研究論文: 論文 ORIGINAL ARTICLES 多チャンネル視聴環境におけるデジタルテレビの使用性 Usability of Digital TV in a Multi-channel Situation Q 李愚訓 Q 朴志洙 Q 柳東錫 大宇電子(株) 大宇電子(株) 大宇電子(株) Lee Woohun Park Jisoo Ryu Dongseok Daewoo Electronics Daewoo Electronics Daewoo Electronics Q Key words: Multi-channel situation, EPG, Interaction device 要旨 1.はじめに 本研究では多チャンネル環境におけるデジタルテレビの使用 デジタル放送は多チャンネルと双方向という側面から既存の 性の問題を EPG とインタラクションデバイスに焦点を絞って分 アナログテレビとは明確に区別される。既存のアナログ放送シ 析した。まず多チャンネル環境におけるデジタルテレビの視聴 ステムで提供するチャンネル数が 10-20 の水準であることに比 に対するタスク分析を行い SkyPerfecTV 加入者に対する使用性 べてデジタル放送の場合は映像圧縮技術によって数百のチャン の問題を調べた。その結果、(1)パーソナルな視聴環境、(2)視 ネルが鑑賞できるようになっている。また、プログラムの視聴 聴妨害をしない EPG の表示形式、(3)チャンネルナビゲーショ 以外にもインターネット検索、電子メールの送受信、Tコマー ンとプログラム探索を統合的に支援できるツール、(4)情報過 ス、インターネットバンキング、オンラインゲームなど様々な 多による認知的負荷の軽減、(5)迅速性と正確性を両立するイ 機能をテレビを通して行うことが可能となる。このような変化 ンタラクションデバイスなどとユーザーインタフェース設計の に伴って既存のアナログテレビ時代とは質的に異なった新たな ための要求条件を導くことができた。 生活文化が生まれてくると予測されるため、デジタルテレビの チャンネル数増加と双方向サービスの提供は単なる機能上のア これらの設計要求条件に基づいてパーソナルテレビという新 ップグレード以上の大きな意味を含んでいるといえる。 たなインタラクションスタイルを提案し、チャンネルバーやプ ログラムパレットなどのユーザーインタフェースの設計を行っ しかし、既に普及が始っているいくつかの先進国においてデ た。さらに仮想放送局をベースにこれらの設計結果を具現化し ジタルテレビのサービスが最初デビューした頃の期待水準には て使用性の向上を確認することができた。 及ばないところが多く、未だデジタルテレビの潜在力を十分に 生かしたサービスまたはキラーアプリケーションが普及してい ない。このような現象はまず関連技術の標準化の問題や放送シ ステム転換のための膨大な投資による消費者への経済的負担な Abstract どから起因していると思われるが、今まで新製品のゆえにユー This paper reports design results from a study into the ザー側の使用上の問題やニーズ より技術誇示に重点をおいて usability problems of a multi-channel digital TV focusing on EPG きた多くのメーカーの製品開発戦略にもその原因があると思わ and interaction device. We conducted task analysis on using れる[注1]。 digital TV in a multi-channel situation and made a research on 使用性の問題でデジタルテレビの多チャンネル視聴環境やイ television viewing experience of SkyPerfecTV subscribers in ンタラクティブサービスが一般のユーザーにとって魅力的なセ Japan. Upon the research, several design requirements were ールスポイントではなく、短所として受け取られる可能性も看 derived, e.g., (1) Personalized environment for viewing digital 過してはいけない。例えば 500 チャンネルを有するデジタル放 TV, (2) Unobtrusive EPG, (3) Integrated support tools for 送ならチャンネルサーフィンしながら放送の内容をざっと確認 channel navigation and program search, (4) Reduction of するだけで 80 分以上かかってしまう。また印刷されたプログ information overload, (5) Speedy and accurate control. ラムガイドを利用する場合なら 300 ページ以上の厚い雑誌をめ Based on these results, we suggested new interaction style ぐりながらその中から一つのプログラムを探さないといけない personal TV and designed user interfaces such as channel bar ことが現実の問題である[注2]。 and program palette. From the results of implementation based 使用性の問題がデジタルテレビの多くの長所を隠すような現 on virtual broadcasting station, we verified that suggested user 象が起こっているのである。このような観点からデジタルテレ interfaces were easier to use than those of traditional digital set- ビの製品競争力を決定する重要な要因としてユーザーのニーズ top boxes. に応じたコンテンツ提供と多チャンネル視聴環境を考慮したユ 1 がら、テレビの多チャンネル化が視聴態度にもたらす多様な変 ーザーインタフェースの使用性があると考えられる。 本研究はデジタルテレビの普及がもたらす多チャンネル視聴 化を把握した。ケーブルテレビより多チャンネル化が進んだデ 環境にまとをしぼり使用性の問題を分析した。特に多チャンネ ジタル衛星放送においても大抵類似した傾向が予測されるが, ル環境においてユーザーの視聴行為を支援するための そのまま当てはまるとは言い切れない。特に EPG の提供はケー EPG(Electronic Program Guide)の使用性の問題を分析し、こ ブルテレビと違ったデジタル放送の特徴であり、それによって れらの問題点を解決するための新しいインタラクションスタイ ユーザーの視聴態度にも少なからぬ影響があると考えられる。 ルとユーザーインタフェースの提案を試みた。 このような観点から、本研究ではまず多チャンネル環境におい て EPG を介した放送プログラム視聴の特徴や問題点を分析する 2. ことにした。 既往の関連研究 2.2. デジタルテレビのEPGとインタラクションデバイス 2.1. 多チャンネル視聴環境に関する研究 1980 年代の米国でケーブルテレビの普及とともにテレビの多 デジタルテレビのEPGに関した研究の多くは主にプログラム チャンネル化に関する研究が多く発表された。これらの多くの 自動推薦アルゴリズムの開発に主眼点をおいている。 研究[注3-7]が共通して指摘しているいくつかの主な発見を Ehrmantraut[注2]は各々のユーザーのプログラム選好類型に 整理してみると次のようなものが取り上げられる。 基づいて個人向けのプログラムガイドを提供できるようなEPG (1) 多チャンネル化に伴ったテレビ視聴時間の増大(Baldwin, を提案した。このパーソナルEPGはユーザーのプロファイルと プログラム記述子とのマッチングアルゴリズムを通じて具現さ 1988) れた。多様な使い手の操作能力に応じてユーザープロファイル (2) 視聴動機から見て慣行的利用(Ritualized use)より道具的 の初期化に手動、半自動、自動の3つのモードを設けているこ 利用(Instrumental use)の割合の増加(Rubin, 1984) とも面白いところである。一方、高橋らの研究はもっと実践的 (3) チャンネル専門化によってチャンネルを優先したプログラ な方法で多チャンネル環境におけるテレビの視聴態度を分析し、 ム選択現象(Webster, 1986) 自動化されたプログラム推薦モデルを構築しようとしている (4) 明確なお好みチャンネルの形成と偏食的プログラム視聴 [注8]。 (Heeter, 1988) EPGに関する比較的盛んな研究とは対比的にデジタルテレビ (5) 頻繁なチャンネル転換行為(Kaye & Sapolsky、1997)と広 用のインタラクションデバイスに対する研究はそれほど見られ 告回避(Heeter, 1988) これらの研究の中 Heeter[注6]は多チャンネル環境における ない。デジタルテレビのメーカーでは既存のプッシュボタン式 視聴者のチャンネル探索行為を3つの範疇に分類している。ま のリモコンに対する使用性の問題を認識しているが、テレビの ずプログラムガイドから見ようとするプログラムのチャンネル 視聴環境に適したインタラクションデバイスはまだ開発されて 番号を探したり、憶えているチャンネル番号を思い出して直接 いない。代替案としてリモコンにジョイスティックとトラック ターゲットチャンネルに移動していく場合、チャンネルをサー ボールを付けたデバイスが製品に適用されている。しかし、一 フィンして順次に検索しながら適当なチャンネルを選択して視 定の視聴距離を維持しながらソファに座って操作するテレビの 聴する場合(Channel choice)、興味のある一定のチャンネル 特殊性によってデスクトップ用のデバイスが家電の領域では非 (Search repertoire)が決まっており、そのなかから一部を選 常に使いにくくなることも珍しくない。 本研究はこのような状況を踏まえデジタルテレビの操作装置 択 的 に 探 索 し て 適 当 な プ ロ グ ラ ム を 視 聴 す る 場 合 (Channel の問題点を分析し新たなインタラクションデバイスを提案しよ switching)があると分析している。 うと試みた。 また、視聴態度に関する Kaye & Sapolsky の研究[注7]によ ると、多チャンネル化に伴って持続的視聴(Stretches)より チャンネルスキャン(Channel scanning)や短期チャンネル固定 3. 研究方法 (Mini stretches)が占める割合が相対的に増加し、全般的にチ 3.1. 多チャンネル視聴環境における視聴態度の分析 ャンネル転換の頻度が高くなる傾向が顕著に現れていると報告 デジタルテレビの多チャンネル環境における番組視聴上の問 している。特にプログラムの終了に際して広告回避(Zapping) 題点を分析し、ユーザーインタフェースの設計要求事項を導く やチャンネルスキャン、それから連射式チャンネル転換 試みを行った。そのためにまず多チャンネル環境でのテレビ視 (Rapid-fire channel switching)などが集中して行われている 聴に対するタスク分析を行った[注9]。タスク分析ではテレビ ことを明らかにしている。 の視聴に関連する視聴者(who)やコンテンツ(what)、時間 (when)など主な状況変数を抽出し、その組み合わせによって生 以上ケーブルテレビに関する既往の研究結果をレビューしな 2 表1 タスク分析に用いた状況変数のリスト 状況変数 視聴者(who) コンテンツ(what) 時間(when) 区分 一人 多数 目的性 連続性及び周期性 ジャンル 使用履歴 時間帯 曜日 季節 (viewing situation of real world) レベル 子ども、学生、独身男女、既婚男女、高齢者 1世代 、2 世代、3 世代 特定番組、不特定番組 特集及びイベント性番組、シリーズ物、定期放送 ニュース、映画、ドラマ、スポーツ、演劇、教育、音楽、ショッピング、娯楽 初期、慣れた後 朝、昼間、夕方、深夜 平日、土日、休日 春、夏、秋、冬 (computer-mediated viewing situation ) picture + EPG EPG Digital STB picture + EPG IR receiver a Input device Input device 500 video clips of MPEG1 & program information DB Synthesizing EPG and video image user user PC 100 channels a Stream from antenna EPG 図1 仮想放送局とそれを媒介に具現した多チャンネルテレビの視聴環境 成される多くの視聴状況に対して生じうるシナリオを枚挙する 送があるのにあえて仮想放送局を構築したのはユーザーインタ 方法を用いた(表1)。シナリオごとに必要な機能を記述してま フェース設計のためのプロトタイピング容易性と使用性テスト とめることで基本的アクション(Generic action)とオブジェク のための実験環境の統制可能性を求めたからである。仮想放送 ト(Generic object)を明らかにした。 局をベースにしたデジタルテレビのユーザーインタフェースの またタスク分析結果に基づきその中から仮説的問題状況を選 プロトタイピングは実製品への具現過程と比較して相当な時間 定し面接式の設問調査を行って使用性の問題を調べた。面接式 と経費の節約を可能にする。また仮想放送局を媒介して具現し の設問調査を行ったのは限られたサンプルの中からできるだけ た視聴状況は現実のそれとたやすく混同されるほど高度なリア 信頼性の高い結果を獲得するためであり、さらにエンドユーザ リティを提示することができるので、ユーザーインタフェース ーの使用上の不便を現場から聞き取るためであった。設問調査 の使い心地(直観的操作性、直接操作感、分かり易さ、簡便性 は日本の東京に居住する SkyPerfecTV 加入者 104 名を対象にし など)をテストすることが十分可能であった(図1)。 て 2000 年の 7 月から 8 月まで約2ヶ月にわたって行った。サ 仮想放送局を媒介した多チャンネル視聴環境は入力部と処理 ンプルの手配は極めて困難であったが、性別、年齢別デジタル 部それから出力部の3つのパーツに構成される。入力部はユー STB(Set-Top Box)使用実態を比較するために可能な限り均衡な ザーからのリモコンの赤外線信号を受信して RS232C ポートを 構成ができるようにした(表2)。 通じてコンピュータに操作シグナルを伝達する部分である。処 理部は 500 のビデオクリップ(100 チャンネル×5 プログラ ム)と各々のチャンネルとプログラムに関する情報データベー 表 2 調査サンプルの構成 区分 10 代以下 20 代 30 代 40 代 50 代以上 合計 男性 11 13 13 6 9 52 スを内蔵し、入力信号を受けて EPG の表示画面を生成する機能 女性 12 10 14 10 6 52 を行う。また処理部では番組の動映像と EPG を合成して出力部 に伝達する役割も行う。出力部は処理部から受け取った映像や 音響を表示するディスプレイ装置であり、本研究では 42 イン チの PDP(プラズマディスプレイパネル)を用いている。 4. デジタルテレビ視聴のタスク分析と現場調査の結果 多チャンネル視聴環境におけるデジタルテレビや STB の使用 3.2. 仮想放送局をベースにしたユーザーインタフェースのプ 性の問題に対してタスク分析と現場調査を行った結果について ロトタイピング 述べる。またその結果から導いたユーザーインタフェースのデ 仮想放送局とはある一定の時間帯のデジタル衛星放送番組を そのままコンピュータの中の入れたようなものであり、必要に ザイン上の要求条件について述べる。 応じて多チャンネル視聴環境が具現できる。実際のデジタル放 4.1. 多チャンネル視聴環境に対するタスク分析の結果 多チャンネル環境でのデジタルテレビの視聴に関するタスク 3 表 3 タスク分析の結果 Generic actions Generic objects 探索 番組 移動 チャンネル、EPG、メニュー 比較 番組 操作 番組、チャンネル 30 度 25 frequency 頻 Methods フィルタリング、ソーティング、キーワード検索、チャンネルサーフィン 線形移動、非線形移動、混合型移動 リスト一覧 視聴、購入、予約、情報確認、録画、予約録画、ブックマーク、推薦、視聴制 限、ブロッキング 20 15 10 5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 選好チャンネルの数 number of favorite channel 図 22 個人別選好チャンネル数の分布 個人別選好チャンネル数の 表 4 性別番組ジャンルの選好パターン 番組ジャンル エンターテ ドキュメン 趣味・生活 教育・教養 子供向け インメント タリー 情報 ニュース 音楽 映画 スポーツ ドラマ 女性(52 名) 0.42 0.29 0.46 0.56 0.27 0.52 0.69 0.33 0.23 0.38 0.33 0.27 0.15 0.13 0.21 0.29 0.06 0.15 0.13 0.15 総計 0.36 0.51 0.39 0.51 0.31 0.30 0.14 0.25 0.11 0.14 性別区分 男性(52 名) 各グループの1/3以上のサンプルが選好しているジャンル 且つ、性別に見てもっとも高い割合を示すグループ 表 5 年齢別番組ジャンルの選好パターン 番組ジャンル ニュース 音楽 10 代+20 代(46 名) 0.20 30 代+40 代(43 名) 0.40 50 代+60 代(15 名) 0.73 エンターテ ドキュメン 趣味・生活 教育・教養 子供向け インメント タリー 情報 映画 スポーツ ドラマ 0.63 0.28 0.50 0.24 0.30 0.09 0.20 0.07 0.15 0.42 0.47 0.47 0.37 0.33 0.14 0.28 0.09 0.19 0.40 0.53 0.67 0.33 0.20 0.33 0.33 0.27 0.00 年齢区分 各グループの1/3以上のサンプルが選好しているジャンル 且つ、年齢別に見てもっとも高い割合を示すグループ 分析を通じて探索、移動、比較、操作という 4 種類の基本的ア る視聴実態の調査項目の作成に反映した。 クションとチャンネル、プログラム、EPG の 3 種類の基本的オ 4.2. 多チャンネル環境における視聴実態の調査・分析結果 ブジェクトを明らかにした。探索のアクションはターゲットプ 4.2.1. パーソナルな視聴環境に対するニーズ ログラムを探し出す行為であり、通常フィルタリングやソーテ SkyPerfecTV 加入者 104 名に対する調査の結果、サービスし ィング、キーワード検索、チャンネルサーフィンなどの方法を ているチャンネルが 168 チャンネルで 19 の無料チャンネルと 用いる。移動にはチャンネル間の転換と EPG 上のナビゲーショ 有料チャンネルを合わせて視聴可能チャンネル数が平均 41.2 ンがあり線形移動や非線形移動、混合型移動などの方法を用い であり、その中、平均選好チャンネル数は 4.6 であった。選好 る。比較は視聴候補を一覧して視聴するプログラムを選定する チャンネル数の分布は図 2 に示されているように 1 から 4 まで 行為である。最後に操作はプログラムとチャンネルに対して視 頻度が高く 10 以上は非常に少ないことが明らかになった。ま 聴、購入、予約、情報確認、録画、予約録画、ブックマーク、 た視聴可能チャンネル数と選好チャンネル数の間には意味のあ 推薦、視聴制限、ブロッキングなどを行うことである(表3)。 る相関(r=0.21)が見られなかった。これらの分析結果からユー 以上のようなタスク分析結果から(1)視聴候補がないときの ザーは多チャンネル視聴環境において視聴可能なチャンネル数 プログラムの探索、(2)ある視聴候補に移動していく場合、(3) と関係なく少数の明確なお好みチャンネルを形成していると解 視聴者間のチャンネル争い、(4)視聴妨害など使用性の問題が 釈された。 選好ジャンルに関する調査の結果 10 種類のジャンルの内、平 頻繁に生じうる状況を選定し、それを多チャンネル環境におけ 4 0 1 2 3 5 0.3 (1) Internet TV guide (1)インターネット TV ガイド 3.0 (4) Guide channel (4)ガイドチャンネル 2.2 図 3 プログラム探索手段の利用頻度 0.2 0.4 (1)家族の誰かに依存 0.8 (9) Channel preset (9)チャンネルプリセット 0.6 図 5 プログラム探索手段として EPG を利用しない理由 0 0.2 0.4 (1)家族の誰かに依存 (3)ガイドチャンネルの利用 0.19 (6)EPG の表示時間の遅延 0.16 0.02 (8)人の視聴妨害の心配 (9)その他 0.04 (9)その他 図 4 チャンネルナビゲーション手段の利用頻度 0.21 0.23 0.06 0.19 0.02 0.06 図 6 チャンネルナビゲーション手段として EPG を利用しない理由 均 2.9 のジャンルを好んでみることが分かった。全体的にみる まると予測された。 とスポーツ(0.51)と音楽(0.51)、映画(0.39)、ニュース(0.36)、 4.2.2. EPG 使用の回避 ドラマ(0.31)、エンターテインメント(0.30)などの順であった。 1 0.66 (7)EPG の表示情報の過多 (8)人の視聴妨害の心配 0.8 0.11 (5)EPG でチャンネル移動が困難 0.12 0.6 0.36 (4)EPG の操作方法が複雑 0.16 (7)EPG の表示情報の過多 0.7 (2)TV ガイド雑誌の利用 0.11 (5)EPG でチャンネル移動が困難 1.8 1.0 (8) Giving up channel transition (8)チャンネルナビゲーションをやめる 1 0.58 (4)EPG の操作方法が複雑 (6)EPG の表示時間の遅延 0.6 0.39 (2)TV ガイド雑誌の利用 (3)ガイドチャンネルの利用 2.3 (7) Asking a person for assitance (7)他人に助けてもらう 0.1 5 0.6 (6) Channel Number & up/down (6)チャンネル番号入力とサーフィン 0.8 4 2.7 (5) Channel up/down (5)チャンネルサーフィン 1.0 (8) Giving up channel search (8)プログラム探索をやめる 3 2.5 (4) Guide channel (4)ガイドチャンネル 2.7 (6) Channel Number & up/down (6)チャンネル番号入力とサーフィン 2 (3) EPG (3)EPG 1.0 (5) Channel up/down (5)チャンネルサーフィン (7) Asking a person for assitance (7)他人に助けてもらう 1 0.3 (2) Printed TV guide (2)TV ガイド雑誌 2.1 (3) EPG (3)EPG 0 0 (1) Internet TV guide (1)インターネット TV ガイド (2)ガイド雑誌 Printed TV guide (2)TV (9) etc (9)その他 4 EPG は多チャンネル視聴環境においてプログラム探索とチャ またジャンル別プログラムの選好パターンを調べた結果、104 ンネルナビゲーションのためのツールとしてハードウェアに搭 名の応答者に対し有意水準 10%の同一性検定を通じて年齢別 載されており、その有用性を疑うことは今まであまりなかった。 (P-value < 0.01), 性別(P-value = 0.05)有意差を確かめた。 しかし、デジタルテレビにおいてプログラム探索とチャンネル 男性の場合、スポーツ、ニュースなど主に実況中継型の放送を ナビゲーションのために用いる手段の使用頻度を5点尺度で評 好む傾向を見せた。一方、女性の場合は、映画、ドラマなど物 定してもらった結果、多くのユーザーが EPG の使用を回避して 語の構造をもつプログラムを選好する傾向を表した(表4)。年 いることが明らかになった。 齢によるプログラム選好パターンを見ると若いほど好むジャン まず特定の視聴候補がなくプログラムを探索する場合、テレ ルが少なく加齢によってその種類が多様になる現象が見られた ビガイド雑誌(3.0)、チャンネルサーフィン(2.7)、大体の (表5)。しかし、音楽番組の場合は男女と老少を問わず多くの チャンネル番号入力後サーフィン(2.2)、EPG の使用(2.1) 人が共通して好んでいることが明らかになった。 の順番であった(図3)。全体サンプルの 55%(57 名)の応答者 多数の人が一つのテレビを視聴する場合ありうる視聴妨害の が EPG をまったく利用していないと答え、EPG 使用回避の現象 深刻さと他のチャンネルに対する好奇心の強さを 4 点の尺度を を確実に表した。調査項目から除かれて正確な確認はできなか 用いて評定した結果、それぞれ 0.3 と 1.3 を記録し、予測した ったが、視聴履歴の増加に伴ってプログラム探索行為自体が減 より視聴妨害の深刻さは低かった。このような結果は視聴環境 少する可能性も既往の関連研究の結果[注6]から十分推論でき に関する調査項目から得られた 271%にも及ぶテレビの高い普 た。またチャンネルサーフィンをプログラム探索の手段として 及率とデジタル放送とアナログ放送が共存する現在の視聴環境 頻度高く用いていることも注目すべき結果であった。プログラ が大きく関係していると解釈された。すなわち視聴妨害を解決 ムの探索のタスクに EPG を利用しない 57 名のサンプルを対象 する代替的な手段が十分存在するからである。しかし、テレビ にその原因について調べた結果、代替手段(テレビガイド雑誌 の放送システムが完全にデジタルに転換したら、今のように一 と他の人)の利用と EPG の使いにくさが主な理由と取り上げら 台の STB で一つの放送しか見られない環境では多くの問題が現 れた。特に EPG の使いにくさに関してはタスク遂行の困難さや れると考えられる。ともかく調査結果を通してテレビ視聴に関 操作方法の複雑さ、情報の過多などの理由が指摘された(図4)。 する好みの個人差を十分に考慮したパーソナルな視聴環境に対 チャンネル番号を知らずにチャンネルナビゲーションを行う するニーズを十分読むことができ、これからその要求がより強 場合はテレビガイド雑誌(2.7)、EPG の使用(2.5)、チャン 5 ネルサーフィン(2.3)、大体のチャンネル番号入力後サーフ ネルナビゲーションの割合が増加することになるので、デジタ ィン(1.8)の順番であった(図5)。チャンネルナビゲーショ ルテレビの使用性も全般的に落ちることになると予想される。 ンに EPG を利用しない 47 名のサンプルを対象にその原因につ 4.2.5. EPG ナビゲーションにおける挫折感 いて調べるとチャンネル探索の場合と類似した結果が得られた 使用上の問題点に対する定性的な聞き取りの結果から EPG を (図6) 。しかし、チャンネルナビゲーションに EPG を利用す 使う応答者の多くが操作に数分以上の時間を費やしたり、途中 るユーザーが全体の 55%であり、プログラムの探索よりはチャ で初期目標を失い迷ってしまう経験があると答えた。また EPG ンネルナビゲーションのために EPG をより頻繁に使っているこ の利用によってほとんどの放送画面が遮蔽され断絶感を感じる とは興味深い結果であった。 こともある。このような現象は結局テレビ視聴に対する最適の 4.2.3. アナログテレビに対する親近感 フロー(Optimal flow)を損なう原因となるのである。 未だデジタル放送への過渡期であり調査の結果、全体の 95% このような使用上の問題は典型的な EPG の表示形式からその のユーザーがアナログ放送とデジタル放送を合わせて視聴して 原因を探ることができる。EPG による放送画面の遮蔽と過多な いることが分かった。上記のところでも述べたように年齢が高 情報量が最大の原因であると思われる。典型的な EPG のチャン くなるほどアナログ放送に対する郷愁や親近感が強いことがイ ネル×時間の 2 次元表示形式によって画面に表せるプログラム ンタービューから明らかになった。またプログラムの探索とチ 数は最大 30 個ぐらいである。STB が受信するプログラム情報 ャンネルナビゲーションにおいて、EPG 以外に既存のアナログ が約 150 チャンネル、2 週間くらいの量と計算すると EPG に表 テレビで用いられた方法をそのまま固守している傾向も明らか 示される 30 個はプログラム全体の 1/1000 にも及ばないごく一 になった。 部に過ぎない。したがって、チャンネル×時間という膨大な 20 チャンネルを超えないアナログテレビの視聴環境の場合、 EPG の表示形式は多くのユーザーに酷い挫折感を感じさせるも プログラム探索とチャンネルナビゲーションのタスクがほぼ同 のとなる。また、EPG に一回表示される 30 個くらいのプログラ じ意味を有することに注目すべきである。チャンネルスキャン ム情報もユーザーには認知的負担として感じられている。 をしながら同時にプログラムを探すようなヒューリスティック 4.2.6. インタラクションデバイスの問題 な操作がとっても自然に行われており、それに馴染んでいる一 現在デジタルテレビの操作のために用いているインタラクシ 般のユーザーはデジタルテレビの多チャンネル環境でも同じよ ョンデバイスはプッシュボタン、トラックボールそれからジョ うな戦略を駆使しようとしているのである。しかし、このよう イスティックなどがある。調査によるとプッシュボタンのみの なヒューリスティックなナビゲーション戦略が数百のチャンネ 操作装置を利用しているユーザーが全体の 78%でありジョイス ル環境ではよく当てはまらず深刻な問題を起こしている。 ティックとトラックボールはそれぞれ 14%と 8%であった。プ 4.2.4. チャンネルナビゲーションにおける深刻な問題 ッシュボタンを利用して階段式に EPG やチャンネルのナビゲー チャンネルナビゲーションと関連して移動成功率を5点尺度 ションを行うと操作数は膨大になってしまう。このような問題 に評定してもらった結果、満足できるくらいチャンネル転換が に対する解決策としてトラックボールやジョイスティックなど できる人が全体の 51%にしか及ばなかった。残り 49%の応答 を採用しているが、使いやすさの側面からみてまだ今一つの段 者は 5 回試みて平均 2 回くらいしか成功できないことが明らか 階である。このような使用性問題の解決のためにはテレビと数 になった。このような低い成功率から多くのユーザーが自分が メートルの視聴距離を維持しながらソファの上に座って楽な姿 見ようとする番組があっても探していくことができないような 勢で操作するという特殊な使用状況を十分考えなければならな 深刻な使用性の問題に悩んでいることが確認できた。多チャン い。 ネル環境におけるチャンネルナビゲーションの難しさはおそら 4.3. ユーザーインタフェース設計要求条件の導出 く膨大なチャンネル数とチャンネル番号の桁数増加によるもの タスク分析と現場調査を通じて多チャンネル環境におけるテ と推定される。チャンネル数の増加は操作数と操作時間を増や レビ視聴に関する使用性の問題を分析した結果、いくつかの興 すだけでなく、長いナビゲーション軌跡を覚えなければならな 味深い現象を明らかにした。 いユーザーにとって相当な認知的負担になりかねない。また 3 まず、Heeter の研究結果[注6]と整合するように多チャンネ 桁以上になったチャンネル番号によって当然入力上のエラーが ルテレビにおける偏食的なプログラム視聴行為が確認できた。 増大するとともに記憶に頼ることができなくなる。その他デジ また性別と年齢によってジャンル別プログラムの選好パターン タル化によってチャンネル転換に時間的遅延が生じてスムーズ における有意な違いが見られた。したがって、テレビ視聴をめ に移動できない技術的な問題も指摘された。 ぐる家族の団欒と構成員個人の満足を両立させることがこれか らデジタルテレビのユーザーインタフェースの設計において 視聴履歴が長くなればなるほどプログラムの探索よりチャン 6 表 6 パーソナルテレビの概念に基づいて提案された新機能 Living room 区分 Bedroom PPG Kitchen STB VCR チャンネル及び番組自動視聴制限 初期番組推薦 PersCon PersCon network 年齢、性別 ル PersCon 機能 チャンネル及び番組自動ブロッキング 1.ユーザー PPG プロファイ PPG 参照データ Neighborhood 2.視聴履歴 PPG 番組の周期性 留守中自動録画 と連続 自動視聴告示(reminder) 視聴時間帯 番組の種類 STB 選好ジャンル PersCon ワンタッチ・チャンネル移動 自動番組推薦 画面設定 3.操作履歴 最適視聴条件提示 音響設定 図7 パーソナルテレビの概念 支援するツール 重要な要求条件になると考えられた。 (3) EPG におけるタスクの細分化と情報空間の縮小 次に注目すべき発見として EPG に対する使用回避の現象とチ ャンネルナビゲーションにおける低調な成功率が取り上げられ (4) 視聴妨害を最小限にする EPG る。EPG が元々デジタルテレビの多チャンネル化に対応して主 (5) 迅速性と正確性を兼ねるインタラクションデバイス にプログラムの探索を支援する目的で開発されたものにも拘わ らず、プログラム探索よりむしろチャンネルナビゲーションの 5. デジタルテレビのユーザーインタフェースの設計 タスクにより頻繁に利用されていることも面白い結果であった。 5.1. パーソナルテレビの概念 さらにプログラムの探索とチャンネルナビゲーションのために デジタルメディアと通信技術の目覚しい発展によって放送 TV ガイドの利用や適当なチャンネル番号入力、チャンネルサー (Broadcasting)に対比して狭送(Narrowcasting)という概念 フィンなど既存のヒューリスティックな操作方法を固守してい が広まっている。また、テレビの高い普及率による個電化は視 る現象も見られた。すなわち既存のテレビ環境に馴染んでいる 聴パターンをより個人化している。SkyPerfecTV 加入者に対す ユーザーは多くの場合適当にチャンネルサーフィンをしながら る調査結果からも偏食的視聴行為とユーザーによる多様な選好 気に入るプログラムを選択して視聴するような探索的なアプロ パターンが確認できたが、テレビが提供するサービスが増えれ ーチをとっているのである。これらの調査結果からまずプログ ば増えるほどこのような現象はもっと顕著になっていくと思わ ラム探索だけでなくチャンネルナビゲーションのタスクも十分 れる。したがって、テレビ視聴をめぐる家族の団欒と個人の満 支援できるような EPG を設計する必要があると考えれれた。さ 足を両立することがユーザーインタフェースの設計においても らにプログラム探索とチャンネルナビゲーションを統合的に支 っとも重要な要求条件として取り上げられる。 このような背景に基づいて本研究から提案した新たなインタ 援するツールを開発することで EPG の使用性が一層改善できる ラクションスタイルがパーソナルテレビである。パーソナルテ と思われた。 EPG と放送画面との断絶感と EPG の膨大な情報量がもたらす レビの基本概念はユーザーが各々の操作装置を用いていつどこ 挫折感もユーザーインタフェースの設計において解決すべき問 でも各ユーザーのプロファイルや視聴履歴に合わせて最適化し 題点として取り上げられた。EPG によってテレビ本来の使用目 た視聴環境を提供する方式であり、シームレスなホームネット 的である寛ぎや楽しさのある番組鑑賞を損なわないようにしな ワーク環境を前提とする近未来向けのインタラクションスタイ ければならない。このような観点から見てチャンネル軸と時間 ルである(図7)。 軸を有する典型的な 2 次元 EPG の情報量と面積を縮小する必要 パーソナルテレビという概念を具現するため、本研究から提 がある。そのためには EPG におけるタスクの細分化と情報空間 案 し た も の に PPG ( パ ー ソ ナ ル ・ プ ロ グ ラ ム ガ イ ド ) と の縮小、それから視聴妨害を最小限にする EPG レイアウトなど PersCon(パーソナル・コントロール)がある。PPG に関しては に関する設計上の工夫が要求される。 Ehrmantraut[注2]において具体的なロジックを提案している 最後にインタラクションデバイスに関してはプッシュボタン が、PersCon に関しての提案はまだ行っていない。伝統的な家 を利用する際増大する操作数の問題とトラックボールやジョイ 族共有のリモコンに代わって個人用の操作装置の PersCon が必 スティックを用いる場合生じるポインティングの困難さの問題 要となるのは、家庭内の物理的な視聴空間の分化への対応と既 がある。多チャンネルのデジタルテレビ用の操作装置はこれら 存の共有リモコンにおいて要求された冗長な操作と情報の過負 の問題点を克服するものではければならない。 荷の軽減にその理由がある。PersCon によるユーザーの認識は 操作装置から操作信号と一緒に発信される ID シグナルを受信 以上分析結果から導いたデジタルテレビのユーザーインタフ ェースの設計要求条件をまとめると次のようになる。 して STB の方で行われる。STB はホームネットワークに繋がっ (1) パーソナル化した視聴環境 ており操作履歴をホームサーバーなどに貯蔵する。さらにゲー (2) プログラム探索とチャンネルナビゲーションを統合的に トウェイを通して外部のネットワークと繋がっており友人や親 7 1.aaa 2.bbb 3.ccc 4.ddd 5.eee 6.fff 7.ggg 8.hhh 9.iii 1 2 3 1.aaa 2.bbb 3.ccc 4 5 6 4.ddd 5.eee 6.fff 7 8 9 7.ggg 8.hhh 9.iii 図 8 ホイールとメニューバー(左) ダイレクト9とメニューパレット(右) 図 9 操作装置上にホイール(左)チャンネルバー(中央) タイムバー(右) 図 10 操作装置上のダイレクト 9(左) ジャンル別プログラムパレット(中央) メニューパレット(右) 戚の家を訪問した際にも不便なくデジタルテレビが利用できる。 とともに操作スピードを向上することができた。またフォーカ パーソナルテレビという概念を導入してユーザープロファイ シングされたプログラムの詳細情報を順次に表示することでプ ルや視聴履歴それから操作履歴などを蓄積することで各ユーザ ログラムの探索手段としても利用可能である。チャンネルバー ーに適した自動化機能を提供することが可能となる(表6)。も の上でフォーカスを移動して選択するまでは実際のチャンネル ちろんこれらの機能を具現するためにはまず有効なアルゴリズ チューニングは生じないようになっておりチューニング時間遅 ムの開発が行われるべきである。 延という技術的問題に対する解決案にもなる。チャンネルバー 5.2. ダイレクト9とホイールの採用 は過去と未来へと時間軸のシフトが可能であり、ある時間帯に 各チャンネルに放送されるプログラムも探索できるようにデザ チャンネルと EPG ナビゲーションにおいてプッシュボタンを インされた。 用いる場合の膨大な操作数の問題とトラックボールやジョイス ティックを採用する際に発生する操作エラーの問題を解決する タイムバーはチャンネル固定で時間軸にプログラム編成を確 ため、本研究ではダイレクト9とホイールを採択した新しい操 認する際、利用できるユーザーインタフェースである(図9の 作装置を提案した。ダイレクト9とは図8に示されているよう 右)。操作の方法はチャンネルバーと同じである。 に、9つのプッシュボタンが9つのメニュー項目と一対一に対 チャンネルバーとタイムバーのコンセプトは伝統的な2次元 応しておりメニュー項目間の移動なしで各々の項目が選択でき EPG が支援するタスクをチャンネル固定プログラム照会と時間 る方式である。ホイールはメニューバーの上をスクロールしな 帯固定プログラム照会の二つに細分化して、それぞれのサブタ がらターゲット・アイテムに接近する。ダイレクト9とホイー スクに適したユーザーインタフェースを設計することであった。 ルを併用することでチャンネルと EPG ナビゲーションに要求さ このようなタスク限定の(task-specific)インタフェースを れる操作数は減少できるし、直接操作感を増強することが可能 設計することで表示される情報空間が 2 次元のものから 1 次元 になる。 に減少するとともにユーザーへの認知的負荷も減らすことがで 5.3. チャンネルバーとタイムバー きると予測された。 5.4. プログラムパレットとメニューパレット チャンネルバーは多チャンネル環境におけるチャンネル転換 の困難さを克服するために提案されたものである(図9の中央)。 プログラムパレットはプログラムの探索、視聴候補の比較、 チャンネル移動などを統合的に支援するコンセプトから提案さ プッシュボタンをホイールに代替することで操作数を軽減する 8 EPG EPG EPG a.traditional EPG b.small EPG c. PIG(Picture In Guide) EPG d. BSD(Beside Screen Display) 図 11 視聴妨害の問題を解決するための EPG の表示形式 図 12 パーソナルテレビの具現 (a)操作装置の内部 (b)PersCon (c)リモコン信号受信部 (d)設計結果を具現してテストする場面 れたものでダイレクト9とホイールを併用して操作するように ラが整備される近未来には説得力のある提案として応用可能で した。プログラムパレットは全てのチャンネル情報はもちろん あると考えられる。 ジャンル別リストやお好みチャンネルリスト、お好みプログラ 6.ユーザーインタフェースの具現化とその評価 ムリスト、ブックマークリスト、予約プログラムリストなど多様 なサーチレパートリーをブラウジングするユーザーインタフェ 以上多チャンネル視聴環境におけるデジタルテレビの使用性 ースである(図 10 の中央)。3×3 の行列の表示形式にプログラム の問題を分析内容と、その解決のために提案した新たなインタ 情報を表示し、ユーザーが視聴候補間の比較を容易に行うよう ラクションスタイルと支援道具について述べてきた。本研究の にした。ダイレクト9を用いて一回の操作で9つの候補の中一 中で提案したパーソナルテレビの具現のために、子供用や大人 つを選択してチャンネル移動ができる。リストのアイテムが9 用、年寄り用の3つのタイプのPersConのプロトタイプを制作 つ以上の場合はホイールを用いてスクロールしながら素早いプ した(図12のaとb)。操作装置はPersConは実際動作しておりコ ログラムの探索が可能である。 ンピュータに繋がっているリモコン受信部に赤外線信号を送れ メニューパレットはプログラム探索やチャンネルナビゲーシ るようになっている(図12のc)。また、仮想放送局をベースに ョン以外にハードウェアセッティング、チャンネルやプログラ したプロトタイピング(図12のd)を通じて新たなユーザーインタ ムに対する多様な操作を行うためにメニューを呼び出して実行 フェースの使い心地(直観的操作性、直接操作感、分かり易さ、 する一連の行為を支援するためのユーザーインタフェースであ 簡便性など)を十分テストしながら設計を行ったが、本報では る(図 10 の右)。メニューボタンを押してメニューパレット形式 最終的な設計案に対して主にチャンネルナビゲーションのタス のポップアップメニューを開いてダイレクト 9 を用いて選択す クにおいて予想される平均操作数の算出結果をもとにその有用 る操作方法である。デスクトップにおいてマウスの右ボタンを 性の比較を試みた。 押すのと同じようにフォーカシングされたオブジェクトならい 平均操作数の計算は100のチャンネルと9つ以内のジャンル区 つもメニューボタンを押してポップアップメニューを呼出すこ 分を前提として行った。またプロトタイピングを通じてホイー とができるので直観的な操作が可能となる。 ル1回がプッシュボタン5つの操作数に相当することが確認され、 5.5. スモール EPG、PIG、BSD その結果を平均操作数の計算に反映した(表7)。 EPG の画面隠しの問題を解決するために本研究ではスモール 線形のチャンネルナビゲーション方法であるチャンネルバー EPG、PIG、BSD などの表示方法を提案した(図 11)。スモール の場合平均操作数が7.5回であり、既存のチャンネルスキャンの EPG は表示する情報を最小限に押さえ EPG が画面の中で占める 49.5回と比較してみると1/6以上減少した結果となった。また非 割 合 を で き る だ け 小 さ く す る 方 法 で あ る 。 PIG(Picture In 線形の方法を比較してみると、既存のチャンネル番号入力やジ Guide)はデータ放送などで試されている方式で EPG を背景にし、 ャンル別プログラムパレット、お好みチャンネルプログラムパ プログラム画面を縮小して前景におく構成をとる。BSD(Beside レットがそれぞれ3回、2.5回、2.5回に平均操作数を記録した Screen Display)と命名した表示方式は EPG と放送画面を2つ [注11]。既存のチャンネル番号入力の方法がユーザーに大きな の画面(例えばタッチスクリーン付き LCD モニターと PDP)に 記憶負担を要求するのに対して、ジャンル別プログラムパレッ 別々にディスプレイするものである。グラフィックターミナル トはプログラム探索を兼ねながら直観的な操作が可能となる。 とテキストターミナルを別々に使っている CAD システムと酷似 特に視聴履歴の長いユーザーほど大部分独自のサーチレパート した表示方式である。BSD のコンセプトを今の段階で具現する リーを形成しているので、お好みチャンネルプログラムパレッ ことは少々無理である。しかし、ホームネットワークのインフ トがより有効なツールとして使われると思われる。しかし、新 9 表7 チャンネルナビゲーション方法の使用性の比較 区分 線形 チャンネルサーフィン 方法 インタラクショ 予想平均 プログラム ンデバイス 操作数 探索支援 プッシュボタン 49.5 ○ チャンネルバー ホイール + プッシュボタン 非線形 7.5 ○ 3 × チャンネルごとにチューニングを行うため操作数と時間が膨大なも のとなる。しかし操作は簡単である。 迅速に各チャンネルのプログラム情報が確認できるためプログラム 探索にも相当役立つ。 チャンネル番号の入力 方法 特徴 一番直接的なチャンネル移動方法であるが、ユーザーの記憶負担が プッシュボタン 大きくチャンネル番号の増加に伴ってより多くの使用上の問題を含 んでいる。 ジャンル別 ダイレクト 9 + プログラムパレット お好みチャンネル プログラムパレット ホイール ダイレクト 9 + ホイール 2.5 ユーザーの記憶負担が少なく、プログラム探索や視聴候補間の比較も ○ 容易である。間違ったチャンネルへの移動可能性が多少ある。 ユーザーの記憶負担が少なく、プログラム探索や視聴候補間の比較も 2.5 △ 容易である。リストに属しないチャンネルへの移動は不可能であ る。 問題に関しても研究する必要があると考えられる。 しい二つの提案はユーザーの判断ミスによってチャンネル移動 に失敗(Disorientation)する可能性があるという短所を有する。 注および参考文献 チャンネル移動のための方法にはそれぞれ長所と短所があり 1) 多様な組み合わせのツールセットをユーザーに提供することで Engelbrecht, F. and Engelbrecht, L.: Electronic Program Guide, Phillips Business Information, 1998 選択的に利用できるようにした方が望ましいと思われる。 2) テレビは日常頻繁に使われるものであり一回の操作数の増加 Ehrmantraut M. et. al.: The Personal Program Guide, In Proceedings of CIKM ‘96, 243-250, 1996 はユーザーに大きな使用上の負担となる。このような観点から 3) みて本研究を通して新たに提案したユーザーインタフェースの Baldwin, T.F. et. al.: News viewing elaborated, In C.Heeter and B.S. Greenberg(eds.), Cable viewing , NJ: Ablex., 179-190,1988 有用性は十分検証されたといえる。 4) Rubin, A.M.: Ritualized and instrumental television viewing, Journal of Communication, 34, 155-180,1981 7.まとめ 5) 本研究は多チャンネル視聴環境におけるデジタルテレビの使 Webster, J.G.: Audience behavior in the new media environment, Journal of Communication, 36, 3, 77-91, 1986 用性の問題を分析した。さらに使用性問題の解決を目指して新 6) しいユーザーインタフェースを設計し、仮想放送局をベースに Heeter, C. et. al.: Cableviewing behavior: An electronic assessment, In C. Heeter & B. Greenberg (eds.), Cableviewing, したプロトタイピングを通じて具現化とその評価を行った。特 Norwood, MA:Ablex., 1988 に仮想放送局をベースにするプロトタイピングという新しい研 7) 究方法の有用性を確かめることができた。本研究はデジタルテ Kaye, B.K. and Sapolsky, B.S.: Electronic monitoring of inhome television RCD use, Journal of Broadcasting & Electronic レビの多チャンネル視聴環境に対する基礎的なものであり、こ media, 41, 2, 214-228, 1997 れからより進んだ研究が要求されるいくつかの課題について述 8) べることにする。 Takahashi, Y. et. al.: Outline of Program Selection and its Characteristics in terms of Viewing History, Proceedings of SkyPerfecTV加入者に対する調査の結果からも明らかになっ Asian Design Conference, 326-334 , 1999 たように、一般のユーザーはEPGの使用を相当回避している。 9) その原因の一つが代替的手段であるプログラムガイド雑誌の利 Kirwan, B. & Ainsworth, L.K. (eds.): A Guide to Task Analysis, Taylor & Francis, 1992 用であった。意外な調査結果であったが、よく吟味してみると 10) Jordan, P.W. et. al. (eds.): Usability Evaluation in Industry, 当然の現象であるかも知れない。一般のユーザーはより自然で 実世界指向のメタファーを好むことと解釈される。PCにはデス Taylor & Francis, 1996 クトップというメタファーがあるように、多チャンネル・イン 11) 【チャンネルサーフィン】 タラクティヴ・デジタルテレビに適したユーザーインタフェー 99/2(チャンネル間移動)= 49.5 スのメタファー開発がこれから興味ある研究テーマの一つにな 【チャンネルバー】 ると考える。 1(チャンネルバー表示及びフォーカス移動:ホイール回 最近PVR(Personal Video Recorder)やホームサーバーなどの 転)+11/2(ページスクロール:プッシュボタン)+1 普及によってデジタルテレビの視聴環境が一層複雑になってい (プログラム選択:ホイール押し)= 7.5 る。多チャンネル環境の上、チャンネル固定タイムベースナビ 【ジャンル別・お好みチャンネルプログラムパレット】 ゲーションが可能になったからである。このようなメディア環 1(パレット表示:ダイレクト9)+1/2(ページスクロー 境においてユーザーは 現実感を失い認知的混乱に陥り易くな ル:ホイール回転)+1(プログラム選択:ダイレクト9) り、多チャンネル環境におけるタイムベースナビゲーションの = 2.5 10
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