保健・福祉分野におけるマルチメディア応用の ケーススタディ調査(97年度) ― 保健・福祉分野でのマルチメディアの普及阻害要因・成功要因 ― < 最終報告書 > SEP.25,1997 日本マルチメディア・フォーラム(JMF) サービスシステム検討委員会 保健・医療ワーキンググループ 目 次 Ⅰ.調査アウトライン 2 (1) 調査期間 3 (2) 調査目的 3 (3) カバレッジ・エリア 3 (4) プロダクト・カバレッジ 3 (5) ユーザ・カバレッジ 3 (6) 調査方法 3 (7) インタビュー対象機関リスト 4 5 Ⅱ.調査サマリー (1) マルチメディア使用(利用)期間 6 (2) マルチメディア使用(利用)対象者とアプリケーション 7 (3) 使用メディア(端末機器・通信インフラ) 8 (4) コンテンツの表示種類 9 (5) 分野別マルチメディア応用のメリットと普及阻害要因 Ⅲ.ケーススタディ実態調査(個別インタビュー調査) 10 12 1−1.埼玉総合リハビリテーションセンター 13 1−2.医療法人梨香会 17 秋元病院 1−3.石川県金沢市 20 1−4.富山県山田村 25 1−5.板橋区おとしより保健福祉センター 31 1−6.鈴鹿医療科学技術大学 37 1−7.福島県西会津町 41 1−8.山形県小国町立病院 45 2−1.日立製作所中央研究所 49 2−2.社会就労センターワイドビジョン 53 2−3.横浜高島屋ハートフルショップ 56 3−1.山梨県丹波山村 60 3−2.東住吉森本病院 64 4−1.藤村病院/バーチャルホスピタル 69 4−2.シティクリニック/サイバークリニックモール 72 1 Ⅰ.調査アウトライン 2 (1)調査期間 1997 年 3 月 10 日 〜 1997 年 9 月 10 日 保健・福祉分野において、マルチメディア技術を応用・利 用している(または予定・計画中の)機関・施設が考えてい (2)調査目的 る課題・問題点、あるいは優位点を抽出することによって、 マルチメディア・アプリケーションの普及阻害要因・普及促 進要因を明確化すること。 (3)カバリッジ・エリア 日本市場 テキスト、静止画、動画、音声等をコンピュータあるいは (4)プロダクト・カバリッジ マルチメディア要素技術にて応用・利用した機器・装置・メ ディア 保健・福祉分野(一部医療含む)において、マルチメディ (5)ユーザ・カバリッジ ア技術を応用・利用している保健・医療機関、福祉施設、自 治体等、計 15 サンプル(リスト参照) (6)調査方法 1.インタビュー対象ユーザへの対面インタビュー 2.1の方法を補完するためのテレフォン・インタビュー 3 (7)インタビュー対象機関リスト 4 Ⅱ.調査サマリー 5 (1) マルチメディア使用(利用)期間 コード No. 対象機関名 使用(利用)機関 1−1 ●埼玉総合リハビリテーションセンター 1996 年 5 月 1 日〜 1−2 ●医療法人梨香会 秋元病院 1996 年 4 月 24 日〜 1−3 ●石川県金沢市 1−4 ●富山県山田村 1−5 ●板橋区おとしより保健福祉センター 1994 年 4 月〜1996 年 3 月 1−6 ●鈴鹿医療科学技術大学 1996 年 7 月〜1999 年 3 月 1−7 ●福島県西会津町 1−8 ●山形県小国町立病院 2−1 ●日立製作所中央研究所 2−2 ●社会就労センターワイドビジョン 2−3 ●横浜高島屋ハートフルショップ 3−1 ●山梨県丹波山村 1991 年 10 月〜 3−2 ●東住吉森本病院 1996 年 10 月〜 4−1 ●藤村病院/バーチャルホスピタル 4−2 1995 年 7 月〜(TV 電話)、 1995 年 11 月〜(パ ソコン通信)/いずれも〜1997 年 3 月 1996 年 12 月〜(TV 電話)、 1997 年 1 月〜2 月(在宅保健管理システム) 1994 年 4 月〜 1994 年 12 月〜(TV 電話)、 1995 年 4 月〜(在宅健康測定器) 試作レベル(手話自動認識システム) 1996 年 6 月末〜 /実用化は 1997 年秋頃 1997 年 3 月 12 日〜 ●シティクリニック 1996 年 1 月〜 (ホームページ開設時期) 1996 年 5 月〜(ホームページ開設時期)、 /サイバークリニックモール 1996 年 12 月〜(医療相談開始) 6 (2) マルチメディア使用(利用)対象者とアプリケーション コード マルチメディア使用(利用)対象者 No. 1−1 リハビリ専門療法士と地域(市町村)の保健婦間 1−2 精神科医師とカウンセリング治療患者間 1−3 1−4 アプリケーション 遠隔リハビリテーション支援 遠隔カウンセリング療法 (遠隔家族療法) 保健・福祉・医療施設と在宅高齢者及び在宅高齢者 遠隔健康相談・遠隔介護支援・交 同士間 流支援 一般家庭住民と行政(保健・福祉担当)。一般家庭 遠隔健康管理・在宅交流支援 住民間。 遠隔リハビリテーション支援・在 1−5 リハビリ専門医・保健婦等と在宅ケア高齢者(患者) 1−6 リハビリ療法士と病院内患者(将来は在宅患者) 1−7 保健婦と在宅要援護者(要指導者・要医療者) 1−8 訪問看護婦・医師と在宅患者(在宅療養者) 2−1 聴覚障害者と健常者間 手話自動認識システム 2−2 聴覚障害者・視覚障害者及び健常者(実用化後) 手話合成システム 2−3 売場来店者(健常者及び要介護者) 介護指導視聴システム 3−1 満 40 歳以上の健診受診者 3−2 民間病院の通院患者と診療所(開業医) 4−1 インターネット加入の不特定多数 遠隔医療相談 4−2 インターネット加入の不特定多数 遠隔医療相談 宅ケア支援 遠隔リハビリテーション支援 遠隔保健・福祉 (在宅健康管理システム) 遠隔保健・福祉 (在宅看護福祉) 保健医療データの電子化 (光カード化) 7 病診連携のための医療データの電 子化(ICカード化) (3)使用メディア(端末機器・通信インフラ) コード 対象機関名 No. 1−1 センター ●医療法人梨香会 秋元病院 1−3 ●石川県金沢市 1−4 ●富山県山田村 ●板橋区おとしより保健福祉 センター 1−6 ●鈴鹿医療科学技術大学 1−7 ●福島県西会津町 1−8 ●山形県小国町立病院 2−1 ●日立製作所中央研究所 2−2 通信インフラ メーカ名 メディア PC、 日本 IBM、 INS64、 TV会議装置 ピクチャーテルジャパン INS128 TV会議装置 富士通 INS1500 TV電話、 日立、NEC、三 PC 菱、富士通、NTT ●埼玉総合リハビリテーション 1−2 1−5 端末機器 端末機器 PC アップル、 日本 IBM INS64 INS64 TV電話 富士通 TVモニター 松下電器 健康測定器 セタ 健康測定器、 セタ、 INS64、 TV電話 日立製作所 一般電話回線 UNIX‑WS 日立製作所 (スタンドアロン) UNIX‑WS 日立製作所 (スタンドアロン) ビデオ CD 再生 関西松下 機 システム ●社会就労センター ワイドビジョン INS64 AV アナログ回線 (将来は CATV) 一般電話回 線、CATV 2−3 ●横浜高島屋ハートフルショップ 3−1 ●山梨県丹波山村 PC NEC 光カード 3−2 ●東住吉森本病院 PC NEC IC カード PC アップル インターネット PC NEC インターネット 4−1 4−2 ●藤村病院 /バーチャルホスピタル ●シティクリニック /サイバークリニックモール 8 (スタンドアロン) (4)コンテンツの表示種類 コード No. 1−1 1−2 1−3 1−4 1−5 1−6 1−7 1−8 2−1 2−2 2−3 3−1 3−2 4−1 4−2 対象機関名 表示色 文字 静止画 動画(コマ数/秒) カラー 数字 グラフ 写真 30 未満 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ●石川県金沢市 ○ ○ ○ ○ ○ ●富山県山田村 ○ ○ ○ ○ (一部) ●板橋区おとしより ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ モノクロ ●埼玉総合リハビリ テーションセンター ●医療法人梨香会 秋元病院 保健福祉センター ●鈴鹿医療科学技術 大学 ○ 音声 30 以上 (一部) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ●福島県西会津町 ○ ○ ○ ●山形県 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ●山梨県丹波山村 ○ ○ ○ ○ ●東住吉森本病院 ○ ○ ○ ○ ●藤村病院/バーチャ ○ ○ ○ △ △ △ ○ ○ ○ △ △ △ 小国町立病院 ●日立製作所 中央研究所 ●社会就労センター ワイドビジョン ●横浜高島屋ハート フルショップ ルホスピタル ●シティクリニック Mar○:現在使用中 9 ○ ○ ○ ○ ○ △:現在使用中であるが未使用 (5)分野別マルチメディア応用のメリットと普及阻害要因 ① TV電話・TV会議による遠隔リハビリ支援 メリット ☆ 地域の人材不足(OT・PT等のリハビリ療法士)の補完や地域間サ ービス較差の解消に有効 ☆ リハビリ方法照会・機器照会では、写真・図面・動画を遠隔地間でリ アルタイムに情報共有できるため効果的 ☆ 介護者への介護方法の適時・適切なアドバイスのためのTV電話は効 果的 ☆ 一人暮らしの在宅リハビリ高齢者にとって、家族以外の人と交流で き、生活のリズムができ、 安心感が生まれる 普及阻害要因 ★ 全身リハビリ療法では大画面ディスプレイ(25インチ以上)が必要 であるが、大画面TV会議専用機は高価 ★ 在宅高齢者にとってハードウェア(TV会議システム・PC)のイン ターフェースはまだ煩雑・難解 ★ 在宅側の機器はリモート操作が便利であるが、プライバシー保護のル ールが不備 ★ センター側にはリハビリ専門家・在宅ケア専門家等の専任制が必要で あるが、人材配置の問 題がネック ② 遠隔健康管理・遠隔介護支援 メリット ☆ 遠隔(在宅)健康管理システムは、在宅の要指導者・要医療者等のハ イリスク者の疾病早期 発見と予防に有効 ☆ これまで介護者経由の情報が遠隔介護支援システムによって、ダイレ クトに要介護者情報が画像で入手可能 ☆ 独居老人・虚弱老人にとっての安否確認やコミュニケーションの目的 では、静止画コマ送り画像でも有効 ☆ TV電話システムを利用した医師への投薬相談、栄養士による栄養相 談等で遠隔システムは 有効 普及阻害要因 ★ 手足・指の機能が低下している要介護高齢者にとって、ハードウェア のスイッチ・ボタン類はまだ使い難い ★ 高機能・多機能が進むPC・TV会議システムは、必ずしも高齢者等 の初心者にとって使い易いとは限らない ★ 高齢者の生きがい作りを目的としたインターネットによる海外交流 は語学力が必要(機械翻訳の精度が不十分) ★ 現状では遠隔(在宅)健康管理システムは高価 10 ③ 保健・医療データの電子(カード)化 メリット ☆ 電子化された保健・医療データを介しての情報共有で、病院と診療所 (開業医)の機能分担と病診連携が可能 ☆ 保健・医療データを電子化したICカードを携帯することで重複検 査・重複投薬の防止に有効 ☆ 病院と診療所(開業医)の病診連携により、病院の在院日数を短縮で き、医療費の削減に有効 ☆ 検査結果をグラフ化できるため、経時的推移を患者へのインフォー ムドコンセントのツールとして使用可能 普及阻害要因 ★ ICカード・光カード等の電子化データがメーカ間で互換性がないた め、対象領域外では使用できない ★ 行政の支援のない民間同士の病診連携の場合、ハード・ソフトの負担 が厳しく、早期の普及は厳しい ★ ICカード・光カード等のパッケージデータは情報容量の制限やタイ ムラグがある ★ 医療画像を含めた医療情報オンライン化による病診連携のために は、双方向画像通信のインフラ整備が必要 ④ インターネット遠隔医療相談 メリット ☆ 地方の単科の一診療所でもインターネットのホームページ上では、複 数の科目の診療所が集まれば総合病院になりえ、世界中の人と最新の 医療知識の啓蒙や医療相談に応じることができる。 ☆ 医療事情が悪い後進国や医療費が高額な先進国などから、日本人が日 本語で相談できる。 ☆ 医師と患者が日頃から電子メールでやりとりすることで、相互不信を 埋めることができ、大病院志向から家庭医の復権に繋げられる。 普及阻害要因 ★ インターネット医療相談は、あくまでも非営利、ボランティアで実施 しているため、生じる責任は医師側にないなどのルールが明確化され ていない。 ★ インターネット医療相談は、 診断に必要な経過観察・視診・触診・ 聴診・打診などの基本情報が欠如しているため、「診断」ではなく、 参考程度の「相談」であるという同意が必要である。 ★ 専門領域外患者の医師から医師への紹介、初診を前提とした「メール 再診」等、報酬(点数化)は認められず。 11
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