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RFID World Watcher Monthly
August 2011
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目次
特集 – 自動認識総合展 2011 レポート ................................................. 3
RFID 関連ニュース.................................................................................. 9
プロダクト.............................................................................................................................................9
ソリューション.....................................................................................................................................9
規制・標準化.......................................................................................................................................10
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特集 – 自動認識総合展 2011 レポート
8 月 31 日から 9 月 1 日まで東京ビッグサイトで自動認識総合展が開催され、初日の 8 月 31
日に出かけてきた。
【セミナー】
初日のセミナーは特別講演として聴講無料(だからこの日に参加した)。かといって埋め草的
なものではなく、特に午後のものは外国の UHF 帯 RFID の動向をリアルに知ることが出来
る良い講演だったと思う。
〔700/900MHz 帯の周波数再編について〕
総務省の担当者による UHF 帯 RFID の再編動向に関する講演。このテーマは震災を挟んだ
こともあり半年ほど動向を知ることが出来なかったので有難かった。講演としては周波数
再編の背景の比率が高く、RFID 新規格の内容やその導入スケジュールをもっと話してくれ
たほうが良かったと思ったが、これは人それぞれで感想が違うかな。
パッシブの新チャネルプランは免許局が 4 チャンネル(916.8、918、919.2、920.4MHz)と、周
波数自体は少しずらしたものの欧州の新プランと互換性の高い形に落ち着いた様子。ミラ
ーサブキャリア方式をフル活用できるので通信速度が 90kbps から 270kbps へと向上した。
〔災害非常時における RFID の利活用〕
信州大学の先生による総務省の実証実験の報告。主なテーマは「瓦礫の下に埋もれた人間
の位置を RFID タグを用いてピンポイントで測定できるか」というもので、各種の瓦礫素材
を通過して Gen2 タグがどの程度読めるかという実験の結果が発表のメインだった。大切な
テーマだとは思うし、東日本大震災を受けたタイムリーなトピックだが、ちょっと内容が
薄めだったかなとは思う、
〔UHF Gen2 RFID: Current use cases and future opportunities〕
Impinj の CTO による講演で、マーケット概況、利用アプリケーション、技術的な議論の 3
点から Gen2 の現状を説明する内容。この講演だけ聴けば世界で Gen2 が本格的に普及を始
めていることが理解できるのではないだろうか。
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マーケット概況としては、UHF Gen2 は"Tipping Point"(製品が爆発的な普及に向かう転換点)
を超えたと認識を示し、Gen2 タグの出荷量が 2007 年の 2 億枚から 2010 年に 15 億枚に増加。
その後 2011 年には 28 億枚、2012 年に 56 億枚、2013 年に 112 億枚と毎年倍々ゲームで増え
ていくことが見込まれているという VDC の調査結果、そのマーケットを牽引するのが個品
レベルでのトラッキングであり、RFID システムとしての売り上げが 2010 年から 2016 年ま
で毎年 30%で市場が拡大、2016 年には 8.2 億ドルに達することが見込まれているという ABI
Research の調査結果を紹介した。
利用アプリケーションについては、以下のようなものが紹介された。ほとんどは RFID
Journal などで公開済みの事例で、多くは当サイトの RFID World Watcher Monthly で紹介して
いる。これだけ数があるので一つ一つ特徴を説明していくと言うよりも幅広いアプリケー
ションで使われているということを事例全体を通して紹介しようとしたもの。

宝飾店の店頭在庫管理(CLEOR)

レンタルパレット管理(日本パレットレンタル)

医薬品向けスマートシェルフ(Terso)

薬剤トレーサビリティ(Hanmi)

アパレルインベントリー(Galeria Kaufhof、トライアル?)

e-Seal(台湾税関)

マラソンタイム測定(ChronoTrack)

ビール自動サーバー(DraftServ)

高機能ドリンク自動販売機(Coca Cola Freestyle)

工具管理(CribMaster)

クリーニング

アイスクリーム店顧客向け在庫表示(Izzy's)

食品トレーサビリティ(Metro)

贈答品詰め合わせ(Gripo Disber)
最後の技術的な議論の紹介では、なんと UHF Gen2 V2.0 という新企画の制定が進んでいる
というという話が。それも可能性の議論ではなく、今年の 10 月にワーキングドラフトを公
開して年内に最初の IP レビューを終了、2012 年の 6 月には批准というスケジュールで動い
ているらしい。個人的にはそのような動きがあることを全く知らず、非常に興味深かった。
現在の UHF Gen2 と互換性を保ちつつ下記の機能が追加されるとのこと。

EAS 機能 - EAS としてのデータ項目を追加

セキュリティ - 真正性の確認、データ読み書きのアクセス制限、データの暗号化を AES
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を用いて実装

ファイル管理 - ユーザデータを分割してファイルとして管理し、アクセス権を個別に
付与する。
以前は EPC Gen3 として少し噂が出てその後話を聞かなくなった話がこういう形で進んで
いたのか。ファイル管理や AES 対応の暗号化には相当の処理能力が必要なはずだが技術の
進歩で対応できるようになったのだろう。すぐに対応製品が出てくるかどうかは分からな
いが楽しみだ。
〔欧米/APEC での UHF 帯 RFID 導入最新動向〕
UPM RFID のアジア担当 MD による講演。Wal-Mart の導入プログラム、アパレル個品タグ
付け、産業向けタグ、NFC タグの 4 つの分野のトピックが紹介された。
まず Wal-Mart の導入プログラムについて。アパレルでの成功を踏まえて他の商品への展開
が計画され、ベンダーもそれに合わせて供給能力を拡張していたが、現状は景気の悪化に
より展開が足踏みしているとのこと。但し、展開計画は放棄・縮小されてしまったわけで
はなく、今年の第 4 四半期に電気製品のタグ付けが開始するなど、近いうちに再開されオ
リジナルの計画に追いつくと判断していると。
アパレル個品タグ付けに関しては、アパレルで使うタグとして紐で結わえるタグとハンガ
ーに取り付けるタグ、そして商品に貼り付けるラベルと 3 タイプのタグが存在すること、
そして UPM RFID はその 3 種類のタグのすべてに対応しているという話があった。
産業向けタグのパートで出てきたのが金属製の商品の個品管理。従来金属製品の管理には
専用の金属タグを利用してきたが再利用しなければ中々コストが合わない。そこで、通常
のラベルタグでタグ部分を折り曲げて浮かせた Flag タグを適用することで安価に管理が行
えるという内容。正しいアプローチであり、またアイデアさえあれば必ずしも特殊・高度
な技術は不要なので日本でもこの種のタグは展示会などで多数発表されているのだが、そ
れがまとまって「金属タグでなくてもいいよね」という認識にはなっていないんだよなぁ。
事例としては韓国の製鉄会社 POSCO のものを紹介。薄板ロールなどすべての製品を対象に
年間 200 万個のタグを貼付しているとのこと。
NFC については、携帯電話にリーダーが内蔵され一般の消費者と直接繋がれる新しい市場
が生まれるというのが主張の中心。2014 年までにスマートフォンの 20%、3 億台が NFC 対
応になるとの見通しを示した。事例紹介はコンセプト的なものが中心だったが、Angry Birds
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という携帯ゲームで関連商品のぬいぐるみに NFC タグを入れる事例が紹介された。
【展示】
今回は展示スペースは一部屋になった。スペースが年々減っていくのは淋しいが、出展し
ている企業はしっかりした展示をしていたので残念と言う感じはしない。全般的にハード
をそのまま出展している企業は少なくソリューションと絡めての展示、特にスマートフォ
ンを使った展示が多かった印象。
〔Touch to Start KIT(クレスコ・アイディー)1〕
個人的には今回の出展品の中で一番注目したのがこれ。USB 接続 NFC リーダーと NFC タ
グ 10 枚(Edy や SUICA もタグとして使える)、そして Excel で開発が可能な可能なミドルウ
ェア Manica Excel Tool のセットで 4,980 円。個別のコンポーネントは従来から存在したもの
だが、これらを組み合わせてパッケージソリューションにした意義は凄く大きい。RFID 業
界の外にいる人にはコンポーネントを集めてきて動作検証して…ということ自体が相当の
手間がかかるからだ。専用タグや SUICA をかざしてタグに応じた Excel マクロや外部プロ
グラムを起動させるなんてことはノンプログラミングで出来るので、ユーザーの手持ちの
SUICA を使ってタイムレコーダーやスタンプカードの置き換えなんていうのはすぐにでも
出来るし、タブレット PC に接続すればインテリジェントなデジタルサイネージの出来上が
り。個人的に特に使ってほしいと思うのは SNS と RFID の連携が何か出来ないかと考えて
いる SNS 畑の人。SUICA と Excel を使うことで実用環境でのシステムが組めるんだから、
アイデアを検証して RFID 畑の人にフィードバックしてほしいなぁ。
1
会社サイトは http://www.cresco-id.com/ 、製品サイトは http://nfcstore.jp/?pid=33557834
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なお、パッケージされているミドルウェア Manica Excel Tool 2は他の RFID リーダーでも利用
できる。デモ用のシステムを作ったりするのに非常に便利なので、使ったことが無い方は
こちらもぜひ試してみてほしい。
〔レーザーピッキング(インスピーディア)3〕
これは RFID ではなく画像認識システムとレーザーポインタを使った物品管理システム。棚
に格納する箱やケースに二次元バーコードを貼付し、天井などに固定したネットワークカ
メラで棚を読み取ることで箱の位置を認識・記憶、特定の貨物の位置を知りたい場合には
同じく天井などにコピーしたレーザーポインタで箱をピンポイント照射する。電子棚札と
違って棚に配線を這わせたり棚タグの電池を交換したりといった手間が無いのが素晴らし
い。
また、画像認識システムは二次元バーコードの認識装置に差し替えることが可能で、例え
ば段積みされたパレットの枚数などを数えさせたりとかいうことも可能。平置きで通常の
管理が困難な倉庫などでも大きなメリットが得られるのではないだろうか。
〔見える RFID タグ「スマートタグ」(アイオイ・システム)4〕
電子ペーパーを搭載した RFID タグ。個別の案件ベースで特注され実用化されていたのは知
っていたが、一般向けに販売されるのはこれが初めてではないだろうか。電子ペーパー部
分は文字だけではなくバーコードも表示させることが出来る解像度の高いもの。無線部分
2
製品サイトは http://www.hayato.info/manicatool.htm
会社サイトは http://www.inspeedia.com/
4
製品サイトは http://www.hello-aioi.com/product/smarttag.html
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は NFC を使っており通信距離は数センチで、用途としては通い箱用の電子カンバンに特化
している。せっかくの電子ペーパー機能なのだから遠距離からの書き換えが出来たほうが
面白いと思うのだが、その種の用途は想像するよりマーケットが小さいのだろうか。電池
寿命は書き込み 1 万回で、タグの単価は 3,000 円。
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RFID 関連ニュース
プロダクト
[ハードウェア]
Motorola Solutions は固定式 Gen2 リーダーの新製品 FX9500 を発売する。この製品は XR シ
リーズの後継機種となるもので読み取り距離、読み取り精度の向上が図られている。Gen2
アプリケーションの普及によって従来以上に困難な環境でリーダーが利用されることに対
応した。価格は 4 ポートモデルで 1,695 ドル、8 月末から出荷が開始される。
[ソフトウェア・サービス]
Flemming Cargo Securement (FCS)社と OnAsset Intelligence 社はパートナーシップを結び、ト
ラック輸送での貨物監視システムを提供する。
このシステムは OnAsset 社が開発した Pelican
スマートボックスを利用し、発生した警報を FCS 社に通知するもの。
保険会社の Hartford Financial Services Group はタグベンダーの Intelleflex とパートナーシップ
を結び、食品サプライチェーンのモニタリングを顧客に推奨するサービスを開始する。こ
れは、Intelleflex 社の Gen2 セミパッシブセンサータグ XC3 を用いてサプライチェーン中の
温度管理を行うもので、このシステムの採用を条件に保険料の低減、本来引き受けられな
い高リスク貨物などへの対応を検討中。
ソリューション
[パッシブ]
ジョージア州のスペイン料理レストラン Cheeky ではセルフサービスの生ビールサーバーで
RFID を利用している。このシステムは DraftServ Technologies が開発したもので、Gen2 タグ
を内蔵したメンバーズカードを用いて顧客への課金と上限の提供量を管理する。
コロラド州のベンチャー企業 LeafTrack 社は RFID を用いた医療用マリファナのトレーサビ
リティーシステムを販売している。医療用マリファナはアメリカの幾つかの州で許可され
ているが、連邦政府による規制も含め生産段階からの厳密なトレーサビリティーが要求さ
れる。LeafTrack 社は Gen2 タグを埋め込んだバンドを用いてトレーサビリティーを実現す
る。
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ロンドン博物館では NFC 対応携帯電話から利用できる展示作品解説システムを導入した。
このシステムは Nokia のスマートフォンで利用できるもので、訪問者はアプリケーションを
ダウンロードしたスマートフォンをタグに近づけることで、追加の解説を読んだり SNS に
書き込みを行ったりすることができる。
スポーツショップ Billabong のブラジルにある店舗の一つでは RFID を利用した店舗管理ア
プリケーションを導入した。このアプリケーションは Gen2 タグを利用するもので、棚卸、
POS、EAS、スマートミラーといった RFID のアパレル店舗での用途の多くをカバーする。
ドイツのベンチャー企業 MotionID 社は自動車で利用する非接触支払いシステム ViaTag を開
発した。これはフロントガラスに Gen2 タグを貼付し、ドライブスルーやガソリンスタンド
での支払いを財布を出さずに行えるというもの。同社はタグのクローン作成や盗難に対応
する方法を導入したと主張しているが、その方式は現時点では未公開。
[アクティブ・RTLS]
レーザー研究所 Advanced Light Source では RFID を利用して実験器材の管理を行っている。
この研究所が管理する器材は金属製のものが多く、金属カバーをかけて 30m 先から読み取
れる必要があったため、RF Code 社の 433MHz アクティブタグが採用された。
ドイツの小売チェーン ALDI と Lidl はアクティブ RFID を用いた入退場管理システムを導入
した。このシステムは従業員に配布する 2.45GHz のアクティブタグを倉庫や冷蔵庫のゲー
トで読み取り、権限を持つ従業員が通過する場合にだけゲートを開くもの。
規制・標準化
(該当記事無し)
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