ヨーロッパにおける文化景観保全制度による

歴史地理学
49-1 (
2
3
2
) 52~68
2
0
0
7
.1
ヨーロッパにおける文化景観保全制度による
地域変容
伊藤徹哉
1.はじめに
研究目的とヨーロッパにおけ
有の景観の維持に対する意識の高まりや 1)
る文化景観
また景観を国や地域固有の貴重な財産と捉
(1)研究目的
え,歴史的景観の維持・修復を通じた都市の
(
2
) 文化景観保全一地域実態としての文化
活性化させたいとの市民や公的主体側の意図
などを背景として進められている。こうした
景観
I
I
. イギリスとフランスにおける文化景観保
全制度の構築
中,景観保全の対象は,かつての個々の歴史
的建築物等に限定する点的なものから,一定
Jスでの文化景観保全制度の構築
(1)イギ l
の空間的広がりを有する地域へとシフトしつ
(
2
) フランスでの文化景観保全制度の構築
つある 2)。
i
l
l
. ドイツにおける文化景観の保全に伴う地
域変容
本研究は,第 2次世界大戦後を主たる対象
としてヨーロッパにおける文化景観の保全制
(
1
) ドイツにおける文化景観保全制度の構
築
度の捉え方および制度構築を再整理し,制度
構築の実態を明らかにするとともに,
(
2
) バイエルン州・文化景観プログラムお
よび文化財保護法
ドイツ
の都市を事例として文化景観保全制度がどの
様に地域の持続的発展に寄与しているかを明
(
3
) 都市における文化景観保全の誘導策
らかにすることを目的とする。
ニュルンベルクの事例
近年における景観保全に対する関心の高ま
N. おわりに
りや制度的改変と呼応して, 日本においても
都市計画や法学などの隣接分野を中心に海外
I.はじめに一研究目的とヨーロッパにおけ
る文化景観
の景観保全制度に関する研究が蓄積されつつ
ある。日本における景観保全に関する海外事
例研究では,比較分析に基づいた法制論が主
(1)研究目的
に展開されている。上固めは英仏独伊におけ
日本では地方自治体による景観計画の策定
る景観保全制度を対象として,既存の物的側
年の「景観緑三法」の制定や,
を定めた 2004
面の改変を抑制する法的規制の手法を比較検
文化的景観を保護の対象に加えた同年の「文
討している。ただし,たとえば補助金交付な
化財保護法J改正にみられるように,近年,
どを通じて伝統的建築物保存が実施されてい
文化景観の保全と修復に関する法整備が進ん
るように,文化景観保全においては助成制度
でいる。景観施策は,市民レベルでの地域固
などが併用されることが一般的であるが,
キーワード:ヨーロッパ,歴史的景観,文化景観保全政策,景観規制,景観誘導
一 5
2一
こ
含め,人間の社会的・経済的活動を規制・抑
制・修正させる仕組み(制度)を整備し,現
存の社会のあり方を変容させていることに他
ならない。本研究では,
ドイツにおいて現在
行われている保全の取り組みに着目し,ヨー
ロッパにおける文化景観保全が制度として地
域変容にどのような影響を与えているかを考
察する。
以上をふまえ,本研究ではまず次節におい
て,既往研究に基づいてヨーロッパにおける
文化景観保全の意義を考察するとともに,
I
I
章では多用な保全制度を長い歴史の中で構築
--可人間・作成者・主体~
してきたイギリスとフランスを事例とした既
経済人としての人間
往研究に基づいて,規制と誘導という観点か
図 1 人間・自然・文化の相互関係からみた文
化景観
ら景観保全制度の構築を概観する。さらに E
章において, 2
0
0
2年から 2
0
0
3年にかけてドイ
Denecke1
9
9
7,
S
.
3
8を一部改変
ツ・バイエルン州で行った現地調査に基づい
れらに関する分析は行われていない。西村4)
て景観保全の取り組みを分析し,それらが制
は,英・米を事例として歴史的環境保全に関
度として地域変容に対してどのような役割を
わる法令の歴史的変遷を分析し,英国では環
担っているかを考察する。最後にヨーロッパ
境保全運動とも連動し,都市と農村における
の景観保全制度にみられる課題を議論する。
文化景観保全の制度が構築されていることを
(
2
) 文化景観保全一地域実態としての文化景
示した。これは,ヨーロッパにおける文化景
観の保全が単なる法的規制にとどまらず,助
観
成制度などの誘導策を含めた多用な社会制度
ヨーロッパ各国においては既に第 2次世界
に基づいて進められていることを示唆してい
大戦以前から景観保全の動きがみられ,例え
る。本研究ではまず,イギリスとフランスを
ばイタリアでは文化財保護法や自然美保護法
事例とした既往研究に基づいて,ヨーロッパ
により景観規制が定められた 5)。ただし,文
における文化景観保全の意義を考察するとと
化景観保全の取り組みは, 1960年代の高度経
もに,多用な手法によって実現されている文
済成長期における都心・農村荒廃を大きな契
化景観保全制度の構築を概観する。
機として本格化した。第 2次世界大戦により
ヨーロッパにおける文化景観は,人聞を中
甚大な戦災を受けたヨーロッパ各国では,戦
心として文化および自然との密接な相互関係
後復興期を経て, 1950年代以降に高度経済成
の中で変化しつつある総体として捉えられて
長期を迎える。とりわけ都市経済の成長は,
おり,変化の過程では既存の文化景観が自然
情報通信機器や空調施設などを欠いた老朽化
や文化から影響を受けながら人間の生活や経
した都市建築物を取り壊し,近代的ビルに再
済活動によって作り替えられていくという動
建させる一つの原動力となった。都市部にお
的側面を有する(図1)。こうした側面を有
いて建築物の建て替えと補修が急速に進展
するが故,既存の文化景観を「保全Jすると
し
, 60年代に入ると大都市を中心として都市
は,それらに何も手を加えないということも
での文化景観の大規模な変化が明瞭となっ
5
3
た。この時期には旧市街地の歴史的建築物が
加盟国や地方自治体との共同補助事業とし
大量に失われたため,例えばミュンヘンでは
て,農山漁村への対策である LEADER十にお
i
2度目
いて環境保全型農業や文化景観保全が進めら
文化景観の喪失状況は,戦災に次ぐ
6
)と表された。
の破壊J
れている問。このように,農村を対象とする
1
9
5
0年代以降,都市経済が活況を呈する中
文化景観保全制度は,農業環境政策や過疎対
で新市街地開発が進展する。イギリスでは
策を通じて既存の地域社会の社会的・経済
1
9
4
6年から 1
9
7
0年代にかけてニュータウン開
)
ドイツでも 1
9
6
0年代初頭から
発 が 進 み7
的・生態的特徴を回復させることを最大の目
標として進められており, これらの事業は文
1
9
7
0年代に大都市近郊で大規模住宅団地が盛
化景観をキーワードとする自然環境の回復,
)
。景観的にも機能的にもモ
んに開発された 8
経済的環境の改良,さらに文化的固有性の復
ノトーンとなりがちな新市街地の単調さは,
活であると捉えることができる。
批判の対象となる一方で,都市や農村の地域
文化景観に着目した事業の広まるきっかけ
社会にみられる多様な文化や伝統が再評価さ
れる一つのきっかけにもなった。折しも,旧
の一つは, 1
9
9
0年代初頭以降に UNESCO,
EU
および国レベルで行われた文化景観の重
市街地を中心とした既成市街地で、は住宅への
要性を巡る議論であり,自然・文化遺産の価
再投資が滞ったために居住環境が悪化しつつ
値や将来的な利用が検討される中で,文化景
ありの,旧市街地の再生が急務となる。その
観の重要性が広く認識されていった。歴史的
9
6
0年代のフランス・西ドイツ・イタ
一方, 1
に緬養されてきた文化景観は,経済的・生態
リアの農村でも都市への人口流出が顕著とな
的・美的・文化的成果が相互にバランスのと
り,農業人口が減少し,農山漁村は社会的に
れた状態であり 14) 現代社会において喪失し
衰退した 10)。こうした背景の下で,衰退しつ
つつある生態的多様性や歴史的・文化的固有
つある旧市街地や農山村の荒廃を食い止め,
性の根拠となりうるため,文化景観を分析
既存の地域社会を維持することによって文化
し,回復させていくことが持続的な地域開発
景観を保全しようとする政策が導入されたの
の鍵となるとの主張が展開された問。
である。このため,本研究では主に第 2次世
こうした議論に先だ、って文化景観の理論
界大戦以降における都市と農村における文化
的・実証的研究を蓄積させていたのは,絵図
景観保全の取り組みを分析対象とする。
等の歴史的資料に基づいた文化景観の復元等
このうち ECの農業環境政策は,農村荒廃
の研究蓄積を豊富に有していた歴史地理学で
に対する取り組みだけでなく,文化景観保全
9
7
0
あった 16)。例えばドイツ語圏においては 1
9
8
5年に環
対策として代表的なものであり, 1
年から 1
9
9
6年までに 1
8
0
0を超える景観保全に
境保全型農法に対する直接助成金が制度化さ
関する論文が公表されており 17) また,ボン
れている問。農業従事者に対する適切な所得
大学歴史地理学講座の研究者を中核とする研
を確保するだけでなく,文化景観としての農
u
l
t
u
r
究グループが学術雑誌『文化景観 K
村地域維持のための環境保全型農法による農
l
a
n
d
s
c
h
a
f
d を1
9
9
1年以降刊行しており,そ
牧地の維持管理が進められた。現在も EUに
の中で文化景観保全の理論的・実践的研究が
よる農山漁村の地域構造事業において文化景
公表されている。
加盟国聞
観保全対策が進められており, EU
また, UNESCO
が1
9
9
2年 に 世 界 遺 産 の ー
における社会的経済的な不均衡の是正を目的
っとして文化景観の概念を追加したことも,
にした補助金制度が構築されている。その財
文化景観の重要性を広める上で大きな出来事
源として複数の構造基金を活用しながら 12)
といえる。この中で示された,社会・文化的
5
4
表 1 英仏における都市景観の保全に関する制度
(記録)
対象物
(移転)
ミクロ・メソ・マクロスケール
点的・面的・広域的構成物
〆ヘ
現地調査
(質と量の記載)
資料
国
年
内外の諸条件の調整
i
俺
1
9
4
7
う施対策
1
9
5
3
¥
?
対策の決定
宥
評
{
面
(条例法律,広域計画)
¥ 、 ノ
1
9
6
2
「文化景観保全j
-科学的・教育的目標設定
.視覚的・美的目標設定
-社会的目標設定
・経済的目標設定
.生態的目標設定
1
9
6
7
図 2 文化景観保全の過程
1
9
7
1
Schenk2002,
S
.l1を一部修正。
1
9
7
4
活動によって形成された「有機的に進化する
景 観Jとの考え方は,
内容
歴史的・芸術的観点か
ら歴史的文化財指定
存法
英都市農村計画法 歴史的建築物の指定と
保全
英歴史的建造物お 歴史的建築物の指定と
補助金支出の規定
よび記念物法
→1954年:タウ 面的な景観保全のはし
り
ン・スキーム
歴史的建築物保全を周
仏マル口一法
辺へ拡大→面的規制
保全地区制度の導入:
英シビック・アメ
面的保全を規定
ニティー法
仏 POS (土地利用計建物の絶対高さの上限
を定める高度計画の導
函)制度
入
英都市農村計画法 保全地区を法定都市計
画に位置づけ,補助金
を規定
英都市農村アメニ 保全地区内での許認可
の強化
ティ法
→地方分権化
建築的文化財の周囲
ム
イ ZAPPAU
500mでの規制を規定
英計画(登録建造 保全地区に関する都市
物および保全地 農村計画法上の規定を
統合
区)法
英都市農村計画法 景観規制を伴う都市計
画
英国家遺産省発足 遺産管理の一元化
都市計画上の景観保全
仏風景法,
の強化
ZAPPAUP
名称
1
9
1
3 仏歴史的建造物保
I
自然と人聞との共同
作品 J
1
8
)で あ る 文 化 景 観 の 静 的 側 面 で あ る 可
1
9
8
3
視的特徴の維持だけでなく,人間と文化・自
1
9
9
0
然と密接な相互関係の中で変化しつつある動
的側面を積極的に評価している。したがっ
1
9
9
0
て,文化景観保全とは単に古い時代の面影の
1
9
9
2
1
9
9
3
残る歴史的遺産を保存していくだけでなく,
各地域に回有な経済的・生態的・美的・文化
寺阪 2
0
0
5;西村 1
9
9
7;
上回 2004より作成。
的成果の総体を相互にバランスのとれた状態
へと修復・回復することを意味する。文化景
約条件を課すのに加えて,一般市民に対しで
観保全制度とは,
これらを可能とするために
も納税者として負担をかけるため,所有者や
社会的・経済的活動を規制・抑制・修正・誘
一般市民にも受け入れ可能な持続的発展を考
導する仕組みと捉えることができる。
慮した保全方法が重視されつつある。
文化景観保全はいくつかの過程に分けるこ
I
I
. イギリスとフランスにおける文化景観保
と が で き る ( 図 2)。 ま ず , 文 化 景 観 保 全 の
全制度の構築
対象は,点的である個々の文化財,複数の対
象物から構成された面的な対象物,さらに広
イ ギ リ ス と フ ラ ン ス で は 第 2次世界大戦以
域的な広がりを有する対象物(広域的構成
前から文化景観保全の取り組みが進められて
物)であり,こうした対象物に対して調査・
おり,両国を事例として制度の変遷を概観す
説明・評価を行い,対象物を資料として記録
る。両国では1
960年代から 7
0年代にかけて,
していく。こうした資料化段階においては,
個々の建築物の保全と修復に加えて,土地利
文化景観が歴史的な複合物であるという点が
用規制と誘導を含めた総合的地域保全へと制
重視されており 1
9
) 時代の古さはもとより,
度が変容した(表1)。
各時代の生活・文化・生態的特徴を反映した
(1)イギリスでの文化景観保全制度の構築
対象物が評価されている。さらに,実際の対
960年 代 か ら 都 市 と 農 村 を 対
イギリスでは1
策段階では,保全される対象物の所有者に制
55
象とする文化景観保全の取り組みが本格化
した費用に対する補助金支出の基準が規定さ
し,法令に基づく景観規制と補助事業による
9
7
4年の都市農村アメニティ法
れた。さらに 1
誘導によって,文化景観保全が進められてき
に基づいて保全地区内での許認可が厳しく
た。現在における景観規制の基本は都市計画
なったことで,地域の実情にあわせた景観保
9
9
0年の都市農村計画法 Townand
であり, 1
全が可能となった 23)。この他,文化景観保全
C
o
u
n
t
r
yP
l
a
n
n
i
n
gA
c
t1990に基づいて広域自
を実現する誘導策としてイングリッシュ・ヘ
e
v
e
治体や基礎自治体が作成する都市計画 D
n
g
l
i
s
hH
e
r
i
t
a
g
eによる歴史的遺産
リテイジ E
l
o
p
m
e
n
tP
l
a
nを根拠として,建築物の高度制
に対する補助事業が存在しており,歴史的遺
限などの規制が進められている 20)。こうした
産や国立公園などの保全事業に対する補助が
景観規制は, 1
9
4
7年の都市農村計画法に基づ
国家予算により行われている制。
また,農村における文化景観保全制度とし
く歴史的建築物の指定と保全を端緒とする。
これ以降,中央政府が個々の歴史的建築物を
ては,都市計画による景観規制に加えて,田
9
6
0
対象とする文化財保存を進めてきたが, 1
1
ッ
s
i
d
eAgencyが農村地域にお
園地域庁 Count
年代後半に建築物単体から面的な景観規制へ
ける文化景観対策を実施している。本組織は
規制範囲が拡大された。また, この時期には
1
9
9
9年 に 田 園 地 域 委 員 会 Count
ηs
i
d
eCom-
保全の実施主体も中央政府から地方自治体へ
m
i
t
t
e
eから改組された公的機関であり 25) 農
と変化し 21) 各地域の文化や伝統に基づいた
山村の文化景観保全や環境保全に活動を展開
文化景観保全を進める基盤が成立する。
している。例えば田園地域委員会時代の 1
9
7
4
こうした景観規制の対象地域として 1
9
6
0年
年には報告書を公表し,効率的な農業経営と
9
9
0年
代に保全地区制度が導入され,現在は 1
ともに伝統的な農村景観を維持・保全する方
の計画(登録建造物および保全地区)法に基
9
8
1年の野生生
策の必要性を指摘し,また, 1
づいて保全地区が設定されており,地区内で
heW
i
l
d
l
i
J
左側dC
o
u
n
t
r
y
s
i
d
e
物・田園地域法 T
の建築物の補修と街路景観の整備が進められ
Act成立以降,本法に基づく予算を得て国立
9
4
7年
ている 22)。保全制度の歴史は,既述の 1
公園や特別景観地域の整備などを進めてい
の都市農村計画法による歴史的建築物の指定
るお)。さらに農山村地域では公益団体である
にさかのぼるが,同法では補助金支出に関す
ナショナル・トラストが 1
9世紀末から活動を
る規定が欠落していた。このため 1
9
5
3年に歴
進め,土地の取得や管理などを通じて自然景
史的建造物および、記念物法により歴史的建築
観の保全に寄与している 27)。
物の指定と補助金支出が定められ,その決定
を歴史的建築物協議会が担当することにな
る
。 1
9
5
4
年,タウン・スキームと呼ばれる制
(
2
) フランスでの文化景観保全制度の構築
フランスでは2
0世紀初頭から歴史的建築物
度が導入され,歴史的建築物協議会による補
の保全を目的とする法規が整備され,景観規
助金を地元の補助金に上乗せすることで,地
制による文化景観保全が進められてきた。こ
域の実情にあわせた助成が可能となった。
れらの制度は第 2次世界大戦後に徐々に強化
1
9
6
7
年のシビック・アメニティ法に基づいて
され,特定の歴史的建造物の保存から特定区
保全地区制度が導入され,歴史的建築物を中
域全体の保存へと変化した。現在,文化景観
心とした歴史的環境の面的保全が定められた
保全は,都市での都市計画に基づいた保全地
が,地区指定の手続きや予算の裏付けが不十
域の指定と景観規制,また農村部においては
分であった。これを補うため 1
9
7
1年の都市農
土地利用規制による開発行為の管理を通じて
村計画法において保全地区指定とそれに関係
実施されている。
- 5
6
文化景観保全の取り組みは, 1
8
8
7年の歴史
ツ・バイエルン州で行った現地調査に基づい
的建造物保全に関する制度に始まり,都市部
て景観保全の取り組みを分析し,それらが制
での景観規制が先行して進められてきた。
度として地域変容に対してどのような役割を
1
9
1
3年には歴史的建造物保存法が制定され,
担っているかを考察する。
教会建築物保護の必要性を背景として 28) 歴
ドイツでは,複数の空間スケールから文化
史的・芸術的観点から保全すべき建築物が歴
景観保全に関わる法的枠組みが整備されてい
史的文化財として指定され29) 改修・修復が
る。このうち都市における文化景観は,土地
施されてきた。第 2次世界大戦後に「点・線
利用規制による法的規制,公的事業による保
から面への景観規制 J30)へと徐々に強化され
全と修復などの地域政策を通じた誘導,さら
ており, 1
9
6
2年のマルロ一法に基づいて保
に歴史的建造物保護という文化政策を組み合
全・修復の対象は歴史的建築物の周辺へと拡
わせた総合的な地域政策によって維持されて
大した。しかし,制度適用に時間がかかるだ
いる。
けでなく,対象地域内での立ち退きが必要と
9
8
3年
なるなどの問題を抱えていたため 31) 1
の法律に基づいてZAPPAU (建築的・都市的
(
1
) ドイツにおける文化景観保全制度の
構築
文化財保全地区制度)が導入され,文化財周
ドイツにおいては1
9
6
0年の連邦建設法以
辺地域での開発・建築行為の制限を通じた文
降,法規による規制および都市計画制度によ
化景観保全が目指された。 ZAPPAUは
, 1
9
9
3
る誘導に基づいて開発行為の抑制が積極的に
年の風景法制定により, ZAPPAUP (建築
行われ,既存の文化景観の保全が図られてき
的・都市的・景観的文化財保全地区制度)と
た。加えて, 1
9
7
0年代から環境関連事業が導
改称され,これにより基礎自治体は都市計画
入され, 1
9
8
0年代には農山村を対象とする文
の中において景観的な保全計画を組み入れる
化景観保全事業によって各州で農業環境や農
ことが可能となった。 1
9
9
0年代末までに7
9
都
耕景観が維持されようとしている。
市において保全計画が制定されている 32)。
まず,連邦レベルでみた場合,
ドイツにお
さらに,都市計画における誘導策として,
ける文化景観の保全に関する取り組みの萌芽
1967年の土地利用の方向づけの法律(本法は
は
, 1868年のパーデン地域道路法, 1
8
7
1年の
1
9
8
3年の法律第 8号へと再編)に基づいて
プロイセン建築線法など, 1
9世紀半ばに制定
POS (土地占用プラン)制度が成立し 33) 都
された建設抑制地区に求めることができる。
市域での新規開発や建築行為の規制を通じた
建設抑制地区の制定は,都市における新規開
既存の文化景観の保全が進められている。本
発に伴う施設整備費用の増加を抑制する一
制度では,都市景観として重要な意味を有す
方,農村景観の破壊を予防した。この規定は
る文化景観を維持することを目的として,景
1
9
8
6年の連邦建設法典第35条での建設抑制地
観に影響を与える建築物の設置を制限し,建
区と建築案にひきつがれ,都市と農村におけ
築物の高さや建物の形状や素材などの外観が
規制されている 34)
る景観保全の基礎となっている 35)。建設抑制
地区の制定と開発行為の制限は都市計画の一
部として進められてきたが,都市計画の策定
E
ドイツにおける文化景観の保全に伴う地
域変容
や実施においては,州および都市の自治が幅
広く認められてきた歴史を反映して,州およ
び基礎自治体 Gemeindeの裁量が大きく認め
本章では2002年から 2003年にかけてドイ
- 5
7
られている約。
現在,文化景観の保全は景観規制と誘導策
り,農山村は生活空間の一部や農作物の生産
を通じて実施されているが,景観規制は都市
拠点であると同時に,都市住民にとっての水
計画制度に基づいて進められている。現在の
源や余暇・保養空間として位置づけられてい
都市計画制度は, 1960年の連邦建設法を拡充
る40) さらに 1976年に連邦自然保護・景観保
させた 1986年の建設法典に基づいて,土地利
全法が制定され,その第 1章において自然環
用準備計画F
l
a
c
h
e
n
n
u
f
z
u
n
g
s
p
l
a
n (通 称F
-
境と景観は守るべき対象として規定され,自
P
l
a
n
) と地区詳細計画 B
ebauungsPlan (
通称、
然保護政策の基本的枠組みが規定された。こ
B-Plan) に依拠して進められている 37)。前者
れに基づき,国・州・郡・基礎自治体それぞ
を通じて基礎自治体内全域に関する土地利用
れの空間スケールで保全計画を策定してい
区分を規定し,将来の土地利用の方向性を示
る
。
すとともに,後者を通じて面的な土地利用計
文化的遺産に対する補修や修復などの対
画および,建物単位での土地利用や高さ制限
策,また農山村地域における生業維持を通じ
等が定められている 38)。後者では,必要に応
た文化景観保全事業は,州ごとに定められて
じて色彩や高さ制限などの個別的な法的規制
いる。州法による文化財保全政策が国の対策
が行われる。また,連邦法と州法に基づく基
よりも先行しており,例えば国レベルでの農
礎自治体の建築形成条例 B
a
u
g
e
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s
a
f
-
山村地域への対策は既述の通り 1976年の連邦
zungにより,建築物や広告物などの規制が
行われる場合もある 39)。
は1970年代前半には既に類似する法規が整備
農山村における文化景観保全は,主に自然
された 41)。旧東ドイツ各州も東西ドイツ統一
保護と農業地域経済対策を基盤として進めら
後に制定しており,連邦法での大枠の規定に
れている。まず, 1974年の新農地整備法によ
基づいて,各州が独自の地域特性をふまえた
自然保護・景観保全法であるが,州レベルで
表 2 バイエルン州・文化景観プログラム・区分 A (
2
0
0
5年)
助成内容
助成額 (Euro/ha年)
1経営全体への助成
1.1有機農業基準に基づく営農
農地・草地
伝統的栽培植物
園芸用農地・長期耕作地
12 環境指向的営農
2
5
5
3
0
5
5
6
0
2 粗放的な農地・永続的草地利用(経営体ごと)
2
.
1 輪作(全耕地)
年最低 5種の作付け
22 永続的草地
7
0
3 粗放的な農地・永続的草地利用(圃場ごと)
3
.
1 羊・山羊による粗放的放牧
3
.
2 採草地の放牧地利用
~3.7
3
.
8 冬季の緑地化
*l.1との組み合わせた場合
9
0
7
0
4 土壌,水質保全および文化景観保全のための特定営農
4
.
1~4.5
注
I
J は申請受付中止。
B
a
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n2
0
0
6より作成
5
8-
規定を設けている。
調闇ヱンセンフ、 J
レ
騒霊童文化財
(
2
) バイエルン州・文化景観プログラムおよ
び文化財保護法
文化景観保全を目的とする具体的な誘導策
は,州と基礎自治体によって実施されてお
り,バイエルン州を事例として,文化景観プ
u
l
t
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d
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h
.
a
βsprogramm (通称
ログラム K
KULAP)および文化財保護法に基づく文化景
観保全事業を紹介したい。
9
7
0年代以降
まず,文化景観プログラムは 1
9
8
8年に改変
に行われていた環境対策事業を 1
したものであり,州の農村振興計画における
"~、.
4つの重点事項の一つである農山村を対象と
する環境関連政策の下で実施されている
,~
図 3 ニュルンベルクでの文化財指定
Hochbauamt2
0
0
1,
S2を一部修正
4
2
)。
現在,農山村地域の文化景観の改善・維持・
保存・創出を目的とし,本事業では環境に配
慮した経営体に対する補助や,粗放的農業に
法では,個々の文化財の保護だけでなく,文
対する農地助成,放牧施設に対する補助など
nsemble
化財の周辺に立地するエンセンブ、ルE
が行われている(表 2)。これらの対策は農
と名付けられた対象物群を一体的に保全する
山村地域に対する農業政策として,農業景観
規定が設けられている 45)。ニュルンベルクの
維持などの文化景観保全に寄与するだけでな
e
r
d
e
r
a
u地区では, 20世紀初頭
ヴ、エルデラウ W
く,農家に対する一定の所得確保を実現する
に建設された集合住宅を指定文化財として,
など,農村地域経済を維持する上からも重要
その周辺の道路や建築物を含めた東西
な役割を果たしている。本事業は,連邦基準
400m,南北200mの街区がエンセンブルとし
を超える包括的な内容であり,連邦からの補
て指定され,保全対象となっている(図
助を受けない EUとの共同事業として州独自
3)。当地区は 1
9
1
0年から 1
9
3
6年にかけて建
の施策に基づいて進められてきた 43)。しか
設された主に工場労働者を対象とする住宅地
し,地方財政悪化の影響を受けて農業環境プ
9世紀半ば以降の田園都市の思想、
域であり, 1
ログラムに再編され,事業内容も連邦と EU
から影響を受け,街区の多くに緑地が整備さ
基準に合わせて縮小傾向にあり叫,制度上は
れた 46)。これらの対象物群を一体的に保全す
存在するものの,補助申請の受け入れを停止
ることにより,工業化時代の特徴を残す文化
した補助項目も見受けられる。
景観が維持されている。
また,州政府は文化財保護に関する州法に
こうした空間的な広がりを有する保全地区
基づいて,歴史的建築物を主な対象とする文
の指定は連邦レベルでの都市計画制度に組み
化景観保全を進めており,歴史的建築物の指
込まれており,連邦建設法典 1
7
2
条では基礎
定や補修,また利用目的変更の許認可を行っ
自治体は保全条例を定め,既述の B-Planにお
9
7
3年に 9
ている。バイエルン州においては 1
いて保全地区を指定できることが規定されて
いる 47)。
編2
3条 か ら な る 文 化 財 保 護 法 B
a
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s
文化財保護法に基づいて保全対象物に指定
DenkmalschutzG
e
s
e
t
zが制定されており,本
5
9一
されることで,補修などの際に公的機関から
目し,既述の文化財保全制度などを活用しな
補助を得られる反面,形状変更の際の許認可
がらも,都市計画に基づく歴史的施設を活用
が必要となるなど,所有者・利用者の権利が
したまちづくりや都市更新事業による文化景
制限される。まず,直接的・間接的な経済的
観の保全など,複合的な文化景観保全制度を
支援制度についていえば,文化財保全を実現
活用している実態を分析し,それらを通じた
するために,以下のような複数の直接・間接
地域変容を明らかにする。
的な助成制度が整備されている岨)。直接的な
まず,ニュルンベルクの都市発展を概観す
補助金として所有者や居住者を対象とする州
1世紀に公文書にはじめてその名が登
ると, 1
の補償基金から融資と助成金,州立財団から
場して以降,当市は交易ルートの主要な都市
の融資と助成金,さらに基礎自治体や郡から
として発展し,中世には裁判権を含む広汎な
の融資などが存在する。また,農山村での文
自治権を有する帝国自由都市として繁栄し
化財保全を対象とする「余暇と保養 j 事業
た51)。神聖ローマ帝国崩壊にともなってバイ
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tundE
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g
'が用意さ
プログラム‘F
エルン王国に編入された 1
8
0
6年前後を境とし
れており,文化財を核とする宿泊や余暇施設
て,当市には産業革命の波が押し寄せ,士業
の整備に助成が行われている。また間接的な
化に伴う社会経済的な変革が進行する 52)。工
支援策として,文化財の所有者である法人と
業化の進展は人口増加をもたらし,城壁で固
個人に対する所得税等の減免措置が行われて
まれた旧市街地を超えて市街地が急速に拡大
いる制。
した。
さらに,都市域においては一般住宅として
旧市街地およびその周辺地域には老朽建築
供されてきた老朽建築物の改築・修復制度を
物が現在も数多く立地しており,それらには
通した文化景観保全にも力が入れられてい
1
9世紀から 2
0世紀前半に建設された建築物が
る。改築や修復を促進させるための助成制度
数多く含まれている。図 4は都市中心部にお
9
7
0年代半ばの老朽建築物の保存に対す
は
, 1
ける老朽建築物の割合を示しており,旧市街
る社会的関心の高まりを背景として整備さ
地南部を中心に都市中心部周辺に老朽建築物
9
7
7年の連邦所得税
れ,例えば,全国的には 1
が集積していることがわかる。これら老朽建
法第7b条の改正において老朽建築物の維持
築物には,浴室やトイレなどの施設が不備で
と管理を行う場合の所得税の控除が定められ
あるものが数多く含まれており,改築や改修
た。また 1
9
7
8年の連邦住宅近代化・省エネ法
が必要となる。居住環境の整備は一義的には
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t
zにより,老朽化した住宅施
所有者の責任である。しかし,都心やその周
設の改築・修復が助成対象となった問。
として人口高齢化や外国人比率の上昇などに
辺では 1
9
5
0年代半ば以降,人口郊外化を背景
よって,建物所有者の所得低下が生じてお
(
3
) 都市における文化景観保全の誘導策
り,再投資が不十分な老朽建築物も数多く存
在した 53)。
ニュルンベルクの事例
都市域での文化景観保全は,伝統的文化財
こうした建築物の構造的・機能的劣化と社
指定および保全地区制度を基本として進めら
日市街地およびその周辺
会的な停滞傾向は, I
れているが,これに加えて都市計画および都
部における歴史的文化景観の変質・悪化を意
市更新事業を通じた文化景観の保全も進めら
味するだけでなく,都心における住宅供給が
れている。本節ではニュルンベルク市におけ
滞っていることも意味していた。このため,
る文化景観保全に関する実際の取り組みに着
9
6
0年代以降,都市計画に基づいて
市当局は 1
6
0
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山一
]し
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1
・
苧
、
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④市役所
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。城壁際E
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hbhf¥Jr'V4r
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匿2
3
3
0亘
老朽建築物の割合
(-1918年)
2km
図 4 ニュルンベルクにおける老朽建築物の割合 (
2
0
0
0年)
注:都市更新事業の区域は 1
9
9
8年時点。
ニュルンベルク市資料より著者作成
に配慮し,そのルートの一部に城壁部分が活
用された(図 5)。
また同時に,都市内部の老朽化住宅の改修
と改築を通じて居住環境を改善し,一定の機
能を備えた住宅を供給することを目的とし
て55) 公的事業による地域再生を計画した。
旧市街地およびその周辺部における歴史的な
文化景観の保全と修復は,公的事業である都
t
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u
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gを通じて進めら
市更新事業 S
図 5 ニュルンベルクでの城壁部分を利用して
建設された地下鉄
2
0
0
4年 8月著者撮影。
れている。ニュルンベルク市では, 1
9
7
3年に
最初の都市更新事業がブライパイス地区で開
2事業が実施さ
始されて以降, 1998年までに 1
旧市街地を積極的に改良しており,既述の
れている(図的。事業の多くは,大小の工
1
9
6
0年の連邦建設法に依拠した計画を策定
9世紀後半から 20世
場が多く立地しており, 1
し,土地利用を規制するとともに,交通網整
紀初頭の工業化時代に建設された建物の割合
備に着手する。その際,急激な自動車社会に
が高い中央駅の南部と西部で実施されてい
対応させて旧市街地を迂回する外環道路を整
る。いずれの事業対象地区も,都心周辺地域
備するだけでなく,歴史的建造物を活用し,
として 1960年代には人口高齢化や外国人世帯
歴史的資源と調和したまちづくりが進められ
増加といった社会的な停滞が進んでおり,い
た問。例えば地下鉄建設では既存の文化景観
わゆるインナーエリアに該当する。
- 6
1一
これらの事業は 1
9
7
1年の都市建築助成法,
建築物が増築されるなどしたため剖建物密
9
8
6年の連邦建設法典に基づいてお
および1
度も高く,
り,当事業は市街地再開発であるだけでな
て十分なものではなかった。
日照や衛生面などの住宅環境とし
く,既存の老朽建築物の再生・再利用,社
ゴステンホフでの都市更新事業の構想は
会・経済環境の改善,緑地(生態系)の復活
1
9
7
0年代後半に持ち上がり. 1
0
.
5
h
aを対象と
8年の予備調査. 7
9年
する計画が立案され. 7
から 8
1年での地区詳細計画B-Planの策定を経
などを実現する手段として活用されてい
る56) 国全体でみた場合,
この 2法に基づい
て連邦政府と州からの助成を受けた公的事業
て. 81 年 ~88年に実際の工事が進められた。
は2
0
0
1年までに約3
,
5
0
0であり,両者から拠
事業では,既存建築物の取り壊しと建て替え
出された助成金の合計は8
8億 2千万マルクに
が部分的には行われたものの,主に外観の修
達する 57) 1
9
7
0年代の都市更新事業は面的再
繕,住宅施設の更新などが行われた。また,
開発 F
l
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s
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gという考え方に基づい
歩行者専用道路の新設や街路樹整備といっ
て進められたが,住宅地域の歴史的特性に対
た,地区全体の骨格となる部分が改良され,
9
7
0
する配慮に欠けると批判されたため 58) 1
一部の街区では中庭部分にあった倉庫や小規
年代後半以降になると建築物などの既存の文
模工場・住宅が取り壊され,中庭の緑化が進
化的資源の再利用が重視されるようになる。
められた問。これらの地域においては,所有
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これらは一般に「地域維持の都市更新 E
者は市を窓口として国や州からの補助金を受
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J と呼ばれ,住宅の改
給し,減税などの優遇措置を享受することが
修,街路整備による交通騒音の軽減および公
可能であり, これらを通じて外壁補修や住宅
園・緑地整備が重点的に行われた。さらに,
施設の近代化などを実施することが可能で
1
9
8
0年代半ばになると,社会組織を含めた地
あった(表 3)。
域社会・自然環境を維持・補完する「生態的
さらに,ゴステンホフでは都市更新事業と
k
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Jも登
都市更新 O
並行して,一部の老朽建築物は文化財に指定
場した。現在は 1
9
9
0年代後半に登場した「社
され,改修・補修に対する補助が行われた。
a
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J 事業が中心となり,
会的都市 S四 i
これらの建物は. 19世紀末 ~20世紀初頭の地
建築物の形態的改善や居住環境整備のみなら
区成立初期に建築された集合住宅であり,街
ず,特定の社会的課題の解決に重点が置かれ
区の成立と発展を表象するものとして文化財
ている問。
指定の対象となった。こうした文化財指定に
上記のような全国的傾向を反映して. 1
9
7
0
よって補助が可能となる一方,増改築や用途
年代以降,ニュルンベルク市での都市更新事
変更が制限されたため,地域の特徴を示す歴
業も既存の建築物などの地域資源を活用しな
史的建築物が現在も数多く残存し,文化的景
がら進められている。このうち,都心周辺西
観が維持されている。
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f
地区の
部に位置するゴステンホフ G
また,文化財指定や都市更新事業以外で
事例に基づいて,既存の地域資源を生かした
も,老朽化住宅の窓枠を改良するなどの機能
都市更新事業の実態を紹介したい。当地区
的改善や,一般住宅地の緑化に対する補助な
は,都市中心部から南西約 2km. 中央駅ま
ど,様々な助成事業が整備されている(表
0分の距離に位置し(図 4
).
で地下鉄で約 1
3)。このように,都市域においては個々の
1
9世紀末に工場労働者の居住地として建設さ
れた。 2
0世紀初頭の工業化や第 2次世界大戦
伝統的文化財および保全地区が指定されつ
後の人口増加に伴って,中庭部分には狭小な
化景観の保全が進められている。また,実際
つ,都市計画および都市更新事業を通じて文
6
2
←
表 3 ニュルンベルクにおける都市更新助成制度 (
2
0
0
0年)
助成制度名
3
4
5
6
7
8
助成内容(対象)
都市更新事業区域を対象として
1
) 住宅建築のための準備および援助
(既存住宅の確保と新築に対する援助)
2
) ファサード(建物正面)改修
都市建築助成
3
) 歴史的に重要な都市建築構造物の保護
4
) 住宅環境の改善
5
) 交通利用者の安全を確保するための改善策
6
) 生態学的に劣悪な地区の改良
7
) 社会的問題を抱えた地域の改良
都市更新事業地域における
都市更新事業区域内での建築物近代化および改
経済的援助
修対策費用に対する課税控除 (10年間 10覧減税)
バイエルン州近代化事業
中古賃貸住宅の品質改善を目的とした,近代化
および改修
バイエルン州住宅建築事業
向上
1
) 都市更新事業区域の優先的住宅の改築・改修
2
) 近代化と改修
居住環境改善事業
3
) 中庭の緑化
4
) 建物除去
5
) 予備計画
公道(公共敷地)に面したファサ ドに接する
ファサード緑化事業
樹木やツタ類の購入育成
交通量の激しい道路沿いの住宅における
防音窓設置事業
防音窓の設置
1
) 省エネルギー効率の高い二重ガラスを含めた断熱
2
) 省エネルギ住宅
3
) ガス式ボイラー
C02削減事業
4
) 蓄電式暖房装置
5
) 省エネルギー住宅施設
(ニュルンベルク市)
6
) 街区集中暖房施設(街区全体への暖房供給施設)
7
) 太陽光発電パネル
助成手段
補助金
(給付)
申請受付
市
減税
市
融資
(貸付)
市
同上
向上
融資・
補助金
市
補助金
市
補助金
市
補助金・
費用弁済
市
注:下線をつけた項目は,都市更新事業と関連の強いことを意味する。
ニュルンベルク市住宅・都市更新局資料より作成
の取り組みは,文化財保全制度,都市計画に
ように寄与している点を明らかにすることを
基づく歴史的施設を活用したまちづくり,さ
目的とした。ヨーロッパにおける文化景観
らに都市更新事業やその他の助成事業を活用
は,人聞が自然との関わり合いの中で作り上
しながら進められており,これらに基づいて
げたものとして捉えられており,文化景観の
地域の実情に即した文化景観保全が可能と
保全とは単に現在の地域像を維持するだけに
こうした文化景観保全
とどまらず,各地域に固有な経済的・生態
に関わる取り組みでは,既存の地域資源を活
的・美的・文化的成果が相互にバランスがと
用しつつ,居住環境や施設などの住民の生活
れた状態へと修復することを意味している。
の質を向上させることが基本となっており,
こうした考え方に基づいて法律や助成制度な
なっている。さらに,
制度を通じて既存の文化景観の維持と持続的
どの法的規制と誘導制度が整備されており,
な住民生活の向上が図られている。
文化景観保全は農村と都市それぞれを対象と
する政策を通じて実施されている。イギリス
I
V
. おわりに
とフランスの保全制度においては. 1960年代
本研究は,ヨーロッパにおける文化景観保
0年代に保全対象が個々の建築物から特
から 7
全の捉え方を再整理し,制度構築の実態を明
定区域全体へと拡大していることに加えて,
らかにするとともに,
保全の実現手法も土地利用規制と誘導を含め
ドイツの都市を事例と
して文化景観保全が地域の持続的発展にどの
た総合的なものへと変容した。
- 63-
関係領域
た誘導策が重層的に整備されている(図 6)。
都市においては,景観規制や文化財保全とと
もに,都市更新事業を通じて地域社会の社
会・文化・生態的要素が再生されており, こ
麗山漕サ ll/*地 域 経 済 対 策
決P
μ
勿
り,広域的なものから小地域に至るまでの重
層的な地域計画が立案され,これに基づいて
複数の予算や事業を活用して,文化景観保全
のための複合的・横断的な対策がとられてい
農村民
る
。
u
u
b
/
一自然文化景観保全
弘グ弘グ弘グ
/{¥/{¥/I¥
〆
μ札、グル災万わむ、
計画・補助金地域
法規助成金経済
文化景観保全制度
景観規制
タη 4 m
都市ト│守山歴史的文化財保護
ポ*都市再生
対象地域
うした取り組みの中で文化景観保全が図られ
ている。農村でも同様の制度が構築されてお
最後に,ヨーロッパにおける今後の文化景
観保全制度に関して,
EUの拡大と深化が進
む中で生じる課題を指摘しておきたい。現
在,文化景観保全事業は各国の国・州・基礎
自治体レベルで進められており,法的・財政
図 6 ヨーロッパでの文化景観保全の枠組み
的な枠組みが構築されている。その一方で,
ドイツでの文化景観プログラムの事例にみら
ドイツにおいては 1
9
6
0年の連邦建設法以
れるように,国や地方政府の財政悪化などに
降,法規による規制および都市計画制度によ
事業との連携が強化されつつあ
起因して EU
る誘導に基づいて開発行為が抑制され,既存
る
。
の文化景観が保全されている。また,農山村
ら,農山漁村や都市での地域構造改革を補助
を対象とする文化景観保全事業によって農業
しているが, 2
0
0
7年以降,新規加盟国を中心
環境や農耕景観が維持され,都市域では文化
にした後進地域への補助に重点を置き,国際
財保全制度,都市計画に基づく歴史的施設を
競争力に対応させる地域構造改革を促進する
活用したまちづくり,都市更新事業やその他
計画を公表しており 62) 従来の文化景観保全
の助成事業を活用しながら,文化的景観保全
事業を含む環境関連政策に十分な予算を確保
が進められている。こうした文化景観保全に
できるかどうかは不透明であろう。とくに
関わる取り組みは既存の地域資源を活用する
EU
拡大に伴う新規加盟の旧中欧・東欧諸国
ことを最優先させているため,地域の実情に
への環境対策・生活基盤整備に膨大な予算が
即した文化景観保全が可能となっている。同
投じられる反面,
時に,居住環境や施設などの住民の生活の質
国での文化景観保全事業に対する予算が低下
EUは加盟国や地方自治体と共同しなが
ドイツなどのいわゆる先進
を向上させることが基本となっており,既存
する危険性がある。また課題の第 2点とし
の文化景観の維持と住民生活の持続的な向上
て,文化景観保全事業に関する加盟各国間お
が図られている。
よび基礎自治体問での制度的差異・格差が指
上述のように,近年におけるヨーロッパの
摘できる。 ドイツにおける文化景観プログラ
文化景観保全の枠組みでは,都市と農山村そ
ムでの補助対象の縮小にみられるように,
れぞれにおける文化景観を対象として,都市
EU
や固との共通政策である場合,既存の先
計画や法規などの規制や,補助金や農村部で
進的で手厚い補助事業は縮小してしまう傾向
の所得水準向上などの地域経済活性化といっ
にあり,こうした下限一致の原則を議論し,
- 64-
調整する必要があるだろう。同時に,補助事
5
) 前掲3
)4頁
。
業となる場合,補助金の利用目的が制約され
6
)R
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gundBauordnung
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enkmalschutzundDen
わn
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るため,地域の実情に即した文化景観保全対
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tmbH,
Munchen,GehringV
策を実施することが困難となる危険性があ
1
9
9
9,
S
.1
2
8
.
り,より柔軟に活用できる資金の導入も検討
7
) 海道清信「地域振興型新都市開発プロジェ
すべきだろう。
クトの計画経営論一日英ニュータウシ
本稿では,ヨーロッパにおける文化景観保
全の制度構築を概観するとともに,
ドイツの
1
9
9
4, 463~468頁。
事例を通して,重層的に策定された地域計画
8
) Heineberg,H,G
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に基づいて,複数の事業を活用した複合的・
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横断的な対策として文化景観保全が進められ
2
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2
2
7
2
3
2
.
ていることを明らかにした。既述の通り,現
9
) 伊藤徹哉「ドイツにおける都市更新事業に
の拡大と深化が進展する中で,各国の
在 EU
伴う住宅地域変容← 1
9
7
0年代以降のニュル
既存の文化景観保全制度は変化しつつあり,
ンベルクを事例として
それらの動向を国別に事例調査に基づ、いて詳
細に分析する必要があるが,それらは今後の
プ
ロジェクトの計画経営に関する比較検討
~J. 日本都市計画学会学術研究論文集2
9,
J
,経済地理学年報
4
9, 2
0
0
3, 197~217頁。
1
0
)佐 々 木 博
課題としたい。
m
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の地理学1 二 宮 書 庇
1
9
9
5, 7
2頁
。
(東洋大学国際共生社会研究センター)
1
1
) 松田祐子 W
E
U
農政の直接支払制度 構造と
機能 1 農林統計協会, 2
004,6
1頁
。
1
2
) EU
の構造基金に基づく地域構造事業には,
〔付記〕
社会基盤施設の整備が遅れた都市を対象と
論文作成において筑波大学の手塚章教授なら
びに石井英也教授に貴重な助言をいただいた。
記して厚く御礼申し上げます。なお,本稿作成
にあたって文部科学省科学研究費補助金(若手
研究 (
B
)1
8
7
2
0
2
3
3 [研究代表者:伊藤徹哉])
の一部を利用した。
する事業も含まれており,都市問題対策で
ある URBANI
I
などの補助事業を通じて,生
活基盤施設を中心とした都市における文化
景観の改良が進められている。
1
3
) 岡部明子『サステイナブルシティー EU
の地
域・環境戦略1 学芸出版社, 2
0
0
3,58~64
頁
。
〔
注
〕
1
4
) Wobse,
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) 田村
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明[近年の景観保全の動向と課題J,
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nKommunalverbandGrosraum
elemente,
2
),1
9
9
8,2~8頁。
環境と公害28(
2
) 寺阪昭信「フランスにおける景観保存政策
Hannoverh
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統合への文
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妊
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3
) 上回貴雪「ヨーロッパの景観規制制度 J
,調
3
9,2004,1~11 頁。
査と情報 4
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Planung,
4
) 西村幸夫『環境保全と景観創造
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7,
の都市風景へ向けて 1 鹿島出版会, 1
7~139頁。
1
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) Denecke,D
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Quellen,Methoden,F
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5一
2
9
) 前掲2
)8
2頁
。
3
0
) 松政貞治「点・線から面への景観規制の移
り変わり←フランスの景観コントロ }
v
J
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.2006年 5月2
5
日
, 1
3
:
1
0
) に基づく。
1
9
) 前掲 1
5
)S
.
l1
.
2
0
) 前掲 3
)2
頁
。
2
1
) 前掲4
)1O ~29頁。
2
2
) 前 掲4
)2
1頁
。
2
3
) 前掲4
)17~29頁ο
2
4
) 前 掲3
)によれば,イングリッシュ・ヘリテ
イジは1
9
8
3年 の 国 家 文 化 遺 産 法 に よ り 文
化・メデ、ィア・スポーツ省所管の公共団体
造景4
.1
9
9
6
. 167~174頁。
3
1
) 前掲3
)7~8 頁。
3
2
) 和田幸信 rZPPAUPの景観保全制度としての
特徴と作成状況一フランスにおける建築
Z
P
的・都市的・景観的文化遺産保存区域 (
PAUP)に関する研究その 1
J,日本建築学会
計画系論文集5
3
6
.1
9
9
8
. 177~184頁。
3
3
) 稲本洋之助「フランスの『都市計画法典』
. 稲本編
その主要な制度についての解説J
著『フランスの都市計画法典1 財団法人
土地総合研究所. 1
9
9
7
. 8~10頁。
3
4
) 平尾和洋・川崎清「パリ POS (土地占有計
画) W 景観保全のための紡錘体 (FUSEAU)~
の現状分析 J
. 日本建築学会計画系論文集
4
6
0
.1
9
9
4
. 122~129頁。
3
5
) ヴィンフリート=ブローム・大橋洋一『都
市計画法の比較研究一日独比較を中心とし
て1 日本評論社. 1
9
9
5
.1
9
9頁
。
3
6
) 州および基礎自治体の裁量が大きいこと
は,州ごとに建築法が制定されているだけ
9
8
6年の建
でなく,都市計画の策定主体が 1
として設立された。
2
5
) 田園地域庁のホームページ (
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設法典において基礎自治体と規定されてい
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年8月7日
, 1
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:
3
0
) によると,本機関は 1
9
0
9
ることからも理解できる。
3
7
) 広渡清吾「総論
都市 j
去の論理と歴史的発
年の田園開発委員会に起源を有し, 1
9
4
9年
展J
. 原田純孝・広渡清吾・吉田克己・戒能
の国立公園と田園地帯アクセス法によって
通厚・渡辺俊一編『現代の都市法ードイ
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8年の田園地域法 C
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tに基づく田園地域委員会を経て,
1
9
9
9年に田園地域庁 C
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" は前
掲9
)2
1
3頁を参考として,それぞれの計画
内容の特性から土地利用準備計画と地区詳
細計画の訳語を用いた。
改組された。
2
6
) カントリーサイド・コミッション著, (財)
農村開発企画委員会編・勝原文夫訳『イギ
リスの農業景観一保全と創造 L 論創社,
1
9
8
4, 120~ 1
2
3員
。
3
8
) 広渡清吾「都市計画と土地所有権
『建築
.原田純孝・広渡清吾・
の自由』の検討 J
吉田克己・戒能通厚・渡辺俊一編『現代の
都市法←ドイツ・フランス・イギリス・ア
2
7
) 蟻野弥生「自然環境法制J,稲本洋之助・戒
能通厚・田山輝明・原田純孝編著『ヨー
ロッパの土地法制
メリカ 1 東京大学出版会. 1
9
9
3
. 54~76
フランス・イギリス・
頁
。
西ドイツ 1 東京大学出版会. 1
9
8
3,299~
3
9
) 野 日 充 ・ ア ン ド レ ア ス シエラー「ドイ
ツ連邦共和国フライブルク市の都市景観行
政(1)J
. 広 島 法 学27(
2
)
.2
0
0
3
. 377~378
頁
。
3
0
1頁
。
2
8
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8,p
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3
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4
0
) 前掲 1
0
)7
3頁
。
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) に基づく。
4
9
) 前掲 4
8
)S
S
.
2
4
.によればバイエルン州所得
,1
0
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,1
0
g
) に基づいて文化財
税法(第 7条 i
の修繕費用の一定額を所得税から控除する
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3
5
4
9 によれば, 1
9
7
1年 に パ ー デ ン ・
ことができる。また,固定資産税法や売上
税法においても税の軽減が規定されてい
ヴュルテンブルク州文化景観保全・保護
9
7
3年 に バ イ エ ル ン 州 文 化 財 保 全 ・ 保
法
, 1
護法,同年ハンブルク州文化財保護法がそ
れぞれ制定された。
4
2
) 前掲 1
1
)6
4
頁によれば,バイエルン州の農村
振興計画における 4つの重点事項には,文
化景観プログラムを核とする環境関連政策
のほか,食品産業の育成や農家の投資促進
を目指す構造改善,村落再整備などの農村
振興,さらに,植林などの林業施策が含ま
れている。
4
3
) 前掲 1
1
)6
5頁
。
4
4
)B
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1
0
2
8
/, 2
0
0
6年 6月 8日
,
1
9
:
0
5
) に基づく。
4
5
)バイエルン州・文化財保護法では「歴史
的,文化的,都市建築的,科学的,あるい
第 1条 1
は民族的な重要性の認められる J(
項)建築物文化財,遺跡文化財,動産文化
財などの個々の対象物を保全するするとと
I
建築された施設・設備A
n
l
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g
eの統一
体・エンセンブル J(
第 1条 3項)を対象と
もに,
して,一体的に文化景観を保全する保全地
区制度が導入されている。
4
6
) Hochbauamt,
Denk
1
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tNurnberg,
2
0
0
1,
S
.
2
.
4
7
) 大村謙二郎「都市計画の実現システムと事
,原田純孝・広渡清吾・吉田克己・
業法制 J
戒能通厚・渡辺俊一編『現代の都市法ード
イツ・フランス・イギリス・アメリカ 1 東
9
9
3, 106~ 1
0
9頁
。
京大学出版会, 1
4
8
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