論文内容要旨

論文内容要旨
目的
外側円板状半月(discoid)は疼痛・跛行・snapping などの膝症状を生じる先天的な半月板奇
形であり、日本を含む東アジアで頻度が高いと言われている。discoid は時に、大腿骨外側
顆の離断性骨軟骨炎(以下 OCD)の原因となりうる。Discoid に伴う大腿骨外側顆 OCD は、
1984 年に Irani らにより報告され、これまでに discoid に伴う大腿骨外側顆 OCD の原因に
ついては、半月板損傷、半月板切除、半月板形態(complete or incomplete)など様々報告
されている。また、外側円板状半月の骨形態に関する報告としては、X 線上の特徴である外
側関節裂隙の開大、 大腿骨外側顆低形成、腓骨頭高位など が挙げられているが、discoid
に伴う OCD の発症と骨形態の関連に着目した報告は、我々が渉猟し得たかぎりではない。
この研究の目的は、discoid に合併した OCD と骨形態の関連について評価することである。
対象、方法
2003 年 1 月~2008 年 12 月に、保存療法では改善しなかった有症状の外側円板状半月にて
当科に紹介され、手術施行した 58 患者 63 膝を対象とした。男性 29 例 31 膝、女性 29 例
32 膝、年齢は 7~66 歳(平均 17.7 歳)であった。これらの患者の内、OCD を伴っていた
症例は 15 例 15 膝(男性 9 例 9 膝、女性 6 例 6 膝)、年齢は 7 歳~41 歳(平均 14.9 歳)で
あった。OCD を伴っていない症例は、43 例 48 膝(男性 20 例 22 膝、女性 23 例 26 膝)、
年齢は 7~66 歳(平均 17.6 歳)であった。半月板形態の影響を除外するために Incomplete
discoid 症例、骨棘形成の影響を除外するために Kellgren-Lawrence 分類のⅢ、Ⅳは除外し
た。全例でローゼンバーグ撮影を施行し、Ha らの報告に従い、大腿骨外側顆の形態
(prominence ratio)を評価した。また外側関節裂隙、腓骨頭高位、外側脛骨顆間隆起傾斜角、
脛骨外側顆 cupping を測定した。OCD 症例と非 OCD 症例で Prominence ratio、外側関節
裂隙、腓骨頭高位、外側脛骨顆間隆起傾斜角、脛骨外側顆 cupping を比較検討した。また
半月板損傷による影響を除外するため、OCD 症例を半月板損傷有り群、無し群に分類し、
prominence ratio を比較検討した。
結果
Prominence ratio は OCD 症例で有意に大きい結果となった。その他の因子については OCD
症例と非 OCD 症例間で有意差を認めなかった。OCD 症例における半月板損傷有りと無し
群で prominence ratio に有意差を認めなかった。
考察
これまでに、discoid に伴う大腿骨外側顆 OCD の原因については、半月板損傷、半月板切
除、半月板形態など様々報告されている。Mitsuoka らは、損傷半月板が大腿骨外側顆に繰
り返しのストレスを与えることが原因と報告している。また Mizuta らは半月板切除後には、
脆弱な大腿骨外側顆にスポーツ活動による外力が直接加わることを原因として挙げ、Deie
らは膝関節屈曲に伴い異常形態の半月板が後方でたわみ、外側顆後方に何らかの荷重集中
が発生することや、屈伸により剪断力が働くことが原因と報告している。
今回我々は、レントゲン上、OCD 症例で非 OCD 症例と比較し、大腿骨外側顆が顆間に突
出している印象を受け研究を行った。今回の研究では、OCD 症例の prominence ratio は非
OCD 症例と比較し有意に大きく、脛骨・腓骨側の因子に差はなかった。また、OCD 症例
において、半月板損傷患者は 15 例中 7 例、半月板損傷の有り・無しの患者間で prominence
ratio に差がなく、半月板損傷の今回の研究に与える影響も少ないと考えられたため、
discoid に伴う OCD は大腿骨外側顆の形態と関連がある可能性が考えられた。OCD 症例で
大腿骨外側顆の低形成を生じていないことから、OCD 症例では discoid が大腿骨外側顆に
より大きなストレスを与えることや、二次骨化核の骨化に影響を与えることが OCD の原因
となっているのではないかと推測している。