ICAO が推進する次世代航空交通管理システム構想 ~世界規模の統一

(公財)航空機国際共同開発促進基金 【解説概要 25-7】
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ICAO が推進する次世代航空交通管理システム構想
~世界規模の統一運用構想 ASBU について~
1.はじめに
近年の航空交通量は飛躍的に増大し、1990 年代からは約 15 年間隔で2倍に膨れ上
がっている。2012 年における全世界の旅客数は約 29 億人、貨物輸送量(金額)は約
5.3 兆ドルとなり、15 年後にはさらに2倍に増大し、航空機数も約 35,000 機(現状の
約2倍)が必要とされている。国際民間航空機関(ICAO:International Civil Aviation
Organization
国際民間航空に関する規則の制定と技術開発を行い、民間航空の健全
な発達を目的とする国際連合傘下の組織)は、将来の民間航空機の増大に鑑み、1990
年代から航空管制の改善(安全性向上、取扱い機数増等)を行っている。その一環と
して、1991 年の第 10 回航空会議(10th Air Navigation Conference)において「新し
い通信(Communication)、航法(Navigation)、監視(Surveillance)技術を活用
して航空機をより安全で効率的に飛行させるための航空交通管理(ATM:Air Traffic
Management)を実現する構想」を取り纏めた。次に、2003 年の第 11 回航空会議に
おいて「航空機運航者が計画した通りの出発・到着時刻で、希望する通りの飛行経路
を最少の制約で規定された安全レベルを満足しつつ運航できるようなシームレスな世
界規模の ATM システムの構築」を発表した。この ICAO 構想に基づき、米国では
「NextGen: Next Generation Air Transportation System」、欧州では「SESAR:
Single European Sky ATM Research」、日本では「CARATS: Collaborative Actions
for Renovation of Air Traffic Systems」などの検討が進められている。
しかし、NextGen、SESAR などの各国システムは独自に開発されているため「統一
的な運用(Interoperability)」に問題が発生することが懸念された。そのため、ICAO は
NextGen と SESAR の相違点を調査するとともに「統一的な運用を目指した世界規模の
ATM システム」を構築するための構想(ASBU:Aviation System Block Upgrades)
を発表した。ICAO は ASBU を各国の航空担当機関に説明するとともに、各国のシステ
ム開発計画を整合させるための国際会議、航空管制部門だけでなく産業界も含めた幅広
い関連者を集めたシンポジウムなどを開催し、関連する部門から多くの意見を集めるこ
とにより ASBU の改善を続けてきた。さらには、NextGen、SESAR を推進している関
係部門とも協議を行い、これらのシステムが ASBU から乖離しないように軌道修正を行
っている。
本稿では、NextGen、SESAR などの個別システムの技術ではなく、ICAO が提唱し
ている統一構想(ASBU)について解説する。
2.ASBU の概要
ASBU では、「統一的な運用を目指した世界規模の ATM システム」を構築するた
めに、以下に示す4つの改善分野と4つのマイルストーン(時期)を規定することに
より、各国のシステム開発計画を整合させることを目的としている。
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4つの改善分野
① 空港運用(Airport Operations)
② 全世界レベルで統一されたシステム及び情報交換
(Globally Interoperable Systems and Data)
③ 運航効率の向上及び柔軟な飛行
(Optimum Capacity and Flexible Flights)
④ 効率的な飛行経路(Efficient Flight Path)
4つのブロック
① Block0:2013 年までに実現
② Block1:2018 年までに実現
③ Block2:2023 年までに実現
④ Block3:2028 年以降に実現
ASBU の構造(イメージ)を図1に示す。縦軸が4つの分野であり、横軸が期間
(Block0~3)となっており、各分野が求める機能単位(モジュール:□)が時系列で
並べられている。基本的な流れとしては、モジュールは Block0 から順次機能を拡張す
る形式になっているが、緊急性が必要ないモジュールは、Block1や 2、あるいは 3 か
ら始まる場合もある。また、目標とする時期の違いにより、途中の Block1 あるいは 2
が飛んでいる場合もある。これらモジュールの詳細は 3 項で解説する。
図1 ASBU の構造(イメージ)
ASBU が規定する4分野は次のような目標を設定している。
「空港運用」分野では、 空港及び空港周辺の排気ガス(CO2、NOX など)の削減、
騒音の削減及び空港における安全性向上を目的としており、空港内での航空機の効率的
2
な誘導(出発待ち時間短縮)、滑走路利用の効率化(出発、到着間隔の縮小)、効率的
な出発・到着飛行経路の設定(市街地上空の飛行回避)などに必要となる具体策を設定
している。
「全世界レベルで統一されたシステム及び情報交換」分野では、空港内における航空
機及び空港サービスに関連するすべての事業者(航空管制部門、空港会社、航空会社、
荷役等サービス提供者)が相互に情報交換できるシステム(SWIM: System Wide
Information Management 他)の構築に必要となる具体策を設定している。
「運航効率の向上及び柔軟な飛行」分野では、航空機の性能に適した最適な発着間隔、
飛行間隔、柔軟な飛行ルートの決定及び安全な飛行を実現するための ATM システムの
設定に必要となる具体策を設定している。
「効率的な飛行経路」分野では、空港周辺での待機時間短縮などの効率的な飛行計画
を 策 定 す る た め の 「 時 間 軸 を 考 慮 し た 軌 道 ベ ー ス 運 用 ( 4D Trajectory based
Operation)」の設定に必要となる具体策を設定している。
注.FF-ICE:Flight and Flow Information for the Collaborative Environment
(空港における航空機と作業車両等の交通を管理するシステム)
SWIM :System Wide Information Management
(航空機などの運航情報等を統一して管理する情報システム)
図 2 モジュール単位のアップグレード例
図2に示すように、モジュールは Block 番号(B0~B3)および 4 文字の機能記号
(XXXX)によって識別される(例:B0-FICE)。図 2 では、「空港における作業の効
率・能力の向上(作業者間の情報共有・交換の促進)」を例にして、それを実現するた
めには B0-FICE~B3-FICE の4つのステップを行うことを示している。また、各ステ
ップでは次の機能を実現することが求められている。
3
・Block0:
既存機材の範囲内で地上の作業を統合管理し、作業管理の効率及び能力を向上さ
せる
・Block1:
FF-ICE(ステップ 1:空港内の作業車両管理)を実現することによって、出発前
作業の作業車両運用管理の効率及び能力を向上させる
・Block2:
FF-ICE(ステップ 1+飛行情報)及び SWIM による集中管理を実現することに
よって、地上(作業車両・管制官)と航空機の調整能力を向上させる
・Block3:
FF-ICE(完全版)を実現することによって、全体(航空機+地上)の運用能力を
向上させる
尚、各機能は個々に独立ではなく、他機能と密接に関係している。また、ASBU には、
これらの機能を実現するために必要な規則、機上装置、地上装置、運用手順などの概要
が各モジュール単位(Block 毎)に5~6ページに渡って記述されている。
3. 各分野におけるモジュールの概要
各分野におけるモジュールの具体的機能を以下に説明するが、ASBU における主要な
機能は次の5つに集約される。
・GPS などを活用してより精度の高い航空機の位置情報を取得することによって、
航空機の安全性を維持しつつ、飛行間隔、離発着間隔などを効率(短縮)化する。
・空港内で活動するすべての移動体情報を集中管理し、空港における航空機の移動を
安全かつ最適にする。
・パイロットに自機周辺の情報などを提供することによって、パイロットのより適切な
判断を支援する。(管制指示のディジタル化などを含む)
・航空機の交通流を適切に管理するために時間軸を考慮した軌道ベース運用(4D
Trajectory based Operation))を行う。
・航空機の運航に関わる情報を一元管理し、情報を必要とする機関(運用者)間で適切
に情報共有できるシステム(SWIM)を構築する。
3.1 「空港運用」分野
「空港運用」では、表1に示すように6つのモジュールを設定し、各モジュールは以下
に示す機能を有している。
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Block0
①
②
③
④
⑤
⑥
B0-APTA
Optimization of Approach
Procedures including vertical
B0-WAKE
Increased Runway Throughput
through Optimized Wake
Turbulence Separation
B0-RSEQ
Improved Traffic Flow through
Sequencing
Block2
Block1
Block3
B1-APTA
Optimised Airport Accessibility
B1-WAKE
Increased Runway Throughput
through Dynamic Wake
Turbulence Separation
B1-RSEQ
Improved Airport operations
through Departure, Surface and
Arrival Management
B0-SURF
B1-SURF
Safety and Efficiency of
Enhanced Safety and Efficiency
Surface Operations (A-SMGCS of Surface Operations- SURF,
SURF IA and Enhanced Vision
Level 1-2)
Systems (EVS)
B1-ACDM
B0-ACDM
Optimized Airport Operations
Improved Airport Operations
through Airport-CDM
through Airport-CDM
B1-RATS
Remotely Operated Aerodrome
Control
B2-WAKE
Advanced Wake Turbulence
Separation(Time-based)
B2-RSEQ
Linked AMAN/DMAN
B3-RSEQ
Integrated AMAN/DMAN/SMAN
B2-SURF
Optimized Surface Routing and
Safety
Benefits (A-SMGCS Level 3-4
and SVS)
表1 「空港運用」モジュール概要
① 到着航空機の効率的な順番整理による待ち時間の改善(ATPA)
航空機の持つ航法精度に準じて航法を選択する性能準拠型航法(PBN:Performance
Based Navigation)及び地上の GPS 補正機能を利用して位置精度を向上させる GBAS
(Ground-Based Augmentation System)を活用した着陸方式(GLS:GBAS Landing
System)を導入することによって、航空機の滑走路進入の信頼性と予測精度を向上さ
せ、航空機運航の安全性、利便性及び効率を改善させる。
② 「後方乱気流のための飛行間隔」の短縮による滑走路の使用率の向上(WAKE)
現行の後方乱気流最小管制間隔の見直し及び後方乱気流の検出・監視機能により管
制間隔を気流の状況に合わせて適切に管理することによって、出発滑走路及び到着滑
走路の使用効率を向上させる。
③ 空港(滑走路・誘導路など)の安全性の向上(RSEQ)
複数の滑走路を持つ飛行場あるいは近接する飛行場における着陸(あるいは離陸)
時の飛行経路が干渉する滑走路において、出発又は到着機及び作業車等移動物体など
の管理を行って滑走路使用の順序付けなどを統合的に実施することによって、滑走路
本来の離発着能力を向上させる。
④ 空港における作業効率の向上(作業者間の情報共有の効率化)(SURF)
地上誘導管制の安全性の向上と効率化を目的に空港における行動範囲内のすべての
航空機及びすべての車両の位置を空港管制官に表示する。また、滑走路の障害物発生
などの突発的な状況を検知し警告を発する能力を備えて、それらの情報を操縦席にも
表示することによって安全性を向上させる。
⑤ 空港における協調的意思決定を通じた空港運用の改善(ACDM)
空港運用の計画機能及び管理機能を強化し、空港周辺空域の航空交通管理の完全な
統合を目指す。空港における協調的意思決定(CDM:Collaborative Decision-Making)
を導入し、空域使用者、航空交通管制及び空域運用者の間で対象となるフライトに対
するそれぞれの行動を認識させることによって、地表面運用及び安全性を向上させる。
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⑥ 飛行場における管制業務の遠隔制御化促進(RATS)
(個別飛行場毎の)専用管制業務(ATS:Air Traffic Service)が適切でない飛行場、
あるいは費用対効果がない飛行場に、安全でコスト効率の良い遠隔施設からの管制業
務を提供する。
3.2 「全世界レベルで統一されたシステム及び情報交換」分野
「全世界レベルで統一されたシステム及び情報交換」では、表2に示すように7つのモ
ジュールを設定し、各モジュールは以下に示す機能を有している。
Block0
B0-FICE
Increased Interoperability,
① Efficiency and Capacity
through Ground-Ground
Integration
B0-DATM
Service Improvement through
② Digital Aeronautical Information
Management
③
B0-AMET
Meteorological information
supporting enhanced
④
operational efficiency and
safety
B0-FRTO
Improved Operations through
Enhanced En-Route
Trajectories
B0-NOPS
Improved Flow Performance
⑥
through Planning based on a
Network-Wide view
B0-ASUR
⑦ Initial Capability for Ground
Surveillance
⑤
Block1
B1-FICE
Increased Interoperability,
Efficiency and Capacity though
FF-ICE, Step 1 application
before Departure
B1-DATM
Service Improvement through
Integration of all Digital ATM
Information Implementation of
the ATM Information
B1-SWIM
Performance Improvement
through the application of
System-Wide Information
B1-AMET
Enhanced Operational Decisions
through Integrated
Meteorological Information
(Planning and Near-term
Service)
B1-FRTO
Improved Operations through
Optimized ATS Routing
Block2
B2-FICE
Improved Coordination through
multicentre Ground-Ground
Integration: (FFICE/1 and Flight
Object, SWIM)
B1-NOPS
Enhanced Flow Performance
through Network Operational
Planning
B2-NOPS
Increased user involvement in
the dynamic utilization of the
network.
Block3
B3-FICE
Improved Operational
Performance through the
introduction of Full FFICE
B2-SWIM
Enabling Airborne Participation
in collaborative ATM through
SWIM
B3-AMET
Enhanced Operational Decisions
through Integrated
Meteorological Information
(Near-term and Immediate
Service)
B3-FRTO
Traffic Complexity Management
表 2 「全世界レベルで統一されたシステム及び情報交換」モジュール概要
① 空港における作業の効率・能力の向上(作業者間の情報共有・交換の促進)(FICE)
新しく「空港における航空機と作業車両等の交通を管理するシステム」を確立する
ことによって、空港作業者(車)間の調整を改善する。また、空港内作業者が航空機
のフライトデータを共有することを可能とすることにより、空港内の交通の流れを改
善する。
② 航空機関連データのディジタル化及び情報管理の改善(DATM)
航空情報サービス及び航空情報管理による情報のディジタル処理と管理を導入する
ことによって、電子航空路誌及びより良い品質と利便性を有するデータを利用可能と
する。気象情報、飛行情報及び航空交通情報を提供するための共通フォーマット及び
共通の通信手順を使用することによって、ATM 情報を統合する。
③ 情報管理・共有基盤の構築による作業効率の向上(SWIM)
安全性、セキュリティ、信頼性要件を十分に考慮した、ATM 関係者間の情報交換を
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可能とするインフラ及び監視機能を実現することによって、飛行イントラネット作成
及び相互運用性を最大化する。各種航空情報のフォーマットを統一することによって、
地上・機上から必要な情報に、誰でも簡単にアクセスできるようにする情報管理を実
施する。
④ 運用効率及び安全性を支援する気象情報の拡大(AMET)
柔軟な空域管理、改良された状況認識と協調的意思決定及び、タイムリーに最適化
された全世界的、地域的及び局所的気象情報を管理することによって、観測された気
象情報が飛行場や航空路の空域に影響を及ぼす場合に、信頼性のある解決策の決定を
可能とする。
⑤ 全世界的に相互運用可能なシステムの構築と情報管理(FRTO)
管制機関のコミュニケーション、監視及びフライトデータ管理能力をより高度に改
善し、絶えず変わる飛行中の気象状況の変化などによる航空機の飛行経路を柔軟に再
ルーティングすることによって、(燃料消費抑などの)効率的運航を可能とする。
⑥ 協調的な航空路管理による航空交通量の管理(NOPS)
出発時間の管理、空域へのエントリー管理、中間地点あるいは FIR/セクタ境界の飛
行時間を管理することによって、飽和しているエリア空域の統合管理、飛行の優先順
位付けなどの協調的な航空交通量維持を可能とする。
⑦ 地上監視に対する能力(ASUR)
空港内において、地上作業者(車)の監視情報と航空機の位置情報をもとに、空港内
での移動体の位置を処理・表示させることによって、空港内の航空管制業務の安全性を
向上させる。:
3.3 「運航効率の向上及び柔軟な飛行」分野
「運航効率の向上及び柔軟な飛行」では、表3に示すように4つのモジュールを設定し、
各モジュールは以下に示す機能を有している。
Block0
B0-ASEP
Air Traffic Situational
①
Awareness (ATSA)
Block1
B1-ASEP
Increased Capacity and
Efficiency through Interval
Management
Block2
B2-ASEP
Airborne Separation (ASEP)
B0-OPFL
Improved access to Optimum
② Flight Levels through
Climb/Descent Procedures
using ADS-B
B0-ACAS
③ ACAS Improvements
B0-SNET
④ Increased Effectiveness of
Ground-based Safety Nets
Block3
B2-ACAS
New Collision Avoidance
System
B1-SNET
Ground-based Safety Nets on
Approach
表 3 「運航効率の向上及び柔軟な飛行」モジュール概要
① 航空交通状況認識、間隔管理による運航容量及び効率の増加(ASEP)
パイロットがコックピットにおいて周辺の他航空機を認識表示する。それにより、
合流する軌道の航空機間の精密管理によって運用の効率を図っている管制官の負荷を
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軽減する。その結果として、空域における運航容量を増加させる。
② 最適飛行高度へのアクセス方式の改良(OPFL)
ADS-B の情報を使用して他機との飛行間隔を把握し、安全な飛行間隔を維持したま
ま高度を変更することを可能することによって、気象状況などによる巡航中の上昇/降
下を安全に行い、最適飛行高度への変更を可能とする。
③ 航空機の衝突防止策の向上(ACAS)
既存の空中衝突防止装置(ACAS:Airborne Collision Avoidance System)に対して、
従来の安全レベルを維持しつつ誤警報を減らすための改善を行うことによって、回避
行動の細分化を行い、飛行ルートの逸脱を減らし安全性を向上させる。
④ 地形衝突への安全性向上(SNET)
空中の各飛行フェーズにおいて、飛行安全へのリスク増大(地上への接近)による
警告をタイムリーに提供するとともに、航空機の運用環境を監視することによって、
最終アプローチで航空機が地形事故に向かうリスクを減少させ安全性を向上させる。
3.4 「効率的な飛行経路」分野
「効率的な飛行経路」では、表4に示すように4つのモジュールを設定し、各モジュ
ールは以下に示す機能を有している。
Block0
B0-CDO
Improved Flexibility and
① Efficiency in Descent Profiles
(CDO)
Block1
B1-CDO
Improved Flexibility and
Efficiency in Descent Profiles
(CDOs) using VNAV
B0-TBO
Improved Safety and Efficiency
②
through the initial application of
Data Link En-Route
B0-CCO
Improved Flexibility and
③ Efficiency in Departure Profiles
- Continuous Climb Operations
(CCO)
B1-TBO
Improved Traffic
Synchronization and Initial
Trajectory-Based Operation.
B3-TBO
Full 4D Trajectory-based
Operations
B1-RPAS
B2-RPAS
Initial Integration of Remotely RPA Integration in Traffic
Piloted Aircraft (RPA) Systems
into non-segregated airspace
B3-RPAS
RPA Transparent Management
④
Block2
B2-CDO
Improved Flexibility and
Efficiency in Descent Profiles
(CDOs) using VNAV, required
speed and time at arrival
Block3
表4 「効率的な飛行経路」モジュール概要
① 柔軟かつ効率的な進入降下方式の改善(CDO)
航空機の着陸時において、連続降下運用(CDO:Continuous Descent Operation)
を行うことで、管制官による航空機の運航効率の最適化、降下段階での燃料効率の向
上、混雑したターミナルエリアの離発着容量増加を行う。
② 飛行中における、高度化された航空機管理の改善(TBO)
航空路の合流点などにおける航空交通流を最適化する、及び空港周辺での待機時間
短縮などの効率的な航空機の飛行計画を策定するための「時間軸を考慮した軌道ベー
ス運用(4D Trajectory based Operation)」を実現することによって、航空機の効率
的な運航判断を支援することを可能とする。
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この解説記事に対するアンケートにご協力ください。
③ 柔軟かつ効率的な出発上昇方式の改善(CCO)
航空機の出発時において、連続上昇運用(CCO:Continuous Climb Operation)を
行うことで、管制官による航空機の運航効率の最適化、上昇段階での燃料効率の向上、
混雑したターミナルエリアの離発着容量増加を行う。
④ 遠隔操縦の飛行機(無人機など)と一般航空機の混合管制(RPAS)
民間航空機が飛行する一般空域において、遠隔操縦の飛行機(RPA:Remotely
Piloted Aircraft)と一般航空機との混合運用を行うための技術開発(周辺にいる航空
機の検出及び回避措置など)及び運用方式を確立する。最終的には空域内で完全に統
一的な運用を可能とする。
4. まとめ
本稿で紹介した ASBU の構想は、立案後に航空機産業等と合同のシンポジウムなどを
開催し、航空管制部門だけでなく産業界も含めた幅広い関連者を集めて討議を行い、そ
の改善が続けられている。これにより、航空機の運航に関連する部門のコンセンサスが
得られ、運用上のゴールを設定することによって、航空機のサービスにおいて革新的な
フレームワークを実現することができる。
しかし、ASBU に関連する標準、手続き及びガイダンス資料などの作成が引き続き必
要であり、各国の具体的なシステム構築までには時間が必要とされている。また、ASBU
の方針は「1 つのシステムがすべてに適合する」というアプローチではなく、柔軟で実
情にあったシステムを構築することが目的とされている。ASBU は、各国の航空機の飛
行密度、あるいは運用上のニーズに基づいて対応策を選択することができるため、ASBU
に設定されている対応策の全部をすべての国のシステムに適用することを必要としてい
ない。
以上のように、
ASBU は基本形態が示されたに過ぎず、各航空管制機関には詳細要求、
具体的な方策を詰める作業が残っている。そのため、引き続き ICAO 及び海外動向など
を注視していく必要がある。
参考文献
1) Working Document For The Aviation System Block Upgrades
ISSUED: 28 MARCH 2013
http://www.icao.int/Meetings/anconf12/Documents/ASBU.en.Mar.%202013.pdf
2) 2013-2028 Global Air Navigation Capacity & Efficiency Plan (DRAFT)
Doc 9750 APPENDIX
http://www.icao.int/Meetings/anconf12/Documents/Draft%20Doc%209750.GANP.en.
pdf#search='Global+Air+Navigation+Plan'
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