1日目 ポスター発表抄録

1日目 ポスター発表抄録
4年制歯科衛生士養成課程新入生に対する卒後進路希望等に
関するアンケート調査
P1
○大内章嗣1),大島勇人1),富沢美恵子2),福島正義2),山崎和久2),隅田好美2),
小野和宏1),五十嵐敦子1),八木稔1),ステガロユ・ロクサーナ1),中島俊一1),
山田好秋1)
1)
新潟大学大学院医歯学総合研究科, 2)新潟大学歯学部口腔生命福祉学科
The results of a questionnaire focused on the career preferences of freshperson from
a educational institution that trains dental hygienists through a 4-year curriculum
1)
1)
2)
2)
2)
2)
1)
Ohuchi A , Ohshima H , Tomizawa M , Fukushima M , Yamazaki K , Sumida Y , Ono K ,
1)
1)
1)
1)
1)
Igarashi A , Yagi M , Stegaroiu R , Nakajima S , Yamada Y
2)
Niigata Unibersity Graduate School, Faculty of Dentistry, Niigata University
1)
Ⅰ 目的
新潟大学歯学部では2004年度から口腔生命福祉学科
(以下、「新学科」と記す。)を新設した.卒業によ
り歯科衛生士と社会福祉士の国家試験受験資格を得る
ことになるが,4年制の歯科衛生士養成機関として初
となるばかりか,歯科衛生士と併せて社会福祉士とし
ての教授内容も統合したカリキュラムを提供するとい
う他に例のないユニークな学科となっている.
今回,こうした新学科の第1期生となる新入生を対
象として,教授内容および就職支援等の検討ための参
考資料とすることを目的に卒後の進路希望などに関す
るアンケート調査を実施したので報告する。
Ⅱ 方法
2004年度新学科20名を対象に新入生ガイダンス(合
宿研修)の際に無記名式アンケート調査を行った.質
門項目は新学科設置を知った情報源,受験を決めた理
由,取得を希望する資格,卒後の進路希望等とした.
Ⅲ 結果と考察
新学科新入生20名全員(男性2名、女性18名)から
アンケートを回収した.設置を知った情報源(複数回
答)としては「新潟大学歯学部ホームページで」が55
.0%で最も多かった.受験を決めた理由(複数回答)
としては,「新しい形の学科で将来性を期待して」が
75.0%,「社会福祉士の受験資格が取れるから」45.0%,
「歯科衛生士の受験資格が取れるから」40.0%であった.
資格取得については「必ず両方取りたい」が60.0%で,
次いで「どちらかというと歯科衛生士」が25.0%であっ
た.進路については第1希望と第2希望を調査し,第1希
望では「病院・診療所勤務」が30.0%と最も多かった.
ユニークな形の全くの新設学科であったが,学科の理
念に沿って歯科衛生士をベースに福祉関係にも深い関
心を示す学生を得ることが出来たと考えられる.
歯科衛生士学生の実習教育
第2報 2002年度と2003年度の実習状態の比較
P2
○尾形圭五,米田 護,小出 武
大阪歯科大学総合診療部診療科
On the Job Training with Students of Dental Hygienists
Part 2. Comparison of the Experience with the Training of the Year 02 and 03
○ Keigo Ogata, Mamoru Komeda, Takeshi Koide
Dept. of Interdisciplinary Dentistry, Osaka Dental University
I
目的
当科は歯科医師(DR)の治療と歯科衛生士(DH)
が行う口腔衛生指導・予防による総合診療を行って
いる。歯科衛生士学校実習生(DH-ST)には、歯科診
療の流れとDHの責任を理解し、処置内容に則した診
療補助等が出来る事を目的に実習指導を行ってい
る。前年度の調査結果を検討し指導方法の変更を
行ったので、その是非を知る目的で、平成15年度DHSTの実習体験状況を調べた。
II
方法
DH-STが1日特定のDRの見学・介助を実習する基本
はそのままに、可能な限り他のDRの診療やDHの予防
業務の見学・介助をする事、また実習が2校重複し
ている場合には、各校のDH-STが均等に体験出来る事
を平成15年度の指導方針とした。A,B,C 3校のDH-ST
に対し、当科で行っている処置内容を明示し、実習
に際してDR、DH指導の下に体験した処置件数を各項
目毎に一覧表に記入してもらい、体験率:当該処置
体験学生数/学生総数(1実習当該処置を体験した
学生の率)、体験数:累積当該処置体験数/学生総
数(1実習学生1人当たりの当該処置体験数)1日体
験数:1
学生1日当たりの体験数(1学生体験数/実習日数)
を算出し、前年度と比較検討した。
III 結果と考察
各処置の体験数・体験率に多少の増減はあるもの
の、前年と同様の傾向を示した。1日体験数の平均は
3校ともほぼ同数を示し、5件以下の体験者の割合が
減少していた。以上の結果からでキルだけ均等に数
多くの症例を体験させる目的の指導方法変更の効果
が認められた。
IV 文献
歯科衛生士学生に対する高齢者歯科教育の検討
P3
○片野志保 田邉智子 熊倉幸子* 藤田浩美* 江面晃* 荒井桂 内田稔
日本歯科大学新潟短大 日本歯科大学新潟歯学部附属病院在宅歯科往診ケアチーム*
Study and Analysis on Geriatric Dentistry
― Questionnaire to Dental Hygiene course students ―
○Katano S,Tanabe S,Kumakura S*,Fujita H*,Ezura A*, Arai K, Uchida M,
The Nippon Dental University,Jr.College and Niigata Dental Hospital,Home Dental Care Team*
Ⅰ 目的
高齢社会をむかえ,歯科衛生士が高齢者に関与する
場面が多くなってきている.しかし,核家族化の進行
に伴い,歯科衛生士学生の中には祖父母と同居した経
験がなく,高齢者とコミュニケーションをもつ機会が
少ない学生が多くなっている.そこで高齢者歯科教育
を実施するにあたって,歯科衛生士学生の高齢者に対
するイメージについて調査を行い,祖父母との同居経
験別の違いにより,どのように対応すべきか検討した
ので報告する.
Ⅱ 方法
平成15年度日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科
の病院・施設実習前の第2学年58名を対象とした.学
生を祖父母との同居経験の有無によってわけ,各自に
「高齢者に対するイメージ」というテーマでカードを
作成させた.その後,グループごとにKJ法に準じて
分類し,われわれにて分析を行い,高齢者に対するイ
メージの違いを比較した.
Ⅲ 結果と考察
祖父母との同居経験がある学生は33名,同居経験が
ない学生は25名であった.祖父母との同居経験がある
グループは回答の総数が多く,生活習慣や行動の特徴
など身近で具体的なイメージを示す回答が多くあった.
それに対し,同居経験がないグループはイメージが湧
きづらいためか回答の総数も少なく,身体的な特徴な
ど抽象的なイメージが多かった.これらのことより同
居経験がない学生は高齢者についての理解が低いと思
われる。そのため,高齢者の疾病や障害の知識のみだ
けではなく,高齢者の心理を理解した対応ができるよ
う包括的な教育を実施後,病院・施設実習に臨ませる
ことが必要であると考える.
歯科衛生士短大における実践的な食事指導教育の取り組み
伝統的な和食を中心とした栄養素を考えない簡便な食事指導法
P4
○中村直樹、山口 晃*、水谷太尊*、浅沼直樹、宮崎晶子、佐藤治美、片野志保、
田邉智子、将月紀子、荒井 桂、内田 稔
日本歯科大学新潟短期大学 日本歯科大学新潟歯学部附属病院*
The education for survey of diet in dental hygiene
school
Using traditional Japanese diet
Nakamura N, Yamaguchi A*, Mizutani M*, Asanuma N, Miyazaki A, Sato H, Katano S,
Tanabe S, Masatsuki N, Arai K and Uchida M
The Nippon Dental University,Junior College and Niigata Dental Hospital*
Ⅰ 目的 歯科対象疾患である齲蝕,歯周病は生活習
慣病の代表疾患である.歯・口腔の健康は口腔刷掃の
みでは維持出来ない.歯科衛生士教育には栄養指導が
あるが,実際の指導は栄養士が行なうようには出来な
いことが多く,臨床の場で食事指導を実践されている
ことは少ないと考えられる.そこで栄養素を話題にせ
ず,より簡便な食事指導方法の導入を試みている.そ
こで,まず学生の食事調査を行ない,学生自らの食生
活の見直しを試みたので,その概要を報告する.
Ⅱ 方法 日本歯科大学新潟短期大学2年生56人に対
し、3日間の食事調査を施行した.合衆国における
McGovern ReportやWalterらの研究などから健康を維
持する食生活が伝統的な『和食』であることをエビデ
ンスとした健康な生活を維持するための食生活の講義
を行ない、その後学生自らの食生活を検討させ、レ
ポートとして提出させた.
Ⅲ 結果と考察 実際は個別に行なう栄養指導であ
るが,全体的な傾向をまとめると,主食に御飯(コ
メ)を摂食していない者が多く,摂食回数3回以下
のものが約2割であった。御飯の代わりにはパン、
パスタ、うどん、ラーメンなど食べていた.授業中
の質問からも、ヒトの主食が『でんぷん』であると
いう事を認識していないことが確認され、健康を維
持する食事摂取比率が理解されていないことがわ
かった.また野菜摂取量が少ないことも特徴であっ
たが,多くのものがその事を、自らの食生活におけ
る一番の問題点であると認識していた.
Ⅳ 文献 Walter C. WillettEat, et al :
Drink, and Be Healthy: The Harvard Medical
School Guide to Healthy Eating: Simon &
Schuster Books,2002
歯科衛生士学生の基本的臨床教育
第3報 父兄参加型実習後の父兄からのアンケート結果
P5
○星 雅子,伊藤孝訓*,堀内由子,中村悦子,岸 玲子,川奈部和代,小林喜平
日本大学松戸歯学部附属歯科衛生専門学校,*同口腔診断学教室
Education of Clinical Skill for Students of Dental Hygiene -Part3. Questionnaire
Results from the Parents Partcipated in the Program on Clinical Practice
○Hoshi M, Ito T*,Horiuchi
y
ygY, Nakamura,E, Kishi R, Kawanabey K, Kobayashi K
*Dept.of Oral Diagnosis, Nihon University School of Dentistry at Matsudo
Ⅰ 目的:本校独自の1年次臨床教育プログラムのま
とめとして位置づけている父兄参加型実習を平成16年
3月2日(火)3日(水)に実施した.父兄参加型実習
は参加父兄に模擬患者として協力を得て行う実習であ
り,実習の紹介は昨年第1報で報告した.今回はさらに
父兄による評価から,実習の到達度を確認する意味を
含めてアンケート調査を実施した.
Ⅱ 方法:本校1学年44名の参加父兄に対し,実習前
に実習とSPの目的を説明しアンケートの協力を得た.
アンケート内容は主観的な満足度をスケールとし,
1.医療人としての基本的マナー・態度について5項
目,2.口腔衛生指導について5項目の合計10項目と,
学生指導に関する意見,感想を求めた.アンケートは
実習前に配布し,後日学生を通じて回収した.
Ⅲ 結果と考察:参加父兄は44名中父親7名,母親35
名,叔母1名,妹1名であり,アンケートは100%回収
できた.医療人としての基本的マナー・態度の評価は
「声の大きさ」,口腔衛生指導の評価は,「安心し
て口腔内を任せられると思ったか」の項目が他項目
の評点3点以上に比較し,約 2.5点でやや低かった.
父兄からの意見・感想の内容は昨年同様に子供の成
長,指導を受け自分自身の動機づけになったという
意見に加え,「患者として意見を述べるなら,態
度・マナーはよかったがもう少し自信を持ってほし
い」,「笑顔,声を大きくしたら患者さんは満足す
ると思う」など評価項目に関する内容と,「学年の
総仕上げで臨床実習に先駆け初めて術者として親の
口腔内チェックすることは有意義である」,「今回
初めて娘が日々学んでいる現場を見ることができて
よかった」など本校の教育内容の有用性を示唆した
意見が多く得られた.
Ⅳ 文献:日本医学教育学会編:基本的臨床技能の
学び方・教え方,南山堂,2002.
歯科衛生士学校生における英語授業に対する意識と要望
P6
○松山大輔,江島房子*,鶴田潤,谷口弘江,江藤一洋**,森尾郁子
東医歯大(院)医歯総合教育開発学分野,東京歯科衛生専門学校*,東医歯大歯学部長**
Students' consciousness and request for English class at dental hygienist schools
Matsuyama D, Ejima F*, Tsuruta J, Taniguchi H, Eto K**, Morio I
*
TMDU Graduate School,Tokyo School of Dental Hygiene ,TMDU Dean of Faculty of Dent.
Ⅰ 目的
英語の重要性が問われてから長い年月が経っている
が,英語授業のコンテンツはあまり変わっていないの
が現実である.学生の要望を取り入れず,教員の側か
ら授業内容を提示してしまっているのがその原因の一
つではないだろうか.従って,今回の研究では歯科衛
生士学校3校にご協力頂き,歯科衛生士学校の学生が
英語の授業についてどう思っているか,そしてどのよ
うなことを学びたいと思っているのかについてアンケ
ート調査を行った.
Ⅱ 方法
東京都内にある大学附属の衛生士学校1校と歯科衛
生士専門学校2校の1,2年生にアンケート調査を実
施した.
Ⅲ 結果と考察
歯科衛生士学校で学んでいる学生達のほとんどは英
**
語学習の必要性は認めているが,英語は歯科衛生士国
家試験に直接出題されない科目であり,多少なりとも
英語の授業は負担となるという意見も見られた.英語
学習に必要性を感じながら,負担になるということは
学生達が現在の英語の授業内容に満足していないこと
を示していると言える.これを解決するためには,英
語を教えている教員が英語に関して学生が何を学びた
いかという授業のニーズを把握し,カリキュラム,そ
して授業のコンテンツを考える必要があるのではない
だろうか.また,教員は作成した授業内容・授業計画
についてなぜこの内容を学ばなければいけないのか,
なぜこの内容が重要なのか等をきちんと学生達に説明
し,理解してもらい,納得してもらい,同意してもら
ってから授業を進めるべきではないだろうか.すなわ
ち,学生と教員の間に学習内容に関する「インフォー
ムド・コンセント」が必要不可欠である.
歯科衛生士教育における診療補助実習の実習評価の検討
第2報 暫間被覆冠作製実習
P7
○吉田 隆、山口 恵
埼玉県立大学短期大学部歯科衛生学科
Evaluation of Practice for Dental Assistance in Dental Hygienists Education
Part2
Preparation of Temporary Crowns
○Yoshida T and Yamaguchi M
Department of Dental Hygiene, Saitama Prefectural University Junior College
Ⅰ 目 的:第21回本学会で我々は,歯科衛生士教育
機関におけるX線撮影補助実習が,「診療補助実習」
のカリキュラムの一つとして有用であり,実習評価を
加える上での実技試験としても適当であることを報告
した.今回は,歯科衛生士が直接患者に対して処置が
行える対面・直接行為の中から暫間被覆冠の作製ならび
に仮着についての診療補助実習を採り上げ,その実習
内容と本処置を実技試験として応用した場合の有用性
について,実習後に実施したアンケート調査をもとに
検討を加えたので報告する.
Ⅱ 方 法:埼玉県立大学短期大学部歯科衛生学科第
2学年30名を本研究の対象とした.あらかじめ診療補
助実習のカリキュラム内で,ファントームとエポキシ
歯牙模型を利用した暫間被覆冠作製の実習を行った後,
同様な処置の実技試験を20分間で実施した.また試験
終了後,暫間被覆冠作製実習ならびに実技試験につい
てのアンケート調査を行った.なお実技試験で作製し
た暫間被覆冠は,直ちにその作製状態を評価した.
Ⅲ 結果と考察:実技試験の結果,30名中6名の作製
した暫間被覆冠は実際の臨床でも十分に対応しうるも
のと判断された.しかしながら残りの24名の作製した
暫間被覆冠は,その歯軸の傾斜や歯頚部の適合性,咬
合調整などに不備が認められた.アンケート結果から
ほとんどの学生が暫間被覆冠を作製するにあたり,そ
の歯軸の傾斜や歯頚部の適合性,咬合状態に注意を払
ったと回答しているが,実際には暫間被覆冠作製につ
いての知識はあるものの初歩の段階の手技ではその知
識を実践することが困難であるものと思われた.
以上から,暫間被覆冠作製実習は「診療補助実習」
の一つとして有意義であり,また実技試験としての暫
間被覆冠作製は,若干の修正が必要であるものの,実
習状態を評価するものとして適当であると考えられた.
歯科衛生スキル向上のための自己評価と他己評価
本学歯科衛生士学校相互実習において
P8
○吉田直美、遠藤圭子、近藤圭子、高木裕三*
東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科、附属歯科衛生士学校*
Quality assurance concepts and skill development using self-and peer-assessment at
a school of dental hygeine, Facalty of Dentstry, Tokyo Medical and Dental University
○Naomi Yoshida, Keiko Endo, Keiko Kondo, Yuzo Takagi
Faculty of Dentistry, Tokyo Medical and Dental University
Ⅰ.背景および目的
歯科衛生士が患者に対して適切な処置を行うため
には,専門的スキルに対する的確な自己評価を行え
ることが必要である.また,同時に患者が自分をど
のようにみているかを知るよう,努めなければなら
ない.それには,学生時代から自分の能力を把握し,
課題を見つけ,それらを解決するための方策を見つ
ける機会が必要がある.
今回,歯科予防処置相互実習時に,学生が自らの
課題に気づくために,自分のスキルを確認する自己
評価と,患者役が術者のスキルを評価する他己評価
を行った.
Ⅱ.方法
2003年12月から2004年3月,相互実習に際して,術
者となる学生は行動目標設定をした上で実習を行い,
自己評価ならびに患者役学生による他己評価を行った.
質問票は自記式,項目はスキルに関する26項目で,
考察,感想の記述を求めた。
Ⅲ.結果と考察
自己評価は,実習前(1回),実習後(3回),
患者役による他己評価は実習後に実施した。その結
果,自己評価は,回数を重ねるに従って多くの項目
に上昇が見られたが,他己評価に比べて全体に低か
った.自己評価と他己評価には相関は見られなかっ
た.また,術者,患者役ともに,多くの感想が記述さ
れ,気づきを得ることができた.
これらから,スキルに関する自己評価および他己
評価は,学生自身が現状を知り,課題を見つけて具
体的な目標設定が可能となることが示唆された.
入学試験方式の違いによる学生意識と学業成果について
P9
○尾 順男1),市川 基1),山 廣子1),小泉順一1),茂原宏美1),河野寿一2),
西田紘一2)
日本歯科大学附属歯科専門学校1),日本歯科大学歯学部附属病院 2)
The commparative study about the student awareness and the schoolwork result between
by the student who entranced recommendated and regular entrance examination.
○Ozaki Y1),Ichikawa M1),Yamazaki H1),Koizumi J1),Shigehara H1),Kohno H2),Nishida K2)
N.D.U.Affiliated School of Dental Technology and Hygiene1),N.D.U.Hospital2)
Ⅰ 目的:本校ではより質の高い教育を行うために平
成5年から継続的に授業等に関する学生の意識調査を
行い,学生教育への反映を図っている.今回は、平成
14年度から本校に導入した推薦入学試験による入学者
と従来から実施してきた一般入学試験による入学者を
対象としてそれぞれの入学前の経歴・性差と卒業時の
意識と成績との関連を検討した.
Ⅱ 方法:調査対象を入学試験方式,入学前の経歴,性
差の要因にしたがって,推薦入試(現役のみ 以下:[
推薦]),一般入試の現役(以下:[一般現役]),一般入
試の現役以外(以下:[一般現役外])の3グループに分
けた.学生の意識調査は,平成14年4月入学時と平成
16年3月の卒業時に自記・無記名方式によるアンケー
ト調査として行った.成績及び出席状況は調査対象の
教務部資料から各学期及び卒業試験の成績と各学期の
出席率を抽出した.
Ⅲ 結果と考察:1)『歯科技工士以外に興味のある職
業がありますか』の問いについて[一般現役外]は65%
,他のグループは45%であった.2)『学校を辞めよう
と思ったことがありますか』の問いについて[一般現
外]は50%,他のグループは20∼30%であった.3)『
いつまで歯科技工士として働きたいですか』の問いに
対して,一生,できる限りなどの積極的回答は[一般現
役外]は91%[推薦]77%[一般現役]67%であった.こ
れらのことより歯科技工士としての目的意識は[一般
現役外][推薦]が高く,[一般現役]がやや低い傾向に
あると考えられる.4)成績は[推薦]が常に他のグルー
プより高い得点を示した.5)出席率は[推薦]が常に他
のグループより良好であった.
Ⅳ 文献:1)落合美加,他:歯科技工士養成の現状−
学生意識の経年変化−,日歯技工士22(1):64∼72,
2001
歯科技工士資格試験における技術評価に関する研究
第1報 評価方法および評価者に対する検討
P10
○末瀬一彦、佐藤温重1)、西田紘一2)、田上順次3)、鳥山佳則4)、渡辺嘉一5)、
尾崎順男2)、杉上圭三
大歯大技、1)明倫短大、2)日歯大歯専、3)東医歯大、4)茨城県健保局、5)日歯大
Study on Evaluation of Technology in the Dental Technitians' National Examination
Part 1. Analysis of Evaluation Methods and Evoluators
○Suese K,Satou A1),Nishida K2),Tagami J3),Toriyama Y4),Watanabe Y5),Ozaki Y2),Sugikami K
1)
Osaka Dental U, Meirin C,
2,5)
3)
4)
The Nippon Dental U, Tokyo Medical and Dental U, Ibaraki
Ⅰ 目的
歯科技工士資格試験において実技試験は重要な技術
評価法であり、国家資格の試験としてふさわしい客観
的評価基準が担保された試験でなければならない。本
研究では実技試験の技術評価基準の確立を目指して、
評価方法および評価者間、評価者内の特性について検
討した。
Ⅱ 方法
現在実施されている出題内容を基盤にして検討した
試験用模型(全部鋳造冠蝋形成、前歯部人工歯排列・
歯肉形成、鋳造鉤蝋形成、線鉤屈曲の課題を有する上
下顎模型)を用いて歯科技工士学校4校120名の学生
を対象に模擬試験を実施し、その結果について大学教
員、歯科技工士学校教員、臨床歯科医師および臨床歯
科技工士の4群の評価者によって採点評価を行い、評
価方法や評価者間および評価者内の比較検討を行った。
Ⅲ 結果と考察
試験結果に対する各評価者の総合評価合計値はいず
れも近似的に連続性正規分布標本として解析可能なデ
ータ群であることが確認された。概略的評価値と細分
化評価値との関係を明らかにするために概略的評価総
合計値および細分化評価総合計値について試験課題別
に評価者群ごとの2変量間の相関係数を求めたところ
両評価方法はいずれも高い相関性を示した。概略的評
価においては評価者第3群以外の各評価者群は類似し
た評価値を示したが、細分化評価においては評価者群
間で有意の差が検出された。概略的評価における各評
価者群の評価精度は試験課題によって異なっていたが、
評価者第1群および第2群の評価は他の評価者群より良
好な精度を示した。評価者個人内の繰り返し評価にば
らつきは認められたが、全体的な評価に大きな影響を
与えるものではなかった。
既卒者に対する歯科医学教育に関するアンケート調査
第1報 大学教育等に関して
P11
○田中 晃伸*, 福本 雅文*, 中田康一**
茨城県鹿嶋市 タナカ歯科*,総合病院国保旭中央病院 歯科・歯科口腔外科**
Questionnaire Survey on Education of Dentistry Medical Science for the Graduates
Part 1
On University Education, etc.
○ Tanaka
A*, Fukumoto
M*,
Nakada
K**
Tanaka Dental Clinic*,Dentistry&Oral Maxilofacial Surg. of Asahi General Hospital**
Ⅰ 目的 歯科大学・学部における教育に関して,教
育方法の妥当性の評価及び問題点の抽出を行う事は重
要であり,さらなるスキルアップへと関連付けされる.
そのひとつの手法として,学生や研修医を対象とした
アンケート調査は再評価の重要な要素である.
しかし,卒後教育終了後の歯科医の多くは地域に受け
入れられるにもかかわらず,地域の既卒歯科医を対象
とした歯科医学教育に関する調査は見うけられない.
今回演者等は,主に開業医を中心としたこれらの既卒
歯科医に対して,歯科医学教育に関するアンケート調
査を行ったので報告したい.
Ⅱ 方法 2004年2月22日に開催された茨城県歯科医
師会主催の第12回茨城県歯科医学会に参加された歯科
医師412名を対象に卒後診療従事経歴・卒前教育・卒
後教育・対象者自身が教育された環境の評価等につい
てアンケートを行った.第1報では卒後従事経歴や現
在の歯科大学・学部における学生教育に関する集計を
行った.
Ⅲ 結果及び考察 412名中160名の有効回答を得たが,
40代を中心にした開業医がほとんどであり,卒直後の
従事としては『一般開業医への勤務』が89名(55.6%)
と最も多く,ついで『歯科大学・歯学部付属病院』が
46名(28.8%)であった.17年度より実施される共用試
験に関する認知度については『まったく知らない』と
答えた者が89名(55.6%)であった.大学における学生
教育に最も望む項目においては『歯科医としての人間
性』であり49名(30.6%)であった.また,現在の大学
教育に関して『問題がある』と回答した者は99名(61.
9%)であり30・40代において高い傾向にあった.また,
その他問題点の項目等に関しても報告したい.
既卒者に対する歯科医学教育に関するアンケート調査
第2報 卒後教育等に関して
P12
○福本 雅文*, 中田 康一**,田中 晃伸*
茨城県鹿嶋市 タナカ歯科*,総合病院国保旭中央病院 歯科・歯科口腔外科**
Questionnaire Survey on Education of Dentistry Medical Science for the Graduates
Part 2
On Post-graduate Education, etc.
○ Fukumoto
M*,
Nakada
K**,Tanaka
A*
Tanaka Dental Clinic*,Dentistry&Oral Maxilofacial Surg. of Asahi General Hospital**
Ⅰ 目的 演者等は第1報で述べたように開業医を中
心とした既卒歯科医を対象として,歯科医学教育に関
するアンケート調査を行い,卒後診療従事経歴や現在
の大学教育に関する意識について報告した.第2報に
おいては卒後教育を中心にした結果に関して報告した
い.
Ⅱ 方法 アンケートの対象は,第1報と同様に第12
回茨城県歯科医学会に参加した歯科医師412名であり
有効回答者は160名であった.第2報においては歯科医
師国家試験への実技導入の必要性の有無,研修医制度
の認知度,研修医制度必修化必要性の有無,卒後研修
の妥当施設,卒後研修において研修すべき項目,その
他等に関して集計を行った.
Ⅲ 結果及び考察 歯科医師国家試験における実技試
験の導入に関して『必要』と答えた者が100名(62.5%)
であり,実技試験を経験した高い世代に『必要』と答
える傾向にあった.研修医制度の必修化に関しては『
まったく知らない』と答えた者36名(22.5%)であり,
必修化の必要性に関しては91名(56.9%)が『必要』と
答えた.また,現在歯科大学・学部に在籍する父兄18
名においては11名が研修医制度必修化の『必要』があ
ると答えた.卒後研修の最も妥当な場として『歯科大
学等の教育機関における付属病院』が85名(53.1%)で
あり,次に『総合病院等の歯科』『専門開業医』『一
般開業医』『その他』の順であった.卒後研修におい
て最も望む事は『全般的な臨床的技術力』が55名(34.
7%)と答えた者が最も多く,第1報における教育に望む
項目より歯科医学的な臨床的能力を望む傾向に変化し
ていた.さらに年代別等に分類し報告したい.
既卒者に対する歯科医学教育に関するアンケート調査
第3報 教育経験等に関して
P13
○中田康一**,福本雅文*,田中晃伸*
茨城県鹿嶋市 タナカ歯科*,総合病院国保旭中央病院 歯科・歯科口腔外科**
Questionnaire Survey on Education of Dentistry Medical Science for the Graduates
Part 3
On Educational Experiences, etc.
○ Nakada
K**, Fukumoto
M*,
Tanaka
A*
*
Tanaka Dental Clinic ,Dentistry&Oral Maxilofacial Surgery of Asahi General Hospital
**
Ⅲ 結果及び考察 大学在学中の教育に対して『為に
なった』と答えた者は79名(49.4%),『為にならなか
った』と答えた者は48名(30.0%)であり,a∼d)の項目
評価においてa)進路指導・相談,d)指導者(大学教育者
)に対しては低い評価をする者が多かった.また,大
学教育において最も役だったと思われる項目は『対人
関係(友人,先後輩,指導者等)』であり57名(35.6%)で
あった.学生及び研修医の診療室への見学・研修の受
け入れに関しては,積極または消極的ではあるが,大
半の者が受け入れると答えており,若い世代程その傾
向が高かった.
Ⅰ 目的 演者等は第1・2報と同様に開業医を中心と
した既卒歯科医を対象として,歯科医学教育に関する
アンケート調査を行った.第1報では卒後診療従事経
歴や現在の大学教育,第2報では卒後教育に関して集
計報告を行ったが,第3報では既卒者自身が経験した
歯科大学・学部教育に対する評価等を中心に報告した
い.
Ⅱ 方法 アンケートの対象は第1・2報と同様に,第
12回茨城県歯科医学会に参加した歯科医師412名であ
り有効回答者は160名であった.第3報ではこれらのア
ンケート結果より,大学在学中の教育経験における有
為性やa)カリキュラム等の教育内容・制度,b)大学教
育機関としての設備,c)進路指導・相談,d)指導者(大
学教育者)の5項目に関して5段階評価を行ったものを
集計した.また,今後学生及び研修医の見学・研修受
け入れの有無等に関しても集計した.
既卒者に対する歯科医学教育に関するアンケート調査
第4報 自由記述に関して
P14
○田中 晃伸*, 福本 雅文*, 中田康一**
茨城県鹿嶋市 タナカ歯科*,総合病院国保旭中央病院 歯科・歯科口腔外科**
Questionnaire Survey on Education of Dentistry Medical Science for the Graduates
Part 4
On Free Descriptions and Comments
○ Tanaka
A*, Fukumoto
M*,
Nakada
K**
Tanaka Dental Clinic*,Dentistry&Oral Maxilofacial Surg. of Asahi General Hospital**
Ⅰ 目的 第1∼第3報において演者等は, 開業医を中
心とした既卒者を対象として歯科医学教育に関するア
ンケートを行い大学教育・卒後教育・既卒者自身の教
育経験の評価等を集計し,極めて一般的な歯科医の歯
科医学教育に対する意識について報告した.
今回は, これらのアンケートにおいて自由記述してい
ただいた部分を列記し,それぞれの項目における理由
・意見に関して報告したい.
Ⅱ 方法 理由・意見等の自由記述をしていた項目は
『歯科医師国家試験への実技試験導入必要性の有無』,
『研修医制度必修化必要性の有無』,またアンケート
の最後として『大学教育や研修医制度に関する自由意
見』の各項目であり,記述された内容を演者等がキー
ワード事にまとめながら抽出列記した.
誤字等に関して多少の修正を行ったが,ほぼ,記述さ
れた原文を記載列記した.また,あきらかに同一字句
及び同一ニュアンスで構成された記述文章においては
重複をさける為削除し,文末にその文章数を付け加え
た.また,歯科医学教育とはかけ離れた政治的要素の
強すぎる記述や,固有名詞及び特定の団体が示唆され
る記述,個人的な中傷批判記述に関しては削除した.
Ⅲ 結果及び考察 国家試験への実技試験導入に関し
て『必要』と答えた理由として「臨床実技実習の不足
」が多く挙げられ,『不要』としては「客観的評価が
困難では」などがあった.研修医制度の必修化の『必
要』理由としては「卒後のレベルアップ」などであり,
『不要』には「卒後の束縛の問題」なども挙げられてい
た.学生教育に対する意見として「学生の抜去歯の収
集に関する対応」などの意見は,開業医ならではのコ
メントと思われる.これらの自由記述を第1∼3報の集
計結果に合わせながら参考として戴きたい.
本学臨床実習における学外研修に対する学生の意識調査
第3報 神奈川県立三浦しらとり園について
P15
○田中欽也,今井崇隆,兼松恭規,鍵和田 豊,荒川秀樹,豊田
實
神奈川歯科大学顎口腔機能修復学講座
Survey of Student`s Attitude toward Off-campus Studies in Clinical Practice
The Third
Report Miura Shiratori Nursing Institution
Tanaka K, Imai M, Kanematu K, Ksgiwada Y, Arakawa H, Toyoda M
Department of Oral and
Maxillofacial Rehabilitation, Kanagawa Dental College
Ⅰ 目的
今後の歯科大学の臨床実習においての学生指導は,
従来のように治療の手技を指導していれば良いという
ことばかりでなく,社会と歯科医療の関わりを学ぶこ
の重要性もましてきた.そこで当大学の臨床実習では
学外の研修を取り入れ,自ら学ぶ姿勢を身につけさせ,
今後の臨床研修に結びつけるように努力している.し
かし,社会情勢の変化に学外研修の条件がマッチして
いるか,学生にとって有益なものか調査する必要から,
以下のアンケアンケート調査を行ったところ興味ある
知見を得たので報告する.
Ⅱ 方法
学外研修を神奈川県立三浦しらとり園において行い,
研修が終了した時点で参加した学生を対象にアンケー
ト調査を行った.アンケートの調査項目を10項目用
意し,各項目について回答を得た.
回答者数は神奈川県立三浦しらとり園へ,研修に研修
に行った学生113名で,回答は,『とてもそう思う・
そう思う・そうは思わない・全くそうは思わない』の
中から選択させた.
Ⅲ 結果と考察
アンケート結果の参加して良かったかという質問に
対し神奈川県立三浦しらとり園では95%の学生にとっ
て有意義であったとの結論を得た.
この結果よりこれらの学外研修は有意義であったと結
論して良いと考えられた.今後,多数の学生にとって
有意義と思える学外見学実習施設の増設,また,見学
実習内容の充実を考え臨床実習充実を考えていきたい.
Ⅳ 参考文献
1)鍵和田豊,今井崇隆,荒川秀樹:本学臨床実習に
おける学外研修について,日歯教誌,17:45-48,2
001
訪問歯科診療におけるチーム医療に対する意識調査
‐臨床研修歯科医師と歯科技工研修科歯科技工士のアンケート解析‐
P16
○田中紀裕 両角祐子 江面 晃
日本歯科大学新潟歯学部附属病院 在宅歯科往診ケアチーム
A Cnsciousness Survey of Team Treatment in Home Dental Care ‐Analysis of
The Questionnaire Survey to The Residents and Dental Laboratory Technicians of
Training Institute‐
Tanaka N, Morizumi Y, Ezura A
The Nippon Dental University, School of Dentistry at Niigata, University Hospital,
Home Dental Care Team
Ⅰ 目的
要介護高齢者の医療・介護・福祉には他職種とのチ
ーム医療が必要であることは種々述べられている.訪
問歯科診療においてもチーム医療は必要となるが,歯
科医師,歯科衛生士,歯科技工士の教育において他職
種との連携を修得する機会はほとんどない.そこで日
本歯科大学新潟歯学部附属病院在宅歯科往診ケアチー
ムでは,以前より臨床研修歯科医師を介護保険施設等
の福祉施設に同行し,歯科健診および口腔衛生指導の
研修を実施してきた.さらに,平成15年度は歯科技
工研修科歯科技工士を訪問診療に同行させ,チーム医
療についてアンケート形式による意識調査を実施し
た.
本研究は訪問歯科診療における他職種との連携を経験
することで,チーム医療を理解するための教育プログ
ラムを充実することを目的とした.
Ⅱ 方法
臨床研修歯科医師については,歯科保健事業の歯科
健診および口腔衛生指導に同行し,実地研修を行って
いる.その後に,アンケートによる調査を行った.歯
科技工研修科歯科技工士には,在宅歯科往診ケアチー
ムが実施している訪問歯科診療に同行し,診療の見学
と実地研修を行い,同行の前と後に訪問歯科診療に対
する意識についてアンケートによる調査を行った.
Ⅲ 結果と考察
アンケートによる意識調査の解析では,臨床研修歯
科医師,専攻科歯科技工士ともに他職種とのチーム医
療の大切さを理解し,今後に生かすことが出来る研修
であったと認識していた.この結果から,臨床研修歯
科医師,卒直後の歯科技工士をチーム医療の現場に参
加させることは,これを理解するために有用であり,
充実する必要がある.
入学6年経過後の歯科大生に対する意識調査
P17
〇千枝 桂子1,岡田 周策1,宮本 尚1,山田 直樹2,豊田 實2,川瀬 俊夫3,
寺中 敏夫1
神奈川歯科大学歯科保存学講座1 歯科補綴学講座2 歯科生体工学3
An Attitude Survey of Dental Student in Six Years
Chieda K1, Okada S1, Miyamoto M1, Yamada N2, Toyota M2, Kawase T3, Teranaka T1
Dept.Operative Dentistry & Endodontics1, Prosthodontics2,Bioengineering3,Kanagawa Dent.Coll.
Ⅰ.目的
演者らは,平成10年度の神奈川歯科大学入学生を対
象に入学1年経過後から5年経過後までの意識調査を
毎年行い,その結果を本学会に報告してきた.今回は,
引続き入学6年経過後の意識調査を学生の主体的側面,
大学における環境的側面,社会的側面に関する46項目
と生きがい尺度と学業に関わる行動について行った.
Ⅱ.調査対象ならびに調査法
神奈川歯科大学6年生80名(男子44名,女子26名,
不明10名)を対象にして無記名の質問紙法による調査
を平成16年1月中旬に行った.今回の調査も前回と同
様に男女それぞれ一般試験入学生(男子33名,女子17
名),推薦試験入学生(男子11名,女子9名)に分類
して検討した.
Ⅲ.結果ならびに考察
学生の主体的側面のうち,興味のある科目に関して
は70%の学生が興味のある科目を持ち,2年次からの
調査で最も高い数字であった.具体的には5年次同様
保存,補綴が多かった.また,6年次では歯科大学での
勉強が面白いと感じたり,歯科医師は素晴らしい職業
と考える学生が増加した.一方,2年次から6年次ま
で約10%台の学生が歯科医師に向かないと回答した.
大学の環境的側面において,歯学部を選んで良かった
と思う学生や5年次から信頼できる教員にめぐり会え
ている回答が増加した反面,大学に対しては2年次か
ら40%台の学生がずっと何らかの不満を持っていた.
生きがい尺度点数は,1年次についで高い数字を示し,
臨床実習時に比較して,目標感,充実感,人間関係す
べての点で上回った.このように6年間を通して次
第に歯科医学や職業に多くの学生が興味を持っていく
様子が窺えたが,学生を側面的に支える環境は十分で
はなく,さらなる充実をはかる必要性が示唆された.
歯学部学生の喫煙習慣に対する意識調査
P18
○沼部幸博,佐藤 巌,佐々木直幸,古西清司,青葉孝昭,勝海一郎,新谷明喜,
鴨井久一,代居 敬,吉田隆一,古屋英毅,中原 泉
日本歯科大学 歯学部
An Attitude Survey of Smoking Habit in Dental Students
○Numabe Y, Sato I, Sasaki N, KonishiS, Aoba T, Katsuumi I, Shinya A, Kamoi K,
Yosue T, Yoshida T, Furuya H, Nakahara S
The Nippon Dental University, School of Dentistry at Tokyo
I 目的
喫煙は全身疾患だけでなく歯科疾患とも関連が強く,
特に口腔癌の発症や歯周病進行の危険因子であること
が明白となっている.それに伴い現在では医療従事者
の喫煙習慣への見直しが始まり,患者のみならず医師
自身の禁煙が求められる時代となっている.このこと
から,歯科医の育成機関である歯科大学でも,教育を
通し1人でも喫煙習慣を持つ歯科医師を減少させる努
力をする必要があると考えられる.そこで効果的な教
育システム構築を考えるうえでの基礎的情報収集のた
め本調査を行い,いくつかの知見を得たので報告する.
II 方法
平成15年度の日本歯科大学歯学部に在籍する1学年
から6学年の学生604名に対し,喫煙状況および喫煙
習慣に関する意識のアンケート調査を行い,学年別の
喫煙状況と意識変化について調べた.そしてその結果
より,喫煙の健康被害に関する講義を行う時期や回数,
そして講義に盛り込むべき内容などについて考察した.
III 結果と考察
各学年の喫煙率は,最低値は1学年の 24%で,5学
年の 45%(附属病院での臨床実習中)まで学年ごとに
経年的に上昇するが,6学年で 39%に低下した.また
喫煙の健康被害についての問題意識は,過去それに関
する講義を受けた経験のある学年では高い傾向を示し
たが,そうでない学年では低い傾向であった.これら
の結果から考察すべき点は多いが,禁煙への意識を高
め持続させるためには,各学年に対して毎年1回は禁
煙教育を行うこと,そして各教科の中でも喫煙の健康
被害を理解するための学習目標を設け,さまざまな角
度から喫煙の影響についての教育を行う必要性が考え
られた.さらに今後,喫煙する患者に対し禁煙支援を
行える歯科医師の育成も必要と思われた.
歯科大学学生の喫煙と健康に関する意識調査
2004年度日本歯科大学新潟歯学部オリエンテーションにおいて
P19
○大森みさき、千葉 晃、笹川一郎、村上俊樹
日本歯科大学新潟歯学部
Smoking Habit and Attitudes of Dental Students
At the Orientation of The Nippon Dental University at Niigata 2004
○Ohmori M, Chiba A, Sasagawa I, Murakami T
The Nippon Dental University School of Dentistry at Niigata
Ⅰ.目的 喫煙と口腔癌や歯周病との強い関連が指摘
されているにも関わらず、我が国の歯科領域での喫煙
対策は十分とは言えない。それにはまず歯学教育での
禁煙教育を強化する必要があると考え、その前段階と
して学生の喫煙行動の実態および動機づけ、喫煙と健
康に関する意識の把握を目的として平成16年度オリエ
ンテーションの際に全学年に対して質問紙による調査
を行った。
Ⅱ.方法 日本歯科大新潟歯学部の1−6年生を対象
として質問紙による調査を実施した。調査時期は各学
年の平成16年度当初のオリエンテーション時とした。
調査方法は質問紙を配付し、学生が無記名で自記した
ものを回収する方法で行った。調査用紙はWHO国際結
核胸部疾患予防連合の「喫煙と健康」委員会の質問票
を歯科用に一部改変したものを用いた。
主な調査項目は喫煙状況、禁煙試行の経験、自分の
非喫煙の動機づけ、喫煙の健康影響に関する一般的な
意見、いくつかの特定疾患に対する喫煙の病因的寄
与、歯科医師の患者に対する喫煙に関連した指導や
助言、公衆喫煙対策に関する意見であった。
Ⅲ.結果と考察 1年生96名、2年生103名、3年生83
名、4年生100名、5年生101名、6年生98名、計580名
(男性395名、女性184名、記載なし1名、年齢21.6±
2.7歳)から回答を得た。現在、喫煙習慣のある者は
31.7%、今は吸わない喫煙経験者は19.8%、非喫煙
者は45.7%であった。喫煙者の61.4%に禁煙試行の
経験があった。禁煙の動機づけとしては疾患を危惧
してが多かった。喫煙が確実に健康に有害であると
した者は約80%であったが喫煙者ではやや少なかっ
た。しかし喫煙が多くの特定疾患の主原因であると
の認識は少なく、また疾患予防の取り組みに対する
意識も低かった。以上より歯科学生への喫煙に関す
る教育の必要性が示唆された。
Ⅳ.文献 1) Tessier JF et al, Eur J Epidemiol,
5: 311-321, 1989. 2) 埴岡隆ほか,口衛誌, 46:6371.1996.
欧州における歯学教育の展望
P20
○鶴田 潤,松山大輔,谷口弘江,江藤一洋*,森尾郁子
東京医科歯科大学大学院 医歯総合教育開発学分野,東京医科歯科大学歯学部長*
Perspective of dental education in European Union
*
○Tsuruta J, Matsuyama D, Taniguchi H, Eto K , Morio I
Educational Development Section, TMDU, Dean of Faculty of Dentistry, TMDU*
I 目的
平成13年に歯学教育モデルコアカリキュラムが発
行されてから,歯学部のカリキュラム改変が多く認め
られる.一方海外では米国歯科医学教育学会(ADEA),
欧州歯科医学教育学会(ADEE)による歯学教育の改変
の動きがある.第21回日本歯科医学教育学会学術大
会(鶴見)において,森尾,鶴田らが発表・報告した
DentEd,DentEdEvolvesは,その後も活動を続け,A
DEEとの協調のもと欧州連合(EU)諸国の歯学部間でカ
リキュラムの調整をはかる方向に動いてきた.今年5
月1日には,EUに,新たに東欧10カ国が加盟する.
筆者らは,英国の歯科医学事情を通し,今後,ADEEが
向かう方向を探ることを目的とした.
II 方法
リバプール大学歯学部を拠点とし,ADEEの情報,資
料,また,英国,General Dental Council(GDC)の情
報,資料を合わせて分析した.
III 結果と考察
現在,EUにおいては,高等教育の共通化の方法とし
て,Tuning Projectが行われている.歯科医学分野
においては,DentEd Projectが終了し,ADEEにその
役割を引き継ぐこととなった.さらに,注目すべき事
項として,この歯学教育改革の根底では,各国間の歯
科医師の就業に関する条件を定めるために,欧州議会
でDirective on the Mutual Recognition of Professional Qualificationが議論されていることがあ
る.このように,EUの歯学教育改革の側面には,高等
教育,就業条件などの要因が大きく絡んでいる.今後
数年内にはコンペテンシーの設置,カリキュラムの
Harmonization を目標とされていることもあり,英
国GDCとADEEの連携,The First Five Yearsなどの資
料をもとに考察を深めた.
日本とカナダ歯学部学生における歯科に対する意識調査
P21
○竹田まゆ、上杉篤史※、五島健一※、武田さやか※、小西雅也、砂田勝久※※、
千葉 晃※、関本恒夫、中原 泉※※
日本歯科大学新潟歯学部附属病院 日本歯科大学新潟歯学部※日本歯科大学歯学部※※
The investigation on
what dental students conscious in dentistry
in Canada and Japan
○Takeda M,Uesugi A,Goshima K,Takeda S,Konishi M,Sunada K,Chiba A,Sekimoto T,Nakahara S,
The Nippon Dental University, School of Dentistry at Niigata and Tokyo
程度であった。生活に対する不満度ではUBCでは金額
に対する不満が多かったのに対し、NDUでは学食がま
ずいなど学校に対する不満が多かった。しかし、教
育カリキュラムについてはNDU30名の満足に対して
UBCは5名と明らかに教育制度に不満を持っていた。
教員に対する不満はどちらも大きな変化は無かった
がNDUの「言えない」との回答が目立った。歯科医師
として将来の目標はNDU、UBCともに一般開業医が50%
を占めた。国家試験の難易度ついては両校とも難し
いとの意識であった。将来外国で働くことについて
はUBCの方が積極的であった。考察:今回の回答は両
校とも歯学部としては同一学年であったが教育制度
の違いから年齢差がありそれが歯科医師を目指す選
択理由や将来像の違いに現れたものと思われた。
目的:日本、カナダにおける歯学部5年生の歯科に対
する意識調査を通じて両大学の国際化に向けての問題
点と今後の交流を維持していくための改善点について
検討を行った。方法:対象は日本歯科大学新潟歯学部
(NDU)5年生63名, University of British
Colunbia School of Dentisry (UBC)31名で
質問表を用い、入学動機、教員に対する満足度などの
調査を行った。結果:歯科医師になりたい理由につ
いてNDUの学生は17名が無回答、17名が親が歯科医師
であったから、という回答に対し、UBCの学生におい
ては高収入6名、自立できる5名、技術を持ちたい
5名など具体的な選択理由が答申されていた。大学の
入試に関しては難しいがNDU8名 UBC16名と入学する
ことに対してはUBCの学生の方が難しさを指摘してい
た。学生生活についてはUBCの半数以上20名の学生が
満足しているのに対しNDUの学生の満足度は15名25%
公開セミナー「わが国の今後の卒前、卒後歯科矯正学教育を
考える」の概要と参加者アンケート結果
P22
○毛利 環1), 朝日藤 寿一1), 森田 修一1), 花田 晃治2), 荒木 孝二3),
大山 篤3),相馬 邦道4), 末石 研二5),山口 秀晴5),葛西 一貴6)
1)新潟大咬合制御、2)明倫短大、3) 東医歯大医歯学教育システム研究センター、
4)東医歯大咬合機能制御、5) 東歯大矯正、6)日大松戸矯正
Synopsis of "Current States of Undergraduate and Post Graduate Orthodontic Education
in Japan and Scandinavia" and the Response to the Questionnaires curriculum
of orthodontics
1)
Mohri T , Asahito T
5)
1)
1)
, Morita S ,
5)
Hanada K
Sueishi K , Yamaguchi H , Kasai K
Niigata Univ., 2)Meirin Junior Coll.,
at Matsudo
1)
I目的 わが国の今後の卒前、卒後歯科矯正学教育の
方向性について議論するために、スカンジナビアの矯
正学教育を代表する研究者とわが国の歯科矯正学教育
研究者の参加を得て、公開セミナー「わが国の今後の
卒前、卒後歯科矯正学教育を考える」を開催した。こ
の報告の目的は、このセミナーの概要を紹介すると
同時に、参加者アンケート結果を報告することであ
る。
II方法 セミナー終了後に参加者25名のアンケート
を回収し分析した。内容は歯科矯正学教育に対する取
り組みや問題点、改革の必要性についてである。
III結果と考察 スカンジナビアにおける卒前歯学部教
育の役割としては、「よいGPになるための教育」に
目的がおかれている、治療よりも患者に適切で十分な
情報提供を行うことができる能力と複雑なケースを専
門医に紹介できることが教育目標とされる。
2)
, Araki K
3)
, Ohyama A
3)
4)
, Soma K ,
6)
3)
MD center,TMDU,
4)
TMDU,
5)
TDC.,
6)
Nihon Univ.
一方、卒後専門教育は2年以上のGP臨床経験後にあ
り、外部評価者を含む修了認定後には矯正専門医ライ
センスが与えられる。歯学博士課程(Odont Dr)とは独
立した課程である。一方、わが国の歯科矯正学教育の
問題点としては、卒前教育では、教育目的と教育範囲
が明確でないこと、卒後専門教育では各大学の教育内
容が異なっており、修了認定についても様々である。
アンケート結果から、歯科矯正学の改革の必要性
(96%)や歯科矯正学教育についての多施設での交流が
必要である(88%)ことが認識されており、改革内容
としては、教育内容、カリキュラム、目的が順に挙げ
られた。また歯科矯正学教育の目的や内容(項目)を
卒前、卒後教育で分けて考えた方がよいと感じており
(100%)、外国の教育システムが参考になるとした意
見が多かった。
歯科学生の英語学習に関する意識調査
○森尾郁子,鶴田 潤,松山大輔,谷口弘江,江藤一洋*
P23
東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・医歯総合教育開発学分野,歯学部長*
Dental Students' Attitude toward English Learning
○Morio I, Tsuruta J, Matsuyama D, Taniguchi H, Eto K*
TMDU, Graduate School, Educational Development Section, Dean of Faculty of Dent.
Ⅰ 目的
平成9年1月から本学歯学科に導入された「科学英
語」(2年生3学期∼4年生2学期)は平成17年12月
で終了し,平成15年4月入学者から適用される新カリ
キュラムでは,1,2年生に対して異なる方式で「科
学英語」が行われることになった.今後専門教育の場
で提供する英語教育プログラムの在り方を探る目的で,
本学歯科学生の英語学習に対する意識やニーズを把握
する目的で本研究を行った.
Ⅱ 方法
2年生3学期から専門教育課程を開始する学生に対
して,オリエンテーションにおいて調査票による調査
を行った.調査項目はこれまでの生活と英語との関わ
り,英語学習の必要性と現在の英語能力についての自
己評価,英語学習習慣,英語能力試験の受験状況など
の11項目からなっていた.
*
Ⅲ 結果と考察
調査対象者は平成13年1月から平成16年1月までに
専門教育課程を開始した学生266名で,そのうち249名
から回答が得られた(回収率93.6%).本学入学前の
英語学習について,回答者の7割以上が受験のためだ
けでなく,将来英語を使うための基礎力をつける必要
性を感じていたと回答した.英語能力の向上について
は,将来自分に必要な能力のひとつとして位置付け,
向上させたいと回答した者が,周囲から言われるので
必要かもしれないと思うと回答した者を若干上回る程
度に留まった.学習目標については専門分野で英語に
よる情報受信・発信ができる程度になりたいと回答し
た者が約45%を占めていた一方で,大学の授業以外に
は自ら英語を学んでいる者は少数であることがわかっ
た.専門教育と平行して学生の英語学習習慣の形成を
促す方策について考察する.
臨床実習前教育としての基本的診療技能実習
‐アンケート調査による学生からの評価‐
P24
○多和田泰之1),長谷川 優1),外山三智雄1),佐藤 友則1),大沼 典男1),
田中 聖至2),大野 裕美1),関本 恒夫1)
1)
日本歯科大学新潟歯学部附属病院,2)日本歯科大学新潟歯学部
Basic Clinical Skill Practicum before Chair Side Learning
‐Evaluation by Questionnaire on Student
Tawada Y, Hasegawa Y, Toyama M, Satou T, Ohnuma N, Tanaka S, Ohno H, Sekimoto T
1)
The Nippon Dental University, Dental Hospital at Niigata,2)NDU, School of Dentistry
at Niigata
Ⅰ 緒言
歯学部学生の病院実習を診療参加型とするには,従
来行われてきたシミュレーション中心の基礎実習に加
えてコミュニケーション技法,患者への配慮,医療事
故に対する安全管理,院内感染防止等の基本的技能を
補充する必要がある.そのため,本学では平成15年度
より病院実習直前である第5学年前期に「基本的診療
技能実習」を行っている.この実習は,専門分野の枠
組みを越えた統合型実習である.
今回,初年度すなわち平成15年度の基本的診療技能
実習についてのアンケート調査をもとに,本実習の内
容と意義について検討したので報告する.
Ⅱ 方法・対象
基本的診療技能実習(5年前期),病院実習(5年後期)
を終えた第6学年の学生113名に対してアンケート調査
を行い,病院実習おいて有益であったかを検討した.
Ⅲ 結果と考察
アンケートでは,各週の授業項目,病院実習との関
連について計31項目調査した.87.3%が病院実習に役
立ったとの回答であった.また,病院実習に対応する
ために追加して欲しい項目として診療介助があげられ
ていた.本実習は,平成18年度施行の新カリキュラム
において歯科医療コミュニケーション実習,総合診査・
検査学実習,基本的治療手技実習,予防歯科学実習の
4つに拡大,充実する予定である.患者に望まれる歯
科医師を育成するために,診療参加型実習が期待され
ている.診療参加型の病院実習をスムースに導入する
には多角的,統合的な基礎実習が重要である.86.5%
の学生が,第6学年の時点で基本的診療実習を振り返
ると有意義な実習であったと評価していた.すなわち,
本実習は学生が病院実習を行ううえで,大きな役割を
果たしていると考えられた.
生活支援型医療をめざした連携教育
−歯学部外施設との連携−
P25
○蓜島 弘之,佐藤 裕二,向井 美惠
昭和大学歯学部
Linkage education for the life supporting oral health -cooperation with institutionsHaishima H, Satou Y, Mukai Y
Showa University school of Dentistry
Ⅰ目的:平成15年度より開始した昭和大学歯学部新カ
リキュラムにおいて,1年次から5年次までにかけて実
施される「社会と歯科医療」のコースは本カリキュラ
ムの特色の一つである。今回,本学保健医療学部およ
び近郊の地域福祉施設との協力により,このコースの
2年次教科である「高齢者の福祉と口腔の健康」にお
ける介護基礎実習および介護施設実習」を行った。そ
の概要と学生ポストアンケート結果について報告する。
Ⅱ方法:本コースは基礎編と応用編からなり,4月に
口腔のケア実習・介護基礎実習(保健医療学部との協
力により実施)・病院付き添い実習からなる基礎実習
を行った後,5月から6月にかけて,学生を3グルー
プに分け,講義・PCによる調査実習・介護施設実習
の応用実習を並行して実施した。介護基礎実習におい
ては車椅子の操作方法,ベッドから車椅子への移乗な
どの基本について講義と相互実習により学習した。学
生にプレおよびポストアンケートを行い,実習を行っ
ての到達目標達成度と当学年にこの実習を行う必要性
について検討した。
Ⅲ結果および考察:介護基礎実習に対する学生の評価
は概ね良好であり,その後行われた介護施設実習にお
いてもその経験が生かされていた。
介護施設実習においては学生アンケートにも反映さ
れているように効果的な体験学習が行え,施設からの
評価も高かった。学生アンケートの結果としては,高
齢者福祉の仕組みを理解する上で有益であるとする学
生が95%を示すなど単に高齢者と触れ合うだけでな
く,講義だけでは達成し難い社会制度の理解などに有
益であったと考えられた。また,高齢者と直接触れ合
うことで,今後の学習意欲の向上に貢献しているとの
高い評価(95%)が得られた。
学外早期体験実習における学生と実習先歯科医師からの評価
P26
○藤井哲則1),林 善彦2),大井久美子2),藤原 卓2),吉田教明2),熱田
1)
充2)
長崎大学医学部・歯学部附属病院,2)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
An assessment by dental students and dentists at dental clinic in early exposure
practice
○Fujii T
1)
1)
2)
, Hayashi Y , Oi K
Nagasaki Univ. Hospital,
2)
, Fujiwara T
2)
, Yoshida N
2)
and Atsuta M
2)
2)
Nagasaki Univ.
Ⅰ 目的
平成14年度から,歯科医院で診療を見学する体験実
習を行っている。初年度の実習後,学生アンケート
で,本実習のシステム(見学回数や時間等)について
改善を望む意見があった。そこで,平成15年度では見
学回数を13回から9回に減じ,見学時間も短縮した。
今回は実習を総合的に評価する目的で,学生と見学先
の歯科医師からのアンケートを検討した。
Ⅱ 方法
本学外体験実習は1年生を対象としたものであり,
実習を事前に承諾した歯科医院において,見学実習を
行った。歯科医院の見学毎に学生(24項目)と実習先
歯科医師(4項目)からアンケートを提出させた。各
項目は0から3までの4段階で評価された。
Ⅲ 結果と考察
この早期体験実習に満足している学生は多く,歯科
医師の役割を理解する,望ましい歯科治療のあり方を
想像するや歯科診療の流れを理解するといった本実習
の教育目標については,高い評価であった。実習の満
足程度は,実習先の協力度や学生自身の積極的な見学
程度と統計的に有意な相関がみられた。しかし受付や
技工士の役割の理解や今後の必要な勉学の想像につい
ては,低い評価であった。実習先の歯科医師や実習全
体に関する項目では,9回目の実習は1,3,6回目と
比較して有意に評価点が高く,これは複数回数の見学
実習の意義を示すものと思われる。実習先の歯科医師
によるアンケート項目と学生のアンケート項目では有
意な相関はみられなかった。
これらの結果を考慮し,今後この実習のさらなる改
善をはかりたい。
卒前教育におけるインプラント基礎実習
−登院実習前実習における取り組み−
P27
○城戸寛史,松浦正朗,生山隆,清水博史,高橋裕,佐藤博信,藤英俊,本田武司
福岡歯科大学咬合修復学講座,生体構造学,学長
Basic Practice for Under-Graduate Students
-The Procedure in Pre-Clinical Practice
○Kido H, Matsuura M, Ikuyama T, Shimizu H, Takahashi Y, Sato H, Toh H, Honda T
Fukuoka Dental College Department of Oral Rehabilitation, Morphological Biology,
President
Ⅰ.目的
インプラント治療は欠損補綴の一選択肢として臨床
に広く取り入れられており、今後さらに一般的な治療
として定着することが予想される.しかし,歯学部学
生が卒前に受けるインプラントに関する教育は限られ
ており,インプラント治療の急激な普及への対応は遅
れているのが現状である.本学では実技教育を重視し
た総合医歯学教育・臨床口腔医学教育の一環として20
03年度より登院実習生に対してインプラントの模型実
習を開始した.今回,さらに実践的な教育を目指して
実習内容の改善を行い2004年より登院実習前の学生を
対象として実習として施行しているので,その概要に
ついて報告する.
Ⅱ.方法
埋入実習に使用する練習用フィクスチャーはテーパ
ータイプを1本(Replace Select Taper: Nobel-
Biocare社),ストレートタイプを2本(Replace
Select Straight: Nobel-Biocare, Setio:ジーシー社)
とした.埋入実習後,二次手術,アバットメントの連
結および印象採得の実習を行った.また,切開線の入
れ方,埋入術式や印象方法についてチュートリアル方
式による学習を取り入れた.
Ⅲ.結果と考察
皮質骨や界面骨をシミュレーションした歯肉付模型
を採用したことで臨床に近い感覚で実習が可能になっ
た.また,部分床義歯の製作実習と同じ模型でインプ
ラント実習が行われるのでインプラント治療が特殊な
治療方法でなく欠損補綴の一選択肢であることを意識
させることができる.さらに,複数の種類のインプラ
ントシステムを実習することで各システムの特徴を体
験でき,チュートリアル方式の採用は術式の理論背景
の学習に効果的であると考えられる.
日本歯科大学新潟歯学部におけるSCPへの取り組みについて
P28
小菅健裕、小沼邦葉、石黒優子、小西雅也*、大橋 誠*、佐野公人*、千葉 晃、
中原 泉
日本歯科大学新潟歯学部、*日本歯科大学新潟歯学部附属病院
Participating in the SCP at The Nippon Dental University, School of Dentistry
at Niigata
Kosuge T, Konuma K, Isiguro Y, Konishi M*, Oohashi M*,Sano k*, Chiba A, Nakahara S
The Nippon Dental University, School of Dentistry at Niigata
*The Nippon Dental
University, School of Dentistry at Niigata, University Dental Hospital
Ⅰ目的:スチューデント・クリニシャン・プログラ
ム(SCP)は、1959年アメリカ歯科医師会(ADA )が
創立100周年を機に歯科学生による斬新で意義ある研
究の実践発表の場として設立し、デンツプライイン
ターナショナル社に後援を依頼したのに端を発す
る。昨年で44回の開催となり、参加国もカナダ、イ
ギリス、オーストラリア、ドイツ、中国、スイス、
ノルウエー、韓国、スエーデンなどニ十数国を数え
る国際的イベントに発展している。
我が国では、1995年に日本歯科医師会主催による
第1回日本代表選抜大会が参加校4校で開催され、昨
年第9回では参加校20校に増え全国的規模になりつ
つある。
当大学でも第1回大会より積極的に参加している
が、毎年募集から発表までの期間が短く、研究の質
や人的資源の育成に長期的展望に立った組織づくり
の必要性に迫られて
いる。
Ⅱ方法:そこで、今回第10回大会参加を機に学内に、
研究の年次計画や人員確保と運営などを目的に学生に
よる継続的研究団体「SCP研究会」を設立したので組織
構成、運営様式、問題点などその概要を報告する。
歯科臨床実習教育における救命救急処置の研修
P29
○高橋誠治,村松健司,小倉晋,関慎太郎,川村浩樹,宗村治,渡辺昌司,富田涼一
日本歯科大学歯学部附属病院救命救急研修プロジェクトチーム
Training of Emergency Life Support in Dental Clinical Education
○ Takahashi S,Muramatsu K,Ogura S,Seki S,Kawamura H,Munemura O,Watanabe S,
Tomita R
Project Team of Training of Emergency Life Support, The Nippon DentalUniversity
School of Dentistry at Tokyo
Ⅰ.目的 心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガ
イドラインが西暦2000年に改定され1),平成15年9月
には歯科医師の救命救急研修ガイドラインについて厚
生労働省より通達がなされ,ガイドラインの周知と歯
科医師の救命救急研修の充実を図るよう協力要請が
あった.これを受けて本学歯学部附属病院では平成16
年4月より救命救急研修プロジェクトチームが設置さ
れ,実際の臨床現場である診療室の一部を用いて救命
救急研修を開始した.
Ⅱ.方法 研修対象者は,まず本学第5学年の病院実習
生132名とし,「呼吸停止,心停止の患者を生き返ら
せるために,心肺蘇生法の能力を身につける.」を一
般目標に,10項目の行動目標を策定した.この行動目
標の中で特に注目されるのは,2000年のガイドライン
で一次救命処置に加えられ,日本でも市民レベルでの
使用が法制化されようとしている「自動体外式除細動
器(AED)の使用」を組み入れたことである.そして,
これら10項目の行動目標を基に,25の評価項目を設定
した評価シートを作成した.また,25評価項目の内容
の理解度を高めるために,各評価項目に対応する25の
設問を作成し,プレテストを受験した後に研修を受け
るシステムとした.さらに本研修の効果を高めるため
に随時,評価結果のフィードバックを行い,評価シー
トのコピーを本人に返却した.
Ⅲ.結果と考察 救命救急研修の充実を図るために,
実際に附属病院施設の一部を用いて研修を行った.そ
の結果,臨場感の向上により研修内容の習熟度が高め
られ,病院の安全機能の点検・向上にも役立つものと
思われた.
Ⅳ.文献
1)岡田和夫,青木重憲,金 弘 監訳:ACLSプロバイ
ダーマニュアル,中山書店,東京,2004,9-20.
臨床実習開始前のOSCE
−4年終了時での臨床系課題と評価―
P30
〇安藤 進,中島一郎,網干博文,桑田文幸,伊藤公一,大塚吉兵衛,戸田善久
日本大学歯学部
The Assessment of Clinical Subjects on OSCE for 4th. Grade Students before Clinical
Education
Ando S, Nakajima I, Aboshi H, Kuwata F, Ito K, Otsuka K, Toda Y
Nihon University School of Dentistry
Ⅰ目的
本学でも共用試験歯学系OSCEの実施準備が進められて
いる。本年2月に実施された臨床実習開始前OSCEトラ
イアルでの評価結果の分析から使用した課題に対する
評価項目の影響を検討する。
Ⅱ方法
平成15年度OSCEトライアルは,日本大学歯学部実習室
を使用し歯学部第4学年生135名に対して,面接・指導
系3課題および臨床系3課題の6ステーションと2レス
トステーションを含む8ステーション,4系列で実施し
た。受験者を4グループに分け,各ステーションで8か
ら9名の受験者を評価者(外部評価者を含む)2名がペ
アとなって評価した。6課題のうちから「ブラッシング
の説明と指導」および「根管治療」の2課題について
Mann-Whitney's U-testによって課題への評価項目の影
響について検討した。
Ⅲ結果および考察
今回のOSCEトライアルの平均点は75点であった。課
題ごとに受験者グループ間の差の有無を検討したとこ
ろ,グループ間には差が認められなかったことから評
価についてのキャリブレーションがある程度達成され
たものと考えられた。「根管治療」は,評価項目がす
べて臨床技能を評価する構成でその正答率は73.6%で,
いずれのペア評価者間でも差が認められなかった。一
方,「ブラッシングの説明と指導」は,挨拶,説明な
どのコミュニケーション評価項目と技能指導の評価項
目と異なる評価領域の混在する構成で,その正答率は
70%と平均より低く,一部のペア評価者には有意差
が認められた。この差は,一部のペア評価者間での技
能指導評価項目での評価差が原因で生じたことから,
評価項目の構成は,課題の難易度や課題の評価に影響
することが示唆された。
客観的臨床能力試験(OSCE)の信頼性の分析
課題「ラバーダム防湿」における検討
P31
○吉羽邦彦,興地隆史,富沢美恵子*,福島正義*,小林 博,葭原明弘,星名秀行**
高木律男,前田健康,山田好秋
新潟大学大学院,*新潟大学歯学部,**新潟大学医歯学総合病院
Reliability of an Assessment of Rubber Dam Isolation Skills in an Objective Structur
Clinical Examination
○Yoshiba K, Okiji T, Tomizawa M*, Fukushima M*, Kobayashi H, Yoshihara A, Hoshina H*
Takagi R, Maeda T, Yamada Y.
Niigata Univ. Grad. Sch.,*Niigata Univ. Fac. Dent., **Niigata Univ. Hospital
Ⅰ 目的 OSCEを実施する上で,評価の信頼性の確保
は極めて重要である.この点に資することを目的とし
て,平成15年11月に本学歯学部で実施されたOSCE課題
「ラバーダム防湿」の採点結果を対象として,評価の
信頼性に関する分析を行った.
Ⅱ 方法 試験は本学歯学部5年生54名を対象として
3系列で実施し,7組14名の評価者により,13項目に
ついて2段階あるいは3段階の,また概略評定につい
ては4段階の尺度で評価した.試験は評価マニュアル
を用いた事前打ち合わせの後,リハーサルを行い,評
価基準の統一をはかった上で実施された.統計学的解
析は,評価者間の評点差および評価項目の内的整合性
に関して行った.
Ⅲ 結果と考察 評価者間の評点一致率は,「患者に
配慮した器具操作」で59%,「概略評定」で68%であ
り,「目的歯の的確な露出」,「必要な声かけ」の各
項目も80%未満であった.また,2組の評価者に評点
の有意差が認められた(paired t-test, p<0.05).評
価者の主観が入りやすい項目や評定尺度を採用した項
目で不一致が生じる傾向にあり,より客観的な評価方
法・基準の検討と十分な評価者間の摺り合わせの必要
性が示唆された.
一方,本課題におけるクロンバックのα信頼性係数
は0.68であり,評価項目の内的整合性は概ね良好であ
った.また,評価項目ごとにその他の項目との重回帰
分析を行ったところ,決定係数は「クランプの試適」
が最小,次いで「クランプの装着方向」,「必要な声
かけ」,「指定した歯への装着」,「装着後のシート
の破れ」,「クランプの選択」が低値を示した.従っ
て,認知もしくは情意領域の項目や得点差のつきにく
い項目は内的整合性に負の影響を及ぼすことが示唆さ
れた.
OSCEにおける医療面接技能と情報伝達技能の比較
P32
○吉田登志子
1)
、荒川 光
1)
、吉山昌宏
1)
、下野 勉
1. 岡山大学教務委員会共用・総合試験部会
2)
2.岡山大学大学院
The Comparison between patient interviewing skills and communicative competncies to
instructor in the objective structured clinical examination
○Yoshida T 1) , Arakawa H 1) , Yoshiyama, M 1), and Shimono T
1.Okayama Univ. 2. Okayama Univ. Grad. Sch.
Ⅰ 目的
医療面接で聴取された内容を指導医へ正確に、か
つ簡潔に伝達する技能は、臨床実習生が実習を行
うために必要な能力の一つである。そこで医療面
接で聴取された内容の正確性、およびその内容を
指導医へ伝達する技能を評価するために、岡山大
学歯学部第2回OSCEトライアルにおいて、指導医
への情報伝達の課題(1課題)を初診の医療面接
の課題(1課題)の後に実施し、これら2つの課題
間における評価結果を比較、検討した。
Ⅱ 方法
臨床実習開始直前の歯学部5年次学生、62名(男
子31名,女子31名)を対象とした。平成15年10月
4日に、2つのレストステーションを含む9つのス
テーションを2列で実施した。学生の評価は、ス
テーション毎に二人の教員とし、その平均値を用
2)
を分析の対象とし、医療面接と情報伝達課題の評
価結果の差を、プロセス領域と内容領域のそれぞ
れにおいてt検定を用いて検討した。
Ⅲ 結果と考察
2つの課題間に共通である、プロセス領域の6つの
評価項目と内容領域の11の評価項目のどちらにお
いても、指導医への伝達での評価点は医療面接の
評価点よりも有意に低い値を示した(9.9 vs.
10.5; t=3.4, p=0.001, 6.4 vs 7.2; t=3.9,
p<0.001)。すなわち、医療面接においてのコミュ
ニケーション技能の方が、指導医に情報を伝達す
る際のそれよりもより高いことが示唆された。ま
た、医療面接で聴取するという行為はなされてい
るが、その行為と比較して、聴取された内容は正
しく把握されていない可能性が示唆された。
OSCEにおける医療面接系の評価と基本的診療技能実習と
関連性の検討
P33
○二宮一智1),水谷太尊1),大橋 誠2),阿部祐三1),川辺貴徳1),
白野 学1),菅原佳広1),関本恒夫1)
1)
日本歯科大学新潟歯学部附属病院 2)日本歯科大学新潟歯学部
Relevance of Medical Interview in Objective structured Clinical Examination Results
and Clinical Skill Training
○Ninomiya K
1),
1)
2)
1)
1)
1)
1)
Mizutani T , Oashi M , Abe Y , Kawabe T , Shirono M , Sugawara Y ,
1)
Sekimoto T
Nippon Dental University, School of Dentistry at Niigata, Dental Hospital 2)Nippon
Dental University, School of Dentistry at Niigata
1)
I 目的:客観的臨床技能試験(OSCE)は平成17年
度からの共用試験としての実施が決定している。なか
でも医療面接系はOSCEコア・ステーションに挙げられ
診療参加型臨床実習の中核を成している。そこで,当
大学では平成15年度より第5学年を対象に計13回
の基本的臨床技能実習を臨床実習前の前期授業のカリ
キュラムに組み込み,その中で医療面接系は計2回
(1回3時間)の授業でコミュニケーションから医療
面接の技法を講義,ロールプレイ,スモールグループ
デイスカッションによりOSCEに対応できる能力を身に
つけるための教育を開始した。そこで、今回演者らは
基本的診療技能実習とOSCE評価結果との関連性を検討
するために、基本的診療技能実習を受けていない平成
14年度の第5学年と実習を受けた平成15年度の第
5学年で各々実施したOSCEの医療面接の項目ごとの正
答率を比較した。
II 方法:基本的診療技能実習(以下実習)を受けて
いない平成14年度の第5学年95名と実習を受けた
平成15年度第5学年114名を対象として各々臨床
実習前に行った医療面接系のOSCEに関して各々の対応
した関連の評価項目で面接の進め方7項目,情報収集
2項目に関しての正答率の比較検討を行った。
III 結果と考察:各項目ごとの正答率の比較では平
成14年度の第5学年よりも実習を受けた平成15年
度の第5学年において面接の進め方7項目中6項目,
情報収集2項目正答率の上昇が認められた。中でも挨
拶,言葉使いの2項目は20%以上上昇していた。
今回の結果は,基本的診療技能実習が学生の患者に対
するコミュニケーション技法の向上や情報収集に関す
る知識の確かな修得に有効であることが示されたと考
える。
共用試験歯学OSCEトライアル成績と臨床実習成績との関係
P34
○鈴木雄一朗,奈良陽一郎,片桐慎吾,横澤 茂,貴美島哲,矢島彩子,森川倡子,傘 孝之,
南雲 保,住友雅人,古屋英毅,中原 泉
日本歯科大学歯学部
The Correration between Results From Tryal of Dental OSCE in Common Achivement Test a
Clinical Practice
Suzuki Y, Nara Y, Katagiri S, Yokozawa S,Kimishima T, Yajima A, Morikawa M, Karakas
Nagumo T, Sumitomo M, Furuya H, Nakahara S
The Nippon Dental University,School of Dentistry at Tokyo
Ⅰ 目的
平成17年度からの共用試験システム正式実施を前
に,グローバルな視点からも,より優れた歯科医師育
成のための歯科医学教育における改革が進みつつあ
る.日本歯科大学歯学部においては,臨床実習開始前
の学生に対し,平成13年度から共用試験歯学OSCEトラ
イアルを実施している.また臨床実習生に対する評価
に際し,平成15年度から従来の知識・技能評価に加え,
実習態度,生活習慣も含めた評価項目を設定し,それ
ぞれを点数換算することによって総合的な判定を行い
始めた.そこで今回,OSCEの成績と臨床実習成績との
関係について検討を行った.
Ⅱ 方法
平成15年2月14日に実施された平成14年度歯学OSCE
トライアルを受験し,かつ平成15年度臨床実習を行っ
た日本歯科大学歯学部学生116名を対象とした.臨床実
習の評価は,出席評価,指導医による態度・習慣評価,
臨床技能評価,ローテート実習,チュートリアル実習
からの評点を総合して行った.概略評価を除いたOSCE
項目評価と臨床実習成績との相関,またOSCE概略評価,
SP評価との相関について,さらに同学年に対して行っ
たCBT成績との相関について検討した.
Ⅲ 結果
1) OSCE項目評価と臨床実習成績との間には有意な
相関は認められなかった.2) OSCE概略評価およびSP
評価と臨床実習成績との間にはそれぞれ有意な相関が
認められた.しかし相関係数は,それぞれ0.34,0.18
にとどまった.3) 臨床実習成績とCBT成績間には有意
な相関が認められ,相関係数は0.41であった.
以上から,学生の臨床能力に対する成績は,臨床実
習を経験することによって,大きく変化することが示
唆された.
OSCEトライアルの評価結果に対する評価者間の検討
P35
○庄野庸雄, 坂本英治, 木尾哲朗, 有田正博, 黒川英雄, 大住伴子, 園木一男,
北村知昭、西原達次、横田誠、寺下正道
九州歯科大学共用試験OSCE委員会
Analysis of the Evaluation Results of OSCE -The difference between the Evaluators
Shono Y,Sakamoto E,Konoo T,Arita M, Kurokawa H,Ohsumi T,Sonoki K, Kitamura C,
Nishihara T, Yokota M、Terashita M
0SCE executive Committee, Kyushu Dental College
I 目的 OSCE(客観的臨床能力試験)は臨床技能や態
度・マナーの評価法として, 近年広く認められている
試験方法の一つである. 歯科教育学としても新たな試
みであるOSCEは受験者の資質だけでなく, 評価者, 課
題の適正さ, 公平さが求められるためより確立したシ
ステムの構築は急務である. 本格実施を前に本学にお
いては過去2回にわたり5年次生(第1回89名、第2回9
9名)を対象としたOSCEトライアルを行ってきた. 過
去2回の結果から評価者間の公平性, 信頼性について
検討を行った.
II 対象と方法 平成15年3月の第1回九州歯科大学
OSCEトライアルの5課題(3系列)に参加した評価者計
45名(内部評価者40名, 外部評価者5名)および平成
15年12月の第2回OSCEトライアルの7課題(3系列)に
参加した評価者計74名(内部評価者54名, 外部評価者
20名)を対象とした. 個々の学生に対する評価、概略
評価を各評価者間で検討を行った.
III 結果 評価者間の評価の一致率の平均は第1回が
69.8%, 第2回が80.5%であった. 同様に概略評価の一
致率の平均は第1回が54.5%, 第2回が48.1%であった.
IV 考察 この結果から, 1回目に比較して2回目のト
ライアルでは, 概略評価の一致率は変化がないが,
評価の一致率が高いという結果が得られた. これは2
回のトライアルを通して評価者, 課題ともによりブ
ラッシュアップされOSCEの理念が浸透していたもの
と思われる. 今後, 本格実施されるOSCEでは公平性,
信頼性が求められる. 従って, 全国的な統一した評
価基準を決定し, 評価者のトレーニングにより確立
した評価システムの構築が必要である. このような
一致率での考察は受験者の資質だけでなく, 課題,
評価項目の適性度, 評価者の習熟度を総合的に判断
するのに有効であると思われる.
模擬患者によるOSCE受験生評価の分析と客観的評価のための
試み
P36
○木尾哲朗,大住伴子,黒川英雄,有田正博,庄野庸雄,北村知昭,粟野秀慈,
坂本英治,西原達次,横田誠,寺下正道
九州歯科大学共用試験OSCE委員会
Analysis of the evaluation by simulated patients and trail for reasonable objectivity
Konoo T, Ohsumi T, Kurokawa H, Arita M, Shono Y, Kitamura C, Awano H, Sakamoto E,
Nishihara T, Yokota M and Terashita M
OSCE executive Committee, Kyushu Dental College
【Ⅰ 目的】OSCEは技能と態度の評価を主な目的と
し,態度の評価には模擬患者(SP)が用いられる.
SPを用いる面接・説明部門は,客観的な評価が難し
いとされ,加えて現時点ではSPによる評価の意義に
ついて,医学教育での報告は散見されるが,歯学教
育での報告はほとんどない.そこで,SPによる評価
の意義を探り客観性を高める目的で,学内養成した
SPによる評価について分析,検討を行った.
【Ⅱ 方法】平成14,15年度本学OSCEトライアルで
面接・説明部門に参加したSP23名と評価者の評価を
比較検討した.SPによる評価・評価者による評価を
それぞれ20点満点に換算し,各評価項目の相関の
有無はSpearmanの相関係数により検定した.さらに
,14年度の各SPの評価傾向の分類を試み,その結果
に基づき15年度ではSP に対し評価の指導を行った.
【Ⅲ 結果と考察】SPと評価者の評価の平均点は,
14年度は13.6点・16.5点,15年度は18.2点・17.9点
であった.両者の間には14,15年度ともに,面接部
門ではやや強い相関が,説明部門ではやや弱い相関
が認められた.14年度各SPの評価傾向は評価者と,
①ほぼ一致,②平均点の差が大きい,③評価の振幅
が大きい,④一部の評価が異なる,の4タイプに分
類することができた.15年度は各タイプに応じたSP
教育を行うことで,ほとんどのSPが①または④のタ
イプとなった.
OSCE本格運用時にSP評価の取り扱いについては現
時点では不明であるが,OSCE本来の趣旨からすれば
SP評価は必要であると考えられる.そのためにもSP
の養成において評価基準を明確にし,評価に客観性
をもたせる必要があると思われる.
共用試験OSCE評価者間における評価点の一致度に関する検討
P37
○川上智史1,越野 寿2,平井敏博2,有末 眞3,大野弘機4
北海道医療大学医療科学センター1,第1補綴2,第2口外3,理工4
Percentage of Agreement by Examiners in Point of OSCE
Kawakami T1, Koshino H2, Hirai T2, Arisue M3, Ohno H4
Health Sciences Univ. of Hokkaido Institute of Medical Sciences1,
2
3
Depts. Removable Prosthodontics , Oral Surgery and Dental Materials Sciences
Ⅰ.目的
臨床実習の充実を目的として,共用試験の実施が予
定され,本年度で3回目のトライアル実施を終えた.
共用試験が実のある成果を出すためには,評価結果の
妥当性が不可欠であり,特に,OSCEに関しては評価者
間における評価の一致性が,評価結果の妥当性に大き
く影響を及ぼすと考えられる.
今回は,本学歯学部で実施したOSCEトライアルⅢに
おける2名の評価者間における評価結果の一致性と評
価結果の関連について検討を加えたので報告する.
Ⅱ.方法
今回,検討対象とした共用試験の受験者は歯学部4
年生94名である.OSCEの実施に際しては,医療面接
(S1),バイタルサインの測定(S2),ラバーダムの
装着(S3),根管洗浄(S4),欠損補綴の説明(S5),
予防填塞(S6)の6課題ステーションを設置し,各ス
4
テーションにおいて,2名の評価者がチェックシート
を用いて診療能力を評価した.なお,評価者の内訳は,
内部評価者が36名,外部評価者として北海道大学の32
名,東北大学の2名,岩手医科大学の2名であった.
Ⅲ.結果と考察
OSCE6課題の平均点は,ステーション番号順に68.3,
78.3,69.0,66.1,62.5,68.7(共に百点満点)であ
った.6課題ともに,内・外評価者間の平均点に有意
な差は認められなかった(p>0.05).全89評価項目の
評価者間の評価点の一致度に関して,2段階評価の場
合は84.2,3段階評価の場合は71.0,4段階評価の場
合は63.0%であった.また,説明・コミュニケーショ
ン系ステーションでは,74.4%,技術系ステーション
では79.9%であった.以上の結果から,評価シートの
段階設定が評価点の一致度に大きく影響していること,
技術系評価基準の設定が明確であることが推測された.
客観的臨床能力試験(OSCE)の繰り返し実施による教育効果
P38
○角田 晃,井上 聡,今井崇隆,大石ゆかり,川上正人,木本茂成,窪田光慶,菅谷 彰,
高木 忍,田口 長,塗々木和男,林田丞太,根岸秀幸,森 啓,高垣裕子,荒川秀樹,瑞穂冬
神奈川歯科大学 2003年度OSCE実行委員会
The effect of repeated practice tests for an Objective Structured Clinical Examination
Tsunoda A, Inoue S, Imai M, Oishi Y, Kawakami M, Kimoto S, Kubota M, Sugaya A, Takagi S,
Taguchi H, Todoki K, Hayashida J, Negishi H, Mori K, Mikuni-Takagaki Y, Arakawa H, Mizuho F
The OSCE executive committee 2003, Kanagawa Dental College
I. 目的 歯学共用試験OSCE本格運用の準備が進められて
いるが,同じ学生に複数回OSCEを行った報告は少ない.本
学では平成15年に第1回OSCEトライアルを実施したが,これ
に先立ち,受験者の協力を得てシミュレーションを実施した.
今回,これら2回の試験における習熟度の変化について検討
したので報告する.
II. 方法 平成15年7月に本学4年生56名の希望者を対象に,
St.1保護者に対するブラッシング指導,St.2初診患者の医療
面接,St.3ラバーダム防湿,St.4概形印象採得,St.5抜歯後の
説明の5課題をシミュレーションとして行った.St.3とSt.4では,
終了後の基礎実習中に,トライアルとの関連は伏せたままに
して4年生全員(117名)に練習させたが,St.1,St.2およびSt.
5は練習を行わなかった.さらに同年9月に4年生全員を対象
として,ほぼ同じ課題でトライアルを実施した.成績の比較は
①シミュレーション経験者の評価得点の変化を
Wilcoxonの符号付順位検定でまた②シミュレーション
経験者と未経験者の評価得点の違いをWilcoxonの順位
和検定で評価した.
III. 結果と考察 ①では,St.1とSt.4において評価得点
の有意な上昇を認めた.St.3ラバーダム防湿では2回
とも好成績を示したが,これはシミュレーション以前
の基礎実習ですでに習熟していたためと思われ,St.4
概形印象採得はシミュレーション後の復習が効果をあ
げたと思われる.②では, St.4を除く全ステーション
において有意差を認めた.以上から,情意領域課題で
は単に2回受験することだけでも教育効果があるが,
シミュレーション希望者の成績が良かったことから,
その効果は受験者の学習意欲に影響を受ける可能性も
否定できないことが示唆された.
外科系課題「普通抜歯」についてOSCEによる臨床実習
前後での比較
P39
○角田左武郎、堀口英之*、木村裕一、長谷川篤司、管沼岳史、塚崎弘明、天野均、
五島衣子、南雲正男*
昭和大学歯学部OSCE小委員会、*顎口腔疾患制御外科学講座
Comparison between students before and after
Pre-graduate clinical training program
by OSCE about simple extraction of tooth
○Kakuta S, Horiguchi H, Kimura Y, et al.
OSCE Committee, and Oral and Maxillofacial Surgery, Showa University School of Denti
I 目的
OSCE は臨床技能、特に態度・技能領域を評価する
のに優れた試験方法といわれてる。「簡単な抜歯」は
コア・カリキュラム臨床実習内容「水準1」にあげら
れており、指導医の監督下で歯学部学生に許容される
歯科医療行為である。今回、平成15年度臨床実習前
の5年生を対象にした共用試験OSCE トライアルを、
臨床実習を終了した一部の6年生が受験する機会を得
た。そこで、臨床実習での教育効果を「簡単な抜歯」
について検討する機会が得られたので、その概要を報
告する。
II 方法
OSCE は昭和大学旗の台校舎実習棟で行った。対象
は、5年生113名と6年生8名である。6年生の8
名は7月の行われた臨床実習終了のためのOSCE に参
加できなかった学生である。
共用試験OSCE の課題数は6課題で,「普通抜歯」は
そのうちの一つである。評価シートは概略評価を含め
15項目である。OSCE実施直後に、アンケート調査を
(1)自己評価、(2)時間配分、(3)課題の難易
度、(4)フィードバック、(5)何か一言について
行った。
III 結果および考察
結果は5年生平均11.5±2.42に対して6年
生は12.6±1.74であった。概略評価は5年生
3.2±0.70に対して6年生は3.9±0.50
であった。アンケート結果は、おおむね6年生の方に
良い結果が得られた。ただし、6年生は全体が107
名であることを考えると、さらに数を増やして検討す
る余地があると思われた。
2004年度OSCEトライアルにおける評価者間の評価比較
P40
○音琴淳一*1,2、黒岩昭弘*1,3、植田章夫*1,4、山本昭夫*1,5、山下秀一郎*1,6、上松
隆司*1,4、中山聡*1,7、塩島勝*1,8、宮沢裕夫*1,7
*1松本歯科大学OSCE小委員会、*2保存1、*3補綴1、*4口腔顎顔面外科、
*5
保存2、*6総合診療、*7小児、*8歯科放射線
Comparison of Evaluations Between Evaluaters at the OSCE Trial in 2004.
○Otogoto J, Kuroiwa A, Ueda A,Yamamoto A, Yamashita S, Uematsu R,
Nakayama A, Shiojima M, Miyazawa H
OSCE committee,Department of Periodontology,Removable Prothodontics Dentstry, Oral
Maxillofacial Surgery, Restorative and Endodontic Dentistry,Interdisiciplinary
Dentistry, Pediatric Dentistry,Oral Radiology, Matsumoto Dental University,
Ⅰ 目的
平成18年度の本格運用に向けてOSCE課題を行う
にあたり、客観的評価基準の作成とその基準を遵守し
た客観的評価は重要な課題となる。そこで本年2月に
松本歯科大学で行われたOSCEトライアルにおける
対象として内部・外部評価者間での同一受験者におけ
る課題ごとの評価を比較したので報告する。
Ⅱ 方法
対象となる課題は医療面接系2課題、技術系3課題
の計5課題であった。各課題毎に3人の評価者が担当
し、うち1名は外部評価者であった。課題実施は2004
年2月であった。各課題の検討は学内では2003年11月
末に終了し、共用試験機構のブラッシュアップののち
、外部評価者を派遣していただく4大学へ2004年1月
に資料を送付した。内外部評価者間の最終打ち合せは
OSCE当日(2月19日)午前中に行った。各課題毎
の外部評価者は4名、内部評価者は8名ずつであった。
受験者は102名であった。
評価結果は各課題毎の総合点、評価項目の点数の不
一致率・数、概略評価の一致率を内部・外部評価者に
ついて算出し、両評価者の評価結果を比較した。
Ⅲ 結果と考察
全ての課題項目と評価総合点は内部評価者と外部評
価者間に有意差を認めなかった。総合点数は外部評価
者が高く評価する傾向が見られた。評価者がそれぞれ
異なる評価を下した平均項目数はどの課題も外部評価
者は3項目未満であった。概略評価は5課題全てにお
いて評価者同士の評価が一致していた受験者は約5割
未満であった。また内部評価者と外部評価者の評価の
差異を内部評価者同士の評価の差異と比較することに
よって学内の評価の調整度や評価者資質も推測するこ
とができた。
概略評定の妥当性と信頼性に関する解析
—新潟大学歯学部OSCEにおける検討—
P41
○興地隆史、*福島正義、吉羽邦彦,小林博、葭原明弘、**星名秀行、*富沢美恵子、
高木律男、前田健康、山田好秋
新潟大学大学院、*新潟大学歯学部、**新潟大学医歯学総合病院
Validity and Reliability of Global Ratings for Competency Assessment in an Objective
Structured Clinical Examination at Niigata University Faculty of Dentistry
○Okiji T, *Fukushima M, Yoshiba K, Kobayashi H, Yoshihara A, **Hoshina H, *Tomizawa
*Tomizawa M, Takagi R, Maeda T, Yamada Y.
Niigata Univ. Graduate School、*Fac. Dent., **Medical & Dental Hospital
Ⅰ 目的 概略評定は具体的評価項目に含まれない細
かい臨床能力を含めた総体的評価を可能とする反面、
評点のばらつきや評価への主観の介入を助長する可能
性もある。本研究では,平成15年11月に本学で実施さ
れた OSCE課題より面接系、技能系課題を対象として
概略評定の妥当性・信頼性に関する分析を行った.
Ⅱ 方法 試験は歯学部5年生54名を対象に実施し,
1ステーション2名の評価者により、概略評定は4段
階、その他の評価項目では2-3段階の尺度で評価し
た.採点結果をクロンバックのα信頼性係数あるいは
重回帰分析により解析した。
Ⅲ 結果と考察 課題「医療面接」,「ラバーダム防
湿」,「仮想咬合平面の設定」のα係数は各々0.79、
0.68、0.74と概ね望ましい値であったが、概略評定を
除外した場合は0.74、0.61、0.65に低下した。従っ
て、概略評定は評価項目の内的整合性に少なくとも負
の影響を与えないことが示唆された。また、各課題で
概略評定とその他の項目との重回帰分析を行ったとこ
ろ,決定係数は0.68、0.52、0.69(全てP<0.001)で
あり、概略評定は項目ごとの評価とある程度関連する
能力を測定していることが示された。さらに、変数選
択—重回帰分析にて概略評定に影響を与える評価項目
の選別を行ったところ、「医療面接」では面接プロセ
スに関するやや広い測定範囲の項目(「話の進め方」、
「視線を向ける」、「聞き取りやすい話し方」)、ま
た技能系課題では基本的知識に関する項目(「フォー
セップスの持ち方」、「クランプの方向」、「鼻翼下
縁をマーク」)や測定範囲が広い項目(「患者への配
慮」)などが選択された。従って、臨床能力の細かい
ニュアンスや基本的知識の欠如が概略評定で主として
評価されること、及び、総点に概略評定を加えた場合、
これらの項目に重みが附与されることが示唆された。
卒後臨床研修に関するアンケート調査および研修医
の意識とOSCEの成績との関連性
P42
○岩堀正俊,藤原 周,横山貴紀,吉田隆一1),斉藤達哉1),倉知正和
朝日大・歯・口腔機能修復・補綴 1)朝日大・歯・口腔機能修復・保存
Questionnaire survey of clinical training for junior residents and the relationship
behaviors of junior residents and evaluated results of OSCE
○Iwahori M, Fujiwara S, Yokoyama T, Yoshida T, Saito T, Kurachi M
Divi. of Oral Functional Science and Rehabilitation, School of Dentistry, Asahi Univ
Ⅰ 目的
歯科医師臨床研修が平成18年度から必修化される.
本学臨床研修においても良質のカリキュラムの構築は
研修成果に多大な影響を持つと考えられる.そこで,
カリキュラムの妥当性と研修医の意識について臨床研
修医に対しアンケート調査を実施し,併せてOSCEの成
績とアンケート結果との関連性を検討した.
Ⅱ 方法
調査対象は,平成14年度に本学附属病院に研修医と
して在籍し研修を終了した28名を対象とした.
平成15年3月13日にOSCEを行い,ポストアンケートを
行った.アンケート内容は研修およびOSCEに関する項
目からなり,5段階で回答することとし全ての研修医
から回答がよせられた.OSCEの課題数は5課題で,評
価方法は2名の評価者の評価スコアを合算の後,100
点満点に換算した.課題ごとの得点あるいは合計得点
を目的変数,アンケートの回答を説明変数とし重回帰
分析1)を行った.
Ⅲ 結果と考察
研修医の自己評価から過半数の研修医が研修に対し
て努力をはらい,習得したとしてその成果を認めてい
た.OSCE成績の平均は61.77点,S.D9.55であった.ア
ンケートとOSCE成績関連では自己評価で,研修に努力
したという項目がOSCEの成績に影響を与えていた.研
修期間中の必修カリキュラムを修了するためには研修
医だけでなく指導医が到達目標を持つことや指導医と
の連携を密接にすることが重要である.また研修に努
力を惜しまないというモチベーションの維持が重要で
あると考えられる.
Ⅳ 文献
1) 管 民郎:EXEL多変量解析で行う統計解析の本,1
版,エスミ(東京),33-46,1996.
OSCE評価における評価者間の差について
第2報 ビデオによる医療面接評価の再チェック結果
P43
○伊藤孝訓,葛西一貴,大峰浩隆,河相安彦,金澤英作,大竹繁雄
日本大学松戸歯学部OSCE実施委員会
The Dispersion of Inter Examiners Evaluation on OSCE
Part 2.
Result of Re-checking the Medical Interview with Video Pictures
Ito T, Kasai K, Oomine H, Kawai Y, Kanazawa E, Ohtake S
OSCE Committee, Nihon University School of Dentistry at Matsudo
Ⅰ 目的: 医療面接評価において,複数評価者間の評
価の一致度に問題があることはこれまでに報告されて
いる.そこで,今回平成15年度共用試験OSCE トライア
ルを実施するにあたり,医療面接風景をDVDに記録
し,終了後直ちに再確認できる画像記録システムを導
入し,評価者間の差について検討した.
Ⅱ 方法: OSCEトライアルは日本大学松戸歯学部にお
いて,登院前の5年次生128 名を対象として4系列,ワ
ンウェー方式で6ステーションの1つとして医療面接を
実施した.今回医療面接は内部評価者のみの実施で
あったため,翌日にDVDで評価の再確認をさせた.
評価項目は,1.患者の誘導及び配慮6項目12点,2.面接
で得られた情報10項目10点,3.面接スキル9項目9点で
ある.個人評価の一致度はκ値を用いて評価した.ま
た,評価項目の達成度についても集計した.
Ⅲ 結果と考察: 評価者間の評価の一致度は,全体
的にはκ値により,4組が「かなりの一致度」,残り
の4組は「完全な一致度」と高い一致であった.一致
しにくかった項目は,「何か一言いい挨拶した」や
「これから行うことを説明した」であった.また,学
生の評価が低かったのは,「受領動機を抽出した」や
「妊娠の有無を尋ねた」であった.
今回,評価の再確認によるデータが得られたことは,
評価の不一致が,観察ミスか知識不足に起因するかな
ど推察できる可能性が示唆され、ビデオ画像の有用性
が認められた。
Ⅳ 文献: 相澤文恵,岸 光男,熊谷敦史,他:
OSCEにおける評価の妥当性に関する検討−第1報 複
数評価者間の評価の一致度についての分析−,日歯教
誌,19:109-118,2003.
カリキュラムがOSCEの評価結果に及ぼす影響
P44
○越野 寿1,川上智史2,横山雄一1,平井敏博1,有末 眞3,大野弘機4
北海道医療大学補綴第11,医療科学センター2,口腔外科第23,歯科理工学4
Relationship between Curriculum and Point of OSCE
Koshino H1, Kawakami T2, Yokoyama Y1, Hirai T1, Arisue M3, Ohno H4
Health Sciences Univ. of Hokkaido School of Dentistry, Depts. Remov. Prosthodontics1
3
4
Oral Surgery and Dental Materials Sciences ,and Institute of Medical Sciences
Ⅰ.目的
臨床実習の充実を目的として,これまでに3回の共
用試験OSCEのトライアルが実施された.共用試験につ
いては,その評価対象は受験者のみばかりではなく,
教育内容であるカリキュラムの設定をも含んでいると
いわれている.
本学歯学部では,共用試験トライアルの実施に向け
て,カリキュラムの一部を変更し,平成13年度からは
臨床実習前特別演習を,また平成15年度からはチュー
トリアル演習を取り入れている.今回は,本学歯学部
カリキュラムの一部変更がOSCE課題の評価結果に及ぼ
す影響を検討したので報告する.
Ⅱ.方法
検討対象は,平成13,14,15年度の4年生に対して
実施された共用試験OSCEトライアルの評価結果である.
なお,平成13年度には87名が8課題を,平成14年度に
2
は104名が6課題を,平成15年度には93名が6課題を受
験した.
Ⅲ.結果と考察
OSCE評価結果の平均点は,平成13年度が57.6,平成
14年度が64.0,平成15年度が68.8点(共に百点満点)
であり,経年的に増加していた.また,医療面接や病
状説明等の説明・コミュニケーション系ステーション
では,平成14年度以降に評価結果の向上が認められた.
一方,ラバーダム装着や根管治療等の技術系ステーシ
ョンに関しても,平成15年度に大幅な点数増加が認め
られた.その中で特に,バイタルサインステーション
でのそれが顕著であった.
以上の結果から,基本的診療能力の向上を図るため
には,臨床基礎科目における種々の学習を臨床実習に
必要な知識,技能,態度へ結びつけるための適切なカ
リキュラムの設定が有効であることが示された.
地域歯科保健従事者を対象とした遠隔教育
国立保健医療科学院における取り組み
P45
安藤雄一
国立保健医療科学院・口腔保健部
e-Learning of oral health for health worker in National Institute of Public Health
Ando Y
Departmant of Oral Health, National Institute of Public Health
Ⅰ 目的
国立保健医療科学院は,地方自治体等における保健
医療・生活衛生・福祉分野に従事する技術専門職員等
の人材養成を主要任務の1つとおり,各種研修が行わ
れている.インターネットによる遠隔教育は,旧国立
公衆衛生院時代の試行期間(1999∼2001年度)を経て
2002年度から本格的に開始された.科目数は2002年度
が7,2003年度が9であり,当部(口腔保健部)では両
年度とも「口腔保健」を科目として実施した.本報告
では,この概要を紹介する.
Ⅱ 方法
受講対象は,行政等に勤務する地域保健従事者であ
る(定員10名).内容は,口腔保健の地域診断法,各
種対策の展開方法(う蝕・歯周病予防,行動科学,保
健行政における歯科保健事業)などで,期間は3ヶ月
間である.運営は掲示板(クローズド)をベースに行
い,受講者に課したレポートなどにより修了判定を行
った.講師数は,2002年度は当部員4名,2003年度は
外部講師2名を加えた計6名である.
Ⅲ 結果と考察
受講者数は,2002年度が12名,2003年度が11名で,
女性と歯科専門職の割合が高かった(男女比 2:21,
歯科専門職/非専門職比18:5).
掲示板における受講者の平均発言数は16回(SD=15)
で,他の科目に比べて活発であった.
遠隔教育「口腔保健」は今後も継続する予定である.
加えて,当部が担当している他の研修(歯科衛生士研
修)の受講者も含めた継続的な研修システムを構築し
ていきたいと考えている.
Ⅳ 文献
・土井徹,岡本悦司:公衆衛生情報,945:26-28,2003.
・国立保健医療科学院HP http://www.niph.go.jp/
e-learningシステム構築に必用な学生情報リテラシ
ー東京医科歯科大学学生の情報環境変化ー
P46
○大谷啓一1、酒井悦子2
東京医科歯科大学 大学院 硬組織薬理学分野1、情報医科学センター2
Information literacy of students who study using an e-learning system.
Changes of student's information enviroment in Tokyo Medical and Dental University
Ohya K 1, Sakai E
Pharmacology
1
2
2
and Information Center for Medical Sciences , Tokyo Med. Dent. Univ.
近年,IT技術の進歩によりインターネットを活用し
たe-learningシステムの開発が進んでいる.e-learningはIT技術を用いて学生に主体的な学習を促す仕組み
である.東京医科歯科大学歯学部にe-learningシステ
ムを導入するにあたり,学生の情報リテラシがどの程
度のレベルか知る必用がある.そこで学生の情報リテ
ラシの調査を行い年度ごとの比較を行った.
対象とした学生は2年生で医学・歯学・生物系の研
究に必要な情報教育として行われている基礎情報医歯
学講義の初回にアンケートを行い,学生の情報リテラ
シレベルを5年間にわたり調査した.
パソコンの所持に関しては1999年度は約75%の学生
が所有していたが,2003年度は97%の学生が利用して
いた.またその中でもノート型パソコンを自分で所有
するものが多くなり,約半数の学生がそうであった.
さらにインターネットへの接続率は1999年は78%程度
であったが,2003年には93%の学生が接続して利用し
ていた.接続方法は2001年よりADSLを利用する学生が
急増して2003年には約50%に達した.また学生の情報
スキルを知る目的でワープロの中級技術レベルである
「図,罫線を使用できる」を指標として評価したとこ
ろ,1999年には28%の学生がこのレベルであったが,
2003年には50%の学生がこのレベルに達していた.
e-learningシステム教育において教材のデジタル化
は必須であり、それを学生にインターネットを用いて
提供することにより、自発的かつ創造的な学習を行う
ことを実現する。その利用には学生の情報リテラシの
向上が必要であり,それなしには十分な教育効果を上
げることはできない.今回調査した学生の情報リテラ
シレベルの経年的変化とその現状を見ると,十分とま
ではいえないがe-learningシステム導入に支障ないレ
ベルに達していることが示された.
インターネットを利用した自己学習システム
−CBT試験練習問題システムとしての試用−
P47
○小川和久、香川豊宏、湯浅賢治、廣藤卓雄*
福岡歯科大学 画像診断学分野 *総合歯科学分野
Self-learning system using the Internet
- Trial as exercise system of CBT Ogawa K, Kagawa T, Yuasa K, Hirofuji T
Section of Image Diagnostics, *Section of General Dentistry, Fukuoka Dental College
Ⅰ 目的
インターネットを利用した e-learning のシステム
は、これまで通信教育等、遠隔教育の手段として開発、
運用されてきた。これまでこのようなシステムは高額
なライセンス費用を必要としたが、今回演者らは、比
較的安価な費用で導入可能なシステムを採用し、試験
的に運用を開始している。演者らはこれを講義の補助
的教材として使用することを考えているが、今回、平
成17年から実施される共用試験CBTの練習問題シ
ステムとして利用できないかどうかを検討した。
Ⅱ 方法
今回、使用したe-learningシステムは、ウエブクラ
ス社の「WebClass」である。Webベースで作成された
教材、試験問題がネットを介して閲覧できるシステム
で、LANに接続されたWindows、Macintoshいずれのコ
ンピュータからもアクセス可能である。
今回、練習問題はWordを用いて作成後、WebClassに
取り込んだ。
Ⅲ 結果と考察
汎用のe-learningシステムWebClassを共用試験CBT
の練習問題システムとして使用した。その結果、
1)画像付きの問題作成が容易である。
2)テスト形式、選択枝数変更等、柔軟に選択できる。
3)コンピュータ画面での模擬試験ができる。
また、問題点としては、
1)画面構成が本番の試験画面と違う。
2)思わずブラウザを閉じると試験がやり直しになる。
3)学生の多数同時アクセス時のパフォーマンス低下。
今後の課題としては、学内で学生が自由に使用でき
る端末の整備と、現在はアクセスを学内からのみに制
限しているが、自宅からのアクセスも可能にすること
が急務である。
Webアニメーションを使ったインタラクティブe-Learning
システムの開発
P48
○香川豊宏、小川和久、和田忠子、湯浅賢治
福岡歯科大学/診断全身管理学講座/画像診断学分野
Development of interactive e-Learning system using Web-animation.
Kagawa T,Ogawa K,Wada T,Yuassa K
Fukuoka Dental College/ Dept. Diagnostics & General Care/Sect. Image Diagnostics
Ⅰ 目的:日本のインターネットは、人口のほぼ半数
に普及している。今後も普及は伸び、05年度には1
億人を突破すると予測されている。学生のネット利用
率も高く、インターネットを教育に取り込む施設も増
加している。そこで今回我々は、インターネット技術
を使用したインタラクティブな教育システムを構築し
たのでその概要を報告する。
Ⅱ 方法:システムはインターネット上から閲覧でき
るようにHTMLで構築し、学習用コンテンツは学生
に興味を持たせ、かつイメージがつかみ易いようにF
LASHにてアニメーション化した。また著作権を考
慮し、イラストや説明文は演者らのオリジナルなもの
に限定した。なお、サイト作成の為に使用した主なソ
フトウェアは次のとおりである。Adobe Illustrator
CS、Macromedia Dreamweaver MX 2004、 Fireworks M
X 2004 、Flash MX 2004。コンテンツの種類は当大学
Ⅲ 結果と考察:今回のシステムに取り入れたコンテ
ンツは放射線の発生と基本、二等分法、偏心投影、パ
ノラマ断層撮影、コンピュータ断層撮影である。シス
テムは当講座の学生実習室にある8台のApple社製iMA
Cにイントラネットで公開した。これを当科の臨床実習
生に使用してもらい、アンケートを取ったところ、非
常に好評で今後も自宅などの学外で使用したいとの意
見が多数であった。そのため、テストケースとして演
者がプライベートでレンタルしたサーバーにこのコン
テンツを公開している。
http://members.jcom.home.ne.jp/radiology/
マルチメディアを活用した歯周治療学基礎実習
P49
○ 鈴木丈一郎、長野孝俊、湯浅茂平、金指幹元、柳澤 隆、五味一博、新井 高
鶴見大学歯学部第二歯科保存学教室
The Application of Multi-media to the Basic Practice for Periodontics.
○Suzuki J, Nagano T, Yuasa M, Kanazashi M, Yanagisawa T, Gomi K and Arai T.
Dept. of Endodontics & Periodontics. Tsurumi Univ. School of Dental Medicine.
Ⅰ目的:歯周治療は生体の反応を見ながら行う必要が
あり、本学では基礎実習より臨床実習にウエイトをお
いて歯周治療教育を行おうとする傾向が強かった。し
かし、臨床実習での患者数の減少や、患者に施術する
前の基本手技を高める必要もあり基礎実習における教
育の重要性が高まってきた。そこで基礎実習の時間、
実習書、実習内容、実習方法、評価方法を大幅に改定
し、平成15年度の歯周治療学基礎実習より実施し一
定の効果をあげたので報告する。Ⅱ方法:実習時間は
これまで1コマ90分が、2コマで5から6回であっ
たのが、4コマで7回に増加。実習書は4∼6年生ま
での使用に耐える内容をもつ画像を多用したフルカ
ラー印刷のものを新たに作成した。実習内容は歯周治
療の流れに沿った、診査、診断、治療計画の立案、歯
周初期治療、歯周外科処置、メインテナンスまでを網
羅し各治療ステップの順番に従って行った。実習は
AV施設を活用し、学生は実習机に座ったままでプラ
ズマ液晶モニターを用いたパワーポイントによるデ
モおよび全ての実習内容をビデオに収めたDVDを流す
ことにより行った。また、各班でのライターデモも
随時行い、デモで流した全ての映像資料等は各班に
備え付けのノートパソコンにより、各班のモニター
でいつでも見ることが可能とした。評価方法は実習
開始時にプレテスト、各実習開始時にショートテス
トと終了時に口答試問を行った。全実習終了時にポ
ストテスト、実習アンケートを行い、OSCEタイプの
試験で最終実習評価を行った。プレテスト、ポスト
テストの結果をウィルコクソン符号付順位和検定、
アンケート結果をロジスティック回帰分析を用いて
統計処理を行った。Ⅲ結果と考察:統計処理の結
果、プレーポストテスト間にp<0.001で有意差が認
められ、アンケートからは若干の知見が得られたの
で報告する。
本学2003年度4年次学生のIT能力
年度開始時と終了時の比較
P50
○瑞森崇弘,山田真一,矢谷博文
大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座
IT skills of our 4th year undergratuate students in the academic year 2003
Comparison between before and after the one-year course
Mizumori T, Yamada S, Yatani H
Osaka University Graduate School of Dentistry Division of Oromaxillofacial Regeneration
Ⅰ 目的
コンピュータをはじめとするIT機器を使いこなす
能力はコンピュータ・リテラシーと呼ばれ,今日では
日常的に必要な能力となっている.歯学部学生におい
ても,文献検索やプレゼンテーションを行う上で必要
になる.この際に,コンピュータを入手できない学生
と所有している学生との間でリテラシーに格差が生じ,
いわゆるデジタルデバイドが起きている可能性がある.
今回,本学2003年度4年次学生の1年間の講義実習
前後でIT能力を調査し,コンピュータ所有および試
験成績との相関を検討したので報告する.
Ⅱ 方法
本学2003年度4年次学生69名全員を調査対象とし,
講義実習開始時の4月と終了時の2月にIT能力とコ
ンピュータ所有の有無をアンケート調査した.それぞ
れの時点でのIT能力とコンピュータ所有との相関を
点相関係数φにより検討した.また,終了時のコンピ
ュータ所有およびIT能力と,歯冠補綴架工義歯学の
試験成績との相関を点双列相関係数rpb により検討し
た.統計学的有意水準は5%とした.
Ⅲ 結果と考察
IT能力としてワープロ,表計算,グラフ描記,プ
レゼンテーション,PDFファイル,ファイル添付,
情報検索,PubMed,セキュリティに関するリテラシー
のすべての項目で開始時にコンピュータ所有との有意
な相関を認めた(φ=0.262∼0.523).終了時ではワー
プロ,情報検索,PubMedで相関が有意でなくなった.
他の能力も相関係数が低くなっていたものが多かった
(φ=0.283∼0.425).試験成績との相関はPubMedのみ
有意であったが 0.240と低い値であった.
当講座で行ったPubMed講習を含むチュートリアル演
習がデジタルデバイド解消の一助になったと考える.