤、着色料(例えば、顔料、染料)等が挙
硬化型組成物100質量%中、通常は0.01∼80質
げられる。
量%、好ましくは0.1∼50質量%の範囲で含有され
【0124】
る。
インクや塗料には通常、可視光を吸収し、組成物を所望
本発明の近赤外線硬化型組成物をインクまたは塗料とし
の色とするための着色料が含まれる。このため本発明の
て用い、基材上に印刷または塗布し、次いで近赤外線硬
近赤外線硬化型組成物には、通常は顔料、染料等の着色
化型組成物に近赤外線を照射し、硬化させることにより
料が含まれる。着色料としては、インクや塗料の用途に
積層物を得ることが可能である。また、本発明の近赤外
応じ、従来公知のものを用いることが可能であるが、例 40
線硬化型組成物を、近赤外線を用いた光造形法により、
えば、無機顔料(例えば、二酸化チタン顔料、酸化鉄顔
射出、硬化することにより、立体造形物を得ることが可
料)、光干渉顔料、カーボンブラック、有機顔料(例え
能である。
ば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔
【0130】
料)、有機染料、無機染料等が挙げられる。なお、着色
前記積層物や、立体造形物を得る際には、共に近赤外線
料は、近赤外線硬化性組成物中に、一種のみ含まれてい
硬化型組成物に近赤外線が照射される。近赤外線が照射
ても、二種以上含まれていてもよい。
されることにより起こる現象としては、樹脂および重合
【0125】
することによりポリマーとなる化合物から選択される少
本発明の近赤外線硬化性組成物は、着色料を通常は、組
なくとも一種の成分の種類によって異なるが、いずれの
成物100質量%中に、通常は0.01∼80質量%、
場合であっても近赤外線吸収剤が、照射された近赤外線
好ましくは0.1∼60質量%、より好ましくは1∼5 50
を吸収し、発熱する点では共通する。例えば樹脂および
( 14 )
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重合することによりポリマーとなる化合物から選択され
。これらのインクや塗料を硬化させる際には、紫外線が
る少なくとも一種の成分が熱可塑性樹脂である場合には
照射されるため、これらのインクや塗料には硬化を阻害
、近赤外線の照射によって発熱した近赤外線吸収剤によ
する紫外線吸収剤を含有させることが困難であった。一
って熱可塑性樹脂が溶融した後に、近赤外線の照射を止
方、本発明の積層体は、近赤外線の照射により近赤外線
めることにより、熱可塑性樹脂が固化する。また、樹脂
硬化性組成物を硬化させるため、近赤外線硬化型組成物
および重合することによりポリマーとなる化合物から選
中に紫外線吸収剤を含有させることが容易である。この
択される少なくとも一種の成分が熱硬化性樹脂や、重合
ため、本発明の積層物としては、耐光性に優れる積層物
することによりポリマーとなる化合物(例えば、重合す
を得ることが容易である。
ることによりポリシロキサンとなるケイ素系化合物、あ
【0134】
るいはモノマーや、オリゴマー)である場合には、近赤 10
本発明の積層物を構成する基材としては、例えば金属、
外線の照射によって発熱した近赤外線吸収剤の熱エネル
ガラス、陶磁器、タイル、コンクリート、紙、ダンボー
ギーを反応エネルギーとして、熱硬化性樹脂の熱硬化反
ル、木、プラスチック等が挙げられる。前記プラスチッ
応、ケイ素系化合物の重合(加水分解・重縮合)、モノ
クとしては、ABS樹脂、PET樹脂、ポリカーボネー
マーやオリゴマーの重合が起こる。
ト、ナイロン、アクリル樹脂、硬質塩ビ、飽和ポリエチ
【0131】
レン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリイミド等
本発明の近赤外線硬化型組成物の製造方法としては特に
が挙げられる。
限定はなく例えば、前記近赤外線吸収剤(またはその分
【0135】
散液)、樹脂および重合することによりポリマーとなる
本発明の積層物を得るためには、まず近赤外線硬化型組
化合物から選択される少なくとも一種の成分および必要
成物を基材上に印刷または塗布するが、該印刷または塗
に応じて用いられるその他の成分とを混合する方法、前 20
布の方法としては特に限定はなく、従来からインクや塗
記近赤外線吸収剤、樹脂および重合することによりポリ
料の印刷または塗布に用いられている方法を採用するこ
マーとなる化合物から選択される少なくとも一種の成分
とができる。
および必要に応じて用いられるその他の成分とを溶融混
【0136】
練する方法、前記近赤外線吸収剤、樹脂および重合する
本発明の積層物を得るためには、印刷または塗布を行っ
ことによりポリマーとなる化合物から選択される少なく
た後に、基材上に印刷または塗布された近赤外線硬化型
とも一種の成分および必要に応じて用いられるその他の
組成物に近赤外線を照射し、近赤外線硬化型組成物を、
成分を、分散媒に溶解あるいは分散させ、該分散媒を必
硬化させる。
要に応じて除去する方法により製造することが可能であ
【0137】
る。また、樹脂および重合することによりポリマーとな
近赤外線の照射を行うための光源としては、特に限定は
る化合物から選択される少なくとも一種の成分が、市販 30
ないが近赤外線レーザー、近赤外線発光ダイオード(N
品されているインク、塗料に由来する場合には、市販さ
IR−LED)、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を
れているインク、塗料と、近赤外線吸収剤(またはその
用いることができる。
分散液)とを混合する方法が挙げられる。前記分散媒と
【0138】
しては、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、メタ
前記近赤外線レーザーとしては、レーザー光として近赤
ノール、エタノール等を用いることができる。
外線を照射できるものであればよく、特に限定はないが
【0132】
、半導体レーザー、YAGレーザー等を用いることがで
本発明の近赤外線硬化型組成物の性状としては、インク
きる。
や塗料として使用可能であればよく、特に限定はなく、
なお、近赤外線の照射は、光源の種類、印刷または塗布
溶液状、分散液状、ペースト状、固体状等のいずれでも
よい。
された近赤外線硬化型組成物の面積等によっても異なる
40
が、一か所に行ってもよく、順次照射箇所を変えて複数
〔積層物〕
の場所に行ってもよい。複数の場所に近赤外線の照射を
本発明の積層物は、近赤外線硬化型組成物を基材上に印
行う場合には、順次近赤外線硬化型組成物が印刷または
刷または塗布し、次いで該近赤外線硬化型組成物に近赤
塗布された基材の位置を変えながら照射を行っても、光
外線を照射し、硬化させることにより得られる。すなわ
源の位置を変えながら行っても、近赤外線硬化型組成物
ち、本発明の積層物は、基材層、近赤外線硬化型組成物
が印刷または塗布された基材および光源の位置を変えな
を硬化することにより得られる層の二層構造を有してい
がら行ってもよい。
る。
【0139】
【0133】
また、近赤外線硬化型組成物に照射される時点の近赤外
従来、光を照射することにより硬化するインクや塗料と
線の出力は、0.01∼100Wであることが好ましく
しては、紫外線硬化型のインクや塗料が用いられてきた 50
、0.1∼50Wであることがより好ましい。また、近
( 15 )
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赤外線硬化型組成物に照射される時点の近赤外線の単位
づいて目的とする立体造形物の形状を複数の断面形状に
面積当たりの照射エネルギーは、0.01∼10000
分割した断面形状データに応じた所望のパターンでイン
2
クジェットノズルから近赤外線硬化型組成物を吐出して
2
mW/mm であることがより好ましい。
、同組成物からなる薄層(近赤外線硬化型組成物層)を
【0140】
形成した後、光源から近赤外線を照射して該薄層を硬化
また、近赤外線の照射時間は、近赤外線の出力によって
させ、硬化層を形成する。次いで、該硬化層の上に、次
も異なるが、通常は一か所あたり1∼600秒であり、
の断面形状に応じてインクジェットノズルから近赤外線
好ましくは2∼300秒である。上述の近赤外線硬化型
硬化型組成物を供給する。以上を繰り返すことにより、
mW/mm であることが好ましく、0.1∼1000
組成物を用いることにより、短時間で硬化することが可
能である。
各断面形状に相当する硬化層を積層して、目的とする立
10
体造形物を形成することが可能である。
【0141】
【0146】
本発明の積層体は、基材の種類、形状、近赤外線硬化型
近赤外線を用いた熱溶解積層法は、溶融した近赤外線硬
組成物の組成を適宜選択することにより、自動車部品、
化型組成物を細いノズルの先端から少しずつ吐出すると
家電部品、トイレタリー周りの部品、浴室周りの部品、
ともに、ノズル(または受け台)を主走査方向(X方向
その他の工業部品、食品包装材、合成紙等の各種用途に
)へ移動させることにより、吐出した溶融状態の近赤外
用いることが可能である。
線硬化型組成物を線状に置きつつ、吐出と同時またはそ
【0142】
の後に光源から近赤外線を照射することにより吐出され
〔立体造形物〕
た近赤外線硬化型組成物を固化させ、目的とする立体造
本発明の立体造形物は、近赤外線硬化型組成物を、近赤
形物の寸法(当該層・当該副走査方向位置での当該主走
外線を用いた光造形法により、射出、硬化することによ 20
査方向の寸法)で決まる端部に至ると、ノズル(または
り得られる。
受け台)を副走査方向(Y方向)へ所定の微小距離移動
【0143】
させ、次に、主走査方向に沿う反対方向(−X方向)へ
光造形法としては、インクジェット光造形法、熱溶解積
移動させるという処理を、目的とする立体造形物の寸法
層法等が挙げられる。
(当該層・当該副走査方向の寸法)で決まる副走査範囲
インクジェット光造形法や熱溶解積層法は、3Dプリン
まで繰り返して第1層を形成する。次に、第1層の主走
ター等で採用されている光造形法である。従来のインク
査方向と交差する方向を主走査方向として、同様に処理
ジェット光造形法や熱溶解積層法では、照射される光と
して、第2層を形成する。かかる処理を、目的とする立
して紫外線を使用することが多いが、本発明の立体造形
体造形物の高さで決まる範囲までくりかえすことにより
物を得る際には、照射される光として近赤外線を用いる
、立体造形物を形成する方法である。なお、前記熱溶解
。照射される光が紫外線である場合には、原料となる組 30
積層法における近赤外線の照射は、別のタイミングで行
成物には、硬化を阻害する紫外線吸収剤を含有させるこ
われてもよく、具体的には、吐出前の近赤外線硬化型組
とが困難であったが、本発明の立体造形物は、照射され
成物を溶融状態にするために行われてもよい。
る光が近赤外線であるため、近赤外線硬化型組成物中に
【0147】
紫外線吸収剤を含有させることが容易である。このため
前記光源としては、特に限定はないが近赤外線レーザー
、本発明の立体造形物としては、耐光性に優れる立体造
、近赤外線発光ダイオード(NIR−LED)、ハロゲ
形物を得ることが容易である。
ンランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0144】
前記近赤外線レーザーとしては、レーザー光として近赤
近赤外線を用いたインクジェット光造形法は、インクジ
外線を照射できるものであればよく、特に限定はないが
ェット方式により近赤外線硬化型組成物の微小な液滴を
、半導体レーザー、YAGレーザー等を用いることがで
ノズルから所定の形状パターンを描画するよう吐出し、 40
きる。
近赤外線を照射して硬化薄膜を形成する方式の光造形法
【0148】
である。
また、近赤外線硬化型組成物に照射される時点の近赤外
【0145】
線の出力は、0.01∼100Wであることが好ましく
具体的には、近赤外線を用いたインクジェット光造形法
、0.1∼50Wであることがより好ましい。また、近
に用いる光造形装置は、目的とする立体造形物を光造形
赤外線硬化型組成物に照射される時点の近赤外線の単位
するための平面ステージと、平面ステージに対して少な
面積当たりの照射エネルギーは、0.01∼10000
くとも平行な平面上に移動可能なインクジェットノズル
mW/mm であることが好ましく、0.1∼1000
を少なくとも1個と、近赤外線硬化型組成物に対して近
mW/mm であることがより好ましい。
赤外線(硬化光)を照射するための光源とを有する。立
【0149】
体造形物を製造する方法としては、CADデータ等に基 50
また、近赤外線の照射時間は、近赤外線の出力によって
2
2
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30
も異なるが、通常は一か所あたり1∼600秒であり、
した。室温撹拌下、0.0208gのブチルホスホン酸
好ましくは2∼300秒である。上述の近赤外線硬化型
のエタノール溶液(10g)を滴下した。
組成物を用いることにより、短時間で硬化することが可
【0157】
能である。
4時間後、溶媒を留去し、得られた固形物(ブチルホス
【0150】
ホン酸銅塩/リン酸系分散剤)(近赤外線吸収剤)に2
本発明の立体造形物は、近赤外線硬化型組成物の組成を
0gのトルエンを添加して、超音波処理を行った。トル
適宜選択することにより、製品や部品などの試作やモッ
エンを留去し、得られた固形物に20gのトルエンを添
クアップ、建築模型、術前検討用モデル等の各種立体造
加して、超音波処理を行い、ブチルホスホン酸銅塩/リ
形物として得ることが可能である。
ン酸系分散剤(近赤外線吸収剤)を銅塩微粒子として含
【実施例】
10
むトルエン分散液を得た。該分散液中の銅塩微粒子の平
【0151】
均粒径は53nmであった。なお、平均粒径はELSZ
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明す
−2(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。
るが、本発明はこれらによって限定されるものではない
【0158】
。
〔実施例1〕
実施例、比較例において照射したレーザー光はすべて、
25質量部の製造例1で得られた近赤外線吸収剤を含む
レーザー装置(JenLas
ns 40
トルエン分散液(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散
−advanced)(イエナオプティック社製)を用
剤1.5質量部)を、75質量部の市販の一液熱硬化型
いた。該装置は、Output
インク(メジウム)に添加し、スパチュラで混合して、
最大値)、Centre
062nm、Beam
fiber
power:40W(
wave
length:1
diameter:1.15m 20
銅塩含有熱硬化型インク(近赤外線照射型インク1)を
作製した。
mであった。
【0159】
【0152】
なお前記市販の一液熱硬化型インク(メジウム)の組成
なお、実施例1∼6、比較例1∼4では、レーザー光の
は、シリカ0−10%、合成樹脂30−60%、ジエチ
照射は、被照射物への照射距離が3cm、被照射物に照
レングリコールモノエチルエーテルアセテート10−2
射される時点のビーム径が約8mm(7倍拡大)となる
0%、石油ナフサ1−5%、トリメチルベンゼン1−5
条件で行った。拡大後の照射エネルギーは約1.5Wで
%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
あった。
1−10%、酢酸エチル1−5%、キシレン0.3%未
【0153】
満、エチルベンゼン0.3%未満であり、150℃30
なお、実施例7∼14では、レーザー光の照射は、被照
分以上に加熱しないと硬化しないと記載されている。
射物への照射距離が3cm、被照射物に照射される時点 30
【0160】
のビーム径が約8mm(7倍拡大)となる条件で行った
前記近赤外線照射型インク1をガラス上に塗布し、塗布
。拡大後の照射エネルギーは約2.6Wであった。
面から前記近赤外線照射型インク1に向かってレーザー
【0154】
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク1
〔製造例1〕(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散剤
は照射から2分程度で硬化することを確認した。また、
の製造)
硬化したインクの膜厚は0.1mmで、ガラスに接着し
フラスコに、19.92gのブチルホスホン酸、7.5
て剥がれなかった。
gのリン酸系分散剤、99.61gのエタノールを入れ
【0161】
溶解させた(A液)。
〔実施例2〕
【0155】
25質量部の製造例1で得られた近赤外線吸収剤を含む
反応容器に、30.00gの酢酸銅(II)一水和物、 40
トルエン分散液(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散
1650gのエタノールを入れ溶解させ、室温攪拌下、
剤1.5質量部)を、75質量部の市販の一液熱硬化型
A液を滴下した。
インク(白)に添加し、スパチュラで混合して、銅塩含
1時間後、溶媒を留去し、得られた固形物に300gの
有熱硬化型インク(近赤外線照射型インク2)を作製し
トルエンを添加して、超音波処理を行った。トルエンを
た。
留去し、得られた固形物に300gのトルエンを添加し
【0162】
て、超音波処理を行った。
なお前記市販の一液熱硬化型インク(白)の組成は、シ
【0156】
リカ0−10%、酸化チタン30−40%、合成樹脂3
得られた銅塩分散液のうち、11.25g(ブチルホス
0−60%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル
ホン酸銅塩:分散剤:トルエン=1:0.25:10)
アセテート10−20%、石油ナフサ1−5%、トリメ
を反応容器に量りとり、20gのトルエンを加えて希釈 50
チルベンゼン1−5%、エチレングリコールモノブチル
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エーテルアセテート1−10%、酢酸エチル1−5%、
ルベンゼン0.3%未満であり、150℃30分以上に
キシレン0.3%未満、エチルベンゼン0.3%未満で
加熱しないと硬化しないと記載されている。
あり、150℃30分以上に加熱しないと硬化しないと
【0169】
記載されている。
前記近赤外線照射型インク4をガラス上に塗布し、塗布
【0163】
面から前記近赤外線照射型インク4に向かってレーザー
前記近赤外線照射型インク2をガラス上に塗布し、塗布
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク4
面から前記近赤外線照射型インク2に向かってレーザー
は照射から2分程度で硬化することを確認した。また、
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク2
硬化したインクの膜厚は0.1mmで、ガラスに接着し
は照射から2分程度で硬化することを確認した。また、
て剥がれなかった。
硬化したインクの膜厚は0.1mmで、ガラスに接着し 10
【0170】
て剥がれなかった。
〔実施例5〕
【0164】
25質量部の製造例1で得られた近赤外線吸収剤を含む
〔実施例3〕
トルエン分散液(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散
25質量部の製造例1で得られた近赤外線吸収剤を含む
剤1.5質量部)を、75質量部の市販の一液熱硬化型
トルエン分散液(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散
インク(藍)に添加し、スパチュラで混合して、銅塩含
剤1.5質量部)を、75質量部の市販の一液熱硬化型
有熱硬化型インク(近赤外線照射型インク5)を作製し
インク(紅)に添加し、スパチュラで混合して、銅塩含
た。
有熱硬化型インク(近赤外線照射型インク3)を作製し
【0171】
た。
なお前記市販の一液熱硬化型インク(藍)の組成は、銅
【0165】
20
及びその化合物1−10%、合成樹脂30−60%、ジ
なお前記市販の一液熱硬化型インク(紅)の組成は、顔
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート10
料0−40%、合成樹脂30−60%、ジエチレングリ
−20%、石油ナフサ1−5%、トリメチルベンゼン1
コールモノエチルエーテルアセテート10−20%、石
−5%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテ
油ナフサ1−5%、トリメチルベンゼン1−5%、エチ
ート1−10%、酢酸エチル1−5%、キシレン0.3
レングリコールモノブチルエーテルアセテート1−10
%未満、エチルベンゼン0.3%未満であり、150℃
%、酢酸エチル1−5%、キシレン0.3%未満、エチ
30分以上に加熱しないと硬化しないと記載されている
ルベンゼン0.3%未満であり、150℃30分以上に
。
加熱しないと硬化しないと記載されている。
【0172】
【0166】
前記近赤外線照射型インク5をガラス上に塗布し、塗布
前記近赤外線照射型インク3をガラス上に塗布し、塗布 30
面から前記近赤外線照射型インク5に向かってレーザー
面から前記近赤外線照射型インク3に向かってレーザー
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク5
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク3
は照射から1分程度で硬化することを確認した。また、
は照射から2分程度で硬化することを確認した。また、
硬化したインクの膜厚は0.1mmで、ガラスに接着し
硬化したインクの膜厚は0.1mmで、ガラスに接着し
て剥がれなかった。
て剥がれなかった。
【0173】
【0167】
〔実施例6〕
〔実施例4〕
25質量部の製造例1で得られた近赤外線吸収剤を含む
25質量部の製造例1で得られた近赤外線吸収剤を含む
トルエン分散液(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散
トルエン分散液(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散
剤1.5質量部)を、75質量部の市販の一液熱硬化型
剤1.5質量部)を、75質量部の市販の一液熱硬化型 40
インク(黒)に添加し、スパチュラで混合して、銅塩含
インク(紫)に添加し、スパチュラで混合して、銅塩含
有熱硬化型インク(近赤外線照射型インク6)を作製し
有熱硬化型インク(近赤外線照射型インク4)を作製し
た。
た。
【0174】
【0168】
なお前記市販の一液熱硬化型インク(黒)の組成は、カ
なお前記市販の一液熱硬化型インク(紫)の組成は、顔
ーボンブラック1−10%、合成樹脂30−60%、ジ
料0−40%、合成樹脂30−60%、ジエチレングリ
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート10
コールモノエチルエーテルアセテート10−20%、石
−20%、石油ナフサ1−5%、トリメチルベンゼン1
油ナフサ1−5%、トリメチルベンゼン1−5%、エチ
−5%、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテ
レングリコールモノブチルエーテルアセテート1−10
ート1−10%、酢酸エチル1−5%、キシレン0.3
%、酢酸エチル1−5%、キシレン0.3%未満、エチ 50
%未満、エチルベンゼン0.3%未満であり、150℃
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30分以上に加熱しないと硬化しないと記載されている
〔実施例8〕
。
100質量部の上記近赤外線照射型インク7に10質量
【0175】
部のPC
前記近赤外線照射型インク6をガラス上に塗布し、塗布
ーフィルター用色素)を添加して混合し、近赤外線照射
面から前記近赤外線照射型インク6に向かってレーザー
型インク8を作製した。
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク6
【0183】
は照射から1分程度で硬化することを確認した。また、
前記近赤外線照射型インク8をガラス上に塗布し、塗布
硬化したインクの膜厚は0.1mmで、ガラスに接着し
面から前記近赤外線照射型インク8に向かってレーザー
て剥がれなかった。
【0176】
Cyan
2P(日本化薬株式会社製、カラ
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク8
10
は照射から1分程度で硬化することを確認した。
〔比較例1∼4〕
【0184】
実施例1∼4で使用した一液熱硬化型インクに、製造例
〔実施例9〕
1で得られた近赤外線吸収剤を含むトルエン分散液を加
100質量部の上記近赤外線照射型インク7に10質量
えずに、ガラス上に塗布し、塗布面から市販インクに向
部のPC
かってレーザー光の照射を行ったが、硬化しなかった。
カラーフィルター用染料)を添加して混合し、近赤外線
【0177】
照射型インク9を作製した。
なお、比較例1では一液熱硬化型インク(メジウム)、
【0185】
比較例2では一液熱硬化型インク(白)、比較例3では
前記近赤外線照射型インク9をガラス上に塗布し、塗布
、一液熱硬化型インク(紅)、比較例4では一液熱硬化
面から前記近赤外線照射型インク9に向かってレーザー
型インク(紫)を用いた。
20
Green
FOP(日本化薬株式会社製、
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク9
【0178】
は照射から1分程度で硬化することを確認した。
〔実施例7〕
【0186】
バイアル中に、0.8gのペンタエリスリトールトリア
〔実施例10〕
クリレート、0.7gのウレタンアクリレート、0.1
100質量部の上記近赤外線照射型インク7に10質量
gのエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、0.
部のPC
04gのパーブチル−O(重合開始剤)、0.5gの製
、カラーフィルター用色素)を添加して混合し、近赤外
造例1で得られた近赤外線吸収剤を含むトルエン分散液
線照射型インク10を作製した。
(ブチルホスホン酸銅塩/リン酸系分散剤0.03g)
【0187】
を量りとり、スパチュラで混合して、銅塩含有熱硬化型
前記近赤外線照射型インク10をガラス上に塗布し、塗
インク(近赤外線照射型インク7)を作製した。
30
Yellow
42P(日本化薬株式会社製
布面から前記近赤外線照射型インク10に向かってレー
【0179】
ザー光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型イン
前記近赤外線照射型インク7をガラス上に塗布し、塗布
ク10は照射から5分程度で硬化することを確認した。
面から前記近赤外線照射型インク7に向かってレーザー
【0188】
光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型インク7
〔実施例11〕
は照射から1分程度で硬化することを確認した。また、
100質量部の上記近赤外線照射型インク7に10質量
硬化したインクの膜厚は0.27mmで無色であった。
部のPC
【0180】
製、水溶性色素)を添加して混合し、近赤外線照射型イ
ガラス上に前記近赤外線照射型インク7を、塗布、硬化
ンク11を作製した。
することにより得られた積層体の透過光スペクトルを得
【0189】
た。透過光スペクトルの測定は分光光度計(U−410 40
前記近赤外線照射型インク11をガラス上に塗布し、塗
0形、(株)日立製作所製)を使用しておこない、波長
布面から前記近赤外線照射型インク11に向かってレー
2500nm∼180nmの範囲について測定を行った
ザー光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型イン
。波長300∼2100nmにおける透過光スペクトル
ク11は照射から5分程度で硬化することを確認した。
を図1に示す。
【0190】
【0181】
〔実施例12〕
該透過光スペクトルより、得られた積層体は可視光の透
100質量部の上記近赤外線照射型インク7に10質量
過性に優れることがわかる。これは本発明で用いた近赤
部のベンゾフェノン系紫外線吸収剤を添加して混合し、
外線吸収剤が、透明性に優れる(可視光の透過性に優れ
近赤外線照射型インク12を作製した。
る)ことが一因である。
【0191】
【0182】
50
Magenta
10P(日本化薬株式会社
前記近赤外線照射型インク12をガラス上に塗布し、塗
( 19 )
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布面から前記近赤外線照射型インク12に向かってレー
布面から前記近赤外線照射型インク13に向かってレー
ザー光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型イン
ザー光の照射を行ったところ、前記近赤外線照射型イン
ク12は照射から2分程度で硬化することを確認した。
ク13は照射から5分程度で硬化することを確認した。
【0192】
【0194】
〔実施例13〕
〔実施例14〕
100質量部の上記近赤外線照射型インク7に10質量
前記近赤外線照射型インク7をガラス上に塗布し、塗布
部のPC
10P(日本化薬株式会社
面から前記近赤外線照射型インク7に向かってレーザー
製、水溶性色素)、10質量部のトリアゾール系紫外線
光の照射を行う操作を、5回繰り返しおこない、近赤外
Magenta
吸収剤を添加して混合し、近赤外線照射型インク13を
線照射型インク7の重ね塗りを行ったところ、前記近赤
作製した。
10
【0193】
外線照射型インク7は厚み5mmまで積層硬化すること
ができた。
前記近赤外線照射型インク13をガラス上に塗布し、塗
【図1】
────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
B05D
3/02
(2006.01)
B05D
3/02
E
B05D
7/24
(2006.01)
B05D
7/24
303E
Fターム(参考) 4F100 AK01A AT00B BA02
CA07A EH46A HB31A JB14A JN01
4J038 EA011 HA446 JC21
JC24
KA03
MA07
NA12
4J039 BA21
CA07
EA07
EA43
FA04
BC56
CA04
PA17
PC03