燃料電池自動車に関する調査報告書02

3-3 海外自動車メーカにおける開発状況
3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況
海外自動車メーカにおける FCV の開発状況等を整理したものを表 3-3-1∼表 3-3-5 に
示す。
表 3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 1)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ 燃料電池スタックは Ballard,燃料電池システムは Xcellsis が開発を担当。 Ballard,
Ford,
・ メタノール改質形 FCV や直接水素形 FC バスを開発,デモ運転実施。
・ 2000 年,メタノール改質形 FCV「Necar5」,「ジープコマンダー2」を MillenniumCell
発表。
・ 2001 年,日本で「Necar5」の公道走行試験を実施。約 1,300km 走行。
・ 2001 年 7 月,ドイツの配送業者 Hermes Versand Service 社と協同で,
直接水素形 FCV「Sprinter」の 2 年間のフィールドテストを行うと発表。
・ 2001 年 12 月,Millennium Cell 社の技術である,NaBH4 の水素貯蔵シ
ステムを使った「Town & Country Natrium」を発表。
・ 2002 年 10 月,高圧水素形 FCV の量販モデルである「F-Cell」(Ballard
製スタック)を発表(表 3-3-7)。2003 年から,欧州,米国,日本,シン
ガポールにおいて,合計 60 台を限定的に市場導入し,日常利用の実証を
行う予定。販売方法はリース方式。
・ 同時に高圧水素形 FC バス「CITARO」(Ballard 製スタック)を発表(表
3-3-6)。2003 年から,欧州 10 都市の交通事業者に合計 30 台を販売し,
通常の路線運転に導入するテストを行う予定。
・ 2003 年 3 月,「F-Cell」が日本で大臣認定を取得。JHFC プロジェクト
に参加し,公道走行実証試験を開始。
・ 市販用「F-Cell」の二次電池に,三洋電機製ニッケル水素電池を搭載。
・ FC バス「CITARO」をスペイン・マドリッド市に納入し商業運転を開始。
Daimler
・ 2003 年 6 月,米国の宅配業者に,HEV や FCV を提供すると発表。
(Daimler
Chrysler) ・ 2003 年 10 月,東京ガス,ブリヂストンとの間で,「F-Cell」の使用に関
するパートナーシップ契約を締結したと発表。2 社は,月額基本料 120 万
円を支払い,事業活動に使用する。同年 12 月に東京ガスに納入。
・ 2005 年 9 月から北京で開始される FC バス実証試験に「CITARO」3 台
の購入が 2004 年 4 月決定。
・ 2004 年 7 月,「F-Cell」をベルリンでドイツテレコムなどに納入。
・ 2004 年 7 月,シンガポールでスタートした SINERGY プロジェクトへ
F-Cell を提供。
・ 2004 年 9 月,オーストラリアのパースでスタートした STEP プロジェク
トへ FC バス「CITARO」を供試。
・ 2005 年 3 月,ジュネーブモーターショーで「F-Cell」より出力を向上
(100kW へ)し,航続距離も大幅に延長(400km)した 70MPa 高圧水
素形で二次電池として Li イオン電池を搭載した「B クラス F-Cell」を発
表・展示(表 3-3-8)。
・ 2005 年 3 月,愛知万博協会へ 2 台の「F-Cell」を貸与。
・ 2005 年 10 月,東京モーターショーで F600 HYGENIUS 発表(表 3-3-9)。
・ 2005 年 11 月,北京へ FC バス「CITARO」を納車。
・ 2006 年 2 月,ロサンゼルス空港に F-Cell 5 台を納車。
・ 2006 年 4 月,パトロールカータイプの F-Cell を発表。
・ 2007 年 1 月,消防指揮車両タイプの F-Cell を発表。
・ 2008 年 1 月,デトロイトモーターショーにて Li イオン 2 次電池と燃料電
Chrysler
池を搭載したハイブリッド・コンセプト「ecoVoyager」を発表(表 3-3-10)。
注)Daimler には DaimlerChrysler 以前の情報も含む。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2007
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-2 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 2)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ DOE/PNGV 計画で,50kW 直接水素形燃料電池の開発に参加。燃料電池 DaimlerChrysler,
Ballard,
は IFC 社が担当した。
・ 1999 年 12 月,燃料電池に関して,DaimlerChrysler,Ballard と提携, マツダ
共同で開発を進める。
・ 2000 年,高圧水素形 FCV「Focus FCV」を発表。
・ 2000 年,EVS-17 において高圧水素形 FCV 「P2000」を試乗車として提
供。
・ 2002 年 4 月,新型の高圧水素形 FCV「Focus FCV」(Ballard 製スタッ
ク)を発表(表 3-3-11)。試験的に 5 台を顧客に提供した。
・ 2003 年から 2004 年にかけて「Focus FCV」を販売していく予定。
・ カリフォルニア州サクラメント,フロリダ州オーランド,ミシガン州デト
Ford
ロイトの 3 都市で,30 台の水素燃料電池車を提供し,BP が水素再充填ス
テーションを建設し,テストを行う計画を 2004 年 4 月発表。
・ 2005 年 5 月からカナダのバンクーバーで開始される VFCVP プロジェク
トへ「Focus FCV」を 5 台供試。
・ 2006 年 12 月,ロサンゼルスモーターショーに水素燃料電池車 Explorer
を出展(表 3-3-12)。
・ 2007 年 1 月,ワシントンモーターショーでプラグインハイブリッド FCV,
「Ford Edge with HySeries Drive™」を公開(表 3-3-13)。
・ 2007 年 7 月,世界最速を目指した燃料電池車「Fusion Hydrogen 999」
(表 3-3-14)を開発したと発表。
・ DOE/PNGV 計画で,30 kW メタノール改質形燃料電池の開発に参加。燃 ExxonMobil,
料電池は Ballard 社が担当した。
BP,
・ 1997 年,メタノール改質形「Zafira」を発表。
ChevronTexco,
・ FCV 開発で,トヨタと共同研究実施。
Quantum,
・ 米国ではガソリン改質形 FCV,欧州では液体水素形 FCV を中心に開発。 Generalガソリン改質技術で Exxon,BP と共同研究。
Hydrogen,
・ 2000 年デトロイトモーターショーで「Precept」(水素吸蔵形)を発表。 スズキ,
・ 2000 年ジュネーブモーターショーで「Zafira(液体水素)」を発表。シ Hydrogenics,
ドニーオリンピックマラソン競技のペースカーに採用。北京で試乗会を開催。 Giner,
・ 2001 年 1 月,Clean Hydrocarbon Fuel を研究の主要な候補とすること ShellHydrogen
でトヨタと合意。
・ 2001 年 6 月,水素貯蔵技術で Quantum と提携。
・ 2001 年 6 月,水素インフラの構築に関わる分野で General Hydrogen と
提携。
・ 2001 年 8 月,ガソリン改質形 FCV「Chevrolet S-10」を発表。
・ 2001 年 10 月,スズキと燃料電池車を共同開発することで合意。
・ 2001 年フランクフルトモーターショーで,補助電源を必要としない液体
水素 FCV「HydroGen3」のプロトタイプ車を公開。
・ 2001 年 10 月,Hydrogenics(加)に資本参加,Giner(米)との提携関
係を拡大。
GM(オペル)
・ 2002 年 1 月,液体水素 FCV「HydroGen3」を発表(表 3-3-15)。
・ 2002 年デトロイトモーターショーでボディを選べるスケートボード形
FCV「AUTOnomy」を発表。
・ 2002 年 5 月,「Chevrolet S-10」がガソリン改質形としては世界で初め
てとなる試走に成功したと発表。
・ 2002 年 7 月,Quantum と共同で 70MPa の高圧水素タンクを開発。
・ 2002 年 8 月,運転操作を電子制御して車両に伝えるバイ・ワイヤー技術
を搭載した直接水素形 FCV「HY-wire」を発表。
・ 2002 年 12 月,国際宅配便大手の FedEx Express と共同で,2003 年 6
月から,日本の東京都内で「HydroGen3」を集配業務に使い,試験走行
を行うと発表。
・ 2003 年 2 月,「HydroGen3」シリーズのザフィーラ・ミニバンに 70MPa
の高圧水素タンクを搭載し,公道走行試験に成功したと発表。
・ 2003 年 3 月,「HydroGen3」が日本で大臣認定を取得し,JHFC プロジェ
クトに参加し,公道走行実証試験を開始。
・ 同年,燃料供給インフラ技術で Shell Hydrogen と提携。米国ワシントン
D.C.周辺で,FCV と燃料供給インフラの共同実証実験を 2003 年 10 月か
ら開始する予定。
・ 2003 年 4 月,FCV を BMW,オペルと共同で開発することを発表。2010
年までに FCV の販売を目指す。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2007
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-3 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 3)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ 2003 年 5 月,米国・ワシントン DC で FCV の実証運転プログラムを開
始。2 年間実施し,米国議会関係者や環境保護団体関係者などを対象に,
最高 1 万回の試乗機会を提供する方針。
・ 2003 年 7 月,東京都内で「HydroGen3」による集配業務を開始。
・ 2003 年 10 月, 2010 年に米国,日本,欧州,中国の 4 地域で FCV の本
格的な実用車の販売を始め,利益を確保した上で,その後 10 年間に 100
万台を販売する計画を明らかにした。
・ 2004 年 6 月,アメリカの GM と郵政公社は,郵便配達車両に GM 製 FCV
「Hydrogen3」を導入することで合意。9 月からワシントン DC 周辺の配
達作業を始める。
・ 2004 年 8 月,GM とスズキが開発している FCV の 70MPa 圧縮水素貯蔵
システムについて,日本の高圧ガス保安協会の認可を得たと発表した。04
年内にも公道実証運転を開始する。この 70MPa 水素ガス貯蔵システムは,
アメリカの Quantum 社が開発,住友商事がスズキに納入した。
・ 2005 年 1 月のデトロイトモーターショーにて最新のコンセプトカー
「Sequel」を発表展示。70MPa 高圧水素形で前後 3 モータを有し 73kW
の FC スタックと Li イオン電池とのハイブリッド FCV。航続距離は
480km。(表 3-3-16)
・ 2005 年 2 月,FCV のリース販売を 2007 年までに現在の 5 倍になる 40
台に引き上げる計画を発表した。
GM(オペル) ・ 2005 年 6 月,スウェーデンの家具販売会社 IKEA と共同で,ベルリンに
おいて HydrogGen3 の実用性テストを実施。
(つづき)
・ 2005 年 4 月,アメリカ国防総省と共同で FC ピックアップトラックを開
発,米軍に非戦闘用として1台を納車。
・ 2005 年 11 月,GM 大宇が韓国で HydroGen3 の実証プロジェクトを立ち
上げることを発表。
・ 2006 年 9 月,第 4 世代燃料電池推進システムを搭載した「Equinox」(表
3-3-17)の実用化に向けて,顧客からの情報を収集するため,2007 年秋
に 100 台以上を消費者にリースすると発表。
・ 「Equinox」を米国陸軍に納車。
・ 2006 年 12 月,50 台以上の Equinox を 2007 年はじめにロサンゼルス地
域で走行開始すると発表。
・ 2007 年 1 月,デトロイトモーターショーで E-Flex システムを搭載した
プラグインハイブリッド車「VOLT」を発表。同車の内燃機関の代わりに
FC 搭載の可能性を発表。
・ 2007 年 4 月,上海オートショーで 2 代目 E-Flex システム(水素燃料電
池システム)を搭載したプラグイン燃料電池車 Chevrolet Volt を公開。
・ 2008 年 1 月,「The Cadillac Provoq fuel cell concept」を発表(表
3-3-18)。
・ 2008 年 3 月,同月下旬からロサンゼルス空港およびニューヨーク空港を
利用する英ヴァージン航空のアッパークラス対象の無料送迎サービスと
して,「Equinox」を 3 台ずつ走行させると発表。
CEA,
・ 1996 年から欧州燃料電池開発プロジェクトに参加。
・ 2001 年 7 月,Millennium Cell 社の水素貯蔵システムの供給を受け,共 CNES
同開発の可能性あり。
・ 2001 年 12 月,仏原子力庁(CEA),国立科学研究所(CNRS)と自動
プジョー/
車向け燃料電池の開発で提携。
シトロエン
・ 2004 年 9 月のパリモーターショーで FCV「Quark」を展示発表。
・ 2006 年 1 月,仏原子力庁(CEA)と共同で小型 FC を試作したと発表。
最大出力 80kW
(出力密度 1.5kW/L 以上),エネルギー変換効率 40∼50%。
商業化は 10 年後。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2007
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-4 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 4)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ フィーバープロジェクトへの参画。
日産
・ 液体水素を燃料とした燃料電池車の開発。ニッケル水素電池を補助電源と
して採用。
・ 日産とは,2002 年 2 月に UTC Fuel Cells とともに燃料電池スタックの
基礎技術部分を共同開発し,改質器などの部分についてはそれぞれが独自
ルノー
に手がけることで合意。
・ 2004 年,Nuvera-FC と共同開発した 70kW 改質器などのコンポーネント
を発表。
・ 2004 年秋から ADME 主導の「Respire Project」に参画。ルノーはガソ
リン改質器を担当。2009 年以降車両開発を計画。
Johnson
・ Capri プロジェクトを機会に燃料電池の研究開発を開始。
・ メタノール改質形燃料電池車の開発。Johnson Matthey 社製メタノール Matthey
改質器を採用。
・ 2000 年 11 月,液体水素形 FCV「Bora HyMotion」で CaFCP に参加。
・ 2002 年 2 月,純水素方式の「HY.Power」を試作(PSI 製 FC スタック)。
・ 2004 年 9 月,CaFCP に新たに 35MPa の圧縮水素形 FCV「Touran
HyMotion」を投入。バラードの 63kWFC スタック,シーメンスのモータ,
パナソニック EV エナジーの Ni-MH 電池を組み合わせたもので,航続距
離は 160km。(表 3-3-19)
Volkswagen/
・ 2006 年 11 月現在,120℃の高温膜(HT-VW)を開発中。商品化は数年
Volvo
先であるとの見通し。
・ 2006 年 6 月,HyMotion を CEP に導入。今後 2 年間で 2~3 台追加提供
の予定。
・ 今後開発する次世代 HyMotion では,自社製スタックを搭載する予定。
・ ドイツ Isenbüttel にて,ソーラーエネルギーによる水素供給実験設備を
開発,デモンストレーションを行っている。
・ 2007 年 11 月,ロサンゼルスモーターショーでプラグインハイブリッド
燃料電池車「space up! blue」を発表(表 3-3-20)。
・ アルカリ形燃料電池を利用した燃料電池タクシー(出力 5 kW)を実走行 Shell
Zevco
(1998 年,ロンドン)。
・ 水素エンジン自動車の補機用電源(APU)として燃料電池の採用を検討。 UTC-FC,
Delphi
・ Delphi と SOFC を共同開発。
・ 1970 年代より水素内燃機関自動車の開発を進めてきており,2006 年 11
BMW
月現在,第 7 世代のバイフュエル(水素-ガソリン)内燃自動車「Hydrogen7」
を開発中。今後数年間で欧州向けに 75 台を製造予定。
・ 米国のバスメーカ Thor Industries.Inc.は,2001 年の中頃に世界に先がけ UTC-FC,
て北米における中型サイズの FC ハイブリッドバス「サンダーパワー」を ISE Reserch
Thor
商品化すると発表。FC は UTC-FC が,ハイブリッド技術は ISE Reserch
社が担当。
・ 2001 年 2 月,イタリア環境省との共同プロジェクトとして,2 人乗りの Nuvera FC,
UTC-FC
高圧水素形 FCV「SEICENTO-FCEV」を発表。
・ FIAT の孫会社である IRISBUS と共同で 2 種類の FC バス
「CITYCLASS
HS-FC BUS」(表 3-3-21),「CRISTALIS HS-FC BUS」を開発。2003
年 か ら 行 わ れ る UTC-FC 製 FC スタ ック搭 載 FC バス の実 証試験
Fiat
CITYCELL Demo プロジェクトに導入される。
・ 2004 年 10 月,NuveraFC 製の 80kWFC スタックを搭載した New Panda
Hydrogen を開発(表 3-3-22)。
・ ZeroRegio プロジェクトに「Panda Hydrogen」を 3 台提供予定。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2007
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-5 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 5)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ 2000 年 4 月,UTC-FC 製の 75kWFC スタックを搭載した「Santa Fe UTC-FC,
Quantum
FCEV」を発表。
・ 2001 年 6 月,Quantum 製 350 気圧の高圧水素タンクを搭載した燃料電
池車がサクラメント−サンフランシスコ間を走行。
・ 2001 年 10 月,パナソニック EV エナジーの Ni-MH 電池と組み合わせハ
イブリッド化した「Santa Fe FCHV」を発表。
・ 2004 年 3 月,ジュネーブオートショーで二次電池としてリチウムポリ
現代・起亜自動
マー電池と組み合わせた「Tucson FCEV」を発表展示し,4 月には DOE
車
による FCV 実証評価プロジェクトに参加することを表明(表 3-3-23)。
・ 2004 年 9 月,パリモーターショーで新型 SUV「Sportage」燃料電池車を
発表。
・ 2006 年 9 月現在,Tucson FCV を AC-Transit に 7 台提供している。5
カ年,12 台の実証を行う計画である。
・ 2007 年 9 月,フランクフルトモーターショーで燃料電池コンセプトカー
「i-Blue FCEV」(表 3-3-24)を出展。
・ 2003 年 1 月,中国で初めて開発した FCV「超越 1 号」の試運転が上海の 上海汽車,
同済大学構内で行われた。これは,上海汽車,同済大学など十数の企業, 武漢理工大学,
研究機関が共同開発したもの。2008 年北京オリンピック,2010 年上海万 同済大学,
清華大学,
博に向け,実用化を目指している。
・ 2003 年 10 月,中国最大の自動車メーカ,第 1 汽車集団公司は,FCV に 上海交通大学,
大連化学物理研
関してトヨタ自動車の技術を導入する考えを明らかにした。
・ 上海市工業博覧会に「超越 2 号」を出展。2005 年から量産に入る見通し。 究所 等
・ 東風汽車と武漢理工大学が共同で開発中の「楚天一号」が完成。走行テス
トで 100km/h 以上を達成。
・ 2004 年 4 月,D/C の「CITARO」FC バス 3 台が,北京の FCB デモプロ
中国
ジェクトとして落札。2005 年 9 月から導入され,EV863 プロジェクトの
一環として実証試験が開始される予定。
・ 2005 年秋同済大学より「超越(start)3」を発表。
・ 2005 年 12 月,清華大学にて自国製 FCCityBus を 5 台製造し,走行試験
開始。
・ 2006 年 12 月,上海郊外にある同済大学のキャンパスで中国製 FCV「超
越−栄威」のお披露目が行われた。
・ 2007 年 9 月,上海神力科技有限公司が開発した新世代都市型 FC バス「神
力1号」が上海で公開。
・ 2007 年 9 月,Shell の技術支援のもと安亭地区に水素ステーションが完
成,10 月オープン。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2007
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
−109−
表 3-3-6 DaimlerChrysler CITARO (2002 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
乗車定員
最高速度
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
価格
全長約 12 m
70 人
80 km/h
200 km
200 kW 以上
固体高分子形(Ballard 製 Mark902)
250 kW
圧縮水素(35MPa)
120 万ドル(メンテナンス費用込み)
表 3-3-7 DaimlerChrysler F-Cell (2002 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
最大駆動トルク
燃料電池
燃料電池出力
燃料
水素消費量
出力補助装置
価格
3.785×1.720×1.590
140 km/h
150 km
誘導式
65 kW
210 Nm
固体高分子形(Ballard 製 Mark902)
68.5 kW
圧縮水素(35MPa)
4.2L/100km
(ディーゼル換算:23.8km/L)
ニッケル水素電池
2003 年 12 月からリース販売
−110−
表 3-3-8 DaimlerChrysler B-Class F-Cell (2005 年 3 月発表)
外
観
乗車定員
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料
出力補助装置
5人
400 km
100 kW
固体高分子形(Ballard 製)
圧縮水素(70MPa)
Li イオン電池(20kW)
表 3-3-9 DaimlerChrysler F600 HYgenius (2005 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
航続距離
電動機最大出力
最大駆動トルク
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
4.348×2.017×1.700
174 km/h
400km 以上
60kW/85kW
210 Nm
固体高分子形(D/C 製)
80kW
圧縮水素(70MPa,4kg)
Li イオン電池(30kW/55kW)
−111−
表 3-3-10 Chrysler ecoVoyager (2008 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
航続距離
電動機最大出力
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
4.856×1.915×1.600
1,247kg
300mile(FC)+40mile(電池)
200kW
45kW
圧縮水素(70MPa)
Li イオン電池(16kWh)
表 3-3-11 Ford Focus FCV (2002 年 4 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
最高速度
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
(全長)4.338×(全高)1.758
1,600 kg
128 km/h
260-320 km
65 kW
固体高分子形(Ballard 製 Mark902)
−
圧縮水素(35MPa)
ニッケル水素電池(三洋電機製)
−112−
表 3-3-12 Ford Explorer(2006 年 12 月発表)
外
観
2,560kg
6人
560km
130kW(65kW×2)
60kW
圧縮水素
350mpg M-H
50kW
車両重量
定員
航続距離
電動機最大出力
燃料電池出力
燃料
燃費
出力補助装置
表 3-3-13 Ford Edge with HySeries Drive™(2007 年 1 月公開)
外
観
最高速度
航続距離
燃料電池出力
燃料
燃費
方式
出力補助装置
136km/h
360km(電池のみで 40km)
35kW(Ballard 製)
圧縮水素(35MPa),4.5kg
41mpg(ガソリン等価)
プラグインハイブリッド FCV(シリーズ)
リチウムイオン電池,130kW,336V
−113−
表 3-3-14 Ford FUSION HYDROGEN 999 (2007 年 8 月発表)
外
観
207mph
Ballard 製
350kW
圧縮水素
最高速度
燃料電池
燃料電池出力
燃料
表 3-3-15 GM HydroGen3 (2002 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
乗車定員
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
最大駆動トルク
燃料電池
燃料電池出力
燃料
4.315×1.750×1.685
1,750 kg
5名
160 km/h
400 km
三相非同期モータ
60 kW
215 Nm
固体高分子形
94kW(定格)/129kW(最高)
液体水素(68 リットル・4.6kg)
4. Hydrogen3 として,液体水素形以外に 30MPa および 70MPa の高圧水素形がある。
−114−
表 3-3-16 GM SEQUEL (2005 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
4.994×1.996×1.697
2,165kg
480km
交流誘導式
(前)60kW,(後)25kW×2
固体高分子形(GM 製)
73kW
圧縮水素(70MPa)8kg
Li イオン電池(SAFT 製)65kW
表 3-3-17 GM Equinox Fuel Cell(2006 年発表)
外
観
4.796×1.814×1.760
2,010kg
4人
160km/h
320km
交流誘導式
94kW
固体高分子形(GM 製)
93kW
圧縮水素(70MPa)
ニッケル水素電池 35kW
全長×全幅×全高(m)
車両重量
定員
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
−115−
表 3-3-18 GM CADILLAC PROVOQ FUEL CELL(2008 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
航続距離
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
方式
4.580×1.850×1.703
160km/h
260mile(FC)+20mile(電池)
第 5 世代
出力 88kW
圧縮水素(70MPa,6kg)
リチウムイオン電池,9kWh
プラグインハイブリッド FCV(シリーズ)
表 3-3-19 VW Touran HyMotion (2006 年モデル)
外
観
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
140km/h
160km
ASM
80kW
固体高分子形(Ballard 製)
85kW
圧縮水素(35MPa),2.6kg
高出力 Ni-MH
−116−
表 3-3-20 VW
外
space up! Blue (2007 年 11 月発表)
観
全長×全幅×全高(m)
重量
最高速度
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料
方式
出力補助装置
3.680×1.630×1.570
1,090kg
121km/h
155mile(FC)+65mile(電池)
45kW
高温型燃料電池
圧縮水素
プラグインハイブリッド FCV
Li-ion 電池(プラグイン可能)
表 3-3-21 FIAT・IRISBUS CITYCLASS HS-FC BUS
外
観
全長(m)
乗車定員
最高速度
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
12
73 名
60 km/h
固体高分子形(UTC-FC 製)
75kW
圧縮水素(20/35MPa)
鉛酸電池
−117−
表 3-3-22 FIAT Panda Hydrogen(2005 年モデル)
外
観
4名
1,390kg
150km/h 以上
220km(Urban Cycle)
3 相 AC モータ 50 kW
Nuvera 製 PEFC 60kW
圧縮水素(35MPa),68L
なし
乗車定員
車両重量
最高速度
航続距離
電動機
燃料電池システム
燃料
出力補助装置
表 3-3-23 HYUNDAI TucsonFCEV (2004 年 3 月発表)
外
観
最高速度
航続距離
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
153km/h
337km
固体高分子形(UTC-FC 製)
80kW
圧縮水素(35MPa)152L
Li ポリマー電池(LG ケミカル製)
−118−
表 3-3-24 HYUNDAI i-Blue (2007 年 9 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
電動機最大出力
航続距離
燃料電池出力
補助電源
燃料
4.850×1.850×1.600
165km/h
(前)100kW,(後)20kW×2
600km
100kW
スーパーキャパシタ,450V,100kW,13wh/L
圧縮水素(70MPa,115 リットル)
表 3-3-25 Van Hool A330 Fuel Cell (2005 年モデル)
外
観
全長×全幅×全高(m)
定員
航続距離
モータ
駆動システム
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
12.192×2.591×3.480
座席数 30,定員 48 名
400∼480km
Siemens ELFA Drive;
AC induction motor(85kW)×2
ISE ThunderVolt® hybrid drive system
UTC Power PureMotionTM120
固体高分子形(UTC-FC 製)
120kW
圧縮水素(5000psi,50kg)
SCI 製 typeⅢタンク
ZEBRA®電池
−119−
3-3-2 Ballard Power Systems 社を中心とした提携関係
カナダの Ballard Power Systems 社は,1997 年 12 月に DaimlerChrysler 社(当時
は Daimler Benz),Ford 社と燃料電池開発連合を結成した。2008 年 1 月になって,
DaimlerAG,Ford 社,Ballard Power Systems 社は,合弁によってカナダのバンクー
バーに Automotive Fuel Cell Cooperation(AFCC)を設立した。AFCC では自動車用
FC システムの研究開発を行う。なお,製造は Ballard 社に委託する見込みである。出
資比率は DaimlerAG が 50.1%,Ford が 30%,Ballard Power Systems が 19.9%であ
る。Ballard 社における自動車用 FC の研究開発グループは AFCC に異動し,バラード
社はこれによって定置用等の自動車以外の FC 用途に特化することになる。
3-3-3 欧米 PEFC 関連メーカの事業の展開状況
表 3-3-26 に JARI 等が過年度に実施した海外調査から推定した欧米 PEFC メーカの各
コンポーネント別の製品化・開発状況を整理する。
表 3-3-26 燃料電池事業(PEFC セル関係)の展開(2008 年 1 月現在,推定を含む)
MEA+
MEA+
スタック
セパレータ セパレータ+
ガスケット
高分子膜
触媒
GDL
MEA
ガスケット
セパレータ
DuPont
製品化
研究中
研究中
製品化
研究中
製品化
研究中
研究中
3M
製品化
研究中
研究中
製品化
研究中
研究中
研究中
研究中
BASF(含. PEMEAS,
Engelhard)
製品化
製品化
Gore
製品化
JohnsonMatthey
研究中
Umicore
製品化
研究中
製品化
研究中
製品化
製品化
SGL-Carbon
Ballard Power
Systems(定置用)
製品化
研究中
製品化
研究中
AFCC(自動車用)
研究中
UTC Fuel Cells
研究中
Nuvera
Fuel Cells
研究中
研究中
製品化
研究中
製品化
製品化
研究中
研究中
製品化
製品化
Siemens
製品化
研究中
研究中
製品化
研究中
研究中
研究中
研究中
研究中
研究中
研究中
研究中
製品化
研究中
製品化
研究中
注:「製品化」とは,規模を問わず,専用ラインを用いて製造し,少量でも商品として販売している段階を
示す。「研究中」とは,基礎研究段階から,サンプル出荷の段階までを示す。
−120−
3-4 わが国における燃料電池車開発促進に向けた取組み状況
3-4-1 わが国政府における取組み状況
(1) ニューサンシャイン計画注1)
石油代替エネルギーの導入の一環として,新エネルギーの実用化にむけた技術開発が
進められてきた。通商産業省工業技術院(現在の産業総合研究所)では,新エネルギー
に関する研究開発の推進を目的として,1974 年に太陽光発電等の新エネルギー技術の
研究開発を行う「サンシャイン計画」を,1978 年に省エネルギー技術の研究開発を進
める「ムーンライト計画」,1989 年に地球環境保全技術に係る研究開発制度をスター
トさせた。これらの計画により研究が,産官学の連携のもとで進められ,基本技術の確
立やその実用化,関連分野への技術的波及等の成果を着実に実らせている。しかし,新
エネルギー技術,省エネルギー技術,地球環境保全のそれぞれの技術には重なる部分も
多いため,一層連係して進めていくため,1993 年に,「ニューサンシャイン計画」を
スタートさせ,中,長期的に顕著な効果が期待できる革新的技術として太陽光発電や燃
料電池などが重点的に研究されてきた。
(2) 水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)計画注2)
WE-NET(World Energy Network)計画は,ニューサンシャイン計画の一環として,
1993 年より NEDO のプロジェクトとして実施された。WE-NET 計画は,再生可能エネ
ルギーを利用して水素を製造し,これをエネルギー消費地へ輸送し,この水素をエネル
ギーとして利用するという世界規模のクリーンエネルギーネットワークを構築すること
を最終目標とした。
WE-NET 計画は,1993 年度から 2002 年度まで続けられ,2003 年度からは新たなプ
ロジェクトである「水素安全利用等基盤技術開発」(後述)にとってかわることになり,
過去 10 年間にわたる成果は,この新しいプロジェクトに反映されていくこととなった。
(3) 水素安全利用等基盤技術開発
わが国のエネルギー供給の安定化・効率化,地球温暖化問題(CO2)・地域環境問題
(NOx,PM 等)の解決,新規産業・雇用の創出,水素エネルギー社会の実現等に資す
るため,固体高分子形燃料電池の早期の実用化・普及を目指す「固体高分子形燃料電池
/水素エネルギー利用プログラム」の一環として,2003 年度から 2007 年度の 5 年間
(2004 年度末までを前期,その後を後期と設定)実施される。2003 年度の事業規模は
43 億円で,2004 年度は 64 億円,2005 年度は 39 億円,2006 年度は 29 億円であった。
なお,2006 年度の研究開発分野は以下のとおりである。
注1)
新エネルギーガイドブック概論編新エネルギー・産業技術総合開発機構(著作権者:新エネルギー・
産業技術総合開発機構)
注2)
WE-NET ホームページより(http://www.enaa.or.jp/WE-NET/contents_j.html)
−121−
① 車両関連機器に関する研究開発(燃料電池自動車用機器の研究開発)
② 水素インフラに関する研究開発(70MPa 級の圧縮水素や液体水素に係わる要素
技術開発等)
③ 水素に関する共通基盤技術開発(水素利用に関する基盤横断的研究開発)
A.共通基盤技術に係わる実用化技術
B.共通基盤技術に係わる国際共同研究及び支援研究
(4) ミレニアム・プロジェクトにおける燃料電池関連事業
小渕元首相の発案により,新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え,人類
の直面する課題に応え,新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこととなった。
これを新しい千年紀のプロジェクト,すなわち「ミレニアム・プロジェクト」という。
「ミレニアム・プロジェクト」は,今後の日本の経済社会にとって重要性や緊要性の高
い情報化,高齢化,環境対応の三つの分野について,技術革新を中心とした産学官共同
プロジェクトである。このプロジェクト全体の予算は 1,206 億円注)であった。FC 関連
プロジェクトの大きな目標は,「2005 年までに,燃料電池自動車,住宅等における燃料
電池コージェネレーションシステムの導入を図る」というものであった。表 3-4-1 にス
ケジュールを整理する。燃料電池に関しては,平成 16 年度で終了となった。
表 3-4-1 ミレニアム・プロジェクトの「燃料電池」の年次計画
平成12年度
(2000年度)
水素製造・貯蔵の
技術開発・検証
燃料電池の
試験研究
燃料電池の
評価手法の確立
燃料電池関連
基準の整備
注)
技術開発
平成13年度
(2001年度)
平成14年度
(2002年度)
平成15年度
(2003年度)
平成16年度
(2004年度)
技術実証・データ収集
燃料優位性の比較
安全性・耐久性等の試験研究の実施と試験結果のフィードバック
評価手法確立のための調査・研究
安全性,耐久性等
評価手法の確立
基準整備のための調査,検討
基準整備
国際標準活動への参加・対応
国際標準の具体的提案
KYODO NEWS ONLINE(1999.12.19)より。
−122−
(5) 日米水素・燃料電池共同声明注1)
2004 年 1 月 8 日,水素・燃料電池に関する研究開発や規格・基準に係る日米間の協力
を強化するため,経済産業省および米国エネルギー省の間で,日米間の協力取り決めの
締結に向けた交渉に着手することに合意し,坂本経済産業省副大臣とエイブラハム DOE
長官は,日米水素・燃料電池共同声明に署名した。
この日米水素・燃料電池共同声明は,以下に示すような内容を意図している。
① 燃料電池並びに水素の生産,貯蔵および輸送の技術分野において相互に決定した
問題に関するワークショップおよびセミナーを開催し,参加するために,認識を
ともにした政府関係者および民間を含む専門家を結集すること。
② 専門家の交流を行い,水素燃料インフラを整備するための共通の規格,基準およ
び規制ならびに要求に対する提言を含む,燃料電池および水素分野における現在
の政策,技術プログラムおよび開発に関する情報を供給すること。
③ 相互の同意により決定される追加的活動に参加すること。
(6) 経済産業省の燃料電池実用化戦略研究会
1999 年 12 月,経済産業省は,燃料電池の導入の意義を明確化するとともに,その実
用化に向けた課題の抽出と課題解決の方向性を探るため,資源エネルギー庁長官の私的
研究会として産学官から構成される「燃料電池実用化戦略研究会」(座長:茅陽一 現東
京大学名誉教授)を設置した。その後 9 回にわたり国内外の企業,関係団体,外国政府
等による報告と,これを踏まえた議論,検討が行われ,2001 年 1 月 22 日に開催された
第 9 回研究会において報告が取りまとめられた注2)。
2004 年 3 月 11 日に開催された第 12 回研究会では,燃料電池に関する取組みの現状
の報告があり,とくに定置用燃料電池に関しては,燃料電池自動車と比べ認知度が低い
という現状が報告され,実証試験のあり方等について意見が出された。また,水素エネ
ルギー社会の将来像(表 3-4-2,表 3-4-3),水素社会に向けた普及のシナリオ(表 3-4-4)
が提案され,2005 年以降の第 2 フェーズに向けた考え方等が議論された。提案された水
素エネルギー社会の将来像,水素社会に向けた普及のシナリオを以下に示す。
注1)
注2)
第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料より抜粋。
報告書の概要については,2006 年度調査報告書,もしくは経済産業省「燃料電池実用化戦略研究会
の報告について」(平成 13 年 1 月 22 日)を参照。
−123−
表 3-4-2 燃料電池自動車に関する将来イメージ
フェーズ
①2005∼2010
(導入期)
将来イメージ
・ 水素インフラの整備には相当な資金と時間を要し,当面は現実的には制約がある
ことから燃料電池自動車は,大都市圏,および工業地域等で副生水素が比較的近
くで得られるエリアにおいて導入が進む。
・ この段階では都市内フリート走行車に導入が進展すると考えられ,路線バス,公
用車等を中心に,2010 年において 5 万台の燃料電池自動車の導入を期待する。
・ 想定される水素需要量は約 3.6 万 t(約 4 億 Nm3)であり,必要な水素ステーショ
ンは,500 箇所程度(ガソリンスタンドの約 1%)と見込まれる。
・ 水素ステーションで供給する水素の燃料源については,基本的に各種燃料のコス
トや燃料補給の難易度等を比較衡量して事業者が判断するものであるが,この段
階では,水素の需要が限定的であるため,オフサイト型では副生水素のローリー
輸送による供給,オンサイト型では化石燃料改質が中心になると想定される。
②2010∼2020 ・ 水素インフラのエリアが拡大し,全国の主要都市と,その周辺地域に普及する。
(普及期)
・ 全国の路線バスと公用車に加え,業務用乗用車等に導入が進み,2020 年において
は 500 万台の燃料電池自動車の導入が期待される。
・ 想定される水素需要量は約 58 万 t(約 65 億 Nm3)であり,必要な水素ステーショ
ンは,3,500 箇所程度(ガソリンスタンドの約 7%)と見込まれる。
・ 水素供給の中心は,引き続き副生水素および化石燃料改質と想定される。
・ 水素需要量が増加するため,副生水素の供給源に近くかつ大規模なステーション
では,パイプラインによる水素の供給が始まる。
・ 効率的な水素貯蔵技術が確立されれば,ローリー輸送によるオフサイト型水素ス
テーションが主流となる可能性もある。
・ 水素ステーションから近くのエリアへの直接水素供給や,ステーションに定置用
燃料電池を設置し,電気や熱を供給するようなモデルも想定される。
③2020∼2030 ・ 水素インフラが全国に拡大し,燃料電池自動車も全国に普及する。燃料電池自動
(本格普及期)
車の生産拡大とコスト低下が相まって,自立的な導入が進展する。
・ 自家用乗用車にも導入が進展し,2030 年において導入が期待される燃料電池自動
車は,1,500 万台と見込まれる。
・ 想定される水素需要量は約 151 万 t(約 170 億 Nm3)であり,必要な水素ステー
ションは,8,500 箇所程度(ガソリンスタンドの約 17%)。
・ 水素需要量が副生水素による供給可能量を上回ることとなるため,オンサイトの
化石燃料改質に加え,再生可能エネルギーによる電気を用いた水電解による水素
製造や,石炭ガス化ガスからの改質による水素製造も,現実的な製造方法の一つ
となる可能性がある。
・ 効率的な水素貯蔵材料(金属系,化学系,炭素系等)が実用化されれば,オフサ
イト水素が大規模集中システムで製造され,水素ステーションに効率的に水素が
輸送されるシステムが確立する。
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成
−124−
表 3-4-3 定置用燃料電池に関する将来イメージ
フェーズ
将来イメージ
①2005∼2010
(導入期)
・ 家庭用については,世帯人員や床面積の観点から,比較的熱需要が多いと想定
される世帯に 1kW の家庭用燃料電池の導入が進むと見込む。
・ また業務用については,既存技術である内燃機関のコージェネレーションでは
高い発電効率が得られなかった数 kW クラスの規模を中心に,燃料電池の導入
が進む。
・ 天然ガス,LPG,灯油等の既存のインフラを活用する形で,2010 年において 220
万 kW の定置用燃料電池の導入を期待する。
②2010∼2020
・ 生産量の増加,技術開発のさらなる進展により,定置用燃料電池の価格が低下
(普及期)
し,比較的熱需要の多いと想定される世帯の多くに 1kW クラスの燃料電池が導
入されると見込む。
・ また,高温形の燃料電池の性能も向上し,業務用を含む比較的大きな規模の需
要についても,燃料電池の導入進展が想定される。
・ 定置用燃料電池の普及率が高まることにより,集合住宅や,工業地域等の需要
家が密接している地域において,改質器を共有して水素を直接配管で供給する
システムや,改質器と燃料電池を共有し,各需要家に直接電気と温水を供給す
るようなシステムが実現することも想定される。
・ さらに,特定の地域においては,各家庭や事業所等に設置された燃料電池を相
互に連携制御し,熱電エネルギーの大半を域内で賄うシステム(マイクログリッ
ド)が実現する。
・ 2020 年において導入が期待される定置用燃料電池は 1,000 万 kW と見込まれる。
③2020∼2030
・ 2020 年までに導入された燃料電池は,引き続き運転を続けると想定する。
(本格普及期)
・ また,高温型燃料電池のコンバインドサイクルによる超高効率発電が実用化し
てくることが見込まれる。
・ 2030 年において導入が期待される定置用燃料電池は,1,250 万 kW と見込まれ
る。
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成
表 3-4-4 将来に向けた普及のシナリオ
燃料電池自動車
定置用燃料電池
2010 年
約 5 万台
約 210 万 kW
(地球温暖化大綱
では 220 万 kW)
2020 年
約 500 万台
2030 年
約 1,500 万台
約 1,000 万 kW
約 1,250 万 kW
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成
2005 年 4 月 19 日に開催された第 13 回燃料電池実用化戦略研究会においては,固体
高分子形燃料電池先端基盤研究センターの設立(後述)についての報告とともに,「定
置用燃料電池市場化戦略検討会報告書(2005 年 4 月 11 日)」についての報告が行われ
た。この報告書の中で,家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの本格的普及に
向けてはシステムコスト低減が課題であり,その中でも周辺機器(補機類)のコストダ
ウンが重要であるとし,国が取り組むべき課題として「燃料電池用の補機に必要とされ
るスペックの公表を行い,コストダウンにとって重要な課題である補機供給に新規企業
の参入を促すべき」という提言が行われた。
−125−
(7) 日本のエネルギー戦略
日本の様々なエネルギー戦略の関係を図 3-4-1 に整理する。
図 3-4-1 日本のエネルギー戦略一覧
資料:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
1) 新・国家エネルギー戦略
2006 年 5 月,エネルギーを取り巻く内外の環境変化に関する現状認識に基づき,エ
ネルギー安全保障を軸にわが国の新たな国家エネルギー戦略を再構築することが不可
欠であるとの認識から,経済産業省において「新・国家エネルギー戦略」が策定され
た。
戦略によって実現を目指す目標は以下の 3 点であり,表 3-4-5 に示すような具体的
取組みを行う。
① 国民に信頼されるエネルギー安全保障の確立
② エネルギー問題と環境問題の一体的解決による持続可能な成長基盤の確立
③ アジア・世界のエネルギー問題克服への積極的貢献
−126−
表 3-4-5 新・国家エネルギー戦略における具体的取組み目標
(1)世界最先端のエネルギー需給
構造の確立
①省エネルギーフロントラ
ンナー計画
②運輸エネルギーの次世代
化
③新エネルギーイノベー
ション計画
およそ 50%ある石油依存度を,2030 年までに 40%を
下回る水準とする。
2030 年までに更に 30%,エネルギー効率の改善を目
指す。
石油依存度を,2030 年までに 80%程度とすることを
目指す。
太陽光発電コストを 2030 年までに火力発電並みに。
バイオマスなどを活用した地産地消型取組みを支援し
地域エネルギー自給率を引き上げる。など。
④原子力立国計画
2030 年以降においても,発電電力量に占める比率を
30∼40%程度以上。
(2)資源外交,エネルギー環境協力の総合的強化
①総合資源確保戦略
石油自主開発比率を,2030 年までに,引取量ベースで
40%程度とする。
②アジアエネルギー・環境 省エネをはじめエネルギー協力を展開し,アジアとの
協力戦略
共生を目指す。
(3)緊急時対応の充実
(4)その他
資料:経済産業省「新・国家エネルギー戦略」を基に作成
運輸エネルギーの次世代化計画の具体的取組みを以下にまとめる。また,運輸エネ
ルギーの次世代化に向けた動向と課題を図 3-4-2 に示す。
エネルギー市場の変化に対し柔軟かつ強靱で,エネルギー消費効率の高い需給構造を,
運輸部門に確立するため,以下の課題に対し,並行して,効果的に取り組むこととする。
① 自動車燃費の着実な改善
ⅰ) 自動車の燃費改善を促す燃費基準の策定
ⅱ) レギュラーガソリンのオクタン価向上
② 燃料多様化に向けた環境整備
ⅰ) バイオマス由来燃料供給インフラの整備
ⅱ) ディーゼルシフトの推進
ⅲ)バイオマス由来燃料及び GTL の一層の活用のためのインフラ整備
③ バイオマス由来燃料,GTL 等新燃料の供給確保
ⅰ) バイオマス由来燃料の供給促進・経済性向上
ⅱ) 次世代燃料に関する技術開発促進
④ 電気・燃料電池自動車等の開発・普及促進
ⅰ) 電気・燃料電池自動車等の普及促進策
ⅱ) 「新世代自動車」向け電池に関する集中的な技術開発の実施
ⅲ)燃料電池自動車に関する技術開発の推進
−127−
※1 京都議定書目標達成計画において,2010 年度に,原油換算 21 万 Kl の ETBE を含め,全体として,原油換算
50 万 Kl のバイオマス由来燃料を導入することが目標とされている。
※2 HCCI(予混合圧縮着火燃焼)エンジンとはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの長所を併せ持ったエンジン。
NOx や粒子状物質の生成が少なく,熱効率の高いエンジンが実現できると期待されている。
図 3-4-2 運輸エネルギーの次世代化に向けた動向と課題
出典:経済産業省「新・国家エネルギー戦略」
2) 次世代自動車・燃料イニシアティブ
2007 年 5 月,経済産業省は,自動車関連の 2030 年までの展望や目標を示した「次
世代自動車・燃料イニシアティブ」をまとめた。これらの内容および目標は,以下の
ようになっている。
−128−
① 運輸部門の石油依存度を現在の 100%から 2030 年には 80%程度に引き下げる。
② バイオ燃料は,建築廃材や稲ワラなどを原料にする技術開発を進め,2015 年
までに製造コストを現状の 150 円/L 前後から 40 円/L に引き下げる。
③ IT を駆使した交通制御を強化し,都市部の平均速度を 2 倍に引き上げる。
④ FCV の本格普及を図るため,向こう 5 年間は年間 320 億円程度の研究開発を
継続,1 台数億円の現行価格を 2030 年までにガソリン車並みの 300 万円に下
げる。
⑤ 次世代バッテリー技術開発プロジェクトの立ち上げと充電スタンドの整備,そ
れにより 2010 年にコンパクト EV を,2030 年に EV の本格普及を目指す。
⑥ クリーンディーゼル推進では,GTL,水素化バイオ軽油などの軽油系新燃料の
研究開発と,2009 年以降ポスト新規制に対応したディーゼル乗用車の導入。
3) Cool Earth −エネルギー革新技術計画―
2007 年 5 月に安倍総理のイニシアティブ「美しい星 50(クールアース 50)」が発
表され,「世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して 2050 年までに半減する」
という長期目標を提案した。この目標の実現は,従来の技術の延長では困難であり,
革新的技術の開発が不可欠である。
このため,2050 年を見通した上で,エネルギー分野における革新的な技術開発の具
体的な取り組みのあり方について検討を進め,検討内容を取りまとめたものが「Cool
Earth −エネルギー革新技術計画―」である。
重点的に取組むべきエネルギー革新技術を図 3-4-3 に示す。
図 3-4-3 重点的に取り組むべきエネルギー革新技術
−129−
燃料電池自動車に関しては,コスト面では車両価格を 2010 年に ICV 比で 3∼5 倍,
2020 年に 1.2 倍まで低減することを目指す。耐久性については,2010 年に 3,000 時
間,2020 年に 5,000 時間まで向上させることを目指し,航続距離は 2010 年で 400km,
2020 年で 800km まで向上させることを目指すとしている。
(8) 日本における燃料電池自動車・水素関連プロジェクト
平成 19 年度に実施された,日本政府主導の FCV・水素関連プロジェクトを表 3-4-6,
表 3-4-7 に整理する。
表 3-4-6 平成 19 年度に実施された日本政府主導のプロジェクト(1)
分類
主体
プロジェクト名
水素先端科学基
礎研究事業
(Hydrogenius)
経済
産業省
燃料電池先端科
学研究委託
(FC-Cubic)
水素貯蔵材料先
端基盤研究事業
(HYDRO☆STAR)
基礎
研究
次世代型燃料電
池プロジェクト
文部
科学省
技術
開発
経済
産業省
ナノ構造化燃料電
池用材料研究
固体高分子形燃
料電池実用化戦
略的技術開発
水素安全利用基
盤技術開発
概要
期間
水素の輸送や貯蔵に必須な材料に関し,水素脆
化等の基本原理の解明及び対策の検討を中心
とした高度な科学的知見を要する先端的研究 H18 年度∼
を,国内外の研究者を結集し行うことにより,水
H24 年度
素をより安全・簡便に利用するための技術基盤
を確立する。
燃料電池の基本的反応メカニズムについての根
本的な理解を深めるために,独立行政法人産業
技術総合研究所において,高度な科学的知見を H17 年度∼
要する現象解析及びそのための研究体制の整
H21 年度
備を行い,現状の技術開発における壁を打破す
るための知見を蓄積する。
世界トップ水準の優れた研究者を中核に,国内
外の研究機関・企業バーチャルな連携の下,高
圧水素貯蔵に比べコンパクトかつ効率的な水素 H19 年度∼
貯蔵を可能とする水素貯蔵材料の性能向上に
H23 年度
必要な条件等を明らかにすることにより,燃料電
池自動車の航続距離の飛躍的向上を図る。
燃料電池の本格的普及に向け,高性能・低コス
H15 年度∼
トの高温運転型次世代燃料電池を実現する革
H19 年度
新的材料開発と電池性能の実証を行う。
燃料電池の普及を加速させるために,材料の基
礎に立ち返って材料中の微細構造,界面構造お
よび表面構造などがイオン伝導度や触媒機能等
に与える影響を精査し,潜在する機能を十分に
平成 18 年度
発揮できるような組織制御を行って,優れたイオ
∼
ン伝導性,耐食性,触媒機能や機械的強度を持
ち,実際の燃料電池システム,水素製造システ
ムなどで長期にわたって使われる材料の開発を
目指す。
自動車用,家庭・業務用等に利用される固体高
分子形燃料電池の実用化・普及に向け,要素技
H17 年度∼
術,システム化技術及び次世代技術等の開発を
H21 年度
行うとともに,共通的な課題解決に向けた研究
開発の体制の構築を図る。
燃料電池等の水素利用技術の導入・普及に資
するため,水素の製造・貯蔵・輸送等に係る関連 H15 年度∼
機器の信頼性・耐久性向上,小型化,低コスト化
H19 年度
のための研究開発を行う。
−130−
H19 年度予
算(億円)
16.65
9.96
7.57
2.00
1.00
51.30
22.53
表 3-4-7 平成 19 年度に実施された日本政府主導のプロジェクト(2)
分類
主体
プロジェクト名
将来型燃料高度
利用研究開発
経済
産業省
次世代蓄電システ
ム実用化戦略的
技術開発
技術
開発
環境省
本庄・早稲田地域
での G 水素モデル
社会の構築に関す
る技術開発
経済
産業省
燃料電池システム
等実証研究
環境省
燃料電池自動車
啓発推進事業
実証
研究
水素社会構築共
通基盤整備事業
経済
産業省
基準・
標準化
国土
交通省
燃料電池システム
普及用技術基準
調査
燃料電池自動車
実用化促進プロ
ジェクト
期間
H19 年度予
算(億円)
H17 年度∼
H19 年度
9.37
H19 年度∼
H23 年度
49.00
H17 年度∼
H19 年度
6.21
H18 年度
∼H22 年
度
18.00
H15 年度∼
?
H17 年度∼
H21 年度
25.50
H18 年度∼
H20 年度
0.85
H15 年度∼
0.66
概要
燃料電池の普及・実用化に必要になる,効率的
な石油系燃料からの水素製造技術,及び当該
水素の効率的な供給システム等の開発を行う。
燃料電池自動車の早期導入,プラグインハイブ
リッド自動車・電気自動車の実用化等に資する
蓄電池技術の開発を行うことにより,蓄電池の
高寿命化,高出力化,高密度化,低コスト化,安
全性の向上を図る。
廃シリコン,廃アルミ,バイオマス等の廃棄物を
利用した G(グリーン)水素の製造,水素吸蔵合
金(以下 MH)による水素精製・貯蔵・輸送システ
ム,G 水素を利用した各種利用システム−燃料
電池(以下 FC)システム,FC 信号機,小型 FC 自
動車(ULFCV,COMS),FC 車椅子,FC フォー
クリフト,MH 自動販売機−を開発し,本庄・早稲
田地域において水素エネルギー特区の認定を
受け,G 水素モデル社会を構築する。
実条件に近い中での燃料電池自動車の実証試
験や多角的な燃料供給システムの検証を進め,
水素エネルギー社会における水素利用の課題
等を抽出するとともに,燃料電池・水素に対する
国民的理解の醸成を図る。
市民に最も身近な地方公共団体において,燃料
電池自動車のイベント展示,試乗会や学校など
での学習利用により,地域社会へ の啓発推進
を図るとともに,様々な利用形態での走行による
社会実験と,その活用方法について検討・実証
する。
固体高分子形燃料電池システム等の導入・普及
に資する基盤整備のため,製品性能の試験・評
価手法及び国内外の基準・標準の確立を図る。
容器貯蔵圧力を 70MPa とした燃料電池自動車
及び供給スタンドの技術基準を整備するため,
会議あの規制内容を調査するとともに安全性に
係わる実証試験結果の評価を行なう。
深刻な大気汚染問題を抜本的に解決し,地球温
暖化対策に資する究極の低公害車である燃料
電池自動車の早期普及を図るため,燃料電池自
動車の世界統 一基準の策定 に向けて必要 な
データを取得する。
(9) 経済産業省の「Back to Basic による研究推進」プロジェクト
1) 固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター(FC-Cubic)の設立
燃料電池の重要なアプリケーションである燃料電池自動車では,技術的課題に加え,
非常に厳しいコスト要求に直面しており,単にエンジニアリング手法に頼るのではな
く,サイエンスの基本に立ち返った根本的な「既知の物理限界」の打破が強く求めら
れている。こういった産業界からの要望に応え,2005 年 4 月,独立行政法人産業技術
総合研究所に固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター(以下 FC-Cubic:Polymer
Electrolyte Fuel Cell Cutting-Edge Research Center)が設置された。
−131−
2005 年 4 月 1 日から 5 年間の予定で,平成 17 年度の予算は約 10 億円である。「電
極触媒」および「セル構成要素と界面移動物質との相互作用」「電解質膜」に研究テー
マを絞り,それぞれ燃料電池内部の基礎的・根本的な現象解析を行う。
2) 水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)の設立
(独)産業技術総合研究所水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)は,
水素利用社会の実現を技術的に支援するため,水素と材料に関わる種々の現象を科学
的に解明して各種データを産業界に提供するとともに,安全で簡便に水素を利用する
ための技術指針を確立することをミッションとし平成 18 年 7 月 1 日に設立された。
具体的には,産業界から提供される開発・実証から出てくる課題から,水素物性等に
係る基本原理を解明し,水素社会実現に向けたデータベースの構築と技術基盤整備を
行うことを目的としている。研究期間は平成 18 年度から平成 24 年度の 7 年間である。
3) 水素貯蔵材料先端基盤研究事業(HYDRO☆STAR)
水素貯蔵材料に関しては,日本は基礎研究が極めて弱い状況にある。研究者の数も
少なく,質的にも欧米に対して劣っている状況にある。水素貯蔵材料の実用化が直近
でないとすれば,技術よりも基礎研究に力を入れた方が得策であるし,将来応用研究
を行なうにしても,基礎をしっかり学んだ人材を育てていかなければならない。こう
いった危惧から,2007 年度に水素貯蔵材料先端基盤研究事業が開始された。
参加団体は,産業技術総合研究所と,文科省管轄の大学と団体。具体的な目標は設
定されていない。材料開発を目標とはせず,材料開発を担当する水素安全利用等基盤
技術開発の研究などで生じた問題に対して支援を行うことを想定している。また,こ
のプロジェクトでは各団体のエース級の人材を集めて仮想的な組織を作り,各エース
は自らの組織に所属しつつ,持ち帰りで事業に参加してもらうというように進めてい
く方針だという注)。
(10) 経済産業省の「家庭用燃料電池システム周辺機器(補機類)の仕様リスト」
第 13 回燃料電池実用化戦略研究会において報告された「定置用燃料電池市場化戦略検
討会報告書(2005 年 4 月 11 日)」の中で,家庭用燃料電池コージェネレーションシス
テムの本格的普及に向けて国が取り組むべき課題として「燃料電池用の補機に必要とさ
れるスペックの公表を行い,コストダウンにとって重要な課題である補機供給に新規企
業の参入を促すべき」と提言されている。
経済産業省はこの提言を受け,家庭用燃料電池システムの周辺機器(補機類)に求め
られる仕様(スペック)について,システムメーカへのアンケート調査等の結果からと
注)
参考資料-XXX 参照
−132−
りまとめ,4 月 21 日に公表した。さらに,共通仕様リストは,その後の状況変化を踏ま
えつつ,さらに共通化を推進するために,あらためて要求スペックを精査し,ほぼ一本
化された「家庭用燃料電池システム関連補機類の共通仕様リスト」として 12 月 27 日に
公表した。
2008 年 1 月には,新しい共通仕様リストが発表された。これは,2005 年以降の状況
変化等を踏まえつつ,更に共通化を推進するために改めて要求スペックを精査し,ほぼ
一本化された「共通仕様」として公表されたものである。各補機について,簡単な説明
と要求スペック(2008 年 1 月時点の最新情報に基づいたもの)および目標コスト(これ
は 1 万台生産時の 1 台あたりのコスト)が記されている。
ここで,周辺機器に要求されるポイントは,以下の 5 点であるとされている。
① 低消費電力
② 運転範囲(出力の範囲が 100~20%程度まで広くとれること,低負荷時においても
流量制御等の性能が変動しないこと)
③ 長時間耐久性(最終目標として 10 年程度あるいは 6∼7 万時間)
④ 環境性(低騒音,低振動等)
⑤ 低コスト(上記①∼④を維持しつつ低コスト化を追求)
(11) NEDO 技術開発機構および経済産業省による燃料電池車に関するロードマップの策定注)
NEDO 技術開発機構では,平成 17 年 6 月に,エネルギー分野のうち,燃料電池・水
素,バイオマスエネルギー,太陽光発電について,2020 年頃までを視野に入れ,技術ロー
ドマップを策定した。
燃料電池・水素技術分野を巡る状況は刻一刻変化しているとの認識から,見直しを行
い,平成 18 年 6 月には燃料電池・水素技術開発ロードマップ Ver.2 を作成した。図 3-4-4
に自動車用 PEFC に関するロードマップを示す。
また経済産業省では,平成 17 年 10 月に 2100 年までの長期的視野から地球的規模で
将来顕在化することが懸念される資源制約・環境制約をのり越えるために求められる技
術の姿を将来から逆算(バックキャスト)することによって,「技術戦略マップ∼超長
期的エネルギー技術ビジョン∼」を描き出している(図 3-4-5,図 3-4-6)。
平成 18 年 4 月,経済産業省は「技術戦略マップ 2006」を公表した。自動車関連では,
高出力スーパーキャパシターや二次電池の高性能・長寿命化などが対象となっている。
注)
その他のロードマップについては 4-1-2 節参照。
−133−
図 3-4-4 NEDO による PEFC(自動車用)の技術ロードマップ
出典:「2006 燃料電池・水素技術開発ロードマップ」NEDO
※点線は R&D 段階,実線は商用開始以降
図 3-4-5 燃料電池自動車関連の経済産業省の技術戦略マップ
出典:経済産業省 HP より
−134−
※点線は R&D 段階,実線は商用開始以降
図 3-4-6 水素貯蔵技術および水素供給技術における経済産業省の技術戦略マップ
出典:経済産業省 HP より
(12) 経済産業省の固体高分子形燃料電池システム実証等研究
経済産業省の「固体高分子形燃料電池システム実証等研究」注)は,燃料供給インフラ
を含めた燃料電池利用システムの実証等研究を支援する事業であり,平成 14 年度から 3
年間の計画でスタートした。この事業では,燃料電池本体だけでなく,燃料供給インフ
ラも含めて,実使用条件における技術的課題を抽出するとともに,環境特性,エネルギー
総合効率,燃料性状,安全性等に関するデータを取得し,得られた情報等を開発・普及
施策に反映させていくことを目的としている。平成 14 年度には 20 億円,平成 15 年
度には 25 億円が投入された。
この事業は 3 つの実証研究で構成されている(図 3-4-7)。
注)
平成 15 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC セミナー(2004 年 3 月 12 日)資料
−135−
燃料電池自動車実証研究
実施者:財団法人日本自動車研究所
経済産業省
JHFCプロジェクト
燃料電池自動車用水素供給設備実証研究
実施者:財団法人エンジニアリング振興協会
定置用燃料電池実証研究
実施者:財団法人新エネルギー財団
図 3-4-7 固体高分子形燃料電池システム実証等研究の実施体制
出典:平成 15 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC セミナー(2004 年 3 月)資料を基に作成
燃料電池自動車実証研究では,財団法人日本自動車研究所注)(JARI)を中心として,
平成 14 年度から 17 年度にかけて,国内外の燃料電池車および国内 12 箇所の水素供給
ステーションでの走行試験を行った。なお,平成 16 年度には,愛知県で開催された万
国博覧会「愛・地球博」会場に 2 箇所設置された水素ステーションを使い,会場間の移
動手段として燃料電池バス 8 台による運行を行った。
燃料電池自動車用水素供給設備実証研究では,財団法人エンジニアリング振興協会
(ENAA)を中心として,水素供給ステーションの設置・運営および液体水素製造実証
研究を行った。この 2 つの実証研究は,水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC プロ
ジェクト:Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)として,共同で進め
られた。
JHFC プロジェクトは当初平成 14 年度から平成 16 年度までの 3 ヶ年の予定であった
が,1 年延長し平成 17 年度まで続けられた(詳細は 3-4-2 節(2):水素・燃料電池実
証プロジェクト参照)。平成 18 年度からは,「燃料電池システム等実証研究」(第 2
期 JHFC プロジェクト)として引き継がれている。JHFC プロジェクトにおける FCV
の実証走行試験の状況については後述する。
また,定置用燃料電池実証研究では,財団法人新エネルギー財団(NEF)を中心に,
平成 14 年度から 16 年度まで定置用燃料電池コージェネレーションシステムの実証研究
が行われた。そして,平成 17 年度からは,600 万円/台を上限として補助する「定置用
燃料電池大規模実証事業」へと移行し,日本全国で第 1 期,第 2 期あわせて 480 台が導
入された。平成 18 年度は 450 万円/台を上限として補助が行われ,777 台が,平成 19
年度には 350 万円/台を上限として 930 台が導入された。(詳細は 3-6-1 節参照)
注)
平成 14 年度は財団法人日本電動車両協会(JEVA)が実施主体となっていたが,平成 15 年 7 月 1 日
の財団法人日本自動車研究所(JARI)との統合化により平成 15 年度以降の実施主体は JARI となって
いる。
−136−
(13) 燃料電池関連の予算
平成 19 年 12 月 24 日に公表された経済産業省平成 20 年度予算の概要注)等より,燃
料電池関連予算を抽出したものを平成 19 年度予算と併せて表 3-4-8 に整理した。
定置用燃料電池大規模実証事業は予算を縮小して,継続して行われる。全体的な傾向
としては,平成 19 年度とほぼ同程度の予算が組まれている。
また,平成 20 年度から「水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発」「固体酸化物燃
料電池システム要素技術開発」「将来型燃料高度利用技術開発」が新規事業として計上
された。
表 3-4-8 平成 20 年度燃料電池関連予算(単位:億円)
伸び率
(%)
平成 19 年度
平成 20 年度
1,065
1,113
△ 4.5
301
289
▼4.0
7.57
9.96
16.65
22.53
9.08
9.00
17.50
−
17.00
(新規)
△19,9
▼ 9.6
△ 5.1
−
51.30
66.69
△30.0
18.00
34.20
25.50
4.50
13.00
27.11
14.00
−
▼28.8
▼20.7
▼45.1
−
15.30
−
−
資源エネルギー関係
新エネルギーの導入促進
(内) 燃料電池・水素に係る技術開発
・導入促進等
(内)水素貯蔵材料先端基盤研究事業
(内)燃料電池先端科学研究委託費
(内)水素先端科学基礎研究事業
(内)水素安全利用基盤技術開発
(内)水素製造・輸送・貯蔵システム等
技術開発
(内)固体高分子形燃料電池
実用化戦略的技術開発
(内)燃料電池システム等実証研究
(内)定置用燃料電池大規模実証事業
(内)水素社会構築共通基盤整備事業
(内)セラミックリアクター開発
(内)固体酸化物形燃料電池システム
技術開発
(内)固体酸化物燃料電池システム
要素技術開発
(内)固体酸化物燃料電池実証研究
(内)新利用形態燃料電池技術開発
(内)将来型燃料高度利用研究開発
(内)将来型燃料高度利用技術開発
−
−
7.65
3.40
9.37
−
(内)次世代蓄電システム実用化
戦略的技術開発
49.00
新規
13.50
(新規)
8.00
2.50
−
6.00
(新規)
△ 4.6
▼26.5
−
53.00
△ 8.2
新規
新規
出典:経済産業省「平成 20 年度資源エネルギー関係予算案の概要」(2007 年 12 月),総合科学技術
会議「第 72 回総合科学技術会議配布資料 1-2『優先度判定等を実施した科学技術関係施策の平
成 20 年度予算案』」を基に作成
注)
経済産業省発表資料「平成 20 年度経済産業省予算の概要」(2007 年 12 月)
−137−
(14) 地方公共団体における取組み
表 3-4-9∼表 3-4-12 に地方公共団体における燃料電池関連への取組みを整理する。
表 3-4-9 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 1)
青森県
秋田県注1)
東京都
東京都
練馬区注4)
東京都
荒川区注5)
つくば市
注1)
注2)
注3)
注4)
注5)
注6)
2005 年 12 月 14 日の電気新聞によると,青森県は 12 月 13 日, あおもり水素エネルギー
創造戦略 をまとめた。将来的な水素エネルギー社会への移行を念頭に,原子力発電や風力
発電,農林水産資源などから水素を生産,FC の活用を通して県内産業の底上げを図ろうと
する内容である。さらに戦略では水素製造にかかる固定資産税の減免や遊休公有地の貸与な
ど公的支援の必要性を謳っている。また,CO2 を排出しない水素製造を実現するために,原
子力発電から水素を取り出す技術の意義についても言及している。
燃料電池・水素関連産業の創出に向けて,ものづくりの技術を活かした取組みや,製品開
発や技術研究など,燃料電池関連産業分野への参入に取り組む県内企業を積極的にバック
アップし,より具体的な産業創出に繋げるための推進組織として,2005 年 12 月 6 日に「秋
田県燃料電池関連産業導入促進協議会」を設立した。
東京都では,2003 年 8 月 28 日より,わが国で初めて FC バスが営業運行を開始した注2)。
運行台数は 1 台で,東京駅八重洲口−東京テレポート駅,または門前仲町−東京テレポート
駅の路線を 1 日数往復した。しかし,2004 年 6 月,同バスと同じ構造の FCV 用高圧水素タ
ンクに水素洩れが発生したため,トヨタ自動車が FCB を回収したため運行を停止した。
その後,7 月から運行を再開した。また,10 月 1 日からは霞ヶ関や銀座三越前での運行を
行った。晴海ふ頭−勝どき駅前,銀座4丁目−東京駅の路線を 1 日 1 往復,晴海ふ頭−銀座
4 丁目−四ツ谷駅の路線を 1 日 2 往復した。10 月 16 日からはメーカからの引き取り要請に
よって運行を休止したが,高圧水素タンクの交換および安全確認が行われ,12 月 21 日より
門前仲町−東京テレポート駅での運行が再開され,営業運行試験の終了日である 2004 年 12
月 28 日まで運行された。
この事業は都の「水素供給ステーションパイロット事業」ならびに経済産業省の「水素・
燃料電池実証プロジェクト」および国土交通省の「燃料電池自動車実用化促進プロジェクト」
と連携し実施された。FC バスはトヨタ自動車,日野自動車の「FCHV−BUS2」であった。
また 2006 年 4 月 3 日,「東京都再生可能エネルギー戦略」注3)を策定した。この中で,
「都内の水素供給ステーション施設を活用し燃料電池自動車の普及を図っていくとともに,
再生可能エネルギーを活用した水素供給のあり方について検討を進める」としている。
2006 年 12 月より練馬区内の住宅に家庭用の燃料電池装置を設置する場合,上限 10 万円
として工事費の一部を補助する事業を開始した。
2006 年 5 月,エコ助成金制度として,区民や事業者による環境に配慮した設備の導入を
支援するための助成を始めた。1kW 級家庭用燃料電池装置については,助成限度額 10 万円
として設置経費の半額の助成補助が受けられる。2007 年 3 月 16 日までに設置完了すること
が条件。
つくば市では,2005 年開通予定のつくばエクスプレス沿線で新エネルギー機器の導入の
促進を図るとともに,市民生活・地域社会と密着した新エネルギー研究開発の促進を図る構
造改革特別区域計画(つくば市新エネルギー特区)が平成 15 年 8 月に認定された注6)。こ
の特区では,2019 年ごろまでに 400 戸以上の家庭用燃料電池の導入を目標に掲げている。
特区では,電気事業法上の家庭用 FC の設置に関する規制を一部緩和し,保安規定の届出と
電気主任技術者の選任を不要とする措置が取られる。また,不活性ガスボンベの常備義務も
撤廃される。
秋田県 HP より
東京都広報資料等より
東京都「東京都再生可能エネルギー戦略−エネルギーで選びとる持続可能な未来―」2006.4
練馬区 HP より
荒川区 HP より
構造改革特別区域推進本部 HP より
−138−
表 3-4-10 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 2)
静岡県
愛知県
大阪府注6)
注1)
注2)
注3)
注4)
注5)
注6)
静岡県は,燃料電池・水素エネルギーの先進県となることを目指し,2001 年に「燃料電
池・水素エネルギー研究会」を発足させた。県として何ができるか,何をなすべきかなどに
ついて検討を行い,平成 14 年 3 月に報告書をまとめている。報告書では,県の取組みの試
案として,大きく①燃料電池の普及の促進,②研究開発の支援,③新産業の創出などの支援,
④燃料供給インフラ整備の検討の 4 項目を掲げている。④のインフラ整備の検討について
は,国,民間企業等との連携により,水素供給ステーションやパイプライン等のモデル施設
についての検討,住宅団地等への燃料電池の導入支援を挙げている。平成 15 年度,それま
での 2 年間の研究会の活動を基盤として,この分野に強い関心を持つ企業,大学,行政等を
対象とした会員制の「しずおか燃料電池・水素エネルギーパートナーシップ」を創設した注
1)
。
また,平成 15 年 3 月に策定された「しずおか新エネルギー等導入戦略プラン」において,
2010 年度までに燃料電池 7.24 万キロワットの導入を目指すとしている。更に平成 17 年度
からは,燃料電池の理解促進・普及啓発を図るため,県内の燃料電池関連企業の協力により,
高校生を対象とした「ECO エネルギー・スクール」を開催している。注2)
燃料電池の開発,利活用などの研究を目指し産学官が連携する「静岡燃料電池技術研究会」
の設立総会が 2006 年 12 月 8 日,静岡ガス総合技術研究所(静岡市駿河区)で開催された。
県,静岡工業技術センター,静岡大をはじめ,燃料電池の研究を進める飲料メーカ,部材供
給を目指す部品メーカなど 20 社前後の企業が参加する見込み。注3)
平成 17 年 2 月に「愛知県水素エネルギー産業協議会」を設立した。地域分散型実証モデ
ルの提案・検討,水素供給および燃料電池技術課題の各種研究会活動,プロジェクトの立ち
上げ,ならびに情報発信などの事業を行う。その一環として,愛知県は知多市,東海市と共
同で「知多地域水素インフラ活用研究会」を 11 月 9 日に立ち上げた。製鉄所や製油所,LNG
基地,都市ガス等水素供給インフラを活用した新エネルギーシステムの形成,在り方につい
ての検討を行う。
FCV の普及に向け,官民一体となって関連プロジェクトを推進する「あいち FCV 普及促
進協議会」が平成 17 年 7 月 1 日に発足した。愛知県や豊田市,常滑市,新日本製鉄,東邦
ガス,トヨタ自動車,大陽日酸が参加し,今後の燃料電池自動車に係るプロジェクトの企画
提案や普及啓発などの取組みを行うという。
また,平成 17 年 11 月,燃料電池の開発に取り組む地域中小企業に対し,試作品の特性評
価,技術相談・指導,情報提供,材料研究など,総合的な支援を行う窓口を設置し,地域産
業の競争力強化と新産業の創出に資することを目的とする「燃料電池トライアルコア」を,
愛知県産業技術研究所内に開設した。都道府県の試験研究機関が燃料電池に特化した技術支
援拠点を開設するのは,全国で初めてのことである。注4)
愛知県は 2006 年 7 月 5 日,名古屋市中区の県公館に設置した家庭用燃料電池の実証試験
の開所式を行い,「愛知県小型燃料電池実証試験」をスタートした。この家庭用 FC は,日
本ガス協会が「愛・地球博」に出品したものを移設している。また,2006 年 8 月には「あ
いち臨空新エネルギー研究発電所」を開設した。愛知万博会場において長久手日本館などに
電力供給を行っていたプラントを,中部臨空都市(空港対岸部)に移設して実証研究の継続
をはかるもので,常滑市役所等へ電力を供給する。注5)
大阪府は,平成 15 年 9 月,エネルギーや環境対策面から次世代の自動車として期待が高
まっている燃料電池自動車の普及促進を図るため,在阪の関係機関(近畿経済産業局,近畿
運輸局,大阪府,大阪市,岩谷産業,ダイハツ工業,大阪ガス,(財)都市交通問題調査会)
で組織される「おおさか FCV 推進会議」を設立した。都市再生と自動車公害対策の面から
官民が連携して独自のプロジェクトを展開し,水素ステーションの設置と府内での走行試験
に乗り出す。
平成 16 年 6 月に庁用車としてダイハツ MOVE FCV を導入,平成 17 年 10 月にはトヨタ
FCHV を導入し,普及啓発活動に活用している。
しずおか新エネルギー情報 HP より。
静岡県 HP
静岡新聞オンライン記事(2006.12.7)より
愛知県 HP より
愛知県産業労働部新産業課 HP より
大阪府広報資料,新聞報道より
−139−
表 3-4-11 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 3)
三重県
広島県
山口県注3)
注1)
注2)
注3)
三重県は,平成 15 年 4 月 21 日,三重県四日市市および川越町,楠町全域が「技術集積
活用型産業再生特区」として「構造改革特区」の認定を受けた注1)。この特区は,出力 10kW
未満の固体高分子形燃料電池に関する規制の特例が認められた。三重県では,この制度を活
用し,特区地域内において燃料電池の実証試験を実施する企業等に研究開発等に要する経費
を補助する制度「三重県燃料電池実証試験補助金」を創設した。本特区における規制の特例
では,一定の条件を満たす燃料電池について,規制の特例に係る代替措置が適切であると認
められれば,①「保安規定の届け出」が不要,②「電気主任技術者の選任」が不要,③家庭
用燃料電池の設置に際しての窒素ガスボンベの設置(窒素パージ)の不要の特例が認められ
ている。2004 年度の補助事業として 6 件を採択,2006 年 8 月現在,県内 10 カ所において
実証試験を実施している。
また,三重県は,2005 年 11 月 8 日,水素エネルギーに関連する産学官が連携して,水素
エネルギーに関連する新たな産業,研究開発機能,教育機能を育成・集積し,地域の活性化
を図るとともに,環境負荷の少ない水素エネルギー社会を地域に構築することを目的として
「三重県水素エネルギー総合戦略会議」を発足させた注2)。会員には,四日市大学国保元愷
教授(会長),燃料電池開発情報センター顧問本間琢也氏,三菱化学,コスモ石油,昭和シェ
ル石油(以上副会長)などが加わっており,平成 18 年 9 月現在で 134 企業・機関が参加し
ている。
更に 2006 年 6 月,「三重県燃料電池関連技術研究会」を立ち上げた。これは,三重県内
の燃料電池の研究開発(補機開発・メンテナンス等)に関心を持つ企業のネットワークを確
立し,各種情報を共有化し,周辺機器のコスト削減,性能の向上に関する共同研究を行うこ
とを目的としている。三重県燃料電池実証試験(県内 10 ヶ所)に参加している燃料電池メー
カを講師とし,燃料電池に関する技術テーマ毎に 6 部会で構成され,部会毎に専門的な研究
を行う予定である。
2005 年 4 月 4 日の鉄鋼新聞によると,広島県は 2005 年度の新規事業の一つとして, 水
素燃料製造・供給システム調査事業 に取り組む。広島県内には水素関連技術を保有し,開
発に取り組む企業が多いことから,県域での水素製造可能性調査,供給システムの検討,水
素関連技術に関する情報収集・提供を通して,関連事業者との連携を図ることを目標に,調
査事業に取り組むことにした。
また,2005 年 10 月 19 日の日刊工業新聞によると,産学官による「燃料電池等普及促進
調査検討委員会」を設置し,水素燃料製造と供給可能性の調査,構造改革特区の活用,県内
技術であるバイオマス活用の水素利用システム実証モデルの検討などを行うという。
山口県はソーダ工場等の生産工程で発生する副生成物としての水素が 8.9 億 Nm3/年で,
全国の 14%と全国一であることから,この水素の潜在的エネルギーを利用するために「水
素フロンティア山口推進構想」を平成 16 年に策定している。この構想では,工場からの副
生成水素を燃料とした水素タウンの実現に向けた取組みを行っている。しかしながら,関連
情報の不足や技術シーズ,連携先および開発リスク等の問題から県内の多くの企業は,燃料
電池への取組みに対して新規参入できない現状にあると分析しており,平成 17 年度におい
て,「燃料電池研究会」を発足した。県内企業の燃料電池に関する実用的な情報提供,燃料
電池関連技術開発プロジェクトの立ち上げ,県内企業の燃料電池分野への参入促進を目標に
掲げている。
山口県は,水素タウンモデル事業を行っている。計画期間は 2007 年 1 月 19 日∼2010 年
3 月 31 日。実施場所は山口県周南市江口地内。ソーダ工場の副生水素を,一般家庭に設置
した水素供給燃料電池にパイプラインで供給することにより,発電・給湯を行うモデル事業。
2007 年 3 月末より実際に稼働させている。
構造改革特別区域推進本部 HP より
三重県水素エネルギー総合戦略会議 HP より
山口県 HP より
−140−
表 3-4-12 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 4)
大分県
佐賀県
福岡県
注1)
注2)
注3)
注4)
大分県は“新エネルギー産業化研究会”を平成 18 年 8 月 1 日に新設した。主な活動内容と
しては,燃料電池・水素エネルギー会議,バイオマスエネルギー会議等分野別会議の開催,
県内外における利活用の研究・事例紹介,事業化についての課題検討である。注1)
佐賀県は次世代エネルギーの代表である水素を原料とする燃料電池の関連産業を県内に
根付かせるため,この分野への県内企業の進出を促すことを目的とし,水素エナジー関連産
業戦略的育成事業を立ち上げ,その一つとして水素エナジー研究懇親会(座長:門出佐賀大
教授)を設立した注2)。
福岡県では,環境にやさしい水素エネルギー利用社会の実現に向け,全国に先駆けて,産
学官で「福岡水素エネルギー戦略会議」を平成 16 年 8 月 3 日に設立した。水素生成,貯蔵・
輸送から利用まで一貫した研究開発・実証活動に加え,人材育成を実施し,世界を先導する
研究開発拠点を形成することを目的としている。新聞報道注3)によると,10 月に糸島半島へ
移転する九大キャンパスを舞台に,高圧水素の製造・貯蔵を行う 水素ステーション の建
設,企業の研究開発支援,技術者育成など,実証実験,研究開発,人材育成の 3 本柱で戦略
を展開する。2005 年度予算に関連費約 1 億 3,500 万円を盛り込むという。九大新キャンパ
スでは,水素ステーションで圧縮機を使わない水電解技術により 40∼70MPa の高圧水素を
製造・貯蔵し,そこから各施設にパイプランで水素を供給,FC で電力を賄い,構内に FCV
を走らせるという。
また,福岡県と市が共同で申請していた「福岡水素利用技術研究開発特区」が 2005 年 3
月に認定された。福岡水素エネルギー戦略会議や九大を中核にして,水素エネルギー社会の
実現に向けた研究開発速度の向上と水素関連産業の集積促進が目的である。具体的には水素
利用技術の試験研究で使用する小型圧力容器(内容積 400mmL 以下,圧力 100MPa 以下)
について,容器を製造するたびに必要な耐圧・気密試験を省略することで研究開発のスピー
ドアップを図る。注4)
2008 年 2 月,福岡水素戦略(Hy-Life プロジェクト)の中の実証プロジェクトとなる「水
素タウン」の整備を開始すると発表した。150 個規模で家庭用燃料電池を導入し,実証実験
を行う予定。
大分県 HP より
佐賀県 HP より
西日本新聞(2005 年 2 月 10 日)より
福岡県 HP より
−141−
3-4-2 わが国における FCV の公道走行試験
(1) PEC による公道走行試験
(財)石油産業活性化センター(以下 PEC)では,経済産業省資源エネルギー庁の支
援を受け,わが国初の FCV の公道走行試験のための共同プロジェクトを実施した。こ
の FCV 共同プロジェクトには,ダイムラー・クライスラー日本ホールディング株式会
社,マツダ株式会社,日石三菱株式会社(現:新日本石油株式会社)が参加した。この
FCV 公道走行試験は,平成 13 年 2 月 15 日から 7 月まで横浜市の近郊において行われ
た注)。
(2) 水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC プロジェクト)
「水素・燃料電池実証プロジェクト」(JHFC プロジェクト:Japan Hydrogen & Fuel
Cell Demonstration Project)は,経済産業省「固体高分子形燃料電池システム実証等
研究」のうち,財団法人日本自動車研究所(JARI)による「燃料電池自動車実証研究」
と財団法人エンジニアリング振興協会(ENAA)による「燃料電池自動車用水素供給設
備実証研究」から構成されるプロジェクトである。
JHFC プロジェクトは,国内初の大規模な FCV 実証走行研究であると同時に,複数
の燃料・方式による水素供給設備を運用する世界初の取組みである。平成 14 年度は,
東京・横浜地域に 6 箇所の水素供給設備を建設し,自動車メーカ 6 社の自動車が公道走
行試験に参加した。また,横浜大黒町にガレージとショールームを建設し,プロジェク
トのベース基地とした。平成 15 年度には,新たに 4 箇所の水素供給設備を増設し,ま
た自動車メーカも新たに 2 社が加わって実証試験を行っている。平成 16 年度には,愛
知県で 3 月から開催された万国博覧会「愛・地球博」会場に 2 箇所の水素ステーション
を設置し,会場間を移動手段として燃料電池バス 8 台による運行を行った。
実証試験を通して,走行性能,信頼性,環境特性,燃費等の車両走行データと水素充
填ステーション使用データ等を取得・評価する。また,液体水素製造技術の実証も実施
する。
現在はこのプロジェクトの第 1 期が終了し,第 2 期が実施中である。
表 3-4-13 に第 1 期 JHFC プロジェクトの概要を示す。
注)
詳細は「2005 年度 JARI『FCV に関する調査報告書』」を参照のこと。
−142−
表 3-4-13 第 1 期 JHFC プロジェクトの概要
事業実施者
特徴
参加企業・団体
(平成 17 年度)
実施期間
燃料供給設備
試験車両
補助額
目的
財団法人日本自動車研究所
財団法人エンジニアリング振興協会
■ 国内初の大規模な FCV,FC バス実証試験研究
■ 各種燃料による水素供給設備を並行して運用する世界初の取組み
■ 経済産業省が国家プロジェクトとして推進する補助事業
○燃料電池自動車実証関係
トヨタ自動車,日産自動車,本田技研工業,
ダイムラー・クライスラー日本,三菱自動車工業,スズキ
ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン,日野自動車,
○水素供給設備実証関係
新日本石油,コスモ石油,昭和シェル石油,東京ガス,岩谷産業,
ジャパン・エア・ガシズ,大陽日酸(旧日本酸素),新日本製鐵,
栗田工業,シナネン,伊藤忠エネクス,出光興産,バブコック日立,
鶴見曹達,東邦ガス
平成 14 年度∼平成 17 年度(実施期間 4 年間)
水素ステーション 12 箇所,液体水素製造設備
直接水素形 FCV:8 車種
平成 14 年度 20 億円,平成 15 年度 25 億円
平成 16 年度 20 億円,平成 17 年度 18 億円
① FCV 及び水素供給設備の省エネルギー効果(CO2 削減効果,効率)の
明確化
② FCV 及び水素供給設備の環境負荷低減効果の明確化
③ FCV 及び水素供給設備の安全等に関わる規格,法規・基準の作成の
ためのデータの取得等
④ FCV 及び水素供給設備の社会的認知度向上のための啓発活動
出典:平成 15 年度,平成 16 年度,平成 17 年度,平成 18 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC
セミナー資料を基に作成
平成 18 年度から平成 22 年度までの 5 年間,引き続き「JHFC プロジェクト・第 2
期」が実施されている。第 2 期 JHFC プロジェクトのスケジュールを図 3-4-8 に,概要
を表 3-4-14 に示す。
図 3-4-8 第 2 期 JHFC プロジェクトのスケジュール
資料:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
−143−
表 3-4-14 JHFC プロジェクト・第 2 期の概要
事業実施者
特徴
実施期間
補助額
目的
参加企業・
団体
参加車両
(財)日本自動車研究所(JARI)
(財)エンジニアリング振興協会(ENAA)
z
第三者による燃料電池車等フリート走行試験
z
水素内燃機関自動車の実証試験新規参画
z
実証試験地域の拡大(首都圏・中部地区・関西地区)
z
中部国際空港における FC バス(路線バス・空港内ランプバス)運行と,水素ステーショ
ンの開設
z
大阪地区における小型移動体(FC 電動車椅子,FC 電動カート,FC 電動アシスト自
転車)のモニター試験と,水素ステーションの開設
平成 18 年度∼平成 22 年度(実施期間 5 年間)
平成 18 年度 13 億円
平成 19 年度 18 億円
① 燃料電池車等及び水素インフラ等の,実使用条件における運用と,その際の課題明確化
② 水素貯蔵の高圧化に関する検証
③ 燃料電池車等及び水素インフラ等に関わる規格,法規・基準作成のためのデータ取得
④ 燃料電池車等及び水素インフラ等への理解促進のための広報・教育戦略の策定実施
⑤ 燃料電池車等及び水素インフラ等の省エネルギー効果(燃費)・環境負荷低減効果の確認
⑥ 燃料電池車等及び水素インフラ等に関わる技術・政策動向の把握
トヨタ自動車(株),日産自動車(株),本田技研工業(株),
メルセデス・ベンツ日本(株),ビー・エム・ダブリュー(株)
ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン(株),
日野自動車(株),スズキ(株),マツダ(株)
新日本石油(株),コスモ石油(株),昭和シェル石油(株),
東京ガス(株),岩谷産業(株),ジャパン・エア・ガシズ(株),
大陽日酸(株), 新日本製鐵(株),栗田工業(株),鶴見曹達(株),
シナネン(株),伊藤忠エネクス(株),バブコック日立(株),
東邦ガス(株),大阪ガス(株),(株)栗本鐵工所,関西電力(株)
出光興産(株)(協賛)
水素自動車:
直接水素 FCV:
・ マツダ RX-8 Hydrogen RE
・ トヨタ FCHV
・ BMW Hydrogen7
・ 日産 X-TRAIL FCV
・ ホンダ FCX
・ Mercedes Benz A-Class F-Cell
小型移動体:
・ GM HydroGen3
・ クリモト FC カート,FC 車いす
・ トヨタ/日野 FCHV-BUS
・ スズキ MRwagon-FCV
平成 18 年度および平成 19 年度の実施内容を表 3-4-15 に示す。
表 3-4-15 平成 18 年度および平成 19 年度の JHFC の実施内容
平成 18 年度
① 燃料電池車等フリート走行試験開始
② 水素ステーションにおける,圧力上昇率一定
の水素充填に関する検討開始
③ 中部国際空港における水素ステーションの
開設と,FC バス運行
④ 大阪地区における,水素ステーションの建設
と,小型移動体のモニター試験
⑤ 各種広報・教育活動イベントの推進
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
−144−
平成 19 年度
シャシダイナモ燃費測定
公道実走行燃費測定
寒冷地での低温始動デモンストレーション
フリート車両のメーカ預かり情報の取得
フリート車両運転者アンケート実施
70MPa 水素ステーションの仕様決定
各種広報・教育活動イベントの推進
平成 19 年度に実施されたシャシダイナモ燃費測定試験の結果では,平成 16 年度に取
得した燃費と比較して,平均値では 10.3%,トップランナでは 16.4%の燃費向上が確認
された(図 3-4-9)。また,車両効率では,平成 16 年度の取得データでは,平均 38.2%
であったが,平成 19 年度の結果では 42.2%と 10.5%向上,トップランナにおいては平
成 16 年度に 49.6%であったものが 55.9%と 12.7%向上していることが確認された。
一方,北海道において行われた FCV の寒冷地始動性デモの結果では,放置時の最低気
温約−10℃の状況でも問題ない始動・走行が確認され,氷点下放置後の始動が可能であ
ることが確認されている(表 3-4-15)。
フリート走行試験では,FCV はフリート車両以外の FCV よりも走行距離は多く,1
台 1 ヶ月当たり 547km を走行し,FC バスは,1,000km/月・台以上を走行した(図 3-4-11)。
また,フリート運転者へのアンケート調査の結果からは,音・振動,アクセル応答性な
どにおいて,非常に高い評価結果となっている一方で,航続距離,重点時間・手間,水
素の印象に課題があることが明らかとなった(図 3-4-12)。
燃費(km/kg-H2)
150
+16.4%
126.5
(34.7)
108.7
(29.8)
+10.3%
100
101.9
92.4 (27.9)
(25.3)
H16年度結果
H19年度結果
50
0
平均値
トップランナ
燃費測定結果(10・15モード)
※比較FCV 6台:FCHV、X-TRAIL FCV、FCX、F-Cell、 HydroGen3、MRワゴンFCV(H16年はワゴンR-FCV) ※グラフ中()はガソリン等価燃費(km/L)を示しガソリン換算燃費は以下の値を用いた。
ガソリン(発熱量 45.1MJ/kg・LHV、比重量 0.729)
水素 (発熱量 120 MJ/kg・LHV)
図 3-4-9 シャシダイナモ燃費測定(燃費結果)
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
−145−
60
+12.7%
車両効率(%)
+10.5%
40
55.9
H16年度結果
49.6
H19年度結果
42.2
38.2
20
0
平均値
トップランナ
車両効率結果(10・15モード)
車両による総駆動仕事
算出方法 : 車両効率[%] = 車両への投入エネルギ
× 100
・ FCV平均は、全6車の効率の単純平均である
・ タイヤスリップロスは考慮されていない
・ 試験前後のバッテリの充放電収支は全車1%未満である
図 3-4-10 シャシダイナモ燃費測定(車両効率)
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
表 3-4-16 FCV の寒冷地始動性デモ(結果)
始動
試験日
場所
放置時間
放置時
最低気温
始動時
外気温
約14時間
-10.8℃
-9.8℃
-9.6℃
-8.6℃
2008/2/5
北海道庁前
2008/2/6
雪祭り雪像前 約8時間
始動・走行可否
10秒前後で始動、
走行
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
1,600
1,397km
走行距離(km/月・台)
1,400
フリート
フリート以外
1,200
1,000
800
600
400
547km
377km
200
0
FCV
FCバス
(算出期間:2007/4 ∼2007/12)
図 3-4-11 フリート実証走行距離
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料を基に作成
−146−
また,平成 20 年 3 月 13 日に開催された JHFC セミナーでは,水素タンクの 70MPa
化および FC システム効率の向上による航続距離の伸長の状況が示され,現行ガソリン
車の航続距離に到達している車両があることが示された(図 3-4-12)。また,スタック
の耐久性についても図 3-4-13 に示すように,物理的劣化の低減,化学的劣化の低減を図
ることにより,15 年 20 万 km 相当の耐久性が得られつつある状況が報告された。
航続距離(10・15モード)
(km)
800
現行ガソリン車の
航続距離
600
400
200
0
2002
2004
年
2006
図 3-4-12 水素タンクの 70MPa 化による水素搭載量増および
FC システム効率の向上による航続距離の伸長
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
MEA3
MEA3
図 3-4-13 スタック耐久性向上の例
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
−147−
3-5 わが国自動車メーカ等における開発状況
3-5-1 燃料電池実用化推進協議会(Fuel Cell Commercialization Conference of Japan)
2001 年 3 月,燃料電池実用化戦略研究会における,燃料電池の実用化と普及に向けた
民間レベルの検討,協議の場が必要であるとの提言を受け,民間企業,団体等により燃
料電池実用化推進協議会(Fuel Cell Commercialization Conference of Japan,以下
FCCJ)が設立された。
FCCJ は,わが国における燃料電池の実用化と普及に向けた課題解決のための具体的
な検討を行い,政策提言として取りまとめ,会員企業自ら課題解決への努力を行うとと
もに,国の施策へ反映させることにより,わが国における燃料電池の実用化と普及を目
指し,わが国の燃料電池産業の発展に寄与することを目的としている。
2007 年 7 月 1 日末現在,会員総数 132 社・団体・個人であり,事業活動を総括する
企画・運営委員会のもとに以下に示す 2 つのワーキンググループ(WG)を設け,さら
にそれぞれの WG に複数のサブワーキンググループ(SWG)を設け,課題の抽出,具
体的解決策等の検討を進めている(図 3-5-1)。各 WG の活動内容は表 3-5-1 のとおり
である。
図 3-5-1 燃料電池実用化推進協議会の組織
表 3-5-1 FCCJ における WG の活動内容
技術開発企画 WG
(1)要素技術検討 自動車用,定置用燃料電池に共通なセル・材料,燃料処理等キーテクノロジー
SWG
について,将来の高度化に向けた課題の抽出,技術開発施策の検討。
(2)システム技術検 自動車用,定置用システムの商品として要求される安全性,省資源性,低コ
討 SWG
スト化等を達成するために必要な課題の抽出,技術開発施策の検討。
(3)SOFC 技術検 固体酸化物形燃料電池に特有な要素技術およびシステム化に必要な課題の
討 SWG
抽出,技術開発施策の検討。
(4)燃料関連技術検 燃料水素の製造・貯蔵・輸送・供給に関する技術について,要求される性能,
討 SWG
利便性,経済性等を達成するために必要な課題の抽出,技術開発施策の検討。
市場化等環境整備企画 WG
(1)基準・制度 SWG 定置用燃料電池,水素供給インフラ,燃料電池自動車・高圧容器の各分野の
関連法規制の問題点の明確化,その見直しのためのアクションプランの検
討,基準・標準についての活動状況の把握と効率的な体制・対応方針の検討。
(2)実用化促進
定置用燃料電池分野,燃料電池自動車分野,水素供給インフラ分野における
SWG
実用化促進策の検討。
−148−
自動車用および定置用 PEFC の開発目標は表 3-5-2,表 3-5-3 のとおりである。
表 3-5-2 FCCJ の自動車用 FC の開発目標
2010 年時点
2015-2020 年
最終
2
∼1000 円/m
-30∼90℃
-30∼100℃
-40∼120℃
30%(15-20 年)
加湿器レス
-20℃で 0.05Ω・cm2
120℃・湿度 35%で 0.0125Ω・cm2 以下
電解質膜目標コスト
セル温度
相対湿度
電解質膜抵抗(暫定案)
触媒活性(カソード)
3倍
10 倍
0.3g/kW
0.1g/kW
※質量活性標準触媒に対する向上率
発電電力当たり総白金使用量
0g/kW
表 3-5-3 FCCJ の定置用 PEFC の開発目標
温度
湿度
連続運転時間
起動停止回数
2008 年
70℃
100%
4 万時間
2012 年
80∼85℃
65%
5 万時間
4,000 回
−149−
2015 年以降
80∼90℃
30∼40%
9 万時間
3-5-2 FCV の開発状況
わが国自動車メーカにおける FCV の開発状況を整理したものを表 3-5-4∼表 3-5-8 に
示す。2002 年 12 月に,トヨタ自動車と本田技研工業が内閣府を始めとする 5 省庁に,
高 圧 水 素 形 FCV の 限 定 的 リ ー ス 販 売 を 行 っ た 。 そ の 後 , 2003 年 12 月 に は
DaimlerChrysler が,2004 年 3 月には日産自動車もリース販売を開始した。また,2005
年 6 月にはトヨタ自動車「FCHV」および本田技研工業「FCX」が,燃料電池車として
は日本で初めて,一般車両と同様に販売を目的とした型式認証を取得した。これにより,
普及への段階を一歩進めたこととなる。
表 3-5-4 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 1)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 1992 年から FCV の開発を進め,1996 年の EVS-13 では実際に走行し,
1999 年の東京モーターショーではコンポーネントを展示。
・2001 年 1 月,Clean Hydrocarbon Fuel を研究の主要な候補とすることで
GM と合意し,この Clean Hydrocarbon Fuel の実現に向けて,他の自動
車メーカやエネルギー供給メーカ等と協調して推進していく。
・ 2001 年 3 月に直接水素形(MH タンク)FCV 試作車「FCHV-3」を発表。
・ 2001 年 6 月に高圧水素形 FCV 試作車「FCHV-4」を発表。国土交通省大
臣認定を取得し,公道走行試験を開始。7 月からは CaFCP でも公道走行
試験を開始。
・ 同時に高圧水素形ノンステップ大型路線バス「FCHV-BUS1」を日野と共
同で開発したと発表。日野製車両をベースにトヨタ製 FC スタックを搭載。
公道走行試験を目指し開発を進めていく。
・ 2001 年 10 月,東京モーターショーで CHF 改質形 FCV 試作車「FCHV-5」
を出展。
・ 2002 年 1 月に,トヨタ内の技術・生産技術の FC 開発力を結集した FC
開発センターを新設。FC 開発センターを中心にトヨタグループの力を合
わせ,世界トップレベルの FC 技術開発を進める。
・ 2002 年 7 月,2003 年末までを目標としていた販売計画を前倒しし,2002
2002 年
年末に日本と米国で限定販売を開始すると発表。向こう 1 年で日米あわせ
トヨタ リース販売
て 20 台程度の販売を計画している。
開始
・ 2002 年 9 月,日野と共同で開発した高圧水素形ノンステップ大型路線 FC
バス「FCHV-BUS2」(自社製スタック)が国土交通省大臣認定を取得し,
公道走行試験を開始。2003 年夏からは,東京都営バスの営業路線で運行
走行試験を行う予定。
・ 2002 年 11 月,高圧水素形 FCV「トヨタ FCHV」(自社製スタック)が
限定販売を可能とする国内初めての国土交通省大臣認定を取得。
・ 2002 年 12 月 2 日,世界で初めて,市販 FCV「トヨタ FCHV」を日米で
納入した。日本では,内閣官房,経済産業省,国土交通省,環境省の計 4
台をリース販売(120 万円/月)。米国では,カリフォルニア大学のアー
バイン校とデービス校の計 2 台をリース販売(1 万ドル/月)。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2003 年 3 月から「トヨタ FCHV」で公道
走行実証試験を開始。
・ 2003 年 7 月 , 2005 年 の 愛 知 万 博 で , 来 場 者 の 輸 送 手 段 と し て
「FCHV-BUS2」の改良型を導入すると発表。車両台数は 8 台程度で,瀬
戸会場と長久手会場の間を 6∼8 分程の間隔で運行させる計画。
・ 2003 年 8 月,「トヨタ FCHV」を愛知県庁,名古屋市,東邦ガス,東京
ガス,新日本石油,岩谷産業へ各 1 台ずつリース販売。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2007 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−150−
表 3-5-5 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 2)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2003 年 8 月,東京都営バスの営業路線で「FCHV-BUS2」の運行を開始。
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「Fine-N」を
出展。
・ 2003 年 12 月,「トヨタ FCHV」を国土交通省関東地方整備局に納入した。
パトロールカーとして使用される。
・ 2004 年 4 月,自社製 35MPa の水素ボンベで高圧ガス保安協会(KHK)
の認証を取得。
・ 2005 年 1 月,自社製 70MPa の水素ボンベで高圧ガス保安協会(KHK)
の認証を取得。
・ 2005 年 2 月,日本国際博覧会(愛・地球博)における会場間移動用に
「FCHV-BUS」8 台,これに加えて,海外からの賓客が会場内を移動する
際の先導車として FCHV2 台を提供。FCHV-BUS は会場間の走行距離は,
4.4km,運行間隔は約 8 分間隔,1 時間当たり往復 800∼1,000 人の輸送
2002 年
能力。
トヨタ
リース販売
・ 2005 年 6 月,「トヨタ FCHV」の型式認証取得。自社製オールコンポジッ
(続き)
開始
ト水素ボンベを搭載。
・ 2005 年 10 月,「トヨタ FCHV」を大阪府にリース販売。
・ 2005 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー4 輪駆動の
「Fine-X」を出展。
・ 2006 年 3 月,「FCHV-BUS」1 台を知多乗合㈱に貸与し,同社の営業路
線で 1 日 1 往復営業運行する。期間は 3 月 9 日から 2 週間。
・ 2006 年 7 月,中部国際空港内に設置されるセントレア水素ステーション
の開設時期にあわせて営業運行エリアを拡大。知多乗合㈱に 1 台,ランプ
バスとして中部スカイサポート(株)に 2 台貸与して,営業運行を開始した。
・ 2007 年 4 月,中部国際空港周辺地域において,燃料電池ハイブリッド車
「トヨタ FCHV」による営業運行を実施。
・ 2007 年 9 月,「トヨタ FCHV」で大阪-東京間約 560km をエアコンをつ
けて,水素補充することなく完走したと発表。
・ 2000 年に高圧水素形 FCV 試作車「エクステラ FCV」を発表。2001 年 4
月に CaFCP で公道走行試験を開始。
・ 2001 年 7 月に Xcellsis から FC エンジンの提供を受けることで合意。
・ 2001 年 11 月に Renault(ルノー)と FCV の共同開発を発表。FC スタッ
クのみ共同開発を行い,その他の部分は独自に開発を行う。
・ 2002 年 1 月に中期環境計画をまとめ,FCV については 2005 年までに市
販可能な技術開発を完了するとしている。燃料については,当面は水素の
高圧貯蔵方式での実用化を目指す。
・ 2002 年 2 月,UTC Fuel Cells と自動車用 FC を共同開発することで合意。
ルノーもこの共同開発に参加。合意事項は 2 つ。UTC が日産に独自開発
した FC パワープラントを評価のために提供することと,FCV 用部品を 3
2004 年
社で共同開発すること。
日産
リース販売
・ 2002 年 11 月,高圧水素形 FCV「X-TRAIL FCV」(UTC-FC 社製スタッ
開始
ク)が国土交通省大臣認定を取得。
・ あわせて,当初 2005 年を目標としていた販売計画を前倒しし,2003 年中
に限定販売を行うことを発表。車両は「X-TRAIL FCV」をベースに改良
を加え,数台程度をリース方式で販売する予定。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2003 年 3 月から「X-TRAIL FCV」で公道
走行実証試験を開始。
・ 市販予定の FCV の駆動系部品を Ballard から調達する。
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「EFFIS」を
出展。
・ 2004 年 3 月,コスモ石油に「X-TRAIL FCV」1 台をリース販売(100 万
円/月)。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2007 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−151−
表 3-5-6 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 3)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2004 年 4 月,神奈川県と横浜市に「X-TRAIL FCV」を 1 台ずつリース販
売。
・ 2005 年 2 月,自社製の燃料電池スタックと 70MPa 高圧水素容器を開発
したことを発表。高圧水素容器は,高圧ガス保安協会の認可も取得。
2004 年
・ 2005 年 12 月,「X-TRAIL FCV」05 モデルの大臣認定取得。
日産
リース販売
・ 2006 年 2 月,カナダバンクーバーにて,70MPa 水素ボンベ搭載 FCV に
(続き)
開始
て走行試験を実施。
・ 2006 年 9 月,国際物流総合展 2006 に圧縮水素を燃料とした FC フォーク
リフトを出展。カナダのジェネラルハイドロジェン社の PEFC を搭載。
・ 2007 年 2 月,ハイヤー仕様の燃料電池車を神奈川都市交通へ納車。
・ 2000 年 11 月から CaFCP において高圧水素形 FCV 試作車「FCX-V3」
(Ballard 製スタック搭載)の公道走行テストを開始。2001 年 2 月からは
ホンダ製スタックを搭載した「FCX-V3」の公道走行テストを開始。2001
年 7 月には「FCX-V3」(Ballard 製スタック搭載)の国土交通省大臣認
定を取得し,栃木県を中心に公道走行テストを開始。
・ 2001 年 7 月,米国加州の研究所敷地内に太陽光エネルギーから水素を発
生させる FCV 用水素製造・供給ステーションを設置し,実験稼動を開始。
実験には「FCX」シリーズが用いられた。
・ 2001 年 9 月に高圧水素形 FCV 試作車「FCX-V4」を発表。2002 年 3 月
には,国土交通省大臣認定を取得し,公道走行試験を開始。35MPa 高圧
水素タンクでの公道試験は日本初。
・ 2002 年 7 月,高圧水素形 FCV「Honda FCX」(Ballard 製スタック)が
米国環境保護庁(EPA)と加州大気資源局(CARB)から,FCV では世
界で初めてとなる販売認定を取得。また,DOE と EPA から発行された
「2003 年モデル自動車燃費ガイド」に,FCV として初めて記載された。
・ 併せて,2003 年までに商品化を目標としていた計画を前倒しし,2002 年
末に日米で販売を開始すると発表。当初 2∼3 年で日米あわせて 30 台程度
の販売を計画している。
・ 2002 年 11 月,「Honda FCX」の販売が可能になる国土交通省大臣認定
2002 年
を取得。
ホンダ リース販売
・ 2002 年 12 月 2 日,世界で初めて,市販 FCV「Honda FCX」を日米で納
開始
入した。日本では,内閣府に 1 台リース販売(80 万円/月)。米国では,
ロサンゼルス市に 1 台リース販売(1 万ドル/月)。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2003 年 3 月から「Honda FCX」で公道走
行実証試験を開始。
・ 2003 年 7 月,経済産業省,環境省,岩谷産業に「Honda FCX」をリース
販売(80 万円/月)。
・ 2003 年 9 月,「Honda FCX」をサンフランシスコ市に 2 台リース販売す
ると発表。
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「KIWAMI」
を出展。
・ 2003 年 10 月,氷点下 20℃での始動が可能な Honda 製燃料電池スタック
を開発,FCX に搭載し公道試験を開始と発表。2005 年から日米でリース
販売を開始すると発表。従来型のバラード製 PEFC を 2004 年末までに中
止し,ホンダ製に切り替える予定。
・ 2004 年 1 月,箱根駅伝に大会本部車として FCX を提供。
・ 2004 年 4 月,氷点下での始動を可能にした「Honda FC STACK」搭載
「FCX」の屋久島でのテスト走行を開始と発表。鹿児島大学を中心とする
大学間共同研究チーム,屋久島電工株式会社の 3 者が展開する「屋久島ゼ
ロエミッションプロジェクト」の一環。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2007 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−152−
表 3-5-7 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 4)
メーカ
商品化等
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2004 年 11 月,「Honda FC STACK」搭載「FCX」を 2 台販売すること
をニューヨーク州政府と合意と発表。契約は 2 年間。
・ 2004 年 12 月,「Honda FC STACK」搭載「FCX」の国土交通省大臣認
定を取得。
・ 2005 年 1 月,箱根駅伝に大会本部車として「Honda FC STACK」搭載
「FCX」を提供。
・ 2005 年 1 月,「Honda FC STACK」搭載「FCX」を 1 台北海道庁に納車。
・ 2005 年 6 月,「FCX」の型式認証取得。
2002 年
・ 2005 年 6 月,「FCX」をアメリカの個人ユーザにリース販売。
ホンダ
リース販売
・ 2005年10月,東京モーターショーでコンセプトカー「FCX CONCEPT」
(続き)
開始
を発表。
・ 2006年9月,FCXコンセプトの走行を開始。また,2008年に日米でこのコ
ンセプトをベースとした新型燃料電池車の限定販売を開始すると発表。
・ 2007年3月,燃料電池車「FCX」を米国の17歳女優にリース販売。
・ 2007年11月,燃料電池自動車への家庭用水素供給システム「ホーム・エ
ネルギー・ステーションIV」の実験稼動を開始。
・ 2007年11月,ロサンゼルスモーターショーにて,「FCXクラリティ」を
発表。2008年夏からの米国でのリース販売を発表。
・ 2001年10月にGMと燃料電池技術開発分野において,長期的に相互協力を
することで合意。車両への燃料電池搭載技術の開発および将来の燃料電池
車の開発を目的とする。
・ 2003年10月,GM製スタックを搭載した軽乗用車タイプの高圧水素形FCV
「WagonR」,「MR Wagon」を発表し,大臣認定を取得。
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「Mobile
Terrace」を出展。
・ JHFCプロジェクトに参加し,2004年1月から「WagonR」で公道走行実
証試験を開始。
・ 2004年8月,700気圧圧縮水素貯蔵システムについて,日本国内で初めて
スズキ
未定
高圧ガス保安協会の認可を取得。
・ 2004年12月,700気圧圧縮水素貯蔵システムを搭載した軽自動車の燃料電
池車「MRワゴン-FCV」をGMと共同開発し,国土交通大臣認定を取得。
・ 2005 年 10 月,東京モーターショーでコンセプトカー「IONIS(イオニス)」
を出展。
・ 2006 年 9 月,メタノール形燃料電池を搭載した電動車いす「MIO」を開
発し,国際福祉機器展に参考出品。
・ 2007 年 10 月,東京モーターショーに,英国インテリジェントエナジー社
製の FC スタックを搭載した燃料電池二輪車「crosscage(クロスケージ)」
を出展。
・ 2001年 10月,東京モーターショーで高圧水素形FCV試作車「MOVE
FCV-K-Ⅱ」を出展。軽乗用車で高圧水素タイプのFCVを試作したのは初
めて。FCスタックはトヨタ製を使用。
・ 2003年1月,「MOVE FCV-K-Ⅱ」が軽自動車クラスのFCVで初めて大臣
認定を取得。2月から公道走行試験を開始。
・ 2003年9月から,おおさかFCV推進会議に参加。FCVを推進するための各
2004 年
種イベントを実施。「MOVE FCV-K-Ⅱ」が2台参加している。
ダイハツ リース販売
・ 2004年6月,大阪府庁へ公用車として「MOVE FCV-K-Ⅱ」をリース販売
開始
(20万円/月)。
・ 2005年10月,東京モーターショーでコンセプトカー「Tanto FCHV」出展。
・ 2007年9月,独立行政法人 産業技術総合研究所と協力し,白金を全く使用
せず,燃料には水加ヒドラジンを安全な状態にして使用することにより,
CO2を全く排出しない燃料電池の新たな基礎技術を開発したと発表。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2006 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
−153−
表 3-5-8 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 5)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 当初 2005 年頃の実用化(少量導入)を目指して,燃料入手性,フリート
走行実績から,導入が比較的容易なメタノール改質形の FCV を開発。(FC
スタック,改質技術の開発は三菱重工が担当。車載システムに関しては 2
社で調整し,共同で開発)
・ 2001 年夏に三菱重工がメタノール改質形 FC スタックを開発,三菱自動
車製ワンボックス車の床下に搭載し走行に成功。固体高分子膜(DuPont
製)以外は全て自社製。
・ DaimlerChrysler 社との提携を機に,同社の支援を受けて実用化を進める
こととし,2001 年 10 月の東京モーターショーに,DaimlerChrysler 社の
燃料電池システムの搭載を予定した未来コンセプトカー「Space Liner」
三菱
未定
を出展。
・ スタックは DaimlerChrysler 社,Ballard 社などによるアライアンスから
供給を受け,三菱自動車は二次電池やモータなどの周辺技術の開発を進め
ている。
・ 2003 年 9 月,DaimlerChrysler 社の FC システムを搭載した高圧水素形
FCV「MITSUBISHI FCV」を発表し,大臣認定を取得した。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2004 年 1 月から「MITSUBISHI FCV」
で公道走行実証試験を開始。
・ 2004年1月,「MITSUBISHI FCV」が大阪国際女子マラソンの広報車と
して走行。
・ 2000 年度から「サンバーEV」をベースにメタノール改質形 FCV を開発。
NEDO の PEFC プロジェクトのフェーズⅡの一環として実施。FC システ
富士重工
未定
ムを車載する場合の具体的な課題摘出を目的としたもの。2001 年度以降は
これらの課題解決を目指した研究開発を行う。
・ FCV の 開 発 に 1991 年 か ら 着 手 。 1998 年 か ら Ford を 通 じ て Ballard ,
DaimlerChrysler等とのアライアンスへ参加。技術者がFordのチームに参
画。
・ アライアンスで開発したFCシステムの供給を受ける。
・ 2001年2月にアライアンス製のFCシステムを搭載したメタノール改質形
FCV「プレマシーFC-EV」を発表。国土交通省大臣認定を取得し,2月か
マツダ
未定
ら7月まで日本での公道走行実験を行った。
・ FCVの開発はアライアンスの枠組みの中で進めている。FCシステムは
Ballard,FCVに必要なユニットの統合化・車両制御システムはFordが開
発を行っている。
・ 水素吸蔵合金については現在も開発を継続。2000年11月には広島大学と
共同で,100℃以下の温度で6%の水素を吸放出させることに成功。
・ DMFC搭載二輪車「FC06」を開発し,2003年10月の東京モーターショー
に出品。
・ 2004年9月には「FC06 PROT」でナンバーを取得し,公道走行を実施。
・ 2005年9月より,DMFC搭載FC二輪車FC-me1台を静岡県にリース販売開
始。
2005 年
ヤマハ
リース販売 ・ 2005年10月,東京モーターショーにてFC-meを出展。DMFCスタックは
発動機
ジーエス・ユアサコーポレーション製。
開始
・ 2006年10月,EVS22にて水素を燃料とした125ccクラスのFCハイブリッ
ド型二輪車「FC-AQEL」を出展した。
・ 2007年10月,東京モーターショーに「FC-Dii」を出展。DMFCとリチウ
ムイオン電池を搭載。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2006 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−154−
国内メーカによる FCV の一覧を表 3-5-9,表 3-5-10 に示す。
表 3-5-9 国内メーカの燃料電池車一覧(その1)
トヨタ
日産
発表年月
車両
燃料タイプ
補助電源
諸元(参照)
1996.10
1997.9
2001.3
2001.6
2001.6
2001.10
2002.9
2002.12
2003.10
2005.1
2005.6
2005.10
2007.9
1999.5
2000.10
2002.12
FCEV
FCEV
FCHV-3
FCHV-4
FCHV-BUS1
FCHV-5
FCHV-BUS2
トヨタ FCHV
Fine-N
FCHV-BUS
FCHV
Fine-X
FCHV
ルネッサ FCV
エクステラ FCV
X-TRAIL FCV
水素吸蔵合金タンク
メタノール水蒸気改質
水素吸蔵合金タンク
圧縮水素(25MPa)
圧縮水素(25MPa)
クリーン炭化水素系
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(70MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
−
圧縮水素(70MPa)
メタノール改質
圧縮水素
圧縮水素
−
−
−
−
−
−
−
−
−
表 3-5-11
表 3-5-12
−
表 3-5-13
−
−
−
2003.10
EFFIS
圧縮水素
鉛酸電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
リチウムイオン電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
−
ニッケル水素電池
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池
コンパクト
リチウムイオン電池
コンパクト
リチウムイオン電池
コンパクト
リチウムイオン電池
2003.11
2005.12
1999.10
1999
2000.2
2001.1
2001.9
2002.11
ホンダ
2003.10
2003.10
2004.12
2005.6
2005.10
2006.9
2007.11
注)
X-TRAIL FCV
03 モデル
X-TRAIL FCV
05 モデル
FCX-V1
FCX-V2
FCX
FCX-V3
FCX-V3
FCX-V4
Honda FCX
Honda FC STACK
搭載 FCX
KIWAMI
Honda FC STACK
搭載 FCX
Honda FC STACK
搭載 FCX
FCX コンセプト
FCX コンセプト
(走行可能モデル)
FCX クラリティ
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素
(35MPa/70MPa)
水素吸蔵合金タンク
メタノール
オートサーマル改質
メタノール改質
圧縮水素(25MPa)
圧縮水素(25MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
−
−
表 3-5-14
−
ニッケル水素電池
−
ニッケル水素電池
ウルトラキャパシタ
ウルトラキャパシタ
ウルトラキャパシタ
ウルトラキャパシタ
−
−
−
−
−
圧縮水素(35MPa)
ウルトラキャパシタ
−
−
−
−
圧縮水素(35MPa)
ウルトラキャパシタ
−
圧縮水素(35MPa)
ウルトラキャパシタ
表 3-5-15
次世代水素タンク
ウルトラキャパシタ
−
圧縮水素(35MPa)
リチウムイオン電池
表 3-5-16
圧縮水素(35MPa)
リチウムイオン電池
表 3-5-17
:2006 年度末現在までに大臣認定を取得した車両(X-TRAIL FCV 05 モデルは 35MPa で取得)
:2006 年度末現在までに型式認証を取得した車両
−155−
表 3-5-10 国内メーカの燃料電池車一覧(その2)
マツダ
発表年月
車両
燃料タイプ
補助電源
諸元(参照)
1997.12
1999.10
デミオ FCEV
デミオ FCEV
PREMACY
FC-EV
MFCV
スペース・ライナー
MITSUBISHI FCV
MOVE EV-FC
MOVE FCV-K-Ⅱ
Tanto FCHV
MR ワゴン−FCV
ワゴン R−FCV
Mobile Terrace
MR ワゴン−FCV
IONIS
サンバーFCEV
水素吸蔵合金タンク
水素吸蔵合金タンク
ウルトラキャパシタ
−
−
−
メタノール改質
鉛酸電池(始動用)
表 3-5-18
メタノール改質
−
圧縮水素(35MPa)
メタノール改質
圧縮水素
圧縮水素(35MPa)
リチウムイオン電池
−
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
−
−
表 3-5-19
−
表 3-5-20
−
圧縮水素(34.5MPa)
なし
−
−
圧縮水素(70MPa)
−
メタノール改質
−
なし
−
−
−
表 3-5-21
−
−
2001.2
三菱
ダイハツ
1999.10
2001.10
2003.9
1999.10
2001.10
2005.10
2003.10
スズキ
富士重工
注)
2003.10
2004.12
2005.10
2000
:2006 年度末現在までに大臣認定を取得した車両
−156−
表 3-5-11
外
TOYOTA・HINO
FCHV-BUS (2005 年 1 月発表)
観
10.515×2.490×3.360
65
80
交流同期電動機
160(80×2)
520(260×2)
固体高分子形(トヨタ製)
180(90×2)
圧縮水素(35MPa)
ニッケル水素電池
−
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
価格
表 3-5-12 TOYOTA FCHV 05 モデル(2005 年 6 月型式認証取得)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
価格
4.735×1.815×1.685
1,880
5
155
330(10・15 モード)
交流同期電動機
90
260
固体高分子形(トヨタ製)
90(最大)
圧縮水素(35MPa)(トヨタ製水素タンク)
ニッケル水素電池
105 万円/月(リース価格)
−157−
表 3-5-13 改良型 TOYOTA FCHV (2007 年 9 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
4.735×1.815×1.685
1,880
5
155
約 780(10・15 モード)
交流同期電動機
90
260
固体高分子形(トヨタ製)
90(最大)
圧縮水素(70MPa)(トヨタ製水素タンク)
ニッケル水素電池
表 3-5-14 Nissan X-TRAIL FCV 05 年モデル (2005 年 12 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
4.485×1.770×1.745
1,790
5
150
370 以上(70MPa 高圧水素搭載時は 500km 以上)
減速機一体型同軸モータ
90
固体高分子形(日産製)
90
圧縮水素(35MPa/70MPa)
コンパクトリチウムイオン電池
−158−
表 3-5-15 HONDA Honda FC STACK 搭載 FCX
(2004 年 12 月発表,2005 年 6 月型式認証取得)
外
観
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
出力補助装置
燃料/貯蔵方式
容量(L)
4.165×1.760×1.645
4
150
430(LA モード)
交流同期電動機(Honda 製)
80(109PS)
272(27.7kg・m)
固体高分子形(Honda 製)
86
ウルトラキャパシタ(Honda 製)
高圧水素(35MPa)
156.6
表 3-5-16 HONDA FCX コンセプト(走行可能モデル)(2006 年 9 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
出力補助装置
燃料/貯蔵方式
容量(L)
4.760×1.865×1.445
4
160
570(LA-4 モード)
交流同期電動機(Honda 製)
95(129PS)
256(26.1kg・m)
固体高分子形(Honda 製)
100
リチウムイオンバッテリー
高圧水素タンク(35MPa)
171
−159−
表 3-5-17 HONDA FCX クラリティ(2007 年 11 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
出力補助装置
燃料/貯蔵方式
容量(L)
4.835×1.845×1.470
1,625
4
160
交流同期電動機(Honda 製)
100
256
固体高分子形(Honda 製)
100
リチウムイオンバッテリー
高圧水素タンク(35MPa)
171
表 3-5-18 MAZDA PREMACY FC-EV (2001 年 2 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料
出力補助装置
価格
4.350×1.695×1.605
1,850
5
交流誘導電動機
65(88PS)
固体高分子形(Ballard 製)
メタノール
鉛酸電池(始動時のみ)
試作車
−160−
表 3-5-19 MITSUBISHI FCV (2003 年 9 月発表)
外
観
ベース車両
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
水素タンク容量(L)
出力補助装置
グランディス
4.755×1.795×1.690
2,000
5
140
150
交流誘導モータ
65
210
固体高分子(Ballard 製)
68
圧縮水素(35MPa)
117
ニッケル水素電池
表 3-5-20 DAIHATSU MOVE FCV-K-Ⅱ (2001 年 10 月発表)
外
観
3.395×1.475×1.705
4
105
120
交流同期電動機
32
65
固体高分子形(トヨタ製)
30
圧縮水素(25MPa)
ニッケル水素電池
試作車
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
価格
−161−
表 3-5-21 SUZUKI MR ワゴン−FCV(2004 年 12 月発表)
外
観
MR ワゴン
3.395×1.475×1.590
4
110
200
交流同期電動機(PB13A)
38
GM との共同開発
圧縮水素(70MPa)
ベース車両
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料
表 3-5-22 スズキ「crosscage(クロスケージ)」(2007 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
航続距離(km)
電動機
燃料電池
燃料
出力補助装置
1.985×0.645×1.020
200
交流同期電動機
固体高分子形
(英国 Intelligent Energy 社製)
高圧水素タンク(35MPa)
リチウムイオン電池
(NEC トーキン株式会社製)
−162−
表 3-5-23 ヤマハ発動機 FC-me (2005 年 10 月発表)
外
観
乾燥重量(kg)
最高速度(km/h)
航続距離(km)@ speed (km/h)
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料電池出力(kW,Net)
燃料
出力補助装置
65
40
100 @ 30
0.95
DMFC
0.5kW
MeOH54
リチウムイオン電池(6.2Ah×25V)
−163−
3-5-3 今後の販売展開・商品化について
各自動車メーカによる FCV の今後の販売展開・商品化の計画について,国内訪問イン
タビュー調査結果,プレスリリース等から,表 3-5-24 に整理する。
表 3-5-24 自動車メーカによる今後の FCV の販売展開・商品化の計画
○トヨタ FCHV について(リース限定販売済み)
・ 2003 年に,政府関係,地方自治体,エネルギー関連企業へのリース販売を行っている。
・ 2005 年に型式認証を取得。
・ 限定導入の目的は,広く皆さんに FCHV を知って頂く事と合わせて,市場データにより社内
の評価方法を検証することである。様々な使用履歴の FCV を回収・解析し,社内の評価結果
と比較して耐久試験方法や評価基準を見直す。コンプレッサやポンプ等も同様。大量生産に
はこうした検証を経ることが必要である。
・ 上記目的のため必要台数を出すが,普及の条件が整う前にそれ以上増やすのは費用対効果的
に意味が無い。それに要する資源は基礎研究や基礎開発に用いる方が効果的。普及には商品
性,インフラ整備,マーケットニーズの 3 条件が整うことが必要である。
トヨタ
・ 様々な技術課題をクリアしない限り,色々な車種に展開することはできない。公道走行で得
られたデータをフィードバックしながら技術のレベルアップを図っていくことがまず必要。
○FCHV-BUS2 について
・ FCHV と同様に,技術課題をクリアしてから今後の販売展開について具体的に検討したい。
・ インフラを考えると,全国規模の整備が必要な乗用車に比べ,フリートのバスの方が導入し
やすい。ただし,バスは耐久性の要求が厳しいので,技術レベル的には難しい。(乗用車と
バスの普及が)どちらが先になるかは,市場側が決めていくことになる。
・ 一般の人々に水素や FCV を知ってもらうため,また,インフラ整備の促進という意味におい
て FC バス導入の効果は大きい。
○X-TRAIL FCV について(リース限定販売済み)
・ 2002 年 11 月に大臣認定を取得した X-TRAIL FCV に改良を加え,2004 年 3 月に限定リース
日産
販売を開始。
○Honda FCX について(リース限定販売済み)
・ 今後 2∼3 年で,日米あわせて 30 台程度のリース限定販売を計画。(2002 年 12 月 3 日プレ
スリリース)
・ 日本では,官公庁や一般企業向けに販売する計画。(2002 年 12 月 3 日プレスリリース)
・ Honda 製内製スタックを搭載した FCX を 2005 年から日米でリース販売を開始。従来型のバ
ラード製 PEFC を 2004 年末までに中止し,ホンダ製に切り替え。
ホンダ ・ 2005 年に型式認証を取得。
○FCX コンセプトについて
・ 2006 年 9 月,次世代の燃料電池車「FCX CONCEPT」の走行を公開。
・ 2008 年には,日米でこのコンセプトをベースとした新型燃料電池車の限定販売を開始と発表。
○FCX クラリティについて
・ 2008 年夏にもアメリカで,秋には日本でそれぞれリース販売すると表明(2007 年年末記者
会見)
マツダ ・ マツダ車としての FCV の商品化については,現状では未定。
・ FCV の普及時期については,早くて 2010∼2020 年頃と考えており,その時期に間に合うよ
うに商品化を進める。具体的な時期は未定。
三菱
・ 販売時に想定している車種は,50∼60kW の小型車クラスである。価格は HEV と同等以下を
目指す。
・ 国内で初めて,70MPa 圧縮水素貯蔵システムを搭載した軽自動車の燃料電池車「MR ワゴン
−FCV」を GM と共同開発し,12 月 1 日,国土交通大臣認定を取得した。2005 年 1 月より
スズキ
この車両の公道試験を開始し,実用化に向けて開発を進めていく予定である。(2004 年 12
月 3 日プレスリリース)
ダイハ ・ 商品として販売できる時期は,現状ではわからない。技術の進展や他社の動向を見ながら検
討していく。
ツ
出典:2003 年度∼2006 年度の JARI 国内訪問インタビュー調査,2002 年度 JEVA 国内訪問インタビュー
調査,プレスリリース等を基に作成
−164−
3-6 定置用等の燃料電池の開発をめぐる状況
固体高分子形燃料電池はエネルギー効率,低騒音,環境適合性などの優れた特性から
車載以外の用途への開発も進展している(表 3-6-1)。定置用 FC については,常温に近
い作動温度で発電と給湯が可能(熱利用を含めた総合効率で 70%以上)なため,家庭用・
業務用コージェネレーションとしての用途が有望視されており,内外のメーカが開発を
進めている。また,既存のエネルギーインフラの整備が遅れている開発途上国支援の新
たなツールとしても期待されている。
表 3-6-1 車載用以外の主な利用形態
需要分野
家庭用コージェネレーション
非常用電源
可搬型電源
モバイル用・携帯用電源
概
要
1∼3kW 程度。住宅などの自家用電源。
バックアップ用家電(屋内での使用)
工事用・レジャー用電源(エンジン発電機の代替)
ノートパソコン,携帯電話用電源
3-6-1 家庭用・業務用
定置用 FC の実用導入時期は,低コスト化の目標値が内燃機関と競合する自動車ほど
厳しくないため,自動車用よりも早いとされ,商業化競争は既に始まっているともいわ
れている。家庭用としては,すでに都市ガスが 2,500 万戸(カバー面積 5%),LPG が
2,800 万戸に普及しているため,これらの改質形 FC の研究・開発が行われ,商品化が
進められている。また,液体燃料として,灯油の改質技術の研究・開発も進められてい
る状況にある。
平成 17 年度からは,初期市場創出段階における民間技術レベルおよび問題点を把握し,
今後の開発課題を抽出するため,定置用燃料電池大規模実証事業をスタートさせた。概
要を表 3-6-2 に示す。
−165−
表 3-6-2 定置用燃料電池大規模実証事業の概要
事業実施者
目的
助成
対象事業
助成事業
実施期間
助成対象
システム
申請者
助成額
導入台数
(財)新エネルギー財団(NEF)が NEDO からの助成金をうけて実施
定置用燃料電池システムを大規模に設置し,一般家庭等での実際の使用状
況における実測データを取得することにより,我が国の定置用燃料電池の
初期市場創出段階における技術レベル及び問題点を把握し,今後の燃料電
池技術開発の課題を抽出する。
1kW 級定置用燃料電池システムを大規模に設置し,一般家庭等での運転
データ等の実測データを 2 年間取得する事業。
【平成 17 年度】第 1 期:平成 17 年 4 月 25 日∼平成 17 年 9 月 30 日
第 2 期:平成 17 年 10 月 12 日∼平成 18 年 2 月 28 日
【平成 18 年度】平成 18 年 4 月 26 日∼平成 19 年 2 月 28 日
【平成 19 年度】平成 19 年 4 月中旬∼平成 20 年 2 月 29 日
助成の対象となるシステムは,次の要件を満たすものとする。
① 住宅等への設置に適したシステムで定格出力が1kW 級であるもの。
② 未使用品であるもの。(中古品は対象外)
③ 助成事業実施期間中に次の④,⑤の要件に適合するシステムを 30 台以
上申請者に提供できるメーカのシステムであるもの。
④ 自己認証において,次の要件に適合するもの。ただし,燃料種が LPG
の場合は 2%の効率低下を容認する。
(a)定格運転時の発電効率が 30%以上(HHV)であること
(b)定格運転時の総合効率が 65%以上(HHV)であること
(c)50%負荷運転時発電効率が 27%以上(HHV)であること
(d)50%負荷運転時総合効率が 54%以上(HHV)であること
⑤ システムの耐久性が 2 年以上であること
申請者は,募集期間にシステムを設置しようとする者であって,次の要件
を満たしている者。
① 助成対象システムに燃料を供給するエネルギー供給事業者であること。
② 助成事業実施期間に同一メーカからシステムを 5 台以上,合計 10 台以
上設置でき,一般家庭等での運転データ等の実測データを 2 年間取得で
きること。
燃料電池システム設置 1 台当たり下記の額を上限とする。
平成 17 年度 : 600 万円
平成 18 年度 : 450 万円
平成 19 年度 : 350 万円
平成 17 年度 第 1 期:175 基
第 2 期:305 基
平成 18 年度
:777 基
平成 19 年度
:930 基
3-6-2 ポータブル電源向け,モバイル向け
屋外などで使うポータブル電源向け燃料電池,数 W∼数十 W レベルの出力が必要な
モバイル(携帯電子機器)向け燃料電池の開発も進んでいる。特にポータブル電源向け
の燃料電池としては,荏原バラードは,2003 年 3 月,純水素を燃料とする PEFC「Nexa」
(100 万円),「Nexa」に制御装置,電力変換機,バッテリー等を組み込んだパッケー
ジ機「FCBox」(250 万円)の販売を開始した。また,GS ユアサは,独立電源として,
設置が簡単でかつ安全で取り扱いが容易な可搬型の燃料電池システム「YFC−1000」を
開発したと発表している。モバイル向けとしては,三洋電機やカシオ,NEC,日立製作
所などにおいて PC 向けの DMFC の開発が活発化している。
−166−
3-7 燃料電池をめぐる国際連携の動き
3-7-1 燃料電池車に関する協力関係
燃料電池車の開発は基本的には各自動車メーカが独自に行っているが,近年,企業間
で国際連携を行う動きも活発である。以下に各社の資本提携関係等を整理する。
(1) 主要な自動車メーカの資本関係
提携解消
日本
日
産
×
ィー
日
産
デ
三
菱
ふ
そ
う
ゼ
ル
マ
ツ
ダ
三
菱
自
動
車
工
業
ト
ヨ
タ
い
す
ゞ
ダイハツ
日野
フ
ド
ー
ー ︵
×
ク
ラ
イ
ス
ラ
× ×提携解消
提携解消
ォー
ダ
イ
ム
ラ
提携解消
N
U
M
M
I
G
M
旧
ダ
イ
ム
合併解消
ラ
×
×提携解消
ー
フ
ト
フ
ー
バ
ゲ
ン
チ
ン
シェコダ
ー
ル
ク
ス
ワ
アウディ
セアト
ロ
ル
ス
ロ
イ
ス
B
M
W
ベントレー
トラック部門を売却
韓国
サムスン・
ルノー
×提携解消
現
代
起
亜
大
宇
凡例 → : 資本
図 3-7-1 自動車メーカの資本提携関係
出典:「NIKKEI MECHANICAL 別冊 21 世紀のクルマはこうなる part2」(2000 年 7 月 17 日),
「燃料電池実用化戦略研究会報告書」(平成 13 年 1 月 22 日)を基に作成
−167−
プ
ジ
ョー
ア
ポ
ル
シ
ー
ブ
ア
イ
リ
ス
バ
ス
ォ
サ
ェ
オ
ペ
ル
ッ
ガ
ラ
ン
ド
・
ロ
ィ
ジ
ー
ア
ス
ト
ン
・
マ
ー
ク
ボ
ル
ボ
*
乗
用
車
ー
・
ク
ラ
イ
ス
ラ
ー
エ
ボ
バ
ス
ー ︶
ッ
ボ
ル
ボ
*
ト
ラ
ャ
ル
ノ
ー
欧州
本
田
ヤマハ発動機
×提携解消
米国
富
士
重
工
業
ス
ズ
キ
・
シ
ト
ロ
エ
ン
(2) FC スタックメーカと自動車メーカとの関係
FC スタックメーカと自動車メーカとの関係を図 3-7-2 に示す。
a) Ballard グループ
Ballard
Daimler
出資
出資
AFCC
(Automotive Fuel Cell Cooperation)
Ford
出資
スタック供給
出資
VW
マツダ
b) UTC Fuel Cells グループ
UTC Fuel Cells
出資
United Technologies Corporation
スタック供給
(バス)
スタック供給
現代
Fiat
c) Nuvera FC グループ
Nuvera FC
スタック供給
(乗用車)
スタック供給
(バス)
Fiat
MAN
d) 自動車メーカ内製グループ
Opel
出資,
スタック供給
共同開発
ダイハツ
出資,スタック供給
ホンダ
トヨタ
GM
日野
出資,スタック供給
日産
出資,スタック供給
PSA
スズキ
図 3-7-2 FC スタックメーカと自動車メーカとの関係
出典:燃料電池実用化戦略研究会報告書(平成 13 年 1 月 22 日)を基に作成
−168−
3-7-2 主要企業の合併,事業分割等の経緯
図 3-7-3,図 3-7-4 に燃料電池関係企業の合併,事業分割の相関図を示す。
2008 年 3 月現在
燃
料
電
池
事
業
区
分
燃料電池関連ビジネスを手がける企業
合併や吸収で消滅した企業
資本・出資関係、合併
資本・出資関係の終了、独立
買収による吸収、グループ入り
GE グル-プ
GE /
(GE Power Systems)
Honeywell
ELD MEA
CBK
DRT
SYSTEM
Southern
California Gas
GE MG が Plug Power
に出資(1999)
Plug
Power
SCG が
PlugPower
に出資(1999)
MEA
高分子膜 MEA
STY
Allied
Signal
合併
GE Micro Generation
合弁で PlugPower 設立 (1997)
電極
Honeywell
子会社
DTE Energy
MBN
ELD
カーボン
ブラック
GE が
Honeywell
を買収
(2000)
STY
合弁設立
(1999)
触媒
CST
JM が触媒に特化、電子材料を
Allied Signal に売却 (1999)
Johnson
Matthey
Honeywell
STY
STK
CST
JM が FC 部門を分社化、
JM FC を設立 (2002.4)
Johnson Matthey
Fuel Cells
CST CBK ELD MEA
MKT
United Technologies Corp
合弁設立(2001.5)
合弁解散(2004.6)
RFM FUL
Hydrogen
Source
東芝
グループ企業
UTC Fuel Cells
(UTC Power)
東芝が出資を解消、
(2004.12)
STK SYSTEM
合弁設立(2001.3)
合弁解消(2004.12)
RFM FUL
東芝が
子会社化
東芝燃料電池システム
(旧 東芝インターナショナルフュエルセルズ)
Chevron
Texaco
FUL
FUL
Degussa が FC 部門を分割
dmc2 設立 (1999)
技術開発
提携
OM Group が dmc2 を
買収 (2001)
技術開発
FUL RFM 提携
OM Group
GM
Shell
FUL RFM
Quantum
STG
Hydrogenics
ANA
STY
技術開発
提携
BP
Exxon
Mobil
MKT
マーケティング
管理運営
分析
機器
電子材料
GE Fuel Cell Systems
Shell /
Shell Hydrogen
改質
技術
Johnson Matthey
STY
STK STY
(1999)
Anglo Platium
が JM FC に
出資(2002)
RFM
FUL
ANA
FCEV
STG
Anglo Platium
STK
STK
スタック 燃料
ドライブ 燃料電池 定置型 車載
FCEV
トレイン システム
ストレージ
資本関係によらない開発協力・提携
Mechanical
Technology
CST
触媒
技術開発
提携
技術開発
提携
技術開発提携
出資(2001.10)
Giner
STG
合弁設立
FCEV
CSTCBK ELD MEA
出資
出資
燃料電池車
燃料電池車
開発協力
開発協力
Opel
FCEV
Giner
Electrochemical
Systems
STG
CST
Degussa が
スぺシャリ
テケミカル
に集中
(1999)
dmc2
CSTCBK ELD MEA
Unicore が
OM Group を
買収 (2002)
Degussa-Hüls
Umicore
CST
CSTCBK ELD MEA
スズキ
FCEV
Degussa-Hüls
Umicore と Solvay
が合弁を設立予定
(2008)
Solvay
Solvicore
MEA
図 3-7-3 主要企業の資本関係(合併,合弁,事業分割の相関図)(その 1)
−169−
MBN
2007 年 3 月現在
旧 燃料電池アライアンス
Daimler
(旧 DaimlerChrysler)
Ford
FCEV
DaimlerBenz と
Ford が Ballard
に出資 (1997)
FCEV
DaimlerBenz と
Ford が Ballard
に出資 (1997)
合弁設立(1997)
XCELLSiS
(旧 DBB fuel
cell engines)
Ecostar Electric
Drive Systems
SYSTEM
TEXTRON の
カーボン部門
Ballard が TEXRON の
カーボン部門を買収
DRT
Ballard が XCELLSiS と
Ecostar を子会社化(2001)
荏原製作所
Ballard Power Systems
STK
Ballard Power
Systems AG
(旧 XCELLSiS)
合弁設立
Ecostar Electric
Drive Systems
SYSTEM
荏原
バラード
DRT
Ballard が旧 XCELLSiS を分離
DaimlerChrysler と Ford が
出資 (2005)
SYSTEM
Daimler と
Ford がAFCCに
出資 (2007.11)
AFCC (Automotive Fuel
Cell Cooperation)
MKT STY
EcoStar Electric を
Siemens VDO
Automotive に
売却(2006.12)
Daimler と Ford が
AFCCに出資
(2007.11)
Ballard は定置用FCに特化
自動車用FC部門をAFCC
として分割、DaimlerとFord
が出資(2007.11)
NuCellSys
(1998)
Ballard Power Systems
(定置用FCシステムに特化)
(自動車用 FC システムに特化)
SYSTEM
SYSTEM
Arthur D Little
E-TEK
CST CBK ELD
DeNora が E-TEK を買収 (1993)
De Nora
RFM
E-TEK
ELD
CST CBK ELD
改質部門を分割し EPYX
設立 (1998)
DeNora が FC 部門を分割
DeNora Fuel Cells 設立 (1999)
De Nora
Fuel Cells
STK
Epyx
合併設立
RFM
(2000)
Nuvera Fuel Cells
STK RFM
Rhône-Poulenc
PEMEAS が
DeNora の
E-TEK 部門
を買収
(2005.11)
Hoechst
バイオ
Hoechst から SGL Carbon が独立 (1993)
SGL Carbon
化学工業部門を分社化
Celanese 設立(1999)
合併、事業分割 ( 1999)
Aventis
化学工業
Celanese
CBK
Axiva
Siemens が Axiva の化学プラント
部門を買収(2000)
MBN MEA
DeNora が
PEMEAS に出資
(2005.11)
Celanese が燃料電池部門を含む
化学部門をベンチャー化 (2000)
STK
Celanese
Venture
PEMEAS
E-TEK
Siemens
MBN MEA
MBN MEA
Celanese が FC 部門を分離、
PEMEAS 設立(2004.4)
CST CBK ELD
Axiva
(化学プラント部門)
Ecostar Electric
Drive Systems
DRT
Engelhard
BASF が PEMEAS(E-TEK)を買収
(2006.12)
BASF
CST
BASF が Engelhard を
買収(2006.6)
CST CBK ELD MBN MEA
図 3-7-4 主要企業の資本関係(合併,合弁,事業分割の相関図)(その 2)
−170−
3-7-3 燃料電池に関する標準化に向けた取組み状況
燃料電池に関する国際標準については,ISO(国際標準化機構)および IEC(国際電
気標準会議)の場において議論がなされている(図 3-7-5)。
ISO と IEC の場では,燃料電池,燃料電池車(電気自動車の一部という扱い),水素
技術の観点から標準化活動が行われている。それぞれの審議体制を図 3-7-6 に示す。
ISO(国際標準化機構)
IEC(国際電気標準会議)
↑
↑
↑
↑
TC(専門委員会)
TC(専門委員会)
TC(専門委員会)
TC(専門委員会)
↑
↑
↑
↑
SC(分科委員会)
WG(ワーキンググループ)
SC(分科委員会)
WG(ワーキンググループ)
↑
↑
WG(ワーキンググループ)
WG(ワーキンググループ)
・ ISO,IEC ともに非政府間機構で,WTO/TBT 協定で国際標準化機関として認められている。
・ IEC は主に電気及び電子技術分野の標準化を,ISO はその他の分野を担当(協議して分担)。
・ ISO と IEC とは,TC 等でジョイントを組んで調整を行うことがある。
・ ISO/IEC ともに専門委員会(TC)の場で規格案が審議される。必要に応じて分科委員会(SC)やワー
キンググループ(WG)が設置される。
・ 規格案の審議はボトムアップ方式で実施され,WG での承認後,分科委員会,専門委員会の承認を経
て,最終的に ISO/IEC の規格となる。
・ WG 等では新規作業項目として提案した国が幹事国となることが多い。
図 3-7-5 組織と企画策定手順
出典:燃料電池実用化戦略研究会報告書(平成 13 年 1 月 22 日)
【国際審議体制】
ISO(国際標準化機構)
ISO/TC22(自動車)
のうち/SC21
電気自動車
SC21幹事国:ドイツ
IEC(国際電気標準会議)
ISO/TC197
(水素技術)
幹事国:カナダ
IEC/TC69
(電気自動車)
幹事国:スウェーデン
IEC/TC105
(燃料電池技術)
幹事国:ドイツ
【国内審議体制】
日本工業標準調査会(JISC) いずれも積極参加(P)メンバー
(国内審議体制)
ISO/TC22のうち
/SC21
(財)日本自動車研究所
(JARI)※
ISO/TC197
(財)エンジニアリング
振興協会
(ENAA)
IEC/TC69
(財)日本自動車研究所
(JARI)※
IEC/TC105
(社)日本電機工業会
(JEMA)
ENAA
水素エネルギー
技術標準化委員会
JARI※
標準化委員会
JEMA
電気用品等規格・
基準国際化
第105小委員会
(国内委員会)
JARI※
標準化委員会
JARI※
標準化委員会
(燃料電池車関連)
JARI※
標準化委員会
(燃料電池車関連)
※平成14年度まではJEVAが実施主体であったが,平成15年7月1日のJARIとの統合化により,平成15年度以降の実施主体はJARIとなっている。
図 3-7-6 燃料電池の標準化に係る審議体制
−171−
3-8 燃料電池に関する法令・規制の状況
3-8-1 燃料電池に関する主な法令・規制
現在の燃料電池に関連した法令・規制には,燃料供給施設に関連した法令・規制,自
動車走行に関連した法令・規制,定置用燃料電池に関連した法令・規制がある。表 3-8-1
に主な法令・規制を整理する。
表 3-8-1 燃料電池に関連した主な法令・規制
法令等の名称
燃料電池車
車両
道路運送車両法
燃料タンク 高圧ガス保安法
燃料供給施設
高圧ガス保安法
水素
建築基準法
高圧ガス保安法
天然ガス ガス事業法
建築基準法
高圧ガス保安法
LPガス
建築基準法
毒物及び劇物取締法
メタノール 労働安全衛生法
消防法
定置用
電気事業法
電気
消防法
消防
東京都火災予防条例
高圧ガス保安法
天然ガス
ガス事業法
液化石油ガス法
LPガス
建築基準法
建築
備考
燃料自動車全般
高圧水素タンク,液体水素タンク
貯蔵水素ガス
水素貯蔵量
貯蔵天然ガス
ガス工作物としての天然ガス
天然ガス貯蔵量
貯蔵LPガス
LPガス貯蔵量
劇物としてのメタノール
有害物質としてのメタノール
危険物としてのメタノール
定置用燃料電池全般
灯油の貯蔵量,離隔距離
燃料電池発電設備
高圧の定置用燃料電池
天然ガスの供給設備及び消費設備
LPガスの供給及び消費設備
灯油,LPガスの貯蔵量
3-8-2 燃料供給施設関連
(1) 水素設備に係る法規制注)
1) 水素の法的扱い
圧縮水素および液化水素は,高圧ガス保安法第 2 条に定められている「高圧ガス」
(常用の温度又は温度 35℃においてゲージ圧力が 1MPa 以上が対象)の扱いを受ける。
それぞれ,
・圧縮水素:可燃性ガス
・液化水素:液化ガス(可燃性ガスの極低温貯蔵は,液化ガスとして取り扱ってよい)
の基準が適用される。
注)
平成 9 年度,10 年度の WE-NET 計画サブタスク 7 において詳しく検討されている。本項は基本的に
以下の報告書からの引用である。
水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7 水素利用技術に関する調
査・検討(平成 11 年 3 月)
−172−
2) ガス水素,液体水素の貯蔵・処理等の行為に係るガス施設関連法規
ガス水素,液体水素の貯蔵・処理等の行為は,表 3-8-2 に示すガス施設関連法規の
適用を受ける。貯蔵および消費に関しては,容積 300m3 以上の貯蔵を行っている場合
が対象となる。
表 3-8-2 ガス施設関連法規一覧
各種行為
ガス水素
貯槽貯蔵
及び
液体水素
の貯蔵
容器貯蔵
液体水素の移充填
圧縮水素の消費
関連法規
一般高圧ガス保安規則
第 22 条(貯槽により貯蔵する第 1 種貯蔵所*1 に係る技術基準)
第 26 条(第 2 種貯蔵所*2 に係る技術基準)
一般高圧ガス保安規則
第 23 条(容器により貯蔵する場合の技術基準)
一般高圧ガス保安規則
第 6 条(定置型製造設備に係わる技術上の基準)
高圧ガス保安法 第 24 条の 2(消費)
第 1 種貯蔵所:都道府県知事の許可を受けて設置する貯蔵所
第 2 種貯蔵所:都道府県知事に届け出て設置する貯蔵所
出典:水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
調査・検討(平成 11 年 3 月)
*1
*2
水素利用技術に関する
3) 貯蔵・貯槽容器に関する規制
水素の貯蔵量には,建築基準法によって制限が設けられている。同法では,圧縮水
素は可燃性ガスに分類され,貯蔵量は準工業地域で 350Nm3 まで,商業地域で 70Nm3
までと制限されていた(表 3-8-3)。しかし,2005 年 4 月にとりまとめられた「燃料
電池の実用化に向けた包括的な規制の再点検の実施結果について」注)によると,圧縮
水素の貯蔵量については,可燃性ガスではなく,圧縮ガスの数量制限が適用されるこ
とを通知したとされ,また,制限数量を超えるものについては,建築基準法第 48 条の
規定に関する許可制度の活用により建築を求めることが可能であり,今後,水素スタ
ンドの安全に関わる技術基準の策定を受けた後,技術的助言として通知を行う予定で
ある旨が示された。これにより CNG スタンドと同様に表 3-8-3 に示す見直し前の圧
縮水素の規制量の 10 倍までの処理・貯蔵が認められることになると考えられる。なお,
液体水素は液化ガスとしての規制を受けることになる。
注)
「燃料電池の実用化に向けた包括的規制の再点検の実施結果について」は 3-8-5 節参照。
−173−
表 3-8-3 見直し前の建築基準法における水素の処理・貯蔵の規制量
第一種・第二
種低層住居
専用地域
第一種・第二
種中高層住
居専用地域, 近隣商業地
第一種・第二 域,商業地域
種住居地域,
準住居地域
常時貯蔵する場合
0
35
70
製造所等で処理する場合
0
1,000
2,000
常時貯蔵する場合
0
3.5
7
製造所等で処理する場合
0
100
200
出典:第 1 回燃料電池実用化戦略研究会資料(平成 11 年 12 月 24 日)を基に作成
圧縮水素
(Nm3)
液体水素
(トン)
準工業地域
工業地域,工
業専用地域,
用途地域の
指定なし
350
10,000
35
1,000
無制限
無制限
無制限
無制限
4) 施設の建設地域および敷地に関する法規制
水素供給施設の建設地域は建築基準法により規制されている。建築基準法では,自
動車に充填するための水素供給施設は「圧縮ガスの製造を営む工場」に該当し,その
建築可能な用途地域は原則として工業地域および工業専用地域に限定されていた。
2005 年 3 月,燃料電池または内燃機関の燃料として自動車に充填するための圧縮水素
の製造であって,安全上および防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める基
準に適合する製造設備を用いて行われる場合には,第一種住居地域,第二種住居地域,
準住居地域,近隣商業地域,商業地域および準工業地域における圧縮水素の製造に係
る用途規制を適用しないこととなった。 これにより,住宅地や商業地における水素供
給施設の建設が可能となる。
また,高圧ガス保安法により,水素供給施設における貯蔵設備または処理設備から
保安物件までの距離(m)も規制されている。貯蔵能力(圧縮水素は m3,液化水素は
kg)または処理能力に対応して,隣接施設に対して表 3-8-4 に示す距離を確保する必
要があった。ここで第一種保安物件とは,学校(校庭も含む),患者 20 名以上の収容
施設を有する病院(庭も含む),定員 300 人以上の劇場・映画館・図書館等,1 日平
均乗降者 20,000 人以上の駅の母屋およびプラットホーム,百貨店・マーケット・ホテ
ル等で不特定多数のものを収容する 1,000m2 以上のものである。第二種保安物件とは,
第一種保安物件以外の建築物で住居の用に供するものである。本規制は,2005 年 3
月,CNG スタンド並みの保安距離に見直され,火気取扱施設より 4m,敷地境界より
6m に緩和された。高圧ガス製造設備における規制内容と緩和後のイメージを図 3-8-1
に示す。
−174−
表 3-8-4 見直し前の保安物件に対する水素貯蔵・処理設備の施設距離
第一種保安物件からの距離(m)
第二種保安物件からの距離(m)
貯蔵または処理能力:x(m3 または kg/日)
0≦x<10000
10000≦x<52500 52500≦x<990000
3
x + 10000
30
12 2 = 16.97
25
2
x + 10000
30
8 2 = 11.31
25
出典:水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
調査・検討(平成 11 年 3 月)
水素利用技術に関する
高圧ガス設備
(圧縮機、蓄圧器、等)
H2
火気取扱施設
8m
11.3m
17m
第2種保安物件(民家等)
第1種保安物件
(学校、病院等)
H2
火気取扱施設
6m
4m
敷地境界
(障壁の設置により6m未満可)
出典:石油産業活性化センター資料
図 3-8-1 高圧ガス製造設備における規制内容と緩和後のイメージ
さらに,消防法により規制されていたガソリンスタンドとの併設についても 2005
年 3 月に消防法における危険物の規制に関する政令の一部および規則の一部が改正さ
れ,燃料電池自動車に水素を充填する設備を設ける給油取扱所に係る位置,構造およ
び設備の技術上の基準を新設し,水素供給スタンドをガソリンスタンドに併設するこ
とが可能となった。
−175−
5) 従来の輸送機関用各種供給スタンドに関する法規制
CNG,LPG,LNG スタンド,およびガソリンスタンドは,それぞれ以下の法規に
より施設の立地に関する規制を受けている。
表 3-8-5 輸送機関用各種供給インフラに関する法規制
スタンド
CNG スタンド
LPG スタンド
LNG スタンド
ガソリンスタンド
法規制
一般高圧ガス保安規則の「圧縮天然ガススタンドに係わる技術上の
基準」
液化石油ガス保安規則の「液化石油ガススタンドに係る技術上の基
準」
一般高圧ガス保安規則
消防法の「給油取扱所」
注 1) LNG,LPG を充填する場合は高圧ガスの製造に該当し,1 日あたりの処理量(100m3/日以上
と未満)によって,第一種製造設備と第二種製造設備に分類される。これら設備は,許可と届け
出の違いはあるが,立地条件での違いはない。CNG スタンドは別基準がある。
注 2)CNG,LPG,LNG スタンドを給油所と隣接して建設する場合,消防法の規制を受ける。
また,建築基準法によって都市計画法が定める用途地域ごとに,各種燃料の貯蔵の
数量に関する規制がある。これにより CNG の畜ガス器や,LPG のタンク,ガソリン
スタンドのタンクの大きさが表 3-8-6 に示すように規制されている。CNG については,
平成 9 年までは水素と同じ可燃性ガスの扱いを受け,表中の数値の 10 分の 1 の貯蔵
しか認められていなかったが,圧縮ガスの扱いに変更され,表中の数値までが貯蔵で
きることになった。これによる貯蔵数量の増加により過剰設備を持つことなく CNG
自動車への充填時間の短縮等が可能となった。
表 3-8-6 建築基準法による各種燃料の処理・貯蔵の規制数量
第一種・第二種
低層住居専用
地域
CNG(Nm3)
LNG(トン)
LPG(トン)
ガソリン(L)
注)(
第一種・第二種
中高層住居専
用地域,第一
種・第二種住居
地域,準住居地
域
近隣商業地域,
商業地域
準工業地域
350
3.5
3.5
500
(50,000)
700
7
7
1,000
(50,000)
3,500
35
35
5,000
(50,000)
0
0
0
0
(0)
工業地域,
工業専用地域,
用途地域の指
定なし
無制限
無制限
無制限
無制限
)は地下貯蔵槽についての特例
参考として,各種燃料の供給スタンドにおける運営に必要な法的資格者を表 3-8-7
に示す。
−176−
表 3-8-7
燃料種別
ガソリンスタンド
(SS)
法 令
消防法
電気
電気事業法
天然ガス
高圧ガス
保安法
LP ガス
高圧ガス
保安法
燃料供給施設運営に必要な法的資格者
資 格
以下のいずれかの免状の交付と 6 ヶ月以上の実務経験を有する者
甲種危険物取扱者免状
乙種危険物取扱者免状(第 4 類)
契約電力 50kW 未満の場合,資格者不要
契約電力 50kW 以上の場合,電気主任技術者(外部委託可能)
以下のいずれかの免状の交付と 6 ヶ月以上の実務経験を有する者
甲種機械高圧ガス製造保安責任者免状
甲種化学高圧ガス製造保安責任者免状
乙種機械高圧ガス製造保安責任者免状
乙種化学高圧ガス製造保安責任者免状
特別丙種化学高圧ガス製造保安責任者免状(天然ガス指定)
以下のいずれかの免状の交付と 6 ヶ月以上の実務経験を有する者
甲種機械高圧ガス製造保安責任者免状
甲種化学高圧ガス製造保安責任者免状
乙種機械高圧ガス製造保安責任者免状
乙種化学高圧ガス製造保安責任者免状
特別丙種化学高圧ガス製造保安責任者免状(液化石油ガス指定)
液化石油ガス丙種化学高圧ガス製造保安責任者免状
6) インフラストラクチャ(水素供給ステーション)に係る法規制への対応
水素供給ステーションの設置にあたり,水素に関する法規制の中でもっとも支障が
あると考えられるのは,表 3-8-3 に示した建築基準法によって規制を受ける圧縮水素
の貯蔵量である。2005 年 3 月の規制緩和により,圧縮水素が可燃性ガスから圧縮ガス
の扱いへ緩和され,商業地域などでは 700 Nm3 程度の貯蔵量になる見込みであるが,
700 Nm3 では FCV20∼30 台への水素供給が限界であり,まだ不十分である。一般的
な水素供給ステーションの貯蔵量としては,その 4∼5 倍にあたる 2,800∼3,500 Nm3
程度が必要と考えられる。さもなければ,水素を圧縮水素として貯蔵することは断念
して,液体水素もしくは水素吸蔵合金貯蔵に頼らざるを得ないことになる。水素は他
の燃料に比べガス体積あたりの発熱量が低い(メタンの 1/3 弱,プロパンの 1/8)
ことから,水素供給ステーションにおける水素貯蔵量に関しては,新たな基準が必要
と考えられる。
−177−
(2) メタノール設備に係る法規制
メタノール 100%の燃料の取扱いにあたっては,メタノールは毒物および劇物取締法
において劇物に指定されているため,メタノールスタンドには毒劇物取扱責任者の配置
が義務づけられる(表 3-8-8,表 3-8-9)。
また,販売する場合の都道府県知事への登録,譲渡に関する各種手続きが定められて
いる。
表 3-8-8 メタノールの保安法令上の取扱い
法
令
消防法
毒物及び
劇物取締法
取扱の概要
・甲種,乙種危険物取扱者(ガソリンと同じ)
・専用タンクは地下タンクに設置するなど,技術上の基準の特例を満たす必要有り。
・毒劇物取扱責任者
・毒物および劇物を販売する場合は,知事への「劇物一般販売業」の登録が必要。
・譲渡手続き:毒物劇物を販売する場合は,購入者から名称,数量等の資料を受け取
り,販売の日から 5 年間保存する義務あり。
注)M85 の場合は,消防法によって危険物に指定されているが,毒物及び劇物取締法の対象ではない。
表 3-8-9 メタノール燃料供給施設運営に必要な法的資格者
燃料種別
メタノール
(M85)
法 令
消防法
メタノール
(M100)
消防法
毒物及び
劇物取締法
資 格
以下のいずれかの免状の交付と 6 ヶ月以上の実務経験を有する者
・甲種危険物取扱者免状
・乙種危険物取扱者免状(第 4 類)
同上
以下のいずれかの資格を持つ者
・薬剤師
・応用化学に関する学科を修了した者
・毒物劇物取扱者試験に合格した者(以下のいずれか)
・一般毒物劇物取扱者試験
・特定品目毒物劇物取扱者試験
・内燃機関用メタノールのみの取り扱いに係る特定品目毒物劇
物取扱者試験
−178−
3-8-3 自動車走行関連
(1) 道路運送車両法
道路運送車両法は公道を走行する車両に対する法律であり,道路運送車両に関する登
録制度,保安基準,検査制度,整備事業等について規定している。省令として「道路運
送車両の保安基準」「自動車型式指定規則」がある。
道路運送車両法によると,公道を走行する自動車は 1 台ごとに車両検査を受けること
が原則であるが,量産車の場合は型式指定を受ければ,新規登録時の車検が免除される。
改造車,試作車,組立車などについては,1 台ごとの車検が必要となる。
(2) FCV の位置づけ
平成 17 年 3 月 31 日に道路運送車両の保安基準の改正が行われるまでは,FCV が公
道走行する場合,国土交通大臣の認定が必要であったが,基準の整備が行われたことに
より,FCV も一般車両と同様に型式認証が取得できるようになった。
これを受けて,2005 年 6 月 17 日付けで,トヨタ「トヨタ FCHV」およびホンダ「FCX」
が型式認証を取得した。
(3) 大臣認定制度注)
改造車,試作車,組立車としての検査については,同じ構造の車両であっても 1 台ご
とに検査を受ける必要がある。例えば,水素に関する技術基準がない状況下では,安全
性・公害防止性を検査のたびに議論し判断する必要があった。FCV の普及のためには,
検査の効率化が必要であり,そのためには FCV についての技術基準を定める必要があ
る。しかしながら,定めようとする技術基準の妥当性を判断するには一定量の実走行デー
タが必要になる。
このように,新技術を搭載した車が現在のガソリン車のような一般的な車に移行する
過程(その車に関する技術基準を定める過程)の措置として,いわゆる「大臣認定制度」
がある。これは,以下に示す道路運送車両の保安基準第 56 条の第 4 項に基づくもので
ある。
表 3-8-10 道路運送車両法における大臣認定の規定
道路運送車両の保安基準第 56 条第 4 項
国土交通大臣が構造又は装置について本章に定める基準の改善に資するた
め必要があると認定した試作自動車又は試験自動車でその運行のため必要な保
安上又は公害防止上の制限を付したものについては,当該構造又は装置に係わ
る本章の規定は,適用しない。
水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
査・検討(平成 11 年 3 月)
注)
−179−
水素利用技術に関する調
2001 年 2 月 8 日,マツダのプレマシーFC-EV,DaimlerChrysler の Necar5 が燃料
電池車(2 台ともメタノール改質形 FCV)として日本で初めて大臣認定を国土交通省か
ら受けた。その後,公道走行試験を行い,FCV の基準整備に向けて,技術的検証,安全
性の実証を行うと共に,一般的な使用条件における低公害車としての排ガス性能等の追
跡調査を行った。2001 年 6 月には,トヨタが FCHV-4 で,高圧水素形 FCV としては日
本で初めてとなる大臣認定を受け,公道走行試験を行った。さらにホンダも,2001 年 7
月に FCX-V3 で,2002 年 3 月には FCX-V4 で大臣認定を受け,公道走行試験を行って
いる。2002 年度になって,限定的にリース販売されるトヨタ FCHV,Honda FCX が
11 月に大臣認定を取得し,その後,JHFC プロジェクトに参加する日産,スズキ,三菱
自動車工業,DaimlerChrysler,GM の各車両も取得している。また,ダイハツの MOVE
FCV-K-Ⅱも軽自動車の FCV としては初めて大臣認定を取得した。
2004 年 12 月には,スズキが日本で初めて 70MPa 圧縮水素貯蔵システムを搭載した
軽自動車燃料電池車「MR ワゴン−FCV」を GM と共同開発し,大臣認定を取得した。
また,同じく 2004 年 12 月に,ホンダが氷点下での始動を可能とした次世代型燃料電池
スタック「Honda FC STACK」を搭載した「FCX」の国土交通大臣の認定を取得して
いる。
表 3-8-11 大臣認定を取得した FCV
車名
プレマシーFC-EV
NECAR5
FCHV-4
FCX-V3
FCX-V4
FCHV-BUS2
トヨタ FCHV
Honda FCX
X-TRAIL FCV
MOVE FCV-K-Ⅱ
F-Cell
HydroGen 3
ワゴン R-FCV
MR ワゴン-FCV
MITSUBISHI
FCV
X-TRAIL FCV
FCX(Honda FC
STACK 搭載)
MR ワゴン-FCV
FCHV-BUS
X-TRAIL FCV
燃料
メタノール
メタノール
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
液体水素
高圧水素
高圧水素
メーカ
マツダ
DaimlerChrysler
トヨタ
ホンダ
ホンダ
トヨタ/日野
トヨタ
ホンダ
日産
ダイハツ
DaimlerChrysler
GM
スズキ
スズキ
大臣認定取得日
2001 年 2 月 8 日
同上
2001 年 6 月
2001 年 7 月
2002 年 3 月
2002 年 9 月
2002 年 11 月
同上
2002 年 11 月
2003 年 1 月
2003 年 3 月
同上
2003 年 10 月
同上
高圧水素
三菱自動車
同上
高圧水素
日産
2003 年 11 月
高圧水素
ホンダ
2004 年 12 月
スズキ
同上
トヨタ/日野
日産
2005 年 2 月
2005 年 12 月
高圧水素
(70MPa)
高圧水素
高圧水素
−180−
大臣認定制度の下で取得された種々のデータに基づいて,国土交通省が「安全上およ
び公害防止上,特段の問題がないことが確認できた」と判断し,必要な法規制(当該自
動車の保安基準等)の追加・改正等が行われた段階で,当該自動車の大臣認定制度によ
る扱いは終了し,一般の自動車と同様の扱いを受けることになる。つまり,自動車メー
カが既存車と同様に技術基準等に基づいてその自動車を製造し,不特定多数の一般利用
者がその自動車を購入できるようになる。2005 年 3 月 31 日,道路運送車両法が改正・
公布され,保安基準に適合した燃料電池車であるトヨタ FCHV とホンダの FCX は 2005
年 6 月に型式認証を取得している。
なお,CNG 自動車の場合は,表 3-8-12 に示すように平成 4 年までは都市ガス事業者
のみによる利用であったため,改造車として受験・登録していたが,将来の普及拡大を
目指して平成 5 年 2 月から大臣認定制度による登録に移行した。大臣認定における「運
行のために必要な保安上又は公害防止上の制限」の具体的内容は,(社)日本ガス協会
が作成した自主技術基準が使用された。CNG 自動車の大臣認定扱いが解除されたのは,
扱い開始から 2 年 11 ヶ月後の平成 7 年 12 月であった。この間に,大臣認定により登録
された CNG 自動車は 488 台であった。
表 3-8-12 CNG 車の大臣認定の経緯
∼平成 4 年
平成 5 年 2 月
車両認定
改造車として受験・登録を行う
大臣認定制度による登録
平成 7 年 12 月
大臣認定扱いの解除
備考
「運行のために必要な保安上又は公害
防止上の制限」は日本ガス協会が作成
した自主技術基準を使用。
大臣認定取扱時の登録車は 488 台。
(4) 車載水素容器
車載水素容器としては,現在,高圧タンク,吸蔵合金タンク,液体水素タンクの 3 種
類があり得るが,高圧タンクと液体水素タンクについては高圧ガス保安法の対象(35℃
においてゲージ圧力が 1MPa 以上)となり,同法およびその関連法規(主として容器保
安規則と容器保安規則関係基準)による規制を受ける。容器保安規則には,容器の種類
(継目なし容器,溶接容器),試験・検査方法,刻印,表示,ガスの充填の方法,再検
査などについて定められている。
こうした高圧ガス容器に対する保安基準は,主として工業用ガスの小口配送に使用す
る容器を想定したものであり,自動車用燃料容器としては不都合や不便が生じることも
ある。CNG 用車載容器の場合,そうした不都合の解消のため,①容器を取り外した上
での定期的検査の免除,②軽量材料を使ったコンポジット容器の使用許可,などの規制
緩和が行われて,CNG 自動車の普及促進に寄与している。ただしこれは自動車用 CNG
容器に限った規制緩和であり,自動車用高圧ガス一般を対象にしているものではないの
で,水素容器については改めて規制緩和のための検討・働きかけを行う必要がある。
−181−
3-8-4 定置用燃料電池関連
定置用 FC の導入に関連する規制としては,電気事業法および消防法がある。これら
に関しては,相当の規制緩和が行われてきている。(表 3-8-13)。
表 3-8-13 定置用 FC に関連する法令・規制の緩和
法令・規制
電気事業法
消防法
項目
見直し前
①固体高分子形燃料電池設備は現状事業
用電気工作物扱いとなるため,下記の
保安規程と電気主任技術者に係る義務
等が発生。
・事業用電気工作物であるため,保安規
程の制定,届出,遵守。
・事業用電気工作物であるため,電気主
任技術者の選任,届出。
②固体高分子形燃料電池設備は,火力発
電所なみに,窒素ガスで置換(窒素パー
ジ)できる構造であり,設備を停止す
るための窒素ボンベを常備することが
義務づけられている。
①定置用燃料電池設備は,小型の家庭用
であっても設置届出が必要。
見直し後
ある一定の要件を満たすものを一般用電
気工作物に位置づけ,左記義務を不要と
した。(2005 年 3 月公布・施行)
2004 年 3 月より一定の要件を満たす事業
用電気工作物について,2005 年 3 月より
一定の要件を満たす一般用電気工作物に
ついて,不活性ガスパージを不要とした。
家庭で用いられると想定される出力で
あって,その使用に際し異常が発生した
場合に安全を確保するための措置を講じ
たものについては,設置届出を要しない
こととした。(2005 年 3 月通知)
家庭で用いられると想定される出力で
あって,その使用に際し異常が発生した
場合に安全を確保するための措置を講じ
たものについては,保有距離を要しない
こととした。(2005 年 10 月施行)
②定置用燃料電池設備は,小型の家庭用
であっても建築物からの相当の遠隔距
離(基本的には建物から 3m 以上。た
だし,消防長または消防署長が火災予
防上支障がないと認める場合はこの限
りではない。)をとることが必要。
③定置用燃料電池設備は,小型の家庭用 PEFC,PAFC または MCFC であって火
であっても逆火防止装置の設置が必 を使用するものについては,逆火防止装
置を要しないこととした。(2005 年 10
要。
月施行)
−182−
3-8-5 燃料電池関連の規制改革に向けた取組み
燃料電池の実用化に関して,小泉元総理大臣は,2002 年 4 月 26 日の閣僚懇談会にお
いて,FCV を政府として率先導入することを表明した。また,関係閣僚に対して率先導
入に必要となる措置を 2002 年中に講じるとともに,初期段階の普及をにらみ,2005 年
を目処に,安全性の確保を前提としつつ,包括的な規制の再点検を進めるよう指示した。
上記の指示を受け,2002 年 5 月,安全性の確保を前提とした燃料電池に係る包括的な
規制の再点検等について,関係省庁の厳密な連携を図るため,内閣官房に,内閣府およ
び関係省庁の局長等で構成される「燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議(以下,
連絡会議)」が設置された。また,連絡会議に併せて設置された,内閣府および関係省
庁の課長等で構成される連絡会議幹事会(以下,幹事会)において,事業者団体からの
規制再点検に係る要望項目毎の官民の役割分担の明確化,規制再点検の手順・スケジュー
ルの明確化について,精力的な検討を行った。
以上の検討を踏まえ,連絡会議は 2002 年 10 月に「燃料電池の実用化に向けた包括的
な規制の再点検の実施について」注1)をとりまとめた。ここでは,「Ⅰ.燃料電池自動
車の試験的市販に支障のないように,遅くとも 2002 年末までに実施すべき事項」,「Ⅱ.
2002 年末の試験的市販には支障ないが,商用レベルの燃料電池の初期導入が想定される
2004 年度末までに実施すべき事項」の 2 つの段階に分けて再点検の道筋をとりまとめて
いる。ただし,Ⅰについては,既に試験的な導入に支障はないとの結論を得ている。
連絡会議は,Ⅱの段階として,FCV の導入および走行関連(道路運送車両法,道路法,
高圧ガス保安法,消防法),水素供給設備の整備等関連(高圧ガス保安法,建築基準法,
道路法,消防法),家庭用燃料電池の導入関連(電気事業法,消防法)の各規制項目に
ついて,具体的な検討を着実に進めていくことが必要であるとしている。
このような規制改革に向けた取組みが行われている中,2002 年 12 月に,総合規制改
革会議(総理大臣の諮問会議)は,「規制改革の推進に関する第 2 次答申」注2)を行っ
た。この中では,燃料電池関連分野の規制改革について 20 項目の検討事項を挙げてお
り,2005 年頃に予想される初期段階の実用化,普及に向けて,「先行的に規制を改革」
することが必要であるとしている。
その後,関係省庁において燃料電池の規制の再点検が実施され,法令の改正等必要な
対応が行われた。連絡会議は 2005 年 4 月に「燃料電池の実用化に向けた包括的な規制
注1)
燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議決定「燃料電池の実用化に向けた包括的な規制の再点検
の実施について」(2002 年 10 月 25 日)
注2)
総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第 2 次答申−経済活性化のために重点的に推進すべき
規制改革−」(2002 年 12 月)
−183−
の再点検の実施結果について」注)をとりまとめた。表 3-8-14∼表 3-8-16 に燃料電池の
実用化に関連する規制の検討結果を示す。
注)
燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議決定「燃料電池の実用化に向けた包括的な規制の再点検の
実施結果について」(2005 年 4 月 28 日)
−184−
表 3-8-14 燃料電池の実用化に関連する規制の検討状況(その 1)
No.
項 目
所管官庁
関連する事業者
スケジュール
2002年度
2004年度
2003年度
2005年度
道路運送車両法
1
完了
2002.10施行
①届け出内容の明確化,手続きの明確化・
簡素化②燃料電池車の第三者譲渡
国土交通省
道路法
2
3
完了
①水底トンネル通行範囲の明確化②大臣認
定を受けた燃料電池自動車の通行の可否
該当法令なし
−
完了
地下駐車場への侵入の可否
高圧ガス保安法
4
完了
外国から日本に持ち込む際に,車体から燃
料容器を取り外さないでの検査
経済産業省
高圧ガス保安法
−185−
5
完了
移動式水素供給設備に係る保安統括者等に
係る敷地所有者側での選任・常駐の要否
道路法
6
燃料電池車の水底トンネル等で通行制限さ
れる積載水素量の緩和
国土交通省
高圧ガス保安法
7
水素高圧容器の例示基準の作成
経済産業省
完了
NEDO委託,
JARI主体で実施,
JRCM,
自工会協力
2004.6
技術的実証項
目を検討
高圧ガス保安法
8
2004.3施行
水素燃料容器用バルブの耐圧試験圧力の
見直し
技術的実証項
目を検討
2003.12パブリックコメント終了
2004.6
水素燃料用複合容器の高圧化・容量拡大の
ための例示基準作成
経済産業省
高圧ガス保安法
10
①高圧容器の再検査周期を車検周期と合わ
せ②車載状態での検査の可能化
規制当局による見直し
事業者による実験データ取得,
例示基準案を作成
高圧ガス保安法
9
2005.3施行
NEDO委託,
JARI主体で実施,
JRCM,
自工会協力
技術的実証項
目を検討
事業者による実験データ取得,
例示基準案を作成
規制当局による見直し
2004.6
技術的実証項
目を検討
事業者による実験データ取得
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料,燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議の決定を基に情報を追加
2005.3施行
2005.3施行
規制当局による見直し
表 3-8-15 燃料電池の実用化に関連する規制の検討状況(その 2)
No.
項 目
所管官庁
道路運送車両法
11
国土交通省
燃料電池車の型式認証制度の整備
消防法
12
燃料電池車が地下駐車場を利用する場合の
消火設備の検討
総務省
関連する事業者
スケジュール
2002年度
2003年度
官民によるデータの取得,規制
当局による見直し
2003.12
日本消防設備安全
センター主体,
NEDO,自工会,
JARI協力
規制当局による見直し
官民によるデータ取得
2004.6
技術的実証項
目の検討
NEDO委託,
PEC主体で実施
水素供給スタンドの保安統括者等の選任・常
駐義務の見直し
−186−
経済産業省
技術的実証項
目の検討
2004.6
水素供給スタンドの付臭剤以外の漏れ検知
装置の採用
技術的実証項
目の検討
2005.3施行
規制当局による見直し
事業者による実験データ取得
高圧ガス保安法
2005.3施行
規制当局による見直し
事業者による実験データ取得
2004.6
高圧ガス保安法
15
2005.3通知
高圧ガス保安法
水素供給スタンド設置に関する保安距離
2005年度
2005.3施行
交通安全研究所主
体,NEDO,自工会,
JARI協力
13
14
2004年度
2005.3施行
規制当局による見直し
事業者による実験データ取得
高圧ガス保安法
16
完了
移動式水素供給設備から車両への充てん可
能場所の要件の明確化
高圧ガス保安法
17
NEDO委託,
日本産業ガス協会
主体で実施
移動式充てん設備の繊維強化プラスチック
の複合容器の例示基準作成
液化ガス輸送容器の充てん率の上限の見直
し
高圧ガス保安法
19
水素供給スタンドの検査周期の延長
技術的実証項
目の検討
事業者による実験データ取得,
例示基準を作成
経済産業省
NEDO委託,
PEC主体で実施
NEDO委託,
PEC主体で実施
技術的実証項
目の検討
事業者による実験データ取得
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料,燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議の決定を基に情報を追加
2005.3施行
規制当局による見直し
事業者による実験データ取得
2004.6
技術的実証項
目の検討
2005.3施行
規制当局による見直し
2004.6
高圧ガス保安法
18
2004.6
2005.3施行
規制当局による見直し
表 3-8-16 燃料電池の実用化に関連する規制の検討状況(その 3)
No.
項 目
所管官庁
関連する事業者
スケジュール
2002年度
2003年度
2004年度
20
水素供給スタンドの工業地域,工業専用地
域以外の建設可能化
他法令の技術基準策定と合わ
せ,規制当局による見直し
NEDO委託,
PEC主体で実施
建築基準法
21
2005.3施行
国土交通省
他法令の技術基準策定と合わ
せ,規制当局による見直し
2004.3
用途地域毎の水素貯蔵量の見直し
国土技術研究セン
ター主体,
NEDO,自工会,
JARI協力
道路法
22
トレーラーの水底トンネル等の通行制限で①
指定トンネルの削減②搭載水素制限量の増
加
消防法
23
水素スタンドのガソリンスタンドとの併設可能
化
総務省
−187−
電気事業法
24
保安規定届出,電気主任技術者の選任の不
要化
経済産業省
電気事業法
25
経済産業省
不活性ガスによる可燃性ガスの置換不要化
規制当局による見直し
実験データの取得
2005.4施行
危険物保安技術協
会主体,
NEDO,PEC協力
日本電気協会主
体,
NEDO,JEMA,ガス
協会協力
日本電気協会主
体,
NEDO,JEMA,ガス
協会協力
2005.3施行
実験データの取得,規制当局に
よる見直し
2005.3施行
技術的実証項
目の検討
事業者による実験データの取
得,規制当局による見直し
2004.3施行(事業用のみ)
技術的実証項
目の検討
2005.3施行(一般用も追加)
規制当局による見直し
2004.2.27パブリックコメント終了
2005.3通知
消防法
26
家庭用燃料電池の危険要因抽
出
家庭用燃料電池の消防長への設置届け出
の不要化
家庭用燃料電池の建築物からの離隔距離
の縮小化
安全確保に必要な技術基準の検討・措置
2005.3通知
消防法
27
2005年度
2005.3施行
建築基準法
総務省
危険物保安技術協
会委託(2003年度)
家庭用燃料電池の危険要因抽
出
安全確保に必要な技術基準の検討・措置
消防法
28
逆火防止装置の不要化
2005.10施行
家庭用燃料電池の危険要因抽
出
安全確保に必要な技術基準の検討・措置
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料,燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議の決定を基に情報を追加
3-9 世界のエネルギー情勢
(1) 石油
2006 年末の世界の原油確認埋蔵量は約 1 兆 3,174 億バレル,可採年数は 50 年となっ
ている(図 3-9-1)。可採年数はここ 20 年以上にわたって 30 年を上回っている。今後,
石油消費量が増えても,石油探査や採掘技術が進歩し,新規油田の発見や従来油田から
の回収率の向上が予想されるため,可採年数は,当分の間,現状並で推移するとする見
方が強い。
また,図 3-9-2 に示すように,原油として採掘できなくなったとしても石油資源はま
だ地球上には存在するとの検討結果も出されている。しかし,こういった資源を活用す
る場合には,その純度や採掘・精製技術の難しさなどから,コストが大幅に増加すると
予想される。
図 3-9-1 原油の確認埋蔵量と可採年数(2006 年末現在)
出典:石油連盟「今日の石油産業 2007」2007.4
Oil and Gas Journal 誌(2006 年末号)
−188−
図 3-9-2 石油資源の究極可採埋蔵量
出典:石油連盟「今日の石油産業データ集」
アメリカ DOE では,石油需要の増加と供給可能な石油生産量を 3 つのパターンで示
している(図 3-9-3)。それによると,石油需要の増加率が 3%で推移した場合が最も早
く,2030 年に供給可能な石油生産量がピークに達するとしている。最も遅いケースであ
る石油需要増加率が 1%の場合でも 2050 年にはピークに達するとしている。
図 3-9-3 供給可能な石油生産量の年次推移予測
出典:DOE/EIA HP における公表資料「Long Term World Oil Supply」注)より
注)
DOE/EIA HP 内の公表資料
URL:http://tonto.eia.doe.gov/FTPROOT/features/longterm.pdf#search='EIA%20PEAK%20Range
%20USGS'
−189−
アメリカ DOE の EIA(Energy Information Administration)では,世界の原油価格
の将来見通しとして,図 3-9-4 のように 3 つのケースを推計している注)。これらのケー
スは,主に OPEC 諸国からの原油生産量の異なる見通しに基づいている。AEO2007 で
の短期の推計値は,AEO2006 に比べて約$9 高めとなっているが,長期的にはあまり変
化していない(基本ケースの場合)。
図 3-9-4 長期原油価格見通し
出 典 : 「 STATEMENT OF GUY CARUSO ADMINISTRATOR ENERGY INFOMATION
ADMINSTRATION U.S.DEPARTMENT OF ENERGY befor the COMMITTEE ON
ENERGY AND NATURAL RESOURCES UNITER STATES SENATE」 March 4,
2008(http://www.eia.doe.gov/oiaf/aeo/pdf/caruso030408.pdf)
原油の月平均価格価格の推移を図 3-9-5 に示す。
WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は,2003 年のイラ
ク戦争までは,1 バレル当たり 20∼40 ドルの間を推移していたが,イラク戦争後は,徐々
に上昇を続け,2004 年 9 月 28 日には初めて 50 ドルを突破,2005 年 6 月 26 日には一
時 60 ドルを超えている。さらに同年 8 月末のハリケーンの影響もあり一時期 70 ドルを
超えたが,その後,1 バレル当たり 60 ドル前後の水準で推移した。しかし,再び値上が
りし,2006 年 7 月 14 日には当時の WTI 原油市場最高値(終値)である 77.03 ドルを
記録した。その後は,再び下落基調に転じたが,2007 年 1 月を境に反転し,価格は急激
に上昇し始め,1 年間で約 40 ドル上昇し,2008 年 1 月 3 日には 100 ドルを突破し,一
時 100.09 ドルを記録した(終値:99.62 ドル)。その後,2 月 19 日には終値で 100.01
ドル/バレルを記録し,現在,月平均でも 90 ドル台を推移している。
注)
DOE/EIA「Annual Energy Outlook2007(AEO2007)」2007.2
−190−
[$/バレル]
120
北海ブレンド(欧州市場の基準銘柄)
WTI(米国市場の基準銘柄)
ドバイ(アジア市場の基準銘柄)
100
80
60
40
20
0
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
(ドバイの価格については,週平均値しか入手できなかったため,単純平均した月平均値)
図 3-9-5 原油価格の推移
出典:Energy Information Administration(HP:http://www.eia.doe.gov/)の
原油の Spot Prices データを基に作成
(2) 天然ガス
天然ガスは石油が出る場所には必ず存在するが,石油がない場所でも産出されるため,
中東以外にも広く分布している(図 3-9-6)。2006 年 12 月現在で約 181 兆立方メート
ルが確認埋蔵量とされている。これは現在の消費量の約 63 年分に相当する寿命である。
さらに新しいガス田が次々に発見され,将来の埋蔵量は現在の 3 倍程度が予測されて
いる。また,採掘と輸送コストに見合う価格になれば,これまで試掘されていなかった
シベリアや極地での開発が進み,埋蔵量の加算が考えられる。また,数百メートルから
1,000 メートルほどの海底にメタンが水の分子と結合したメタンハイドレートというも
のがある。これは現在の天然ガスの確認埋蔵量の 1.6∼12 倍もの埋蔵量があるともいわ
れている。
−191−
図 3-9-6 天然ガスの確認埋蔵量(2006 年 12 月現在 単位:兆 m3)
出典:日本ガス協会 HP
(3) まとめ
以上のように石油,天然ガスについては,当分の間は安定的に供給されるとする見方
があるが,時期については不確定要素が大きいものの,資源の枯渇は時間の問題である
といえる。また,資源の枯渇問題よりも CO2 排出による地球環境問題の方がより身近な
問題として化石燃料の利用の制約となりうる可能性が高いと指摘する意見もある。
したがって,いずれにせよ,資源の制約や環境保全のために,省エネルギーを進めつ
つ,新たなエネルギー供給源を探し,石油などの化石燃料依存からの脱却を進めていく
必要がある。
−192−
4.燃料電池車に関する技術開発等の動向
本章では,燃料電池に関する技術開発動向や課題等について,海外・国内でのインタ
ビュー調査や既存の文献等をもとに整理する。
4-1 燃料電池関連技術の研究開発動向と課題
4-1-1 「燃料電池実用化戦略研究会」による技術課題の整理
2001 年 8 月に開催された平成 13 年度の「燃料電池実用化戦略研究会」において「固
体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用技術開発戦略」が示され,この中で現状の技
術水準と課題,目標水準が提示された。以下,表 4-1-1∼表 4-1-3 にこの内容を要約する。
−193−
表 4-1-1 燃料電池スタック,改質器の技術課題
現 状
電解質膜 パーフルオロ系イオン交換膜
イオン伝導率:
0.1∼0.2S/cm
膜厚:20∼50μm
温度サイクル耐性(-40
∼80℃):50回
主な課題
機械強度向上
目標値
自動車用5千時間
定置用 4万時間
温度サイクル耐性 (常温∼使用温度)
向上
自動車用3∼6万回
定置用 4千回
耐熱性:約80℃
耐熱性向上
120∼150℃
価格:5∼15万円/㎡ 低コスト化
3∼5千円/㎡
湿度管理の容易化 低加湿,無加湿
フッ素化合物の処理
白金担持量の低減 0.2∼0.4g/kW
電極触媒 白金担持量:
2∼4g/kW
CO被毒耐性:10ppm CO被毒耐性向上 10∼50ppm
(電解質膜に同じ)
耐久性向上
価格:4∼8千円/kW 低コスト化
400∼800円/kW
低コスト化
500円/㎡
ガス拡散 カーボンペーパー
価格:数千円/㎡
基材
作業性向上
低コスト化
MEA技 ホットプレス法
−
信頼性向上
術
廃棄物処理対応
白金回収
セパレ-タ- カーボングラファイト
2
伝導度:2X10 S/cm
3
密度:2g/cm
厚さ:1∼5mm
薄型化
1mm以下
高強度化
耐腐食性向上
接触抵抗低減
価格:4千∼数万円/枚 低コスト化
100∼200円/枚
化
高効率化
スタック技術 −
−
耐久性向上
信頼性向上
改質器
耐久性向上
[自動車用]
メタノール
・試作車あり
・改質効率80%以上
・容量40∼150L/台
液体炭化水素系燃料
・研究室レベル
・基礎的課題多い
・2001年秋試作車発表
予定
耐久性向上
[定置用]
・天然ガ ス・ LP ガ ス等
の改質はりん酸形燃料
電池の技術と基本的に
共通
耐久性向上
小型・軽量化
高効率化
小型・軽量化
高効率化
始動性・負荷応答
性向上
低コスト化
燃料柔軟性
起動性・負荷応答
性向上
低コスト化
燃料柔軟性
5千時間以上かつ
起動停止:
3∼6万回/10年
30L/台以下
83%程度(LHV)
[定格の25%出力時]
応答は数秒以内
主な技術開発の方向性
・既存膜(パーフルオロ系)の改良
・補強膜の開発
・新規膜材料の開発(非パーフルオロ系
等)
・プロトン伝導機構/劣化機構の解明
・量産化技術の開発
・廃棄処分対応
役割分担
産官
産
産学官
産学官
産官
産
目標時期
短期
短期
中期
短期
短期
中期
・白金担持量低減技術の開発
・新規触媒の開発(白金代替)
・耐CO被毒性アノード触媒の開発
・高活性カソード触媒の開発
・劣化機構解明
・量産化生産技術の開発
・基材形態の改良
産学官
産学官
産
産学官
産学官
産
産
短期
中期
短期
中期
短期
短期
短期
・MEA内現象の解析
・MEAの新しい製造技術開発
・リサイクル技術の開発
産学官
産
産
短期
短期
中期
・新規材料の開発
・金属セパレーターの被覆技術の開発
・樹脂系セパレータの量産化技術開発
・溝形状等の成形加工技術の開発
産学官
産官
産
産
中期
短期
短期
短期
・加湿方法,冷却,ガス配流等の管
理技術の開発
・シール材・シール構造の開発
・劣化診断技術の確立
・クリーンガソリン、GTL向け改質器の開
発
・新規触媒の開発
・オートサーマル改質器の開発
・燃料成分,汚染物質が各種触媒に
与える影響の分析
産
短期
産
産学官
産
産学官
産
学官
短期
短期
短期
中期
短期
短期
産
短期
産学官
産
産
学官
中期
短期
短期
短期
1,000円/kW以下
4万時間以上
10∼30L/kW
87%程度(HHV)
[定格時]
5∼30分
2万円/kW以下
・多様な燃料に対応した改質器の開
発(天然ガスから灯油まで)
・新規触媒の開発
・高効率熱交換技術の開発
・分離膜型CO除去器の開発
・燃料成分,汚染物質が各種触媒に
与える影響の分析
出典:燃料電池実用化戦略研究会「固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用技術開発戦略」
(2001 年 8 月 8 日)を基に作成
−194−
表 4-1-2 水素燃料貯蔵・製造等に関する技術課題
圧縮水素方式
液体水素方式
水素吸蔵合金
水
素
貯
蔵
技
術
水
素
製
造
技
術
液
体
燃
料
精
製
・
製
造
現状
主な課題
25MPa 商 用 化 , 35MPa 実 高圧化
用化
海 外 で ス テ ー シ ョ ン 貯 蔵 / 軽量化
低コスト化
FCEV走行試験中
安全性の確保
蒸発率:2∼5%/日
断熱性能向上
(ボイルオフガス低減)
海外で液体水素タンク自動 低温脆化対策
車の実走行中
吸蔵量:1∼3wt%
貯蔵密度向上
サイクル寿命:100サイクル
耐久性向上
満充填1時間以上
目標値
∼70MPa
10wt%
車載用1%/日以下
定置用0.1%/日以下
4K∼ 室温域
貯蔵速度向上
被毒耐性向上
小型・軽量化
低コスト化
水素放出温度の低減
主な技術開発の方向性
・耐圧容器の開発
・周辺機器の開発
・新素材の開発
役割分担
産官
産官
産学官
目標時期
短期
短期
中期
・断熱容器・断熱材料開発
・耐低温溶接技術開発
産学官
産学官
短期
短期
産官
産学官
短期
中期
・触媒・システムの開発
産学
短期
・吸蔵・放出メカニズムの解明
・計測法の確立
・合成技術の開発
・大量生産技術の開発
学官
学官
産学官
産官
短期
短期
中期
中期
革新的水素貯蔵技術の開発
産学官
長期
・精製等システムの最適化
産官
短期
・高性能高分子膜の開発
・触媒の開発
・セルの大面積化,積層化
産官
産学官
産
短期
短期
短期
・気体燃料システムの最適化
・液体燃料システムの開発
産
産官
短期
短期
・圧縮機・液化機の改良・開発
産官
短期
5.5wt%以上
・熱交換技術の最適化
5,000 サ イ ク ル で 低 下 10% ・新規材料の開発
以内
満充填5分以内
(5.5wt%)
水素貯蔵化学物質 水素含有率:7∼10wt%
システムとして達成
再水素化施設への回収 反応速度・
反応制御性向上
必要
反応温度低減
システム化
吸蔵量:数∼20wt%
貯蔵密度向上
5.5wt%以上
炭素材料
カーボンナノチューブ
精製技術確立
再現性乏しい
低コスト化
グラファイト
水素吸蔵法の開発
新規材料
−
貯蔵密度・利便性の −
飛躍的向上
回収率向上
90%以上
副生水素利用
コークス炉ガス
低コスト化
水素回収率:60%
変換効率:
高性能化
90%以上
固体高分子形
90%程度(1A/c㎡)
(2∼3A/c㎡)
水電解
耐久性向上
10年程度
セル面積:0.25㎡
スケールアップ
セル面積:0.6∼1.0㎡
低コスト化
気体燃料の改質精製効 高効率化
70%以上
気体燃料・
率:55∼70%
液体燃料改質
液体燃料は本格的な開 低コスト化
建設費50%減
発に至っていない
信頼性向上
パイプラインに
低コスト化
−
輸送関連技術
莫大な費用
高効率化
圧縮・液化過程の
損失大
水素の安全に係る 検討項目
安全性向上
−
技術
・タンク衝撃試験
精度向上
・ガス漏洩拡散
信頼性向上
シミュレーション等
硫黄分等の除去
・開発段階
−
クリーン・ガソリン
低コスト化
エネルギー消費の低減
製造プロセスの高効率 5∼10%程度向上
・海外に製造プラント
GTL
特定留分の成分選択
・効率60∼65%
(Gas to Liquid)
率向上
低コスト化
メタノール
・全量輸入
製造の技術的な観点 −
・海外では商用化
では特段問題なし*
・製造効率:60∼65%
65∼70%
・ディーゼル燃料代替及び 高効率化
DME
LPガス代替として開発中 低コスト化
(ジメチルエーテル)
・水素漏洩や爆燃に係るシミュレーション 産学官
モデルの開発
・安全なタンク,セルスタック,システムの開 産学官
発
産官
・製造プロセスの改良・開発
短期
・製造・精製プロセスの改良・開発
・大規模プラント技術の確立
産学官
産
中期
中期
−
−
−
・触媒・システムの開発
・大規模プラント技術の確立
産学官
産
短期
短期
短期
短期
(注)*:メタノールは,現在バイオマス資源からの液体燃料製造技術開発の主要な生成物として技術開発に取り組まれているところである。
出典:燃料電池実用化戦略研究会「固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用技術開発戦略」
(2001 年 8 月 8 日)を基に作成
−195−
表 4-1-3
項目
実用化と普及の
タイムスケジュール
燃料電池スタック
普及時期における目標
自動車用 燃料 電池
改質器
システム全体
車両効率 3)
水素貯蔵
(2010 年以降
極力早期)
実用化と普及の
タイムスケジュール
燃料電池スタック
普及時期における目標
定置 用 燃 料 電 池
改質器
システム全体
システム全体の
経済性目標
FC システムの普及・性能・コスト目標
目 標
【実用化時期目標】2003∼2004 年
【普及時期目標】2010 年以降
・発電効率:65%以上(LHV),55%以上(HHV)
【定格の 25%出力時】1)
・出力密度:1.3kW/L 以上
・耐久性:5,000 時間以上(バス等 1∼2 万時間),
起動停止 3∼6 万回/10 年
・コスト:4,000 円/kW 以下
・体積:30L/台以下
・改質効率:83%程度(LHV),92%程度(HHV)
【定格の 25%出力時】2)
・コスト:1,000 円/kW 以下
・コスト:5,000 円/kW 以下(改質器その他周辺機器含む)
・水素搭載形:60%程度(LHV),51%程度(HHV)
・ガソリン車上改質形:48%程度(LHV),45%程度(HHV)
・乗用車において,航続距離 500km以上走行可能な水準を目
標とし,そのために必要な水素 5kg を貯蔵しうる重量・体
積が普通自動車のガソリンタンクと同等程度である貯蔵方
法を目標に開発を行う。
【実用化時期目標】2003∼2004 年
【普及時期目標】2010 年以降
・発電効率:55%以上【定格時】
・コスト:80,000 円/kW 以下
・改質効率: 87%程度(HHV)【定格時】2)
・コスト:20,000 円/kW 以下
・発電効率:40%以上(HHV,受電端)【定格時】
・総合効率:80%以上(HHV)
・体積:150L/kW 以下
・耐久性:40,000 時間以上 4)
・家庭用システム価格:30 万円/台以下
・業務用システム価格:15 万円/kW 以下
・ランニングコスト:効率向上により削減される燃料費(累
積)で追加的なシステムコストを概ね 3~5 年以内に回収で
きるようなランニングコストとなること
出典:燃料電池実用化戦略研究会「固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用技術開発戦略」
2001 年 8 月 8 日
1)
2)
3)
4)
(原注)燃料は水素とし,カソード極には空気を送るものとした場合の値。
(改質効率)=[(改質器から出力された水素の熱量)−(燃料電池から改質器に戻す水素の熱量)]
/(改質器に入力された燃料の熱量)。
効率値はガソリンを燃料として算出。
水素搭載形およびガソリン車上改質形の場合の車両効率(tank to wheel)をそれぞれ示す。
なお,車両効率は,燃料電池と車上搭載蓄電池(2 次電池)との組合せ(ハイブリッド)による効率向
上を考慮し達成される目標とする。
1 日 12 時間運転で 10 年間(約 3650 日)のトータル運転時間は 43,800 時間となり,10 年以上の寿命
に相当する。
−196−
4-1-2 NEDO による燃料電池・水素技術開発ロードマップ
NEDO では,2020 年頃までを視野に入れ,2001 年に燃料電池実用化戦略研究会によっ
て示された技術課題や性能目標を見直し,今後取り組むべき技術課題およびその実現期
待時期を整理した「技術ロードマップ」を作成した。この「技術ロードマップ」は,産
官学からなる「燃料電池・水素技術開発ロードマップ委員会」(委員長:山梨大学大学院
渡辺政廣教授)を設置し,検討を行ったもので,やや緩やかな形で技術課題と実現期待
時期をまとめたものである。
NEDO では,このロードマップを NEDO が実施する燃料電池・水素技術開発の方向
付けの基礎として位置づけるとともに,広範な産業・学術分野の関係者にとっても各々
の立場から燃料電池の本格実用化に向けた研究・技術開発を戦略的に推進する下地とし
て活用され,さらに今後参入する部品企業等の企業戦略の参考となる等,この分野にお
ける裾野の拡大の一助となることを期待するとしている。
なお,燃料電池・水素技術分野を巡る状況は刻一刻変化しているとの認識から見直し
が行われ,2006 年 6 月には燃料電池・水素技術開発ロードマップ Ver.2 が作成された。
図 4-1-1∼図 4-1-4 に関連分野のロードマップを示す。
図 4-1-1 PEFC(自動車用)技術ロードマップ(再掲)
出典:「2006 燃料電池・水素技術開発ロードマップ」NEDO
−197−
図 4-1-2 PEFC(定置用)技術ロードマップ
出典:「2006 燃料電池・水素技術開発ロードマップ」NEDO
図 4-1-3 水素製造技術開発ロードマップ
出典:「2006 燃料電池・水素技術開発ロードマップ」NEDO
−198−
図 4-1-4 水素貯蔵技術開発ロードマップ
出典:「2006 燃料電池・水素技術開発ロードマップ」NEDO
4-1-3 FCV 普及に向けた技術課題の概要
FCV 普及に向けた技術課題は,実証試験が始まった 2002 年ごろには,①燃料電池の
小型化,②耐久・信頼性の向上,③低温始動性の向上,④航続距離の向上,⑤コスト低
減などが主要課題として挙げられていた。しかし,表 4-1-4 に示すように,平成 19 年度
の自動車メーカへのインタビュー調査によると,当面取り組むべき主要課題としては,
耐久・信頼性の向上とコスト低減およびこれらの両立に絞られてきた。(図 4-1-5)
−199−
表 4-1-4 現状の技術課題
自動車メーカ
トヨタ
日産
ホンダ
メルセデス・
ベンツ日本
現在の技術課題
・ FCV 実用化のための最大の課題はコスト低減と耐久性の両立である。コストと
耐久性と性能のバランスをどう取っていくかが最大の技術課題である。
・ スタックの耐久性については,触媒・触媒担体の劣化に関する 15 年の耐久性に
ついてはまだ課題が多い。
・ 氷点下始動性はある水準に達しているが,例えば,イグニッションキーを ON に
して,十分に暖機せずにストップさせるなど意地悪な運転に対する対応は必要で
ある。
・ 主な技術課題はコスト低減,耐久・信頼性の向上,出力密度向上,低温始動性で
ある。
・ スタックの耐久性は通常使用で 5 年以上の耐久性が期待できるレベルである。
・ 現在,氷点下始動については,長時間氷点下に放置した後の起動について取り組
んでいる。
・ 耐久・信頼性とコストの両立が課題である。
・ FC スタックの耐久・信頼性については,劣化に対する対応と部品点数が多いこ
とに伴う信頼性確保・品質保証の 2 つがある。劣化に対する対応は,まだ時間が
かかる。
・ 耐久性と信頼性とコストが主要課題。
・ 耐久・信頼性に関しては,耐用年数 5000 時間を目標。目立った劣化なしに 2000
時間以上の耐久性を確認済み。
・ コストについては,個々の材料のコストダウンとシステムの部品点数を減らすな
ど総合的な取組みが必要。現行ガソリン車と同程度という目標に対し,時間は必
要であるが,目処が立たないということではないと考えている。
出所:平成 19 年度の訪問インタビュー調査結果より
2008年
(現在)
2002年
(JHFCスタート当時)
燃料電池の小型化
耐久・信頼性向上
耐久・信頼性向上
低温始動性向上
コスト低減
航続距離伸長
コスト低減
自動車会社プレゼン資料などからJARIまとめ
図 4-1-5 FCV 普及に向けた技術課題
出所:2007 年度 JHFC セミナー資料
−200−
4-1-4 燃料電池システムの概要
図 4-1-6 に一般的な燃料電池システムの構成を示す。システムは,電池スタックなど
から構成される電池本体システム,燃料を改質し,供給量や加湿量などを制御する燃料
供給システム,空気供給量を制御する空気供給システム,電池温度を一定に保つための
熱管理システム,電池反応で生成される水の排出およびシステムでの再利用を行う水処
理システム,未利用燃料処理,インバータ,コンバータ等の直流・交流電力変換システ
ム,排熱回収などから構成されている。全体は制御プログラムによってコントロールさ
れ,ひとつの電源システムとして機能する。
制御システム
電力変換
システム
交流電力
直流電力
空気
燃料
空気
(酸素)
空気供給
システム
燃料供給
システム
(改質器)
排熱回収
熱
電池本体
システム
(FCスタック)
温水,蒸気
給水
回収水
水素
(改質ガス)
熱管理
システム
水処理
システム
未利用燃料処理
図 4-1-6 一般的な燃料電池システムの構成
4-1-5 燃料電池スタック
固体高分子形燃料電池スタックは,一般に図 4-1-7 に示すように,電解質である固体
高分子膜(水素イオン交換膜)と触媒を担持させたシート状の電極 2 枚で 1 つのセルを
構成する。実運転における 1 セル当たりの起電力は 0.6∼1.0V 程度であるため,300V
前後のモータに電気を供給するために,通常 300∼500 枚程度のセルを直列に接続する。
固体高分子膜と 2 枚の電極を一体化したものを膜・電極接合体(MEA)と呼び,これと
セパレータ(バイポーラプレート)とを交互に配置したものがスタックである。
−201−
図 4-1-7 燃料電池スタックの構成例
前述のとおり,現状においては,耐久・信頼性の確保とともにコストの削減が重要な
課題となっているが,「燃料電池実用化戦略研究会」の「固体高分子形燃料電池/水素
エネルギー利用技術開発戦略」(以下「技術開発戦略」という)では,自動車用では,
スタックシステムで 5,000 円/kW,スタックベースで 4,000 円/kW という目標値が示
されている(表 4-1-3 参照)。NEDO のロードマップにおいても,2020∼2030 年の本
格普及期において年間 100 万台の生産台数に対して製造価格が約 4,000 円/kW 未満と
いう値が示されている(図 4-1-1 参照)。一方定置用では目標とされるコストの水準は
自動車用に比べてそれほど厳しくない。「技術開発戦略」ではスタックの目標が 8 万円
/kW,改質器が 2 万円/kW となっているが,NEDO のロードマップでは,2020∼2030
年の本格普及期において年間 50 万台の生産台数でシステム価格 40 万円/kW 未満とし
ている。ただし,商品化されつつある家庭用 FC システムにおいては,当初は量産効果
がそれほど見込めないため,コスト削減に向けたハードルは非常に高いと考えられる。
DOE では,自動車用の FC システムについて,現在の技術レベルを想定し,年間 50
万ユニットの FC システムが生産された場合で,直接水素型 FC システムで約$100/kW
と見積っている(表 4-1-5)。この将来目標値は 2010 年では$45/kW であり,「技術
開発戦略」とほぼ一致する水準である。
一方で,2005 年度における FC-Cubic へのインタビュー調査によると注),自動車メー
カが目標とするスタックのコストは,内燃機関自動車のエンジンとトランスミッション
のコストと同様になると考えると,$10∼15/kW となり,一般に言われている目標値よ
りも低い水準にあるという(図 4-1-8)。
注)
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−202−
表 4-1-5
自動車用直接水素型燃料電池システムの DOE 目標値
エネルギー効率(@25%ピーク出力)
エネルギー効率(@ピーク出力)
単位
現状
2005 年
2010 年
%
%
59
50
60
50
60
50
出力密度(ネット)
水素貯蔵容器含まず
W/L
400
500
650
水素貯蔵容器含む
W/L
−
150
220
比出力(ネット)
水素貯蔵容器含まず
W/kg
400
500
650
水素貯蔵容器含む
W/kg
−
250
325
コスト(水素貯蔵容器含む)注)
$/kW
200
125
45
負荷応答性(出力:10%→90%)
秒
3
2
1
コールドスタートアップ(-20℃)
秒
120
60
30
コールドスタートアップ(20℃)
秒
60
30
15
サバイバビリティ(survivability)
℃
-20
-30
-40
エミッション
Zero
Zero
Zero
耐久性
時間
1,000
4,000
5,000
注)年間 50 万ユニットが生産される場合を想定。
出典:DOE「FY2002 Progress Report for Hydrogen, Fuel Cells, and Infrastructure Technologies
Program」2002 年 11 月
図 4-1-8 自動車メーカのスタックのコスト目標
出典:FC キュービック提供資料
FC システムの耐久性に関しては,乗用車用では 5,000 時間,バス・トラックでは 10,000
∼20,000 時間,定置用では 40,000 時間(またはそれ以上)とみなされている(表 4-1-6)。
−203−
自動車用は,定置用に比べて稼動時間で測った耐久性は厳しくないが,起動停止や急加
減速が不可避であり,利用されずに放置される時間も長く,利用環境も様々である。そ
のため,こうした利用形態に対する耐久性も求められる。また,FCV が完全な実用車と
なるためには,例えば乗用車の場合,従来車と同様に様々な用途や使用環境のもとで 10
∼15 年以上の耐久性・信頼性を確保する必要がある。そうした耐久性・信頼性を実証す
るには,少なくとも 10 年以上の試験走行が必要と考えられるため,定置用も含め現状
における耐久性と信頼性の確保とその実証は,コストと並んで非常に大きな課題である。
また,耐久性を効率的に評価するための加速試験方法の確立も重要な課題となっている。
表 4-1-6 FC システムの耐久性の目標値(延べ運転時間)
用 途
乗用車
バス,トラック
定置用
耐久性目標
・5,000 時間以上
・起動停止 3∼6 万回/10 年
・1∼2 万時間
・40,000 時間またはそれ以上
現在,FCV メーカでは,限定リース販売や実証走行プログラムにおいて実際の走行
データの蓄積が図られており,平成 17 年度注)や平成 19 年度の自動車メーカに対するイ
ンタビュー調査からは,単純な 5,000 時間といった評価指標ではなく,10 年 10 万キロ
あるいは 15 年 20 万キロといった目標水準を達成するための独自の耐久性評価方法が用
いられていることがうかがえる。
また,実用化に向けた課題として氷点下での始動性の確保が挙げられていた。FCV に
おいても現状の内燃機関自動車と同等の性能を確保するためには,氷点下 35∼40℃にお
ける始動を可能にする必要がある。これは主に FC で生成される純水の凍結に起因する
問題である。しかし,2003 年 10 月,ホンダは氷点下 20℃での始動が可能な燃料電池ス
タック「Honda FC STACK」を開発したと発表した。この「Honda FC STACK」では,
水素イオン伝導性に優れたアロマティック電解質膜と導電性,熱伝導性に優れた金属プ
レスセパレータを採用することにより氷点下での始動を可能にしたという。「Honda
FC STACK」を搭載した「FCX」は,2004 年 11 月に米ニューヨーク州に販売され,2005
年 1 月には北海道庁に納車されている。その後,他の FCV メーカ各社も−30℃∼25℃
での始動性を確保したと公表しており,当面の実用化において,氷点下での始動性は,
大きな阻害要因とはならなくなったという認識を持っている。
スタックシステムの性能を向上の推移の一例として,ホンダの開発したスタックの出
力密度の推移を図 4-1-9 に示す。
ホンダの開発した FC スタックの特徴は,世界で初めて金属プレスセパレータを使っ
た独自の構造と,アロマティック電解質を採用したことである。アロマティック電解質
注)
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−204−
は,耐久性や低温での発電性能に特徴があり,金属セパレータは,薄くコンパクトであ
ることに加え,熱伝導性が高く,低温でも暖機特性に優れているという特長があるとい
う。また,高温耐久性についても 95℃での作動を実現しており,この結果,スタックの
作動範囲は−20℃から 95℃まで拡大し,この広い温度領域で耐久性を向上させていると
発表している注)。
FC実用化戦略研究会
2010年目標
図 4-1-9 ホンダ FC スタックの出力密度
出所:2007 年度 JHFC セミナー資料
主に平成 17 年度および平成 19 年度の訪問インタビュー調査結果より,主要自動車
メーカにおける FC スタックの開発状況および課題を表 4-1-7 に整理する。
注)
JARI 次世代自動車フォーラム(平成 16 年 1 月)資料。2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−205−
表 4-1-7 自動車メーカにおける FC スタックの開発状況
自動車
メーカ
開発状況および課題
トヨタ
・ 自社製スタックの中で MEA も自社製が基本。膜,触媒,GDL 材料は購入して
も,どう設計してどう製造するか,セパレータを含めたセルモジュールとして
どう最適化するかは自社で行うべきこと。
・ 電解質膜については,亀裂によるクロスリークはある程度改善が図られてきた
が,触媒・触媒担体の劣化は更なる検討が必要。
・ 触媒・触媒担体の劣化に対する 15 年の耐久性は,今後の白金量の低減の方向
性と合わせて考えると課題はまだ多い。
・ いずれにしても最後に残る課題は上記の課題の解決と低コスト化の両立であ
る。コストに関しても,何が一番ネックで,何が量産化で下がるのか,下がり
にくい部分は何かといった分析は進んでいる。
・ 主要課題は,コスト,耐久・信頼性,出力密度,低温起動の 4 つである。
・ 耐久性の評価モードについては,FCCJ において,業界で統一された自動車用
MEA の評価方法(起動停止,負荷変動,低負荷時の高電圧の 3 モード)が提
示され,こうしたモードでの劣化現象が解明されてきている。
・ 個々の劣化プロセスに対する取組みの結果,耐久性は着実に進歩している。通
日産
常使用であれば 5 年以上の耐久性が期待できるところまで来ている。
・ 低温始動については,長時間放置後の起動に取り組んでいる。まずは氷点下 20
∼10℃程度で確実に始動できることを初期目標としている。低温始動性が FCV
の市場導入にボトルネックになる可能性はまずないと考えている。
・ 「Honda FC スタック」の開発コンセプトは,①小型・高出力化,②量産ポテ
ンシャルとして将来的な低コスト化の方向性が示せること,③環境適合性の向
上,の 3 つ。その鍵となる技術が金属セパレータとアロマティック電解質膜(芳
香族系ハイドロカーボン膜)。
・ 今後の目標は,車両への搭載性を向上させ,自由度のある車載ができるように
すること。しかし,スタック小型化はガスの流れを悪くするなどの問題があり,
そうした弊害の解決と,耐久・信頼性の向上,材料を安くしながら部品点数を
ホンダ
減らしてコスト低減を図ることなどに取り組んでいく。
・ 耐久性については,起動停止などにおいてセル内で何が起きているのかが把握
できてきたが,まだ完全な把握に至っておらず,取り組むべき部分も残ってい
る。まだ時間が必要である。また,当社は,膜,セパレータなど他社と異なる
部材を用いているため,確認を自らが行っていく必要がある。
・ スタックの品質管理も大きな課題である。品質保証と耐久性の向上が重要。部
品点数を考えると,6 ナイン(99.9999%)以上の品質保証が必要とされる。
出典:平成 19 年度訪問インタビュー調査,および 2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」より作
成
−206−
(1) 固体高分子電解質膜
1) 電解質膜の課題と開発の動向
固体高分子電解質膜(水素イオン交換膜)としては,現在,パーフルオロスルホン
酸膜が標準的に用いられている(表 4-1-8)。パーフルオロスルホン酸膜は,1970∼
1980 年代に開発され,化学的安定性が高いなどの優れた特性を有し,現在 PEFC の
電解質として最も一般的に用いられている。しかし,パーフルオロスルホン酸膜につ
いては後述するような課題もあり,現在,これに代わる電解質膜の開発も鋭意進めら
れている。
表 4-1-8 商品化されているパーフルオロスルホン酸膜
膜名
ナフィオン®膜
フレミオン®膜
アシプレックス®膜
GORE-SELECT®膜
メーカ
DuPont
旭硝子
旭化成
W.L.GORE,ジャパンゴアテックス
パーフルオロ系の電解質膜は化学的安定性に優れるという有利な特性を有するもの
の,
① 低加湿化・無加湿化(導電性・強度を確保するために水分管理が必要)
② 耐熱性の向上(高温で強度が低下,常圧での高温化は水が蒸発し伝導度が低下)
③ 低コスト化
④ メタノールの透過(DMFC 用)
といった課題がある。
図 4-1-10 にパーフルオロスルホン酸膜の課題に対する現状の研究開発の方向性を示
す。
−207−
無・ 低加湿
機械的強度
官能基(アニオン膜等)
フラーレン型
架橋, 主鎖構造改良
多孔質ガラス
Pt, シリカ等分散
補強薄膜
スルホニルイミド膜
プ ロ ト ン 伝導度
短側鎖型膜
パーフ ルオロ
ス ルホン 酸膜
側鎖安定性向上
高イオン容量化
エンプラベースリン酸型膜
フ ッ 素系樹脂フ ィ ルムベース
部分フッ素化膜(グラフト重合)
無機有機ハイブリッド膜
高温用
安定性
D MF C 用
低コ スト
エンプラベーススルホン酸膜
図 4-1-10 パーフルオロスルホン酸膜の研究開発の方向性
資料提供:旭硝子(株)
以下に,以上の課題を踏まえた現状の技術動向を整理する。
2) 低加湿化・無加湿化
一般にパーフルオロスルホン酸膜において優れたイオン導電性を得るには,飽和水
蒸気圧雰囲気に近い条件で膜を保持する必要があり,水分管理(加湿)が必要となる。
水分管理の方法としては,外部から加湿する方法があるが,システムの簡略化とコス
トの低減のため,無加湿,あるいはより低加湿で利用可能な膜の開発が主要な膜メー
カにおいて進められている。その他には,カソード側の生成水の一部がアノード側に
拡散した水分や,アノード側に供給される加湿した燃料ガスからの水分を,膜内で高
く維持管理する試み等が検討されている。
3) 薄膜化と補強膜の動向
パーフルオロスルホン酸膜は,膜厚が薄いほど膜抵抗が低下し,発電性能が向上す
るため,薄膜化が図られてきた。しかし,薄膜化は逆に機械的な強度や寸法安定性,
操作性の低下等の問題を生じさせるため,薄膜化とともに機械的強度,寸法安定性に
優れた補強膜の開発が進められている。また,薄膜化によって水素の透過量が増加し,
透過した水素が空気極で酸素と反応し効率を低下させたり,MEA の劣化を促進した
りするという問題が生じる。そのようなバランスから,現状では 20∼40μm 程度の膜
厚が用いられている。
現在,各種補強膜が開発されているが,補強化の方法として代表的なものは,化学
的に安定な PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を補強材に用いる方法である。ジャ
−208−
パンゴアテックス社からは PTFE 多孔体にパーフルオロスルホン酸樹脂液を含浸した
膜(Gore-Select®膜)で,膜厚 15∼40μm 程度のものが市販されている。
一方,平成 19 年度における旭化成に対する訪問インタビュー調査注1)によれば,旭
化成では,分子補強という概念を用い,力学的強度,寸法/化学的安定性が高く,低コ
スト化,薄膜化ポテンシャル,高出力ポテンシャルを有している膜の開発を行ってい
る。この分子補強は,多孔質膜のような外部支持体を用いず,分子レベルの制御で膜
を補強するため,外部支持体を用いる方法に比べてコストアップ要因は少ないという
ことである。
一方,過年度における旭硝子に対するインタビュー調査によれば注2),補強膜は初
期強度は高いが,実運転環境下において長期間にわたって収縮と膨潤を繰り返すと,
補強材と膜との間に不具合が生じる可能性があり,長期間的な耐久性に問題が生じる
と考えているという。そのため,旭硝子では,今後コスト的にも有利なプレーン膜を
主体に開発していくと述べている。
4) 耐熱性の向上
FC の運転温度は約 80℃が一般的であるが,自動車用 FC における廃熱効率の向上
などのために,より高温で作動可能な耐熱性膜の開発が進められている。例えば 80℃
から 120℃への高温運転化は,外気温との差が 2 倍になり,ラジエタの容量を半減で
きる可能性がある。
現状の FC システムの標準的運転条件である常圧 80℃では,飽和水蒸気圧が約 0.5
気圧であり,100℃を超えると飽和水蒸気圧が 1 気圧を超え,加圧しないとガスが FC
内に入らないことになる。120℃では飽和水蒸気圧が約 2 気圧になるので,常圧 80℃
と同じ燃料ガス分圧を狙うと 4∼5kg/cm2 の加圧が必要になる。また,高温によって
理論起電力が低下するというデメリットもある。したがって,各システムにおいて以
上のようなメリット・デメリットを勘案して適切な運転温度を探る必要がある。現状で
は,現在の自動車と同様の水を用いた冷却システムを採用する意味においても,FC
での 120℃の運転が望ましい温度レベルといわれている。NEDO のロードマップ(図
4-1-1)や FCCJ の開発目標(表 3-5-2)においても最大のセル温度が 120℃と設定さ
れている。
平成 19 年度の旭化成に対する訪問インタビュー調査注3)によると,旭化成では高温
低加湿運転を目標としており,運転温度は 120℃が 1 つの目標であるという。しかし,
120℃での運転においては,耐久性とともに伝導度を出すためにはある程度の湿度が
必要になり,仮に 120℃運転で湿度 50%に保つとすると,100℃で加湿することとな
注1)
注2)
注3)
参考資料-Ⅹ.参照。
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
参考資料-Ⅹ.参照。
−209−
り,対応した加湿器が必要になるという点が課題になるという。現在,低加湿(湿度
20%程度)での運転では 0.1s/cm2 の以上の伝導度が出るような膜はまだないとのこと
である。
一方, PEMEAS を買収した BASF では,既に定置用の PBI 高温膜 Celtec-P1000
を製品化しており,さらに自動車用の Celtec-V を現在開発中である注1)。
また,VW でも高温膜の開発が行われている。VW は,シミュレーションにより,
現状の 80℃の稼動温度ではラジエタの放熱能力の制約により,平地の最高速度が
136km/時,6%の上り勾配では 49km/時に制約されてしまうが,120℃になれば,
それぞれ 193km/時,100km/時になるとしている注2)。VW は,当初は PEMEAS
と共同研究を行っていたが,現在は独自技術による稼動温度 120℃の PBI 系高温膜で
ある HT-VW を開発中である。
旭硝子は,フッ素系電解質膜を用いた膜・電極接合体(MEA)で高温耐久性を大幅
に高めることに成功していると発表している。旭硝子が新規に開発した NPC(新規
パーフルオロ系ポリマーコンポジット)を用いた MEA の発電耐久試験では,120℃で
相対湿度 50%の条件のもと,4 千時間の連続運転を達成している注3)。
5) 耐久性
膜の耐久性については,利用温度や利用するガス,ガスの入れ方,冷却の方式,加
湿の方法,セパレータ等との相性の問題があり,スタックシステムや MEA としての
耐久性に深く係わっている。数年前においては,MEA の劣化要因の解明と耐久性の
確立,その実証はコストと並んで最大の課題となっており,劣化要因の解明に向けた
産官学共同の取り組みが行われてきた。そうした成果を踏まえ,各膜メーカは新しい
耐久性に優れた電解質膜を製品化してきており,膜自体の耐久性は急速に向上してき
ているといわれている。
6) コスト
パーフルオロ系電解質膜は,食塩電解事業用として現在量産されているが,イオン
交換基を有するモノマーの合成工程が多段にわたり,また製膜までの工程が多く,こ
のことが高コストの原因といわれている。現状の標準的なパーフルオロ系電解質膜で
ある DuPont 社のナフィオン®膜の価格は,データとしてはやや古いが,1 ㎡あたり
$500∼$900 程度であり,例えば,セル面積あたりの出力を 5kW/㎡と仮定すると,
膜のコストだけで$100/kW∼$180/kW となり,さらなるコストダウンが必要とさ
れている。
注1)
注2)
注3)
2005 年度 JARI 欧米調査報告書
2006 年度 JARI 欧米調査報告書
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−210−
DuPont 社は従来から年間 200∼300 万㎡の出荷量があるならば,価格として$30/
㎡以下が可能と述べていたが注1),平成 19 年度の海外調査によると,量産時に$50/
㎡は可能であっても$30/㎡のレベルの達成は非常に困難であると述べている。
「技術開発戦略」では,現状の電解質膜の価格を 5∼15 万円/㎡とした上で,2010
年の目標を 3∼5 千円/㎡としている(表 4-1-1 参照)。旭化成は 2004 年度の訪問イ
ンタビュー調査において,膜の厚さや複雑さによって異なるものの,年間 200 万 m2
の生産量であれば 30∼50 ドル/m2 は可能であると述べている。ただし,定置用だと,
そもそも使用される膜の量が少ないため,現状ではコストよりも性能向上が優先事項
であるという注2)。
一方,FC-Cubic の設立目的の1つにもあるように注3),自動車メーカは数百円/㎡
のコストを要求している(図 4-1-8 参照)。また,FCCJ の自動車用電解質膜の要求
コストも,1,000 円/㎡以下と設定されている(表 3-5-2 参照)。旭硝子は,このよう
なコスト要求に対して,例えば電解質膜のロバスト性能を向上させることによってシ
ステムを簡略化し,トータルでのコスト削減に貢献したいと述べている注4)。
7) 非パーフルオロ系代替膜の開発動向
コストダウンや性能の向上が見込める非パーフルオロ系代替膜の開発も進められて
いる。それらは,膜材料の視点から分類すると,主に以下のようなものがある注5)。
① 部分フッ素化電解質膜
一般にスチレン−ジビニルベンゼン等の炭化水素系膜において,化学的に不安定な
α位の水素をフッ素に置き換えた構造のものをいう。代表的なものでは,Ballard
Power Systems 社によって開発されたトリフルオロスチレン誘導体共重合膜(BAM®
グラフト注6)重合膜)がある。この膜は低価格化を狙ったものとされているが,Ballard
社によると注7),性能面でもナフィオン®膜より優れると述べている。2002 年 5 月に
は,荏原製作所と BAM®グラフト重合膜のパイロットスケールで製造するプロセスお
よび装置の独占的な開発契約を締結したと発表している注8)。
その他には,放射線グラフト重合膜注9)などが開発されている。
「日経メカニカル」2000 年 12 月号,No.555,および 2001 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
2004 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注3)
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注4)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注5)
特許庁「平成 12 年度特許出願技術動向調査報告書−燃料電池」平成 13 年 3 月
注6)
グラフト重合膜技術:グラフトは「接木」「結合」を意味する。化学的な作用を利用して,フィル
ムや布の膜にイオン交換などの機能を新たに付与(重合)する技術
注7)
2002 年度 JEVA 海外調査報告書
注8)
http://www.ebara.co.jp/news/news20020522.html
注9)
放射線を使って新しい機能を化学的にグラフト(接ぎ木)する方法を言う。グラフト重合は,高分
子鎖の幹に枝をつけるようにして異なったモノマーを側鎖として導入するような高分子反応であり,
高分子の機能化の有効な手段のひとつである。例えば,親水・疎水性,高吸水性,温度応答性などと
いったモノマーの持つ機能を既存の高分子に付与することができる。
注1)
注2)
−211−
② 炭化水素系電解質膜
炭化水素系膜の主な狙いは,低コスト化と高温耐熱性である。PBI(ポリベンゾイ
ミダゾール)等の耐熱高分子にりん酸を含侵した膜や,エンジニアリングプラスチッ
ク(エンプラ)をベースとして,スルホン酸基を付加した膜などが検討されている。
上智大学の陸川教授によると,炭化水素系高分子膜は,パーフルオロ系高分子膜と
比較すると,燃料ガスの透過性が低いこと,白金の溶解再析出による白金バンドが生
成されないこと,機械的な強度が高いことに利点がある一方で,フェントン耐性など
化学的安定性については,パーフルオロ系高分子膜に劣るという。また,パーフルオ
ロ系高分子膜では,化学構造を容易に変更することができないが,炭化水素系高分子
膜は,官能基の変更やイオン捕集材,熱安定剤などの添加剤を容易に混ぜ込める利点
があると述べている注1)。
自動車用として,PBI を用いた電解質膜に関しては,前述のとおり BASF(旧
PEMEAS)や VW が開発中の膜がある。
ホンダは,2004 年に発表した「Honda FC STACK」にエンプラを原料とするアロ
マティック電解質膜を採用し,マイナス 20℃から 95℃までの発電が可能となったと
発表している。ホンダの FC スタックは,さらに 2006 年の次世代 FC スタックに進化
している。2006 年 1 月,JSR㈱は㈱本田技術研究所との共同開発で,新規な炭化水素
系電解質膜である「アロマティック電解質膜」を開発し,ホンダの「Honda FC STACK」
に使用されていると発表した。この膜は,従来の電解質膜に比べて,イオン交換基(ス
ルホン酸基)濃度を高くした構造のため,優れたプロトン伝導性を発現し,また,ポ
リマーの分子設計を最適化することにより,耐久性,ガス遮断性,高温特性,低温特
性にも優れるという。この膜を採用したスタックは,従来の膜を使用したものに比べ
て約 4 倍の高温発電耐久性能を示し,低温始動性についても,ポリマー構造を最適化
して,0℃で凍結しない水の含量を増やすことによって実現したと発表している。
炭化水素系電解質膜については,まだ耐久性能が不十分であるとの見方が一般的で
あり,学識経験者に対するインタビューでは,当面はパーフルオロ系電解質膜で実用
化を急ぐべきという意見が多い注2)。一方で,大同工業大学の堀教授は,様々な電解
質膜を評価した実績から判断し,炭化水素系の膜はガスのクロスリークが起こりにく
く,とくに自動車の負荷変動に対してパーフルオロ系膜と比較して耐久性が高いと述
べ,自動車用途として炭化水素系膜に対して高い評価を与えている注3)。
注1)
参考資料-Ⅱ.参照。
例えば,過年度調査のインタビュー調査を含めると,京都大学小久見教授,山梨大学渡辺教授,同
志社大学稲葉助教授,横浜国立大学太田教授などがこうした見解を示している。
注3)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注2)
−212−
③ 混合電解質膜
樹脂とイオン導電性を混合して成膜したものを混合電解質膜として分類した。特許
庁の調査注1)によると,わが国では,松下電器や旭化成,日本電気などで研究開発が
行われているという。
8) 細孔フィリング膜
東京大学の山口助教授は,細孔フィリング膜という電解質膜構造を提案している(図
4-1-11)注2)。細孔フィリング型電解質膜とは,耐熱性・耐化学薬品性の高い数 10nm
∼数 100nm 程度の細孔がある基材の細孔中に電解質ポリマーを充填したものである。
膜厚は数 10μm∼100μm,穴の形状はスポンジ状の複雑な形状をしている。その重
要な特性は,基材に非常に強い物質を用いるため,そのたがにより細孔中の電解質ポ
リマーが膨潤しにくいこと,メタノールや水素の透過性が低いことである。このフィ
リング膜は,従来から直接メタノール形 FC の電解質膜として応用が図られているが,
自動車用途を目的とした研究にも展開が図られている。フィリング膜に用いる基材と
ポリマーは用途に応じて様々な物質を用いることが可能であり,現在,山口助教授の
研究室では,自動車用を目的とした芳香族系炭化水素を用いた電解質膜についての研
究も進められている。
このコンセプトを用いた電解質膜を現在研究開発している企業は複数あるというが,
例えば東亜合成では,この細孔フィリング膜のコンセプトを用いた直接メタノール形
FC の開発を行っている注3)。同じコンセプトで安価な PEFC 用の電解質膜が製造で
きるとしているが,当面は直接メタノール形 FC 用の膜を展開していくという。
注1)
注2)
注3)
特許庁「平成 12 年度特許出願技術動向調査報告書−燃料電池」平成 13 年 3 月
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−213−
細孔フィリング膜のコンセプト
Dry membrane at room temp.
Single material
×
H2 O
MeOH
All of functions
H+
Assign function
to each material
and make
system
Pore-filling membrane concept
T. Yamaguchi et al., Macromolecules, 24, 5522-5527 (1991)
H2O
Membrane during operation
substrate:
suppress membrane swelling
filling polymer:
reduce MeOH crossover
図 4-1-11 細孔フィリング膜のコンセプト
(2) 電極触媒
一般に PEFC の電極触媒は,触媒担体としてのカーボンブラックの粒子表面に数Åの
白金粒子等を均一にばらまいたものであり,これを電解質膜に塗りつけて,MEA(膜・
電極接合体;後述)として加工する。一般には白金を有効利用するために,カーボンブ
ラック粒子表面に白金をどれだけ均一に細かくばらまくかが重要となる。カーボンブ
ラックについては,後述のとおり,近年の腐食問題の顕在化により,新たな耐腐食性能
の高い材料の検討も行われている。
PEFC の電極触媒における課題としては,まず高価な白金の担持量の低減が挙げられ
る。また,近年ではカソード触媒の耐久性向上が重要な課題として注目されている。具
体的には,白金粒子が大きくなるシンタリングの問題,白金が溶解して膜中に再析出す
る白金バンドの問題,触媒担体が腐食する問題がクローズアップされている。さらに,
FC の効率向上のためには,カソード触媒の触媒活性の向上が重要な課題となっている。
また,アノード側では,改質ガス用 PEFC における改質ガスに含まれる CO による耐
被毒性能の向上が課題となっている注1)。さらに,自動車用では,起動停止などに起因
する燃料枯渇時に触媒担体が腐食することが課題としてクローズアップされている注2)。
田中貴金属工業によると(2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」),純水素を用いた FC で
あっても,燃料を循環させると,その間に CO が蓄積されて,燃料中の CO 濃度が徐々に高くなると
いう問題があるという。
注2)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注1)
−214−
1) 白金量の低減化について
コスト削減における最大の課題の一つは使用貴金属量の低減化である。「技術開発
戦略」では電極触媒における現状の白金担持量を 2∼4g/kW とした上で,2010 年の
目標をこの 10 分の 1 としている。また,FCCJ から出された自動車用 FC の目標では,
2010 年までに総白金使用量 0.3g/kW,2015 年∼2020 年までに 0.1 g/kW,最終的
には無白金という目標値が出されている(表 3-5-2 参照)。
白金量の低減化に向けては,貴金属量の低減のために触媒層を薄膜化していくと均
一な触媒層を形成するのが難しいといった課題が顕在化している。また,白金量の低
減は,耐久性,性能とトレードオフの関係にあり,耐久性や性能を確保した上での白
金量の低減が重要な課題となっている。
図 4-1-12 は,Johnson Matthey(JM)社による FCV の白金使用量の低減見通しを
示しており,現状の FCV(PEFC 出力 75kWe を仮定)では,1 台当りの白金族の担
持量は 60∼120g であるが,2010 年においては,25g 程度に低減できると考えている。
Johnson Matthey では,白金以外のもので代替することは不可能と考えており,白金
使用を前提に担持量を低減するべく開発を行っているという。
白金族の使用量 [g/車]
120
100
Pt
80
60
40
Rh
20
0
Pd
2000 年
2010 年
図 4-1-12 Johnson Matthey 社による FCV の白金族使用量低減の見通し
出典:2003 年度 JARI 海外調査報告書
2005 年度の自動車メーカに対するインタビュー調査によると,現状の内燃機関自動
車の白金使用量は 2∼3g/台,SULEV レベルで 10g/台以下であり,このレベルを長
期的な FCV の目標値の目安とすべきであるとの意見が複数社から得られている。
−215−
過年度訪問インタビュー調査で旭硝子は,従来の白金担持量が両極合わせて 0.5∼
1mg/cm2 であったものが,現在では 0.2∼0.4 mg/cm2 になってきていると述べてい
る。
米国では,DOE の「水素製造・水素貯蔵・燃料電池プログラム」において,3M,
Ballard 等が中心となって,非貴金属触媒の開発を開始している注1)。
また,山梨大学の渡辺教授は,2004 年度の訪問インタビュー調査において,白金使
用量を 1/10 にするには,1つの触媒を見つけることによっては達成され得ず,併せ
て活性を上げる,温度を上げる,触媒の利用率を上げるような拡散層の作り方等を組
み合わせて達成するしかないと述べている注2)。
前述の東京大学山口助教授の研究グループは,電極層ナノ制御法という触媒担持方
法を提案している。カーボンブラックの表面自体を活性化し,表面の OH 基に反応基
をつける。その後,グラフト反応により,プロトン伝導体のポリマーを付加するとい
うカーボンの表面修飾を行ったのち,これを白金触媒と混ぜて MEA を作成する方法
である。この方法により,従来手法ではポリマーが進入できなかったカーボン粒子の
隙間にポリマーを導入することが可能になり,三相界面量が増え,触媒の利用率を向
上することができるという。耐久性を考慮しない研究室レベルの研究成果として,0.2g
/kW 程度が達成できているという注3)。
カソード触媒の無貴金属化に向けた研究としては,群馬大学の尾崎助教授の研究グ
ループが,NEDO の支援を受け,カーボンをナノシェル構造にして窒素やホウ素を
ドーピングするといった方法で,カソード触媒能を有する機能性の炭素材料の研究開
発をしており,注目を集めている注4)。
また,横浜国立大学の太田教授の研究グループによるタンタル(Ta)系の酸窒化物
やジルコニウム系の酸化物や窒化物を触媒に用いた研究注5)や,信州大学高須教授の
研究グループによる導電性金属酸化物を触媒に用いる研究注6)などが行われている。
2) アノード(水素極)触媒における CO 被毒に関する課題
現在の FCV においては,純水素を用いるものが主流になっているが,家庭用 PEFC
熱電併給システムなどにおける改質ガスを用いる PEFC においては,改質ガス中に含
まれる CO によるアノード触媒の耐被毒性能の向上が課題となっている。これととも
に,貴金属量の低減が最大の課題である。従来から純水素用の 5 倍から 10 倍程度の
白金量が必要とされている。触媒の被毒に対しては,触媒の改良に加えて,高温化や改
注1)
注2)
注3)
注4)
注5)
注6)
2003 年度 NEF「FC 動向調査報告書資料編」
2004 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−216−
質ガス中の CO 濃度の低減,エアブリーディング注1)などのいくつかの方法が考えら
れている。触媒の改良としては,白金とルテニウムの合金(白金とルテニウムの担持
量(重量)の比は 1:1 が基本)を触媒に用いることが主流となっている。
最近の動向としては,触媒そのものの技術的な変化は大きく変わっていないが,白
金量を減らすために,高温運転化や改質ガスの CO 濃度の低減が検討されているとい
う注2)。改質ガス中の CO 濃度としては 10ppm が一般的になりつつある。
最近では,FC 運転中におけるルテニウムの安定性も問題となってきており,ルテニ
ウムをどう安定的に存在させるかといった課題が顕在化してきている。
山梨大学の渡辺教授らは PtFe,PtNi,PtCo,PtMo 系電極触媒が優れた耐 CO 性
(100ppm)を有することを発表した。製法についてもスパッタリング法注3)を含めて
検討し,成果を挙げている。また,産業技術総合研究所の五百蔵らは Pt/MoO2/C など
の酸化物修飾触媒が耐 CO 性を示すことを報告している注4)。海外では,カナダ INRS
の C.Gouerec 等は PtMo を含むコロイド型電極触媒の製造で AlH3, MgH2 などの金属
水素化物を還元剤に用いる方法を開発し,100ppm CO 耐性試験に成功している。
3) カソード(空気極)触媒に係る課題
FC のエネルギー損失の内訳を見ると,全損失の 8 割をカソードが占め,高効率カ
ソード触媒は重要な課題となっている(図 4-1-13)。
このような課題に対して,例えば山梨大学の渡辺教授の研究グループでは,カソー
ド触媒に金属の合金を用いて,酸素の還元性能を向上させる取り組みを行っている注5)。
鉄などの金属を Pt に混ぜると還元反応を促進させる効果があることが明らかにされ
ている。
近年,田中貴金属工業ではこうした問題に対処するため,白金・コバルト合金触媒
を開発している。この合金触媒は,出力密度の向上と同時に耐久性の向上に対しても
有効という成果も得られつつあり,自動車用,定置用にその性能評価と開発が活発に
進められているという注6)。
カソード触媒では,前述のとおりとくにシンタリングや白金バンドの問題,触媒担
水素極の中に空気を入れること。エアブリーディングの効果は次のとおり。CO の被毒は CO が触媒
表面を通っていく過程で,触媒表面と CO が離れなくなる現象。そこに空気があると,水素とも反応
するが,触媒上にある CO を CO2 にして分離できる。それを利用して CO 被毒を低減しようというも
の。通常 0.5%から 5%ぐらいまでの空気を水素に混ぜて回避する。デメリットは安全性と効率低下
である。
注2)
2001 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
注3)
加速されたイオンをターゲット(固体)に照射すると,ターゲット表面の原子・分子が外部に放出
される。これをスパッタ蒸発(Sputtering evaporation)と呼び,スパッタ蒸発したターゲット物質をウ
エハーやガラスなどの基板上に付着させて薄膜を形成することをスパッタ蒸着(Sputtering deposition)
と称している。これを称してスパッタリング法と言う。
注4)
2002 年度 NEF「FC 動向調査報告書資料編」
注5)
2004 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注6)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注1)
−217−
体の腐食の問題がクローズアップされてきている。これについては,現在 NEDO プロ
ジェクトを通じて,その原因解明に向けた取組みが行われている注1)。
カソード触媒特有のその他の課題としては,空気中の不純物に対する問題が挙げら
れる。前段階で不純物質の除去も必要となるが,これと触媒の耐久性の向上との兼ね
合いの最適化も課題である。今後,触媒量の低減を図ることにより,より大きな問題
として顕在化する可能性もある。
図 4-1-13 燃料電池のロス
4) 電極触媒の加工費注2)
表 4-1-9 に 2001 年度のインタビュー調査時点における田中貴金属工業の触媒加工費
を示す。触媒の加工費は,触媒のロットサイズが 1kg∼数 10kg で,触媒 1g 当たり 600
∼1,000 円程度であり,今後,燃料電池の普及時には 1/5 程度が目標になるという。
表 4-1-9 電極触媒の加工費(田中貴金属工業提供)
ロットサイズ
加工費(材料費除く)
現状
1kg∼数 10kg
600∼1,000 円/g
目標
普及時
120∼200 円/g
注)重量は全て貴金属を含む触媒の重さ
出典:2001 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
平成 18 年度の田中貴金属工業に対するインタビューによれば,この加工費は,ここ
注1)
注2)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−218−
5 年間で変わっておらず,500 円/g∼2,000 円/g 程度であるという。この理由とし
ては,近年はコスト低減よりも性能を上げるための開発や手のかかる工法を採用して
いるためで,現状では,コスト低減よりも高性能化が重視されている結果であるとい
う。
田中貴金属工業では,触媒材料から FCV まで,貴金属を容易にリサイクルできる,
現実的な流通の仕組みが重要であると述べている注1)。例えば,以下のような仕組み
を提案している。また,同様の提案をジャパンゴアテックスや旭硝子も行っている注2)。
触媒中の貴金属のみリースにする。使用済み触媒中の白金はリサイクルにより 96∼
98%戻すことが可能であるため,回収精製した白金をクレジットにして電極触媒を作
製する。このとき,2∼3%の不足分の白金を新たに調達投入する。FCV の購入者は,
金利分と加工費,減耗する白金のコストをリース代として負担することになる。こう
することによって電極触媒の価格が白金の相場変動を大きく受けずに済むことになる。
5) FCV 普及時における貴金属の資源制約について
FCV 普及時に必要な白金量については,全世界の車(年産 7,000 万台)が全て短期
間に FCV になれば厳しいと考えられるが,数パーセントのレベルで FCV が導入され
ても,リサイクルを前提にすれば,資源制約上の問題はないと考えられている。また,
白金については需要の増大が明確になれば鉱山の生産量を増産できるとも言われてい
る。Johnson Matthey は 2003 年度の海外調査において,FCV が大量普及しても白金
族は供給不足になることはないと述べている注3)。
田中貴金属工業でも,平成 18 年度のインタビュー調査において,FCV の普及によ
る白金の資源制約の危険性は低いと述べている注4)。例えば,将来 FCV1 台当たり 20g
の白金が使われると仮定し,急激に 100 万台が普及したとしても 20t の増加である。
現状の自動車用触媒から回収される触媒量や供給量の動向,ならびに過去のマスキー
法対応時など急激な 20t 程度の需要増加に対して対応してきていることなどから判断
すると,この程度の需要増加は問題とならないと述べている。一方で,白金の副産物
で供給量が限られるルテニウムやイリジウムの方に資源制約的に懸念があるとしてい
る。
図 4-1-14 は参考のため,近年の白金の需要と供給量の推移を示している。自動車用
触媒に使われる白金量は,1993 年比で 3 倍弱と急速に伸びている。これは環境規制が
厳しくなったためであり,今後も需要が伸び続けるものと考えられる。さらに,近年
はテレビや携帯電話の液晶ガラスを作る装置に白金が使われており,こうした需要が
好調であるほか,中国の宝飾用需要(投資用)やヘッジファンドなどの流入などによ
注1)
注2)
注3)
注4)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2002 年度 NEF「FC 動向調査報告書資料編」,2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2003 年度 JARI 海外調査報告書
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−219−
り需要が伸びているという注5)。
(トン)
250
200
150
100
50
0
1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
年
供給合計
需要合計
需要(自動車触媒用)
回収量(自動車触媒用)
図 4-1-14 全世界の白金の需要と供給
出典:Johnson Matthey 社 HP におけるデータを基に作成
6) 貴金属の価格の動向
図 4-1-15 は最近の白金価格相場を示している。1995 年から 1999 年中頃までは,お
おむね 1,300∼1,500 円/g で取引されていたが,その後は高騰し,2001 年に入り一
時的に下落傾向に転じた。しかし 2001 年後半から 2002 年に再び高騰し,2004 年 3
月には高値で 3,000 円/g まで高騰した。その後再び急騰し,2006 年 1 月には高値で
4,000 円/g を,2007 年 5 月には平均で 5,000 円/g を超えた。その後も高騰は続き,
2007 年 2 月現在,約 7,000 円/g で取引されている。
ルテニウムの価格の推移をみると,2001 年から下落傾向を示していたが,2004 年
に入って上昇に転じた(図 4-1-16)。その後,徐々に高騰し,2006 年 11 月から急激
に高騰した。ルテニウムは,高密度・高容量ハードディスク(垂直磁性体)のための
製造ターゲット材料に用いられ,装置メーカが買い集めているほか,航空機のジェッ
トタービンなどに用いられているため,需要が伸びているという 注) 。その後,2007
年 2 月をピークに価格は下がり始め,現在 15$/g 前後で推移している。
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注5)
注)
−220−
(円/g)
8,000
最高
最低
平均
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年2004年 2005年 2006年 2007年
図 4-1-15 プラチナの月間の高値,安値および平均価格(1995 年∼2008 年 2 月)
出典: 田中貴金属工業 HP データよりグラフ化
($/g)
30
Johnson Mattheyベース価格
高値
安値
平均価格
25
20
15
10
5
0
2000年
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
2007年
図 4-1-16 ルテニウムの月間の高値,安値および平均価格(2000 年∼2008 年 2 月)
出典:Johnson Matthey HP
注)1 オンス = 約 31.1035g として計算してグラフ化
−221−
(3) ガス拡散基材
電極の基材(ガス拡散層:GDL)としては,カーボンペーパー,カーボンクロス,カー
ボンフェルト等が用いられている。従来から東レ製のカーボンペーパーが標準品とされ
ていたが(表 4-1-10),同じ炭素繊維メーカである三菱レイヨンからもロール状のカー
ボンペーパータイプの製品(図 4-1-17)が発売されるなどの新たな参入も進んでいる注)。
2002 年度の海外調査によると注),Ballard 社では三菱レイヨン製の GDL を採用してい
るという。
電極の基材に関しては,「技術開発戦略」では 2010 年のコスト目標を 500 円/㎡と
しているが(表 4-1-1 参照),現状ではまだ高価であり,今後のコストダウンに向けた
取り組みが大きな課題である。
表 4-1-10 東レ製カーボンペーパーの物性値
項目
単位厚さ
電気
抵抗値
熱伝導率
厚さ方向
面方向
厚さ方向
面方向
気体透過性
気孔率
嵩密度
表面粗さ
線膨張係数
(面方向)
曲げ強度
曲げ弾性率
引張強度
出典:東レ㈱HP より
単位
mm
mΩ・cm
−
W/(m・K)
TGP-H060
0.19
TGP-H090
0.28
80
5.6
1.7
21
23
TGP-H120
0.36
1900
1700
1500
0.44
78
0.45
8
0.45
5.8
−
ml・mm/(cm2・
hr・mmAq)
%
g/cm3
Μm
×10-6/℃
-0.8
MPa
GPa
N/cm
39
9.8
70
50
4.7
90
密度
70 g/m2
曲げ強度
85 MPa
ロールの長さ
ロールの幅
直流 4 端子法
室温
室温
100℃
25∼100℃
160 μm
抵抗率
0.15MPa
Ra
厚さ
ガス透過率
備考
1500 ml/hr・cm2・mmAq
4.3 mΩ・cm2
50,100,200 m
300,800 mm
図 4-1-17 三菱レイヨン製ロール状 FC 用ガス拡散層(PYROFILTM MGF-070)
注)
2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
−222−
(4) 膜・電極接合体(MEA)
膜・電極接合体(MEA)の代表的な製法であるホットプレス法を図 4-1-18 に示す。電
極は白金担持カーボン粉(水素電極には白金−ルテニウム担持カーボン粉を用いる場合
あり)と結着材としてのテフロン液を混合撹拌してペースト状にし,これを電極基材で
あるカーボンペーパー等の片面にコートして電極層とし,熱処理を施す。これを水素電
極,酸素電極の 2 枚作成する。次に,電解質膜と同じ成分の溶液(膜溶液)を 2 枚のそ
れぞれの電極層に塗布し,電解質膜をこの 2 枚の電極でサンドイッチしてホットプレス
で一体化し,MEA とする。
表 4-1-11 に示すような様々な MEA の製法が提案されているが,MEA の製法は MEA
メーカの重要なノウハウに係わる部分であり,実際にどのような製法がとられ,今後ど
のような方法が志向されていくのかは不明である。
白金担持カーボン
テフロン液
純水
カーボンペーパー
混合攪拌(スラリー)
カーボンペーパー上に電極層形成
膜溶液
アルコール
熱処理
膜
電極層に塗布
膜の上下に電極層付カーボンペーパーを置い
てホットプレスし,膜と電極を接合
MEA
図 4-1-18 代表的な MEA 製法の例(ホットプレス法)
出典:水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
関する調査・検討(平成 11 年 3 月)
−223−
水素利用技術に
表 4-1-11 MEAのその他の製法
方法
開発機関
Decal 法
(膜に触媒層フィルムを転写する方法)
延伸多孔質 PTFE シートをベースとするものと
さらなる改良を加えた方法
電極または MEA の形成過程で 2 種類以上の触
媒層を層状に被覆するもの
高分子電解質樹脂と触媒からなる水系の電極調
整用インクの考案
白金をドライプロセスで担持させるもの
Los Aramos National Laboratory
ジャパンゴアテックス
ジョンソンマッセイ
ジョンソンマッセイ
バラード
S. Chalk et. al.
出典:「固体高分子型燃料電池の開発と実用化」 技術情報会
1999.5
近年,MEA の劣化が大きな課題として認識され,NEDO の委託により,複数の研究
グループが MEA の劣化解析や劣化対策に取り組んでいる。京都大学,同志社大学を中
心とした産官学の研究グループでは,現在,MEA の劣化要因の解明に取り組んでおり,
その中で,白金担持カーボン触媒上に過酸化水素が副生することが見出され,これがパー
フルオロスルホン酸系電解質膜の分解を加速することなどが解明されてきている注1)。
同志社大学の稲葉助教授の研究グループは本 NEDO プロジェクトの中で,過酸化水素
に関わる MEA の劣化要因の解明に取り組んでいる。2004 年度の訪問インタビュー調査
によると注2),本 NEDO プロジェクトの中で,過酸化水素は空気極,燃料極のどちらで
も発生する可能性があるが,この際,白金量が少ないほど,多くの過酸化水素が発生し
やすいこと,とくに燃料極側では,酸素がクロスリークすることによって,過酸化水素
を発生させやすいこと等が明らかになったという。また,過酸化水素下におけるナフィ
オン膜の劣化に関しては,とくに鉄イオンや銅イオンの存在によって過酸化水素の分解
反応(フェントン反応)が生じ,生成されるラジカルが膜をアタックすることが明らか
になったという。このことは,金属セパレータとパーフルオロ系の膜の組み合わせにお
いて問題になると考えられる。また,高分子膜は欠陥構造を有するほど,ラジカルに対
する攻撃を受けやすく,ポリマーの分解が進行するという。この知見によれば,不純物
の少ない膜の製造が劣化に対して有効であることを示している。現在,各パーフルオロ
系膜メーカでは,こうした取り組みによって,耐久性の高い膜を提供しつつある。
大同工業大学の堀教授を中心とした NEDO プロジェクトでは,自動車用の FC セルの
劣化対策に取り組んでいる。現状では,様々の課題項目のうち,半分程度はクリアでき
るが,コストを含めそれ以外のものについては何らかのブレークスルーが必要となるで
あろうと述べている注3)。
ゴアテックス社(W.L.Gore,ジャパンゴアテックス)は,現在 MEA 製品 Primea®
注1)
注2)
注3)
NEDO「固体高分子形燃料電池の劣化要因に関する研究」平成 15 年 3 月
2004 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−224−
を販売している。ジャパンゴアテックスは,2006 年に横浜で開催された EVS-22 におい
て,現在の日産の FC スタックに Primea®が用いられていることを展示会場において公
表した。
前章の表 3-3-26 に示したように,現在,欧米メーカでは上記の Gore に加えて,DuPont,
3M,Johnson Matthey,Umicore 等が MEA を製品として販売している。3M では,5
層(GDL・触媒・膜・触媒・GDL),7 層(5 層+シール・ガスケット)の MEA を製品化・
販売している。また,DuPont においても 3 層,5 層,7 層の MEA を,Johnson Matthey
でも,5 層,7 層の MEA の販売を行っている。
わが国メーカでは,旭硝子が MEA の製品化に向けた取り組みを行っている。旭硝子
によると,現状における最大の課題はコストダウンと実運転に対応できるロバスト性の
向上にあるといい,従来問題として指摘されてきた電解質膜に穴があくといった膜自身
の問題は解消され,現在では電極触媒における白金の溶出と再析出,カーボン担体の腐
食の問題が主要課題になっていると述べている注1)。
(5) セパレータ
セパレータ(バイポーラプレート)には,①水素や酸素を供給するための流路を確保
する,②双方が交じり合わないように仕切る,③隣り合うセルを電気的に接続するなど
の役割が求められる。そのため,性能としては様々な動作環境における機械強度,安定
性,低い電気抵抗,成形性などが要求される。FC の出力密度向上のためには,より軽
く薄くすることが課題である。また,低コスト化も課題である。
セパレータの材料としては,古典的にはカーボングラファイトの機械加工製品である
が,非常に高コストである。最大の課題であるコストの削減について「技術開発戦略」
では,2010 年目標値を 100∼200 円/枚としている(表 4-1-1 参照)。
各メーカともスチール製やカーボンコンポジット材料といった代替素材,安価な製造
方法の研究開発を進めている(表 4-1-12)。
現在検討が進められているセパレータの種類には,大きくカーボンコンポジット製と
金属製がある。現在カーボン製として主流となっているのは,導電性のある黒鉛の粉を
樹脂で固めたコンポジット製の製品である。コンポジット製メーカである日清紡に対す
る平成 19 年度のインタビュー調査によれば注2),耐久性については数万時間の運転実績
もあり問題はないと判断されている。また,溝の深さに関しても 0.15mm を達成してお
り,ほぼ技術的には限界に達しつつあるという。今後の課題は,工程能力を向上させた
ときの不良率を下げるという信頼性の向上,低コスト化であるという。コストについて
は,1 枚 200 円(バイポーラで 400 円)での製造は可能と考えているが,コスト削減の
ためには,大きさや形状,溝の深さなど仕様の標準化により種類の削減・集約を図る必
注1)
注2)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
参考資料-ⅩⅢ.参照。
−225−
要があるとのことであった。樹脂メーカを中心にコンポジット製セパレータ市場には 1
時期 30 社以上が参入していたと考えられるが,大量生産を行って安定的にこのセパレー
タを提供可能なのは現状では日清紡 1 社に収束しつつあると考えられる。
表 4-1-12 セパレータに関する主な研究開発動向
メーカ
日清紡
三菱電機
大同特殊鋼
日立製作所,日立
電線
住友金属工業
Intelligent
Energy &
Microponent
GTI
DuPont
Nuvera Fuel
Cells
昭和電工
内容
出典
コンポジット製セパレータを供給中。美合工場にて量
産化スタート。これまでの美合工場に加え,千葉工場
内に設備を新設し,2008 年度中に生産を開始する予
定。当面は 2 拠点での生産体制となるが,将来的に千
葉工場へ集約することを考慮しながら,市場動向など
もふまえ最適生産体制を整えていく。
NEDO の委託により,カーボン樹脂モールドセパ
レータを研究開発中。
NEDO の委託により,金属ガラスを用いた高性能セ
パレータの材料と製造技術を研究中。
日立製作所と日立電線の共同で NEDO の助成事業と
して開発を進め,DMFC に使用可能な耐食金属セパ
レータ材開発。(1)クラッド材の表面にナノメートル
単位で貴金属を蒸着したのち,独自開発の表面処理方
法により表面の強度を高めることに成功(ナノメタル
導電処理法:M コート)。これにより,クラッド材
を高導電性表面で耐メタノール性の基材に改質。(2)
クラッド材そのものも耐食性の高いチタン系を適用
することで,M コートによる表面処理ができない加
工部の耐食性も高めた。(3)独自の加工技術により,
微細な型成形が可能。この結果従来の黒鉛セパレータ
材の 50 分の1∼100 分の1の低コストが期待できる。
NEDO の委託事業により,金属セパレータ用の高性
能ステンレス薄鋼板の量産化の見通しを得たと発表。
このセパレータは,中に多数分散析出し,鋼板表面に
露出する微細な導電性金属析出物の導通効果により,
燃料電池セパレータとして機能させるに十分な導電
性(低接触抵抗値)を確保。母材耐食性は高耐食ステ
ンレス鋼である標準規格品の SUS316L より優れてお
り,FC 用セパレータとして十分な耐食性を有する。
メタル製セパレータを開発。SS316(0.3mm 厚)を
ベースに Microponent 社が SS スプレーエッチング加
工を行う。コーティング材は INEOS Chlor の PEM
coat。
DOE プロジェクトにより,$10/kW を目標にした
圧縮成形グラファイトセパレータの量産技術を確立。
ノンコートメタルセパレータの開発にも取り組む。
圧縮成形によるカーボンセパレータを 2002 年半ばよ
り出荷。2mm 厚で密度は 1.8gm/cc。
コーティングのないステンレスプレートとポーラス
(多孔質)な金属から構成される金属セパレータを開
発。特許も取得している。
カーボンコンポジット製セパレータを開発。他のコン
ポジット製セパレータと比べ,曲げ強度に対するひず
みが大きく割れにくいことが特長。
日清紡プレスリリース 2007
年 1 月 7 日,参考資料-ⅩⅢ参
照
−226−
NEDO「第 22 回事業成果報告
会予稿集」2002 年 9 月 19 日
NEDO「第 22 回事業成果報告
会予稿集」2002 年 9 月 19 日
日立電線プレスリリース 2004
年 5 月 20 日
住友金属工業プレスリリース
2003 年 10 月 28 日
2002 年度 NEF「FC 動向調査
報告書資料編」
2002 年度 NEF「FC 動向調査
報告書資料編」
2002 年度 NEF「FC 動向調査
報告書資料編」
2004 年度 JARI 海外調査報告
書
2006 年度 JARI「FCV に関す
る調査報告書」
図 4-1-19 は,日清紡からの情報によるセルの構造を示すが,カーボンコンポジット製
セパレータでは,一般的に 1 つの MEA につき 2 枚のセパレータを用いる構造であり,
セパレータの背面は水冷のための水の流路とする構造が標準的であるという。
ガス拡散基材
空気極
膜
燃料極
シール
空気極
水冷部分
セパレータ
図 4-1-19 セルの構造(資料提供:日清紡)
金属製セパレータについても,様々な機関で研究開発が進められている。
住友金属工業は,2003 年 10 月に,世界初の金属セパレータ用の高性能ステンレス薄
鋼板の量産化の見通しを得たと発表した注1)。住友金属工業は,NEDO との 2000 年度
から 5 年間の受託研究に採用され,PEFC 用金属製セパレータの開発を進めてきた。
NEDO 事業の目標は,a)高性能燃料電池セパレータ用低コストステンレス薄板材料生産
技術の確立,b)ステンレス製燃料電池セパレータ低コスト量産方法の確立,c)燃料電池
内 3,000 時間耐久性の確認(耐久寿命 5 万時間の見通しの確認)であり,これらの目標
をすべて達成できているという。住友金属工業によると,通常のステンレス鋼では,表
面の不動態皮膜が接触抵抗を高めるためセパレータに不適であったものが,新開発の素
材では,鋼中に多数分散析出し,露出する微細な導電性金属析出物の導電効果により,
十分な導電性を確保することができ,また,母材の耐食性は高耐食ステンレス鋼である
標準規格品の SUS316L より優れており,燃料電池セパレータとして十分な耐食性を有
するという(図 4-1-20∼図 4-1-22)。平成 19 年度の住友金属工業へのインタビュー調
査結果注2)によると,現在,量産製造技術もほぼ確立できており,今年度,トータル 15
万枚のプレスの実施により,量産製造技術の確認を行う計画である。一方,量産時のコ
ストについては,現在の素材費用とプレス・洗浄費用などから考えると,1 枚 100 円(バ
イポーラで 200 円)の目標の達成は困難であるということであった。
なお,住友金属製のセパレータは,「Honda FC STACK」に採用されており,ホンダ
は,金属プレスセパレータの採用により,熱伝導性とセパレータ接触面の導電性が向上
すると公表している。
注1)
注2)
住友金属工業プレスリリース(2003 年 10 月 28 日),2004 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
参考資料-ⅩⅡ.参照。
−227−
図 4-1-20 住友金属工業が開発した金属セパレータ
図 4-1-21 住友金属のステンレスにおける新しい表面接触抵抗の低減方法
−228−
図 4-1-22 開発したステンレス鋼の実際の金属ミクロ粒子
また,2004 年 5 月,日立製作所と日立電線は共同で NEDO の助成事業として開発を
(図 4-1-23)。
進め,DMFC に使用可能な耐食金属セパレータ材を開発したと発表した注1)
特徴は,(1)表面処理方法として新たにナノメタル導電処理法(M-コート)を開発,
(2)チタン系の耐食金属クラッド材を適用,(3)DMFC に適したコンパクト構造のセ
パレータに型成形にあるという。(1)の M-コートの開発により,クラッド材の表面の
強度を高めることに成功し,クラッド材を高導電性表面で耐メタノール性の基材に改質
できるという。また,クラッド材そのものも耐食性の高いチタン系を適用することで,
M-コートによる表面処理ができない加工部の耐食性も高めることができたという。以上
により,新開発の金属セパレータ材は,メタノールに関する高い耐久性と低抵抗特性が
達成され,かつ量産時には,従来の黒鉛セパレータ材の 50 分の1∼100 分の1の低コス
トが期待できると発表している。
2004 年度の海外調査においても Nuvera FC において,ステンレスとポーラスな金属
を用いたコーティングのない金属セパレータが開発されていることが明らかになり,か
なり実用的な完成度が高いという印象を受けている注2)。
以上のように金属性セパレータに関する技術開発は活発化してきており,実用域に近
づきつつあるものと考えられる。今年度に実施した各社の訪問インタビュー調査の情報
を総合すると,とくにわが国の自動車メーカでは,今後,金属製セパレータを採用して
いく可能性が高いとの印象を受けている。
注1)
注2)
日立電線プレスリリース(2004 年 5 月 20 日)より
2004 年度 JARI 海外調査報告書
−229−
図 4-1-23 ナノメタル導電処理したセパレータ材断面構造(左)と耐食金属クラッド材(右)
4-1-6 改質器
(1) 改質技術の動向
改質器(システム)は,一般に燃料を改質して水素化する改質反応器,改質ガス中の
CO を低減する CO 変成器(高温変成器,低温変成器),CO を除去する CO 選択酸化反
応器からなり,それぞれにおいて性能向上に向けた各種検討が行われている。
1) 改質方式の比較
改質方式には,一般に水蒸気改質,部分酸化改質,オートサーマル改質方式がある。
それぞれの改質反応の反応熱による比較を図 4-1-24,表 4-1-13 に示す。酸素量 X=0
の場合が水蒸気改質反応であり,これは吸熱反応であるため,反応を進行させるため
には熱を加える必要がある。部分酸化反応は発熱反応であり,CH4 の改質を例にすると,
X=0.44 の場合,全反応での反応熱がちょうど 0 となり,最も熱バランスがよくなる。
このような水蒸気改質反応と部分酸化改質反応を併用した改質方式をオートサーマル
改質(併用改質)と呼んでいる。
燃料
水
空気
CnHmOp
改質反応器
H2、CO2、N2
CnHmOp+xO2+(2n-2x-p)H2O(l)=nCO2+(2n-2x-p+m/2)H2
ΔH = nΔHCO2-(2n-2x-p)ΔHH2O(l)-ΔHfuel
例.CH4 が燃料の場合
X=0 の時《水蒸気改質反応》
ΔH = +61 kcal/gmol CH4
X=0.44 の時
ΔH = 0
X=2 の時
ΔH = -192 kcal/gmol CH4
図 4-1-24 改質反応の反応熱・改質効率による比較
−230−
表 4-1-13 改質反応の反応熱・改質効率による比較
水蒸気改質反応
(Steam Reforming)
CnHmOp + (2n−p)H2O+ΔH
部分酸化改質反応
(Partial Oxidation)
CnHmOp + (n−p/2)O2 +ΔH
オートサーマル改質
反応(ATR)
CnHmOp + xO2 + (2n−2x−p) H2O+ΔH
吸熱反応(ΔH>0)
→ nCO2 + (2n−p+m/2) H2
発熱反応(ΔH<0)
→ 2nCO2 + (m/2) H2
→ nCO2 + (2n−2x−p+m/2) H2
ΔH=ゼロ可能
出典:2002 年度 NEF「FC 動向調査報告書資料編」
水蒸気改質反応による改質システムはシステムの小型化が難しい。ただし,システ
ムスペースの制約がなく,運転が安定しているため,化学産業分野では多くの実績が
ある。部分酸化反応による改質は,システムの小型化が可能であり,スタート/ストッ
プに対するレスポンスも高い。しかし,発熱反応であるため,コーキングを防ぐため
にインレット側に水を供給する必要がある。また,熱効率上も不利である。
水蒸気改質と部分酸化改質を併用するオートサーマル改質は,温度の制御が重要と
なるが,触媒を適切に選択することによって,燃料の対応性を高め,リアクタを小型
化し,さらに反応温度を低下させることも可能である。そのため,車上改質方式とし
ては主流とみられている。定置用の場合には,想定される運転条件にもよるが,主に水
蒸気改質の方式が採用されている。
図 4-1-25 は,水蒸気(スチーム)改質とオートサーマル改質の熱効率を比較したも
のである。改質反応だけを取り上げると,一般には水蒸気改質の熱効率が上回るが,
水蒸気改質では,バーナー等による熱供給が必要であり,始動停止を含む運転パター
ンでの全体の熱効率では,オートサーマル改質の方が優れる可能性も考えられる。
オートサーマル改質
スチーム改質
H2O(l)=2
スチーム改質器
CH4=1.32 1
0.32
Air
O2=0.63
N2=2.37
H2O(l)=1.12
H2=4
CO2=1
熱
バーナー
H2O(g)=0.63
CO2=0.32
N2=2.37
CH4=1
Air
O2=0.44
N2=1.66
H2/CH4=4/1.32=3.03
η=91.7%
オートサーマル
改質器
H2=3.11
CO2=1
N2=1.66
H2/CH4=3.11/1.0=3.11
η=93.9%
図 4-1-25 スチーム改質とオートサーマル改質の反応熱による比較の例(燃料がメタンの場合)
−231−
2) 改質器に用いられる触媒の動向
各段階の性能向上には,優れた触媒の開発が鍵となっている。表 4-1-14 に各段階に
用いられる触媒の動向を整理する注1)。
表 4-1-14 改質器に用いられる触媒の動向
段 階
改質反応器
変成器
CO 選択酸化反応器
触媒の動向
改質触媒には,燃料ごとに色々なタイプがある。従来はニッケル系の
触媒が用いられたが,炭素数が多いガソリン等ではもたないため,耐
久性の面から[Pt,Ru]系に移ってきていると考えられる。
変成触媒は世界的に[Cu/Zn]が主流であり,[Fe,Cr]は少ない。とこ
ろが[Cu/Zn]は活性はよいが,FC を on-off すると酸化雰囲気で発熱し
て,触媒が性能を失うという問題がある。そのため,[Pt,Ru,Rh]を
用いる系に変わりつつある。
CO 除去触媒(選択酸化触媒)は,従来から[Pt,Ru]系,[Pt-Ru]が主
流。
出典:田中貴金属工業(2001 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」)
(2) 改質器にかかる課題
改質器にかかる課題としては,効率の向上,軽量・コンパクト化,始動性・負荷応答性
の向上,コストの低減が挙げられる。表 4-1-15 に改質形 FC に特有の問題点を整理する。
とくに,車上改質技術における最大の課題は始動性とエネルギー効率といわれている。
改質器は,一般に燃料の改質反応を行う改質反応器,改質ガス中の CO を低減させる CO
変成器,CO を除去する CO 選択酸化反応器から構成されるが,このうちとくに CO 変
成器において小型軽量化が進まず,必要な温度まで加熱するのに時間とエネルギーが必
要とされ,始動性とエネルギー効率を悪化させている注2)。たとえ二次電池等によるエ
ネルギー供給によってすみやかな始動が可能になったとしても,エネルギー効率の向上
は望めない。ガソリン改質形の FCV はエネルギー効率で内燃機関車(ICEV)や ICEV
とのハイブリッド車を上回らないと存在意義が失われるため,この問題の解決が最大の
課題であり,何らかのブレークスルーが必要とされている。
表 4-1-15 車上改質に関する問題点
(低温)始動性
負荷応答性
注1)
注2)
改質器装置全体が大きな熱容量を持つために,各反応が適正な運転温
度に達し燃料電池スタックが許容する濃度まで CO を除去するようにな
るためには,現状では数分の始動時間を要する。また,この始動のため
の熱は燃料の燃焼によって得ることになるため,効率悪化と始動時の大
気汚染物質排出量を増加させる。
改質器の負荷応答性に問題があり,PEFC に供給される水素の応答性
に問題が生じる可能性がある。改質は反応が遅く,1,2 秒の遅れがある
といわれている。このような始動性や負荷応答性については,わが国
メーカにおいては,主に二次電池等とのハイブリッド構成にすることに
よる解決が図られている。
2001 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
2002 年度 NEF「FC 動向調査報告書資料編」
−232−
(3) メンブレンリアクタ型改質器
燃料電池用の水素を供給する方式としては,FCV での車上改質や,家庭用のコージェ
ネ機での改質システムのように二酸化炭素や窒素を含む改質ガスを FC に投入する方式
と,水素ステーションでの水素供給のように,純水素を FC に供給する方式がある。前
者の場合,PSA(Pressure Swing Adsorption)などによって改質ガスをさらに精製す
る必要があるが,これに代わるシステムとして,パラジウム膜やその他のより安価な水
素分離膜を用いたメンブレンリアクタ型改質器の研究開発も東京ガスなどによって進め
られている。東京ガスと三菱重工が共同で開発しているメンブレンリアクタ型改質器は,
都市ガスを燃料とし,パラジウム膜を用いた水素分離型改質器によって,高純度の水素
を製造するものである。この方式では,低温で改質ができ,高効率が期待できるなど,
さまざまなメリットがあるが,信頼性の向上とコスト削減が課題である。信頼性につい
ては,パラジウムの分離膜をいかに薄く信頼性高く製造できるかが課題であるという注)。
なお,2003 年からメンブレンリアクタ型改質器を用いた水素ステーションが JHFC
プロジェクトの一環として千住に開設されている。
(4) 直接メタノール形燃料電池
メタノールについては,改質器なしで直接電力への変換が可能な直接メタノール形燃
料電池(DMFC)に関する研究開発もここ数年で大きく進展しており,主に携帯用可搬
電源として期待されている(3-6 節参照)。ただし,車載用としてはエネルギー効率面
や耐久性の面での課題も多く,一般普及車としての実用化は現状では非常に困難である
と考えられている。
電解質を用いた DMFC は,図 4-1-26 に示すように,電解質膜を電極で挟んだ構造で
あり,通常の PEFC と同様であるが,水素極側にメタノール水溶液を供給するところが
異なる。
DMFC のメリットは,直接メタノールを燃料として使えるために,改質器が必要なく
システムが簡素化できる点であるが,問題点としてメタノールが電解質膜を透過してし
まい,出力を低下させる問題(クロスオーバー)と,反応過程で CO が発生して触媒が
劣化する問題(CO 被毒)の 2 点が挙げられる。
注)
参考資料-Ⅸ.参照。
−233−
図 4-1-26
DMFC の原理
出典:「固体高分子型燃料電池の開発と実用化」技術情報協会
1999.5
ヤマハ発動機は,2000 年頃から DMFC に取り組み,ユアサと DMFC の共同開発を
行い,パッソルをベースとした DMFC 搭載二輪車「FC06」を開発し,2003 年 10 月の
東京モーターショーに出品している。さらに開発を進め,2004 年 9 月には「FC06 PROT」
でナンバーを取得し,公道走行を行った。その後,2005 年 9 月より「FC06 PROT」の
成果を踏まえ,性能をより熟成させた燃料電池二輪車「FC-me」を静岡県に 1 台リース
している。FC-me の諸元は前述(表 3-5-23)のとおりである注)。
注)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−234−
4-1-7 周辺機器
FCV に関するその他の主要な周辺機器としては,主に空気供給システムと熱管理シス
テムがある。
(1) 空気供給システム
空気供給システムの主な課題は,エアコンプレッサ(圧縮機)の効率の向上と消音,
小型化である。FC は高圧力で効率が向上するが,それだけ圧縮機のパワーを必要とし,
ある程度以上の圧力にするとシステム全体の効率は低下するというトレードオフの関係
がある。コンプレッサの方式にも様々なものがあり,その選択も課題の一つである。
米国エネルギー省(DOE)では,FCV 用のコンプレッサとして,従来技術の延長で
は目標効率の達成が困難と判断し,性能向上のための研究を行っている。図 4-1-27 は
DOE が検討しているコンプレッサの種類である。JEVA が実施した海外調査によると注
1)
,現状の技術では,ピストン型,スクロール型が最も技術的に成熟しているが,一長
一短があり,最も短所が少ない選択としてタービン型に期待していると述べている。
図 4-1-27
米国 DOE で検討しているコンプレッサの種類
出典:2000 年度 JEVA 海外調査報告書
(2) 熱管理システム
熱管理が直面する課題は,FC スタック本体の冷却のみならず,主機モータとインバー
タの冷却,および FC スタックの早期暖機である。FC 本体については,PEM から放出
される低い温度での廃熱を処理するためにラジエタやファンの負担が大きくなる注2)。
そのため,ラジエタの大型化,ファンの大容量化が必要になる。ラジエタの大型化は搭
載性を悪くするという弊害があり,また,ファンの大容量化は消費電力の増大という弊
害がある。現行車両の冷却システムを踏まえると,FC の運転温度を 120℃程度にする
のが望ましく,FC 運転温度の向上が一つの解決策となる。
また,冷却水では,電気伝導度が重要となるが,防腐剤を入れると伝導度は上がり,
注1)
注2)
2000 年度 JEVA 海外調査報告書
ICEV では熱を排出ガスとともに放出できるが,FCV ではすべてをラジエタで負担する必要がある。
また,低温をそれ以上に下げる場合には,外気温との温度差が小さいため,ラジエタの負担が大きく
なる。
−235−
入れないと部品の腐食につながるという問題があるという。これらの課題に対し,今後
の技術革新が求められている。
(3) その他の周辺部品
図 4-1-28 に示すように,その他の周辺部品も低コスト化と性能改善のための開発が求
められる。商品化にあたっては,コストと耐久性を達成するための開発が求められてい
る。とくにこうした周辺部品は,共通部品化することによるコストダウンが必要不可欠
と考えられる。
機器名
空気供給機器
バッテリー
電気
水素供給機器
FCスタック
電気
電力制御機器
電気
機器名
改質器用燃料気化器
改
質 COセンサ
方 燃料センサ
式
燃料タンク
燃料ポンプ
純
水
素
方
式
フィルタ
サルファ,ナトリウム等の除去
気液分離器
高効率気液分離
バルブ
高精度・小型
モータ
熱制御機器
改質器
主要課題
電動エアコンプレッサ/インバータ 高効率・低騒音・小型
主要課題
機器名
主要課題
小型・軽量・低コスト・高応答
暖機システム
早期暖機・熱源確保
早期起動・低エミッション
FCスタック冷却システム
Max温度・温度分布の制御
非導電冷却液
低電気伝導度と耐食性の確保
高信頼性・小型・低コスト・高応答
電動ウォーターポンプ
ラジエータ/電動ファン
耐腐食性
小型・軽量・低コスト
制御弁
電動水素ポンプ/インバータ 低リーク・小型・軽量・低コスト
水素吸蔵材
高吸蔵特性・低コスト
水素センサ
高信頼性・小型・低コスト・高応答
水素制御バルブ
高精度・低リーク
図 4-1-28
FCV 用周辺機器の主要課題
資料提供:(株)デンソー
4-1-8 水素の車上搭載方法
(1) 水素の性状と車上への搭載方法
水素の性質を表 4-1-16 に整理する。水素は最も軽い燃料であり,質量あたりのエネル
ギー密度はガソリンなどに比べて非常に小さく,車上に効率的に貯蔵するための方法が
課題となっている。
−236−
表 4-1-16 水素ガスの性質
分子量
2.016
沸点
−252.8℃
融点
−259.1℃
比重(空気を 1 として)
0.0695
臨界圧力
12.759 気圧
臨界温度
−259.9℃
液体の密度(沸点)
70.8kg/m3
気体の密度(20℃,1 気圧) 0.083764 kg/m3
熱伝導度(20℃,1 気圧)
1.897mW/cm・K
蒸発熱
445.59kJ/kg
燃焼熱(HHV)
141.86MJ/kg
拡散定数(空気中)
0.634cm2/s
出典:「固体高分子型燃料電池の開発と実用化」技術情報協会
1999.5
水素を車上に搭載する方法としては,現在では大きく 3 つの方法がある。高圧ガス,
液体水素,および水素吸蔵合金を用いる方法である。それらの特徴を表 4-1-17 に整理す
る。
高圧ガス方式は,実用上最も現実的な方式であるが,体積密度が小さいのがデメリッ
トであり,現状では航続距離を十分に確保するのが難しい。
液体水素は,この中では唯一ガソリン車並みの航続距離を確保できる方式であるが,
貯蔵時のボイルオフが避けられないことや,液化時のエネルギー損失の問題,システム
が複雑になることによるコストの増大などのデメリットがある。わが国でこの方式を選
択しているメーカはない。
一方,水素吸蔵合金を用いる方式は,吸蔵能力が不十分であり,重量密度が小さいの
がデメリットである。材料が比較的高価であることやシステムが複雑になるといったデ
メリットもある。
いずれの方法においても問題があり,安価で貯蔵密度の高い水素貯蔵材料の開発が求
められている。
−237−
表 4-1-17 主な水素の車上搭載方法
搭載方式
圧縮水素
長 所
・ 重量比のエネルギー密度は
比較的高い。
・ スペースの問題が少ないバ
ス,トラックなどに向く。
短 所
・ ガソリン貯蔵の 1/4∼1/5 と容量比のエネ
ルギー密度が低く,車載時のレイアウトに制
約を受ける。
・ わが国では,高圧ガス保安法の適用を受け
る。
液体水素 ・ 体積密度,重量密度でガスよ ・ 蒸発が避けられなく液化にエネルギーを損
失するため総合効率が低下する。
りも優れる。
・ わが国では,高圧ガス保安法の適用を受け
・ 航続距離の確保が可能。
る。
・ 安全性の問題が比較的大。
・ 高圧ガスと同様,レイアウトに制約を受け
る。
・ プロセスが複雑でコスト大。
水 素 吸 蔵 ・ 低圧での取り扱いが可能な ・ 現状では貯蔵能力が小さい。現状重量比で 1
∼2.8%。
合金
ため,高圧ガス保安法の適用
・ タンクの重量エネルギー密度が大きい。
を受けない。
・ 水素の充填・放出に温度管理が必要なためシ
・ 安全性が高い。
ステムが複雑になる。
・吸蔵能力が大きい材料は耐久性が悪く,コス
トも大きい。
現状において検討が行われている水素の貯蔵方法について整理・比較したものを表
4-1-18 に示す。水素吸蔵材料は大きく水素吸蔵合金と,無機系水素吸蔵材料,有機系水
素吸蔵材料,炭素系材料に分けられる。このうち有機系水素吸蔵材料と無機系水素吸蔵
材料は,合わせてケミカルハイドライドと呼ばれることが多い。
−238−
表 4-1-18 水素貯蔵方法の比較
方法
圧縮水素
液体水素
水素吸蔵材料
無機系水素吸蔵材料
可逆型
加水分解型
常圧近傍
10∼20MPa
常圧
常温∼300℃
100∼200℃
常温
熱交換器付容器
高圧容器
FRP容器
金属水素化物状態 (熱交換要)
(要耐アルカリ性)
LaNi5等の合金
例 NaAlH4
例
NaH
体積:気体状態
錯陰イオン(AlH4 )
の1/1000 状態
NaBH4
容量:0.03
小容量容器試作の
小規模システム
∼2000Nm3 段階:∼0.1Nm3
試作段階∼0.1Nm3
水素吸蔵合金
内容
長所
−239−
短所
高圧
常温
軽量高圧タンク(小容量)
20∼70MPa,
3
数10Nm ボンベ・ローダー
15∼20MPa,
3
∼2,800Nm
耐圧タンク(大容量)
1∼3MPa,
3
∼25,000Nm
高質量水素密度
低エネルギー消費
常温貯蔵
普及技術
低体積水素密度
高圧
3a)
所要動力 理論:0.163kWh/Nm
現状:0.25
3
∼0.5kWh/Nm
g)
充填時間 5∼10分
常圧
極低温(-253℃)
断熱容器
3
容量:数10Nm
3
∼3200Nm
高質量水素密度
高体積水素密度
高純度水素源
高体積水素密度
高安全性
高純度水素源
常温貯蔵
液化動力大(高コスト) 低質量水素密度
自然蒸発(ボイルオフ) 被毒・劣化現象
充填時の蒸発
初期活性化
3b)
理論:0.31kWh/Nm
現状:1.2
3
∼2.0kWh/Nm
3∼10分
0.37kWh/Nm
3c)
有機系水素吸蔵材料
炭素系材料
常圧
200∼400℃
ガソリンタンク程度
の容器
例
シクロヘキサン
-ベンゼン
デカリン
-ナフタレン等の系
常圧∼10MPa
常温∼300℃
高圧容器に充填
カーボンナノチューブ等
高質量水素密度
高体積水素密度
水素貯蔵特性不明
高質量水素密度?
f)
高質量水素密度
運搬・充填等
取扱容易
高質量水素密度
運搬・充填等
取扱容易
遅い吸蔵放出速度
サイクル特性
禁水性物質
強アルカリ性
反応器,精製器,廃液 水素貯蔵特性不明f)
廃液タンク必要
タンクが必要
水素化物再生に多量の反応熱大
エネルギーが必要
有害性を持つものも有
3
3d)
0.94kWh/Nm
理論:0.85kWh/Nm
圧縮水素と同程度
0.43kWh/Nm
10分(WENET目標) 数時間
3e)
数分
a)1気圧から35MPaへの等温圧縮に必要な動力(実際には,この1.5∼3倍の電力が必要)
b)液化に必要な動力(実際には4∼6倍の電力が必要)
c)水素化熱(30kJ/molH2)で算出
d)シクロヘキサン-ベンゼン系
e)NaAlH4系,NaHまで脱水素
f)水素吸蔵性能にはまだ議論がある。
g)自動車用小型容器の場合
資料提供:(独)産業技術総合研究所関西センター(2002 年度 NEF「FC 動向調査報告書資料編」)
数分
圧縮水素と同程度
一般に FCV がガソリン車並の航続距離を有するためには,車上に 5kg の水素を貯蔵
することが必要とされている。表 4-1-19 は水素 5kg を貯蔵するための各種燃料,貯蔵
物質別の特性を比較したものである。いずれの方法もガソリンに比べて体積や重量の面
で不利であることがわかる。
表 4-1-19 水素 5kg の貯蔵性の比較
l)
燃料
a)
ガソリン
メタノールa)
シクロヘキサンb)
c)
NaBH4
d)
NaAlH4
圧縮水素(鋼製)e)
圧縮水素(軽量小型)f)
圧縮水素(軽量大型)g)
圧縮水素(超軽量)h)
液体水素i)
MH(1wt%)j)
MH(3wt%)k)
m)
中身燃料
容器重量
容器体積n)
重量(kg) 体積(L) 容器のみ(kg) 水素込み(kg) 体積(L)
14
20
4
18
21
30
38
6
36
42
70
90
76
81
95
71
68
77
82
72
89
71
104
109
89
5
320
400
405
390
5
214
113
118
273
5
214
54
59
250
5
214
39
44
278
5
71
20
25
96
505
73
600
605
228
172
33
197
202
96
a)ガソリン及びメタノールは水素5kgと等しい発熱量を示す量
b)「容器のみ」の重量は,容器そのものの重量(11kg)とベンゼンの重量(65kg)の和とした。
また,脱水素反応装置は含まず
c)アルカリ性水溶液(NaBH4濃度35%),脱水素反応装置含まず(脱水素反応装置:50kg程度)
d)NaAlH4→NaH+Al+3/2H2,軽量高圧容器の使用を仮定,NaAlH4充填率:80%
e)内容積47L,20MPa,1.3wt%
f)内容積33L,35MPa,4.2wt%
g)126L,35MPa,8.5wt%
h)内容積144L,35MPa,11.3wt%
i)断熱容器,20wt%
j)合金(MH):500kg,容器(鋼製):150kg
k)合金(MH):167kg,容器(Al製仮想容器):30kg
l)水素+貯蔵媒体
m)貯蔵媒体重量を含む(水素貯蔵材料使用の場合)
n)外容積推定値
資料提供:(独)産業技術総合研究所関西センター(2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」)
平成 19 年度の訪問インタビュー調査結果より,主要な自動車メーカにおける水素搭載
方法の考えを表 4-1-20 に整理する。当面,圧縮水素方式を中心に開発が進められている
が,とくにトヨタやホンダは水素吸蔵材料と圧縮タンクを組み合わせたハイブリッド型
の貯蔵タンクにも期待をかけている。また,スズキにおいても同様である注)。
注)
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−240−
表 4-1-20 主要自動車メーカの水素搭載に対する考え
自動車
メーカ
トヨタ
水素搭載方法に対する考え
・ 現状ではエンジニアリング的に可能な貯蔵方式は高圧水素貯蔵のみ。当面この延長
線上で検討。ただし,高圧 MH 合金タンクの開発も進めており,有望な水素貯蔵材
料が見出せればそれをタンク化する技術は持っている。
・ 70MPa 高圧水素タンク搭載 FCV で 10・15 モードで 780km の航続距離を達成。数
値上ガソリン車と同等だが,エアコンやヒータ使用時には不十分であり,タンクス
ペースもガソリン車の 2 倍以上と課題はある。
・ 70MPa における実証実験を実施し,インフラ側を含めどのような課題があるかを明
確にする必要がある。
・ 世界的に 70MPa が推進されているが,最適圧力が 70MPa と 35MPa の間にあるか
どうかの検討も必要。
日産
・ 2010 年の前半までにおいては,高圧タンク方式しかありえないと考えている。
・ 70MPa での実証試験によるデータ取得は意義がある。
・ 70MPa 水素タンク搭載のプロトタイプ FCV の航続距離は 500km であるが,今後の
FC システムの効率改善により,2010 年ごろには 35MPa で 10・15 モードでも 500
∼600km,エアコンなどを使用しても 350∼400km 程度を走行できる中型乗用車が
実現できるのではないかと考えている。
・ ただし,コストを考えると水素搭載圧力は低い方が望ましい。35MPa であっても,
将来 10・15 モードでの航続距離が 600km 近くになれば,70MPa にする必要性は薄
れる。
ホンダ
・ 35MPa の高圧水素タンク搭載で LA4 モードで 570km を達成。当面は 35MPa 貯蔵
で開発を進めていく。
・ 航続距離の伸長のためには,水素搭載圧力を上げることもひとつの方策だが,どこ
まで上げるかは,コストやインフラ側のポンプ,バルブなど周辺機器の信頼性の確
保などを踏まえて慎重に議論する必要がある。
・ 理想的には 35MPa よりも低圧に向かうべきだと考えているが,現実論として航続距
離を満足することは現状では不可能なため,35MPa よりも高いところに最適圧力が
あると思われる。
・ 研究の一環としてタンク内に水素吸蔵材を入れたハイブリッドタンクに関する検討
も行っているが,まだ研究段階である。
メ ル セ デ ・ ダイムラーでは米国や欧州での議論の状況も含め,70MPa が当面妥当な方向性であ
ると考えている。
ス・ベン
・ 当社の試算では 70MPa にしても,エネルギーロスは数%であり,顧客の利益を考え
ツ日本
ると当面 70MPa が一番良いと考えている。
出典:平成 19 年度の訪問インタビュー調査結果より
以下にこれらの材料についての研究開発動向の概要を整理する。
(2) 圧縮水素
現在わが国で走行している FCV のほとんどは,高圧水素型であり,現状の技術水準を
前提にすると,高圧ガス方式が最も実用的な水素の車載方法であると考えられる。
現状主流となっている充填圧力は 35MPa(トヨタ FCHV,ホンダ FCX など)であり,
現状では高圧水素方式の FC 乗用車の航続距離は,最大でも 300∼350km 程度であると
考えられる。そのため,航続距離を伸ばすために,50∼70MPa といった高圧化の検討
が行われている。
CNG 車や FCV に用いられている軽量高圧容器としては,Type3 と Type4 と呼ばれる
−241−
タイプがある。Type3 はライナーがアルミニウムで強化繊維にカーボンファイバーを用
いたもので,カナダの Dynetek 社とアメリカの SCI 社等が開発・供給を進めている。
一方,Type4 はライナーに熱可塑性樹脂を用い,強化繊維には同じカーボンファイバー
を用いたものであり,アメリカの Lincoln 社,Quantum 社等が開発を進めている。こ
のうち Dynetek 社の Type3 容器は,DaimlerChrysler 社の FC バスや MAN 社の水素
バスの路上試験等で採用されており,2 年以上の実績がある。Ford 社の FCV や日産の
実証試験車等にも搭載されている。
水素用高圧容器における課題は,低コスト化と高圧化への対応である。高圧化に対し
ては,バルブやレギュレータ類における水素のリークの問題が大きいという注1)。
こうした背景の中,70MPa の実現に向けた取り組みが活発になっている。2002 年 7
月には GM 社と Quantum 社が世界初となる 70MPa タンクの開発に成功したと発表し
た。その後,GM 社とスズキは,日本における高圧ガス保安協会の認証を得て,開発し
た 70MPa 圧縮水素貯蔵システムを搭載した「MR ワゴン-FCV」を開発し,国土交通大
臣認定を取得し,実証走行を開始している。
また,カナダでは,70MPa 仕様の燃料電池車用水素容器やバルブ等の開発,標準化を
目的とした Hydrogen P700 プロジェクトが実施されている注2)。
水素の高圧化に関しては,高圧力化するにしたがって圧力と体積の関係が線形領域を
外れていき,70MPa 以上に高圧化してもそのメリットはほとんどないといわれている。
また,高圧化に伴い,圧縮に要するエネルギーのロスも大きくなるため,今後高効率な
コンプレッサの開発も重要な課題である。
(3) 水素吸蔵合金
法規制や安全性等の面からは水素吸蔵合金による貯蔵方式が有利であり,より安価で
大きな吸蔵力のある材料開発が進められている。自動車用水素タンクとして仕上げた
ベースで理想的には 5 重量%以上の貯蔵能力が必要と考えられている。
現在までに開発された水素吸蔵合金は 100 種類を超えていると言われ,組み合わせと
しては,水素吸蔵量の多い金属元素単体と,吸蔵量は少ないが水素化反応が早くしかも
反応温度を低く抑えられる元素との組み合わせが基本となっている。水素吸蔵量の多い
元素として,Ca,Mg のグループ,希土類金属のグループ,Ti のグループ,Pt,Pd の
グループなどが挙げられる。2 つの元素の組み合わせ(2 元素系合金)を基本とし,そ
の合金の持つ性質をさらに向上させるために,第 3 の元素,第 4 の元素と次第に複雑化
する方向へ進んでいる。水素吸蔵合金の吸蔵量の例を表 4-1-21 に整理する。
JFE コンテイナー(旧鋼管ドラム)は,こうした問題から,50MPa が現実的と述べている。(2001
年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」)
注2)
詳細は 3-2-6(4)参照。
注1)
−242−
表 4-1-21 水素吸蔵合金の吸蔵量の例
水素吸蔵合金
吸蔵量(重量%)
LiH
12.7
MgH2
7.6
LaNi5H6.0
1.4
Ti0.9Zr0.1Mn1.4V0.2Cr0.4H3.2
3.0
現在,自動車車載用として最も高い貯蔵能力を有するのは,トヨタ自動車が開発した
常温で作動する 2.3 重量%の BCC 合金(Ti-V-Cr 系)である。最近の技術動向としては,
2.8 重量%程度の吸蔵能力を有する合金が開発されつつあるという注1)。
最近発表された研究成果としては,広島大学,広島県立西部工業技術センター,マツ
ダの共同研究である RF 支援スパタリング薄膜法注1)がある。Mg はもともと 7.6 重量%
の多量の水素を吸蔵することができるが,水素の吸収・放出に 300℃の高温が必要とな
る。そこで,水素吸蔵量は 0.6%と少ないが放出温度が 100℃以下である Pd 薄膜と Mg
薄膜を交互に積層した多層膜を形成した。その結果,Pd 4 層と Mg 3 層を積層した 7 層
膜では,100℃以下で 5 重量%の水素を吸蔵し放出することが確認されたという。現状
では,薄膜の大量製造方法やコスト面からみて,実用化へのハードルは高い。
また,東北大学の岡田教授の研究グループでは,重量比で 3%の吸蔵能力を持つチタ
ン系の吸蔵合金を開発したという報告もある。
以上のように,最近になって,いくつかの研究成果が報告されているものの,吸蔵合
金タンクとしてのコスト,吸蔵能力に関してはこれからの課題であり,現状では貯蔵能
力,コストとも実用化には程遠いといえる。そのため,現状では何らかのブレークスルー
が必要と考えられている。
(4) ハイブリッド型水素貯蔵容器
産業技術総合研究所では,NKK,JFE コンテイナーと共同で水素吸蔵合金と高圧水素
容器の両者の特性を活かしたハイブリッド水素貯蔵容器の研究開発を行った。これは高
圧容器の中に吸蔵合金を入れ,高圧水素の一部を吸蔵合金に貯蔵することによって,両
者の重量と体積に関する特性を活かし,従来の高圧容器以上の体積密度の向上を狙った
ものである(図 4-1-29)。水素 5kg を貯蔵した場合,質量 161kg(水素込み),容器体
積 134L となっており,従来の高圧容器(表 4-1-19)よりも体積密度の向上が図られて
いる注2)。過年度のインタビュー調査では,想定されるハイブリッド型水素貯蔵タンク
の仕様は,貯蔵圧力が 35MPa,全体システムの大きさ 150ℓ,内容量が 130ℓ で,そのう
ちの 15%の 20ℓ が吸蔵材と考えているとのことであった。また,吸蔵材の目標とする水
素貯蔵能力は 180g/ℓ であり,現状の水素吸蔵合金に当てはめると,おおよそ 3wt%を
注1)
注2)
2001 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
−243−
少し超えるくらいの吸蔵能力となる。可逆性や反応速度,温度が適切な領域にあり,最
終的には 3wt%を超える高容量の材料を見出すことがハイブリッドタンク用の水素吸蔵
合金の最大の課題であり,今後 5 年後を目指して,2∼2.5wt%の合金を用いてシステム
を組む場合には,平衡圧を 50 気圧程度とし,ある程度の耐久性を持たせることが課題
であるという注1)。
本田技術研究所では,2005 度のインタビュー調査の中で,圧力を 35MPa に維持した
まま,貯蔵量を増加させる方法として,幅広い吸蔵材料を用いたハイブリッド型の水素
貯蔵容器に期待をかけていると述べている。高圧化という物理的な方法とともに化学的
な方法を併せて高密度な水素の貯蔵を図っていくべきだという。注2)
図 4-1-29
ハイブリッド水素貯蔵容器
資料提供:(独)産業技術総合研究所関西センター(2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」)
一方,平成 19 年度の産総研水素エネルギーグループへの聞き取り調査によると,現在,
100℃以下で水素の吸蔵放出が可能なハイブリッドタンクは,トヨタ自動車が開発した
タンクシステムの 2.2wt%が世界最高値であるという。水素吸蔵合金材料のみでは
2.5wt%である。このタンクは,体積当たりの吸蔵量は 50g/L であり,体積密度で見ると
DOE の目標値の 45g/L を 10%上回る性能を誇るという。今後,システムで 3wt%まで
向上させることができれば,5kg の水素を搭載するタンクが 150kg,体積 100L 程度で
できる可能性があると思われるということである注3)。
注1)
注2)
注3)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
参考資料-Ⅳ.参照。
−244−
(5) カーボンナノチューブ
1997 年に A.C.Dillon らは,カーボンナノチューブが常温で 5∼10 重量%という極め
て高い水素吸蔵能力を有する可能性を指摘し,1999 年には C.Liu らによって精製によ
る 50%純度のカーボンナノチューブが作製され,その水素吸蔵量が 4.2 重量%であると
報告されるなど,カーボンナノチューブの水素吸蔵材料としての期待が高まった。
大阪ガスでは積極的にカーボンナノチューブの研究開発に取り組んでおり,現在,ア
モルファスカーボンナノチューブ(α-CNTs)と呼ばれる物質の研究開発に取り組んで
いる注)。通常の CNTs は中央の穴の周りの層が多層のグラファイトで構成されているの
に対し,α-CNTs ではグラファイトの層が認められず,結晶性がほとんどないのが特徴
である(図 4-1-30)。
水素吸蔵に関しては,通常の多層 CNTs は,論文等で 5wt%や 10wt%と発表されてい
るが,発表後に確認できておらず,研究者の中では 0.1wt%∼0.5wt%程度という見解に
固まりつつあるという。しかし,α-CNTs の水素貯蔵量は,室温,10MPa で 3wt%が
確認され,現状ではサンプルによってバラツキがあるため 1∼3wt%の間にあるという注)。
以上のようにカーボンナノチューブは水素吸蔵合金と比較してやや大きな重量密度を
有しているが,実用化に向けては,吸蔵能力を上げるための構造の最適化,効率良くボ
ンベにパッキングする技術の開発などが課題であり,基礎的な研究段階にあるのが現状
である。
図 4-1-30 α-CNTs の写真
注)
2003 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−245−
(6) ケミカルハイドライドを用いた水素供給システム
無機系のケミカルハイドライドについては,アメリカやドイツで数多く研究されてい
る。アメリカの Millennium Cell 社では,燃料電池向けの水素貯蔵材料として NaBH4
を 検 討 し て お り 注 1 ) , 同 社 の 技 術 を 用 い た FCV 「 Town&Country Natrium 」 が
DaimlerChrysler より発表されている。これは,以下の加水分解反応を利用したもので
ある。
NaBH4(aq)+2H2O → 4H2 + NaBO2(aq) + 300 kJ
これは燃料タンクに NaOH(5%)を含む NaBH4(35%)の水溶液を入れ,冷却シス
テムを備えたルテニウム触媒層へ導入して水素を発生させ,生成される NaBO2 を廃液
回収タンクに収容するシステムである。NaBO2 は回収されてリサイクルされる。
同様に,加水分解を利用した水素の生成方法としては,Powerball 社の NaH と NaOH
を利用したもの,Herbst 社の Si と SiO2 を利用したもの,Graz 大学の Fe と FeO2 を利
用したものなどが提案されている。
その他には,ハワイ大学の C.M.Jensen らによる NaAlH4 を用いた水素貯蔵の研究な
どがある。
有機系のケミカルハイドライド(有機ハイドライド)については,北海道大学の市川
勝教授らにより,水素の吸蔵方法としてシクロヘキサンやデカリンなどを用いる方法が
提案されている注2)。水素とベンゼン,および水素とナフタレンを反応させるとそれぞ
れシクロヘキサン,デカリンが生成される。シクロヘキサンやデカリンは常温常圧で液
体なので,水素が必要なところで触媒を使って水素を取り出し利用するということが考
えられている。すなわち,シクロヘキサンやデカリンを水素キャリアとして利用すると
いうものである。
メタノールや液体水素に比べて,シクロヘキサンやデカリンは,ガソリンスタンド設
備が使える,価格が安い,すぐに水素が取り出せる,という優れた面を持っていると市
川教授は述べている注2)。北海道大学市川研究室では,極めて高性能な機能集積型貴金
属触媒の研究開発がなされ,シクロヘキサンやデカリンから水素を高速で効率的に取り
出す反応器の開発に成功したと発表している注2)。
有機ハイドライドの特性を図 4-1-31 に示す。シクロヘキサンの沸点は 90∼125℃であ
り,ガソリンの 80∼125℃と同等であり,メタノールのような腐食の問題もない。
注1)
日本では,工学院大学の須田教授が同様の研究を行っている。
技術情報協会セミナーテキスト「固体高分子型燃料電池における燃料の選択・供給システムの動向」
(平成 13 年 1 月 30 日)
注2)
−246−
図 4-1-31 ケミカルハイドライドの特性
出典:「固体高分子型燃料電池における燃料の選択・供給システムの動向」(平成 13 年 1 月 30 日)
また,市川教授らは,ゼオライトの表面にモリブデンやレニウムなどの金属をのせた
独自の触媒によってメタンガスから水素とベンゼンを同時に取り出すシステムについて
も提案している。この方式では,とくに炭素を CO2 として空気中に排出せずにベンゼン
として固定することに意味があるという。この方式については,平成 12 年度地域コン
ソーシアム研究開発事業に採択され,北海道地域技術振興センター等と共同で,「メタ
ン直接改質法によるクリーン水素等の製造技術開発」として研究開発が進められた。
こうしたケミカルハイドライドを用いた水素供給システムについては,現状では社会
的認知度が低く,また,例えばシクロヘキサンから水素を取り出した後のベンゼンの処
理方法,ベンゼンによる環境汚染対策や安全性の確保などに対する具体的な提案がない
ため,これを具体的に評価できるようになるまでには,まだまだ時間がかかるものと考
えられる。
4-1-9 二次電池等
FCV における始動性の向上や減速時のエネルギー回生,あるいは低負荷領域で高効率
という燃料電池の特性を最大限に発揮させるために,エネルギーバッファとしての二次
電池やキャパシタを利用することが主流となっている。このようにいわゆるハイブリッ
ド化することで,FCV の車両効率の向上を図ることが可能となる。現在では,開発され
ているほとんどの FCV にはこのようなエネルギーバッファが搭載されており,二次電
池等は,FCV における重要な構成要素となっている。
−247−
(1) 二次電池
表 4-1-22 に最近発表された FCV と搭載する補助電源を整理する。近年発表された
FCV では,補助電源装置としてニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池が搭載さ
れている。
ト ヨ タ FCHV に お い て はパ ナ ソ ニ ッ ク EV エ ナ ジ ー 製 ニッ ケ ル 水 素電 池 が ,
DaimlerChrysler 社の F-Cell においては三洋電機製ニッケル水素電池が採用されてお
り,Ford の Focus FCV においても三洋電機製ニッケル水素電池が搭載されている。日
産自動車では,X-TRAIL FCV に独自に開発した薄型ラミネート型セルを採用したコン
パクトリチウムイオン電池を搭載している。なお,日産自動車は 2007 年 4 月,自動車
用の高性能リチウムイオンバッテリーの開発およびマーケティングを主な業務目的とし
た二次電池開発製造販売会社オートモーティブ・エナジー・サプライ株式会社を
NEC/NEC トーキンと合弁で設立し,リチウムイオン電池の事業化を進めている。
表 4-1-22 最近発表された実走可能な主な FCV と補助電源
トヨタ
日産
発表年月
車両
燃料タイプ
補助電源
2005.6
圧縮水素(35MPa)
ニッケル水素電池
圧縮水素(70MPa)
ニッケル水素電池
圧縮水素(35MPa/70MPa)
コンパクト
リチウムイオン電池
圧縮水素(35MPa)
ウルトラキャパシタ
2006.9
2007.11
2002.10
2005.3
2002.4
FCHV
改良型 TOYOTA
FCHV
X-TRAIL FCV
05 モデル
Honda FC STACK
搭載 FCX
FCX コンセプト
FCX クラリティ
F-Cell
B-Class F-Cell
Focus FCV
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
2002.1
HydroGen3
2006
Equinox Fuel Cell
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(70MPa)
圧縮水素(35MPa)
液体水素,
圧縮水素(35MPa/70MPa)
圧縮水素(70MPa)
2007.9
2005.12
2005.6
ホンダ
Daimler
Chrysler
Ford
GM
−
ニッケル水素電池
1) ニッケル水素電池の課題
ニッケル水素電池の課題としては,高出力化,温度特性,コスト,寿命が挙げられ
る。三洋電機によれば注),寿命については,累積走行距離 15 万マイル,使用年数に
ついては放置を含めて 10∼15 年という要求が自動車メーカから出されているという。
距離については目標水準が達成されつつあるが,使用年数については,あらゆる環境
条件において目標を達成するためのハードルが高い上に,コスト削減についても厳し
い状況であるという。
注)
2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
−248−
2) リチウムイオン電池の課題
ニッケル水素電池と並んで期待されているリチウムイオン電池の課題としては注1),
ニッケル水素電池と同様,高性能化(高出力・高エネルギー密度),寿命,コストが
あり,さらにリチウムイオン電池には安全性が挙げられる。現在,二次電池が将来の
電動車両の鍵となる技術という位置づけから,EV 用,HEV 用,plug-in HEV を含め
た電動車両用としてのリチウムイオン電池に研究開発の期待が持たれている状況にあ
る。
なお,現在の FCV あるいは HEV 用二次電池としては,ほとんどの車両で日本企業
製が採用されており,この分野の二次電池における日本企業の優位性は揺るぎないも
のとなっている。しかし,米国の A123 Systems が,オリビン鉄(LiFePO4)を正極
に用いた安価で安全性,信頼性が高く,寿命も長いリチウムイオン二次電池を開発し
注目を集めている。日本の電池メーカにおいてもこの電池系の評価を進めており,す
ぐにではないにしろ脅威だという意見も聞かれる。日本では,当初,電圧が低く,ハ
イパワーの用途には向かないのではないかと判断されていたが,A123 Systems が材
料に導電補助材などを付加して,パワーが取れる電池として仕上げてきた。エネルギー
密度的には十分ではないが,電圧が低いことで,寿命と安全性が非常に高いと言われ
ており,HEV 用リチウムイオン二次電池のひとつとして有力な候補であると思われる
という注2)。ただし,平成 19 年度における A123 Systems 社への訪問インタビュー
調査によると,本格的な大量生産技術がないなど,現時点ではわが国のリチウムイオ
ン開発・生産技術の水準に達していないという印象を受けている。
(2) キャパシタ
FCV や HEV で用いられているキャパシタ(別名コンデンサ)は,電気二重層コンデ
ンサであり,ウルトラキャパシタ,スーパキャパシタとも呼ばれる注3)。ホンダが独自
開発したウルトラキャパシタが Honda FCX のエネルギーバッファとして採用されてい
る。このホンダ製ウルトラキャパシタは二次電池に比べてエネルギー密度は小さいが出
力密度は高く(1,500W/kg 以上),また,二次電池のような化学反応を伴わないため,
内部抵抗が小さくエネルギー効率が高いことが特長である。さらに,ウルトラキャパシ
タを用いたシステムでは,FC スタックの電圧変動に対応して充放電を行うことから,
二次電池のシステムのような電圧調整のためのコンバータが不要となり,エネルギー伝
導効率が高くなるメリットもある注4)。
リチウムイオン電池における研究開発動向については,2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
参照。
注2)
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
注3)
一般にコンデンサは,対向する 2 つの電極間に誘導体を挟んだ形で構成されるが,電気二重層コン
デンサには誘導体はなく,その代わりに電気二重層という状態を誘導体の機能として利用している。
注4)
2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
注1)
−249−
トヨタによれば注1),キャパシタは瞬間的なパワーを出すためには有利だが,容量が
小さいので継続的なパワーを出すことは難しく,トヨタが採用しているような停止時に
はスタックを止め,二次電池のみでの走行モードがあるというシステムに用いることは
現状では難しいという。したがって,都市走行のような低中速走行で,スタックを止め
る機会が多いときは二次電池の方が効率はよくなり,逆に,高速走行などのスタックを
止める機会が少ないときは,エネルギー効率が良いキャパシタを使った方が有利である
という。走行条件によって互いにメリットとデメリットがあると述べている。
4-1-10 FCV のシステム上の技術課題
燃料電池車全体システムの課題としては,始動性や負荷応答性,寒冷地や砂漠等のあ
らゆる環境条件下における耐久性,信頼性といった自動車としての基本性能の確保が重
要課題である。とくに実用化に向けた当面の重点課題としてこの氷点下での始動性の確
保が挙げられる。現在,国内外のメーカにおいてこの問題の解決に向けた努力が進めら
れている注2)。なお,前述のとおり,ホンダは,氷点下での始動を可能にした「Honda FC
STACK」を搭載した「FCX」を 2005 年に日米で販売を開始している。また,車両効率
のさらなる向上も重要な課題のひとつである。
2005 年度の自動車メーカへのインタビュー調査注3)では,こうした耐久性,信頼性,
低温始動性などの技術課題に対しては,現象解明が進んでいくことによって徐々に解決
が図られるという各社の自信を感じることができた。トヨタでは,社内評価ベースとは
いえ,電解質膜の耐久性がすでに 15 年 20 万キロの耐久を見通せる段階に来たと述べて
いる。ただし,スタックの出力低下の問題があり,この課題に対しては,目標の半分程
度の達成状況であるという。
車両効率についても現状レベルからさらに 2 割程度の向上が可能と,複数のメーカが
述べている。
航続距離の問題に対しても,FC スタックシステムの効率向上,水素の高圧化あるい
はハイブリッド型水素タンクの採用,車両レイアウトの効率化による水素搭載量の向上
によって十分な実用航続距離を有する FCV が数年のうちに開発されると考えられる。
日産自動車では,従来車の性能にほぼ匹敵する FCV が 2010 年までに開発可能と述べて
いる。また,ホンダが 2006 年度発表した FCX コンセプトでは,35MPa の高圧水素タ
ンクを搭載し,LA4 モードで 570km の航続距離を達成している(表 3-5-16 参照)。
一方で,こうした性能と低コスト化の両立は,依然として目途が立っておらず,コス
トの削減は最後まで残る大きな課題である。
注1)
注2)
注3)
2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
2002 年度 JEVA「FCV に関する調査報告書」
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−250−
4-2 水素供給インフラストラクチャ整備に関する課題と動向
(1) 自動車への燃料供給パス
平成 19 年度 JHFC セミナーにおいて,図 4-2-1 に示すような将来の自動車用エネル
ギーパスが示された。石油依存度削減,CO2 排出量の削減といった長期的な目標達成の
観点でみると,一次エネルギー源としては,バイオマス,原子力,自然エネルギーが重
要であり,自動車用燃料としては,バイオマス燃料,水素,電力が重要なオプションで
ある。
自動車燃料
(エネルギ源)
1次エネルギ源
CO2
石油
天然ガス
石炭
ガソリン
軽油
LPG
CNG
精製
CCS
CO2
バイオ燃料
CO2
改質+CCS
CO2
吸収
CO2
バイオマス
生成
熱分解
原子力
CCS
風力・太陽
CO2
排出
内燃機関
自動車
バイオ燃料は植物成長段階で大気中
のCO2を吸収するので、トータルでの
CO2排出は非常に少ない。また、自動
車適用上の技術課題が少ない。ただ
し、供給可能量が懸念される。
水素エンジン
自動車
水素
燃料電池
自動車
電力
電気自動車
水素を燃料とする自動車は、車から
CO2を排出しない。
電気分解
CO2
CO2
水力
自動車
発電+CCS
発電
電力で動く電気自動車は、車からCO2
を排出しない。
発電時や水素製造時にCCS(CO2の回収・貯留技術)を組み合わせることや、再生可能
エネルギ、原子力利用比率を上げることで、CO2を大幅に削減するポテンシャルがある。
JARIまとめ
図 4-2-1 将来の自動車への燃料供給パス
出典:平成 19 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC セミナー資料より
また,平成 17 年度の JHFC プロジェクトにおいても,2010 年頃を目標年次とした一
次エネルギーの採掘から自動車のタンクに水素を充填するまでの様々なエネルギーパス
におけるエネルギー効率,CO2 排出量といった視点から検討が進められた(図 4-2-2)。
その結果,近い将来においては,製鉄所で副生されるコークス炉ガス(COG)を精製し
て水素を製造しステーションまで輸送する方法,苛性ソーダ製造過程から副生される水
素を圧縮水素でステーションまで輸送する方法などが比較的エネルギー効率面や CO2
排出削減の面から望ましいという結果が得られている。
−251−
一次エネルギ投入量/車載燃料エネルギ
0
903: ナフサ給油
904: LPG充填
−252−
926Pn: COG(NG) LH輸送 LH充填
926Rn: 塩電解(NG) LH輸送 LH充填
る状況にあり,この分野における技術進歩が必要であると考えられる。
922Jp: 日本MIXPEM(@S S) CHG充填
922Ja: 日本MIXアルカリ (@SS) CHG充填
NaOH
bypro
LH
931J: 日本 MIX 充電
926Rt: 塩電解(都ガ) LH輸送 LH充填
Steel
COG
LH
926Rh: 塩電解(重油 ) LH輸送 LH充填
10
926Pt: COG(都ガ) LH輸送 LH充填
200
9
8
7
100
6
4
2
g-CO2/MJ(Fuel)
NaOH
bypro
926Ph: COG(重油 ) LH輸送 LH充填
922Rt: 塩電解(都ガ) LH輸送 CHG充填
922Rn: 塩電解(NG) LH輸送 CHG充填
922Rh: 塩電解(重油 ) LH輸送 CHG充填
922Qt: 塩電解(都ガ) CHG充填
922Qn: 塩電解(NG) CHG充填
922Qh: 塩電解(重油 ) CHG充填
922Pt: COG(都ガ) LH輸送 CHG充填
922Pn: COG(NG) LH輸送 CHG充填
922Ph: COG(重油) LH輸送 CHG充填
NG Origin
922Ot: COG(都ガ) CHG充填
922On: COG(NG ) CHG充填
922Oh: COG(重油) CHG充填
922M: M eOH改質 (@SS) CHG充填
エネルギ投入量
実証データ
907: M eOH給油
922G: LPG改質(@SS) CHG充填
Oil Origin
922I: 都市ガス改質(@S S) CHG充填
905: 都市ガス圧縮充填
922F: 灯油改質(@SS) CHG充填
5
922C: ナフサ改質 (@SS) CHG充填
922A: ガソリン改質 (@SS) CHG充填
901: ガソリン給油
11
Steel
COG
Electrolysis
production
300
CO2
CO2
実用化段階データ
0
-100
排出量/車載燃料エネルギ
902: 軽油給油
Input Primery Energy/Fuel final[MJ/MJ]
12
3
-200
1
-300
図 4-2-2 Well-to-Tank 効率の算定結果
出典:平成 17 年度 JHFC セミナー資料
(2) 水素供給ステーションの種類と課題
表 4-2-1 に水素ステーションのタイプと特徴を整理する。JHFC プロジェクト(第 1
期)では,これらのすべてをカバーする実証ステーションが建設され,運用された。
水素ステーションは,水素製造装置,貯蔵装置,精製装置,圧縮機,蓄圧シリンダ,
ディスペンサ,コネクタ,安全装置などで構成されている。これらは,すでに実証ステー
ションにおいて運転されており,技術的には実用化が可能なものである。しかし,直接
水素形 FCV の Well-to-Wheel 総合効率からみた優位性を確保するためには,水素充填
に至る個々のプロセス効率の向上が必要であり,重要な課題である。とくに現在,FCV
の航続距離を延ばすために水素タンクへの充填圧力の 35 MPa から 75MPa までの高圧
化が検討されていることからも,圧縮機の効率向上は重要な課題であると考えられる。
また,実証ステーションの圧縮機の多くが外国企業製であることからもわかるとおり,
現在,わが国の圧縮機に関する技術は,その信頼性において欧米企業に遅れを取ってい
表 4-2-1 水素ステーションの特徴
型式
天然ガス改質形
LPG 改質形
メタノール改質形
ガソリン・ナフサ
改質形
高圧ガス運搬貯蔵形
液体水素運搬貯蔵形
水電解形
原燃料インフラ
都市ガス 13A の
配管利用
貯蔵設備の新設
を要す
貯蔵設備の新設
を要す
既存 GS に設置
可能
貯蔵設備の新設
を要す
貯蔵設備の新設
を要す
全国全ての地域
に設置可能
代表的特徴
・ 水素コストがほかよりも安価
・ 都市ガスの供給地域に限られる
・ 都市ガスに比べ割高
・ 全国すべての地域に設置可能
・ 改質温度が 300℃で天然ガスより有利
・ 改質技術が比較的難しい
・ 全国すべての地域に設置可能
・ 設備コストが安価で取り扱いが容易
・ 場所により輸送コストが高い
・ 設備コストが高価であるが貯蔵量が多い
・ 取り扱いが不慣れ
・ 水素コストが高い(電気料金により変動)
・ 起動時間 1 分で運転の自由度大
・ 夜間電力により負荷平準化に貢献
出典:第 39 回電気化学セミナー「エネルギー・環境への切り札
を基に作成
クリーンビークル
」1999.11.25∼26
70MPa の車載水素タンクへの対応については,圧縮機のみならず,蓄圧用コンポジッ
トシリンダ,ディスペンサ,バルブ類やコネクタなどの新規開発が必要であり,課題と
なる注1)。
なお,水素に暴露される金属については,水素が金属中に浸透して強度が低下する問
題と,水素中においては空気中に比べて摩擦抵抗が増大するという問題がある。こうし
た問題に対しては,平成 18 年度に九州大学に設置された(独)産業技術総合研究所水
素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)において研究が行われ,解決が図ら
れることとなっている注2)。
(3) 水素供給ステーションの建設費
NEDO のロードマップでは,水素ステーション設備費として 2020 年の本格普及期に
おいては,改質形のステーションで 20∼30 万円/(Nm3/h),水電解形で 25∼40 万円
/(Nm3/h)という値が示されている(図 4-1-3 参照)。水素価格を抑えるためにも水
素ステーションの建設コストのさらなる削減が期待される。
注1)
注2)
「水素利用技術集成 製造・貯蔵・エネルギー利用」㈱エヌ・ティー・エス,2003 年 11 月
2006 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」。HYDROGENIUS では,すでに水素による強度低下
が,有力な説であった金属の格子間脆化によるものではないことを突き止めるなどの成果を得ている。
−253−
4-3 FCV の経済性評価の事例
(1) 燃料電池実用化戦略研究会の目標値
「燃料電池実用化戦略研究会」では,自動車用と定置用について,2010 年以降を普及
時期とし,その時期における FC システム全体の経済性目標を設定している(表 4-3-1)。
表 4-3-1 「燃料電池実用化戦略研究会」による FC システムの経済性目標値
用途
時期
自動車用
定置用
家庭用システム
業務用システム
コスト目標
2010 年以降
5,000 円/kW 以下
2010 年以降
30 万円/台以下
15 万円/kW 以下
備考
・改質器・その他周辺機器含む
・約 5 万台の普及を想定
・約 210 万 kW(家庭用 120
万台)などを想定
出典:燃料電池実用化戦略研究会「固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用技術開発戦略」(2001
年 8 月 8 日)を基に作成
(2) NEDO の技術開発ロードマップ
NEDO が発表した燃料電池技術開発ロードマップでは,2020∼2030 年の次世代車の
本格普及時において FC システムの製造価格を約 4,000(円/kW)としている(表 4-3-2)。
表 4-3-2 NEDO 燃料電池技術開発ロードマップによる FC システムの製造価格(自動車用)
時
現在
2010 年頃
初期車
限定導入
2015 年頃
初期車普及,
次世代車実証
2020∼30 年頃
次世代車
本格普及
数十万円
5∼6 万円
約 1 万円
4,000 円未満
10 万台想定
100 万台想定
100 万台想定
期
フェーズ
FC システム製造価格
(円/kW)
生産台数(台/年)
表 4-3-3 NEDO 燃料電池技術開発ロードマップによる FC システムの価格(定置用)
時 期
フェーズ
FC システム価格
(円/kW)
生産台数(台/年)
現在
2010 年頃
改良機
2015 年頃
普及機
2020∼30 年頃
本格普及機
数百万円
約 70 万円
約 50 万円
40 万円未満
10 万台想定
50 万台想定
50 万台超想定
(3) 米国 DOE による目標値
米国 DOE は,FreedomCAR プログラムにおいて FC システムのコストと水素供給コ
ストの目標値を示している(表 4-3-4)。自動車用の FC システムコストの目標値として,
普及段階とする 2010 年以降で$45/kW,本格普及段階とする 2015 年以降で$30/kW
と設定している。
米国 DOE では,最近の原油価格の高騰を踏まえて,水素供給コストの見直しを行っ
たが,そのコスト目標は 2009 年において$3.0/kg である。これは Nm3 当り 3 円を上
回る程度あり,相当安い水準である。
−254−
表 4-3-4 DOE による FC システムと水素のコスト目標値
プログラム等
FreedomCAR
分類
FC システムコスト
(自動車用)
水素価格
FCV デモンストレーション
水素供給コスト
プロジェクト(2005 年)
達成時期とコストの目標
2010 年以降:$45/kW
2015 年以降:$30/kW
2010 年以降:$1.25/ガロンガソリン相当
2009 年:$3.0/kg
2015 年:$1.5/kg
(4) EU の FP7 による目標値
EU の FP7 では,FC システムの長期的なコスト目標として,自動車用では 100 ユー
ロ/kW(年産 15 万台の場合),定置用で 2000 ユーロ/kW と設定している。
(5) FCCJ による目標値
FCCJ では,定置用 FC システム(1kW 級)について,2015 年以降の本格普及段階
において 30 万台/社の製造を想定した場合に,製造原価 16 万円/台を目標としている。
(6) WE-NET による試算
WE-NET では,水素燃料 FCV の経済性を評価している注)。短期に成立可能な最も安
価な水素の供給システムは,表 4-3-5 に示すように,天然ガス(都市ガスあるいはメタ
ン)をオンサイトで改質する方法であり,1Nm3 当り約 40 円となっている。
表 4-3-5 わが国における自動車用水素のコスト見積
項目
設備費
人件費
変動費
都市ガス
メタノール
電力
その他ユーティリティ
計
天然ガス改質
17.6
2.9
14.1
−
4.9
0.4
39.9
メタノール改質
17.6
2.9
−
27.6
4.4
0.3
52.8
(単位:円/Nm3-H2)
アルカリ水電解
PEM 水電解
16.9
15.7
2.9
2.9
−
−
−
−
54.5
48.8
0.5
0.5
74.8
67.9
注)都市ガス価格:39.3 円/Nm3,メタノール価格:40.0 円/kg,電力価格:東京電力高圧季時別電力 B
出典:水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
調査・検討(平成 11 年 3 月)
水素利用技術に関する
なお,40 円/Nm3 という水素の価格は,1 ステーション当り 300Nm3/ hour の能
力をフル稼働した場合であり,普及が十分に進展していない時期においては,公的な支
援なしではこれより高額になることは避けられないと見積られている。表 4-3-6 は 40
円/Nm3 の前提となる天然ガス改質形水素ステーションの建設費である。
水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
査・検討(平成 11 年 3 月)
注)
−255−
水素利用技術に関する調
表 4-3-6 燃料電池車が経済的に成立するシステム例
(天然ガス改質形水素ステーションの建設費)
項目
金額(百万円)
備考
パッケージ型(脱硫,改質,変成,蒸気,純水,制御系
改質装置
61
を含む)
47
精製装置
PSA 式
43
ガス圧縮貯蔵設備
圧力 20MPa
40
その他機器
15
建屋
20
工事費
226
合計
注)水素製造能力:300Nm3/hr
出典:水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
調査・検討(平成 11 年 3 月)
水素利用技術に関する
(7) 経済産業省「燃料電池実用化戦略研究会」による燃料供給ステーションの設置費用の試算
燃料電池実用化戦略研究会では,表 4-3-7 のように既存のサービスステーション(SS)
に設備を追加するための 1SS 当たりの設置費用を試算している。
表 4-3-7 燃料電池用として見込まれる主な燃料の 1SS 当たりのインフラ投資額
燃料種類
現在の自動車用
供給設備数
既存の SS に設
備を追加するた
めの 1SS 当た
りの設置費用
水素
メタノール
ガソリン
GTL
0 ヶ所
約 50 ヶ所
約 56,000 ヶ所
0 ヵ所
0.2 億円
−
0.1 億円
液体水素
貯蔵
水素ガス
貯蔵
0.9 億円
0.8 億円
−256−
4-4 燃料電池車の実用化の時期と普及台数の見通しについて
4-4-1 自動車メーカによる FCV の実用化計画
2002 年 12 月,トヨタとホンダは FCV の限定リース販売を行い,DaimlerChrysler,
日産も限定リース販売を開始している。また,国内では,官庁,自治体,一般企業を含
め 2005 年現在で 25 台の FCV がリース販売されている(表 4-4-1)。
表 4-4-1 国内における FCV リースの現状(2002.12∼2005.10 末現在)
車両
トヨタ
ホンダ
日産
ダイハツ
D/C
FCHV
(120 万円/月)
FCX
(80 万円/月)
X−TRAIL FCV
(100 万円/月)
MOVE FCV-K-Ⅱ
(20 万円/月)
FCELL
(120 万円/月)
総計
官庁
自治体
一般企業
合計
5台
3台
4台
12 台
3台
1台
2台
6台
−
2台
1台
3台
−
1台
−
1台
−
−
3台
3台
8台
7台
10 台
25 台
注)トヨタ:米国で 5 台リース,ホンダ:米国で 10 台リース
表 4-4-2 は,平成 19 年度の自動車メーカに対する訪問インタビュー調査結果から FCV
の本格導入までのシナリオとその見通しをまとめたものである。現在,FCCJ 内部で議
論が行われ,2015 年には自動車会社,インフラ会社ともに量産化の判断を行うという結
論で合意に至っている。各自動車メーカにその見通しを聞いたところ,解決すべき課題
はまだ残っているが,2015 年に量産化判断ができるように技術的な課題の解決に取り組
むとしている。
−257−
表 4-4-2 FCV の本格導入までのシナリオに対する自動車メーカの意見
FCV の本格導入までのシナリオに対する自動車メーカの意見
・ FCCJ において,2015 年までに,車側もインフラ側も技術開発や規制緩和
を進めていき,市場を見ながら 2015 年にお互い投資をやるかどうかの判断
を,タイミングを合わせる事で,「鶏と卵」の関係を避けようと議論してい
る。
・ そのためには,まず,判断できるような必要条件の準備が必要であり,車両
メーカの準備ができて車を出そうとしても規制緩和もできていない,インフ
ラもないということでは,マーケットが形成されない。そういう条件整備を
政府,エネルギーメーカーと協力して進めていく必要があると考えている。
日産
・ 本格導入までのタイムスパンとしては,FCCJ のシナリオワーキングで検討
されている 2015 年までに事業化(大量生産)の判断を行うという流れを目
安にしている。
・ FCV は技術的な課題とコストの問題があるが,技術的な課題に関しては,
何とか 2010 年頃までにめどを立てたいと考えている。一方,コスト低減の
課題については,2015 年まで見通してもなかなか厳しい状況にある。今後
もコスト低減については,継続して取組んでいきたい。
ホンダ
・ 本格導入までのシナリオとしては,FCCJ のシナリオ WG で検討されてい
るように,2015 年までに事業化(大量生産)の判断を行う必要があると考
えている。ただ,昨今の環境問題の動きを踏まえると,これより早い時期に
判断を迫られる可能性もあると考えている。
・ FCV の事業化に向けては,更なる技術開発が必要であり,解決すべき問題
は残されている。しかし,見通しは暗くはなく,技術的に問題解決は可能だ
と思っている。
・ インフラについても,必要な時期に本格的な整備が望まれるが,逆に,イン
フラ供給会社にその気になって投資してもらうには,車メーカとしてリアリ
ティのある FCV を早期に導入する必要があると考えている。それが車メー
カの責務だと考えている。
メルセデス・ ・ 2015 年までに商業化移行の判断をするというシナリオは,ダイムラーに
ベンツ日本
とっても妥当なシナリオであると考えている。
・ 日本でも米国でも欧州でも水素インフラと基準づくり・国際標準化なしには
自動車メーカ単独では事業化することはできない。関係者がそろって歩調を
あわせて進めていくことは必要であり,望ましいと考えている。
・ 事業化を図る地域としては,欧州,米国,日本は重要と考えている。これら
の地域は,現状のビジネスにおいてもすでにダイムラーにとって重要な事業
である。
自動車メーカ
トヨタ
出典:平成 19 年度訪問インタビュー調査結果より
−258−
4-4-2 FCCJ による導入シナリオ
2008 年 3 月に開催された平成 19 年度 JHFC セミナーで,FCCJ の検討による FCV
導入のシナリオが報告された。これによると,2010 年ごろには商用水素ステーションの
諸元を決定し,その後商用ステーションの設置を始め 2015 年には FCV の事業化を決断
するとしている。2016 年以降については,水素ステーション設置の前倒しが特に必要な
時期とし,FCV のライン生産による立ち上がりに対し先行する形での水素ステーション
の整備を進めるシナリオとなっている。
ステーション設置数
Phase1
技術実証
Phase2
技術実証+社会実証
【JHFC-2】
【ポストJHFC】
2010 2011
Phase3
普及初期
2015 2016
商用ステーショ
ンの設置開始
Phase4
本格商用化
20xx
ステーション設置
の前倒しが特に
必要な時期
商用諸元ステーショ
ンの先行確認開始
V
C
F
台数
商用ステーショ
ンの諸元決定
ステーション設
置数とFCV台数
比が適正化
ライン生産による
FCV台数の立上り
技術の成立性を確認し、
国及び産業界が
FCVの事業化を決断
FCCJ作成
年
市場競争原理に
基づく台数拡大
図 4-4-1 FCCJ による FCV 導入シナリオ
出典:平成 19 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC セミナー資料より
−259−
4-5 まとめ
本章の結果を以下に取りまとめる。
(1) FCV 技術に関する動向
実証試験が開始された 2002 年当時においては,FCV 技術に関して①燃料電池の小型
化,②耐久・信頼性の向上,③低温始動性の向上,④航続距離の向上,⑤コスト低減が
主要課題として挙げられていた。しかし,平成 19 年度の自動車メーカへのインタビュー
調査などによると,ここ 2,3 年の研究開発により,①燃料電池の小型化や③低温始動
性の向上,④航続距離の向上が図られ,当面残された主要課題は,②耐久・信頼性の向
上と⑤コスト低減,およびこれらの両立に絞られてきている。
また,自動車メーカ各社ならびにインフラ会社は,FCCJ での協議を通じて 2015 年
を大量生産判断時期とすることでおおむね合意し,それに向かって残された課題解決に
向けた技術開発を推進することとしている。
1) 燃料電池スタック
自動車メーカに対するインタビュー調査や素材メーカ等へのインタビュー調査を通
じて,着実に技術が進歩していることを実感することができた。電解質膜の耐久性に
関しては,15 年相当の耐久性に対して目途が立ちつつあるとし,現状では触媒電極の
劣化が主要課題として挙げられている。しかし,これについても着実に技術開発に取
り組むとともに,原因解析のための基礎研究によって数年の内に課題が解決できると
いう自信を伺うことができた。各社とも実証走行試験を通じて,着実に市場走行デー
タとスタックの劣化状況に関するデータの蓄積が図られており,必要な耐久劣化を評
価するための加速試験の方法論も確立しつつあるものと考えられる。
このような耐久性に関する課題とコスト削減の両立は最後に越えなければならない
大きな課題である。その目標水準は,現状の FCV コストの 1/100 のオーダーである
といわれている注)。トヨタによれば,設計,材料,生産技術で 1/10,量産効果で 1
/10 にする必要があるとし,自動車メーカはまずは設計,材料の改良で 1/10 のコス
ト低減を図ることが必要と述べている。
とくに固体高分子膜の低コスト化,電極触媒中の白金量の低減,ガス拡散層として
用いられるカーボン繊維製品の低コスト化,低コストなセパレータ材料や製造工程の
開発等,様々なコスト低減に向けた課題が残されている。
注)
詳しくは 2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」の FC キュービック訪問インタビュー調査結
果参照。
−260−
2) 水素貯蔵技術
直接水素方式の場合,その最大の弱点は水素の低エネルギー密度という性質に由来
する航続距離の問題である。
コスト面,技術面から,現状では航続距離等に問題があるものの,高圧水素タンク
が最も実用的な車載方法であると考えられている。現状の充填圧力は 35MPa が主流
であるが,主要な自動車メーカは,70MPa の圧縮水素タンクを採用してきている。
また,現在,独立行政法人産業技術総合研究所やトヨタなどが検討しているように,
例えば 35MPa の高圧ガス容器の中に水素吸蔵合金などの吸蔵材料を入れ,高圧ガス
方式の低体積エネルギー密度という弱点を化学的な吸着を利用して緩和しようとする
試みも行われている。ホンダ,スズキなどもこのハイブリッド型の水素タンクに着目
しており,内部に入れる水素吸蔵材料の開発が進めば,有力な貯蔵方式となり得ると
期待される。
3) FCV 全体システム
FCV の実用化のためには,寒冷地や砂漠等あらゆる環境においての耐久性と信頼性
といった自動車としての基本性能の確保と,航続距離の確保が重要な課題である。と
くに氷点下においては,FC から生成される純水の凍結が避けられないため,この問
題にどう対処するかが当面取り組むべき重要な課題となっていた。しかし,FCV メー
カ各社は,−30℃∼−25℃での始動性を達成したと発表しており,氷点下における始
動性に関しては,ここ数年の間に実用的には問題ない水準に到達しつつある状況にあ
る。
航続距離の問題に関しては,日産自動車では,従来車の性能にほぼ匹敵する FCV が
35MPa でも 2010 年までに開発可能と述べている。また,ホンダが 2006 年度に発表
した FCX コンセプトでは,35MPa の高圧水素タンクを搭載し,LA#4 モードで 570km
の航続距離を達成している。トヨタの改良型 FCHV では,70MPa の高圧水素タンク
を搭載し,10・15 モードで 780km,LA#4 で 740km に達している。このように,
航続距離は実用化に向けての致命的な課題ではなくなってきた。しかし,エアコン使
用時,とくに暖房時においては航続距離が 30∼35%程度低減するといわれており,実
用的な航続距離を十分に確保するために,あるいは更なるコスト削減のために,水素
タンクシステムの小型・軽量・低コスト化が必要であり,更なる基礎研究が重要であ
る。
(2) 水素供給ステーションに関する動向
現在国内外において FCV 実証走行試験のための水素ステーションの建設が進められ
ている。とくに国内では,2002 年度から JHFC プロジェクトがスタートし,東京・横
浜周辺に 10 基の水素供給ステーションが建設され,水素供給ステーションも本格的な
−261−
実証試験段階に至っている。
水素を製造し水素供給ステーションに水素を供給する方法に関しては,短中期的には
水素をオンサイトで改質する方法,オフサイトで水素を製造し配給する方法,副生水素
を配給する方法等様々な方式があり,また一次エネルギーに何を用いるかによって様々
なパスが存在する。そうしたパスについて,とくに総合エネルギー効率,コストの面か
らの評価を実施し,望ましい水素の製造供給方式についての知見を積み重ねることが必
要であると考えられる。
また,近い将来の FCV の市場導入をにらみ,水素ステーションビジネスを現実的なも
のとし,安価な水素燃料を供給するため,より一段踏み込んだ技術開発や,規制緩和が
必要と考えられる。安価にステーションを建設するための各種機器のコストの低減や本
格的なステーション経営を想定し,土地の有効活用を可能にする安全性を担保した上で
の各種規制の見直しなどが必要と考えられる。
−262−
5.今後の課題
本調査では,国内におけるインタビュー調査,海外における訪問調査およびその他の
文献情報に基づき,主として FCV に関する現状の技術開発動向および燃料電池開発の
ための施策について調査を行った。
今後の課題として考えられる項目は以下のとおりである。
(1) 欧米政府における水素・燃料電池の導入戦略と推進施策の調査
近年の石油価格の高騰などによる石油供給懸念の高まりや,京都議定書における約束
期間への到達,ポスト京都議定書をめぐる議論の活発化など,深刻化するエネルギー,
地球温暖化問題の中で,欧州,米国政府とも国家のエネルギー戦略,地球温暖化問題へ
の対応戦略を策定し,その戦略に基づいて,水素・燃料電池の開発・市場化に向けたロー
ドマップ等を検討している。さらに,そうした上位計画に基づく水素・燃料電池分野に
関する基礎研究や応用研究,技術開発の推進施策,ならびに実証試験や基準・標準化に
対する取り組みが行われている。
こうした中で,今後のわが国における望ましい燃料電池車の導入促進施策検討の参考
とするために,欧米におけるこのような水素・燃料電池に係る研究開発促進のための各
種支援策や規制緩和,標準化に向けた取組み等について調査するとともに,それらの施
策の企業等への波及状況や目標達成状況などについて引き続き調査を行っていく必要が
ある。
(2) 韓国,中国などアジアにおける取り組み状況の調査
日本や欧米へのキャッチアップを目指し,韓国や北京オリンピックを控えた中国にお
いては,政府の強い資金援助の下で,水素・燃料電池分野における技術開発の進展が著
しい。こうしたアジア諸国の技術進展は,近い将来産業競争力の観点からわが国にとっ
て大きな脅威となる可能性がある。そのため,韓国,中国をはじめとするアジア諸国に
おける水素・燃料電池に関する取り組み状況について調査を行う必要があると考えられ
る。
(3) FCV および水素インフラ実証試験動向の調査
欧米では,FCV の実証プロジェクトの計画が 2015 年まで引き延ばされ,水素インフ
ラに関する技術開発の推進にも力が入っている。また,わが国におおよそ 1 年先行する
かたちで,70MPa で水素を供給できる水素ステーションの建設も相次いでいる。世界に
おけるそうした FCV,水素インフラに関する各種実証試験の動向について引き続き調査
を行っていく必要がある。とくに,70MPa の水素ステーションに関しては,その稼働状
−263−
況や,発生した問題点,課題などについて調査することが必要である。
(4) FCV 技術動向に関する調査
FCV 技術に関する動きは非常に速く,日本および全世界における FC,FCV に関する
技術動向を継続的に調査することが必要である。今年度の調査で明らかになったように,
2015 年頃を見通した FCV の商品化に向けた課題として残されたのは,主にコスト削減
と耐久・信頼性の向上と実証である。MEA の劣化要因の更なる解明と加速試験方法の
確立も重要な課題となっている。こうした問題解決のために国内外において推進されて
いる水素・FC に関する基礎的研究と,実用化を見据えた技術開発への取り組み状況に
ついて引き続き調査を行っていく必要がある。
(5) 水素製造・輸送・圧縮・貯蔵を含む水素インフラに関する動向調査
FCV の商業化に向けては,従来車と競争力のある価格での水素燃料の供給が極めて重
要な課題となる。そのために必要な水素の製造・輸送・圧縮・貯蔵に関わる国内外の技
術の動向と,海外における水素インフラの設置状況に関する調査が必要である。
(6) CARB の ZEV 規制改訂内容の調査
カリフォルニア州における ZEV 規制は,BEV や PHEV の導入状況や,二次電池技術
開発や FCV 開発への影響,ならびに今後の米国,日本への FCV の導入台数に大きな影
響を与えると考えられる。ZEV 規制の改定は 2008 年春に予定されており,そのため,
その改定内容を正しく把握する必要がある。
(7) 二次電池技術進展の状況調査
国内外において,リチウムイオン電池を中心とした二次電池技術の進展がめざましい。
リチウムイオン二次電池は,FCV,HEV,PHEV および EV の補助電源もしくは主駆動
電源であり,共通の基盤技術として重要と考えられるため,こうした二次電池技術の動
向についても調査が必要である。
−264−