010 | October 2010 [特集]Twitter のその先へ |改革のフロンティア| 美とエコを相乗させ、新たな価値を創造する [対談]ツチヤ教授のTalk [連載]Partnerとは 株式会社資生堂 Jam Session 土屋賢二×相馬明郎(みずほ情報総研) デブ君とヤセ君 四方田 犬彦(明治学院大学教授) [連載]非日常の宇宙模様 福江 純(大阪教育大学教授) な言葉の連発であっても、最後にはめでたく幕を閉じるものなのである。 コミがほどよい均衡を保っているならば、漫才は観客がハラハラするよう 場して、ドタバタ芝居に興じている。日本の芸能を見てみても、ボケとツッ の大江健三郎の小説にも、かならずといっていいほど不思議な二人組が登 ドロが著した『運命論者ジャックとその主人』 。弥次さんと喜多さん。近年 あうといった場合のほうが多い。ドン・キホーテとサンチョ・パンサ。ディ 二人でコンビを組み、いつもいっしょになって奇妙な失敗を重ねては慰め 真正銘の悲劇である。一方、世界文学のなかでも喜劇に目を向けてみると、 ハムレットは孤独に生き、いい寄ってくる女性も、その兄である自分の 親友も拒んだ。そして陰謀に足を取られ、虚しく死んでいった。これは正 していたことがわかり、興味深い。これはつまるところ、世界は陰と陽と 一心同体のアクションを示している。いろいろな国の映画の歴史を調べて な失敗ばかりしているのだが、それでいて無声映画のスクリーンにあって たこともあるが、この二人組は背格好が対照的で、いつでもトンチンカン 映画の世界でこの組み合わせを貫いたのが、ローレルとハーディである。 日本では「デブ君とヤセ君」とか「極楽紳士」といった名前でも紹介され しれない。 な か っ た と す れ ば、 彼 は 物 語 の は じ め で 野 た れ 死 ん で し ま っ て い た か も ン・ キ ホ ー テ に こ の よ う な 忠 実 な( そ し て と き に し た た か な ) 従 者 が い 従 者 は 苦 労 し て そ の 辻 褄 を あ わ せ、 主 人 の 高 邁 な 誇 り を 守 る。 も し ド なだ 喜 劇 を な す 二 人 組 の な か で も も っ と も 典 型 的 な の は 、 ヤ セ と デ ブ 、 つ ま り 痩 せ て 背 が 高 い 人 間 と 太 っ て 背 が 低 い 人 間 の 組 み 合 わ せ で あ る。 先 いう二つの力の拮抗から成立しているという、東洋哲学にも通じるところ みると、たいがいの国で彼らをモデルにしたコンビがある時期に人気を博 こうまい に 名 を 挙 げ た ド ン・ キ ホ ー テ と サ ン チ ョ が ま さ に そ う で あ っ た。 つ ね に なのである。この原理を踏襲しているという点で、村上春樹の最近の長編 従 者 が そ れ を 宥 め る。 騎 士 が あ り え ぬ 幻 想 の 世 界 に 走 っ て し ま っ た と き、 高 く 理 想 を 掲 げ、 そ の た び ご と に 挫 折 す る 憂 い 顔 の 騎 士 と、 農 民 出 身 で 四方田 犬彦 にしたところで例外ではない。 デ ブ 君 と ヤ セ 君 何 ご と に か け て も 現 実 的 な 大 食 い の 従 者。 騎 士 が と き に 癇 癪 を 起 こ す と、 P a r t n e r とは Yuko IWAKIRI 四方田 犬彦(よもた いぬひこ) 兵庫県生まれ。明治学院大学教授として、映画史を教えている。また批評家として、文学から料理や漫画まで、広い領域の文化現象を論じている。 『映画史への招待』でサントリー学芸賞、 『モロッコ流謫』で伊藤整文学賞などを受賞。近著に『女神の移譲』 『大島渚と日本』 『「かわいい」論』などがある。 岩切 裕子(いわきり ゆうこ) 東京都生まれ。版画家。1988 年多摩美術大学大学院美術研究科修了(木版画専攻) 。平成元年度文化庁芸術家国内研修員。平成 12 年度文化庁買上優秀美術作品選出。 Navis 010 | October 2010 ラテン語で「船」の意味を持つ『NAVIS』は、航海・飛行を意味する「Navigation」の語源でもあります。 ビジネスの大海を渡るお 客さまとともに未来を拓く、安心できる “船” となりたい … 私たちみずほ情報総研の願いをこめて名付けました。 C o n t e n t s essay“ Partnerとは” 「デブ君とヤセ君 」 四方田犬彦 特集 ··········································································································································································································································· 2 Twitter のその先へ R e p o r t | 企業も場所も時間も越えたナレッジ共有 ······································································································································ 4 ソーシャルメディアが可能にする社外コミュニティの形成 《コラム》企業はソーシャルメディアを恐れることなく 正面から取り組むべき みずほ情報総研 ビジネスコンサルティング部 シニアマネジャー 吉川 日出行 R e p o r t | B to C コミュニケーションは消費者主導に ···································································································································· 6 「位置情報」と 「AR」がもたらす新しいサービス[株式会社アットウェア] R e p o r t | pull からpush へ─ 変わるマーケティング ···································································································································· 8 積極活用に向けた効果測定とルール作り[日本電気株式会社] I nterview| 新世代のコミュニケーションの姿、その本質と傾向とは 株式会社日本技芸 リサーチャー 濱野智史 ····························· 10 もののあわい ························································································································································································································ 12 「3 つの手」 文・写真 宮脇 誠 改革のフロンティア ··············································································································································································································· 13 美とエコを相乗させ、新たな価値を創造する ~株式会社資生堂~ ツチヤ教授の Talk Jam Session ······················································································································································································ 16 第 2 回 「環境共生都市の国際展開」を哲学しよう 哲学者・土屋賢二 ×コンサルタント・相馬明郎(みずほ情報総研) Information ·························································································································································································································· 20 非日常の宇宙模様 (2)······································································································································································································ 21 「日食の時代」 福江 純 表紙のことば フラワーアート 東 信 今回は新たなコミュニケーションをテーマに作成しました 普段は決して出会うことのない花や実物 そして蜂の巣をアレンジしコミュニケートさせることで 今までにない新しい「秋の訪れ」を視覚という枠を越えて感覚的に表現することができた 蜂の巣、ススキ、ソルゴ、アマランサス、 ケイトウ、トルコキキョウ、シンビジューム、コーン、藁、球根、カーネーション、ラフィア、ファイヤーボール あずままこと 1976 年福岡県生まれ。 2002 年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。 また、フラワーアーティストとして国内外で精力的な活動を展開。 東のすべてにおける活動は、花・植物のみが有しているもっとも神秘的な形を見つけそれを美的なレベルに変換し 表現することで、植物の価値を高めることに一貫している。 www.azumamakoto.com 撮影 関口尚志(Vda) 1 N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 ユニークな特徴 新世代のメディアが持つ P 3 スは、スマートフォンの普及やタブレット型 機器の登場により、今後 I T 年 後 半 か ら 年 に か け て、 ビ ジ ネ ス 誌などでもソーシャルメディアに関する特集 ますますその存在感が増すと見られている。 など新しい形態の P C サービスが流行している。これらのサービ ( 、動画共有サイトな や Twitter 参照) ど、 「ソーシャルメディア」と呼ばれる新しい S N S I T 10 コミュニケーションに W e b 全体で流行している。 Twitter や W e b 参照)の要素が強いことも特 ( また、 系の 徴だ。たとえば東京近郊ではここ数年 を使いその場で実況することが、若者 Ustream のライフスタイルになり始めている」。 を中心に ン上に流す『ライブストリーミング』が、若者 自分が今何をしているかという情報をオンライ に語る。「誰もがいろいろなことを実況中継し、 詳しいみずほ情報総研 吉川日出行は次のよう れていることだ。 特徴がある。まず「リアルタイム性」が重視さ この"新世代のメディア"で行われているコ ミュニケーションには、従来にないさまざまな 可能性がある。 も た ら し、 企 業 活 動 に も 多 大 な 影 響 を 与 え る 達のあり方という行動様式そのものに変化を ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア は、 社 会 に お け る 情 報 伝 グ を 行 う か と い う 点 に 注 目 し て い る。 し か し 新しいメディアを使っていかにマーケティン が 組 ま れ る よ う に な っ て き た。 そ の 多 く は、 2 0 0 9 P 3 I T 師や資料を見つけ勉強する、新しい学び方だ。 営されている。会社やスクールに頼らず自分で教 ソーシャルメディアを活用して自主的に企画、運 勉強会が盛んに開催されているが、その多くは C G M Twitterのその先へ 特集 これらは「ソーシャルメディア」と呼ばれ、行動様式やライフスタイルに変革をもたらしつつある。 Twitterをはじめとする新しいコミュニケーションサービスが活気づいている。 この新しいユニークなメディアを企業が有効に利活用するためには、どのような方法があるのだろうか。 また、こうしたサービスがコミュニケーションのあり方に及ぼす影響とは、どのようなものだろうか。 取材・文/編集部 写真/栗原 剛 2 デジタル用語解説 ● SNS ンを促進する機能を有する IT サービス。 Social Networking Service の略。コミュニケーショ ● Facebook と同様に友達申請やコミュニティ参加機能のほ 全世界で使用されている世界最大の SNS。mixi こ のようなツールを使いこなす世代として、 新社会人は注目すべき世代だと吉川は述べる。 機器やインターネット環 れ な ら ば、 企 業 も こ の 動 き に 対 し て 前 向 き に は、 も は や 止 め る こ と は で き な い だ ろ う。 そ などの現象が起こっている。ユーザー数は たり、しし座流星群を見るオフ会に人が集まる 人程度と決して多くはないが、地域限定で ブ 」 世 代 で あ る 彼 ら は、 就 職 活 動 に お い て、 マ ー ケ テ ィ ン グ チ ャ ネ ル と し て 捉 え、 マ ス メ 行われているが、ソーシャルメディアを重要な などに公式アカウントを持ち情報を発 Twitter 信 す る な ど、 マ ー ケ テ ィ ン グ 活 動 で の 使 用 が ゲー)などでの活用が目立つが、ソーシャルメ またインターネットユーザーの「位置」に関 する情報は、現在は携帯電話向けゲーム(位置 サービスにつな な積極的な事例はまだまだ少ない。 ニケーションが生まれる可能性がある。これを 情報が活用できれば、今いる地点の近くにどん では実名で活動する (電子掲示板)では匿名のコミュニケー 活用ニーズは高いはずだ」と述べ、高齢者向け 間もある高齢者のほうがソーシャルメディアの 用者は少ないものの、本来なら、趣味が多く時 る 株 式会 社 日 本技 芸 の 濱 野智 史 氏 は、 「まだ利 ば、これまでにない企業と消費者との接点がで らえることが可能になる」と語る。実現できれ いるエリアに近づいてきた潜在顧客を逃さず捕 ビスなどによって、自社がサービスを提供して 分の好みの店はここだということがわかるサー な人がいるかがわかり、そこから新しいコミュ ビジネスに適用すると、今いる場所の近くで自 な ど、 コ ミ ュ ニ テ ィ ご と に ペ ル ソ ナ を 使 い 分 ソーシャルメディア市場の可能性を示唆 する。 ● CGM トを利活用し、消費者側が情報を発信、コンテ Consumer Generated Media の略。インターネッ ンツを生成するメディアのこと。 ● Twitter(ツイッター) (日本語では「つぶやき」)するミニブログ。「リツ 「ツイート」 140 文字以内のメッセージを投稿= イート(RT) 」という他者のツイートを再投稿(引 用)する行為により、リアルタイムに情報の共有や 学生による が運営しているコミュニケー N S P N O S できる。 ● YouTube(ユーチューブ) る動画共有サイト。 動画に対する評価やコメント 誰でも簡単に動画の配信、閲覧を行うことができ を書くことができるほか、ブログなどに手軽に貼り つけて紹介することも可能。 日本発の動画共有サービス。再生中の動画に ●ニコニコ動画(ニコ動) 対してコメント(補足情報や共感、ツッコミなど) を書き込むことができる「コメント機能」が特徴。 れる。 投稿されたコメントが動画にかぶさって表示さ I B M を活用した新しいコミュニケーションの 特徴と、ビジネスに与える影響とはどのような されればよいと捉えることもできる。 ば、既存の「行動規範」に沿った振る舞いがな 企業人として注意すべきことは同じだと考えれ もあるが、ソーシャルメディアでも実社会でも、 一個人として参加する」と明記しているケース シャルメディアでの活動は社員としてではなく こ と を 推 奨 し て い る。 企 業 に よ っ て は、 「ソー など欧米の企業では、 「ソーシャルメディ Oracle アポリシー」やガイドラインを策定したうえで、 インターネット環境があれば、誰でも生中継が ションサイトで、学生たちが教えるパソコン教 ライブ配信に強みを持つ動画共有サービス。カメ ソーシャルメディアが生む できる。 室を訪れた高齢者など地域の人が利用している。 ラとPC やスマートフォンなどの高機能な IT 端末、 ションを行い、ある けている」(吉川)。彼らが社会人になった時、 イス)、写真などを通じたコミュニケーションが も ち ろ ん、 企 業 が 情 報 を 発 信 す る こ と に は や ガ バ ナ ン ス の 問 題 が 付 い て ま わ る。 ど の よ う な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 い、 ど ん に登録した友人・知人と日記やつぶやき(mixi ボ 「あみっぴぃ」だ。千葉大学の きるかもしれない。 ● mixi(ミクシィ) 広報担当者や社員がソーシャルメディアを使う 伝播が行われる。 べきだろう。 日本最大の SNS。 「マイミクシィ (マイミク) 」リスト 「人気の日記を書く人が地域で話題になってい ● Ustream(Ust/ユースト) 新しいビジネス いったん始まったソーシャルメディアの拡大 か、趣味が同じ他ユーザーを紹介してくれるリコ (千葉県)の そ の 好 例 と し て 挙 げ ら れ る の が、 西 千 葉 地 域 生 か ら、 内 定 し ま し た の で よ ろ し く お 願 い し 社会の姿を研究す また、ソーシャルメディア上を行き交う情報 を利用し、さまざまな新しいサービスを展開す がると考えられている。前出の吉川は、「位置 ディアと結びつけば新しい 見ればかなり普及しているといえる」(濱野氏) 。 口 コ ミ 情 報 が 集 ま る サ イ ト「 み ん な の 就 職 活 対 処 す る こ と が 必 要 だ。 す で に 複 数 の 企 業 が 動 日 記 」 な ど で 情 報 交 換 し、 ス マ ー ト フ ォ ン つ のよう ディアなどと並ぶ「トリプルメディア」の として情報発信に力を入れている 境 に 取 り 囲 ま れ て 育 っ た「 デ ジ タ ル ネ イ テ ィ 生まれたときから 1 0 ることも考えられる。 で情報発信をしているが、学 I T る。 彼 ら は 多 く の コ ミ ュ ニ テ ィ に 属 し、 あ る らかにして 1 ます と い う ツ イ ー ト が 送 ら れ て く る こ と も あ N E C なコミュニティを形成するのか、注目しておく W e b W e b で先輩か か ら 説 明 会 に エ ン ト リ ー し、 Twitter らアドバイスをもらっている。「私は所属を明 0 0 ものだろうか。企業人が注視しておくべき最新 I T 動向を紹介する。 N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 3 I T S N S B B S メンド機能などがある。ユーザーは実名が多い。 企業も場所も時間も越えたナレッジ共有 ソーシャルメディアが可能にする社外コミュニティの形成 ソーシャルメディアによって人々は簡単につながり、“いま”を共有できるようになった。 そうしたツールが新しいコミュニティの形成を促している。端的な例が、 「社外勉強会」の盛り上がりだ。 このゆるやかなコミュニティの姿を通して、企業の枠を越えたナレッジ共有の意義や可能性を探る。 ﹁ゆるやかな﹂コミュニティ による勉強会 ソーシャルメディアの特徴は、他者と"ゆるやかで広 い つ な が り " を 持 つ こ と と い わ れ る が、 そ の 特 徴 が コ ミュニティにも反映されているようだ。吉岡氏の経験か 会社員など一般の人によって開催されている自主的な勉 に 関 す る さ ま ざ ま な「 勉 強 い ま、 都 内 各 所 で は 会」が行われている。そこに共通してみられる傾向は、 会運営の負荷を軽減することにつながり、コミュニティ かなものが好まれる」という。このゆるやかさは、勉強 今のコミュニティにはあまりそぐわない。もっとゆるや らも、「会則や書記などの役職を作るような運営方法は、 強会であること、そしてソーシャルメディアをうまく活 を持続可能なものにするための重要なポイントにもなっ を (* ~ 種にも及ぶさまざまな勉強会 ソーシャルメディアがつなぐ 社外コミュニティ こうした勉強会が生み出した効能とは、まずナレッジ の共有が手軽に、迅速に行われるようになったというこ が、各所で開催されている。この動きはさらに地方都市 とだ。自らも勉強会を主宰し参加もしているみずほ情報 回を超えて開催されている。 実 況 す る こ と を 意 味( ジャーナリストの津田大介氏 では「 tsuda る」というスラングがよく使われて Twitter いるが、これはセミナーや講演などの模様をテキストで すことで、さらにナレッジが広まっていく」と述べる。 に共有される。また参加者が勉強会の内容をブログに記 で 実 況 し て い る 人 も 多 く、 今 誰 が ど う い っ た こ Twitter とを話しているかが会に参加していない人たちにも同時 総研の吉川は、「勉強会にはさまざまな企業・立場の人 、"勉強会の先駆者"としても知られる楽天 月から続けられて が集まり、多様なナレッジが持ち寄られる。その様子を 年 たとえば ル読書会」という名称で に通算 の ソ ー ス コ ー ド を 読 む こ と か ら 始 ま っ た、 い る。 Linux オープンソースをテーマとしたこの勉強会は、これまで 4 やオープンソース ラットである。講師となるのは Linux に関わっているシステム開発者やプログラマーなどの 速くなったことで、告知を出してすぐに開催するという た、ソーシャルメディアによって情報伝播のスピードが ア に お け る 一 種 の 文 化 と な っ て い る こ と が わ か る。 ま 者の知り合いから募っている」(吉岡氏)。参加者は 代前半を中心に中学生や高校生も交じり、ベ こともできるようになった。 徴だ。勉強会に出席すると、"あのすごいシステム"を 開発した人と隣り合うようなこともある。 や ンチャー企業の社員もいれば大手企業の社員もいるとい 後半から 20 う、多様性の高いコミュニティが形成されているのも特 30 これにより、参加する際の壁となっていた時間と距離 の問題もなくなった。勉強会を録画した動画は Ustream ビデオなどに多数公開されており、開催時に Google ようなことも可能になり、今まさにホットな話題を学ぶ 代 同会を例に、自主的な勉強会の特徴を見てみよう。ま ず参加者は講師役も運営者もボランティアで、組織はフ 1 0 0 "当事者"であり、「自薦・他薦を問わず、参加者や参加 に由来)し、体験やナレッジの共有がソーシャルメディ I T 1 9 9 9 株式会社 開発部 アーキテクチャー&コアテクノロジー 課 技術理事の吉岡弘隆氏が開催する勉強会は、「カーネ にも広がっており、札幌や仙台、福岡などでは、月に何 多い月には で「 ) で資料を共有する。有志により Google カレンダー 勉強会カレンダー」も作られ、公開されている。 ている。 「勉強会から生み出されるベネフィットが開催 で参加者や講師とな 味 を 持 っ て い る 人 を 探 し、 Twitter コストや手間暇よりも大きいため、続けていても負担に で実況し、終了後は録画した動画 る人を募り、 Ustream (吉岡氏)ためだ。 やニコニコ動画などで配信し、 Google Apps ならない」 YouTube 用していることだ。ブログで今話題のテーマやそれに興 I T 4 0 0 回かの会が開催されているという。 3 0 0 1 I T 4 特集 Twitterのその先へ···················································· 企業はソーシャルメディアを 恐れることなく 正面から取り組むべき ICT の分野で企業より個人の利活用環境のほうが高 度化する“産消逆転” 現象が起きて久しい。家庭で使う インターネットの帯域や個人の持つモバイル端末など、 「カーネル読書会」の様子は Ustream や Google ビデオなどの 動画共有サイトで見ることができる 企業のシステム環境よりもずっと進んだものが一般社会 で日々使われるようになった。 産消逆転のなか、最近急速に発展しているのが SNS 「カーネル読書会」についての詳細は 吉岡氏のブログ参照 http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok/ や Twitterなどのソーシャルメディアである。こうした新 しいメディアは企業の周辺にも急速に浸透し、商品を企 を使って会 人もバーチャルで参加することができ、 Twitter 場へ質問を投げかけることもできる。吉岡氏の勉強会でも することで追体験ができる。生中継があれば、地方在住の は時間が合わず参加できなかった人も、動画や資料を閲覧 ニティの中でリーダーシップを発揮することは、企業人 く、それ以外の多様な価値観を持つ人々が集まるコミュ また、 「利益」という目的で動いている企業内だけではな ているし、社外の先端的なコミュニティに顔を出し、結 味 を 持 っ て い る 人 だ と 指摘し、 「そういった人は勉強し もるのではなく、自分自身をどう成長させていくかに興 果としていろいろなところで発信もしている」と語る。 回数の中継を実施しているという。 での実況中継を取り入れており、 「中継 早くから Ustream が必須になると負担が大きい」とはいうものの、かなりの としての一種の訓練にもなるだろう。 「勉強会の主催者 とそうした訓練を積み、リーダーシップを発揮する方法 や、ソーシャルメディアで有名になっている人は、自然 N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 だが、社員がこのような外部のコミュニティに属し、 社外勉強会でナレッジを他者に提供することについて 5 は、反発を感じる企業もあるだろう。そもそも、日本で http://blogs.itmedia.co.jp/knowledge/ 論を身に付けた人だ」(吉岡氏)。社員の高度なナレッジ ブログ 獲得を促すためにも、企業は社員による社外でのコミュ みずほ情報総研株式会社 ビジネスコンサルティング部 シニアマネジャー は社員のトレーニングを社内で負っている部分が大き 吉川 日出行 く、外部コミュニティでのナレッジの共有に慣れていな れのひとつだ。 1 ニティ形成の動きを推奨することが求められるだろう。 ざわざ足を運ぶのはその表 2 * …… Google の ア プ リ ケ ー シ ョ ン パ ッ ケ ー ジ。 Gmail 、 Google Apps カレンダー、 Google ドキュメントなどのアプリケーションが無償 Google で使用でき、複数ユーザー間で管理・共有できる。 に付加価値が生まれる。若い世代が休日に勉強会にわ * 弱い紐帯の強さ( strength of weak ties )……社会学者のマーク・グ ラノヴェターが唱えた社会ネットワーク理論における仮説。家族や友人 さらに、ネットを通じてコミュニケーションを行う時代 だからこそ、リアルに会うことが大切となり、むしろそこ のような身近な人との密なつながり(強い紐帯)よりも、異業者やちょっ は、今後の成長機会を自ら捨てるに等しい。 とした知り合いのような弱いつながり(弱い紐帯)の方が、価値ある情報 は、ネットワーク上のチャネルもリアルのチャネルも同 じものだからだ。彼らとのチャネルを安易に閉ざすこと やイノベーション創出のきっかけをもたらしてくれる可能性があり、有 にしてそうなりがちだ。企業のこのような行動は、デジ タルネイティブ世代の目には異様に映る。彼らにとって 用であるとする。 企業はない。ところがソーシャルメディアの場合は往々 い面がある。しかし前出の吉川は、「日進月歩で進化す といっていきなりその販売チャネルを閉ざすというような 2 )を得るのに、 ただし、NECの野坂氏が「ソーシャルメディアには正 解がない」と述べている(P7)ように、この新しいメディア は実に多様であり急速に変化する。また、炎上といった 事件も起きるが、これを恐れすぎる必要はない。ソーシャ ルメディアはまったく新しいメディアであるから、そこに いるユーザー達にとっても毎日が新しい体験の積み重ね だ。その中で真摯に実直に対応すれば信頼が得られる のは、これまでの顧客対応と何ら変わりはない。 従来のリアル社会で、顧客とトラブルを起こしたから るビジネスに追い付くには、現場の経験者のさまざまな 多い。それにならえばよいのだ。 声を直に聞くことに価値があることは事実であり、それ を整備する必要があるだろう。インターネットが登場したと きにも、その活用を目指してマニュアルを整備した企業は に は 社 内 で の 勉 強 だ け で は 不 十 分 だ ろ う。 ま さ に グ ラ み込んで具体的な行動の仕方を記載した活用マニュアル ノヴェターのいう『弱い紐帯の強さ』(* ングや広報活動に活用していくのであれば、もう一歩踏 こうした社外の機会はうってつけだ。」と述べる。吉岡 正面から取り組むべきであろう。ソーシャルメディアポリ シーを策定することは不可欠であるし、さらにマーケティ 氏 も シ リ コ ン バ レ ー で 働 い た 経 験 に 則 し て、 オ ー プ ン これからの企業はこれを無視するのではなく、正直に ソース時代に強いプログラマーとは、会社の中に閉じこ 画・製造しサービスを提供する各場面での重要性を増し てきている。 BtoCコミュニケーションは消費者主導に 「位置情報」 と 「AR」がもたらす新しいサービス ソーシャルメディアの次の鍵となると目されている「位置情報」 。 新サービスの実現だけでなく、B to C コミュニケーションにも変化をもたらすとみられている。 位置情報とAR(拡張現実)の組み合わせが持つ可能性について探った。 位置情報が 新サービスを生む るベンチャー企業、株式会社アットウェアの取締役 つは根底にある考え方が異なる 北野弘治氏は、この と述べる。 「セカイカメラは、多くの消費者が集まり 発信することで生まれる何かを楽しむような、 サービス」である。コンテンツを持 現在、同サービス上で配信しているコンテンツは、 同社が独自開発した横浜および函館の観光案内と、企 と は「 拡 張 現 実 」 と 呼 ば れ る、 現 実 の 世 界 に バーチャルな画像や情報を合成して表示する仕組み なって、駐車場の名称や所在地、空き状況などの情報 マートフォンのカメラをかざすと、 「現実」の映像に重 けられている方向を、端末内蔵の電子コンパスと加速 タベースから最寄りの駐車場を検索。次にカメラが向 のGPSで利用者の位置情報を取得し、リパークのデー やカメラに加え、端末の向いている方位を算出する電 度センサーを利用して察知し、現実の映像に駐車場の 」へと進化した。さらに、スマートフォンに によって、位置情報を組み合わせ 情報を重ねて表示する。画面上に見えている風景の中 だけでなく、半径 メートル~1キロメートル先の候 となった。 更新は5分ごとに行われており、駐車場までのルート案 月にリリースされたオランダ 社 の「 Layar ( レ イ ヤ ー)」 Layar と、 同 年 月 に リ リ ー ス さ れ た ブラウザを A R 利用したサービスを開発してい カイカメラ」だ。 頓 知・ ( と ん ち ど っ と ) 社 の「 セ 9 6 ブラウザとし モバイル用の て 注 目 を 集 め て い る の は、 年 09 サービスが可能 A R A R たモバイル 子コンパス機能が搭載されたこと G P S A グ「リパーク」の空き状況を表示するサービスだ。ス だ。 昔 か ら 知 ら れ て い た 技 術 だ が、 処 理 速 度 が 高 い が画面に表示される。仕組みとしては、まず端末内蔵 停められる駐車場検索サービス」は、コインパーキン 動産販売と共同開発し今年5月に発表した「 『今から』 あるあなたの好みの店はここ』などの情報がやりとり ( Augmented Reality ) 」が役立つのではな 業と提携したサービス2種である。その一つ、三井不 として「 できる可能性がある」と語る。また、そのビューワー 情報を配信する。 上で利用者のニーズにあった つ企業と提携し、 Layar 「 あ っ と! 2 スマートフォン が 登 場 し た こ と に よ り、 「モバイル いかとも述べる。 A R トル先にあなたの探しているような人がいる』 『周辺に A A S R P じた情報を選び表示できることを重視している」 。 的な世界観を持っている。一方で Layar は、コンテン ツがカテゴリ別に分けられており、利用者が目的に応 年 買収を発表し、話題となった。 2 0 0 9 P 3 ( 位 置 情 報 サ ー ビスをスタート、 mixi 参 照 )もこれ に追随すると見られている。みずほ情報総研の吉川は、 ( Facebook ている。次に大きな変化をもたらすといわれるのが、 C G M の 特 徴 を 利 用 し、 同 社 が 今 年 月 に 立 ち この Layar ブラウザ向けコンテンツ配信サービス 上げたのが ツールのモバイル化やソーシャルメディ 高機能 ア の 流 行 が、 人 々 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 姿 を 変 え 2 社(米国)は、 「位置情報」の活用だ。 Twitter の 月 に 位 置 情 報 サ ー ビ ス を 提 供 す る Mixer Labs 参照)も I T 「ツイートが発信された場所が表示されれば、 『何メー P 3 12 A R R アットウェアのサービス創生事業部チーフマネー や宿の空室状況がわかるサービスだ。 から』泊まれる宿検索」も、同様に周辺にあるホテル 約サイト「じゃらんnet」との共同開発による「 『今 。リクルート社の宿 泊 予 ども確認できる (上の写真参照) 内も利用できるほか、リンク先のWebページで料金な 補も表示することができる。空き状況のデータベース 50 6 特集 Twitterのその先へ···················································· ARブラウザを利用したサービスのしくみ ジャーの梶平昌邦氏は「地図が苦手な人にとっても、 としている消費者のもとへ駆けつけて販売することが 増加を意味する。従来のように待つだけでなく、必要 インターネットの中にいる人を対象にして情報公開し 可能となるのだ。 「これまではPCや携帯電話を通し、 目の前のビルの向こう側に駐車場や宿があるというこ いのではないか」と指摘する。 とがわかるARならではの表示は、非常にわかりやす ていたが、今後は街を歩いている人をインターネットの 中に誘導するような、新しい導線ができる」 (梶平氏) 。 報のビューワーである ARが実現する 新しいコミュニケーション で盛り上がっ や ケ ー シ ョ ン の 場 で あ る Twitter ている話題は何かなど、コミュニケーションを可視化 ま た ア ッ ト ウ ェ ア で は、 ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア の 位 置情報と を組み合わせたサービスも検討中だ。情 ARは、B Cの こうした「位置情報」を利用した コミュニケーションを変える可能性がある。 できるようなシステムを考えているという。位置情報 ブラウザを使い、コミュニ 消費者がモノを買う場合、企業が不特定多数の人に 広く配信した情報の中からほしいモノを選択するのが を含むツイートを ブラウザで見るだけなら現在も ならではの仕掛けを入れて、触媒と 可能だが、それだけではコミュニケーションに発展し してソーシャルメディアを活性化させるような仕組み な い。 そ こ に 属性や購買履歴などきめの細かいセグ に抵触しない(個人を特定できない)範囲のデータだ にして、企業価値の向上や購買意欲の向上につなげら が、 ア ク セ ス 履 歴 な ど は 把 握 で き る た め、 同 社 で は れないか検討中だ。 ライズされた商品の宣伝が行われてい このデータを蓄積・分析し、サービスへのアクセスが メンテーションを行い、各人に対して る。ただ、企業側からのこうした勧誘 多かった場所などの情報を企業へフィードバックする ぴったりの商品を薦めていくスタイル はうっとうしく感じる という消費者の サービスを行っている。アクセス数が多いが駐車場が へ と 変 化 す る" 過 渡 期 " に あ る 」。 実 声もある。消費者にとっては、自分が 報 を 生 み 出 し て い る。 こ の デ ー タ は 個 人 情 報 保 護 法 いる場所で自分に合った情報を自分の ないエリアといった情報がつかめれば、潜在的なニー から取得できる利用者の位 実際に同社では、 Layar 置 情 報 デ ー タ を 活 用 し、 企 業 の ビ ジ ネ ス に 役 立 つ 情 好きな時に選択できるほうが望ましい つ、よりマーケティングデータに活用できる方法を検 ズを発掘できる。将来的にはセキュリティに配慮しつ イトなどでは、利用者ごとにパーソナ な の だ と い う。「 モ バ つの候補が では、この場所でこの時間に B C だけでなく、屋外にある信号機や電柱 今後は といった機器やビルなどの建造物の設備管理への応用 こういうモノを探したいというニーズ を消費者側から発信し、必要なモノを これは企業にとっては、販売機会の 野氏)。 や、生産管理やトレーサビリティ、また営業支援など イル A R 手に入れるという使い方ができる」(北 討していきたいという。 のだ。それを実現できる要素技術の一 際にインターネットのショッピングサ のコミュニケーションは、消費者の S N S A R A R A R り つ つ あ る と 北 野 氏 は 述 べ る。「 従来の方法だった。しかし、企業が情 to B to A R もたらすコミュニケーションの変化に期待が高まる。 ワークフローへの導入も模索しているという。ARが to 利用 ログ コンテンツを持っている企業 報をブロードキャストする時代は終わ システム 拡張現実 システム コンテンツの データ 2 位置情報送信 3 重ね合わせ情報送信 C N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 7 A R あるいは Web サービス 連携などで リアルに情報を取得・交換 初期登録し、 定期的に データを更新 コンテンツの データ Layar Server 1 位置情報送信 4 AR画面送信 拡張現実 ASP サービス(アットウェア) (三井不動産販売、リクルート社など) pullからpushへ─変わるマーケティング 積極活用に向けた効果測定とルール作り ソーシャルメディアの広がりは、今後も止めることはできないだろう。 その広がりに、企業はどんな姿勢で臨むべきだろうか。 先進企業としてソーシャルメディアの活用に挑戦している NEC の事例を通し、 企業はソーシャルメディアとどう付き合うべきかを考察する。 ソーシャルメディアの効果を どう測るか 積み上げるべく、さ そ こ で 同 社 で は、 参考となるケースを まざまなプロジェク たとえば、小惑星探 ト に 挑 戦 し て い る。 年 月に宣言したことは、同 ンペーンと、その反 還の際に行ったキャ 応 の 定 量 化 分 析 だ。 「はやぶさ」帰還の ニュースは大きな話題となったが、同社の宇宙事業や、 3 トで、宇宙をテーマにビジネスに役立つコンテンツを立 さ関連コンテンツを設置。次に同社が運営する会員サイ に総合的に取り組まなければ、顧客の興味・関心(アテ 本部は、展示会やユー ンション)の獲得は難しいとされる。同社でソーシャル メディアの活用を推進する 活動全般を担っており、同本部 内 に あ る 宣 伝 部 は 顧 客 と の マ ー ケ テ ィ ン グ・ コ ミ ュ ニ 継を配信するなど、参加・共感を促した。 サイトを設けた。また、帰還の瞬間には管制室ライブ中 ケーションのかたちを作り上げたいという考えがあった。 が運用しているソーシャルメディアの ま ず、 アカウントを一覧表示する「公式アカウント」を発表。 」を名乗るア という単語が入っているツ だけ人々の中でリンクしたかを計測するため、はやぶさ の関連ツイートの中で 増えているなど、施策がどれだけ響いたかを定量的に計 の相関性を分析してみると、同社がはやぶさ関連サイト る量を測ることで、アカウントの影響度の測定を試みた。 イートの数を調べた。ツイート数とキャンペーン施策と 、 Ustream などのソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア に 公 式 ア YouTube カウントを持っている。 宇宙航空研究開発機構( )されてい R T )の公式アカウントによ 測することができた。また、リツイート( を立ち上げた日や新聞広告を出した日にはツイート数が 測るかということが常に問題となる。ソーシャルメディ ページビューのような、従来の指標では測れないからだ。 J A X A が多く、 上での影響力もあると るツイートは Twitter されており、これ 考えられた。帰還日には特に多く R T ア で の プ ロ モ ー シ ョ ン の 成 否 は、 ユ ニ ー ク ユ ー ザ ー や しかし、企業がソーシャルメディアにおけるコミュニ ケーションを効果的に行おうとする場合、 「効果」をどう カウントが多数存在し、顧客には見分けがつかない状況 ソーシャルメディア上ではすでに「 N E C N E C や であったことへの対応も兼ねたものだ。現在、 Twitter N E C 響を計測した。たとえば「 ディアを活用することで、ユーザーとの新しいコミュニ ザー会運営などの C R M ケーション活動を行っている。その活動にソーシャルメ C R M そして、このようなキャンペーンにおける同社の評判 における反 を計測するひとつのセンサーとして、 Twitter 」と「はやぶさ」がどれ のような言葉と結びついているのかなどを紹介する特集 ち 上げ た。 さ ら に Twitter の頻出ワードを分析する子会 社のサービスを利用し、はやぶさに関するツイートはど マーケティングにおい 「トリプルメディア」とは て 近 年 注 目 さ れ て い る 考 え 方 で、 こ の つ の メ デ ィ ア の一般の認知度が低かったため、自社サイト内にはやぶ 社のソーシャルメディアに対する積極的な姿勢を裏打ち ア」対応を行うと 査機「はやぶさ」帰 企業によるソーシャルメディアの活用については、広 報活動に利用したケースは見られるものの、多くの企業 が「ペイドメディア( :従来型 うな中、 Paid Media :自社メ のメディア) 」 「オウンドメディア ( Owned Media がまだ使用を迷い、最適な方法を模索している。そのよ *NEC の資料より抜粋 「はやぶさ」プロジェクトに関わっていることについて 4 W e b するものとして話題となった。 2 0 1 0 : ディア)」と同様に「アーンドメディア( Earned Media ソーシャルメディア)」にも力を入れ、「トリプルメディ N E C N E C R T 8 特集 Twitterのその先へ···················································· NEC が立ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」応援サイト サイト立ち上げ時などには 「NEC」という単語が入ったツイートが増えていた はやぶさ関連ツイートを分析。 の公式アカウントも影響力が 増したことがわかった。 に比例する形で この事例は、ソーシャルメディアの評価や位置づ けを社内に理解してもらうためのよいサンプルとも なったという。 新メディアを活用するための ソーシャルメディアポリシー る。新しいメディアが登場しても、社員として基本的に 規範・企業行動憲章に沿って行われればよいと考えてい 守るべきことは変わらない」と語る。よって、ガイドラ インではその先の、メディアをどのように宣伝活動に活か すかについて策定すればよいと考えた。このため同社の ソーシャルメディアガイドラインは、あくまでも宣伝部の ような組織、あるいは商品ブランド単位でのアカウントを のガイ はこのようなソーシャルメディア対応に注 力すると同時に、運用に関するルールも策定した。 出している。何がよいということではなく、策定の目的 ドラインは企業内個人を対象にしており、コカ・コーラは 対象にしており、個人を対象としてはいない。 「ソーシャルメディアポリシー」と呼ばれるこのルー によりガイドラインの内容も異なるということである。 の「ソーシャル・コンピューティング・ガ インのバージョンアップのほか、 「現在はソーシャルメ り、 ルメディアの融合をどう図るか、基盤整理も必要になる」 ディアの担当者のセンスに頼って運用している面が大き 」が有名だ。 Media Principles では、社内向けにはガイドラインという形 で、社外に対してはポリシーという形でリリースし、 探る。そして、 「ソーシャルメディアには正解がない」 (同 (野坂氏) 。もちろん、効果測定についても適切な方法を イドライン」や、米コカ・コーラの「 どういう目的で、誰に、どのような成果を求めてソー ろん、業務として継続的に続けるために必要な準備 めていくことが何よりも重要だと考えているという。 氏)ため、具体的な施策にどんどんトライし、知見を貯 使えるようになることが必要だと同社は考えている。同 模索・検討すべき点が多く、困難も予想されるが、こ れからの企業は世の中の変化に応じて最適なメディアを ヵ月かけて草案を作り、法 務部や広報部など関連部門と調整。策定にあたって ~ は、参考になる日本語のガイドラインがほとんど存 宣伝部 推進グループの朝火英樹氏は、「企業のプ 在しなかったため、海外ですでに公開されている企 や設計も記した。 の考え方や顧客とのやりとりの仕方についてはもち プを図りたい。ハード面では、自社メディアとソーシャ いので、社員へのリテラシー教育などを通し、ボトムアッ シャルメディアを運用するのかを明示した。情報共有 Online Social 日 本 企 業 は 数 少 な い が、欧 米 で は 策 定 が 進 ん で お 企業としてソーシャルメディアにどう取り組むかを打ち 範となるものだ。こうしたポリシーを策定している ルは、企業がソーシャルメディアを使用する際の規 同社では、今後はさらにソーシャルメディア活用のた めのプラットフォーム作りに注力する予定だ。ガイドラ I B M N E C 3 こうしたガイドラインの策定にあたり浮上する課 題の一つは、情報漏洩を防ぐため、企業内個人のア 業のポリシー(英語版)などを参照した。 どこにどのような情報を提供すれば顧客とコミュニケー ルになるだろう」と予測する。そうした時代に企業は、 まっているところに自ら情報を出していくようなスタイ ロモーションは、すべてにおいて自社サイトにアクセス ザーが便利なメディアを選んだ時、そこに がいる ションがとれるのかを模索しなければならない。「ユー さ せ る よ う な も の で は な く、 タ ー ゲ ッ ト ユ ー ザ ー が 集 カウントをどこまでコントロールすべきかというコ コミュニケーショングループ の野坂洋氏は、 「当社ではコンプライアンスについ かどうかが重要なのだ」 (朝火氏) 。 N E C 本部宣伝部 ンプライアンスの問題である。この点について同社 I M C 4 W e b ては既に方針を掲げており、個人の振る舞いは行動 N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 9 N E C I B M N E C C R M ソーシャルメディアは なぜ流 行 しているのでしょう 。 背景には、現代社会論や哲学・思想系の分野で「大き な物語の崩壊」と呼ばれる、時代の変化がある。 ~ ─ 年前は、近代化を目指し成長するという「物語」を社会 全 体 が 共 有 し、 同 じ 方 向 に 向 か っ て 努 力 す る 時 代 だ っ た。しかし今はそうした物語が共有されず、あらゆる価 値観が分散している。このような社会に適していたのが インターネットだったのではないか。インターネットは、 一人ひとりが自分の価値観に合った情報を独自に交換で )を書いた 年ほど前は、まだブログ=文字の時 企 業 経 営 コ ン サ ル タ ン ト の 梅 田 望 夫 氏 が『 ウ ェ ブ 進 化 きるからだ。 そこに「リアルタイム性」と「映像」が加わったこと が、ソーシャルメディアのもっとも大きな特徴だ。 論』(* が登場し、皆が映像を発信で YouTube きるようになった。映像という手法は「メディア・イベ 代だった。そこへ ント」といわれるように、同じものを共有する儀式的な 性質が強い。その結果、結束感や場の共有感がとても強 それを一斉に見るような、 的なメディアへと発展し でリアルタイムに情報が共有で ま っ た。 さ ら に Twitter きるようになったため、誰かがライブ配信を行い、皆が 始めている。 「紅白」や「山口百恵」のように国民単位の 上にたくさん出現してい を何百万枚も売るアーティストは 数万人の単位になって、 メディア・イベントやシンボルだったものが、数千人~ るのだ。そこには 小さなカリスマがいる。 いないが、小さなコミュニティの中だけに最適化された こ れ ま で の イ ン タ ー ネ ッ ト の イ メ ー ジ は、 梅 田 氏 が 「総表現社会」と述べたような、皆が知的に優れたもの お 感 じにな り ま す か ? よりも携帯電話でのメールに慣 年代生まれ以降、いわゆる「デジタルネ これはどう捉えるかが難しい問題で、さまざまな議論 がある。携帯電話料金のパケット定額制が登場したころ 中高生だった イティブ」世代は、 れているなど、世代の違いは確かにある。しかし、人間 関係の根底は変わっていないという捉え方もできる。最 や mixi を利用し互いの情報を共有し 近の若者は Twitter ているが、これはある種の"監視"ともいえる。博報堂 生活総合研究所の原田曜平氏は、こうした現代の若者の 。日本社会は昔、 世界を「新村社会」と呼んでいる(* ) 日 本に お け る そのよ う なソ ーシャルメディアの使い で顔写真を公表している人は、マイミク ( mixi の使い方になっている。 参 シャル」=「小さな世間」のことで、その世間の内側で なる。つまり、ソーシャルメディアといっても、「ソー 見るオープンな場では匿名でのコミュニケーションに た「小さな世間」の中では実名を公表するが、他の人も 照)に知り合いしか登録していない場合が多い。そうし い。 て い る。 一 方、 日 本 で は 実 名 を 公 表 し て い る 人 は 珍 し 履 歴 書 を 公 開 し、 転 職 活 動 や 企 業 の 採 用 活 動 に 使 わ れ い うビジネスに特化した で、 個 や などの 米 国 で は MySpace Facebook と 人 が 実 名 や 顔 写 真 を 公 表 し て い る。 ま た、 LinkedIn もあり、ビジネスマンが 方 は 、海 外 と は 異 なるのでしょう か 。 ─ 本的なものだということもできる。 コミュニケーションであり、実はとても古くからある日 り、配慮しないと仲間はずれにされる。これは村社会的 て絵文字の数を調整する」など小さな作法を確立してお 若者は「一定時間内にメールを返信する」 「相手によっ 展により、そうした社会が再来していると述べている。 して暮らしていた。原田氏は、ソーシャルメディアの発 小さな村の中で「小さな世間」を共有し、お互いに配慮 2 30 を書き、情報発信するようなものだった。しかし最近の 場する場になっている。 90 20 I T コミュニケ ーションのスタイル自 体 も 変 化 している と P 3 T V W e b S N S 5 C D イメージは、大衆的なメディアが小規模ながら次々に登 ─ S N S 1 P C e w i v e r t n I 新世代のコミュニケーションの姿、 その本質と傾向とは ソーシャルメディアや新しい IT ツールによる新しいコミュニケーションの形は、従来のコミュニケーションに慣れた世代からは、 一見不可解で特異なものにも見える。そこには、現代に生きる人々のどのような志向性が投影されているのだろうか。 また、企業は今後ソーシャルメディアとどのような付き合い方をすべきだろうか。日本における「情報環境」を見渡し、 「Web 社会」の姿を分析する研究者・濱野智史氏に聞いた。 10 特集 Twitterのその先へ···················································· 最近話を聞いた高校生は、マイミクを同学年の友人だ けに完全に閉じているという。私は出会い系サイトの問 コ ミュニケーションの本来の魅力は、知らない人と出会っ 題より、こちらのほうが問題ではないかと思う。 たり、こんな世界もあると気付くことだ。だが、ネット の中でも同じクラスの友人としかつながっていない。 ほ か に、日本だけに特徴的な現象はありますか。 と同時にコメントもメインのコンテンツになっているニ ニコニコ動画 (P3 参照)のようなものは、海外では出 てきていない。中国に似たようなサイトがあるが、動画 ─ 役割のほうが強くなる。 ディアはどうしても、 「人間関係調整ツール」としての わせて進化する傾向がある。日本におけるソーシャルメ てくると、今まで通りの閉じたコミュニケーションに合 と非常に新しいメディアだと感じられるが、日本に入っ たという出来事がよい例だ。こうした海外の事例を見る でつぶやいたところ、見つ 携帯電話を盗まれたと Twitter けた人からの知らせが瞬時に届き、取り戻すことができ 作家のクレイ・シャーキーは、一瞬で皆がつながること 。 ができるソーシャルメディアは「革命」だと述べた(* ) 3 ためにコメントをつけている程度だ。なぜ日本だけ コニコ動画とは異なり、制作者などが注釈や補足説明の なのかはいろいろな理由があるが、日本の特徴とし て、 「お約束」を共有した前提共有型の笑いが多く、 それがニコニコ動画に向いているということもある。 コメントがツッコミ代わりになるわけだ。一方海外 ではコミカルな動きが面白いと感じられる笑いが主 で、こうした笑いの違いも理由の一つだろう。 流し読みできるし、いま盛り上がっているのだなと ニコニコ動画は映像に文字を加えたコミュニケー ションなので、大勢の人がコメントを書いていても いうことがすぐにわかる。リアルタイムで100人 が一斉に情報を発信するというのは、新しいコミュ ニケーションのスタイルの一つだ。 ブログ http://d.hatena.ne.jp/shamano/ ソ ーシャルメディア と 向 き 合 う 際 、企 業 は どのよ う なことに注 意 すべき なのでしょう か 。 ─ 先ほど述べたように、欧米経由で伝わる新しいメディ アは、数年経つと日本風にカスタマイズされる傾向があ る。米国の事例を参考にしていると、日本では全く異な るものに進化することがあるので、そのズレを認識する 必要がある。今話題になっている電子書籍にもいえるこ とだが、日本社会に沿った普及の仕方やカスタマイズが 必要になり、日本特有のあり方が出てくるはずだ。企業 に と っ て 重 要 な の は、 そ の 中 で 日 本 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー ション作法がこれからも生き残るのか、もしくはもう少 し流動性の高いメディアになりさまざまな人がつながっ ていくのか、両者のバランスがどうなるのかを見極める ことだ。 ま た、 ソ ー シ ャ ル メ デ ィ ア の 企 業 ア カ ウ ン ト で は、 " キ ャ ラ が 立 っ て い る " タ イ プ が 人 気 が 出 る。 企 業 の 人柄が見えるものが喜ばれる。キャラが立っているとい ソーシャルメディア担当者を「中の人」と呼ぶが、その うことが価値を持ち、企業のブランドイメージを形成し 始めているが、そこには難しさも現れる。消費者はソー シャルメディアでの企業の発信を1人の人間として捉え てしまう。企業は組織体であるのに、消費者は1人の人 格のように認識するのだ。これは永遠に正解が見つから ない問題ではないか。 ソーシャルメディアによって企業も監視されるように なっている。それに時間をかけて対応することが、企業 を強くすることに本当につながるのかという疑問もあり、 どの企業も使うべきだとは言い難い面もある。しかしソー シャルメディアを通して親近感を感じてもらうことは、 コーポレートブランドの強化にとって重要な手段になる だろう。 ─ *1 『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』 (ちくま新書) *2 『 近 頃 の 若 者 は な ぜ ダ メ な の か 携 帯 世 代 と「 新 村 社 会 」』 (光文社 新書) *3 『みんな集まれ! ネットワークが世界を動かす』 (筑摩書房) N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 11 W e b 濱野智史 氏 株式会社日本技芸 リサーチャー ─ 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員を経て現職。 専門は情報社会論。情報環境系の研究者・評論家として活動。 著書に 『アーキテクチャの生態系─情報環境はいかに設計されてきたか』 (NTT 出版)、 『ised 情報社会の倫理と設計』 (河出書房新社、東浩紀氏と共同で編集)。 / おそらくアジアのどこかの、おそらく宗教に関するもの。それを誰かがコレクションしたものはないか、というところまでは 日仏の同業の友人とも意見が一致するところなのだけれど、推理もそこでぴたりと止まってしまう。 素性がもう少しわかるまで、しばらく手元に置いておこうと思う。 好奇心と骨董の森は、深い。 文・写真 宮脇 誠 1973 年生まれ 2001年渡仏後からパリを拠点にヨーロッパのあちこちに古道具探しに出かける 「旅の古道具屋」。 http://miyawaki.biz/ / 素材も色も異なる3 つの手が、親指と人差し指で小さなものをそっとつまんでいる。 ぼろぼろになったものも合わせて、同じかたちのものを5つ見つけた。 も の の あ わ い 3 つ の 手 美とエコを相乗させ、新たな価値を創造する ─「人も地球も美しく」資生堂の環境への挑戦 株式会社資生堂 Shiseido Company, Limited 社名にも由来する 「 生物多様性」の保全 日 本 最 大 手 の 化 粧 品 メ ー カ ー、 資 生 堂。 そ の 社 名は、中国の四書五経の1つ、易経の一節「至哉坤 元 万物資生」(大地の徳はなんとすばらしいもの であろうか、すべてのものはここから生まれる)に 由来する。 創業以来、地球の恵みを大切にしながら事業を営 んできた資生堂は、1992年から環境における経 営方針「資生堂エコポリシー」を基本として、生態 系に配慮した資源・エネルギーの利用などを定め、 環境活動を推進してきた。 N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 13 F r o n t i e r 改 革 の フ ロ ン テ ィ ア F r o n t i e r トした。このプロジェク プロジェクト」がスター 2009 年 に は さ ら に、 「資生堂アースケア ジが強いエコと結びつきにくい印象があることも評 を求められる化粧品は、節約や省資源などのイメー ジネスのシンボルとしているが、一方で、華やかさ エコを前面に打ち出した商品の発売など、エコをビ めない。また、自動車や家電などのメーカーでは、 は、このプロジェクトが 状 況 を 重 く 見 た 経 営 陣 は、 取 締 役 会 直 轄 の 委 員 会として、2008年に「環境委員会」を発足。お 価の低迷に影響していた。 してもともと排出量が少ないため、大きな効果を望 徴がある。1つ目の特徴 トには、大きく2つの特 事 業 活 動 の" す べ て "の つ の 側 面 が あ る。 前 者 グローバル化とともに 資生堂ならではのスタンダードを確立 動の最大のポイントだ。 はの活動が盛り込まれていることが、同社の環境活 る。基本的な活動を踏まえたうえで、資生堂ならで 確立できない新たな価値観に基づく活動を指してい フスタイル」の実現という、化粧品メーカーにしか す。そして、後者は「美とエコをつなぐ新しいライ は COの2 削減や省資源、化学物質の排出抑制など、 企業が地球市民として当然行うべき活動のことを指 ならではの環境活動」の トした。これには、「基本的環境活動」と「資生堂 翌年、「人も地球も美しく共生する持続可能な社 会 の 実 現 」 を 使 命 と し、 同 プ ロ ジ ェ ク ト が ス タ ー 「環境を経営の中核に据える」ことを決定している。 設定と環境計画の策定が行わ れた。委員会の中で、 よるディスカッションが行われ、新たな環境方針の プロセスにおいてグルー として立ち上げられたこ トによって、資生堂の環 とにある。同プロジェク 境活動が全社的に大きな なったのだ。2つ目の特 第一歩を踏み出すことに 徴は、社名に込められた 新しい価値を生み出す」 「 地 球 の 恵 み に 感 謝 し、 という意味を根底に置き、地球の恵みを限りあるも の と し て 認 識 し、 将 来 の 世 代 へ 受 け 渡 す た め に 厳 正に取り扱うことを明言していることだ。折しも、 2010年は国連の定めた「国際生物多様性年」に あたる。 もともと、プロジェクトが発足するきっかけとなっ たのは、日経 BP社の「環境ブランド調査」におい て、2009年には100位台に沈むなど、資生堂の 年 まず、基本的環境活動に関しては、 月に「オフィス」「モノづくり」「販促物」の つの 3 れがひとつのプロセスにとどまることなく、調達か 組まれていた環境に対する基準を一本化し、それぞ を制定した。これまで資生堂の各部門で個々に取り スタンダードから構成される「エコスタンダード」 3 2 0 0 9 環境活動への認知度が低まっていたことにあった。 これまでにも資生堂では、フロンガスや塩化ビニ ルの全廃など環境保全活動を積極的に行っており、 過去には産業界を対象とする顕彰制度「地球環境大 賞」における受賞歴もあった。しかし現在、環境保 全 活 動 と し て 注 目 を 浴 び て い る COの2 削 減 に つ い ては、化粧品業界は鉄鋼や自動車などの業界と比較 2 り組む環境プロジェクト よそ1年をかけて経営トップと関連部門の部門長に 株式会社資生堂 環境企画部長 相沢正典氏 株式会社資生堂 1872 年創業の大手化粧品メーカー。 「一瞬も一生も美しく」というコーポレート メッセージのもと、化粧品事業、美容サービス事業やレストラン事業などを展 開。事業の中心である化粧品事業では、国内第一位のシェアを誇る。1992 年 度より、環境に関する経営方針 「資生堂エコポリシー」を基本として、環境活動を 推進。2009 年に環境省より 「エコ・ファースト企業」に認定された。 プの全社員が全世界で取 P rofile 14 沢正典氏が語るように、全社員が一丸となって取り 工場での対策が中心であった」と環境企画部長の相 れてきた環境活動は「生産部門や技術部門など生産 たって適用されるものとしたのである。過去に行わ ら生産、配送、廃棄に至るライフサイクル全体にわ 氏は語る。 受け取る側の状況を理解することが大切だ」と相沢 よって文化・制度・インフラが異なるので、情報を 員の理解を促進することも含まれる。ただし、国に ロジェクトの情報を世界中に発信し、全世界・全社 り、「環境企画部に与えられたミッションには、プ 20 資 生 堂 は、 海 外 展 開 を 積 極 的 に 推 し 進 め、 17 年 に は 海 外 売 上 げ 比 率 % を 目 指 す と い う 経 核になる」 (相沢氏)。 に結びつけていくかが、今後の当社の環境活動の中 は、一見対極に位置づけられるエコと美をどのよう と い う 会 社 だ か ら こ そ で き る こ と だ。 そ の た め に そ美しい』というものに変えていく。これは資生堂 けど美しい』という現在の価値観を『エコだからこ られる華やかさを保つことができたのだ。「 『エコだ り、単なる包装の簡素化だけでなく、化粧品に求め くフィルムをかけることにも心を砕いた。これによ させるボトルデザインに変更。繊細なボトルに美し ランドキーワードである「うるおい高密度」を想起 スチック箱をフィルム包装に変えるだけでなく、ブ 述「アクアレーベル」のパッケージ改良では、プラ 生み出していくことが必要だ」と相沢氏は語る。前 『美』を『エコ』と結びつけることで新しい価値を 永 続 し て い く た め に は、 同 社 が 追 求 し 続 け て い る 「資生堂がグローバル企業として社会に必要とされ、 で は の 環 境 活 動、 つ ま り、「 美 と エ コ の 共 生 」 だ。 しかし、資生堂が取り組む環境活動は、これだけ では終わらない。到達すべきゴールは、資生堂なら 目指すのは「美とエコをつなぐ 新しいライフスタイル」の実現 組めるものとは言い難かったが、オフィスエコスタ ンダードでは、省エネを中心に、日常業務の中で社 2009 年1月に発売した マキアージュ アイズクリエーター (3D)では、 セットアイシャドーでありながら、 1色ずつ中身の色が詰め替えられる設計を採用。 員が取り組むべき活動内容と指針を策定し、実施す 2009 年 8月にリニューアル発売した アクアレーベル保湿ラインでは、 従来のプラスチック箱をフィルム包装に変更し、 化粧水で約 90% の省資源化 (旧製品との比較)を実現。 ることとした。モノづくりエコスタンダードでは、 マキアージュ セットアイシャドーの単色レフィル発売 商品の開発から生産、廃棄に至るライフサイクルの アクアレーベル プラスチックケースの樹脂量削減 すべてのプロセスにおいて環境影響の低減に関する カテゴリ ポイントの評価項目ごと ム 化 と ゴ ミ ゼ ロ を 同 時 に 実 現 し て い る。 こ れ ら の そのまま販促物の一部として使用することで、スリ ブランド「アネッサ」では、配送用のダンボールを だった見本台を紙製に変更した。また、日焼け止め 本台・販売台を一体化し、それまでプラスチック製 た。たとえば、前述のマキアージュブランドでは見 ているかをチェックし、集計がなされることとなっ 計・材料などにおいて、資生堂の環境基準に対応し ン ダ ー ド で も、 販 促 ツ ー ル の 製 作 や 梱 包 な ど の 設 の単色レフィルを発売した。同様に販促物エコスタ 「マキアージュ」ブランドではセットアイシャドー の 樹 脂 量 削 減 を 行 っ た。 ま た、 メ ー キ ャ ッ プ 商 品 レーベル」ブランドにおいてはプラスチックケース この活動結果は、すでに商品開発に反映されてお り、 た と え ば、 ス キ ン ケ ア を 中 心 と す る「 ア ク ア いるという。 すなど、数値的な目標を掲げることも視野に入れて 基準点を定め、これを満たした商品のシェアを増や ナーをも巻き込んだ取り組みを続けている。今後は ずほ情報総研の協力も受け、外部のビジネスパート フサイクル全体の環境データの把握については、み に基準達成度を加点法で評価することとした。ライ 基準を設け、 12 スタンダードはグローバルでの展開を検討してお ローバル化を推進するとともに、社会の「エコ」の概 営 目 標 を 掲 げ て い る。 今 後、 同 社 が、 さ ら な る グ 念を変え、すそ野を広げていくことを期待したい。 N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 15 50 フィルム包装 プラスチック箱 7 モノづくりエコスタンダードに沿った事例 ツ チ ヤ 教 授 の P T a l k J a m S e s s i o n 哲 学 者でありコラムニストでもあるツチヤ教 授が、 みずほ情 報 総 研のさまざまな〝異 業 種〟専 門 家と 繰り広げる トークセッション。 それぞれの立場から意 見を交わします。 「環境共生都市の国際展開」を 第 2回 哲学しよう (哲学者) ( みずほ情報総研 コンサルタント) 「環境問題の探究」と「真理の探究」は 同じもの? ことになるとさらに無茶苦茶 いに複雑になる。環境や都市 土屋賢二 × 相馬明郎 相馬 私が最近関わっているのは、環境共生都市 を創造するっていう、とてつもなく、大きな複合 になるでしょう? 素を考えなきゃいけなくなっ 的なテーマなんですが、そもそも環境って、私が 相馬 はい(笑)。だから、環 境というテーマを少しでもシ 土屋 それって気持ち悪くないですか(笑)? 僕 は考えなきゃいけない要素が増えていくにつれて 私のミッションの一つなんで ンプルかつ正確に表現する のような実際の生活に関わる て、もう収拾が付かないくら 学生のとき専攻していた物理学より遥かにアヤフ だんだん気持ち悪くなる。たまに論理学とか数学 ていうのは、複雑な事象を理 す。 ち な み に、 モ デ ル 化 っ ヤなものを扱うんです。 基礎論を勉強するんですけど、前提の数が非常に ちいいんです。考慮に入れなきゃいけない要素が 単純化・理想化をして、本質 解・整理するために、事象の と い う 試 み、" モ デ ル 化 "が 少ないんですね。だからクリアでものすごく気持 少ないから。それが哲学になると、いろいろな要 いってます。 的と思われる概念や要素を見つける思考過程を 入っていません? 上手くい くかどうかっていうのもやっ ど、やっぱりね、生物にはすっきりしない概念が 択制だったので、物理と化学を選択したんですけ が好きなんですよね。高校までは理科が2科目選 りしたものが好きじゃないですか? 僕は問題が はっきりしていて、その答えはこれだというもの 生態系の真理を探究する「生態学」という話と、 相馬 そうなんです。先ほどのモデル化の話は、 入ってくるんじゃないですか。 ようにというような、そういう観点はどうしても 適な、少なくとも人間はちゃんと暮らしていける るかは別にして、最終的には人間にとって一番快 価の話ですよね。だから、どういうレベルで考え 食い違っていることがありますよね。そういう場 土 屋 「 環 境 」 と い う と、例 え ば、干 潟 の 話 1 つ とっても、門を開けるかどうかで専門家の意見が になります。 るための評価と説明をつくることが私たちの仕事 んです。そういった状況で、進むべき方向を決め 決めなくてはいけないという、時間的制約がある どういう方向に進むべきか」ということを、"今" ぱり人間的な視点から見た評 多くて気持ちが悪いんですよ。化学だと比較的少 生態系の評価を探究する「環境問題」という話の 土屋 そうですよね。シンプルにしないとね。そ もそも物理学をやっていた人というのは、すっき 数の原理がわかればそれでおおよそのことが説明 合は、どうなさるんですか? 相馬 2つが混在しています。前者のように、どういう 物理がわりと好きだったんです。 │ コンサルティングというのは お互いのビジョンやパラダイムを想起し、 共有していくことでもあ るんです。 できる。物理はもっと少数ですからね。だから、 相馬 僕も本当はすっきりしたものが好きです。 け ど、 環 境 問 題 は そ う は い き ま せ ん。 た と え ば "気持ち悪い生物"(笑)と物理と化学の融合であ 基本的原理で生態系の真理を理解していくか、と り、環境共生のテーマの一つである生態系を評価 する場合、そのモデル化はどうすればいいか。 相馬 最終的には、自分が持っているビジョンや パラダイムで進む方向を"提案"します。コンサル いのビジョンやパラダイムを想起し、共有してい いうのは物理の目指すところと似ていると思いま で、まずは自分がしっかりとしたビジョンを持っ ティングというのは、結局、クライアントや関係 性が加わりますよね。 ていないと、結局混乱すると思います。ただ、そ 者と一緒に課題を考えさせていただく中で、お互 土屋 純然たる自然現象としてみた場合は、どれ がバランスがよくて、どれが最適なのかとかとい のビジョンやパラダイムは、いろいろな方の意見 すけれども、後者の"評価"の探究には、前者の うことは出てこないですよね。ただ、さっき基本 " 真 理 "の 探 究 と は、 明 ら か に 異 な る 探 究 の 方 向 的原理っておっしゃった、自然科学的観点も必要 を聞きつつ、科学的根拠も盛り込みつつ洗練・修 生態系のモデル化でも、物質循環とか質量保存 という基本的な概念で生態系を捉えようという、 保 存 則 で み る と、 人 も 動 物 も 植 物 も 石 油 も CO 2 も炭素でできていると。こうした炭素の形態は、 だからすごく難しいと思います。 なんというか、コンサルティングは、情報を集め 物理でも使う考え方は根本にあります。たとえば 食物連鎖や経済活動をフローとした炭素循環で変 環境問題のコンサルティングって 、 結局何をするの? 仕事もありますが、人が納得して"動く"ための いう形態に偏りすぎてしまっ る。 炭 素 が COと 2 たと。それではどのフローをどうやって制御すれ る。 ば 最 適 な バ ラ ン ス が つ く れ る か、 と 考 え た り す て現状を分析し"動く"方向を提案する、という の" 進 む 方 向 "が 決 定 さ れ て い く と 思 う ん で す。 正され、その中で、"クライアントを含めた我々" くことでもあるんですよね。想起という過程の中 化し、炭素はその循環過程で保存されていると見 相馬 環境問題を扱う場合も、真理の探究はもち ろん大切なのですが、理学や哲学で真理の探究を モチベーションを作る、という仕事でもある。 生 態 系 の 問 題。 こ れ を 炭 素 の 循 環 と 質 量 COと 2 る。そうすると、環境問題というのは、炭素循環 扱うのと決定的に違うのは、環境問題では、社会 のバランスが崩れたことだと捉えることができ 的な要請として「このまま何もしないのではダメ 土 屋 で も、 " 最 適 "だ と か、" バ ラ ン ス が 崩 れ になってしまう。動かなくてはいけない。では、 土屋 純然たる物理学の世界では、それほど大き く意見が分かれないかもしれないけれど、複雑な る"とかは物理学的な概念なんですか? 人間に 都合がいいかどうかという物理学を超える視点が N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 17 S e s s i o n J a m T a l k 人が参加しているわけですよね。環境より生活が らにいろんな側面があって、いろいろな価値観の いですからねぇ。都市づくりみたいなものにはさ 掃除機や洗濯機が壊れると、素人でも部品だけを 徹底して合理性を求める。たとえばイギリスでは 究が足りないようにも思うんですよ。欧米では、 性の違いや、基本的な考え方の違いについての研 土屋 そうなると、国内とは別の戦略が必要にな るんでしょうね。僕はね、日本人と外国との国民 てます。 第一だっていう人もいるでしょうし。夫婦の間で 買ってきて修理できるような作りになっていたん 事象になると議論が分かれるんでしょうね。地球 合意に達するのも難しいのに、環境みたいな大き ですね。日本人は合理性をそこまで要求しないで が温暖化の方向にあるかどうかで議論があるくら い問題で"完全な合意"を形成するというのは難 しょう。壊れると全部買い替えなきゃいけないも しいですよね。 相馬 どんなに完璧な説明ができたとしても、多 分不可能ですよね。そもそも、論理的説明を行っ ん で す。 だ け ど、 こ れ か ら は そ れ だ け で は 勝 負 ですよ。どんなことでもとにかく説明をきちんと ばイギリスではどこまでも説明を要求してくるん きたからなんでしょうけどね。ところが、たとえ の ア プ リ の よ う な、 自 由 に 開 の も 多 い。 iPhone 発できるようなモノを提供して、将来的な発展の で き な い。 先 生 が お っ し ゃ っ て い た「 将 来 的 な できないと相手にされないんですね。欧米はそう た時点で、我々は意識している、していないに関 発展の余地を考えて」という話と、「技術をパッ いう社会が多いですから、日本人ももう少し説明 余地を考えているような発想も少ない。 極 論 す れ ば、 環 境 問 題 の 解 決、 と い う 話 は、 今、 人 類 が 問 題 と 考 え て い る 課 題 を 整 理 し つ つ ケージ化して売る」という話は共に、「個々の要 わらず、現実を簡略化してしまっていますし。簡 「あるべき姿」を設定し、それを「今、目指すべ 素 技 術 」 の 洗 練 で は な く「 全 体 像 」 を 構 想 す る、 できるようにならないといけない。でないと太刀 略化である以上、どこをどう簡略化するか、その き暫定的な 1つの真実」として"動いてみる"と という発想が大切なことを示唆していると思う 打ちできない。 相 馬 こ れ ま で の 日 本 の 経 済 発 展 の 基 盤 は、 世 界 に 誇 る 高 い 技 術 力 で あ っ た わ け で す け ど、 そ いうプロセスの繰り返しなんです。シーソーに例 んです。「全体の構想」と「技術」の間を結ぶ一 相馬 一方で、察する、という感性や習慣は日本 の良いところ、という向きもありますけど。 選択肢は様々なバリエーションがあるし、説明が えれば、左右のバランスがとれているのが良い状 貫 性 の あ る 構 造 あ る い は 論 理。 そ こ の 部 分 は 日 土屋 ただ、それが外国に行くとまったく通用し ないということがあるんですよ。だから日本国内 的には日本人は下手でしょう。それは殆どの人が 態だとすると、そのバランスは静的に保たれてい 本 が 弱 い と い う か、 日 本 で は 市 場 に な り に く い で上手くいっても、外国を相手に何かを交渉する 同じ価値観を持っているから、説明せずに済んで る の で は な く て、 こ ち ら 側 に 傾 い た ら あ ち ら 側 と 思 う の で す が。 学 生 さ ん に も い ら っ し ゃ っ た 部 分 で も あ る と 思 い ま す。 才 能 が あ る 人 は い る 人と議論したとするでしょう。日本人だったら、 う し た 技 術 は ど ち ら か と い う と、 部 分 最 適 化、 へ、あちら側に傾いたらこちら側へ、ということ のでは? ここまで言えばあなたの反論はわかりましたとな 課 題 解 決 型、 と い う 発 想 で 磨 か れ て き た と 思 う を繰り返し、時間平均するとちゃんと中立を保っ 土屋 ものすごく論理的にモノを考える学生とい うことで言えば、結構いますね。日本人、特に女 るような状況でも、たとえばイギリス人が相手だ できたとしても現実の何パーセントを表現してい ている。こういった"動き"のあることが、実は 性はあまり理詰めが得意じゃないといいますけ るかわからない。 人や経済を活性化させる源であったりもするん ど、大間違いです(笑)。日本人で女性なのに必 と、もうここまで言ったらどう考えたって負けを となると非常に難しくなる。哲学の分野で、外国 です。 要以上にどこまでも理詰めで考える(笑)。 認めるだろう、とこちらが思っても、負けを認め 「ビジネスの国際展開」に必要なことは 実は教育変革? でも、「説明する」ということで言えば、一般 相 馬 最 近 は「 環 境 共 生 都 市 」 そ の も の を パ ッ ケージとして、海外に売るっていう話にも関わっ 土屋賢二氏 18 相馬 わかります。我々の仕事でも、論理やモデ ルを作る時は、それはなぜ?どうして?といった ようとしないんですよ。 いろなメニューをださなきゃいけないだろうと。 あり得ない、好みは人によって違うんだからいろ 例えば、給食でも一種類しか出さないというのは 人違うのが当たり前だって思っているんですね。 相 馬 私 な ん か 死 ぬ ま で わ か ん な い こ と だ ら け じゃないかと(笑) 大きなことですよね。 土屋 死ぬまでわからないことだらけ(笑) 、そ 具合に徹底して突き詰めなければいけないんです ね。 で も、 そ う い う 議 論 を す る と、 結 構、 日 本 人って精神的に参っちゃうんですよ。「そこまで 突きつめなくても…。逃げ場を残しておいてくれ ると、君の言いたいことがわかった。あーすっき ほ う が 大 切 だ っ た り す る。" 違 い "が ク リ ア に な むしろ、何が"違う"のかがクリアになることの も、 そ れ は そ れ で" 違 い "と し て 認 め て し ま う。 も感じるのですが、議論して意見が違ったとして もたらされている。 についてとことん議論することで、社会に変化が 意見を載せる工夫をしている。そして、その意見 ますよね。たとえば、新聞の中でも、いろいろな 考え方の多様性を前提にしたシステムを作ってい 密接に絡んでいると思うのですが。 相馬 多分、素養をもっている人はいると思うん ですよ。でも、そういう人がメジャーになってい ることだと思うんですよね。 場合、大切なのは論理的な思考を理解して対応す うですよ。まあ、いずれにせよ、外国人が相手の 土屋 りした。じゃ、ビールでも飲みに行こうと。そこ 以前、オックスフォード大学の学内誌の表紙に 女性モデルの写真を使ったら、女性を美醜の対象 土屋 本当は教育から変えていかなきゃいけない んですけどね。日本ではこういう問題が出たらこ │ 外国人が相手の場合、 大切なのは論理的な思考を理解して 対応することだと思うんですよね。 ら辺の感覚が日本にはないような。 は撤収になったんですね。ただ、1970年代く ういう風に解きなさい、と教えるから、問題を発 化とは根本的に違うんです。欧米の友人などから よ」っていう感じで(笑)。そこら辺は、欧米文 土屋 そう、そう。僕が感じるのは、日本人って 基本的に全員同じ考えを持っていなくてはいけな らいまではケンブリッジのカレッジでも女性の入 見する能力があまり育たない。問題を見つける能 ができますから。 この言葉は厳密に使っているのかと突っ込むこと ないんだと思うんです。それって教育の問題とも いと思っていますよね。それが当たり前なんだっ 力が発達すれば、自分が考えることに対しても、 ていったことで、世の中が変わって スの中で、これは結局どういうこと 相馬 そうですよね。トコトン説明 を求められれば、説明を探すプロセ んどは解決できているんですよね。 で、かつ、それを共有できれば、実は問題のほと つけることのほうが大切なんです。問題が本質的 が置かれがちなのですが、本質的な"問題"を見 いったということなんですよね。 る。それによって曖昧さが少なくな が 見 え て く る。 少 な く と も、 何 が 考えることの重要性だったりする。 http://www.mizuho-ir.co.jp/seminar/bifs2010.html こ の 対 談 は、 こ の 後「 論 理 だ け じ ゃ う ま く い か な い 合 意 形 成 ─ で は ど う す る の? ─ 」 と い っ た 話 題 に ま で 発 展 し ま し た。 そ の 内 容 は、 本 誌 掲 載 の 対 談 の 詳 細とともに以下のホームページにて公開を予定して います。そちらも是非ご覧ください。 り、理解が深くなり、本質的な部分 なんだろうと探求していくことにな 相馬 私も、仕事の現場でまさにそのことを感じ ています。とかく"解答"を見つけることに重点 会あるごとに説明して、議論を続け として見るなと反対運動がおこって、結局その本 て考えていますけれども、欧米に行くと、一人一 も、 女 性 の 権 利 を 主 張 す る 人 が 機 学を認めないようなところがあったんですよ。で みずほ情報総研・相馬明郎 と が" わ か る "。 そ こ が「 説 明 」 を " わ か っ て い な い の か "っ て い う こ そうそう、それがものすごく 土屋 N av i s 0 1 0 – O c t 2 0 1 0 19 S e s s i o n J a m T a l k つちや けんじ 1944 年、岡山県生まれ。お茶の水女子大学名誉教授。柔らかな語り口の哲学論集・講義集のほか、数多くのユーモアあふれるエッセイ集でも知られる。趣味はジャズピアノ。 エッセイは『われ笑う、ゆえにわれあり』 『哲学者かく笑えり』、哲学書は『ツチヤ教授の哲学講義』 『猫とロボットとモーツァルト』など多数。 そうま あきお みずほ情報総研株式会社 環境・資源エネルギー部 主席研究員/シニアマネジャー。1994 年富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社。工学博士。 生態系保全、温暖化、環境技術、行政支援などの観点から、環境共生に関する予測・評価・構想化・シナリオ作成に関するコンサルティング業務を担当。2007年海洋理工学会奨励賞受賞。 や、現在の会計処理基準との GAP 分析、IFRS 対応 o を担う経理部員の育成を目的とした教育・研修など、 各種コンサルティングサービスを提供しています。 また、一般法人向けシステムソリューションでは、 小企業向けERP パッケージなど、企業規模に応じ た IFRS 対応ソリューションをご提供。2010 年 12 月 「ソフトウェアセキュリティ最前線」をテーマに みずほビジネスイノベーションフォーラムを開催 みずほ情報総研では、企業戦略や IT 戦略の最新 動向をご紹介する「みずほビジネスイノベーション フォーラム」を主催しております。 今回は、 「ソフトウェアセキュリティ最前線」をテー マに、攻撃に強いセキュリティを作り込むための研 究分野の現状を紹介するとともに、ソフトウェアに a ●お問い合わせ:広報室 E-mail [email protected] 電話:03-5281-7548 m には借入金管理システムの時価評価対応など、ソ リューションを順次拡充していきます。 ● IFRS 対応ソリューションについては、以下の URLを ご覧ください http://www.mizuho-ir.co.jp/solution/ifrs.html r グループ企業向けの連結会計システムや中堅・中 f みずほ情報総研では、対応シナリオの策定支援 n の上場企業が本格的な検討を開始しました。 I 早ければ 2015 年に強制適用されるIFRS/国際財 務報告基準(国際会計基準)への対応に向け、多く ●期間:2010 年11月18 日 (木) ・19日 (金) ●場所:サンシャインシティコンベンションセンター (東京都豊島区) ●ワークショップ: 11月19日 (金)11:00 ~11:30(会場 A-8) ●詳細・来場登録: http://www.callcenter-japan.com/tokyo/ ●お問い合わせ:金融システム業務部 E-mail:[email protected] 電話:03-5281-7581 み ず ほ 情 報 総 研 から の お 知 らせ IFRS 対応ソリューションを拡充 求められるセキュリティレベルに対して確かな保証 t と品質を満たすためのコモンクライテリア(CC: Common Criteria、ISO/IEC 15408)による第三者 コールセンター/CRM デモ&コンファレンス2010に 行政法人情報処理推進機構)、先進的にCC に取 り組む開発者(フェリカネットワークス株式会社)、 JISEC 評価機関(みずほ情報総研)の 3 者が一堂に 会し、評価 ・ 認証の事例を踏まえてCC の有効性と ニー業務向けに「音声認識ソリューション」を提供し 評価の実際についてご紹介します。 ております。本ソリューションは、お客さまのテレフォ ニー業務において一層の業務効率化や応対品質の 向上を実現するとともに、リスク管理強化にも貢献 します。 また「音声認証によるiPhoneの活用」では、煩雑な タッチ入力を音声により簡便化すると同時に、セキュ リティ性の高い本人認証を実現する新しいソリュー ションをご紹介します。 n みずほ情報総研では、コールセンター等テレフォ ●日時:2010 年10月27日 (水)14:00 ~17:10 ●場所:秋葉原ダイビル (東京都千代田区) ●定員:100 名 ●参加料:無料 ●詳細・お申し込み: http://www.mizuho-ir.co.jp/seminar/ info/2010/bif1027.html ●お問い合わせ: 情報セキュリティ評価室 E-mail [email protected] 電話:03-5281-5314 ご来場いただき、ぜひ当社ソリューションをご体感 ください。 Navis 編集後記 企業トップ自らが消費者からの要望に ソーシャルメディアの出現によって、メ 「やりましょう」と答え、自社社員の企画 ディアの 役 割に変 化 が 訪れ、コミュニ 案に対して 「よりインパクトのある企画に」 と指示を出す─ソーシャルメディアで ています。しかし、ネットの世界もリアル しばしば目にする光景です。意思決定の 社会も、他者との接し方の本質に変わり 速さや経営理念・企業姿勢を “見せる”側 はありません。我々や企業を取り巻く変 面ばかりが目を引きますが、同時に顧客 化の兆しを追いました。また、グローバル の声や社員の声を真摯に“聞く”姿勢もそ 化の推進とともに「美とエコをつなぐ新し こにあります。ネット普及期に喧伝された いライフスタイル」の実現という、新たな 「双方向性」の意味が、改めて問われて 価値観の創造を目指す資生堂の挑戦を いるように感じます。 (平) (綾) 紹介します。 第 10 号 2010 年 10月1日発行 企画編集・発行: みずほ情報総研株式会社 経営企画部 広報室 〒101-8443 東京都千代田区神田錦町 2─3 [email protected] 電話:03-5281-7548 http://www.mizuho-ir.co.jp/ ケーションやビジネスの形態も変わり始め 企画・編集協力: 株式会社プラップジャパン デザイン: 印刷: o 「音声認識ソリューション」を出展 i 評価の実際について、JISEC 認証機関(IPA:独立 nishino design studio メディアランド株式会社 Copyright © 2010 Mizuho Information & Research Institute, Inc. All rights reserved. 無断転載を禁ず。本誌に掲載の記事・写真・図表などは、 著作権法によって保護されており、 無断で転用・転載・複製することはできません。 ─ この本の紙は適切に管理された木材を使い作られています。 大豆油インキで印刷しています。 非 日 常 の 宇 宙(そら)模 様・・・・・・・・・・2 福江 純 日 食 の 時 代 2009年の7月 日�日本近海で皆既日食があ り�縁があ�て豪華客船のクル�ズ︵初︶で皆既日食 ツ ア �︵ 初 ︶に 行 � た� そ し て� お 医 者 さ ん で も 治 せないと言われる�クル�ズ病×日食病に罹�てし ま�た� 皆既日食というのは�地球から約 万㎞の距離に ある直径約3�500㎞の月が�約1億5千万㎞の距 離にある直径約140万㎞の太陽を隠す現象だ�太 陽は月の約400倍も大きいけれど�約400倍も 遠 く に あ る た め に� 見 か け の 大 き さ が ほ ぼ 同 じ に な�て皆既日食が起こるのだが�これ�て�考える と�ものすごい一致じ�なかろうか� 実際�最新の月理論では�誕生したときには月は 地 球 の 近 く を 回 � て い た の が� 地 球 の 海 洋 と の 間 の﹁潮汐作用﹂という現象によ�て次第に遠ざかり� これからも遠ざか�ていくと考えられている� ともあれ�何万年も昔には地球から見る月の見か けの大きさは大きすぎて綺麗な皆 既日食︵金環日食︶ にならなか�たろうし�何万年も後には月の見かけ が小さくな�て皆既日食が見られなくなるだろう� 今日の人類の時代は� 億年前に誕生した長い地 球の歴史の中で�素晴らしい皆既日食を見ることが ふくえじゅん 1956 年、山口県生まれ。大阪教育大学天文学研究室教授。理学博士。専攻は天文学。 38 今宵の月でも眺めながら�宇宙における今の時代 を考えたり�未来に思いを馳せてみたりしてはいか できる貴重な時代なのかもしれない� 46 2012年�皆既日食ツア��行くぞ! がだろうか� つぎは 『アインシュタインの宿題』『SF 天文学入門 (上・下) 』『<見えない宇宙>の歩き方~ブラックホールからニュートリノまで』など著書多数。 22 Navis 2010 年 10月1日第 10 号 発行:みずほ情報総研株式会社 経営企画部 広報室 〒101-8443 東京都千代田区神田錦町2–3 電話 03-5281-7548 www.mizuho-ir.co.jp
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