宮崎県 <平成24年度 スポーツ施設等安全管理講習会 資料> H24年プールの安全と衛生管理講習会 公益社団法人 日本プールアメニティー協会 理事・講習会 講師 (財)日本体育施設協会 専門委員 プール施設講師 アイ・プール・デザイン 代表 池田勝利 「プールの安全標準指針」の位置づけ ■ プールの事故を防止し利用者の安全を確保するため、関係する省 庁(総務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)が プールの設置管理者に対し、施設面、管理運営面に関する技術的助言 として基本事項を示したものである。 ■ 本方針はプールの設置管理者が取り組むべき事項を示したもの であるが、外部に委託する場合も受託者に同様の対応を求め、設置 管理者は受託者に対し、確認・監督を行わなければならない。 * 指針の適用範囲は、学校プール、社会体育施設のプール、都市 公園内のプールを対象として作成されたが、その他の公・民営プール 等全てのプール施設においても活用を期待している。 プールの安全標準指針の体系 1 施設基準 ① プール全体------事故防止対策 ② 排(環)水口-----二重構造の安全対策 2 安全管理 ① 安全管理上の重要事項 ② 管理体制の整備 ③ プール使用期間前後の点検 ④ 日常の点検及び監視 ⑤ 緊急時への対応 ⑥ 監視員等の教育・訓練 ⑦ 利用者への情報提供 1 遊泳用プールの定義 遊泳用プールとは? プール本体の水容量の合計が、50m3 ~100m3 以上で不特定多数の人々が施設を利用するもの。 ただし、50m3 に満たないものであっても、今回の 安全標準指針の主旨を理解し参考として活用することが 期待される 2 プールの種類 (機能別) 適用範囲 適用されない 3 プールの種類 (実例) 競技用プール スイミングスクール 健康増進用プール 学校用プール フィットネスクラブ レジャープール 個人邸プール 幼稚園・保育園 5 日本水泳連盟公認プール * 公式な競技大会や公認競技会に使用するプールは、 日本水泳連盟公認規則で認められた公認プールで なければならない。 競技会でのプールのコンディション ① ② ③ ④ 競技中は、静水(流れのない状態) 水温は、25~28℃ 満水の状態で、一定の水位 コースロープは、1本で5㎝以上15 ㎝以内。 背泳用5mフラッグ、15mマーク、フライングロープ ⑤ コース数、50m→7コース以上、25m→5コース以上 国際プールでは共に8コース以上 6 プールの構造と名称 7 プール水のろ過循環と消毒 プールのろ過機はなぜ必要なのか 遊泳者からの病原性微生物や汚染物質 がプールに持ち込まれる 周辺環境から汚染物質が飛来する これらの汚染物質からプール水を守り遊泳者 の安全性・快適性の確保をするのが、ろ過機 と消毒剤です 8 プールの汚染原因 ①木の葉が入り込む ②虫が入り込む ③ほこりが入り込む ④草花の胞子が入り込む ⑤注水の水質が悪い ⑥人が汚染物質を持ち込む 9 プール水の水質維持装置 ろ過循環方式の種類 イ.一般的ろ過循環方式 循環ろ過のリターンを全量プール床面から吸い込み、 ろ過・殺菌してプールの側壁から分散して送り返す。 ロ.部分オーバーフロー方式 屋内プールに多く省エネ目的。 ハ.全量オーバーフロー方式 省エネ、水面に浮遊しているごみ処理が可能。 ただし、大型オーバーフロー槽が必要。 10 一般的 ろ過循環系統図 25mプールのろ過ポンプ能力 0.8t~1.5t/分 11-1 プールのろ過の原理図 11-2 砂式ろ過循環装置 メリット ・ランリングコストが安い ・負荷変動に強い ・メンテナンスが容易 デメリット ・広い設置場所 ・装置重量が重く、大きい 11-3 珪藻土ろ過装置 メリット ・ミクロン単位の高い精度の ろ過ができる ・小型軽量で設置が小さい デメリット ・逆洗の回数が多い ・手動式はプレコートが煩雑で 熟練が必要 11-4 カートリッジ式ろ過装置 メリット ・逆洗等の操作がいらない ・操作が簡単で手間がかからない ・水のコストは抑えられる デメリット ・ろ材が詰まると交換となる ・ランニングコストが高い プールの汚染例 営業前 営業後 12 ろ過装置の能力とターン回数 イ.プール水のターン回数-ろ過装置の能力を決める数値 (文科省、厚労省基準:1日4ターン以上、夜間停止するものは6ターン以上) ・学校 ・ スイミングスクール ・ 混雑する温水プール 4ターン から 6ターン 5ターン から 8ターン 6ターン から 10ターン ロ.ろ過装置の能力 [Q = V×T÷24] (例)300m3×6ターン/24時間=75≒80m3/H Q = 循環ろ過能力(ポンプ能力) m³ /H V = プール本体の容量 m³ (プール槽平面面積×平均水深) T = ターン回数 * 1日中(24h)運転を前提、夜間運転中止の場合 24の代わりに運転時間を入れる。 停電時におけるプールの管理 ※ 停電時のプールの状態 1)ろ過機が停止している。 2)プール水は浄化されない(プールを使用すれば 濁度が上昇する) 3)定量塩素剤の注入装置が止まり、遊離残留塩素が 低下して細菌の繁殖でプール水が不衛生の状態 になる。 ※ 停電時の対応 1)基本的には営業を停止する。(停電時間にもよる) 2)直接プールに手播きで塩素剤を必要量投入し 通常管理より高い値に投入量を調整する。 3)投入量は停電時間を考慮して決めるのがよい。 13-1 機器類・機械室 ろ過機本体 ヘアーキャッチャー・配管類 ろ過ポンプ 滅菌薬剤タンク 14-1 文部科学省 水質基準項目 検査項目 遊離残留塩素濃度 1 2 pH(水素イオン濃度) 3 濁度 4 大腸菌 過マンガン酸カリュウム 5 消費量 6 一般細菌 7 総トリハロメタン 水質基準 0.4mg/L以上 1.0mg/L以下 5.8~8.6 プール水2度以下 ろ過装置出口0.5度以下 (0.1度が良い) 検査サイクル 使用前及び使用中1時間 ごと1回以上 使用前1回 使用前1回:水中で3m 離れた位置から壁面が明確 に見えることを確認 ろ過 装置出口は1回/毎学年 不検出 12mg/L以下 30日を超えない範囲で 1回以上 200CFU/mL以下 0.2mg/L以下 1回以上/使用期間中 適切な時期 14-2 水質基準一覧 検査項目 《H19年厚労省》 水質基準 検査サイクル 0.4mg/L以上で1.0mg/L以下 毎日3回以上で (二酸化塩素濃度) 0.1mg/L以上で.4mg/L以下 午前中1回 (亜塩素酸濃度) 1.2mg/L以下 午後に2回 2 pH(水素イオン濃度) 5.8以上 8.6以下 月1回以上 最初毎日後月1回 3 濁度 2度以下 月1回以上 ろ過装置出口ろ過水 0.5度以下 0.1度が望ましい 月1回以上 1 遊離残留塩素 プール水 4 過マンガン酸カリウム消費量 12mg/L以下 月1回以上 5 大腸菌(旧大腸菌群) 不検出 月1回以上 6 一般細菌 200CFU/mL以下 月1回以上 7 総トリハロメタン 暫定目標値 0.2mg/L以下 年1回以上 8 レジオネラ属菌 不検出(気泡浴槽、採暖槽のみ) 年1回以上 15 水質基準分類 《H19年厚労省・H16年文科省通知》 イ.1日3回以上測定 1)遊離残留塩素濃度 0.4 ~ 1.0ppm ロ.1日1回程度測定(変動がなければ1週間⇒1か月) 2) 水素イオン濃度pH 3)濁度 5.8 ~ 8.6ppm 2度以下(3m離れ視認) ハ.月に1回以上測定依頼 4)過マンガン酸カリウム消費量 12mg/L以下 5)大腸菌 検出されないこと 6) 一般細菌 200CFU/ml (・ 濁度 プール水、ろ過機) (2度以下 ・0.5度以下) ニ.年に1回以上測定依頼 7) 総トリハロメタン 8)レジオネラ属菌 0.2mg/L 気泡浴槽 不検出 16 プール水の殺菌装置・水質改善装置 イ. 塩素剤直接散布 遊離残留塩素濃度の調整 ロ. 塩素剤定量注入装置 配管経路内に定量ポンプで注入 (補助的、併用手法) A. オゾン殺菌装置 細菌の細胞膜を破壊、有機物を分解して殺菌、脱臭、脱色 B. 紫外線殺菌装置 紫外線が細菌の核酸に作用し、不活性化させる性質を利用 C. 中空糸膜ろ過装置 ろ過精度が高く細菌やバクテリアを膜で物理的に除去する D. その他 活性炭ろ過装置 17-1 水質管理の要点 1)遊離残留塩素 0.4未満ではアデノウイルス等の不活性化が困難。 1.0以上では目や皮膚粘膜の刺激が増える傾向。 2)pH(水素イオン濃度) 基準値範囲内に管理をするが、中性(pH7)近くで管理するのが 望ましく、刺激がなく、消毒効果の高い管理ができる。 *酸性・・・・ボイラー等金属腐蝕の促進が早まる。 *アルカリ性・・水素イオン濃度が高くなると、消毒効果が低下する。 3)濁度 遊泳者の衝突防止の観点から改定され3度から2度に設定。 但し濁度2度はけっして低い数値ではない。 正常なろ過機機能を維持管理をすれば1度前後の濁度を維持できる。 4) 過マンガン酸カリウム消費量 消費量の測定はプール水の汚染度(有機物総量)を測る有効な方法で 水道水の基準(10mg/L)より緩やかな12mg/Lにしている。 17-2 水質管理の要点 5)大腸菌 不検出と一見厳しい基準値のように見えるが、消毒剤が適切に使用 されていれば大腸菌群全てが死滅し、検出されない。 6)一般細菌 一般細菌の数は消毒効果の指標と一般的清浄度示す目安になる。 消毒剤が適切に使用された場合に可能な200CFU/ml以下に設定。 7)総トリハロメタン 発がん性の誘引物質の疑いがあるトリハロメタンは水道水質基準に 新しく加えられ、規定されていることから水道水質基準の0.1mg/L 以下を参考に暫定目標として0.2mg/L以下に設定された。 8)レジオネラ属菌 大型浴場施設でレジオネラ属菌による死亡事故が各地で発生。これを 重視し、厚生労働省をはじめ当協会などがプール施設や水使う施設 を調査した結果、ろ過循環と塩素消毒を行っているプール施設では 菌は検出されなかった。これらの調査結果から発生の可能性がある 気泡浴槽, 採暖槽についてのみ年一回の測定で不検出を基準にした。 17-3 塩素消毒薬品の取扱い 次亜塩素酸ナトリウム ピューラックス、サニーラックス、バルスター 等 最も一般的な消毒剤で、液体が多くアルカリ性の薬品 強力な酸化剤で、水以外の化学薬品との混合は厳禁 次亜塩素酸カルシウム ハイクロン、トヨクロン等 中性でpHの調整は必要ない。乾燥状態であれば長期保存が可能 塩素化イソシアヌル酸 トリクロロイソシアヌル酸 :ネオクロール、ハイライト等 ジクロロイソシアヌール酸 :ネオクロールS、スターダイクロン等 固形の塩素剤として直接投入や、溶解注入装置で利用酸性の薬品で他の塩 素剤や化学薬品との混合は厳禁 ろ過補助剤 砂ろ過装置ではろ過補助剤として硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム(P AC)等の凝集剤が使われている。他薬品との混合は厳禁 薬品の保管と取扱い ・冷暗所に保管 火気の厳禁 (保管量が多ければ消防法の制限を受ける) ・異種薬品の混合は厳禁 (異種薬品は離して保管) ・保護具の使用 17-4 異種薬品混合による発生ガスの症状 ・次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性と濾過を助ける ための凝集剤のポリ塩化アルミニウムは酸性のため 混合すると黄緑色の有毒な塩素ガスが発生します。 ・塩素ガスは、目、皮膚、気道を強く刺激し、低濃度 でも鼻やのど、目に刺激を感じる。 吸った場合は、肺水腫を起こすこともあります。 ・特に低濃度の場合、上気道への刺激が弱いため ガスが肺の奥まで侵入し、遅れて肺水腫が起きる。 このように遅れて中毒症状が出現することがあります ・高濃度の場合は、窒息感などの呼吸器症状や中枢 神経症状などを起こし、死に至る場合もあります。 17-5 異種薬品の混合事故例 1)学校のプール施設の機械室で清掃作業を行なった際に、次亜塩素酸ナトリウムが減ってい たため補充しようとしたところ、誤ってポリ塩化アルミニウムを投入したために発生した塩素ガス を吸い込み受傷したもの。(軽症1名 平成22年12月) 2)24歳男性(アルバイト社員)が、プール施設の機械室内での清掃作業中、次亜塩素酸ナトリ ウム約10リットルを誤って隣接されているポリ塩化アルミニウムのタンク内に補充してしまったた め、塩素ガスが発生し、そのガスを吸い込み受傷したもの。 (軽症1名 平成22年12月) 3)28歳男性教諭がプール施設の機械室で清掃作業を行っていた際に、誤って次亜塩素酸ナ トリウムのタンクに凝集剤のポリ塩化アルミニウムを入れ塩素ガスが発生教諭から、異臭が発生 している旨の報告をけた教諭4名が現場確認で機械室塩素ガスを吸い込み受傷した。(軽症5 名 平成22年7月) 4)次亜塩素酸ナトリウム用の100リットルタンク(約70リットル残留)に、誤ってポリ 塩化アルミニウム約20リットルを混入させ、塩素ガスが発生したもの。 (負傷者なし、平成22年6月) 17-6 事故は薬品の容器が同色の場合が多い 18 プールの水温と水質 ① 泳ぎに適した水温⋯⋯30℃前後(競技で26℃前後) ② 水温が低いとき 水温が22゜C以下、または気温+水温=50゜C以下の場合 遊泳中止の検討が必要。 ③ 水温が高いとき 補給水を入れるなどの方法で水温を下げる。 ④ 水質の変化⋯⋯適切な対応と対策 プール水の濁り、緑色、茶色、水表面のキラキラ、 泳いでいるときの目のチカチカ、水のぬるぬる感、 プール水の臭い、プール水の減少等 19 プールの三大事故 ① 溺水事故 ・・・ 遊泳中に溺れる ② 飛び込み事故 ・・・ スタート台の常設等 ③ 吸い込み事故 ・・・ 二重構造の不備等 ①溺水事故と ②飛び込み事故の防止は監視員 及び管理体制(ソフト面)への依存が大きい ③吸い込み事故は、ハード面で防止できる可能性が 非常に高い 19-2 水難事故の推移 *水難事故は図でわかるとおり平成22年の件数はS51年の約35%に減少し、 死者数は29%に減少している。 *平成22年の場所別水死者は8割以上が海と河川で、この区域で水泳禁区域や ライフセーバー配置等の安全対策の努力で著しく減少した。 19-3 水難事故(場所別割合) *平成22年の場所別水*死者は8割以上が海と河川でプールはなんと 0.7%の6名となっている。 *自然が相手の海や河川での水死者の遺族は死者の自己責任と考えるが 安全管理されているプール施設では、施設側に損害賠償責任が問われる 20-1 プールの事故 ① 溺水事故 ◇ 遊泳者の体調管理 運営ソフトでの 防止活動努力 ◇ 指導法 ◇ 基本的な確認作業 ② 飛込事故 ◇ 日本水泳連盟によるガイドライン 水深 スタート台の高さ(水面上) 1.0m~1.10m未満 0.25m±0.05m 1.10m~1.20m未満 0.30m±0.05m 1.20m~1.35m未満 0.35m±0.05m 20-2 プールの事故 ② 飛込事故 ◇衝撃度測定実験 溺水事故 と 飛び込み事故の防止は監視や運営 体制への依存が大きい 結論: 3m以上の水深が無ければ安全は確保できない。 が、吸い込み事故は、ハードで防止できる可能性が よって指導時の適正な管理を徹底し、事故防止に 非常に高いため施設の徹底改善で防止 努める。 21 プールの排(環)水口とは 各アトラクションへの吸水口 起流・揚水・ジェット etc ろ過吸水口 及び排水口 * 排水口、吸水口、取水口、環水口 * 給水口、吐水口、出水口 22 吸込み事故例 事故が起きた排(環)水口の状況 23 事故発生の状況 最も多い例 / プールのろ過吸水口での事故 起流装置吸水口での事故 これまでの事故の大半を占める。 起流装置にて発生。 枡の中に進入した際、足や頭部、肩などが 急速に配管内に吸い込まれ、脱出不能と なる。 吸い込む力が強く、配管口径も太い為、 小さな子供の場合身体全体が管の中に 吸い込まれてしまう。 スライダー着水プール取水口事故 H22年愛媛県今治市(クワハウス今治) 取 水 口 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 24 過去の事故発生数の推移 件数 8 7 6 5 4 3 2 1 0 事故合計 計60件 (内死亡事故55件)(内流水事故2件) 年度 25 プール排(環)水口と事故の原因 古いプール(S30~50年代)は ろ過機はなく、入れ替え式 40年代に循環ろ過機が普及し始め たが、プールの基本構造はそのまま 重力によりはめ込まれている方式 が多数 プール使用中にも吸い込み水流が発生 排水時にプール内に人間は立入ら ないため、吸い込み事故の発生は 考慮されていない 蓋の重量だけに頼る設置は、浮力が加 わり容易に蓋の移動が可能で危険 26-1 プール排(環)水口の事故の検証 1. 2006年7月31日埼玉県ふじみ野市の 流水プール死亡事故の検証 2. 自治体の対応(埼玉県、ふじみ野市) 3. 国の対応 「プールの安全標準指針」 策定 4. 水泳プールの安全管理マニュアル改訂検討 5. プール事故撲滅キャンペーン、講習会の検討 *結論 : 排(環)水口事故は防げる 26-2 事故の原因 1965年以降、排(環)水口 (ろ過循環口) での事故が 発生し始め、プールでの3大事故(溺れ、飛び込み事故、吸 い込み事故)の一角を占めるようになった。 排(環)水口の蓋がない、外れていた(清掃、いたずら、劣化、危機意識) 浮力で軽くなった蓋をいたずら等で外された(蓋の重量のみで固定) 配管に接近し、 吸い込み防止金具がないため急速に吸い込まれた 排(環)水口の枡の開口面積が小さく、流れが速い為、蓋上面に吸い付 いてしまった。 26-3 安全への確認 ① 蓋は、重みがあっても水中では浮力により軽くなる ことがある。 ② ネジ、ボルト等にゆるみが生じることがある。 ・ 利用者の接触、プール水の還流等による振動 ・ 金属の場合の腐蝕、プール本体の劣化 ③ 子供がいたずらできない、十分な安全対策。 ④ 複数の目でチェックする。 ⑤ 危機意識—異常がある場合は使用を停止する。 27 起流装置・揚水ポンプ 起 流 ポ ン プ 用 ピ ッ ト ピ ッ ト 内 部 と ポ ン プ スライダー用揚水ポンプ 28 各種ポンプの吸い込み能力比較 近年、多様化するプールには、ろか機用ポンプ以外にも様々な アトラクション用のポンプが使用されている。 その能力には大きな差があり、特別に注意が必要である。 プールの種類 ろ過機を基準 参考サイズ等 ポンプ能力 25mプール 25m×13 ろ過機ポンプ 1.0m3/分 流水プール 120m×5m巾 起流装置3か所 起流ポンプ1か所 10.0m3/分 スライダープール 滑走路120m 揚水ポンプ 3.0m3/分 約3倍 アトラクションプール 滝 1.0m3/分 約1倍 基準:1 約10倍 29-1 プール構造上での対策 プールでの事故の内、吸い込まれ事故はハード面での対策で 発生を大きく抑制可能です。 -不備があるときは使用停止- * 排(環)水口前面蓋(柵)を ネジ、ボルト等で固定する。 * パイプの先端に吸い込み 防止金具を設置する 。 29-2 プール構造上での対策(基本最低限の対策) ◇ 排(環)水口の蓋をネジ・ボルトで固定する ◇ 配管入口に吸い込み防止金具を付ける ◇ ポンプの吸い込み流速を蓋上面で身体が感知しない程度 ( 0.5m/sec以下)まで遅くする。 排(環)水口 吸い込み防止金具 29-3 プール構造上での対策(将来のプールでの必須用件) 吸い込み防止金具 排(環)水口蓋の開口部例 の大 蓋 配き の 慮さ ス がに リ 必も ッ 要指 ト をや 挟穴 まの な形 い状 等、 るう故意み め 固蓋 こ 、 等し 防の 定や と材の 、 止ネし 金 。 料要まやジ、 具 や因た腐、 さ等 工に 接食ボらは 法な触防ル に き に らに 止ト固ち 配なよに 等定ん 慮い る留はの と すよ事 緩た 29-4 吐出口(多数に分岐され適切な金具が付いている事) 吐出口でも、まれに逆流による 吸い込み事故が発生した例が あるため、分散と金具材料や 工法に注意が必要となる。 プール循環吐出口のイメージ 吐出口 全開 (二重構造の必要性はない) 吐出口 半開 30-1 排(環)水口の分散化(これからのプール) : 配管を分割する事により圧力を分散させ、吸い込み、張り付き事故を防止 する。2系統以上にすれば負圧が開放され脱出が容易となる。 : 排(環)水口蓋の面積を大きくし、表面流速を下げることで、子ども等に水流 を感じ難くし、興味を誘発させないようにする。 排(環)水口を複数設ける 人体による閉塞に対する安全 機能の確保 吸い込み流速が小さくなる 事故は発生しくい 万が一の場合も、吸込み 圧が低いので脱出は容易 30-2 プール構造上での対策(今後の望ましい仕様) 仕様・工法への配慮、 排(環)水口の分散化 蓋の基準寸法 流量÷有効開口積 表面平均目標流速 <0.5m/sec>以下 ネジ、ボル トにて固定 細かく分岐した 多数の排(環) 水口で吸い付き を起こさないも のは二重構造 の安全対策を施 す必要は無い 30-3 起流・揚水装置の排(環)水口 (今後の望ましい方式) 排(環)水口BOX内部 前面蓋取付(通常使用)状態 (1BOXに付14箇所で固定) 起流装置等のアトラクション排(環) 排水口は1系統を2ヶ所以上に分 岐。 ボックス前面に広い蓋をして流速を 抑える。(0.5m/sec以下程度) 32 対策が施されたプールの一例 アトラクションへの排(環)水口も分割さ れ、安全は確保されている。 排(環)水口は3分割され、さらに10 箇所以上の取水口に分散しているので 圧力は極小になる。 ろ過吸水配管が3箇所に分岐し ているので安全性は確保されて いる。 33 プール安全利用のための施設基準 (1) 救命具 浮き輪、ライフセイバーチューブ、等 (2) プールサイド、通路等 充分な広さ(水面積の2倍)、滑り難く荒くない表面 (3) 監視室 緊急時の司令室、施設全体が見渡せる場所、 緊急連絡先一覧、役割分担表 (4) 救護室、医務室 救命具、担架、ベッド、救急医薬品、空調、飲料水、出来ればAED (5) 放送設備 監視室への設置、施設全体への連絡伝達機能、職員への連絡通信手段 (6) 看板、標識類 (各種標識、注意、警告等) 入場者全員の目に付く場所に2箇所以上 34 プール事故防止のための施設運営 ① 管理体制の整備 ② プールオープン前の点検 ③ プールオープン後の点検 ④ 緊急時への対応 ⑤ 監視員の教育・訓練 ⑥ 利用者への情報提供 35-1 管理体制の整備 プール管理運営に係わる管理マニュアルを整備し、 安全管理に携わる全ての従事者に徹底を図る。 : 設置管理者 ⋯ 管理体制を明確にする 業務内容、役割分担、緊急連絡先、連携医療機関等の体制整備、周知徹底 ・ 管理責任者 ⋯ プールに係わる総合的な知識 公益法人等の安全、衛生に関する講習会修了者、有資格者 ・ 衛生管理者 ⋯ 水質に関する基本知識 公益法人等の施設、衛生に関する講習会修了者、有資格者 ・ 監視員 ⋯ 一定の泳力と有事訓練修了者 公益法人等の救助、応急手当に関する講習会修了者、有資格者 ・ 救護員 ⋯ 救急法資格取得者(CPR・AED認定者) 公益法人等の救急救護訓練を受けた者、有資格者 35-2 プールオープン前の点検・整備 点検チェックシートを作成、 水を抜いた状態で、施設の点検整備を確実に行う。 (点検チェックシートは3年以上保管する必要有り) ① プール本体 ⋯ 本体タイル面等の破損 ② プールサイド ⋯ 地盤沈下、形状の変化 ③ プール備品 ⋯ ワイヤー、フロートの異常、破損 ④ ろ過装置関係 ⋯ 水漏れ、ろ材の詰まり ⑤ 塩素滅菌器 ⋯ 作動の確認、異常音、薬品管理 ⑥ 排(環)水口 ⋯ ボルト、ネジ固定と吸い込み防止金具 35-3 プールオープン後の点検・管理 ⑴ 施設の点検 (点検チェックシートの活用と日誌) * プールの利用前後、公開中、休憩時間中の点検。 * 重点箇所の指定と目視、触診、打診による点検。 * 気温、水温、水質検査を定時に実施。 ⑵ 監視員 * 監視員の位置と配置人数の適正確認。(日、週、月で決定) * 監視台(タワー)の視野の確認。 * プール内の事故防止策の徹底。 36 プールの清掃 ① シーズン中 ・ 喫水線上の汚れやオーバーフロー溝。 ・ プールサイドの水切り部。 ・ 水中や水底のごみはネットやプールクリーナーによって除去。 ② 水を抜いて清掃する場合 ・ 前日より水抜き、水深10~15㎝まで水位を下げておき、 水を抜きながら壁面に続き底面を清掃する。 ・ 排(環)水口の蓋は水が完全に抜けるまで取り外さない。 ・ 清掃終了後は蓋の固定金具を必ず締める。 ・ プールは大量の水を使うので事前に水道局と給水時間や 給水方法について打合せ後実施する。 ・ 防火水槽を兼ねる場合は、消防署に連絡する。 37 緊急時への対応 【例】 排(環)水口の蓋(柵)が外れた場合 ①異常場所の安全確保 異常を発見したら直ちに 危険個所の前面に立ち、 遊泳者を近づけない等の 安全を確保する。 ②ポンプの緊急停止 ③プール使用の一時中止 ①と同時に無線連絡等で 緊急のポンプ停止を指示 する。 遊泳者をプールサイドへ誘導 する。(緊急避難誘導) 38-1 緊急時への対応 : 安全管理マニュアルの整備と常備 「緊急時の連絡網・連絡先、搬送方法、協力医療機関」 : AED 等の設置 : 緊急時の対応策 施設に欠陥が生じた場合 ⋯ 立つ・上げる・止める 事故者が出たとき ⋯ 救助・応急・防止・要請 38-2 監視員の教育訓練 ① プールの構造・設備の理解と維持管理 ② プール施設内での事故防止対策 ③ 事故発生等緊急時の措置と救護 ④ 緊急事態の発生を想定した実地訓練 ⑤ 利用者からの苦情等を題材とした 事例研究 38-3 利用者への情報提供 1)施設入り口での情報提供 ☆ 施設の安全確認、点検結果の報告 2)プール内での情報掲示 ☆ プール安全利用上のルールの明示 ☆ 注意事項、禁止事項の明示 ☆ 危険箇所の周知、排(環)水口の場所を明示 子供でも理解のできる様、見やすい場所に、適切な 大きさで、わかりやすい文字とイラストを使用する。 38-3の例.利用者への情報提供 入場のルール 利用の制限 施設の安全確認報告 当プールをご利用の皆さまへ 当プールは、次の事項について毎日点検を行い、 施設の安全を確認しています。 プールの案内 平成○○年○月○○日 プール管理者 ○○○○ (連絡先:○○-○○○○-○○○○) 区分 施 設 関 係 点検項目 点検結果 排(環)水口の蓋等がネジ、ボルト (例) 等で堅固に固定され、配管口に吸 い込み防止金具が取り付けられて 蓋等が堅固に固定され、吸い込み いるか 防止金具が取り付けられている。 その他管理者が重要と考える項目 (適宜記載) (例) 管 理 運 営 関 係 監視員が適切に配置されているか 適切に配置されている (例) 救命救護器具等は適切に配置さ れ、直ちに使用できるか 適切に配置され、直ちに使用でき る その他管理者が重要と考える項目 (適宜記載) 39 学校に於ける管理体制の整備(一例) 校長 プール管理責任者 学校医・学校薬剤師 校長・教頭・保健主事 プール管理委員会 体育主任・養護教諭 水 質 管 理 学 校 薬 剤 師 ・ 保 健 主 事 ・ 養 護 教 諭 体 育 科 ・保 健 体 育 科 ・水 泳 部 顧 問 等 水 体 育 泳 科 指 ・保 導 健 体 育 科 ・水 泳 部 顧 問 等 浄 化 装 置 運 転 専 門 家 ・ 体 育 科 ・ 保 健 体 育 科 水 泳 部 顧 問 等 プ ー ル 給 排 水 体 育 科 ・ 保 健 体 育 科 ・ 水 泳 部 顧 問 等 プ ー ル 施 設 安 全 保 健 主 事 ・ 養 護 教 諭 ・ 学 年 主 任 等 保 健 管 理 保 健 主 事 ・養 護 教 諭 ・体 育 科 保 健 体 育 科 等 休 業 中 の 監 視 体 育 科 ・ 保 健 体 育 科 ・ プ ー ル 当 番 水 泳 部 顧 問 40-1 施設維持管理計画の作成 維持管理計画を作成して実行することが重要で す。 日常点検チェツクリスト、プール管理日誌は必ず 担当を決めて、毎日記入する。 実際の管理ポイント 受 付 ・ 観 覧 席 ・ 建 物 プール本体・プールサイド トイレ・更衣室・給排水衛生 機 械 室・設 備 機 器 40-2 日常点検チェックリスト [例] 3年間保存 41-1 プール施設設備の維持管理 設備機器の点検、保守と修繕 日常点検、定期点検、法定点検 設備機器の適正な運転・監視 施 設 の 十 分 な 清 掃 安 全 管 理 、 衛 生 管 理 利 用 者 保 護 と 保 安 41-2 プール管理日誌 [例] 3年間保存 42 プール施設管理の主な講習会 ■水泳指導管理士養成講習会 主催: (財)日本体育施設協会 内容:年2回程度 講習期間4日間 20歳以上、泳法、泳力条件有り 受講料20,000円 終了後実技、筆記試験有り ■プール衛生管理者講習会 主催: (社)日本プールアメニティ施設協会 内容:年6回程度 講習期間2日間 開催場所 全国主要都市 受講料35,000円 終了後筆記試験有り ■プール施設管理士講習会 主催: (社)日本プールアメニティ施設協会 内容:年5回程度 講習期間1日間 ■その他 開催場所 全国主要都市 受講料18,000円 終了後筆記試験有り 日本赤十字社:水上安全法 消防署:普通、上級救命講習(AED含む) 43-1 参 考 書 籍 43-2 参 考 書 籍 安全・安心が時代のキーワード ご清聴ありがとうございました
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