概要 - SFCフランス語研究室

《SFCのフランス語》概要
― 2008 年度 ―
1 はじめに
フランス語は「楽勝」ではないが、挑戦に値する。
フランス語で人類史に残る著述を残した知識人・文人は枚挙に暇がありません。16 世紀の作家
ラブレーや思索家モンテーニュ、17 世紀の哲学者デカルトや劇作家モリエール、18 世紀啓蒙思
想のルソーやヴォルテール、19 世紀の作家スタンダール、政治思想家トックヴィル、20 世紀の小説
家プルースト、哲学者サルトル、人類学者レヴィ=ストロース……。まさに彼らによって鍛えられ、磨
き上げられてきたフランス語は、精緻な文法体系によって構築されていながら鈍重さを感じさせな
い、明澄で、エレガントで、しかも民衆文化的な野趣にも富んでいる言語です。
フランス語はまた、国連をはじめとする多くの国際機関において英語に並ぶ公用語であり、英語
に次ぐ作業言語です。そして、欧州連合(EU、加盟 27 ヶ国)の域内はもちろん、カナダ、レバノン、
北アフリカのアルジェリア・モロッコ・チュニジア、中央アフリカのカメルーン・セネガル・コートジボワ
ール等々へのパスポートの一つです。フランス語圏の諸国は「フランコフォニー」という政治的・文
化的ネットワークを営んでいますが、その加盟国は 55 ヶ国にのぼります。世界の 4 分の 1 以上の
国々が参加しているのです。
フランス語を学べば、フランス的な知性および価値観を発見するとともに、世界を見る「もう一
つの視座」を得ることができます。フランス語の学習は、日本人にとって、対米関係という、なるほ
ど重要不可欠ではあるけれども、ときに窮屈で疎外的ですらある枠組みを相対化し、かつ、東アジ
アというこれまた重要ではあるけれども限定されている地域をも超えて、広く多様な世界の現実を
立体的に捉えることにつながるのです。
ただし、フランス語は「楽勝」科目ではありません。一年やそこらで手っ取り早く習得できる言語で
はないのです。生半可な覚悟では上達できません。しかし、本気で粘り強く学び続けるなら、習得
の喜びと見返りは絶大です。SFCフランス語研究室は、速習インテンシブの授業を1、2、3の3段
階に加えて、2007 年度からは新たに4の段階まで用意し(SFCでインテンシブ4が設置されている
のはフランス語だけです)、SFC生のうちでも特に向学心の強い学生諸君の意欲に応える態勢を
整えました。4名の専任教員と、トップレベルの非常勤講師陣が一体となって、本格的なフランス語
教育を提供します。
2.科目ごとの授業内容
科目名
ひと言で
到達目標(暫定的な目安として)
い う と
能力・資格試
欧州評議会設定レベル
……
験
イ ン テ ンシ 《SFCフラ DELF A1
レベル 1
ブ1
語》のメイ TCF100-199 フランス語の基礎レベル。日
(4 単位)
ンコース, 点
常生活での単純且つ具体的
初級速習 仏検 3 級
な状況を理解する。相手がゆ
第1段階
っくり話すなら, 簡単なコミュニ
ケーションも可能。
1
授 業 時 クラス数と
間:
定員
回数/週
100 分
×4 回
2 クラス,
各 15 名
イ ン テ ンシ 《SFCフラ DELF A2
ブ2
語》のメイ TCF 200-299
(4 単位)
ンコース, 点
初級速習 仏検準 2 級
第2段階
100 分
×4 回
2 クラス,
各 15 名
イ ン テ ンシ
ブ3
(4 単位)
100 分
×4 回
(うち 2 回
は 2 クラス
合 同 授
業)
読み書き
重点クラス
1,
話す・聞く
重点クラス
1,
各 15 名
100 分
×4 回
(うち 2 回
は 2 クラス
合 同 授
業)
読み書き
重点クラス
1,
話す・聞く
重点クラス
1,
各 15 名
90 分
×2 回
90 分
×2 回
2 クラス,
各 32 名
2 クラス,
各 32 名
90 分
×1 回
テーマ別,
計 4 クラス,
定員なし
イ ン テ ンシ
ブ4
(4 単位)
ベーシック
1(2 単位)
ベーシック
2
(2 単位)
スキル
(2 単位)
海外研修
(2 単位)
レベル 2 (Basic User)
フランス語の初歩をマスター。
身近な分野の単文を理解す
る。
慣れた状況でならコミュニケー
ションが可能。自分に関する
問題を単純な手段で表現出
来る。
レベル 3
《SFCフラ DELF B1
語》のメイ TCF 300-399 フランス語を効果的にマスター
しているが, 限界がある。身近
ンコース, 点
中級強化 仏検 2 級
な分野の明快で標準的な表
第1段階
現なら理解する。旅行先で会
話をこなし, 自分に興味のあ
ることを話すことが出来る。計
画やアイデアに関して短く説
明することも可能。
《SFCフラ DELF B2
レベル 4 (Independent User)
語》のメイ TCF 400-499 フランス語を全般にわたって
ンコース, 点
自主的に運用出来る。複雑な
テキストの要点を理解すると同
中級強化 仏検準 1 級
時に, 一般的あるいは専門的
第2段階
な内容の会話に加わり, 筋の
通った意見を明確且つ詳細に
述べることが出来る。
初級入門 仏検 4 級
第1段階
初級入門 DELF A1
レベル 1
第2段階
TCF 100-199 フランス語の基礎レベル。日
常生活での単純且つ具体的
点
な状況を理解する。相手がゆ
仏検 3 級
っくり話すなら, 簡単なコミュニ
ケーションも可能。
レベル 5 (Proficient User)
上 級 の フ DALF C1
ラ ン ス 語 TCF 500-599 フランス語の優れた運用能力
運用能力 点
を持つ。含みのある難解な長
文テキストであっても, その殆
を 身 に つ 仏検 1 級
どを解し, 自分の社会的な立
けるため
場や 仕事, 学問と の関 わり,
の科目
あるいは他の複雑なテーマに
ついても, 流暢且つ論理的に
述べることが出来る。
短期留学 学生によって 学生によって異なる。
(春・夏)
異なる。
計約 70 時 定員なし
間
*「DELF/DALF」 :フランス文部省認定フランス語資格試験。世界 130 ヶ国で実施。
*「TCF」: フランス文部省認定フランス語テスト。英語の TOEFL のようなポイント制、証書は 2 年間有
効。全世界で統一的に実施。
*「仏検」 : 実用フランス語技能検定試験(財団法人フランス語教育振興協会主催)
2
①
②
③
①
②
授業風景(スキル・フランス語)
インテンシブ1~2では、フランスで出版された
教科書を使っています。
③ インテンシブ3~4には2つのコースがあります。
フランス語の文献や資料を読破して研究に使える
ようになることをめざす読み書き重点コースと、口
語コミュニケーションにおける実践的なフランス語
能力の獲得と向上をめざす話す・聞く重点コース
です。
●インテンシブ1、2、3、4
少人数クラスで精鋭を育成する速修コースです。このコースで仲間と切磋琢磨しながら本気で
学べば、約2年で中級以上のフランス語能力、すなわち《SFC のフランス語》における「黒帯」の実
力を身につけることができます。
少人数制で定員のあるコースですから、履修希望者全員を受け入れることができるとは限りませ
ん。フランス語の初心者を対象とするインテンシブ1の履修を希望する人は、別途指定される期日
までに「志望理由書」を提出してください。履修者はそれに基づいて選抜されます。
インテンシブ2、インテンシブ3、インテンシブ4の履修のためには、各学期の授業開始に先立っ
て実施される「選抜試験」に合格する必要があります。SFC 生なら誰にでも受験資格のある選抜試
験です。ただし、インテンシブ1を履修して成績AまたはBの評価を得た者には、その直後の学期
にインテンシブ2を履修する資格が自動的に認められます。同様に、インテンシブ2を履修して成
績AまたはBの評価を得た者には、直後の学期にインテンシブ3を履修する資格が、またインテン
シブ3を履修して成績AまたはBを得た者にはインテンシブ4を履修する資格が自動的に認められ
ます。
なお、インテンシブ3と4では、2クラスをコース別に編成します。
クラス
合同授業(週2回)
A
文法の理解とそれ
に伴う総合的演習
B
コース別授業(週2回)
フランス(語圏)の社会や文化を学びつつ、複雑な構文を苦にせ
ず、テキストや資料をスピーディかつ正確に理解できるような長文読
解力と、意見等を明快に記述するための作文力を育成する。
話題の文脈や場の状況に応じてスピーディに会話に加わり、聞き
取りやすい発音と適切な表現を駆使して筋の通った意見を述べる
ことができるような、自己表現能力・実践的会話能力を育成する。
学生諸君は、自分のフランス語学習の目的を見据え、自分の適性や学習スタイルを踏ま
えて、履修者選抜試験の際に、A・Bクラスのいずれかを選んでください。選抜試験合格者は、
定員の制限に抵触しないかぎり、希望するクラスに登録することができます。インテンシブ2におけ
3
る成績AまたはBの評価によってインテンシブ3の履修資格を得た者、インテンシブ3における成績
AまたはB評価によってインテンシブ4の履修資格を得た者は、学期始めにA・Bクラスのいずれを
希望するかをSFCフランス語研究室に届けるだけで、希望するクラスに登録することができます。
●ベーシック1、2
インテンシブよりもゆっくりしたペースで初級フランス語を学びます。2の修了がおよそ、インテン
シブ1修了のレベルに相当します。ベーシックを履修していて、もし本格的にフランス語を学びたく
なったならば、次の学期からはインテンシブコースに参入すべく、インテンシブの選抜試験に挑戦
すべきです。1、2とも、クラスによって教授法と内容が異なる場合があるので、フランス語研究室の
ホームページでシラバスを確認してください。
ベーシックの履修者の選抜は原則としておこないませんが、履修希望者が多すぎる場合には抽
選によって人数の調整をします。
●スキル
原典講読
フランス語の原典に直接アクセスし、厳密な読解力を養いながら、フランス語
の文章の面白みを知る。
口語翻訳表現演習 口語フランス語における実践的運用能力のレベルアップをめざす。
Le Plaisir de lire et フランス語のテクストを分析的に読み、要約し、コメントする能力を養成する。
d’écrire
文法
中級文法を本格的に学び、骨太なフランス語力を身につける。
Ecrire et convaincre 説得力のある文章を書くことをめざし、論拠の提示の仕方などを学ぶ。
*スキル・フランス語は、担当教員・授業名にかかわりなく、繰り返し履修して単位を取
得することができます。
*スキル・フランス語は、すでにインテンシブ4を修了しているか、あるいは、毎学期の
始めにSFCフランス語研究室が実施する予定の「スキル・フランス語履修資格試験」に
合格すれば、正規履修できます。
●海外研修
フランス語の「海外研修」はSFCの正規科目であり、学習レベルにかかわらず、履修できます。
実施時期は、毎年春と夏の長期休暇中です。研修に参加して一定の条件を満たした者は、その
次の学期に科目登録することにより
2単位を取得できます。このように
して、海外研修により最大4単位ま
で取得することが可能です。
研修地として認めているのは、フ
ランスのグルノーブル第3大学、フ
ランス東部ブザンソン市に所在す
るフランシュ-コンテ大学の応用言
語学センター(CLA)、中部ヴィシ
ー市と、そこに所在するクレルモン
-フェラン大学が設立した語学教育
機関「カヴィラム CAVILAM」、また、
ルーアン市、ボルドー市、マルセイ
ユ市、ストラスブール市に所在する
フランス政府認定の語学学校「アリ
アンス・フランセーズ」です。
4
3.授業体系図
レベル1
レベル2
インテンシブ1
B1
インテンシブ2
レベル3
レベル4
インテンシブ3
インテンシブ4
レベル5
スキル
フランス語で開講されている講義もありま
す。すなわち、 言語論、言語教育実践論、
現代文化論、文化共生論、地域と統合論、
社会統合論、デザインスタディーズ
B2
海外研修 (2-3月/8-9月)
4.教員スタッフ
■ 専任教員
氏名
古石 篤子(教授)
堀 茂樹(教授)
國枝 孝弘(准教授)
専門
・フランス語学
・言語教育政策
・第二言語習得論
・フランス語教育
・バイリンガリズムと言語
教育政策
・Le plaisir de lire-多
読-
・西洋思想史
・現代フランス研究
・フランス文学
・フランス文学、
・フランス語教育
・西洋思想の古典とわ
れわれの現在
・「よく生きる」&「共に
生 き る 」 ための思 想 的
探究
・フランス語を学ぶ、フ
ランス語の学び方を学
ぶ
・言語と思想、言語と芸
術
研究会
テーマ
パトリス・ルロワ(訪問
講師)
・フランス語教育
・異 文化の発信( 受
信に非ず!)
■ 非常勤講師
《SFCのフランス語》は、SFC専任教員だけでは到底成り立ちません。塾外から、日本でもトップレベ
ルの先生方に出講していただき、かけがえのない貢献をしていただいています。
井上美穂、VENDREDI-AUZANNEAU, Chiristine(ヴァンドゥルディ=オザノ,クリスティーヌ)、
GAILLARD, Nicolas(ニコラ・ガイヤール)、北村亜矢子、倉舘健一、GRNAC, Hélène(エレーヌ・
グ ル ナ ッ ク ) 、 國 分 俊 宏 、 JACQMIN, Claire ( ク レ ー ル ・ ジ ャ ク マ ン ) 、 塩 田 明 子 、 SUDRE,
Florence-Yoko(フローランス容子・シュードル)、DURRENBERGER, Vincent(ヴァンサン・デュラ
ンベルジェ)、DHORNE, France(フランス・ドルヌ)、平松尚子、FERNAGU, Cyril(シリル・フェルナ
ギュ)、山根祐佳
【以上、敬称略、アイウエオ順。尚、このリストには、「言語コミュニケーション科目」(いわゆる外国語
科目)としては扱われない、フランス語による講義科目の担当者も含まれています。】
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