研究成果報告会 2016.3.14 コケによるセシウムの吸収 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(文科省) 平成25年度採択 被災農地を活用した再生可能エネルギー産業創生のための 生物系-工学系連携拠点の構築 森村 浩司、相澤 朋子、上田 賢志、砂入道夫 1 飯舘村で採取した植物のイメージングプレート露光結果(2014年4月17日) 30 km 飯舘村 20 km 1 6 7 8 2 3 11 12 5 9 13 10 4 長泥地区の木の表面 植物に付着した土壌を洗浄 ↓ 吸引式ゲル乾燥機で 一晩乾燥 ↓ イメージングプレートを載せて 6日間露光 ↓ Typhoon9410で検出 佐須地区の木の表面 佐須地区の木の表 面 佐須地区の木の表面 無菌株化:7、13 2 コケのゲノム抽出および分子系統解析 コケ ↓ 乳鉢に液体窒素を注いで磨り潰す ↓ ISOPLANT II (ニッポンジーン)で抽出 ↓ matKとrbcLのプライマーでPCR ↓ PCR産物をDNAシーケンス解析 PCR条件 matK 94℃ 1 min - (94℃ 30 sec - 52℃ 20 sec - 72℃ 50 sec) x 35 - 72℃ 4 min - 4℃ ∞ rbcL 95℃ 4 min - (94℃ 30 sec - 55℃ 1 min - 72℃ 1 min) x 35 - 72℃ 10 min - 4℃ ∞ matK:mutase K イントロン切断酵素 rbcL:リブロースニリン酸カルボキシラーゼ (RuBisCO、ルビスコ)の大サブユニット matK KIM_F:5'-CGTACAGTACTTTTGTGTTTACGAG-3' KIM_R:5'-ACCCAGTCCATCTGGAAATCTTGGTTC-3' rbcL rbcLa_F:5'-ATGTCACCACAAACAGAGACTAAAGC-3' rbcLa_R:5'-GTAAAATCAAGTCCACCRCG-3' CBOL Plant Working Group (2009) A DNA barcode for land plants. PNAS 106:12794 – 12797. 3 採取したコケの種の同定 1 7 6 11 8 2 12 3 9 4 10 5 13 Brotherella faurier (553/553) トガリゴケ(ハシボソゴケ科) Entodon challengeri (552/553) ヒロハツヤゴケ(ツヤゴケ科) Brachythecium salebrosum (552/553) ヒロハフサゴケ(アオギヌゴケ科) Ulota crispa (553/553) カラフトキンモウゴケ(タチヒダゴケ科) 4 ギンゴケ(Bryum argenteum)の無菌培養法 ギンゴケ(Bryum argenteum) カサゴケ科ハリガネゴケ属の蘚類 ギンゴケの茎葉体を2~3mmにピンセットで切断し 日本を含む世界中に分布 寒天培地の透析膜の上に載せる 茎は長さ1cm程度、葉は茎に 4本または21本/シャーレ 重なり合ってつけ、仮根を少量つける ↓ 庭土や畑、コンクリートの隙間にも生える サージカルテープで蓋の隙間をふさぐ ↓ 人工気象器で日照10.5時間、25℃で培養 H02S1培地 ハイポネックス液 6-10-5 0.2 % スクロース 1 % 寒天 0.9 % pH 5.8 ギンゴケ 滅菌した透析膜 滅菌シャーレ 深型90 x 20 mm マイクロポア・サージカルテープ 5 ギンゴケの各アルカリ金属添加効果 培養時間:1ヶ月 1.5 2.5 5 12.5 37.5 75 (mM) LiCl 無添加 NaCl KCl H02S1培地中の K濃度:2.5 mM RbCl CsCl 6 ギンゴケのセシウムによる生育抑制に対する各アルカリ金属の添加効果 培養時間:1ヶ月 Cs無添加 添加濃度 CsCl:2.5 mM LiCl:2.5 mM NaCl:25 mM KCl:25 mM RbCl:2.5 mM NH4Cl:25 mM H02S1培地中の K濃度:2.5 mM Cs Cs + Li Cs + Na Cs + K Cs + Rb Cs + NH4 7 コケマットによる放射性物質吸収の検証 1/23 小屋裏の湿地 地面の放射線量 0.95 µSv/hr 設置したコケ ハイゴケ シッポゴケ スギゴケ ホソバオキナゴケ 購入元:HappyMOSS ハイゴケのCs137濃度 118 Bq/kg ホソバオキナゴケの Cs137濃度 147 Bq/kg 8 飯舘村の土で栽培したコケ トガリゴケ シッポゴケ ハイゴケ ホソバオキナゴケ スナゴケ 10/28 ハイゴケ 630 Bq/kg 11/27 土のCs137 1.0 x 104 Bq/kg 9 まとめ ・飯舘村で採取した植物ではコケが放射性物質を蓄積していた。特に長泥地区のコケは多く蓄積していた。 木の幹に生育しているコケが特に多く放射性物質を蓄積していた。 ・ギンゴケはセシウム濃度1.5 mMで生育抑制が起こり、4 mMで枯死した。この生育抑制は10倍量の カリウム添加で緩和された。 ・飯舘村の試験場に設置したハイゴケはCs137を118 Bq/kg、ホソバオキナゴケは147 Bq/kg吸収した。 ・腰高シャーレで栽培したハイゴケはCs137を630 Bq/kg吸収した。 今後の予定 ・ゲノムが解読されているヒメツリガネゴケを用いてセシウム吸収の分子生物学的解析を行う。 ・現在無菌培養しているコケについて飯舘村の土壌を用いて培養試験を行う。 10
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