マグネシウム精錬プロセスへのCBMの利用とCO2炭層固定の可能性

マグネシウム精錬プロセスへのCBMの利用と
CO2炭層固定の可能性
NPO法人地下資源イノベーションネットワーク
出口 剛太
北海道大学大学院工学研究科資源システム工学研究室
大賀 光太郎
資源・素材2009(札幌)
内 容
•
•
•
•
•
•
背景
CCSとCO2-ECBM
中国のCBM開発
中国マグネシウム精錬産業の現状とCO2排出
ピジョンプロセスへのCO2-ECBM適用可能性
まとめ
背 景
世界の一次マグネシウムの約80%は中国で生産
熱還元法(ピジョンプロセス)による生産
・エネルギー多消費(主に石炭燃料)
・CO2排出係数が高い
中国マグネシウム生産の約80%は山西省に集中
山西省は中国有数の石炭&炭層メタン(CBM)賦存地域
中国11次5カ年計画
・2010年にはCBM生産量を2006年比で20倍に
CO2排出削減対策(燃料転換&CCS, CO2-ECBM)
・CBMをマグネシウム精錬のエネルギー源に
・CO2分離回収・炭層固定 → CBM増産
CCS:CO2 Capture and Storage
二酸化炭素の回収・貯留に関する特別報告書
Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage
モントリオールで開催されたIPCC 第3作業部会において発行承認
(2005年9月)
大規模排出源でCO2を分離・回収し、長期間にわたり貯留・隔離することで
大気中へのCO2の放出を抑制する技術
CO2の分離・回収、輸送、圧入、及び貯留という4つの機能
分離・回収には、化学吸収法、物理吸収法、膜分離、物理吸着、及び深冷
分離等がある
輸送はパイプライン、タンクローリー、船舶等
地中貯留と海洋貯留に分けられるが、地中貯留が先行
地中貯留には、帯水層貯留、石油・ガス増進回収(EOR、EGR)、枯渇油・
ガス層貯留、及び炭層固定(ECBM含む)等
CCSの有効性
地中貯留のポテンシャル:2兆トンCO2
(世界の排出量の80年分)
海洋貯留のポテンシャル:数兆トンCO2
2100年までに世界全体の排出削減対策のうち、CCSは
累積で15∼55%貢献する
CCS:CO2地中貯留の区分
炭層固定の優位性
炭層へのCO2の吸着
CH4の回収
CO2-ECBM
その他
深部石炭層
枯渇油田・ガス田
帯水層
増進回収-油田・ガス田
出典: IPCC Special Report on CCS
中国のCBM資源
• CBM資源量31兆m3(300-2,000m)
• 在来型天然ガス資源量30兆m3
• CBM有望区域−115区域 (平均ガス包蔵量 9.8 m3/t)
オルドス炭田
平均ガス包蔵量
平均メタン濃度
平均埋蔵量
平均飽和度
9.8 m3/t
90.6 %
1.15 億m3
41 %
沁水炭田
中国におけるCBM開発
CBM生産量(100万m3)
• 11次5ヵ年計画(2006)
• CBM生産量2.5億m3(2006)→50億m3(2010)
• 主に山西省(沁水炭田・オルドス炭田)
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
その他
山西省
2006
2007
2008
2009
2010
年
中国のCBM生産計画
(11次5ヵ年計画より作成)
主要CBM区域の状況
項目
単位
沁水炭田
オルドス炭田(東翼)
炭層深度
m
300 ~ 1,000
500 ~ 1,500
炭層厚さ
m
-
8 ~ 13
CBM包蔵量
m3/t
19 ~26
12 ~ 23
ガス透過率
md
0.5 ~ 1.0
1.0
CBM埋蔵量
m3/km2
2
-
計画生産能力
億m3
30
16
計画生産量
億m3
40
11
中国マグネシウム精錬の現状
• 中国の生産量 約66万トン(2007)
• 全世界生産量の約80%
• 中国の約80%は山西省で生産
China
% by China
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
2000 01
02
03
一次Mg生産量の推移
04
年
05
06
07
08
(世界マグネシウム協会資料より作成)
中国の生産割合 (%)
一次MG生産量 (1,000t)
Global
マグネシウムの精錬工程
2
CaCO3・MgCO3
ドロマイト採掘
CO2
CO2
珪岩
粉砕
石炭
鉄
燃料
フェロシリコン製造
1
FeSi2
焼成
燃料
粉砕
CO2
MgO
混合
CO2
CaCO3・MgCO3 → CaO・MgO + 2CO2
2
Fe2CO3 + 4SiO2 + 11C
→ 2FeSi2 + 11CO
ブリケット化
3
3
燃料
1
→ 2Mg + (2CaO・SiO2) + (Fe)
還元
インゴット製造
2(CaO・MgO) + (Fe)Si
Mg
一次マグネシウム精錬工程のLCA (石炭使用)
Energy Balance
537MJ/kg-Mg
ブリケット
その他 30
15
焼成
83
還元
221
フェロ
シリコン
188
GHG Balanc e
47kg-CO2/kg-Mg
ブリケット その他 2
1
焼成
13
還元
17
フェロ
シリコン
14
ピジョンプロセスへのCO2-ECBM適用可能性
モデルケース(山西省)
・ 操業規模(Mg年間生産量):10,000トン)
・ 操業年数:15年
・ 稼働率:95%
・ 燃料:石炭
CO2排出量
(t-CO2/y)
Fe-Si生産
140,000
ドロマイト焼成
130,000
(非エネルギー起源)
(40,000)
Mg還元
170,000
ブリケット化
10,000
その他
20,000
合計
Fe-Si生産
1,880,000
ドロマイト焼成
エネルギー
(GJ/y)
470,000
燃料転換
石炭→CBM
CCS
CO2分離回収
CBM
CO2
炭層固定
830,000
Mg還元
2,210,000
ブリケット化
150,000
その他
300,000
合計
5,370,000
CBM
増産
CBMに関する基本条件
項 目
単 位
数値
CBM埋蔵量
Mm3/km2
CBM可採埋蔵量
Mm3/km2
100
CBM可採埋蔵量
(CO2-ECBM)
Mm3/km2
150
CO2-ECBM増産率
200
初期貯留層圧での吸着量
CH4:13m3/t
CO2:20m3/t
石炭の吸着特性(沁水炭田の石炭)
%
50
最大CO2貯留量
t-CO2/km2
450,000
CBM生産量
m3/d
1坑井当り
3,000
CBM生産量
(CO2-ECBM)
m3/d
1坑井当り
4,500
CO2圧入量
炭層厚さ:10m
ガス包蔵量:16m3/t
t-CO2/d
1坑井当り
40
Alberta Research Council:Development of China’s
CBM Technology / CO2 Sequestration Project, Final
Project Report, Project No. A-030841, Canada, March
2007
沁水炭田でのCO2-ECBM解析事例 (by ARC)
・炭層深度:470m
・炭層厚さ:6m
・ガス包蔵量:16m3/t
・ガス透過率:2md
・初期貯留層圧:1.3MPa
生産井
注入井
Alberta Research Council:Development of China’s CBM Technology / CO2 Sequestration Project, Final Project
Report, Project No. A-030841, Canada, March 2007
CO2-ECBMを適用したMg精錬主要工程
CO2排出削減:47万トン→16万トン
CBM (CH4)
80 Mm3/y
CBM (CH4)
114 Mm3/y
CBM (CH4)
34 Mm3/y
電気
煙道ガス
排熱
発電所
ドロマイト
CO2
40,000 t/y
電気
CBM (CH4)
21 Mm3/y
電気
生産設備
圧入設備
焼成工程
CBM (CH4)
4 Mm3/y
配送設備
12~16MW
大気
CO2
140,000 t/y
Fe-Si
CO2
260,000 t/y
ブリケット
CBM (CH4)
55 Mm3/y
還元工程
CO2 分離
回収装置
煙道ガス
排熱
CBM (CH4)
114Mm3/y
地表
CO2-ECBM鉱区
10 km2
主にN2
大気
その他工程
Raw Mg
CO2
300,000 t/y
CO2
20,000 t/y
石炭層
生産井:78本
圧入井:22本
全鉱区 12.1 km2
CBM燃焼によるCO2分離回収を伴わない場合
CO2排出削減:47万トン→38万トン
CBM (CH4)
80 Mm3/y
CBM (CH4)
100 Mm3/y
煙道ガス
排熱
ドロマイト
CBM (CH4)
21 Mm3/y
CBM (CH4)
20 Mm3/y
圧入設備
CO2
140,000 t-/y
Fe-Si
CO2
40,000 t/y
煙道ガス
排熱
CBM (CH4)
100 Mm3/y
大気
CO2
220,000 t/y
ブリケット
還元工程
電気
生産設備
焼成工程
CBM (CH4)
55 Mm3/y
配送設備
7~9MW
CO2
40,000 t/y
CBM (CH4)
4M m3/y
電気
発電所
地表
CO2-ECBM鉱区
10 km2
CO2
20,000 t/y
その他工程
石炭層
Raw Mg
生産井:95本
圧入井:3本
全鉱区 12.1 km2
ま と め
中国のマグネシウム生産量は世界の80%(66万トン, 2007)
大部分が石炭を燃料とするピジョンプロセスにより生産
マグネシウム1トンの生産
→47トンのCO2を排出
マグネシウム精錬工場は山西省に集中(80%)
山西省は石炭資源が豊富で、CBMの賦存量も多い
燃料転換+CCS技術(CO2-ECBM)を適用
→大幅なCO2排出削減が可能
年産1万トンのモデルケースでは66%の削減が可能
天然ガス・コークスガス・石炭ガスや廃熱の利用も開始
現地調査に基づくシミュレーションや経済性検討が必要
我が国に蓄積された経験・技術が果す役割は大きい