平成 27 年 夏号 第 333 号(4) 和歌山県JA花き情報 キクの病害虫 和歌山県農業試験場 主任研究員 主査研究員 井口雅裕 大谷洋子 ■キクえそ病 (病原:トマト黄化えそウイルス(TSWV)) 葉に退緑とえそ輪紋を生じ、その後えそ斑 へと進行し、やがて枯死する。茎にえそ条斑 を生じる。主にミカンキイロアザミウマによ って伝染される。挿し穂等によっても伝染す るが、管理作業による伝染はほとんどせず、 種子伝染および土壌伝染はしない。 県内では平成 13 年に初めて発生が確認さ れた。ナス科、キク科等の作物において本ウ イルスによる発病が確認されている。 ○キ クえそ病、キ ク茎えそ 病の防除対策 媒介虫のミカンキイロアザミウマを徹底 して防除する。 感染株は伝染源となるため、見つけしだい 抜き取って適切に処分する。 ■キク白さび病 (病原:プクシニア ホリアナ) 葉裏に白色の 隆起し た 3~5mm の斑点を 形成する。葉表では小黄斑となる。病原菌は レースの違いによって侵す品種が異なる。気 温 が 20 ℃ 前 後 で 多 湿 条 件 の と き に 多 発 す る。 ■キク茎えそ病 (病原:キク茎えそウイルス(CSNV)) 茎にえそ、葉に退緑およびえそを生じる。 病徴はキクえそ病に酷似する。ミカンキイロ アザミウマによって媒介される。挿し穂等に よっても伝染するが、管理作業による伝染は ほとんどせず、種子伝染および土壌伝染はし ない。 県内では平成 25 年に初めて発生が確認さ れた。キクの他、トマト、ピーマン、アスタ ー、トルコギキョウ等で本ウイルスによる発 ○キ ク白さび病の 防除対策 少発生時から病葉の摘み取りと薬剤散布 を行う。 病が確認されている。 ____________________________________________________________________________________ 平成 27 年 夏号 和歌山県JA花き情報 第 333 号(5) ■キク立枯病 (病原:リゾクトニア ソラニ) 地際部の茎が褐変して腐敗する。茎の腐敗 は外側から始まり、内部までおよぶ。湿度が 高いと茎の外側に茶褐色の菌糸が現れる。病 原菌は土壌中の植物残さ中で生息する。27℃ 前後で発病しやすい。 ○キ ク黒斑病・褐 斑病の防 除対策 品種間で発病差がみられるので、なるべく 発病しにくい品種を栽培する。予防的な防除 を心がける。 ○キ ク立枯病の防 除対策 被害株は根周辺の土壌とともに取り除い て処分する。密植を避け、株元付近の通気を よくする。クロルピクリン剤、カーバムナト リウム塩剤、ダゾメット剤などの農薬による 土壌消毒は有効である。 ■オオタバコガ 幼虫は背面に短い毛が目立つ。体色は淡緑 色から褐色まで個体差が大きい。老齢幼虫は 体長約 40mm。 幼虫は新芽、蕾、花を好み、1頭が次々に 食害する。 ■キク黒斑病・褐斑病 (病原:セプトリア トリア クリサンセメラ、セプ オベセ) 下葉から発生し、円形、楕円形、不整形の 黄褐色~褐色の病斑を形成する。発病が激し いと下葉から枯れ上がる。病徴から黒斑病と 褐斑病を区別することは難しい。どちらの病 原菌も土壌中の罹病茎葉中で越冬し、翌年、 分生子が降雨によってはね上がって下葉に 一次伝染する。 一度発病すると、病斑に形成された小黒粒 ■ハスモンヨトウ 老齢幼虫は体長約 50mm。頭部やや後方に 1対の黒斑がある。 点から生じた分生子が風によって飛散し、二 幼虫は、葉、蕾、花を食害する。老齢にな 次伝染する。露地栽培では春から梅雨期に発 ると、葉や花弁を食い尽くす。8~ 10 月の被 生が多い。 害が最も大きい。 ____________________________________________________________________________________ 平成 27 年 夏号 和歌山県JA花き情報 第 333 号(6) ■ミナミキイロアザミウマ 成虫は体長約1 mm。 成虫に新芽が加害さ れると、展開した葉の表にひっかき傷様の被 害が生じる。幼虫の発生は少ない。 ○オ オタバコガ・ ハスモン ヨトウの 防除 対策 中齢期以降は摂食量が多くなる。また、薬 剤防除効果が低くなるので、若齢幼虫対象の 初期防除に努める。とくに、ハスモンヨトウ はふ化幼虫の集団が分散するまでに防除す る。施設栽培では開口部に目合い4 mm 以下 の防虫ネットを展張し、成虫を侵入させない ように努める。 ■ミカンキイロアザミウマ 成虫は体長約 1.5mm。成虫・幼虫が膜切れ 後に蕾内部に侵入して花弁を加害する。花弁 ■ナミハダニ は、摂食により、濃色系品種では退色し、淡 体色は淡黄色~淡黄緑色で、雌成虫は体長 色系品種では褐変する。また、新芽が加害さ 約 0.5mm。高温、乾燥条件が続くと多発する。 れると、展開した葉の表にひっかき傷様の被 吸汁により、葉表に小さな白斑点が多数生 害が生じる。TSWV、CSNV を媒介する。 じる。被害は下位葉から発生し、上位葉に広 がる。寄生密度が高まると、茎の先端に移動 しクモの巣状の糸を張る。 ○ア ザミウマ類の 防除対策 薬剤防除は、多発してからでは効果が劣る ので、発生初期に行う。不必要な花や株は速 ○ナ ミハダニの防 除対策 薬剤散布にあたっては葉裏に薬液が十分 やかに処分する。親株養成は必要最小限とす る。 かかるように行う。また、薬剤抵抗性の発達 を遅らせるため、同一系統の薬剤を連用しな い。 ____________________________________________________________________________________
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