2004(年) - CLOVER-酪農学園大学学術研究コレクション

J. Rakuno Gakuen Univ., 28 (2) :221∼231 (2004)
エキゾチック・アニマルの輸入状況と
その感染症・寄生虫症に関する最近の動向
浅 川 満 彦
An Overview of Infectious and Parasitic Diseases
from Exotic Pet Animals Imported into Japan
Mitsuhiko ASAKAWA
(November 2003)
動物医学の黎明期を迎えて。
序
本稿は,2003年9月 23日,東京都台東区谷中の大
趣味の多様化と詳細な情報の入手し易さ,さらに
日本製薬セミナールームにて開催された 第6回白
日本人全般の生活水準の高まりなどの要因から,従
樺会セミナー (事務局・三愛動物病院・高野泉子院
来の愛玩動物の範疇を越えるような,いわゆる エ
長)の特別講演用に準備をしたことが直接的なきっ
キゾチック・アニマル あるいは エキゾチック・
かけであった。が,同時に,我々が文部科学省科研
ペット と称される動物群を,一般家
でも飼育す
費研究(No.14560271)
,同省ハイテクリサーチセン
るようになってきた。ほとんどが外国産であり,中
ター
(酪農学園大学大学院)
,環境省環境技術開発等
には日本の環境では生育できないものや生態自体が
推進事業などの助成で展開している感染症・寄生虫
不明なものも多く,飼育は容易ではない。また,そ
症の研究方向を決める上で,今回得た知見は参 と
れぞれの動物固有の病気や病原生物の保有状況もほ
された。
とんど未知な状態で日本に輸入されている。中には,
飼いきれずに野外に放逐され,外来種化しているも
1.輸入の現状
のも存在し,生態系への影響や農畜産物への被害,
つい最近まで,日本に エキゾチック・アニマル
そして人獣への新たな感染症の蔓 などの可能性も
の何が,どの位,輸入されてきたという 的機関に
示唆されている 。
よる調査集計が,動物検疫所で対象にした有蹄家畜
開業獣医師も,こういった動物の診療をする場面
やワシントン条約対象種(サル目,ネコ科,オウム
はますます増加するであろうが ,我々獣医師は,原
目,リクガメ科などに所属する一部の種)
以外,2000
則的に,このような動物は飼育すべきではないこと
年以前は存在していなかった 。しかし,感染症法や
を主張する社会的な義務もある。今回は,そのよう
狂犬病予防法一部改正法などの施行により,これら
な喚起のための基本的な情報である エキゾチッ
法の対象動物(サル目全種,プレーリードッグ,イ
ク・アニマル の輸入の現状とその感染症・寄生虫
ヌ,ネコ,キツネ,スカンク,アライグマ)ばかり
症の問題点について,特に著者らが関わってきた研
ではなく,生きた動物全般を対象として厚生労働省
究結果を中心に,以下の小項目を立てつつ解説す
が主導で 2001年1月から集計している。詳細なデー
る;1)輸入の現状,2)世論の受け止め方,3)
人に感染するおそれのある感染症・寄生虫症概要,
タは,http://www.forth.go.jp/mhlw/animal/で随
時,最新のものが, 開されている。ここでは同省
4)エキゾチック・アニマルの診療と感染症との関
データを解説した社会保険研究所
を参
にした。
わり合い,5)各哺乳類群別に見た感染症・寄生虫
表1に示すように,哺乳類では毎年,約 100万個
症に関する最近の話題,6)輸入および野生鳥類の
体の輸入記録があるが,大半がネズミ目,特に,ハ
感染症・寄生虫症について,7)両生・爬虫類医学
ムスターが多い。また,リス科のプレーリードッグ
および無脊椎動物医学について,8)まとめ―野生
は,原産地北米でのペスト発生により ,輸入警戒な
酪農学園大学獣医学部寄生虫学教室
Department of Veterinary Parasitology, School of Veterinary Medicine, Rakuno Gakuen University, Ebetsu, Hokkaido,
069-8501, Japan.
浅 川 満 彦
222
表1
2001年および 2002年における日本へのエキゾ
チック・アニマルを中心とした動物(生体)の輸
入状況(厚生労働省 を一部改変)
哺乳類
コウモリ目
オオコウモリ類
その他
サル目
ウサギ目
ネズミ目
リス
プレーリードッグ
ハムスター類
チンチラ
モルモット
その他
ネコ目
イヌ
フェレット
その他
他目の哺乳類
哺乳類以外の動物
両生類
爬虫類
カメ目
他目の爬虫類
鳥類
猛禽類
オウム目
ハト目
他目の鳥類
以上を除く動物
2001年
2002年
1,189,053
2
0
2
6,941
729
1,142,256
67,066
13,407
1,005,488
3,314
1,275
51,706
37,612
5,547
31,583
482
1,513
854,202
153
0
153
5,171
2,516
803,558
57,540
11,473
678,793
3,116
1,263
51,373
33,091
4,948
27,418
725
9,713
781,521,400
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
498,314,430
11,587
879,157
740,831
138,326
168,313
3,873
27,169
3,638
133,633
487,723,860
−:当該項目の集計無し
このことは,開業獣医師がこのような動物を飼育す
る顧客に対 応 す る 場 合 の 参
に な る が,内 閣 府
(http://www.cao.go.jp/survey/y-index.html)が
2003年に実施した 動物愛護に関する世論調査 で,
外国産野生動物のペット化の是非について問うたと
ころ,飼うべきではないと回答したものが約半数
(49.7%)
で,その他の回答(規制により限定 29.4%,
個人の責任で自由 13.7%)を大きく引き離す。飼う
べきではない理由(複数回答)としては,人や農産
物に害を与えるから
(59.9%),原則的として野生に
手を着けるべきではないから
(54.1%)
,新しい病気
を持ち込むから
(46.1%),生態系に悪影響を与える
から(40.6%)などを挙げている。
この調査は3年前にも行われているが,それと比
較すると,それぞれ 7.3%の増加,3.1%の減少,
11.9%の増加および 8.2%の増加となり,感染症に
対しての懸念の伸びが顕著であった。
3.人に感染するおそれのある感染症・寄生虫症の
概要
感染症法(1999年施行)に規定されている疾病と
して,1類感染症のエボラ出血熱,クリミア・コン
ゴ出血熱,ペスト,マールブルグ病およびラッサ熱,
2類感染症の細菌性赤痢,3類感染症の腸管出血性
大腸菌感染症,4類感染症のアメーバ赤痢,西ナイ
ル熱,エキノコックス症,黄熱,オウム病,回帰熱,
Q熱,狂犬病,クリプトスポリジウム症,ジアルジ
ア症,腎症候性出血熱,炭疸,ツツガムシ病,デン
グ熱,日本紅斑熱,日本脳炎,ハンタウイルス肺症
どが呼びかけられたが,依然,2002年でも多数の個
候群,Bウイルス病,ブルセラ症,発疹チフス,マ
体が相変わらず輸入されていた事実には驚愕する。
ラリア,ライム病および急性脳炎がある 。なお,
なお,この種は 2003年から輸入が全面禁止された。
2003年6月に,新型肺炎(重症急性呼吸器症候群
この他のリス類(チョウセンシマリス,大陸産キタ
SARS)も指定感染症に追加された。
この他に,家畜伝染病予防法に規定されている対
リス,ミケリスなど)も人気が高い。
イタチ科のフェレット(ヨーロッパケナガイタチ
象疾患で人感染の危険性が指摘されている疾病は,
の飼育品種,米国で一番の人気動物 )
の輸入数も多
家畜伝染病に含まれる流行性脳炎,結核病,鼻疸,
く,感染症法施行後,輸入数の急減したアライグマ
高病原性鳥インフルエンザ,
家禽サルモネラ感染症,
に取って代わったかのような伸びである。また,コ
水胞性口炎,リフトバレー熱など,届出伝染病に含
ウモリ類を含むその他の哺乳類が急激な増加を示し
まれるレプトスピラ症,牛カンピロバクター症,ト
ている。哺乳類以外の 数については,両年で約 300
キソプラズマ症,ニパウイルス感染症,馬モルビリ
万個体と大きな差異があるが,これは無脊椎動物の
ウイルス肺炎,野兎病,マエデイ・ビスナ,豚丹毒,
輸入数に影響を受けたものであり,鳥類や両生爬虫
鳥インフルエンザ,牛丘疹性口炎,仮性皮疸,伝染
類の輸入数に大きな変動はない。
性膿疱性皮膚炎,ナイロビ羊病などである 。
2.世論の受け止め方
それでは,多数のエキゾチック・アニマル流入の
現状を,世論はどのように捉えているのだろうか。
4.エキゾチック・アニマルの診療と感染症との関
わり合い
獣医師もエボラ出血熱に感染したサル類の全数把
エキゾチックアニマルの輸入状況とその感染症
223
握の報告義務が課せられているように,まず,ヒト
ンガルー病が非常に重要で,ビタミンA欠乏や粗
への感染の影響についての警戒が最優先される。し
剛な乾草が原因となり,侵入門戸を形成する。ま
かし,エキゾチック・アニマルについては,動物間
た,トキソプラズマ症も,西日本の動物園でもア
でのみ感染する疾病の治療・予防は獣医師の日常業
カカンガルーの集団死亡例が報告されているよう
務であるし,病原体の侵 状況などの把握は獣医感
に,有袋類の飼育上,もっとも警戒すべき感染症
染症学や寄生虫学の専門家の責務でもある。
の一つである。これに比べると,消化管寄生の
このタイプの感染症には,病原体の広がり方から
二グループに けて えるのが実際的であろう。す
なわち,一つは宿主特異性が非常に高く,当該種の
(おもにオポッサム寄生)や Eimeria の寄
Isospora
生は,日和見感染症的な位置づけとなろう。なお,
エキゾチック・アニマルにしか寄生しないタイプで,
オポッサムを終宿主にする Sarcocystis neuroma
の脊髄脳炎が日本への輸入馬で報告されたが ,
せいぜい院内感染により別の個体に感染する程度の
日本で飼育されるオポッサムにおけるこの原虫の
もの,もう一つが病原体が当該種を離れて拡散した
調査はない。
り,あるいはエキゾチック・アニマルが野外に放逐
コ ア ラ 特 有 の 感 染 症 と し て Chlamydophila
あるいは脱走に伴い,在来種や家畜などに感染する
ものである。前者では限定的な問題に留まるが,後
pecorum 感染による眼病はよく知られるが,クリ
プトコッカス症の方はズーノシスで,コアラの場
者の場合,問題の拡大が著しく,もはや一獣医師の
合はハトの糞に汚染されたユーカリの葉の摂食に
対処出来るものではなくなる。特に,もうすぐ法制
より感染するので ,他の有袋類のペット動物に
化される外来種対策と不可
ついても留意したい。
の要素が強いが,それ
でもその直接的原因が,一獣医師の不適切な診療行
我々は東京都内で流通していた有袋類ペットの
為であったなどと指摘されないように留意したい。
寄生蠕虫類の調査をしたが,その結果と概要につ
また,愛護法の施行により野生の傷病鳥獣救護を
いては井手ら
が参 になる。ニュージーランド
行う獣医師は確実に増加した。さらに,関連職域の
には毛皮獣としてオーストラリアから輸入された
広がりから,羽山
が指摘するように,エキゾチッ
フクロギツネ(ポッサム)が外来種化して,現地
ク・アニマルの最悪の到達点である外来種問題とそ
の生態系に再起不能的な悪影響を与えているが,
の駆除,関連して狩猟・密猟・駆除,海獣のストラ
畜産業にとっても牛に牛結核菌を媒介するなどし
ンデイングなどの面で,動物の専門家と見なされる
て,大きな影響を与えている。これは,エキゾチッ
獣医師に意見を求められることは,今後,急増する。
クアニマルが自然界で繁殖した場合,旧来の病原
そういった場面では,エキゾチック・アニマルや野
体の新たな増幅者かつ媒介者になる事例として,
生動物の飼育管理,法規,衛生などの情報が求めら
動物輸入大国で同じく島国である日本の獣医師
れるので ,獣医師は常にその収集に努める必要が
は,特に記憶すべきである。
ある。
5.各哺乳類群別に見た感染症・寄生虫症に関する
最近の話題
なお,浅川ら
は大阪市天王寺動植物 園で飼
育されていたビィクトリアコアラ Phascolarctos
cinereus で,コナダニ科の第2若虫付着による著
しい掻痒感と,激しく体を掻いた結果により生じ
以下では,動物グループごとに注目すべき感染
た脱毛の症例を報告した。このダニは飼料を食害
症・寄生虫症の動向について,伝統的な哺乳類の系
していたダニの若虫で,おそらく原産地では接し
統 類の体系に準じて,当該 類目
(order)ごとに,
その感染症・寄生虫症のトピック的な事項を中心に
たことのないダニ類で,他の動物のように耐性が
概観する。
改善した後には,この症状は消えた。この事例は,
1)フクロネズミ目: 一般に有袋類と称されるグ
エキゾチック・アニマルにとって,日本の環境(生
ループで,ペットとしてはフクロモモンガやフク
物相を含め)は適合しない場合もあることを気づ
ロシマリス(フクロモモンガ科)
,オポッサム(オ
かせてくれた。
なかったのかも知れない。通気の良い飼育環境に
ポッサム科),カンガルー
(小型犬サイズのダマヤ
2)モグラ目: 胎盤を持つ真獣類の祖先型に近い
ブワラビー含むカンガルー科),フクロギツネ
(ク
形態と生態を持つとされるモグラやトガリネズ
スクス科)
,オオネズミクイ(フクロネコ科)など
ミ,テンレックなどの仲間で,ペットとして最も
が 流 通 し て い る。放 線 菌 Nocardia spp. や
Actinomyces bovis が歯根部に感染して生ずるカ
人気のあるものは,アフリカハリネズミ属のアル
ジェリアハリネズミやヨツユビハリネズミとオオ
浅 川 満 彦
224
ミミハリネズミ属のオオミミハリネズミである。
門類の Gastronyssidae 科とズツキイダニ科の9
この動物で,もっとも問題とされている疾患が疥
科各属種のダニ類
癬で ,外来ヒゼンダニの一種 Sarcopyidnites sp.
虫 類 で は ハ サ ミ ム シ(ヤ ド リ ハ サ ミ ム シ 科 の
(あるいは Chorioptes sp.)の寄生によるものであ
る。しかし,同じように脱毛(脱刺)を起こすも
,トコジラミ(トコジラ
Arixenia jacobsoni など)
ミ科の Cimex spp.),ノミ(コウモリノミ科の
のとして,皮膚糸状菌 Trichophyton mentagraophyte var. erinacei 症もあり ,鑑別が必要であ
,シラミバ
Nycteridopsylla 属や Ischnopsyllus 属)
エ(コウモリバエ科の Brachytarsina 属)
,クモバ
る。他には,ダニ類 Caparinia tripilis,膜様条虫
エ(クモバエ科の Penicillidia 属)などの特異的な
科条虫,Angiostrongylidae 科肺虫なども,日本に
輸入後,ペットショップで死亡したハリネズミか
昆虫がコウモリから知られる 。寄生原虫として
ら見つかっている
(浅川,未報告)
。特に,肺虫の
織寄生するシストが報告されている 。寄生蠕虫
寄生は重症になることが多く,日本でもトガリネ
については,浅川ら
ズミやキツネ・タヌキなどから,近縁の肺虫が見
る。なお,コウモリの輸入は 2003年 11月5日か
つかっており
,安易に野外のナメクジなどを
ら 全 面 的 に 禁 止 に なった(厚 生 労 働 省 http://
与えると,感染のおそれがある。なお,ハリネズ
www.mhlw.go.jp あ る い は 外 務 省 http://www.
。
pubanzen.mofa.go.jp)
ミはヨーロッパ,特に英国で非常に人気のある
ペットで多数の詳しいテキストもある。
が日本で確認されている。昆
は,12種ほどの Eimeria 属と Hepatozoon 様の組
で引用した文献が参 にな
4)サル目: 人を除くサル目では,フィロウイル
モグラ目が真獣類の祖先型に近いことを,冒頭
スによるエボラ出血熱やマールブルク病が話題に
述べたが,系統的な関係としては,コウモリ目と
なろう。エボラウイルスは米国に輸出されたフィ
サル目とに密接に関連するという(いわば,前者
リピン産カニクイザルから検出され,同国の同種
は翼の生えたトガリネズミ,後者は木に登ったト
のサルが日本にも輸入されていたことが判明し,
ガリネズミというイメージ)
。よって,実験医学の
大きな波紋を与えた。特に,東南アジアやアフリ
野でもラットやウサギよりも,モグラ目の方が
カから輸入されたサル類は,これらフィロウイル
ヒトの生理的な反応をより近く示すと えられ,
スに対する警戒が最優先される。Bウイルスにつ
我が国でもトガリネズミ科のジャコウネズミに注
いては,その抗体は野生のニホンザルでも高い比
目されたことがある。そのための教科書
率で検出されるが,その感染による死亡例はない。
は,感
染症を含めモグラ目の診療の上で,極めて有益な
しかし,米国では飼育していた実験サル類から感
示唆を与えるであろう。
染した研究者の死亡例があり,警戒を怠ることは
3)コウモリ目: 表1で示すように,ここ2年間
では輸入実績は記録されてはいないが,国内には
できない。
かなりの個体数のコウモリが,ペットとして飼育
ヒトの単純ヘルペスウイルス(Simplexvirus,ヒ
トヘルペスウイルスが,マーモセットやヨザルな
されていると
えられる。特に,大翼手亜目(オ
どの新世界サル類などに感染し,急死する例はよ
オ コ ウ モ リ 類)で は ルーセット オ オ コ ウ モ リ
く知られるので,診療にあたる獣医師は,口唇に
Rousettus spp.が多い。一方,小翼手亜目について
は本州以南で住宅地近くで保護収容されるほとん
水疱などがある場合はこれら動物との接触を絶対
どすべてがアブラコウモリであることから,これ
イルスは( Morbillivirus)は,マカク属などの旧世
を飼育し続けるか,あるいは輸入・市販されるウ
界サル類では不顕性感染で経過するが,マーモ
サギコウモリなどを飼育するのであろう。アメリ
セットが感染すると致死的である。2001年から
カ大陸ではチスイコウモリが狂犬病ウイルスの
2002年にかけ,日本では はしか が大流行した。
キャリアとしてよく知られるが,東南アジアや
子供ばかりではなく,大人も感染し,2001年では
オーストラリアでも,これに近縁なリッサウイル
亡くなった方々も 80人以上であった。1998年,米
スやニパウイルス,ヘンドラウイルスの中心的な
国のアラスカ州で大発生した発端が,日本から来
媒介者として目されている。
た子供であったいうほど,世界各地に はしか
コウモリの外部寄生虫には,中気門類のコウモ
に避けるべきである。また,はしか(麻疹)のウ
を輸出しているという新聞記事もある 。人の感
リダニ科と Macronyssidae 科,マダニ類の Ar-
染も懸念されるが,飼育される新世界サル類の
gasidae 科と Ixodidae 科,前気門類のケモチダニ
康にも悪影響を与えることになるので,獣医師や
科,Speleognathidae 科およびツツガムシ科,無気
学生は注意する必要がある。こういった事例は,
エキゾチックアニマルの輸入状況とその感染症
人類も旧世界サル類から生じた類人猿の系統に近
225
いという再認識を促す。と,同時に,人類へ到る
活発に活動している。この疾病は中枢
index.html)
神経への障害が強く,異常運動などを呈すること
系列で適応してきた病原体は,新世界サル類に
が特徴で,ヒトを含め多種の哺乳類に感染するが
とっては激しい症状を生じせしめる可能性があ
ウサギへの寄生がもっとも普通である。
り,自らの 康管理は診療対象の動物の 康も保
持するということにも気づかせる。
一方,新世界のリスザルやクモザルがT型ヘル
著者は三重県と東京都の獣医師から送付された
ウサギズツキダニ Leporacarus gibbus 寄生の掻
痒と脱毛症例を経験した 。
ペスウイルスのキャリアになり,同じく新世界サ
なお,最近,ユーラシア大陸や北米産のナキウ
ル類のマーモセットやヨザルにこのウイルスを感
サギ Ochotona spp.が流通し,北海道の在来種と
染させ,眼窩周囲の特有の浮腫と肝臓壊死を生じ
の
せしめて死に追いやることが知られている。よっ
いった場合,基礎情報として,在来種の寄生蠕虫
て,これらサル類を同じ南米産だからといって,
相を事前に把握しておく必要があるが,これにつ
一緒に飼育することは非常に危険であるし,先ほ
いてナキウサギを含め長谷川・浅川
ど述べた宿主−寄生体関係の傾向にも,例外は少
なくない。
雑や感染症などの影響が懸念される。こう
が参 にな
る。
6)ネズミ目: 現生哺乳類 4500種のうち,
およそ
結核菌は,古くから多くの動物園で常在してい
半数を占めるネズミ目で,ペット動物としても多
ることが知られるが ,ペットのサル類でも注意
様な種や品種を含んでいる。ここでは,伝統的な
が必要である。人にも感染し,動物園飼育サル類
類体系に従い,リス亜目,ネズミ亜目およびテ
の衛生管理で問題となるのが,仮性結核症である。
ンジクネズミ亜目の順で解説を加える。
動物でも問題とされているのが,最近,我々は千
a)リス亜目: 2003年現在,日本でもペスト予
葉 県 の 野 生 ニ ホ ン ザ ル を 調 査 し た が,糞 線 虫
防のため,リス科のプレーリードッグは輸入が
Strongyloides fulleborni や 鞭 虫 Trichuris trichiura が高率に見つかり ,ボルナ病ウイルスに
対する抗体も検出された 。これらはいずれも,人
禁止された。が,これ以外のリス科動物の輸入
にも容易に感染するので(経皮,経口),展示動物
パでは外来種のハイイロリス(北米原産)がリ
や害獣として扱う場合は高度な警戒が必要であ
ス類に感染するパラポックスウイルスを持ち込
る。
み,かの地で在来種のキタリスに感染をさせ,
が続いており,ペストの水際で日本への侵入防
止する目的は完全ではないであろう。ヨーロッ
最近,我々は東京都内で流通していた 22種 96
大きな問題となっている。外国産リスの輸入が
個体のペットのサル類の寄生蠕虫類を調査し ,
今後も継続する場合,キタリスの亜種で北海道
その約半数に何らかの蠕虫寄生を確認した。人に
の在来種,エゾリスのパラポックス症も発生す
も 感 染 す る 可 能 性 が あ る 糞 線 虫 Strongyloides
るかも知れない。
spp.や蟯虫 Enterobius spp.などの線虫や Armillifer 属の舌虫幼虫も含まれ,サル類は寄生虫症の
我々の調査で,伊豆大島で外来種化したタイ
源としても注意をしなければならないことが再確
ワンリスから,毛様線虫 Brevistriata calllosciuri と糞線虫の一種 Strongyloides sp.などが
認された。なお,横山ら
には,サル類の属ごと
得られたが ,前種は宿主特異的で,在来種(伊
に寄生蠕虫属名を列挙した一覧表があるので参照
豆大島ならばアカネズミ)には認められていな
されたい。
なお,サル類の感染症を含めた病態や病理の最
い。しかし,Brevistriata 属は,北海道産のシマ
リスから別の種が見つけられている 。
新 情 報 は, サ ル 類 の 疾 病 と 病 理 の 研 究 会
b)ネズミ亜目: ネズミ亜目では在来種も含
(SPDP)(会長
吉川泰弘
東大院教授)から入
手出来る(http://www.spdp.net)
。
5)ウサギ目: ペットとして飼育されるウサギ類
め,ラッサ熱,ペスト,ハンタウイルス肺症候
群,腎症候性出血熱,リンパ球性脈絡髄膜脳炎,
日本紅斑熱,野兎病,鼠咬症,広東住血線虫症
の大部 がアナウサギの各品種で,感染症を含め,
などが,疫学調査の対象となるし,獣医師が扱
すでに優れた教科書が刊行されている。微胞子虫
う場合,ヒトへの感染という側面で非常に問題
類 Encephalitozoon cuniculi の感染によるエンセ
ファリトゾーン症については,同症研究会が立ち
となる。一方,これら動物の診療対象となる感
上 が り(http://homepage3.nifty.com/mitosis/
教科書
染症については,既に実験動物の領域で優れた
があるし,日本で報告のある野生およ
浅 川 満 彦
226
び住家性ネズミ類や実験動物品種の内外寄生虫
てこのグループの動物が流通しているという情
の一覧表あるいはその検査法についても,浅
報はない。
川
でまとめられている。
ただし,モグラレミングやステップレミング
最近の話題として,2003年6月,ペットのア
など珍しい種を飼育しているという未確認情報
フリカオニネズミ(ネズミ科)からプレーリー
を得ている。これらについても,前出の新疆レ
ドッグへの猿痘ウイルスの感染が起きたため,
ポートが参 になる
米国の厚生省は 歯類の全面輸入禁止した。一
は外来種のマスクラットが関東地方の一部に生
方,日本では,特定種以外
(後述)
,ネズミ亜目
息するが,個体数は少なく,寄生虫調査はされ
の多くの種は自由に輸入されている。ウイルス
ていない。
。なお,ハタネズミ類に
や細菌の宿主特異性は概して低く,特定の動物
c)テンジクネズミ亜目: このグループは南米
種を対象にした輸入規制は有効ではない。規制
原産であり,実験動物や毛皮獣として輸入され
対象種の問題点に加え,我が国の法的規制の遅
てきた。その中には,中部地方以西のヌートリ
性も改善しなければならない。たとえば,
ラッ
アのように外来種化して農業被害や寄生虫媒
サ熱ウイルスのベクターとされるマストミス
介
Mastomys spp.であるが,このネズミの禁輸措
置が,2003年 11月5日からやっと施行された
日本産肝蛭の媒介の事実は,水系を通じ,これ
が(厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp あるい
その感染を広げることから, 衆衛生上,警戒
は 外 務 省 http://www.pubanzen.mofa.go.
されている 。なお,本種はヨーロッパでも外来
jp),このような対応の遅れは,将来,禍根を残
すおそれがある。なお,このネズミの線虫症等
種としてきわめて多くの問題を孕んでおり,哺
については Asakawa and Nicolas が紹介し
た。
(特に,
イヌからレプトスピラが感染し新たな媒
ペットとして人気を得つつある東南アジア産
コタケネズミには真 菌 Penicillium marnefei
が寄生して,日本への持込が警戒されている 。
最近,南米で狂犬病に感染していたペットの
で問題となっている種も存在する。特に,
まで大型ウシ目の到達できなかった地域にまで
乳類学の国際学会でも効果的な捕獲法や感染症
介者になっているなど)
・寄生虫症などが話題
として取り上げられていた 。
ペットとしては,モルモットとチンチラがよ
く流通している。モルモットでは,実験動物の
教科書
が参 になる。チンチラ全般について
ハムスターの例が報告され,大きな問題となっ
も Richardson
たが,表1で示したように,この動物は非常に
ステリア菌(Listeria monocytogenes)にきわめ
人気が高い。よって,ハムスターについては,
て感受性が高いので,脳炎や腸炎が見られた場
既に優れた教科書
がある。なお,野生のハム
合,これを疑う必要がある 。そのような細菌を
スター類については,スナネズミ類やトビネズ
媒介する住家性ネズミ類が徘徊する場所での飼
ミ類(これらもペットとして商取引される)含
が詳しい。なお,この動物はリ
育は避けるべきである。
め,これら動物の原産地でもある中国新疆ウイ
7)アリクイ目: らい病や原虫症などの実験動物
グル自治区でおこなった調査レポートが参 に
としてあまりにも有名なアルマジロではあるが,
なる
他の動物ではわずかな蠕虫症について知られてい
。
著者のロンドン動物園で研究したテーマの一
る程度である 。我々が調査対象とした都内で流
つが,ヨーロッパヤマネ( Muscardinus avellanarius)の寄生虫症で,特に,ハツカネズミ寄
通していたペット動物としては,ミナミコアリク
生種 Heligmosomoides polygyrus による死亡例
は ,ヤマネ類飼育場の住家性ネズミ対策の重
ら か ら 鉤 頭 虫 Giganthrorhynchus sp.,線 虫
Apidorera sp.,Delicata sp., Maciela sp.および
要性を再確認させた
(投稿中)
。なお,日本では,
アフリカオオヤマネなどがペットとして流通し
Moennigia sp などいずれも南米の固有属と見な
されるものが見つかった 。また,後の3線虫は,
ている。
いずれも直接感染型の毛様線虫であり,他の動物
イとムツオビアルマジロを扱った。そして,これ
日本のハタネズミやヤチネズミ類の在来種に
に感染した場合,前述のヨーロッパヤマネで経験
ついては,ハンタウイルス症やツツガムシ症あ
したような急激な症状を呈することもあり警戒さ
るいはエキノコックス症などが有名で,国際学
れる。なお,井手ら
会でもよく話題になる
イ科で報告のある蠕虫類のチェックリストを掲載
。しかし,ペットとし
にはアルマジロ科とアリク
エキゾチックアニマルの輸入状況とその感染症
227
したので参照されたい。真菌 Paracoccidioides が
アライグマではもっとも警戒すべきアライグマカ
ココノオビアルマジロから得られるように ,不
イチュウと狂犬病ウイルスは,現段階では見つ
顕性感染の状態で蠕虫以外のズーノシスの病原体
かってはいない 。しかし,ペットを含め飼育個体
を持っていることが多いので,診察時は注意が必
では寄生が見られ,診療に当たっては注意すべき
要である。
である。なお,最近,野幌で捕獲されたアライグ
8)イワダヌキ目: 中近東からアフリカに生息
し,系統的にもゾウに近いとされるハイラックス
マからネコ条虫(Taenia taeniaeformis)が見つ
かった(Matoba et al.,投稿中)
。これまで,アラ
で,動物学的に興味深いものではあるが,原産地で
イグマで条虫科条虫の記録が無く,この動物が新
は農業上の害獣である。日本にもペット動物とし
たな寄生虫を日本で獲得していることをうかがわ
て,野生個体が輸入されている。我々は関東地方の
せる。特に,同じ条虫科であるエキノコックス(多
動物園相当施設での経験しかないが,ケープハイ
包条虫 Echinococcus multilocularis)の新たな終
宿主になる可能性が指摘されよう。
ラックスの検疫時に裸頭条虫科条虫 Inermicapsifer hyracis と I .cf.beveridgei,Atractidae 科線
虫 Grassenema procaviae などが検出された。ま
た,Eimeria dendrohyracis によると目される腸
炎の重症例を経験したので ,ペット動物でも警
戒すべきであろう。
野生動物の狩猟個体が人の食料として,あるい
は飼育動物の として利用されることは多い。日
本の旋毛虫については, 子生物学的検討から北
海道では Trichinella nativa,本州以南では T.
britovi とされた。野生の肉食獣を飼育することが
9)ネコ目: もっとも警戒が必要な感染症は狂犬
あるが,これらはキツネからも見つかっており,
病で,犬猫のほか,アライグマ,スカンク,キツ
注意したい。また,疥癬の拡大も懸念される 。
ネなどがその検疫対象である。エキゾチック・ア
ニマルとしては,フェレットが多く,既に邦訳含
めいくつかの獣医学の成書がある
6.輸入および野生鳥類の感染症・寄生虫症につい
て
。重要な疾
病を列挙すると,イヌジステンパー,狂犬病,ロ
ペット鳥類については,寄生虫症含め優れた教科
タウイルス感染症,アリューシャン病(ミンクに
書
があるので,詳細は省略する。しかし,エキゾ
感染するパルボウイルスの突然変異型とされる)
,
チック・アニマルの診療と若干関連するものに,特
サルモネラ症,結核,ヘリコバクター症(ペット
用家畜と傷病野鳥とがある。前者については,日本
のフェレットでごく普通の胃炎原因菌)
,prolifer-
各地で飼育され,
各地の観光産業振興のため,
ダチョ
ative bowel disease( 増殖性腸疾患 と訳される
こともあるが ,結合組織の増殖は顕著ではない。
ウやエミューなどを飼育するところが多く,地元の
14ケ月齢以下で発生し,慢性の下痢を引き起こ
鳥類研究会(事務局:信州大学)があり,毎年,研
す。Lawsonia intracellulare を病原体とする説が
究会が開催される。2003年度大会では,著者が走鳥
ある ),レプトスピラ症,カンピロバクター症,
類全般の寄生虫症について解説しているので,浅
細菌性肺炎・膀胱炎・乳房炎・皮膚炎,真菌性の
川
獣医師が相談を受ける可能性がある。全国的には走
を参照されたい。
皮 膚 炎( Microsporum, Trichophyton),肺 炎
(Blastomyces, Coccidioides),脳炎
(Cryptococcus)
など,コクシジウム症(Isospora, Eimeria)
,トキ
り,野生の傷病鳥獣救護が地方自治体行政の活動の
2000年4月1日の愛護法施行(環境省主管)によ
ソプラズマ症(フェレット内ではオーシストは形
に関心を持つ獣医師が増加した。また,行政側もエ
成しない)
,クリプトスポリジウム症,イヌ糸状虫
キゾチック・アニマルの診療に長じている獣医師に
症,腸管寄生の蠕虫症(イヌ小蛔虫,ネコ蛔虫,
依頼をする傾向もあろう。普通種の傷病鳥獣救護活
,疥癬
Ancylostoma),耳疥癬(Otodectes cynotis)
(Sarcoptes scabiei)
,ニ キ ビ ダ ニ 症,ノ ミ 症
動が,生物多様性の保全に貢献する可能性はほとん
(Ctenocephalides),マダニ症などである。
また,放鳥獣による病原体の拡散や抗生物質耐性菌
一環として見なされている。そのために,救護活動
どなく,むしろ,啓発活動として見なすべきである。
アライグマについては,新たな輸入はなく,ま
などの拡散や遺伝子・種・生態系各レベルの生物多
た飼育の困難性から飼育数も減少していくと え
様性の攪乱に,無意識的に手を貸してしまうおそれ
られるが,それでも愛好家は少なくない。我々は
があるので ,そのような不測の事態を回避するた
北海道で外来種化したアライグマの寄生虫を調査
めにも,傷病鳥獣への獣医寮を施す前に,最低限の
しているが
知識を備えておくべきである。
,これまでのところ,野外の
浅 川 満 彦
228
特に,その救護活動の対象となる動物は,その件
ならない。特に,エキゾチック・アニマルの最悪の
数の比率から9割が鳥類の普通種であるので ,基
帰結である,新興・再興感染症の病原体持ち込みと
本的な鳥類学の
類,生態, 布,食性などの動物
拡散,その動物自体の外来種化などは,畜主に説明
学 や,常在する可能性のある病原体などの情報は
する場合でも時空間の概念が必要である 。このよ
不可欠である。もちろん,野鳥の感染症の把握は,
うな獣医学と生態学との境界領域にあるのが野生動
大切な動物病院の汚染を防ぐ上で,野鳥全般の感染
物医学で,日本でも教育内容が制定された 。欧米で
症を概観した Asakawa et al. や外来鳥類の蠕虫
類を扱った吉野ら
などが最新である。近年,二
は,専門職大学院や専門医資格
つの動物園でオウム病のヒトへの感染が起き,先の
べきであるが,その場合,既に第一線で活躍される
懸念は一層現実味を増している。これをきっかけに,
関連 野の獣医師の経験が,貴重なバックグラウン
厚生労働省は動物園に対し,ガイドラインを提示し
ドとなろう。
日本では未だに不十 な 野であり,早急に整備す
たことはよく知られる 。
謝
7.両生・爬虫類医学および無脊椎動物医学につい
て
などがある。
辞
本稿を作成するにあたり,厚生労働省 康局の大
平真紀氏には,感染症法関連のガイドラインを含め
爬虫類医学についても,優れたテキストがある。
種々資料を,また,エキゾチックペット研究会事務
著者らは,ペット爬虫類のうち,輸入数の多いカメ
局(埼玉県鶴ヶ島市・岡動物病院内 http://isweb4.
類(表1)について,寄生蠕虫症の基礎資料と,そ
からは,同会のテキ
infoseek.co.jp/animal/jsepm/)
ストの一部をご提供頂いた。
の外来種化した場合の生態系への影響について検討
している
。石田ら
は,最近,京都で外来種
文
化 し た ミ シ シッピ ア カ ミ ミ ガ メ か ら 線 虫 Serpinema microcephalus と Falcaustra sp.,吸 虫
Telorchis sp.,コクシジウム類 Eimeria spp.などを
検出した。S. microcephalus はユーラシア大陸の
献
1.朝日新聞,2002.いまや,はしかの輸出国―予
防接種に関心薄く.2002年7月 27日朝日新聞
朝刊.
布種であるが,Falcaustra sp.やコクシジウム類は宿
主の原産地産である可能性もあり,在来カメ類への
2.浅川満彦.1998.野ネズミと寄生線虫の自然 .
影響が懸念される。外来カメ類の調査は,現在も継
3.浅川満彦.
1998.傷ついた野生動物を救護する
草食実験動物,
(22):1-12.
続中で,最近は,千葉の印旛沼で捕獲され,本学に
とはどのような意味があるのか.くらしのサイ
送付されたカミツキガメから,Cosmocercoidea 上
科幼線虫と Telorchis 属吸虫が見つかった 。今後,
エンス(24)
:119-123.
4.浅川満彦.1998.獣医大学における野生動物種
このような外来カメ類の寄生虫リストはますます増
の扱い―特に北海道における現状と展望.
(北海
加することになろう。
道獣医師会五十年
編集委員会 編)北海道獣医
関連研究会については, 爬虫類・両生類の臨床と
師会五十年 ,
北海道獣医師会,札幌:158-162.
病理のための研究会 (事務局:岐阜大)
(http://
5.浅川満彦.1999.アライグマの運ぶ疾病の項.
がある。なお,無脊椎動物医学
www.SCPRA.COM )
については,著者が参加したロンドン動物園の生物
(北海道石狩支庁 編)アライグマによる農業等
多様性の展示施設 Web of Life における事例報告
で紹介しているので参照されたい。
8.まとめ―野生動物医学の黎明期を迎えて
被害防止の手引き,札幌:47-50.
6.浅川満彦.2000.道内ダチョウ牧場での寄生虫
学的予備調査ならびに走鳥類の寄生虫につい
て.北海道獣医師会誌,44:296-299.
7.浅川満彦.2000.今後の移入動物について(感
従来の寄生虫(病)学では,獣医学の他の 野と
染症の項)
.
(北海道空知支庁 編)
アライグマを
同様,免疫反応や病理,駆虫など至近要因の解明に
はじめとする移入動物を えるフォーラム報告
力点が注がれた。しかし,エキゾチック・アニマル
書,岩見沢:27-33.
のように野生あるいはそれに近い動物における寄生
8.浅川満彦.2001.ロンドン動物園で,ネズミの
虫病を扱う場合,これまでの至近要因ばかりではな
線 虫 に 遭 遇 す る.北 海 道 獣 医 師 会 誌,45:
く,自然生態系における宿主−寄生体関係の生態や
370-371.
進化といった究極要因的な面にも目を向けなければ
9.浅川満彦.2001.ロンドン動物園 Web of Life
エキゾチックアニマルの輸入状況とその感染症
229
における生物多様性の展示方法に関する事例報
Ito, M. 2001. Parasitic nematodes and
告.酪農大紀,自然科学,26:7-21.
acanthocephalan obtained from wild murids
10.浅川満彦.2001.野生動物の管理衛生,
(鎌田信
一・清水晃・永幡肇 編)動物の衛生,文永堂出
版,東京:297-307.
and dipodids captured in Xinjiang-Uygur,
China. Biogeography, 3:1-11.
24. Asakawa,M .,Kamiya,H.and Ohbayashi,M .
11.浅川満彦.2002.野幌の森でも野生動物の疥癬,
発見される.森林保護,
(287)
:22-23.
12.浅川満彦.2002.応用動物学と獣医学との連繫
1988. Studies on the parasite fauna of Insectivora. III. Two new nematodes, Soboliphyme abei n. sp. (Soboliphymatidae) and
による専門職大学院構想―英国野生動物医学
Stefanskostrongylus yagii n. sp. (Angiostron-
M Sc コースを一例にして.畜産の研究,56:
779-784.
gylidae)from Sorex spp. in Japan. J.Rakuno
Gakuen Univ., Nat. Sci., 13:1-10.
13.浅川満彦.2002.輸入ペットの寄生蠕虫類―宿
25.浅川満彦・北村 一.2003.動物園水族館雑誌
主―寄生体関係の 衡を乱すエイリアン.
(日本
上に掲載された展示動物と野生動物における感
生態学会 編)外来種ハンドブック,地人書館,
染症発生の記録.酪農大紀,自然科学,28:
東京:220-221.
79-84.
14.浅川満彦.2002.米国フロリダにて開催された
26.浅川満彦・倉地
徹・酪農学園大学野生動物生
動物園動物および野生動物関連獣医師会合同大
態研究会.1999.北海道産アライグマの寄生蠕
会.獣医畜産新報,55:105-108.
虫類.野生動物医学会誌,4:101-103.
15.浅川満彦.2002.第8回国際会議
齧歯類とそ
27.浅川満彦・的場洋平・山田大輔・神山恒夫.2000.
の生息域 ―会議に参加して.Zoo and Wildlife
, :18-20.
News(日本野生動物医学会)
北海道野幌森林 園を中心に生息する移入種ア
16.浅川満彦.2003.英国の野生動物医学専門職大
に関わる食性―その調査の進 状況と今後の方
学院における爬虫類と鳥類の臨床教育につい
て.北海道獣医師会雑誌,47:382-385.
17.浅川満彦.2003.ロシア・カムチャツカ半島に
ライグマの寄生蠕虫類ほか病原生物とその伝播
向性.酪農大紀,自然科学 25:1-8.
28. Asakawa, M., Nakamura, S. and Brazil, M .
A.2002. An overview of infectious and para-
おけるガン類の野生動物医学調査―生態学と獣
sitic diseases in relation to the conservation
医学の接点の一事例として.獣医畜産新報,
56:
biology of the Japanese avifauna. J. Yamashina Inst. Ornithol., 34:200-221.
62-67.
18.浅川満彦.2003.ヌートリアにおける肝蛭寄生
29. Asakawa, M . and Nicolas, V. 2003. A new
とその食品衛生に与える影響.食品衛生研究,
host and locality records of a spirurid
53:1-3.
nematode species, Protospirura muricola,
19.浅川満彦.2003.走鳥類の寄生虫病学概論.日
本ダチョウ・走鳥類研究会誌,⑶:19-25.
from Gabonese wild murids.Biogeography,5:
67-70.
20.浅川満彦.2003.国際獣類会議で報告された感
30. Asakawa, M.and Ohbayashi,M.1986. The
染症・寄生虫症の研究動向.獣医畜産新報,56:
first record of Brevistriata bergerardi Durette-
243-246.
Desset, 1970 from an Asiatic chipmunk,
21.浅川満彦.2003.鼠類に見られる寄生虫とその
採集(今井壮一ら 編)獣医寄生虫学検査マニュ
アル,第2版,文永堂出版,東京:240-256.
Tamias sibiricus lineatus Siebold, in Hokkaido, Japan. Jpn. J. Vet. Res., 34:291-294.
31.浅川満彦・大塚浩子・竹田正人・内川 人・宗
22. Asakawa, M ., Hagiwara, K., Liao, L.-F.,
像巧・廣岡良彦.2000.最近経験したコアラ,
Jiang, W., Yan, S.-S., Chai, J.-J., Oku, Y.,
ウシおよびカイウサギの外部寄生虫について.
Kobayashi, K. and Ito, M. 2001. Collection
北獣会誌,44:300-301.
record of small mammals in Xinjiang-Uygur,
1998 and 1999 with brief review of its mammalian fauna. Biogeography, 3:13-31.
23. Asakawa, M ., Hagiwara, K., Liao, L.-F.,
Jiang, W., Yan, S.-S., Chai, J.-J.,Oku,Y.and
32.浅川満彦・大塚浩子・山本栄治・土居雅恵.2000.
小田深山およびその周辺に生息するコウモリ目
の寄生線虫.小田深山の自然,第1巻,愛 県
小田町:983-994.
33. Asakawa, M., Suzuki, Y., Kimoto, Y. and
浅 川 満 彦
230
Fox,M .T.2001. Parasitic nematodes of pet
動物の共通感染症対策ガイドライン 2003.厚生
tortoises in Japan: clinical and ecological
労働省
康局結核感染症課,東京.
view points.In:(Innis,C.and Willette,M .M.
46. Lainson, R. and Naiff, R. D. 2000. On
Eds.)Proceedings of Association of Reptilian
Eimeria bragancaensis n. sp. (Apicomplexa:
and Amphibian Veterinarians 8th Annual
Eimeriidae) and tissue-cysts of an unidenti-
Conference:Joint Conference with the Ame-
fied protozoan in the bat Peropteryx macrotis
rican Association of Zoo Veterinarians, September 19 -23, 2001, Florida, USA:139 -143.
(Chiroptera: Emballonuridae) from Amazonian Brazil. Parasite, 7:123-129.
34. Fowler, M . E. (ed.). 1978. Zoo and Wild
47. M aKay, J. 2001.ハムスター―飼育・繁殖・
Animal Medicine. W. B. Saunders Company,
ショーのための完全マニュアル(林典子訳)
,
U.S.A.
ファームプレス,東京.
35. Gobel, T. 2001. Infectious diseases in fer-
48.的場洋平・淺野玄・増渕寿子・浅川満彦.2002.
rets. Suppl. Compend. Contin. Educ. Vet., 23
(2A):43-48.
外来種アライグマ(Procyon lotor )からのコク
36.藤原 策
(編).1985.実験動物感染病学,ソフ
確認とトキソプラズマ抗体の保有状況.野生動
トサイエンス社,東京.
37.萩原克郎・柘植勇祐・里吉亜也子・淺川満彦・
シジウム類 Eimeria 属および Isospora 属の初
物医誌,7:87-90.
49. 立大
・三好康子・田村典子・村田浩一・丸
蒲谷肇・岡本実・谷山弘行・桐沢力雄・岩井
山 一・木村順平・野上貞雄・前田喜四雄・福
(2003)
:ニホンザルにおけるボルナ病ウイルス
本幸夫・赤迫良一・浅川満彦(2003)我が国に
感染,第 136回日本獣医学会大会演要旨集:
定着した外来齧歯類(タイワンリス Callosciur-
151.
38.長谷川英男・浅川満彦.1999.陸上動物の寄生
虫相,日本における寄生虫学の研究,第6巻,
目黒寄生虫館,東京:129-146.
39.羽山伸一.2003.野生動物専門職の現状と今後
の課題.日獣会誌,56:108-110.
40.井手百合子・稲葉智之・浅川満彦.2000.有袋
us erythraeus お よ び ヌート リ ア Myocastor
の寄生蠕虫類に関する調査.野生動物医
coypus)
誌,8:63-67.
50.宮下 実.2001.エキゾチックアニマルの感染
症と防疫の課題.獣医畜産新報,54:579-583.
51.村上興正・鷲谷いずみ(編)
.2002.外来種ハン
ドブック.地人書館,東京.
目と 歯目を中心とするペット用輸入哺乳類の
52.長堀正行.1997.動物別,材料別の予期される
寄生蠕虫類保有状況.野生動物医学会誌,5:
寄生虫,臨床寄生虫病―犬・猫・その他の飼育
157-162.
小動物,学窓社,東京:38-139.
41.石田綾・岩尾 一・樋上正美・阿部慎太郎・小
53. Quesenberry, K. E. and Hillter, E. V., 1994.
林頼太・浅川満彦.2004.日本各地で外来種化
The Veterinary Clinics of North America.
した爬虫類2種(ミシシッピアカミミガメ Tra-
Exotic Pet M edicine. II. W. B. Saunders
Company, USA.エキゾチックペットの医学
chemys scripta およびカミツキガメ Chelydra
serpentina の内部寄生虫の侵 状況(予報)日本
爬虫両棲学会報,2004(年):印刷中.
42.神山恒夫.2000.野生げっ歯類等に関連する動
物由来感染症に関する疫学的研究.
平成 11年度
厚生科学研究費特別研究事業研究成果報告書,
国立感染症研究所獣医科学部,東京:94.
(増井光子監),学窓社,東京.
54. Richardson, V.C.G.1997.Diseases of Small
Domestic Rodents. Blackwll Science, UK.
げっ歯類の臨床(斉藤久美子・林典子・岡哲郎
訳)
,インターズー,東京.
55. Sainsbury, A.・Fox, M. T.・大平久子・河津
43.木本有子・浅川満彦.1998.北海道江別市内の
理子・浅川満彦.2001.英国王立獣医学 およ
ペットショップで市販されていたカメ類の寄生
びロンドン動物園による野生動物医学コースの
線虫類.野生動物医学会誌,3:75-77.
概要と参加者の印象について.獣医畜産新報,
44.近藤恭司
(監).1985.スンクス―実験動物とし
54:801-812.
て の 食 虫 目 ト ガ リ ネ ズ ミ 科 動 物 の 生 物 学.
56.斉藤理恵子・川上茂久・浅川満彦.2004.国内
JSSP,東京.
45.厚生労働省.2003.動物展示施設における人と
の飼育下ケープイワハイラックスに認められた
寄生蠕虫3種と Eimeria 属原虫の初記録.野生
エキゾチックアニマルの輸入状況とその感染症
動物医学会誌,印刷中.
231
北海道のア ラ イ グ マ か ら 検 出 さ れ た 蛔 虫 の
57.佐野文子・宮治誠.2002.エキゾチックペット
5.8SrDNA お よ び ITS-2rDNA の 塩 基 配 列 の
決定による寄生虫種の同定.道衛研所報,
(49)
:
に関連した輸入真菌症.エキゾチックペット研
究会誌,⑷:2-7.
159-162.
58.里吉亜也子・蒲谷肇・萩原光・谷山弘行・村
65.横山祐子・稲葉智之・浅川満彦.2003.我が国
康和・辻正義・萩原克郎・浅川満彦.2003.房
に輸入された愛玩用サル類の寄生蠕虫類保有状
半島で有害駆除されたニホンザル Macaca
fuscata(Blyth)の寄生虫症および感染症に関す
る基礎調査(予報)
.第9回日本野生動物医学会
況(予報)
.野生動物医学会誌,8:83-93.
66.吉野智生・川上和人・佐々木 ・宮本 司・浅
川満彦.2003.日本における外来鳥類ガビチョ
大会講演要旨集:71.
ウ Garrulax canorus お よ び ソ ウ シ チョウ
Leiothrix lutea(スズメ目:チメドリ科)の寄生
59.鈴木由香・浅川満彦.2000.札幌市内のペット
ショップで販売されていたヌマガメ科など5科
のカメ類における寄生蠕虫類調査―特に Ser-
虫学的調査.日本鳥学会誌,51:39-42.
67.吉野智生・浅川満彦.2003.外来鳥類の寄生虫
pinema 属線虫の 布について.野生動物医学
会誌,5:163-170.
調査―その意義と途中経過.第9回日本野生動
60.坪田敏男・和秀雄・羽山伸一・大泰司紀之・甲
68.全国家畜畜産物衛生指導協会.2003.馬原虫性
知恵子・柵木利昭・島田章則・大西義博・浅
脊髄脳炎
(EPM ),2版,社団法人全国家畜畜産
物医学会大会要旨集:47.
川満彦・酒井 夫.2000.日本における野生動
物衛生指導協会,東京.
物医学教育の確立に向けての提言.野生動物医
要
学会誌,5⑵:ろ-ほ.
旨
61.霍野晋吉.1997.エキゾチックアニマルの基礎
日本におけるエキゾチックあるいは外来種の感染
知識と診療.ProVet 1997年8月号,インター
ズー,東京:5-24.
症あるいは寄生虫症の動向について,我々の研究成
果を中心に紹介した。
62.和田成子・浅川満彦・福本真一郎・大林正士・
中尾 茂・中出哲也・梶 義則,1993.エゾタ
追記)本文中で投稿中とされたアライグマにおける
ヌキから検出された寄生虫について.第 116回
ネコ条虫の記録は,M atoba Y.,Asano M.,Yagi K.
日本獣医学会講演要旨集:111.
and Asakawa M . 2003. Detection of taenid
63.和田芳武.1981.コウモリに寄生するダニ類.
(佐々学・青木淳一 編)ダニ学の進歩,北隆館,
東京:405-414.
64.八木欣平・浅川満彦・大山 徹・岡本宗裕.1999.
species (Taenia taeniaeformis) from a feral
raccoon (Procyon lotor) and its epidemiological
meanings. M ammal.Study,28:157-160 で 表さ
れた。
Summary
An overview of infectious and/or parasitic diseases in exotic pet animals imported into Japan from
references of mainly recent our parasitological field was presented.